[0006] 上記で特定された課題又は従来技術に関連した何らかの他の課題に対処するリソグラフィ装置を提供するのが望ましいであろう。
[0007] 本発明の第1の態様によれば、パターニングされた放射ビームを投影して基板テーブル上に保持された基板に露光エリアを形成するように構成された投影システムを備えるリソグラフィ装置が提供され、このリソグラフィ装置は基板を冷却する冷却装置をさらに備えており、冷却装置は基板テーブルの上方に露光エリアに隣接して配置された冷却要素を備え、冷却要素は基板テーブル上に保持された基板から熱を除去するように構成されている。
[0008] 冷却要素は、基板テーブル上に保持された基板と熱的に連通していてもよい。
[0009] 冷却要素によってもたらされる冷却は、露光エリアに近接した基板エリアにおける加熱を局所的に抑制する。そのエリアにおける加熱は基板テーブルのバール上での基板のスリップにつながる基板の膨張を引き起こすおそれがあり、するとパターンが基板上に投影される精度が低下するので、これは有利である。
[00010] 冷却要素は、露光エリアを二等分する線から3cm以内にあるエリアを冷却するように構成されていてもよい。
[00011] 冷却要素は、露光エリアの縁部から2cm以内にあるエリアを冷却するように構成されていてもよい。
[00012] 冷却要素は、リソグラフィ装置のスキャン方向と略一致する方向で露光エリアから離れていてもよい。
[00013] 冷却要素は、露光エリアの両側に設けられた一対の冷却要素の一方であってもよい。
[00014] 冷却要素は、本体と、本体の最下面に設けられた開放空洞とを備えていてもよく、その空洞にガスを送出するように構成されたガス送出導管をさらに備える。ガス導管は、冷却要素の空洞内の圧力を制御することを可能にする。
[00015] 空洞は、基板の上面と併せて、ガス送出導管によって送出されたガスを受容する容積を形成するように構成されていてもよい。
[00016] リソグラフィ装置の非スキャン方向における冷却要素の空洞の範囲は、リソグラフィ装置の非スキャン方向における露光エリアの最大長以上であってもよい。
[00017] 空洞は、使用中の基板の上面から1mm未満の蓋部を有していてもよい。
[00018] 空洞蓋部は基板テーブルの平面と略平行であってもよい。
[00019] 空洞に送出されるガスの圧力と、空洞蓋部と基板表面との間隔との組み合わせは、基板の適応係数が基板から冷却要素本体への熱の伝達に有意な影響を有さないようなものであり得る。
[00020] 空洞蓋部は傾いていてもよく、蓋部はリソグラフィ装置のスキャン方向を横切って延びる軸を中心として傾斜している。
[00021] 冷却要素は、ガス送出導管に接続されたチャンバを含む本体を備えていてもよく、チャンバの床には開口が設けられている。
[00022] チャンバの床の開口は穴のアレイを備えていてもよい。
[00023] チャンバの床は多孔質材料から形成されてもよく、開口は多孔質材料の気孔であってもよい。
[00024] 冷却要素は、引込位置から展開位置へと移動可能な少なくとも1つのシャッタをさらに備えていてもよく、シャッタを引込位置から展開位置へと移動させると冷却要素の床のいくつかの開口が閉鎖される。
[00025] 少なくとも1つのシャッタは、シャッタが引込位置にあるときにはいずれの開口もシャッタによって閉鎖されないように構成されていてもよい。
[00026] 少なくとも1つのシャッタは、引込位置と展開位置との間の中間位置へと移動可能であってもよい。
[00027] 冷却要素は、チャンバの両側に設けられた追加的なチャンバを備えていてもよく、これらの追加的なチャンバは異なる1つ又は複数のガス送出導管に接続されている。
[00028] リソグラフィ装置は、チャンバへのガスの送出を制御するように構成された1つのバルブと、追加的なチャンバへのガスの送出を別個に制御するように構成された1つ以上のバルブとをさらに備えていてもよい。
[00029] 冷却要素の本体は、3mm以下の厚さを有していてもよい。
[00030] 冷却要素の本体は、露光エリアの縁部から3mm以下のところに配置されてもよい。
[00031] 冷却要素の本体は、リソグラフィ装置のスキャン方向で5mm未満の寸法をとる最下面を有していてもよい。
[00032] 冷却要素の本体は、放射ビームの方に向いた傾斜内面を有していてもよい。
[00033] 冷却要素は、冷却要素から熱を除去するように構成された除熱システムを含んでいてもよい。
[00034] 除熱システムは流体冷却システムであってもよい。
[00035] 除熱システムはペルチェ式クーラであってもよい。ペルチェ式クーラは、流体冷却システムと空洞との間に配置されてもよい。
[00036] 流体冷却システムは、ガスを冷却するように構成され冷却要素から遠隔に配置されているクーラと、冷却要素を冷却するために冷却されたガスを冷却要素に送出するように構成された入口導管と、冷却要素からガスを除去するように構成された出口導管とを備えていてもよい。
[00037] 入口導管及び出口はいずれも、冷却要素の移動に適応する可撓部を含んでいてもよい。
[00038] 入口導管には温度センサが設けられてもよく、出口導管には温度センサが設けられてもよい。
[00039] 装置は、10リットル/分を上回る流量でガスを提供するように構成されたガス源をさらに備えていてもよい。
[00040] 装置は、2リットル/分未満の流量でガスを提供するように構成されたガス源をさらに備えていてもよい。
[00041] 除熱システムはクーラに接続されたヒートパイプを備えていてもよい。
[00042] ヒートパイプは、垂直方向よりも水平方向に大きい断面形状を有していてもよい。
[00043] ヒートパイプは、冷却要素の移動に適応する可撓部を含んでいてもよい。
[00044] ヒートパイプは、マイクロヒートパイプであってもよい。
[00045] 流体冷却システムは、ポンプと、コンデンサと、アキュムレータとを備える2相冷却システムであってもよい。
[00046] 2相冷却システムは、冷却要素に設けられた温度センサをさらに備えていてもよい。
[00047] 流体冷却システムは熱交換器に設けられた狭窄部を含んでいてもよく、狭窄部は、冷却要素を冷却するために用いられるガスを冷却するように構成されている。
[00048] 冷却要素にはヒータが設けられていてもよい。
[00049] 流体冷却システムと空洞との間にはペルチェ式クーラが配置されてもよい。
[00050] リソグラフィ装置は、200パスカル以上の圧力でガスを送出するように構成されたガス供給をさらに備えていてもよい。ガス供給は100kPa以上の圧力でガスを送出するように構成されていてもよい。ガス供給は約500kPa又はそれよりも高い圧力でガスを送出するように構成されていてもよい。除熱にはどんな圧力でも適しているが、ガス圧を高めることによってガス密度が高められ、より高いガス密度では熱をより効率的に除去することができる。
[00051] 冷却要素は使用中の基板から20ミクロン以上の間隔を有するように構成されていてもよい。
[00052] 冷却要素は使用中の基板から200ミクロン以下の間隔を有するように構成されていてもよい。
[00053] 冷却要素は、冷却要素の下から外向きのガス流を提供するように構成されていてもよく、このガス流は冷却要素と基板との接触が発生するのを防止又は阻止するクッションとして作用する。
[00054] 冷却要素は、予期せぬ動きが検出された場合に冷却要素を基板から遠ざけるべく引っ張るように構成された引込機構を含むサポートに設けられてもよい。
[00055] 冷却要素は、液体の液滴を基板上に導くように配置されたノズルのアレイを備えていてもよい。
[00056] 冷却要素は、使用中の基板から50ミクロン以上の間隔を有するように構成されていてもよい。
[00057] 冷却要素は、使用中の基板から1ミリメータ以上の間隔を有するように構成されていてもよい。
[00058] リソグラフィ装置の非スキャン方向における冷却要素のノズルのアレイの範囲は、リソグラフィ装置の非スキャン方向における露光エリアの最大長と等しいか又はそれより大きくてもよい。
[00059] ノズルのアレイは、冷却要素の底面全体にノズルが一様に分配されている二次元アレイであってもよい。
[00060] ノズルは、液体液滴におよそ数十ミクロン又はそれよりも小さい直径を与えるように構成されていてもよい。
[00061] 本発明の第2の態様によれば、パターニングされた放射ビームを投影して基板テーブル上に保持された基板に露光エリアを形成することと、冷却装置を用いて基板を冷却することと、を備えるリソグラフィ方法が提供され、冷却装置は基板テーブルの上方に露光エリアに隣接して配置された冷却要素を備え、この冷却要素が基板から熱を除去するように作用する。
[00062] 冷却要素は、基板テーブル上に保持された基板と熱的に連通していてもよい。
[00063] 冷却要素は、露光エリアを二等分する線から3cm以内にあるエリアを冷却するように構成されていてもよい。
[00064] 冷却要素は、露光エリアの縁部から2cm以内にあるエリアを冷却するように構成されていてもよい。
[00065] 冷却要素は、本体と、本体の最下面に設けられた開放空洞であって基板の上面と併せて容積を形成する開放空洞と、その容積にガスを送出するように構成されたガス送出導管とを備えていてもよい。
[00066] 空洞は、基板の上面から1mm未満の蓋部を有していてもよい。
[00067] 冷却要素は、ガス送出導管に接続されたチャンバを含む本体を備えていてもよく、チャンバの床には開口が設けられている。
[00068] ガスは200パスカル以上の圧力で容積へと送出されてもよい。ガスは100kPa以上の圧力で容積へと送出されてもよい。ガスは約500kPa又はそれよりも高い圧力で容積へと送出されてもよい。
[00069] 冷却要素は基板から20ミクロン以上離れていてもよい。
[00070] 冷却要素は基板から200ミクロン以下離れていてもよい。
[00071] 冷却要素は、液体の液滴を基板上に導くノズルのアレイを備えていてもよい。
[00072] 冷却要素は基板から50ミクロン以上離れていてもよい。
[00073] 冷却要素は基板から1mm以上離れていてもよい。
[00074] リソグラフィ装置の非スキャン方向における冷却要素のノズルのアレイの範囲は、リソグラフィ装置の非スキャン方向における露光エリアの最大長と等しいか又はそれより大きくてもよい。
[00075] ノズルのアレイは、基板上に液体液滴の一様な分配をもたらすように配置されていてもよい。
[00076] 液体は水であってもよい。
[00077] 本発明の第3の態様によれば、基板テーブル上に保持された基板上にパターニングされた放射ビームを投影するように構成された投影システムを備えるリソグラフィ装置が提供され、このリソグラフィ装置は、基板が基板テーブル上に設置される前に基板の温度を基板テーブルの温度を上回る温度に調整するように構成された基板温度調整ユニットをさらに備えている。
[00078] すると、基板は基板テーブル上に設置されるときに基板テーブルの温度まで冷え、それによって基板に応力が導入されるので、これは有利である。基板に導入される応力は、基板の外縁部を基板の中心に向かって内側に引き寄せる傾向がある。基板が放射ビームを用いてパターニングされるとき、基板は加熱され、基板の外縁部を基板の中心から外側に遠ざかるように押す傾向がある応力が導入される。既に基板の冷却の際に導入された応力は、基板の加熱によって引き起こされる応力を少なくとも部分的に打ち消し、それによって基板が経験する累積応力が低減される。
[00079] 基板温度調整ユニットは、基板の温度を、基板テーブルの温度を最大で約0.5℃上回る温度に調整するように構成されていてもよい。
[00080] 本発明の第4の態様によれば、リソグラフィ装置における基板の露光に先立ってその基板を調節する方法が提供され、この方法は、温度調整ユニットを用いて基板の温度をリソグラフィ装置の基板テーブルの温度を上回る温度に調整することと、基板を基板テーブルに移載することと、基板を基板テーブルに圧着するクランプを作動させることと、基板を基板テーブルの温度まで冷却し、それによって基板への応力を誘発することと、を備える。
[00081] 本発明の第5の態様によれば、パターニングされた放射ビームを投影して基板テーブル上に保持された基板に露光エリアを形成するように構成された投影システムを備えるスキャン型リソグラフィ装置が提供され、このリソグラフィ装置は基板を加熱する加熱装置をさらに備えており、加熱装置は、リソグラフィ装置の非スキャン方向における露光エリアの両端部に配置された基板エリアを加熱するように構成された第1及び第2の加熱要素を備えている。
[00082] 加熱装置は、非スキャン方向における露光エリアの端部での基板の歪曲を防止又は低減するので、有利である。これは、リソグラフィ装置のオーバーレイ精度が改善されることを可能にする。
[00083] 第1及び第2の加熱要素は、基板テーブルの上方に配置されてもよく、且つ、リソグラフィ装置の非スキャン方向における露光エリアの両端部に配置されてもよい。
[00084] 第1及び第2の加熱要素は、非スキャン方向で露光エリアに隣接していてもよい。
[00085] 第1及び第2の加熱要素は、非スキャン方向で露光エリアに重なり合うエリアを加熱するように構成されていてもよい。
[00086] 第1及び第2の加熱要素は、熱を受けるエリアが加熱要素の設置面積を超えて広がるように、いくらかの外向きのダイバージェンスを有する熱を放出するように構成されていてもよい。
[00087] 第1及び第2の加熱要素は、露光エリアのスキャン方向の寸法に概ね一致するスキャン方向の寸法を有するエリアを加熱するように構成されていてもよい。
[00088] 第1及び第2の加熱要素は、各々が、露光エリアの非スキャン方向の寸法よりも小さい非スキャン方向の寸法を有するエリアを加熱するように構成されていてもよい。
[00089] 第1及び第2の加熱要素は、露光エリアの非スキャン方向の寸法の半分よりも小さい非スキャン方向の寸法を有するエリアを加熱するように構成されていてもよい。
[00090] 加熱エリアは、スキャン方向において露光エリアの寸法よりも大きい寸法を有していてもよい。加熱エリアにおける加熱は均一である必要はない。
[00091] 加熱要素は各々がLEDのアレイを備えていてもよい。
[00092] LEDは赤外放射を放出するように構成されていてもよい。
[00093] LEDのうち少なくともいくつかは、基板に入射する前にパターニングされた放射ビームと重なるように発散する放射ビームを放出するように構成されていてもよい。
[00094] 第1及び第2の加熱要素は、リソグラフィ装置の非スキャン方向における露光エリアの両端部に配置された基板エリアを加熱するレーザビームを提供するように構成された1つ以上のレーザを備えていてもよい。
[00095] 1つ以上のレーザ及び関連する光学部品は、レーザビームが、基板に入射する前に、リソグラフィ装置の投影システムのハウジングの床に配置された開口を通出するように構成されていてもよい。
[00096] 1つ以上のレーザは、リソグラフィ装置の投影システムのハウジングの外部に配置されていてもよい。
[00097] 投影システムのハウジングには、レーザビームが投影システムのハウジング内に通入することを可能にする窓が設けられていてもよい。
[00098] スキャン型リソグラフィ装置は、投影システムのハウジング内のアクチュエータに取り付けられたミラーをさらに備えていてもよく、これらのミラーは、レーザビームの方向を変更し、それによって、レーザビームによって加熱される基板エリアを異なる位置に移動するように動作可能である。
[00099] スキャン型リソグラフィ装置は、基板テーブルの上方に配置され、且つ、リソグラフィ装置のスキャン方向において露光エリアの一方側に配置された冷却要素をさらに備えていてもよい。
[000100] スキャン型リソグラフィ装置は、基板テーブルの上方に配置され、且つ、リソグラフィ装置のスキャン方向において露光エリアの反対側に配置された追加的な冷却要素をさらに備えていてもよい。
[000101] 本発明の第6の態様によれば、スキャン型リソグラフィ装置を用いて基板を露光する方法が提供され、この方法は、パターニングされた放射ビームを投影して基板テーブル上に保持された基板に露光エリアを形成することと、リソグラフィ装置の非スキャン方向において露光エリアの両端部に位置する基板上のエリアを加熱装置を用いて加熱することと、パターニングされた放射ビームを用いて基板のターゲット部分を露光させるべく、基板を露光エリア及び加熱されるエリアに対してスキャン移動で移動させることと、を備える。後続の露光される部分は露光された部分にスキャン方向で隣接していてもよい。
[000102] 次に露光されるターゲット部分は、露光されたターゲット部分に非スキャン方向で隣接していなくてもよく、少なくとも1つの介在するターゲット部分によって、露光されたターゲット部分から非スキャン方向で離れていてもよい。
[000103] この方法は、リソグラフィ装置のスキャン方向において露光エリアの少なくとも一方側に隣接して配置された基板上のエリアを冷却装置を用いて冷却することをさらに備えていてもよい。
[000105] 図1は、本発明の一実施形態による冷却装置を含むリソグラフィシステムを示す。リソグラフィシステムは、放射源SO及びリソグラフィ装置LAを備える。放射源SOは、極紫外(EUV)放射ビームBを生成するように構成されている。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するように構成されたサポート構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTと、を備える。照明システムILは、パターニングデバイスMAに入射する前に放射ビームBを調整するように構成されている。投影システムは、放射ビームB(今やマスクMAによってパターニングされている)を基板W上に投影するように構成されている。基板Wは先に形成されたパターンを含んでいてもよい。その場合、リソグラフィ装置は、パターニングされた放射ビームBを先に基板W上に形成されたパターンと整列させる。
