本発明の第1の実施の形態による打撃作業機の一例であるハンマドリル1について、図1乃至図9を参照しながら説明する。ハンマドリル1は、被加工材(例えば、コンクリート、鉄鋼、木材等)に穿孔穴を形成したり、打撃力を加えることによって破砕したりするための電動式の打撃作業機である。ハンマドリル1は、動作モードとして、先端工具P1が回転し被加工材に穿孔し、且つ、被加工材を打撃する「回転・打撃モード」と、先端工具P1が被加工材を打撃する「打撃モード」とを備えている。
以下の説明においては、図1に示されている「上」を上方向、「下」を下方向、「前」を前方向、「後」を後方向と定義する。また、ハンマドリルを後から見た場合の「右」を右方向、「左」を左方向と定義する。本明細書において寸法、数値等について言及した場合には、当該寸法及び数値等と完全に一致する寸法及び数値だけでなく、略一致する寸法及び数値等(例えば、製造誤差の範囲内である場合)を含むものとする。「同一」、「直交」、「平行」、「一致」、「面一」、「一定」等についても同様に「略同一」、「略直交」、「略平行」、「略一致」、「略面一」、「略一定」等を含むものとする。
図1に示されているように、ハンマドリル1は、ハウジング2と、モータ3と、インバータ回路基板部4と、制御部5と、動力伝達部6と、出力部7と、加速度センサ8と、動作モード切替部9とを主に有している。
図1に示されているように、ハウジング2は、モータハウジング21と、ギヤハウジング22と、バックカバー23と、電池パックQを着脱可能なハンドルハウジング24と、加速度センサ支持部25とを有している。ハウジング2は、本発明における「ハウジング」の一例である。
モータハウジング21は、上下方向に延びる円筒形状をなしており、モータ3と、インバータ回路基板部4とを収容している。
モータ3は、DCブラシレスモータであり、回転軸31、ロータ32、ステータ33及びファン34を有している。
回転軸31は、上下方向に延び、ハウジング2に回転可能に支承されている。回転軸31の上端部には、回転軸31と一体に回転するピニオン31Aが固定されている。
ロータ32は、図示せぬ永久磁石を有する回転子であり、回転軸31と一体回転可能に回転軸31に設けられている。
ステータ33は、図示せぬステータ巻線33A(図6)を有する固定子である。ステータ33は、モータハウジング21の内周面に固定されている。また、ステータ巻線33Aは、スター結線された3相のコイルU、V、Wを有している。
ファン34は、ピニオン31Aの下方において、回転軸31と一体回転可能に回転軸31に固定されている。ファン34の下部には磁石34Aが固定されている。
インバータ回路基板部4は、モータ3のステータ33の上方に設けられている。インバータ回路基板部4は、基板40を有している。基板40には、電池パックQの電力をモータ3に供給するとともにモータ3の回転を制御するためのスイッチング回路41、ファン34の磁石34Aの磁場を検出可能な磁気センサ部42等が実装されている(図6参照)。
ギヤハウジング22は、金属製であり、モータハウジング21の上部に接続されており、前後方向に延びている。ギヤハウジング22は、その内部に、動力伝達部6と、出力部7と、動作モード切替部9の一部とを収容している。また、ギヤハウジング22には、作業者が把持するサイドハンドル2Aが取付けられている。
動力伝達部6は、モータ3と出力部7との間に介在している。動力伝達部6は、動力変換機構61と、上端部にベベルギヤが形成された回転力伝達機構62とを有しており、モータ3の回転軸31の回転運動を前後方向への往復動に変換し先端工具P1を打撃することで先端工具P1に前後方向への打撃力を生じさせることが可能、且つ、回転軸31の回転運動を出力部7に伝達することにより、先端工具P1に軸線Aを中心とする回転方向に回転力を生じさせることが可能に構成されている。また、動力伝達部6は、動力伝達状態を切替えることで先端工具P1の駆動状態を変更可能に構成されている。具体的には、動力伝達部6は、先端工具P1に打撃力が伝達される一方回転力は伝達されない「打撃モード」と、先端工具に打撃力及び回転力が伝達される「回転・打撃モード」との間で動力伝達状態を切替可能に構成されている。なお、先端工具に打撃力が伝達される一方回転力は伝達されない「打撃モード」と、先端工具に回転力が伝達される一方打撃力は伝達されない「回転モード」との間で動力伝達状態を切替可能に構成されていても良い。なお、以下の説明においては、「軸線Aを中心とする回転方向」のことを単に「回転方向」と呼ぶ。動力伝達部6は、本発明における「動力伝達部」の一例である。前後方向は、本発明における「第1方向」の一例であり、回転方向は、本発明における「第1方向と交差する第2方向」の一例である。打撃モードは、本発明における「第1動力伝達状態」の一例であり、回転・打撃モードは、本発明における「第2動力伝達状態」の一例である。
出力部7は、ギヤハウジング22内において回転力伝達機構62の上方に配置され、モータ3によって駆動される。出力部7は、打撃子71と、シリンダ72と、先端工具P1を着脱可能な装着部73とを有している。
打撃子71は、動力変換機構61により往復動可能に構成されている。具体的には、打撃子71の前端は、装着部73に装着される先端工具P1の後端に当接可能に構成され、打撃子71が前後方向に往復動することに伴い、先端工具P1に打撃力が伝達される。
シリンダ72は、回転力伝達機構62を介してモータ3の回転力を受けることによって前後方向に延びる軸線Aを中心に回転可能に構成されている。また、シリンダ72が回転することによって装着部73が回転し、装着部73に装着された先端工具P1が軸線Aを中心に回転可能に構成されている。装着部73は、本発明における「装着部」の一例である。
