JP6908164B2 - Ag合金膜 - Google Patents

Ag合金膜 Download PDF

Info

Publication number
JP6908164B2
JP6908164B2 JP2020094213A JP2020094213A JP6908164B2 JP 6908164 B2 JP6908164 B2 JP 6908164B2 JP 2020094213 A JP2020094213 A JP 2020094213A JP 2020094213 A JP2020094213 A JP 2020094213A JP 6908164 B2 JP6908164 B2 JP 6908164B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
alloy film
alloy
inge
less
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020094213A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021091951A (ja
Inventor
林 雄二郎
雄二郎 林
小見山 昌三
昌三 小見山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to TW109141487A priority Critical patent/TW202134445A/zh
Priority to PCT/JP2020/044001 priority patent/WO2021111974A1/ja
Priority to CN202080082938.6A priority patent/CN114761608A/zh
Priority to KR1020227018276A priority patent/KR20220107191A/ko
Publication of JP2021091951A publication Critical patent/JP2021091951A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6908164B2 publication Critical patent/JP6908164B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Physical Vapour Deposition (AREA)

Description

本発明は、In、Geを含むAg合金膜に関するものである。
一般に、Ag膜又はAg合金膜は、光学特性および電気特性に優れていることから、ディスプレイやLED等の反射電極膜、タッチパネル等の配線膜等の各種部品の反射膜及び導電膜として使用されている。
Ag合金膜として、特定の元素を添加して酸化物を形成するなどによって、例えば、反射電極膜として用いた際の反射率、導電率などを改善できることが知られている。
例えば、特許文献1には、Ag合金としてAgSbMgまたはAgSbZnを用い、Sbを酸化物にしたAg合金膜が記載されている。このようなAg合金膜は、低抵抗性、耐熱性、および耐塩化性に優れているとされている。
また、例えば、特許文献2には、Ag合金としてAgInを用い、Inを酸化物にしたAg合金膜が記載されている。このようなAg合金膜は、反射率を高めることができるとされている。
また、例えば、特許文献3には、Ag合金としてAgSbAlまたはAgSbMnを用いたAg合金膜が記載されている。このようなAg合金膜は、低抵抗性、耐熱性、および耐塩化性に優れているとされている。
更に、例えば、特許文献4には、Ag合金としてAgSbを用い、Sbを酸化物にしたAg合金膜が記載されている。このようなAg合金膜は、耐湿性、耐硫化性、耐熱性に優れ、高反射率、かつ低抵抗であるとされている。
ここで、上述の各種Ag合金膜は、Ag合金からなるスパッタリングターゲットによって成膜されている。
特開2014−74225号公報 特開2014−19932号公報 特開2014−05503号公報 特開2013−209724号公報
しかしながら、上述した特許文献1−4に記載されたAg合金膜は、耐熱性の改善が不十分であり、より一層、耐熱性に優れたAg合金膜が望まれている。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、耐熱性に優れたAg合金膜を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、GeとInとを含むAg合金の表面側にInおよびGeが濃集したInGe濃集部を形成することによって、Ag合金膜の耐熱性を向上できるとの知見を得た。
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明のAg合金膜は、InおよびGeを含むAg合金からなるAg合金膜であって、表面側にInおよびGeが濃集したInGe濃集部を有しており、前記InGe濃集部におけるIn,Geは、酸化物および金属の少なくとも一方又は両方として存在していることを特徴とする。
本発明のAg合金膜によれば、表面側にInおよびGeが濃集したInGe濃集部を形成することにより、耐熱性に優れたAg合金膜を実現することができる。
