本発明に係る実施形態について説明する。図1には、本実施形態に係る被加工物であるウェーハ1と、該ウェーハ1に貼着される表面保護テープ11と、の斜視図が示されている。該被加工物であるウェーハ1は、例えば、シリコン、SiC(シリコンカーバイド)、若しくは、その他の半導体等の材料、または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる円板状の基板である。
図1に示す通り、該ウェーハ1の表面1aには、互いに交差する複数のストリート3と呼ばれる分割予定ラインが設定されている。該ストリート3により区画された各領域にそれぞれIC(Integrated circuit)やLED(Light emitting diode)等のデバイス5が形成されている。
携帯電話機をはじめとする無線通信機器では、所望の周波数帯域の電気信号のみを通過させるバンドパスフィルタが重要な役割を担っている。このバンドパスフィルタの一つとして、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)を利用したSAWデバイス(SAWフィルタ)が知られている。ウェーハ1に形成されるデバイス5はSAWデバイスでもよい。
SAWデバイスでは、入力側の電極近傍で発生した弾性波の一部が、基板の内部を伝播して裏面側で反射されることがある。反射された弾性波が出力側の電極に到達すると、SAWデバイスの周波数特性は劣化してしまう。そこで、弾性波が散乱され易くなるように基板の裏面に微細な凹凸構造を形成して、反射された弾性波の電極へ到達を防いでいる。
近年では、SAWデバイスの発展形として、物質の内部を伝播するバルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)を利用したBAWデバイス(BAWフィルタ)が注目を集めている。BAWデバイスは、例えば、窒化アルミニウム(AlN)等の圧電材料でなる圧電膜をモリブデン(Mo)等による電極で挟み込んだ共振器(圧電素子)を備えている。
BAWデバイスを形成する際には、例えば、表面側に複数の該共振器が形成された基板の裏面を研削して所定の厚みまで薄くしてから、ダイシングによって各共振器に対応する複数のBAWデバイスへと分割する。このBAWデバイスでも、基板の裏面側で反射される弾性波によって周波数特性が劣化するので、微細な凹凸構造が形成されるように粗い研削が実施される。
本実施形態に係るウェーハ1の表面1aには、複数のこれらのデバイス5が形成されている。ただし、ウェーハ1に形成されるデバイス5はこれに限定されない。該ウェーハ1の表面1aのうちデバイス5が形成されている領域はデバイス領域7と呼ばれ、該デバイス領域を取り囲む外周側の領域は外周余剰領域9と呼ばれる。ウェーハ1は、最終的にストリート3に沿って分割され、個々のデバイスチップが形成される。
該ウェーハ1の表面1aには、表面保護テープ11が貼着される。該表面保護テープ11は、ウェーハ1を裏面1b側から加工する際に、該表面1aに形成された該デバイス5等を保護する。
該表面保護テープ11は、例えば、可撓性を有するフィルム状の基材と、該基材の一方の面に形成された糊層(接着剤層)と、を有する。該基材にはPO(ポリオレフィン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリ塩化ビニル、または、ポリスチレン等が用いられる。また、該糊層(接着剤層)には、例えば、シリコーンゴム、アクリル系材料、エポキシ系材料等が用いられる。
次に、本実施形態に係るウェーハ1の加工方法について説明する。該加工方法では、まず、図1に示されるように、表面保護テープ貼着ステップを実施する。該ウェーハ1の該表面1aに表面保護テープ11の糊層(接着剤層)側を対面させて、該表面1aに該表面保護テープ11を貼着する。
次に、該ウェーハ1の該裏面1b側を露出し、集光点を該ウェーハ1の内部に位置づけた状態で該ウェーハ1を透過する波長のレーザビームを該裏面1b側から照射するレーザ加工ステップを実施する。図2は、該レーザ加工ステップを実施するレーザ加工装置2を模式的に示す斜視図である。
