以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るシステムである無線給電システムを工場に適用した例を示す。工場には、基地局であるアクセスポイント(AP)1A、1B、無線通信端末2A、2B、受電端末3A〜3G、および送電装置6が配置されている。また、受電端末3A〜3Fを搬送する搬送装置(ベルトコンベア)4が配置されている。これら以外の装置または設備が配置されていてもよい。AP1AおよびAP1Bを総称してAP1、無線通信端末2A、2Bを総称して無線通信端末2、受電端末3A〜3Gを総称して受電端末3と表す場合がある。本実施形態では、無線給電システムを工場に配置した例を説明するが、無線給電システムを、発電所など他の施設に配置してもよいし、自動車、鉄道車両、船舶、航空機、建設機械などの移動体に配置してもよい。このように無線給電システムの設置場所は、特に問わない。受電端末3がベルトコンベア上に配置されているのは一例であり、工場内の固定された設備等に配置されても、ベルトコンベア以外の移動する設備または装置(工場内の配送設備、自律移動ロボット等)に配置されてもよい。
AP1は、無線通信端末2および送電装置6と第1無線通信方式で無線通信を行う機能と、受電端末3と第2無線通信方式で無線通信を行う機能と、受電端末3に無線給電(無線送電)を行う機能とを備えた統合型APである。統合型APはこれに限定されず、例えば、これらの機能のうち、受電端末3と第2無線通信方式で無線通信を行う機能を有さなくてもよい。第1無線通信方式として、例えば、IEEE802.11シリーズまたはその後継規格の無線LAN(Local Area Network)規格に準拠した無線通信方式がある。ここで、無線LANは例示であり、AP1の用いる無線通信方式は、IEEE802.16シリーズ又はその後継規格の移動体通信方式、またはその他の通信方式であってもよい。以下の説明では、APは無線LAN通信を行う場合を想定する。第2無線通信方式は、例えばBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)である。BLEは、無線通信方式の例示であり、BLE以外の通信、例えば、DSRC(Dedicated Shor Range Communications)、ZigBee(登録商標)、Z−Wave(登録商標)、Wireless USB、無線LAN通信などを行ってもよい。NFC(Near field radio communication)なども排除されない。AP1は、搬送装置4の上方(例えば天井)に配置されてもよいし、柱または壁に配置されてもよいし、床または地面に配置されてもよいし、その他の場所に配置されてもよい。
無線通信端末2は、第1無線通信方式(ここでは無線LAN)によりAP1と無線通信を行う機器(第1機器)である。無線通信端末2は、例えば、製造装置、制御装置、検査装置、監視装置、センサ装置、自動車、ドローンなど、工場内の装置である。図の例では、無線通信端末2Aは、搬送装置4を制御する制御装置である。なお、搬送装置4がAP1と第1無線通信方式で通信可能でもよい。この場合、搬送装置4は無線通信端末でもある。
送電装置6は、受電端末3に無線給電を行うための装置である。送電装置6は、AP1Bの制御の下、動作する。送電装置6は、AP1Bと無線または有線により接続している。本例では送電装置6は、AP1Bと無線接続され、第1無線通信方式で無線通信を行う。この場合、送電装置6はステーション(STA)として動作してもよい。別の例として、図2に示すように、送電装置6は、AP1Bと有線接続されてもよい。有線接続の例として、送電装置6は、ケーブル等によりAP1Bと直接接続されてもよいし、バックボーンネットワークを介して、AP1Bと接続されてもよい。また、送電装置6は、第2無線通信方式により、受電端末3と通信可能であってもよい。送電装置6がAPに搭載されてもよい。例えば送電装置6がAP1Bに搭載され、AP1Bと一体型となってもよい。送電装置6は、搬送装置4の上方(例えば天井)に配置されてもよいし、柱または壁に配置されてもよいし、床または地面に配置されてもよいし、その他の場所に配置されてもよい。
受電端末3は、蓄電装置(二次電池、蓄電池またはキャパシタ等。以下蓄電池に統一)を搭載した機器(第2機器)である。受電端末3は、AP1または送電装置6から無線給電により受電した電力を蓄電池に充電する。受電端末3は、第2無線通信方式により、AP1および送電装置6の少なくとも一方と通信可能する。ただし、受電端末3が第2無線通信方式の通信を行う機能を備えていなくてもよい。受電端末3A〜3Gのうち、受電端末3A〜3Fは、例えば工場で製造された製品(例えばBLE端末、センサ端末)または製造途中の半製品であり、搬送装置4によって搬送経路の上流側から下流側に運ばれている。搬送装置4は、搬送経路上の受電端末を一定の速度で搬送してもよいし、給電時には一時的に搬送を停止し、給電後搬送を再開することを繰り返してもよい。このような制御は、例えば無線通信端末(制御装置)2Aが行う。受電端末3Gは、工場内の装置であり、例えば、製造装置、検査装置、監視装置(モニタリング機器)、制御装置、自動車、ドローンである。搬送装置4が送電装置6から受電可能な受電端末であってもよい。ここで挙げた受電端末の例は一例であり、他の種類の機器でもよい。
なお、受電端末3がAP1と第1無線通信方式により通信可能であってもよい。この場合、受電端末3は、受電端末(第2機器)であるとともに、無線通信端末(第1機器)でもある。また、無線通信端末2が送電装置6から受電可能であってもよい。この場合、無線通信端末2は、無線通信端末(第1機器)であるとともに、受電端末(第2機器)でもある。
図において双方向矢印付の破線は、第1無線通信方式の無線通信を表す。片方向矢印付の実線は無線給電を表す。図の例では、AP1Aは、無線通信端末2Aと無線通信を行い、また、受電端末3Aに無線給電を行う。AP1Bは、無線通信端末2Bと無線通信を行い、また、受電端末3B、3Cに無線給電を行う。送電装置6は、AP1Bの制御の下、受電端末3D〜受電端末3Gに無線給電を行う。
例えば、AP1Aは、無線通信端末2Aが動作するのに必要なデータ(例えばファームウェア)を図示しないサーバから取得して、第1無線通信方式で無線通信端末2Aに送信したり、無線通信端末2Aまたは搬送装置4の状態を表すデータを第1無線通信方式で受信して、サーバに送信したりする。
また、AP1Aは、受電端末3に対して指向性を有する電波であるビームパターン(給電パターン)を形成し、形成したビームパターンにより受電端末3Aの蓄電池を充電する。同様に、AP1Bは、受電端末3B、3Cに対して形成したビームパターンにより、受電端末3B、3Cの蓄電池を充電する。受電端末3B、3Cの無線給電は順番に行ってもよいし、同一のビームパターンにより同時に行ってもよい。送電装置6は、受電端末3D〜受電端末3Gに対して形成したビームパターンにより、無線給電を行う。受電端末3D〜受電端末3Gの無線給電は順番に行ってもよいし、同一のビームパターンにより同時に行ってもよい。
AP1A、AP1Bまたは送電装置6は、受電端末3への給電前に、受電端末3と第2無線通信方式の通信を行って、受電端末3の無線給電に必要なパラメータ(給電量、給電回数、送信電力値など)を特定するための情報を、受電端末3から取得してもよい。送電装置6は取得した情報を、AP1Bに送信してもよい。なお、AP1A、AP1Bのそれぞれにおいて無線通信と無線給電とは、別々のタイミングで行われるとするが、同時に行う形態も排除されない。
AP1(AP1A、AP1B)および送電装置6は、無線給電を行う対象となる受電端末を、予め指定されていてもよい。例えば、AP1は、AP1または送電装置6が無線給電する対象となる機器の識別情報を外部のサーバまたは工場の管理者が操作する端末(管理者端末)から受信して、内部のメモリに保存しておく。AP1または送電装置6は、受電端末3と第2無線通信方式(BLE等)で通信して、受電端末3の識別情報が、保持している識別情報に一致すれば、受電端末3を給電対象としてもよい。別の例として、AP1または送電装置6は、受電端末3と第2無線通信方式で通信して、受電端末3に搭載の蓄電池の電荷量(残存電力量)を調べる。電荷量が閾値未満である受電端末3を給電対象とする。なお、上流側のAPまたは送電装置で給電されたが残存電力量が閾値に満たなかった受電端末3が、下流側の別のAPまたは別の送電装置で再充電されてもよい。ここで述べた以外の方法で、給電対象となる受電端末3を特定してもよい。例えば、搬送装置の搬送経路に沿って設けたセンサや、AP1または送電装置6内に設けたセンサにより、搬送される受電端末を検知し、検知された受電端末を給電対象としてもよい。また、送電装置6の給電対象となる受電端末を、AP1が特定し、特定した給電対象の情報を送電装置6に通知してもよい。
ここで図3を用いて、無線LANで利用する周波数帯域と、無線給電で利用する周波数帯域について説明する。図3は、無線LANで利用する周波数帯域と、無線給電で利用する周波数帯域との関係の例を示す。この例では、無線LANでは5.6GHz帯が利用され、当該帯域に、複数の周波数チャネル(無線LANチャネル)が配置されている。各AP1は、複数の周波数チャネルCh1〜Ch10から1つまたは複数の周波数チャネルを選択して、無線通信端末(無線通信端末2A、2B)と通信を行う。AP1Bと送電装置6間の通信が無線LANの場合、当該通信用のチャネルは5.6GHz内のチャネルでもよいし、当該帯域外の別の帯域内のチャネルでもよい。以下、無線LANで使用する周波数チャネルを無線LANチャネルと呼ぶ場合がある。一方、無線給電の周波数帯域(無線給電チャネルと呼ぶ)は、無線LANで使用するチャネル群とは異なる帯域に配置されている。本例では、無線給電の周波数帯域(無線給電チャネルと呼ぶ)は5.725GHz帯である。つまり、無線給電の周波数帯域の中心周波数は、チャネル群の外側に配置されている。この場合、無線給電チャネルRChは、チャネル群の上端側に近いため、大電力伝送を行うと、近接する無線LANチャネル(例えばCh11、Ch10等)に干渉が生じる可能性がある。なお、無線給電チャネルRChは、無線LANの周波数帯域内に存在してもよい。この場合の例を図4に示す。この場合も、無線給電チャネルRchで無線給電を行うと、近接するチャネルCh6、Ch7、Ch8等に干渉が生じ得る。なお、無線給電チャネルRchは無線LANチャネルと同じ周波数(中心周波数)でもよいし、これらとは異なる周波数でもよい。
本実施形態では、受電端末3(3A〜3G)への無線給電を、近隣の無線LANチャネルの通信に与える干渉を抑制しつつ行うことを実現する。具体例として、AP1Bが、送電装置6を用いて受電端末3Dおよび受電端末3E等に無線給電を行う場合に、自局が使用する無線LANチャネルへの干渉を抑制するように制御する。なお、電波の伝搬環境は、工場内の人や移動体(自動車、ドローン)の移動により変化し、また新たな装置の設置などによっても変わり得る。また受電端末が移動(搬送も含む)する場合もある。したがって、受電端末に適したビームパターンも状況によって変わり得る。したがって、このような変化にも動的に対応できる手法が必要である。以下、図5を用いて当該手法の一例の概要を説明する。
