JP6964881B2 - リグニン粘土複合膜およびその製造方法 - Google Patents

リグニン粘土複合膜およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、リグニン粘土複合膜およびその製造方法に関する。
特定の粘土材料をフィルム状に成形し、ついで加熱処理して形成した粘土膜は、ガスバリア性を始めとした各種機能を持つ機能材料である(特許文献1)。しかしながら、これらの粘土膜は粘土のバインダーとなる有機高分子の低い熱耐性による燃焼性に難がある。植物バイオマスである芳香族系高分子のリグニンは熱耐性に優れるため耐熱性を与えるバインダーとして期待が持たれるが、従来のリグニンは深い黒色を有するためフィルムの透明性が失われる (非特許文献1)。また、膜化に粘土・リグニン以外の第3成分を必要とするため不燃性付与に難がある。さらに、従来の光透過性粘土膜においては紫外領域(400 nm以下)の光を通すため、紫外線保護としての役割は果たせなかった(非特許文献2)。
他方、植物系原料の主成分である細胞壁成分は主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成されている。これら3つの成分は細胞壁中ではお互いに複雑に結合しているため、それらをそのまま分離することは容易ではない。細胞壁成分の分離技術は、紙・パルプの製造分野でいくつか開発され行われているが、これらの方法では酸・アルカリもしくは高温、等、非常に強い反応条件で成分分離を行うため、セルロース、ヘミセルロースは良好に得られるもののリグニンは著しく変性してしまう。このような状況下で、60℃以下の条件で強酸もしくは強アルカリを用いることなく、細胞壁成分から低変性リグニンを取り出す技術として、糖化酵素の存在下に植物系原料を湿式粉砕し、その粉砕物を固液分離して低変性リグニンを得ることが特許文献2および非特許文献3で知られている。
特開2008−247695号公報 特開2011−92151号公報
Adv. Mater., 2017, 29, 1606512 Adv. Mater., 2007, 19, 2450 Green. Chem., 2016, 18, 5962
本発明は、リグニンと粘土鉱物とを含み、半透明性を維持しながら、優れた紫外線吸収特性等を有し得るリグニン粘土複合膜を提供することを課題とする。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の発明を提供する。
(1)アルカリ性ニトロベンゼン酸化反応により得られる芳香族化合物単量体の収率が15%以上である低変性リグニンと粘土鉱物とを含み、垂直燃焼試験UL94 V−0相当の不燃性と400nmで90%以上の紫外線吸収特性とを有するリグニン粘土複合膜。
(2)膜厚が3〜100μmである上記(1)に記載のリグニン粘土複合膜。
(3)低変性リグニンと粘土鉱物の質量比が、5質量部:95質量部〜40質量部:60質量部である上記(1)または(2)に記載のリグニン粘土複合膜。
(4)セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含有する植物系原料をセルロースおよびヘミセルロースの糖化酵素の存在下に湿式粉砕して粉砕物を得、該粉砕物を、糖類を含む液状成分とアルカリ性ニトロベンゼン酸化反応により得られる芳香族化合物単量体の収率が15%以上である低変性リグニンを含む固形成分とに固液分離し、ついで該固形成分分散液と粘土鉱物を混合した後に、支持体上に塗布して乾燥することにより、低変性リグニンと粘土鉱物とを含み、垂直燃焼試験UL94 V−0相当の不燃性と400nmで90%以上の紫外線吸収特性とを有するリグニン粘土複合膜を製造することを特徴とするリグニン粘土複合膜の製造方法。
(5)膜厚が3〜100μmである上記(4)に記載のリグニン粘土複合膜の製造方法。
(6)低変性リグニンと粘土鉱物の質量比が、5質量部:95質量部〜40質量部:60質量部である上記(4)または(5)に記載のリグニン粘土複合膜の製造方法。
