以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
図1に示すルーフパネル1は、車両100に採用されている。ルーフパネル1は、本発明の「車両用樹脂パネル」の一例である。本実施例では、図1に示す各矢印によって、ルーフパネル1の前後方向と、幅方向である左右方向、ひいては、車両100の前後方向と左右方向とを規定している。そして、図2以降では、図1に対応して、ルーフパネル1の前後方向及び左右方向を規定している。また、図3等では、ルーフパネル1の上下方向を規定している。前後方向は本発明の「第1方向」に相当しており、左右方向は本発明の「第2方向」に相当している。また、上下方向は本発明の「第3方向」に相当している。これらの前後方向、左右方向及び上下方向は、互いに直交している。なお、これらの各方向は説明の便宜上のための一例であり、適宜変更可能である。
図1に示すように、車両100は、ボデー101を備えている。ボデー101は、車両100の前後方向の略中央に車室CRを形成している。ボデー101は、フロントピラーパネル102と、リヤピラーパネル103と、第1取付レール104と、第2取付レール105とを有している。
フロントピラーパネル102は、ボデー101の前方側に配置されている。フロントピラーパネル102は、ボデー101の後方側に向かうにつれて、車両100の上方側に傾斜しつつ延びている。フロントピラーパネル102には、フロントウィンドウ106が固定されている。また、フロントピラーパネル102の後端には、フロント側取付部102a、102bが設けられている。リヤピラーパネル103は、ボデー101の後方側に配置されており、フロントピラーパネル102とは離間している。リヤピラーパネル103は、ボデー101の後方側に向かうにつれて、車両100の下方側に傾斜しつつ延びている。リヤピラーパネル103には、リヤウィンドウ107が固定されている。また、リヤピラーパネル103の前端には、リヤ側取付部103a、103bが設けられている。なお、フロント側取付部102a、102b及びリヤ側取付部103a、103bの個数は適宜設計可能である。
第1取付レール104と、第2取付レール105とは、左右対称の形状をなしている。第1取付レール104及び第2取付レール105は、フロントピラーパネル102及びリヤピラーパネル103に沿いつつ、ボデー101の前後方向に略弓形形状に湾曲して延びている。第1取付レール104は、前方から後方に向かって、順に第1〜6取付部104a〜104fを有している。同様に、第2取付レール105も、前方から後方に向かって、順に第1〜6取付部105a〜105fを有している。
第1取付レール104では、複数の取付ネジ108によって、第1、2固定部104a、104bがフロントピラーパネル102の左端に固定されているとともに、第5、6固定部104e、104fがリヤピラーパネル103の左端に固定されている。こうして、第1取付レール104は、ボデー101の左側に固定されている。一方、第2取付レール105では、複数の取付ネジ108によって、第1、2固定部105a、105bがフロントピラーパネル102の右端に固定されているとともに、第5、6固定部105e、105fがリヤピラーパネル103の右端に固定されている。こうして、第2取付レール105は、ボデー101の右側に固定されている。
ボデー101では、フロントピラーパネル102の後端と、リヤピラーパネル103の前端と、第1、2取付レール104、105とによって、略矩形状の取付空間109が形成されている。なお、公知の車両と同様に、ボデー101にはドアパネル等が設けられている他、車両100には、走行に必要な動力装置や制御装置等が設けられている。
図1及び図2に示すように、ルーフパネル1は、パネル本体11とアンテナカバー13とを備えている。アンテナカバー13は、本発明の「構造体」の一例である。ルーフパネル1は、ポリカーボネートを主成分とする樹脂製である。
パネル本体11は、取付空間109に対応して前後方向及び左右方向に延びており、略矩形の板状をなしている。これにより、パネル本体11は、図3〜図6に示すように、表面11aと、表面11aの反対側に位置する裏面11bとを有している。パネル本体11は、前後方向及び左右方向において、裏面11b側から表面11a側に向かって所定の曲率で湾曲する形状をなしている。なお、図示を省略するものの、裏面11bには、取付ネジ108を挿通可能な複数の取付孔が設けられている。