図1及び図2に示されているように、動作モード切替部9は、ギヤハウジング22の後部の上部に位置し、動力伝達部6の動力伝達状態を機械的に切替可能に構成されている。より詳細には、動作モード切替部9は、回転力伝達機構62を介して回転運動を出力部7に伝達する状態と、回転力伝達機構62を介した回転運動の出力部7への伝達を遮断する状態とを切替えることにより、打撃モードと回転・打撃モードとを切替可能に構成されている。また、本実施の形態においては、作業時における、動力変換機構61を介した先端工具P1への打撃力の伝達は、遮断不能に構成されている。図1及び図2に示されているように、動作モード切替部9は、操作部91と、スリーブ92とを有している。動作モード切替部9は、本発明における「切替機構部」の一例である。
操作部91は、動作モードを切替える際に作業者が操作する部分であり、図2に示されているように、上面視略円形状をなしている。操作部91は、回転操作可能に構成されている。なお、本実施の形態においては、操作部91の状態を判別するための磁気センサ等は設けられておらず、制御部5が動作モード切替部9の状態から選択されたモードを判別することは不能に構成されている。操作部91は、本発明における「操作部」の一例である。
図1に示されているように、スリーブ92は、前後方向に延びる略円筒形状をなしている。スリーブ92の前端部には、回転力伝達機構62のベベルギヤと噛合可能なベベルギヤが形成されている。スリーブ92の内径は、シリンダ72の外径よりも僅かに大きく構成されている。スリーブ92には、シリンダ72が挿通されている。スリーブ92は、操作部91に対する操作に応じ、シリンダ72に対して前後方向に相対移動可能に構成されている。また、スリーブ92は、シリンダ72と一体回転可能に構成されている。
バックカバー23は、上下方向に延び、モータハウジング21及びギヤハウジング22の後部を覆うように配置されている。バックカバー23には、被挿通部23A及び接続部23Bが設けられている。また、バックカバー23の下部は、加速度センサ8を覆っている。
被挿通部23Aは、バックカバー23の下方において後方に突出している。被挿通部23Aには、左右方向に貫通する貫通孔が形成されている。
接続部23Bは、バックカバー23の上端部において、前後方向に延びている。
また、バックカバー23内には、制御部5が固定されている。制御部5は、ハンマドリル1の各種制御を行うように構成されている。制御部5は、平板状の基板51を有しており、当該基板にハンマドリル1を制御する各種回路等が実装されている(図6参照)。
図1に示されているように、ハンドルハウジング24は、側面視略コ字状をなしており、バックカバー23の後方に位置している。ハンドルハウジング24は、把持部24A、第1接続部24B及び第2接続部24Cを有している。
把持部24Aは、作業時に作業者によって把持される部分であり、上下方向に延びている。把持部24Aの前部上部には、モータ3の始動及び停止を制御するための手動操作可能なトリガ24Dが設けられている。なお、把持部24Aの内部には、制御部5に接続されている図示せぬスイッチ機構が設けられている。スイッチ機構は、トリガ24Dが引操作すなわち始動操作された場合(例えば、作業者の指によってハンドルハウジング24内に向けて押込まれた場合)、モータ3を始動するための工具始動信号を制御部5に出力し、トリガ24Dに対する引操作が解除すなわち停止操作された場合(例えば、作業者がトリガ24Dから指を離して引操作を解除した場合)工具始動信号の出力を停止するように構成されている。
第1接続部24Bは、把持部24Aの下端部から前方に延出している。第1接続部24Bの前部の内部には、左右方向に延びるシャフト24Eが設けられている。シャフト24Eは、被挿通部23Aの貫通孔に挿通されている。ハンドルハウジング24は、シャフト24Eを支点として回動可能に構成されている。また、第1接続部24Bの下部には、電池パックQを装着可能な電池装着部24Fが設けられている。ハンマドリル1は、電池装着部24Fに装着された電池パックQからの電力供給によって駆動可能に構成されている。
第2接続部24Cは、把持部24Aの上端部から前方に延出している。第2接続部24Cには、図示せぬ弾性体を有する振動低減機構2Bが設けられ、第2接続部24Cは、振動低減機構2Bを介してバックカバー23の接続部23Bと接続されている。出力部7に軸線A方向の振動が発生した場合においても、ハンドルハウジング24がシャフト24Eを中心に回動し、振動低減機構2Bの図示せぬ弾性体が伸縮されることにより軸線A方向の振動が吸収され、把持部24Aを把持する作業者に軸線A方向の振動が伝わることが低減される。
加速度センサ支持部25は、モータハウジング21の後壁部の下部に設けられ、加速度センサ8を支持している。図4及び図5に示されているように、加速度センサ支持部25は、左右対称に構成されている。図3乃至図5に示されているように、加速度センサ支持部25は、収容壁部251と、弾性体252と、ネジを有する押圧部253とを有している。
図4に示されているように、収容壁部251は、後面視において略U字状をなし、図3に示されているように、モータハウジング21の後壁部から後方に突出している。
図3に示されているように、弾性体252は、収容壁部251内に収容されている。弾性体252のバネ定数は、収容壁部251の左右側壁よりも小さく構成されている。弾性体252は、本発明における「緩衝部材」の一例である。
