以下、添付図面にしたがって本発明の表面形状測定装置及びそのスティッチング測定方法の好ましい実施の形態について説明する。
本発明は以下の好ましい実施の形態により説明される。本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
[表面形状測定装置]
図1は、本発明の実施の形態の表面形状測定装置の全体構成を示した構成図である。
図1における表面形状測定装置1は、マイケルソン型の干渉計を用いて測定対象物Pの被測定面Sの表面形状等を非接触により3次元測定する所謂、マイケルソン型の走査型白色干渉計(顕微鏡)であり、測定対象物Pの干渉縞(干渉画像)を取得する光学部2と、測定対象物Pが載置される支持部としてのステージ10と、表面形状測定装置1の各種制御や光学部2により取得された干渉縞像に基づいて各種演算処理を行うパーソナルコンピュータ等の演算処理装置からなる処理部18等を備える。
なお、本実施の形態では、マイケルソン型の走査型白色干渉計の例で説明するが、周知のミロー型の走査型白色干渉計であってもよい。また、測定対象物Pが配置される測定空間において、互いに直交する水平方向の2つの座標軸をx軸(紙面に平行する軸)とy軸(紙面に直交する軸)とし、x軸及びy軸に直交する鉛直方向の座標軸をz軸とする。z軸は後記する測定光軸Z−0に平行である。そして、処理部18は、被測定面S上の点をx軸のx座標、y軸のy座標、z軸のz座標で示すxyz座標をもっており、被測定面Sの3次元位置を得ることができる。
ステージ10は、x軸及びy軸に略平行する平坦面であって測定対象物Pを載置するステージ面10Sを有する。また、ステージ10は、ステージ10を光学部2に対して相対的に被測定面Sの面内方向に水平移動させる面内方向移動手段35と、を備えている。
面内方向移動手段35は、xアクチュエータ34とyアクチュエータ36とで構成される。そして、ステージ10は、xアクチュエータ34の駆動によりx軸方向に水平移動し、yアクチュエータ36の駆動によりy軸方向に水平移動する。このステージ10のx軸方向及びy軸方向への移動により、ステージ10に載置された測定対象物Pの被測定面Sを光学部2に対して移動させる。
なお、xアクチュエータ34及びyアクチュエータ36のように本明細書においてアクチュエータという場合には、ピエゾアクチュエータやモータなどの任意の駆動装置を示す。
また、ステージ面10Sに対向する位置、即ち、ステージ10の上側には、不図示の筐体により一体的に収容保持された光学部2が配置される。
光学部2は、x軸に平行な光軸Z−1を有する光源部12と、z軸に平行な光軸(測定光軸Z−0)を有する干渉部14と、撮影部16とを有する。光源部12の光軸Z−1は、干渉部14及び撮影部16の測定光軸Z−0に対して直交し、干渉部14と撮影部16との間において測定光軸Z−0と交差する。なお、光軸Z−1は、必ずしもx軸と平行でなくてもよい。
光源部12は、測定対象物Pを照明する照明光として波長幅が広い白色光(可干渉性の少ない低コヒーレンス光)を出射する光源40と、光源40から拡散して出射された照明光を略平行な光束に変換するコレクタレンズ42とを有する。光源40及びコレクタレンズ42の各々の中心とする軸は光源部12の光軸Z−1として同軸上に配置される。
また、光源40としては、発光ダイオード、半導体レーザー、ハロゲンランプ、高輝度放電ランプなど、任意の種類の発光体を用いることができる。
この光源部12から出射された照明光は、干渉部14と撮影部16との間に配置され、光軸Z−1と測定光軸Z−0とが交差する位置に配置されたハーフミラー等のビームスプリッタ44に入射する。そして、ビームスプリッタ44(ビームスプリッタ44の平坦な光分割面(反射面))で反射した照明光が光軸Z−0に沿って進行して干渉部14に入射する。
干渉部14は、マイケルソン型干渉計により構成され、光源部12から入射した照明光を測定光と参照光とに分割する。そして、測定光を測定対象物Pに照射するとともに参照光を参照ミラー52に照射し、測定対象物Pから戻る測定光と参照ミラー52から戻る参照光とを干渉させた干渉光を生成する。
干渉部14は、集光作用を有する対物レンズ50と、光を反射する参照面であって平坦な反射面を有する参照ミラー52と、光を分割する平坦な光分割面を有するビームスプリッタ54を有する。対物レンズ50、参照ミラー52、及びビームスプリッタ54の各々の中心とする軸は干渉部14の測定光軸Z−0として同軸上に配置される。参照ミラー52の反射面はビームスプリッタ54の側方位置に、測定光軸Z−0と平行に配置される。
光源部12から干渉部14に入射した照明光は、対物レンズ50により集光作用を受けた後、ビームスプリッタ54に入射する。
ビームスプリッタ54は、例えばハーフミラーであり、ビームスプリッタ54に入射した照明光は、ビームスプリッタ54を透過する測定光と、ビームスプリッタ54の光分割面で反射する参照光とに分割される。
ビームスプリッタ54を透過した測定光は、測定対象物Pの被測定面Sに照射された後、被測定面Sから干渉部14へと戻り、再度、ビームスプリッタ54に入射する。そして、ビームスプリッタ54を透過した測定光が対物レンズ50に入射する。
