JP3614568B2 - 土壌の分析方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は土壌の分析方法に関し、特に土壌中から汚染物質を抽出する方法と、さらにこの抽出された汚染物質を現地で簡易分析する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、土壌の汚染が大きな環境問題となっている。特に、無機物、重金属、PCB、農薬及び有機塩素系化合物等の汚染物質が問題にされている。
土地を有効活用するためには汚染された土壌を修復しなければならないが、土壌の修復には莫大な費用がかかるため修復範囲は可能な限り小さくするのが通常である。そのためには土壌調査を行い、汚染物質の特定化と汚染の程度及び土壌汚染範囲(面積と深さ)を出来るだけ正確に評価しなければならない。
【0003】
土壌の分析は、通常、現地で土壌をボーリングして採取し、土壌を実験室に持ち帰り、一定量の土壌を容器にサンプリングしこの土壌の測定成分を溶かして抽出するための液体(以後抽出液と称す)を添加・混合後、静置、遠心分離、自然濾過または強制濾過工程を経てこの混合液から土壌の測定上不要でかつ邪魔になる成分を分離して得られた液体(以後被抽出液と称す)を、原子吸光法、ICP発光分光分析法、ICP−質量分析法、吸光光度法(分光光度計法)、蛍光光度法、ガスクロマトグラフ法、ガスクロマトグラフィー質量分析法、イオンクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ法などの機器分析装置で測定することによって行われている。
上記の一連の分析においては、簡単・高能率で行え、高感度・高精度の結果が得られてかつ低コストである方法が求められる。
【0004】
また汚染されている可能性のある土壌は、現地の土地を、例えば5mまたは30m間隔のメッシュに区切ってボーリングを行い、その中心の土壌の表面及び深さ方向に土壌を採取する。ボーリングはその方法及び土質にもよるが、一日に1箇所ないし数箇所しか行うことができないので、調査すべき土地の面積が広いと、土壌の採取件数が多くなるため土壌を採取するだけで多くの日数が必要となり多額の費用がかかり、また測定すべき件数に応じて分析コストも高くなる。
よって土壌調査費用をできるだけ節約するため、汚染されていない土壌をできるだけ採取しないようにし、採取件数を少なくする必要がある。それには、採取した土壌を迅速に分析し、その結果をさらにボーリングを続けるかどうかの判定に活かさなければならない。すなわち土壌を採取しながら、現地で簡単、迅速に高い精度でしかも低コストで土壌を分析することが求められる。
【0005】
そのため水や被抽出液の汚染物質の測定を、上記の実験室に設けられる必要があるような大型機器分析装置等を使用しないで、途中の操作や条件を簡略し、簡易な装置を使用して、手数、用具、時間を節約する簡易分析法も利用されている。この簡易分析法としては、例えば科学機器総合カタログ(´95/´96年版−発行者:Fineグループ)の水質検査器の欄で簡易水質検査器具のパックテスト(共立)や迅速水質計用試薬の“共立”迅速水質計用試薬や分光光度計を用いた方法および汚染水質簡易検査器としてヨシテストがあり、またHACH法(PAS方式多項目迅速水質/土壌/食品分析計使用による)、ポナールキット法、イムノアッセイ法及びポータブルガスクロマトグラフ法などがあげられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
土壌にはいろいろの土質があり、例えば、礫、礫質土、砂、砂質土、シルト、粘性土、有機質土、火山灰質粘性土、高有機質土などがある。実際の土壌はこれらが混じり合い、複雑な土質を形成している。