[000106] 放射源SO、照明システムIL、及び投影システムPSはすべて、外部環境から隔離され得るように構築及び配置されていてもよい。放射源SOにおいては大気圧を下回る圧力のガス(例えば水素)が提供されてもよい。照明システムIL及び/又は投影システムPSにおいては真空が提供されてもよい。照明システムIL及び/又は投影システムPSにおいては大気圧を大きく下回る圧力の少量のガス(例えば水素)が提供されてもよい。
[000107] 図1に示される放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP)源と称され得る種類のものである。例えばCO2レーザであり得るレーザ1は、レーザビーム2を介して、エネルギを、燃料放出器3から提供されるスズ(Sn)などの燃料に付与するように配置される。以下の説明においてはスズを参照するが、任意の適当な燃料が使用されてもよい。燃料は、例えば液体の形態であってもよく、例えば金属又は合金であってもよい。燃料放出器3は、例えば液滴の形態のスズを、プラズマ形成領域4に向かう軌道に沿って導くように構成されたノズルを備えていてもよい。レーザビーム2は、プラズマ形成領域4においてスズに入射する。スズへのレーザエネルギの付与は、プラズマ形成領域4においてプラズマ7を発生させる。EUV放射を含む放射は、プラズマのイオンの脱励起及び再結合の間にプラズマ7から放出される。
[000108] EUV放射は、近垂直入射放射コレクタ5(より一般的に垂直入射放射コレクタと称されることもある)によって収集され集束される。コレクタ5は、EUV放射(例えば13.5nmなど所望の波長を有するEUV放射)を反射するように配置された多層構造を有していてもよい。コレクタ5は、楕円の形状を有していてもよく、2つの楕円焦点を有する。第1の焦点はプラズマ形成領域4にあってもよく、第2の焦点は、後述するように、中間焦点6にあってもよい。
[000109] レーザ1は放射源SOから離れていてもよい。その場合、レーザビーム2は、例えば適当な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダを備えたビーム送出システム(図示しない)及び/又は他の光学部品の助けを借りて、レーザ1から放射源SOへと渡されてもよい。レーザ1及び放射源SOは、併せて放射システムと見なされ得る。
[000110] コレクタ5によって反射された放射は放射ビームBを形成する。放射ビームBは点6で集束されてプラズマ形成領域4の画像を形成し、これは照明システムILのための仮想放射源として作用する。放射ビームBが集束される点6は、中間焦点と称されてもよい。放射源SOは、中間焦点6が放射源の内包構造9の開口8に又はその付近に位置するように配置される。
[000111] 放射ビームBは、放射源SOから、放射ビームを調整するように構成された照明システムIL内に進入する。照明システムILは、ファセット視野ミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を含んでいてもよい。ファセット視野ミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は、所望の断面形状及び所望の角度分布を有する放射ビームBを、併せて提供する。放射ビームBは照明システムILを通過し、サポート構造MTによって保持されるパターニングデバイスMAに入射する。パターニングデバイスMAは放射ビームBを反射しパターニングする。照明システムILは、ファセット視野ミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて又は代えて、他のミラー又はデバイスを含んでいてもよい。
[000112] パターニングデバイスMAからの反射に続き、パターニングされた放射ビームBは投影システムPSに入る。投影システムは、基板テーブルWTによって保持される基板Wに放射ビームBを投影するように構成された複数のミラーを備える。投影システムPSはある縮小率を放射ビームに適用してもよく、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さなフィーチャを有する画像を形成する。例えば、4という縮小率が適用されてもよい。図1の投影システムPSは2つのミラーを有しているが、投影システムは任意の数のミラー(例えば6つのミラー)を含んでいてもよい。
[000113] 基板Wの上方には冷却装置40が配置されている。冷却装置40は、放射ビームBの付近において、基板の局所的な冷却を提供する。冷却装置40は以下で詳細に説明される。基板Wを加熱するように構成された基板温度調整ユニットAUも図1に図示されている。温度調整ユニットAUは以下で詳細に説明される。リソグラフィ装置LAはさらに、以下で説明される加熱装置(図示しない)を備えていてもよい。
[000114] 図2は、図1に示す放射源に代わる構成を有するレーザ生成プラズマ(LPP)放射源SOを示す。放射源SOは、燃料をプラズマ形成領域4へと送出するように構成された燃料放出器3を含む。燃料は例えばスズであってもよいが、任意の適当な燃料が用いられ得る。プリパルスレーザ16が、燃料に入射するプリパルスレーザビーム17を放出する。プリパルスレーザビーム17は燃料を予熱するように作用し、それによって、寸法及び/又は形状などといった燃料の性状を変化させる。主レーザ18は、プリパルスレーザビーム17の後で燃料に入射する主レーザビーム19を放出する。主レーザビームはエネルギを燃料に送出し、それによって燃料をEUV放射放出プラズマ7に変換する。
[000115] 放射コレクタ20は所謂斜入射型コレクタであってもよく、EUV放射を収集するとともにそのEUV放射を中間焦点と称されることもある点6で集束させるように構成されている。したがって、放射放出プラズマ7の画像は中間焦点6で形成される。放射源SOの筐体構造21は、中間焦点6又はその近くに開口22を含む。EUV放射はその開口22を通って(例えば図1に概略的に示される形態の)リソグラフィ装置の照明システムに至る。
[000116] 放射コレクタ20は、(例えば概略的に図示されるように)複数の斜入射型リフレクタ23,24,及び25を有する入れ子式コレクタであってもよい。斜入射型リフレクタ23,24,及び25は、光軸Oを中心として軸対称に配設されてもよい。説明した放射コレクタ20は単に一例としてのみ示されるものであって、他の放射コレクタが用いられてもよい。
[000117] プラズマ形成領域4と放射コレクタ20との間には、汚染トラップ26が配置される。汚染トラップ26は、例えば回転フォイルトラップであってもよいし、又は任意の他の適当な形態の汚染トラップであってもよい。いくつかの実施形態においては、汚染トラップ26は省略されてもよい。
[000118] 放射源SOの筐体21は、プリパルスレーザビーム17が通過してプラズマ形成領域4へと至ることのできる窓27と、主レーザビーム19が通過してプラズマ形成領域へと至ることのできる窓28とを含む。汚染トラップ26の開口を通して主レーザビーム19をプラズマ形成領域4に導くために、ミラー29が用いられる。
[000119] 図1及び2に示される放射源SOは、図示されていないコンポーネントを含んでいてもよい。例えば、放射源には分光フィルタが設けられていてもよい。分光フィルタは、EUV放射については実質的に透過性であってもよいが、赤外放射など他の波長の放射については実質的に遮断性であってもよい。
[000120] 図3は、本発明の一実施形態による冷却装置40を概略的に図示する。図3aは冷却装置40の下から見た概略図であり、図3bは冷却装置の一方側から見た断面の概略図である。図3a及び図3bにはリソグラフィ装置によって投影された放射ビームBが示されている。放射ビームは基板W上の露光エリアEを照明し、この露光エリアは(図3bに図示されるように)放射ビームによって露光されている。図3にはデカルト座標が示されており、リソグラフィ装置に従来用いられている表記が用いられている。すなわち、Y方向は露光の際の基板Wのスキャン移動の方向であり、X方向はY方向に対して横向きで基板の平面内にあり、Z方向は放射ビームBの光軸と概ね一致する。
[000121] 冷却装置40は、第1の冷却要素42及び第2の冷却要素44を備えている。図3に図示されるように、第1及び第2の冷却要素は同じ全体構成を有し得る。冷却要素42,44は、スキャン方向(すなわちY方向)において放射ビームBの両側に位置している。冷却要素42,44は露光エリアE(すなわち放射ビームBが入射するエリア)に隣接している。この文脈において、「隣接」という用語は、露光エリアEの縁部から1cm未満を意味するものとして解釈され得る。冷却要素42,44は、露光エリアEの縁部から0.5cm未満のところにあってもよいし、露光エリアの縁部から約0.1cmのところにあってもよい。各冷却要素42,44は、露光エリアEを二等分する線から3cm以内にあるエリアを冷却するように構成されていてもよい。各冷却要素42,44は、露光エリアの縁部から2cm以内にあるエリアを冷却するように構成されていてもよい。
[000122] 冷却要素42,44は、冷却要素の下にあるエリアにおいて基板Wの局所的な冷却を提供する。したがって、基板が正のY方向(図3では左から右)に移動している基板のスキャン露光の際には、第1の冷却要素42が基板のうち放射ビームBによって露光されようとしている部分を冷却し、第2の冷却要素44が基板のうち放射ビームBによって露光されたばかりの部分を冷却する。スキャン露光が基板を負のY方向(図3では右から左)に移動させるのであれば、第2の冷却要素44が基板のうち放射ビームBによって露光されようとしている部分の冷却を提供し、第1の冷却要素42が基板のうち放射ビームによって露光されたばかりの部分の冷却を提供する。
[000123] 各冷却要素42,44は、基板から熱を受け取り、その熱を、例えば冷却流体(例えば水)を用いて、他の箇所に伝達するように構成されている。この文脈において、「冷却流体」とは、流体が特定の温度を有さなければならないことを示唆しようとするものではなく、流体が冷却要素42,44から熱を運び去ることを示すものである。各冷却要素42,44は本体46,47を備えており、その本体には蓋部60,61を有する空洞48,49が形成されている。空洞48,49は冷却要素本体46,47の最下面に形成されており、使用中の基板Wの上方に位置する。各冷却要素42,44はさらに、冷却要素本体46,47の最下面にガスを送出するように構成されたガス送出導管50乃至53を備えている。ガス送出導管50乃至53を出たガスは空洞48,49に通入し、これらの空洞を満たす。ガスは外向きにも進み、冷却要素本体46,47の下から周囲環境へと出て行く。
[000124] ガスは、基板Wから冷却要素本体46,47に有意な量の熱を輸送するのに十分な高さの圧力で送出される。ガスの圧力は、ガスが基板Wに損傷を引き起こさない程度に十分に低く維持されてもよい。また、ガスの圧力は、基板テーブルWT上のバールの上で基板Wがスリップするのに十分な強さの接線力を発生させない(例えば約10mNよりも大きい接線力を発生させない)程度に十分に低く維持されてもよい。ガスの圧力は、基板が基板テーブルWTのバールによって支持されている箇所において基板Wの有意な変形が発生しない程度に十分に低く維持されてもよい。基板は、基板テーブルWTのバールによって支持されない、例えば1乃至3mmの外縁部を有していてもよい。ガスの圧力は、その外縁部における基板の下方への変形がリソグラフィ装置によって補償可能な量(例えば10nm未満の変形)に限定される程度に十分に低くてもよい。空洞48,49内のガスの圧力は、例えば100パスカルより大きくてもよい。空洞48,49内のガスの圧力は、例えば200パスカルより大きくてもよい。空洞内のガスの圧力は、例えば最大で約1000パスカルであってもよく、最大で約2000パスカルであってもよく、最大で約5000パスカルであってもよい。空洞内のガスの圧力は、例えば100kPa以上であってもよい。空洞内のガスの圧力は、例えば約500kPa又はそれよりも高くてもよい。空洞48,49内のガスの圧力は、本体46,47の最下面と基板Wとの間のギャップに影響されるであろう(ギャップを増大させると高い圧力を維持するのがより困難になるであろう)。本文書の他の箇所に説明されているように、この間隔は例えば約20ミクロン又はそれよりも大きくてもよく、約50ミクロン又はそれよりも大きくてもよい。この間隔は約200ミクロン又はそれよりも小さくてもよい。
[000125] 基板Wから冷却要素本体46,47への熱の輸送を容易にするのに加え、ガスは、冷却要素本体と基板Wとの接触が発生することを防止又は阻止するクッションとしても作用し得る。一実施形態においては、冷却要素本体46,47の最下面と基板Wとの間隔は、20ミクロンより大きくてもよく、例えば50ミクロン以上であってもよい。間隔が小さすぎると、冷却要素本体46,47が基板Wと接触するリスクが高い。これはリソグラフィ装置を損傷させ得るため、望ましくない。接触のリスクを合理的なレベルまで低減させるには、20ミクロンの間隔で十分であろう。接触のリスクを実質的に無くすには、50ミクロンの間隔で十分であろう。間隔は、例えば最大で100ミクロンであってもよく、例えば最大で200ミクロンであってもよい。200ミクロンよりも大きい間隔は、冷却要素本体46,47の下からあまりに多くのガスが漏出することを可能にし得るため、望ましくないであろう。
[000126] 図4は第2の冷却要素44をより詳細に図示している。冷却要素本体47には空洞49が見られ、ガス送出導管52,53も見られる。図4に矢印で示されているように、ガス送出導管52,53によって送出されたガスは、空洞49に流入するとともに、冷却要素本体47の下から流出する。ガスは、曲線によって概略的に図示されているガス供給から提供される。ガスは、例えば水素であってもよい。代替的には、任意の他の適当なガスが用いられてもよい(例えばヘリウム又は窒素といった別の不活性ガス)。
[000127] 第2の冷却要素44は、2つの部分に分かれて提供された伝熱システムを含む。第1の部分はペルチェ式クーラ55であり、これは冷却要素本体47のうち空洞49の上方に位置する一部と熱接触している。ペルチェ式クーラ55と第2の冷却要素本体47との熱接触は、熱電素子56のアレイによってもたらされる。熱電素子56は既知の手法で電気的に直列に接続されていてもよい。伝熱システムの第2の部分は、ペルチェ式クーラ55と熱接触する冷却流体システム57である。冷却流体システム57は除熱システムの一例である。冷却流体システム57は1つ(又は複数)の導管を備えており、冷却流体はそれを通って圧送される。冷却流体は例えば水(又は何らかの他の適当な流体)であってもよい。冷却流体は、システム57の本体から熱を受け取り、その熱を第2の冷却要素44から運び去る。ペルチェ式クーラの低温側(すなわち熱電素子56の遠位端)は、例えば約−18℃乃至2℃の温度を有していてもよい。ペルチェ式クーラの低温側は、例えば約−50℃又は−100℃の低い温度を有していてもよい。
[000128] ガス送出導管50乃至53から導入されるガスの温度は、ガス送出導管の壁の温度、例えば約22℃に適応されてもよい。ガスは、空洞内にあるときには、基板及びペルチェ式クーラ55の温度に適応するであろう。したがって、ガスは例えば約22℃(基板Wの温度)乃至約−50℃の温度を有し得る。一般に、ガスは最低で例えば約−100℃の温度を有し得る。一般に、ガスは最高で例えば約100℃の温度を有し得る。
[000129] 一実施形態においては、冷却要素本体47の空洞49のX方向範囲は、リソグラフィ装置の放射ビームBによって形成される露光エリアEのX方向の最大範囲と一致していてもよい。これは例えば26mmであってもよい。したがって、空洞49は約26mmのX方向範囲を有し得る。露光エリアEのX方向範囲と等しいX方向範囲を有する空洞49を提供することによって、空洞49は、(基板Wのスキャンの進行方向に応じて)放射ビームによって露光されようとしている基板エリア又は放射ビームによって露光されたばかりの基板エリアの全体に冷却を提供することができる。後続の露光される部分は露光された部分にスキャン方向で隣接していてもよい。
[000130] 空洞49のX方向範囲は、放射ビームBによって形成される露光エリアEのX方向の最大範囲よりも大きくてもよい。したがって、空洞49は約26mm又はそれよりも大きいX方向範囲を有し得る。もっとも、空洞49のX方向範囲が露光エリアEを有意に超えて広がっている場合には、空洞は、露光中のターゲット部分を冷却するのに加えて、基板W上でターゲット部分に隣接する部分を冷却するであろう。これは部分的に冷却される隣接ターゲット部分の歪曲を引き起こすかもしれない。この歪曲によって引き起こされ得るオーバーレイ精度の潜在的な低下は、蛇行スキャンを用いて基板を露光することによって回避され得る。蛇行スキャンにおいては、次に露光されるターゲット部分は、露光されたターゲット部分に非スキャン方向で隣接しておらず、(例えば図20を参照して後述するように)少なくとも1つの介在するターゲット部分によって、露光されたターゲット部分から非スキャン方向で離れている。