レーザ加工ステップで使用されるレーザ加工装置2は、基台4の上方にウェーハ1を吸引保持するチャックテーブル22と、レーザビームを発振するレーザ加工ユニット24と、を備える。該チャックテーブル22は、X軸移動機構6と、Y軸移動機構16と、によりX軸方向及びY軸方向に移動可能に支持されている。
基台4の上部に設けられた該X軸移動機構6は、X軸移動テーブル8aをX軸方向(加工送り方向)に移動させる機能を備える。該X軸移動機構6は、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール10aと、X軸ボールねじ12aと、X軸パルスモータ14aと、を備えており、X軸ガイドレール10aには、該X軸移動テーブル8aがスライド可能に取り付けられている。
X軸移動テーブル8aの下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、該X軸ガイドレール10aに平行な該X軸ボールねじ12aが螺合されている。X軸ボールねじ12aの一端部には、該X軸パルスモータ14aが連結されている。X軸パルスモータ14aでX軸ボールねじ12aを回転させると、X軸移動テーブル8aはX軸ガイドレール10aに沿ってX軸方向に移動する。
X軸移動テーブル8aの上部に設けられた該Y軸移動機構16は、Y軸移動テーブル8bをY軸方向(加工送り方向)に移動させる機能を備える。該Y軸移動機構16は、Y軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール10bと、Y軸ボールねじ12bと、Y軸パルスモータ14bと、を備えており、Y軸ガイドレール10bには、Y軸移動テーブル8bがスライド可能に取り付けられている。
Y軸移動テーブル8bの下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、該Y軸ガイドレール10bに平行な該Y軸ボールねじ12bが螺合されている。Y軸ボールねじ12bの一端部には、該Y軸パルスモータ14bが連結されている。Y軸パルスモータ14bでY軸ボールねじ12bを回転させると、Y軸移動テーブル8bはY軸ガイドレール10bに沿ってY軸方向に移動する。
該Y軸移動テーブル8bに支持されたチャックテーブル22は、吸引源(不図示)と接続された吸引路(不図示)を内部に有し、該吸引路の他端がチャックテーブル22上の保持面22aに接続されている。該保持面22aは多孔質部材によって構成され、該保持面22a上に載せられたウェーハ1に該多孔質部材を通して該吸引源により生じた負圧を作用させて、チャックテーブル22はウェーハ1を吸引保持する。また、該保持面22aの外周側には、該ウェーハ1を把持するクランプ22bが設けられてもよい。
チャックテーブル22は、例えば、X軸移動機構6により加工送りされ、該Y軸移動機構16により割り出し送りされる。さらに、該チャックテーブル22は、該保持面22aに垂直な軸の周りに回転でき、該チャックテーブル22に保持されたウェーハ1の加工送り方向を変えられる。
基台4の後部にはコラム18が立設されており、該コラム18の前面側にはZ軸移動機構20が設けられている。該コラム18の前面には、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール10cが設けられており、Z軸ガイドレール10cには、Z軸移動テーブル8cがスライド可能に取り付けられている。
Z軸移動テーブル8cの裏面(後面)側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、該Z軸ガイドレール10cに平行なZ軸ボールねじ12cが螺合されている。Z軸ボールねじ12cの一端部には、Z軸パルスモータ14cが連結されている。Z軸パルスモータ14cでZ軸ボールねじ12cを回転させると、Z軸移動テーブル8cはZ軸ガイドレール10cに沿ってZ軸方向に移動する。