一方、ビームスプリッタ54で反射した参照光は、参照ミラー52の光反射面で反射した後、再度、ビームスプリッタ54に入射する。そして、ビームスプリッタ54で反射した参照光が対物レンズ50に入射する。
これにより、干渉部14から測定対象物Pの被測定面Sに照射されて干渉部14に戻る測定光と、参照ミラー52で反射した参照光とが重ね合わされた干渉光が生成され、その干渉光が対物レンズ50により集光作用を受けた後、干渉部14から撮影部16に向けて出射される。
また、照明光が測定光と参照光とに分割された後、測定光と参照光とが重ね合わされるまでの測定光と参照光の各々が通過した光路の光学的距離を、測定光の光路長及び参照光の光路長といい、それらの差を測定光と参照光の光路長差というものとする。
干渉部14を測定光の測定光軸Z−0(z軸)に沿って垂直方向に測定走査することで測定光の光路長を変化させる走査手段としての干渉部アクチュエータ56を有する。そして、干渉部アクチュエータ56の駆動により干渉部14がz軸方向に移動する。これにより、対物レンズ50の焦点面の位置(高さ)がz軸方向に移動すると共に、被測定面Sとビームスプリッタ54との距離が変化することで測定光の光路長が変化し、測定光と参照光との光路長差が変化する。
撮影部16は、測定対象物Pの被測定面Sの各点に照射された測定光と、参照光とによる干渉光の輝度情報から干渉縞を取得する干渉縞取得部であり、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラに相当し、CCD型の撮像素子60と、結像レンズ62とを有する。撮像素子60と結像レンズ62の各々の中心とする軸は撮影部16の測定光軸Z−0として同軸上に配置される。なお、撮像素子60は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の固体撮像素子等、任意の撮像手段を用いることができる。
干渉部14から出射された干渉光は、上述のビームスプリッタ44に入射し、ビームスプリッタ44を透過した干渉光が撮影部16に入射する。
撮影部16に入射した干渉光は、結像レンズ62により撮像素子60の撮像面60Sに干渉縞像を結像する。ここで、結像レンズ62は、測定対象物Pの被測定面Sの測定光軸Z−0周辺の領域に対する干渉縞像を高倍率に拡大して撮像素子60の撮像面60Sに結像する。
また、結像レンズ62は、干渉部14の対物レンズ50の焦点面上における点を、撮像素子60の撮像面上の像点として結像する。即ち、撮影部16は、対物レンズ50の焦点面の位置にピントが合うように(合焦するように)設計されている。
撮像素子60の撮像面60Sに結像された干渉縞像は、撮像素子60により電気信号に変換されて干渉縞として取得される。そして、その干渉縞は、処理部18に与えられる。
以上のように光源部12、干渉部14、及び撮影部16等により構成される光学部2は、全体が一体的としてz軸方向に直進移動可能に設けられる。例えば、光学部2は、z軸方向に沿って立設された不図示のz軸ガイド部に直進移動可能に支持される。そして、zアクチュエータ70の駆動により光学部2全体がZ軸方向に直進移動する。これにより、干渉部14をz軸方向に移動させる場合よりも、撮影部16のピント位置をz軸方向に大きく移動させることができ、例えば、測定対象物Pの厚さ等に応じて撮影部16のピント位置を適切な位置に調整することができる。
処理部18は、測定対象物Pの被測定面Sの表面形状を測定する際に、干渉部アクチュエータ56を制御して光学部2の干渉部14をz軸方向に移動させながら撮影部16の撮像素子60から干渉縞を順次取得する。そして、取得した干渉縞に基づいて被測定面Sの3次元形状データを被測定面Sの表面形状を示すデータとして取得する。
ここで、処理部18が干渉縞に基づいて被測定面Sの3次元形状データを取得する処理について説明する。
撮影部16の撮像素子60は、x軸及びy軸からなるxy平面(水平面)に沿って2次元的に配列された多数の受光素子(画素)から構成されている。そして、各画素において受光される干渉縞の輝度値、即ち、撮像素子60により取得される干渉縞の各画素の輝度値は、各画素に対応する被測定面Sの各点で反射した測定光と参照光との光路長差に応じた干渉光の強度(輝度情報)を示す。
ここで、図2に示すように、撮像素子60の撮像面60Sのxy座標上の干渉縞におけるm列目、n行目の画素を(m,n)を表すものとする。そして、画素(m,n)のx軸方向に関する位置(以下、x軸方向に関する位置を「x位置」という)を示すx座標値をx(m,n)と表するものとする。そして、y軸方向に関する位置(以下、y軸方向に関する位置「y位置」という)を示すy座標値をy(m,n)と表すものとする。
また、画素(m,n)に対応する測定対象物Pの被測定面S上の点のx位置を示すx座標値をX(m,n)と表し、y位置を示すy座標値をY(m,n)と表すものとし、その点をxy座標値により(X(m,n),Y(m,n))と表すものとする。なお、画素(m,n)に対応する被測定面S上の点とは、ピントが合っている状態において画素(m,n)の位置に像点が結像される被測定面S上の点を意味する。
このとき、撮像素子60により取得される干渉縞の画素(m,n)の輝度値は、画素(m,n)に対応する被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))に照射された測定光と参照光との光路長差に応じた大きさを示す。