(7)リグニン粘土複合膜を100〜200℃で加熱処理して耐水化する上記(4)〜(6)のいずれかに記載のリグニン粘土複合膜の製造方法。
本発明は、半透明性を維持しながら、優れた不燃性と紫外線吸収特性を有するリグニン粘土複合膜を提供し得る。石油由来の成分を使用しないで植物成分と粘土鉱物のみによっても機能膜が得られ、優れた不燃性と紫外線吸収能に加えて透湿性・ガス透過性・プロトン伝導性を付与し得る。
本発明のリグニン粘土複合膜は、リグニンと粘土鉱物とを含み、400nmで90%以上の紫外線吸収特性を有する。
リグニンとしては、アルカリ性ニトロベンゼン酸化反応により得られる芳香族化合物単量体の収率が15%以上である低変性リグニンが用いられる。例えばリグニンが針葉樹由来のものである場合は、ニトロベンゼン酸化分解率は、例えば、15%以上、18%以上、20%以上、22%以上、25%以上又は27%以上であってよい。リグニンが広葉樹由来のものである場合は、ニトロベンゼン酸化分解率は、例えば、15%以上、18%以上、20%以上、22%以上、25%以上、27%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%又は50%以上であってよい。
リグニンの原料となる植物系原料は、特に限定されるものではなく、細胞壁成分としてセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含む植物系のバイオマスであり、たとえばスギ、ヒノキ等の針葉樹材、カバ、ミズナラ等の広葉樹材、あるいは、稲わら、バガス、タケ等の草本類が用いられる。
これらの植物系原料は糖化酵素の存在下に湿式粉砕(すなわち糖化粉砕)されるのが好適であり、湿式粉砕の前に、予め5mm以下に粗粉砕しておくのが好ましい。粗粉砕は、カッターミル、チッパー、ロータリーカッター等の公知の粉砕機を用い得る。
糖化酵素は、植物系原料の細胞壁に含まれるセルロースやヘミセルロース等を糖化する酵素であり、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼを挙げることができる。セルラーゼ及びヘミセルラーゼを組み合わせて用いることが好ましい。湿式粉砕時に用いられる糖化酵素の量は特に限定されず、用いる植物原料の量等に応じて適宜設定することができる。
セルラーゼは、β-1,4-グルカンのグルコシド結合を加水分解する酵素のことで、セルロースの分子内部から切断するエンドグルカナーゼ及びセルロースの還元末端もしくは非還元末端から分解しセロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ、さらにはセロビオースのグルコシド結合を切断しグルコースへと変換するβ-グルコシダーゼを含む酵素である。また、ヘミセルラーゼは、植物体の細胞壁を構成する多糖類のうちセルロース、ペクチン以外の多糖類を分解する酵素であり、ペクチナーゼは、ペクチンを分解する触媒機能を持つポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼなどの酵素である。湿式粉砕時には、糖化酵素の他に、例えば、タンパク質分解酵素等の酵素を併せて用いてもよい。
湿式粉砕は、粉砕対象物を液体中に懸濁させたスラリー状態で粉砕するものであり、たとえばボールミルやビーズミルを用いることができる。
湿式粉砕に用いる液体としては、糖化酵素を失活させることなく粉砕対象物をスラリー状態で保持できるものであれば制限されず、好適には水、およびアルコール等の有機溶媒が挙げられる。
湿式粉砕する条件は、媒体pH2.0〜11.0、媒体と粉砕対象物の質量比1:1〜100:1、粉砕機のビーズ径0.1〜20mm、ビーズ周速0.3〜50m/sec、スラリー流速0.1〜10L/min、ベッセル内温度0〜100℃程度の範囲内で適宜選択し得、経時的に粉砕物の粒度及びスラリー粘度を測定しながら、たとえば好ましくは平均粒度1μm以下となった時点で終了し得る。