図2に示すように、パネル本体11は、基部110と、接続部111とで構成されている。基部110は、パネル本体11の大部分を占めており、図6に示す第1板厚T1で形成されている。図2に示すように、接続部111は、パネル本体11における後方側であって、左右方向の略中央に位置している。つまり、接続部111は、アンテナカバー13の周囲に位置しており、基部110と、アンテナカバー13、より具体的には、後述するアンテナカバー13の側壁部13bとに接続している。図6に示すように、接続部111は、第3板厚T3で形成されている。ここで、第3板厚T3は、第1板厚T1よりも薄く設定されている。これにより、パネル本体11において、接続部111は、基部110に比べて板厚が薄く形成されている。
図2に示すように、アンテナカバー13は、パネル本体11の後方側であって、左右方向の略中央に位置している。アンテナカバー13は、パネル本体11に一体で形成されており、略三角形をなすフィン状に形成されている。より具体的には、図3〜図6に示すように、アンテナカバー13は、自身の前方側から後方側に向かって、パネル本体11の表面11aから徐々に上方側に向かって延びている。これにより、アンテナカバー13は、先端部13aと、側壁部13bと、立壁部13cとを有しており、中空をなしている。
図6に示すように、先端部13aは、アンテナカバー13における上方側の先端に位置している。側壁部13bは左右一対であり、パネル本体11の表面11a側から、先端部13aに向かって、上方に延びている。つまり、側壁部13bは、下端に位置する根元部分でパネル本体11の接続部111と連続しており、上端で先端部13aと連続している。また、側壁部13bは、パネル本体11の表面11a側から、先端部13a側に向かって、互いに左右方向で近づくように所定の角度で傾斜している。図5に示すように、立壁部13cは、アンテナカバー13の後端に位置しており、先端部13a側から表面11a側に向かって傾斜しつつ延びている。立壁部13cは、先端部13a、側壁部13b及びパネル本体11と連続している。アンテナカバー13は、内部に車両100のアンテナ装置(図示略)を収容可能となっている。
図5及び図6に示すように、アンテナカバー13では、先端部13aの板厚が第1、3板厚T1、T3よりも厚い第2板厚T2に設定されている。また、側壁部13bでは、パネル本体11の接続部111側から、先端部13a側に向かって、板厚が次第に厚く変化するように形成されている。つまり、側壁部13bでは、パネル本体11側から先端部13a側に向かうにつれて、板厚が第1板厚T1よりも次第に厚くなっている。さらに、側壁部13bにおいて、上下方向の最長部分は、長さL1にされている。そして、立壁部13cでは、先端部13aと同様、板厚が第2板厚T2に設定されている。なお、図3〜図6等では、説明を容易にするため、第1〜3板厚T1〜T3や長さL1を含め、パネル本体11やアンテナカバー13の形状を誇張して図示している。
ここで、このルーフパネル1では、側壁部13bにおいて、上下方向の最長部分での板厚の変化の割合が下記の数式を満たすように、第2、3板厚T2、T3の値及び長さL1の値が設定されている。
<数式>
(T2−T3)/L1>0.015
また、このルーフパネル1では、第3板厚T3の1.5倍が第2板厚T2よりも小さくなるように、第3板厚T3の値が設定されている。
具体的には、このルーフパネル1では、第1板厚T1が3.5mmに設定されている。また、第2板厚T2が4.6mmに設定されている。さらに、第3板厚T3が3.0mmに設定されている。そして、側壁部13bにおける長さL1が100mmに設定されている。この結果、このルーフパネル1では、側壁部13bにおいて、上下方向の最長部分での板厚の変化の割合が0.016となっており、上記の数式を満たしている。また、第3板厚T3の値を1.5倍にしても、第2板厚T2の値より小さくなっている。なお、第1板厚T1が第3板厚T3よりも厚く、かつ、第2板厚T2が第1板厚T1よりも厚く設定されていれば、第1〜3板厚T1〜T3の値や長さL1の値の他、アンテナカバー13の形状は適宜設計可能である。
