JP6900728B2 - 炭素繊維前駆体アクリル繊維および炭素繊維束の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素繊維前駆体アクリル繊維および炭素繊維束の製造方法に関する。
炭素繊維は優れた機械的強度を有するため、自動車用部材、航空宇宙素材、スポーツ・レジャー用素材、圧力容器等の工業用素材などとして極めて有用であり、需要が拡大している。また、今後はさらに幅広い分野で利用されることが期待されている。
従来、炭素繊維は、アクリロニトリル系重合体などからなる炭素繊維前駆体アクリル繊維を束ねた前駆体繊維束を用い、次のような工程を経て得られる。まず、耐炎化工程により数十〜数百錘の前駆体繊維束を200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化熱処理し、得られた耐炎化繊維束を、炭素化工程において300℃以上の不活性雰囲気中で焼成し、炭素繊維束を得る(例えば特許文献1)。
国際公開第2013/015210号
しかしながら、耐炎化工程および炭素化工程(以下、これらの工程を合わせて「焼成工程」ともいう。)で起こる化学反応により、炭素原子を含んだ分解物がガスとして放出されて炭素化収率が低くなり、生産性が悪くなるなどの問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、焼成工程後の炭素化収率が高い炭素繊維前駆体アクリル繊維を提供することを目的とする。また、本発明は、高品質な炭素繊維束を高い炭素化収率で生産性よく製造する方法を提供することを他の目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 下記一般式(1)で表される構造単位(A)を0.5〜30質量%、および下記一般式(2)で表される構造単位(B)を70〜99.5質量%含有する、炭素繊維前駆体アクリル繊維。
Figure 0006900728
式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトリル基、ニトロ基、ホスホノ基、スルホン基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルキルオキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜12のアリールチオ基または炭素数1〜13のアシル基であり、Rは炭素数1〜12のアルキレン基または炭素数6〜12のアリーレン基である。
Figure 0006900728
式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトリル基、ニトロ基、ホスホノ基、スルホン基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルキルオキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜12のアリールチオ基または炭素数1〜13のアシル基である。
[2] [1]に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維で構成される繊維束を酸化性雰囲気中、90分以下の時間、220〜300℃で加熱した後、不活性ガス雰囲気中、800〜2000℃で加熱する、炭素繊維束の製造方法。
本発明によれば、焼成工程後の炭素化収率が高い炭素繊維前駆体アクリル繊維を提供できる。
また、本発明によれば、高品質な炭素繊維束を高い炭素化収率で生産性よく製造する方法を提供できる。
以下、本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維の一実施形態について説明する。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称であり、「(メタ)アリル」は、アリルとメタリルの総称である。
「炭素繊維前駆体アクリル繊維」
本実施形態の炭素繊維前駆体アクリル繊維は、以下に示すアクリロニトリル系共重合体組成物(以下、「共重合体組成物(X)」ともいう。)からなる。
<共重合体組成物(X)>
共重合体組成物(X)は、以下に示す構造単位(A)および構造単位(B)を含有する。共重合体組成物(X)は、以下に示す構造単位(C)をさらに含有していてもよい。
(構造単位(A))
構造単位(A)は下記一般式(1)で表される構造単位である。
Figure 0006900728
式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトリル基、ニトロ基、ホスホノ基、スルホン基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルキルオキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜12のアリールチオ基または炭素数1〜13のアシル基であり、Rは炭素数1〜12のアルキレン基または炭素数6〜12のアリーレン基である。