図5は、受電端末への無線給電を、近隣の無線LANチャネルの通信に与える干渉を抑制しつつ行う例を説明するための図である。図5において、AP1Bが、ある無線LANチャネルを使ってカバレッジCR内の無線通信端末2Bと無線LAN通信をしている。送電装置6は、AP1Bの制御の下、無線給電チャネルを用いて受電端末3Dに無線給電を行う。無線給電チャネルは、AP1Bが使用している無線LANチャネルに近接している。
送電装置6が、受電端末3Dに対してビームパターンBP1で無線給電を行うとする。この場合、ビームパターンBP1はカバレッジCRに被らない。したがって、カバレッジCR内の無線LAN通信に干渉しない。このように近接する無線LANチャネルに干渉しないビームパターンを、以下の説明において、“空間共有パターン”(第2ビームパターン)と呼ぶ場合がある。したがって、送電装置6は、受電端末3Dの給電に使用するビームパターンが空間共有パターンである場合は、このビームパターンを用いて無線給電を行えばよい。つまり、第2ビームパターンで電力を供給する場合、無線LANチャネルで通信される期間(第1通信期間)と少なくとも一部または全部が重複可能な条件で、第2ビームパターンの送電期間(第2送電期間)を設定できる。すなわち、第2送電期間は、無線LANの通信期間(第1通信期間)と一部または全部が重複してもかまわないし、まったく重複しない場合も可能である。
一方、送電装置6が、受電端末3Dに対してビームパターンBP2で無線給電を行うとする。この場合、ビームパターンBP2はカバレッジCRに被るため、無線通信端末2Bの通信に干渉し得る。このような場合には、AP1Bは、無線LANチャネルを独占的に使用できる期間を確保して(カバレッジCR内の他の無線通信端末による無線LAN通信を禁止して)から、送電装置6にビームパターンBP2で無線給電を行わせる。このようにすることで、無線LAN通信への干渉を抑制しながら、無線給電を行うことができる。
無線LANチャネルの使用期間を確保するために、AP1Bは、例えば、CTS−to−selfフレームを送信する。CTS−to−selfフレームは、受信先アドレス(RA: Receiver Address)フィールドを自局のアドレス(すなわちAP1BのBSSIDあるいはMACアドレス)に設定したCTSフレームである。AP1BからCTS−to−selfフレームを受信したカバレッジCR内の無線通信端末(無線通信端末2B等)は、CTSフレームのDuration/IDフィールドに設定された期間の間、送信を行うことを禁止される。具体的には、自端末宛でないCTSフレームを受信した無線通信端末は、フレームの末尾から、Duration/IDフィールドに設定された値の長さの期間の間、NAV(Network Allocation Vector)を設定し、この間、送信を控える。この期間のことを、送信禁止期間またはNAV期間と呼ぶ。この期間内に無線給電を行うことで、無線LAN通信への干渉は抑制される。すなわち、この期間内に第1送電期間を設定することで、第1送電期間は無線LANの通信期間(第1通信期間)に重複しない。AP1B(または送電装置6)は、無線給電を行うために必要な期間を決定し、AP1Bは、決定した期間の長さに応じた値をDuration/IDフィールドに設定すればよい。
なお、CTS−to−selfフレームの代わりに、他のフレームを定義して使用してもかまわない。例えば、無線媒体を使用する期間を確保するためのフレームとして、トリガーフレームを定義する。確保したい期間長をトリガーフレームの所定のフィールド(Duration/IDフィールドでもよいし、フレームボディフィールドでもよいし、その他のフィールドでもよい)に設定し、受信先アドレスをブロードキャストアドレスまたはマルチキャストアドレスに設定する。このトリガーフレームを受信した無線通信端末は、所定のフィールドに設定された期間だけ、送信を禁止される。
このように無線LAN通信への干渉を抑制するため、無線LANチャネルの使用期間を確保してから使用する必要のあるビームパターンを、“時間共有パターン”(第1ビームパターン)と呼ぶ場合がある。すなわち第1ビームパターンで電力を供給する場合、無線LANチャネルで通信される期間(第1通信期間)と重複しない条件で、送電期間(第1送電期間)を設定する必要がある。
このように、受電端末3Dの給電に使用するビームパターンが空間共有パターンか時間共有パターンかによって無線給電を行う方法を変える。前者の場合は、特別な処理を介さずに無線給電を行えばよいが、後者の場合は、無線LANチャネルの使用期間を確保してから、無線給電を行う要がある。
上述したように、本実施形態では、近接する無線LANチャネルに与える干渉を抑制するように、給電に使用するビームパターンの決定と、給電方法の制御(無線LANチャネルの使用期間を確保してから無線給電するか、そのような確保のための処理を行うことなく無線給電する)とを行うことを特徴とする。以下、本実施形態についてさらに詳細に説明する。
図6は、第1の実施形態に係る無線給電システムの全体ブロック図である。簡単のため、AP1、無線通信端末2、受電端末(第2機器)3、送電装置6を一台のみ示しているが、実際にはそれぞれ複数台存在してもよい。AP1は、図1のAP1A、AP1Bに対応する。無線通信端末2は、例えば図1の無線通信端末2Aおよび無線通信端末2Bに対応する。受電端末3は、図1の受電端末3A〜3Gに対応する。送電装置6は、図1の送電装置6に対応する。なお、送電装置6がAP1に外部接続(無線LANで無線接続)されているが、有線接続されてもよいし、送電装置6がAP1の内部に配置されてもよい(後述する第2の実施形態を参照)。送電装置6がAP1の内部に配置される場合、AP1と送電装置6の信号の送受信は、無線LANではなく、内部バスを介して行えばよい。このため送電装置6に無線LANの通信機能は不要である。
(AP1)
AP1は、無線通信端末2とおよび送電装置6と、第1無線通信方式(ここでは無線LAN)の通信を行う。また、AP1は、受電端末3と第2無線通信方式(ここではBLE)の通信を行う。また、AP1は、受電端末3に無線給電を行う。ただし、図6では、AP1が受電端末3とBLE通信を行う例、および受電端末3に無線給電を行う例の表記は省略されている。また、無線LANで使用する周波数帯域と、BLEで使用する周波数帯域は異なるものとする。例えば無線LANでは、5.6GHz帯域を利用し、BLEでは2.4GHz帯域を利用しているとする。ただし、第1無線通信方式と第2無線通信方式が同じ周波数帯域を用いてもよい。なお、BLEの場合、アドバタイズメントチャネルを介して、AP1または送電装置6は、受電端末3の発見や、受電端末3との接続等の動作を行うことができる。
AP1が搭載する無線通信装置は、無線LAN通信と無線給電とで共用される1つ又は複数のアンテナ14と、BLE通信用の1つまたは複数のアンテナ15と、スイッチ101と、無線受信部102と、無線送信部103と、フレーム生成部104と、制御部105と、スイッチ106と、BLE通信部111(BLE受信部107およびBLE送信部108)と、IF部109と、記憶部110とを備える。無線送信部103および無線受信部102との組は、一例として無線通信部に対応する。
本実施形態の電子装置は、AP1内の要素(例えば制御部105)と、送電装置6または送電装置6内の要素(例えば無線送信部603(送電部))とを組み合わせて構成してもよい。例えば、制御部105と無線送信部603(送電部)とを含む電子装置とし、電子装置が無線通信部(無線送信部103、無線受信部102)に接続されてもよい。制御部105を含む第1装置と、送電部を含む送電装置6が有線または無線で接続されてもよい。また、送電装置をAP1の内部に接続した構成(後述する第2の実施形態を参照)により、本実施形態の電子装置を構成してもよい。このように本実施形態の電子装置は、AP1内の要素と送電装置6内の要素とを任意に組み合わせて構成することができる。
アンテナ14は1つでも複数であってもよく、アンテナの種類や形状は特に問わない。本実施形態ではアンテナ14は複数設けられている。同様に、アンテナ15は1つでも複数であってもよく、アンテナの種類や形状は特に問わない。本実施形態ではアンテナ15は1つである。
スイッチ101は、アンテナ14を、無線送信部103と無線受信部102との間で切り換えるためのスイッチである。ただし、スイッチ101を設けずに、アンテナ14を無線送信部103および無線送信部102と接続する構成も可能である。
フレーム生成部104は、無線通信端末2または送電装置6に送信するフレームを生成する。AP1が無線LAN通信をする場合、フレームはMACフレームである。無線LAN規格のフレームには、データフレーム、管理フレーム、制御フレームがあるが、これらのいずれであってもよい。管理フレームの例としては、ビーコンフレームがある。制御フレームの例としては、相手の端末に送信要求を行うためのRTS(Request to Send)フレーム、送信許可を与えるためのCTS(Clear to Send)フレーム、送達確認フレームであるACKフレームまたはBA(Block Ack)フレームなどがある。ここで列挙したフレームは一例であり、他にも様々なフレームが存在する。
AP1は、定期的に自身の属性または同期情報を通知するために上記のビーコンフレームを送信する。
無線送信部103は、フレーム生成部104で生成されたフレームを、アンテナ14を介して送信する。フレームは、実際には、物理レイヤのヘッダが付加されてパケットとされ、パケットが送信される。無線送信部103は、フレーム(より詳細にはパケット)に対して、誤り訂正符号化と変調を行い、変調信号を生成する。変調信号は、アナログ信号に変換される。無線送信部103は、発振器とPLL(Phase Locked Loop)回路を用いて一定周波数の信号を生成しており、生成した一定周波数の信号に基づいて、送信用ミキサで、アナログ信号を、無線周波数にアップコンバートする。無線送信部103は、アップコンバートした信号を、RFアンプにより増幅し、増幅された信号を、アンテナ14から空間へ電波として送信する。これにより、無線周波数のフレーム(パケット)が送信される。
無線送信部103は、制御部105の制御の下、無線給電用の無線信号(給電信号)を生成し、無線信号を、アンテナ14を介して送信する。より詳細には、無線送信部103は、制御部105により指定される給電パラメータに従って無線信号を生成する。無線信号は、フレームまたはパケットの送信時に用いる発振器の出力信号またはPLL回路の出力信号を利用して生成できる。一例として、給電パラメータに応じた給電用データと、当該出力信号とを、送信用ミキサでかけ合わせることで、無線信号を生成してもよい。または、無線信号用の信号源を用意し、信号源を利用して給電パラメータから無線信号を生成することも可能である。
なお、給電用の無線信号を、フレーム生成部104で生成するフレームを用いて生成することも可能である。例えばビーコンフレームを、無線信号として用いることも可能である。あるいは、無線給電用のフレームを定義して、当該フレームを無線信号として送信してもよい。
制御部105は、フレーム生成部104を用いて、無線通信端末2との通信を制御する。