湿式粉砕終了後、得られた粉砕物を遠心分離等の固液分離手段により、糖類を含む液状成分と低変性リグニンを含む固形成分とに固液分離される。得られた液状成分に溶出した糖類の量をたとえばソモギーネルソン法など公知の方法により測定し、糖化度が十分でない場合は必要に応じて固形成分に緩衝液と酵素を添加し、任意の温度で攪拌することによりさらに糖化を促進してもよい。
固液分離により得られる固形成分は、水で洗浄し、乾燥させることにより低変性リグニンを得ることができる。得られる低変性リグニンは、既存の抽出法によって得られるリグニンと比較して、β-エーテル結合が良好に保持され、縮合型の炭素-炭素結合が少ないことから、アルカリ性ニトロベンゼン酸化のような物理化学的リグニン分解反応を行うことにより良好に低分子化され、バニリン、バニリン酸、シリンガアルデヒド、シリンガ酸などの芳香族化合物単量体を高効率に得ることができる。
アルカリ性ニトロベンゼン酸化は、1939年にドイツのフロイデンベルグが提案した分解方法であり、針葉樹リグニンから20〜28%、広葉樹リグニンからは多くて50%程度の単量体芳香族化合物を得ることができる分解方法である。予め水酸化ナトリウムなどの試薬によりアルカリ性にした水溶液中に木粉もしくはリグニンを添加し、そこにニトロベンゼンをリグニンの0.1〜2.0倍量相当添加し、オートクレーブにて100〜200℃の任意の温度で1〜3時間攪拌しながら加熱する分解法である。
本発明において、低変性リグニンは、上記のように植物系原料の細胞壁に含まれるセルロースおよびヘミセルロースを糖化酵素で糖化して得られる固形成分から得られ、後述する実施例に記載する条件でアルカリ性ニトロベンゼン酸化反応により得られる芳香族化合物単量体の収率が15%以上であるものをいう。
固形成分分散液と粘土鉱物を混合した後に、得られた均一分散液を支持体上に塗布し、乾燥後に支持体から剥離させて、低変性リグニンと粘土鉱物を含み、垂直燃焼試験UL94 V−0相当の不燃性と400nmで90%以上の紫外線吸収特性を有するリグニン粘土複合膜を製造することができる。分散媒としては水が好適に使用される。得られるリグニン粘土複合膜は、支持体から剥離しても自立膜として振舞う。
粘土鉱物としては、天然あるいは合成物、好適には、例えば、ベントナイト、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイト、それらの混合物が挙げられる。これらの粘土鉱物は、その層間イオンをリチウムイオン、プロトン、アンモニウムイオンなどに交換することによってより好適に用いられる。
リグニンと粘土鉱物の質量比は、好適には、5質量部:95質量部〜40質量部:60質量部から選ばれる。
リグニン、粘土鉱物からなる混合液は強制的に撹拌させ、均一な分散液を作製することが好適である。均一な分散液を得る方法としては、激しく撹拌できる方法であれば特に限定されるものではなく、攪拌翼を備えた攪拌装置、振とう攪拌装置、ホモジナイザー等を用いる方法があり、特に、小さなダマをなくすためには、分散の最終段階でホモジナイザーを用いる方法が好ましい。ダマが分散液に残存している場合、分散液を濾器により濾すことより均一分散液とすることができる。次に、分散液を必要に応じて脱気処理する。脱気処理の方法としては、例えば、真空引き、加熱、遠心などによるがあるが、真空引きを含む方法がより好ましい。分散、濾し、脱泡の工程は1回でも複数回繰り返してもよい。
次に、上記分散液を支持体表面に一定厚みで塗布する。塗布は、キャスティング、ベーカーアプリケーション等によることができる。ついで、分散媒をゆっくりと蒸発させ、残部を膜状に成形する。支持体としては、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ガラスなどが好適に用いられる。このようにして形成された膜状固形物は、好適には、たとえば、真空乾燥、凍結真空乾燥及び加熱蒸発法の何れか、あるいはこれらの方法を組み合わせて乾燥される。
