以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
実施の形態1.
(電気掃除機の構成)
図1は、この発明の実施の形態1に従う電気掃除機100の全体構成を示す図である。図1(A)は電気掃除機100の正面図であり、図1(B)は電気掃除機100の側面図である。
図1には電気掃除機100の一例としてスティッククリーナーが示されている。電気掃除機100は、スティッククリーナーに限定されるものではなく、たとえば、電動送風機、集塵部および電源部を有する掃除機本体に延長管を接続して構成されるキャニスター型掃除機でもよい。
図1(A)を参照して、電気掃除機100は、電源部104と、電動送風機106と、集塵室108と、延長管111と、吸込部112とを備える。電源部104、電動送風機106および集塵室108は、筐体110内に収容されている。筐体110の一端には持ち手102が接続されている。筐体110の他端には延長管111が接続されている。
電源部104は、バッテリBおよび基板116を含む。バッテリBは、再充電が可能に構成された蓄電装置の代表例として示される。バッテリBは、たとえば、ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池等の二次電池である。蓄電装置としては、電気二重層キャパシタなどを用いることも可能である。
基板116は、後述するように、バッテリBに蓄えられた電力を用いて電動送風機106を駆動するモータ駆動装置を実現する。基板116は、バッテリBから供給される直流電力を、電動送風機106を駆動するための交流電力に変換するための電力変換装置を含んでいる。
電動送風機106は、筐体110内に設けられた通風路113上に配置されている。電動送風機106は、バッテリBから電力の供給を受けて通風路113に吸込み負圧を作用させる。電動送風機106は、交流電動機(図2参照)を送風モータとして駆動する。
集塵室108は、延長管111と連通している。吸込部112は、延長管111の先端部に接続されている。吸込部112は、吸込口114から被掃除面の塵埃を吸引する。
交流電動機を駆動すると、電動送風機106は吸込み負圧を発生する。この吸込み負圧によって被掃除面上の塵埃が空気とともに、吸込部112内部に吸い込まれる。この塵埃を含んだ空気は、延長管111を通って集塵室108に搬送される。空気中の塵埃は集塵室108に捕集される。塵埃を捕集された空気は通風路113を通流し、図示しないフィルタを通過した後、電動送風機106に到達する。その後、当該空気は、通風路113を通じて排気口から筐体110外部へ排出される。
持ち手102には、操作部13および表示部14が設けられている。操作部13は、後述するモータ駆動装置によって電動送風機106を駆動するための複数の操作スイッチを含む。複数の操作スイッチは、吸込清掃を開始または停止させるための操作スイッチ、および各種の運転モードを切替えるための操作スイッチを含む。運転モードを切替えるための操作スイッチには、たとえば、強運転、中運転および弱運転のように、電動送風機106に発生させる吸込み力を切替えるための操作スイッチが含まれている。
表示部14は、電気掃除機100の運転状態(運転モード、バッテリBの状態(充電状態)等)を表示する。表示部14は、後述するように、バッテリBの過熱防止のために運転を停止する際、その旨を表示するように構成される。また、表示部14は、電気掃除機100の起動時においてバッテリBを昇温するための昇温運転を実行する際、その旨を表示するように構成される。なお、表示部14は、持ち手102に設置される形態に限定されず、その他の位置に設けられてもよい。
(電源部の構成)
次に、図2および図3を用いて、図1における電源部104の構成について説明する。
図2を参照して、基板116は、バッテリBと電動送風機106の交流電動機4との間に設けられており、バッテリBから電力の供給を受けて交流電動機4を駆動するモータ駆動装置を構成する。
具体的には、基板116は、電源スイッチ6、昇圧コンバータ2、インバータ3、および制御装置5を含む。電源スイッチ6は、バッテリBと昇圧コンバータ2との間に設けられる。電源スイッチ6は、制御装置5からの制御信号φs1に基づいてオンオフ制御される。電源スイッチ6は、オン(導通)状態ではバッテリBを昇圧コンバータ2に電気的に接続し、オフ(遮断)状態ではバッテリBを昇圧コンバータ2から電気的に切り離す。操作部13において吸込清掃を開始させるための操作スイッチが操作されると、電源スイッチ6はオンされ、吸込清掃を停止させるための操作スイッチが操作されると、電源スイッチ6はオフされる。
昇圧コンバータ2は、制御装置5からの制御信号φcに基づいて、出力電圧(=正極線PL2および負極線NL間の電圧)Vdcを電圧指令値Vdc*に従って制御する。バッテリBの電圧VBに対して、昇圧コンバータ2は、出力電圧VdcをVdc≧VBの範囲に制御する。すなわち、昇圧コンバータ2は、バッテリBの電圧VBを昇圧する機能を有している。
インバータ3は、昇圧コンバータ2と交流電動機4との間に接続される。インバータ3は、制御装置5からの制御信号φiに基づいて、昇圧コンバータ2の出力電圧Vdcを、交流電動機4を駆動するための交流電圧に変換するように構成される。たとえば、制御装置5は、交流電動機4の出力トルクがトルク指令値に従って制御されるように、制御信号φiを生成する。
交流電動機4は、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える三相の永久磁石型同期電動機である。交流電動機4は、U,V,W相の3つのコイル(図示せず)の一端が中性点に共通接続されて構成される。交流電動機4は電動送風機106を回転駆動するためのトルクを発生する。なお、図2の例では、交流電動機4は三相交流モータによって構成されるが、単相交流モータであってもよい。
図3は、昇圧コンバータ2およびインバータ3の構成を示す回路図である。
図3を参照して、昇圧コンバータ2は、いわゆる昇圧チョッパ回路によって構成される。詳細には、昇圧コンバータ2は、リアクトルL1と、半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」とも称する。)Q7と、ダイオードD7,D8と、コンデンサC1と、バイパススイッチ16とを含む。
