図1は、本発明の一実施例としての駆動装置を搭載する電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、モータ32と、インバータ34と、蓄電装置としてのバッテリ36と、電子制御ユニット50と、を備える。実施例の「駆動装置」としては、モータ32とインバータ34と電子制御ユニット50とが相当する。
モータ32は、同期発電電動機として構成されており、永久磁石が埋め込まれた回転子と、三相コイルが巻回された固定子と、を備える。このモータ32は、回転子が駆動輪22a,22bにデファレンシャルギヤ24を介して連結された駆動軸26に接続されている。
インバータ34は、モータ32の駆動に用いられ、電力ライン38を介してバッテリ36に接続されている。このインバータ34は、6つのスイッチング素子としてのトランジスタT11〜T16と、6つのトランジスタT11〜T16のそれぞれに並列に接続された6つのダイオードD11〜D16と、を有する。トランジスタT11〜T16は、それぞれ、電力ライン38の正極側ラインと負極側ラインとに対してソース側とシンク側になるように2個ずつペアで配置されている。また、トランジスタT11〜T16の対となるトランジスタ同士の接続点の各々には、モータ32の三相コイル(U相,V相,W相のコイル)の各々が接続されている。したがって、インバータ34に電圧が作用しているときに、電子制御ユニット50によって、対となるトランジスタT11〜T16のオン時間の割合が調節されることにより、三相コイルに回転磁界が形成され、モータ32が回転駆動される。
バッテリ36は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、上述したように、電力ライン38を介してインバータ34に接続されている。電力ライン38の正極側ラインと負極側ラインとには、コンデンサ39が取り付けられている。
電子制御ユニット50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52の他に、処理プログラムを記憶するROM54や、データを一時的に記憶するRAM56、入出力ポートを備える。電子制御ユニット50には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット50に入力される信号としては、例えば、モータ32の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ(例えばレゾルバ)32aからの回転位置θmや、モータ32の各相の相電流を検出する電流センサ32u,32vからの相電流Iu,Ivを挙げることができる。また、バッテリ36の端子間に取り付けられた図示しない電圧センサからのバッテリ36の電圧Vbや、バッテリ36の出力端子に取り付けられた図示しない電流センサからのバッテリ36の電流Ib、コンデンサ39の端子間に取り付けられた電圧センサ39aからのコンデンサ39(電力ライン38)の電圧VHも挙げることができる。さらに、イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号や、シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSPも挙げることができる。加えて、アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ68からの車速Vも挙げることができる。電子制御ユニット50からは、インバータ34のトランジスタT11〜T16へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。電子制御ユニット50は、回転位置検出センサ32aからのモータ32の回転子の回転位置θmに基づいてモータ32の電気角θeや回転数Nmを演算している。
こうして構成された実施例の電気自動車20では、電子制御ユニット50は、図示しない制御ルーチンにより、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸26の要求トルクTd*を設定し、設定した要求トルクTd*をモータ32のトルク指令Tm*に設定する。そして、モータ32がトルク指令Tm*で駆動されるようにインバータ34のトランジスタT11〜T16のスイッチング制御を行なう。