即ち、図1の干渉部アクチュエータ56により干渉部14をz軸方向に測定走査させて光学部2(撮影部16)に対する干渉部14の相対的なz軸方向の位置(以下、「z位置」という)を変位させると、撮影部16のピント位置(対物レンズ50の焦点面)もz軸方向に移動し、ピント位置も干渉部14と同じ変位量で変位する。また、ピント位置が変位すると、被測定面Sの各点に照射される測定光の光路長も変化する。
そして、干渉部14をz軸方向に移動させてピント位置を変位させながら、即ち、測定光の光路長を変化させながら、撮像素子60から干渉縞を順次取得して干渉縞の任意の画素(m,n)の輝度値を検出する。
ここで、処理部18は、干渉部14の所定の基準位置からの変位量(干渉部14のz位置)を、ポテンショメータやエンコーダなどの不図示の位置検出手段からの検出信号により検出することができる。または、位置検出手段を使用することなく干渉部14のz位置を制御する場合、例えば、干渉部アクチュエータ56に与える駆動信号により一定変位量ずつ干渉部14を移動させる場合には、その総変位量により検出することができる。
そして、干渉部14が基準位置のときのピント位置のz位置を測定空間におけるz座標の基準位置(原点位置)として、かつ、干渉部14の基準位置からの変位量をピント位置のz座標値として取得することができる。なお、z座標値は、原点位置よりも高い位置(撮影部16に近づく位置)を正側、低い位置(ステージ面10Sに近づく位置)を負側とする。また、干渉部14の基準位置、即ち、z座標の原点位置は任意のz位置に設定、変更することができる。
図3の(A)〜(C)は、干渉部14を測定対象物Pの被測定面Sに近接した位置からz軸方向に上昇させながら撮影部16の撮像素子60から画像を取得したときの干渉部14のz位置と輝度値との関係を示した図である。
図3の(A)のように、測定光の光路長L1が参照光の光路長L2よりも小さいと干渉は小さく、輝度値は略一定となる。そして、図3の(B)のように、測定光の光路長L1と参照光の光路長L2とが同じ、即ち光路長差が0となる場合に干渉が大きくなり、最も大きな輝度値を示す。さらに、図3の(C)のように、測定光の光路長L1が参照光の光路長L2よりも大きいと再び干渉は小さくなり、輝度値は略一定となる。これにより、図3の(D)に示す干渉縞曲線Qに沿った輝度値が得られる。
即ち、任意の画素(m,n)における干渉縞曲線Qは、その画素(m,n)に対応する被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))に照射された測定光と参照光との光路長差が所定値より大きい場合には略一定の輝度値を示し、光路長差がその所定値より小さいときには、光路長差が減少するにつれて輝度値が振動すると共にその振幅が大きくなる。
したがって、図3(D)に示すように、干渉縞曲線Qは、測定光と参照光との光路長が一致したときに(光路長差が0のときに)、最大値を示すと共に、その干渉縞曲線Qの包絡線における最大値を示す。
また、被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))に照射された測定光と参照光との光路長は、撮影部16のピント位置が被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))のz位置に一致したときに一致する。
したがって、干渉縞曲線Qが最大値を示すとき(又は干渉縞曲線Qの包絡線が最大値を示すとき)のピント位置は、被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))のz位置に一致しており、そのときのピント位置のz座標値は、被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))のz座標値を示す。
以上のことから、処理部18は、干渉部アクチュエータ56により干渉部14をz軸方向に移動させてピント位置をz軸方向に移動させながら(測定光の光路長を変化させながら)、撮像素子60から干渉縞を順次取得し、各画素(m,n)の輝度値をピント位置のz座標値に対応付けて取得する。即ち、ピント位置をz軸方向に走査しながら干渉縞の各画素(m,n)の輝度値を取得する。そして、各画素(m,n)について、図3(D)のような干渉縞曲線Qの輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値(干渉縞位置)を、各画素(m,n)に対応する被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))のz座標値Z(m,n)として検出する。
なお、Z(m,n)は、画素(m,n)に対応する被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))のz座標値を示す。