リアクトルL1の一方端は正極線PL1に接続され、他方端はダイオードD8のアノードに接続される。ダイオードD8のカノードは正極線PL2に接続される。スイッチング素子Q7は、コレクタがリアクトルL1およびダイオードD8の接続ノードに接続され、エミッタが負極線NLに接続される。ダイオードD7は、スイッチング素子Q7に対して逆並列に接続される。スイッチング素子Q7のオンオフは、制御装置5からの制御信号φcによって制御される。コンデンサC1は、正極線PL2および負極線NLの間に接続される。コンデンサC1は、正極線PL2および負極線NLの間の電圧変動の交流成分を平滑化する。
バイパススイッチ16は、リアクトルL1に対して電気的に並列に接続されている。バイパススイッチ16は、制御装置5からの制御信号φs2に基づいてオンオフ制御される。バイパススイッチ16は、オン状態ではリアクトルL1を迂回して正極線PL1をダイオードD8のアノードに接続する。
昇圧コンバータ2は、昇圧運転と非昇圧運転とを選択的に実行するように構成される。昇圧運転では、昇圧コンバータ2は、スイッチング素子Q7をオンオフするように制御される。具体的には、スイッチング素子Q7のオン期間Tonでは、バッテリB−リアクトルL1−スイッチング素子Q7を介した電流経路が形成されることにより、リアクトルL1にエネルギが蓄積される。一方、スイッチング素子Q7のオフ期間Toffでは、バッテリB−リアクトルL1−ダイオードD8−コンデンサC1を介した電流経路が形成される。これにより、オン期間TonでリアクトルL1に蓄えられたエネルギがコンデンサC1に供給される。このようにして、バッテリBの電圧VBが昇圧されて正極線PL2および負極線NLの間に出力される。
昇圧コンバータ2は、スイッチング素子Q7のデューティ比(スイッチング周期T(=Ton+Toff)に対するオン期間Tonの割合)を制御することによって、昇圧率を制御することができる。昇圧率は、バッテリBの電圧VBに対する昇圧コンバータ2の出力電圧Vdcの比(=Vdc/VB)で示される。
制御装置5は、電圧VB,Vdcの検出値と電圧指令値Vdc*とに従って演算されたデューティ比に従って、スイッチング素子Q7のオンオフを制御する。具体的には、出力電圧Vdcが電圧指令値Vdc*よりも低い場合には、デューティ比を大きくすることによって、出力電圧Vdcを上昇させることができる。一方、出力電圧Vdcが電圧指令値Vdc*よりも高い場合には、デューティ比を小さくすることによって、電圧Vdcを低下させることができる。このように、昇圧運転では、Vdc*>VBに設定されて、スイッチング素子Q7のオンオフ制御によって、昇圧率を1よりも高くすることができる。
一方、非昇圧運転では、昇圧コンバータ2による昇圧を行なうことなく、Vdc=VBの状態で交流電動機4を制御する。すなわち、非昇圧運転では、昇圧率が1に固定される。非昇圧運転では、スイッチング素子Q7がオフに固定されるので、昇圧コンバータ2での電力損失が低下する。
非昇圧運転ではさらに、バイパススイッチ16がオンに固定される。これにより、バッテリBの電圧VBは、バイパススイッチ16およびダイオードD8を通じてインバータ3に供給される。リアクトルL1を経由せずにインバータ3に電流を送ることで、上述したスイッチング素子Q7のオフ固定に比べて、昇圧コンバータ2での電力損失がさらに低下する。
インバータ3は、三相インバータの回路構成を有する。インバータ3は、正極線PL2および負極線NLの間に並列に接続されたU相アーム、V相アーム、およびW相アームを含む。U相アームは、正極線PL2および負極線NLの間に直列に接続されたスイッチング素子Q1,Q2を含む。V相アームは、正極線PL2および負極線NLの間に直列に接続されたスイッチング素子Q3,Q4を含む。W相アームは、正極線PL2および負極線NLの間に直列に接続されたスイッチング素子Q5,Q6を含む。各相アームの中間点は、交流電動機4の各相コイルにそれぞれ接続されている。
インバータ3は、昇圧コンバータ2から直流電圧Vdcが供給されると、制御装置5からの制御信号φiに応答した、スイッチング素子Q1〜Q6のスイッチング動作により直流電圧Vdcを交流電圧に変換して交流電動機4を駆動する。
なお、スイッチング素子Q1〜Q7として、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子Q1〜Q7に対して、ダイオードD1〜D7がそれぞれ逆並列に接続される。
各スイッチング素子を構成する材料としては、珪素よりもバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体を採用することができる。ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドのいずれかであることが好ましい。
図2に戻って、電源部104は、電圧センサ7,8,9、電流センサ10,11、温度センサ12、および回転角センサ15をさらに含む。
電圧センサ7は、バッテリBの電圧VB(以下、電池電圧とも称する。)を検出し、その検出値を制御装置5へ出力する。電圧センサ8は、昇圧コンバータ2の出力電圧Vdcを検出し、その検出値を制御装置5へ出力する。出力電圧Vdcは、インバータ3の直流リンク電圧に相当する。電圧センサ9は、交流電動機4への印加電圧Vm(以下、モータ電圧とも称する。)を検出し、その検出値を制御装置5へ出力する。
電流センサ10は、バッテリBに流れる電流IB(以下、電池電流とも称する。)を検出し、その検出値を制御装置5へ出力する。温度センサ12は、バッテリBの温度TB(以下、電池温度とも称する。)を検出し、その検出値を制御装置5へ出力する。電流センサ11は、交流電動機4に流れる電流Im(以下、モータ電流とも称する。)を検出し、その検出値を制御装置5へ出力する。
回転角センサ15は、交流電動機4のロータ回転角θを検出し、その検出値を制御装置5へ出力する。制御装置5は、回転角θに基づき交流電動機4の回転速度Nmを算出することができる。なお、回転角θをモータ電圧Vmまたはモータ電流Imから直接演算することによって、回転角センサを省略してもよい。