さらに、得られた膜状固形物を加熱することにより、耐水性が付与され、半透明(たとえば全光線透過率56%)を示し得る。この加熱は、通常100〜200℃で、30分〜3時間程度で行われる。
本発明のリグニン粘土複合膜の膜厚は、用途により選択され得るが、通常3〜100μm、好適には10〜50μmである。
本発明のリグニン粘土複合膜は、支持体から分離した自立膜として用いることが可能であり、はさみ、カッター等で、容易に任意の大きさ、形状に、切り取ることができる。
また、本発明のリグニン粘土複合膜は、低変性リグニンである植物由来芳香族系高分子と粘土鉱物とから成る機能膜であり、優れた紫外線吸収能に加えて、不燃性を有し、耐水性を有しながらも多孔構造を有するため高い透湿性・酸素ガス透過性を有する。また、自由水を10重量%以上保持し、粘土に由来するイオンを持つためプロトン伝導性も持ち合わせる。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
参考例
<低変性リグニンの調製>
スギないし稲わらをカッターミルまたはジェットミルにより0.02 〜 5 mm程度に粉砕し、植物粉を得た。植物粉500 gを4.5 Lの100 mMリン酸緩衝液 (pH = 5.0) に一晩浸した後、湿式粉砕装置LMZ4 (アシザワファインテック社製) に緩衝液とともに投入し、デュポンジェネンコア社製のセルラーゼ・ヘミセルラーゼ混合液 (OptimashXL及びOptimashBGそれぞれ50 mL) を添加し、50 ℃に保ちながら、湿式粉砕を開始した。LMZ4に用いるビーズはジルコニア金属製の0.5 mm径のものを用いた。植物粉をLMZ4に投入した後、木粉の粒度を測定して平均粒度が10 μmとなった時点でビーズを0.1 mm径に交換し、湿式粉砕を合計4時間行った。湿式粉砕を進めるにつれ植物粉懸濁液の粘度は減少した。得られた粉末の平均一次粒径は30 〜 40 nmであった。
粉砕終了後、遠心分離により上清と残渣とを分離した。上清中の糖をソモギーネルソン法により定量した。残渣を水で洗浄した後、残渣に再度セルラーゼ・ヘミセルラーゼ混合液及びリン酸緩衝液1 Lを添加し、50 ℃で12時間攪拌することにより糖化反応を行った。反応終了後、遠心分離により上清と残渣に分離し、残渣としてリグニン (低変性リグニン) を得た。得られた上清について、同様に糖量を定量した。得られた上清中の糖の合計量は約83%であった。植物粉に含まれるセルロース・ヘミセルロースの約83%は分解され、糖として上清に溶出していることが確認された。
<ニトロベンゼン酸化分解率の測定>
風乾した低変性リグニン粉末100 mg、1 N NaOH溶液7 mL、及びニトロベンゼン0.4 mLを10 mL容のステンレスオートクレーブに投入し、170 ℃で攪拌しながら2.5時間反応させた。反応終了後、内部標準としてp-ヒドロキシ安息香酸を15 mg添加した。等量のジエチルエーテルで3回抽出しニトロベンゼンと副反応物であるアニリン、アゾベンゼンを除去した。残った水層に塩酸を添加し、pH 1.0に調製した後、再度等量のジエチルエーテルで3回抽出した。得られた抽出液を減圧下で乾燥し、低変性リグニンから生成した芳香族化合物を得た。得られた芳香族化合物を、10%アセトニトリルを含む10 mMリン酸溶液に溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより、生成した芳香族化合物の定性及び定量を行った。芳香族化合物としてバニリンが20.926 mg、バニリン酸が1.72 mg、シリンガアルデヒドが1.87 mg得られ、用いた低変性リグニンから24.5%の割合で単量体の芳香族化合物が得られた。すなわち低変性リグニンのニトロベンゼン酸化分解率は、24.5%であった。一方、従来のパルプ製造過程で得られるサルファイトリグニン及びクラフトリグニンについて同様にニトロベンゼン酸化分解率を測定すると、7 〜 11%であった。
<低変性リグニン超純水分散液の調製>