このようなアンテナカバー13を備えることにより、ルーフパネル1では、図2〜図4に示すように、前端側に仮想の第1地点P1を設定し、後端側に仮想の第2地点P2を設定した際、アンテナカバー13が存在しない箇所と存在する箇所とで、第1地点P1から第2地点P2までの距離が異なることになる。具体的には、図3の矢印で示すように、ルーフパネル1では、アンテナカバー13が存在しない箇所、すなわち、パネル本体11のみで構成される箇所では、第1地点P1から第2地点P2までの距離が第1距離D1となっている。これに対し、図3の矢印で示すように、ルーフパネル1において、アンテナカバー13が存在する箇所、すなわち、パネル本体11とアンテナカバー13とで構成される箇所では、アンテナカバー13を経由する分、第1地点P1から第2地点P2までの距離が長くなっている。この結果、アンテナカバー13が存在する箇所では、第1地点P1から第2地点P2までの距離が第1距離D1よりも長い第2距離D2となっている。
このルーフパネル1は、実施例の製造方法によって製造されている。この製造方法では、まず初めに、第1工程を行う。第1工程では、図7に示すように、第1型15と第2型17とを準備する。第1型15と第2型17とは、上下方向で対向して配置されている。第1型15の上面には、第1形成面15aが凹設されている。一方、第2型17の下面には、第2形成面17aが凹設されている。また、第2型17には、後述する第1溶融樹脂30を射出可能な射出口17bが形成されている。図10に示すように、射出口17bは、第2型17の前端側であって、上記の第1地点P1に重なる位置に形成されている。図7に示すように、射出口17bには、射出機19が接続されている。なお、ルーフパネル1の大きさに応じて、第2型17に複数の射出口17bを形成しても良い。また、射出口17bを第1型15に形成しても良い。
そして、第1工程では、第1形成面15aと第2形成面17aとを対向させつつ、第1型15と第2型17とを型締め方向である上下方向に移動させる。こうして、第1型15と第2型17とを型締めする。ここで、第1工程では、第1型15と第2型17とを型締めする際、第1型15と第2型17とを当接させず、双方を上下方向に僅かに離間させた状態とする。
このように、第1型15と第2型17とが型締めされることにより、第1形成面15aと第2形成面17aとによって、キャビティCが形成される。こうして、第1工程が完了する。
このキャビティCは、ルーフパネル1に対応した形状をなしている。これにより、キャビティCは、パネル本体11を形成する本体用キャビティC1と、先端部13aを形成する先端部用キャビティC2と、側壁部13bを形成する側壁部用キャビティC3と、立壁部13cを形成する立壁部用キャビティC4(図10参照)とを有している。また、図7に示すように、本体用キャビティC1は、基部110を形成する主領域C11と、接続部111を形成する副領域C12とを有している。そして、本体用キャビティC1において、主領域C11と、副領域C12とは連続している。また、側壁部用キャビティC3は、副領域C12と、先端部用キャビティC2とに連続している。図10に示すように、立壁部用キャビティC4は、先端部用キャビティC2と、側壁部用キャビティC3と、副領域C12とに連続している。
図8に示すように、本体用キャビティC1において、主領域C11では、上下方向の間隔、すなわち、第1形成面15aと第2形成面17aとの上下方向の距離が第1準備間隔S1’となっている。そして、副領域C12では、上下方向の間隔が第3準備間隔S3’となっている。第3準備間隔S3’は、第1準備間隔S1’よりも狭くなっている。また、先端部用キャビティC2では、上下方向の間隔が第2準備間隔S2’となっている。第2準備間隔S2’は、第1準備間隔S1’よりも広くなっている。詳細な図示を省略するものの、立壁部用キャビティC4についても第2準備間隔S2’となっている。そして、側壁部用キャビティC3では、副領域C12側から先端部用キャビティC2側に向かうにつれて、第1形成面15aと第2形成面17aとの距離が大きくなっている。
ここで、上記のように、第1工程では、第1型15と第2型17とを僅かに離間させた状態で型締めする。このため、第1準備間隔S1’は、第1型15と第2型17とが離間する分だけ、後述する第1間隔S1(図9参照)に比べて間隔が広くなっている。同様に、第2準備間隔S2’は、第2間隔S2に比べて間隔が広くなっている。また、第3準備間隔S3’は、第3間隔S3に比べて間隔が広くなっている。