また、制御部105は、無線送信部103または送電装置6による給電(送電)を制御する。前者は自局から給電を行う場合、後者は送電装置6から給電を行う場合に相当する。制御の一例として、制御部105は、給電用の無線信号に対する給電パラメータを制御する。給電パラメータの設定項目の例として、複数のアンテナごとのウエイトがある。また、変調方式または変調符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)がある。他の例として、無線給電チャネルが複数ある場合に、使用する無線給電チャネルを識別する情報がある。ここで、ウエイトは、送信信号の振幅および位相の調整値である。アンテナごとに、送信する信号の振幅および位相を調整し、重み付け合成することで、様々なビームパターンを形成できる。逆に、受信する信号を、当該ウエイトに基づき受信処理することで、当該ビームパターンでの信号受信を行うことができる。受電端末3に適したビームパターンを形成することで、電力変換効率(伝送効率あるいは受電効率とも呼ぶ)の高い無線信号の送信が可能となる。
各アンテナ(自局のアンテナ14または送電装置6のアンテナ64)に設定するウエイトの組合せを表すパラメータを、ウエイトパラメータと呼ぶ。制御部105は、一例として、無線送信部103または送電装置6に対して、ビームパターンとウエイトパラメータとを対応づけたパターンテーブルから、給電に使用するビームパターンを選択する。図7にパターンテーブルの例を示す。N個のビームパターンのそれぞれについて、対応するウエイトパラメータの値が設定されている。例えば、ビームパターン1の場合、ウエイトパラメータはW1=(W1a、W1b)である。W1aは1番目のアンテナのウエイト、W2bは、2番目のアンテナのウエイトである。3つ以上のアンテナの場合、3番目以降のアンテナのウエイトも、ウエイトパラメータに含められる。なお、ビームパターンは予め図7のようなテーブルで管理しておく必要はなく、予め定めたアルゴリズムでパラメータを調整することで決定してもよい。あるいは、給電対象となる機器との間でサウンディングプロセスを行うことにより受電端末との間の伝搬路の状態を推定し、推定した伝搬路の状態に基づき、給電対象に適したビームパターンを決定してもよい。
なお、本実施形態ではアンテナ14またはアンテナ64のウエイトを調整することによりビームパターンを生成(ビームフォーミング)しているが、アンテナ14またはアンテナ64が指向性可変アンテナである場合は、アンテナ14またはアンテナ64自体を調整して、ビームパターンを調整してもよい。この場合も、本実施形態の動作は実現可能である。
制御部105は、送電装置6における1つまたは複数のビームパターンについて、それぞれ時間共有パターン(無線LANと干渉するパターン)か、空間共有パターン(無線LANと干渉しないもしくは干渉が少ない)かを、調べる。例えば、制御部105は、送電装置6における各ビームパターンに対応するウエイトパラメータを用いて、複数のアンテナ65で受信された信号を解析し、これにより、自局が使用している無線LANチャネルとの干渉状況(各ビームパターンが、無線LANチャネルと干渉しているか)を調べる。すなわち、近接する無線LANチャネルについて、各ビームパターンの干渉状況を測定する。
例えば、無線LANチャネルとの干渉状況を特定するための指標として、一定時間内の平均受信電力値を測定する。または、指標は、一定時間内に受信電力が閾値以上となる時間の比率(チャネル占有率)でもよい。または、指標は、チャネル状態(ビジーまたはアイドル)を測定し、測定した回数に対するビジー状態の比率(ビジー比率)でもよい。または、指標は、チャネルで無線LANパケットの受信を試み、一定時間内に計測されたパケットの受信回数でもよい。例えば、あるビームパターンに関して、平均受信電力値またはチャネル占有率が閾値以下もしくはパケットの受信回数がゼロもしくは閾値以下であれば、そのビームパターンは干渉すると判断し、空間共有パターンであると判断する。それ以外では、そのビームパターンは干渉しないと判断し、時間共有パターンであると判断する。
なお、本実施形態ではAP1は自局の無線LANチャネルとの干渉を測定するが、他のAP1(第1無線通信方式を実行する他の無線通信装置)が使用する無線LANチャネルとの干渉を測定してもよい。この場合、AP1は他のAP1と基地局間通信を行って、他のAP1に上記した送信禁止期間(NAV期間)を設定させてもよい。
制御部105は、送電装置6が給電対象の受電端末3に使用するビームパターンとして、予め定められた任意の方法でビームパターンを選択する。一例として、最も効率的な給電が可能なビームパターンを選択する。例えば、送電装置6における複数のビームパターンのそれぞれで無線給電を試験的に行い、フィードバックとして受電量情報(詳細は後述)を受電端末3から直接または送電装置6を介して取得する。そして、受電量情報が最も大きいもしくは閾値以上であるビームパターンを選択する。その他の方法として、例えばランダムに選択する、一定の順序で選択することなども可能である。ここで、ビームパターンの選択は、空間共有パターンおよび時間共有パターンを区別せず、すべてのビームパターンの中から選択するようにしてもよい。または、複数のビームパターンを空間共有パターンと時間共有パターンとに分類し、空間共有パターンの中からビームパターンを選択する方法、もしくは時間共有パターンの中からビームパターンを選択する方法も可能である。無線送信部103が給電対象の受電端末3に使用するビームパターンを選択する場合も、例えば、最も効率的な給電が可能なビームパターンを選択するなど、任意の方法を用いればよい。
制御部105は、時間共有パターン(第1ビームパターン)で電力を供給する場合、無線LAN(第1無線通信方式)の通信期間(第1通信期間)と重複しない条件で、送電期間(第1送電期間)を設定する。空間共有パターン(第2ビームパターン)で電力を供給する場合、当該第1通信期間と少なくとも一部重複可能な条件で送電期間(第2送電期間)を設定する。送電装置6は、制御部105で設定された送電期間で電力を供給する。
無線受信部102は、無線通信端末2または送電装置6から受信した無線LANの信号を復調して、フレームを得る。より詳細には、無線受信部102は、アンテナ14で受信された信号を、LNA(Low Noise Amplifier)アンプで増幅する。無線受信部102は、増幅された信号から受信用フィルタを用いて所望帯域の信号を抽出する。無線受信部102は、発振器とPLL回路で生成される一定周波数の信号に基づいて、抽出した信号をダウンコンバートする。無線受信部102は、復調および復号してフレームを得る。
無線受信部102は、取得したフレームがデータフレームであれば、データフレームに含まれるデータをIF部109から出力する。IF部109は、無線受信部102で受信したフレームを上位層または、上位層との間のバッファに出力するためのインターフェースである。また、無線受信部102は、受信したフレームの種類に応じた動作を行うため、フレームの解析結果をフレーム生成部104または制御部105に出力する。例えば送達確認応答を行う場合は、送達確認応答に必要な情報をフレーム生成部104または制御部105またはこれらの両方に出力し、受信完了から一定時間後に送達確認応答フレームを送信するようにする。
スイッチ106は、アンテナ15をBLE受信部107またはBLE送信部108へ切り換えるためのスイッチである。
BLE受信部107は、BLEの信号を受信する。BLE受信部107は、BLE用のアンテナ15を介して、受電端末3からデータを受信する。受信するデータの例として、給電要求、センサデータ、および受電端末3が受電した受電量に関する情報(受電量情報)がある。
BLE受信部107は、制御部105に接続されており、受電端末3から受信した給電要求および受電量情報を制御部105に供給する。またBLE受信部107は、受電端末3から受信したセンサデータを、図示しないサーバ(監視装置)に送信する。監視装置は、センサデータに基づき、センシング箇所の異常の有無等を確認する。制御部105が監視装置の役割を兼ねてもよく、その場合、BLE受信部107は、センサデータを制御部105に供給する。
BLE送信部108は、制御部105に接続されており、制御部105から指示されたデータを、アンテナ15を介して、受電端末3に送信する。送信されるデータの一例として、給電パラメータ(AP1または送電装置6から無線信号の送信に使用する各アンテナのウエイト、送信電力など)や、受電量の測定指示情報などがある。受電端末3では通知された各アンテナのウエイトを用いて、無線信号(給電信号)を効率的に受電することができる。
記憶部110は、制御部105に接続されており、制御データを保存する。記憶部110は、SRAM、DRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM、FRAM等の不揮発性メモリでもよい。またハードディスク、SSD等のストレージ装置でもよい。
(無線通信端末)
無線通信端末2は、第1無線通信方式(ここでは無線LAN)の通信をAP1と行う。無線通信端末2は、ステーション(STA)と呼ばれることもある。無線通信端末2が用いる無線通信方式は、AP1の用いる無線通信方式と同一または互換性のある無線通信規格に対応していれば何でもよい。
無線通信端末2が搭載する無線通信装置は、アンテナ23と、スイッチ24と、無線送信部25と、無線受信部26とを備える。スイッチ24は、アンテナ23の接続先を無線送信部25および無線受信部26間で切り換えるためのスイッチである。無線送信部25は、無線通信端末2で生成されたフレームを、アンテナ23を介して送信する。無線受信部26は、AP1および他の無線通信端末からフレームを受信する。
アンテナ23は、無線LANの信号を送受信可能なアンテナである。アンテナ23は1つでも複数であってもよく、アンテナの種類や形状は特に問わない。無線送信部25および無線受信部26は、AP1の無線送信部103および無線受信部102の無線LANに関する機能と同様の機能を有する。
(送電装置)
送電装置6は、第1無線通信方式(ここでは無線LAN)の通信をAP1と行う。また、送電装置6は、受電端末3と第2無線通信方式(ここではBLE)の通信を行う。また、送電装置6は、受電端末3に無線給電を行う。ただし、送電装置6が受電端末3と第2無線通信方式の通信を行うことは必須では無い。その場合、送電装置6が第2無線通信方式を実行する機能を有さなくてよい。また送電装置6がAP1と有線接続またはAP1の内部に搭載される場合は、無線LANに関する機能は不要である。以下の説明において、AP1と同様の機能の説明は適宜省略する。
送電装置6は、無線通信または無線給電用の1つまたは複数のアンテナ64と、BLE用の1つまたは複数のアンテナ65と、スイッチ601と、無線受信部602と、無線送信部603と、フレーム生成部604と、制御部605と、スイッチ606と、BLE通信部611(BLE受信部607およびBLE送信部608)と、記憶部610とを備える。
アンテナ64は1つでも複数であってもよく、アンテナの種類や形状は特に問わない。本実施形態ではアンテナ64は複数設けられている。同様に、アンテナ65は1つでも複数であってもよく、アンテナの種類や形状は特に問わない。本実施形態ではアンテナ65は1つである。
スイッチ601は、アンテナ64を、無線送信部603と無線受信部602との間で切り換えるためのスイッチである。ただし、スイッチ601を設けずに、アンテナ64を無線送信部603および無線送信部602と接続する構成も可能である。
フレーム生成部604は、AP1に送信するためのフレームを生成する。AP1が無線LANによる通信をする場合、フレームはMACフレームである。
無線送信部603は、フレーム生成部604で生成されたフレームを、アンテナ64を介して送信する。