上述の方法で得られた低変性リグニンについて、緩衝剤・酵素などの不純物を除去するため、以下の工程で洗浄した。低変性リグニンを含む同時酵素糖化粉砕残渣について、21000 × g、90分の条件の遠心分離処理により1〜2回上清の除去と超純水への分散を繰り返し、低変性リグニン超純水分散液を得た。低変性リグニン超純水分散液は7〜10重量%で冷蔵状態にて半年間は沈降を起こさない均一な分散液であった。乾燥状態のスギ由来リグニンないし稲わら由来リグニンについてRigaku社製TG-8120を用いて熱質量分析をおこなったところ、200 ℃までの加熱で質量減少が11重量%ないし13重量%であり、これは付着した水の脱着に由来するものと考えられた。
実施例1 <粘土鉱物―低変性リグニン複合膜の調製>
リチウム交換型精製ベントナイト(「クニピアM」:クニミネ工業株式会社)のゲル状分散液 (20 重量%;40 g) に超純水 (105.4 g) を加え、ホモジナイザーにて6000 rpm 15分の条件で混合した。混合後スギ由来低変性リグニン超純水分散液 (3.5 重量%;57.1 g) を加え、ホモジナイザーにて6000 rpm 25分の条件で混合した。混合後、30分の静置で空冷し、自転公転ミキサーにて混合モード2000 rpm 5分の条件で混合した。その後得られた分散液を目開き53μmの篩に通し、自転公転ミキサーにて混合モード2000 rpm 2分の条件で混合した。更に自転公転ミキサーにて脱泡モード2200 rpm 10分の条件で混合した。最終的に得られた分散液をPET (ポリエチレンテレフタレート) シート上に乗せ、キャスティングナイフを用いて延伸した。この際キャスティングナイフのクリアランスは0.6 mmであった。延伸した分散液を室温で乾燥した。乾燥後PETシートから膜を分離し、電気炉で150 ℃2時間加熱した。この加熱処理により、膜厚は24μmの粘土鉱物―低変性リグニン複合膜を得た。複合膜中の「クニピアM」とスギ由来低変性リグニンの割合は、「クニピアM」:低変性リグニン=80重量%:20重量%であった。
得られた膜は、加熱前の形態を保持しており、柔軟性とハンドリング性を有する膜であった。日本電色工業社製HAZE METER (NDH5000) にて粘土鉱物―スギ由来低変性リグニン複合膜の全光線透過率およびヘイズ値を評価したところそれぞれ56%、41%であった。
得られた膜について分光光度計 (HITACHI U-2910) により紫外可視吸収スペクトルを測定し、波長ごとの透過率を評価したところ、400 nmにおける透過率が9.6%であり、それ以下の紫外線領域 (400 nm以下) においても10%以下であった。リグニンが持つ芳香族網目構造に由来するπ共役が紫外波長領域の光を吸収していると考えられた。
得られた膜についてRigaku社製TG-8120を用いて熱質量分析をおこなったところ、200 ℃までの加熱で質量減少が8.7重量%であり、これは付着した水の脱着に由来するものと考えられた。
また、得られた膜について水蒸気透過度をカップ法 (防湿包装材料の透湿度試験法; JIS K 8123) にて測定した。測定時間24時間での透過度は873 g/m2/dayであった。
加えて、得られた膜についてMocon法 (プラスティック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第2部:等圧法; JIS K 7126-2 : 2006) による酸素透過度評価をおこなった。電界センサ法による酸素ガス透過度の試験法に従い、クーロメトリック酸素透過率測定装置 (MOCON社製OX-TRAN 2/22L) にて温度40 ℃、相対湿度90%、酸素ガス濃度5%、透過面積5 cm2という条件で測定したところ、測定時間24時間での酸素透過度は406 cc/m2/day/atmであった。
また、得られた膜について力学強度を引っ張り破断試験にて評価した。JTT LSC-005/30型の引張試験器にて一軸延長試験をおこなったところ、ヤング率は1.29 GPa、引っ張り破断強度は0.49 GPa、引っ張り破断ひずみは0.06 mm/mmであった。
