以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
第1実施形態のレーザ加工装置(後述)では、加工対象物にレーザ光を集光することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物に改質領域を形成する。そこで、まず、改質領域の形成について、図1〜図6を参照して説明する。
図1に示されるように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅、パルス波形等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の移動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
レーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿った改質領域が加工対象物1に形成される。なお、ここでは、レーザ光Lを相対的に移動させるためにステージ111を移動させたが、集光用レンズ105を移動させてもよいし、或いはこれらの両方を移動させてもよい。
加工対象物1としては、半導体材料で形成された半導体基板や圧電材料で形成された圧電基板等を含む板状の部材(例えば、基板、ウェハ等)が用いられる。図2に示されるように、加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示されるように、加工対象物1の内部に集光点(集光位置)Pを合わせた状態で、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4、図5及び図6に示されるように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1に形成され、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7が切断起点領域8となる。
集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、これらが組み合わされた3次元状であってもよいし、座標指定されたものであってもよい。切断予定ライン5は、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面3、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。改質領域7を形成する際のレーザ光入射面は、加工対象物1の表面3に限定されるものではなく、加工対象物1の裏面であってもよい。
ちなみに、加工対象物1の内部に改質領域7を形成する場合には、レーザ光Lは、加工対象物1を透過すると共に、加工対象物1の内部に位置する集光点P近傍にて特に吸収される。これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。この場合、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一方、加工対象物1の表面3に改質領域7を形成する場合には、レーザ光Lは、表面3に位置する集光点P近傍にて特に吸収され、表面3から溶融され除去されて、穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)。
改質領域7は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域7としては、例えば、溶融処理領域(一旦溶融後再固化した領域、溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくとも何れか一つを意味する)、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。更に、改質領域7としては、加工対象物1の材料において改質領域7の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある。加工対象物1の材料が単結晶シリコンである場合、改質領域7は、高転位密度領域ともいえる。
溶融処理領域、屈折率変化領域、改質領域7の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、及び、格子欠陥が形成された領域は、更に、それら領域の内部や改質領域7と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック)を内包している場合がある。内包される亀裂は、改質領域7の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1は、結晶構造を有する結晶材料からなる基板を含む。例えば加工対象物1は、窒化ガリウム(GaN)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、LiTaO3、及び、サファイア(Al2O3)の少なくとも何れかで形成された基板を含む。換言すると、加工対象物1は、例えば、窒化ガリウム基板、シリコン基板、SiC基板、LiTaO3基板、又はサファイア基板を含む。結晶材料は、異方性結晶及び等方性結晶の何れであってもよい。また、加工対象物1は、非結晶構造(非晶質構造)を有する非結晶材料からなる基板を含んでいてもよく、例えばガラス基板を含んでいてもよい。
実施形態では、切断予定ライン5に沿って改質スポット(加工痕)を複数形成することにより、改質領域7を形成することができる。この場合、複数の改質スポットが集まることによって改質領域7となる。改質スポットとは、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射:レーザショット)で形成される改質部分である。改質スポットとしては、クラックスポット、溶融処理スポット若しくは屈折率変化スポット、又はこれらの少なくとも1つが混在するもの等が挙げられる。改質スポットについては、要求される切断精度、要求される切断面の平坦性、加工対象物1の厚さ、種類、結晶方位等を考慮して、その大きさや発生する亀裂の長さを適宜制御することができる。また、実施形態では、切断予定ライン5に沿って、改質スポットを改質領域7として形成することができる。
[第1実施形態のレーザ加工装置]
次に、第1実施形態のレーザ加工装置について説明する。以下の説明では、水平面内において互いに直交する方向をX軸方向及びY軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向とする。
[レーザ加工装置の全体構成]
図7に示されるように、レーザ加工装置200は、装置フレーム210と、第1移動機構220と、支持台(支持部)230と、第2移動機構240と、を備えている。更に、レーザ加工装置200は、レーザ出力部300と、レーザ集光部500と、制御部600と、を備えている。