また、干渉縞曲線Qの輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を検出する方法は周知であり、どのような方法を採用してもよい。例えば、ピント位置の微小間隔ごとのz座標値において干渉縞を取得することで、各画素(m,n)について、図3(D)のような干渉縞曲線Qを実際に描画することができる程度に輝度値を取得することができる。そして、取得した輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を検出することで、干渉縞曲線Qの輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を検出することができる。
または、ピント位置の各z座標値において取得した輝度値に基づいて最小二乗法等により干渉縞曲線Qを推測し、又は、干渉縞曲線Qの包絡線を推測する。そして、その推測した干渉縞曲線Q又は包絡線に基づいて輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を検出することで、干渉縞曲線Qの輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を検出することができる。
以上のようにして、処理部18は、干渉縞(撮像素子60の撮像面60S)の各画素(m,n)に対応する被測定面S上の各点(X(m,n),Y(m,n))のz座標値Z(m,n)を検出することで、被測定面S上の各点(X(m,n),Y(m,n))の相対的な高さを検出することができる。
そして、被測定面S上の各点のX座標値x(m,n)、Y座標値y(m,n)、及びz座標値Z(m,n)を被測定面Sの3次元形状データ(表面形状を示すデータ)として取得することができる。
例えば、図4に示すようにx軸方向に並ぶ3つの画素に対応する被測定面S上の3点におけるz座標値Z1、Z2、Z3が相違する場合に、ピント位置をz軸方向に走査しながら干渉縞のそれらの画素の輝度値を取得する。その結果、それらの画素の各々に関してピント位置がz座標値Z1、Z2、Z3のときに輝度値が最大値を示す干渉縞曲線Q1、Q2、Q3が取得される。したがって、それらの干渉縞曲線Q1、Q2、Q3の輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を検出することで、それらの画素に対応する被測定面S上の3点におけるz座標値Z1、Z2、Z3を検出することができる。このようにして、被測定面Sの3次元形状データを取得することにより、測定対象物Pの表面形状測定を行う。
ところで、上述のように光学部2として垂直走査型の白色干渉計を使用した場合、干渉部14に使用する対物レンズ50の最大撮影面積である測定視野W等の制限により、1回の測定で測定可能な被測定面Sの測定視野に制限がある場合が多い。
このため、図5に示すように、測定対象物Pをx軸方向及びy軸方向に水平移動可能なステージ10上に載置し、測定対象物Pの被測定面Sを一定の割合で測定範囲が重なるように移動させながら複数回測定する。そして、その後でソフトウェア処理等を用いて計算することで複数枚の測定データを接続することにより被測定面Sの表面形状を測定するスティッチング測定を行う。なお、本実施の形態では、被測定面Sを一定の割合で測定範囲が重なるように測定する例で説明するが、重ねない場合もありえる。図5のWは対物レンズ50の測定視野を示しているが、実際には幅がWの正方形の面積である。
しかしながら、被測定面Sが大きなうねり形状(凹凸の高低差が大きな曲がりくねった形状)を有する測定対象物Pを測定する場合、従来技術でも説明したように、干渉部14の走査範囲として、うねり最大高さを包含する必要がある。しかも表面形状を測定する測定時間は走査範囲の大きさに比例する。これにより、従来はうねり最大高さのうねり部分に引っ張られて被測定面Sを複数回測定する測定全体の走査範囲が大きくなり、測定時間が長くなるという問題があった。
そこで、本発明の実施の形態の表面形状測定装置1は、上記の基本構成に加えて、スティッチング測定による表面形状測定を短時間で行うための構成として以下の構成を備えた。
即ち、図1に示すように、主として、概略形状取得手段72と、被測定面分割手段74と、最小走査範囲設定手段76と、測定面形状測定手段77と、データ接続手段78と、を備えた。
概略形状取得手段72は、被測定面Sの概略形状情報を取得するものであり、被測定面Sにおける傾斜状領域D(図6参照)と平坦状領域K(図6参照)とを識別できる程度の比較的低精度のものでよく、高速かつ広範囲で測定が可能であることが優先される。概略形状取得手段72としては、次の3通りのものを採用することが好ましい。
1つ目の概略形状取得手段72は、三角測量方式のレーザー変位計、ステレオカメラ、パターン投影装置、等を別途設ける場合である。図6は三角測量方式のレーザー変位計72Aを被測定面Sに沿って移動させることにより被測定面Sの傾斜状領域Dや平坦状領域Kの概略形状を取得している概念図である。
三角測量方式のレーザー変位計72Aは、測定対象物Pの被測定面Sに照射されたレーザーの拡散反射の一部が受光レンズを通過して受光素子上にスポットを形成し、測定対象物Pまでの距離が変位すると、スポットも移動する。そのスポット位置を検出することにより被測定面Sの概略形状を測定する方法である。反射光のなかの拡散反射光を受光することにより、測定範囲を広くとることができる。
ステレオカメラ72Bは、測定対象物Pの被測定面Sを複数の異なる方向から同時に撮影することにより、その奥行き方向の情報も記録でき、1台で両眼視差を再現し、立体的な空間把握のできる立体写真の撮影が可能である。
