JP6967331B2 - 重金属類溶出量の測定方法 - Google Patents

重金属類溶出量の測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、重金属類溶出量の測定方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、例えばクリンカアッシュからの重金属類溶出量の測定に用いて好適な技術に関する。
わが国の溶出試験法としては、環境庁告示第46号(土壌環境基準,平成3年;非特許文献1)あるいは環境庁告示第13号(産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法,昭和48年;非特許文献2)による操作が一般的であり、これらの溶出操作による溶出量値が土壌や産業廃棄物の溶出量の指標として広く認知されている。
環境庁告示第46号「土壌環境基準」,環境庁(当時),平成3年 環境庁告示第13号「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」,環境庁(当時),昭和48年
しかしながら、環境庁告示第46号や第13号において定められている溶出試験法では、6時間もの振とう操作が必要とされ、また、作成した検液の測定に高度な技量が必要とされるため、短時間のうちに多くの試料についての測定が必要とされる、特に試料の選別工程での使用には適していないという問題がある。このため、一層短い時間で上記環境庁告示規定の溶出試験法と同等の溶出量値が得られる測定評価技術が望まれる。
そこで、本発明は、分析対象試料から重金属類を迅速に溶出させることができる溶出操作法や溶出液濃度を簡易に分析することができる溶液分析法が組み込まれた重金属類溶出量の測定方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明の重金属類溶出量の測定方法は、底が閉塞した半球状の底部の円筒形容器内へと、粒径が5 mm 以下の分析対象試料と水若しくは溶出用溶液とを投入すると共に、粒径が0.1〜10 mm の粉砕用メディアを添加し、偏心振動装置によって与えられる偏心回転によって円筒形容器を振動させて円筒形容器内の内容物を振動攪拌し、分析対象試料に含まれていた重金属類が溶出している溶出液を得るようにしている。
したがって、この重金属類溶出量の測定方法によると、分析対象試料に含まれている重金属類の溶出操作が迅速に行われる。また、小さなエネルギーの破砕効果が円筒形容器内の分析対象試料の広い粒径範囲に及ぼされてマイルドな破砕が行われる。
本発明における溶出や分析の対象物質は土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)における第二種特定有害物質に該当する物質であり、これら物質のことを本発明の説明では「重金属類」と表記する。本発明における「重金属類」には、具体的には、カドミウム(Cd),六価クロム(Cr(VI)),シアン((CN)2),水銀(Hg),セレン(Se),鉛(Pb),ヒ素(As),フッ素(F),及びホウ素(B)が少なくとも含まれるものとする。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、分析対象試料が、石炭灰,焼却灰,スラグ類,並びに石炭灰及び焼却灰のセメント固化物のうちの少なくとも一つであるようにしても良い。この場合には、石炭灰,焼却灰,スラグ類,石炭灰及び焼却灰のセメント固化物に含まれている重金属類の溶出操作が適切に行われる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、粉砕用メディアの粒径が0.5〜3 mm の範囲であるようにしても良い。この場合には、円筒形容器内の内容物の攪拌が良好に行われると共に分析対象試料の破砕が適切に行われる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、粉砕用メディアの比重が1.0〜4.3 g/cm3 の範囲であるようにしても良い。この場合には、円筒形容器内の内容物の攪拌が良好に行われると共に分析対象試料の破砕が適切に行われる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、円筒形容器の内径が15〜40 mm の範囲であると共に、分析対象試料が2〜20 g の範囲であり且つ水若しくは溶出用溶液が20〜200 mL の範囲であって固液比が10 L/kg であるようにしても良い。この場合には、円筒形容器内の内容物の攪拌が良好に行われると共に分析対象試料の破砕が適切に行われる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、偏心回転させるためのオービット径が3〜5 mm の範囲であると共に、偏心回転の回転数が1000〜3000 rpm の範囲であり且つ時間が20〜120分の範囲であるようにしても良い。この場合には、円筒形容器内の内容物の攪拌が良好に行われると共に分析対象試料の破砕が適切に行われる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、前記溶出液に還元剤を添加した後にキレート剤を添加した上でフィルタでろ過して重金属類を捕集し、当該重金属類を捕集したフィルタを乾燥させた後に蛍光X線元素分析法によってヒ素含有量を定量するようにしても良い。この場合には、分析対象試料に含まれている重金属類の溶出操作に加え、前記重金属類が溶出している溶出液のヒ素溶出量の測定が迅速に行われる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、還元剤としてL−システインが使用されるようにしても良い。この場合には、ヒ素(V)のヒ素(III)への還元が良好に行われる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、キレート剤として1%DBDTC溶液が使用されるようにしても良い。この場合には、ヒ素(III)のキレーションが良好に行われる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、溶出液のpHをメチルオレンジの変色を指標として調整するようにしても良い。この場合には、溶出液のpHの調整が簡便に行われる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法によれば、小さなエネルギーの破砕効果が円筒形容器内の分析対象試料の広い粒径範囲に及ぼされてマイルドな破砕が行われるので、環境庁告示第46号において定められている溶出試験法によるマイルドな破砕効果に近い結果が得られると共に、分析対象試料に含まれている重金属類の溶出操作が迅速に行われ、分析対象試料に含まれている重金属類の分析を短時間で効率的に行うことが可能になる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、円筒形容器,分析対象試料,粉砕用メディア,及び水並びに攪拌・粉砕のための偏心回転に纏わる仕様や設定値などが特定の範囲であるようにした場合には、円筒形容器内の内容物の攪拌を良好に行うと共に分析対象試料の破砕を適切に行うことができるので、真の値からの偏り・ばらつきや誤差を排除して精度の高い測定結果を提供することが可能になる。しかも、環境庁告示第46号において定められている溶出試験法(「環境庁公定法」と呼ぶ)と比べて短時間でありながらも環境庁公定法と同等の溶出操作を行う(言い換えると、当該溶出試験による、分析対象試料からの重金属類の溶出を再現する)ことが可能であり、環境庁公定法による結果を推定することにより、分析対象試料に含まれている重金属類の分析を効率的に行うことが可能になる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、分析対象試料に含まれている重金属類の溶出操作に加えて前記重金属類が溶出している溶出液のヒ素溶出量の測定を迅速に行うことができるので、分析対象試料に含まれているヒ素の定量を短時間で効率的に行うことが可能になる。しかも、JIS K 0102において定められている分析法(「JIS公定法」と呼ぶ)と比べて短時間且つ簡便でありながらもJIS公定法によって算定される溶出量を推定することが可能であり、JIS公定法による結果を推定することにより、分析対象試料に含まれているヒ素量の定量を効率的に行うことが可能になる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、還元剤としてL−システインを使用するようにした場合にはヒ素(V)のヒ素(III)への還元を良好に行うことができ、また、キレート剤として1%DBDTC溶液を使用するようにした場合には、ヒ素(III)のキレーションを良好に行うことができるので、真の値からの偏り・ばらつきや誤差を排除して精度の高い測定結果を提供することが可能になる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法は、メチルオレンジの変色を指標として溶出液のpHを調整するようにした場合には、溶出液のpHの調整を簡便に行うことができるので、蛍光X線元素分析にかかる手間を軽減してヒ素量の定量を効率的に行うことが可能になる。
