JP6955920B2 - ガラス合紙 - Google Patents
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フロート法により成形されたディスプレイ用ガラスは、錫と接した面である錫面(ボトム面)と、錫と接していない反対の面である非錫面(トップ面)とを有し、錫面が、極めて微細な配線や電極等の電子部材が設けられる電子部材搭載面となる。ディスプレイ用ガラスは、高い平坦性が要求されるので、錫面と非錫面の表面管理が必要であり、ディスプレイ用ガラス表面の研磨が必要となる。この研磨されたディスプレイ用ガラス表面は吸着性に大きな要因となる表面水酸基が多く存在し、汚染物質が吸着し易い性状を示す。
一方、ディスプレイ用ガラスの電子部材搭載面に接触させるガラス合紙の艶面は平滑度が高いため、ディスプレイ用ガラスに密着する。また、当該ガラス合紙の艶面のプリント・サーフ表面粗さが1.0μm以上10.0μm以下であり、ベック平滑度が150秒以上であることにより、特に液晶フラットパネルディスプレイやプラズマディスプレイ用ガラスのような高精細なディスプレイ用ガラスに対して、ガラス合紙の艶面が密着することにより、ガラスの搬送工程でガラスとガラス合紙が擦れることが抑制される。その結果、上記ディスプレイ用ガラスとガラス合紙とが擦れ合うことによる微小な傷やガラス合紙の汚染のディスプレイ用ガラス表面への転写が発生することを抑制し、ガラス合紙に起因する上記ディスプレイ用ガラスの性能の不具合を低減することができる。
当該ガラス合紙は、パルプ繊維を主成分とし、一方の面が艶面、他方の面が非艶面である。当該ガラス合紙は、上記艶面のJIS−P8151(2004)に準拠して測定されたプリント・サーフ表面粗さが1.0μm以上10.0μm以下であり、JIS−P8119(1998)に準拠して測定されたベック平滑度が150秒以上であり、上記非艶面の上記ベック平滑度が10秒以下であり、JAPAN.TAPPI No.32−2に規定される点滴吸水度が30秒以下である。
上記パルプ繊維は、基紙の主成分を構成する。主成分とは、質量基準で最も含有量の多い成分をいう。当該ガラス合紙に使用するパルプ繊維としては、特に限定されないが、比較的灰分の少ないパルプ繊維を用いることが好ましい。上記パルプ繊維としては、例えばクラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)等の機械パルプ、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材繊維パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプ、合成パルプ、合成繊維、レーヨン繊維等が挙げられる。上記パルプ繊維としては、2種以上混合して使用してもよいが、1種類のパルプ繊維を用いることがより好ましい。
ディスプレイ用ガラス表面に存在する汚染物質の洗浄除去を容易にする観点からパルプスラリー中に界面活性剤を配合すると好ましい。ディスプレイ用ガラス表面の汚染は、オイルミスト、塵埃、包装材からの転写等、色々な要因があり、ディスプレイ用ガラス表面の汚染を全く生じさせないで搬送や保管することは困難である。従って、ディスプレイ用ガラス表面上の汚染を軽減するためには、汚染の発生を抑制する手段と、生じた汚染の除去を容易にする手段との組合せの発想が必要である。本件発明者らは、汚染の除去を容易にする工夫としてガラス合紙中に界面活性剤を含有させる検討を併せて行い、特に汚染除去が困難なシリコーン系の汚染に対する手段として、シリコーンの乳化作用が高いノニオン性界面活性剤を含有させることが好ましい事を見出した。上記ノニオン性界面活性剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル型、脂肪アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のエーテル型、アルキルグリコシドを挙げられる。これらのうち、汚染原因となるガラス合紙の消泡剤等に広く利用されるシリコーンは乳化作用が高く、洗浄処理において汚染物除去効果が高いエーテル型のノニオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがより好ましい。