制御装置5は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリ等を含むプロセッサを基に構成され、当該メモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、各センサによる検出値を用いた演算処理を行なうように構成される。あるいは、制御装置5の少なくとも一部は、電子回路等のハードウェアにより所定の数値・論理演算処理を実行するように構成されてもよい。
制御装置5は、操作部13から入力された操作指令、および各センサの検出値等に基づいて、昇圧コンバータ2およびインバータ3を制御する。すなわち、制御装置5は、操作指令および各センサの検出値に基づいて制御信号φc,φs2を生成して昇圧コンバータ2へ出力する。また、制御装置5は、操作指令および各センサの検出値に基づいて制御信号φiを生成してインバータ3へ出力する。
ここで、上述したように、昇圧コンバータ2は、昇圧運転と非昇圧運転とを選択的に実行するように構成される。制御装置5は、昇圧コンバータ2の制御について、電気掃除機100に発生する電力損失に応じて、昇圧運転と非昇圧運転とを選択的に実行する。以下では、制御装置5における昇圧コンバータ2の制御について説明する。
(昇圧コンバータの制御)
図4は、実施の形態1に従う電気掃除機100における昇圧コンバータ2の制御に関する制御構成を説明する機能ブロック図である。図4を含めて、以下で説明される機能ブロック図に記載された各機能ブロックは、制御装置5によるハードウェア的あるいはソフトウェア的な処理によって実現される。
図4を参照して、制御装置5は、電力損失演算部20と、電圧指令値生成部22と、スイッチング制御部24とを含む。
電力損失演算部20は、操作部13からの操作指令を受けると、当該操作指令で指定された吸込み力(以下、「要求吸込み力」とも称する。)を電動送風機106に発生させるのに必要な交流電動機4の出力(回転速度×トルク)を設定する。
たとえば、操作部13において強運転設定用の操作スイッチが操作された場合には、電力損失演算部20は、交流電動機4への出力要求を、強運転モードに対応した出力に設定する。一方、操作部13において中運転設定用の操作スイッチが操作された場合には、電力損失演算部20は、出力要求を、中運転モードに対応した出力に設定する。また、操作部13において弱運転設定用の操作スイッチが操作された場合には、電力損失演算部20は、出力要求を、弱運転モードに対応した出力に設定する。なお、弱運転モード時の出力要求が最も小さく、強運転モード時の出力要求が最も大きい。
操作部13の操作指令に応じて交流電動機4に対する出力要求が設定されると、電力損失演算部20は、設定された出力要求に対応させて電圧指令値Vdc*を算出する。
交流電動機4では、回転速度および/またはトルクが増加すると、逆起電力が増加して誘起電圧が高くなるため、その必要電圧が高くなる。これに伴い、昇圧コンバータ2の出力電圧Vdcは、この必要電圧よりも高く設定する必要がある。その一方で、昇圧コンバータ2の昇圧には限界があり、その出力電圧Vdcには上限値が存在する。したがって、電力損失演算部20は、モータ必要電圧(誘起電圧)から昇圧コンバータ2の出力最大電圧までの電圧範囲内において、電圧指令値Vdc*を設定する。電圧指令値Vdc*は、電池電圧VBよりも高く設定される(Vdc*>VB)。すなわち、昇圧コンバータ2は昇圧運転を実行する。
なお、交流電動機4に対する出力要求が大きくなるほど、モータ必要電圧(誘起電圧)が高くなる。したがって、強運転モード時の出力要求に対応するモータ必要電圧は、弱運転モード時の出力要求に対応するモータ必要電圧よりも高くなる。モータ必要電圧が電池電圧VB以下となる運転モードであれば、出力電圧Vdcを電池電圧VBに設定することもできる。すなわち、昇圧コンバータ2は非昇圧運転を実行できる。
次に、電力損失演算部20は、出力要求に従って交流電動機4を駆動した場合における電気掃除機100での電力損失Plossを推定する。
この電力損失Plossの推定においては、電力損失演算部20は、昇圧運転を選択して交流電動機4を駆動したときに電気掃除機100での電力損失Ploss1(以下、「昇圧時電力損失」とも称する。)を算出する。昇圧時電力損失Ploss1は、電圧指令値Vdc*をバッテリBの電圧VBよりも高く設定した場合における電気掃除機100での電力損失に対応する。
また、電力損失演算部20は、非昇圧運転を選択して交流電動機4を駆動したときに電気掃除機100に生じる電力損失Ploss2(以下、「非昇圧時電力損失」とも称する。)を算出する。非昇圧時電力損失Ploss2は、電圧指令値Vdc*=VBに設定した場合における電気掃除機100での電力損失に対応する。
次に、昇圧時電力損失Ploss1および非昇圧時電力損失Ploss2の算出について詳細に説明する。
[1]昇圧時電力損失Ploss1の算出
電力損失演算部20は、昇圧運転を選択して交流電動機4を駆動したときのバッテリBにおける電力損失Pbat、昇圧コンバータ2における電力損失Pcon、インバータ3における電力損失Pinv、および交流電動機4における電力損失Pmotを合計することにより、昇圧時電力損失Ploss1を算出する。すなわち、昇圧時電力損失Ploss1は、次式によって表される。
Ploss1=Pbat+Pcon+Pinv+Pmot …(1)
電力損失演算部20は、電圧指令値Vdc*および各センサの検出値を用いて、以下に示す方法によって、電力損失Pbat,Pcon,Pinv,Pmotの各々を算出する。
バッテリBにおける電力損失Pbatは、主に内部抵抗でのジュール損失であり、内部抵抗値Rbatおよび電池電流IBを用いてRbat・IB2で示される。なお、内部抵抗値Rbatは、電池温度TBに依存して変化する。一般的に、電池温度TBが低いほど、内部抵抗値Rbatは高くなる。
ここで、昇圧運転時の電池電流IBは、平均電流(直流成分)にリップル電流(交流成分)が重畳されたものとなる。リップル電流は、出力電圧Vdcと電池電圧VBとの電圧差|Vdc−VB|に応じて増大する。
電力損失Pbatは、平均電流の二乗に比例した電力損失と、リップル電流の二乗に比例した電力損失との和で示される。このうち、平均電流の二乗に比例した電力損失は、バッテリBの出力電力、すなわち、交流電動機4への供給電力に対応するため、出力電圧Vdcに依存して変化しない。一方、リップル電流の二乗に比例した電力損失は、上記電圧差|Vdc−VB|の上昇に応じて増加する。