第1移動機構220は、装置フレーム210に取り付けられている。第1移動機構220は、第1レールユニット221と、第2レールユニット222と、可動ベース223と、を有している。第1レールユニット221は、装置フレーム210に取り付けられている。第1レールユニット221には、Y軸方向に沿って延在する一対のレール221a,221bが設けられている。第2レールユニット222は、Y軸方向に沿って移動可能となるように、第1レールユニット221の一対のレール221a,221bに取り付けられている。第2レールユニット222には、X軸方向に沿って延在する一対のレール222a,222bが設けられている。可動ベース223は、X軸方向に沿って移動可能となるように、第2レールユニット222の一対のレール222a,222bに取り付けられている。可動ベース223は、Z軸方向に平行な軸線を中心線として回転可能である。
支持台230は、可動ベース223に取り付けられている。支持台230は、加工対象物1を支持する。加工対象物1は、例えば、シリコン等の半導体材料からなる基板の表面側に複数の機能素子(フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、又は回路として形成された回路素子等)がマトリックス状に形成されたものである。加工対象物1が支持台230に支持される際には、図8に示されるように、環状のフレーム11に張られたフィルム12上に、例えば加工対象物1の表面1a(複数の機能素子側の面)が貼付される。支持台230は、クランプによってフレーム11を保持すると共に真空チャックテーブルによってフィルム12を吸着することで、加工対象物1を支持する。支持台230上において、加工対象物1には、互いに平行な複数の切断予定ライン5a、及び互いに平行な複数の切断予定ライン5bが、隣り合う機能素子の間を通るように格子状に設定される。
図7に示されるように、支持台230は、第1移動機構220において第2レールユニット222が動作することで、Y軸方向に沿って移動させられる。また、支持台230は、第1移動機構220において可動ベース223が動作することで、X軸方向に沿って移動させられる。更に、支持台230は、第1移動機構220において可動ベース223が動作することで、Z軸方向に平行な軸線を中心線として回転させられる。このように、支持台230は、X軸方向及びY軸方向に沿って移動可能となり且つZ軸方向に平行な軸線を中心線として回転可能となるように、装置フレーム210に取り付けられている。
レーザ出力部300は、装置フレーム210に取り付けられている。レーザ集光部500は、第2移動機構240を介して装置フレーム210に取り付けられている。レーザ集光部500は、第2移動機構240が動作することで、Z軸方向に沿って移動させられる。このように、レーザ集光部500は、レーザ出力部300に対してZ軸方向に沿って移動可能となるように、装置フレーム210に取り付けられている。
制御部600は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等によって構成されている。制御部600は、レーザ加工装置200の各部の動作を制御する。
一例として、レーザ加工装置200では、次のように、各切断予定ライン5a,5b(図8参照)に沿って加工対象物1の内部に改質領域が形成される。
まず、加工対象物1の裏面1b(図8参照)がレーザ光入射面となるように、加工対象物1が支持台230に支持され、加工対象物1の各切断予定ライン5aがX軸方向に平行な方向に合わされる。続いて、加工対象物1の内部において加工対象物1のレーザ光入射面から所定距離だけ離間した位置にレーザ光Lの集光点が位置するように、第2移動機構240によってレーザ集光部500が移動させられる。続いて、加工対象物1のレーザ光入射面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されつつ、各切断予定ライン5aに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられる。これにより、各切断予定ライン5aに沿って加工対象物1の内部に改質領域が形成される。
各切断予定ライン5aに沿っての改質領域の形成が終了すると、第1移動機構220によって支持台230が回転させられ、加工対象物1の各切断予定ライン5bがX軸方向に平行な方向に合わされる。続いて、加工対象物1の内部において加工対象物1のレーザ光入射面から所定距離だけ離間した位置にレーザ光Lの集光点が位置するように、第2移動機構240によってレーザ集光部500が移動させられる。続いて、加工対象物1のレーザ光入射面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されつつ、各切断予定ライン5bに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられる。これにより、各切断予定ライン5bに沿って加工対象物1の内部に改質領域が形成される。
このように、レーザ加工装置200では、X軸方向に平行な方向が加工方向(レーザ光Lのスキャン方向)とされている。なお、各切断予定ライン5aに沿ったレーザ光Lの集光点の相対的な移動、及び各切断予定ライン5bに沿ったレーザ光Lの集光点の相対的な移動は、第1移動機構220によって支持台230がX軸方向に沿って移動させられることで、実施される。また、各切断予定ライン5a間におけるレーザ光Lの集光点の相対的な移動、及び各切断予定ライン5b間におけるレーザ光Lの集光点の相対的な移動は、第1移動機構220によって支持台230がY軸方向に沿って移動させられることで、実施される。
図9に示されるように、レーザ出力部300は、取付プレート301と、カバー302と、複数のミラー303,304と、を有している。更に、レーザ出力部300は、レーザ発振器400と、シャッタ320と、λ/2波長板ユニット(出力調整部、偏光方向調整部)330と、偏光板ユニット(出力調整部、偏光方向調整部)340と、ビームエキスパンダ(レーザ光平行化部)350と、ミラーユニット360と、を有している。
取付プレート301は、複数のミラー303,304、レーザ発振器400、シャッタ320、λ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340、ビームエキスパンダ350及びミラーユニット360を支持している。複数のミラー303,304、レーザ発振器400、シャッタ320、λ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340、ビームエキスパンダ350及びミラーユニット360は、取付プレート301の主面301aに取り付けられている。取付プレート301は、板状の部材であり、装置フレーム210(図7参照)に対して着脱可能である。レーザ出力部300は、取付プレート301を介して装置フレーム210に取り付けられている。つまり、レーザ出力部300は、装置フレーム210に対して着脱可能である。
