JP6935233B2 - クリヤー塗料組成物及びクリヤー塗膜の形成方法 - Google Patents
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Description
[1]二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有するアクリル樹脂(A)、反応性二重結合基を有するアクリル樹脂(B)及び金属ドライヤー(C)を含むクリヤー塗料組成物。
[2]前記反応性二重結合基を有するアクリル樹脂(B)は、非水ディスパージョン樹脂である、[1]に記載のクリヤー塗料組成物。
[3]前記反応性二重結合基が、アクリロイル基およびメタクリロイル基から選択される少なくとも1個である、[1]又は[2]に記載のクリヤー塗料組成物。
[4]前記酸化重合性官能基が下記化学式(I)または(II)
[式中、R1は、結合手、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基、又は、置換基を有してもよい、1又はそれ以上の不飽和二重結合を含む炭素数2〜10の炭化水素基であり、および
R2は、水素、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は、置換基を有してもよい、1又はそれ以上の不飽和二重結合を含む炭素数2〜10の炭化水素基である。]
で表される、
上記[1]から[3]のいずれか1に記載のクリヤー塗料組成物。
[5]前記アクリル樹脂(A)のヨウ素価が30〜130である、[1]から[4]のいずれか1に記載のクリヤー塗料組成物。
[6]前記クリヤー塗料組成物に含まれる前記アクリル樹脂(A)と前記アクリル樹脂(B)の全樹脂固形分100質量部に対して、前記アクリル樹脂(A)の量は10〜90質量部である、[1]から[5]のいずれか1に記載のクリヤー塗料組成物。
[7]前記酸化重合性官能基は、炭素数4〜30である、[1]から[6]のいずれか1に記載のクリヤー塗料組成物。
[8]被塗物上に、[1]〜[7]のいずれか1に記載のクリヤー塗料組成物を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程;並びに
未硬化のクリヤー塗膜を焼き付け硬化させ、クリヤー塗膜を形成する工程;
を含み、
前記焼き付け硬化を行う温度が、60℃以上120℃以下である、
クリヤー塗膜の形成方法。
まず、本発明に至った経緯を説明する。本発明者らは、例えば、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等を含む塗料組成物を、低温加熱条件下で硬化させることを検討した。
しかしながら、このような樹脂を含む塗料組成物を単に低温加熱条件下、例えば120℃以下で硬化させることを試みると、硬化時間が長くなる問題、塗膜物性が劣るなどの問題が生じている。
そこで、本発明者等は、低温加熱条件下、例えば120℃以下、で硬化させることを試み、一方でこのような低温加熱条件下であっても、従来と同程度の硬化時間であり、さらに、塗膜物性に優れたクリヤー塗料組成物について検討した。そして、特定の構造を有するアクリル樹脂(A)及びアクリル樹脂(B)と、金属ドライヤーとを含むクリヤー塗料組成物であれば、低温加熱条件下で硬化させたとしても、硬化時間が大幅に延長されることなく、その上、優れた塗膜硬度を有し、耐薬品性、耐溶剤性および耐候性等の塗膜物性に優れた塗膜が得られることを実験により見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に係るクリヤー塗料組成物によって、硬化塗膜の形成を120℃以下の温度で行ったとしても、良好な塗膜硬度を有し、その上、耐薬品性、耐溶剤性および耐候性に優れたクリヤー塗膜を形成できる。さらに、耐薬品性、耐溶剤性および耐候性に優れた塗膜を提供できる。また、本発明に係るクリヤー塗料組成物は、一液型のクリヤー塗料組成物であり、長いポットライフを有し、作業性、貯蔵安定性にも優れる。また、平滑な塗膜外観を形成できる。
二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基
本発明において、酸化重合性官能基は、アクリル樹脂の主鎖に直接または他の結合基を介して結合した官能基であり、常温で空気中の酸素により酸化重合が進行する官能基である。このような酸化重合性官能基が介する酸化重合が進行すると、3次元網目構造が形成され得る。また、本発明に係る二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基であれば、架橋反応位置を増加させることができ、より効果的に架橋を行える。また、常温でも反応が進行するので、二酸化炭素の削減及び省エネ化に寄与できる。