本発明の重金属類溶出量の測定方法において用いられる偏心振動装置の一例の概略構造を示す前方からの俯瞰図である。 実施例1における粉砕用メディアの材質や直径の違いによる溶出量値の公定法値に対するSN比の変化を示す図である。 実施例1における粉砕用メディアの材質や直径の違いによる溶出量値の公定法値に対する感度の変化を示す図である。 実施例1における円筒形容器の底部・底面の形状の違いによる攪拌後の石炭灰の粒径の変化を示す図である。 実施例1における攪拌時間の違いによる、溶出量値の公定法値に対する相対値の変化を示す図である。 実施例1における公定法値と溶出量値との相関を示す図である。 実施例2における溶液分析条件の違いによる蛍光X線強度の変化を示す図である。(A)はキレート剤の反応時間の違いによる蛍光X線強度の変化を示す図である。(B)は溶出液のpHの違いによる蛍光X線強度の変化を示す図である。 実施例2におけるヒ素(III)とコバルトとの蛍光X線の相対強度とヒ素(III)濃度との検量線を示す図である。 実施例2における還元剤による処理時間の違いによる蛍光X線強度の変化を示す図である。 実施例2におけるヒ素(III)及びヒ素(V)の標準試料の濃度と測定値との相関を示す図である。 実施例3におけるクリンカアッシュの溶出試験検液のヒ素の分析手順を説明するフローチャートである。 実施例3におけるJIS公定法による値と溶出量値との相関を示す図である。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1に、本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の実施形態(具体的には、前記測定方法を実施するために用いられる装置)の一例を示す。
本発明に係る重金属類溶出量の測定方法は、大きくは、分析対象試料から重金属類を溶出させる溶出操作を行う第一段階と、当該溶出操作によって得られる溶出液を用いて分析対象物質としての重金属類の濃度の測定を行う第二段階とからなる。
本実施形態の重金属類溶出量の測定方法は、底(9a)が閉塞した円筒形容器9内へと、粒径が5 mm 以下の分析対象試料1と水若しくは溶出用溶液(2)とを投入すると共に、粒径が0.1〜10 mm の粉砕用メディア8を添加し、その上で偏心回転によって円筒形容器9を振動させて円筒形容器9内の内容物を振動攪拌し、分析対象試料1に含まれていた重金属類が溶出している溶出液を得て、さらに、前記溶出液に還元剤を添加した後にキレート剤を添加した上でフィルタでろ過して重金属類を捕集し、当該重金属類を捕集したフィルタを乾燥させた後に蛍光X線元素分析法によってヒ素含有量を定量するようにしている。
本発明における分析対象試料1としては、具体的には例えば、石炭灰,焼却灰,スラグ類,並びに石炭灰及び焼却灰のセメント固化物などが挙げられる。
石炭灰には、少なくとも、フライアッシュ及びクリンカアッシュが含まれる。
焼却灰には、少なくとも、一般ゴミ焼却灰,下水汚泥焼却灰,ペーパースラッジ焼却灰,鉄鋼ダストが含まれる(但し、上述の石炭灰に該当するものは除く)。
スラグ類には、少なくとも、一般廃棄物溶融固化物(即ち、一般廃棄物を直接に高温条件下で、または一般廃棄物の焼却残渣等を高温条件化で、無機物を溶融した後に冷却して生成される固化物),下水汚泥溶融スラグ,特に製鉄に関連する高炉スラグや製鋼スラグ,非鉄スラグ(具体的には、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、亜鉛スラグ),電気炉スラグ,及び特に発電に関連する石炭ガス化スラグが含まれる。
分析対象試料1は、粒径が5 mm 以下であるように予め(言い換えると、円筒形容器9内へと投入される前に)調整される。
振動攪拌して得られる溶出液に溶出している重金属類(即ち、分析対象試料1にもとより含まれていた重金属類)としては、 カドミウム(Cd),六価クロム(Cr(VI)),シアン((CN)2),水銀(Hg),セレン(Se),鉛(Pb),ヒ素(As),フッ素(F),及びホウ素(B)などが挙げられる。
(1)溶出操作法
本発明に係る重金属類溶出量の測定方法で用いられる、分析対象試料1から重金属類を迅速に溶出させることができる溶出操作法について説明する。
円筒形容器9は、中空円筒形態をベースとし、円筒中心軸方向Dax(別言すると、円筒長手方向)のうちの一端(具体的には、使用時における下端)が閉塞していると共に他端(具体的には、使用時における上端)は開口して(別言すると、開放されて)いる。
円筒形容器9の開口している側の端部(即ち、使用時における上端側)には、当該開口端部を少なくとも内容物が漏れ出ない程度に密閉し得る着脱自在の蓋9bが取り付けられる。
円筒形容器9の大きさは、特定の寸法に限定されるものではないものの、円筒中心軸方向Dax(別言すると、円筒長手方向)と直交する断面における内径が15〜40 mm 程度の範囲のうちのいずれかの寸法に設定されると共に円筒中心軸方向Dax(円筒長手方向)の長さが70〜120 mm 程度の範囲のうちのいずれかの寸法に設定されることが好ましく、特に内径は20〜35 mm 程度の範囲のうちのいずれかの寸法に設定されることが一層好ましい。
円筒形容器9としては、具体的には例えば、遠沈管,試験管,コニカルチューブなどが用いられ得る。
円筒形容器9の閉塞している側の端部9a(即ち、使用時における下端側)は、円筒形容器9の外方へと向けて凸む半球状、別言すると丸底であることが好ましい。
円筒形容器9は、閉塞部分を底とし、円筒中心軸方向Dax(別言すると、円筒長手方向)を上下方向(別言すると、垂直方向)として偏心振動装置10へと設置される。
円筒形容器9内へと投入される水(具体的には、純水,超純水)若しくは溶出用溶液(「純水等2」と表記する)の量は、円筒形容器9内へと投入される分析対象試料1との固液比が考慮され、分析対象試料1の量に応じて調整される。分析対象試料1と純水等2との固液比は例えば10 L/kg 程度になるように調節される。
溶出用溶液としては、例えば、塩酸,硫酸,硝酸,酢酸,酢酸ナトリウム,塩化カルシウム,または水酸化カルシウムを含む液が用いられ得る。
なお、固液比は、本実施形態では、環境庁告示第46号や第13号において定められている試験と同じ条件とすることが考慮されて10 L/kg に設定される。しかしながら、固液比は10 L/kg に限定されるものではなく、仮に公的な基準となる溶出試験法の固液比が10 L/kg 以外の値へと変更された場合には、(1.5〜25 L/kg 程度の範囲内において)変更後の固液比と同じ条件とすることにより、本発明は前記溶出試験法の溶出量値と同じ値を得ることが可能である。
円筒形容器9内へと投入される分析対象試料1及び純水等2の量は、特定の量に限定されるものではないものの、分析対象試料1が2〜20 g 程度の範囲のうちのいずれかの量であると共に(固液比が例えば10 L/kg になるように調節された上で)純水等2が20〜200 mL 程度の範囲のうちのいずれかの量であることが好ましく、分析対象試料1が3.5 g であると共に純水等2が35 mL であることが一層好ましい。