土壌は1mm以上の大きな粒子から0.1μm以下の微粒子まで幅広く分布している。このように土壌試料に抽出液を添加して混合後、静置または濾過により被抽出液を採取するが、特に微粒子の土壌は沈降しにくく、また土壌と抽出液との混合液を濾過する時にフィルターを透過し易い。その結果土壌と抽出液との混合液の分離が不完全になり、混合液から分離される被抽出液中に土壌の微粒子が多数残存して濁り、被抽出液の濁度が高くなる。微粒子を完全に補足するためフィルターの孔径を小さくすると、自然濾過に長時間を要することになってしまう。また土壌によっては一昼夜を費やしても土壌と抽出液との混合液の分離が全くできない場合もあり、吸引濾過等の強制濾過を行うが、それでも長時間を要する場合があるので、先に遠心分離を行った後で、濾過を行わねばならなくなってしまう。
【0007】
このように従来では土壌と抽出液を分離して被抽出液を得るため、多大の労力や長時間を必要とし、さらに遠心分離機や強制濾過装置などの大型の機器装置も必要としていた。またこの混合液からの被抽出液の分離がうまくできないと、被抽出液の汚染物質を測定する時に分析目的成分によっては異常に高い値を示したり、また分析方法によっては測定が出来ない等の問題があった。特に被抽出液の濁度が50度以上になると、値がふらついて分光光度計で測定ができなかったり、測定機器の被抽出液の注入孔が詰まってICP−発光分光分析装置または原子吸光分析装置で測定できなかったり、または土壌の主成分の元素が検出されて目的とする汚染物質の微量分析がまったく行うことができなかったりする等の問題点があった。
【0008】
また現地で土壌を分析するために、上述の大型の機器分析装置を現地に持ち込むことは困難であるので、それに代わる方法として上記の簡易分析法が適用される。その場合、分析工程は土壌に抽出液を添加し、混合後、土壌と抽出液との混合液を分離して得られる被抽出液を簡易分析法に供することになる。この全行程を迅速に行うためには被抽出液が簡単、迅速にしかも低コストで得られなければならない。被抽出液を得るのに長時間、多大の労力を費やしていると初期の目的が達成できない。
【0009】
本発明の目的は土壌中の汚染物質の溶出量及び又は含有量を測定するため、サンプリングされた土壌に抽出液を添加・混合後、その混合液を効率良く分離して、測定に供しても精度の良い正確な測定が可能な被抽出液を容易に得ることのできる抽出方法を提供することである。
また本発明の目的は、現地で簡単・迅速に低コストで精度良く汚染物質を測定する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、サンプリングされた土壌に抽出液を添加・混合後、この土壌と前述の抽出液との混合液を分離して得られる被抽出液を分析する土壌の分析方法において、前記土壌に前記抽出液を添加後、さらに測定目的の汚染物質に対して汚染物質を含有していない凝集剤を添加することにより土壌と抽出液の混合液から被抽出液の分離を促進することを特徴とする。
【0011】
また上記の、現地で簡単・迅速に低コストで精度良く汚染物質を測定するため、本発明は、サンプリングされた土壌に抽出液を添加・混合後、この土壌と前記抽出液との混合液を分離して得られる被抽出液を分析する土壌の分析方法において、前記土壌に前記抽出液を添加後さらに測定目的の汚染物質に対して汚染物質を含有していない凝集剤を添加することによって土壌と抽出液の混合液から被抽出液の分離を促進して得られた被抽出液の中の汚染物質を簡易分析法で測定することを特徴とする。
【0012】
すなわち本発明の最大の特徴は、土壌に抽出液を添加し混合後、土壌と抽出液を分離する際に、特定の凝集剤を存在させて混合することにより、従来面倒で長時間を要した濾過工程及び/又は遠心分離工程を行うことなく土壌と抽出液との混合液から被抽出液の分離を促進して、被抽出液を汚染させることなく測定に供出可能な被抽出液を容易に得られ、さらにこの凝集剤を添加しても混合液中に溶解している汚染物質が凝集沈殿して除去されないことである。
また本発明の特徴は、この被抽出液を現地で簡単、迅速に分析できることである。