無線送信部603は、制御部605の制御の下、無線給電用の無線信号(給電信号)を生成し、無線信号を、アンテナ64を介して送信する。したがって、無線送信部603は送電装置6における送電部として機能する。より詳細には、無線送信部603は、制御部605により指定される給電パラメータ(各アンテナのウエイト等)に従って無線信号を生成する。無線信号は、フレームまたはパケットの送信時に用いる発振器の出力信号またはPLL回路の出力信号を利用して生成できる。一例として、給電パラメータに応じた給電用データと、当該出力信号とを、送信用ミキサでかけ合わせることで、無線信号を生成してもよい。または、無線信号用の信号源を用意し、信号源を利用して給電パラメータから無線信号を生成することも可能である。または、給電用の無線信号を、フレーム生成部604で生成するフレームを用いて生成することも可能である。例えば、無線給電用のフレームを定義して、当該フレームを無線信号として送信してもよい。
制御部605は、フレーム生成部604を用いて、AP1との通信を制御する。
また、制御部605は、受電端末3への無線給電に関する制御を行う。一例として、制御部605は、無線送信部603が送信する無線信号に対する給電パラメータを制御してもよい。この場合、AP1の場合と同様、ビームパターンとウエイトパラメータとを対応づけたパターンテーブルを記憶部610に保持してもよい。また、制御部605は、1つまたは複数のビームパターンについて、それぞれ時間共有パターンか、空間共有パターンかを、近接する無線LANチャネルの使用状況を測定することで、調べてもよい。制御部605は、給電対象の受電端末3に使用するビームパターンを選択してもよい。また、制御部605は、制御部105と同様の方法で、時間共有パターン(第1ビームパターン)で電力を供給する場合の送電期間(第1送電期間)、空間共有パターン(第2ビームパターン)で電力を供給する場合の送電期間(第2送電期間)を設定してもよい。ここで述べた無線給電に関する制御の動作の全部または一部は、AP1が前述したように行ってもよく、この場合は、制御部605は当該全部または一部の制御を行う必要は無い。逆に、当該全部または一部を送電装置6で行う場合は、AP1は当該全部または一部の制御を行わなくてよい。
無線受信部602は、AP1から受信した信号を復調して、フレームを得る。無線受信部602は、取得したフレームを解析して、フレームの解析結果をフレーム生成部604または制御部605に出力する。
スイッチ606は、アンテナ65をBLE受信部607またはBLE送信部608へ切り換えるためのスイッチである。
BLE受信部607は、受電端末3からBLEの信号を受信する。BLE受信部607は、BLE用のアンテナ65を介して、受電端末3からデータを受信する。受信するデータの例として、給電要求、センサデータ、および受電端末3が受電した受電量に関する情報(受電量情報)がある。
BLE受信部607は、制御部605に接続されており、受電端末3から給電要求および受電量情報を受信した場合に、これらの要求および情報を制御部605に供給してもよい。制御部605は、供給された上記の要求および情報を、AP1に送信してもよいし、制御部605で解釈し、その後の制御を行ってもよい。またBLE受信部607は、受電端末3からセンサデータを受信した場合、受信したセンサデータを、図示しないサーバ(監視装置)に送信してもよい。制御部605が監視装置の役割を兼ねてもよく、その場合、BLE受信部607は、センサデータを制御部605に供給する。
BLE送信部608は、制御部605に接続されており、制御部605から指示されたデータを、アンテナ65を介して、受電端末3に送信する。送信されるデータの一例として、給電パラメータや、受電量の測定指示情報などがある。なお、送電装置6がBLE通信機能を備えない場合、AP1が、送電装置6が給電対象とする受電端末3と通信を行ってもよい。
(受電端末)
受電端末3は、AP1および送電装置6のうち少なくとも一方とBLE通信が可能であり、また、AP1または送電装置6から無線給電を受けることが可能な機器である。
受電端末3が搭載する無線通信装置は、センサ10と、無線LAN用のアンテナ31と、受電部32と、受電量測定部33と、BLE送信部34と、BLE用のアンテナ35と、スイッチ36と、BLE受信部37と、記憶部38と、制御部39と、蓄電装置9とを備える。アンテナ31およびアンテナ35の本数は1つでも、複数でもよい。アンテナ35を無線給電とBLE通信との共用アンテナとし、アンテナ31を省略してもよい。この場合、アンテナ35を受電部32に直接またはスイッチ36を介して接続する。
蓄電装置9は電力(電荷)の蓄積と、放出とが可能な装置である。蓄電装置9は、リチウムイオン電池などの小型の蓄電池または二次電池でもよいし、キャパシタでよい。本実施形態では、蓄電装置9として蓄電池を想定し、以下では蓄電池9と記述する。受電端末3は、蓄電池9に蓄積された電力により動作する。なお、AP1および無線通信端末2は、自装置に搭載されたバッテリーまたは外部電源(商用電源、バッテリー等)から供給される電力に基づき動作する。
受電部32は、アンテナ31を介して、AP1または送電装置6から送信される無線信号(給電信号)を受信し、受信した無線信号を直流に変換(整流)する。受電部32は、変換された直流電流を、蓄電池9に充電する。
受電量測定部33は、受信した無線信号の電力量(受電量)を測定する。受電量の測定方法は任意でよい。例えば、測定前後の電圧の変化に応じて、受電量を求めてもよい。具体的には、測定前後の電圧の差分と、電池容量とから受電量を測定する。測定した受電量に関する情報は、記憶部38に保存される。
BLE送信部34は、AP1および送電装置6の少なくとも一方に、BLEの信号を送信する。一例として、BLE送信部34は、測定された受電量に関する情報(受電量情報)を、BLE用のアンテナ35を介して、送信する。受電量情報は、一例として、測定された受電量を特定する値を含む。受電量を特定するための値は、受電量の値でもよいし、測定前後の蓄電池9の電圧の変化値でもよい。蓄電池9の特性をAP1側または送電装置6側で把握できる場合には、電圧の変化値から、受電量をAP1または送電装置6で計算することができる。
また、受電量情報は電力変換効率でもよい。電力変化効率は、受信電力値(または受電量)と送信電力値(または送信電力量)との比として、受電量測定部33または制御部39で計算できる。送信電力値(または送信電力量)は、予めAP1または送電装置6から通知されているか、自装置が、給電要求で送信電力値(または送信電力量)を予め指定しているものとする。あるいは、システムまたは仕様により、送信電力値(または送信電力量)が事前に決められていても良い。受信電力値として、平均受信電力または最大受信電力値を用いることができる。送信電力値として、平均送信電力値または最大送信電力値を用いることができる。
スイッチ36は、アンテナ35の接続先をBLE送信部34およびBLE受信部37間で切り換えるためのスイッチである。
BLE受信部37は、AP1または送電装置6からBLEの信号を受信する。一例として、BLE受信部37は、BLE用のアンテナ35を介して、AP1または送電装置6からデータを受信する。受信するデータの例として、給電パラメータおよび測定指示情報のいずれか一方などがある。
記憶部38は、受電量測定部33で測定した受電量情報、または任意のデータを保存する。記憶部38は、SRAM、DRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM、FRAM等の不揮発性メモリでも、ハードディスク、SSD等のストレージ装置でも、これらの組み合わせからなるものであってもよい。
センサ10は、例えば、タイヤ空気圧センサ、エンジン温度センサ、室内の温度センサ、方位センサ、モーションセンサ、距離センサなど、任意のセンサである。
制御部39は、受電量測定部33、BLE送信部34、BLE受信部37およびセンサ10を制御する。制御部39は、BLE送信部34を介して、AP1および送電装置6の少なくとも一方に給電要求を送信してもよい。給電要求は、一例として、AP1または送電装置6から給電される必要がある電力量(給電量)、送電期間、無線信号の送信回数、1回の送信あたりの無線信号の長さ、送信電力値等またはこれらの任意の組み合わせの設定値を含む。AP1では給電要求に基づき給電スケジュールを生成してもよい。ただし、これらの設定値のうち事前にシステムまたは仕様で決まっているものがある場合は、その設定値については、給電要求に含めなくてもよい。また、上記の設定値は、給電要求とは別個に送信してもよい。給電要求の送信タイミングは任意でよい。一例として、蓄電池9の残存電力量が閾値以下になったタイミング、所定の時刻になったタイミングがあるが、これらに限定されない。
制御部39は、AP1または送電装置6から給電された電力量(受電量)に関する受電量情報を、BLE送信部34を介して、AP1または送電装置6に送信(フィードバック)してもよい。
(システムの動作例)
図8Aおよび図8Bを用いて、図6のシステムの動作例を示す。ここでは、一例として、無線通信端末2は工場内の監視カメラであり、受電端末3はBLE端末であるとする。
図8Aは、図6のシステムの動作シーケンス例を示す。図8Aにおいて、AP1は、無線通信端末2から定期的または任意のタイミングで、第1無線通信方式で映像データ81を受信する。AP1は、受信した映像データを内部の記憶装置に格納し、図示しない監視モニタ(表示装置)に送信したり、図示しないサーバに送信したりする。サーバは、画像解析を実行してもよい。
またAP1は、例えば、受電端末3の状態を表す情報(例えば、蓄電池の残存電力量や、受電量情報)または給電要求などを含むデータを、送電装置6を介して受信する。すなわち、送電装置6は受電端末3から受電端末3の状態を表す情報または給電要求などを含むデータ82Aを受信し、受信したデータ82Aをデータ82BとしてAP1に送信する。AP1は、取得したデータ82Bに基づき、給電対象となる受電端末3および給電条件(給電量、給電時間、送信電力等)等を特定する。
AP1は、送電装置6における給電用のビームパターン(複数のアンテナ64のウエイト)を決定する。AP1は、決定したビームパターンが空間共有パターンおよび時間共有パターンのどちらであるかを、事前に行った測定結果に基づき判断する。ビームパターンを決定する機能、および決定したビームパターンが空間共有パターンおよび時間共有パターンのどちらであるかを決定する機能、の少なくとも一方が、送電装置6側にあってもよい。この場合、各機能を実行するために必要な情報をAP1が送電装置6に送信してもよい。送電装置6では、当該機能の実行の結果に応じて、その後のAP1での処理に必要な情報を、AP1に送信してもよい。例えば送電装置6で給電用のビームパターンを決定する場合、決定したビームパターンを特定する情報をAP1に送信してもよい。また、送電装置6で空間共有パターンおよび時間共有パターンのどちらであるかを決定する場合、決定したパターンを特定する情報をAP1に送信してもよい。
AP1は、決定したパターンが時間共有パターンであれば、給電を行う期間以上の長さの期間を指定したフレーム(例えばCTS−to−SELFフレーム)83を送信して、無線LANチャネルの使用期間87を確保する。使用期間87の間、無線通信端末2は送信を禁止される。AP1は、ビームパターンの情報、給電対象の受電端末3の情報、および給電条件等を表すデータ84を送電装置6に送信する。送電装置6は、受信したビームパターンの情報に基づきビームパターンを形成し、給電条件に従って給電用の無線信号85を送信する。これにより無線給電を行う。なお、データ84の送信は、フレーム83の送信前に行ってもよい。