加速度センサ8は、加速度センサ支持部25の収容壁部251内に配置され、ハウジング2の複数の方向におけるそれぞれの加速度を検出可能に構成されている。図1に示されているように、加速度センサ8は、制御部5と導線8Aを介して電気的に接続されており、検出したハウジング2の加速度の方向及び大きさに応じた加速度信号を制御部5に出力可能に構成されている。加速度センサ8は、少なくともハウジング2の前後方向及び回転方向(左右方向)の加速度を独立して検出可能に構成されている。また、本実施の形態においては、加速度センサ8は、先端工具P1の軸線Aから離間した位置に位置している。より詳細には、加速度センサ8は、上下方向における位置が電池パックQと重なるように設けられている。これにより、ハウジング2に生じる回転方向(左右方向)の加速度を適切に検出することが可能となる。加速度センサ8は、基板81と、ケース82とを有している。加速度センサ8は、本発明における「加速度検出部」の一例である。
ケース82は、樹脂製であり、図3に示されているように前後対称、図4に示されているように左右対称に構成されている。基板81は、ケース82内に配置されている。基板81は、上下方向及び左右方向に延びる平板状をなしている。基板81の後面には、ハウジング2の加速度を検出するための各種素子が実装されている。
図3に示されているように、ケース82は、その前後側面が弾性体252と当接した状態で押圧部253によってハウジング2に固定されている。また、図4に示されているように、ケース82の左右側面は、収容壁部251の左右側壁と直接当接している。
ここで、弾性体252のバネ定数が収容壁部251の左右側壁よりも小さく構成されているため、加速度センサ8は、加速度センサ8のハウジング2に対する前後方向の移動許容量が加速度センサ8のハウジング2に対する軸線Aを中心とした回転方向の移動許容量よりも大きくなるように加速度センサ支持部25に支持されている。これにより、先端工具P1の打撃方向におけるハウジング2の振動を検知してしまうことを抑制しつつ適切に先端工具P1の回転方向におけるハウジング2の加速度を検出することが可能となる。
次に、図6を参照しながら、ハンマドリル1、電池パックQの電気的構成について説明する。
図6に示されているように、電池パックQは、モータ3、制御部5等の電源となる複数の電池を収容している。
電池パックQは、プラス端子及びマイナス端子を有している。電池パックQがハンドルハウジング24の電池装着部24Fに装着されると、電池パックQのプラス端子及びマイナス端子は、それぞれハンマドリル1本体側の所定の端子に接続され、電池パックQの電圧が当該所定の端子間に印加されるように構成されている。
スイッチング回路41は、電池パックQの電力をモータ3に供給するとともにモータ3の回転を制御するためのインバータ回路であり、電池パックQとモータ3との間に接続されている。スイッチング回路41を構成する6個のスイッチング部材は、3相ブリッジ形式に接続されており、各ゲートは制御部5に接続され、各ドレイン又は各ソースは、モータ3のステータ巻線33AのコイルU、V、Wに接続されている。6個のスイッチング部材は、制御部5から出力される駆動信号(ゲート信号)に基づいて、ロータ32を所定の回転方向に回転させるスイッチング動作を行う。
磁気センサ部42は、3個の磁気センサを有している。3個の磁気センサは、例えばホール素子である。3個の磁気センサのそれぞれは、ファン34に固定された磁石34Aの磁場を検出可能に構成されている。また、磁石34Aの磁場を検出した場合、3個の磁気センサのそれぞれは、制御部5に信号を出力する。
加速度センサ8は、加速度検出回路80を有している。加速度検出回路80は、検出されたハウジング2の前後方向及び回転方向の加速度の値(大きさ)を示す信号(加速度信号)を制御部5に出力する回路である。
制御部5の基板51には、コントローラ51A、制御信号出力回路51B、回転子位置検出回路51C、温度検出回路51D、電池電圧検出回路51E、電流検出回路51F、降圧回路51G、制御系電源回路51H、通信回路51I、電池温度検出回路51J及び過放電検出回路51Kが搭載されている。
コントローラ51Aは、モータ3の制御に用いる処理プログラム及び各種データに基づいて演算を行う中央処理装置(CPU)を有する図示せぬ演算部と、当該処理プログラム、各種データ、各種閾値等を記憶するための図示せぬROMと、データを一時記憶するための図示せぬRAMを有する記憶部とを備えている。コントローラ51Aは、処理プログラムに従って、モータ3の制御を行う。
また、コントローラ51Aは、モータ3に対する基本的な制御として回転駆動制御を行う。回転駆動制御は、モータ3のロータ32を所定の回転方向に回転駆動させる制御であり、制御信号出力回路51Bに制御信号を出力することで行う。より詳細には、コントローラ51Aは、回転子位置検出回路51Cから出力された回転位置信号に基づいて、スイッチング部材のうちの導通させるスイッチング部材を交互に切り換えるための制御信号を形成し、当該制御信号を制御信号出力回路51Bに出力する。当該回転駆動制御において、コントローラ51Aは、スイッチング部材を駆動するための制御信号をパルス幅変調信号(PWM信号)として出力する。コントローラ51Aは、本発明における「制御部」の一例である。
また、本実施の形態においては、回転軸31(モータ3)の単位時間当たりの回転数[rpm](以下の説明においては、単に「回転数」と呼ぶ。)が各動作モードに応じた目標回転数となるようにフィードバック制御を行いながら回転駆動制御を行う。より詳細には、コントローラ51Aは、回転子位置検出回路51Cから出力される回転位置信号に基づいて回転軸31の回転数を算出し、算出した回転数と目標回転数とを比較し、当該比較結果に基づいて、回転軸31の回転数が目標回転数となるようにPWM信号のデューティ比を変更する処理を高速で繰り返し実行することによって、定回転数制御を行う。
