JP6968999B2 - 湾曲したランドを有するブレーキマスターシリンダー - Google Patents

Description

本発明は、全体的に、油圧ブレーキシステムに関し、特にこのシステムのためのマスターシリンダーのピストンに関する。

油圧ブレーキシステムは普通、車両（例えば自動車、スノーモビル、ＡＴＶ（全地形対応車）、オートバイ）に使用され、ブレーキ機能を提供する。このシステムは典型的には、ユーザー（例えばフットペダル又は手動レバー）によって移動できるように構成されたマスターシリンダーを備え、油圧の流体を加圧するとともに、ブレーキパッドに動きを与える。通常はマスターシリンダーは、ボアを画定するハウジングと、ボアの中で可動なピストンとを有する。

ピストンは、ボア内径よりも小さな外側の直径を有し、ピストンはボアの中で往復動ができる。一つ以上の弾性的なシールがピストンに取り付けられ、ピストンとボアとの間の隙間をシールする。シールに隣接したピストンの側壁は、「ランド」と呼ばれる。

ある状況で、ランドとボアとの間で接触が生じ得る。この接触の点での潤滑は、この条件での摩擦力を相当に減少させるが、ピストンとボアとの間では、より一層抵抗を減らすことが望まれるという認識が可能である。

本発明はブレーキマスターシリンダーを提供し、ブレーキマスターシリンダーは、ボア（例えば、実質的に円筒形のボア）を画定する内面を有するハウジングと、ピストン軸に沿ってボアの中で可動なピストンとを備えている。ピストンは、互いに隔てられた二つのランドを備え、互いに隔てられた二つのランドは、内面に接触可能な径方向での最外表面を画定する。ランドのうち少なくとも一つ（そして好ましくはランドの両方）は、径方向での最外表面で長手方向に対して湾曲している。例えば、径方向での最外表面は、１インチ（約２．５４ｃｍ）未満（例えば、０．１５インチ（約０．３８ｃｍ）と０．７５インチ（約１．９１ｃｍ）との間）、好ましくは０．５インチ（約１．２７ｃｍ）未満の半径（軸方向断面でのランドの凸形状の曲率半径）で湾曲していてよい。

一つの実施形態では、長手方向に対して湾曲したランドは、ランドの軸方向長さを規定する二つの縁を有する。二つの縁は、０．２インチ（約０．５１ｃｍ）未満、好ましくは約０．１インチの半径（縁での滑らかに丸み付けを施した丸み形状の軸方向断面での曲率半径）を有する。縁とランドとの相対位置は、ボアの中のピストンの往復動の間に、二つの縁のいずれもボアの内面に接触することが不可能であるようになっている。

発明の他の態様は、詳細な説明と添付する図面を考慮すれば明らかなものとなるであろう。

本発明を実施したブレーキマスターシリンダー組立体を有するＡＴＶ（全地形対応車）を示す。 図１のマスターシリンダー組立体の斜視図である。 図２のマスターシリンダー組立体の分解図である。 図２の４−４線で得られた断面図である。 図４の断面図の一部の拡大図である。 図４の断面図の別の一部の拡大図である。 ボアに対して傾いた位置にある、本発明を実施したピストン部材を示す。

本発明の全ての実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用では、下記の記載に述べられ、添付する図面に例示された要素の構成や構造の詳細に限定されるものではない。本発明は、他の形態で実施することも可能であり、製品に実施され、さまざま形で実現することも可能である。

図１は、本発明を実施したマスターシリンダー組立体１２を有するＡＴＶ（全地形対応車）１０を示す。例示したマスターシリンダー組立体１２は、自動車のブレーキを作動させるブレーキシステムと接続されて使用される。しかし、本発明の特徴は、他の作動システム、例えばトランスミッションクラッチと接続されて使用されるマスターシリンダー組立体にも適用できる。

図２，３を参照すると、例示したマスターシリンダー組立体１２は、ボア１６を画定するシリンダーハウジング１４と、ボア１６に流体を供給する流体貯留部１８と、シリンダーハウジング１４に回転可能に取り付けられたレバー２０とを備えている。レバー２０は、ボア１６内でピストン軸２４に沿って、ピストン組立体２２を作動させるように位置する。例示したボア１６は、約１１／１６インチ（約１．７５ｃｍ）の直径Ｄを有する。

ピストン組立体２２は、ピストン部材２６（本体に対応）と、ピストン部材２６に取り付けられたピストンＯリング２８と、ピストン部材２６に取り付けられたピストンワイパー３０と、ピストン部材２６の一端に取り外し可能に取り付けられた端キャップ３２を備えている。圧縮バネ３４とバネ保持部３６とは、ピストン部材２６とボア１６の底部との間に位置し、ボア１６の外への方向に（即ち図２，３中で右へ）ピストン部材２６を付勢する.