カバー302は、取付プレート301の主面301a上において、複数のミラー303,304、レーザ発振器400、シャッタ320、λ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340、ビームエキスパンダ350及びミラーユニット360を覆っている。カバー302は、取付プレート301に対して着脱可能である。
レーザ発振器400は、直線偏光のレーザ光LをX軸方向に沿ってパルス発振する。レーザ発振器400は、後述するように、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)方式のファイバレーザとして構成されている。そのため、レーザ発振器400では、種光LD(Laser Diode/半導体レーザ)及び励起LDの出力のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光Lの出力のON/OFFが高速に切り替えられる。レーザ発振器400から出射されるレーザ光Lの波長は、例えば、500〜550nm、1000〜1150nm又は1300〜1400nmのいずれかの波長帯に含まれる。500〜550nmの波長帯のレーザ光Lは、例えばサファイアからなる基板に対する内部吸収型レーザ加工に適している。1000〜1150nm及び1300〜1400nmの各波長帯のレーザ光Lは、例えばシリコンからなる基板に対する内部吸収型レーザ加工に適している。レーザ発振器400から出射されるレーザ光Lの偏光方向は、例えば、Y軸方向に平行な方向である。レーザ発振器400から出射されたレーザ光Lは、ミラー303によって反射され、Y軸方向に沿ってシャッタ320に入射する。
シャッタ320は、機械式の機構によってレーザ光Lの光路を開閉する。レーザ出力部300からのレーザ光Lの出力のON/OFFの切り替えは、上述したように、レーザ発振器400でのレーザ光Lの出力のON/OFFの切り替えによって実施されるが、シャッタ320が設けられていることで、例えばレーザ出力部300からレーザ光Lが不意に出射されることが防止される。シャッタ320を通過したレーザ光Lは、ミラー304によって反射され、X軸方向に沿ってλ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340に順次入射する。
λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340は、レーザ光Lの出力(光強度)を調整する出力調整部として機能する。また、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340は、レーザ光Lの偏光方向を調整する偏光方向調整部として機能する。これらの詳細については後述する。λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340を順次通過したレーザ光Lは、X軸方向に沿ってビームエキスパンダ350に入射する。
ビームエキスパンダ350は、レーザ光Lの径を調整しつつ、レーザ光Lを平行化する。ビームエキスパンダ350を通過したレーザ光Lは、X軸方向に沿ってミラーユニット360に入射する。
ミラーユニット360は、支持ベース361と、複数のミラー362,363と、を有している。支持ベース361は、複数のミラー362,363を支持している。支持ベース361は、X軸方向及びY軸方向に沿って位置調整可能となるように、取付プレート301に取り付けられている。ミラー362は、ビームエキスパンダ350を通過したレーザ光LをY軸方向に反射する。ミラー362は、その反射面が例えばZ軸に平行な軸線回りに角度調整可能となるように、支持ベース361に取り付けられている。ミラー363は、ミラー362によって反射されたレーザ光LをZ軸方向に反射する。ミラー363は、その反射面が例えばX軸に平行な軸線回りに角度調整可能となり且つY軸方向に沿って位置調整可能となるように、支持ベース361に取り付けられている。ミラー363によって反射されたレーザ光Lは、支持ベース361に形成された開口361aを通過し、Z軸方向に沿ってレーザ集光部500(図7参照)に入射する。つまり、レーザ出力部300によるレーザ光Lの出射方向は、レーザ集光部500の移動方向に一致している。
上述したように、各ミラー362,363は、反射面の角度を調整するための機構を有している。ミラーユニット360では、取付プレート301に対する支持ベース361の位置調整、支持ベース361に対するミラー363の位置調整、及び各ミラー362,363の反射面の角度調整が実施されることで、レーザ出力部300から出射されるレーザ光Lの光軸の位置及び角度がレーザ集光部500に対して合わされる。つまり、複数のミラー362,363は、レーザ出力部300から出射されるレーザ光Lの光軸を調整するための構成である。
レーザ集光部500は、ミラーユニット360を通過したレーザ光Lを加工対象物1に集光する。図10に示されるように、レーザ集光部500は、筐体501を有している。筐体501の側面には、第2移動機構240が取り付けられている。筐体501には、ミラーユニット360の開口361aとZ軸方向において対向するように、円筒状の光入射部501aが設けられている。光入射部501aは、レーザ出力部300から出射されたレーザ光Lを筐体501内に入射させる。ミラーユニット360と光入射部501aとは、第2移動機構240によってレーザ集光部500がZ軸方向に沿って移動させられた際に(すなわち、ミラーユニット360に対してレーザ集光部500が移動させられた際に)互いに接触することがない距離だけ、互いに離間している。
図示は省略するが、筐体501内には、ミラー、反射型空間光変調器、及び4fレンズユニットが配置されている。また、筐体501には、集光レンズユニット(集光光学系)、駆動機構、及び一対の測距センサが取り付けられている。
Z軸方向に沿って筐体501内に進行したレーザ光Lは、ミラーによってXY平面に平行な方向に反射され、反射型空間光変調器に入射する。反射型空間光変調器は、ミラーによって反射されたレーザ光Lを変調しつつ、当該レーザ光LをXY平面に沿って反射する。反射型空間光変調器は、例えば反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。