ここで、インバータ34の制御について説明する。電子制御ユニット50は、電圧の変調率Rmおよび電圧位相θpと単位周期(実施例では、モータ32の電気角θeの1周期)当たりのパルス数Npとに基づいてトランジスタT11〜T16のPWM信号を生成してトランジスタT11〜T16のスイッチングを行なう。
具体的には、以下の通りである。電子制御ユニット50は、まず、モータ32の各相(U相,V相,W相)の相電流Iu,Iv,Iwの総和が値0であるとして、モータ32の電気角θeを用いてU相,V相の相電流Iu,Ivをd軸,q軸の電流Id,Iqに座標変換(3相−2相変換)する。続いて、モータ32のトルク指令Tm*に基づいてd軸,q軸の電流指令Id*,Iq*を設定し、d軸,q軸の電流指令Id*,Iq*および電流Id,Iqを用いてd軸,q軸の電圧指令Vd*,Vq*を設定する。そして、設定したd軸,q軸の電圧指令Vd*,Vq*を用いて電圧の変調率Rmおよび電圧位相θpを設定する。ここで、変調率Rmは、d軸の電圧指令Vd*の二乗とq軸の電圧指令Vq*の二乗との和の平方根として計算される電圧指令絶対値Vdqをコンデンサの39(電力ライン38)の電圧VHで除して得ることができる。電圧位相θpは、d軸,q軸の電圧指令Vd*,Vq*を成分とするベクトルのq軸に対する角度として得ることができる。次に、後述のパルス数設定ルーチンによりパルス数Npを設定し、電圧の変調率Rmおよび電圧位相θpとパルス数Npとに基づいてトランジスタT11〜T16のPWM信号を生成し、このトランジスタT11〜T16のPWM信号を用いてトランジスタT11〜T16のスイッチングを行なう。
実施例では、トランジスタT11〜T16のPWM信号は、所望の次数の高調波成分が低減されてモータ32の損失およびインバータ34の損失の合計損失Lsumが低減されるように生成するものとした。以下、トランジスタT11〜T16のPWM信号の生成方法について説明する。この生成方法の説明では、モータ32やインバータ34、トランジスタT11〜T16についての各符号を省略する。
モータの回転子の角速度を「ω」、時間を「t」としたときに「f(ωt)=−f(ωt+π)」で表される半波対称性を有するようにPWM信号を生成するという制約条件を用いたときにおいて、モータの電気角を「θe」としたときのPWM信号f(θe)は、フーリエ級数展開を用いると、式(1)により表わすことができる。この制約条件を用いることにより、偶数次数の高調波成分の消去や制御の簡素化を図ることができる。式(1)中、「n」は高調波成分の次数で1,3,5,7,・・・(奇数の整数)であり、「M」はモータの電気角θeの半周期当たりのトランジスタのスイッチング回数(基準電気角(例えば、0°や180°など)でのスイッチングを除く)である。このスイッチング回数Mは、モータの電気角θeの1周期当たりのパルス数を「Np」としたときに、「M=Np−1」となる。また、式(1)中、「θe,m」はトランジスタのm回目のスイッチング電気角であり、「an」はフーリエ余弦係数であり、「bn」はフーリエ正弦係数であり、「a0」は直流成分である。この式(1)のフーリエ余弦係数anおよびフーリエ正弦係数bnから、各次数の高調波成分の振幅Cnと各次数の高調波成分の位相αnは、式(2)により表すことができる。
なお、半波対称性だけでなく「f(ωt)=f(π−ωt)」で表される奇対称性も有するようにPWM信号を生成するという制約条件を用いるものとしてもよい。この制約条件を用いることにより、高調波の余弦波成分を消去することができる。この場合、「n」は1,5,7,11,・・・(3の倍数を除いた奇数の整数)となり、「M」は、モータの電気角θeの1/4周期当たりのトランジスタのスイッチング回数(基準電気角でのスイッチングを除く)となり、「M=(Np−1)/2」となる。
実施例では、PWM信号の生成方法として、各次数の高調波成分の総和を低減する方法を考えるものとした。モータの損失のうち、鉄損Wiは、スタインメッツの実験式より、式(3)により表わすことができる。ここで、式(3)中、「Wh」はヒステリシス損であり、「We」は渦電流損であり、「Kh」はヒステリシス損失係数であり、「Bm」は磁束密度であり、「fm」はモータの回転磁束周波数であり、「Ke」は渦電流損失係数である。