また、本発明における酸化重合性官能基は、二重結合を2〜4個有する。酸化重合性官能基が二重結合を2〜4個有することにより、アクリル樹脂(A)と、反応性二重結合基を有するアクリル樹脂(B)との架橋を促進できる。さらに、アクリル樹脂(A)と、アクリル樹脂(B)とを低温加熱条件下で焼き付ける条件下であっても、十分な硬度、耐薬品性、耐溶剤性、耐候性および耐擦傷性などを備える塗膜を形成できる。
ある態様において、酸化重合性官能基は、直鎖状である。好ましくは、酸化重合性官能基は、非共役ジエニル基であってもよく、共役ジエニル基であってもよい。
1,2,3−ノナトリエニル基、1,2,4−ノナトリエニル基、1,2,5−ノナトリエニル基、1,2,6−ノナトリエニル基、1,2,7−ノナトリエニル基、1,2,8−ノナトリエニル基、1,3,4−ノナトリエニル基、1,3,5−ノナトリエニル基、1,3,6−ノナトリエニル基、1,3,7−ノナトリエニル基、1,3,8−ノナトリエニル基、1,4,5−ノナトリエニル基、1,4,6−ノナトリエニル基、1,4,7−ノナトリエニル基、1,4,8−ノナトリエニル基、1,5,6−ノナトリエニル基、1,5,7−ノナトリエニル基、1,5,8−ノナトリエニル基、1,6,7−ノナトリエニル基、1,6,8−ノナトリエニル基、1,7,8−ノナトリエニル基、2,3,4−ノナトリエニル基、2,3,5−ノナトリエニル基、2,3,6−ノナトリエニル基、2,3,7−ノナトリエニル基、2,3,8−ノナトリエニル基、2,4,5−ノナトリエニル基、2,4,6−ノナトリエニル基、2,4,7−ノナトリエニル基、2,4,8−ノナトリエニル基、2,5,6−ノナトリエニル基、2,5,7−ノナトリエニル基、2,5,8−ノナトリエニル基、2,6,7−ノナトリエニル基、2,6,6−ノナトリエニル基、3,4,5−ノナトリエニル基、3,4,6−ノナトリエニル基、3,4,7−ノナトリエニル基、3,4,8−ノナトリエニル基、3,5,6−ノナトリエニル基、3,5,7−ノナトリエニル基、3,5,8−ノナトリエニル基、3,6,7−ノナトリエニル基、3,6,8−ノナトリエニル基、4,5,6−ノナトリエニル基、4,5,7−ノナトリエニル基、4,5,8−ノナトリエニル基、5,6,7−ノナトリエニル基、5,6,8−ノナトリエニル基、6,7,8−ノナトリエニル基を例示できる。また、3個の二重結合を有する酸化重合性官能基は、後述のR1およびR2が有し得る官能基を適宜有してもよい。
R2は、水素、置換基を有してもよい、直鎖または分枝状の炭素数1〜10のアルキル基、又は、置換基を有してもよい、1又はそれ以上の不飽和二重結合を含む、直鎖または分枝状の炭素数2〜10の炭化水素基である。]
で示される。
好ましくは、R1及びR2は直鎖状の基である。より好ましくは、R1は炭素数1〜10の直鎖状のアルキレン基であり、R2は炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基である。
また、本発明において、酸化重合性官能基は、2〜4個の二重結合を有する不飽和脂肪酸によって導入された基であってもよい。
このような酸化重合性官能基を有することにより、アクリル樹脂(A)と、アクリル樹脂(B)とを低温加熱条件下で硬化させる場合であっても、良好な塗膜硬度、耐薬品性、耐溶剤性、耐候性および耐擦傷性などを備える塗膜を形成できる。
二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有するアクリル樹脂(A)の調製に用いるアクリル樹脂は、クリヤー塗膜を形成し得るものであれば、その構造は特に限定されない。例えば、アクリル樹脂は、アルキルエステル基を有するモノマー(1)、水酸基を有するアクリルモノマー(2)、カルボキシル基を有するアクリルモノマー(3)、エポキシ基を有するアクリルモノマー(4)及びその他のアクリルモノマー(5)から選択される少なくとも1種のモノマーを重合して得られる重合体に、上記酸化重合性官能基を導入することによって調製できる。
本発明においては、水酸基を有するアクリルモノマー(2)、カルボキシル基を有するアクリルモノマー(3)及びエポキシ基を有するアクリルモノマー(4)の合計量は、アクリル樹脂(A)を合成する際に使用する全てのモノマーの全量100質量部に対して、5〜70質量部の範囲で用いることが好ましく、例えば、10〜50質量部の範囲で用いることがより好ましい。
アルキルエステル基を有するアクリルモノマー(1)は、好ましくは炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキルエステル基を含み得る。
上記モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニルまたはそれらの混合物が挙げられる。
なお、本明細書中で「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルの両方を表す用語である。
