そこで、この発明は、良好な固定状態を得るとともに、維持できるようにすることを主な目的とする。
そのための手段は、グロメットのパネルに対する固定側の端部に内包されるグロメットインナーであって、前記パネルの開口部に貫通するパネル係止部と、前記パネル係止部の一部に係止される当て板部が備えられ、前記パネル係止部には、前記開口部に表面側から挿入されて前記開口部の縁に係止する主係止爪と、前記開口部に表面側から挿入されて裏面側において前記当て板部を係止する従係止爪が形成され、前記当て板部には、前記主係止爪の前記パネルに対する係止状態において前記従係止爪に係止して前記パネルを裏面側から挟み込む押さえ部が形成されたグロメットインナーである。
この構成では、パネル係止部の主係止爪がパネルの開口部に係止してグロメットの端部がパネルの表面に押さえつけられた状態になった上、さらにパネル係止部の従係止爪に係止した当て板部の押さえ部がパネルの裏面側を押さえつける。これによって、パネルはグロメットによって厚み方向で挟み付けられる。換言すれば、パネルは厚み方向の両側から押さえられて、グロメットとの位置関係が強力に規制される。この結果、特定の主係止爪にかかる荷重を抑制し、がたつきの発生や外れを防止する。また、パネルの開口部を含む形状公差が最大で、開口部に対するグロメットインナーに片寄りがある場合であって不測に主係止爪が外れたり、グロメットの中のワイヤハーネスが引っ張られてテンションがかかったりしたときでも、グロメットのパネルからの脱落を防止できる。
この発明の態様として、前記主係止爪が間隔をあけて対をなして形成されるとともに、対をなす方向の外方に爪が向けられており、前記当て板部に、前記主係止爪が前記開口部に係止した状態で前記主係止爪同士の間に入り込んで前記爪の外れを阻止する規制ロック部が形成されたグロメットインナーとしてもよい。
この構成では、主係止爪が開口部に係止した状態で当て板部の規制ロック部が主係止爪同士の間に嵌って主係止爪の係止が外れる方向への変位、つまり内倒れを防止する。これによって、主係止爪の開口部からの脱落、つまりグロメットのパネルからの脱落を防止する。
この発明の態様として、前記主係止爪が間隔をあけて対をなして形成されるとともに、対をなす方向の外方に爪が向けられており、前記従係止爪が、前記主係止爪が対をなす方向と直交する方向に爪を向けて形成されたグロメットインナーとしてもよい。
この構成では、外方に爪を向けた主係止爪の対をなす方向と直交する方向に爪を向けて従係止爪が形成されているので、相互間で係止状態に悪影響を及ぼすことを回避できる。また、主係止爪と従係止爪の方向性が異なるので、主係止爪と従係止爪を有するパネル係止部の形態をコンパクトにまとめることができる。
この発明の態様として、前記当て板部がヒンジを介して一体形成されたグロメットインナーとしてもよい。
この構成では、当て板部を従係止爪に係止するときには、ヒンジを支点とて当て板部を回動させればよい。このため、別部材の当て板部を係止する場合とは異なり、利便性が高く作業性が良いものとすることができる。また、万が一当て板部が外れるようなことがあったとしても、当て板部の散逸を防止できる。
この発明の態様として、前記主係止爪が間隔をあけて対をなして形成されるとともに、対をなす方向の外方に爪が向けられており、前記当て板部が前記主係止爪の対をなす方向に沿って延びるヒンジを介して一体に形成され、前記従係止爪が、前記主係止爪の対向する方向と直交する方向に一対、間隔をあけるとともに爪を外側に向けて形成されるとともに、一対の前記従係止爪のうち前記ヒンジから遠い方の従係止爪の爪が近い方の従係止爪の爪よりも大きく形成されたグロメットインナーとしてもよい。
この構成では、主係止爪が対をなす方向に延びるヒンジを介して一体形成された当て板部を係止する従係止爪が、主係止爪が対をなす方向と直交する方向に対をなして形成されており、従係止爪のうちヒンジから近い方の従係止爪の爪よりも大きく形成されたヒンジから遠い方の従係止爪の爪が、梃子の原理によって強力に当て板部の係止を行わせる。これによって、より良好な固定状態が得られるとともに、良好な固定状態が維持される。