[000131] 一実施形態においては、第2の冷却要素本体47は、例えばY方向に約1cm乃至約3cm(例えば約2cm)の幅を有していてもよい。第2の冷却要素本体47は、例えば約2mm乃至約7mmの高さ(Z方向の大きさ)を有していてもよい。
[000132] 第2の冷却要素は、露光エリアEを二等分する線から(例えば露光エリアの中心から)3cm以内にあるエリアを冷却するように構成されていてもよい。第2の冷却要素は、露光エリアEの縁部から2cm以内にあるエリアを冷却するように構成されていてもよい。露光エリアに送出された放射による基板の加熱は、露光エリアの縁部からの距離の関数として低下する。露光エリアの縁部から約2cmを超えると、基板の加熱は無視できるほど僅かになるであろう。したがって、露光エリアの縁部から2cm以内にあるエリアを冷却することは、基板温度の低減をもたらすであろう(それによって基板の歪曲が低減される)。これを有意に超えて広がるエリアを冷却することは、ほとんど利益をもたらさない(また、より多量のガスが必要とされるであろうから、実現するのはより困難であろう)。
[000133] 本発明の実施形態は、従来技術では予期されなかった手法で基板Wの局所的な冷却を提供する。本発明の実施形態は、基板の局所的な加熱が基板テーブルのバールの上での基板の有意なスリップが起こる程度まで発生することを防止し得る。基板Wからの除熱の向上(及びひいてはバールスリップの回避)は、基板に送出されるエネルギのドーズが従来送出されていたドーズと比較して増大されるときに特に重要であり得る。例えば、投影されるパターンの解像度(例えばハーフピッチ)を例えば7ナノメートルまで向上させることは、(15ナノメートルの解像度について用いられる放射ドーズと比較して)基板に送出される放射ドーズの増大を必要とし得る。
[000134] 各空洞48,49の蓋部60,61と基板表面との間隔は、空洞内の圧力と共に、基板Wから冷却要素本体46,47への熱の伝達が基板の表面(実用においては基板上に提供されたレジストの表面であろう)の適応係数に有意に影響されないように選択され得る。空洞蓋部60,61の高さ及び組み合わせて用いられるガス圧が、適応係数が伝熱に有意な影響を有するようなものであった場合には、冷却要素42,44によって提供される冷却は、基板W上のレジストの性状に応じて変わるであろう。この性状は不明であり得る。すると冷却要素42,44によって提供される冷却も不明となるであろうから、これは望ましくない。その結果、基板Wの温度を所望の精度で制御すること、又は基板に印加される熱負荷を所望の精度で制御することが可能でなくなるかもしれない。
[000135] 材料の適応係数がその材料の表面から別の主体への熱の伝達に影響を有する程度は、材料の表面とその主体との間隔と、熱交換を媒介し得るガスの圧力とに依存する。間隔が十分に小さくガス圧が十分に低ければ、適応係数は伝熱に有意な影響を有するであろう。これは、所与のガス分子が、材料の表面に入射するとともにそこから反射されるとき、その材料の温度に即座に適応しないからである。一般的には、ガス分子の約30%が材料の温度に適応するであろう。しかしながら、これは異なる材料については適応係数に従って変化するであろう。主体が材料の表面に十分に接近しており、且つガス圧が十分に低ければ、ガス分子が材料の表面に入射し、次いで何ら他の相互作用なしに(すなわち再び材料表面に入射することなく、且つ他のガス分子と衝突することなしに)主体に入射する有意な可能性がある。そのような状況においては、発生する伝熱は、材料表面の適応係数に依存するであろう。ガスの圧力を高くすると、ガス分子が主体に入射する前にガス分子間でより多くの相互作用が引き起こされ、その結果、材料表面の付近のガス分子は材料表面の温度により適応しやすくなる。同様に、主体を材料表面からもっと遠ざけるように移動させることも、ガス分子が主体に入射する前に起こる分子間相互作用の回数を増大させるであろう。これもやはり、分子が主体に入射する前に材料表面の温度に適応することを保証するのに役立つ。このように、適応係数の影響は、ガス圧が高まるにつれて、及び材料表面と主体との間隔が増大するにつれて、減少する。圧力及び間隔が(共に)十分に大きければ、適応係数は伝熱に有意な影響を有さないであろう。これは(図6との関連で以下で説明されるように)標準圧力レジームと称され得る。
[000136] ここでは、基板表面と空洞48,49の蓋部60,61との間隔は、空洞内のガスの圧力ともども、適応係数が伝熱に有意な影響を有さない程度のものであり得る。すなわち、冷却要素42,44は標準圧力レジームで動作する。ガスを約1000パスカルの圧力とし、基板W(すなわちレジスト上面)と空洞蓋部60との間隔を0.5mmとすることで、レジストの適応係数がレジストから冷却要素42への熱の伝達に有意な影響を有さないことが保証される。別の一例においては、基板Wと空洞蓋部60との間隔を1mmとし、ガスを500パスカルの圧力とすることでも、レジストの適応係数がレジストから冷却要素42への熱の伝達に有意な影響を有さないことが保証される。別の一例においては、基板Wと空洞蓋部60との間隔を2mmとし、ガスを250パスカルの圧力とすることでも、レジストの適応係数がレジストから冷却要素42への熱の伝達に有意な影響を有さないことが保証される。
[000137] 図6は、2表面間でのガスによる熱伝達率がそれらの表面間の距離の関数として異なるガス圧でどのように変化するかを説明するグラフである。2組の曲線が示されており、うち1組は実線を有しており、1組は破線を有している。実線は、表面のうち一方が0.3という適応係数を有するときの熱伝達率を示す。破線は、表面のうち一方が0.6という適応係数を有するときの熱伝達率を示す。最も下の曲線は10パスカルのガス圧を、最も上の曲線は1000パスカルのガス圧を表し、ガス圧はこれらの2つの圧力値の間で高くなる。矢印は、0.5mmという表面間の間隔及び1000パスカルのガス圧で生じるであろう熱伝達率(約300W/m2K)を示す。見て取れるように、この間隔及び圧力では、0.3という適応係数(実線)と0.6という適応係数(破線)との間での切り替えは、熱伝達率に有意な影響を有さない(例えば熱伝達率を10%未満、例えば5%未満だけ変化させる)。表面間の間隔が(例えば0.1mmまで)減少するにつれて、適応係数は熱伝達率に有意な影響を有するものと見受けられる。グラフからわかるように、より低いガス圧(例えば500パスカル)については、間隔がより大きいと(例えば1mm)、適応係数によって有意に影響されない熱伝達率が同様にもたらされ得る。
[000138] 水素ガスが1000パスカルの圧力で提供されレジスト表面と空洞蓋部60との間隔が約0.5mmである一実施形態においては、レジスト表面と空洞蓋部60との間の伝熱適応係数は約300W/m2Kである。
[000139] 基板Wから冷却要素44へと伝達される熱の量は、適応係数と、基板と冷却要素との温度差とに依存する。基板W及び基板テーブルWTは一般に約22℃の温度を有する。冷却要素44は、例えば、基板W及び基板テーブルWTの温度を約20℃乃至40℃下回る温度に保持される。一例として、冷却要素44は、例えば−18℃乃至2℃の温度に保持され得る。これは約6000乃至12000W/m2Kの冷却を提供する。冷却要素44によってもたらされる被冷却エリアは、一実施形態においては26mm×10mmの寸法をとり得る。そのような事例では、第2の冷却要素44は約1.5乃至3Wを基板から除去するであろう。第1及び第2の冷却要素は併せて約3乃至6Wを基板から除去するであろう。
[000140] ペルチェ式クーラ55は、冷却要素本体47の底部から液体冷却システムへと熱を伝達する。液体冷却システム57は冷却要素から遠隔の伝熱システムへと熱を運び去る。
[000141] 空洞48,49はXY平面内にある蓋部を有するものとして図示されているが、一実施形態においては、蓋部はX方向を中心として傾斜していてもよい。そのような一実施形態の例が図5に示されている。この実施形態の、図4の実施形態に対応する詳細(例えばペルチェ式クーラ)は、簡略化のため省略されている。図5の実施形態において、空洞蓋部60は、一端では約0.5mmの高さを有し、他端のゼロ高さ(又はゼロに近い高さ)に向けて下降している。傾いた空洞蓋部60を有する一実施形態においては、適応係数は、蓋部高さが低くなるにつれてより有意になるであろう。したがって、適応係数は、図5に図示される実施形態によってもたらされる伝熱に有意な影響を有するであろう。上記で説明した不利は生じるが、傾いた空洞蓋部60の利点は、蓋部と基板表面とのギャップの縮小が、より効率的な熱の伝達が行われることを可能にするということである。傾いた蓋部を有する空洞は、例えば、基板W間の適応係数の予想される変動が十分に小さく、冷却が十分に制御可能である場合に用いられ得る。逆に、異なる基板Wでの適応係数の有意な変動が予期される場合には、空洞蓋部60が傾いていない図4に示される実施形態が好適であろう。
[000142] 汚染分子は基板W上のレジストの表面を定期的に離れ、投影システムPS(図1を参照)内の光学部品の潜在的な汚染の有意なソースとなる。投影システムPS内への汚染の侵入を防止又は低減するために、投影システムから基板Wに向かうガス流が提供されてもよい。冷却要素42,44は、汚染を投影システム内に押し上げそうなガスのジェットを発生させないように構成されていてもよい。換言すれば、冷却要素42,44は、Z方向で下向きに進み投影システムPSから出て行くガス流に打ち勝つ程度に十分に強いZ方向で上向きに進むガスのジェットを発生させないように構成されていてもよい。冷却要素42,44の最下面と基板Wとの間のギャップが狭いと(例えば20ミクロン乃至200ミクロン)、投影システムPS内に汚染を運びかねないガスのジェットが発生されるのが防止され得る。
[000143] 冷却要素42,44と基板との間のギャップを維持し、特に冷却要素と基板との接触が発生するのを防止するのが望ましいであろう。一実施形態においては、冷却要素本体46,47の下からの外向きのガス流が、冷却要素と基板との接触が発生するのを防止又は阻止するクッションを提供し得る。このガスのクッションは、ガスベアリングフットとも称され得る。
[000144] 代替的な配置では、冷却要素42,44は、リソグラフィ装置LAの投影システムPSに取り付けられてもよい。冷却要素は、冷却要素を基板テーブルWTの上方の所望の高さに移動させる機構を含むサポートによって保持され得る。サポートは、予期せぬ動きが検出された場合に冷却要素を基板から遠ざけるべく引っ張るように構成された引込機構を含んでいてもよい。この機構は、リソグラフィ装置において予期せぬ動きが発生した場合(例えば小さい地震の発生時)にトリガされる、より全体的な安全機構の一部を形成していてもよい。引込機構は、冷却要素が基板テーブルWTに設けられたセンサを通り越す前に冷却要素を持ち上げるためにも用いられ得る。
[000145] 基板の表面(実用においては基板上に提供されたレジストの表面)は、高さのバリエーションが1ミクロン未満であるようなものである。冷却要素42,44と基板との間のギャップは、20ミクロン以上、例えば50ミクロン以上であってもよい。その結果、冷却要素42,44を上下に移動させて基板Wのトポロジーに適応させる機構が不要となる。
[000146] 基板のスキャン露光にあたっては、基板W上の所与のターゲット部分(例えばダイ)の露光と次のターゲット部分(例えばダイ)の露光との間で有意な時間が経過する。この時間の間、放射ビームBは基板Wに入射せず、したがって放射ビームによる基板の加熱は起こらない。この時間の間、加熱は起こらないが、ペルチェ式クーラ55及び流体冷却システム57は動作し続ける。ペルチェ式クーラ55の応答速度は十分に速くはないかもしれないため、露光と露光の間にペルチェ式クーラ55をオフにしようとすることは望ましくない。また、ペルチェ式クーラをオン・オフさせることは、ペルチェ式クーラの寿命を縮めるおそれがある。ターゲット部分間で移動しているときには空洞48,49へのガスの供給をオフにし、ターゲット部分が露光されるときにはガスの供給をオンにするために、バルブが使用されてもよい。バルブは約5ミリ秒よりも短い時定数で動作してもよい。
[000147] 冷却要素42,44はそれぞれペルチェ式クーラ55及び流体冷却システム57を備えているが、冷却要素から熱を除去するためには任意の適当な除熱システムが用いられ得る。例えば、ペルチェ式クーラなしに、より低い温度の流体を用いる流体冷却システムが用いられてもよい。例えば、水の代わりに、0℃を下回っても液状のままであるグリコールなどの流体が用いられてもよい。
[000148] 代替的な除熱システムが図7に概略的に図示されている。図7には、空洞48を有する冷却要素44が示されている。空洞にはガス送出導管97によってガスが送出される。空洞48内のガスの圧力は、(他の実施形態の場合と同様に)ガス送出導管97を介して送出されるガスの圧力を制御することによって制御され得る。冷却要素44は、例えば、ペルチェ式クーラ及び流体冷却システムを備えない点を除き、上記で説明した冷却要素と同一の構成を有していてもよい。その代わりに、冷却要素44からの除熱は、窒素ガス(又は他の適当なガス)を冷却要素に/から圧送することによって実施される。ガスは、冷却要素44に送出されるときは冷たく(すなわち冷却要素よりも冷たく)てもよく、したがって冷却要素から熱を受け取る。
[000149] ガスは、ガス源94から第1の入口導管部102aを介して熱交換器98へと送出される。ガスは熱交換器98によって予冷され、それから第2の入口導管部102bを介してペルチェ式クーラ100に伝わる。ガスはペルチェ式クーラ100によって冷却され、その後第3の入口導管102c及び第4の入口導管部102dを介して冷却要素44へと進む。
[000150] ガスは冷却要素44から熱を受け取り、その後、加熱されたガスは冷却要素を出て、第1の出口導管部104aに沿って伝わる。加熱されたガスは、第2の出口導管部104bを通って熱交換器98へと進む。ガスはその後、熱交換器から第3の出口導管部104cに沿って外部の位置に進む。このようにして熱は冷却要素44から除去されるとともに冷却要素から運び去られる。
[000151] ガスは、例えば、ガス源94によって10リットル/分を上回る流量で提供されてもよい。ガスは、例えば、20リットル/分以上(例えば最大で50リットル/分)の流量で提供されてもよい。ガスは、冷却要素44に進入する前に、ペルチェ式クーラ100によって例えば−30℃の温度まで冷却されてもよい。ガスは、冷却要素44内で数度加熱され(例えば5℃未満だけ加熱され)、冷却要素を離れるときには例えば−26℃の温度を有していてもよい。このガスの温度の上昇は、冷却要素44からの熱の除去と対応している。ガスは出口導管104を通って熱交換器へと進み、そこでガス源94からのガスと熱を交換される。ガス源94からのガスは−26℃よりもかなり高い温度を有していてもよく、したがって出口ガスによって冷却される。出口ガスは相応してガス源からのガスによって温められる。
[000152] 高流量の(すなわち10リットル/分を上回る)ガス流は、冷却要素44における温度勾配を有利に制限する。冷却要素における温度勾配は、例えば1℃未満に制限され得る。
[000153] ペルチェ式クーラ100と熱交換器98とは遠隔して配置されており、且つリソグラフィ装置LAの投影システムPS(図1を参照)の下には配置されていない。ペルチェ式クーラ100及び熱交換器98はリソグラフィ装置LA内で固定的な位置をとり得る。ペルチェ式クーラ100は、リソグラフィ装置の真空エリア内に配置されてもよく、又はリソグラフィ装置の非真空エリア内に配置されてもよい。同様に、熱交換器98は、リソグラフィ装置の真空エリアに配置されてもよく、又はリソグラフィ装置の非真空エリアに配置されてもよい。
[000154] ペルチェ式クーラは、例えば冷却要素44から0.5m以上離れて配置されてもよい。ペルチェ式クーラ100を冷却要素44から離して設けることの利点は、ペルチェ式クーラを収容するためにより多くの空間が利用可能になるということである(冷却要素44を収容可能な投影システムPSの下の空間は非常に限られている)。したがって、より大きなペルチェ式クーラ100が用いられ得る。ペルチェ式クーラ100は、例えば2段階又は3段階(又はそれ以上)のペルチェ式クーラであってもよい。これは、(例えば図4に図示されるような)冷却要素44に配置された小型のペルチェ式クーラを用いて可能であるよりも大きな温度の低下が達成されることを可能にする。
[000155] 冷却要素44は(本文書の他の箇所に説明されているように)z方向に移動可能であってもよい。ペルチェ式クーラ100及び熱交換器98は固定されていてもよい(すなわち可動性でなくてもよい)。第4の入口導管部102dは、ペルチェ式クーラ100に対する冷却要素44の移動を可能にするべく、可撓性である。破線107は、入口導管の非可撓部102cが入口導管の可撓部102dに接続する地点を概略的に図示している。同じ理由で、第1の出口導管部104aも可撓性である。破線107は、出口導管の可撓部104aが出口導管の非可撓部104bに接続する地点を概略的に図示している。
[000156] 入口導管120dには、例えば冷却要素44の付近に、温度センサ110が設けられる。出口導管104には、例えば冷却要素44の付近に、温度センサ112が設けられる。これらの温度センサ110,112は、冷却要素44に進入するガスの温度及び冷却要素を離れるガスの温度を監視するために用いられ得る。これは同様に、冷却要素44によって基板Wから除去される熱の量の計算も可能にし、ひいては基板の温度の表示を提供し得る。基板Wに適用される冷却の量を調節するべく、フィードバック及び/又はフィードフォワード補正を用いて、冷却要素44に送出されるガスの温度を調整し、及び/又はガスの流量を調整してもよい。