サイズ剤としては、ロジン系のサイズ剤を用いることが好ましい。ロジン系のサイズ剤を配合すると硫酸バンド等の定着剤を添加する必要があるが、他のASA(アルケニルコハク酸無水物)サイズ剤やAKD(アルキルケテンダイマー)サイズ剤と異なり、ロジン系のサイズ剤は、抄紙系等での汚れ発生が少ないサイズ剤である。換言すれば、ロジン系のサイズ剤は、ガラス合紙に用いても汚染性が低いサイズ剤である。さらに、ロジン系のサイズ剤は、他のサイズ剤と比べて高い軟化点を有しているため、比較的高温で乾燥及び艶付けを行うヤンキードライヤーを使用する操業において好適に用いることができる。
当該ガラス合紙の基紙においては、上記界面活性剤及びサイズ剤以外のその他の内添剤が添加されていてもよいが、ディスプレイ用ガラス表面への汚染が生じるおそれがない範囲の添加量で、その他の内添剤を添加することにより、基紙中の樹脂分を低減し、ガラスへの樹脂分の付着を低減することができる。このような内添剤としては、ガラス表面に傷及び汚染を発生させない範囲で、例えば、硫酸アルミニウム、硫酸、ロジン系、石油樹脂系、高級脂肪酸系、スチレン−アクリル系、スチレン−マレイン酸系、アルケニル無水コハク酸系、アルケニルケテンダイマー系、アルキルケテンダイマー系等のサイズ剤、ポリアクリルアミド等の各種紙力増強剤、濾水歩留り向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等の耐水化剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、填料、染料等を使用することができる。
プリント・サーフ表面粗さは、JIS−P8151(2004)に準拠して測定した値である。プリント・サーフ表面粗さは、空気の流通量から平滑性を求める装置であるが、ベック平滑度と異なり、ガラス合紙表面の微細な凹凸に基づく結果が得られるので表面性を精査に評価できる。
ベック平滑度は、JIS−P8119(1999)に準拠して測定した値である。ベック平滑度は、プリント・サーフ表面粗さと同様に空気の流通量から平滑性を求める装置であり、比較的広い面におけるマクロ的な平滑性を評価する。当該ガラス合紙においては、ベック平滑度により表面のいわゆるうねり性を評価できる。このように、上記プリント・サーフ表面粗さとベック平滑度との評価値の両者を所定の範囲に収めることで、微視的な面と或る程度広い面における傷及び汚染の抑制性を評価できる。
当該ガラス合紙点滴吸水度は、Japan TAPPI No.32−2(吸収性の紙の吸水速度試験方法)に準拠して、滴下水量1μLで測定したときのガラス合紙に完全に吸収されるまでの時間(秒)で表す。
灰分は、JIS−P8251(2003)に準拠して測定される値である。当該ガラス合紙は、厚み方向に20:80の割合で艶面側領域と上記非艶面側領域とに分割した場合における上記艶面側領域の灰分の上限としては、0.5%が好ましく、0.3%がより好ましい。上記灰分が上記範囲内であることで、ディスプレイ用ガラスに対するガラス合紙に起因する微小な傷の抑制効果を向上することができる。
当該ガラス合紙の坪量の下限としては、45g/m2が好ましく、50g/m2がより好ましい。上記坪量が45g/m2未満では、ディスプレイ用ガラスへの合紙供給や梱包時における作業性が低下するおそれがある。上記上限としては、65g/m2が好ましい。近年ではディスプレイ用ガラスの大型化と共に搬送効率向上を目的に一度に搬送するディスプレイ用ガラスの枚数が増加している。ディスプレイ用ガラスの間に侠持させる合紙の厚みが大きいと、一度に搬送するディスプレイ用ガラスの枚数が少なくなる。従って、ガラス合紙は、ディスプレイ用ガラスに対するガラス合紙に起因する微小な傷や汚染の抑制効果と併せて軽量化も求められている。ガラス合紙の坪量が65g/m2を超えると上記軽量化の観点から好ましくない。
当該ガラス合紙の密度の下限としては、0.55g/cm3が好ましく、0.60g/cm3がより好ましい。当該ガラス合紙の密度が上記下限未満である場合、当該ガラス合紙の強度が不足するおそれがある。一方、当該ガラス合紙の密度の上限としては、当該ガラス合紙中に含まれる水分及び透気量の抑制、並びに上記坪量を有するガラス合紙のしなやかさを向上させる観点から0.80g/cm3が好ましい。さらに、当該ガラス合紙におけるプリント・サーフ表面粗さ及びベック平滑度が上述した範囲を充足できるという観点からも、当該ガラス合紙の密度が上記範囲内であることが好ましい。