そしてこの構成により分離して得られた被抽出液の濁度を50度以下にすることが可能である。
【0013】
本発明の係る分析方法において対象とされる汚染物質は、無機物、有機物、重金属等が挙げられる。無機物としては例えばシアン、アンモニア、硝酸イオン等があり、有機物としてはPCB、農薬、有機塩素系化合物等があり、重金属としては六価クロム、水銀、ニッケル、銅、鉛、砒素、カドミウム、セレン、ベリリウム、バナジウム、アンチモン、亜鉛等が挙げられるが、本発明の対象とされる汚染物質はこれらに限定されるものではない。
【0014】
本発明において、これらの汚染物質に対し用いられる抽出液は、純水、0.01〜10Nの塩酸、硝酸及び硫酸等の酸性液、0.01〜10Nの苛性ソーダ、アンモニア水等のアルカリ性液、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素化合物、エチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類等の有機溶剤があるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、金属、有機物等の不純物を含まない精製された純水、希塩酸、希硝酸、希苛性ソーダ、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素化合物、メタノール、エタノール等のアルコール類及びそれらの混合液である。抽出液の添加量は土壌の性状によって異なるが、一般にサンプリングされた土壌1gに対して1ml〜100ml、好ましくは2ml〜50mlの範囲が最適である。
【0015】
そして本発明の抽出において用い得る凝集剤としては無機凝集剤と有機凝集剤とがあり、測定目的の汚染物質に対してその汚染物質を含有しておらずかつ悪影響を及ぼさない凝集剤であれば何を用いても良い。無機系汚染物質及び重金属を測定する場合には有機凝集剤を、有機系汚染物質を測定する場合には無機凝集剤と有機凝集剤が用いられる。なお凝集剤としては有機凝集剤が好ましい。
【0016】
凝集剤のうち、無機凝集剤としては例えば、硫酸バンド、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、アルミン酸ソーダ、ポリ塩化アルミニウムが使用可能であり、また有機凝集剤として界面活性剤、高分子凝集剤がある。高分子凝集剤としては例えば、アルギン酸ナトリウム、CMC−ナトリウム、水溶性アニリン樹脂塩酸塩、ポリチオ尿素塩酸塩、水溶性カチオン化アミノ樹脂、澱粉、ゼラチン、水溶性尿素樹脂、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、ポリビニルピリン塩酸塩、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミドカチオン変性、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等が挙げられる。無機及び有機凝集剤は単独あるいは混合して用いても良い。
さらに凝集剤の添加量は凝集剤、土壌の性状及び抽出液によって異なるが、凝集剤の濃度が抽出液に対して1ppm〜10%、好ましくは10ppm〜5%の範囲になるようにする。
【0017】
なお凝集剤はこれまで、産業排水、生活排水などを浄化処理する際に排水中の微細な懸濁物を凝集して分離するため、また水溶液中の排水してはまずい重金属イオンを不溶化して析出させ除去するために用いられてきた。しかし本発明において、従来使用されてきた凝集剤の使用方法とは異なり、水溶液中に含まれる測定上不要でかつ測定において邪魔になる物質を析出させて必要なものだけを水溶液中に残すという、従来では考えられなかった凝集剤の全く新しい使用方法を導入して、汚染物質の測定における被抽出液の分離の促進を極めて容易に行うことに、本願の新規でかつ進歩的な技術的コンセプトがあるものである。