次に、第2工程を行う。第2工程では、射出口17bを通じて、射出機19からキャビティC内に溶融樹脂30を射出する。この溶融樹脂30は、ポリカーボネートを主成分とする樹脂、すなわち、ルーフパネル1を構成する樹脂を溶融させること形成されている。なお、ポリカーボネート以外を主成分とする樹脂を溶融させることで、溶融樹脂30を形成しても良い。
この第2工程では、図9の白色矢印で示すように、キャビティC内に溶融樹脂30を射出する過程において、第1型15と第2型17とを上下方向からそれぞれ加圧しつつ、第1型15と第2型17とを当接させる。これにより、キャビティCでは、第1工程よりも、上下方向の間隔が狭くなる。この結果、主領域C11では、上下方向の間隔が第1間隔S1となる。同様に、副領域C12では、上下方向の間隔が第3間隔S3となる。そして、先端部用キャビティC2では、第2間隔S2となる。第1間隔S1は、第1板厚T1に対応する間隔である。また、第2間隔S2は、第2板厚T2に対応する間隔である。そして、第3間隔S3は、第3板厚T3に対応する間隔である。
つまり、第3間隔S3は、第1間隔S1よりも狭くなっており、第2間隔S2は、第1間隔S1よりも広くなっている。また、側壁部用キャビティC3では、副領域C12側から先端部用キャビティC2側に向かうにつれて、すなわち、本体用キャビティC1側から先端部用キャビティC2側に向かうにつれて、第1形成面15aと第2形成面17aとの距離が大きくなっている。
このように、キャビティC内に射出された溶融樹脂30は、射出口17bを中心とする同心円状に広がりつつ、キャビティC内を流通する。こうして、図10に示すように、溶融樹脂30の一部は、射出口17bからキャビティCの前端側に向かって流通する。また、溶融樹脂30の一部は、射出口17bからキャビティCの後端側に向かって流通する。上記のように、ルーフパネル1において、アンテナカバー13が存在する箇所では、第1地点P1から第2地点P2までの距離が長くなっている。このため、キャビティCにおいても、本体用キャビティC1のみからなる箇所に比べて、先端部用キャビティC2及び側壁部用キャビティC3が存在する箇所では、射出口17bから第2地点P2、ひいては、キャビティCの後端までの距離が長くなっている。そして、キャビティC内では、先端部用キャビティC2や側壁部用キャビティC3を流通した溶融樹脂30が立壁部用キャビティC4内で合流する。さらに、立壁部用キャビティC4内を流通した溶融樹脂30は、立壁部用キャビティC4の後方側において、本体用キャビティC1を流通した溶融樹脂30と合流しつつ、第2地点P2、さらには、キャビティCの後端側に向かって流通する。
そして、キャビティC内に射出された溶融樹脂30がキャビティCの全体に行渡ることにより、溶融樹脂30の射出を終了する。こうして、第2工程が完了する。なお、溶融樹脂30の射出を行っている間、第1型15と第2型17とをそれぞれ上下方向から加圧し続ける。
次に、第3工程を行う。第3工程では、キャビティC内で溶融樹脂30を放熱させて固化させる。これにより、図11に示すように、溶融樹脂30からルーフパネル1が形成される。つまり、本体用キャビティC1内で固化した溶融樹脂30によって、パネル本体11が形成される。より詳細には、主領域C11内で固化した溶融樹脂30によって基部110が形成され、副領域C12内で固化した溶融樹脂30によって接続部111が形成される。また、この際、第1形成面15aによって、パネル本体11の裏面11bが形成され、第2形成面17aによって、パネル本体11の表面11aが形成される。そして、先端部用キャビティC2、側壁部用キャビティC3及び立壁部用キャビティC4によって、アンテナカバー13が形成される。より詳細には、先端部用キャビティC2内で固化した溶融樹脂30によって先端部13aが形成され、側壁部用キャビティC3内で固化した溶融樹脂30によって各側壁部13bが形成される。また、立壁部用キャビティC4内で固化した溶融樹脂30によって立壁部13cが形成される。なお、第2工程に引き続き、第3工程でも、キャビティC内で溶融樹脂30が固化するまで、第1型15と第2型17とをそれぞれ上下方向から加圧し続ける。