したがって、電力損失Pbatについては、電池温度TBおよび電圧差|Vdc−VB|をパラメータとするマップを予め作成することにより、電圧指令値Vdc*に対する電力損失Pbatを算出することができる。
昇圧コンバータ2における電力損失Pconは、主に、スイッチング素子Q7でのスイッチング損失Pconswと、リアクトルL1を含む配線インピーダンスによる損失Pconlineとの和となる(Pcon=Pconsw+Pconline)。なお、配線インピーダンスは、昇圧コンバータ2を構成する配線の材質(抵抗率)、断面積および配線長によって決まる。
スイッチング損失Pconswは、1回のスイッチング当たりの電力損失とスイッチング周波数との積で示される。すなわち、スイッチング損失Pconswは、スイッチング周波数に比例した値となり、スイッチング周波数の上昇に従って増大する。また、同一スイッチング周波数のもとでは、出力電圧Vdcの上昇に応じてスイッチング素子Q7のスイッチング電圧が上昇することにより、スイッチング損失Pconswが増大する。
配線インピーダンスによる損失Pconlineは、昇圧コンバータ2の通過電流(すなわち、電池電流IB)が大きいほど、かつ、出力電圧Vdcが高いほど大きくなる。電池電流IBにおけるリップル電流が増大すると、電流の二乗に依存する損失が増加するため、損失Pconlineは、電圧差|Vdc−VB|に依存して変化する。
したがって、電力損失Pconについては、スイッチング周波数、および電池電流IBの二乗に応じたものとなる。上述したように、電池電流IBのうちの平均電流は、出力電圧Vdcに依存して変化しない。そのため、電力損失Pconとしては、リップル電流、すなわち電圧差|Vdc−VB|を主に考慮すればよい。よって、昇圧コンバータ2のスイッチング周波数および電圧差|Vdc−VB|をパラメータとするマップを予め作成することにより、電圧指令値Vdc*に対する電力損失Pconを算出することができる。
インバータ3における電力損失Pinvは、主に、スイッチング素子Q1〜Q6でのスイッチング損失Pinvswと、配線インピーダンスによる損失Pinvlineとの和となる(Pinv=Pinvsw+Pinvline)。配線インピーダンスは、インバータ3を構成する配線の材質(抵抗率)、断面積および配線長によって決まる。
スイッチング損失Pinvswは、上記のスイッチング損失Pconswと同様に、インバータ3のスイッチング周波数に比例した値となる。同一トルク出力時には、出力電圧Vdcの上昇に応じて各スイッチング素子のスイッチング電圧が上昇することにより、スイッチング損失Pinvswが増大する。配線インピーダンスによる損失Pinvlineは、インバータ3の通過電流(すなわち、モータ電流Im)が大きいほど大きくなる。したがって、同一トルク出力のもとでは、出力電圧Vdcの上昇に応じてモータ電流Imが小さくなるため、損失Pinvlineが低下する。
したがって、電力損失Pinvについては、インバータ3のスイッチング周波数および出力電圧Vdcをパラメータとするマップを予め作成することにより、電圧指令値Vdc*に対する電力損失Pinvを算出することができる。
交流電動機4での電力損失Pmotは、各相コイル巻線に流れる電流によって発生する銅損と、鉄心部の磁束変化によって発生する鉄損との和となる。同一トルク出力のもとでは、出力電圧Vdcの上昇に応じてモータ電流Imが小さくなることにより、銅損が低下する。電力損失Pmotについては、一般的に、交流電動機4の動作状態(回転速度およびトルク)に基づいて推定することができる。たとえば、交流電動機4の動作状態および出力電圧Vdcと、交流電動機4での電力損失との関係を求めておくことにより、交流電動機4への出力要求および電圧指令値Vdc*に基づいて、電力損失Pmotを推定するマップを設定することができる。
このようにして、電力損失演算部20は、交流電動機4の動作状態、出力電圧Vdc、電池電圧VB、電池温度TB、および昇圧コンバータ2およびインバータ3におけるスイッチング周波数のうちの少なくとも1つをパラメータとして、電力損失Pbat,Pcon,Pinv,Pmotの各々を推定することができる。
たとえば、電力損失演算部20は、電池温度TBおよび電圧差|Vdc−VB|をパラメータとするマップを予め作成しておき、当該マップを参照することにより、電圧指令値Vdc*における電力損失Pbatを算出する。また、電力損失演算部20は、電圧差|Vdc−VB|および昇圧コンバータ2のスイッチング周波数をパラメータとするマップを予め作成しておき、当該マップを参照することにより、電圧指令値Vdc*における電力損失Pconを算出する。
電力損失演算部20は、さらに、交流電動機4の動作状態、出力電圧Vdcおよびインバータ3のスイッチング周波数をパラメータとするマップを予め作成しておき、当該マップを参照することにより、電圧指令値Vdc*における電力損失Pinvを算出する。また、電力損失演算部20は、交流電動機4の動作状態および出力電圧Vdcをパラメータとするマップを予め作成しておき、当該マップを参照することにより、電圧指令値Vdc*における電力損失Pmotを算出する。
上述した方法によって、電力損失Pbat,Pcon,Pinv,Pmotの各々が算出されると、電力損失演算部20は、算出された各電力損失を式(1)に代入することにより、昇圧時電力損失Ploss1を算出する。
[2]非昇圧時電力損失Ploss2の算出
電力損失演算部20は、非昇圧運転を選択して交流電動機4を駆動したときのバッテリBにおける電力損失Pbat、昇圧コンバータ2における電力損失Pcon、インバータ3における電力損失Pinv、および交流電動機4における電力損失Pmotを合計することにより、非昇圧時電力損失Ploss2を算出する。すなわち、非昇圧時電力損失Ploss2は、次式によって表される。
Ploss2=Pbat+Pcon+Pinv+Pmot …(2)
電力損失演算部20は、電圧指令値Vdc*を電池電圧VBに設定すると(Vdc*=VB)、電圧指令値Vdc*および各センサの検出値を用いて、以下に示す方法によって、電力損失Pbat,Pcon,Pinv,Pmotの各々を算出する。