円筒形容器9内の分析対象試料1の粉砕と溶出とを同時に行って溶出所要時間を短縮するために小径の粉砕用メディア8(尚、攪拌用の「ボール」とも呼ばれる)が円筒形容器9内へと添加(別言すると、投入)されて分析対象試料1と一緒に攪拌される。
円筒形容器9内へと添加/投入される粉砕用メディア8としては、球体や円柱体の形態に形成された粒状のものが用いられ、具体的には例えばビーズが用いられる。
粉砕用メディア8の粒径は、特定の寸法に限定されるものではないものの、0.1〜10 mm 程度の範囲に設定されることが好ましく、0.5〜3.0 mm 程度の範囲に設定されることが一層好ましく、0.8〜2.0 mm 程度の範囲に設定されることがより一層好ましく、1.0〜1.2 mm 程度の範囲に設定されることが最も好ましい。なお、粉砕用メディア8として、粒径が異なる複数種類のメディアが用いられるようにしても良い。
粉砕用メディア8の材質としては、具体的には例えば、金属,セラミック,ガラス,樹脂が挙げられる。
粉砕用メディア8としては、比重が1.0〜4.3 g/cm3 程度の範囲であるものが用いられることが好ましく、比重が1.1〜2.7 g/cm3 程度の範囲であるものが用いられることが一層好ましい。なお、粉砕用メディア8として、比重が異なる複数種類のメディアが同時に用いられる(言い換えると、円筒形容器9内へと一緒に投入される)ようにしても良い。
粉砕用メディア8の投入量は、特定の分量に限定されるものではないものの、純水等2の液量[mL]に対する粉砕用メディア8の実体積(即ち、重量/比重)[cm3]が、0.03〜0.5 cm3/mL 程度の範囲のうちのいずれかの分量に設定されることが好ましく、0.08〜0.3 cm3/mL 程度の範囲のうちのいずれかの分量に設定されることが一層好ましく、0.12〜0.25 cm3/mL 程度の範囲のうちのいずれかの分量に設定されることがより一層好ましく、0.146 cm3/mL 程度の分量に設定されることが最も好ましい。
偏心振動装置10は、水平面を軌道とする偏心回転によって円筒形容器9を振動させ、当該円筒形容器9内の内容物(具体的には、分析対象試料1,純水等2,粉砕用メディア8)を攪拌するものである。なお、偏心振動装置10は、「偏心振動方式ミキサ」とも呼ばれる。
偏心振動装置10のオービット径は、3.0〜5.0 mm 程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが好ましく、3.6〜4.1 mm 程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが一層好ましい。
なお、オービット径(即ち、orbital diameter)は、シェイキング径(即ち、shaking diameter)とも呼ばれ、軌道振とう機の振動テーブルが動作する円の直径のことである(例えば、Wolf Klockner et al.「Advances in shaking technologies」,Trends in Biotechnology June 2012,Vol.30,No.6,http://www.cell.com/trends/biotechnology/pdf/S0167-7799(12)00031-5.pdf を参照(図1(a)中のd0がオービット径/シェイキング径である))。
偏心振動装置10の回転数は、1000〜3000 rpm 程度の範囲に設定されることが好ましく、2000〜3000 rpm 程度の範囲に設定されることが一層好ましく、2500 rpm 程度に設定されることが最も好ましい。
偏心振動装置10によって円筒形容器9を振動攪拌する時間は、20〜120分程度の範囲のうちのいずれかの時間に設定されることが好ましく、45〜100分程度の範囲のうちのいずれかの時間に設定されることが一層好ましい。
なお、偏心振動装置10によって円筒形容器9を振動攪拌する時の容器内の温度は、室温が好ましいものの、15〜70℃の範囲内のいずれかの温度に設定されても良い。
振動攪拌後の円筒形容器9内の溶出液が用いられて、 カドミウム(Cd),六価クロム(Cr(VI)),シアン((CN)2),水銀(Hg),セレン(Se),鉛(Pb),ヒ素(As),フッ素(F),及びホウ素(B)のうちの少なくともの一つの物質について溶出量の分析が行われる。
以上のように構成された、重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する溶出操作法によれば、分析対象試料1に含まれている重金属類の溶出操作を迅速に行うことができるので、分析対象試料1に含まれている重金属類の分析を短時間で効率的に行うことが可能になる。
(2)溶液分析法
本発明に係る重金属類溶出量の測定方法で用いられる、溶出液濃度を簡易に分析することができる溶液分析法について説明する。
本発明に係る溶液分析法では、検液(ここでは、具体的には、上述の溶出操作法が実施されることによって得られる溶出液)中のヒ素(具体的には、ヒ素(III)+ヒ素(V))を測定対象とする。
分析手順の概要としては、溶出液中のヒ素は、ジベンジルジチオカルバミン酸(「DBDTC」と表記する)で不溶化し、メンブレンフィルタに捕集したものをエネルギー分散型蛍光X線分析装置(「XRF分析装置」と表記する)で検出して定量化する。なお、ヒ素(V)は、DBDTCで不溶化しないため、前処理としてヒ素(III)に還元して分析する。
A)溶液調製
水として、JIS K 0557 A4グレードなど超純水を使用する。
0.5 mol/L 酢酸溶液(酢酸29.725 g/L)と0.5 mol/L 酢酸ナトリウム溶液(酢酸ナトリウム41.015 g/L)とを混合してpH4.0に調整し、0.5 mol/L 酢酸緩衝液(pH4.0)を調製する。
ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム1 g をメタノールに溶解して100 mL とした上で(尚、完全には溶解しない)フィルタユニットでろ過し、1%DBDTC溶液を調製する。
コバルト(Co)標準液(1000 mg/L)1 mL を水で100 mL に希釈し、10 mg/L Co標準液を調製する。
ヒ素(As)標準液(1000 mg/L)1 mL を水で100 mL に希釈し、10 mg/L As標準液を調製する。
10 mg/L As標準液10 mL を水で100 mL に希釈し、1 mg/L As標準液を調製する。
1 mg/L As標準液0.5〜5 mL を水で100 mL に希釈し、0.005〜0.05 mg/L As標準液を調製する。なお、検量線の作成に必要とされる、濃度が異なる複数種類のAs標準液を調製する。
B)検量線(As)
〈手順1〉複数種類の0.005〜0.05 mg/L As標準液30 mL のそれぞれに0.5 mol/L 酢酸緩衝液(pH4.0)を2 mL 添加する。
〈手順2〉10 mg/L Co標準液を1 mL 添加する。
〈手順3〉30℃に昇温後、キレート剤として1%DBDTC溶液を1 mL 添加し、30秒〜1分間撹拌する。なお、昇温は、具体的には例えば、30℃恒温水槽に10分間程度静置したりバンドヒーターなどを使用したりすることによって行う。
〈手順4〉30℃恒温槽で20分間程度静置する。
〈手順5〉メンブレンフィルタ(具体的には例えば、孔径0.2 μm、φ25 mm)で吸引ろ過する。
〈手順6〉溶出液を入れた容器内の残液を少量の水を使って回収する。
〈手順7〉少量の水により、ろ過に使用したフィルタユニット及びメンブレンフィルタを洗浄する。
〈手順8〉XRF分析装置にセットされて用いられるXRF試料容器に取り付けたプロレンフィルムに、メンブレンフィルタを載せる。この際、XRF試料容器の底にドリルなどで1 mm 程度の穴を1〜2箇所、プロレンフィルムに注射針などで数箇所の穴を開けておく。
〈手順9〉10〜15分間風乾する。