〜Rにおいてハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基(アルコキシ基)、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基は、それぞれ直鎖状でも分岐鎖状でもよく、また、置換基(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトリル基、ニトロ基等)を有していてもよい。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えばフェニル基、ベンジル基、ナフチル基などが挙げられる。
アルキルオキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、ベンジルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
アルキルチオ基としては、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基などが挙げられる。
アリールチオ基としては、例えばフェニルチオ基、ベンジルチオ基、ナフチルチオ基などが挙げられる。
アシル基はR−CO−で表される。Rはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭化水素基である。炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基などが挙げられる。炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、また、置換基(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトリル基、ニトロ基等)を有していてもよい。
アシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
およびRは、重合率の観点から、水素原子であることが好ましい。
は、共重合体組成物(X)を紡糸して得られる炭素繊維前駆体アクリル繊維の結晶性を維持する点で、水素原子やメチル基など、立体障害の少ない置換基が好ましい。
において、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基は、それぞれ直鎖状でも分岐鎖状でもよく、また、置換基(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトリル基、ニトロ基等)を有していてもよい。
アルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基などが挙げられる。
アリーレン基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
は、エチレン基が好ましい。
構造単位(A)の由来源となる単量体(以下、「単量体(a)」ともいう。)としては、例えばN−(シアノメチル)アクリルアミド、N−(シアノエチル)アクリルアミド、N−(シアノプロピル)アクリルアミド、N−(シアノブチル)アクリルアミド、N−(4−シアノフェニル)アクリルアミド、N,N−(ジシアノメチル)アクリルアミド、N,N−(ジシアノエチル)アクリルアミド、N−(シアノメチル)メタクリルアミド、N−(シアノエチル)メタクリルアミド、N−(シアノプロピル)メタクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも、重合性の観点から、N−シアノエチルアクリルアミドが好ましい。
これら単量体(a)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
共重合体組成物(X)を構成する全ての単位の合計を100質量%としたときに、構造単位(A)の割合は0.5〜30質量%であり、2〜25質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましい。特に、共重合体組成物(X)が下記構造単位(C)を含有する場合、構造単位(A)の割合は1〜25質量%であることが好ましい。
構造単位(A)の割合が0.5質量%以上であれば、焼成工程後の炭素化収率の高い炭素繊維前駆体アクリル繊維を得ることができる。一方、構造単位(A)の割合が30質量%以下であれば、後述する構造単位(B)の割合を十分に確保できるので、炭素繊維の力学物性を損なうことなく、品質の良い炭素繊維を得ることができる。
(構造単位(B))
構造単位(B)は下記一般式(2)で表される構造単位である。
Figure 0006900728
式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトリル基、ニトロ基、ホスホノ基、スルホン基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルキルオキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜12のアリールチオ基または炭素数1〜13のアシル基である。
およびRにおいて、ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基(アルコキシ基)、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基は、それぞれ直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