[000157] 図示される実施形態はペルチェ式クーラ100を用いているが、任意の適当なクーラが用いられてもよい。例えば、ジュールトムソンクーラが用いられてもよいし、又は液体窒素冷却が用いられてもよい。
[000158] 遠隔に配置されたクーラ100(例えばペルチェ式クーラ)が用いられるので、入口導管102によって送出されるガスは、ペルチェ式クーラが冷却要素44に配置された場合に可能であると思われるよりも低い温度まで冷却されることができる。これは冷却要素44の温度と基板WTの温度との間の差がより大きくなることを可能にする。そして、冷却要素44についてより高い設計自由度をもたらし、例えば冷却要素がより小さな設置面積を有することが可能となる。より小さな設置面積を有する冷却要素を提供することは、空洞48内でガスによって基板に印加される力を増大させることなく、空洞48内でより高い圧力のガスが用いられることを可能にする。そして、標準圧力レジーム又は標準圧力レジームの近くでの動作が可能となる(圧力レジームは図6との関連で上記で説明されている)。これは、冷却要素44によって提供される冷却を、基板W上のレジストの適応係数により依存しないものとし、冷却要素が異なるレジストを有する基板に対してより一定の性能を提供するようにする。
[000159] 図4の実施形態に勝る、図7に図示される実施形態の追加的な利点は、基板の上方のコンポーネントに水が提供されないということであり、それによって、水が基板上に漏出することが回避されるとともに、水の圧送により引き起こされ得る振動も回避される。
[000160] さらなる利点は、図4の実施形態ではペルチェの高温側が存在することで必要となる相当な量の放熱が回避されるということである。図7に図示される実施形態の環境への冷熱負荷は非常に限られ得る(例えば50mW未満)。これもまた、冷却要素44へと送出されるガスの温度、冷却要素を離れる際のガスの温度を測定すること、及びガスの流量を測定することによって、基板から除去されている熱を容易に測定することを可能にする。
[000161] また、冷却要素44に必要なコンポーネントがより少なくなり、それによって、冷却要素の設計が簡略化されるとともに、リソグラフィ装置LAの動作中に故障し得る要素の数が減少する。
[000162] 図7の実施形態、又は本発明の他の実施形態においては、冷却要素44はヒータ114を含んでいてもよく、このヒータは冷却要素44によって提供される冷却を所望の時間にわたって効果的に取り消すために用いられ得る。ヒータ114は、例えば冷却要素44を用いた冷却を提供するのが望ましくないとき(例えば冷却要素がリソグラフィ装置のセンサの上方を通過している場合)に用いられてもよい。冷却要素の動作を中断する代わりにヒータを用いて冷却要素44の効果を取り消すことは、冷却要素44の動作の中断によって引き起こされ得る問題を回避する。例えば、図7に図示される実施形態において冷却要素44へ/からのガスの流れを停止することは、入口導管102及び出口導管104内のガスの温度を変化させるであろう。こうしたガス温度の変化の結果、冷却要素44は、動作を再開すると、ガスの温度が安定するまで、前とは異なる温度に基板を冷却するであろう。
[000163] 冷却要素44のための冷却システムのさらなる代替的な実施形態は、図7に図示されたものに対応する構成を有するが、使用するガス源94からのガス流が有意に小さい。例えば、ガス流は5リットル/分未満であってもよいし、約2リットル/分又はそれより少なくてもよい。ガスは冷却要素44に供給され、より低速で冷却要素44から除去されるので、冷却要素を離れるときのガスの温度は(上記で説明したようにより高速で供給されるときのガスの温度と比較して)より高い。例えば、ガスは、約4℃の温度上昇を経験する代わりに、約50℃の温度上昇を経験し得る。冷却要素44への進入時のガスの温度は約−30℃であってもよく、冷却要素を離れる際の温度は例えば約22℃であり得る。冷却要素を離れる際のガスの温度は、冷却されている基板の所望の温度に対応していてもよい。このようにして冷却要素44により小さなガス流を提供することは、基板から除去されることを要する熱の量に等しい冷熱負荷を供給するので、有利である。
[000164] さらなる代替的な冷却システムが図8に概略的に図示されている。図7に図示された実施形態と同じように、冷却要素44は、空洞48と、その空洞にガスを送出するように構成されたガス送出導管97とを含む。この冷却システムにおいては、ヒートパイプ120が、一端では冷却要素44に接続されており、他端ではペルチェ式クーラ100又は他のクーラに接続されている。ヒートパイプは不撓部120a及び可撓部120bを備えていてもよい。可撓部120bが不撓部120aに接続されている箇所は、破線122によって概略的に示されている。ヒートパイプの可撓部120bは、ペルチェ式クーラ100に対する冷却要素44のいくらかの移動を可能にする。
[000165] ヒートパイプは、例えば垂直方向(すなわちz方向)よりも水平方向(すなわちx−y平面内)に大きい断面形状を有していてもよい。ヒートパイプ120が垂直方向よりも水平方向に大きいことの利点は、ヒートパイプが投影システムPSの下により容易に収容されることが可能になるということである(投影システムPSと基板Wとの間の空間は非常に限られている)。一実施形態においては、ヒートパイプの不撓部120aは垂直方向でヒートパイプの可撓部120bよりも大きくてもよい。
[000166] ヒートパイプは例えばマイクロヒートパイプであってもよく、すなわち、芯が不要であるように毛細管作用によって流体を伝達するべく作用する鋭い縁部で構成されていてもよい。
[000167] 図7との関連で上記で説明した実施形態と同じように、ペルチェ式クーラ100はクーラの一例に過ぎず、任意の他の形態のクーラが用いられてもよい。クーラはリソグラフィ装置LAの投影システムPS(図1を参照)から遠隔して、例えば投影システムから0.5メートル以上離れて配置されてもよい。
[000168] 図8の実施形態の他の利点は、図7との関連で上記で説明したものと概ね一致している。遠隔に配置されたペルチェ式クーラ100は、冷却要素44がより低い温度まで冷却されることを可能にする。これは冷却要素がより小さな設置面積を有することを可能にし、空洞48においてより高い圧力のガスを許容する。基板の上方のコンポーネントには水が提供されない。ペルチェ式クーラの高温側は、冷却中の基板の付近には配置されない。冷却要素44に必要なコンポーネントがより少なくなり、それによって冷却要素の設計が簡略化される。
[000169] 冷却システムのさらなる代替的な実施形態が図9に概略的に図示されている。これは冷却材が冷却材ループ142を巡って圧送される2相冷却システム140を備えている。冷却材は、液体の形態から蒸気の形態への蒸発を介して冷却要素44から熱を除去する。2相冷却システムは、ポンプ144と、プリヒータ146と、コンデンサ148とを備えている。冷却システムはさらに、温度センサ150と、加圧された冷却流体を貯蔵するとともにループ142に送出される冷却材の圧力を調整するアキュムレータ152とを備えている。
[000170] 動作時には、液体の形態の冷却材が、ポンプ144によって圧送されてプリヒータ146を通過する。これにより冷却材の温度は所望の温度に設定される。冷却材はその後、冷却要素44に進入し、冷却要素中を巡る。冷却材は、冷却要素44から熱を受け取って、蒸気の形態に蒸発させる。これにより冷却要素44から熱が除去される。冷却材流体は(例えば水又は何らかの他の冷却材を使用する熱交換器を用いて)冷却材から熱を除去するコンデンサ148へと伝わる。冷却材は、コンデンサ148内を進みながら液体の形態に凝縮する。今や液体の形態となった凝縮された冷却材は、次いでポンプ144に伝わり、そこから再び圧送されてループ142を巡る。
[000171] ループ142内での冷却材の状態は、ループの線の形態によって概略的に示されている。実線は、冷却材が液体の形態であることを示す。破線は、冷却材が少なくとも部分的に蒸気の形態であることを示す。
[000172] 冷却要素44の温度は温度センサ150によって測定される。アキュムレータ152は、温度センサ150によって測定された温度に応じてループ142内の冷却材の圧力を調整するように制御される。したがって、測定された温度が高すぎる場合には、冷却材が冷却要素44からもっと熱を除去するように、ループ142内の冷却材の圧力が高められる。同様に、温度センサ150によって測定された温度が低すぎる場合には、冷却材によって冷却要素44から除去される熱の量を減少させるために、アキュムレータ152を用いて冷却材の圧力が低減される。
[000173] 2相冷却を提供するであろう任意の適当な冷却材が用いられ得る。例えば、冷却材は、CO2、R134a、又はR1234zeであってもよい。
[000174] 図9に図示される実施形態の利点は、冷却要素44に提供される冷却の量に対して迅速な調整を適用するために追加的なヒータが必要とされないということである(調整はアキュムレータ152を介して得られる)。
[000175] 図9の実施形態の他の利点は、図7及び8の実施形態に関連して上記で説明したものと概ね一致している。2相冷却システム140は、冷却要素44がより低い温度まで冷却されることを可能にする。これは冷却要素がより小さな設置面積を有することを可能にし、小さな設置面積は空洞48内により高い圧力のガスを許容する。ペルチェ式クーラの高温側を基板の付近に有することが回避される。冷却要素44に必要なコンポーネントがより少なくなり、それによって冷却要素の設計が簡略化される。
[000176] 図10はクーラ158を概略的に図示しており、このクーラは、図7及び8に図示したペルチェ式クーラ100に代えて、冷却されたガスを冷却要素44に送出するために用いられ得る。クーラ158は、ガス流の流速を増大させる狭窄部162を含む。狭窄部はガスを膨張させ、その結果、ガスの質量流量は変わらないが体積流量は増大し、それによってガスの温度が下げられる。
[000177] クーラ158の入口導管160を通って進むガスは、室温程度(例えば22℃)であってもよい。ガスは、ガス流の流速を増大させるように作用する狭窄部162を通過し、それによってガスの温度が下げられる。狭窄部162の内部におけるガス速度はガスが狭窄部に進入する前よりも有意に速いため、ガス温度は有意に低く、例えば約2℃であり得る。狭窄部は第1の熱交換器164の内部に配置されている。狭窄部162の内部におけるガスの温度が低いため、ガスは第1の熱交換器164から熱を吸収する。熱交換器の温度は、例えば約12℃であってもよい。
[000178] 狭窄部162を離れるとすぐに、ガスは、狭窄部よりも大きな直径(例えば第1のガス導管160と同一の直径)を有する第2のガス導管166に進入する。したがって、ガスは遅いガス速度へと減速する。ガスは、熱交換器164から熱を受け取っているので、ここでは当初の温度よりも高い温度を有する。ガスは、例えば約32℃の温度を有し得る。
[000179] ガスは第2のガス導管166に沿って第2の熱交換器168へと進み、そこでガスから熱が除去されて水(又は導管170によって送出される何らかの他の流体)に伝達される。これはガスを、例えば約22℃の温度まで冷却し得る。ガスはその後、第3のガス導管172に沿って進み、戻って熱交換器164を通る。これはガスを有意な温度分、例えば数℃冷却する。例えば約12℃の温度を有し得る冷却されたガスは、次いで第4のガス導管174を介して送出される。第4のガス導管174は冷却要素44に接続されていてもよい。
[000180] 代替的な構成においては、第1の熱交換器164は冷却要素であってもよい。
[000181] 狭窄部162の直径は、速い流速をもたらすように調整され得る。速度が音速であるときには、約9℃の温度降下が達成され得る。長さが10cm、断面が5×0.5mm、上流圧が180mbar、下流圧が20mbarの扁平チューブでは、100mbarリットル/秒の水素流量で、最後の1センチメートルでは約1000m/s、及び最初の9センチメートルではおおよそ300m/sのガス速度が達成されるであろう。
[000182] 図10に図示された実施形態の利点は、図7乃至9に関連して上記で説明した利点と概ね一致している。この実施形態は、冷却要素44がより低い温度まで冷却されることを可能にする。これは冷却要素がより小さな設置面積を有することを可能にし、小さな設置面積は空洞48内により高い圧力のガスを許容する。ペルチェ式クーラの高温側を基板の付近に有することが回避される。冷却要素44に必要なコンポーネントがより少なくなり、それによって冷却要素の設計が簡略化される。
[000183] 本発明の一実施形態による冷却要素202の断面が図11に概略的に図示されている。冷却要素202はリソグラフィ装置の冷却装置40(図1を参照)の一部を形成し得る。図11にデカルト座標によって示されているように、断面は(Y方向の断面を示していた先の各図とは対照的に)X方向に沿っている。冷却要素202は、他の実施形態との関連で上記で説明したフィーチャを含んでいてもよい。簡潔にするため、これらはこの実施形態の説明には含まれていない。したがって、例えば、この実施形態はペルチェ式クーラなどの除熱システム及び流体冷却システムを含み得る。同様に、例えば、この実施形態は引込機構を含んでいてもよい。上記で説明したガスの圧力及び冷却要素202と基板との間隔に関する考慮点は、この実施形態に関して(及び他の実施形態に関して)も当てはまり得る。
[000184] 冷却要素202は、バルブ208を介してガスを受け取るガス送出導管206に接続された本体204を備えている。本体204内のチャンバ210はガス送出導管206からガスを受け取る。本体204は、チャンバ210の最下面を形成する床212を有する。床212には穴214が設けられており、ガスはこれらを通ってチャンバ210から流れる。冷却要素202は基板Wの上方に配置され、穴214を通出したガスは、(矢印によって概略的に図示されるように)冷却要素の下から流出するまで冷却要素202と気体Wとの間の空間を満たす。ガスは基板Wよりも低い温度を有する。ガスは、基板Wから(基板よりも低い温度を有する)冷却要素202への熱の伝達を促進する。このように、ガスは基板を冷却するように作用する。冷却ガスとも称され得るガスは、例えば水素(又は不活性ガス)であってもよい。冷却ガス(及び冷却要素202)について用いられ得る適切な温度は、他の実施形態との関連で本文書の他の箇所に述べられている。
[000185] 穴214は床212全体に分配されていてもよい。穴214は、例えば直径が少なくとも10ミクロンの寸法をとり得る。穴214は、例えば直径が最大で50ミクロンの寸法をとり得る。穴214は二次元アレイとして提供されてもよい。隣接する穴214の間には少なくとも100ミクロンの間隔が設けられてもよい。隣接する穴214の間には最大で1mmの間隔が設けられてもよい。X方向における隣接する穴の間の間隔は、Y方向における隣接する穴の間の間隔とは異なっていてもよい。穴214は、例えばレーザ穴あけを用いて形成され得る。図11Aには9個の穴(及び図11Bには45個の穴)が図示されているが、これは概略図に過ぎず、任意の適当な数の穴が用いられ得る。
[000186] 冷却要素202はさらに、シャッタ216を備えている。シャッタ216はX方向(非スキャン方向)に移動可能であり、チャンバ210の床212の穴214のうちいくつかを閉鎖するように作用する。図11Aにおいては、シャッタ216は、床212の穴214を閉鎖しない第1の位置にある。この位置は引込位置とも称され得る。図11Bにおいては、シャッタ216は、チャンバ210の床212の穴214のうちいくつかを閉鎖する位置に移動されている。この位置は展開位置とも称され得る。図11Aと図11Bとの比較からわかるように、冷却ガスが入射する基板エリアのX方向の大きさは、シャッタ216が引込位置から展開位置に移動されると縮小される。これは、図12との関連で以下で述べられる理由により、有利である。
[000187] 図12は、冷却要素202を下から見たところを概略的に図示する。やはり図12に図示されているのは、リソグラフィ装置LAの放射ビームB(図1を参照)によって照明される露光エリアEである。冷却要素202の本体204は、冷却要素の床212を包囲する外周部を形成する。床212には穴214が設けられており、冷却要素202の動作の際にはこれらの穴からガスが流出する。冷却要素を下から見たときには冷却要素202のシャッタ216は見えないであろうが、ここでは、本発明の理解を容易にするために図示されている。シャッタは引込位置216a(破線で図示されている)から展開位置216b(点線で図示されている)へと移動可能である。
[000188] リソグラフィ装置LA(図1を参照)の動作時、放射ビームBによって照明される露光エリアEのX方向(非スキャン方向)の寸法は、リソグラフィ装置のオペレータによって選択されてもよい。この選択は、基板W上でリソグラフィ装置によって露光されるダイの寸法によって決定され得る。露光エリアEのX方向の最大の大きさは、例えば26mmであり得る(もっとも、他のX方向の最大の大きさが可能である)。図12においてはX方向の最大の大きさはXmaxと標識されている。露光エリアEのX方向の最小の大きさは、例えば16.5mmであり得る(もっとも、他の最小寸法が可能である)。図12においては露光エリアの最小寸法はXminと標識されている。露光エリアEのX方向の大きさは、リソグラフィ装置LAのイルミネータIL(図1を参照)によって、例えばマスキングブレイド(図示しない)を用いて既知の手法で調整され得る。