〈手順10〉XRF試料容器の上面にプロレンフィルムを張り、蛍光X線元素分析法で分析する。なお、XRF試料容器の上面に張るプロレンフィルムに穴は開けない。これにより、メンブレンフィルタは、2枚のプロレンフィルムに挟み込まれた形でXRF試料容器に固定される。
C)溶出操作法によって得られた溶出液の定量
〈手順1〉上記「(1)溶出操作法」によって得られた溶出液30 mL に0.1%メチルオレンジ溶液を0.1 mL 添加する。
〈手順2〉スターラで撹拌しながら、橙色になるまで1 mol/L 塩酸を添加する。
〈手順3〉0.5 mol/L 酢酸緩衝液(pH4.0)を2 mL 添加する。
〈手順4〉90〜95℃恒温水槽に10分間程度静置する。
〈手順5〉スターラで撹拌しながら、還元剤としてL−システイン塩酸塩一水和物を0.2 g 添加する。ここで、L−システイン塩酸塩一水和物を添加した際に溶液のpHが2程度に低下するが、発明者らの知見によれば分析結果にはほとんど影響がないため、pHの再調整は行わなくても良い。また、発明者らの知見によると、L−システイン塩酸塩一水和物の代わりにL−システインを0.2 g 添加しても分析結果に差はない。
〈手順6〉90〜95℃恒温水槽に15分間程度静置する。
〈手順7〉氷水中で室温まで冷却する。
〈手順8〉上記「B)検量線(As)」の〈手順2〉乃至〈手順10〉と同様の操作を行う。
D)蛍光X線元素分析(「XRF分析」と表記する)の条件
XRF分析は例えば以下の条件によって行われる。
i)XRF分析装置:ブルカー・エイエックスエス S2 RANGER LE
ii)管球:Pd
iii)管電圧,管電流:50 kV,1000 μA
iv)1次X線フィルタ(膜厚):Cu(100 μm)
v)測定雰囲気:大気
vi)測定時間:20分
vii)測定ピーク:As Kα,Co Kα(内部標準)
E)ヒ素濃度計算
検量線は、As KαとCo Kαとの相対強度(IAs/ICo)が用いられてAs標準液のAs濃度WAsに対する検量線が作成され(具体的には、以下の数式1)、溶出液中のヒ素濃度が算出される(即ち、数式1中のWAsをXAsに置き換えて用いてXAsを算定する)。
(数1) IAs/ICo = a・WAs + b
ここに、 IAs/ICo:As KαとCo Kαとの蛍光X線の相対強度,
As:As標準液のAs濃度,
As:溶出液のAs濃度,
a:係数,
b:定数 をそれぞれ表す。
なお、XRF分析装置の使用時にエネルギー補正とドリフト補正との必要性を確認し、XRF分析装置の状態が大きく変わらない場合は分析毎の検量線の作成や重なり補正係数の算出は不要である。
以上のように構成された、重金属類溶出量の測定方法の第二段階に相当する溶液分析法によれば、分析対象試料1に含まれている重金属類が溶出している溶出液のヒ素溶出量の測定を迅速に行うことができるので、分析対象試料1に含まれているヒ素の定量を短時間で効率的に行うことが可能になる。上記溶液分析法によれば、しかも、少ない溶出液量でも分析が可能であるので、重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する上述の溶出操作法と組み合わせ用いることも可能であり、重金属類溶出量の測定方法全体としての所要時間を短縮することが可能になる。上記溶液分析法は、その上、感度が良好であるので、分析対象試料1に含まれているヒ素量を詳細に測定することが可能である。
ここで、本発明に係る重金属類溶出量の測定方法によれば環境庁告示第46号において定められている溶出試験によって得られる溶出量を良好な精度で推定(言い換えると、再現)することができるので、本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の活用方法として、具体的には例えば、出荷する際のクリンカアッシュについて、土壌環境基準値よりも溶出量が確実に小さい検体の判別に適用することが挙げられる。
なお、上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態では分析対象試料1から重金属類を溶出させる溶出操作法と当該溶出操作法によって得られる溶出液の濃度を分析する溶液分析法とが組み合わされて用いられるようにしているが、本発明に係る重金属類溶出量の測定方法は上述の実施形態のうちの溶出操作法を必須の構成とし、溶液分析法は本発明に係る重金属類溶出量の測定方法としては必須の構成ではない。例えば、上述の実施形態のうちの溶出操作法が行われた上で、上述の実施形態のうちの溶液分析法の代わりに、JIS K 0102に準拠した方法によって溶出量の分析が行われるようにしても良い。
本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する溶出操作法を、環境庁告示第46号において定められている溶出試験によって得られる溶出量を推定(言い換えると、再現)する方法として用いた場合の妥当性を検証した実施例を図2乃至図6も用いて説明する。
本実施例では、28種類のクリンカアッシュが試験用試料として用いられた。全ての試験用試料について蛍光X線元素分析法(「XRF分析法」と表記する)による主要成分濃度の測定が行われ、表1に示す結果が得られた。
Figure 0006967331
また、全ての試験用試料について環境庁告示第46号において定められている溶出試験が行われ、ヒ素,セレン,六価クロム,フッ素,及びホウ素について溶出量の分析が行われた。溶出量の分析はJIS K 0102に準拠して行われた。環境庁告示第46号及びJIS K 0102に準拠する溶出・分析法のことを「公定法」と呼び、公定法によって得られる各成分の濃度の値のことを「公定法値」と呼ぶ。
本実施例では、分析対象試料1と共に粉砕用メディア8を攪拌するための偏心振動装置10(図1参照)として、米国Scientific Industries社のSI−A286が用いられた。当該装置は、偏心振動を円筒形容器9に与えることによって容器内の内容物を攪拌する機構を有している。
偏心振動を円筒形容器9に与えるために、上記装置のアタッチメントの一つである50 mL 遠沈管用アダプタSI−V203が用いられた。
偏心振動装置10の回転数は、円筒形容器9内の内容物の攪拌を良好に行うことを考慮し、2500 rpm に設定された。
(1)円筒形容器9の底部・底面の形状及び粉砕用メディアの種類の影響の検証
A)試験条件
円筒形容器9の底部・底面の形状の影響を検証するため、円筒形容器9内へと添加(別言すると、投入)される粉砕用メディア8としてジルコニアシリカボール(アズワン株式会社,CZSボール)とガラスビーズ(アズワン株式会社,材質:ソーダガラス)とが用いられると共に、円筒形容器9として底部・底面9aの形状が半球状(別言すると、丸底)の容器(48 mL 遠沈管;Kartell社,型番306)と円錐状の容器(50 mL コニカルチューブ)とが用いられて、それぞれの組み合わせでの測定が設定された。
試験用試料として、環境庁告示第46号において定められている方法の前処理工程と同様に風乾後、粒径が2 mm 以下に調整されたものが用いられた。円筒形容器9への投入量は、試験用試料が3.5 g とされ、純水等2が35 mL とされた。
水質分析はJIS K 0102に準拠して実施された(尚、断りの無い限り、実施例1における全ての水質分析に加えて実施例2以降の実施例における水質分析も同様である)。
粉砕用メディア8の投入量は、粉砕用メディア8の実体積(即ち、重量/比重)が5.1 cm3 になるように設定された(これは、純水等2の液量[mL]に対する粉砕用メディア8の実体積(即ち、重量/比重)[cm3]に換算すると約0.146 cm3/mL に相当する;尚、断りの無い限り、実施例1における全ての測定に加えて実施例2以降の実施例における測定も同条件で実施された)。
また、粉砕用メディア8の種類の影響を検証するため、ジルコニアシリカボール(同前),ジルコニアボール(株式会社ニッカトー,YTZボール),及びガラスビーズ(同前)の三種の粉砕用メディア8が用いられた。そして、粉砕用メディア8の種類それぞれに対して複数の直径の条件(具体的には、ジルコニアシリカボールについて3種類,ガラスビーズについて8種類,及びジルコニアボールについて3種類)が設定され、代表的な6試料(具体的には、表1における試料番号10,11,13,15,18,21)を対象として溶出操作が行われた。