非昇圧運転時の電池電流IBは、平均電流(直流成分)のみとなるため、非昇圧運転での電力損失Pbatは、内部抵抗値Rbatと平均電流の二乗との積で示される。したがって、電力損失Pbatについては、平均電流(直流)、すなわち交流電動機4の動作状態、および電池温度TBをパラメータとするマップを予め作成することにより、電圧指令値Vdc*(=VB)に対する電力損失Pbatを算出することができる。
非昇圧運転での電力損失Pconは、スイッチング素子Q7がオフ固定されるため、配線インピーダンスによる損失Pconlineで示される(Pcon=Pconline)。この損失Pconlineには、バイパススイッチ16での導通損失が含まれる。電力損失Pconについても、バッテリBの平均電流、すなわち交流電動機4の動作状態に基づいて算出できる。
電力損失Pinv,Pmotについては、昇圧時電力損失Ploss1と同様に、交流電動機4の動作状態および出力電圧Vdcをパラメータとするマップを参照することにより、電圧指令値Vdc*における電力損失Pinv,Pmotを算出することができる。
上述した方法によって、電力損失Pbat,Pcon,Pinv,Pmotの各々が算出されると、電力損失演算部20は、算出された各電力損失を式(2)に代入することにより、非昇圧時電力損失Ploss2を算出する。
電圧指令値生成部22は、電力損失演算部20によって算出された昇圧時電力損失Ploss1および非昇圧時電力損失Ploss2を受けると、これら2つの電力損失Ploss1,Ploss2の大小を比較する。昇圧時電力損失Ploss1が非昇圧時電力損失Ploss2よりも小さい場合(Ploss1<Ploss2)、電圧指令値生成部22は、昇圧運転を選択する。この場合、電圧指令値生成部22は、電圧指令値Vdc*を、交流電動機4への出力要求に対応する電圧であって、電池電圧VBよりも高い電圧値に設定する。
これに対して、非昇圧時電力損失Ploss2が昇圧時電力損失Ploss1よりも小さい場合には(Ploss1>Ploss2)、電圧指令値生成部22は、非昇圧運転を選択する。この場合、電圧指令値生成部22は、電圧指令値Vdc*を電池電圧VBに設定する。
すなわち、電圧指令値生成部22は、昇圧時電力損失Ploss1および非昇圧時電力損失Ploss2のうちの小さい方の電圧指令値に基づいて、最終的な電圧指令値Vdc*を設定する。これにより、電気掃除機100全体の電力損失が最小となるような出力電圧Vdcが得られるように、電圧指令値Vdc*が設定される。
スイッチング制御部24は、電圧指令値生成部22で設定された電圧指令値Vdc*に従って、昇圧コンバータ2の制御信号φs2,φcを生成する。具体的には、Vdc*>VBの場合、スイッチング制御部24は、出力電圧Vdcが電圧指令値Vdc*と等しくなるように制御信号φcを生成する。スイッチング制御部24は、さらに、バイパススイッチをオフ固定するための制御信号φs2を生成する。昇圧コンバータ2は、制御信号φcに応答してスイッチング素子Q7のデューティ比が設定され、昇圧率はデューティ比に応じたものとなる。
一方、Vdc*=VBの場合、スイッチング制御部24は、スイッチング素子Q7をオフ固定するように制御信号φcを生成する。スイッチング制御部24は、さらに、バイパススイッチをオン固定するための制御信号φs2を生成する。昇圧コンバータ2は、電池電圧VBをバイパススイッチおよびダイオードを介してインバータ3に供給する。
スイッチング制御部24は、さらに、電圧指令値Vdc*に従って、インバータ3の制御信号φiを生成する。制御信号φiに従ってインバータ3がスイッチング制御されることにより、出力要求に従ったトルクを出力するための交流電圧が交流電動機4に印加される。
図5は、実施の形態1に従う電気掃除機100における昇圧コンバータ2の制御を説明するフローチャートである。
図5を参照して、制御装置5は、ステップS01により、操作指令で指定された要求吸込み力に対応して交流電動機4への出力要求(回転速度×トルク)を設定する。制御装置5は、ステップS02により、交流電動機4への出力要求に従い、交流電動機4の誘起電圧に対応させてモータ必要電圧を算出する。モータ必要電圧は、交流電動機4の誘起電圧以上に設定される。
続いて制御装置5は、ステップS03により、ステップS02で求めたモータ必要電圧から、昇圧コンバータ2の最大出力電圧までの電圧範囲内において、電圧指令値Vdc*を設定する。電圧指令値Vdc*は、電池電圧VBよりも高く設定される(Vdc*>VB)。ステップS03では、昇圧運転のための電圧指令値Vdc*が設定される。
次に、制御装置5は、ステップS04により、ステップS02で求めたモータ必要電圧が電池電圧VB以下であるか否かを判定する。モータ必要電圧が電池電圧VBよりも高い場合(S04のNO判定時)、ステップS08に進み、昇圧運転を選択する。これは、モータ必要電圧が電池電圧VBよりも高ければ、出力電圧Vdc=VBの状態で交流電動機4を駆動すると電圧飽和が発生してしまうためである。
一方、モータ必要電圧が電池電圧VB以上である場合(S04のYES判定時)、制御装置5は、ステップS05により、ステップS03で設定した電圧指令値Vdc*における電気掃除機100での電力損失、すなわち昇圧時電力損失Ploss1を算出する。ステップS05では、制御装置5は、電圧指令値Vdc*におけるバッテリBでの電力損失Pbat、電圧指令値Vdc*における昇圧コンバータ2での電力損失Pcon、電圧指令値Vdc*におけるインバータ3での電力損失Pinv、および電圧指令値Vdc*における交流電動機4での電力損失Pmotを算出する。そして、制御装置5は、算出された電力損失Pbat,Pcon,Pinv,Pmotを合計することにより、昇圧時電力損失Ploss1を算出する。
続いて制御装置5は、ステップS06により、電圧指令値Vdc*=VBにおける電気掃除機100での電力損失、すなわち非昇圧時電力損失Ploss2を算出する。ステップS05では、制御装置5は、Vdc*=VBにおけるバッテリBでの電力損失Pbat、昇圧コンバータ2での電力損失Pcon、インバータ3での電力損失Pinv、および交流電動機4での電力損失Pmotを算出する。そして、制御装置5は、算出された電力損失Pbat,Pcon,Pinv,Pmotを合計することにより、非昇圧時電力損失Ploss2を算出する。