該Z軸移動テーブル8cの表面(前面)側には、レーザ加工ユニット24が設けられている。該レーザ加工ユニット24は、チャックテーブル22に保持されたウェーハ1にレーザビームを照射する加工ヘッド26と、該ウェーハ1を撮像してレーザビームの照射位置等の確認に用いられる撮像画像を取得するカメラユニット28と、を備える。
加工ヘッド26は、発振されたレーザビームをウェーハ1の内部に集光する機能を有し、ウェーハ1の内部の所定の深さに多光子吸収を生じさせて改質層を形成する。なお、該レーザビームには、例えば、Nd:YVO4またはNd:YAGを媒体として発振され、ウェーハ1を透過する波長のレーザビームが用いられる。
加工ヘッド26は、Z軸移動機構20によりZ軸方向に移動できる。該加工ヘッド26をZ軸方向に移動させると、該加工ヘッド26の集光位置の高さを変えられる。該加工ヘッド26は、Z軸移動機構20によりウェーハ1の複数の高さ位置にレーザビームを集光させてウェーハ1の内部の複数の高さ位置にそれぞれ改質層を形成できる。
レーザ加工ステップでは、まず、チャックテーブル22の保持面22aの上に表面1a側が下方に向けられた状態のウェーハ1を載せる。そして、チャックテーブル22からウェーハ1に負圧を作用させて該チャックテーブル22にウェーハ1を吸引保持させる。図3(A)は、レーザ加工前のウェーハを模式的に示す断面図である。図3(A)に示す通り、該ウェーハ1は該表面保護テープ11を介して該チャックテーブル22に吸引保持される。
図3(B)は、レーザ加工ステップを模式的に示す断面図である。次に、加工ヘッド26の集光点をウェーハ1の内部の所定の高さ位置に位置づけ、レーザ加工装置2の加工ヘッド26からウェーハ1の裏面1bにストリート3の一つに沿ってレーザビームを照射する。このとき、レーザビームはウェーハ1のデバイス領域7(図1参照)にのみ照射し、外周余剰領域9(図1参照)には照射しない。
すると、該デバイス領域7内に該ストリート3に沿った改質層13が形成される。その後、ウェーハ1を割り出し送りして他のストリート3に沿った改質層13を次々に形成する。さらに、チャックテーブル22を回転させて加工送り方向を切り替えて同様に次々に改質層13を形成して、ウェーハ1のデバイス領域7内においてすべてのストリート3に沿って改質層13を形成する。
なお、改質層13は、後述の研削ステップにおいて該ウェーハ1が裏面1b側から研削される際に除去される深さ位置に形成する。すなわち、ウェーハ1を所定の厚さに薄化したときの仕上がり厚さよりも表面1aからの距離の大きい深さ位置に改質層13を形成する。該改質層13がこのような深さ位置に形成されなければ、最終的にウェーハ1から形成されるデバイスチップに改質層13が残存し、残存した該改質層13からクラック等が生じてデバイスチップが損傷する恐れがある。
例えば、ウェーハ1にシリコンウェーハを用いる場合、レーザビームには、シリコンを透過できる波長1342nmのパルスレーザを用いる。出力を0.9W〜1.3W、繰り返し周波数を90kHzとし、ウェーハ1の送り速度を700mm/sに設定する。
該レーザビームの出力等を適切に設定すると、該改質層13を形成するとともに、該改質層13からウェーハ1の厚さ方向に伸長し、該表面1aに至るクラック17を形成できる場合がある。レーザ加工ステップで該改質層13から伸長する該クラック17を形成しない場合、また、形成されたクラック17が該表面1aに至らない場合、後にウェーハ1に外力を加えて該改質層13から該表面1aに至るクラック17を形成する。
図4は、レーザ加工ステップで形成される改質層の位置を模式的に示す上面図である。該レーザ加工ステップでは、図4に示すように、該ウェーハ1の該デバイス領域7及び該外周余剰領域9の境界に沿った円状改質層15をさらに形成する。該円状改質層15が形成されていると、デバイス領域7に形成された改質層13から外周余剰領域9へのクラックの伸長が遮られ、外周余剰領域9にクラックが形成されにくくなり強度が高まる。