一方、決定したパターンが空間共有パターンであれば、フレーム83の送信が不要である点を除けば、その後のシーケンスは、時間共有パターンの場合と同様である。すなわち、AP1は、決定したビームパターンの情報、給電対象の受電端末3の情報、および給電条件等を表すデータ84を、送電装置6に送信する。送電装置6は、受信したビームパターンの情報に基づきビームパターンを形成し、給電条件に従って無線信号85を送信する。
受電端末3は、送電装置6から上記ビームパターンによる無線信号85を受信して、受信した無線信号85の電力を、蓄電池9を充電する。受電端末3は、受電後、送電装置6に完了報告として受電量情報を送電装置6に送信する。つまり、送電装置6が受電端末3から受電量情報86Aを受信し、これを受電量情報86BとしてAP1に送信する。受電端末3は、受電量情報を、受電後すぐに送信してもよいし、受電量が不足する場合のみ、不足を通知する要求を受電量情報として送信してもよい。AP1は、受信した受電量情報86Bを利用して、当該受電端末3に対して次に使用するビームパターンを決定してもよい。例えば受電量情報から受電効率を特定し、受電効率が閾値未満であれば、別のビームパターンを選択し、閾値以上であれば、同じビームパターンを継続使用することを決定する。その他、受電量情報を利用して、給電に使用する無線給電チャネルの変更等を行ってもよい。ここで述べたAP1の動作の一部を送電装置6側で行うようにしてもよい。
なお、送電装置6がBLE通信の機能を備えない場合、AP1が送電装置6に代わって、送電装置6の給電対象となる受電端末3との通信を行う構成も可能である。この場合のシーケンスを図8Bに示す。受電端末3からのデータ82Aおよび受電量情報86Aが、送電装置6を介さずに、直接、AP1に送信される。それ以外は、図8Aのシーケンスと同じである。
以下、AP1が送電装置6を用いて無線給電を行う具体的な動作例を第1〜第3の動作例として、フローチャートを用いて説明する。
(第1の動作例)
図9は、AP1が送電装置6を用いて無線給電を行う第1の動作例のフローチャートを示す。AP1は、給電対象となる受電端末3を事前に決定しているとする。例えば、AP1は、管理者の操作端末から指定された受電端末3の識別子に基づき、給電対象の受電端末3を決定してもよい。または、受電端末3と送電装置6を介してまたは直接、第2無線通信方式の通信をすることで、給電対象の受電端末3を決定してもよい。この場合、例えば、蓄電池の残量が閾値以下の受電端末3、または給電要求を送信した受電端末3を、給電対象の受電端末3してもよい。あるいは、センサ等により検出した受電端末3を給電対象の受電端末3としてもよい(この場合、受電端末3が第2無線通信方式の通信を行う機能を有さなくてもよい)。同時に給電を行う対象となる受電端末3は1台でも、複数台でもよい。以下では、受電端末3が1台の場合を例に、本第1の動作例について説明する。
ステップS601において、AP1は、自局が使用する無線LANチャネルに対して、送電装置6の予め与えられた1つまたは複数のビームパターンの干渉状況を測定する。測定の結果に基づき、1つまたは複数のビームパターンのそれぞれが時間共有パターンか空間共有パターンかを決定する。つまり、1つまたは複数のビームパターンを、時間共有パターンと空間共有パターンに分類する。AP1は、分類の結果を内部の記憶部110に格納する。
ステップS602において、AP1は、送電装置6に使用させるビームパターンを選択する。ビームパターンの選択には様々な方法が考えられる。例えば、給電対象となる受電端末3が所定の位置に固定されている場合は、事前に受電端末3に対して電力伝送効率(受電効率)の高い順に1つまたは複数のビームパターンを測定により特定して、特定したビームパターンの情報をテーブルに格納しておいてもよい。そして、テーブルから最も高い電力伝送効率のビームパターンを選択する。この場合、ビームパターンの測定は、本フローチャートの動作の開始時に行ってもよい。ビームパターンを選択する他の例として、受電端末3が所定の経路で移動(例えばベルトコンベア上で移動)する場合に、受電端末3を追跡するように、所定の順序でビームパターンを選択してもよい。さらに別の例として、受電端末3の位置を特定できないもしくは特定が困難な場合、もしくは受電端末3に適したビームパターンが不明な場合に、ランダムにビームパターンを選択してもよい。
ステップS603において、AP1は、選択したビームパターンが時間共有パターンか否かを、ステップS601の分類結果に基づき確認する。選択したビームパターンが時間共有パターンでない場合(S603のNO)、すなわち、選択したビームパターンが空間共有パターンの場合、送電装置6に、選択したビームパターンで受電端末3に無線給電を行わせる(S604)。
無線給電する電力量(給電量)は、予め定められた電力量でもよいし、予め受電端末3との通信(BLE等)により決定した電力量でもよい。あるいは、予め受電端末3から電力量を指定する給電要求をAP1または送電装置6が受信した場合に、当該指定された電力量を給電量としてもよい。その他の方法で、給電量を決定してもよい。給電量が決まれば、送信電力と受電効率とから給電に必要な送電期間(時間共有パターンで電力を供給する場合の第1送電期間または空間共有パターンで電力を供給する場合の第2送電期間)も決定される。1台の受電端末に対して複数回に分けて給電を行う給電スケジュールを生成してもよい。送電装置6による無線給電の実行後、完了報告をAP1は送電装置6から受信する。ステップS608に進む。
選択したビームパターンが時間共有パターンの場合(S603のYES)、ステップS605において、AP1は、自局の無線LANチャネルの空き状況(使用状況)を測定する。例えば一定時間の平均受信電力値が閾値以下であれば、無線LANチャネルが空いていると判断する。それ以外にも前述したビームパターンの干渉測定と同様の方法を用いて、チャネルの空き状況を判断してもよい。無線LANチャネルが空いていないと判断したときは(S605のNO)、無線LANチャネルが空くのを待機する。無線LANチャネルが空いていると判断したときは(S605のYES)、無線LANチャネルの使用期間を確保する(S606)。例えば、AP1は、無線LANのバックオフアルゴリズムによりキャリアセンスを行い、チャネル状態がアイドルであれば、チャネルのアクセス権を獲得し、無線LANチャネルの使用期間を確保するフレーム(ここではCTS−to−selfフレームとする)を送信する。CTS−to−selfフレームを受信した無線通信端末2は、CTS−to−selfフレームで指定された期間(NAV期間)送信を禁止される。このため、NAV期間中に送電装置6から無線給電を行っても、無線LANとの干渉は抑制される。
AP1はCTS−to−selfフレームの送信後、無線LANチャネルの確保された期間の間、選択したビームパターンで送電装置6に、受電端末3への無線給電を行わせる(S607)。ステップS607の詳細は、上述したステップS604と同様である。送電装置6による無線給電の実行後、完了報告をAP1は送電装置6から受信する。ステップS608に進む。
ステップS608において、終了条件が満たされたかを判断する。一例として、予めスケジュールされた受電端末3への給電量の送電が完了(第1送電期間または第2送電期間の送電の完了)した場合は、終了条件が満たされたと判断する。または、受電端末3から充電が完了したとの通知を受けた場合に、終了条件が満たされたと判断してもよい。または、管理者の操作端末から動作の終了指示を受信した場合に、終了条件が満たされたと判断してもよい。ここで記載した以外の方法で、判断してもよい。終了条件が満たされていない判断した場合は(ステップS608のNO)、ステップS602に戻り、終了条件が満たされた判断した場合は(ステップS608のYES)、動作を終了する。なお、本フローチャートの開始時にステップS601の処理を毎回行わなくてもよい。また、ステップS608でNOと判断された場合に、ステップS601に戻るようしてもよい。
(第2の動作例)
図10は、AP1が送電装置6を用いて無線給電を行う第2の動作例のフローチャートを示す。図9と同様の処理のステップには同一の符号を付し、説明は適宜省略する。本第2の動作例の特徴は、無線LANチャネルが空いていると判断したときは時間共有パターンの中からビームパターンを選択し、空いていないと判断したときは、空間共有パターンの中からビームパターンを選択することにある。時間共有パターンを優先的に利用することで、無線給電チャネルのビームの範囲がAP1のカバレッジ寄りになるため、他の無線通信システムが当該無線給電チャネルと重複する周波数帯域を利用する場合に、当該他の無線通信システムへの干渉を抑制できる。以下、本第2の動作例について詳細に説明する。
ステップS601において、AP1は、自局が使用する無線LANチャネルに対して、送電装置6における1つまたは複数のビームパターンのそれぞれが時間共有パターンか空間共有パターンかを調べる。つまり、1つまたは複数のビームパターンを、時間共有パターンと空間共有パターンに分類する。
ステップS605において、AP1は、無線LANチャネルの空き状況(使用状況)を測定により調べる。AP1は、無線LANチャネルが空いていると判断した場合は、ステップS701に進み、空いていないと判断した場合は、ステップS702に進む。
ステップS701において、AP1は、ステップS601で分類された時間共有パターンの中からビームパターンを選択する。続くステップS606において、AP1は、無線LANのバックオフアルゴリズムとキャリアセンスとにより無線媒体のアクセス権を獲得し、無線LANチャネルの使用期間を指定したフレーム(ここではCTS−to−selfフレームとする)を送信する。AP1は、確保された期間の間、選択したビームパターンで、送電装置6に受電端末3に対して無線給電を実行させる(S607)。この後、ステップS608に進む。
一方、ステップS702において、AP1は、ステップS601で分類された空間共有パターンの中からビームパターンを選択する。AP1は、選択したビームパターンで、送電装置6に受電端末3に対して無線給電を実行させる(S604)。この後、ステップS608に進む。
ステップS608において、本フローチャートの動作を終了するかを判断する。本動作を終了しないと判断した場合は(ステップS608のNO)、ステップS602に戻り、終了すると判断した場合は(ステップS608のYES)、本動作を終了する。
(第3の動作例)
図11は、AP1が送電装置6を用いて無線給電を行う第3の動作例のフローチャートを示す。図9または図10のフローチャートと同じ処理のステップには同一の符号を付し、説明は適宜省略する。本第3の動作例の特徴は、空間共有パターンからビームパターンを選択して無線給電を実行し、一定時間経過しても、受電端末に十分な電力量を供給できていないときは、時間共有パターンから選択したビームパターンに一時的に切り換える。すなわち、一定時間が経過しても受電端末に十分な電力量を供給できていない場合、空間共有パターンから選択したビームパターンが受電端末3に適していない可能性が高い。そこで、時間共有パターンから選択したビームパターンに切り換えることで、電力供給量の不足を補うことが期待できる。これにより、無線LAN通信の利用効率をできるだけ低下させることなく、無線給電を行うことができる。図9および図10のフローチャートでは給電対象となる受電端末が1台の場合を例にしたが、本フローチャートの動作では給電対象となる受電端末が複数台の場合を例にする。