【0018】
以上の記載にしたがい、分析される土壌の汚染物質に対して適当な抽出液及び凝集剤を選択する。そして土壌と抽出液を混合後、凝集剤を添加し、一定時間ゆるやかに撹拌する等の方法で混合する。その後、静置して混合液の上澄液を分取又は濾過するか、あるいは特定な場合には遠心分離等の方法により土壌と抽出液の混合液を分離する。凝集剤を添加することにより通常は静置するだけで土壌と抽出液の混合液から被抽出液の分離が容易に行えるようになり、その後の測定において安定した測定結果が得られる。
【0019】
液体の濁りの程度を表わす尺度として濁度があり、JIS K0101に規定されている。それによると、視覚濁度、透過光濁度、散乱光濁度及び積分球濁度に区分して表示されている。例えば、積分球濁度の場合、液中の粒子による散乱光の強度と透過光の強度の比を求めカオリン1mg/lの濁りを濁度1度として定義される。
【0020】
土壌は前述のように1mm以上の大きな粒子から0.1μm以下の微粒子まで幅広く分布しているが、特に微粒子の土壌は沈降しにくく、混合液を濾過する時フィルターを容易に透過する。混合液からの分離が不完全であると被抽出液中に微粒子が多数残存し、被抽出液の濁度が高くなる。
【0021】
土壌中の汚染物質の測定では定量下限としてppmからさらにppbという単位での超微量分析が要求される。このような高精度で高感度の測定をするためには被抽出液の濁度を50度以下、好ましくは30度以下にする必要がある。濁度が50度以上になると、例えば分光光度計で汚染物質を測定する時に測定値が異常値を示したり、他の機器分析を行う時、被抽出液を機器に注入すると注入孔に詰まってしまう等のトラブルが発生して測定できない。
【0022】
汚染物質の抽出された被抽出液の測定はその目的成分に対して最適な方法を選択すれば良い。分析方法として例えば、吸光光度法、蛍光光度法、原子吸光法、ICP−発光分光分析法、ICP−質量分析法、イオン電極、連続流れ及びフローインジェクション分析法、イオンクロマトグラフ法、高速液体クロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ法、ガスクロマトグラフィー質量分析法等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
現地で行う簡易分析法として例えば、簡易水質検査器具−パックテスト(共立)、“共立”迅速水質計用試薬−分光光度計を用いた方法、ヨシテスト、HACH法(PAS方式多項目迅速水質/土壌/食品分析計)、ポナールキット法、イムノアッセイ法、およびポータブルガスクロマトグラフ法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1:
A工場跡地の地表から深さ3mで採取した土壌5gを秤量して容器に入れ、0.1Nの塩酸50mlを添加して2分間激しく振った。その後、凝集剤として住友化学製スミフロックFN−10H(ポリアクリルアミド系高分子凝集剤)の水溶液(0.001g/ml)1.5mlを添加し、1分間ゆるやかに撹拌した。1分間静置した後上澄液を傾斜法で採取して被抽出液を得た。この被抽出液の濁度を積分球式濁度計(三菱化成株式会社製SEP−PT205型)で測定したところ24.0度であった。また浮遊物質量(SS)は7.0mg/lであった。この被抽出液をICP発光分光分析装置で亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、六価クロム(Cr)を測定するとそれぞれ2.6mg/l、28.0mg/l、5.1mg/l、0.01mg/lであった。
【0024】
比較例1:
公定法に準拠した方法で土壌と抽出液との混合液から被抽出液の分離操作を行った。実施例1と同様にA工場跡地の地表から深さ3mで採取した土壌5gを秤量して容器に入れ、0.1Nの塩酸50mlを添加して2分間激しく振った。1時間静置後、回転速度2000rpmで10分間遠心分離を行った。さらに孔径0.45μmのフィルターをつけた注射器を使用して5分間強制的に濾過を行った。この被抽出液の濁度は23.0度、浮遊物質量は7.0mg/lであった。また、亜鉛、鉄、銅、六価クロムを測定するとそれぞれ2.7mg/l、27.7mg/l、5.2mg/l、0.01mg/lであった。
上記のこの結果より、実施例1の方法から公定法に準拠した方法と誤差の範囲内で同等の分析値が得られたことが理解される。
【0025】
比較例2:
実施例1と同様にA工場跡地の地表から深さ3mで採取した土壌5gを秤量して容器に入れ、0.1Nの塩酸50mlを添加して2分間激しく振った。1時間静置後、孔径0.45μmのフィルターで6時間かかって自然濾過した。この被抽出液の濁度は75.0度、浮遊物質量は29.0mg/lであった。また、亜鉛、鉄、銅、六価クロムを測定するとそれぞれ3.0mg/l、33.2mg/l、5.7mg/l、0.02mg/lであった。
【0026】
比較例3:
実施例1と同様にA工場跡地の地表から深さ3mで採取した土壌5gを秤量して容器に入れ、0.1Nの塩酸50mlを添加して2分間激しく振った。10分間静置後、実施例1と同様に上澄液を傾斜法で採取して被抽出液を得た。この被抽出液の濁度は450度以上であり、浮遊物質量は750mg/l以上であった。また、亜鉛、鉄、銅、六価クロムは測定できなかった。
【0027】
実施例2:
凝集剤として実施例1で使用したものとは別の住友化学製スミフロックFN−20H(ポリアクリルアミド系高分子凝集剤)の水溶液(0.001g/ml)を1.0ml添加する以外は実施例1と同様に行った。この被抽出液の濁度は23.0度、浮遊物質量は8.0mg/lであった。また、亜鉛、鉄、銅、六価クロムを測定するとそれぞれ2.6mg/l、28.3mg/l、5.3mg/l、0.74mg/lであった。
【0028】
実施例3:
別のB工場跡地の表面土壌を試料とする他は実施例1と同様に行った。この被抽出液の濁度は9.0度、浮遊物質量は4.0mg/lであった。また、亜鉛、鉄、銅、六価クロムを測定するとそれぞれ5.3mg/l、33.9mg/l、8.5mg/l、0.74mg/lであった。
【0029】
比較例4:
実施例3と同様にB工場跡地の表面土壌5gを秤量して容器に入れ、0.1Nの塩酸50mlを添加して2分間激しく振った。比較例1と同様にして被抽出液を得た。この被抽出液の濁度は9.0度、浮遊物質量は4.0mg/lであった。また、亜鉛、鉄、銅、六価クロムを測定するとそれぞれ5.6mg/l、33.7mg/l、8.0mg/l、0.75mg/lであった。
【0030】
比較例5:
0.1Nの塩酸50mlに実施例1で使用したポリアクリルアミド系高分子凝集剤水溶液1.5mlを添加し、ゆるやかに撹拌した。この液の濁度は1度、浮遊物質量は1mg/l以下であった。また、亜鉛、鉄、銅、六価クロムを測定するとそれぞれ0.01mg/l以下であり、六価クロムは0.001mg/l以下であった。
【0031】
実施例4:
A工場跡地の地表から深さ3mで採取した土壌5gを秤量して容器に入れ、純水50mlを添加して4時間撹拌した。その後、凝集剤として実施例2で使用したポリアクリルアミド系高分子凝集剤水溶液を0.5ml添加し、1分間ゆるやかに撹拌した。1分間静置後、上澄液を採取した。この被抽出液の揮発性有機物をヘッドスペース試料導入装置付きガスクロマトグラフィー質量分析計で測定したところクロロホルム(CHCl3 )、ベンゼン(C6 H6 )、トルエン(C6 H5 CH3 )のみがそれぞれ0.11mg/l、0.010mg/l、0.071mg/l検出された。
【0032】
比較例6:
実施例4と同様にA工場跡地の地表から深さ3mで採取した土壌5gを秤量して容器に入れ、純水50mlを添加して4時間撹拌した。1時間静置後、孔径0.45μmのフィルターをつけた注射器で5分間かけて強制的に濾過を行った。この被抽出液の揮発性有機物を実施例4と同様に測定したところ、クロロホルム、ベンゼン、トルエンのみがそれぞれ0.12mg/l、0.009mg/l、0.074mg/l検出された。