上記溶出操作によって得られた溶出量値と公定法値との間の関係から、上記のように設定されたケースのそれぞれについての公定法値の予測性能が評価された。
公定法値の予測性能の評価指標として、品質工学分野で用いられる田口の動特性(田口玄一ほか「ベーシックオフライン品質工学」,日本規格協会,2007年)のSN比η(具体的には、以下の数式2によって算出される)と感度S(具体的には、以下の数式3によって算出される)とが用いられた。
Figure 0006967331
ここに、 η:SN比,
r:有効序数,
β:入力の効果,
:誤差分散 をそれぞれ表す。
Figure 0006967331
ここに、 S:感度,
β:入力の効果,
:誤差分散,
r:有効序数 をそれぞれ表す。
B)試験結果
ア)容器形状について
円筒形容器9の底部・底面の形状の種類と粉砕用メディア8の種類との組み合わせ毎の溶出量値の公定法値に対するSN比及び感度が算出されて表2に示す結果が得られた。
Figure 0006967331
表2に示す結果から、粉砕用メディア8としてジルコニアシリカボール(CZSボール)が用いられる場合とガラスビーズが用いられる場合とのどちらの場合も、底部・底面の形状が半球状の容器が用いられる場合のSN比の方が大きいことが確認された。
この原因は、クリンカアッシュと粉砕用メディア8との混合物の流動性に関係するものと考えられた。すなわち、クリンカアッシュの粒子形状の特性に起因してクリンカアッシュを含んだ混合物の流動性は十分に良いとは言えず、攪拌中の目視での観察結果では底部・底面の形状が円錐状の容器(具体的には、コニカルチューブ)を用いた場合には下部先端部に混合物が滞留しているケースが見られたことから、この現象が再現精度に影響している可能性が考えられた。
上記の結果を踏まえ、以降では、底部・底面の形状が半球状の容器が用いられた場合の検証結果を示す。
イ)粉砕用メディア8の材質・直径について
粉砕用メディア8の材質別に、粉砕用メディア8の直径毎の溶出量値の公定法値に対するSN比が算出されて図2に示す結果が得られ、また、感度が算出されて図3に示す結果が得られた。ここでの検討では、感度は、溶出促進効果の指標であると捉えられる。
図2に示す結果から、SN比の算定結果では、粉砕用メディア8としてジルコニアシリカボール(CZSボール)が用いられる場合とガラスビーズが用いられる場合とが動特性が比較的良い結果(即ち、高い値)であり、これに対してジルコニアボール(YTZボール)が用いられる場合は動特性が悪い(即ち、低い値)ことが確認された。品質工学における動特性の評価は、SN比の値が第一の選択基準であることから、図2に示すSN比の結果からジルコニアボールは本発明における粉砕用メディア8としては適当でないことが確認された。
また、図3に示す結果から、溶出促進効果の指標である感度について、ジルコニアシリカボールが用いられた場合が最も小さい値であることが確認された。感度については、感度が過小である場合は水質分析操作工程の誤差を受け易くなり、一方で過大になることは溶出プロセスが実現象から乖離することにつながるため、実用上予測のための回帰式の勾配は1(即ち、感度=0)付近であることが望ましい。
以上のことから、粉砕用メディア8の種類はガラスビーズが好ましく、また、粉砕用メディア8の直径は、0.8〜2.0 mm 程度の範囲であることが好ましく、1.0〜1.2 mm 程度の範囲であることが一層好ましく、1.2 mm 程度であることが最も好ましいことが確認された。
C)追加試験
円筒形容器9の底部・底面9aの形状が半球状(別言すると、丸底)の場合と円錐状の場合とのそれぞれについて、粉砕用メディア8として直径1.2 mm のガラスビーズが用いられると共に偏心振動装置10の回転数2500 rpm,攪拌時間90分で処理した後の石炭灰の粒径の変化の検証が行われた。
円筒形容器9の底部・底面の形状別に、上記処理後の石炭灰の粒径の変化として図4に示す結果が得られた。なお、図4中の「オリジナルの粒径分布」は、振動攪拌処理前の石炭灰の粒径の分布である。
図4に示す結果から、底部・底面の形状が円錐状の容器による粉砕は20〜70 μm の範囲の粒子への破砕効果が顕著であり且つ100 μm 以上の粒子にも破砕効果が見られるのに対し、底部・底面の形状が半球状の容器による粉砕は100 μm 以上の粒子への影響は小さく且つ20〜70 μm の範囲の粒子への破砕効果も小さいことが確認された。
このように底部・底面の形状が半球状の容器の場合には、小さなエネルギーの破砕効果が広い粒径範囲に及ぼされることにより、環境庁告示第46号において定められている溶出試験法によるマイルドな破砕効果に近い結果が得られることが確認された。この違いは、底部・底面の形状が円錐状の容器は内部先端部(別言すると、下端部)で圧縮力が相対的に強く働くことによる。
(2)攪拌時間及び粉砕用メディアの投入量の影響の検証
A)試験条件
上記(1)において取り上げられたものと同じ6試料(即ち、表1における試料番号10,11,13,15,18,21)について、攪拌時間30分,60分,及び90分経過時それぞれの溶出量の測定が行われた。
また、粉砕用メディア8として直径1.2 mm のガラスビーズが用いられて、粉砕用メディア8の投入量を4段階に変化させた場合のそれぞれについて、溶出量の測定が行われた。
B)試験結果
ア)攪拌時間について
試料別に、攪拌時間毎の溶出量が測定され、公定法によって得られた値(即ち、公定法値)との比較の結果として図5に示す結果が得られた。
図5に示す結果から、溶出量の経時変化は試料によって状況が異なるものの、例えば試料番号10の試料のように溶出が緩慢な試料もあることから、公定法相当の溶出量を再現するためには少なくとも90分程度は攪拌することが好ましいことが確認された。
イ)粉砕用メディア8の投入量(「ボール量」とも表記する)について
粉砕用メディア8の投入量毎の溶出量値の公定法値に対するSN比及び感度が算出されて表3に示す結果が得られた。
Figure 0006967331
表3に示す結果から、ボール量6.5 g の場合は、ボール無し(即ち、0.0 g)の場合のSN比に近いことから、十分な攪拌・粉砕効果が得られていないことが確認された。また、ボール量13 g の場合においてSN比が最も大きく、ボール量19.5 g の場合は感度は増加するもののSN比は若干低下することが確認された。
表3に示す結果から、ボール量は13 g 付近の条件が好適であると予測されるものの、19.5 g の場合の結果との差が僅少であることから、ボール量が19.5 g 付近の条件も好適な範囲であることが確認された。
C)追加試験
以上の結果も踏まえ、動特性が最も良い直径1.2 mm のガラスビーズと、同条件で粉砕用メディア8の投入量を増加したケースについてより多くの試験用試料(具体的には、18の試料が新たに加えられて合計24試料)で相関性が比較された。
攪拌条件は偏心振動装置10の回転数2500 rpm 且つ攪拌時間90分で、円筒形容器9としては底部・底面9aの形状が半球状の遠沈管が使用された。
比較ケースとして、粉砕用メディア8として直径1 mm のジルコニアボール(YTZボール)が用いられる場合と、粉砕用メディア8を投入せずに攪拌した場合とのそれぞれについて、公定法値との相関が求められた。
粉砕用メディア8の条件(具体的には、種類,直径,投入量)毎に公定法値との相関が求められ、表4に示す結果が得られた。なお、表4中の「ボール無し」は、粉砕用メディア8を投入しない場合のことである。
Figure 0006967331
表4に示す結果から、粉砕用メディア8として直径1.2 mm のガラスビーズが13 g 投入される攪拌条件が最も高い相関性を示すことが確認された。
上記攪拌条件下で更に4試料が追加された合計28試料毎の溶出量値と公定法値との相関が求められて図6に示す結果が得られた。なお、図6中の「開発法溶出量」は本発明に係る溶出操作法によって得られた溶出量のことであり、「公定法溶出量」は公定法によって得られた溶出量のことである。また、図6中の破線はx=yの直線(即ち、傾きが1であると共に切片が0である直線)を表す。