また、本実施の形態において、モータ3の回転軸31の回転数は、トリガ24Dの押圧量によらない。モータ3の回転軸31の回転数がトリガ24Dの押圧量によらずに制御部5によって制御されるため、好適に動作モードに応じた作業を行うことが可能となる。
制御信号出力回路51Bは、6個のスイッチング部材のそれぞれのゲート及びコントローラ51Aに接続されている。制御信号出力回路51Bは、コントローラ51Aから出力された制御信号に基づいて6個のスイッチング部材の各ゲートに駆動信号を出力する回路である。
回転子位置検出回路51Cは、磁気センサ部42から出力された信号に基づいてロータ32の回転位置を検出し、検出した回転位置を示す信号(回転位置信号)をコントローラ51Aに出力する回路である。本実施の形態においては、回転軸31と一体に回転するファン34に取付けられた磁石34Aの磁場を検出することで回転軸31の回転位置を検出するように構成されているが、回転軸31の回転位置を直接検出するように構成されていても良い。
温度検出回路51Dは、スイッチング回路41の温度検出のための回路であり、スイッチング回路41の近傍に設けられた図示せぬサーミスタ等の感温素子を含んで構成されている。温度検出回路51Dは、検出した温度の値を示す信号(回路温度信号)をコントローラ51Aに出力する回路である。
電池電圧検出回路51Eは、電池パックQの電池電圧を検出し、検出した電圧の値を示す信号(電池電圧信号)をコントローラ51Aに出力する回路である。
電流検出回路51Fは、スイッチング回路41と、電池パックQとの間に設けられたシャント抵抗50の電圧降下値を用いて、モータ3に流れる電流(モータ電流)を検出し、検出したモータ電流の値を示す信号(電流値信号)をコントローラ51Aに出力する回路である。
降圧回路51Gは、電池パックQの電池から入力された電圧(例えば14.4V)を降圧(例えば5V)して制御系電源回路51Hに出力する回路である。
制御系電源回路51Hは、コントローラ51Aに電源電圧を供給するための定電圧回路である。制御系電源回路51Hは、降圧回路51Gから入力された電圧(降圧後の電圧)を安定化してコントローラ51Aに供給する。
通信回路51Iは、電池識別情報や工具識別情報をコントローラ51Aと電池パックQ内に設けられるマイコンとの間で入出力する回路である。
電池温度検出回路51Jは、電池パックQの電池の温度を検出し、検出した温度の値を示す信号(電池温度信号)をコントローラ51Aに出力する回路である。
過放電検出回路51Kは、電池パックQの過放電を検出可能であり、過放電を検出した場合には、過放電を示す信号をコントローラ51Aに出力する回路である。
次に図1及び図2を参照しながら、ハンマドリル1の動作モード切替作業について、説明する。
動作モードを切替える際に、作業者は、操作部91を回転させる。本実施の形態においては、図2に示されているように、操作部91に形成された三角マーク91Aが略後方を向いているときには回転・打撃モードが選択された状態となる。一方で、操作部91に形成された三角マーク91Aが略前方を向いているときには打撃モードが選択された状態となる。
具体的には、図2に示されているように、操作部91に形成された三角マーク91Aが略後方を向いている場合には、図1に示されているスリーブ92がシリンダ72に対して前方に移動し、スリーブ92のベベルギヤが回転力伝達機構62のベベルギヤと噛合することにより、回転力伝達機構62を介して出力部7(シリンダ72)を回転運動させ先端工具P1に回転力を伝達可能な状態となる。本実施の形態においては、これと同時に、動力変換機構61を介して出力部7(打撃子71)を往復動させ先端工具Pへ打撃力を伝達可能である。つまり、打撃力及び回転力を先端工具Pに伝達可能な回転・打撃モードとなる。
また、操作部91に形成された三角マーク91Aが略前方を向いている場合には、スリーブ92がシリンダ72に対して後方に移動し、スリーブ92のベベルギヤと回転力伝達機構62のベベルギヤとの噛合が解除されることにより回転力伝達機構62を介した出力部7(シリンダ72)への回転力の伝達が遮断される。このときに、動力変換機構61を介して出力部7を往復動させ先端工具P1へ打撃力のみが伝達可能な打撃モードとなる。
次に、図7に示すフローチャートに沿って、制御部5のコントローラ51Aによる回転・打撃モードを用いた穴あけ作業時に発生するキックバックを検出する処理について説明する。
作業者が、電池パックQをハンドルハウジング24の電池装着部24Fに装着すると、コントローラ51A(制御部5)に電力が供給され、これを契機に、図7のフローチャートに示される処理が開始される。
ステップS101においてコントローラ51Aは、トリガ24Dに対して引操作が行われているか否かを判断する。当該判断は、図示せぬスイッチ機構から工具始動信号が出力されているか否かで判断する。
ステップS101において、トリガ24Dに対して引操作が行われていないと判断した場合(ステップS101:No)、コントローラ51Aは、ステップS101の判断処理を繰り返し行う。なお、作業開始時においては、モータ3は駆動していないため、ステップS110の処理は実行されない。一方、ステップS101において、トリガ24Dに対して引操作が行われていると判断した場合(ステップS101:Yes)、コントローラ51Aは、ステップS102でモータの駆動制御(定速度制御)を開始する。