〜Rにおけるアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基としては、それぞれR〜Rの説明において先に例示したものが挙げられる。
およびRは、炭素繊維の力学物性を損なうことなく、品質の良い炭素繊維が得られる観点から、水素原子であることが好ましい。
構造単位(B)の由来源となる単量体(以下、「単量体(b)」ともいう。)としては、例えば(メタ)アクリロニトリル、α−シアノアクリレート、ジシアノビニリデン、フマロニトリルエチルなどが挙げられる。これらの中でも、重合性と、炭素繊維にしたときの力学物性の観点から、(メタ)アクリロニトリルが好ましい。
これら単量体(b)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
共重合体組成物(X)を構成する全ての単位の合計を100質量%としたときに、構造単位(B)の割合は70〜99.5質量%であり、70〜98.9質量%であることが好ましく、80〜97質量%であることがより好ましい。特に、共重合体組成物(X)が下記構造単位(C)を含有する場合、構造単位(B)の割合は80〜98.9質量%であることが好ましい。
構造単位(B)の割合が70質量%以上であれば、炭素繊維の力学物性を損なうことなく、品質の良い炭素繊維を得ることができる。一方、構造単位(B)の割合が99質量%以下であれば、構造単位(A)の割合を十分に確保できるので、焼成工程後の炭素化収率の高い炭素繊維前駆体アクリル繊維を得ることができる。
(構造単位(C))
構造単位(C)はカルボキシ基を含むモノマー由来の構造単位である。
カルボキシ基を含むモノマー(以下、「単量体(c)」ともいう。)としては、例えばメタクリル酸、アクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ブチルエステルなどが挙げられる。これらの中でも、焼成時間を短縮する観点から、メタクリル酸が好ましい。
これら単量体(c)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
共重合体組成物(X)を構成する全ての単位の合計を100質量%としたときに、構造単位(C)の割合は0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜1.5質量%であることがより好ましい。
構造単位(C)の割合が0.1質量%以上であれば、耐炎化反応を促進し、焼成の生産性を向上することができる。一方、構造単位(C)の割合が5質量%以下であれば、炭素繊維の力学物性の低下を抑えることができる。
(任意単位)
共重合体組成物(X)は、必要に応じて構造単位(A)、構造単位(B)および構造単位(C)以外の単位(以下、「任意単位」ともいう。)を含有してもよい。
任意単位の由来源となる単量体(以下、「任意単量体」ともいう。)としては、少なくとも単量体(a)および単量体(b)と共重合可能であれば特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;メチルビニルケトン、イソプロピルメチルケトン等のビニルケトン類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;マレイミド、フェニルマレイミド等のマレイミド類;(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル単量体およびその塩;リン酸基を含有ビニル単量体およびその塩;酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。
これら任意単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
共重合体組成物(X)を構成する全ての単位の合計を100質量%としたときに、任意単位の割合は29.4質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
(分子量)
共重合体組成物(X)の質量平均分子量は、200000〜800000であることが好ましい。共重合体組成物(X)の質量平均分子量が200000以上であれば、紡糸性が向上する。一方、共重合体組成物(X)の質量平均分子量が800000以下であれば、紡糸原液作製の際の溶解度の低下やゲル化を抑制することができる。
なお、共重合体組成物(X)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
(製造方法)
共重合体組成物(X)は、例えば、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)及び任意単量体を溶液重合、懸濁重合、乳化重合など公知の重合方法により重合した共重合体(Z)として得ることができる。重合により得られた共重合体(Z)からは、未反応の単量体などの不純物を除く処理をすることが望ましい。
また、共重合体組成物(X)は、上記の重合によって得られた共重合体(Z)と、以下に記載するアクリロニトリル系共重合体(Y)とを混合することによっても得られる。