該円状改質層15を形成する際には、加工ヘッド26を該ウェーハ1の該デバイス領域7及び該外周余剰領域9の境界の上方に位置付ける。そして、レーザビームをウェーハ1に照射しながらチャックテーブル22を回転させる。すると、円状改質層15が形成される。
ただし、該円状改質層15を形成する際は、ウェーハ1に設定された複数のストリート3の一部に対して該ストリート3を跨ぐようにはレーザビームを照射しない。すると、円状改質層15には、複数個所において改質層が形成されない改質層非形成領域15aが設けられ、該円状改質層15は断続的な円状となる。図4に示す例では、該改質層非形成領域15aの数を4とした。
ここで、改質層13と、円状改質層15と、は、互いに交差せず、該改質層13の端部と、該円状改質層15と、の間にも改質層非形成領域(不図示)が設けられることが好ましい。該円状改質層15を跨ぐように改質層13が形成されていると、ウェーハ1が外力を受けた際に、ウェーハ1の該円状改質層15の外周側に該改質層13の端部からウェーハ1の外周端に到達する意図しないクラックが形成される恐れがある。
なお、レーザ加工ステップでは、デバイス領域7に形成される改質層13と、外周余剰領域9及びデバイス領域7の境界に沿って形成される円状改質層15と、のどちらを先に形成してもよい。また、改質層13及び円状改質層15は、それぞれ、複数の高さ位置に重なるように形成された複数の改質層で構成されてもよい。
本実施形態に係るウェーハの加工方法では、レーザ加工ステップを実施した後、ウェーハ1の該裏面1bを研削する研削ステップを実施する。図5は、研削ステップが実施される研削装置30を模式的に示す斜視図である。まず、研削装置30について説明する。
研削装置30の基台32上には、円盤状のターンテーブル34が水平面内において回転可能に設けられている。ターンテーブル34の上面には、円周方向に120度離間して3個のチャックテーブル36が備えられている。ターンテーブル34は、各チャックテーブル36をウェーハ1の搬入出領域、第1の加工領域、または、第2の加工領域にそれぞれ位置付ける。チャックテーブル36は、レーザ加工装置2のチャックテーブル22と同様に構成される。
ターンテーブル34の後方に隣接する位置には、コラム40が立設されている。コラム40の前面には、2組の研削ユニット38a,38bが設けられている。例えば、該研削ユニット38aは該第1の加工領域に設けられ、該研削ユニット38bは該第2の加工領域に設けられる。
研削ユニット38aは、スピンドルモータ42aによって回転駆動される研削ホイール44aに保持された研削砥石46aを備えている。研削ユニット38bは、スピンドルモータ42bによって回転駆動される研削ホイール44bに保持された研削砥石46bを備えている。
該研削ホイール44a,44bは、加工送りユニット48a,48bにより上下移動されるように構成されている。該研削ホイール44a,44bが下方に移動して研削砥石46a,46bがチャックテーブル36上に保持されるウェーハ1に接触すると、該ウェーハ1が研削される。
基台32の前側にはカセット載置台50a,50bが設けられている。カセット載置台50a上には、例えば、研削加工前のウェーハ1を収容したカセット52aが載置される。カセット載置台52bには、例えば、研削加工後のウェーハ1を収容するためのカセット52bが載置される。
基台32上には、カセット載置台50a,50bに隣接してウェーハ1を搬送するウェーハ搬送ロボット54が据え付けられている。基台32には更に、複数の位置決めピンでウェーハ1の位置を決める位置決めテーブル56と、ウェーハ1をチャックテーブル36に載せるウェーハ搬入機構(ローディングアーム)58と、ウェーハ1をチャックテーブル36から搬出するウェーハ搬出機構(アンローディングアーム)60と、研削されたウェーハを洗浄及びスピン乾燥するスピンナ洗浄装置62と、が配設されている。