モータの全鉄損において割合の大きい渦電流損Weに着目し、モータの相電位を「Vm」とすると、一般に、磁束密度Bmとモータの相電位Vmを回転磁束周波数fmで除した値(Vm/fm)とが比例関係を有することから、式(4)を導出することができる。そして、式(4)において、ヒステリシス損失係数Ke(定数)を無視し、次数nの回転磁束周波数fmを次数nに置き換え、次数nのモータの相電位を「Vmn」とし、損失を低減するために考慮する最大次数を「N」(例えば107次)とすると、各次数の高調波成分の総和は、式(5)により表わすことができる。モータの損失を低減するには、この式(5)の値を低減すればよい。そして、次数nのモータ相電位Vmnは、次数nの高調波成分の振幅Cnを意味するから、式(6)の値を低減すればよい。
式(6)の値が低減されるように、式(1)のPWM信号f(θe)を設定すれば、各次数の高調波成分の総和が低減され、モータの損失が低減される。好適には、式(6)の値が最小となるように、式(1)のPWM信号f(θe)を設定する。なお、実施例では、式(1)において、1次元の基本波位相を0°とするために、「a1」には値0を設定するものとした。このようにして、インバータの各トランジスタのPWM信号を生成することができる。
次に、こうして構成された実施例の電気自動車20の動作、特に、パルス数Npを設定する際の動作について説明する。図2は、電子制御ユニット50により実行されるパルス数設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、繰り返し実行される。
図2のパルス数設定ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50のCPU52は、まず、モータ32の回転数Nmおよびトルク指令Tm*を入力する(ステップS100)。ここで、モータ32の回転数Nmは、回転位置検出センサ32aからのモータ32の回転子の回転位置θmに基づいて演算されたものを入力するものとした。モータ32のトルク指令Tm*は、上述の制御ルーチンにより設定された値を入力するものとした。
続いて、入力したモータ32の回転数Nmおよびトルク指令Tm*に基づいて、駆動装置の効率が良好となる(好ましくは最適となる)効率パルス数Npefを設定する(ステップS110)。ここで、効率パルス数Npefは、実施例では、モータ32の回転数Nmおよびトルク指令Tm*と効率パルス数Npefとの関係を予め定めて効率パルス数設定用マップとしてROM54に記憶しておき、モータ32の回転数Nmおよびトルク指令Tm*が与えられると、このマップから対応する効率パルス数Npefを導出して設定するものとした。
こうして効率パルス数Npefを設定すると、設定した効率パルス数Npefとモータ32の回転数Nmとに基づいて、効率パルス数Npefをパルス数Npに設定する場合(このパルス数Npを用いてインバータ34のトランジスタT11〜T16のPWM信号を生成してトランジスタT11〜T16のスイッチングを行なう場合)のインバータ34のトランジスタT11〜T16のスイッチングに伴って生じるモータ32のトルクリプルの主成分の次数の周波数を推定する(ステップS120)。インバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチングすると、そのスイッチングに伴ってモータ32に供給される電流のリプルが生じ、モータ32のトルクリプルが生じる。そして、このトルクリプルの主成分の次数(以下、「リプル次数」という)は、パルス数Npに依存し、リプル次数の周波数(以下、「リプル周波数」という)は、モータ32の回転数Nmに依存する。以下、効率パルス数Npefをパルス数Npに設定する場合のリプル周波数を「効率リプル周波数fefri」という。
効率リプル周波数fefriは、実施例では、効率パルス数Npefおよびモータ32の回転数Nmと効率リプル周波数fefriとの関係を予め定めて効率リプル周波数推定用マップとしてROM54に記憶しておき、効率パルス数Npefおよびモータ32の回転数Nmが与えられると、このマップから対応する効率リプル周波数fefriを導出して推定するものとした。