ここで、XY平面に平行な平面内において、反射型空間光変調器に入射するレーザ光Lの光軸と、反射型空間光変調器から出射されるレーザ光Lの光軸とは、鋭角である角度αをなす。これは、レーザ光Lの入射角及び反射角を抑えて回折効率の低下を抑制し、反射型空間光変調器の性能を十分に発揮させるためである。また、反射型空間光変調器では、レーザ光LがP偏光として反射される。これは、反射型空間光変調器の光変調層に液晶が用いられている場合において、反射型空間光変調器に対して入出射するレーザ光Lの光軸を含む平面に平行な面内で液晶分子が傾斜するように、当該液晶が配向されているときには、偏波面の回転が抑制された状態でレーザ光Lに位相変調が施されるからである(例えば、特許第3878758号公報参照)。
4fレンズユニットは、反射型空間光変調器の反射面と集光レンズユニットの入射瞳面とが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。これにより、反射型空間光変調器の反射面でのレーザ光Lの像(反射型空間光変調器において変調されたレーザ光Lの像)が、集光レンズユニットの入射瞳面に転像(結像)される。
集光レンズユニットは、駆動機構を介して筐体501に取り付けられている。集光レンズユニットは、支持台230に支持された加工対象物1(図7参照)に対してレーザ光Lを集光する。駆動機構は、圧電素子の駆動力によって、集光レンズユニットをZ軸方向に沿って移動させる。
一対の測距センサは、X軸方向において集光レンズユニットの両側に位置するように、筐体501に取り付けられている。各測距センサは、支持台230に支持された加工対象物1(図7参照)のレーザ光入射面に対して測距用の光(例えば、レーザ光)を出射し、当該レーザ光入射面によって反射された測距用の光を検出することで、加工対象物1のレーザ光入射面の変位データを取得する。
レーザ加工装置200では、上述したように、X軸方向に平行な方向が加工方向(レーザ光Lのスキャン方向)とされている。そのため、各切断予定ライン5a,5bに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられる際に、一対の測距センサのうち集光レンズユニットに対して相対的に先行する測距センサが、各切断予定ライン5a,5bに沿った加工対象物1のレーザ光入射面の変位データを取得する。そして、加工対象物1のレーザ光入射面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されるように、駆動機構が、測距センサによって取得された変位データに基づいて集光レンズユニットをZ軸方向に沿って移動させる。
[λ/2波長板ユニット及び偏光板ユニット]
上述したように、レーザ集光部500では、XY平面に平行な平面内において、反射型空間光変調器に入射するレーザ光Lの光軸と、反射型空間光変調器から出射されるレーザ光Lの光軸とが、鋭角である角度αをなす。一方、図9に示されるように、レーザ出力部300では、レーザ光Lの光路がX軸方向又はY軸方向に沿うように設定されている。そのため、レーザ出力部300においては、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340を、レーザ光Lの出力を調整する出力調整部としてだけでなく、レーザ光Lの偏光方向を調整する偏光方向調整部としても機能させる必要がある。
図11に示されるように、λ/2波長板ユニット330は、ホルダ331と、λ/2波長板332と、を有している。ホルダ331は、X軸方向に平行な軸線(第1軸線)XLを中心線としてλ/2波長板332が回転可能となるように、λ/2波長板332を保持している。λ/2波長板332は、その光学軸(例えば、fast軸)に対して偏光方向が角度θだけ傾いてレーザ光Lが入射した場合に、軸線XLを中心線として偏光方向を角度2θだけ回転させてレーザ光Lを出射する(図12の(a)参照)。
偏光板ユニット340は、ホルダ341と、偏光板(偏光部材)342と、光路補正板(光路補正部材)343と、を有している。ホルダ341は、軸線(第2軸線)XLを中心線として偏光板342及び光路補正板343が一体で回転可能となるように、偏光板342及び光路補正板343を保持している。偏光板342の光入射面及び光出射面は、所定角度(例えば、ブリュスター角度)だけ傾いている。偏光板342は、レーザ光Lが入射した場合に、偏光板342の偏光軸に一致するレーザ光LのP偏光成分を透過させ、レーザ光LのS偏光成分を反射又は吸収する(図12の(b)参照)。光路補正板343の光入射面及び光出射面は、偏光板342の光入射面及び光出射面とは逆側に傾いている。光路補正板343は、偏光板342を透過することで軸線XL上から外れたレーザ光Lの光軸を軸線XL上に戻す。
偏光板ユニット340では、軸線XLを中心線として偏光板342及び光路補正板343が一体で回転させられ、図12の(b)に示されるように、Y軸方向に平行な方向に対して偏光板342の偏光軸が角度αだけ傾けられる。これにより、偏光板ユニット340から出射されるレーザ光Lの偏光方向が、Y軸方向に平行な方向に対して角度αだけ傾く。その結果、レーザ集光部500の反射型空間光変調器においてレーザ光LがP偏光として反射される。
また、図12の(b)に示されるように、偏光板ユニット340に入射するレーザ光Lの偏光方向が調整され、偏光板ユニット340から出射されるレーザ光Lの光強度が調整される。偏光板ユニット340に入射するレーザ光Lの偏光方向の調整は、λ/2波長板ユニット330において軸線XLを中心線としてλ/2波長板332が回転させられ、図12の(a)に示されるように、λ/2波長板332に入射するレーザ光Lの偏光方向(例えば、Y軸方向に平行な方向)に対するλ/2波長板332の光学軸の角度が調整されることで、実施される。
以上のように、レーザ出力部300において、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340は、レーザ光Lの出力を調整する出力調整部(上述した例では、出力減衰部)としてだけでなく、レーザ光Lの偏光方向を調整する偏光方向調整部としても機能する。
[第1実施形態のレーザ発振器]
図13に示されるように、レーザ発振器400は、種光出射部410と、プリアンプ部(第1アンプ部)420と、パワーアンプ部(第2アンプ部)430と、レーザ光出射部440と、を備えている。レーザ発振器400は、MOPA方式のファイバレーザとして構成されている。
種光出射部410は、種光LD(種光源)411を有している。種光LD411は、パルスジェネレータによって駆動され、種光であるレーザ光Lをパルス発振する。種光LD411から出射されたレーザ光Lは、ファイバF1及びファイバケーブルFC1によってプリアンプ部420に伝播させられる。レーザ光Lは、所定波長(例えば1098nm)を有している。
プリアンプ部420は、アイソレータ421と、クラッドモードストリッパ422と、第1レーザファイバ423と、例えば1つの第1励起LD(第1励起光源)424と、コンバイナ425と、を有している。プリアンプ部420では、レーザ光Lは、ファイバF3,F4,F5によって第1レーザファイバ423に伝播させられ、第1レーザファイバ423で増幅された後、ファイバF6,F7によってパワーアンプ部430に伝播させられる。