ここで、主領域C11が第1間隔S1となっているため、基部110は第1板厚T1で形成される。また、副領域C12が第3間隔S3となっているため、接続部111は第3板厚T3で形成される。さらに、先端部用キャビティC2及び立壁部用キャビティC4が第2間隔S2となっているため、先端部13a及び立壁部13cは第2板厚T2で形成される。そして、壁部用キャビティC3では、副領域C12側から先端部用キャビティC2に向かうにつれて、第1形成面15aと第2形成面17aとの距離が大きくなっているため、側壁部13bは、接続部111側から、先端部13a側に向かって、板厚が第1板厚T1よりも厚くなっている。なお、溶融樹脂30は放熱することによって収縮するため、第1〜3間隔S1〜S3の大きさは、溶融樹脂30の収縮を予め見込んで設計されている。
こうして、ルーフパネル1が完成することにより、第1型15と第2型17とが型開きされて、キャビティC内からルーフパネル1が取り出される。これにより、第3工程が完了する。
このようにして製造されたルーフパネル1は、図1に示すように、パネル本体11の表面11aを車両100の外側に向けた状態で、取付空間109に配置される。そして、この状態で、パネル本体11の前端が複数の取付ネジ108によって、フロントピラー102のフロント側取付部102a、102bに固定される。また、パネル本体11の後端が複数の取付ネジ108によって、リヤピラー103のリヤ側取付部103a、103bに固定される。さらに、パネル本体11の左端が複数の取付ネジ108によって、第1取付レール104の第3、4固定部104c、104dに固定される。そして、パネル本体11の右端が複数の取付ネジ108によって、第2取付レール105の第3、4固定部105c、105dに固定される。こうして、ルーフパネル1は、フロントピラー102、リヤピラー103及び第1、2取付レール104、105に固定されて、ボデー101に固定される。これにより、ルーフパネル1は、フロントピラー102の後端及びリヤピラー103の前端とともに、車両100の天井を構成している。また、ルーフパネル1とフロントピラー102との間と、ルーフパネル1とリヤピラー103との間と、ルーフパネル1と第1、2取付レール104、105との間とは、それぞれ図示しないシール部材によって封止されている。なお、ボデー101に対するルーフパネル1の固定方法は一例であり、ボデー101の形状等に応じて、ボデー101に対するルーフパネル1の固定方法は適宜変更可能である。
このように、実施例の製造方法では、先端部用キャビティC2における上下方向の間隔は、本体用キャビティC1における上下方向の間隔よりも広くなっている。また、側壁部用キャビティC3は、本体用キャビティC1側から先端部用キャビティC2側に向かうにつれて、第1形成面15aと第2形成面17aとの距離が大きくなっている。これらのため、実施例の製造方法では、先端部用キャビティC2、側壁部用キャビティC3を流通する溶融樹脂30と、本体用キャビティC1を流通する溶融樹脂30とが合流する箇所にウエルドラインが生じ難くなっている。つまり、この製造方法では、アンテナカバー13の立壁部13cの他、立壁部13cとパネル本体11とが接続する箇所にウエルドラインが生じ難くなっている。この作用について、比較例の製造方法との対比を基に説明する。
図12に示す比較例の製造方法では、本体用キャビティC1と先端部用キャビティC2とについて、上下方向の間隔が同じ大きさに設定されている。また、側壁部用キャビティC3は、本体用キャビティC1側から先端部用キャビティC2側まで、第1形成面15aと第2形成面17aとの距離が一定にされている。つまり、比較例の製造方法で製造されたルーフパネルでは、パネル本体もルーフアンテナも等しい板厚で形成されることになる。比較例の製造方法における各工程を含む他の構成は、実施例の製造方法と同様である。