[000189] 冷却要素202のシャッタ216は、冷却ガスが誘導されるエリアのX方向の大きさが調整されることを可能にし、したがってこのエリアの大きさは露光エリアEのX方向の大きさと一致する。よって、露光エリアEが最大寸法Xmaxを有するときには、シャッタ216は引込位置216aにある。その際、ガスを基板に送出する床212の穴のX方向の大きさは、Xmaxと略一致する。露光エリアEがX方向の最小寸法Xminを有するときには、シャッタ216は展開位置216bにある。その際、ガスを基板上に送出する床の穴のX方向の大きさは、Xminと略一致する。
[000190] 露光エリアEは、XmaxとXminとの間で他のX方向の大きさが可能である。したがって、シャッタ216は、引込位置と展開位置との間の中間位置へと展開され得る。このように、シャッタ216は、冷却要素202が、露光エリアEのX方向の大きさと一致するX方向の大きさを有するエリアに冷却ガスを誘導するように位置決め可能である。冷却ガスが送出されるエリアのX方向の大きさを露光エリアEのX方向の大きさと一致させることによって、この実施形態は、露光エリアのX方向縁部を超えて広がるエリアに冷却ガスを誘導することを回避する。もしも冷却ガスが露光エリアEのX方向縁部を超えて広がるエリアに送出されると、それによって望ましくない基板の歪曲が引き起こされ得る。そして、リソグラフィ装置が基板上にパターンを投影することのできる精度が低減され得る。例えば、冷却ガスは、現在露光中のダイに隣接するダイの一部の冷却を引き起こし、それによって、その後その隣接するダイにパターンが投影されるときのオーバーレイ精度が低減し得る。この問題は本発明の実施形態によって回避される。なぜなら、冷却ガスが入射するエリアのX方向の大きさが露光エリアEのX方向の大きさと一致するからである。
[000191] 本発明の図示された実施形態において、シャッタ216は、引込位置216aにあるときには、冷却要素202の床212にある穴214のいずれをも閉鎖しない。しかしながら、必ずしもそうでなくてもよい。したがって、例えば、シャッタ216は、引込位置にあるとき、床212のいくつかの穴214を閉鎖してもよい。そうなるか否かは、シャッタ及び床の具体的な構成によるであろう。いずれにしても、シャッタを引込位置216aから展開位置216bへと移動させると、冷却要素202の床212のいくつかの穴214が閉鎖される。
[000192] 代替的な配置では、床212に穴を設ける代わりに、床が多孔質材料から形成されてもよい。その場合には、その材料の気孔の網が、ガスが床212から流出することを可能にする。用いられ得る多孔質材料の例は、黒鉛(例えばオランダ国ヘルモントのXycarb Ceramics社によって販売されている)及び焼結セラミックス(オランダ国ゲルダーマルセンのGimex社によって販売されている)である。多孔質材料の多孔性は、所望の場合には、多孔質材料の表面に溶媒と共にエポキシ層を適用することによって低下されてもよい。使用される溶媒の量は、層の所望の透過性が達成されるように選択され得る。
[000193] 穴214及び多孔質材料の気孔はいずれも、ガスが床212を通過することを可能にする開口の例と考えられ得る。シャッタ216は、開口が穴214であるのか多孔質材料の気孔であるのかに関わらず、同様の働きをする。したがって、シャッタ216を引込位置216aから展開位置216bへと移動させると、冷却要素202の床212のいくつかの開口が閉鎖される。
[000194] 図11及び12には単一の冷却要素202のみが示されているが、この実施形態による冷却要素はリソグラフィ装置の露光エリアEの両側に(例えば図3に図示される配置に対応する配置で)設けられてもよいことがわかるであろう。
[000195] 図示される実施形態は2つのシャッタを有しているが、他の数のシャッタが用いられてもよい。例えば、単一のシャッタが用いられてもよい。その場合には、シャッタの移動と併せて、冷却要素202のX方向のいくらかの移動が必要であろう。これにより、シャッタによって閉鎖されていない開口がX方向で露光エリアEと整列したままであることが保証される。
[000196] さらなる一実施形態(図示しない)においては、冷却要素は、シャッタ216は存在しないが、概ね図11及び12に図示されているようなものであってもよい。したがって、冷却要素は開口が設けられた床を含んでいてもよく、その開口を通ってガスが基板上に送出される。開口は、例えば穴のアレイ又は多孔質材料の気孔であってもよい。
[000197] 図13は、図11及び12に図示された実施形態と類似の機能性を提供するがこれを異なる手法で行う、本発明の代替的な一実施形態を概略的に図示する。図13は、本発明の一実施形態による冷却要素302の概略断面図である。図11と同様、断面は冷却要素のX方向に沿っている。冷却要素302は本体304を備え、その内部に3つのチャンバ306乃至308が設けられている。チャンバは壁310によって互いに分離されている。チャンバは外チャンバ306,308及び内チャンバ307とも称され得る。各チャンバは、異なるガス導管及び関連するバルブ(図13には図示しない)に接続されている。本体304はチャンバ306乃至308の最下面を形成する床312を有する。床312には穴314が設けられており、ガスはこれらを通ってチャンバ306乃至308から流れることができる。冷却要素302は基板Wの上方に配置され、穴314を通出したガスは、(矢印によって概略的に図示されるように)冷却要素の下から流出するまで冷却要素302と気体Wとの間の空間を満たす。ガスは基板Wよりも低い温度を有するので、基板を冷却するように作用する。ガスは冷却ガスとも称され得る。冷却ガスについて用いられ得る適切な温度は、他の実施形態との関連で本文書の他の箇所に述べられている。他の実施形態との関連で述べられているフィーチャ及び考慮点は、この実施形態との関連でも用いられ得る。
[000198] 図13Aを参照すると、ガスがチャンバ306乃至308のすべてに送出されるように、ガス導管のすべてと接続されたバルブが開かれていてもよい。ガスは、チャンバ306乃至308のすべてに送出されているため、床312のX方向の大きさ全体にわたって分配された穴314を通出する。これは、リソグラフィ装置の露光エリアEのX方向の最大の大きさXmaxと一致し得る(図12の左側を参照)。
[000199] 図13Bを参照すると、外チャンバ306,308に伝わるガス導管に接続されたバルブは閉じられており、内チャンバ307に伝わるガス導管に接続されたバルブは開いている。外チャンバ306,308にはガスが送出されていないので、これらの外チャンバの下に配置された床312の穴314を通るガス流は存在しない。ガスは、内チャンバ307の床312の穴314から流れ続ける。したがって、ガスが送出される基板エリアのX方向の大きさは、図13Bでは、図13Aと比較すると縮小されている。壁310は、内チャンバ307からガスが送出されるX方向の大きさがリソグラフィ装置の露光エリアEのX方向の最小の大きさXmin(図12の左側を参照)と一致するように位置決めされていてもよい。
[000200] 壁310は、床312から冷却ガスを受け取らないX方向の大きさ部分を最小化するために、薄くてもよい(例えば厚さ1mm未満)(床のうち、壁310の直下の部分は、壁によって冷却ガスを放出するのを阻止されてもよい)。
[000201] 図13の冷却要素302は、図11及び12の冷却要素との関連で上記で説明したフィーチャを組み込んでいてもよい。例えば、穴314は図11及び12との関連で上記で説明した特性を有していてもよい。床312は多孔質材料から形成されてもよい。穴314及び多孔質材料の気孔は、冷却ガスが通流し得る開口の例である。
[000202] 図14は、図13に図示された形態の2つの冷却要素302,303を備えた冷却装置40を上から見たところを断面で概略的に図示する。図14は、冷却装置のガス導管及びリソグラフィ装置の露光エリアEも概略的に図示している。図13との関連で上記で説明したように、冷却要素302,303はそれぞれ、内チャンバ307と、第1の外チャンバ306と、第2の外チャンバ308とを備える。チャンバ306乃至308は壁310によって互いに分離されている。第1のバルブ316は、2つの部分318a,318bに分岐する第1のガス導管318に接続されている。ガス導管の枝管318a,318bはそれぞれ、第1の冷却要素302の第1の外チャンバ306と、第2の冷却要素303の第2の外チャンバ306とに接続されている。第2のバルブ320は、第2のガス導管322に接続されている。第2のガス導管322は2つの枝管322a,322bに分かれ、これらはそれぞれ、第1の冷却要素302の第2の外チャンバ308と、第2の冷却要素303の第2の外チャンバ308とに接続されている。第3のバルブ324は、第3のガス導管326に接続されている。第3のガス導管326は2つの枝管326a,326bに分かれ、これらはそれぞれ、第1の冷却要素302の内チャンバ307と、第2の冷却要素303の内チャンバ307とに接続されている。
[000203] 図14Aに概略的に図示されているように、バルブ316,320,324のすべてが開いているときには、ガスは冷却要素302,303のチャンバ306乃至308のすべてに送出される。その結果、冷却要素302,303によってガスが送出される基板のX方向の大きさは、リソグラフィ装置の露光エリアEのX方向の最大の大きさXmaxと一致する。
[000204] 図14Bにおいては、第1のバルブ316及び第3のバルブ320が閉じており、その結果、ガスは冷却要素302,303の外チャンバ306,308へは流れない。第3のバルブ324は開いており、したがってガスは冷却要素302,304の内チャンバ307に流れる。その結果、ガスは冷却要素302,303の外チャンバ306,308からは流出しないが、内チャンバ307からは流出する。したがって、冷却ガスは、リソグラフィ装置によって露光されている基板の、より小さいX方向の大きさにわたって送出される。冷却ガスが送出されるX方向の大きさは、リソグラフィ装置によって照明される露光エリアEのX方向の大きさと一致し得る。これは例えばそのリソグラフィ装置の露光エリアEのX方向の最小の大きさXminであってもよい。
[000205] このように、第1のバルブ316及び第3のバルブ320を開閉することによって、冷却ガスが送出されるX方向の大きさは、最大値と最小値との間で切り替えられ得る。代替的な構成(図示しない)においては、例えば4つの導管に分かれる単一の導管を介して外チャンバ306,308の両方へのガス流を制御するために、単一のバルブが配置されていてもよい。
[000206] 図11及び12の実施形態と比較した図13及び14の実施形態の欠点は、冷却ガスが送出されるX方向の大きさが最小値と最大値との間の値に制御可能でないということである。したがって、リソグラフィ装置によって用いられる露光エリアEが最小の大きさXminと最大の大きさXmaxとの中間のX方向の大きさを有する場合、冷却要素302,303によって冷却ガスが送出される基板のX方向の大きさは、露光エリアEと一致しないであろう。
[000207] 図13及び14の実施形態の利点は、冷却要素302,303からのガスの送出を制御する可動要素(すなわちバルブ316,320,324)が冷却要素自体から離れて配置されているということである。対照的に、図11及び12の実施形態において、シャッタ216は冷却要素302の内部に配置されている。図1からわかるように、冷却要素202,302,303は、リソグラフィ装置の投影システムPSの下且つリソグラフィ装置の基板テーブルWTの上方に配置される冷却装置40の一部を形成する。これは比較的アクセスし難い箇所である。したがって、図13及び14の実施形態のバルブ316,320,324の保守及び修理は、図11及び12の実施形態のシャッタの保守及び修理よりも遥かに容易であろう。
[000208] 図15は、本発明の代替的な一実施形態による冷却要素402を概略的に図示する。本発明の他の実施形態と同じく、冷却要素402は、リソグラフィ装置の動作の際に放射ビームBによって照明される露光エリアEに隣接する箇所で基板W上に冷却ガスを導くように構成されている。冷却要素402は、断面が図15に概略的に図示されているとともに、下から見たところが図16に概略的に図示されている。図15は図16に対して拡大されている。いくつかの他の実施形態と同じく、この実施形態は実用においてはガス送出導管を含むであろうが、図15及び16にはガス送出導管は図示されていない。他の実施形態との関連で述べられているフィーチャ及び考慮点は、この実施形態との関連でも用いられ得る。
[000209] 冷却要素402は、チャンバ406を設けられた本体404を備えている。チャンバ406は多孔質材料から形成された床408を有する(適当な多孔質材料は上記で説明されている)。本体404は基板Wの方を向いた最下面410を有する。最下面410の一部は多孔質材料の床408によって形成されている。実質的に平面状であり得る本体404の最下面410はギャップGによって基板Wから分離されており、このギャップは例えば約80ミクロンであってもよい。ギャップGは、例えば200ミクロン未満であってもよいし、例えば100ミクロン未満であってもよい。ギャップGは、例えば20ミクロンより大きくてもよい。
[000210] 多孔質材料の床408を通って送出された冷却ガスは、本体404の最下面410と基板Wとの間のギャップGを満たす。ギャップG内の冷却ガスは網掛けされたエリア412によって概略的に図示されている。冷却ガス412は、例えば水素(又は何らかの他のガス)であってもよい。冷却ガス412は、基板の温度よりも低い温度を有する。冷却ガス412は、基板Wからやはり基板の温度よりも低い温度を有する冷却要素本体404への熱の伝達を促進する。このように、冷却ガス412は基板Wを冷却するように作用する。
[000211] 図15の冷却要素402はさらに、第1の冷却流体経路414及び第2の冷却流体経路416を備えている。冷却流体は冷却流体経路414,416を通って圧送され、それによって冷却要素402から熱を運び去る。冷却流体は、例えば窒素ガス(又は何らかの他のガス)であってもよく、例えば約−100℃の温度まで冷却されてもよい。窒素ガスは、例えば大気圧を上回る圧力(例えば4バールより高く、例えば約8バール、例えば12バール以下)に保持されてもよい。窒素(又は他のガス)は冷却要素402を0℃を下回る温度まで冷却するように作用する。窒素(又は他のガス)は冷却要素402を−50℃を下回る温度まで冷却するように作用してもよいし、冷却要素を−70℃を下回る温度(例えば約−100℃)まで冷却するように作用してもよい。冷却要素402が0℃を下回る温度、例えば約−100℃で保持されるので、チャンバ406内の冷却ガスもまたその温度まで冷却される。その結果、多孔性の床408を通って送出される冷却ガス412は、冷却要素402の温度と同じ温度を有する。
[000212] 冷却ガスは、冷却要素402と基板Wとの間に大気圧よりも大きい冷却ガス412の圧力をもたらすであろう流量で送出される。圧力は、例えば500パスカルより大きくてもよく、例えば約700パスカルであってもよい。圧力は、例えば1000パスカル未満であってもよい。冷却ガス412は、例えば300W/m2Kよりも高い熱伝達率を提供し得る。冷却ガス412は、例えば600W/m2Kよりも低い熱伝達率を提供し得る。冷却ガス412は、例えば約450W/m2Kの熱伝達率を提供し得る。
[000213] 冷却要素402は露光エリアEの縁部に隣接して配置されてもよい。この文脈において、「隣接」という用語は、露光エリアEの縁部から1cm未満を意味するものとして解釈され得る。冷却要素402は、露光エリアEの縁部から0.5cm未満のところにあってもよいし、露光エリアの縁部から約1mmのところにあってもよい。冷却要素402は、露光エリアEの縁部から1mm乃至1cmの範囲内にあってもよい。冷却要素と露光エリアとの間隔が小さいほど、基板加熱によって引き起こされる基板の望ましくない歪曲が回避される程度は大きくなる。
[000214] 冷却要素402が可能な限り露光エリアEに近接して位置するためには、冷却要素は、露光エリアEから所望の距離にあるときには放射ビームBと交差しないような形状を有していてもよい。よって、例えば、この実施形態の冷却要素には、放射ビームBの方に向いた傾斜内面418が備えられている。傾斜面418は、例えば垂直面に対してある角度を成していてもよく、この角度は放射ビームBが垂直面に対して成す角度に略一致する。この形状は、冷却要素402が放射ビームBに突出する最内角部を有するのを回避する。本発明の他の実施形態による冷却要素についても対応する形状が用いられ得る。
[000215] 冷却要素402は(垂直方向で測定したとき)薄い。なぜなら、これによって、冷却要素が、放射ビームと交差することなしに放射ビームBにより近接して位置決めされることが可能になるからである。したがって、例えば、冷却要素は、垂直方向(z方向)で3mm以下の厚さを有し得る。冷却要素402の厚さは、例えば2mm以下であってもよい。冷却要素402は、冷却ガスを受容するチャンバ406のための空間を許容するとともに冷却流体経路414,416のための空間も許容する程度に十分に厚い。よって、冷却要素402の最小の厚さは、例えば約1mmであってもよい。
[000216] 冷却要素402が露光エリアEに近接しているほど、基板加熱によって引き起こされる基板の望ましくない歪曲が回避される程度は大きくなる。したがって、例えば、冷却要素402と露光エリアEの縁部との間は3mm未満の間隔であるのが望ましいであろう。2mm以下の間隔は、さらに効果的な冷却を提供するので、好適であろう。1mm以下の間隔が最も好適であろうが、これを実用で実現するのは困難であろう。露光エリアEの縁部の位置には、例えば約0.3mmの公差があってもよい。冷却要素402が露光エリアEに対して位置決めされ得る精度には、例えば約0.3mmの公差があってもよい。上記で言及した値はこれを考慮に入れていてもよい。よって、上記で言及した値は、例えば+/−0.6mmの公差を有し得る。