ここで、本発明のAg合金膜においては、Ag合金は、0.1質量%以上1.5質量%以下のInと、0.1質量%以上7.5質量%のGeを含有し、残部がAg及び不可避不純物から構成することもできる。このような組成のAg合金膜は、耐熱性に特に優れており、例えば反射導電膜用途として特に適している。
また、本発明のAg合金膜においては、前記InGe濃集部は、InおよびGeの酸化物を含んでいてもよい。
InおよびGeの酸化物を含むことにより、更に反射率を向上させることができる。
また、本発明のAg合金膜においては、前記InGe濃集部は、前記Ag合金膜の表面から膜厚方向に向かって0.5nm以上10nm以下の範囲にあってもよい。
InGe濃集部をAg合金膜の表面側の上述した範囲に形成することによって、耐熱性を保ちつつ、反射率の低下を防止することができる。
また、本発明のAg合金膜においては、前記Ag合金膜の表面の表面粗さ(Ra)が0.8nm以下であってもよい。
表面粗さ(Ra)を0.8nm以下にすることによって、耐熱性を保ちつつ、反射率の低下を防止することができる。
また、本発明のAg合金膜においては、前記Ag合金は、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされていることが好ましい。
Ag合金に含まれることがあるPd,Pt,Au,Rhは、硝酸の還元反応において触媒として作用するため、これらの元素を多く含むと成膜したAg合金膜を硝酸エッチング液でエッチングした際に膜のエッチングレートが高くなるおそれがある。このため、Ag合金にPd,Pt,Au,Rhが含まれる場合、Pd,Pt,Au,Rhの含有量を上述のように制限することで、硝酸を含むエッチング液を用いてエッチング処理しても、エッチングレートを低く抑えることが可能となる。
本発明によれば、耐熱性に優れたAg合金膜を提供することが可能となる。
InGe濃集部を含むAg合金膜について、実施例1の熱処理後のXPSによるInの深さ分析の結果を示すピークグラフである。 InGe濃集部を含むAg合金膜について、実施例1の熱処理後のXPSによるGeの深さ分析の結果を示すピークグラフである。
以下に、本発明の一実施形態であるAg合金膜およびこれを成膜するためのスパッタリングターゲットについて説明する。
(Ag合金膜)
本発明の一実施形態であるAg合金膜は、耐熱性に優れ、例えば、有機EL素子において有機層に接して形成される反射電極膜としての用途に特に適している。
Ag合金膜は、InおよびGeを含むAg合金からなり、Ag合金膜の表面側にInおよびGeが濃集したInGe濃集部が形成されている。このInGe濃集部は、InおよびGeの濃度が、他の部分よりも高くなっている部位である。なお、InGe濃集部は、その周辺の領域との間に明瞭な界面等が存在する層として形成されるものではなく、InおよびGeの濃度のピーク位置からその濃度が徐々に変化するIn,Ge濃度の濃化部分である。
このようなInGe濃集部を形成することによって、Ag合金膜の耐熱性の向上を図ることができる。
InGe濃集部を構成するGeは、Inの濃集効果を高める働きをする。例えば、InGe濃集部において、In,Geが酸化物として存在する場合、Geが存在することにより、In単体が酸化物として存在する場合と比較してIn酸化物の濃集が促進される。その結果、In酸化物の膜厚が増加する。In、Geが濃集することで、Ag合金中の純度が高くなり、純銀に近づく。一方でAg合金膜の表面側にはIn,Geの透明酸化物が形成されており反射率が改善される。
InGe濃集部は、例えば、Ag合金膜の表面から膜厚方向に向かって0.5nm以上10nm以下の範囲に形成されていればよい。InGe濃集部がAg合金膜の表面から0.5nm以上の範囲に形成されていれば、耐熱性を高めることができ、また、耐硫化性の低下を防止することができる。一方、InGe濃集部がAg合金膜の表面から10nm以下の範囲に形成されていれば、反射率が低下することがない。
Ag合金膜を構成するAg合金は、本実施形態では、0.1質量%以上1.5質量%以下のInと、0.1質量%以上7.5質量%のGeを含有し、残部がAg及び不可避不純物から構成されている。
さらに、本実施形態においては、上述のAg合金は、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされていることが好ましい。
なお、Ag合金には、Pd,Pt,Au,Rhから選択される1種又は2種以上が含有されることがあり、特に、Pd,Pt,Au,Rhから選択される1種、Pd,Ptの2種以上、Pd,Auの2種以上、Pd,Rhの2種以上、Pt,Auの2種以上、Pt,Rhの2種以上、又はAu,Rhの2種以上を含有することがある。また、Ag合金には、例えば不純物の一種としてPd,Pt,Au,Rhから選択される1種又は2種以上が含まれる場合がある。
なお、ここでいうAg合金膜の組成は、Ag合金スパッタリングターゲットを用いて、次の条件でAg合金膜の成膜を行い、膜厚100nmのAg合金膜をICPにより組成分析を行ったものである。
成膜電力密度:2.0〜5.0(W/cm
成膜ガス:Ar
成膜ガス圧:0.3(Pa)
ターゲット−基板間距離:70(mm)
Ag合金膜において、Inの濃度が0.1質量%以上であれば、Ag合金膜の耐硫化性を高めることができる。また、Inの濃度が1.5質量%以下であれば、Ag合金膜の表面側において反射率が低下することがない。
一方、Geの濃度が0.1質量%以上であれば、Inの濃集効果が発揮され、InGe濃集部を効率的に形成することができる。また、Geの濃度が7.5質量%以下であれば、Ag合金膜の表面側において反射率が低下することがない。
