JP6967331B2 - 重金属類溶出量の測定方法 - Google Patents
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Description
本発明に係る重金属類溶出量の測定方法で用いられる、分析対象試料1から重金属類を迅速に溶出させることができる溶出操作法について説明する。
本発明に係る重金属類溶出量の測定方法で用いられる、溶出液濃度を簡易に分析することができる溶液分析法について説明する。
水として、JIS K 0557 A4グレードなど超純水を使用する。
〈手順1〉複数種類の0.005〜0.05 mg/L As標準液30 mL のそれぞれに0.5 mol/L 酢酸緩衝液(pH4.0)を2 mL 添加する。
〈手順2〉10 mg/L Co標準液を1 mL 添加する。
〈手順3〉30℃に昇温後、キレート剤として1%DBDTC溶液を1 mL 添加し、30秒〜1分間撹拌する。なお、昇温は、具体的には例えば、30℃恒温水槽に10分間程度静置したりバンドヒーターなどを使用したりすることによって行う。
〈手順4〉30℃恒温槽で20分間程度静置する。
〈手順5〉メンブレンフィルタ(具体的には例えば、孔径0.2 μm、φ25 mm)で吸引ろ過する。
〈手順6〉溶出液を入れた容器内の残液を少量の水を使って回収する。
〈手順7〉少量の水により、ろ過に使用したフィルタユニット及びメンブレンフィルタを洗浄する。
〈手順8〉XRF分析装置にセットされて用いられるXRF試料容器に取り付けたプロレンフィルムに、メンブレンフィルタを載せる。この際、XRF試料容器の底にドリルなどで1 mm 程度の穴を1〜2箇所、プロレンフィルムに注射針などで数箇所の穴を開けておく。
〈手順9〉10〜15分間風乾する。
〈手順10〉XRF試料容器の上面にプロレンフィルムを張り、蛍光X線元素分析法で分析する。なお、XRF試料容器の上面に張るプロレンフィルムに穴は開けない。これにより、メンブレンフィルタは、2枚のプロレンフィルムに挟み込まれた形でXRF試料容器に固定される。
〈手順1〉上記「(1)溶出操作法」によって得られた溶出液30 mL に0.1%メチルオレンジ溶液を0.1 mL 添加する。
〈手順2〉スターラで撹拌しながら、橙色になるまで1 mol/L 塩酸を添加する。
〈手順3〉0.5 mol/L 酢酸緩衝液(pH4.0)を2 mL 添加する。
〈手順4〉90〜95℃恒温水槽に10分間程度静置する。
〈手順5〉スターラで撹拌しながら、還元剤としてL−システイン塩酸塩一水和物を0.2 g 添加する。ここで、L−システイン塩酸塩一水和物を添加した際に溶液のpHが2程度に低下するが、発明者らの知見によれば分析結果にはほとんど影響がないため、pHの再調整は行わなくても良い。また、発明者らの知見によると、L−システイン塩酸塩一水和物の代わりにL−システインを0.2 g 添加しても分析結果に差はない。
〈手順6〉90〜95℃恒温水槽に15分間程度静置する。
〈手順7〉氷水中で室温まで冷却する。
〈手順8〉上記「B)検量線(As)」の〈手順2〉乃至〈手順10〉と同様の操作を行う。
XRF分析は例えば以下の条件によって行われる。
i)XRF分析装置:ブルカー・エイエックスエス S2 RANGER LE
ii)管球:Pd
iii)管電圧,管電流:50 kV,1000 μA
iv)1次X線フィルタ(膜厚):Cu(100 μm)
v)測定雰囲気:大気
vi)測定時間:20分
vii)測定ピーク:As Kα,Co Kα(内部標準)
検量線は、As KαとCo Kαとの相対強度(IAs/ICo)が用いられてAs標準液のAs濃度WAsに対する検量線が作成され(具体的には、以下の数式1)、溶出液中のヒ素濃度が算出される(即ち、数式1中のWAsをXAsに置き換えて用いてXAsを算定する)。
ここに、 IAs/ICo:As KαとCo Kαとの蛍光X線の相対強度,
WAs:As標準液のAs濃度,
XAs:溶出液のAs濃度,
a:係数,
b:定数 をそれぞれ表す。
A)試験条件
円筒形容器9の底部・底面の形状の影響を検証するため、円筒形容器9内へと添加(別言すると、投入)される粉砕用メディア8としてジルコニアシリカボール(アズワン株式会社,CZSボール)とガラスビーズ(アズワン株式会社,材質:ソーダガラス)とが用いられると共に、円筒形容器9として底部・底面9aの形状が半球状(別言すると、丸底)の容器(48 mL 遠沈管;Kartell社,型番306)と円錐状の容器(50 mL コニカルチューブ)とが用いられて、それぞれの組み合わせでの測定が設定された。