ピストン部材２６は前ランド及び後ランド４０，４２（環状部材に対応）を備え、これらは、ピストン部材２６の径方向での最外表面（湾曲面に対応）であり、ボア１６内でピストン部材２６を位置決めする。ランド４０，４２は、ピストン軸２４に沿って互いに隔てられ、ボア１６を画定する側壁とピストン部材２６との間の接触する点を与える。例示した実施形態では、各ランド４０，４２は、径方向に突出した環状部材であり、ボア１６の直径よりわずかに小さい直径を有し、ボアを画定する側壁とピストン部材２６との間で安定してスライドする界面を与え、ボア１６内のピストン組立体２２のスムースな往復動を容易にする。例示した前ランド４０は、約０．０８０インチの幅Ｗ１を有し、例示した後ランド４２は、０．１２５インチの幅Ｗ２を有する。例示したランド４０，４２は、約０．７５インチの長さＬ（ピーク間距離）で互いに隔てられている。

図４〜６を参照すると、ピストンの長手方向での横断面図においては、ランド４０，４２のそれぞれが、長手方向に対して凸に湾曲していることを示している。即ち、環状の形状を画定するように周方向に凸に湾曲することに加えて、例示したランド４０，４２のそれぞれは、部分的にトーラス（トロイド）の形状を形成するように、長手方向に対して凸に湾曲する。部分的なトーラスの形状は、ボア１６の内面に接触するための大径の湾曲面を与える。例示した実施形態では、前ランド４０の長手方向での湾曲は、０．２５インチの半径Ｒ２を有し、後ランド４２の長手方向での湾曲は、０．４０インチの半径Ｒ１を有する。

上述した寸法に基づくと、各ランドは、対応するランドの幅Ｗ１，Ｗ２（即ちＷ２，Ｗ１）に概略的に比例するＲ１，Ｒ２を有するということが理解できる。具体的には、例示した半径Ｒ１，Ｒ２は、対応する幅Ｗ１，Ｗ２の約２ないし５倍（また好ましくは２．５ないし４倍）であるように選択される。図示した実施形態では、半径Ｒ１，Ｒ２は、対応する幅Ｗ１，Ｗ２の約３．１ないし３．３倍である。

この３．１ないし３．３という係数（ｍｕｌｔｉｐｌｉｅｒ）は、ランド間の長さＬに関係する。ランド間の長さＬが増加するにつれて、各ランドの半径の大きさも増加し得る（即ち、係数が増加し得る）のであり、他の数値は同じままであり得る。好ましくは、長さＬに対する係数の比率（Ｒ／Ｗ）は３．０ないし５．５であり、より好ましくは、４．０ないし４．５である。本実施形態では、ランドは０．７５インチの長さＬで互いに隔てられ、長さＬに対する係数の比率（Ｒ／Ｗ）は約４．３である。

例示した各ランド４０，４２は、各ランドの軸方向長さを規定する二つの縁４４の間に形成される。例示した縁４４は、対応するランドの長手方向での湾曲の半径よりも小さな半径（縁での滑らかに丸み付けを施した丸み形状の軸方向断面での曲率半径）を有する。例示した実施形態では、縁４４のそれぞれは約０．０１０インチの半径Ｒ３を有する。なお、ランド４０，４２の長手方向での湾曲形状により、対応する縁４４は、１６の内面から間隔をおいて設けられ、この内面に接触しない。

図７を参照すると、例示した構成によれば、ボア１６を画定する側壁とピストン部材２６との接触は、小さな半径の湾曲した縁４４に代えて、大きな半径の湾曲したランド４０，４２で生じる。これは図７に図式的に示したように、ピストン部材２６がボア１６内で傾いたときでも、同じ接触が生じる。これにより、接触の有効な表面積を増加させ、ボア１６の内面に縁が食い込む（接触する）ことを防止する。平坦なランドと、小径の縁とを有するピストンにより、ピストン部材が傾いたときにこれらの縁はボアと接触することができる。これによりボア１６内でのピストン部材２６のスライドに対する抵抗、即ち摩擦が上昇する結果が得られる。

好ましい実施態様では、前記第１及び第２ランド（４０，４２）は、一つの長さ（Ｌ）で互いに隔てられ、前記長さをインチで表示した値で前記第１係数を除算して得た第１比率は、３．０ないし５．５であってよく、前記長さをインチで表示した前記値で前記第２係数を除算して得た第２比率は、３．０ないし５．５であってよい。

好ましい実施態様では、前記第１及び第２ランド（４０，４２）は、一つの長さ（Ｌ）で互いに隔てられ、前記長さをｃｍで表示した値で前記第１係数を除算して得た第１比率は、１．１８ないし２．１７であってよく、前記長さをｃｍで表示した前記値で前記第２係数を除算して得た第２比率は、１．１８ないし２．１７であってよい。