図3は、モータ32の回転数Nmと効率リプル周波数fefriとの関係の一例を示す説明図である。図中、太実線でこの関係を示した。また、図3には、参考のために、細実線で、モータ32の回転数Nmと、インバータ34のトランジスタT11〜T16のスイッチングに伴って生じるモータ32のトルクリプルの各次数の周波数と、の関係についても示した。図中、「6次(Np1)」〜「54次(Np9)」は、それぞれ、パルス数Npとリプル次数(トルクリプルの主成分の次数)との関係を示したものであり、具体的には、値Np1〜値Np9をパルス数Npに設定する場合のリプル次数が電気6次〜電気54次となることを示したものである。図3では、効率パルス数Npefが、モータ32の回転数Nmが閾値Nm1以下の領域では値Np8であり、モータ32の回転数Nmが閾値Nm1よりも大きく閾値Nm2以下の領域では値Np6であり、モータ32の回転数Nmが閾値Nm2よりも大きい領域では値Np3である場合のモータ32の回転数Nmと効率リプル周波数fefriとの関係について示した。
こうして効率リプル周波数fefriを推定すると、推定した効率リプル周波数fefriが捩れ共振領域外かつ円環0次共振領域外となるか否かを判定する(ステップS130)。ここで、「捩れ共振領域」は、モータ32の固定子の捩れ共振が生じる領域(例えば、900〜1100Hz程度)であり、「円環0次共振領域」は、モータ32の固定子の径方向の伸縮の共振であるいわゆる円環0次共振が生じる領域(例えば、4000〜6000Hz程度)である。
ステップS130で効率リプル周波数fefriが捩れ共振領域外かつ円環0次共振領域外となると判定したときには、効率パルス数Npefをパルス数Npに設定して(ステップS140)、本ルーチンを終了する。この場合、駆動装置の効率を良好(好ましくは最適)なものとすることができる。
ステップS130で効率リプル周波数fefriが捩れ共振領域内または円環0次共振領域内となると判定したときには、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいて、リプル周波数が捩れ共振領域外かつ円環0次共振領域外となると共に効率パルス数Npefをパルス数Npに設定する場合に対する駆動装置の効率の低下量が小さい(好ましくは最小となる)共振回避パルス数Npreを設定し(ステップS150)、この共振回避パルス数Npreをパルス数Npに設定して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。ここで、共振回避パルス数Npreは、実施例では、モータ32の回転数Nmおよびトルク指令Tm*と共振回避パルス数Npreとの関係を予め定めて共振回避パルス数設定用マップとしてROM54に記憶しておき、モータ32の回転数Nmが与えられると、このマップから対応する共振回避パルス数Npreを導出して設定するものとした。このようにパルス数Np(共振回避パルス数Npre)を設定することにより、駆動装置の効率を(効率パルス数Npefをパルス数Npに設定する場合に比して低下するものの)ある程度良好にしつつ、モータ32のトルクリプルにより発生するモータ32の振動や騒音が増幅されるのを抑制することができる。
図4は、モータ32の回転数Nmとリプル周波数との関係の一例を示す説明図である。図中、太実線でこの関係を示した。また、図4には、参考のために、細実線で、モータ32の回転数Nmと、インバータ34のトランジスタT11〜T16のスイッチングに伴って生じるモータ32のトルクリプルの各次数の周波数と、の関係を示し、太点線で、モータ32の回転数Nmと効率リプル周波数fefriとの関係を示した。図4の場合、モータ32の回転数Nmが回転数領域R11〜R13(効率リプル周波数fefriが捩れ共振領域外かつ円環0次共振領域外となるモータ32の回転数領域)内のときには、効率パルス数Npefをパルス数Npに設定する。これにより、駆動装置の効率を良好(好ましくは最適)なものとすることができる。また、モータ32の回転数Nmが回転数領域R21〜R24(効率リプル周波数fefriが捩れ共振領域内または円環0次共振領域内となるモータ32の回転数領域)内のときには、共振回避パルス数Npreをパルス数Npに設定する。具体的には、モータ32の回転数Nmが回転数領域R21,R22,R24内のときには、効率パルス数Npefよりも小さい側でパルス数Np(共振回避パルス数Npre)を設定し、モータ32の回転数Nmが回転数領域R23内のときには、効率パルス数Npefよりも大きい側でパルス数Np(共振回避パルス数Npre)を設定する。これにより、駆動装置の効率をある程度良好にしつつ、モータ32のトルクリプルにより発生するモータ32の振動や騒音が増幅されるのを抑制することができる。