Ag合金に含まれることがあるPd,Pt,Au,Rhといった貴金属元素は、硝酸の還元反応において触媒として作用するため、これらの元素を多く含むと成膜したAg合金膜を硝酸エッチング液でエッチングした際にエッチグレートが高くなり、安定してエッチング処理ができなくなるおそれがある。
よって、硝酸エッチング液を用いて安定してエッチング処理するためには、Ag合金に含まれるPdの含有量を40質量ppm以下、Ptの含有量を20質量ppm以下、Auの含有量を20質量ppm以下、Rhの含有量を10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量を50質量ppm以下とすることが好ましい。なお、一般的に、Ag合金には、Pd,Pt,Au,Rhの1種又は2種以上が含有される場合には、その合計含有量の下限は0.1質量%以上となることがある。
InGe濃集部におけるIn,Geは、酸化物として存在していても、金属として存在していてもよい。特に、InGe濃集部において、In,Geが酸化物として存在する場合には、耐熱性に加えて、更に反射率を向上させることができる。本実施形態では、InGe濃集部は、In酸化物、Ge酸化物、およびInおよびGeの合金が混合した状態となっている。
なお、InGe濃集部は、In,Geの酸化物を含まず、全てのIn,Geが金属状態で存在していてもよい。また、InGe濃集部は、In酸化物、Ge酸化物、InGe複合酸化物を任意の割合で含んでいてもよい。また、InGe濃集部は、金属状態のIn、Geに対して、In、Geの酸化物が任意の割合で混合した状態であっても、全体がIn、Geの酸化物によって形成されていてもよい。
また、InGe濃集部がAg合金膜の表面側に形成されることにより、InGe濃集部を形成しない場合と比べて、表面粗さ(Ra)を低くし、Ag合金膜の表面側をより平滑に近づけることができる。Ag合金膜の表面側の表面粗さ(Ra)を低くすれば、Ag合金膜の耐熱性、および耐硫化性を向上させることができる。
Ag合金膜の表面の表面粗さ(Ra)は、例えば、0.8nm以下である。表面粗さ(Ra)が0.8nm以下であれば、Ag合金膜の耐熱性の向上効果を高く保つことができる。また、耐硫化性の低下を防止することもできる。
(Ag合金スパッタリングターゲット)
本発明のAg合金スパッタリングターゲットは、上述したInGe濃集部を有するAg合金膜をスパッタリングによって成膜できるものであればよく、InおよびGeを含有し、残部がAg及び不可避不純物とされた組成のAg合金からなる。
このようなAg合金スパッタリングターゲットは、以下の手順で得ることができる。
まず、純度が99.99質量%以上のAg原料と、純度が99.99質量%以上のIn原料と、純度が99.99質量%以上のGe原料を準備する。
なお、Ag合金に含まれるPd,Pt,Au,Rhの含有量を低減する場合には、これらの元素の含有量を低減したAg原料を準備することが好ましい。本実施形態では、純度99.9質量%以上のAgに対して電解精錬を実施して電析Agを作製し、得られた電析Agを再度電解のアノードとして鋳込み再電解を実施した。これを繰り返すことでAg内のPd,Pt,Au,Rhの含有量を低減した。また、電解精錬を実施する毎にICP発光分光分析法によって成分分析を実施した。これにより、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下に制限されたAg原料を得ることができる。
次に、上述のAg原料とIn原料とGe原料を秤量して、高周波真空溶解炉の容器内に装入する。次いで、高周波真空溶解炉の真空チャンバー内を真空排気した後、アルゴンガスで置換し、その後、Agを溶解させる。次いで、アルゴンガス雰囲気中において、溶解したAgに、InとGeと、を添加し、合金溶湯を黒鉛製鋳型に注いで鋳造することで、インゴットを作製する。
鋳造処理の方法としては、例えば、一方向凝固法を用いて実施することができる。一方向凝固法は、例えば、鋳型の底部を水冷させた状態で、抵抗加熱により予め側面部を加熱した鋳型に、溶湯を鋳込み、その後、鋳型下部の抵抗加熱部の設定温度を徐々に低下させることで実施できる。なお、鋳造処理の方法としては、上記説明した一方向凝固法に替えて、完全連続鋳造法や半連続鋳造法等の方法を用いて行ってもよい。
次いで、インゴットを熱間鍛造して熱間鍛造材を得る。ここで、熱間鍛造温度は、750℃以上850℃以下の範囲内とすることが好ましい。
次いで、上述の熱間鍛造材を冷間圧延して冷間圧延材を得る。なお、冷間圧延の総圧下率は60%以上70%以下の範囲内とすることが好ましい。
次いで、上述の冷間圧延材に対して熱処理を実施する。ここで、熱処理時の保持温度を350℃以上550℃以下の範囲内とする。
保持温度を350℃以上とすることにより、再結晶化が進行し、割れや異常放電の発生を抑制することができる。一方、保持温度を550℃以下とすることにより、結晶粒の粒径が均一化し、異常放電の発生を抑制することができる。
上述した保持温度における保持時間は、1時間以上2時間以下の範囲内とすることが好ましい。保持温度における保持時間を1時間以上とすることにより、再結晶化が進行し、割れや異常放電の発生を抑制することができる。一方、保持温度における保持時間が2時間を超えた場合ではさらなる効果を得ることはできない。