水酸基を有するアクリルモノマー(2)の例としては、例えば、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸7−ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸7−メチル−8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−8−ヒドロキシオクチルが挙げられ、その他に、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルをε−カプロラクトンなどのラクトン類を1〜5モル反応させてなるラクトン変性アクリルモノマーなどが挙げられる。
さらに、水酸基を有するアクリルモノマー(2)のうち、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンの反応物であるプラクセルFM−1、FM−2、FA−1およびFA−2からなる水酸基含有モノマーを用いてもよい。
また、ポリエーテルグリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル、およびポリエーテルグリコールと(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルとのモノエーテルが挙げられる。例えば、日本油脂社製「ブレンマーAP−150」などが挙げられる。
カルボキシル基を有するモノマー(3)としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、3−ビニルサリチル酸、3−ビニルアセチルサリチル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中で好ましいものは、アクリル酸、メタクリル酸である。
エポキシ基を有するアクリルモノマー(4)としては、分子内にエポキシ基と重合性不飽和二重結合を有していれば特に限定されないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキサンメタノールの(メタ)アクリレートを挙げることができる。反応性の観点から、グリシジル(メタ)アクリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテルを用いることが好ましい。
その他のアクリルモノマー(5)は、アルキルエステル基を有するアクリルモノマー(1)と、水酸基を有するアクリルモノマー(2)およびカルボキシル基を有するアクリルモノマー(3)、エポキシ基を有するモノマー(4)以外で、これらのアクリルモノマーとの共重合可能なモノマーが挙げられる。
二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を導入する方法として、例えば、
カルボキシル基を有するモノマーを含むモノマー混合物を共重合し、次いで、エポキシ基および二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有する化合物を反応させて、二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有するアクリル樹脂(A)を調製する方法、
水酸基を有するモノマーを含むモノマー混合物を共重合し、次いで、エポキシ基および二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有する化合物を反応させて、二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有するアクリル樹脂(A)を調製する方法、
エポキシ基を有するモノマーを含むモノマー混合物を共重合し、次いで、カルボキシル基および二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有する化合物を反応させて、二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有するアクリル樹脂(A)を調製する方法、
などが挙げられる。
エポキシ基および二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有する化合物として、例えば、カルダノール変性グリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ基および二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有する化合物として市販品を用いてもよい。
カルボキシル基および二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有する化合物として、例えば二重結合を2〜4個有する不飽和脂肪酸などが挙げられる。カルボキシル基および二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有する化合物の具体例として、例えば、α−リノレン酸、ステアリドン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸などが挙げられる。
上記反応は、当業者において通常用いられる反応条件下において行うことができる。
本明細書内での数平均分子量の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)による測定値を、ポリスチレン標準により換算したものである。
本発明における反応性二重結合基を有するアクリル樹脂(B)は、アクリル樹脂(A)と架橋することができ、本発明のクリヤー塗料組成物から形成されるクリヤー塗膜に、例えば良好な塗膜強度をもたらすことができる。本発明に係るアクリル樹脂(A)とアクリル樹脂(B)とを併用することで、耐候性を損なうことなく、架橋密度を向上させることができる。
本発明に係る反応性二重結合基は、ラジカル又はカチオンにより容易に反応を開始し架橋することができ、例えば、反応性二重結合基を有するアクリル樹脂(B)と酸化重合性官能基をアクリル樹脂(A)とを架橋させることができるので、低温加熱条件下で塗膜硬化を行うことができ、得られた塗膜硬度が良好であり、耐溶剤性、耐薬品性、耐候性に優れたクリヤー塗料組成物を得ることができる。
ある態様においては、反応性二重結合基を有するアクリル樹脂(B)は、コアシェル構造を有する。コアシェル構造を有することにより、例えば、コア部分が架橋構造を有し、本発明のクリヤー塗料組成物から形成されるクリヤー塗膜に所望の硬度を付与できる。また、シェル部分を有することにより、アクリル樹脂(A)との架橋をより効果的に行うことができ、低温加熱条件下で塗膜硬化を行えるクリヤー塗料組成物であって、得られた塗膜硬度が良好であり、耐薬品性、耐溶剤性および耐候性に優れたクリヤー塗膜を得ることができる。
この態様において、反応性二重結合基は、シェル部により多く存在することが好ましい。例えば、アクリル樹脂(B)のシェルに含まれる樹脂の官能基を、既知の材料および方法で変性させることにより、反応性二重結合基をアクリル樹脂(B)に導入できる。
例えば、重合性モノマーを含む重合体をコアとし、分散安定樹脂をシェルとする、いわゆる非水ディスパージョン(Non Aqueous Dispersion、NAD)と称される分散液を好適に使用できる。
分散安定樹脂として、例えばアクリル樹脂を用いることができる。分散安定樹脂として用いることができるアクリル樹脂は、水酸基価(固形分)が0〜300mgKOH/gであるのが好ましく、10〜250mgKOH/gであるのがより好ましく、例えば20〜180mgKOH/gであるのがさらに好ましい。酸価(固形分)は、0〜100mgKOH/gであるのが好ましく、0〜50mgKOH/gであるのがより好ましい。数平均分子量は800〜100000であるのが好ましく、1000〜20000であるのがより好ましい。
例えば、上記アクリル樹脂(A)の調製に用いるモノマーから分散安定樹脂を調製してもよい。
重合に用いる有機溶剤は、分散安定樹脂は溶解するが、重合性モノマーを重合して得られる樹脂粒子は溶解しないものであり、各種有機溶剤から適宜選択することができる。
本発明のクリヤー塗料組成物は、金属ドライヤーを含んでいる。この金属ドライヤーは不飽和結合を架橋させるための働きをするものである。上記金属ドライヤーとしては、通常、塗料用として慣用されているものであればいずれでもよいが、そのうちでも特に代表的なものとしてはコバルト、バリウム、バナジウム、マンガン、セリウム、鉛、鉄、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、セリウム、ニッケルもしくは錫などのナフテン酸塩、オクチル酸塩などを挙げることができる。
一方、金属ドライヤーの金属量が3.0質量部よりも多いと、塗装肌などの基本性能が低下するおそれがある。また、クリヤー塗膜に要求される高い耐候性を満たさないおそれがある。
金属ドライヤーは、クリヤー塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは0.01〜2.9質量%、より好ましくは0.02〜2.8質量%の量で配合される。
本発明のクリヤー塗料組成物は、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、レオロジーコントロール剤、表面調整剤などの、当業者において通常用いられる添加剤を含んでもよい。
本発明のクリヤー塗料組成物は、一液型であることができる。例えば、ポットライフを二液型のクリヤー塗料組成物と比べて長くとることができるので、作業性に優れる。さらに、一液型塗料組成物であることから、焼付け工程に関して、低温加熱条件下で行うことができ、エネルギー消費量およびCO2排出量の削減が可能である。また、貯蔵安定性、乾燥性にも優れる。