【0033】
【表1】
【0034】
上記の本願発明による実施例とその対応する比較例のそれぞれを示す表1から分かるように、比較例では濾過した被抽出液の濁度は高く、遠心分離工程を併用することによって低い値を得ている。これに対して、本発明の実施例によれば、凝集剤を添加することにより簡単に分離を行うことができ、しかもこの分離によって得られた被抽出液の濁度は低くかつ汚染物質量も妥当な値を得ることができる。すなわち比較例1の公定法に準拠するものと比較して明らかなように、本願によって得られる分析値はこの比較例1の分析値と誤差の範囲内で同等のものであり、測定値として適用可能なものであることが理解される。
【0035】
また以下に簡易分析法による実施例およびその比較例について述べる。
実施例5:
C工場跡地で、地表から深さ50cmの土壌を採取して、現地で土壌4gを簡易天秤(パーソナル電子天秤:(株)エ−・アンド・ディー社製)で秤量して容器に入れ、1.0Nの塩酸40mlを添加して2分間激しく振った。その後、実施例1で使用したスミフロックFN−10H水溶液0.5mlを添加し、1分間ゆるやかに撹拌した。1分間静置したのち上澄液を傾斜法で採取して被抽出液を得た。採取した土壌を実験室に持ち帰り、前記と同じ操作を行って得た被抽出液の濁度は0.5度であった。
“共立”迅速水質計用試薬−分光光度計を用いた方法にしたがって鉛(Pb)の測定を現地で行った。すなわち上記で得た被抽出液に5N苛性ソーダを添加してpHを5〜8に調整後、25mlをセルに採取し、5%KCNの水溶液1mlを加え、撹拌した。その後、該方法によるR−1試薬1包みを加え撹拌し、3分間静置後、HACH社製SPECTROPHOTOMETER DR/2000で鉛を測定した。苛性ソーダ添加量を補正して計算すると被抽出液の鉛濃度は0.7mg/lであった。
【0036】
比較例7:
実施例5と同様に、C工場跡地で地表から深さ50cmの土壌を採取し、現地で土壌4gを簡易天秤で秤量して容器に入れ、1.0Nの塩酸40mlを添加して2分間激しく振った。10分間静置後、実施例5と同様に上澄液を傾斜法で採取して被抽出液を得た。この被抽出液を実施例5と同様に“共立”迅速水質計用試薬−分光光度計を用いた方法にしたがって鉛(Pb)の測定操作を現地で行った。しかし、透過光強度が弱くて測定できなかった。採取した土壌を実験室に持ち帰り、前記と同じ操作を行って得た被抽出液の濁度は90度であった。
【0037】
実験例6:
C工場の別の場所で採取した表面土壌を試料とする他は実施例5と同様に現地で操作を行い鉛を測定すると1.1mg/lであった。
なお、採取した土壌を実験室に持ち帰り、被抽出液を得る操作を現地で行うのと同じ操作を行って得た被抽出液の濁度は3.1度であった。この被抽出液をICP−発光分光分析法で鉛を測定すると、1.0mg/lであった。
【0038】
実施例7:
凝集剤として実施例6で使用したものとは別の住友化学製スミフロックFA−50(ポリアクリルアミド系高分子凝集剤)の水溶液(0.001g/ml)0.5mlを添加する以外は実施例6と同様に現地で操作を行った。この被抽出液の鉛濃度は1.2mg/lであった。
【0039】
実施例8:
D工場跡地で地表の土壌を採取し、現地で土壌4gを簡易天秤で秤量して容器に入れ、1.0Nの塩酸40mlを添加して2分間激しく振った。その後、スミフロックFN−10H水溶液0.5mlを添加し、1分間ゆるやかに撹拌した。1分間静置した後、上澄液を傾斜法で採取して被抽出液を得た。