図7は2つのカメラ73で測定対象物Pの被測定面Sを撮像している図であり、これにより被測定面Sの概略形状を取得することができる。
図示しないが、パターン投影法は、パターン光を測定対象物Pの被測定面Sに投影し、画像に写ったパターン上の点の三次元座標を求める方法である。そして、パターン上の各点から三角測量の原理で、それらの点に対応する三次元座標で三次元形状データを取得することにより被測定面Sの概略形状を取得することができる。
これらの三角測量方式のレーザー変位計72A、ステレオカメラ72B、パターン投影装置等の概略形状取得手段72は公知のものを使用することができる。
レーザー変位計72A、ステレオカメラ72B、パターン投影装置等の新たに設置が必要な概略形状取得手段72は、図1に示すように例えば光学部2の側方位置に配置される。また、ステージ10を光学部2の下方位置と概略形状取得手段72の下方位置とに往復移動させるステージ移動手段80が設けられる。これにより、概略形状取得手段72によりステージ10上に載置された測定対象物Pの被測定面Sの概略形状が取得されると、ステージ移動手段80によってステージ10が光学部2の下方まで移動する。なお、本実施の形態では、1つのステージ10を光学部2の下方位置と概略形状取得手段72の下方位置とで移動させるようにしたが、概略形状取得手段72のためのステージを別途設け、概略形状取得手段72による概略形状取得が終了したら、ユーザが測定対象物Pをステージ10に載せ変えるようにしてもよい。
2つ目の概略形状取得手段72は、測定対象物PのCAD(computer-aided-design)データを保持する保持手段(図示せず)であり、処理部18の記憶手段を使用することができる。このように、測定対象物PのCADデータを保持する保持手段を概略形状取得手段72として利用すれば、1つ目の概略形状取得手段72のように、概略形状取得手段72を別途設ける必要がない。また、保持手段に保持されたCADデータは既に測定対象物Pの3次元形状を有している。これにより、測定対象物Pの被測定面Sの概略形状を測定する必要もないので、測定対象物の表面形状測定を更に短縮することができる。
3つ目の概略形状取得手段72は、干渉部14の対物レンズ50として広い範囲を高速で測定できる低倍率レンズを用いた白色干渉計で概略形状を事前測定する場合である。この場合は、本実施の形態の表面形状測定装置1の干渉部14に既設の対物レンズ50の他に低倍率レンズを切り替え可能に備えることで構成できる。
そして、図8に示すように、低倍率レンズを有する干渉部14により、被測定面Sの複数の特徴点近傍をサンプリング測定することで、被測定面Sの概略形状を取得することができる。特徴点は例えば被測定面Sの段差エッジ部分等である。
これらの概略形状取得手段72で取得された被測定面Sの概略形状情報は被測定面分割手段74に送られる。
被測定面分割手段74では、概略形状取得手段72により取得した概略形状情報の3次元座標と、ステージ10に載置された測定対象物Pの3次元座標と、を整合する。これにより、測定対象物Pと概略形状情報との位置合わせが行われる。そして、概略形状情報に基づいて被測定面Sを傾斜状領域Dと平坦状領域Kとで構成され1つの面積が測定視野W以下の複数の測定面Nに分割する。
ここで、傾斜状領域D及び平坦状領域Kとは、概略形状情報を表示部20(図1参照)に表示したときに、被測定面S全体の概観として傾斜状に見える領域と平坦状に見える領域を言い、被測定面Sの細かな凹凸を拡大したときの傾斜や平坦は含まない。
また、傾斜状領域Dとは傾斜面及びその近傍領域を言い、傾斜面が1つであることに限らず、傾斜角度の異なる傾斜面が繋がっている場合も含む。平坦状領域Kとは平坦面及びその近傍領域を言い、平坦とは略平坦であればよい。
図9は、被測定面分割手段74、及び詳細を後記する最小走査範囲設定手段76、測定面形状測定手段77、データ接続手段78をパーソナルコンピュータ等の演算処理装置からなる処理部18に搭載した場合である。
なお、被測定面分割手段74、最小走査範囲設定手段76、測定面形状測定手段77及びデータ接続手段78は、処理部18に搭載せずに専用のハードウェアとして構成することもできるが、本実施の形態では、処理部18において実行されるプログラムを用いて構築される。即ち、処理部18のCPU(Central-Processing-Unit)が演算処理装置を構成し、被測定面分割手段74、最小走査範囲設定手段76、測定面形状測定手段77及びデータ接続手段78として機能する。
図9に示すように、処理部18は被測定面分割手段74、最小走査範囲設定手段76、測定面形状測定手段77及びデータ接続手段78を搭載し、概略形状取得手段72からの概略形状情報が処理部18の被測定面分割手段74に入力される。また、概略形状取得手段72における概略形状情報の3次元座標(xyz座標)も処理部18に入力される。
そして、被測定面分割手段74は、概略形状取得手段72による概略形状情報の3次元座標とステージ10に載置された測定対象物Pの3次元座標とを整合し、概略形状情報に基づいて被測定面Sを傾斜状領域Dと平坦状領域Kとで構成され1つの面積が測定視野W以下の複数の測定面Nに分割する。この場合、被測定面Sを一定の割合で測定面Nが重なるように分割する。