制御装置5は、ステップS07により、ステップS05で算出された昇圧時電力損失Ploss1と、ステップS06で算出された非昇圧時電力損失Ploss2とを比較する。昇圧時電力損失Ploss1が非昇圧時電力損失Ploss2よりも小さい場合(ステップS07のYES判定時)、制御装置5は、ステップS08に進み、昇圧運転を選択する。制御装置5は、交流電動機4の駆動に用いる電圧指令値Vdc*を、ステップS03で設定された電圧指令値Vdc*に設定する。
これに対して、昇圧時電力損失Ploss1が非昇圧時電力損失Ploss2以上である場合(S07のNO判定時)、制御装置5は、ステップS09に進み、非昇圧運転を選択する。制御装置5は、交流電動機4の駆動に用いる電圧指令値Vdc*を、電池電圧VBに設定する。
続いて、制御装置5は、ステップS10に進み、ステップS08またはS09で設定された電圧指令値Vdc*に従って、昇圧コンバータ2の制御信号φs2,φcおよびインバータ3の制御信号φiを生成する。昇圧コンバータ2は、制御信号φcに応答したスイッチング素子Q7のオンオフ動作により、電圧指令値Vdc*に従った電圧Vdcをインバータ3に供給する。インバータ3は、制御信号φiに応答したスイッチング素子Q1〜Q6のオンオフ動作により、要求出力に従って交流電動機4を駆動する。
以上説明したように、実施の形態1に従う電気掃除機によれば、電動送風機に要求吸込み力を発生させる場合において、昇圧時電力損失および非昇圧時電力損失の推定に基づき、電気掃除機全体での電力損失が小さくなるように、昇圧運転および非昇圧運転を選択的に実行することができる。これにより、電気掃除機全体の効率を向上させることができる。この結果、電気掃除機において、一充電当たりの連続使用時間を長くすることができる。
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1に従う電気掃除機100における、昇圧運転時の昇圧率の制御について説明する。したがって、電気掃除機100の構成(図1〜図3)および、制御装置5における昇圧運転および非昇圧運転の選択などの実施の形態1との共通部分については、詳細な説明は繰り返さない。
図6は、昇圧運転時における昇圧率の制御を説明する図である。図6には、昇圧コンバータ2の出力電圧Vdc、電池電圧VB、および昇圧率(Vdc/VB)の各々とバッテリBの残存容量(電池容量)との関係が示される。なお、図6に示す関係は、バッテリBがリチウムイオン電池であるときの放電特性に基づいている。
図6を参照して、昇圧運転時には、要求吸込み力に応じた交流電動機4への出力要求(回転速度×トルク)に対応して、電圧指令値Vdc*が設定される。電圧指令値Vdc*は、電池電圧VBよりも高い電圧V1に設定されるものとする(V1>VB)。制御装置5は、電圧指令値Vdc*および電圧センサ7,8の検出値に基づいて、昇圧コンバータ2の出力電圧Vdcが電圧指令値Vdc*と等しくなるように制御信号φcを生成する。
昇圧コンバータ2は、バッテリBから供給された電圧VBを昇圧した電圧Vdcをインバータ3へ供給する。昇圧運転の実行中、電池電圧VBは電池容量に依存して変化する。図6の横軸において、MAXは予め設定された電池容量の管理範囲の上限値を示し、MINは当該管理範囲の下限値を示している。電池容量が上限値MAXであるとき、電池電圧VBは最大値VB1を示す。電池容量が上限値MAXから低下すると、電池電圧VBも最大値VB1から低下する。電池容量が閾値Thであるときには、電池電圧VB=VB2となる。電池容量が閾値Thを下回ると、電池電圧VBはVB2からさらに低くなる。
なお、電池容量に対する電池電圧VBの低下率は、電池容量が閾値Thを下回ると、電池容量が閾値Thよりも大きいときに比べて高くなる。電池容量に対する電池電圧VBの低下率とは、単位容量当たりの電池電圧VBの低下量を示す。
この電池容量に対する電池電圧VBの低下率を用いて、電池電流IB(放電電流)を一定に保って昇圧運転を実行した場合における電池電圧VBの時間的変化率、すなわち単位時間内の電池電圧VBの変化量に着目すると、電池容量が閾値Thを下回ると、電池電圧VBの時間的変化率が上昇することが理解される。
ここで、昇圧率を一定値に固定して昇圧運転を実行する場合を考える。図6では、破線で示すように、電池容量が上限値MAXであるときの電池電圧VB1と、電圧指令値Vdc*=V1とに基づいて、昇圧率をV1/VB1に固定するものとする。
昇圧率を一定(=V1/VB1)とした場合、電池容量の低下に従って電池電圧VBが低下すると、昇圧コンバータ2の出力電圧Vdcも低下する。その結果、図6において破線で示すように、出力電圧Vdcは、電圧指令値Vdc*であるV1よりも低い電圧となる。そのため、電池容量の低下が進むと、交流電動機4の出力が出力要求に満たず、結果的に電動送風機106が発生する吸込み力も低下することになる。
このように、昇圧率を一定値に固定して昇圧運転を実行した場合では、バッテリBの電池容量の低下に従って、電気掃除機100の吸込み力が落ちていくという問題が生じてしまう。これにより、意図しない吸込み力の低下に対して、ユーザが不満を感じる可能性がある。
そこで、実施の形態2に従う電気掃除機では、電池容量に対して出力電圧Vdcが一定となるように、電池容量に応じて昇圧率を変化させる。具体的には、図6において実線で示すように、電圧指令値Vdc*=V1に設定されている場合、電池容量が低下するに従って、昇圧率は高く設定される。これによれば、電池容量が上限値MAXのときの昇圧率(=V1/VB1)に比べて、電池容量が閾値Thのときの昇圧率(=V1/VB2)は高く設定される。
このようにすると、電池容量が上限値MAXから閾値Thまでの範囲内において、出力電圧Vdcを電圧指令値Vdc*であるV1に保つことができる。したがって、電池容量が低下しても、交流電動機4の出力が出力要求を満たし、結果的に電気掃除機100の吸込み力を維持することができる。