図6に示す結果から、相関の決定係数r2は0.9814であり、標準誤差/X係数の値は1.25 μg/L の精度が達成されることが確認された。
(3)推定/再現方法の内容
以上の結果から、本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する溶出操作法を、環境庁告示第46号において定められている溶出試験によって得られる溶出量を推定(言い換えると、再現)する手法として用いる場合の好適な溶出操作条件の作業内容は以下の通りであることが確認された。
i)円筒形容器9として底部・底面9aの形状が半球状(別言すると、丸底)の容器(具体的には例えば、Kartell社,48 mL 容量の丸底遠沈管,型番306)が用いられ、分析対象試料1など下記の材料が投入された後に蓋がされて密閉される。
ii)分析対象試料1として、風乾後に2 mm 以下に粒度調整された3.5 g のクリンカアッシュが円筒形容器9内へと投入される。
iii)粉砕用メディア8として、直径が1.2 mm のガラスビーズ(材質:ソーダガラス)が13.0 g 円筒形容器9内へと投入される。
iv)純水等2として、35 mL の純水が円筒形容器9内へと投入される。
v)偏心振動装置10(具体的には例えば、米国Scientific Industries社のSI−A286ミキサと円筒形容器9がセットされて前記ミキサに接続される50 mL 遠沈管用アダプタSI−V203との組み合わせ)により、回転数2500 rpm で90分間攪拌される。
vi)攪拌終了後直ちに0.45 μm メンブレンフィルタによって内容物がろ過される。
vii)濾液中のヒ素などの濃度が定量される。
なお、上記の操作によって回収可能な液量は30〜32 mL 程度になる。
本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第二段階に相当する溶液分析法を、本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する溶出操作法によって得られる溶出液を用いて分析対象物質としてのヒ素の濃度を測定する方法として用いた場合の妥当性を検証した実施例を図7乃至図10を用いて説明する。
A)試験方法
a)試薬及び溶液調製
i)標準試料
ヒ素(III),ヒ素(V),及びコバルトの標準試料として、1000 mg/L の濃度調製済み市販試薬(具体的には、順に、和光純薬工業 030−16191,メルクミリポア 170303,及び和光純薬工業 033−16181)が用いられ、超純水で適宜希釈されて使用された。
ii)1 w/v% ジベンジルジチオカルバミン酸溶液(「DBDTC溶液」と表記する)
ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム(具体的には、東京化成 D0156)がメタノール(具体的には、和光純薬工業 131−01826)で溶解され、孔径が0.2 μm のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)メンブレンフィルタ(具体的には、フィルタユニット:ADVANTEC 25JP020AN)でろ過されて使用された。
iii)緩衝液
0.5 mol/L 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0及びpH5.0)は、酢酸(具体的には、和光純薬工業 017−00256)及び酢酸ナトリウム(具体的には、和光純薬工業 192−01075)が用いられて0.5 mol/L 酢酸溶液と0.5 mol/L 酢酸ナトリウム溶液とが調製され、適量混合されてpH4.0またはpH5.0に調整された。
0.5 mol/L リン酸緩衝液(pH2.0及びpH3.0)は、0.5 mol/L リン酸溶液と0.5 mol/L リン酸水素一ナトリウム溶液とが適量混合されてpH2.0及びpH3.0に調整された。
0.5 mol/L MOPS緩衝液(pH7.0)と0.5 mol/L MES緩衝液(pH6.0)とは、それぞれ、MOPS溶液,MES溶液が水酸化ナトリウムでpH7.0,pH6.0に調整され、終濃度が0.5 mol/L に調製された。
iv)その他試薬
L−システイン塩酸塩一水和物とL−システインとについて、市販試薬(具体的には、それぞれ、和光純薬工業 033−05272,039−20652)が使用された。
b)ヒ素標準試料の測定操作
本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する溶出操作法によって得られる溶出液の量を勘案して検液量が30 mL に設定され、不溶化時のpH及び処理時間の影響が確認された。
操作手順は以下の通りである。
〈手順1〉0〜50 μg/L のヒ素(III)標準試料30 mL に対し、緩衝液2 mL,10 mg/L コバルト標準液1 mL を添加する。
〈手順2〉恒温水槽中で30℃に昇温した後、DBDTC溶液1 mL を撹拌しながら添加する。
〈手順3〉所定の時間、30℃で放置して不溶化する。
〈手順4〉生成した不溶化物をメンブレンフィルタ(具体的には、孔径0.2 μm,直径25 mm;ADVANTEC A020A025A)で回収し、超純水で洗浄する。
〈手順5〉洗浄したメンブレンフィルタは、予めXRF試料容器(具体的には、SCP SCIENCE 040−080−046)に取り付けて注射針で数箇所穴を開けたプロレンフィルム(具体的には、SCP SCIENCE 040−070−045)上に置き、10〜15分間風乾する。
〈手順6〉新しいプロレンフィルムでメンブレンフィルタを挟みこむように張り、XRF分析装置で分析する。
c)XRF分析装置と測定条件
XRF分析装置として、具体的には、ブルカー・エイエックスエスのEDXRF−S2 RANGER/LEが使用された。表5に示す測定条件が用いられた。X線管のターゲットはPdであり、管電圧50 kV,管電流1000 μA とされ、一次フィルタに膜厚100 μm のCuが用いられた。測定X線はAs(Kα)と内部標準補正用にCo(Kα)とされ、測定時間は20分とされた。
Figure 0006967331
d)検量線,検出限界,及び定量下限
XRF分析装置で測定されたAs(Kα)とCo(Kα)との相対強度(IAs/ICo)が用いられ、検液のヒ素(III)濃度WAs(III)に対する検量線(具体的には、以下の数式4)が作成された。なお、以下の数式4において、aは係数であり、bは定数である。
(数4) IAs/ICo = a・WAs(III) + b
検出限界LOD及び定量下限LOQは、検量線の傾きaと検量線の残差の標準偏差σとが用いられて、以下の数式5,数式6によってそれぞれ求められた。
(数5) LOD = 3σ/a
(数6) LOQ = 10σ/a
e)ヒ素(V)の還元処理
石炭灰溶出試験検液中のヒ素の形態別分析に関する既往の知見によると、ヒ素は主としてヒ素(V)の形態で検出される(井野場誠治ほか「石炭灰中の砒素・セレンに関する溶出特性の検討」,電力中央研究所報告,U03064,2004年)が、ヒ素(III)としての存在も報告されている(Turner,R.R.「Oxidation state of arsenic in coal ash leachate」,Envron Sci Technol,15,1062−1066,1981年)。
このため、本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する溶出操作法によって得られる溶出液のヒ素濃度は、ヒ素(V)とヒ素(III)との合計として測定する必要がある。一方、ヒ素(V)とヒ素(III)とでは、DBDTC溶液による不溶化の条件が異なるため、全ヒ素の測定にはヒ素(V)をヒ素(III)に還元する必要がある。
ヒ素(V)の還元処理として、L−システインを用い(舟山剛史ほか「メンブレンフィルターへの固相抽出によるAs(III)及びAs(V)の目視分別分析」,分析化学,62,685−691,2013年 など)、必要な処理時間の検証が行われた。
還元処理を含むヒ素(V)の測定手順は以下の通りである。