この発明の態様として、前記押さえ部に、前記パネルに対して付勢力を以て接触する弾性片が形成されたグロメットインナーとしてもよい。
この構成では、押さえ部がパネルの裏面側を押さえつけた状態で、弾性片が独自にパネルに対して付勢力を発揮した状態で接する。これによって、押さえ部にストッパ機能を発揮させつつ、がたつき防止が行える。
弾性片を設ける場合、前記押さえ部に切欠き部が形成されるとともに、前記弾性片が前記切欠き部に形成されたグロメットインナーとしてもよい。
この構成では、例えば押さえ部の中央部など、適宜の態様で形成された切欠き部の内部に形成された弾性片が、押さえ部の内側に収まった態様でパネルを押圧する。これによって、押さえ部の近傍の大型化を防止できるとともに、切欠き部と弾性片の態様によっては安定した押さえ状態を実現できる。
この発明の態様として、前記押さえ部が、前記従係止爪に対する係止状態において前記主係止爪の対向する方向と直交する方向における前記主係止爪と並ぶ位置に形成されたグロメットインナーとしてもよい。
この構成では、押さえ部は主係止爪に並んだ位置で主係止爪の係止状態の維持を補助する。これによって、押さえ部の作用を効果的に発揮させることができる。
別の手段は、前記グロメットインナーを備えたグロメットである。
別の手段は、前記グロメットにおける前記グロメットインナーを内包している端部を前記パネルに固定したグロメット固定構造である。
グロメット固定構造の態様としては、前記グロメットにおける前記開口部に対応する部位に、前記開口部に嵌る膨出部が形成されたグロメット固定構造としてもよい。
この構成では、膨出部は開口部に隙間を小さくするように、また開口部を塞ぐように位置する。これによって、異物の侵入を抑制する。また、グロメットが引っ張られた場合に、捲れにくくして、パネルに対する固定状態を維持する。
膨出部を形成する場合、前記グロメットインナーにおける前記膨出部に対応する部位に、前記膨出部の膨出方向に向けて突出する突起部が形成されたグロメット固定構造であるとよい。
この構成では、突起部が膨出部を支える。これによって、膨出部に対する引っ掛かりとなってグロメットインナーの位置ずれや外れを防止できるとともに、膨出部の補強として機能して前述した膨出部の作用を確実なものとする。
グロメット固定構造の態様としては、前記グロメットインナーに前記パネル係止部及び前記当て板部に加えて、前記パネルに挿入されて抜け止め固定されるアンカーが形成されたグロメット固定構造であってもよい。
この構成では、パネル係止部及び当て板部とアンカーとの協働でパネルに対する固定状態を得る。これによって、グロメットインナーの形状の複雑化を避け、固定作業性もよい固定が実現できる。
この場合には、前記アンカーが、前記パネルの内側部分に対応する部位に形成され、前記パネル係止部及び前記当て板部が、前記パネルにおける前記内側部分と前記内側部分よりも端部側に形成された段差部よりも端部側に形成されたグロメット固定構造であるとよい。
この構成では、アンカーはパネルの端部から離れた内側部分に挿入されて固定され、パネル係止部及び当て板部はパネルの端部に差し込んで係止したのち当て板を係止させて固定される。これによって、固定態様の違いを活かした固定しやすさを実現できるとともに、アンカーとパネル係止部及び当て板部とで互いに係止状態を補助して、良好な固定状態を維持する。
この発明によれば、グロメットのパネルに対する良好な固定状態を得て、この固定状態を維持することができる。
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1にグロメット11をパネル12に固定したグロメット固定構造13の斜視図を示す。このグロメット固定構造13は、例えば車両のフロントドアのように開閉するドア部分に対して好適に採用されるものであり、ボディー側のボディーパネルとドア側のドアパネルとの間にグロメット11を固定して、ボディーとドアを跨いで配索されるワイヤハーネスWHを保護する。