該ウェーハ搬出機構(アンローディングアーム)60は、アームの先端に吸引保持ユニット60a(図7(A)参照)を有する。該吸引保持ユニット60aは、下部に多孔質部材を備える。該多孔質部材の下面は該吸引保持ユニット60aの吸引面60c(図7(A)参照)となっており、該吸引面60cは、該吸引保持ユニット60aの内部に形成された吸引路60b(図7(A)参照)を通じて吸引源(不図示)に接続されている。該ウェーハ搬出機構60は、研削加工後のウェーハ1の裏面1b側を吸引保持する。
基台32の該ターンテーブル34と、該スピンナ洗浄装置62と、の間の領域には、スポンジローラ64が配設されている。該スポンジローラ64は、該吸引保持ユニット60aに吸引保持されて搬出されるウェーハ1の表面1a側に貼着された保護テープ11を洗浄する機能を有する。
研削ステップでは、まず、ウェーハ1の表面1aを下側に向け、搬入出領域に位置付けられたチャックテーブル36の保持面36a上にウェーハ1を載せ、ウェーハ1をチャックテーブル36上に吸引保持させる。図6(A)は、研削加工前のウェーハを模式的に示す断面図である。図6(A)に示す通り、ウェーハ1は、表面保護テープ11を介して該チャックテーブル36に吸引保持される。その後、ターンテーブル34を回転させて、該チャックテーブル36を研削ユニット38aの下方の第1の加工領域に移動させる。
次に、チャックテーブル36を保持面36aに垂直な軸の周りに回転させ、研削ホイール44aを回転させ、研削ホイール44aを下降させる。研削砥石46aがウェーハ1の裏面1bに接触すると、該裏面1bの研削が開始される。図6(B)、研削ステップを模式的に示す断面図である。
ウェーハ1に改質層13から表面1aに至るクラック17が形成されていない場合、研削でウェーハ1に加わる力により該改質層13から該ウェーハ1の表面に伸長するクラック17が形成される。研削ホイール44aをさらに所定の高さ位置にまで下降させてウェーハ1を所定の厚さに薄化されると、該改質層13が除去される。
なお、研削ステップは、研削ユニット38a及び研削ユニット38bのいずれか一方のみを使用して実施してもよく、両方を使用して実施してもよい。例えば、研削ユニット38aで加工送り速度の速い粗研削を実施し、研削ユニット38bで加工送り速度の遅い仕上げ研削を実施する。この場合、比較的大きい砥粒を含む研削砥石を研削ユニット38aの研削ホイール44aに装着し、比較的小さい砥粒を含む研削砥石を研削ユニット38bの研削ホイール44bに装着する。
研削ユニット38a及び研削ユニット38bの両方を使用して研削ステップを実施する場合、研削ユニット38aによる研削加工を実施した後、ターンテーブル34を回転させて該チャックテーブル36を研削ユニット38bの下方の第2の加工領域に移動させる。そして、該研削ユニット38bによりウェーハ1の裏面1b側をさらに研削する。
なお、研削ユニット38bに代えて研磨パッドを備える研磨ユニットが第2の加工領域に備えられていてもよく、該研削ユニット38bにより裏面1bが研削されたウェーハ1の該裏面1bを該研磨ユニットで研磨してもよい。
また、ウェーハ1に形成されたデバイス5がBAWデバイスである場合、研削により該ウェーハ1の裏面1b側に微小な凹凸形状を形成してもよい。この場合、例えば、該ウェーハ1の裏面1b側に粗い研削を実施する。
研削ステップを実施した後、ウェーハ1を該チャックテーブル36から搬出する搬出ステップを実施する。図7(A)を用いて搬出ステップを説明する。該搬出ステップでは、まず、該ウェーハ1を保持するチャックテーブル36を、搬入出領域に移動させる。そして、ウェーハ搬出機構(アンローディングアーム)60を回転させて、先端の吸引保持ユニット60aの吸引面60cを該ウェーハ1の裏面1b側に接触させる。
その後、該チャックテーブル36によるウェーハ1の吸引保持を解除させるとともに、該吸引保持ユニット60aに該ウェーハ1を吸引保持させる。このとき、該吸引保持ユニット60aに少なくとも該ウェーハ1の該外周余剰領域を吸引させる。ただし、該吸引保持ユニット60aは、該ウェーハ1のデバイス領域を合わせて吸引してもよい。そして、該ウェーハ搬出機構(アンローディングアーム)60を回転させて、研削加工後のウェーハ1を該チャックテーブル36から搬出する。