上述のようにして得られた熱処理材に対して機械加工を行うことにより、所定の形状及び寸法に仕上げる。以上のような手順で、本実施形態のAg合金スパッタリングターゲットを製造することができる。
(Ag合金膜の製造方法)
本発明のInGe濃集部を有するAg合金膜を製造する際には、上述したAg合金スパッタリングターゲットをスパッタ成膜装置のターゲットホルダにセットする。そして、成膜する基板を取り付けて、基板上にAg合金膜を成膜する。
成膜条件の一例を以下に示す。
成膜電力密度:2.0〜5.0(W/cm
成膜ガス:Ar
成膜ガス圧:0.2〜0.4(Pa)
ターゲット−基板間距離:60〜80(mm)
上述したAg合金スパッタリングターゲットを用い、上述した条件でスパッタリングを行うことにより、InおよびGeを含むAg合金膜の表面側に、InおよびGeが濃集したInGe濃集部が形成されるようになった。この時形成されるInGe濃集部のInおよびGeは、一部が酸化物となっている。
なお、上述した成膜条件において、成膜電力密度が5.0W/cmを超えると、Ag合金膜の表面側にInおよびGeの濃集が起きにくくなり、効率的にInGe濃集部が形成されないことがある。
次に、この成膜された本実施形態のAg合金膜を熱処理することにより、InGe濃集部のInおよびGeの酸化を促進させることができる。Ag合金膜を熱処理条件としては、例えば、酸素を含む雰囲気下で250〜300℃で1〜2時間程度加熱すればよい。酸素を含む雰囲気下としては、酸素を2%以上含む雰囲気、例えば、空気中での加熱であればよい。
Ag合金膜を熱処理してInGe濃集部におけるIn酸化物、Ge酸化物の濃度を高めれば、Agに含まれているInとGeが濃集することによりAg合金膜部は純銀に近い組成の部分が多くなる。そのためAg合金膜の反射率を高めることができる。さらにInおよびGeが金属状態にあるよりも、酸化物状態の濃度が高い方がInGe濃集部の透過率が上がるため、Ag合金膜の反射率を高めることができる。
以上のような構成とされた本実施形態であるAg合金膜においては、表面側にInおよびGeが濃集したInGe濃集部が形成されており、耐熱性に優れている。
また、本実施形態であるAg合金スパッタリングターゲットによれば、表面側にInおよびGeが濃集したInGe濃集部を有し、耐熱性に優れたAg合金膜を成膜することができる。
本実施形態において、Ag合金膜を構成するAg合金が、0.1質量%以上1.5質量%以下のInと、0.1質量%以上7.5質量%のGeを含有し、残部がAg及び不可避不純物とした組成を有する場合には、耐熱性に特に優れており、例えば反射導電膜用途として特に適している。
また、本実施形態において、InGe濃集部がInおよびGeの酸化物を含んでいる場合には、更に反射率を向上させることができる。
さらに、本実施形態において、InGe濃集部が、Ag合金膜の表面から膜厚方向に向かって0.5nm以上10nm以下の範囲にある場合には、耐熱性を保ちつつ、反射率の低下を防止することができる。
また、本実施形態において、Ag合金膜の表面の表面粗さ(Ra)が0.8nm以下である場合には、耐熱性を保ちつつ、反射率の低下を防止することができる。
さらに、本実施形態において、前記Ag合金は、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされていることが好ましい。
Ag合金に含まれるPd,Pt,Au,Rhは、硝酸の還元反応において触媒として作用するため、これらの元素を多く含むと硝酸エッチング液でエッチングした際にエッチグレートが高くなるおそれがある。このため、Pd,Pt,Au,Rhの含有量を上述のように制限することで、硝酸を含むエッチング液を用いてエッチング処理しても、エッチングレートを低く抑えることが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
(試料の作製)
純度99.99質量%以上のAg原料を準備し、このAg原料を真空雰囲気下で融解し、雰囲気をArガスに置換した後、純度99.99質量%以上のInおよびGeを添加し、所定の組成のAg合金溶湯を溶製した。そして、このAg合金溶湯を、鋳造してAg合金インゴットを製造した。なお、Ag原料は、必要に応じて、発明の実施の形態の欄に記載されたように、Pd,Pt,Au,Rhの含有量を削減した。
得られたAg合金インゴットに対して、熱間鍛造(温度800℃)を行い、その後、冷間圧延(総圧下率64%)を実施した。
その後、保持温度は450℃、保持温度における保持時間を1.5時間として、Ag合金インゴットの熱処理を行った。そして、熱処理後に機械加工を実施し、直径152.4mm、厚さ6mmの円板形状のAg合金スパッタリングターゲットを製造した。
上記の方法で作製したスパッタリングターゲットを用いて、次の条件でAg合金膜の成膜を行った。
成膜電力密度:2.0〜5.0(W/cm
成膜ガス:Ar
成膜ガス圧:0.3(Pa)
ターゲット−基板間距離:70(mm)
なお、上述した成膜条件で30分間放電を行った後(空スパッタ)、成膜レートを算出するための成膜を行った。そして、算出した成膜レートから膜厚100nmのAg合金膜を成膜し、本発明例1−16および比較例1−3の試料を得た。
(成分組成)
それぞれのAg合金膜から分析用サンプルを採取して、ICP発光分光分析法によって成分組成及び貴金属元素を測定した。この測定結果をAg合金膜の成分組成として表1に示す。