図2はグロメット11の一端部11aが固定されるパネル12(ドアパネルの一部)と、グロメット11の斜視図であり、図3はグロメット11の分解斜視図、図4はグロメット11の一端部11aを断面で表した側面図である。なお、図1〜図3などの図示においては、構造を説明しやすい向きにして描いており、図示の姿勢は車両に組み込まれたときの姿勢とは異なる。この例のグロメット11において、車両に組み込まれた時の姿勢は、グロメット11の両端部の開口方向が共に横を向く姿勢である。
また、この例ではグロメット11におけるドアパネルに対して固定する一端部11aの構造のみについて説明して、ボディーパネルに対して固定する他端部11bの構造の説明は省略する。
まず、パネル12について説明する。パネル12は、グロメット11を固定する部位に開口部21を有している。開口部21は、図2に示したように端部22から内側部23に切り込んだ形態であり、切り込み方向の先端部は正面視円形に形成されている。
また、パネル12における開口部21を有する部位とその周囲は、すべて平らではなく、端部22から、開口部21の切り込み方向先端部を有する内側部23に移行する部分に、空間におけるパネル12の位置、つまりパネル12の表面12a及び裏面12bの位置を裏面方向に相対的に変化させる湾曲した段差部24が形成されている。段差部24は、ワイヤハーネスWHを通す方向と略同じ方向にパネル12の内側部23を裏面12b側に移行する形状である。
ここで、「表面12a」とはグロメット11を固定する側の面であり、「裏面12b」とは、グロメット11が固定される面と反対側の面である。このため、図1、図2では、パネル12の裏面12bが手前側にあらわれていることになる。
開口部21の端部22のうち端寄りの部位は、グロメット11の一端部11aの大きさと開口部21の深さに対応して適宜の範囲にわたって開口部21の幅が狭められている。開口部21の幅が狭くなる部分には縁片25が形成されており、縁片25の厚さは他の部位よりも薄く設定されている。また、開口部21の端部における縁片25同士の間には開放空間26が形成されており、パネル12の端が開かれている。
さらに、パネル12におけるグロメット11を固定する部位のうち、段差部24よりも内側の内側部23であって、開口部21の切り込み方向の先端部を挟む両側には、グロメット11の固定に使用される挿入穴27が形成されている。
なお、パネル12のこのような形態は一例であり、パネル12と開口部21の形態は適宜設定される。例えば縁片25は厚みが薄くなくもよく、また開口部21は、前述の開放空間26のない、周囲が閉鎖された穴であってもよい。
つぎに、グロメット11について説明する。グロメット11は、図3に示したようにグロメット本体31と、グロメットインナー51と、インナーカバー52で構成される。
グロメット本体31は、ドアパネルの開閉に応じて屈曲する略筒状であり、柔軟性と可撓性を備えるゴムなどで形成される。グロメット本体31の長手方向の中間部には蛇腹部32が形成され、一端部31aと他端部31bは、ボディーパネル又はドアパネルに対する固定側の端部であり、グロメットインナー51が内包される。なお、前述のようにグロメット11の一端部11aの構成のみを説明するので、図3では一端部31aに内包されるグロメットインナー51のみを描いている。
グロメットインナー51を内包するため、グロメット本体31の一端部31aと他端部31bは鍔のように外周側に張りだしている。グロメット本体31の両端部のうちの、ドアパネルを構成するパネルに固定される一端部31aの形状は、正面視で角を大きくした略二等辺三角形状に形成されており、前述したパネル12の開口部21の周囲における端部22の一部を除く表面形状に当接する接合面部33を、外周縁に有している。接合面部33は、ワイヤハーネスWHを通す貫通路34の全周を取り巻いており、パネル12の段差部24に対応する湾曲した段差部35を有する。