なお、クラック17が形成された該ウェーハ1を薄化すると、該ウェーハ1に反りが生じるように力が働く場合がある。仮に、該ウェーハ1のすべてのストリート3に沿って該デバイス領域7及び外周余剰領域9に渡って改質層13から伸長するクラック17が形成されている場合、該外周余剰領域9は補強部としては機能しなくなり、該ウェーハ1が反る場合がある。すると、搬出ステップで該吸引保持ユニット60aにウェーハ1を吸引保持させる際に、適切に負圧を作用できずに、該ウェーハ1を吸引保持できない。
これに対して本実施形態では、一部のストリート3を除きすべてのストリート3に沿って該外周余剰領域9にクラック17が形成されない。そのため、ウェーハ1に反りが生じるように働く力が生じる場合でも、該外周余剰領域9が補強部として機能するため、該ウェーハ1に生じる反りが小さくなる。すると、吸引保持ユニット60aは負圧をウェーハ1に適切に作用でき、該ウェーハ1を適切に吸引保持できる。
ウェーハ1に形成されたデバイス5がBAWデバイスである場合、該搬出ステップを実施した後、ウェーハ1の表面1aに貼着された表面保護テープ11を洗浄する表面保護テープ洗浄ステップを実施するのが好ましい。
研削ステップでウェーハ1の裏面1b側が研削されると研削屑が発生する。研削ステップを実施している間、該ウェーハ1の表面1a側はチャックテーブル36に吸引されている。そのため、該表面1aに貼着された表面保護テープ11と、該チャックテーブル36の保持面36aと、の間に該研削屑が進入し、該表面保護テープ11に該研削屑が付着する場合がある。
この場合、研削されたウェーハ1がカセット52bに収容されたときに、該表面保護テープ11から該研削屑が脱落し、該ウェーハ1の下部に収容された他のウェーハに該研削屑が付着する場合がある。そこで、該カセット52bにウェーハ1を収容する前に表面保護テープ洗浄ステップを実施して、該表面保護テープ11を洗浄する。
研削装置30の該ターンテーブル34と、該スピンナ洗浄装置62と、の間の領域には、スポンジローラ64が配設されている。該スポンジローラ64は、該吸引保持ユニット60aに吸引保持されて搬出されるウェーハ1の表面1a側に貼着された表面保護テープ11を洗浄する機能を有する。
図7(A)に示す模式的な断面図には、該吸引保持ユニット60aに吸引保持されたウェーハ1の該表面保護テープ11の洗浄の様子が示されている。表面保護テープ洗浄ステップでは、例えば、スポンジローラ64を回転させながら該表面保護テープ11に接触させ、該表面保護テープ11を洗浄する。
ウェーハ1に反りが生じている場合、吸引保持ユニット60aによる吸引力をウェーハ1に十分に作用できずに、該スポンジローラ64で表面保護テープ11を洗浄している際に該ウェーハ1が吸引保持ユニット60aから脱落する恐れがある。特に、ウェーハ1にBAWデバイスが形成されている場合、ウェーハ1の裏面1b側には粗い研削が実施されて微小な凹凸形状が形成されるため、吸引保持ユニット60aによる負圧が特にリークし易くウェーハ1がより脱落しやすい。
しかし、本実施形態に係るウェーハの加工方法では、ウェーハ1の外周余剰領域9が補強部として機能するためウェーハ1の反りを抑制できる。したがって、本実施形態に係るウェーハの加工方法によるとウェーハ1の裏面1b側が粗く研削されている場合を含め、表面保護テープ洗浄ステップにおいてウェーハ1が脱落する恐れが低減される。
表面保護テープ11が洗浄されたウェーハ1は、スピンナ洗浄装置62に搬送され、該スピンナ洗浄装置62によりウェーハ1の裏面1b側が洗浄される。該スピンナ洗浄装置62により洗浄されたウェーハ1は、カセット52bに収容される。その後、カセット52bを該研削装置30から搬出する。
次に、該ウェーハ1の該裏面1bにエキスパンドシートを貼着し、該表面保護テープ11を除去する転写ステップを実施する。図7(B)は、転写ステップを模式的に示す断面図である。カセット52bから取り出されたウェーハ1を該裏面1b側が下方に向いた状態でウェーハ1を環状のフレーム19に張られたエキスパンドシート21の上に載せて、該ウェーハ1の裏面1b側に該エキスパンドシート21を貼着する。