クラークこわさはJIS−P8143(2009)に準拠して測定された値であり、ガラス合紙の剛度の指標となるものである。ガラス合紙は、使用時において所定の設置方向に設置されない場合があることから、紙の流れ方向及び紙の幅方向の配置が一定ではない場合がある。従って、ガラス合紙の紙の流れ方向と上記流れ方向と直交する紙の幅方向とにおけるクラークこわさの差の絶対値が過度に大きいことは、ガラス合紙を侠持したディスプレイ用ガラスの集合体の搬送時にガラス合紙へのシワの噛み込み、メクレ、端折れ等が生じやすくなるため好ましくない。当該ガラス合紙の紙の流れ方向のクラークこわさとしては、40以上55以下が好ましく、幅方向のクラークこわさとしては18以上35以下が好ましい。
当該ガラス合紙は、JIS−P8220−1(2012)のパルプの離解方法に準拠して離解することによって離解パルプとし、この離解パルプをJIS−P8121−2(2012)のカナダ標準ろ水度試験方法に準拠して測定されるフリーネスの下限としては、450mlが好ましく、470mlがより好ましい。離解パルプのフリーネスが450ml未満であると、当該ガラス用合紙は、ガラスの間から突出した合紙が直立の状態を保ち難くなるため、取り出し装置で合紙を掴むことができないおそれがある。一方、上記上限としては、550mlが好ましい。上記フリーネスが550mlを超えると、繊維同士の絡み合いや結合点の数が少なくなり、操業においての断紙が発生しやすくなるおそれがある。
当該ガラス合紙の製造方法は特に限定されないが、例えばパルプ繊維を主成分とし、界面活性剤及びサイズ剤を含むパルプスラリーを抄紙する工程を含む。次に、ヤンキードライヤーにて乾燥し、ヤンキードライヤーとの接触面が艶面として形成される。上記製造方法により、基紙中に界面活性剤と、サイズ剤とが内添された当該ガラス合紙を得ることができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
本件発明に基づくガラス合紙は、多筒式ドライヤーで乾燥及び平滑化される両更クラフト紙と異なり、ヤンキー式ドライヤーにて乾燥処理され、ガラス合紙表面が艶面と非艶面との両面性を有する。そして、ディスプレイ用ガラスの電子素子が設けられる電極搭載面にガラス合紙の艶面が当接する様に用いられる。そのため、ディスプレイ用ガラス表面の高い平坦性の面に、同様に高い平坦性を有するガラス合紙の艶面の平滑度が高いので密着する。その結果、本件発明の課題である傷入りや汚染を改善できる効果を醸し出す事が出来るとともに、上記ガラス合紙が大型化されたディスプレイ用ガラスに対して密着性を保持することにより、ガラス用合紙の脱落や皺入りが生じることがなく、ディスプレイ用ガラスに対する保護性が高い。さらに、当該ガラス合紙は、ディスプレイ用ガラス及びガラス合紙の挿入や取り出し等のハンドリング性に優れ、高いハンドリング効果も確保することができる。
PPS TESTER(型番:SE−115 ローレンツェンアンドベットレー社製)を用い、ソフトバッキング、クランプ圧1MPaにて、JIS−P8151(2004)に記載の「プリント・サーフ表面粗さの測定方法」に準拠して測定した。
JIS−P8119(1998)に記載の「ベック平滑度の測定方法」に準拠して測定した。
JAPAN.TAPPI No.32−2に記載の「紙−吸水性試験方法−第2部:滴下法」に準拠して測定した。滴下水量1μLで測定した。試料に完全に吸収されるまでの時間(秒)を測定した。
各実施例及び比較例を厚み方向に20:80の割合で艶面側領域と上記非艶面側領域とに分割した場合における上記艶面側領域の灰分(%)を測定した。灰分は、JIS−P8251(2003)に記載の「灰分の測定方法」に準拠して測定した。
JIS−P8142(1998)に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
JIS−P8118(1998)に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
JIS−P8118(1998)に記載の「「厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
JIS−P8143(2009)に記載の「クラークこわさ測定方法」に準拠して測定した。
得られたガラス合紙をJIS−P8220−1(2012)のパルプの離解方法に準拠して離解することによって離解パルプとし、この離解パルプをJIS−P8121−2(2012)のカナダ標準ろ水度試験方法に準拠して測定した。