また、接合面部33におけるパネル12に当接する面の外周縁には、止水リップ36が形成されている。止水リップ36を有する接合面部33は断面コ字状であり、接合面部33の内周側に、グロメットインナー51の外周縁の嵌合縁部53が嵌め込み可能である。なお、接合面部33の内部における適宜箇所には、断面コ字状を保持するリブ37を有する。
グロメット本体31の接合面部33におけるパネル12の開口部21を横切る部位には、開口部21に嵌る膨出部38が形成されている。膨出部38は、止水リップ36の内周側に形成されており、正面視形状は横に長い長方形である。膨出部38は必ずしも開口部21の幅全体を塞ぐ大きさである必要はなく、膨出部38の突出高さも適宜設定される。
グロメットインナー51は、硬質の合成樹脂製であり、グロメット本体31の一端部31aに対応する正面視形状でパネル12やグロメット本体31の段差部24,35に対応する湾曲した段差部54を有した枠状に形成されている。枠状、つまり外周縁にグロメット本体31の接合面部33に嵌る嵌合縁部53が形成され、中央部におけるグロメット本体31の貫通路34に対応する部位にはワイヤハーネスWHを通す穴部55が形成されている。
穴部55の縁のうちの一部、この例ではパネル12の開口部21における最も切り込み先端側の部位には、挿通保持したワイヤハーネスWHを規制する舌片56が形成されている。
グロメットインナー51における舌片56の基部には留め部57が形成されており、挿通保持したワイヤハーネスWHを保護するとともにワイヤハーネスWHを舌片56側に導く前述のインナーカバー52を固定可能にしている。留め部57は弾性変位可能な係合爪57aを有する。図3中、インナーカバー52の両側に形成された符号58部分が、係合爪57aに係合する係合環である。
また、正面視で角を大きくした略二等辺三角形状をなすグロメットインナー51の下端側の両側部、つまり前述の舌片56の左右両側部であって、グロメット本体31の接合面部33より内側に対応する部位には、パネル12に挿入されて抜け止め固定されるアンカー61が形成されている。
アンカー61は、図3にみられるように、パネル12に形成された挿入穴27(図1参照)に挿入可能な棒状に形成されており、アンカー61の突出方向は、パネル12における段差部24の段差方向と略同じ方向に設定される。
またアンカー61の先端から根元の近傍にかけて外周側に張りだす抜け止め爪62が一対形成されている。抜け止め爪62は、図5に示したように、挿入穴27に対する係止時に挿入穴27の内側に位置して径方向外側に突っ張る先端部62aと、挿入穴27の裏面角に引っかかる爪部62bを有している。
アンカー61の周方向における一対の抜け止め爪62の形成位置は、一対のアンカー61の対向する方向と直交する方向の両側面である。これは、グロメット11およびパネル12が、舌片56を横に延ばした姿勢、つまり図1の姿勢を90度回転した姿勢で固定されるからである。抜け止め爪62の向きを前述のように設定することにより、アンカー61の断面における固定時に上下方向となる方向の肉厚を厚く形成できる上に、抜け止め爪62の係止力が劣化する方向の変形を抑制できる。
グロメットインナー51における前述のアンカー61と反対側の端部には、パネル12の開口部21に貫通するパネル係止部71と、パネル係止部71の一部に係止される当て板部72が備えられている。また、嵌合縁部53におけるグロメット本体31の膨出部38に対応する部位に、膨出部38の膨出方向に向けて突出する突起部59が形成されている。突起部59は、膨出部38に収まる大きさの正面視長方形の突起である。
図6はパネル係止部71と当て板部72の拡大斜視図であり、図7はパネル係止部71と当て板部72を示す正面図である。なお、図7では当て板部72の非係止状態のうち、当て板部72を略直角に立てた状態を表している。図6、図7に示すようにパネル係止部71には、主係止爪73と従係止爪74がそれぞれ一対ずつ形成されている。