好ましくは、焼き付け硬化を行う温度は60℃以上110℃以下であり、例えば、焼き付け硬化を行う温度は70℃以上90℃以下である。
例えば、焼き付け硬化を行う温度が60℃未満であると、耐溶剤性および耐候性が劣るおそれがある。
本発明は更に、クリヤー塗膜の形成方法を提供する。
本発明に係るクリヤー塗膜の形成方法は、被塗物上に、本発明に係るクリヤー塗料組成物を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程;並びに
未硬化のクリヤー塗膜を焼き付け硬化させ、クリヤー塗膜を形成する工程;
を含み、
前記焼き付け硬化を行う温度が、60℃以上120℃以下である。
被塗物上にベース塗料組成物及びクリヤー塗料組成物を、順次ウエットオンウェットで塗装することを含む、被塗物に複層塗膜を形成する方法を提供する。
ある態様において、複層塗膜の形成方法は、
被塗物上にベース塗料組成物を塗装し、未硬化のベース塗膜を形成する工程;
未硬化のベース塗膜の上に、本発明に係るクリヤー塗料組成物を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程;並びに
未硬化のベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に焼き付け硬化させ、複層塗膜を形成する工程;を含み、
前記焼き付け硬化を行う温度が、60℃以上120℃以下である。
ある態様においては、被塗物は、電着塗膜が形成された自動車車体であってもよい。電着塗膜は自動車車体に対して電着塗料組成物を塗装し、焼き付け硬化して形成する。被塗物である自動車車体は、カチオン電着塗装可能な金属製品であれば特に制限されない。例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛及びこれらの金属を含む合金等を挙げることができる。
ある態様においては、被塗物は、車両分野で用いられる樹脂製品である。本発明に係るクリヤー塗料組成物であれば、低温加熱条件下で硬化を行えるので、樹脂製品に対しても、塗膜硬度に優れ、上述した諸物性に優れたクリヤー塗膜を形成できる。
また、被塗物は、金属製品と樹脂製品を共に有するものであってもよい。
また、プレヒートを行うことにより、未硬化の中塗り塗膜を形成した後、すぐにベース塗料組成物を塗装しても、これら2つの塗膜層が混じり合い(混層)することを回避でき、得られる複層塗膜に極めて優れた塗膜外観をもたらすことができる。
例えば、プレヒート温度は、60〜90℃、好ましくは70〜90℃で、3〜10分間プレヒートする。プレヒートを行うことにより、未硬化のベース塗膜を形成した後、すぐにクリヤー塗料組成物を塗装しても、これら2つの塗膜層が混じり合い(混層)することを回避でき、得られる複層塗膜に極めて優れた塗膜外観をもたらすことができる。
さらに、水性ベース塗料組成物を、プレヒートすることにより、ベース塗料組成物のタレを有効に防止できる。
撹拌羽根、温度調節計、還流管、窒素導入口、滴下漏斗を装着した1リットルのコルベン内に、酢酸ブチル329.70質量部を仕込み、110℃に昇温し、表1に示す組成のモノマー/開始剤の混合物を3時間滴下し、0.5時間エージングした。開始剤の後ショットを0.5時間滴下した後、1時間エージングし、主鎖となるアクリル樹脂を得た。滴下からエージング終了までの間は窒素雰囲気下110℃、撹拌速度150rpmで行った。
得られた樹脂(A−1)は、GPCによる分子量が数平均分子量4700、重量平均分子量9400、不揮発分(以下、「NV」ともいう)50%であった。
反応性二重結合基を有するアクリル樹脂として、非水ディスパージョン(以下、NADともいう)を用いた。以下に、製造例B−1に係るNADの調製例を説明する。
撹拌羽根、温度調節計、還流管、窒素導入口、滴下漏斗を装着した0.5リットルのコルベン内に溶剤を仕込み、110℃、150rpm、窒素雰囲気下にて、表2に記載の配合のモノマーと、開始剤とを3時間滴下後、0.5時間エージングし、後ショット0.5時間行い、さらに1時間エージングし、アクリル樹脂を調製した。100℃まで降温し、重合禁止剤(ヒドロキノンモノメチルエーテル;MEHQ)と触媒(ジラウリン酸ジブチルすず;DBTDL)を添加後、空気雰囲気下にて合成した主鎖1.0molに対し0.25molのカレンズAOI(昭和電工株式会社製、2-イソシアナトエチルアクリラート)を0.5時間かけて滴下した。その後2時間かけてエージングし、シェルにコア−シェルグラフトのための二重結合を導入した。
次いで、1リットルの撹拌羽根、温度調節計、還流管、窒素導入口、滴下漏斗を装着した別のコルベン内に、上記にて調製した、二重結合を導入したシェル樹脂と、酢酸ブチル/アイソパーEの混合溶剤を仕込み、窒素雰囲気下、200rpm、110℃に昇温したのち、表3に示すモノマーと開始剤を3時間滴下した。0.5時間エージングし、後ショットを0.5時間滴下後、さらに1時間エージングし、NADを得た。