図12に、2台の受電端末に同時に無線給電する例を示す。図12は、図5に受電端末3Eを追加したものである。空間共有パターンであるビームパターンBP1では受電端末3Dには好適な給電が出来ているものの、受電端末3Eにとっては適切でないビームパターンである。時間共有パターンであるビームパターンBP2は、受電端末3Dおよび受電端末3Eのいずれに取っても好適なビームパターンである。このような場合に、ビームパターンBP1を途中でビームパターンBP2に切り換えることで、ビームパターンBP1では不十分であった受電端末3Eの受電効率を上昇させることができる。また、受電端末3D、3Eを合わせた全体の受電効率を上昇させることができる。なお、本フローチャートの動作は、給電対象となる受電端末が複数台の場合だけでなく、1台の場合も、可能である。以下、本第3の動作例について詳細に説明する。
ステップS601において、AP1は、自局が使用する無線LANチャネルに対して、送電装置6における1つまたは複数のビームパターンのそれぞれが時間共有パターンか空間共有パターンかを調べる。つまり、1つまたは複数のビームパターンを、時間共有パターンと空間共有パターンに分類する。
ステップS801において、AP1は、ステップS601で分類された空間共有パターンからビームパターンを選択し、選択したビームパターンで送電装置6に、複数の受電端末3への無線給電を実行させる。例えば複数の受電端末の平均電力伝送効率が最も高いビームパターンを選択してもよいし、その他の基準でビームパターンを選択してもよい。選択するビームパターンは、各受電端末に必要な給電量の供給を見込めれば、各受電端末にとって最適なパターンである必要はない。無線給電の実行後、ステップS802に進む。
ステップS802において、AP1は、複数の受電端末の受電量情報を収集する。受電量情報の収集は、送電装置6が複数の受電端末とBLE通信して受電量情報を取得し、取得した受電量情報を、AP1に送信する。別の例として、AP1が直接、複数の受電端末3とBLE通信して、受電量情報を取得してもよい。
ステップS803において、終了条件が満たされたかを判断する。終了条件が満たされない場合は(S803のNO)、ステップS804に進む。終了条件が満たされる場合(S803のYES)、本動作を終了する。例えば、複数の受電端末のすべてまたは一定数または一定割合以上の受電端末について予めスケジュールされた給電量の送電が完了した場合終了条件が満たされたと判断する。
ステップS804において、基準時刻から一定時間が経過したかを判断する。基準時刻は、例えば、ステップS801で無線給電を開始した時刻、もしくはステップS608から戻った時点でステップS801で無線給電を実行した時刻である。ここで挙げた時刻以外の時刻を基準時刻としてもよい。一定時間が経過していないと判断した場合は(S804のNO)、ステップS801に戻り、一定時間が経過したと判断した場合は(S804のYES)、ステップS805に進む。
ステップS805において、複数の受電端末の中に、給電された電力量が不十分な受電端末が存在するかを判断する。例えば、上記の一定時間の間に、所定の電力量が給電される必要がある場合に、供給された電力量が当該所定の電力量に達していない受電端末が存在する場合は、給電された電力量が不十分な受電端末が存在すると判断する。所定の電力量はAP1または送電装置6が決めた電力量でもよいし、受電端末から給電要求として給電量を指定された場合に、当該指定された電力量を所定の電力量としてもよい。別の判断例として、一定時間の間に、蓄電池の残存電力量が閾値まで達する必要がある場合に、閾値に達していない受電端末が存在する場合は、給電された電力量が不十分な受電端末が存在すると判断する。ここで記載した以外の方法で、判断を行ってもよい。給電された電力量が不十分な受電端末が存在する場合は、ステップS806に進み、存在しない場合は、ステップS608に進む。
ステップS806において、AP1は、ステップS601で分類された時間共有パターンからビームパターンを選択する。AP1は、無線LANチャネルの空き状況を確認し、無線LANチャネルの使用期間を指定するフレーム(ここではCTS−to−selfフレームとする)を送信する。AP1は、確保された期間の間、送電装置6を用いて、受電端末3に対して無線給電を実行する。この後、ステップS806に進む。
ステップS807において、AP1は、複数の受電端末から受電量情報を収集する。処理の詳細は、ステップS802と同様である。この後、ステップS608に進む。
ステップS608において、終了条件が満たされたかを判断する。終了条件が満たされない場合は(ステップS608のNO)、ステップS801に戻り、終了条件が満たされた場合は(ステップS608のYES)、本動作を終了する。本ステップの動作は、上記のステップS803と同じである。
本フローチャートでは、ステップS806、S807を1回行った後、ステップS801に戻ったが、ステップS806、S807を複数回繰り返してから、ステップS801に戻ってもよい。
本フローチャートでは空間共有パターンから優先的にパターンを選択し、選択したパターンでは受電量が不十分な端末が存在する場合に、時間共有パターンからパターンを選択したが、逆にしてもよい。すなわち、時間共有パターンから優先的にパターンを選択し、選択したパターンでは受電量が不十分な端末が存在する場合に、空間共有パターンからパターンを選択してもよい。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、無線給電システムを工場に配置した例を説明したが、本実施形態では、無線給電システムを、自動車に配置した例を説明する。なお、自動車は、EV(Electric Vehicle)でも、ハイブリッドEVでも、ガソリン車でも、その他の種類のものでもよい。
図13は、第2の実施形態に係る無線給電システムを自動車に配置した例を示す。AP1と、無線通信端末2C、2Dと、受電端末3J、3K、3L、3Mと、が配置されている。AP1は、送電装置6Aを内部に備えている。AP1は例えば車内の天井や床に配置されている。受電端末3J、3Kはサイドミラー、受電端末3Mはタイヤのホイール、受電端末3Lは座席に配置されている。ただし、受電端末は、これら以外の場所に配置されてもよい。受電端末3J、3K、3L、3Mは、BLE端末であり、一例として、センサを含むセンサ装置である。センサの例としては、ドアの開閉センサ、人体検知センサ、加速度センサ、温度センサ、タイヤ空気圧センサ、エンジン温度センサなどがあるが、これらに限定されない。無線通信端末2C、2Dは、フロントバンパーに配置されている。無線通信端末2C、2Dは自動車の状態または自動車の周囲の環境を測定するセンサを搭載した機器である。本例では、無線通信端末2C、2Dは、カメラを内蔵しており、それぞれ前方の画像を取得し、取得した画像のデータを、AP1に送信する。
第1の実施形態では、AP1は、外部接続された送電装置6を制御したが、本第2の実施形態ではAP1の内部に接続された送電装置6Aを制御する。送電装置6Aの構成は、一例として、図6に示した送電装置6の無線送信部603と、アンテナ64とを含む。送電装置6Aは、AP1の制御部105に接続されており、制御部105により制御される。給電に関する制御およびBLE通信は、AP1が備える制御部105およびBLE通信部111で行えばよい。なお、AP1内の送電装置6Aが、第1の実施形態と同様、AP1に外部接続されていてもよい。この場合、送電装置6Aは、天井や床など、任意の箇所に配置されてよい。
このように自動車に配置された無線給電システムにおいて、第1の実施形態と同様の動作が実現される。この際、第1の実施形態を一部変更または拡張してもよい。例えば、ビームパターンの選択において、車内の人数、人が座っている座席、扉の開閉状態(ドアが開いているか否か)、窓の開閉状態(窓が開いているか否か)、または、これらの組み合わせなどに応じて、ビームパターンを選択してもよい。これは、自動車内の電波の伝搬環境は、車内の人数や位置、扉の開閉状態、窓の開閉状態によって変化するためである。事前にこれらの条件によってビームパターンの優先順位を定めたテーブルまたは関数等のデータを作成しておき、このデータに従って、ビームパターンを選択してもよい。また、これらの条件によって、第1の実施形態で述べた第1の動作例〜第3の動作例を切り換えてもよい。
(第3の実施形態)
図14は、本実施形態に係る基地局(アクセスポイント)400の機能ブロック図である。このアクセスポイントは、通信処理部401と、送信部402と、受信部403と、アンテナ42A、42B、42C、42Dと、ネットワーク処理部404と、有線I/F405と、メモリ406とを備えている。アクセスポイント400は、有線I/F405を介して、サーバ407と接続されている。通信処理部401およびネットワーク処理部404の少なくとも前者は、第1の実施形態で説明した制御部と同様な機能を有している。送信部402および受信部403は、第1の実施形態で説明した送信部および受信部と同様な機能を有している。または、送信部402および受信部403が、第1の実施形態の送信部および受信部のアナログ領域の処理に対応し、第1の実施形態の送信部および受信部のデジタル領域の処理は、通信処理部401に対応してもよい。ネットワーク処理部404は、上位処理部と同様な機能を有している。ここで、通信処理部401は、ネットワーク処理部404との間でデータを受け渡しするためのバッファを内部に保有してもよい。このバッファは、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ネットワーク処理部404は、通信処理部401とのデータ交換、メモリ406とのデータ書き込み・読み出し、および、有線I/F405を介したサーバ407との通信を制御する。ネットワーク処理部404は、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理やアプリケーション層の処理を行ってもよい。ネットワーク処理部の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
一例として、通信処理部401は、ベースバンド集積回路に対応し、送信部402と受信部403は、フレームを送受信するRF集積回路に対応する。通信処理部401とネットワーク処理部404とが1つの集積回路(1チップ)で構成されてもよい。送信部402および受信部403のデジタル領域の処理を行う部分とアナログ領域の処理を行う部分とが異なるチップで構成されてもよい。また、通信処理部401が、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理を実行するようにしてもよい。また、アンテナの個数はここでは4つであるが、少なくとも1つのアンテナを備えていればよい。
メモリ406は、サーバ407から受信したデータや、受信部403で受信したデータの保存等を行う。メモリ406は、例えば、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、SSDやHDD、SDカード、eMMC等であってもよい。メモリ406が、基地局400の外部にあってもよい。