得られた膜について東陽テクニカ膜抵抗測定システム (MTS740型) により、プロトン伝導度を測定した。10 MHz 〜 10 Hz、OVDC 20 mVの条件で、プロトン伝導度は80 ℃湿度90%で10-5 S/cmオーダー、25 ℃湿度20%で10-7 S/cmオーダーであった。
また、得られた膜について難燃性試験UL94 (垂直燃焼試験) に基づく難燃性を評価した。20 mm垂直燃焼試験 (IEC60695-11-10 B法, ASTM D3801) に基づき125 ± 5 mm × 13.0 ± 0.5 mm×24 μmの短冊試料をクランプに垂直に取付け、20 mm炎による10秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動により難燃性を分類したところ、粘土鉱物―スギ由来低変性リグニン複合膜はV−0に適合する難燃性を示した。
実施例2 <粘土鉱物―低変性リグニン複合膜の調製>
稲わら由来低変性リグニン超純水分散液を用いて、実施例1と同様の分散液を調製し、PETシートに同様の条件で延伸し、室温で乾燥をおこなった。乾燥後PETシートから膜を分離し、電気炉で150 ℃、2時間加熱した。この加熱処理により、膜厚は26 μmの粘土鉱物―低変性リグニン複合膜を得た。複合膜中の「クニピアM」と稲わら由来低変性リグニンの割合は、「クニピアM」:低変性リグニン = 80重量%:20重量%であった。
得られた膜は、加熱前の形態を保持しており、柔軟性とハンドリング性を有する膜であった。日本電色工業社製HAZE METER (NDH5000) にて粘土鉱物―稲わら由来低変性リグニン複合膜の全光線透過率およびヘイズ値を評価したところそれぞれ56%、57%であった。
得られた膜について分光光度計 (HITACHI U-2910) により紫外可視吸収スペクトルを測定し、波長ごとの透過率を評価したところ、400 nmにおける透過率が5.6%であり、それ以下の紫外線領域 (400 nm以下) においても10%以下であった。リグニンが持つ芳香族網目構造に由来するπ共役が紫外波長領域の光を吸収していると考えられた。またスギ由来の低変性リグニンに比べ稲わら由来の低変性リグニンは架橋構造を数多く作るシリンギル構造を有するため、π共役がより広がり紫外線吸収能が高いと予想される。
得られた膜についてRigaku社製TG-8120を用いて熱質量分析をおこなったところ、200 ℃までの加熱で質量減少が13重量%であり、これは付着した水の脱着に由来するものと考えられた。
また、得られた膜について水蒸気透過度をカップ法 (防湿包装材料の透湿度試験法; JIS K 8123) にて測定した。測定時間24時間での透過度は1092 g/m2/dayであった。スギ由来リグニンに比して稲わら由来リグニンの含水率が高いため水蒸気透過度が比較的高いと見込まれる。
加えて、得られた膜についてMocon法 (プラスティック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第2部:等圧法; JIS K 7126-2 : 2006) による酸素透過度評価をおこなった。電界センサ法による酸素ガス透過度の試験法に従い、クーロメトリック酸素透過率測定装置 (MOCON社製OX-TRAN 2/22L) にて温度40 ℃、相対湿度90%、酸素ガス濃度5%、透過面積5 cm2という条件で測定したところ、測定時間24時間での酸素透過度は52.8 cc/m2/day/atmであった。スギ由来リグニンに比して稲わら由来リグニンの含水率が高いためガス透過が阻害され、酸素透過度が比較的低いと見込まれる。
また、得られた膜について力学強度を引っ張り破断試験にて評価した。JTT LSC-005/30型の引張試験器にて一軸延長試験をおこなったところ、ヤング率は0.77 GPaであった。また歪0 〜 0.5 mm/mmの範囲で明確な破断点は確認されなかった。