これにより、比較例の製造方法では、キャビティC内に射出された溶融樹脂30は、本体用キャビティC1内、先端部用キャビティC2内及び側壁部用キャビティC3内を同じ速度で流通しつつ、キャビティCの後端側に向かうことになる。ここで、上記のように、キャビティCでは、本体用キャビティC1のみからなる箇所に比べて、先端部用キャビティC2及び側壁部用キャビティC3が存在する箇所では、射出口17bから第2地点P2、ひいては、キャビティCの後端までの距離が長くなっている。このため、本体用キャビティC1内を流通してキャビティCの後端側に向かう溶融樹脂30に比べて、先端部用キャビティC2内や側壁部用キャビティC3内を流通してキャビティCの後端側に向かう溶融樹脂30には、遅れが生じる。そして、溶融樹脂30は、キャビティC内を流通する過程で温度が徐々に低下する。このため、先端部用キャビティC2内を流通した溶融樹脂30と、側壁部用キャビティC3内を流通した溶融樹脂30とが立壁部用キャビティC4内で合流する際に、ウエルドラインが生じ易くなる。また、立壁部用キャビティC4内を流通した溶融樹脂30と、本体用キャビティC1内を流通した溶融樹脂30とが合流する際にもウエルドラインが生じ易くなる。
特に、比較例の製造方法では、先端部用キャビティC2及び側壁部用キャビティC3を境に左右に分岐して本体用キャビティC1内を流通した溶融樹脂30同士が、先端部用キャビティC2内や側壁部用キャビティC3内を流通する溶融樹脂30が立壁部用キャビティC4内で合流するよりも先に、立壁部用キャビティC4の後方側で合流する。そして、本体用キャビティC1内を流通した溶融樹脂30は、先端部用キャビティC2内や側壁部用キャビティC3内を流通する溶融樹脂30よりも先に立壁部用キャビティC4内に流入する。こうして、本体用キャビティC1内を流通する溶融樹脂30と、先端部用キャビティC2内や側壁部用キャビティC3内を流通する溶融樹脂30とが立壁部用キャビティC4内で合流することになる。これらにより、比較例の製造方法では、アンテナカバーの立壁部の他、立壁部とパネル本体とが接続する箇所にウエルドラインが生じ易くなる。
これに対し、実施例の製造方法では、キャビティC内に射出された溶融樹脂30は、本体用キャビティC1内に比べて、先端部用キャビティC2内や側壁部用キャビティC3内を流通し易くなる。このため、本体用キャビティC1内を流通する溶融樹脂30に比べて、先端部用キャビティC2内や側壁部用キャビティC3内を流通する溶融樹脂30の速度が速くなる。これにより、図10に示すように、射出口17bからキャビティC内に射出された溶融樹脂30がキャビティCの後端まで行渡るに当たり、先端部用キャビティC2や側壁部用キャビティC3を流通する溶融樹脂30と、本体用キャビティC1を流通する溶融樹脂30との差が小さくなる。
このため、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて、先端部用キャビティC2内を流通した溶融樹脂30と、側壁部用キャビティC3内を流通した溶融樹脂30とが高い温度を保った状態で、立壁部用キャビティC4内で合流する。同様に、立壁部用キャビティC4内を流通した溶融樹脂30と、本体用キャビティC1内を流通した溶融樹脂30とについても、高い温度を保った状態で合流する。この結果、実施例の製造方法では、アンテナカバー13の立壁部13cの他、立壁部13cとパネル本体11とが接続する箇所にウエルドラインが生じ難くなっている。
特に、実施例の製造方法では、上記の数式を満たすように、第2、3板厚T1、T3、ひいては、第2、3間隔S2、S3の値が設定されている他、側壁部13bにおける上下方向の最長部分の長さL1の値が設定されている。このため、実施例の製造方法では、アンテナカバー13の先端部13aや各側壁部13bの板厚が過度に厚くなることを抑制しつつ、溶融樹脂30が先端部用キャビティC2内や側壁部用キャビティC3内を流通し易くすることが可能となっている。これにより、実施例の製造方法では、射出口17bからキャビティC内に射出された溶融樹脂30がキャビティCの後端まで行渡るに当たり、本体用キャビティC1を流通する溶融樹脂30よりも、先端部用キャビティC2や側壁部用キャビティC3を流通する溶融樹脂30が先行する状態となる。このため、先端部用キャビティC2内や側壁部用キャビティC3内を流通する溶融樹脂30が立壁部用キャビティC4内で合流するよりも先に、本体用キャビティC1内を流通した溶融樹脂30が立壁部用キャビティC4内に流入することを好適に防止することが可能となっている。この点においても、実施例の製造方法では、ウエルドラインの発生を好適に抑制することが可能となっている。