[000217] 冷却要素402の最下面410は、例えばY方向で1mm乃至3mm(例えば1.5mm乃至2mm)の寸法をとってもよい。冷却要素402の最下面410は、例えばY方向で5mm未満の寸法をとってもよい。最下面410のY方向の長さは、冷却要素402と基板との間に位置する冷却ガス412のエリアを決定するので、基板Wに提供される冷却の量に有意な影響を有する。多孔質材料の床408は、例えば、Y方向(スキャン方向)で測定して冷却要素402の内縁部から約0.5mm離れていてもよい。多孔質材料の床408は、例えば、0.3mm乃至0.7mm(例えば約0.5mm)のY方向の長さを有していてもよい。
[000218] 図15の実施形態は、露光されるエリアEに近接した箇所に冷却を提供することにより、放射ビームBによって引きこされる加熱に起因して基板が膨張する傾向を抑え得る。そのような膨張は基板の縁部で特に問題となる。なぜなら、基板は縁部では基板テーブルWTによる抑制が弱くなりがちであるためである。この実施形態のさらなる利点は、基板テーブルWTのバールが備えなければならない剛性公差を緩め得るということである(バールの剛性の要求される精度は加熱に起因する基板の膨張と相関している)。
[000219] 図16は、露光エリアEの一方側の第1の冷却要素402と露光エリアの反対側の第2の冷却要素403とを下から見たところを図示している。これらの冷却要素は図15に図示された種類のものである。一方の冷却要素402は基板のうちあるエリアをそのエリアが放射ビームBによって露光される前に冷却し、他方の冷却要素403はそのエリアが露光された後で基板を冷却する。これは、スキャン露光の方向が入れ替わるときには入れ替わる。
[000220] 図16からわかるように、多孔質材料から形成された床408のX方向の大きさは露光エリアEのX方向と一致し得る。これは例えば、リソグラフィ装置が照明することのできる露光エリアのX方向の最大の大きさXmaxであってもよい。冷却要素402,403は、冷却ガスが通過して送出される床408のX方向の大きさを調整するように動作可能な1つ以上のシャッタ又はチャンバ又は他のコンポーネント(図示しない)を備えていてもよい。
[000221] 図15及び16に図示される実施形態は多孔質材料から形成された床408を有しているが、他の実施形態においては、床は非多孔質材料から形成されてもよく、その床には冷却ガスが床を通過して送出され得るように穴のアレイが設けられている。穴は、先行する実施形態に関連して上記で言及した特性を含み得る。穴及び気孔は、冷却ガスが通流し得る開口の例である。
[000222] 図2乃至4に図示されている本発明の実施形態は、空洞48,49を有する代わりに基板Wの方を向いた床を含むように変形されてもよい。床は略平面状であってもよく、例えば冷却要素の最下面と同一平面であってもよい。床は、開口を設けられていてもよい(例えば多孔質材料から形成されてもよいし、又は穴のアレイを設けられていてもよい)。床の上方にはチャンバが設けられていてもよく、そこからガスが床を通過して送出される。
[000223] 説明された本発明の実施形態は2つの冷却要素を備えているが、本発明の他の実施形態は他の数の冷却要素を備えていてもよい。例えば、単一の冷却要素が設けられてもよい。単一の冷却要素は、例えば露光エリアEの一方側に沿って広がって(又は露光エリアの一方側に沿って広がる空洞を有して)いてもよい。その場合には、冷却要素は露光エリアEを(露光の際のスキャン方向に応じて)露光の前又は露光の後に冷却するであろう。代替的には、単一の冷却要素が、例えば露光エリアEの複数の側部の周囲に広がって(例えば露光エリアの複数の側部の周囲に広がる空洞又は開口を備えた床を有して)いてもよい。単一の冷却要素が、例えば露光エリアEの周囲回りに広がって(例えば露光エリアの周囲回りに広がる空洞又は開口を備えた床を有して)いてもよい。
[000224] 代替的な一例においては、2つよりも多くの冷却要素が設けられていてもよい。例えば4つの冷却要素が設けられてもよく、露光エリアの各縁部に隣接して1つの冷却要素が提供される。
[000225] 図17には本発明の代替的な一実施形態が概略的に図示されている。図17の冷却装置70は、一対の冷却要素72,74を備えている点で上記で説明した実施形態と類似しているが、この実施形態においては、基板Wから熱を除去するために、異なる冷却機構が用いられる。各冷却要素72,74にはノズルのアレイ76,78が設けられており、このアレイは液体の液滴を基板W上に導くように配置されている。液体の液滴は図17においては円80によって概略的に示されている。液体は水であってもよく、図17の実施形態は水の液滴が使用される場合に関連して説明される。しかしながら、任意の他の適当な液体が用いられてもよい。水の液滴は基板Wから熱を受け取って基板の表面から蒸発する。水の液滴への熱の伝達及びその液滴の蒸発が基板Wの冷却をもたらす。基板Wの冷却されている領域からの液滴の蒸発は、その領域が放射ビームBによって照明される前に完了し得る。
[000226] ノズルアレイ76,78は二次元アレイであってもよい。ノズルは、(例えば長方形の格子状の配置を有するノズルによって)例えば長方形のアレイとして提供されてもよい。各ノズルアレイ76,78は任意の適当な配置を有し得る。ノズルは各アレイ76,78の全体に均一に分配されていてもよい。ノズルは、基板W上に水の液滴の一様な分配をもたらすように配置されていてもよい。
[000227] 先に説明した実施形態の冷却要素42,44の位置決めに関して上記で述べられた考慮点は、この実施形態の冷却要素70,72の位置決めに関しても概ね当てはまる。したがって、例えば、冷却要素72,74は、スキャン方向(すなわちY方向)で放射ビームBの両側に配置されている。冷却要素72,74は、露光エリアEに隣接している。この文脈において、「隣接」という用語は、露光エリアEの縁部から1cm未満を意味するものとして解釈され得る。冷却要素72,74は、露光エリアEの縁部から0.5cm未満のところにあってもよいし、露光エリアの縁部から約0.1cmのところにあってもよい。各冷却要素は、露光エリアEを二等分する線から3cm以内にあるエリアを冷却するように構成されていてもよい。各冷却要素は、露光エリアの縁部から2cm以内にあるエリアを冷却するように構成されていてもよい。
[000228] 上記で説明した理由により、Y方向におけるノズルアレイの範囲は、Y方向におけるリソグラフィ装置の露光エリアの最大長以上であってもよい。ノズルアレイは、例えば、X方向で約26mm延びるエリアに水の液滴を送出するように構成されていてもよい。各ノズルアレイは、例えば、Y方向で約5mm延びるエリアに水の液滴を送出するように構成されていてもよい。
[000229] 各冷却要素72,74の底面(これはノズル76,78の底面であるものと見なされ得る)の間隔は、上記で説明した実施形態におけるよりも有意に大きくてもよい。なぜなら、異なる考慮点が当てはまるためである。水の液体のうちいくらかの蒸発は、水の液滴がノズル76,78から基板Wへと進むときに発生する。しかし、水の液滴が基板Wに到達する前に完全に気化しなければ、その水の液滴はいくらかの基板の冷却をもたらすであろう。発生する水の液滴の蒸発の量は、水の液滴の飛行時間に依存するとともに、水の液滴の速度と、冷却要素72,74と基板Wとの間隔とに依存する。例えば、1ミリメータ以上(例えば最大で約5mm)の間隔が設けられると、問題となる量の水の液滴の蒸発は発生しないであろう(例えば基板Wへと進む際の蒸発は約50%又はそれよりも少なくてもよく、10%未満であってもよい)。例えば50ミクロン以上の、より小さな間隔が設けられてもよい。上述したように、冷却要素72,74と基板Wとの接触のリスクを実質的に無くすには、50ミクロンの間隔で十分であろう。
[000230] 所与の時間中に蒸発する水の液滴の割合は、水の液滴の半径に依存する。本発明の実施形態の水の液滴は、例えばおよそ数ミクロン又は数十ミクロンの直径を有し得る。一例として、水の液滴は、約20ミクロンの直径を有していてもよい。その場合、水の液滴の半分が蒸発するのにかかる時間は、約5ミリ秒であろう。ノズル76,78は、約10m/秒の速度で水の液滴を基板の方に導いてもよい。ノズルと基板との間隔が5mmであれば、水の液滴の約6%が、基板Wに到達する前に蒸発する。より少ない蒸発が望まれるか、又はより遅い液滴速度が望まれる場合には、冷却要素72,74と基板Wとの間隔は相応に小さくされてもよい。例えば、間隔を100ミクロンに減少させると、液滴が同じ速度で約0.1%の蒸発をもって送出されることが可能になるであろう。
[000231] 各冷却要素72,74は、約1.5乃至3Wを基板から除去するように配置されてもよい。水の蒸発エネルギは2×106J/kgである。したがって、例えば基板から2Wを除去するためには、水の液滴は約1mg/sの流量で基板に送出され得る。
[000232] 図17に関連して説明された実施形態は2つの冷却要素72,74を備えているが、本発明の他の実施形態は他の数の冷却要素を備えていてもよい。例えば、単一の冷却要素が設けられてもよい。単一の冷却要素は、例えば露光エリアEの一方側に沿って広がるノズルアレイを有していてもよい。その場合には、冷却要素は露光エリアを(露光の際のスキャン方向に応じて)露光の前又は露光の後に冷却するであろう。代替的には、単一の冷却要素が、例えば露光エリアの複数の側部の周囲に広がって(例えば露光エリアの複数の側部の周囲に広がるノズルアレイを有して)いてもよい。単一の冷却要素が、例えば露光エリアの周囲回りに広がって(例えば露光エリアの周囲回りに広がるノズルアレイを有して)いてもよい。
[000233] 代替的な一例においては、2つよりも多くの冷却要素が設けられていてもよい。例えば4つの冷却要素が設けられてもよく、露光エリアの各縁部に隣接して1つの冷却要素が提供される。
[000234] 適切な場合には、先に説明した実施形態との関連で上述したバリエーションが、ここで説明した実施形態にも適用され得ることがわかるであろう。
[000235] 説明した実施形態は水の液滴を用いるが、基板から蒸発する任意の他の適当な液体が用いられてもよい。例えば、液体の形態となるように十分に高い圧力及び/又は十分に低い温度で保持されたCO2、H2、又は不活性ガスがノズルアレイから吐出されてもよい。
[000236] 本発明の代替的な一実施形態は、加熱装置を備える。図18乃至22は、加熱装置の一実施形態を概略的に図示するとともに、その加熱装置がどのように用いられ得るのかを示している。図18Aは加熱装置200の下から見た概略図であり、図18Bは加熱装置の加熱要素202の一方側から見た概略図である。図18Bにはリソグラフィ装置によって投影された放射ビームBが示されており、図18Aには放射ビームによって照明された露光エリアEが示されている。
[000237] 他の図示された実施形態と同じく、図18乃至22にはデカルト座標が示されており、リソグラフィ装置に従来用いられている表記が用いられている。すなわち、Y方向は露光の際の基板Wのスキャン移動の方向であり、X方向はY方向に対して横向きで基板の平面内にあり、Z方向は放射ビームBの光軸と概ね一致する。
[000238] 加熱装置200は第1の加熱要素502及び第2の加熱要素504を備える。図18Aに図示されるように、第1の加熱要素502及び第2の加熱要素504は同一の全体構成を有し得る。加熱要素502,504は、露光エリアEの非スキャン方向の(すなわちX方向の)両端部に配置されている。加熱要素502,504は露光エリアEに隣接していてもよい。この文脈において、「隣接」という用語は、露光エリアEの縁部から1cm未満を意味するものとして解釈され得る。冷却要素502,504は、露光エリアEの縁部から0.5cm未満のところにあってもよいし、露光エリアの縁部から約0.1cmのところにあってもよい。
[000239] 各加熱要素502,504は、その加熱要素の直下にあるエリアにおいて、基板Wの局所的な加熱を提供する。各加熱要素502,504によって加熱されるエリアは、その加熱要素の直下に位置するエリアを超えて広がっていてもよい。加熱されるエリアは図18Aに点線506,508で概略的に図示されている。各加熱要素502,504は、赤外放射を放出するように構成されたLEDのアレイ510,512を備えている。図示されるLEDのアレイ510,512はそれぞれ12個のLEDを含んでいるが、任意の適当な数のLEDが用いられ得る。
[000240] 図18Bは、一方の加熱要素502を一方側から見たところを図示している。見てわかるように、LED510は赤外放射ビーム514を放出する。赤外放射ビーム514は発散し、したがって基板W上の、加熱要素502の設置面積を超えて広がるエリア506を照明する。図18Bに概略的に図示されるように、赤外放射ビーム514のうち少なくとも1つは放射ビームBの縁部と重なり得る。よって、加熱装置200は露光エリアEと重なるエリアを加熱し得る。
[000241] 概して、加熱要素502,504の発熱体は、基板上の熱を受けるエリア506,508が加熱要素の設置面積を超えて広がるように、いくらかの外向きのダイバージェンスをもって熱を放出するように構成されていてもよい。
[000242] 加熱要素502は、基板のうち放射ビームBによって照明される露光エリアEの縁部の(X方向における)すぐ外側の部分を加熱するように作用する局所的な加熱を基板Wへと送出する。その結果、基板Wの温度は、露光エリアEの縁部において急速には下降せず、よりゆっくりと低下する。そのような温度降下によって引き起こされるであろう基板の歪曲が低減されるので、有利である。これは、リソグラフィ装置LAによってパターンが基板W上に投影される精度の向上を可能にする(リソグラフィ装置のオーバーレイ精度の向上をもたらし得る)。
[000243] 図19は、リソグラフィ装置の放射ビームBによって露光される露光エリアEを概略的に図示するとともに、さらに、加熱装置の加熱要素によって加熱されるエリア506,508を概略的に図示する。図19に見られるように、加熱されるエリアの一方506は露光エリアのX方向の一方側で露光エリアEと隣り合い、他方の加熱されるエリア508はX方向の反対側で露光エリアEと隣り合う。上記で言及したように、加熱要素は、露光エリアEのX方向の縁部に存在するであろう温度勾配が存在しない(又は低減される)ように基板を加熱する。その代わり、それらの温度勾配は、加熱されるエリア506,508の露光エリアEから遠位の縁部へとX方向で外側に移動される。これらの縁部は放射ビームBによって露光されていないので、これらの縁部における温度勾配の存在は、パターンが基板W上に投影される精度に有意な影響を有さない。
[000244] 一実施形態においては、加熱されるエリア506,508は露光エリアEのX方向の縁部と重なっていてもよい。露光エリアEははっきりとした縁部を有するものとして図示されているが、実用においては、放射ビームBの強度照度がX方向で低下するにつれて不鮮明な縁部を有していてもよい。同様に、加熱されるエリア506,508ははっきりとした縁部を備えて図示されているが、赤外放射ビーム514によって提供される熱がX方向で漸進的に減少する不鮮明な縁部を有していてもよい。加熱要素502,504は、加熱されるエリア506,508のX方向の不鮮明な縁部が露光エリアEの不鮮明な縁部と重なるように構成されていてもよい。したがって、放射ビームBによって加熱されるエリアから加熱要素502,504によって加熱されるエリアへのX方向の漸進的な移行部が存在し得る。
[000245] 赤外放射はリソグラフィ用レジストにとって化学線ではないので、加熱要素502,504は(上述のように)赤外放射を放出するように構成されていてもよい。他の非化学線波長の放射が加熱要素502,504によって放出されてもよい。図示される実施形態は、基板Wに熱を送出する放射ビーム514を提供するためにLED510,512を用いるが、基板上に熱を放出するためには任意の適当な形態の発熱体が用いられ得る。加熱エリアは、スキャン方向において露光エリアの寸法よりも大きい寸法を有していてもよい。加熱エリアにおける加熱は均一である必要はない。
[000246] 加熱装置500は投影システムPSのハウジングに取り付けられてもよい。これは例えば、図1に概略的に図示される冷却装置40の取り付けに概ね対応する手法で行われ得る。加熱が適用されるときの冷却エリアは、X方向により大きくてもよい。すなわち、X方向の幅いっぱいに、図18のフィーチャ206+E+208まで広がっていてもよい。
[000247] 図20及び21は、図18に図示される加熱装置の代わりに用いられ得る加熱装置の代替的な一実施形態を概略的に図示している。まず図20を参照すると、加熱装置600は第1のレーザ602及び第2のレーザ604を備えており、これらは基板Wに入射するレーザビームLを出力するように構成されている。レーザビームLは、リソグラフィ装置の放射ビームBによって照明される露光エリアEの両側のエリア606,608を照明する。照明されるエリア606,608は露光エリアEと隣り合っていてもよい。レーザ602,604は加熱要素の例である。