ア)容器形状について
円筒形容器9の底部・底面の形状の種類と粉砕用メディア8の種類との組み合わせ毎の溶出量値の公定法値に対するSN比及び感度が算出されて表2に示す結果が得られた。
粉砕用メディア8の材質別に、粉砕用メディア8の直径毎の溶出量値の公定法値に対するSN比が算出されて図2に示す結果が得られ、また、感度が算出されて図3に示す結果が得られた。ここでの検討では、感度は、溶出促進効果の指標であると捉えられる。
円筒形容器9の底部・底面9aの形状が半球状(別言すると、丸底)の場合と円錐状の場合とのそれぞれについて、粉砕用メディア8として直径1.2 mm のガラスビーズが用いられると共に偏心振動装置10の回転数2500 rpm,攪拌時間90分で処理した後の石炭灰の粒径の変化の検証が行われた。
A)試験条件
上記(1)において取り上げられたものと同じ6試料(即ち、表1における試料番号10,11,13,15,18,21)について、攪拌時間30分,60分,及び90分経過時それぞれの溶出量の測定が行われた。
ア)攪拌時間について
試料別に、攪拌時間毎の溶出量が測定され、公定法によって得られた値(即ち、公定法値)との比較の結果として図5に示す結果が得られた。
粉砕用メディア8の投入量毎の溶出量値の公定法値に対するSN比及び感度が算出されて表3に示す結果が得られた。
以上の結果も踏まえ、動特性が最も良い直径1.2 mm のガラスビーズと、同条件で粉砕用メディア8の投入量を増加したケースについてより多くの試験用試料(具体的には、18の試料が新たに加えられて合計24試料)で相関性が比較された。
以上の結果から、本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する溶出操作法を、環境庁告示第46号において定められている溶出試験によって得られる溶出量を推定(言い換えると、再現)する手法として用いる場合の好適な溶出操作条件の作業内容は以下の通りであることが確認された。
a)試薬及び溶液調製
i)標準試料
ヒ素(III),ヒ素(V),及びコバルトの標準試料として、1000 mg/L の濃度調製済み市販試薬(具体的には、順に、和光純薬工業 030−16191,メルクミリポア 170303,及び和光純薬工業 033−16181)が用いられ、超純水で適宜希釈されて使用された。
ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム(具体的には、東京化成 D0156)がメタノール(具体的には、和光純薬工業 131−01826)で溶解され、孔径が0.2 μm のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)メンブレンフィルタ(具体的には、フィルタユニット:ADVANTEC 25JP020AN)でろ過されて使用された。
0.5 mol/L 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0及びpH5.0)は、酢酸(具体的には、和光純薬工業 017−00256)及び酢酸ナトリウム(具体的には、和光純薬工業 192−01075)が用いられて0.5 mol/L 酢酸溶液と0.5 mol/L 酢酸ナトリウム溶液とが調製され、適量混合されてpH4.0またはpH5.0に調整された。
L−システイン塩酸塩一水和物とL−システインとについて、市販試薬(具体的には、それぞれ、和光純薬工業 033−05272,039−20652)が使用された。
本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する溶出操作法によって得られる溶出液の量を勘案して検液量が30 mL に設定され、不溶化時のpH及び処理時間の影響が確認された。
〈手順1〉0〜50 μg/L のヒ素(III)標準試料30 mL に対し、緩衝液2 mL,10 mg/L コバルト標準液1 mL を添加する。
〈手順2〉恒温水槽中で30℃に昇温した後、DBDTC溶液1 mL を撹拌しながら添加する。
〈手順3〉所定の時間、30℃で放置して不溶化する。