〈手順1〉ヒ素(V)を含む標準試料30 mL に対して酢酸緩衝液(pH4)2 mL を添加する。
〈手順2〉90〜95℃の恒温水槽中で5〜10分間放置後、撹拌しながらL−システイン塩酸塩一水和物またはL−システインを0.2 g 添加する。
〈手順3〉90〜95℃の恒温水槽中で所定時間、放置する。
〈手順4〉氷水中で室温まで冷却する。
〈手順5〉10 mg/L コバルト標準液1 mL を添加する。
〈手順6〉〜〈手順10〉上記「b)ヒ素標準試料の測定操作」のうちの〈手順2〉〜〈手順6〉と同様の操作を行う。
B)試験結果
a)不溶化時の処理時間及びpHの影響
DBDTC溶液による不溶化における反応時間毎の蛍光X線強度(「XRF強度」と表記する)について図7(A)に示す結果が得られ、また、pH毎のXRF強度について同図(B)に示す結果が得られた。
図7(A)に示す結果から、実施した範囲の反応時間(具体的には、5分〜30分)では、As(Kα)のXRF強度にほとんど影響がないことが確認された。
図7(B)に示す結果から、pHの影響について、ヒ素(III)はpH2〜pH6の範囲で高いXRF強度が得られ、大きな差はないものの、pH7で急激に低下することが確認された。
一方、ヒ素(V)は、pH2〜pH5の条件ではほとんど不溶化しないことが確認された。pH6の条件では、ヒ素(III)とヒ素(V)との双方で高いXRF強度が得られたものの、許容されるpH範囲が狭いために検液中の全ヒ素を測定するために事前にヒ素(V)の還元が行われることが望ましいと考えられた。
以上から、キレート剤の処理条件について、表6に示すように設定されることが好ましいことが確認された。
Figure 0006967331
本実施例では、pHは、酢酸緩衝液が用いられてpH4とされた。ヒ素(III)の測定ではpH2〜pH6の範囲で影響しないことが確認されたが、6価クロムではpH4以下が望ましいことが確認されており(渡辺勇「ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウムを沈殿剤として用いた地下水中の微量クロム(VI)の蛍光X線分析法による定量」,分析化学,40,T25−T29,1991年 など)、同一検体による多元素分析の実施を踏まえるとpH4程度が好ましいと考えられた。
コバルト標準液は、不溶化物のろ過時にメンブレンフィルタの目詰まり防止のために共沈剤として添加されるが、同時に、内部標準として利用される。
b)検量線,検出限界,及び定量下限
ヒ素(III)とコバルトとの蛍光X線の相対強度(IAs/ICo)とヒ素(III)濃度との検量線が求められて図8に示す結果が得られた。
図8に示す結果から、検量線は、相関の決定係数r2が0.99以上のものとして求められ、良好な直線関係が確認された。
定量下限及び検出限界が検量線の残差標準偏差から算出され、それぞれ4 μg/L 及び1 μg/L であった。定量下限は、土壌環境基準(具体的には、Asについて0.01 mg/L 以下;環境庁(当時)「環境庁告示第46号『土壌環境基準』」,1991年)の1/2以下であり、少なくとも東京都による簡易分析法としての選定基準(即ち、土壌調査に用いる簡易分析法に関して東京都環境局が2005年〜2009年に実用段階にある重金属の分析技術を一般から公募した際の選定基準)を満たすことが確認された。
また、30 μg/L の標準液について5回繰り返して測定された変動係数は3.3%であり、十分な精度が確保されていることが確認された。
回帰直線の予測区間の99%上限が求められ(厚生労働省医薬食品***監視安全課「食品中の放射性セシウムスクリーニング法」,2012年)、土壌環境基準値である0.01 mg/L 以下を判定するためには8.3 μg/L の定量を確保する必要があることが導き出された。定量限界はこれよりも低く、溶出試験のヒ素の判定に適用できることが確認された。
c)ヒ素(V)の還元処理による全ヒ素の分析
L−システインは、試薬としてL−システイン塩酸塩一水和物またはL−システインとして入手され得る。L−システイン塩酸塩一水和物を還元剤として使用した場合、pHが低下し、測定値への影響が懸念される。しかしながら、30 μg/L の標準液(試料数n=4)を用いて、L−システインを用いた場合と分析値を比較したところ、双方の分析値は、平均30 μg/L,標準偏差0.4と、平均30 μg/L,標準偏差0.6とであってほとんど変わらず、いずれの試薬を用いても分析値には影響しないことが確認された。そこで、以降は、還元剤としてL−システイン塩酸塩一水和物が使用されて検討が行われた。
ヒ素(V)の還元処理に対する反応時間の影響として、還元剤による処理時間毎の蛍光X線強度について図9に示す結果が得られた。
図9に示す結果から、処理時間が15分〜25分においてX線強度が高いことが確認された。このときの収率は97.1〜101.3%であって十分高く、処理時間としては十分であることが確認された。
以降のヒ素(V)の還元処理では、反応時間は15分に設定され、他の条件も含めて表6に整理した条件が用いられた。
表6の条件による還元処理が実施され、ヒ素(III)及びヒ素(V)の標準試料による測定が行われて図10に示す結果が得られた。なお、図10中の破線はx=yの直線(即ち、傾きが1であると共に切片が0である直線)を表す。
図10に示す結果から、ヒ素(V)では、標準試料濃度と測定値との間に傾きが1.005で相関の決定係数r2が0.99以上の高い直線性が得られることが確認された。また、収率は平均で103.1%と高く、還元処理が十分に行われていることが確認された。
一方、ヒ素(III)の標準液に対して同様に還元処理が行われ、傾きが1.041で相関の決定係数r2が0.99以上と高い相関が維持されており、測定値に影響がないことが確認された。
以上の結果から、ヒ素(V)とヒ素(III)とを含む検液に対してL−システインによる還元処理を実施することで、検液中の全ヒ素として測定することが可能であることが確認された。また、ヒ素(III)を測定後、還元処理してヒ素(V)を測定することで、ヒ素(V)とヒ素(III)との形態別の濃度測定も可能であることが推認された。
本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第二段階に相当する溶液分析法を、JIS K 0102において定められている分析方法によって得られる分析対象物質の濃度を再現する方法として用いた場合の妥当性を検証した実施例を図11及び図12を用いて説明する。
A)試験方法
a)供試検液
本実施例では、18種類のクリンカアッシュが供試され(尚、6種類については試料数n=2で実施)、環境庁告示第46号に準じた溶出試験(別言すると、溶出操作)によって得られた検液が用いられた。得られた検液のそれぞれが、JIS K0102に準拠した水素化物発生ICP発光分光分析法(「JIS公定法」と呼ぶ)と本発明に係る溶液分析法(「キレート剤捕集/XRF測定法」と呼ぶ)とによってヒ素の濃度が測定された。
b)分析手順
本実施例では、クリンカアッシュの溶出試験検液のヒ素測定に対するキレート剤捕集/XRF測定法について図11に示す手順が用いられた。
検液量は30 mL とされ、検液のpHがメチルオレンジの変色を指標として調整されてヒ素濃度の測定に供された。
操作手順は以下の通りに設定された。
〈手順1〉検体30 mL に対し、0.1%メチルオレンジ溶液(具体的には、和光純薬工業 132−10783)を0.1 mL 添加し、橙色(即ち、pH3〜pH4)になるまで1 mol/L 塩酸(具体的には、和光純薬工業 083−01095)を添加する。
〈手順2〉0.5 mol/L 酢酸緩衝液(pH4)を2 mL 添加する。
〈手順3〉〜〈実施例7〉実施例1の「b)ヒ素標準試料の測定操作」のうちの〈手順2〉〜〈手順6〉と同様の操作を行う。
B)試験結果
a)溶出試験検液の測定結果
18種類のクリンカアッシュから得られた溶出試験検液である24検体について、キレート剤捕集/XRF測定法とJIS公定法とによる測定値の比較として図12に示す結果が得られた。なお、図12中の破線はx=yの直線(即ち、傾きが1であると共に切片が0である直線)を表す。