被測定面分割手段74は、傾斜状領域Dと平坦状領域Kとの高低差で形成される段差の閾値(以下、段差閾値という)によって識別することが好ましい。
図10に示すように、例えば、うねり形状のうねり最大高さh(測定対象物Pの最大厚みh1-最小厚みh2)が100μmある場合に、段差閾値Rを例えば10μmに設定する。これにより、被測定面分割手段74は、被測定面Sにおいて10μm以上の高低差を有する領域を傾斜状領域Dとして判定し、10μm未満の高低差を有する領域を平坦状領域Kとして判断する。段差閾値Rをどの程度に設定するかは被測定面Sのうねり形状のうねり最大高さh、うねり幅の大きさ、うねり周期等に基づいて決定することができる。
段差閾値Rを幾つにするかは、被測定面分割手段74に予め設定しておいてもよいが、ユーザが入力部22等を利用して被測定面分割手段74に任意に設定することが好ましい。これにより、被測定面Sの表面形状に応じて被測定面Sの分割数を適正に選択することができる。
また、被測定面分割手段74が被測定面Sを傾斜状領域Dと平坦状領域Kとに分割する別の方法としては、表示部20と入力部22とを用いてユーザが被測定面分割手段74に対して分割領域を指定することもできる。即ち、表示部20に表示した概略形状情報をユーザが目視して傾斜状領域Dと平坦状領域Kとに識別し、識別した分割領域の位置座標(xy座標)を入力する。そして、被測定面分割手段74は、ユーザからの指定に基づいて被測定面Sを傾斜状領域Dと平坦状領域Kとに分割する。
なお、被測定面Sを傾斜状領域Dと平坦状領域Kとに分割できれば、上記の分割方法に限定するものではない。
また、処理部18の最小走査範囲設定手段76は、被測定面分割手段74により分割したそれぞれの測定面について測定面に存在する最大高さを測定するのに最小限必要な干渉部14の最小走査範囲を設定する。
図11は、測定対象物の被測定面のうねり形状の一例として、x軸方向のみにうねりを有する場合の斜視図である。また、図12は、図11の被測定面Sを被測定面分割手段74により、x軸方向とy軸方向とに四角形状の16個の測定面N1〜N16に分割し、分割した各測定面Nについて最小走査範囲設定手段76により干渉部14の最小走査範囲Z1〜Z8を設定した説明図である。
図12の(A)は分割した16個の測定面の最小走査範囲を示し、(B)は分割した16個の測定面Nを示す。図12の(B)において、網状部分は測定面N同士の重なり部分を示す。また、図12の(C)は干渉部14の対物レンズ50の測定視野Wを示す。
図12の(B)に示すように、16個の測定面NをN1からN16と名前を付けたとすると、例えば測定面N1及び測定面N9の最小走査範囲はZ1となる。また、測定面N8及び測定面N16の最小走査範囲はZ8となる。測定面N2〜N7及び測定面N10〜N15についても同様に最小測定走査設定Z2〜Z7を設定することができる。
処理部18の測定面形状測定手段77は、ステージ10を面内方向移動手段35により被測定面Sの面内方向に移動させることにより、分割した各測定面Nを最小走査範囲Z1〜Z8に基づいて表面形状を個々に測定して複数の測定データを取得するものである。
即ち、測定面形状測定手段77は、面内方向移動手段35により被測定面Sの面内方向に移動させることにより、16個の測定面N1〜N16ごとに設定した最小走査範囲Z1〜Z8の範囲で干渉部14を垂直方向に測定走査し、各測定面N1〜N16の表面形状を測定する。即ち、処理部18は、例えば最初に測定面N1について最小走査範囲Z1だけ測定走査して測定面N1の表面形状を取得する。次に、測定面N2について最小走査範囲Z2だけ測定走査して測定面N2の表面形状を取得する。これを測定面N16まで繰り返す。
また、データ接続手段78は、16回測定した各測定面Nの測定データを接続する。これにより、被測定面S全体の表面形状を測定することができる。データ接続手段78による各測定面Nの接続方法はソフトウェア処理等の公知の方法を採用することができる。
なお、表面形状測定装置1は、うねり形状を有する測定対象物Pをスティッチング測定方法で表面形状測定する場合に測定時間を短縮するための構成を備えているが、うねり形状の測定対象物Pのみに使用が限定されるものではない。
[スティッチング測定方法]
次に、上記の如く構成した本発明の表面形状測定装置1を使用して、うねり形状の被測定面Sを有する測定対象物Pの表面形状を測定するスティッチング測定方法について説明する。
図13は、測定対象物Pの被測定面Sの表面形状をスティッチング測定方法で測定するステップフローである。説明し易いように本実施の表面形状測定方法では、図11に示すように、x軸方向のみにうねり形状を有し、x軸方向の長さが干渉部14の対物レンズ50の測定視野Wよりも長く、y軸方向の長さが測定視野Wよりも僅かに短い測定対象物Pの例で説明する。
先ず概略形状取得手段72は、測定対象物Pの被測定面Sの概略形状情報を取得する概略形状取得工程を行う(ステップ10)。概略形状取得手段72は、上記した三角測量方式のレーザー変位計、ステレオカメラ、パターン投影装置、CAD(computer-aided-design)データを保持する保持手段、干渉部14の対物レンズとして広視野な低倍率レンズを用いた白色干渉計の何れでもよい。