[000248] レーザビームLは、基板W上の、図19に図示されるエリア506,608に概ね対応するエリア606,608を照明する。これらのエリアの形状及び寸法は光学部品603,605によって決定され得る。光学部品603,605は、レーザビームを基板W上に導くために用いられるミラーを含んでいてもよい。レーザビームLは、例えば赤外レーザビームであってもよい。レーザビームLは何らかの他の非化学線の波長を有していてもよい。レーザビームLは、基板のうち放射ビームBによって照明される露光エリアの縁部の(X方向における)すぐ外側の部分を加熱するように作用する局所的な加熱を基板Wへと送出する。その結果、基板Wの温度は、露光エリアEの縁部において急速には下降せず、よりゆっくりと低下する。これは、そのような温度降下によって引き起こされるであろう基板の歪曲が低減されるという利点を提供する。そして、リソグラフィ装置LAによってパターンが基板W上に投影される精度の向上をもたらす(リソグラフィ装置のオーバーレイ精度の向上をもたらし得る)。このことは、図19に関連して上記でより詳細に説明されている。
[000249] レーザビームLによって照明される基板W上のエリア606,608は、露光エリアEのX方向の縁部と重なっていてもよい。露光エリアEは、放射ビームBの強度照度がX方向で低下する不鮮明な縁部を有していてもよい。同様に、レーザビームLによって照明されるエリア606,608は、レーザビームの強度照度がX方向で低下する不鮮明な縁部を有していてもよい。レーザビームLは、レーザビームによって照明されるエリア606,608のX方向の不鮮明な縁部が露光エリアEの不鮮明な縁部と重なるように位置決めされてもよい。したがって、リソグラフィ装置の放射ビームBによって加熱されるエリアEからレーザビームLによって加熱されるエリア606,608へのX方向の漸進的な移行部が存在し得る。
[000250] レーザビームLは、投影システムのハウジングの床618の開口619を通って出て行く。開口619は主にリソグラフィ装置の放射ビームBが投影システムのハウジングを出て基板Wに入射することを可能にするために設けられている。しかしながら、レーザビームLも開口619を利用する。レーザビームLは、例えば、図20に概略的に図示されるように(例えばX方向で)互いに交差してもよい。
[000251] レーザ602,604は、リソグラフィ装置の投影システムPSのハウジング616(図1を参照)内に設けられてもよい。ハウジング内の環境は真空環境であってもよく、真空環境での使用に適したレーザ(例えば有意なアウトガスによって損なわれないレーザ)が選択され得る。代替的なアプローチにおいては、レーザは投影システムのハウジング618の外部に位置していてもよく、レーザビームは投影システムのハウジングの壁に設けられた1つ以上の窓を通過する。これは図21に概略的に図示されている。
[000252] 図21を参照すると加熱装置600の一実施形態が図示されており、この加熱装置は、上記で図20に関連して説明したものに対応する手法で動作するように構成されているが、レーザ620,622が投影システムのハウジング616の外部に配置されている。レーザ620,622は加熱要素の例であると考えられ得る。レーザ620,622は、ハウジング618から遠隔に配置されて、その遠隔位置から投影システムのハウジング616へと進むレーザビームLを提供してもよい。投影システムのハウジング616には窓624が設けられている。窓624は、例えば石英又は何らかの他の適当な材料から形成されてもよく、レーザビームLの波長において略透明である。投影システムのハウジング618内に配置されたミラー626,628は、レーザビームLを受けて反射するように構成されている。ミラー626,628は、レーザビームLを露光エリアEの(X方向の)両側の基板W上に導くように配向されている。したがって、レーザビームLは、露光エリアEの両側の(例えば露光エリアと隣り合った)エリア606,608を照明する。照明されるエリア606,608の形状及び寸法は、レーザ620,622の下流に配置された光学部品621,623によって決定され得る。
[000253] ミラー626,628はマウンティング630,632によって保持される。マウンティングは、ミラー626,628の配向が固定されるように固定されていてもよい。代替的には、マウンティング630,632は、ミラー626,628の配向を調整するように構成されたアクチュエータを含んでいてもよい。アクチュエータはコントローラ(図示しない)によって制御されてもよい。アクチュエータが設けられる場合には、これらのアクチュエータは、レーザビームLが基板Wに入射する位置を変更するように用いられてもよい。こうした位置調整は、例えば、X方向の大きさが縮小された露光エリアEがリソグラフィ装置のオペレータによって選択される場合に用いられ得る。有利なことには、これは、レーザビームLによって照明されるエリア606,608が露光エリアEの縁部と隣り合うように連続することを保証し得る。
[000254] アクチュエータ上のミラーは任意の適当な箇所に設けられてもよく、基板W上の照明されるエリア606,608の位置を制御するために用いられ得る。
[000255] 図20及び21の実施形態は2つのレーザを有しているが、任意の適当な数のレーザが用いられてもよい。例えば、単一のレーザが用いられて単一のレーザビームがもたらされてもよく、この単一のレーザビームはその後(例えばビームスプリッタを用いて)2つのビームに分割され、第1のレーザビームが一方の基板エリア606を照明し得るとともに、他方のレーザビームが第2の基板エリア608を照明し得る。
[000256] 加熱装置500,600によって照明されるエリア506,508,606,608のY方向の範囲は、放射ビームBによって照明される露光エリアEのY方向の範囲に概ね一致していてもよい。これは、放射ビームBによって熱が送出される手法に対応する手法で加熱装置が熱を露光エリアEの両側で送出することを可能にするので、有利である。
[000257] 加熱装置500,600の加熱要素は、放射ビームBが基板Wに入射しないときにはオフにされてもよい。これは例えば、ターゲット部分の露光の後及び次のターゲット部分の露光の前に基板Wが移動されているときに起こり得る。放射ビームBが基板を加熱していないときに基板Wを加熱するために加熱装置500,600を用いて得られる利益はないから、これは有利である。
[000258] 図22は、ターゲット部分Cのアレイに分割された基板Wを概略的に図示する。基板Wの従来のスキャン露光においては、基板のX方向で隣接するターゲット部分Cが連続して露光される蛇行経路(meander path)が用いられる。本発明の一実施形態による加熱装置500,600が用いられるときには、X方向で隣接するターゲット部分が露光されない、異なる形態の蛇行経路が用いられ得る。代わりに、X方向で少なくとも1つの介在するターゲット部分によって分離されたターゲット部分が露光され得る。この例が図22に概略的に図示されている。図22において、矢印はターゲット部分のスキャン露光の方向を図示している。よって、ターゲット部分のうち標識されている行を参照すると、C1がスキャン露光によって+Y方向で露光され、次いでC3がスキャン露光によって−Y方向で露光される。C2は、加熱装置500,600から熱を受け取っているので露光されず、したがっていくらかの局所的な歪曲を含み得る。次に、C5がスキャン露光によって+Y方向で露光され、その後C7がスキャン露光によって−Y方向で露光される。C4及びC6は、加熱装置500,600から熱を受け取っているので露光されず、いくらかの局所的な歪曲を含み得る。
[000259] いったん図22の矢印を含むターゲット部分のすべてが露光されると、他のターゲット部分が露光され得る。このアプローチは、加熱装置500,600によってターゲット部分に送出された熱がそれらのターゲット部分がリソグラフィ装置を用いて露光される前に散逸する時間を与えるので、有利である。
[000260] 加熱されるエリア506,508,606,608のX方向の範囲は、露光エリアEのX方向の範囲よりも小さくてもよい。これは、所与の加熱要素が複数のターゲット部分を同時に加熱することを回避するので、有利である。図22を参照すると、もしも加熱されるエリア506,508,606,608が露光エリアのX方向の範囲よりも大きく広がっていると、例えば、ターゲット部分C3がC1の露光の際に加熱されるであろうことがわかる。この加熱は、ターゲット部分C3の露光の際に存在し得るターゲット部分C3の望ましくない歪曲を引き起こすであろう。
[000261] 加熱される各エリア506,508,606,608のX方向の範囲は、露光エリアEのX方向の範囲の半分よりも小さくてもよい。
[000262] 加熱装置500,600は、上記で説明した冷却装置40と組み合わせて用いられてもよい。冷却装置40と加熱装置500,600との併用は、冷却装置の効果が加熱装置の効果を相殺するであろうから、正味の利益をもたらさないものと予期されるかもしれない。しかし、そうではない。冷却装置40及び加熱装置500,600は、異なる有益な効果を得るために、露光エリアEに対して異なる位置に設けられ得る。したがって、例えば、加熱装置500の加熱要素502,504は、露光エリアの縁部で生じる歪曲を低減させるために、露光エリアEのX方向の両縁部に設けられ得る。縁部効果とも称され得るこの歪曲は、露光エリアEのY方向の縁部では重要な問題ではない。なぜなら、露光エリアEに対する基板Wのスキャン移動がY方向で基板Wに送出される放射を平均するので、縁部効果が生じないからである。よって、露光エリアEのY方向の縁部に冷却装置40を設けると、Y方向の縁部で縁部効果を引き起こすことなく、上記で説明した有利な効果がもたらされるであろう。したがって、加熱装置500は露光エリアEのX方向の両縁部に設けられてもよく、冷却装置40は露光エリアのY方向の少なくとも一方の縁部に設けられてもよい。加熱装置500及び冷却装置40は連結されて単一のユニットを形成してもよい。
[000263] 本文書において基板の表面を参照することは、基板上に提供されたレジストの表面を参照することと解釈されてもよい。
[000264] 上述したように、基板テーブルWTのバールの表面上で基板Wがスリップすることは、投影されるパターンが先に投影済みのパターンと整列される(一般にオーバーレイと称される)精度を低減させ得る。上記で説明した実施形態を用いると、バールの上で基板Wがスリップすることが減少又は防止され得る。追加的又は代替的には、バール上での基板Wのスリップは、その基板Wが設置される基板テーブルWTの温度を上回る温度まで基板を加熱することによって減少又は防止され得る。例えば、基板Wは、温度調整ユニットAU(図1を参照)によって、基板テーブルWTの温度よりも約100mK高い温度まで加熱されてもよい。温度調整ユニットAUは、所望の温度に保持された板を備えていてもよい。基板Wは、板の上に設置されると、板の温度まで加熱される。加熱された基板Wは次に基板テーブルWT上に設置され、基板テーブルの一部を形成するクランプ(例えば静電クランプ)を用いて基板テーブルに圧着される。その後、基板は基板テーブルの温度まで冷え、それによって基板に応力が導入される。基板に導入される応力は、基板の外縁部を基板の中心に向かって内側に引き寄せる傾向がある。基板が放射ビームBを用いてパターニングされるとき、この放射ビームは、基板を加熱するとともに、基板の外縁部を基板の中心から外側に遠ざかるように押す傾向がある応力を導入する。既に基板の冷却の際に導入された応力は、基板の加熱によって引き起こされる応力を少なくとも部分的に打ち消し、それによって基板が経験する累積応力が低減される。基板の外縁部の付近においては特にそうなる。累積応力の低減は、特に基板の外縁部の付近において、基板テーブルWTのバール上での基板Wのスリップを低減させ又は防止する。スリップは基板の外縁部の付近で最も起こりやすい(クランプは基板の外縁部では他の箇所におけるよりも少ない力を印加し得る)ので、これは有利である。
[000265] 上記の例においては温度調整ユニットAUは基板を100mK加熱しているが、温度調整ユニットは基板を他の温度分加熱してもよい。例えば、温度調整ユニットは基板を最大で約0.5K加熱してもよい。
[000266] 本発明の実施形態の概略図においては、露光エリアEは長方形として図示されている。これは説明を容易にするためであり、露光エリアEは何らかの他の形状を有していてもよいことがわかるであろう。露光エリアEは、例えばX方向に沿って何らかの曲面を含んでいてもよい(例えば概ねバナナに似た形状を有していてもよい)。
[000267] 一実施形態においては、本発明はマスク検査装置の一部を形成してもよい。マスク検査装置は、EUV放射を用いてマスクを照明してもよく、撮像センサを用いてマスクから反射された放射を監視してもよい。撮像センサによって受信された画像は、マスクに欠陥が存在するか否かを判定するために用いられる。マスク検査装置は、EUV放射源からEUV放射を受けてそれをマスクに向けられる放射ビームにするように構成された光学部品(例えばミラー)を含んでいてもよい。マスク検査装置はさらに、マスクから反射されたEUV放射を収集して撮像センサにおいてマスクの画像を形成するように構成された光学部品(例えばミラー)を含んでいてもよい。マスク検査装置は、撮像センサにおけるマスクの画像を分析するように、及びその分析からマスク上に何らかの欠陥が存在するかどうかを判定するように構成されたプロセッサを含んでいてもよい。プロセッサはさらに、検出されたマスク欠陥が、そのマスクがリソグラフィ装置によって用いられるときに基板上に投射された画像に許容できない欠陥を引き起こすかどうかを判定するように構成されていてもよい。
[000268] 一実施形態においては、本発明はメトロロジ(計測)装置の一部を形成してもよい。メトロロジ装置は、基板上に既に存在するパターンに対する基板上のレジストに形成された投影されたパターンのアライメントを測定するために用いられてもよい。この相対的アライメントの測定は、オーバーレイと称され得る。メトロロジ装置は、例えばリソグラフィ装置にすぐ隣接して位置していてもよく、基板(及びレジスト)が処理される前にオーバーレイを測定するために用いられてもよい。
[000269] 本文中では、リソグラフィ装置の文脈における本発明の実施形態を特に参照しているかもしれないが、本発明の実施形態は他の装置において用いられてもよい。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、あるいはウェーハ(若しくは他の基板)若しくはマスク(若しくは他のパターニングデバイス)を測定又は処理する任意の装置の一部を形成してもよい。これらの装置は概してリソグラフィツールと称され得る。そのようなリソグラフィツールは、真空状態又は大気(非真空)状態を利用し得る。
[000270] 「EUV放射」という用語は、4乃至20nmの範囲内、例えば13乃至14nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含するものと考えられてもよい。EUV放射は、10nm未満、例えば、6.7nm又は6.8nmなど4乃至10nmの範囲内の波長を有していてもよい。
[000271] 図1及び2は放射源SOをレーザ生成プラズマLPP源として図示しているが、EUV放射を発生させるためには任意の適当な放射源が使用され得る。例えば、EUV放出プラズマは、放電を利用して燃料(例えばスズ)をプラズマ状態に変換することによって生成されてもよい。この種の放射源は、放電生成プラズマ(DPP)源と称され得る。放電は電源によって発生されてもよく、この電源は、放射源の一部を形成してもよいし、又は電気的接続を介して放射源SOに接続された別個のエンティティであってもよい。
[000272] 本文中ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用を特に参照しているかもしれないが、本明細書に記載のリソグラフィ装置は他の用途も有し得ることが理解されるべきである。考えられる他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネル表示器、液晶表示器(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造を含む。
[000273] 本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はこれらの任意の組み合わせにおいて実現され得る。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサによって読出し及び実行され得る、機械可読媒体に記憶された命令としても実現され得る。機械可読媒体は、機械(例えば演算装置)によって読出し可能な形で情報を記憶又は伝送する任意の機構を含んでいてもよい。例えば、機械可読媒体は、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気的、光学的、音響、又は他の形式の伝搬信号(例えば搬送波、赤外信号、デジタル信号など)、及び他のものを含み得る。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は本明細書においては一定の動作を実行するものとして記載され得る。しかしながら、そのような記載は便宜上に過ぎず、そのような動作は実際には演算装置、プロセッサ、コントローラ、又はファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令等を実行する他のデバイスから生じることが察知されるべきである。
[000274] 上記では本発明の具体的な実施形態を記載したが、本発明は記載されたものとは異なって実施され得ることがわかるであろう。上記の説明は例示的なものであり、限定するものではない。したがって、当業者には、記載された本発明の変更が、下記の特許請求の範囲及び条項を逸脱することなく行われ得ることがわかるであろう。
1.パターニングされた放射ビームを投影して基板テーブル上に保持された基板に露光エリアを形成するように構成された投影システムを備えるリソグラフィ装置であって、さらに前記基板を冷却する冷却装置を備えており、