第1励起LD424は、第1レーザファイバ423を励起するための所定波長(例えば915nm)の第1励起光PL1を出射する。第1励起LD424から出射された第1励起光PL1は、ファイバF21によってコンバイナ425に伝播させられる。コンバイナ425は、ファイバF6とファイバF7との間において第1励起光PL1をファイバF6に結合する。ファイバF6に結合された第1励起光PL1は、第1レーザファイバ423に入射し、第1レーザファイバ423においてレーザ光Lの進行方向とは逆方向に進行する。このように、プリアンプ部420では、後方励起の構成が採用されている。
第1レーザファイバ423は、第1励起光PL1によって励起された状態で、種光出射部410から出射されたレーザ光Lを伝播させることで、レーザ光Lを増幅する。アイソレータ421は、ファイバF3とファイバF4との間において戻り光(種光出射部410側に進行する光)を遮断する。クラッドモードストリッパ422は、ファイバF5と第1レーザファイバ423との間において、第1レーザファイバ423で吸収されなかった第1励起光PL1を除去する。
パワーアンプ部430は、アイソレータ431と、バンドパスフィルタ432と、クラッドモードストリッパ433と、第2レーザファイバ434と、例えば複数(ここでは6つ)の第2励起LD(第2励起光源)435と、コンバイナ436と、を有している。パワーアンプ部430では、レーザ光Lは、ファイバF8,F9,F10によって第2レーザファイバ434に伝播させられ、第2レーザファイバ434で増幅された後、ファイバF11,F12,F13によってレーザ光出射部440に伝播させられる。
各第2励起LD435は、第2レーザファイバ434を励起するための所定波長(例えば915nm)の第2励起光PL2を出射する。各第2励起LD435から出射された第2励起光PL2は、ファイバF22によってコンバイナ436に伝播させられる。コンバイナ436は、ファイバF11とファイバF12との間において第2励起光PL2をファイバF11に結合する。ファイバF11に結合された第2励起光PL2は、第2レーザファイバ434に入射し、第2レーザファイバ434においてレーザ光Lの進行方向とは逆方向に進行する。このように、パワーアンプ部430では、後方励起の構成が採用されている。
第2レーザファイバ434は、第2励起光PL2によって励起された状態で、プリアンプ部420で増幅されたレーザ光Lを伝播させることで、レーザ光Lを増幅する。アイソレータ431は、ファイバF7とファイバF8との間において戻り光(プリアンプ部420側に進行する光)を遮断する。バンドパスフィルタ432は、プリアンプ部420で発生したASE(Amplified Spontaneous Emission)光を除去する。クラッドモードストリッパ433は、ファイバF10と第2レーザファイバ434との間において、第2レーザファイバ434で吸収されなかった第2励起光PL2を除去する。
レーザ光出射部440は、コリメータ441と、アイソレータ(光学部品)442と、を有している。コリメータ441は、ファイバF13の出射端から出射されたレーザ光Lを平行化する。アイソレータ442は、戻り光(レーザ発振器400内に進行する光)を遮断する。アイソレータ442の出射端は、パワーアンプ部430で増幅されたレーザ光Lを外部に出射する出射端443を構成している。
レーザ発振器400では、種光出射部410から出射されたレーザ光Lの出力、プリアンプ部420で増幅されたレーザ光Lの出力、パワーアンプ部430で増幅されたレーザ光Lの出力、及びパワーアンプ部430での戻り光の出力がモニタされる。また、第1励起LD424から出射された第1励起光PL1の出力、及び複数の第2励起LD435から出射された第2励起光PL2の出力がモニタされる。
種光出射部410から出射されたレーザ光Lの一部は、ファイバF4とファイバF5との間に設けられたカプラ451を介してファイバF31に入射し、ファイバF31によってPD(受光素子)452に伝播させられてPD452で検出される。種光出射部410から出射されたレーザ光Lの出力は、PD452から出力される信号に基づいてモニタされる。
プリアンプ部420で増幅されたレーザ光Lの一部は、ファイバF9とファイバF10との間に設けられたカプラ454を介してファイバF32に入射し、ファイバF32によってPD(受光素子)455に伝播させられてPD455で検出される。プリアンプ部420で増幅されたレーザ光Lの出力は、PD455から出力される信号に基づいてモニタされる。
パワーアンプ部430で増幅されたレーザ光Lの一部は、ファイバF12とファイバF13との間に設けられたカプラ458を介してファイバF34に入射し、ファイバF34によってPD(受光素子)459に伝播させられてPD459で検出される。パワーアンプ部430で増幅されたレーザ光Lの出力は、PD459から出力される信号に基づいてモニタされる。
パワーアンプ部430の第2レーザファイバ434で戻り光(バンドパスフィルタ432側に進行する光)が発生した場合、当該戻り光の一部は、カプラ454を介してファイバF33に入射し、ファイバF33によってPD456に伝播させられてPD456で検出される。パワーアンプ部430での戻り光の出力は、PD456から出力される信号に基づいてモニタされる。
第1励起LD424から出射された第1励起光PL1の一部は、ファイバF6と第1レーザファイバ423との接合部分に配置されたPD453に入射してPD453で検出される。第1励起LD424から出射された第1励起光PL1の出力は、PD453から出力される信号に基づいてモニタされる。
複数の第2励起LD435から出射された第2励起光PL2の一部は、ファイバF11と第2レーザファイバ434との接合部分に配置されたPD457に入射してPD457で検出される。複数の第2励起LD435から出射された第2励起光PL2の出力は、PD457から出力される信号に基づいてモニタされる。
図14に示されるように、レーザ発振器400は、第1支持プレート461と、第2支持プレート462と、筐体470と、を備えている。筐体470には、取付ベース471が設けられている。筐体470は、第1部分470aと、第2部分470bと、を有している。第2部分470bは、第1部分470aに対して着脱可能である。一例として、第1部分470aは、直方体状の形状を呈しており、取付ベース471は、第1部分470aの下壁によって構成されている。第2部分470bは、直方体状の形状を呈しており、第1部分470aの上面に取り付けられている。
第1部分470aは、プリアンプ部420、パワーアンプ部430及びレーザ光出射部440を収容している。第2部分470bは、種光出射部410を収容している。種光出射部410からプリアンプ部420にレーザ光Lを伝播させるファイバケーブルFC1は、第1部分470aと第2部分470bとの間に掛け渡されている(図9参照)。