以上説明した実施例の電気自動車20に搭載される駆動装置では、駆動装置の効率が良好となる(好ましくは最適となる)効率パルス数Npefを設定し、この効率パルス数Npefをパルス数Npに設定する場合のリプル周波数(効率リプル周波数fefri)が捩れ共振領域外かつ円環0次共振領域外となるときには、効率パルス数Npefをパルス数Npに設定してインバータ34のトランジスタT11〜T16のスイッチングを行なう。これにより、駆動装置の効率を良好(好ましくは最適)なものとすることができる。一方、効率リプル周波数fefriが捩れ共振領域内または円環0次共振領域内となるときには、リプル周波数が捩れ共振領域外かつ円環0次共振領域外となると共に効率パルス数Npefをパルス数Npに設定する場合に対する駆動装置の効率の低下量が小さい(好ましくは最小となる)共振回避パルス数Npreを設定し、この共振回避パルス数Npreをパルス数Npに設定してインバータ34のトランジスタT11〜T16のスイッチングを行なう。これにより、駆動装置の効率を(効率パルス数Npefをパルス数Npに設定する場合に比して低下するものの)ある程度良好にしつつ、モータ32のトルクリプルにより発生するモータ32の振動や騒音が増幅されるのを抑制することができる。
実施例の電気自動車20に搭載される駆動装置では、効率リプル周波数fefriが捩れ共振領域内または円環0次共振領域内となるときには、リプル周波数が捩れ共振領域外かつ円環0次共振領域外となると共に効率パルス数Npefをパルス数Npに設定する場合に対する駆動装置の効率の低下量が小さい(好ましくは最小となる)共振回避パルス数Npreを設定し、この共振回避パルス数Npreをパルス数Npに設定するものとした。しかし、効率パルス数Npefよりも小さい側で、リプル周波数が捩れ共振領域外かつ円環0次共振領域外となると共に効率パルス数Npefをパルス数Npに設定する場合に対する駆動装置の効率の低下量が小さい共振回避パルス数Npre2を設定し、この共振回避パルス数Npre2をパルス数Npに設定するものとしてもよい。この場合のモータ32の回転数Nmとリプル周波数との関係の一例を図5に示す。パルス数Npを大きくすると、トランジスタT11〜T16のスイッチング回数が多くなり、インバータ34の損失(スイッチング損失)が大きくなる。したがって、このようにパルス数Npを設定することにより、インバータ34の損失の増加を抑制することができる。また、効率パルス数Npefよりも大きい側で、リプル周波数が捩れ共振領域外かつ円環0次共振領域外となると共に効率パルス数Npefをパルス数Npに設定する場合に対する駆動装置の効率の低下量が小さい共振回避パルス数Npre3を設定し、この共振回避パルス数Npre3をパルス数Npに設定するものとしてもよい。
実施例の電気自動車20に搭載される駆動装置では、電子制御ユニット50は、図2のパルス数設定ルーチンを実行するものとした。しかし、電子制御ユニット50は、図6のパルス数設定ルーチンを実行するものとしてもよい。この図6のパルス数設定ルーチンは、ステップS135の処理を追加した点を除いて、図2のパルス数設定ルーチンと同一である。したがって、同一の処理については同一のステップ番号を付し、その詳細な説明を省略する。図6のパルス数設定ルーチンでは、電子制御ユニット50のCPU52は、ステップS130で効率リプル周波数fefriが捩れ共振領域内または円環0次共振領域内となるときには、モータ32の回転数Nmを閾値Nmrefと比較する(ステップS135)。そして、モータ32の回転数Nmが閾値Nmref以下のときには、共振回避パルス数Npreを設定すると共にこの共振回避パルス数Npreをパルス数Npに設定して(ステップS150,S160)、本ルーチンを終了する。一方、モータ32の回転数Nmが閾値Nmrefよりも大きいときには、パルス数Npefをパルス数Npに設定して(ステップS140)、本ルーチンを終了する。この場合のモータ32の回転数Nmとリプル周波数との関係の一例を図7に示す。モータ32の回転数Nmが小さい(車速Vが低い)ときには、ロードノイズなどの暗騒音が小さいなどの理由により、モータ32の振動や騒音を運転者が感じやすく、モータ32の回転数Nmが大きい(車速Vが高い)ときには、暗騒音が大きいなどの理由により、モータ32の振動や騒音を運転者が感じにくいと考えられる。したがって、このようにパルス数Npを設定することにより、モータ32の回転数Nmが小さいときには、モータ32のトルクリプルにより発生するモータ32の振動や騒音が増幅されるのを抑制し、モータ32の回転数Nmが大きいときには、駆動装置の効率を良好(好ましくは最適)なものとすることができる。