<アクリロニトリル系共重合体(Y)>
アクリロニトリル系重合体(Y)は、アクリロニトリルを主な単量体とし、これを重合して得られる重合体である。アクリロニトリル系重合体(Y)は、アクリロニトリルのみから得られるホモポリマーであってもよいし、主成分であるアクリロニトリルおよびアクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体(ただし、単量体(a)を除く。)の共重合体であってもよい。
アクリロニトリル系重合体(Y)を構成する全ての単位の合計を100質量%としたときに、アクリロニトリル単位の割合は70質量%以上が好ましく、ビニル系単量体単位の割合は30質量%以下が好ましい。さらに好ましくは、アクリロニトリル単位の割合は90〜98質量%であり、ビニル系単量体単位の割合は2〜10質量%である。
ビニル系単量体としては、アクリロニトリルと共重合可能であれば特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ウラリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等の不飽和モノマー類;p−スルホフェニルメタリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。
これらビニル系単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリロニトリル系重合体(Y)の質量平均分子量は、200000〜800000であることが好ましく、300000〜500000であることがより好ましい。アクリロニトリル系重合体(Y)の質量平均分子量が200000以上であれば、紡糸性が向上する。一方、アクリロニトリル系重合体(Y)の質量平均分子量が800000以下であれば、紡糸原液作製の際の溶解度の低下やゲル化を抑制することができる。
なお、アクリロニトリル系重合体(Y)の質量平均分子量は、GPCを用いて測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
アクリロニトリル系重合体(Y)は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など公知の重合方法により得ることができる。重合により得られたアクリロニトリル系重合体(Y)からは、未反応の単量体などの不純物を除く処理をすることが望ましい。
炭素繊維前駆体アクリル繊維がアクリロニトリル系重合体(Y)を含む場合、共重合体(Z)とアクリロニトリル系重合体(Y)との質量比(共重合体(Z):アクリロニトリル系重合体(Y))は、0.5:99.5〜70:30であることが好ましい。共重合体(Z)の割合が0.5%以上だと炭素化収率の向上効果を得ることができる。一方、共重合体(Y)の割合が30%以上だと、良好に紡糸することができる。
<添加剤>
炭素繊維前駆体アクリル繊維は、添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素材料;コロイダルシリカ、ガラス繊維等のガラス材料などが挙げられる。
炭素繊維前駆体アクリル繊維の総質量に対して、添加剤の割合は30質量%以下であることが好ましい。
<製造方法>
炭素繊維前駆体アクリル繊維は、上述した共重合体組成物(X)を含む紡糸原液を公知の方法で紡糸して得られる。
紡糸原液は、必要に応じて上述した添加剤を含んでいてもよい。
紡糸原液に用いられる溶剤としては特に限定されないが、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤;塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウム等の無機化合物の水溶液などが挙げられる。紡糸して得られる繊維中に金属が混入されにくく、また、工程が簡略化される点で、有機溶剤が好ましく、その中でも凝固糸および湿熱延伸糸の緻密性が高いという点で、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
紡糸原液は、緻密な凝固糸を得るため、また、適正な粘度や流動性を発現させために、ある程度以上の共重合体濃度を有することが好ましい。具体的には、紡糸原液中の共重合体組成物(X)濃度の合計は、15〜30質量%であることが好ましく、18〜25質量%であることがより好ましい。
紡糸原液を紡糸する方法としては特に限定されないが、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法などを適用することができる。
そして、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法などで得られた凝固糸を必要に応じて従来公知の水洗、浴延伸、油剤付与、乾燥緻密化、延伸などを施すことにより、所定の繊度を有する炭素繊維前駆体アクリル繊維とする。
油剤としては、従来公知のシリコーン系油剤や、ケイ素を含まない有機化合物からなる油剤などが挙げられるが、これら以外にも後述する耐炎化工程や炭素化工程での単繊維間の接着を防止できるものであれば、油剤として好適に使用できる。