第1支持プレート461及び第2支持プレート462は、第1部分470aに収容されており、互いに対面するように(すなわち、第1支持プレート461及び第2支持プレート462のそれぞれの厚さ方向が互いに一致し且つ当該厚さ方向から見た場合に第1支持プレート461及び第2支持プレート462が互いに重なるように)配置されている。第2支持プレート462は、取付ベース471に対して上側に配置されている。第1支持プレート461は、第2支持プレート462に対して上側に配置されている。より具体的には、取付ベース471の表面471aと第2支持プレート462の裏面462bとが空間を介して互いに対向しており、第2支持プレート462の表面462aと第1支持プレート461の裏面461bとが空間を介して互いに対向している。第1支持プレート461及び第2支持プレート462は、それぞれ、支柱(図示省略)等によって支持されている。
レーザ発振器400は、取付ベース471の裏面471bが取付プレート301の主面301aに接触し且つレーザ光出射部440の出射端443がミラー303に向いた状態で、取付ベース471を介して取付プレート301に取り付けられている(図9参照)。つまり、レーザ発振器400は、取付プレート301(延いては装置フレーム210)に対して着脱可能である。
図15に示されるように(図13参照)、第1支持プレート461の表面461aには、ファイバコネクタ401、アイソレータ421、カプラ451、クラッドモードストリッパ422、第1レーザファイバ423、PD453、コンバイナ425、アイソレータ431、バンドパスフィルタ432及びカプラ454が取り付けられている。ファイバコネクタ401は、ファイバケーブルFC1とファイバF3とを互いに接続する。第1レーザファイバ423は、ファイバリール(図示省略)によって保持されている。第2レーザファイバ434にレーザ光Lを伝播させるファイバF10は、第1支持プレート461に形成された切欠き461cを介して、第1支持プレート461の表面461aから第2支持プレート462の表面462aに延在している。
図16及び図17に示されるように、第2支持プレート462の表面462a、裏面462b及び側面462cは、パワーアンプ部430の第2レーザファイバ434及び複数の第2励起LD435、並びに、プリアンプ部420の第1励起LD424等の配置面である。なお、図17は、第2支持プレート462の裏面462b側の構成を第2支持プレート462の表面462a側から見た図であり、図17では、第2支持プレート462の表面462a側の構成が省略されている。
図16に示されるように(図13参照)、第2支持プレート462の表面462aには、クラッドモードストリッパ433、第2レーザファイバ434、PD457、コンバイナ436、カプラ458及びPD459が取り付けられている。第2レーザファイバ434は、ファイバリール(図示省略)によって保持されている。レーザ光出射部440にレーザ光Lを伝播させるファイバF13は、第2支持プレート462に形成された切欠き462eを介して、第2支持プレート462の表面462aから取付ベース471の表面471aに延在している。
第2支持プレート462の側面462cには、PD452,455,456及び第1励起LD424が取り付けられている。PD452にレーザ光Lの一部を伝播させるファイバF31、PD455にレーザ光Lの一部を伝播させるファイバF32、及びPD456に戻り光を伝播させるファイバF33は、第1支持プレート461と筐体470の第1部分470aの内面と間に形成された隙間を介して、第1支持プレート461の表面461aから第2支持プレート462の側面462cに延在している。コンバイナ425に第1励起光PL1を伝播させるファイバF21は、第1支持プレート461と筐体470の第1部分470aの内面と間に形成された隙間を介して、第2支持プレート462の側面462cから第1支持プレート461の表面461aに延在している。
図17に示されるように、第2支持プレート462の裏面462bには、複数の第2励起LD435が取り付けられている。コンバイナ436に第2励起光PL2を伝播させるファイバF22は、第2支持プレート462に形成された切欠き462dを介して、第2支持プレート462の裏面462bから第2支持プレート462の表面462aに延在している。
図16及び図17に示されるように、第2支持プレート462には、配管462fが埋設されている。配管462fには、冷却水(冷媒)Wが循環供給される。これにより、第2支持プレート462は、冷却水Wの流路が設けられた冷却プレートとして機能する。レーザ発振器400では、プリアンプ部420の第1レーザファイバ423が第1支持プレート461に配置されている一方で、パワーアンプ部430の第2レーザファイバ434及び複数の第2励起LD435、並びに、プリアンプ部420の第1励起LD424が第2支持プレート462に配置されている。これにより、パワーアンプ部430の第2レーザファイバ434及び複数の第2励起LD435、並びに、プリアンプ部420の第1励起LD424が冷却される。
図18に示されるように、取付ベース471の表面471aには、支持部材402、コリメータ441及びアイソレータ442が取り付けられている。つまり、レーザ光出射部440は、取付ベース471に配置されている。図19に示されるように、取付ベース471の裏面471bには、凹部471cが形成されている。凹部471cの内面には、PD452,455,456,457,459から出力される信号の処理基板403,404、及びメモリ基板405が取り付けられている。なお、図19は、取付ベース471の裏面471b側の構成を取付ベース471の表面471a側から見た図であり、図19では、取付ベース471の表面471a側の構成が省略されている。
図20に示されるように、支持部材402は、支持面402aを有している。支持面402aには、パワーアンプ部430からレーザ光出射部440にレーザ光Lを伝播させるファイバF13が配置されている。より具体的には、支持面402aは、第2支持プレート462に形成された切欠き462eの直下から(図16及び図18参照)コリメータ441の入射端に向かって延在しており、コリメータ441に近づくほど下側に位置するように傾斜している。
[第1実施形態の作用及び効果]