次に被測定面分割手段74は、概略形状取得手段72による概略形状情報の3次元座標とステージ10に載置された測定対象物Pの3次元座標とを整合し、概略形状情報に基づいて被測定面Sを傾斜状領域Dと平坦状領域Kとで構成され1つの面積が測定視野W以下の複数の測定面に分割する被測定面分割工程を行う(ステップ20)。
次に最小走査範囲設定手段76は、被測定面分割手段74により分割した各測定面Nについて表面形状を測定するのに最小限必要な干渉部14の最小走査範囲Z1〜Z8を設定する走査範囲設定工程を行う。最小限必要な干渉部14の最小走査範囲Z1〜Z8とは、分割された測定面Nの表面形状において最大高さを含む最小限の走査範囲を言う。
光学部2として垂直走査型の白色干渉計を使用した場合、測定時間は干渉部14の走査範囲に比例し、走査範囲Zが大きくなれば測定時間は長くなり、走査範囲Zが小さくなれば測定時間は短くなる。また、測定面Nの面積を小さくすると白色干渉計の処理動作を高速化させることが可能であり、これにより測定時間の短縮を図ることができる。
このことを纏める、図14に示すように、測定面Nの表面形状を測定するための測定時間Tは、測定面Nの面積A(図14の斜線部分)と干渉部14の走査範囲Zとの積(A*Z)で形成される矩形体積M(図14の点線で示す矩形)の大きさに比例する。そして、処理部18がxyz座標から矩形体積Mを算出することで、矩形体積Mの大きさを算出することができる。
したがって、うねり形状を有する被測定面Sの概略形状を取得して表面形状成分を走査範囲Zの大きな傾斜状領域Dと走査範囲Zの小さな平坦状領域Kとに分割すれば、傾斜状領域Dは測定面Nの面積を小さくすることで測定時間を短くでき、平坦状領域Kは走査範囲Zが小さいので測定面Nの面積を大きくしても測定時間が大きくなる影響が小さい。
即ち、被測定面Sの面内方向(水平面方向)における適切な分割による複数の測定面Nの形成と、各測定面Nの形状に応じた適切な走査範囲Zの設定とを組み合わせることにより、スティッチング測定おける測定時間を短縮することができる。
また、被測定面分割手段74は、分割した傾斜状領域D又は平坦状領域Kについて、以下の式1を満足する場合には更にn個の測定面Nに細分割する細分割判断部74A(図1参照)を備えることが好ましい。
T0+a*A*Z>(T0+a*A1*Z1)+(T0+a*A2*Z2)+……+(T0+a*An-1*Zn-1)+(T0+a*An*Zn)……式1
ここで、n:細分割の数
T0:オーバーヘッド時間
a:比例係数
A:細分割前の測定面の面積
A1〜An:細分割後の各測定面の面積
Z:細分割前の測定面の最小走査範囲
Z1〜Zn:細分割後の各測定面の最小走査範囲
これにより、スティッチング測定により被測定面Sの表面形状測定を行う際の測定時間を一層効果的に短縮できる。しかし、式1から分かるように、細分割して測定面Nの数が多くなると、分割のための時間やオーバーヘッド時間T0も増加するため、細分割は2分割又は4分割を選択することが好ましい。
次に、細分割判断部74Aの式1を用いた細分割の一例として、2分割の例で以下に詳しく説明する。
図14は、被測定面Sを傾斜状領域D1、D2,D3と平坦状領域K1、K2との複数の測定面Nに分割した場合において、傾斜状領域D1の測定時間を説明するための図である。
図14において、傾斜状領域D1の測定面Nのx軸方向の長さをXとし、y軸方向の長さをYとしたときの測定面Nの面積をA(図14の斜線部分)とする。このときのz軸方向の最小走査範囲をZとし、測定時間をTとする。また、スティッチング測定による複数回の測定において、各測定時間には測定の前準備時間としてオーバーヘッド時間T0を要するのが通常である。
これにより、測定時間Tは、式2により矩形体積Mを求め、オーバーヘッド時間T0を加えることで算出できる。即ち、細分割判断部74Aでは、xyz座標から矩形体積Mを求め、オーバーヘッド時間T0を加える算出が行われる。
T=T0+a*A*Z……式2
ここで、aは比例係数である。
図15は、図14の傾斜状領域D1の側面図であり、傾斜状領域D1の測定面Nをx軸方向で2分割した場合において、面積がA1の測定面N1と、面積がA2の測定面N2とした図である。なお、図15の側面図には、測定面N1及びN2の面積A1及びA2を示す図(図14の矩形体積Mの底面)は実際には図示されないが、便宜上符号を付している。
そして、測定面N1の最小走査範囲をZ1及び測定時間をT1とし、測定面N2の最小走査範囲をZ2及び測定時間をT2とする。このように2分割した場合の測定時間(T1+T2)は式3により算出することができる。即ち、細分割判断部74Aでは、xyz座標から矩形体積M1及びM2を求め、それぞれにオーバーヘッド時間T0を加える算出が行われる。
T1+T2=(T0+a*A1*Z1)+(T0+a*A2*Z2)…式3
そして、細分割判断部74Aは、式2及び式3の結果から、2分割しない場合の測定時間Tと2分割した場合の測定時間(T1+T2)とを比較し、T>T1+T2の場合には、傾斜状領域Dの測定面Nを更に2分割した方が測定時間の短縮を図ることができると判断する。
また、T>T1+T2から以下の式4が成立する。
T0+a*A*Z>(T0+a*A1*Z1)+(T0+a*A2*Z2)…式4
式4を整理すると、T0<a*A*(2Z-Z1-Z2)…式5となる。