次いで、撹拌羽根、温度調節計、還流管、滴下漏斗を装着した0.5リットルの別のコルベン内に、得られたNADとDBTDL(触媒、樹脂固形分に対して100ppm)を仕込み、80℃に昇温した。その後、表4に記載のカレンズAOI(昭和電工株式会社製、2-イソシアナトエチルアクリラート)と溶剤を混合し、コルベン内に10分間かけて滴下した。用いた溶剤は、NAD内部溶剤と同組成とし、付加により増加するNVを元のNADと同一に戻す調整をした。付加反応終了までエージング後、室温まで冷却し、反応性二重結合基を有するアクリル樹脂(B−1)を調製した。
なお、反応終了の確認には、FT−IRを用い、NCO基のピーク消失を確認することで判断した。
製造例(A−1)において、表1に示す配合で酸化重合性アクリル樹脂を調製したこと以外は、製造例(A−1)と同様にして、酸化重合性官能基を有するアクリル樹脂(A−2)を調製した。
反応容器内に、表5で示す配合で、反応性二重結合基を有するアクリル樹脂(B−1)と、溶剤、酸化重合性官能基を有するアクリル樹脂(A−2)の順に投入し、よく撹拌した後、触媒(金属ドライヤー)を投入し、撹拌し、クリヤー塗料組成物を調製した。
触媒は、添加量が少ないため、表5に記載の溶剤で希釈し添加した。
耐溶剤性および塗膜ヘイズ評価用として、ガラス板上に、上記で調製したクリヤー塗料組成物を、4milフィルムアプリケーターを用いて塗装し、未硬化のクリヤー塗膜を形成した。未硬化のクリヤー塗膜を、温度80℃で30分間焼付け、クリヤー塗膜を形成した。
また、耐候性評価用として、積層塗膜板を作製した。リン酸亜鉛処理を行い、水洗したSPCC−SD鋼板(ダル鋼板)に、日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社製カチオン電着塗料の「パワートップU−80」を塗装し焼付乾燥の後、その上に日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社製中塗り塗料の「オルガP−2」を塗装し、焼付乾燥した。中塗り塗料塗装後の試験板に、日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社製ベース塗料の「アクアレックスAR−2000 青マイカ色」を塗布後80℃で3分間プレヒートした。その後、上記で調製したクリヤー塗料組成物を乾燥膜厚35μmになるようにスプレー塗装し、80℃で30分間焼付けて積層塗膜を形成した。
酸化重合性官能基を有するアクリル樹脂(A)を、表1に記載の組成を用いたこと、クリヤー塗料組成物の調製にて用いた触媒量、条件により溶剤を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、クリヤー塗料組成物を調製した。
また、塗膜形成時の焼付け温度を、表5に記載したこと以外は、実施例1と同様にして、クリヤー塗膜を形成した。
クリヤー塗料として「マックフロー O−1860クリヤー」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社製、酸・エポキシ硬化系クリヤー塗料組成物)を用いたこと、クリヤー塗装後の焼付け温度が表6に記載した温度であること、および焼付け時間が20分であること以外は、実施例1と同様にして評価用塗板を形成した。
クリヤー塗料として「SP O−100クリヤー」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社製、メラミン硬化系クリヤー塗料組成物)を用いたこと、およびクリヤー塗装後の焼付け温度が表6に記載した温度であること以外は、実施例1と同様にして評価用塗板を形成した。
クリヤー塗料として「PU エクセル O−2100クリヤー」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社製、2液ウレタン硬化系クリヤー塗料組成物)を用いたこと、クリヤー塗装後の焼付け温度が表6に記載した温度であること、および焼付け時間が20分であること以外は、実施例1と同様にして評価用塗板を形成した。
表5に記載の配合で作製した塗料を、1リットル丸缶中に700g入れ、−5℃、20℃、40℃の恒温槽にて30日間静置し、静置前後の粘度、色相および粒度の変化を確認した。粘度はフォードカップ#4、25℃で測定した。色相は目視により明らかな黄変の有無を判断した。粒度は50μmグラインドゲージ(大佑機材製)で確認した。評価基準は以下の通りである。実施例および比較例の評価結果を表5に示し、参考例の評価結果を表6に示す。
粘度 ○:試験前後の変化が±2秒以下
×:試験前後の変化が±2秒超
色相 3:黄変は認められない
2:黄変が認められる
1:著しく黄変している
粒度 ○:粒度5μm未満
×:粒度5μm以上