レーザ発振器400は、種光であるレーザ光Lを出射する種光LD411を有する種光出射部410と、種光出射部410から出射されたレーザ光Lを伝播させる第1レーザファイバ423、及び第1レーザファイバ423を励起するための第1励起光PL1を出射する第1励起LD424を有するプリアンプ部420と、プリアンプ部420で増幅されたレーザ光Lを伝播させる第2レーザファイバ434、及び第2レーザファイバ434を励起するための第2励起光PL2を出射する第2励起LD435を有するパワーアンプ部430と、パワーアンプ部430で増幅されたレーザ光Lを外部に出射する出射端443が設けられたアイソレータ442を有するレーザ光出射部440と、第1レーザファイバ423が配置された第1支持プレート461と、第2レーザファイバ434、第1励起LD424及び第2励起LD435が配置され、冷却水Wの流路が設けられた第2支持プレート462と、を備える。第1支持プレート461及び第2支持プレート462は、互いに対面するように(すなわち、第1支持プレート461及び第2支持プレート462のそれぞれの厚さ方向が互いに一致し且つ当該厚さ方向から見た場合に第1支持プレート461及び第2支持プレート462が互いに重なるように)配置されている。
レーザ発振器400では、熱が発生し易い第2レーザファイバ434の冷却に加え、熱が発生し易い第1励起LD424及び第2励起LD435の冷却が、冷却水Wの流路が設けられた第2支持プレート462によって実施される。しかも、第1レーザファイバ423が配置された第1支持プレート461が、第2支持プレート462と対面するように配置されている。これにより、レーザ増幅部であるプリアンプ部420及びパワーアンプ部430の小型化を図ることができる。
レーザ発振器400では、第2支持プレート462の表面462a、裏面462b及び側面462cが、第2レーザファイバ434、第1励起LD424及び第2励起LD435等の配置面となっている。これにより、冷却プレートとして機能する第2支持プレート462の表面462a、裏面462b及び側面462cを有効に利用して、第2支持プレート462の大型化を確実に抑制することができる。
レーザ発振器400では、種光出射部410、プリアンプ部420、パワーアンプ部430、レーザ光出射部440、第1支持プレート461及び第2支持プレート462が、筐体470に収容されている。これにより、レーザ発振器400の取扱いが容易となる。
レーザ発振器400では、レーザ光Lの一部を検出する各PD452,455,459が、冷却プレートとして機能する第2支持プレート462に配置されている。これにより、各PD452,455,459を適切な温度で動作させることができる。特に、各PD452,455,459にSi(シリコン)フォトダイオードが用いられ、検出対象であるレーザ光Lの波長が1098nmである場合には、各PD452,455,459が第2支持プレート462に配置されることは、1098nmの波長に対して安定した感度を維持する上で重要である。なお、PD453にSiフォトダイオードが用いられ、検出対象である第1励起光PL1の波長が915nmである場合には、PD453の温度が多少上昇しても、915nmの波長に対して安定した感度が維持されるため、PD453を第2支持プレート462に配置する必要性は低い。
レーザ加工装置200は、レーザ増幅部の小型化を図り得るレーザ発振器400を備えている。これにより、レーザ加工装置200の大型化を抑制することができる。
また、レーザ発振器400は、種光であるレーザ光Lを出射する種光LD411を有する種光出射部410と、種光出射部410から出射されたレーザ光Lを伝播させる第1レーザファイバ423、及び第1レーザファイバ423を励起するための第1励起光PL1を出射する第1励起LD424を有するプリアンプ部420と、プリアンプ部420で増幅されたレーザ光Lを伝播させる第2レーザファイバ434、及び第2レーザファイバ434を励起するための第2励起光PL2を出射する第2励起LD435を有するパワーアンプ部430と、パワーアンプ部430で増幅されたレーザ光Lを外部に出射する出射端443が設けられたアイソレータ442を有するレーザ光出射部440と、取付ベース471を有し、種光出射部410、プリアンプ部420、パワーアンプ部430及びレーザ光出射部440を収容する筐体470と、を備える。出射端443が設けられたアイソレータ442は、取付ベース471に配置されている。
レーザ発振器400では、種光出射部410、プリアンプ部420、パワーアンプ部430及びレーザ光出射部440が筐体470に収容されている。したがって、レーザ発振器400の取扱いが容易である。また、筐体470が有する取付ベース471に、出射端443が設けられたアイソレータ442が配置されている。これにより、例えばレーザ発振器400が取付ベース471を介してレーザ加工装置200に搭載された場合に、レーザ加工装置200で振動が発生したり、レーザ加工装置200の使用環境温度の変化等に起因して筐体470等が変形したりしても、出射端443の位置及び角度がずれ難い。したがって、レーザ発振器400から外部に出射されるレーザ光Lの光軸の位置及び角度が安定する。特に加工対象物1の内部に改質領域を形成するような場合には、アブレーション加工、溶接加工等を行うような場合に比べ、シビアなレーザ光Lの照射条件が要求されることから、レーザ発振器400から外部に出射されるレーザ光Lの光軸の位置及び角度が安定していることが望ましい。
レーザ発振器400では、筐体470に収容された第1支持プレート461に、少なくとも第1レーザファイバ423が配置されており、筐体470に収容された第2支持プレート462に、少なくとも第2レーザファイバ434が配置されている。これにより、筐体470内において、第1レーザファイバ423及び第2レーザファイバ434を適切に支持することができる。
レーザ発振器400では、第2支持プレート462に、冷却水Wの流路が設けられており、第1励起LD424及び第2励起LD435が、第2支持プレート462に配置されている。これにより、熱が発生し易い第2レーザファイバ434に加え、熱が発生し易い第1励起LD424及び第2励起LD435を、小さなスペースで効率良く冷却することができる。
レーザ発振器400では、第2支持プレート462が、取付ベース471に対して上側に配置されており、第1支持プレート461が、第2支持プレート462に対して上側に配置されている。これにより、プリアンプ部420からパワーアンプ部430を介してレーザ光出射部440に至るレーザ光Lの光路の配置を単純化しつつ、レーザ発振器400のフットプリントを小さくすることができる。
レーザ発振器400では、筐体470が、プリアンプ部420、パワーアンプ部430及びレーザ光出射部440を収容する第1部分470aと、第1部分470aに対して着脱可能であり、種光出射部410を収容する第2部分470bと、を有している。これにより、第1部分470aに対して第2部分470bを着脱することで、種光出射部410を容易にメンテナンスすることができる。
レーザ発振器400では、パワーアンプ部430からレーザ光出射部440にレーザ光Lを伝播させるファイバF13が、取付ベース471に設けられた支持部材402が有する支持面402aに配置されている。これにより、増幅されたレーザ光Lを伝播させるファイバF13を適切に(必要な曲げ径を維持しつつ)支持することができるので、ファイバF13からレーザ光Lが漏れるような事態を防止することができる。