有線I/F405は、サーバ407とのデータの送受信を行う。本実施形態では、サーバ407との通信を有線で行っているが、サーバ407との通信を無線で実行するようにしてもよい。
サーバ407は、データの送信を要求するデータ転送要求を受けて、要求されたデータを含む応答を返す通信装置であり、例えばHTTPサーバ(Webサーバ)、FTPサーバ等が想定される。ただし、要求されたデータを返す機能を備えている限り、これに限定されるものではない。PCやスマートフォン等のユーザが操作する通信装置でもよい。また、基地局400と無線で通信してもよい。
基地局400のBSSに属するSTAが、サーバ407に対するデータの転送要求を発行した場合、このデータ転送要求に関するパケットが、基地局400に送信される。基地局400は、アンテナ42A〜42Dを介してこのパケットを受信し、受信部403で物理層の処理等を、通信処理部401でMAC層の処理等を実行する。
ネットワーク処理部404は、通信処理部401から受信したパケットの解析を行う。具体的には、宛先IPアドレス、宛先ポート番号等を確認する。パケットのデータがHTTP GETリクエストのようなデータ転送要求である場合、ネットワーク処理部404は、このデータ転送要求で要求されたデータ(例えば、HTTP GETリクエストで要求されたURLに存在するデータ)が、メモリ406にキャッシュ(記憶)されているかを確認する。メモリ406には、URL(またはその縮小表現、例えばハッシュ値や、代替となる識別子)とデータとを対応づけたテーブルが格納されている。ここで、データがメモリ406にキャッシュされていることを、メモリ406にキャッシュデータが存在すると表現する。
メモリ406にキャッシュデータが存在しない場合、ネットワーク処理部404は、有線I/Fを405介して、サーバ407に対してデータ転送要求を送信する。つまり、ネットワーク処理部404は、STAの代理として、サーバ407へデータ転送要求を送信する。具体的には、ネットワーク処理部404は、HTTPリクエストを生成し、TCP/IPヘッダの付加などのプロトコル処理を行い、パケットを有線I/F405へ渡す。有線I/F405は、受け取ったパケットをサーバ407へ送信する。
有線I/F405は、データ転送要求に対する応答であるパケットをサーバ407から受信する。ネットワーク処理部404は、有線I/F405を介して受信したパケットのIPヘッダから、STA宛のパケットであることを把握し、通信処理部401へパケットを渡す。通信処理部401はこのパケットに対するMAC層の処理等を、送信部402は物理層の処理等を実行し、STA宛のパケットをアンテナ42A〜42Dから送信する。ここで、ネットワーク処理部404は、サーバ407から受信したデータを、URL(またはその縮小表現)と対応づけて、メモリ406にキャッシュデータとして保存する。
メモリ406にキャッシュデータが存在する場合、ネットワーク処理部404は、データ転送要求で要求されたデータをメモリ406から読み出して、このデータを通信処理部401へ送信する。具体的には、メモリ406から読み出したデータにHTTPヘッダ等を付加して、TCP/IPヘッダの付加等のプロトコル処理を行い、通信処理部401へパケットを送信する。このとき、一例として、パケットの送信元IPアドレスは、サーバと同じIPアドレスに設定し、送信元ポート番号もサーバと同じポート番号(通信端末が送信するパケットの宛先ポート番号)に設定する。したがって、STAから見れば、あたかもサーバ407と通信をしているかのように見える。通信処理部401はこのパケットに対するMAC層の処理等を、送信部402は物理層の処理等を実行し、STA宛のパケットをアンテナ42A〜42Dから送信する。
このような動作により、頻繁にアクセスされるデータは、メモリ406に保存されたキャッシュデータに基づいて応答することになり、サーバ407と基地局400間のトラフィックを削減できる。なお、ネットワーク処理部404の動作は、本実施形態の動作に限定されるものではない。STAの代わりにサーバ407からデータを取得して、メモリ406にデータをキャッシュし、同一のデータに対するデータ転送要求に対しては、メモリ406のキャッシュデータから応答するような一般的なキャッシュプロキシであれば、別の動作でも問題はない。
本実施形態の基地局(アクセスポイント)を、上述したいずれかの実施形態の基地局として適用することが可能である。上述したいずれかの実施形態で使ったフレーム、データまたはパケットの送信を、メモリ406に保存されたキャッシュデータを用いて実行してもよい。また、上述したいずれかの実施形態の基地局が受信したフレーム、データまたはパケットで得られた情報を、メモリ406にキャッシュしてもよい。上述したいずれかの実施形態において、アクセスポイントが送信するフレームは、キャッシュされたデータまたは当該データに基づく情報を含んでもよい。データに基づく情報は、例えばデータのサイズに関する情報、データの送信に必要なパケットのサイズに関する情報でもよい。またデータの送信に必要な変調方式等の情報でもよい。また、端末宛のデータの有無の情報を含んでもよい。
本実施形態の基地局(アクセスポイント)を、上述したいずれかの実施形態の基地局として適用することが可能である。本実施形態では、キャッシュ機能を備えた基地局について説明を行ったが、図14と同じブロック構成で、キャッシュ機能を備えた端末(STA)を実現することもできる。この場合、有線I/F405を省略してもよい。上述したいずれかの実施形態における端末によるフレーム、データまたはパケットの送信を、メモリ406に保存されたキャッシュデータを用いて実行してもよい。また、上述したいずれかの実施形態の端末が受信したフレーム、データまたはパケットで得られた情報を、メモリ406にキャッシュしてもよい。上述したいずれかの実施形態において、端末が送信するフレームは、キャッシュされたデータまたは当該データに基づく情報を含んでもよい。データに基づく情報は、例えばデータのサイズに関する情報、データの送信に必要なパケットのサイズに関する情報でもよい。またデータの送信に必要な変調方式等の情報でもよい。また、端末宛のデータの有無の情報を含んでもよい。
(第4の実施形態)
図15は、端末(非アクセスポイントの端末)またはアクセスポイントの全体構成例を示したものである。この構成例は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。端末またはアクセスポイントは、1つまたは複数のアンテナ1〜n(nは1以上の整数)と、無線LANモジュール148と、ホストシステム149を備える。無線LANモジュール148は、前述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置に対応する。無線LANモジュール148は、ホスト・インターフェースを備え、ホスト・インターフェースで、ホストシステム149と接続される。接続ケーブルを介してホストシステム149と接続される他、ホストシステム149と直接接続されてもよい。また、無線LANモジュール148が基板にはんだ等で実装され、基板の配線を介してホストシステム149と接続される構成も可能である。ホストシステム149は、任意の通信プロトコルに従って、無線LANモジュール148およびアンテナ1〜nを用いて、外部の装置と通信を行う。通信プロトコルは、TCP/IPと、それより上位の層のプロトコルとを含んでもよい。または、TCP/IPは無線LANモジュール148に搭載し、ホストシステム149は、それより上位層のプロトコルのみを実行してもよい。この場合、ホストシステム149の構成を簡単化できる。本端末は、例えば、移動体端末、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置、自動車等でもよい。
無線LANモジュール148(または無線通信装置)は、IEEE802.11に加え、LTE(Long Term Evolution)またはLTE−Advanced(standards for mobile phones)のような他の無線通信規格の機能を備えていてもよい。
図16は、アクセスポイント(基地局)、無線LAN端末およびBLE端末のいずれかが備える無線通信装置のハードウェア構成例を示す。無線LANとBLEの両方の機能を備える場合は、図示の構成を各機能に対応して備えればよい。無線LANとBLEとの機能が1チップに搭載されてもよいし、別々のチップとして構成されてもよい。なお、図示の構成のすべてを備える必要はなく、一部の構成が省略または置換されてもよいし、別の要素が追加されてもよい。この構成例では、アンテナは1本のみであるが、2本以上のアンテナを備えていてもよい。この場合、各アンテナに対応して、送信系統(216、222〜225)、受信系統(217、232〜235)、PLL242、水晶発振器(基準信号源)243およびスイッチ245のセットが複数配置され、各セットがそれぞれ制御回路212に接続されてもよい。PLL242または水晶発振器243またはこれらの両方は、本実施形態に係る発振器に対応する。
無線LANモジュール(無線通信装置)は、ベースバンドIC(Integrated
Circuit)211と、RF(Radio Frequency)IC221と、バラン225と、スイッチ245と、アンテナ247とを備える。
ベースバンドIC211は、ベースバンド回路(制御回路)212、メモリ213、ホスト・インターフェース214、CPU215、DAC(Digital to Analog Conveter)216、およびADC(Analog to Digital Converter)217を備える。
ベースバンドIC211とRF IC221は同じ基板上に形成されてもよい。また、ベースバンドIC211とRF IC221は1チップで構成されてもよい。DAC216およびADC217の両方またはいずれか一方が、RF IC221に配置されてもよいし、別のICに配置されてもよい。またメモリ213およびCPU215の両方またはいずれか一方が、ベースバンドICとは別のICに配置されてもよい。
メモリ213は、ホストシステムとの間で受け渡しするデータを格納する。またメモリ213は、端末またはアクセスポイントに通知する情報、または端末またはアクセスポイントから通知された情報、またはこれらの両方を格納する。また、メモリ213は、CPU215の実行に必要なプログラムを記憶し、CPU215がプログラムを実行する際の作業領域として利用されてもよい。メモリ213はSRAM、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ホスト・インターフェース214は、ホストシステムと接続するためのインターフェースである。インターフェースは、UART、SPI、SDIO、USB、PCI Expressなど何でも良い。
CPU215は、プログラムを実行することによりベースバンド回路212を制御するプロセッサである。ベースバンド回路212は、主にMAC層の処理および物理層の処理を行う。ベースバンド回路212、CPU215またはこれらの両方は、通信を制御する通信制御装置、または通信を制御する制御部に対応する。
ベースバンド回路212およびCPU215の少なくとも一方は、クロックを生成するクロック生成部を含み、当該クロック生成部で生成するクロックにより、内部時間を管理してもよい。