具体的には、ステップS102において、制御信号出力回路51Bは、コントローラ51Aから出力された信号に基づいてスイッチング回路41のスイッチング部材の各ゲートに駆動信号を出力する。スイッチング部材は、制御部5から出力される駆動信号に基づいてロータ32を所定の回転方向に回転させるスイッチング動作を開始する。これによりモータ3が駆動し、モータ3の駆動力は動力伝達部6を介して出力部7に伝達され、作業者が選択した動作モードに応じて先端工具Pが回転・打撃を開始する。
次に、コントローラ51Aは、回転軸31の回転数とハウジング2の回転方向の加速度を検出する(ステップS103)。具体的には、コントローラ51Aは、回転子位置検出回路51Cから出力される回転位置信号に基づいて回転軸31の回転数を算出する。また、加速度センサ8は、ハウジング2に発生する加速度を検出し、検出された加速度の値(大きさ)を示す加速度信号をコントローラ51Aに出力する。回転子位置検出回路及びコントローラ51Aは、本発明における「回転速度検出部」の一例である。
次に、コントローラ51Aは、ステップS103において検出した回転軸31の回転数と、所定時間前の回転軸31の回転数との差が、第1閾値を超えるか否かを判断する(ステップS104)。言い換えると、コントローラ51Aは、回転軸31の回転数の減少率が回転数に関する第1閾値を超えるか否かを判断する。本実施の形態においては、所定時間は「20ms」であり、第1閾値は「1500[rpm]」である。なお、前記所定時間及び第1閾値は、キックバックの発生を判別するために適切な範囲にあればよく、例えば、前記所定時間を20msよりも短い時間や長い時間とすることも可能である。第1閾値は、本発明における「第1閾値」の一例である。また、「ロータ32の回転数と、所定時間前のロータ32の回転数との差が、第1閾値を超えるか否か」は、本発明における「第1条件」の一例である。
ステップS104において検出した回転軸31の回転数と、20ms前の回転軸31の回転数との差が1500[rpm]を超えると判断する場合(ステップS104:Yes)、コントローラ51Aは、ステップS105において、回転数フラグ処理を実行する。ここで、回転数フラグとは、回転軸31の回転数と20ms前の回転軸31の回転数との差が1500[rpm]を超えたか否かを示す1ビット(2値)で構成されるフラグである。本実施の形態においては、コントローラ51Aが回転軸31の回転数と20ms前の回転軸31の回転数との差が1500[rpm]を超えたと判断する場合(ステップS104:Yes)、ステップS105において「1」がセットされる。なお、本実施の形態においては、回転数フラグの初期値として「0」がセットされている。また、本実施の形態においては、ステップS105において、一旦回転数フラグとして「1」がセットされた場合には、100msの間、当該「1」がセットされた状態が保持され、100ms経過後に「0」に初期化されるように構成されている。なお、作業開始時においては、所定時間前の回転軸31の回転数が存在しないため、当該所定時間経過後にステップS105を実行するように構成されている。
ステップS105において回転数フラグ処理を行った後、又は、ステップS104においてロータ32の回転数と20ms前のロータ32の回転数との差が第1閾値を超えていないと判断する場合のいずれにおいても、コントローラ51Aは、ステップS106において、ハウジング2に発生している回転方向の加速度の大きさが第2閾値を超えるか否かを判断する。本実施の形態においては、第2閾値は、「4[G]」である。なお、前記第2閾値は、キックバックの発生を判別するために適切な範囲にあればよく、例えば、4Gよりも大きい値や小さい値とすることも可能である。第2閾値は、本発明における「第2閾値」の一例である。また、「ハウジング2に発生している回転方向の加速度の大きさが第2閾値を超えるか否か」は、本発明における「第2条件」の一例である。
ステップS105において、ハウジング2に発生している回転方向の加速度の大きさが4[G]を超えると判断する場合(ステップS106:Yes)、コントローラ51Aは、ステップS107において、加速度フラグ処理を実行する。ここで、加速度フラグとは、ハウジング2に発生している回転方向の加速度の大きさが4[G]を超えたか否かを示す1ビット(2値)で構成されるフラグである。本実施の形態においては、コントローラ51Aがハウジング2の回転方向の加速度が4[G]を超えたと判断する場合(ステップS106:Yes)、ステップS107において「1」がセットされる。なお、本実施の形態においては、加速度フラグの初期値として「0」がセットされている。また、本実施の形態においては、ステップS107において、一旦加速度フラグとして「1」がセットされた場合には、100msの間、当該「1」がセットされた状態が保持され、100ms経過後に「0」に初期化されるように構成されている。
ステップS107において、加速度フラグ処理を行った後、又は、ステップS106においてハウジング2に発生する回転方向の加速度が第2閾値を超えていないと判断する場合のいずれにおいても、コントローラ51Aは、ステップS108において、回転数フラグ及び加速度フラグのいずれにも「1」がセットされているかを判断する。
回転数フラグと加速度フラグのいずれにも「1」がセットされていると判断する場合(ステップS108:Yes)、コントローラ51Aは、キックバックが発生していると判断しモータを停止する(ステップS109)。