レーザ加工装置200では、レーザ集光部500が移動可能となるように装置フレーム210に取り付けられているため、レーザ発振器400を移動させる必要がない。したがって、レーザ発振器400から外部に出射されるレーザ光Lの光軸の位置及び角度の安定性をより確実に維持することができ、シビアな照射条件で加工対象物1にレーザ光Lを照射することができる。
また、レーザ出力部300では、レーザ発振器400、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340並びにミラーユニット360が取付プレート301の主面301aに配置されている。これにより、レーザ加工装置200の装置フレーム210に対して取付プレート301を着脱することで、レーザ加工装置200に対してレーザ出力部300を容易に着脱することができる。また、レーザ発振器400からλ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340を介してミラーユニット360に至るレーザ光Lの光路が、取付プレート301の主面301aに平行な平面に沿うように設定されており、ミラーユニット360が、当該平面と交差する方向に沿ってレーザ光Lを外部に出射する。これにより、例えばレーザ光Lの出射方向が鉛直方向に沿っている場合、レーザ出力部300が低背化されるので、レーザ加工装置200に対してレーザ出力部300を容易に着脱することができる。更に、ミラーユニット360が、レーザ光Lの光軸を調整するためのミラー362,363を有している。これにより、レーザ加工装置200の装置フレーム210にレーザ出力部300を取り付けた際に、レーザ集光部500に入射するレーザ光Lの光軸の位置及び角度を調整することができる。以上により、レーザ出力部300は、レーザ加工装置200に対して容易に着脱することができる。
なお、レーザ光出射部440において出射端443が設けられた光学部品が取付ベース471に配置されていれば、例えばレーザ発振器400が取付ベース471を介してレーザ加工装置200に搭載された場合に、レーザ加工装置200で振動が発生したり、レーザ加工装置200の使用環境温度の変化等に起因して筐体470等が変形したりしても、出射端443の位置及び角度がずれ難い。したがって、レーザ光出射部440において出射端443が設けられた光学部品が取付ベース471に配置されていれば、レーザ発振器400から外部に出射されるレーザ光Lの光軸の位置及び角度が安定する。一例として、図21の(a)に示されるように、レーザ光出射部440上においてプリアンプ部420及びパワーアンプ部430が水平方向に沿って並設されていても、或いは、図21の(b)及び(c)に示されるように、レーザ光出射部440、プリアンプ部420及びパワーアンプ部430が水平方向に沿って並設されていても、レーザ光出射部440において出射端443が設けられた光学部品が取付ベース471に配置されていれば、レーザ発振器400から外部に出射されるレーザ光Lの光軸の位置及び角度が安定する。
[第2実施形態のレーザ発振器]
第2実施形態のレーザ発振器400は、第1筐体470と、第2筐体480と、ファイバケーブルFC2と、を備える点で、上述した第1実施形態のレーザ発振器400と主に相違している。図22に示されるように、第1筐体470は、種光出射部410、プリアンプ部420、パワーアンプ部430、第1支持プレート461及び第2支持プレート462を収容している。第2筐体480は、レーザ光出射部440を収容している。ファイバケーブルFC2は、第1筐体470と第2筐体480との間に掛け渡されており、パワーアンプ部430からレーザ光出射部440にレーザ光Lを伝播させる。
図23に示されるように、PD452,455,456,457,459から出力される信号の処理基板403,404、及びメモリ基板405は、第1支持プレート461の裏面461bに取り付けられている。第1支持プレート461の表面461a側の構成は、上述した第1実施形態のレーザ発振器400と同様である。なお、図23は、第1支持プレート461の裏面461b側の構成を第1支持プレート461の表面461a側から見た図であり、図23では、第1支持プレート461の表面461a側の構成が省略されている。
図24に示されるように、パワーアンプ部430からレーザ光出射部440にレーザ光Lを伝播させるファイバF13は、ファイバケーブルFC2に接続されている。第2支持プレート462の表面462a側の構成及び裏面462b側の構成は、上述した第1実施形態のレーザ発振器400と同様である。
図25に示されるように、第2筐体480が有する取付ベース481の表面481aには、コリメータ441及びアイソレータ442が取り付けられている。ファイバケーブルFC2によって伝播させられたレーザ光Lは、ファイバF14によってコリメータ441に伝播させられる。
以上のように構成されたレーザ発振器400によれば、レーザ増幅部であるプリアンプ部420及びパワーアンプ部430に対するレーザ光出射部440の配置の自由度が向上する。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、プリアンプ部420に、後方励起の構成が採用されていたが、第1レーザファイバ423において第1励起光PL1がレーザ光Lの進行方向と同方向に進行する前方励起の構成が採用されてもよい。同様に、上記実施形態では、パワーアンプ部430に、後方励起の構成が採用されていたが、第2レーザファイバ434において第2励起光PL2がレーザ光Lの進行方向と同方向に進行する前方励起の構成が採用されてもよい。
また、本発明のレーザ発振器は、加工対象物1の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置200に限定されず、アブレーション加工、溶接加工等、他のレーザ加工を実施するレーザ加工装置に搭載することも可能である。
また、レーザ加工装置200では、偏光板ユニット340に、偏光板342以外の偏光部材が設けられてもよい。一例として、偏光板342及び光路補正板343に替えて、キューブ状の偏光部材が用いられてもよい。キューブ状の偏光部材とは、直方体状の形状を呈する部材であって、当該部材において互いに対向する側面が光入射面及び光出射面とされ且つその間に偏光板の機能を有する層が設けられた部材である。
また、レーザ加工装置200では、λ/2波長板332が回転する軸線と、偏光板342が回転する軸線とは、互いに一致していなくてもよい。
また、レーザ加工装置200では、レーザ出力部300が、レーザ出力部300から出射されるレーザ光Lの光軸を調整するためのミラー362,363を有していたが、レーザ出力部300から出射されるレーザ光Lの光軸を調整するためのミラーを少なくとも1つ有していればよい。