主係止爪73は、パネル12の開口部21に表面12a側から挿入されて開口部21の幅方向の縁に係止するものであり、間隔をあけて対をなして形成されるとともに、対をなす方向の外方に爪73aが向けられている。このため、図8に示したように、パネル12の開口部21の表面12a側から主係止爪73を押し込むと、主係止爪73が弾性変位して開口部21の縁に係止し、抜け止め状態が得られる。このとき、グロメットインナー51の外周縁の嵌合縁部53にはグロメット本体31の接合面部33が嵌合しており、接合面部33がパネル12の表面12aに当接した固定状態となる。
一方、従係止爪74は、開口部21に表面12a側から挿入されて裏面12b側において当て板部72を係止するものである。従係止爪74は、主係止爪73が対をなす方向と直交する方向に爪74aを向けて形成されており、開口部21に挿入されても開口部21に対しては非係止状態である。
この例において従係止爪74は、間隔をあけて対をなして形成する。また、対をなす従係止爪74の爪74aは共に、対をなす方向の外方に向ける。
従係止爪74に係止される当て板部72は、主係止爪73のパネル12に対する係止状態において従係止爪74に係止して、グロメット本体31の接合面部33との間でパネル12を裏面12b側から挟み込む押さえ部75を有している(図1参照)。また当て板部72には、主係止爪73が開口部21に係止した状態で、図7の仮想線や図9に示したように、主係止爪73同士の間に入り込んで爪73bの外れを阻止する規制ロック部76が形成されている。
このような当て板部72は、図6、図7に示したように、グロメットインナー51にヒンジ77を介して一体形成されている。当て板部72の基部の固定位置は、主係止爪73よりも内側、つまりアンカー61側に寄った位置であって、ヒンジ77は、主係止爪73が対をなす方向に沿って延ばして形成されている。具体的には、ヒンジ77は主係止爪73の間に対応する位置に形成されている。
弾性変位させて係止を行わせる主係止爪73を形成しつつ、ヒンジ77により回動する当て板部72を形成するため、ヒンジ77の基部には、主係止爪73と隙間をあけて並ぶ細幅板状の支持部78が立設されている。支持部78は、ヒンジ77の近傍を補強するとともに、当て板部72のガイドや主係止爪73の支えとして機能する。
当て板部72はヒンジ77を介して一体形成されているが、成形時にはワイヤハーネスWHを通す穴部55に対応する部位に形成されることになるので、納まり良く形成できる。
前述のように当て板部72がヒンジ77を介して回動する構造であるので、対をなす従係止爪74のうちヒンジ77から遠い方の従係止爪741の爪74aが近い方の従係止爪742の爪74aよりも大きく形成される。つまり、図6、図7などに示したように、ヒンジ77から遠い方の従係止爪741の幅を相対的に大きく形成している。さらには、図10、図11に示したように、ヒンジ77から遠い方の従係止爪741の爪74aの角度を先端側ほど下がる形状に形成してより積極的で強力な係止ができるようにしている。
また、対をなす従係止爪74のうちヒンジ77に近い側の従係止爪742は、図10に示したように、当て板部72の回動途中、つまりヒンジ77から遠い側の従係止爪741に係止する前に、当て板部72と当たる傾斜面74dを備えている。この傾斜面74dを有することで、固定作業前に当て板部72が不測にヒンジ77から遠い方の従係止爪741に係止してしまうことを抑制でき、円滑で簡易迅速な作業を確保できる。
当て板部72は板状に形成されており、中央部には、前述の従係止爪74と係合する係止切欠き部81を有している。対をなす従係止爪74は前述のように大きさが異なるので、係止切欠き部81は単なる平面視方形状の切欠きできなく、係合する従係止爪74の大きさに対応した平面視凸字状に形成されている。
当て板部72における前述の規制ロック部76の左右両側面には、図7、図9に示したように、主係止爪73に対応する部位を幅広にするための張り出し部82が形成されている。張り出し部82は、回動して従係止爪74に係止させたときに上側になる方が張りだし量を大きい断面三角形状に設定されている。
当て板部72における前述の押さえ部75は、従係止爪74に対する係止状態において主係止爪73の対向する方向と直交する方向における主係止爪73と並ぶ位置に形成されている。具体的には、規制ロック部76のよりもヒンジ77から遠い側における左右両側に形成されている。