一方、回転数フラグと加速度フラグの少なくとも一方に「1」がセットされていないと判断する場合(ステップS108:No)、以降トリガ24Dの状態を監視し(ステップS101)、上記のようなキックバックを判別する処理(ステップS103〜ステップS108)を繰り返し行う。なお、トリガ24Dの引操作が解除された場合(ステップS101:No)、モータの駆動を停止する(ステップS110)。
上述のように、制御部5は、回転子位置検出回路51C及びコントローラ51Aにより検出された回転軸31の回転速度に関する条件及び加速度センサ8により検出された加速度に関する条件のいずれもが満たされたときに回転軸31の回転を停止させる。つまり、先端工具P1に回転力が付加された穴あけ作業時におけるキックバック発生時に大きく変化するモータ3の回転軸31の回転速度に応じて回転軸31の回転を停止させるため、先端工具P1に打撃力のみが付加され穴あけ作業時と比較してモータ3の回転軸31の回転速度の変化の小さいハツリ作業時において、作業者のハンマドリル本体の振り回し動作等に起因する加速度の変化による予期せぬモータ3の駆動停止が抑制され、作業性が向上する。また、当該回転軸31の回転速度に関する条件を満たすのと同時に、ハウジング2に発生する加速度に関する条件を満たした場合に回転軸31の回転を停止させるように構成されているため、より精度良く、穴あけ作業時に発生するキックバックを検出し、モータ3の駆動を停止させることが可能となる。
次に、図8及び図9に示すグラフを参照しながら、本実施の形態によるハンマドリル1の効果について説明する。
従来から、ハンマドリルを使用した回転・打撃モード(回転モード)による穴あけ作業時に先端工具が被加工材の固い箇所に引っ掛かり先端工具がロックしてしまう場合があり、ハンマドリル本体が先端工具の駆動によって大きく振り回されるキックバックが生じ、作業性が悪くなってしまう可能性があった。そこで、キックバックを精度良く検出する打撃作業機が望まれていた。
ここで、図8(a)に示されているように、打撃モードによるコンクリートのハツリ(破砕)作業においては、先端工具を被加工材に対して押し付ける動作と離間させる動作とを反復して行うため、電流値の変動が激しく、当該ハツリ作業時における電流値の変動と回転・打撃モード(回転モード)による穴あけ作業時におけるキックバックに起因する電流値の変動(図9(a))とを識別することは困難であった。つまり、電源電流値からキックバックの発生を検出することは困難であった。
また、ハウジングに発生する加速度のみをキックバックの発生を判別するための基準として用いる場合には、打撃モードによるコンクリートのハツリ作業においては作業者自身がハンマドリル本体を振り回して作業するため、加速度センサが作業者自身によるハンマドリル本体の振り回しに起因する加速度を検出し、キックバックが発生していないにもかかわらずモータの駆動が停止してしまい、作業性が悪くなってしまう可能性があった。また、図8(b)及び図9(b)に示されているように、キックバックの発生していない通常作業時においても、ハウジングに発生する回転方向の加速度の値は変動するため、当該加速度のみを基準としてキックバックの発生を検出することは困難であった。
また、動作モード切替部の状態を判別する手段(磁気センサ等)を設けることが考えられるが、部品点数が増加してしまう可能性があった。
しかしながら、本実施の形態においては、回転軸31の回転速度を基準にキックバックの発生を判別する。図8(c)及び図9(c)に示されているように、ハツリ作業であるか穴あけ作業であるかにかかわらず、キックバックの発生していない通常作業時における回転軸31の回転数の変動は小さい。つまり、本実施の形態においては、先端工具P1に回転力が付加された穴あけ作業時におけるキックバック発生時にのみ大きく変化するモータ3の回転軸31の回転速度に応じて回転軸31の回転を停止させるため、先端工具P1に打撃力のみが付加され穴あけ作業時と比較してモータ3の回転軸31の回転速度の変化の小さいハツリ作業時において、作業者のハンマドリル本体の振り回し動作等に起因する加速度の変化による予期せぬモータの駆動停止が抑制され、作業性が向上する。
また、図9(b)に示されているように、キックバック発生時においては、ハウジング2の回転方向の加速度が大きく変動するところ、本実施の形態においては、回転軸31の回転速度に関する条件を満たすのと同時に、ハウジング2に発生する加速度に関する条件を満たした場合に回転軸31の回転を停止させるように構成されているため、より精度良く、穴あけ作業時に発生するキックバックを検出し、モータの駆動を停止させることが可能となる。
また、従来から一般的にハンマドリルに設けられている、加速度センサや回転位置検出回路等を用いてキックバックを検出するため、部品点数の増加を抑制することが可能となる。
次に、図10乃至図14を参照しながら、本発明の第2の実施の形態にかかる打撃作業機の一例であるハンマドリル10について説明する。ハンマドリル10は、基本的に第1の実施の形態にかかるハンマドリル1と同一の構成を有しており、ハンマドリル1の構成と同一の構成については説明を適宜省略し、相違する構成について主に説明する。また、ハンマドリル10は、ハンマドリル1と同様の電気的構成を備えており、図7に示されるフローチャートに沿って、キックバックを判別する処理を行う。なお、本実施の形態においては、第1の実施の形態によるハンマドリル1の動作モード切替部9に相当する構成は設けられていない。
図7に示されているように、第2の実施の形態にかかるハンマドリル100においては、出力部7に替えて出力部17が設けられている。また、ギヤハウジング22に替えてギヤハウジング122が設けられている。