油剤を付与された繊維は、加熱により乾燥緻密化するのが好ましい。乾燥処理は50〜200℃に加熱されたロールに接触させて行うのが効率的である。
また、乾燥された繊維は、引き続き延伸を施すのが好ましい。延伸する方法としては特に限定されないが、乾熱延伸法、熱板延伸法、スチーム延伸法などを適用することができる。
炭素繊維前駆体アクリル繊維は通常、引き揃った単繊維の集合体である繊維束(以下、「前駆体繊維束」ともいう。)として製造され取り扱われる。一つの繊維束に含まれる単繊維数は200〜300000本が好ましく、300〜200000本がより好ましく、400〜100000本がさらに好ましい。単繊維数が上記範囲内であれば、耐炎化工程および炭素化工程での前駆体繊維束の取り扱いが容易であるとともに、得られる炭素繊維束を複合材料に成形する際の取り扱いも容易である。
前駆体繊維束の繊維密度は、1.17〜1.21g/cmであることが好ましく、1.18〜1.20g/cmであることがより好ましい。前駆体繊維束の繊維密度が上記範囲内であれば、後述する耐炎化工程および炭素化工程を経て得られる炭素繊維束の残存量が多くなるため、経済性の面でも有利である。
なお、前駆体繊維束の繊維密度は、JIS K 7112に基づく密度勾配管法により測定される値である。
<作用効果>
以上説明した本実施形態の炭素繊維前駆体アクリル繊維は、上述した構造単位(A)を特定量含有する共重合体組成物(X)からなるので、焼成工程後の炭素化収率の高い。よって、本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維は、炭素化収率の高い炭素繊維束の生産に適している。
「炭素繊維束」
炭素繊維束は、本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維で構成される繊維束(前駆体繊維束)を耐炎化処理した後、炭素化処理することで得られる。
以下、炭素繊維束の製造方法の一例について説明する。
<製造方法>
本実施形態の炭素繊維束の製造方法は、以下に示す耐炎化工程と炭素化工程とを有する。なお、耐炎化工程と炭素化工程とを総称して「焼成工程」ともいう。
(耐炎化工程)
耐炎化工程は、前駆体繊維束を酸化性雰囲気中、90分以下の時間、220〜300℃で加熱して(耐炎化処理)、耐炎化繊維束を得る工程である。
ここで、「酸化性雰囲気」とは、空気雰囲気、もしくは、酸素、二酸化窒素、二酸化硫黄などの公知の酸化性物質を含む雰囲気のことである。これらの中でも、経済性の面から、酸化性雰囲気としては空気雰囲気が好ましい。
なお、「酸化性物質」とは、酸素を与えることにより物の燃焼を引き起こす物質や、物の燃焼を助長しうる物質を意味する。
耐炎化処理の方法としては特に限定されず、例えば従来公知の耐炎化炉(熱風循環炉)を用いる方法や加熱固体表面に接触させる方法を採用できる。
耐炎化炉を用いる方法では、通常、耐炎化炉に入った前駆体繊維束を一旦耐炎化炉の外部に出した後、耐炎化炉の外部に配設された折り返しロールによって折り返して耐炎化炉に繰り返し通過させる方法が採られる。
加熱固体表面に接触させる方法では、前駆体繊維束を間欠的に加熱固体表面に接触させる方法が採られる。
耐炎化処理の温度(耐炎化処理温度)は220〜300℃であることが好ましい。耐炎化処理温度が220℃以上であれば、耐炎化反応の暴走を抑制でき、効率的に耐炎化処理を行うことができる。一方、耐炎化処理温度が300℃以下であれば、炭素繊維前駆体アクリル繊維のポリアクリロニトリル骨格を熱分解させることなく耐炎化処理することが容易に可能である。
耐炎化処理を行う時間(耐炎化処理時間)は、90分以下であることが好ましく、70分以下であることがより好ましい。耐炎化処理時間が90分以下であれば、耐炎化処理工程が生産性を損なう原因となることを容易に防ぐことができ、効率よく炭素繊維束を製造することが可能である。耐炎化処理時間の下限については特に制限されないが、10分以上であることが好ましく、20分以上であることがより好ましい。耐炎化処理時間が10分以上であれば、前駆体繊維束を構成する単繊維内部への充分な酸素の拡散を容易に行うことができる。
耐炎化工程では、得られる耐炎化繊維束の繊維密度が1.3〜1.43g/cmになるまで加熱して耐炎化処理することが好ましく、より好ましくは1.33〜1.38g/cmである。耐炎化繊維束の繊維密度が1.30g/cm以上であれば、炭素化工程中での熱融着が起こりにくく、炭素繊維束を容易に製造することが可能である。一方、耐炎化繊維束の繊維密度が1.43g/cm以下であれば、炭素繊維束の性能低下を抑制できる。
なお、耐炎化繊維束の繊維密度は、JIS K 7112に基づく密度勾配管法により測定される値である。
(炭素化工程)
炭素化工程は、耐炎化工程により得られた耐炎化繊維束を不活性ガス雰囲気中、800〜2000℃で加熱して(炭素化処理)、炭素繊維束を得る工程である。
ここで、「不活性ガス雰囲気」とは、酸素、二酸化窒素、二酸化硫黄などの公知の酸化性物質を実質的に含まない雰囲気のことである。「実質的に」とは、不活性ガス雰囲気を形成するガスの全体体積に対して、酸化性物質の体積濃度が1.0体積%以下であることを意味する。
なお、「不活性ガス」とは、他の物質と反応を起こしにくく、化学的に安定したガスを意味し、例えば窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。