前記冷却装置は、前記基板テーブルの上方に前記露光エリアに隣接して配置された冷却要素を備え、
前記冷却要素は、前記基板テーブル上に保持された基板から熱を除去するように構成されている、リソグラフィ装置。
2.前記冷却要素は、前記露光エリアを二等分する線から3cm以内にあるエリアを冷却するように構成されている、条項1のリソグラフィ装置。
3.前記冷却要素は、前記露光エリアの縁部から2cm以内にあるエリアを冷却するように構成されている、条項1又は2のリソグラフィ装置。
4.前記冷却要素は、前記リソグラフィ装置のスキャン方向と略一致する方向で前記露光エリアから離れている、条項1乃至3のいずれか一項のリソグラフィ装置。
5.前記冷却要素は、前記露光エリアの両側に設けられた一対の冷却要素の一方である、条項4のリソグラフィ装置。
6.前記冷却要素は、本体と、前記本体の最下面に設けられた開放空洞と、を備え、前記空洞にガスを送出するように構成されたガス送出導管をさらに備える、条項1乃至5のいずれか一項のリソグラフィ装置。
7.前記空洞は、前記基板の上面と併せて、前記ガス送出導管によって送出されたガスを受容する容積を形成するように構成されている、条項6のリソグラフィ装置。
8.前記リソグラフィ装置の非スキャン方向における前記冷却要素の空洞の前記範囲は、前記リソグラフィ装置の前記非スキャン方向における前記露光エリアの最大長以上である、条項6又は7のリソグラフィ装置。
9.前記空洞は、使用中の前記基板の前記上面から1mm未満の蓋部を有する、条項6乃至8のいずれか一項のリソグラフィ装置。
10.前記空洞の前記蓋部は、前記基板テーブルの平面と略平行である、条項6乃至9のいずれか一項のリソグラフィ装置。
11.前記空洞に送出される前記ガスの圧力と、前記空洞蓋部と前記基板表面との前記間隔と、の前記組み合わせは、前記基板の前記適応係数が前記基板から前記冷却要素本体への熱の伝達に有意な影響を有さないようなものである、条項9又は10のリソグラフィ装置。
12.前記空洞の前記蓋部は、傾いており、前記蓋部は、前記リソグラフィ装置のスキャン方向を横切って延びる軸を中心として傾斜している、条項6乃至9のいずれか一項のリソグラフィ装置。
13.前記冷却要素は、ガス送出導管に接続されたチャンバを含む本体を備え、前記チャンバの床には、開口が設けられている、条項1乃至5のいずれか一項のリソグラフィ装置。
14.前記チャンバの前記床の前記開口は、穴のアレイを備える、条項13のリソグラフィ装置。
15.前記チャンバの前記床は、多孔質材料から形成されており、前記開口は、前記多孔質材料の気孔である、条項13のリソグラフィ装置。
16.前記冷却要素は、引込位置から展開位置へと移動可能な少なくとも1つのシャッタをさらに備え、前記シャッタを前記引込位置から前記展開位置へと移動させると前記冷却要素の前記床のいくつかの開口が閉鎖される、条項13乃至15のいずれか一項のリソグラフィ装置。
17.前記少なくとも1つのシャッタは、前記シャッタが前記引込位置にあるときにはいずれの開口も前記シャッタによって閉鎖されないように構成されている、条項16のリソグラフィ装置。
18.前記少なくとも1つのシャッタは、前記引込位置と前記展開位置との間の中間位置へと移動可能である、条項16又は17のリソグラフィ装置。
19.前記冷却要素は、前記チャンバの両側に設けられた追加的なチャンバを備え、
前記追加的なチャンバは、異なる1つ又は複数のガス送出導管に接続されている、条項13乃至15のいずれか一項のリソグラフィ装置。
20.前記チャンバへのガスの送出を制御するように構成された1つのバルブと、前記追加的なチャンバへのガスの送出を別個に制御するように構成された1つ以上のバルブと、をさらに備える、条項19のリソグラフィ装置。
21.前記冷却要素の前記本体は、3mm以下の厚さを有する、条項13乃至20のいずれか一項のリソグラフィ装置。
22.前記冷却要素の前記本体は、前記露光エリアの縁部から3mm以下のところに配置されている、条項13乃至21のいずれか一項のリソグラフィ装置。
23.前記冷却要素の前記本体は、前記リソグラフィ装置のスキャン方向で5mm未満の寸法をとる最下面を有する、条項13乃至21のいずれか一項のリソグラフィ装置。
24.前記冷却要素の前記本体は、前記放射ビームの方に向いた傾斜内面を有する、条項13乃至23のいずれか一項のリソグラフィ装置。
25.前記冷却要素は、前記冷却要素から熱を除去するように構成された除熱システムを含む、条項1乃至24のいずれか一項のリソグラフィ装置。
26.前記除熱システムは、流体冷却システムである、条項25のリソグラフィ装置。
27.前記除熱システムは、ペルチェ式クーラを含む、条項25又は26のリソグラフィ装置。
28.前記流体冷却システムは、ガスを冷却するように構成され前記冷却要素から遠隔に配置されているクーラと、前記冷却要素を冷却するために前記冷却されたガスを前記冷却要素に送出するように構成された入口導管と、前記冷却要素から前記ガスを除去するように構成された出口導管と、を備える、条項26のリソグラフィ装置。
29.前記入口導管及び前記出口は、いずれも前記冷却要素の移動に適応する可撓部を含む、条項28のリソグラフィ装置。
30.前記入口導管に温度センサが設けられており、前記出口導管に温度センサが設けられている、条項28又は29のリソグラフィ装置。
31.10リットル/分を上回る流量で前記ガスを提供するように構成されたガス源をさらに備える、条項28乃至30のいずれか一項のリソグラフィ装置。
32.2リットル/分未満の流量で前記ガスを提供するように構成されたガス源をさらに備える、条項28乃至30のいずれか一項のリソグラフィ装置。
33.前記除熱システムは、クーラに接続されたヒートパイプを備える、条項25のリソグラフィ装置。
34.前記ヒートパイプは、前記垂直方向よりも水平方向に大きい断面形状を有する、条項33のリソグラフィ装置。
35.前記ヒートパイプは、前記冷却要素の移動に適応する可撓部を含む、条項33又は34のリソグラフィ装置。
36.前記ヒートパイプは、マイクロヒートパイプである、条項33乃至35のいずれか一項のリソグラフィ装置。
37.前記流体冷却システムは、ポンプと、コンデンサと、アキュムレータと、を備える2相冷却システムである、条項26のリソグラフィ装置。
38.前記2相冷却システムは、前記冷却要素に設けられた温度センサをさらに備える、条項37のリソグラフィ装置。
39.前記流体冷却システムは、熱交換器に設けられた狭窄部を含み、前記狭窄部は、前記冷却要素を冷却するために用いられるガスを冷却するように構成されている、条項26のリソグラフィ装置。
40.前記冷却要素には、ヒータが設けられている、条項1乃至39のいずれか一項のリソグラフィ装置。
41.前記リソグラフィ装置は、200パスカル以上の圧力でガスを前記冷却要素に送出するように構成されたガス供給をさらに備える、条項6乃至40のいずれか一項のリソグラフィ装置。
42.前記冷却要素は、使用中の前記基板から20ミクロン以上の間隔を有するように構成されている、条項6乃至41のいずれか一項のリソグラフィ装置。
43.前記冷却要素は、使用中の前記基板から200ミクロン以下の間隔を有するように構成されている、条項6乃至42のいずれか一項のリソグラフィ装置。
44.前記冷却要素は、前記冷却要素の下から、前記冷却要素と前記基板との接触が発生するのを防止又は阻止するクッションとして作用する外向きのガス流を提供するように構成されている、条項6乃至43のいずれか一項のリソグラフィ装置。
45.前記冷却要素は、予期せぬ動きが検出された場合に前記冷却要素を前記基板から遠ざけるべく引っ張るように構成された引込機構を含むサポートに設けられている、条項6乃至44のいずれか一項のリソグラフィ装置。
46.前記冷却要素は、液体の液滴を前記基板上に導くように配置されたノズルのアレイを備えている、条項1乃至5のいずれか一項のリソグラフィ装置。
47.前記冷却要素は、使用中の前記基板から50ミクロン以上の間隔を有するように構成されている、条項46のリソグラフィ装置。
48.前記冷却要素は、使用中の前記基板から1ミリメータ以上の間隔を有するように構成されている、条項46又は47のリソグラフィ装置。
49.前記リソグラフィ装置の非スキャン方向における前記冷却要素の前記ノズルのアレイの前記範囲は、前記リソグラフィ装置の前記非スキャン方向における前記露光エリアの最大長と等しいか又はそれより大きい、条項46乃至48のいずれか一項のリソグラフィ装置。
50.前記ノズルのアレイは、前記冷却要素の底面全体に前記ノズルが一様に分配されている二次元アレイである、条項46乃至49のいずれか一項のリソグラフィ装置。
51.前記ノズルは、液体液滴におよそ数十ミクロン又はそれよりも小さい直径を与えるように構成されている、条項46乃至50のいずれか一項のリソグラフィ装置。
52.パターニングされた放射ビームを投影して基板テーブル上に保持された基板に露光エリアを形成することと、冷却装置を用いて前記基板を冷却することと、を備えるリソグラフィ方法であって、
前記冷却装置は、前記基板テーブルの上方に前記露光エリアに隣接して配置された冷却要素を備え、
前記冷却要素は、前記基板から熱を除去するように作用する、リソグラフィ方法。
53.前記冷却要素は、前記露光エリアを二等分する線から3cm以内にあるエリアを冷却するように構成されている、条項52のリソグラフィ方法。
54.前記冷却要素は、前記露光エリアの縁部から2cm以内にあるエリアを冷却するように構成されている、条項52又は53のリソグラフィ方法。
55.前記冷却要素は、本体と、前記本体の最下面に設けられた開放空洞であって前記基板の前記上面と併せて容積を形成する開放空洞と、前記容積にガスを送出するように構成されたガス送出導管と、を備える、条項52乃至54のいずれか一項のリソグラフィ方法。
56.前記空洞は、前記基板の前記上面から1mm未満の蓋部を有する、条項55のリソグラフィ方法。
57.前記冷却要素は、ガス送出導管に接続されたチャンバを含む本体を備え、前記チャンバの床には、開口が設けられている、条項52乃至54のいずれか一項のリソグラフィ方法。
58.前記ガスは、200パスカル以上の圧力で前記容積へと送出される、条項55乃至57のいずれか一項のリソグラフィ方法。
59.前記冷却要素は、前記基板から20ミクロン以上離れている、条項55乃至58のいずれか一項のリソグラフィ方法。
60.前記冷却要素は、前記基板から200ミクロン以下離れている、条項55乃至59のいずれか一項のリソグラフィ方法。
61.前記冷却要素は、液体の液滴を前記基板上に導くノズルのアレイを備えている、条項52乃至54のいずれか一項のリソグラフィ方法。
62.前記冷却要素は、前記基板から50ミクロン以上離れている、条項60のリソグラフィ方法。
63.前記冷却要素は、前記基板から1mm以上離れている、条項60又は61のリソグラフィ方法。
64.前記リソグラフィ装置の非スキャン方向における前記冷却要素の前記ノズルのアレイの前記範囲は、前記リソグラフィ装置の前記非スキャン方向における前記露光エリアの最大長と等しいか又はそれより大きい、条項61乃至63のいずれか一項のリソグラフィ方法。
65.前記ノズルのアレイは、前記基板上に液体液滴の一様な分配をもたらすように配置されている、条項61乃至64のいずれか一項のリソグラフィ方法。
66.前記液体は、水である、条項61乃至65のいずれか一項のリソグラフィ方法。
67.基板テーブル上に保持された基板上にパターニングされた放射ビームを投影するように構成された投影システムを備えるリソグラフィ装置であって、
前記基板が前記基板テーブル上に設置される前に前記基板の前記温度を前記基板テーブルの前記温度を上回る温度に調整するように構成された基板温度調整ユニットをさらに備える、リソグラフィ装置。
68.前記基板温度調整ユニットは、前記基板の前記温度を、前記基板テーブルの前記温度を最大で約0.5℃上回る温度に調整するように構成されている、条項67のリソグラフィ装置。
69.リソグラフィ装置における基板の露光に先立って前記基板を調節する方法であって、
温度調整ユニットを用いて前記基板の前記温度を前記リソグラフィ装置の基板テーブルの前記温度を上回る温度に調整することと、
前記基板を前記基板テーブルに移載することと、
前記基板を前記基板テーブルに圧着するクランプを作動させることと、
前記基板を前記基板テーブルの前記温度まで冷却し、それによって前記基板への応力を誘発することと、
を備える、方法。
70.パターニングされた放射ビームを投影して基板テーブル上に保持された基板に露光エリアを形成するように構成された投影システムを備えるスキャン型リソグラフィ装置であって、さらに前記基板を加熱する加熱装置を備えており、
前記加熱装置は、前記リソグラフィ装置の非スキャン方向における前記露光エリアの両端部に配置された基板エリアを加熱するように構成された第1及び第2の加熱要素を備えている、リソグラフィ装置。
71.前記第1及び第2の加熱要素は、前記基板テーブルの上方に配置され、且つ、前記リソグラフィ装置の非スキャン方向における前記露光エリアの両端部に配置される、条項70のスキャン型リソグラフィ装置。
72.前記第1及び第2の加熱要素は、前記非スキャン方向で前記露光エリアに隣接している、条項71のスキャン型リソグラフィ装置。
73.前記第1及び第2の加熱要素は、熱を受けるエリアが前記加熱要素の前記設置面積を超えて広がるように、いくらかの外向きのダイバージェンスを有する熱を放出するように構成されている、条項70乃至72のいずれか一項のスキャン型リソグラフィ装置。
74.前記加熱要素は、LEDのアレイを備える、条項70乃至73のいずれか一項のスキャン型リソグラフィ装置。
75.前記LEDは、赤外放射を放出するように構成されている、条項74のスキャン型リソグラフィ装置。
76.前記LEDのうち少なくともいくつかは、前記基板に入射する前に前記パターニングされた放射ビームと重なるように発散する放射ビームを放出するように構成されている、条項74又は75のスキャン型リソグラフィ装置。
77.前記第1及び第2の加熱要素は、前記リソグラフィ装置の前記非スキャン方向における前記露光エリアの両端部に配置された前記基板エリアを加熱するレーザビームを提供するように構成された1つ以上のレーザを備える、条項70のスキャン型リソグラフィ装置。
78.前記1つ以上のレーザ及び関連する光学部品は、前記レーザビームが、前記基板に入射する前に、前記リソグラフィ装置の投影システムのハウジングの床に配置された開口を通出するように構成されている、条項77のスキャン型リソグラフィ装置。
79.前記1つ以上のレーザは、前記リソグラフィ装置の投影システムのハウジングの外部に配置されている、条項77又は78のスキャン型リソグラフィ装置。
80.投影システムのハウジングには、前記レーザビームが前記投影システムのハウジング内に通入することを可能にする窓が設けられている、条項79のスキャン型リソグラフィ装置。
81.前記投影システムのハウジング内のアクチュエータに取り付けられたミラーをさらに備え、前記ミラーは、前記レーザビームの方向を変更し、それによって、前記レーザビームによって加熱される前記基板エリアを異なる位置に移動するように動作可能である、条項77乃至80のいずれか一項のスキャン型リソグラフィ装置。
82.前記第1及び第2の加熱要素は、前記非スキャン方向で前記露光エリアに重なり合うエリアを加熱するように構成されている、条項70乃至81のいずれか一項のスキャン型リソグラフィ装置。
83.前記第1及び第2の加熱要素は、前記露光エリアの前記スキャン方向の寸法に概ね一致する前記スキャン方向の寸法を有するエリアを加熱するように構成されている、条項70乃至82のいずれか一項のスキャン型リソグラフィ装置。
84.第1及び第2の加熱要素は、各々が、前記露光エリアの非スキャン方向の前記寸法よりも小さい前記非スキャン方向の寸法を有するエリアを加熱するように構成されている、条項70乃至83のいずれか一項のスキャン型リソグラフィ装置。
85.前記第1及び第2の加熱要素は、前記露光エリアの非スキャン方向の前記寸法の半分よりも小さい前記非スキャン方向の寸法を有するエリアを加熱するように構成されている、条項84のスキャン型リソグラフィ装置。
86.前記スキャン型リソグラフィ装置は、前記基板テーブルの上方に配置され、且つ、前記リソグラフィ装置のスキャン方向において前記露光エリアの一方側に配置された冷却要素をさらに備える、条項70乃至85のいずれか一項のスキャン型リソグラフィ装置。
87.前記スキャン型リソグラフィ装置は、前記基板テーブルの上方に配置され、且つ、前記リソグラフィ装置のスキャン方向において前記露光エリアの反対側に配置された追加的な冷却要素をさらに備える、条項86のスキャン型リソグラフィ装置。
88.スキャン型リソグラフィ装置を用いて基板を露光する方法であって、
パターニングされた放射ビームを投影して基板テーブル上に保持された基板に露光エリアを形成することと、
前記リソグラフィ装置の非スキャン方向において前記露光エリアの両端部に位置する前記基板上のエリアを、加熱装置を用いて加熱することと、
前記パターニングされた放射ビームを用いて前記基板のターゲット部分を露光させるべく、前記基板を前記露光エリア及び加熱されるエリアに対してスキャン移動で移動させることと、
を備える、方法。
89.前記次に露光されるターゲット部分は、前記露光されたターゲット部分に前記非スキャン方向で隣接しておらず、少なくとも1つの介在するターゲット部分によって、前記露光されたターゲット部分から前記非スキャン方向で離れている、条項88の方法。
90.前記リソグラフィ装置のスキャン方向において前記露光エリアの少なくとも一方側に隣接して配置された前記基板上のエリアを、冷却装置を用いて冷却することをさらに備える、条項88又は89の方法。