後述する請求項で、本発明のさまざま特徴と利点を述べる。

Claims (15)

1. ボアを画定する内面を有するハウジングと、
   前記ボアの中に位置し、ピストン軸に沿って前記ボアに対して可動なピストンであり、前記内面に接触し得る径方向での最外表面を画定する二つの離間したランドを有するピストンとを備え、
   前記ランドのうち少なくとも一つのランドは、径方向での前記最外表面で長手方向に対して湾曲し、
   前記少なくとも一つのランドは、幅を有して、ある半径で長手方向に対して湾曲し、
   前記半径は、２．０ないし５．０の係数を前記幅に乗算した大きさである、ブレーキマスターシリンダー。
2. 前記内面が、実質的に円筒形のボアを画定する請求項１記載のブレーキマスターシリンダー。
3. 二つの前記ランドのそれぞれが、径方向での前記最外表面で長手方向に対して湾曲している請求項１記載のブレーキマスターシリンダー。
4. 前記少なくとも一つのランドが、前記ランドの軸方向長さを規定する二つの縁を有する請求項１記載のブレーキマスターシリンダー。
5. 前記二つの縁はいずれも、前記ボアの中の前記ピストンの往復動の間に前記内面に接触することが不可能である請求項４記載のブレーキマスターシリンダー。
6. 前記係数が３．１ないし３．３である請求項１記載のブレーキマスターシリンダー。
7. 第１及び第２ランドは、一つの長さで離間し、前記係数の前記長さに対する比率は、３．０ないし５．５である請求項１記載のブレーキマスターシリンダー。
8. 離間した前記ランドの一方は、第１ランドであり、離間した前記ランドの他方は、第２ランドであり、
   前記第１ランドは、第１幅を有して、第１半径で長手方向に対して湾曲し、前記第２ランドは、第２幅を有して、第２半径で長手方向に対して湾曲し、
   前記第１半径は、２．０ないし５．０の第１係数を前記第１幅に乗算した大きさであり、前記第２半径は、２．０ないし５．０の第２係数を前記第２幅に乗算した大きさである請求項１記載のブレーキマスターシリンダー。
9. 前記第１係数は前記第１幅に対して３．１ないし３．３であり、前記第２係数は前記第２幅に対して３．１ないし３．３である請求項８記載のブレーキマスターシリンダー。
10. 前記第１及び第２ランドは、一つの長さで離間し、前記第１係数の前記長さに対する第１比率は、３．０ないし５．５であり、前記第２係数の前記長さに対する第２比率は、３．０ないし５．５である請求項９記載のブレーキマスターシリンダー。
11. 前記第１比率は４．０ないし４．５であり、前記第２比率は４．０ないし４．５である請求項１０記載のブレーキマスターシリンダー。
12. ボア軸とボア内径とを有する、ブレーキシリンダーハウジングのボアの中での使用に適合しているピストンであって、
    ピストン軸を有し、前記ブレーキシリンダーハウジングの前記ボアの中で往復動することに適合している本体と、
    前記本体から径方向に延びる二つのランドであり、それぞれ二つの縁を有する湾曲面で径方向で終端して、前記ボア内径よりも小さな直径を有する二つのランドとを備え、
    前記ピストン軸が前記ボア軸に対して前記ボアの中で傾いたときに、各ランドの前記湾曲面は、前記二つの縁が前記ボアに接触することを防止する、ピストン。
13. 前記湾曲面が、部分的にトロイドの形状である、請求項１２記載の、ブレーキシリンダーハウジングのボアの中での使用に適合しているピストン。
14. ボアと、ボア軸と、ボア内径とを規定する内面を有するハウジングと、
    ピストン軸に沿って前記ボアの中で、位置決め可能かつ可動であるピストンとを備え、
    前記ピストンは、前記ピストン軸が前記ボア軸に対して傾くように前記ボアの中で傾くことが可能であり、前記ピストンは、二つの環状部材を含み、二つの前記環状部材は、前記ピストンと前記ボアとの間の接触の点を与え、前記ボア内径よりも小さな直径を有し、部分的にトロイドの形状の径方向での最外表面を有する、ブレーキマスターシリンダー。
15. ボアと、ボア軸と、ボア内径とを規定する内面を有するハウジングと、
    前記ボアの中で位置決め可能かつ可動であるピストンとを備え、
    前記ピストンは、ピストン軸と、本体と、前記本体から径方向に延びる二つの部材とを含み、二つの前記部材は、前記本体から径方向に延び、前記ボア内径よりも小さな直径を有し、二つの縁を有する湾曲面で径方向で終端して、これにより前記ピストン軸が前記ボア軸に対して傾いたときに、前記湾曲面は、前記二つの縁が前記内面に接触することを防止する、ブレーキマスターシリンダー。

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