炭素化処理の方法としては、例えば炭素化炉に不活性ガスを導入した状態で、耐炎化繊維束を導入して保持した後に取り出すことで、耐炎化繊維束を加熱して炭素化処理する。
炭素化処理の温度(炭素化処理温度)は800〜2000℃であることが好ましい。炭素化処理温度が800℃以上であれば、短時間で炭素化処理できる。一方、炭素化処理温度が2000℃以下であれば、炭素化処理による力学物性の低下を抑えられる。
炭素化処理温度は一定でもよいし、炭素化処理中に昇温させてもよい。昇温させる場合、例えば炭素化炉内に複数の加熱ゾーンを設置し、上流側の加熱ゾーンから下流側の加熱ゾーンに向かって温度が高くなるように各加熱ゾーンの温度を設定して、上流側の加熱ゾーンから下流側の加熱ゾーンに向かって順次通過させて処理することで実現できる。
炭素化処理を行う時間(炭素化処理時間)は特に制限されないが、1〜60分であることが好ましく、10〜40分であることがより好ましい。炭素化処理時間が1分以上あれば、炭素化収率がより高くなる傾向にある。一方、炭素化処理時間が60分以下あれば、得られる炭素繊維束の機械特性が向上する傾向にある。また、生産性を良好に維持できる。
なお、耐炎化工程と炭素化工程との間に、耐炎化繊維束に対して、不活性ガス中、最高温度が炭素化処理温度より低い温度(例えば、550℃以上800℃未満)で加熱する前炭素化処理を行ってもよい(前炭素化工程)。
なお、前炭素化工程を行う場合、「焼成」には、耐炎化工程と前炭素化工程と炭素化工程とを含む。
<その他の工程>
炭素化工程により得られた炭素繊維束は、そのまま炭素繊維束として用いることができるが、必要に応じて公知の方法により黒鉛化したものを炭素繊維束として用いてもよい。例えば炭素繊維束を不活性雰囲気中、最高温度が2000℃を超えて3000℃以下で加熱することにより黒鉛化された炭素繊維束が得られる。
また、炭素繊維束に集束性を付与するために、サイジング処理をすることもできる。
サイジング処理に用いるサイジング剤としては、所望の特性を得ることができれば特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ変性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂を主成分としたサイジング剤が挙げられる。サイジング処理の方法としては、公知の方法を用いることができる。
<用途>
このようにして得られる炭素繊維束は、例えばマトリックス樹脂と組み合わされて、複合材料として成形され、様々な用途に利用される。
マトリックス樹脂としては特に制限されないが、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等のラジカル重合系樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂の変性体を用いることもできる。また、マトリックス樹脂としては市販品を用いてもよい。
炭素繊維束を用いた複合材料の用途としては特に限定されず、例えば、自動車用部材、航空宇宙素材、スポーツ・レジャー用素材、圧力容器等の工業用素材など、幅広い用途に使用できる。
<作用効果>
以上説明した、本実施形態の炭素繊維束の製造方法によれば、本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維で構成される繊維束を酸化性雰囲気中、特定の温度および特定の時間、加熱した後、不活性ガス雰囲気中、特定の温度で加熱するので、高品質な炭素繊維束を高い炭素化収率で生産性よく製造でき、ひいては炭素繊維束の製造コストを低減できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例で行った各種測定方法は、以下の通りである。
「測定・評価」
<共重合体(組成物)および前駆体繊維束の組成測定>
共重合体(組成物)および前駆体繊維束の組成(各単量体単位の比率(質量%))は、H−NMR法により、以下のようにして測定した。
溶媒としてジメチルスルホキシド−d6溶媒を用い、共重合体(組成物)または前駆体繊維束を溶解させ、NMR測定装置(日本電子株式会社製、製品名:GSZ−400型)により、積算回数500回、測定温度80℃の条件で測定し、ケミカルシフトの積分比から各単量体単位の比率を求めた。
<共重合体(組成物)の質量平均分子量の測定>
共重合体(組成物)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(装置:東ソー株式会社製、製品名:HLC−8220GPC、カラム:東ソー株式会社製、製品名:TSK−GEL Super HZM−H(φ6.0mm×15cm)、展開溶媒:0.01mol/L−LiCl DMF溶液を用いて、ポリスチレンを標準物質として質量平均分子量を求めた。
<前駆体繊維束の単繊維繊度の測定>
単繊維繊度とは、繊維1本の10000m当りの重さを意味する。前駆体繊維束を1.00mとり、その質量をフィラメント数で除した後、10000倍し、単繊維繊度とした。
<前駆体繊維束および耐炎化繊維束の繊維密度の測定>
前駆体繊維束および耐炎化繊維束の繊維密度は、JIS K 7112に基づく密度勾配管法により測定した。
<炭素化収率の測定>