図12に示す結果から、双方の測定値同士の相関について、傾きが1.03で相関の決定係数r2が0.993の直線が得られ、高い相関が確認された。
b)溶出操作法への適用性とスクリーニングレベル
キレート剤捕集/XRF測定法が本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する溶出操作法と組み合わされてヒ素分析に適用されてクリンカアッシュの判別に利用される場合には、キレート剤捕集/XRF測定法に起因する誤差が考慮されてスクリーニングレベルが設定されることが望ましい。
しかしながら、本発明に係る溶出操作法で得られる検液量は少量であるため、キレート剤捕集/XRF測定法とJIS公定法との双方の分析に検液を供試することができない。
このため、図6及び図12の回帰直線が利用され、モンテカルロ法により、本発明に係る溶出操作法によって得られる溶出液のヒ素分析にキレート剤捕集/XRF測定法が適用された場合の溶出液中のヒ素濃度分布の99%上限が0.01 mg/L となるヒ素濃度の測定値が推定された。
各回帰直線からの推定値は、以下の数式7によって算定される標準偏差sをもつ正規分布に従うと仮定された(Miller J N et al.著,宗森信ほか訳「データのとり方とまとめ方 第2版」,共立出版,2004年)。
Figure 0006967331
ここに、 s:標準偏差,
y/x:回帰直線の残差の標準偏差,
a:回帰直線の傾き,
n:試料数,
0:測定値,
y ̄(正しくは、yの直上に ̄が付く):回帰直線の試料測定値の平均,
xx:回帰直線の試料公定法値の平方和 をそれぞれ表す。
繰り返し回数10万回の乱数を発生させ、環境庁告示第46号において定められている溶出試験のヒ素濃度の99%上限が0.01 mg/L となるキレート剤捕集/XRF測定法による測定値が推定された。その結果、クリンカアッシュの判別に必要なキレート剤捕集/XRF測定法による測定値は、5.7 μg/L と推定された。このときの本発明に係る溶出操作法のヒ素濃度は平均5.5 μg/L(尚、回帰式によって環境庁公定法値に換算すると6.4 μg/L 相当の濃度である)であった。この測定値は、キレート剤捕集/XRF測定法において定量が可能な範囲であることが確認された。
以上の結果から、キレート剤捕集/XRF測定法は、本発明に係る溶出操作法と組み合わせて、クリンカアッシュの判別に適用可能であることが確認された。
本発明に係る重金属類溶出量の測定方法を、出荷する際のクリンカアッシュについて、土壌環境基準値(即ち、0.01 mg/L)よりも確実に溶出量が小さい検体を判別する方法(即ち、クリンカアッシュのスクリーニング法)として用いた場合の妥当性を検証した実施例を説明する。
異なる性状のクリンカアッシュ試料に対して、本発明に係る重金属類溶出量の測定方法による、環境庁告示第46号において定められている溶出試験によって得られる溶出量の値(「環境庁公定法値」と呼ぶ)の予測精度を考慮した場合に、誤差要因として溶出操作に起因するばらつきと共に試料の性状の多様性に起因するばらつきが含まれる。スクリーンニングレベルは、これらのばらつきの影響を考慮するため、回帰直線の予測区間の上限値を用いて評価する。
前掲の表1に示す28種類のクリンカアッシュ試験用試料の溶出量データを元に回帰直線の予測区間の95%(即ち、危険率5%)上限が求められ、環境庁告公定法値で基準値10 μg/L 試料を判別するためのスクリーニングレベルは、本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する溶出操作法の分析値で6.4 μg/L である(尚、回帰式によって環境庁公定法値に換算すると7.4 μg/L 相当の濃度である)ことが確認された。
また、同様に、予測区間99%(即ち、危険率1%)上限値から求められたスクリーニングレベルは5.5 μg/L である(なお、回帰式によって環境庁公定法値に換算すると6.5 μg/L 相当の濃度である)ことが確認された。
さらに、これらのスクリーニングレベルに近い4〜6.5 μg/L の範囲の溶出量を示す3種類の試験用試料に対し、各7回、下記の実施条件(尚、公定法値を推定/再現するための好適な実施条件のうちの一つである)による溶出操作が行われた結果、いずれの試料においても、下記の実施条件によるヒ素溶出量値の検出限界(MDL)は0.8〜1.7 μg/L、定量下限(LOQ)は2.7〜5.4 μg/L の範囲にあった。なお、検出限界MDLは下記の数式8によって算出され、また、ここでの定量下限LOQは下記の数式9によって算出された。
(数8) MDL = T(n-1,1-α=0.99)・(S)
(数9) LOQ = 10・(S)
ここに、 MDL:検出限界,
LOQ:定量下限,
T:スチューデントt値
(ここでは、自由度:試料数n−1,99%信頼レベル),
S:標本標準偏差 をそれぞれ表す。
〈スクリーニングレベル検証の際の実施条件〉
i)粉砕用メディア8:直径が1.2 mm のガラスビーズ,13 g
ii)攪拌条件:回転数が2500 rpm の偏心振動で攪拌時間が90分
iii)円筒形容器9:底部・底面9aの形状が半球状の円筒形容器(具体的には、48 mL 容量の丸底遠沈管)
定量下限はいずれもスクリーニングレベルを下回ることから、本発明に係る重金属類溶出量の測定方法の第一段階に相当する溶出操作法(特に、少なくとも上記の実施条件による操作)の結果は、土壌環境基準値に対応したクリンカアッシュのスクリーニングに適用可能であることが確認された。
1 分析対象試料
2 純水等(純水,超純水,溶出用溶液)
8 粉砕用メディア
9 円筒形容器
9a 底部・底面
9b 蓋
10 偏心振動装置

Claims (10)

  1. 底が閉塞した半球状の底部の円筒形容器内へと、
    粒径が5 mm 以下の分析対象試料と水若しくは溶出用溶液とを投入すると共に、
    粒径が0.1〜10 mm の粉砕用メディアを添加し、
    偏心振動装置によって与えられる偏心回転によって前記円筒形容器を振動させて前記円筒形容器内の内容物を振動攪拌し、
    前記分析対象試料に含まれていた重金属類が溶出している溶出液を得る
    ことを特徴とする重金属類溶出量の測定方法。
  2. 前記分析対象試料が、石炭灰,焼却灰,スラグ類,並びに石炭灰及び焼却灰のセメント固化物のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1記載の重金属類溶出量の測定方法。
  3. 前記粉砕用メディアの粒径が0.5〜3 mm の範囲であることを特徴とする請求項1記載の重金属類溶出量の測定方法。
  4. 前記粉砕用メディアの比重が1.0〜4.3 g/cm3 の範囲であることを特徴とする請求項1記載の重金属類溶出量の測定方法。
  5. 前記円筒形容器の内径が15〜40 mm の範囲であると共に、前記分析対象試料が2〜20 g の範囲であり且つ前記水若しくは前記溶出用溶液が20〜200 mL の範囲であって固液比が10 L/kg であることを特徴とする請求項1記載の重金属類溶出量の測定方法。
  6. 前記偏心回転させるためのオービット径が3〜5 mm の範囲であると共に、前記偏心回転の回転数が1000〜3000 rpm の範囲であり且つ時間が20〜120分の範囲であることを特徴とする請求項1記載の重金属類溶出量の測定方法。
  7. 前記溶出液に還元剤を添加した後にキレート剤を添加した上でフィルタでろ過して前記重金属類を捕集し、当該重金属類を捕集した前記フィルタを乾燥させた後に蛍光X線元素分析法によってヒ素含有量を定量することを特徴とする請求項1記載の重金属類溶出量の測定方法。
  8. 前記還元剤としてL−システインが使用されることを特徴とする請求項記載の重金属類溶出量の測定方法。
  9. 前記キレート剤として1%DBDTC溶液が使用されることを特徴とする請求項記載の重金属類溶出量の測定方法。
  10. 前記溶出液のpHをメチルオレンジの変色を指標として調整することを特徴とする請求項記載の重金属類溶出量の測定方法。
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