こうして、実施例の製造方法によれば、製造されたルーフパネル1の美観を高くすることができる。また、実施例の製造方法で製造されたルーフパネル1では、ウエルドラインに起因した割れ等も生じ難くなることから、耐久性も高くなっている。
さらに、実施例の製造方法によれば、アンテナカバー13の先端部13aや各側壁部13bの板厚が過度に厚くなることを抑制できる。このため、アンテナカバー13の大型化を抑制しつつ、アンテナカバー13内にアンテナ装置を収容するためのスペースを好適に確保することができる。
また、実施例の製造方法では、ウエルドラインの発生を抑制するに当たって、キャビティC内に射出された溶融樹脂30を別途に加熱する必要がない。このため、キャビティC内で溶融樹脂30が固化するまでの時間を短縮することで製造効率を高くすることが可能となっている。さらに、実施例の製造方法では、高周波誘導加熱装置等の加熱装置や、それによって加熱可能な第1、2型15、17も不要となっている。
したがって、実施例の製造方法によれば、高い品質を有し、かつ製造コストの低廉化を実現可能なルーフパネル1を製造することができる。
また、本体用キャビティC1は、基部110を形成する主領域C11と、接続部C111を形成する副領域C12とを有している。そして、副領域C12は、主領域C11の第1間隔S1よりも狭い第3間隔S3となっている。
このため、この製造方法では、側壁部用キャビティC3について、第1形成面15aと第2形成面17aとの距離を好適に調整しつ、本体用キャビティC1側から先端部用キャビティC2に向かうにつれて、第1形成面15aと第2形成面17aとの距離を好適に大きくすることが可能となっている。このため、この製造方法では、側壁部用キャビティC3内に溶融樹脂30を好適に流通させることができる。これにより、この製造方法では、ウエルドラインの発生を好適に抑制しつつ、各側壁部13b、ひいてはアンテナカバー13を好適に形成することが可能となっている。
また、本体用キャビティC1において、副領域C12が第3間隔S3となることにより、副領域C12では、主領域C11に比べて溶融樹脂30が流通し難くなる。このため、この製造方法では、先端部用キャビティC2内や側壁部用キャビティC3内を流通する溶融樹脂30が立壁部用キャビティC4内で合流するよりも先に、副領域C12、ひいては、本体用キャビティC1内を流通した溶融樹脂30が立壁部用キャビティC4内に流入することを確実性高く防止することが可能となっている。
ここで、主領域C11が第1間隔S1となり、副領域C12が第3間隔S3となるため、主領域C11と副領域C12との接続箇所に段差が生じることになる。この点、この製造方法では、第1形成面15aについて、主領域C11と副領域C12との接続箇所に段差が生じるように形状が設計されている。このため、この製造方法で製造されたルーフパネル1では、パネル本体11の裏面11bには、接続部111と基部110との接続箇所に段差が生じるものの、パネル本体11の表面11aには、接続部111と基部110との接続箇所に段差が生じない。この点においても、この製造方法では、製造されたルーフパネル1の美観を高くすることができる。
さらに、この製造方法では、第2工程において、キャビティC内に溶融樹脂30を射出するとともに、第1型15と第2型17とを上下方向に加圧しつつ、第1型15と第2型17とを当接させる。このため、キャビティC内に射出した溶融樹脂30をキャビティCの全体に好適に行渡らせることが可能となっている。また、第3工程においても、キャビティC内で溶融樹脂30が固化するまで、第1型15と第2型17とを上下方向に加圧し続ける。これらのため、この製造方法では成形不良が生じ難くなっている。
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、アンテナカバー13に換えて、パネル本体11の表面11aから上方に板状に延びる整流板の他、パネル本体11の表面11aから上方に半球状に突出する凸部等を本発明における「構造体」としても良い。
また、本発明における「構造体」は、パネル本体11の表面11aの上方に延びる場合に限らず、パネル本体11の表面11aから下方に延びる凹部等であっても良い。
また、ルーフパネル1に換えて、ボデー101の側面に設けられる側面パネルや車室CR内に設けられる内装パネル等を本発明における「車両用樹脂パネル」としても良い。