この後、本発明例1−16および比較例1−3の試料について、熱処理前および熱処理後のInGe濃集部の有無、表面粗さ(Ra)、反射率を測定した。Ag合金膜の熱処理は、大気雰囲気下において、250℃で1hの条件で行った。また、これとは別に、熱処理せずに硫化試験を行い、硫化試験後の反射率も測定した。Ag合金膜の硫化試験は、25℃、湿度75%(RH)の雰囲気の空気中に濃度が3ppmとなるように硫化水素(HS)ガスを混合し、この中にAg合金膜を1h曝露させた。
(InGe濃集部の有無、InGe濃集部の厚さ、InGe濃集部の酸化状態)
成膜したAg合金膜の表面から基板にかけて、X線光分子分光法(XPS)を用いて分析を行い、InGe濃集部の有無、InGe濃集部の厚さを算出した。具体的にはまず100nmのAgを掘りきる時間(スキャン回数)からエッチングレート(nm/スキャン)を算出しておく。次に100nmの半分である50nmを掘りきるスキャン回数でのInおよびGeのピーク位置のピーク強度(カウント数/sec)を確認する。そしてそれらのピーク強度の1.2倍以上のInおよびGeのピーク強度が得られているスキャン回数までの厚さをInとGeが濃集しているInGe濃集部とみなし、その厚さは前述のスキャン回数×エッチングレートにて算出する。また、XPSの深さ分析の各検出ピークの位置により、InGe濃集部の酸化状態を確認した。
現実的には、成膜してXPSにて分析するまでには大気搬送や大気熱処理等によってInとGeは酸化してInとGeOになるので、InおよびGeOのピーク強度の変化でInGe濃集部の有無を判断してもよい。InGe濃集の有無、InGe濃集部の厚さを表1に示す。また、InGe濃集部の酸化状態を、XPSの深さ分析のピークグラフとして図1(In)、図2(Ge)に示す。なお、それぞれの検出ピーク位置は以下のとおりである。
In:444.3eV
In:443.9eV
GeO:32.5eV
Ge:29.3eV
(表面粗さ(Ra))
それぞれのAg合金膜の表面について、原子間力顕微鏡(AFM:セイコーインスツルメンツ株式会社製SPI3800N)を用いて1μm四方の表面を走査し、表面粗さ(Ra)を算出した。この測定結果を表2に示す。
(反射率)
それぞれのAg合金膜の表面について、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ株式会社製U−4100)を用いて450nmの反射率を測定した。この測定結果を表2に示す。
(エッチング特性評価)
まず、ガラス基板上に成膜された厚さ100nmのAg合金膜に、フォトリソグラフィーによって配線パターン(配線膜)を形成した。
具体的には、成膜したAg合金膜上にフォトレジスト剤(東京応化工業株式会社製OFPR−8600)をスピンコーターにより塗布し、110℃でプリベーク後に露光し、その後現像液(東京応化工業株式会社製NMD−W)によりパターンを現像し、150℃でポストベークを行った。これにより、Ag合金膜上に幅100μm、間隔100μmの櫛形配線パターンを形成した。
そして、上述のAg合金膜に対してウェットエッチングを行った。エッチング液としては、関東化学社製SEA−2を用い、液温40℃、浸漬時間30秒にてエッチングを行った。
以上のようにして得られた配線膜について、配線断面を観察するために基板を劈開し、その断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察した。そして、SEMにより観察されたAg合金膜端部とフォトレジスト端部の平行な位置の差分をAg合金膜のオーバーエッチング量として測定した。評価結果を表2に示す。
Figure 0006908164
Figure 0006908164
表1,2の結果によれば、InGe濃集部を形成した本発明例1−16は、InGe濃集部を形成しない比較例1−3と比較して、熱処理前および熱処理後の表面粗さ(Ra)の値が低いことが分かった。
また、本発明例1−16は、熱処理前の反射率に対する熱処理後の反射率の低下が小さいことが確認された。これにより、本発明例1−16は、高温環境を経ても反射率が大きく低下せず、耐熱性に優れていることが確認された。一方、比較例1−3は、熱処理後の反射率が熱処理前に対して大きく低下し、耐熱性が十分ではなかった。
これ以外にも、本発明例2と比較例1から、InおよびGeを両方含み、成膜電力密度を5.0W/cm以下にすることで、Ag合金膜にInGe濃集部が生じることが確認された。
また、熱処理前のInGe濃集部の厚さは、成膜電力密度が大きくなるほど薄くなることが確認された。また、Geの濃度が高いほどInGe濃集部の厚さも厚くなることが分かった。
また、熱処理前の反射率について、In、Geの濃度が増えると反射率が低下することが分かった。また、InGe濃集層の厚みは、反射率に殆ど影響を及ぼさないことも分かった。
また、熱処理後の反射率について、In、Geの濃度が増えると、熱処理前と比べて反射率の低下が抑制できることが分かった。
また、硫化試験後の反射率について、Inの濃度が増えると耐硫化性が上がり反射率が向上することが確認された。
また、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされた本発明例1−11においては、エッチングレートが比較的低く抑えられていた。
なお、上述した本発明例1−16および比較例1−3とは別に、Inを含まないAg合金膜を成膜し、硫化試験後の反射率を調べたところ、反射率が大きく低下(79.8)したため、Inによる耐硫化性の向上が確認できた。