ただし、電池容量が閾値Thを下回ると、電池容量に対する電池電圧VBの低下率が高くなる。そのため、出力電圧VdcをV1に保つためには、昇圧率をさらに上昇させることになり、バッテリBの放電電流を増大させることになる。これにより、バッテリBの過放電が発生する可能性がある。また、この状態でバッテリBの使用を継続すると、出力電圧Vdcが不安定になり、結果的に交流電動機4の回転速度が変動する可能性がある。さらに、バッテリBの過放電によって出力電圧Vdcが急激に低下することで、電気掃除機100の誤作動を引き起こす可能性がある。
そこで、上述した昇圧率制御の実行中において、電池容量が閾値Thを下回ると、制御装置5は、昇圧運転を停止する。具体的には、制御装置5は、スイッチング素子Q7をオフに固定する。このとき、制御装置5はスイッチング素子Q7をオフ固定するとともに、バイパススイッチをオンしてもよい。したがって、電池容量が閾値Thよりも低いときの昇圧率は1となり、出力電圧Vdcは電池電圧VBと等しくなる。
制御装置5はさらに、インバータ3の運転を停止する。交流電動機4の駆動を停止することで、バッテリBの放電を停止する。これにより、バッテリBの過放電を防止することができる。
図7は、実施の形態2に従う電気掃除機100における昇圧コンバータ2の制御に関する制御構成を説明する機能ブロック図である。実施の形態2に従う電気掃除機100における制御装置5は、図4に示される制御装置5に対して、電池容量推定部26を追加したものである。
電池容量推定部26は、電圧センサ7によって検出された電池電圧VBに基づいて、バッテリBの電池容量を推定する。具体的には、電池容量推定部26は、電池電圧VBの大きさおよび/または電池容量の時間的変化率に基づいて電池容量を推定する。具体的には、電池容量推定部26は、図6に示すような電池電圧VBと電池容量との関係を示すマップまたは数式等を用いて、電圧センサ7の検出値から電池容量を推定する。
電圧指令値生成部22は、昇圧運転時には、交流電動機4への出力要求に対応させて電圧指令値Vdc*を設定する。スイッチング制御部24は、設定された電圧指令値Vdc*に対して、電池容量推定部26によって推定された電池容量に応じて昇圧率を変化させる。具体的には、電池容量の低下に応じて電池電圧VBが低下するため(図6参照)、電圧指令値生成部22は、電池容量の低下に対応させて昇圧率を上昇させる。その結果、同一の電圧指令値Vdc*のもとで、電圧センサ7の検出値VBが第1の値のときの昇圧率は、電圧センサ7の検出値VBが上記第1の値よりも高い第2の値のときの昇圧率よりも高くなる。
これにより、電池容量の低下に拘わらず、昇圧コンバータ2は、電圧指令値Vdc*に一致した電圧Vdcをインバータ3へ供給し続けることができる。したがって、交流電動機4の出力不足が抑制されるため、電動送風機106は要求吸込み力に従った吸込み力を発生することができる。
スイッチング制御部24はさらに、電池容量推定部26によって推定された電池容量が閾値Thを下回ると、昇圧運転を停止するとともに、インバータ3の運転を停止することにより、バッテリBの過放電を防止する。
なお、バッテリBの過熱防止のために昇圧運転およびインバータ3の運転を停止する際には、制御装置5は、その旨を表示部14に表示させる。これにより、予期せずに電気掃除機100の運転が停止したとユーザが感じることを防止する。
図8は、実施の形態2に従う電気掃除機100における昇圧率制御を説明するフローチャートである。
図8を参照して、制御装置5は、ステップS11により、昇圧コンバータ2において昇圧運転が選択されているか否かを判定する。昇圧運転が選択されていない、すなわち、非昇圧運転が選択されている場合(S11のNO判定時)、制御装置5は、以降の処理をスキップする。
一方、昇圧運転が選択されている場合(S11のYES判定時)、制御装置5は、ステップS12により、電圧センサ7から電池電圧VBの検出値を受ける。そして、制御装置5は、ステップS13により、電池電圧VBの検出値に基づいてバッテリBの電池容量を推定する。
制御装置5は、続いて、ステップS14により、電池容量が閾値Th以上であるか否かを判定する。電池容量が閾値Th以上である場合(S14のYES判定時)、制御装置5は、ステップS15に進み、交流電動機4への出力要求に対応させて電圧指令値Vdc*を設定する。
次に、制御装置5は、ステップS16により、ステップS15で設定された電圧指令値Vdc*に従って、昇圧コンバータ2の制御信号φs2,φcおよびインバータ3の制御信号φiを生成する。このとき、制御装置5は、電池容量の低下に対応させて昇圧率が上昇するように、制御信号φcを生成する。
昇圧コンバータ2は、制御信号φcに応答したスイッチング素子Q7のオンオフ動作により、電圧指令値Vdc*に従った電圧Vdcをインバータ3に供給する。インバータ3は、制御信号φiに応答したスイッチング素子Q1〜Q6のオンオフ動作により、要求出力に従って交流電動機4を駆動する。
一方、電池容量が閾値Thより小さい場合(S14のNO判定時)、制御装置5は、ステップS17により昇圧運転を停止するとともに、ステップS18によりインバータ3の運転を停止する。
以上説明したように、実施の形態2に従う電気掃除機によれば、昇圧運転時には、要求吸込み力に基づいて設定された電圧指令値に対して、電池電圧VBが第1の値のときの昇圧率を、電池電圧VBが上記第1の値よりも高い第2の値のときの昇圧率よりも高くする。このようにすると、電池容量の低下に拘わらず、昇圧コンバータ2は、上記電圧指令値に一致した電圧Vdcをインバータ3へ供給し続けることができる。これにより、出力要求に従って交流電動機4が駆動されるため、電気掃除機の吸込み力を維持することができる。よって、意図しない吸込み力の低下によるユーザの不満を解消することができる。
また、昇圧率制御によって昇圧コンバータ2の出力電圧Vdcを所定範囲内に収めることができるため、インバータ3および交流電動機4では、当該所定範囲に対応した印加電圧に基づいて設計すればよいことになる。たとえば、特性値の電流依存度が大きいリアクトルを用いた場合でも、当該所定電圧範囲に最適な特性値に設定することができるため、電気掃除機の効率を向上させることができる。
また、交流電動機4の出力が同一のもとでは、電池容量の低下に応じて昇圧率を低下させる場合に比べると、出力電圧Vdcが高いため、インバータ3および交流電動機4での電力損失を小さくすることができる。
実施の形態3.