〈手順4〉生成した不溶化物をメンブレンフィルタ(具体的には、孔径0.2 μm,直径25 mm;ADVANTEC A020A025A)で回収し、超純水で洗浄する。
〈手順5〉洗浄したメンブレンフィルタは、予めXRF試料容器(具体的には、SCP SCIENCE 040−080−046)に取り付けて注射針で数箇所穴を開けたプロレンフィルム(具体的には、SCP SCIENCE 040−070−045)上に置き、10〜15分間風乾する。
〈手順6〉新しいプロレンフィルムでメンブレンフィルタを挟みこむように張り、XRF分析装置で分析する。
XRF分析装置として、具体的には、ブルカー・エイエックスエスのEDXRF−S2 RANGER/LEが使用された。表5に示す測定条件が用いられた。X線管のターゲットはPdであり、管電圧50 kV,管電流1000 μA とされ、一次フィルタに膜厚100 μm のCuが用いられた。測定X線はAs(Kα)と内部標準補正用にCo(Kα)とされ、測定時間は20分とされた。
XRF分析装置で測定されたAs(Kα)とCo(Kα)との相対強度(IAs/ICo)が用いられ、検液のヒ素(III)濃度WAs(III)に対する検量線(具体的には、以下の数式4)が作成された。なお、以下の数式4において、aは係数であり、bは定数である。
(数4) IAs/ICo = a・WAs(III) + b
(数5) LOD = 3σ/a
(数6) LOQ = 10σ/a
石炭灰溶出試験検液中のヒ素の形態別分析に関する既往の知見によると、ヒ素は主としてヒ素(V)の形態で検出される(井野場誠治ほか「石炭灰中の砒素・セレンに関する溶出特性の検討」,電力中央研究所報告,U03064,2004年)が、ヒ素(III)としての存在も報告されている(Turner,R.R.「Oxidation state of arsenic in coal ash leachate」,Envron Sci Technol,15,1062−1066,1981年)。
〈手順1〉ヒ素(V)を含む標準試料30 mL に対して酢酸緩衝液(pH4)2 mL を添加する。
〈手順2〉90〜95℃の恒温水槽中で5〜10分間放置後、撹拌しながらL−システイン塩酸塩一水和物またはL−システインを0.2 g 添加する。
〈手順3〉90〜95℃の恒温水槽中で所定時間、放置する。
〈手順4〉氷水中で室温まで冷却する。
〈手順5〉10 mg/L コバルト標準液1 mL を添加する。
〈手順6〉〜〈手順10〉上記「b)ヒ素標準試料の測定操作」のうちの〈手順2〉〜〈手順6〉と同様の操作を行う。
a)不溶化時の処理時間及びpHの影響
DBDTC溶液による不溶化における反応時間毎の蛍光X線強度(「XRF強度」と表記する)について図7(A)に示す結果が得られ、また、pH毎のXRF強度について同図(B)に示す結果が得られた。
ヒ素(III)とコバルトとの蛍光X線の相対強度(IAs/ICo)とヒ素(III)濃度との検量線が求められて図8に示す結果が得られた。
L−システインは、試薬としてL−システイン塩酸塩一水和物またはL−システインとして入手され得る。L−システイン塩酸塩一水和物を還元剤として使用した場合、pHが低下し、測定値への影響が懸念される。しかしながら、30 μg/L の標準液(試料数n=4)を用いて、L−システインを用いた場合と分析値を比較したところ、双方の分析値は、平均30 μg/L,標準偏差0.4と、平均30 μg/L,標準偏差0.6とであってほとんど変わらず、いずれの試薬を用いても分析値には影響しないことが確認された。そこで、以降は、還元剤としてL−システイン塩酸塩一水和物が使用されて検討が行われた。
a)供試検液
本実施例では、18種類のクリンカアッシュが供試され(尚、6種類については試料数n=2で実施)、環境庁告示第46号に準じた溶出試験(別言すると、溶出操作)によって得られた検液が用いられた。得られた検液のそれぞれが、JIS K0102に準拠した水素化物発生ICP発光分光分析法(「JIS公定法」と呼ぶ)と本発明に係る溶液分析法(「キレート剤捕集/XRF測定法」と呼ぶ)とによってヒ素の濃度が測定された。
本実施例では、クリンカアッシュの溶出試験検液のヒ素測定に対するキレート剤捕集/XRF測定法について図11に示す手順が用いられた。
〈手順1〉検体30 mL に対し、0.1%メチルオレンジ溶液(具体的には、和光純薬工業 132−10783)を0.1 mL 添加し、橙色(即ち、pH3〜pH4)になるまで1 mol/L 塩酸(具体的には、和光純薬工業 083−01095)を添加する。