次に、上方側に向けられた表面1aから表面保護テープ11を剥離させる。該転写ステップを実施すると、ウェーハ1が環状のフレーム19に張られたエキスパンドシート21に保持される。
転写ステップを実施した後、エキスパンドシート21を径方向に拡張することでウェーハ1を個々のデバイスチップに分割する拡張ステップを実施する。該拡張ステップについて、図8(A)及び図8(B)を用いて説明する。図8(A)は、エキスパンドシート21を拡張する前のウェーハ1を模式的に示す断面図であり、図8(B)は、拡張ステップを模式的に示す断面図である。
エキスパンドシート21の拡張には図8(A)及び図8(B)に示す拡張装置66を使用する。該拡張装置66は、円筒状の拡張ドラム68と、該拡張ドラム68の外周側に配された複数のクランプ70を備えるフレーム保持ユニット76と、を含む。
該フレーム保持ユニット76は、一端がシリンダ72に保持されたロッド74により支持されている。該シリンダ72はロッド74を上下方向に移動でき、該シリンダ72を作動させると、該拡張ドラム68と、該フレーム保持ユニット76と、は相対的に上下方向に移動する。
該環状のフレーム19に張られたエキスパンドシート21を介して拡張ドラム68の上にウェーハ1を載せるとき、環状のフレーム19をクランプ70で挟持できるように該拡張ドラム68と、該フレーム保持ユニット76と、は互いの相対的な高さが調整される。
図8(A)に示す通り、拡張ステップでは、まず、環状のフレーム19に張られたエキスパンドシート21に貼着されたウェーハ1を拡張ドラム68の上に載せて、環状フレーム19をクランプ70により挟持する。次に、図8(B)に示す通り、該フレーム保持ユニット76を該拡張ドラム68に対して下方向に移動させる。すると、エキスパンドシート21が径方向に拡張される。
該ウェーハ1の外周余剰領域9には、上述のレーザ加工ステップにおいてレーザビームが照射されず改質層13が形成されない。仮に、該円状改質層15に改質層非形成領域15aが設けられていない場合、エキスパンドシート21を径方向に拡張しても該外周余剰領域9が補強部として機能してデバイス領域7に径方向に向いた力を作用しにくい。したがって、エキスパンドシート21を拡張する前に該外周余剰領域9を除去しなければならないが、工数が増えて手間がかかる。
これに対して、本実施形態に係るウェーハの加工方法では、複数箇所において改質層が形成されない改質層非形成領域が設けられた断続的な円状に該円状改質層15が形成される。すると、例えば、拡張ステップでエキスパンドシート21を拡張したとき、ウェーハ1の該デバイス領域7に形成された該クラック17から該改質層非形成領域15aを通りウェーハ1の外周端に到達するクラックが形成され易い。
すなわち、該円状改質層15の該改質層非形成領域15aは、該デバイス領域7から該ウェーハ1の外周端に到達するクラックの形成経路となる。該クラックが該ウェーハ1の外周端に到達すると、該外周余剰領域9が容易に分割されるため、該デバイス領域7にも径方向に向いた力が伝達され、ウェーハ1が個々のデバイスチップに分割される。
以上に説明したウェーハの加工方法により、ウェーハ1を容易に分割できる。
なお、本発明は、上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、円状改質層15が有する改質層非形成領域15aの数が4である場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、改質層非形成領域15aの数は8でもよい。該改質層非形成領域15aの数は、外周余剰領域9が補強部としての機能を発揮する一方で、該ウェーハ1の分割が容易となる範囲で適宜決定される。
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。