得られた膜について東陽テクニカ膜抵抗測定システム (MTS740型) により、プロトン伝導度を測定した。10 MHz 〜10 Hz、OVDC 20 mVの条件で、プロトン伝導度は80 ℃湿度90%で10-5 S/cmオーダー、25 ℃湿度20%で10-7 S/cmオーダーであった。
また、得られた膜についてUL94(垂直燃焼試験) に基づく難燃性を評価した。20 mm垂直燃焼試験 (IEC60695-11-10 B法, ASTM D3801) に基づき125 ± 5 mm × 13.0 ± 0.5 mm×24 μmの短冊試料をクランプに垂直に取付け、20 mm炎による10秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動により難燃性を分類したところ、粘土鉱物―稲わら由来低変性リグニン複合膜はV−0に適合する難燃性を示した。
実施例3 <粘土鉱物―低変性リグニン複合膜の調製>
実施例1と同様の条件により、「クニピアM」と稲わら由来低変性リグニンの比率がそれぞれ90重量%:10重量%、70重量%:30重量%の複合膜を作成した。膜厚は約30 μmであった。得られた膜の全光線透過率およびヘイズ値はそれぞれ50%、76% (90重量%:10重量%) ないし37%、63% (70重量%:30重量%) であった。400 nmにおける透過率は4.2% (90重量%:10重量%) ないし2.4% (70重量%:30重量%) であった。
実施例4 <粘土鉱物―低変性リグニン複合膜の調製>
実施例1と同様の条件により、Li-スティーブンサイトとスギ由来低変性リグニンの比率が80重量%:20重量%の複合膜を作成した。膜厚は約20 μmであった。得られた膜の全光線透過率およびヘイズ値はそれぞれ65%、12%であった。また200 ℃までの加熱で質量減少が13重量%であり、これは付着した水の脱着に由来するものと考えられた。
本発明のリグニン粘土複合膜は、植物由来芳香族系高分子と粘土鉱物から成る機能膜であり、優れた紫外線吸収能、不燃性、さらには透湿性、ガス透過性、プロトン伝導性を有し得るので、建築用/自動車用ウィンドウフィルム、防水/遮水シート、電池用セパレーター等の幅広い用途で利用可能である。

Claims (7)

  1. アルカリ性ニトロベンゼン酸化反応により得られる芳香族化合物単量体の収率が15%以上である低変性リグニンと粘土鉱物とを含み、垂直燃焼性試験UL94 V−0相当の不燃性と400nmで90%以上の紫外線吸収特性とを有するリグニン粘土複合膜。
  2. 膜厚が3〜100μmである請求項1に記載のリグニン粘土複合膜。
  3. 低変性リグニンと粘土鉱物の質量比が、5質量部:95質量部〜40質量部:60質量部である請求項1または2に記載のリグニン粘土複合膜。
  4. セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含有する植物系原料をセルロースおよびヘミセルロースの糖化酵素の存在下に湿式粉砕して粉砕物を得、該粉砕物を、糖類を含む液状成分とアルカリ性ニトロベンゼン酸化反応により得られる芳香族化合物単量体の収率が15%以上である低変性リグニンを含む固形成分とに固液分離し、ついで該固形成分分散液と粘土鉱物を混合した後に、支持体上に塗布して乾燥することにより、低変性リグニンと粘土鉱物とを含み、垂直燃焼試験UL94 V−0相当の不燃性と400nmで90%以上の紫外線吸収特性とを有するリグニン粘土複合膜を製造することを特徴とするリグニン粘土複合膜の製造方法。
  5. 膜厚が3〜100μmである請求項4に記載のリグニン粘土複合膜の製造方法。
  6. 低変性リグニンと粘土鉱物の質量比が、5質量部:95質量部〜40質量部:60質量部である請求項4または5に記載のリグニン粘土複合膜の製造方法。
  7. リグニン粘土複合膜を100〜200℃で加熱処理して耐水化する請求項4〜6のいずれか1項に記載のリグニン粘土複合膜の製造方法。
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