〈手順2〉0.5 mol/L 酢酸緩衝液(pH4)を2 mL 添加する。
〈手順3〉〜〈実施例7〉実施例1の「b)ヒ素標準試料の測定操作」のうちの〈手順2〉〜〈手順6〉と同様の操作を行う。
a)溶出試験検液の測定結果
18種類のクリンカアッシュから得られた溶出試験検液である24検体について、キレート剤捕集/XRF測定法とJIS公定法とによる測定値の比較として図12に示す結果が得られた。なお、図12中の破線はx=yの直線(即ち、傾きが1であると共に切片が0である直線)を表す。
キレート剤捕集/XRF測定法が本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する溶出操作法と組み合わされてヒ素分析に適用されてクリンカアッシュの判別に利用される場合には、キレート剤捕集/XRF測定法に起因する誤差が考慮されてスクリーニングレベルが設定されることが望ましい。
sy/x:回帰直線の残差の標準偏差,
a:回帰直線の傾き,
n:試料数,
y0:測定値,
y ̄(正しくは、yの直上に ̄が付く):回帰直線の試料測定値の平均,
sxx:回帰直線の試料公定法値の平方和 をそれぞれ表す。
(数9) LOQ = 10・(S)
ここに、 MDL:検出限界,
LOQ:定量下限,
T:スチューデントt値
(ここでは、自由度:試料数n−1,99%信頼レベル),
S:標本標準偏差 をそれぞれ表す。
i)粉砕用メディア8:直径が1.2 mm のガラスビーズ,13 g
ii)攪拌条件:回転数が2500 rpm の偏心振動で攪拌時間が90分
iii)円筒形容器9:底部・底面9aの形状が半球状の円筒形容器(具体的には、48 mL 容量の丸底遠沈管)
2 純水等(純水,超純水,溶出用溶液)
8 粉砕用メディア
9 円筒形容器
9a 底部・底面
9b 蓋
10 偏心振動装置
Claims (10)
- 底が閉塞した半球状の底部の円筒形容器内へと、
粒径が5 mm 以下の分析対象試料と水若しくは溶出用溶液とを投入すると共に、
粒径が0.1〜10 mm の粉砕用メディアを添加し、
偏心振動装置によって与えられる偏心回転によって前記円筒形容器を振動させて前記円筒形容器内の内容物を振動攪拌し、
前記分析対象試料に含まれていた重金属類が溶出している溶出液を得る
ことを特徴とする重金属類溶出量の測定方法。 - 前記分析対象試料が、石炭灰,焼却灰,スラグ類,並びに石炭灰及び焼却灰のセメント固化物のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1記載の重金属類溶出量の測定方法。
- 前記粉砕用メディアの粒径が0.5〜3 mm の範囲であることを特徴とする請求項1記載の重金属類溶出量の測定方法。
- 前記粉砕用メディアの比重が1.0〜4.3 g/cm3 の範囲であることを特徴とする請求項1記載の重金属類溶出量の測定方法。
- 前記円筒形容器の内径が15〜40 mm の範囲であると共に、前記分析対象試料が2〜20 g の範囲であり且つ前記水若しくは前記溶出用溶液が20〜200 mL の範囲であって固液比が10 L/kg であることを特徴とする請求項1記載の重金属類溶出量の測定方法。
- 前記偏心回転させるためのオービット径が3〜5 mm の範囲であると共に、前記偏心回転の回転数が1000〜3000 rpm の範囲であり且つ時間が20〜120分の範囲であることを特徴とする請求項1記載の重金属類溶出量の測定方法。
- 前記溶出液に還元剤を添加した後にキレート剤を添加した上でフィルタでろ過して前記重金属類を捕集し、当該重金属類を捕集した前記フィルタを乾燥させた後に蛍光X線元素分析法によってヒ素含有量を定量することを特徴とする請求項1記載の重金属類溶出量の測定方法。
- 前記還元剤としてL−システインが使用されることを特徴とする請求項7記載の重金属類溶出量の測定方法。
- 前記キレート剤として1%DBDTC溶液が使用されることを特徴とする請求項7記載の重金属類溶出量の測定方法。
- 前記溶出液のpHをメチルオレンジの変色を指標として調整することを特徴とする請求項7記載の重金属類溶出量の測定方法。
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