炭素化収率は、耐炎化繊維束の質量および炭素繊維束の質量を測定し、下記式より求めた。
炭素化収率(%)=(炭素繊維束の質量/耐炎化繊維束の質量)×100
「実施例1」
<共重合体(Z1)の製造>
以下の試薬を原料として用いた。
・単量体(a):N−シアノエチルアクリルアミド
・単量体():メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製、和光特級グレード、>99%)
・単量体():アクリロニトリル(関東化学株式会社製、特鹿級グレード、>98%)
・レドックス重合開始剤:
過硫酸アンモニウム(和光純薬工業株式会社製、和光特級グレード、>98%)
亜硫酸水素アンモニウム(和光純薬工業株式会社製、化学用グレード、45%〜55%

硫酸第一鉄(FeSO・7HO)(和光純薬工業株式会社製、和光特級グレード、99%〜102%)
・pH調整剤:
硫酸(和光純薬工業株式会社製、高純度特級グレード、>95%)
純水で6質量%水溶液の希硫酸に調整し、用いた。
・反応停止剤:
シュウ酸(和光純薬工業株式会社製、和光特級グレード、>98%)、炭酸水素アンモニウム(和光純薬工業株式会社製、和光一級グレード、>98%)
純水で0.456質量%シュウ酸、1.76質量%炭酸水素アンモニウムを含む水溶液に調整し、反応停止剤として用いた。
・重合媒体:純水(電気伝導度>5μS/cm)
容量2Lのセパラブルフラスコに純水を1.8L入れ、ダブルヘリカルリボン撹拌翼(SUS316製 W85mm×H150mm)で撹拌しながら、希硫酸を加えてpHが3.0になるように調整し、55℃に保持した。
次に、過硫酸アンモニウムの2.75質量%水溶液34.7g、亜硫酸水素アンモニウムの5.00質量%水溶液28.6g、硫酸第一鉄の6.0×10−4質量%水溶液9.1gを同セパラブルフラスコに投入して撹拌し均一化した。撹拌を継続しつつ、アクリロニトリル(AN)89質量部、シアノエチルアクリルアミド10.0質量部、メタクリル酸(MAA)1.00質量部、純水30.7質量部からなる単量体が均一に溶解された混合物238gをセパラブルフラスコに投入した。
セパラブルフラスコを55℃に保持して1時間攪拌を継続し、重合体スラリーを得た。
得られた重合体スラリーを撹拌しながら反応停止剤をpHが5.5になるまで加えて重合反応を停止させた。
次いで、重合スラリーを吸引濾過器により、70℃の水で3回洗浄濾過した後、2日間、70℃のスチーム乾燥機で加熱乾燥した後、粉砕し、共重合体(Z1)の粉末を得た。
得られた共重合体(Z1)の組成をNMRにより測定したところ、シアノエチルアクリルアミド単位が7.5質量%、アクリロニトリル単位が91.5質量%、メタクリル酸単位が1.0質量%であった。すなわち、共重合体(Z1)は、上記一般式(1)中のR、RおよびRがいずれも水素原子であり、Rがエチレン基である構造単位(A)7.5質量%と、上記式(2)中のRおよびRがいずれも水素原子である構造単位(B)91.5質量%と、メタクリル酸由来の構造単位(C)1.0質量%とで構成されている。
また、共重合体(Z1)の質量平均分子量を測定したところ、2.8×10であった。
<共重合体(Y1)の製造>
アクリロニトリル94.0質量%と、メタクリル酸1.00質量%と、アクリルアミド5.0質量%とからなる単量体混合物を用いた以外は、共重合体(Z1)と同様にして、共重合体(Y1)を得た。
得られた共重合体(Y1)の組成をNMRにより測定したところ、アクリロニトリル単位が96.3質量%、メタクリル酸単位が1.0質量%、アクリルアミド単位が2.7質量%であった。
また、共重合体(Y1)の質量平均分子量を測定したところ、4.2×10であった。
<前駆体繊維束の製造>
得られた共重合体(Z1)と共重合体(Y1)とを質量比(共重合体(Z1):共重合体(Y1))=1:1で混合して、共重合体組成物(X1)とした。得られた共重合体組成物(X1)をジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解して濃度21質量%の紡糸原液を調製した。この紡糸原液を湿式紡糸法にて紡糸し、前駆体繊維束を得た。凝固浴としては、DMAcの濃度が67質量%であり、温度が38℃であるDMAc水溶液を用いた。
得られた前駆体繊維束の単繊維繊度は1.2dtex、フィラメント数400、繊維密度は1.19g/cmであった。また、前駆体繊維束の組成をNMRにより測定したところ、シアノエチルアクリルアミド単位が3.8質量%、アクリロニトリル単位が93.8質量%、メタクリル酸単位が1.0質量%、アクリルアミド単位が1.4質量%であった。
<耐炎化繊維束の製造>
熱風循環式耐炎化炉を用い、260℃の加熱空気中で得られた前駆体繊維束を20分間加熱して(耐炎化処理)、耐炎化繊維束を得た。
耐炎化処理時間が20分の場合の耐炎化繊維束の繊維密度は1.35g/cmであった。
<炭素繊維束の製造>
得られた耐炎化繊維束を熱重量測定装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「STA7300」)を用い、以下のようにして窒素雰囲気で加熱して、炭素繊維束を得た。