ヨシテスト法にしたがって鉛(Pb)の測定を現地で行った。上記で得た被抽出液に5N苛性ソーダを添加してpHを3〜8に調整後、この被抽出液を蒸留水で最終的に5倍に希釈した。その後、液を3ml試験管に採り添加剤(1)を小匙3杯添加し、良く振って溶解後、さらに添加液(2)を2滴添加して良く振り、さらに添加液(3)を3滴添加して良く振った。pHが4〜6であることを確認後、検知管にスポイトをつけ、赤色まで一定速度で吸い上げた。検知管の呈色層(赤橙色)の長さを鉛イオン標準濃度と比較して測定値を読み取った。希釈倍率を補正して計算すると、被抽出液の鉛濃度は10mg/lであった。
【0040】
比較例8:
実施例8と同様のD工場跡地の地表から採取した土壌を実験室に持ち帰り、実験室で測定した。土壌5gを秤量して容器に入れ、1.0N塩酸50mlを添加して激しく振った。1時間静置後、回転速度2000rpmで10分間遠心分離を行った。さらに、孔径0.45μmのフィルターをつけた注射器を使用して5分間強制的に濾過を行った。この被抽出液をICP−発光分光分析法で鉛(Pb)を測定すると11mg/lであった。
【0041】
実施例9:
E工場跡地で、地表の土壌を採取し、現地で土壌4gを簡易天秤で秤量して容器に入れ、1.0Nの塩酸40mlを添加して2分間激しく振った。その後、スミフロックFN−10H水溶液0. 5mlを添加し、1分間ゆるやかに撹拌した。1分間静置した後、上澄液を傾斜法で採取して被抽出液を得た。
PAS方式多項目迅速水質/土壌/食品分析計法の測定マニュアル(1,5−ジフェニルカルボヒドラジド法)にしたがって六価クロム(Cr6+)の測定を現地で行った。被抽出液の六価クロム濃度は0.55mg/lであった。
【0042】
上記の本願発明による実施例5以降とその対応する比較例7、8のそれぞれから分かるように、比較例7では濾過した被抽出液の濁度は高く、そのままでは測定を行うことができなかった。また比較例8では本願発明における凝集剤を適用することによって低い値が得られている。また本発明の実施例において、凝集剤を添加することにより簡単に分離を行うことができ、しかもこの分離によって得られた被抽出液の濁度は低くかつ汚染物質量も妥当な値を得ることができるため、この被抽出液に簡易分析法を適用しても誤差の範囲内で妥当な値が得られる。すなわち比較例8と比較して明らかなように、本願によって得られる簡易分析法による測定値はこの比較例8の大型分析機器を適用して測定した値と誤差の範囲内で同等のものであり、これらは測定値として適用可能なものであることが理解される。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、サンプリングされた土壌に抽出液を添加し混合後分離するに際し、凝集剤を存在させることによって、濾過工程及び遠心分離工程を必要とすることなく効率良く被抽出液を得ることができ、その被抽出液中の汚染物質を現地でも簡単かつ迅速に測定することができる。
Claims (3)
- 土壌汚染調査のためにサンプリングされた土壌に抽出液を添加・混合後、この土壌と前記抽出液との混合液を分離して得られる被抽出液を分析する方法において、前記土壌に前記抽出液として塩酸酸性水溶液を添加後、さらに測定目的の汚染物質を含有していない一種類の有機凝集剤を添加することにより土壌と抽出液の混合液から被抽出液の分離を促進することを特徴とする土壌の分析方法。
- 土壌汚染調査のためにサンプリングされた土壌に抽出液を添加・混合後、この土壌と前記抽出液との混合液を分離して得られる被抽出液を分析する方法において、前記土壌に前記抽出液として塩酸酸性水溶液を添加後、さらに測定目的の汚染物質を含有していない一種類の有機凝集剤を添加することにより土壌と抽出液の混合液から分離を促進して得られた被抽出液の汚染物質を簡易分析法で測定することを特徴とする土壌の分析方法。
- 前記有機凝集剤がポリアクリルアミド系高分子凝集剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の土壌の分析方法。
Priority Applications (1)
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