Claims (6)

  1. InおよびGeを含むAg合金からなるAg合金膜であって、表面側にInおよびGeが濃集したInGe濃集部を有しており、
    前記InGe濃集部におけるIn,Geは、酸化物および金属の少なくとも一方又は両方として存在していることを特徴とするAg合金膜。
  2. 前記Ag合金は、0.1質量%以上1.5質量%以下のInと、0.1質量%以上7.5質量%のGeを含有し、残部がAg及び不可避不純物からなることを特徴とする請求項1に記載のAg合金膜。
  3. 前記InGe濃集部は、InおよびGeの酸化物を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のAg合金膜。
  4. 前記InGe濃集部は、前記Ag合金膜の表面から膜厚方向に向かって0.5nm以上10nm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のAg合金膜。
  5. 前記Ag合金膜の表面の表面粗さ(Ra)が0.8nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のAg合金膜。
  6. 前記Ag合金は、Pd,Pt,Au,Rhから選択される1種又は2種以上を含有しており、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のAg合金膜。
JP2020094213A 2019-12-02 2020-05-29 Ag合金膜 Active JP6908164B2 (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
TW109141487A TW202134445A (zh) 2019-12-02 2020-11-26 銀合金膜、銀合金濺鍍靶
PCT/JP2020/044001 WO2021111974A1 (ja) 2019-12-02 2020-11-26 Ag合金膜、Ag合金スパッタリングターゲット
CN202080082938.6A CN114761608A (zh) 2019-12-02 2020-11-26 Ag合金膜及Ag合金溅射靶
KR1020227018276A KR20220107191A (ko) 2019-12-02 2020-11-26 Ag 합금막, Ag 합금 스퍼터링 타깃