まず、窒素を導入した状態で耐炎化繊維束を30℃で45分保持した後、最高到達温度1400℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、炭素繊維束を得た。雰囲気温度の上昇による繊維の質量変化から炭素化収率を算出した。具体的には、1400℃での炭素繊維束の質量を、昇温前の耐炎化繊維束の質量で除して炭素化収率を算出した。結果を表1に示す。
「実施例2」
<共重合体(Z2)の製造>
アクリロニトリル84.0質量%と、メタクリル酸1.00質量%と、シアノエチルアクリルアミド15.0質量%とからなる単量体混合物を用いた以外は、共重合体(Z1)と同様にして、共重合体(Z2)を得た。
得られた共重合体(Z2)の組成をNMRにより測定したところ、シアノエチルアクリルアミド単位が10.0質量%、アクリロニトリル単位が89.0質量%、メタクリル酸単位が1.0質量%であった。すなわち、共重合体(Z2)は、上記一般式(1)中のR、RおよびRがいずれも水素原子であり、Rがエチレン基である構造単位(A)10.0質量%と、上記式(2)中のRおよびRがいずれも水素原子である構造単位(B)89.0質量%と、メタクリル酸由来の構造単位(C)1.0質量%とで構成されている。
また、共重合体(Z2)の質量平均分子量を測定したところ、8.0×10であった。
<前駆体繊維束の製造>
得られた共重合体(Z2)と共重合体(Y1)とを質量比(共重合体(Z2):共重合体(Y1))=1:9で混合して得られた共重合体組成物(X2)を用いた以外は、実施例1と同様にして前駆体繊維束の製造を製造した。
得られた前駆体繊維束の単繊維繊度は1.2dtex、フィラメント数400、繊維密度は1.19g/cmであった。また、前駆体繊維束の組成をNMRにより測定したところ、シアノエチルアクリルアミド単位が1.0質量%、アクリロニトリル単位が95.6質量%、メタクリル酸単位が1.0質量%、アクリルアミド単位が2.4質量%であった。
<耐炎化繊維束および炭素繊維束の製造>
得られた前駆体繊維束を用いた以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束し、炭素化収率を算出した。結果を表1に示す。
なお、耐炎化処理時間が20分の場合の耐炎化繊維束の繊維密度は1.34g/cmであった。
「比較例1」
<前駆体繊維束の製造>
共重合体(Z1)を用いなかった(すなわち、共重合体(Y1)のみを使用した)以外は、実施例1と同様にして前駆体繊維束を製造した。
得られた前駆体繊維束の単繊維繊度は1.2dtex、フィラメント数400であった。
<耐炎化繊維束および炭素繊維束の製造>
得られた前駆体繊維束を用いた以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束し、炭素化収率を算出した。結果を表1に示す。
なお、耐炎化処理時間が20分の場合の耐炎化繊維束の繊維密度は1.33g/cmであった。
Figure 0006900728
表1から明らかなように、共重合体組成物(X1)または共重合体組成物(X2)からなる前駆体繊維束を耐炎化処理および炭素化処理した各実施例の炭素繊維束は、構造単位(A)を含まない共重合体(Y1)のみを用いた比較例1の炭素繊維束に比べて、炭素化収率が高かった。
また、共重合体組成物(X1)および共重合体組成物(X2)は、紡糸原液とした状態で紡糸した際に、断糸が発生せず、紡糸性が極めて良好であった。

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)で表される構造単位(A)を0.5〜30質量%、および下記一般式(2)で表される構造単位(B)を70〜99.5質量%含有する、炭素繊維前駆体アクリル繊維。
    Figure 0006900728
    (式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトリル基、ニトロ基、ホスホノ基、スルホン基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルキルオキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜12のアリールチオ基または炭素数1〜13のアシル基であり、Rは炭素数1〜12のアルキレン基または炭素数6〜12のアリーレン基である。)
    Figure 0006900728
    (式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトリル基、ニトロ基、ホスホノ基、スルホン基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルキルオキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜12のアリールチオ基または炭素数1〜13のアシル基である。)
  2. 請求項1に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維で構成される繊維束を酸化性雰囲気中、90分以下の時間、220〜300℃で加熱した後、不活性ガス雰囲気中、800〜2000℃で加熱する、炭素繊維束の製造方法。
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