したがって、Z-Z1とZ-Z2との和が大きいときには、傾斜状領域Dの測定面Nを更に2分割した方が測定時間を短縮できることになる。また、傾斜状領域Dの測定面Nを4分の一に分割した方が測定時間を短縮できるか否かも同様にして判断することができる。同様に、平坦状領域Kに段差閾値R未満の小さな段差がある場合に平坦状領域Kを更に細分割すべきか否かも同様に判断することができる。
即ち、被測定面分割手段74によって被測定面Sが傾斜状領域Dと平坦状領域Kとに分割されたあと、細分割判断部74Aは、傾斜状領域D及び/又は平坦状領域を2分割又は4分割し、測定時間の短縮に寄与するかを判断する。
これにより、被測定面Sの面内方向(水平面方向)における適切な分割による複数の測定面Nの形成と、分割した測定面Nの形状に応じた最小走査範囲Zとを適切に組み合わせることができる。
次に、処理部18の最小走査範囲設定手段76は、被測定面分割手段74により分割した各測定面Nについて測定面に存在する最大高さを測定するのに最小限必要な干渉部14の最小走査範囲Zを設定する最小走査範囲設定工程を行う(ステップ30)。
次に処理部18の測定面形状測定手段77は、分割した各測定面Nについて、分割した測定面Nと設定した最小走査範囲Zとに基づいて各測定面Nの表面形状を測定して複数の測定データを取得する測定面形状測定工程を行う(ステップ40)。
次に、処理部18のデータ接続手段78は、取得した複数の測定データを接続するデータ接続工程を行う(ステップ50)。これにより、測定対象物Pの表面形状全体の測定を高速化することができるので、スティッチング測定方法による表面形状測定の測定時間を効果的に短縮することができる。
ここで、図16により、本発明の実施の形態のスティッチング測定方法と、従来のスティッチング測定方法とについて、被測定面Sの分割方法及び分割した測定面の最小走査範囲の設定方法の違いを説明し、この違いによる測定時間を対比する。
なお、測定対象物Pは図11と同様とする。また、図16は図11の側面図であり、測定面の面積Aを示す図は実際には図示されないが、便宜上符号を付している。
図16の(A)は、従来のスティッチング測定方法であり、干渉部14の対物レンズ50の測定視野Wと同じ一定の面積Aの測定面Nに5分割し、被測定面Sのうねり最大高さhと同じ一定の最小走査範囲Zとなるように設定した場合である。この場合の被測定面Sの全体の測定時間TS1は次の式6で表すことができる。
TS1=(T0+a*A*Z)*5…式6
図16の(B)は、従来のスティッチング測定方法の別態様であり、測定視野Wと同じ面積Aの4個の測定面Nと測定視野Wの半分の面積(A/2)の1個の測定面Nとの合計5個の測定面Nに分割し、各測定面Nの最小走査範囲がZ1〜Z5となるように設定した場合である。この場合の被測定面の全体の測定時間TS2は、次の式7で表すことができる。
TS2=(T0+a*A*Z1)+(T0+a*A*Z2)+(T0+a*A*Z3)+(T0+a*A*Z4)+(T0+a*(A/2)*Z5)…式7
図16の(C)は、本発明の実施の形態のスティッチング測定方法であり、被測定面Sを傾斜状領域Dと平坦状領域Kとでなり1つの面積が測定視野W以下の8個の面積A1〜A8の測定面Nに8分割し、各測定面Nについて表面形状を測定するのに最小限必要な最小走査範囲Z10〜Z80に設定した場合である。この場合の被測定面Sの全体の測定時間TS3は、次の式8で表すことができる。
TS3=(T0+a*A1*Z10)+(T0+a*A2*Z20)+(T0+a*A3*Z30)+(T0+a*A4*Z40)+(T0+a*A5*Z50)+(T0+a*A6*Z60)+(T0+a*A7*Z70)+(T0+a*A8*Z80)…式8
そして、式6、式7、式8を計算することにより、被測定面Sの全体の測定時間は、TS1>TS2>TS3であることが分かる。なお、図16の(A)、(B)、(C)の図形を表示部20に表示し、ユーザが(A)、(B)、(C)の図形の斜線部分の合計面積の大きさからTS1>TS2>TS3であること目視で判定することもできる。これにより、スティッチング測定方法を行なうことにより、測定時間を一層短縮することができることが分かる。
また、上記したように、本発明の実施の形態では、被測定面分割工程S20において被測定面Sを分割した複数の測定面Nの分割マップを表示部20に表示することが好ましい。
図17の(A)は、被測定面Sのうねり形状をx軸方向とz軸方向とで示したものである。実際にはy軸方向にもうねりがあるが、図では省略している。図17の(B)は、図17の(A)のうねり形状を被測定面分割工程S20において測定時間を短縮するように分割した分割マップFを表示部20に表示したものである。図17の(B)では被測定面SをN1〜N15の15個の測定面Nに分割した分割マップFの一例である。
このように、分割マップFを表示部20に表示することにより、ユーザは測定時間の短縮を図るための分割結果を目視にて確認することができるので、測定の高速化の様子をユーザに実感させることができる。
なお、ステージ10を光学部2に対して水平移動させることで説明したが、ステージ10に対して光学部2を水平移動させてもよい。また、本実施の形態では、被測定面Sがうねり形状である場合で説明したが、この形状に限定するものではなく、表面が凹凸の高低差を有する形状であればよい。