出力部17は、打撃子171と、シリンダ172と、装着部173とを有している。
打撃子171は、動力伝達部6の動力変換機構61により往復動可能に構成されている。具体的には、打撃子171の前端は、装着部173に装着される先端工具の後端に当接可能に構成され、打撃子171が前後方向に往復動することに伴い、先端工具に打撃力が伝達される。
シリンダ172は、動力伝達部6の回転力伝達機構62を介してモータ3の回転力を受けることによって前後方向に延びる軸線Aを中心に回転可能に構成されている。
装着部173は、第1工具保持部173Aと、第2工具保持部173Bとを有している。装着部173は、本発明における「装着部」の一例である。
図11に示されているように、第1工具保持部173Aは、固定部材122Aによってギヤハウジング22に固定されている。これにより、第1工具保持部173Aは、ハウジング2に対して相対的に回転不能に構成されている。また、図10及び図11に示されているように、第1工具保持部173Aは、その前部をなす第1係合部173Cを有している。第1工具保持部173Aは、本発明における「第1部分」の一例である。第1係合部173Cは、本発明における「第1係合部」の一例である。
第1係合部173Cには、図10及び図11に示されているように、略正六角柱形状に形成され前後方向に延びる挿入穴173aが形成されている。
第2工具保持部173Bは、シリンダ172と一体に回転可能に構成されている。いいかると、第2工具保持部173Bは、ハウジング2に対して相対回転可能に構成されている。図10及び図12に示されているように、第2工具保持部173Bは、その前部をなす第2係合部173Dを有している。第2工具保持部173Bは、本発明における「第2部分」の一例である。第2係合部173Dは、本発明における「第2係合部」の一例である。
第2係合部173Dには、図10及び図12に示されているように略正六角柱形状に形成され前後方向に延びる挿入穴173bが形成されている。
次に、図13及び図14を参照しながら、装着部173に選択的に着脱可能な先端工具P2及び先端工具P3の構成について説明する。なお、方向に関しては、先端工具P2及び先端工具P3がハンマドリル10に装着された状態を基準に説明する。先端工具P2は、本発明における「第1先端工具」の一例である。先端工具P3は、本発明における「第2先端工具」の一例である。
図13に示されているように、先端工具P2は、ビット部P21と、被係合部P22と、延出部P23と、規制部P24とを有している。
ビット部P21は、前後方向に延びる略円柱形状をなしている。ビット部P21の前端部は、前方に向かうに従い尖るように形成されている。
図13に示されているように、被係合部P22は、前後方向に延びる略正六角柱形状に形成されている。被係合部P22は、第1係合部173Cの略正六角柱形状に形成された挿入穴173aよりも僅かに小さく形成されている。つまり、軸線Aから被係合部P22の各面までの距離は、軸線Aから挿入穴173aを形成する各面までの距離よりも僅かに短く構成されている。これにより、第1係合部173Cと被係合部P22とは、係合可能である。また、ハウジング2に対して相対回転不能な第1係合部173Cと被係合部P22とが係合することにより、先端工具P2はハウジング2に対して相対回転不能となるように構成されている。被係合部P22は、本発明における「第1被係合部」の一例である。
図13に示されているように、延出部P23は、前後方向に延びる略円柱形状に形成されている。図13(a)に示されているように、延出部P23の半径は、軸線Aから被係合部P22の各面までの距離よりも短く構成されている。また、延出部P23の半径は、軸線Aから第2係合部173Dの挿入穴173bを形成する各面までの距離よりも短く構成されている。
規制部P24は、前後方向に僅かに延びる略円板形状に形成され、被係合部P22の前端に設けられている。図13(a)に示されているように、規制部P24の半径は、軸線Aから被係合部P22の各面までの距離よりも長く構成されている。
図14に示されているように、先端工具P3は、ビット部P31と、被係合部P32と、延出部P33と、規制部P34とを有している。
ビット部P31は、前後方向に延びる略円柱形状をなしている。ビット部P31の前端部は、前方に向かうに従い尖るように形成されている。また、ビット部P31の周面には、螺旋状のリブが先端工具P3の軸方向に延びるように設けられている。
図14に示されているように、被係合部P32は、前後方向に延びる略正六角柱形状をなしている。被係合部P32は、第2係合部173Dの略正六角柱形状に形成された挿入穴173bよりも僅かに小さく形成されている。つまり、軸線Aから被係合部P32の各面までの距離は、軸線Aから挿入穴173bを形成する各面までの距離よりも僅かに短く構成されている。これにより、第2係合部173Dと被係合部P32とは、係合可能である。また、ハウジング2に対して相対回転可能な第2係合部173Dと被係合部P32とが係合することにより、先端工具P3はハウジング2に対して相対回転可能となるように構成されている。被係合部P32は、本発明における「第2被係合部」の一例である。
図14に示されているように、延出部P33は、前後方向に延びる略円柱形状に形成されている。図13(a)に示されているように、延出部P33の半径は、軸線Aから被係合部P32の各面までの距離よりも短く構成されている。また、延出部P33の半径は、軸線Aから第1係合部173Cの挿入穴173aを形成する各面までの距離よりも短く構成されている。