実施例の電気自動車20に搭載される駆動装置では、モータ32の回転数Nmおよびトルク指令Tm*に基づいて効率パルス数Npefを設定し、効率リプル周波数fefriが捩れ共振領域内または円環0次共振領域内となるときには、モータ32の回転数Nmおよびトルク指令Tm*に基づいて共振回避パルス数Npreを設定するものとした。しかし、モータ32の回転数Nmだけに基づいて効率パルス数Npefを設定し、効率リプル周波数fefriが捩れ共振領域内または円環0次共振領域内となるときには、モータ32の回転数Nmだけに基づいて共振回避パルス数Npreを設定するものとしてもよい。この場合、効率パルス数Npefは、モータ32の回転数Nmと効率パルス数Npefとの関係を予め定めて効率パルス数設定用マップとしてROM54に記憶しておき、モータ32の回転数Nmが与えられると、このマップから対応する効率パルス数Npefを導出して設定するものとしてもよい。また、共振回避パルス数Npreは、モータ32の回転数Nmと共振回避パルス数Npreとの関係を予め定めて共振回避パルス数設定用マップとしてROM54に記憶しておき、モータ32の回転数Nmが与えられると、このマップから対応する共振回避パルス数Npreを導出して設定するものとしてもよい。
実施例の電気自動車20に搭載される駆動装置では、電子制御ユニット50は、図2のパルス数設定ルーチンを実行するものとした。しかし、電子制御ユニット50は、図8のパルス数設定ルーチンを実行するものとしてもよい。図8のパルス数設定ルーチンでは、電子制御ユニット50のCPU52は、モータ32の回転数Nmおよびトルク指令Tm*を入力し(ステップS200)、入力したモータ32の回転数Nmおよびトルク指令Tm*とパルス数設定用マップとを用いてパルス数Npを設定して(ステップS210)、本ルーチンを終了する。ここで、パルス数設定用マップは、リプル周波数が捩れ共振領域外かつ円環0次共振領域外となるようにモータ32の回転数Nmおよびトルク指令Tm*とパルス数Npとの関係を予め定めたマップであり、トルク指令Tm*の各値について、モータ32の回転数Nmとリプル周波数との関係が図4の太実線と同様になるように定められる。具体的には、パルス数設定用マップは、モータ32の回転数Nmが、効率リプル周波数fefriが捩れ共振領域外かつ円環0次共振領域外となる回転数領域(図4の場合、回転数領域R11〜R13)内のときには、効率パルス数Npefがパルス数Npとして設定され、モータ32の回転数Nmが、効率リプル周波数fefriが捩れ共振領域内または円環0次共振領域内となる回転数領域(図4の場合、回転数領域R21〜R24)内のときには、共振回避パルス数Npreがパルス数Npとして設定されるように定められる。この場合でも、実施例と同様の効果を奏することができる。なお、パルス数設定用マップとしては、モータ32の回転数Nmおよびトルク指令Tm*とパルス数Npとの関係を定めたマップに代えて、モータ32の回転数Nmとパルス数Npとの関係を定めたマップを用いるものとしてもよい。
実施例の電気自動車20に搭載される駆動装置では、共振領域として、捩れ共振領域と円環0次共振領域とを用いるものとした。しかし、共振領域として、捩れ共振領域と円環0次共振領域とのうちの何れか一方だけを用いるものとしてもよいし、捩れ共振領域と円環0次共振領域とのうちの一方または両方に代えて、または、捩れ共振領域と円環0次共振領域との両方に加えて、駆動装置全体の共振領域や、電気自動車20全体の共振領域などを用いるものとしてもよい。
実施例では、モータ32を備える電気自動車20に搭載される駆動装置の形態とした。しかし、モータ32に加えてエンジンも備えるハイブリッド自動車に搭載される駆動装置の形態としてもよいし、自動車以外の車両や船舶、航空機などの移動体に搭載される駆動装置の形態としてもよいし、建設設備などの移動しない設備に搭載される駆動装置の形態としてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータ32が「モータ」に相当し、インバータ34が「インバータ」に相当し、電子制御ユニット50が「制御装置」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。