押さえ部75の形状は板状や枠状など適宜の形状に設定し得るが、押さえとして機能する剛性を確保できるように厚さや外形の大きさなどが決められる。
押さえ部75には、がたつき防止のためにパネル12に対して付勢力を以て接触する弾性片83が形成されるのが好ましい。このため、押さえ部75は板状ではなく、図1、図6、図7に示したように、枠状、より好ましくは方形枠状に形成して切欠き部75aを備え、切欠き部75aの内部に弾性片83を形成するとよい。
弾性片83は方形板状に形成されており、図6、図7に示したように、押さえ部75の基部側から延設されている。弾性片83は、当て板部72が従係止爪74に係止したときに下になる面に向けて傾き、弾性片83の先端部は、押さえ部75における従係止爪74に係止したときに下になる面よりも突出している。
また、当て板部72におけるヒンジ77と反対側の端であって押さえ部75に挟まれる部位には、外方に突出する等脚台形状の突片79が形成されている。突片79は、当て板部72を従係止爪74に係止したときにグロメット本体31の膨出部38に対向する部位である。
以上のように構成されたグロメット本体31とグロメットインナー51は組み合わされてグロメット11としてワイヤハーネスWHの保護に使用される。グロメットインナー51とグロメット本体31との結合は、グロメットインナー51の嵌合縁部53をグロメット本体31の一端部31aの接合面部33の内側に嵌め込む。このとき、グロメットインナー51の突起部59を図10に示したようにグロメット本体31の膨出部38の下側に嵌める。グロメット本体31は柔軟であるが、突起部59が嵌ることによって、不測の捲れや分離を効果的に防止できる。
グロメット11の一端部11aをパネル12に対して固定する作業は、次のように行う。
まず、グロメット11のグロメットインナー51における当て板部72を、図2に示したように90度ほど立てて、アンカー61の延びる方向に立った姿勢にする。
この状態で、図2に矢印で示したように、パネル係止部71と当て板部72と舌片56とインナーカバー52をパネル12の開口部21に挿入し、アンカー61を挿入穴27に挿入する。アンカー61は挿入穴27に挿入されると、図1に示したように挿入穴27に係止して抜け止めを行う。同様に、パネル係止部71を開口部21に挿入すると、主係止爪73が図7に示したようにパネル12の開口部21に係止する。このような3か所の係止で、グロメット本体31の接合面部33をパネル12の表面12aに押しつけた状態の固定が一応完了する。
このあと、図10に示したように当て板部72を、ヒンジ77を支点に従係止爪74側に回動して、係止切欠き部81に一対の従係止爪74を係止させる。パネル12の開口部21の端には開放空間26を形成しているので、開放空間26を通して当て板部72の回動操作を行うこともできる。当て板部72はヒンジ77を介して一体形成されているので、係止操作は簡単であり、利便性が高く作業性が良い。
また一対の従係止爪74のうちヒンジ77から遠い方の従係止爪741の爪74aの方が近い方の従係止爪742の爪74aより大きく形成されているので、当て板部72の係止を強力に行わせることができ、この点からも、より良好な固定状態が得られる。
当て板部72を回動させると、図1、図11、図12に示したように、当て板部72の左右両側の押さえ部75がパネル12の対向部位、具体的には縁片25を押さえて、グロメット本体31とでパネル12を挟み込む。これによって、車両への搭載時に下になる一方の主係止爪73にかかる荷重を抑制し、がたつきの発生や外れを防止する。また、パネル12の開口部21を含む形状公差が最大で、開口部21に対するグロメットインナー51に片寄りがある場合であって不測に主係止爪73が外れたり、グロメット11の中のワイヤハーネスWHが引っ張られてテンションがかかったりしたときでも、グロメット11のパネル12からの脱落を防止できる。