規制部P34は、前後方向に僅かに延びる略円板形状に形成され、延出部P33の前端に設けられている。図14(a)に示されているように、規制部P34の半径は、延出部P33の半径よりも大きく構成されている。また、図には表れていないが、規制部P34の半径は、軸線Aから第1係合部173Cの挿入穴173aを形成する各面までの距離よりも長く構成されている。
次に、ハンマドリル10の動作モードの切替作業について説明する。
本実施の形態においては、第1の実施の形態におけるハンマドリル1の動作モード切替部9に対応する構成は設けられておらず、先端工具P2及び先端工具P3を選択的に着脱することにより、動作モードの切替を行う。
より具体的には、作業者がハツリ作業を行う場合には、第1工具保持部の第1係合部173Cの挿入穴173aに対して先端工具P2を延出部P23側から近づけ、挿入する。このときに、先端工具P2の規制部P24の後面と第1係合部173Cの前面とが当接することにより、先端工具P2がハウジング2に対して位置決めされる。この状態において、先端工具P2の被係合部P22が第1係合部173Cの挿入穴173aと前後方向において略同位置に位置し、延出部P23が第2係合部173Dの挿入穴173bと前後方向において略同位置に位置する。
この状態において、ハウジング2に対して相対回転不能な第1係合部173Cと被係合部P22が係合し、また、延出部P23の半径が軸線Aから被係合部P22の各面までの距離よりも短く構成されているため、先端工具P2に回転力は伝達されない。一方で、打撃子171が前後方向に往復動することに伴い、先端工具P2に打撃力が伝達される。このときに、挿入孔173aを形成する第1係合部173Cの内周面によって先端工具P2の打撃方向の運動がガイドされている。つまり、先端工具P2を装着部173に装着した場合には、被係合部P22と、第1係合部173Cとが係合することにより、先端工具P2がハウジング2に対して回転方向に回転不能な打撃モードとなる。
また、作業者が穴あけ作業を行う場合には、第1工具保持部の第1係合部173Cの挿入穴173bに対して先端工具P3を被係合部P32側から近づけ、挿入する。このときに、先端工具P3の規制部P34の後面と第1係合部173Cの前面とが当接することにより、先端工具P3がハウジング2に対して位置決めされる。この状態において、先端工具P3の被係合部P32が第2係合部173Dの挿入穴173bと前後方向において略同位置に位置し、延出部P33が第1係合部173Cの挿入穴173aと前後方向において略同位置に位置する。
この状態において、ハウジング2に対して相対回転可能な第2係合部173Dと被係合部P32が係合し、また、延出部P33の半径が軸線Aから第1係合部173Cの挿入穴173aを形成する各面までの距離よりも短く構成されているため、先端工具P3に回転力が伝達される。また、打撃子171が前後方向に往復動することに伴い、先端工具P3に打撃力が伝達される。このときに、挿入孔173bを形成する第2係合部173Dの内周面によって先端工具P3の打撃方向の運動がガイドされている。つまり、先端工具P3を装着部173に装着した場合には、被係合部P32と第2係合部173Dとが係合することにより、先端工具P3がハウジング2に対して回転可能な回転・打撃モードとなる。
次に、第2の実施の形態によるハンマドリル10を用いた作業時における本発明の効果について説明する。なお、第2の実施の形態によるハンマドリル10を用いた作業においても、電源電流、ハウジングに発生する加速度及びモータの回転軸の回転数については、第1の実施の形態によるハンマドリル1と同様に、図8及び図9に示される特性を有している。
第2の実施の形態によるハンマドリル10においては、第1の実施の形態によるハンマドリル1の動作モード切替部9が設けられていないため、動作モード切替部9の状態を判別する手段(磁気センサ等)を設けることができず、回転・打撃モードによる穴あけ作業時に発生するキックバックを検出することがより困難であった。
しかしながら、本実施の形態においては、作業者によってどの先端工具が選択されているかにかかわらず、回転軸31の回転速度を基準にキックバックの発生を判別する。また、図8(c)及び図9(c)に示されているように、ハツリ作業であるか穴あけ作業であるかにかかわらず、キックバックの発生していない通常作業時における回転軸31の回転数の変動は小さい。つまり、本実施の形態においては、先端工具P3に回転力が付加された穴あけ作業時におけるキックバック発生時にのみ大きく変化するモータ3の回転軸31の回転速度に応じて回転軸31の回転を停止させるため、先端工具P2に打撃力のみが付加され穴あけ作業時と比較してモータ3の回転軸31の回転速度の変化の小さいハツリ作業時において、作業者のハンマドリル本体の振り回し動作等に起因する加速度の変化による予期せぬモータの駆動停止が抑制され、作業性が向上する。
また、図9(b)に示されているように、キックバック発生時においては、ハウジング2の回転方向の加速度が大きく変動するところ、本実施の形態においては、回転軸31の回転速度に関する条件を満たすのと同時に、ハウジング2に発生する加速度に関する条件を満たした場合に回転軸31の回転を停止させるように構成されているため、より精度良く、穴あけ作業時に発生するキックバックを検出し、モータの駆動を停止させることが可能となる。
本明細書においては、ハンマドリル1、10を例に説明したが、本発明はハンマドリル以外のモータで駆動される打撃作業機、例えば、振動ドリル等の打撃作業機にも適用可能である。
また、本実施の形態においては、打撃作業機の駆動電源の例として電池パックQを用いたが、一般の交流電源を駆動電源として用いる構成でも良い。