(1)LBKPの100部のパルプスラリー中に、以下の原料を添加した。
ロジン系サイズ剤(荒川化学工業社の「サイズパインE」):1.35kg/パルプt
硫酸バンドとしての硫酸アルミニウム(大明化学工業):6.00kg/パルプt
界面活性剤としての脂肪酸エステル(星光PMC社のDF6300):2.00kg/パルプt
(2)このパルプスラリーをワイヤーパートが長網抄紙機を用いて、抄紙した。
(3)次に、ヤンキードライヤーを用いてワイヤー面を艶面(表面)とし、実施例1のガラス合紙を得た。
(4)実施例1のガラス合紙の物性値は以下のとおりである。
艶面のプリント・サーフ表面粗さ:5.0μm
ベック平滑度:艶面230秒、非艶面6秒
非艶面の点滴吸水度:20秒
艶面側領域の灰分:0.2(%)
坪量:60g/m2
紙厚:85μm
密度:0.70g/cm3
クラークこわさ:流れ方向43cm3/100、幅方向30cm3/100
流れ方向と幅方向との差異(絶対値)13
フリーネス:530mL(mL)
原料の種類、含有量及び物性値を表1に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1〜6のガラス合紙を得た。また、比較例6は、多筒式ドライヤーで乾燥し、片艶処理を行わなかった。なお、以下の表1中の「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
得られた各ガラス合紙に対して、下記方法にて、液晶ディスプレイ用無アルカリガラスへの傷および汚染について評価した。評価結果を表2に示す。
(ディスプレイ用ガラス表面への傷)
◎:表面に汚れ・傷は一切見受けられなかった。
○:表面にわずかに傷が見られるが、使用には差し支えのない範囲と判断される。
△:表面に傷がやや多く、使用には差し支えがある範囲と判断される。
×:表面に傷が多く、使用には差し支えがある範囲と判断される。
(ディスプレイ用ガラス表面への汚染)
◎:表面に汚染は一切見受けられなかった。
○:表面に光を照らし、僅かに油膜状の付着が見られるが、使用には差し支えのない範囲と判断される。
△:表面に油膜状の付着が僅かに見られ、使用には差し支えがある範囲と判断される。
×:表面に油膜状の汚れが散見される。
(ハンドリング性)
◎:ハンドリング性が非常に良好である。
○:作業環境条件によっては、若干ハンドリング性が低下するが、使用には差し支えのない範囲と判断される。
△:作業環境条件によっては、ハンドリング性がやや劣り、使用には差し支えがある範囲と判断される。
×:作業環境条件によらず、ハンドリング性が劣り、使用には差し支えがある範囲と判断される。
一方、比較例1〜比較例6は、ディスプレイ用ガラス表面への傷及び汚染、並びにハンドリング性の全てにおいて劣っていた。
Claims (4)
- パルプ繊維を主成分とし、
ロジン系サイズ剤、硫酸バンド及び界面活性剤を含み、
上記パルプ繊維が広葉樹クラフトパルプからなり、
離解パルプのフリーネスが450ml以上507ml以下であり、
一方の面が艶面、他方の面が非艶面であり、
上記艶面のJIS−P8151(2004)に準拠して測定されたプリント・サーフ表面粗さが1.0μm以上10.0μm以下であり、JIS−P8119(1998)に準拠して測定されたベック平滑度が150秒以上であり、
上記非艶面の上記ベック平滑度が10秒以下であり、JAPAN.TAPPI No.32−2に規定される点滴吸水度が30秒以下であり、
厚み方向に20:80の割合で艶面側領域と上記非艶面側領域とに分割した場合における上記艶面側領域のJIS−P8251(2003)に準拠して測定された灰分が0.5%以下であるガラス合紙。 - 上記ロジン系サイズ剤の含有量が、0.5kg/パルプt以上2.0kg/パルプt以下である請求項1に記載のガラス合紙。
- 坪量が45g/m2以上65g/m2以下であり、密度が0.55g/cm3以上0.80g/cm3以下である請求項1又は請求項2に記載のガラス合紙。
- 上記ガラス合紙の紙の流れ方向と上記流れ方向と直交する紙の幅方向とにおけるJIS−P8143(2009)に準拠して測定されたクラークこわさの差の絶対値が17以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のガラス合紙。
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