しかも、押さえ部75がパネル12の裏面12bを押さえるときには、図12のA−A断面図である図13に示したよう、弾性片83が独自にパネル12に対して付勢力を発揮した状態で接する。これによって、押さえ部75にストッパ機能を発揮させつつ、がたつき防止が行える。このような弾性片83は、方形枠状に形成された押さえ部75の内部に形成されているので、弾性片83を形成したことによる大型化を回避できるとともに、安定した押さえができる。大型化を抑制できることは、前述したようにヒンジ77を介して一体形成される当て板部72を納まり良く形成することにも資する。
また押さえ部75は、パネル12に対して係止する主係止爪73に並んだ位置で主係止爪73の係止状態の維持を補助するので、押さえ部75の前述の機能を効果的に発揮させることができる。
同時に、当て板部72が従係止爪74によって係止されると、図9に示したように当て板部72の規制ロック部76が、すでにパネル12に係止している主係止爪73同士の間に嵌り込んで、主係止爪73が、係止が外れる方向に変位するのを阻止する。これによって、主係止爪73による係止状態を維持し、グロメット11のパネル12に対する固定状態を保つ。
このようにして、アンカー61とパネル係止部71の主係止爪73とによる係止に加えて、当て板部72の押さえ部75と弾性片83とによる挟み込みとがたつき防止を行うので、良好な固定状態が得られるうえに、振動が生じる環境下でも良好な固定状態を維持することができる。
また、前述のようなグロメット11を用いたグロメット固定構造13では、挿入するだけで係止するアンカー61がパネル12の内側部分に対応する部位に形成されており、当て板部72との協働で裏からの押さえも行うパネル係止部71がパネル12における内側部23よりも端の端部22に形成されており、パネル12におけるアンカー61が係止する内側部23とパネル係止部71が係止する端部22との間に段差部24を有している。このため、段差部24の段差の方向に延びてパネル12の内側部23に係止するアンカー61と、パネル1の端部22に係止するパネル係止部71との係止位置と固定態様の違いを、段差部24を有するパネル12上で生かしつつ、アンカー61とパネル係止部71が互いに係止状態を補助する。この結果、良好な固定状態が得られるとともに、良好な固定状態を維持できる。
さらに、主係止爪73が間隔をあけて対をなして形成されるとともに、対をなす方向の外方に爪73aが向けられており、従係止爪74が、主係止爪73が対をなす方向と直交する方向に爪74aを向けて形成されているので、相互間で係止状態に悪影響を及ぼすことを回避できるうえに、主係止爪73と従係止爪74を有するパネル係止部71の形態をコンパクトにまとめることができる。このため、前述したように当て板部72内に弾性片83を形成して大型化を回避したことと同様に、納まり良く形成することに貢献できる。
加えて、グロメット本体31には開口部21に嵌る膨出部38が形成されているので、開口部21に生じる隙間を小さくして異物の侵入を抑制できる。また開口部21を塞ぐように位置してグロメット11が引っ張られた場合でも捲れを抑制できる。このような膨出部38の作用は、膨出部38がグロメットインナー51の突起部59によって補強されるので、確実に行われる。
以上の構成は、この発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成に限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
たとえば、パネル係止部71の主係止爪73と従係止爪74はそれぞれ一対ずつ形成したが、一対ずつより多くてもよく、2本ずつよりも多い数にしてもよい。従係止爪74は1本であってもよい。
また、押さえ部75に形成される弾性片83は、押さえ部75ごとに複数形成してもよく、弾性片83の向きも適宜設定できる。弾性片83は押さえ部75の外縁に添えるように備えてもよい。
押さえ部75に形成された張り出し部82は、主係止爪73の背面に対向するので、張り出し部82と主係止爪73の背面との間で係止させたり、圧入させたりすることもできる。
また、当て板部72は別体に備えてもよい。