作製した塗膜を、キシレンを浸み込ませたウエスにて15往復ラビングし、耐溶剤性の評価を実施した。評価基準は以下の通りである。実施例および比較例の評価結果を表5に示し、参考例の評価結果を表6に示す。
○:ラビング後の跡残りなし
△:白化・擦過痕等の跡残りあり
×:塗膜溶解
作製した塗膜を、ヘイズメーターNDH2000(日本電色工業株式会社製)にてヘイズ評価を実施した。評価基準は以下の通りである。実施例および比較例の評価結果を表5に示し、参考例の評価結果を表6に示す。
〇:ヘイズ1未満
×:ヘイズ1以上
作製した塗膜を、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製)を用い、促進耐候性試験を実施し、目視により試験前後の変色を評価した。運転条件はJIS K5400に準拠し、運転時間は1000時間とした。
評価基準は以下の通りである。実施例および比較例の評価結果を表5に示し、参考例の評価結果を表6に示す。
4:塗膜に変色は認められない
3:塗膜の変色が僅かに認められる
2:塗膜が変色している
1:塗膜が著しく変色している
比較例2においては、本発明に係るアクリル樹脂(B)を含まないことにより、得られた塗膜には、白化・擦過痕等の跡残りが生じた場所があり、しかも、耐候性の悪い塗膜であった。
比較例3においては、本発明に係るアクリル樹脂(A)を含まないことにより、得られた塗膜には、白化・擦過痕等の跡残りが生じ、しかも、耐候性の悪い塗膜であった。
比較例4は、本発明に係るアクリル樹脂(A)の代わりに、アルキド樹脂を用いたクリヤー塗料組成物であり、得られた塗膜は、共に、塗料安定性、耐溶剤性、塗膜ヘイズおよび耐候性のいずれにおいても不十分な塗膜であった。
比較例5は、本発明に係るアクリル樹脂(A)の代わりに、汎用のアクリル樹脂を用いたクリヤー塗料組成物であり、得られた塗膜は、耐溶剤性試験において、塗膜溶解が生じ、その上、耐候性が悪い塗膜であった。
比較例6は、本発明に係る金属ドライヤー(C)を含まないクリヤー塗料組成物であり、得られた塗膜は、耐溶剤性試験において、塗膜溶解が生じ、その上、耐候性が悪い塗膜であった。
Claims (11)
- 二重結合を2〜4個有する酸化重合性官能基を有するアクリル樹脂(A)、反応性二重結合基を有するアクリル樹脂(B)及び金属ドライヤー(C)を含み、
前記酸化重合性官能基の炭素数は、8以上22以下である、クリヤー塗料組成物。 - 前記反応性二重結合基を有するアクリル樹脂(B)は、非水ディスパージョン樹脂である、請求項1に記載のクリヤー塗料組成物。
- 前記反応性二重結合基が、アクリロイル基およびメタクリロイル基から選択される少なくとも1つである、請求項1又は2に記載のクリヤー塗料組成物。
- 前記酸化重合性官能基は、直鎖状である、請求項1から3のいずれか1項に記載のクリヤー塗料組成物。
- 前記R 1 は、結合手、または、置換基を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状のアルキレン基であり、
前記R 2 は、水素、または、置換基を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基である、請求項5に記載のクリヤー塗料組成物。 - 前記化学式(I)で表される前記酸化重合性官能基は、1,4−ヘプタジエニル基、2,5−ヘプタジエニル基、1,4−オクタジエニル基、1,4−オクタジエニル基、2,5−オクタジエニル基、1,4−ノナジエニル基、2,5−ノナジエニル基、1,4−デカジエニル基または2,5−デカジエニル基である、請求項5に記載のクリヤー塗料組成物。
- 前記化学式(II)で表される前記酸化重合性官能基は、1,3−ヘキサジエニル基、2,4−ヘキサジエニル基、1,3−ヘプタジエニル基、2,4−ヘプタジエニル基、1,3−オクタジエニル基、2,4−オクタジエニル基、1,3−ノナジエニル基、2,4−ノナジエニル基、1,3−デカジエニル基または2,4−デカジエニル基である、請求項5に記載のクリヤー塗料組成物。
- 前記アクリル樹脂(A)のヨウ素価が30〜130である、請求項1から8のいずれか1項に記載のクリヤー塗料組成物。
- 前記クリヤー塗料組成物に含まれる前記アクリル樹脂(A)と前記アクリル樹脂(B)の全樹脂固形分100質量部に対して、前記アクリル樹脂(A)の量は10〜90質量部である、請求項1から9のいずれか1項に記載のクリヤー塗料組成物。
- 被塗物上に、請求項1〜10のいずれか1項に記載のクリヤー塗料組成物を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程;並びに
未硬化のクリヤー塗膜を焼き付け硬化させ、クリヤー塗膜を形成する工程;
を含み、
前記焼き付け硬化を行う温度が、60℃以上120℃以下である、
クリヤー塗膜の形成方法。
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