バッテリBとして代表的に用いられる二次電池は、電池温度が低下すると放電特性が低下する。そのため、電池温度が低いときに電気掃除機100が起動されると、交流電動機4の出力が不足し、要求吸込み力に等しい吸込み力を発生できない場合が起こり得る。
そこで、電池温度が低い場合には、電気掃除機100の起動時には速やかにバッテリBを昇温する必要がある。実施の形態3では、バッテリBを昇温するための昇温運転について説明する。なお、電気掃除機100の構成(図1、図2)および、制御装置5における昇圧運転および非昇圧運転の選択などの実施の形態1との共通部分については、詳細な説明は繰り返さない。
図9は、実施の形態3に従う電気掃除機100における昇圧コンバータ2の制御に関する制御構成を説明する機能ブロック図である。実施の形態3に従う電気掃除機100における制御装置5は、図4に示される制御装置5に対して、電池容量推定部26および昇温制御部28を追加したものである。
昇温制御部28は、操作部13(図1)において吸込清掃を開始させるための操作スイッチが操作されると、温度センサ12によって検出された電池温度TBに基づいて、バッテリBを昇温するための昇温運転を実施するか否かを判定する。具体的には、昇温制御部28は、電池温度TBが所定の下限(図10の下限温度TBL)よりも低いとき、昇温運転を実施するものと判定する。昇温制御部28は、電圧指令値生成部22に対して昇温運転の実施を指示する。
電圧指令値生成部22は、昇温制御部28からの指示を受けると、電池電圧TBが下限温度TBL以上になるように、昇温運転を実施する。図10は、制御装置5により実行される昇温運転を説明するための図である。図10には、吸込清掃を開始するための操作スイッチがオンされたタイミング以降の、昇圧コンバータ2の出力電圧Vdcおよび電池温度TBの変化が示されている。
図10を参照して、操作スイッチがオンされた時刻t1において、電池温度TBが下限温度TBLよりも低い場合、昇温運転が開始される。昇温運転では、昇圧コンバータ2は、昇圧運転を実行するように制御される。
具体的には、電圧指令値生成部22(図9)は、電圧指令値Vdc*を、電池電圧VBよりも高い所定の電圧V2に設定する。交流電動機4への出力要求に基づいて設定される電圧指令値Vdc*を電圧V1とすると、電圧V2は、電圧V1よりも低く設定される。すなわち、昇温運転のための電圧指令値Vdc*は、通常運転のための電圧指令値Vdc*よりも低く設定される。
スイッチング制御部24は、電圧指令値生成部22で設定された電圧指令値Vdc*に従って、昇圧コンバータ2の制御のための制御信号φs2,φcを生成する。スイッチング制御部24は、出力電圧Vdcが電圧指令値Vdc*と等しくなるように制御信号φcを生成する。スイッチング制御部24は、さらに、バイパススイッチ16(図3)をオフ固定するための制御信号φs2を生成する。昇圧コンバータ2は、制御信号φcに応答してスイッチング素子Q7のデューティ比が設定され、昇圧率はデューティ比に応じたものとなる。
昇圧コンバータ2が昇圧運転を実行することにより、バッテリBにおいてリップル電流(交流成分)が発生する。リップル電流は、出力電圧Vdcと電池電圧VBとの電圧差|Vdc−VB|に応じて増大する。リップル電流が発生することにより、バッテリBの内部抵抗が発熱するため、バッテリBの温度が上昇する。すなわち、昇温運転では、昇圧運転を実行することで、バッテリBを内部から昇温させる。
したがって、リップル電流を大きくすれば、すなわち、電圧差|Vdc−VB|を大きくすれば、バッテリBを効果的に昇温することができる。しかしながら、リチウムイオン電池やニッケル水素電池に代表される二次電池は、一般的に、温度が低下すると内部抵抗値が高くなる。そのため、リップル電流を大きくすると、内部抵抗に発生する電圧が大きくなり、二次電池の電圧が、安全性および耐久性上許容される上限電圧を超えてしまう虞がある。そこで、昇温運転時には、バッテリBの電圧が上限電圧を超えない範囲で、リップル電流が最大となるように、電圧指令値Vdc*を設定する。これにより、バッテリBに負担をかけることなく、バッテリBを昇温することができる。ただし、昇温運転時の出力電圧Vdcは、本来出力すべき電圧V1よりも低いため、交流電動機4の出力が制限されることになる。
昇温運転によってバッテリBが昇温し、電池温度TBが下限温度TBL以上になると(時刻t3)、制御装置5は、昇温運転を終了し、電気掃除機100を通常運転に移行させる。通常運転では、昇圧コンバータ2は、電圧指令値Vdc*に従った電圧Vdc(=V1)をインバータ3に供給する。インバータ3は、要求出力に従って交流電動機4を駆動する。
さらに、通常運転の実行中、電池温度TBが上昇し、所定の上限(図10の上限温度TBH)に達すると(時刻t4)、制御装置5は、昇圧運転を停止するとともに、インバータ3の運転を停止する。これにより、バッテリBの過熱を防止する。
図11は、実施の形態3に従う電気掃除機100において実行される昇温運転を説明するフローチャートである。
図11を参照して、制御装置5は、ステップS21により、操作部13にて吸込清掃を開始するための操作スイッチがオンされたか否かを判定する。操作スイッチがオンされていないと判定された場合(S21のNO判定時)、制御装置5は、以降の処理をスキップする。
一方、操作スイッチがオンされたと判定されると(S21のYES判定時)、制御装置5は、ステップS22により、温度センサ12から電池温度TBの検出値を受ける。制御装置5は、ステップS23により、電池温度TBが所定の下限温度TBLよりも低いか否かを判定する。電池温度TBが下限温度TBLよりも低い場合(S23のYES判定時)、制御装置5は、ステップS24に進み、昇温運転を実行する。制御装置5は、昇圧コンバータ2に昇圧運転を実行させることで、バッテリBを昇温する。
一方、電池温度TBが下限温度TBL以上である場合(S23のNO判定時)、制御装置5は、ステップS25に進み、通常運転を実行する。制御装置5は、交流電動機4への要求出力に対応する電圧指令値Vdc*に従って、昇圧コンバータ2を制御する。
制御装置5は、ステップS26により、電池温度TBが所定の上限温度TBHよりも高いか否かを判定する。電池温度TBが上限温度TBH以下である場合(S26のNO判定時)、制御装置5は、以降の処理をスキップする。
一方、電池温度TBが上限温度TBHよりも高い場合(S26のYES判定時)、制御装置5は、ステップS27に進み、昇圧運転を停止する。制御装置5はさらに、ステップS28により、インバータ3の運転を停止する。
なお、昇温運転の実行中、昇圧コンバータ2は、交流電動機4への出力要求に対応した電圧V1よりも低い電圧V2をインバータ3に供給する。そのため、交流電動機4の出力不足による吸込み力の低下が発生し、ユーザに違和感を与えてしまう可能性がある。そこで、制御装置5は、昇温運転の実行中であることを表示部14(図1)に表示させることで、吸込み力の低下が、バッテリBが昇温するまでの一時的なものであることをユーザに報知する。これにより、ユーザに与える違和感を防止することができる。
さらに、制御装置5は、バッテリBの過熱防止のために昇圧運転およびインバータ3の運転を停止するときにも、その旨を表示部14に表示させる。これにより、予期せずに電気掃除機100の運転が停止したとユーザが感じることを防止することができる。
なお、上記の実施の形態では、蓄電装置から電力の供給を受けて電動送風機を駆動する交流電動機を備えた電気掃除機について説明したが、本発明は、電気掃除機に限らず、蓄電装置に蓄えられた電力で駆動する交流電動機を駆動源とする製品に広く適用することが可能である。たとえば、ハンドドライヤーなどの電動送風機を備えた製品に対して、本発明を適用することが可能である。
今回開示された実施の形態がすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。