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019218163 2019-12-02
JP2019218163 2019-12-02

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021091951A JP2021091951A (ja) 2021-06-17
JP6908164B2 true JP6908164B2 (ja) 2021-07-21

Family

ID=76311875

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020094213A Active JP6908164B2 (ja) 2019-12-02 2020-05-29 Ag合金膜

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6908164B2 (ja)
TW (1) TW202134445A (ja)

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4379602B2 (ja) * 2003-08-20 2009-12-09 三菱マテリアル株式会社 半透明反射膜または反射膜を構成層とする光記録媒体および前記反射膜の形成に用いられるAg合金スパッタリングターゲット
JP4320000B2 (ja) * 2004-04-21 2009-08-26 株式会社神戸製鋼所 光情報記録媒体用半透過反射膜と反射膜、および光情報記録媒体ならびにスパッタリングターゲット
JP2010225586A (ja) * 2008-11-10 2010-10-07 Kobe Steel Ltd 有機elディスプレイ用の反射アノード電極および配線膜
JP5806653B2 (ja) * 2011-12-27 2015-11-10 株式会社神戸製鋼所 反射電極用Ag合金膜、反射電極、およびAg合金スパッタリングターゲット
WO2014208341A1 (ja) * 2013-06-26 2014-12-31 株式会社神戸製鋼所 反射電極用または配線電極用Ag合金膜、反射電極または配線電極、およびAg合金スパッタリングターゲット
JP5975186B1 (ja) * 2015-02-27 2016-08-23 三菱マテリアル株式会社 Ag合金スパッタリングターゲット及びAg合金膜の製造方法
JP6481473B2 (ja) * 2015-03-31 2019-03-13 三菱マテリアル株式会社 Ag合金スパッタリングターゲット
JP2019143242A (ja) * 2018-02-20 2019-08-29 三菱マテリアル株式会社 Ag合金スパッタリングターゲット、及び、Ag合金スパッタリングターゲットの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021091951A (ja) 2021-06-17
TW202134445A (zh) 2021-09-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3993530B2 (ja) Ag−Bi系合金スパッタリングターゲットおよびその製造方法
KR101854009B1 (ko) 도전성 막 형성용 은 합금 스퍼터링 타겟 및 그 제조 방법
JP2010138418A (ja) 白金イリジウム合金及びその製造方法
KR20160032086A (ko) Ag 합금 스퍼터링 타깃
TWI627291B (zh) 基於銀合金的濺鍍靶
JP6908164B2 (ja) Ag合金膜
WO2021111974A1 (ja) Ag合金膜、Ag合金スパッタリングターゲット
WO2022158231A1 (ja) Ag合金膜、および、Ag合金スパッタリングターゲット
JP6908163B2 (ja) Ag合金スパッタリングターゲット
JP2015131998A (ja) Cu合金配線、およびCu合金スパッタリングターゲット
WO2021112004A1 (ja) Ag合金スパッタリングターゲット
JP6965963B2 (ja) Ag合金スパッタリングターゲット
JP2018100437A (ja) Ag合金スパッタリングターゲットおよびAg合金膜
JP2022113107A (ja) Ag合金膜、および、Ag合金スパッタリングターゲット
WO2020116545A1 (ja) 金属膜、及び、スパッタリングターゲット
WO2020116557A1 (ja) 金属膜、及び、スパッタリングターゲット
WO2020116558A1 (ja) 金属膜、及び、スパッタリングターゲット
JP2023067697A (ja) Ag合金膜、および、Ag合金スパッタリングターゲット

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210414

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210511

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20210511

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210601

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210614

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6908164

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250