ベースバンド回路212は、送信するフレームに、物理層の処理として、物理ヘッダの付加、符号化、暗号化、変調処理(MIMO変調を含んでもよい)など行い、例えば2種類のデジタルベースバンド信号(以下、デジタルI信号とデジタルQ信号)を生成する。
DAC216は、ベースバンド回路212から入力される信号をDA変換する。より詳細には、DAC216はデジタルI信号をアナログのI信号に変換し、デジタルQ信号をアナログのQ信号に変換する。なお、直交変調せずに一系統の信号のままで送信する場合もありうる。複数のアンテナを備え、一系統または複数系統の送信信号をアンテナの数だけ振り分けて送信する場合には、アンテナの数に応じた数のDAC等を設けてもよい。
RF IC221は、一例としてRFアナログICあるいは高周波IC、あるいはこれらの両方である。RF IC221は、フィルタ222、ミキサ223、プリアンプ(PA)224、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)242、低雑音増幅器(LNA)、バラン235、ミキサ233、およびフィルタ232を備える。
これらの要素のいくつかが、ベースバンドIC211または別のIC上に配置されてもよい。フィルタ222、232は、帯域通過フィルタでも、低域通過フィルタでもよい。
フィルタ222は、DAC216から入力されるアナログI信号およびアナログQ信号のそれぞれから所望帯域の信号を抽出する。PLL242は、水晶発振器243から入力される発振信号を用い、発振信号を分周または逓倍またはこれらの両方を行うことで、入力信号の位相に同期した、一定周波数の信号を生成する。なお、PLL242は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を備え、水晶発振器243から入力される発振信号に基づき、VCOを利用してフィードバック制御を行うことで、当該一定周波数の信号を得る。生成した一定周波数の信号は、ミキサ223およびミキサ233に入力される。PLL242は、一定周波数の信号を生成する発振器の一例に相当する。
ミキサ223は、フィルタ222を通過したアナログI信号およびアナログQ信号を、PLL242から供給される一定周波数の信号を利用して、無線周波数にアップコンバートする。プリアンプ(PA)は、ミキサ223で生成された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号を、所望の出力電力まで増幅する。バラン225は、平衡信号(差動信号)を不平衡信号(シングルエンド信号)に変換するための変換器である。RF IC221では平衡信号が扱われるが、RF IC221の出力からアンテナ247までは不平衡信号が扱われるため、バラン225で、これらの信号変換を行う。
スイッチ245は、送信時は、送信側のバラン225に接続され、受信時は、受信側の低雑音増幅器(LNA)234またはRF IC221に接続される。スイッチ245の制御はベースバンドIC211またはRF IC221により行われてもよいし、スイッチ245を制御する別の回路が存在し、当該回路からスイッチ245の制御を行ってもよい。
プリアンプ224で増幅された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号は、バラン225で平衡−不平衡変換された後、アンテナ247から空間に電波として放射される。
アンテナ247は、チップアンテナでもよいし、プリント基板上に配線により形成したアンテナでもよいし、線状の導体素子を利用して形成したアンテナでもよい。
RF IC221におけるLNA234は、アンテナ247からスイッチ245を介して受信した信号を、雑音を低く抑えたまま、復調可能なレベルまで増幅する。バラン235は、低雑音増幅器(LNA)234で増幅された信号を、不平衡−平衡変換する。なお、バラン135とLNA234の順番を逆にした構成でもよい。ミキサ233は、バラン235で平衡信号に変換された受信信号を、PLL242から入力される一定周波数の信号を用いてベースバンドにダウンコンバートする。より詳細には、ミキサ233は、PLL242から入力される一定周波数の信号に基づき、互いに90°位相のずれた搬送波を生成する手段を有し、バラン235で変換された受信信号を、互いに90°位相のずれた搬送波により直交復調して、受信信号と同位相のI(In−phase)信号と、これより90°位相が遅れたQ(Quad−phase)信号とを生成する。フィルタ232は、これらI信号とQ信号から所望周波数成分の信号を抽出する。フィルタ232で抽出されたI信号およびQ信号は、ゲインが調整された後に、RF IC221から出力される。
ベースバンドIC211におけるADC217は、RF IC221からの入力信号をAD変換する。より詳細には、ADC217はI信号をデジタルI信号に変換し、Q信号をデジタルQ信号に変換する。なお、直交復調せずに一系統の信号だけを受信する場合もあり得る。
複数のアンテナが設けられる場合には、アンテナの数に応じた数のADCを設けてもよい。ベースバンド回路212は、デジタルI信号およびデジタルQ信号に基づき、復調処理、誤り訂正符号処理、物理ヘッダの処理など、物理層の処理(MIMO復調を含んでもよい)等を行い、フレームを得る。ベースバンド回路212は、フレームに対してMAC層の処理を行う。なお、ベースバンド回路212は、TCP/IPを実装している場合は、TCP/IPの処理を行う構成も可能である。
アンテナ247は、フェーズドアレイアンテナでもよいし、指向性可変アンテナでもよい。
(第5の実施形態)
図17は、第5の実施形態に係る端末(STA)500の機能ブロック図である。このSTA500は、通信処理部501と、送信部502と、受信部503と、アンテナ51Aと、アプリケーションプロセッサ504と、メモリ505と、第2無線通信モジュール506とを備えている。基地局(AP)が同様の構成を有しても良い。
通信処理部501は、第1の実施形態で説明した制御部と同様な機能を有している。送信部502および受信部503は、第1の実施形態で説明した送信部および受信部と同様な機能を有している。または、送信部502および受信部503が、第1の実施形態で説明した送信部および受信部のアナログ領域の処理に対応し、第1の実施形態で説明した送信部および受信部のデジタル領域の処理は、通信処理部501に対応してもよい。ここで、通信処理部501は、アプリケーションプロセッサ504との間でデータを受け渡しするためのバッファを内部に保有してもよい。このバッファは、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
アプリケーションプロセッサ504は、通信処理部501を介した無線通信、メモリ505とのデータ書き込み・読み出し、および、第2無線通信モジュール506を介した無線通信を制御する。また、アプリケーションプロセッサ504は、Webブラウジングや、映像や音楽などのマルチメディア処理など、STAにおける各種処理も実行する。アプリケーションプロセッサ504の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
メモリ505は、受信部503や第2無線通信モジュール506で受信したデータや、アプリケーションプロセッサ504で処理したデータの保存等を行う。メモリ505は、例えば、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、SSDやHDD、SDカード、eMMC等であってもよい。メモリ505が、アクセスポイント500の外部にあってもよい。
第2無線通信モジュール506は、一例として、図15または図16で示した無線LANモジュールと同様な構成を有する。第2無線通信モジュール506は、通信処理部501、送信部502、受信部503で実現される無線通信とは異なる方法で無線通信を実行する。例えば、通信処理部501、送信部502、受信部503がIEEE802.11規格に沿った無線通信である場合、第2無線通信モジュール506は、Bluetooth(登録商標)、LTE、Wireless HDなど、他の無線通信規格に沿った無線通信を実行してもよい。また、通信処理部501、送信部502、受信部503が2.4GHz/5GHzで無線通信を実行し、第2無線通信モジュール506が60GHzで無線通信を実行するようにしてもよい。
なお、この例では、アンテナの個数はここでは1つであり、送信部502・受信部503と、第2無線通信モジュール506とでアンテナを共有している。ここで、アンテナ51Aの接続先を制御するスイッチを設けることで、アンテナを共有してもよい。また、複数のアンテナを備え、送信部502・受信部503と、第2無線通信モジュール506とで別のアンテナを使用するようにしてもよい。
一例として、通信処理部501は、ベースバンド集積回路に対応し、送信部502と受信部503は、フレームを送受信するRF集積回路に対応する。ここで、通信処理部501とアプリケーションプロセッサ504とが1つの集積回路(1チップ)で構成されてもよい。さらに、第2無線通信モジュール506の一部とアプリケーションプロセッサ504とが1つの集積回路(1チップ)で構成されてもよい。
アプリケーションプロセッサは、通信処理部501を介した無線通信および第2無線通信モジュール506を介した無線通信の制御を行う。
(第6の実施形態)
図18Aおよび図18Bは、本実施形態に係る無線端末の斜視図である。図18Aの無線端末はノートPC301であり、図18Bの無線端末は移動体端末321である。ノートPC301および移動体端末321は、それぞれ無線通信装置305、315を搭載している。無線通信装置305、315として、これまで説明してきた無線端末に搭載されていた無線通信装置、またはアクセスポイントに搭載されていた無線通信装置、またはこれらの両方を用いることができる。無線通信装置を搭載する無線端末は、ノートPCや移動体端末に限定されない。例えば、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置、自動車等にも搭載可能である。
また、無線端末またはアクセスポイント、またはこれらの両方に搭載されていた無線通信装置は、メモリーカードにも搭載可能である。当該無線通信装置をメモリーカードに搭載した例を図19に示す。メモリーカード331は、無線通信装置355と、メモリーカード本体332とを含む。メモリーカード331は、外部の装置(無線端末またはアクセスポイント、またはこれらの両方等)との無線通信のために無線通信装置335を利用する。なお、図19では、メモリーカード331内の他の要素(例えばメモリ等)の記載は省略している。
(第7の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バス、プロセッサ部、及び外部インターフェース部を備える。プロセッサ部及び外部インターフェース部は、バスを介して外部メモリ(バッファ)と接続される。プロセッサ部ではファームウエアが動作する。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。ファームウエアが動作するプロセッサ部は、本実施形態に係る制御部または制御部の処理を行うプロセッサであってもよいし、当該処理の機能拡張または変更に係る処理を行う別のプロセッサであってもよい。ファームウエアが動作するプロセッサ部を、本実施形態に係るアクセスポイントあるいは無線端末あるいはこれらの両方が備えてもよい。または当該プロセッサ部を、アクセスポイントに搭載される無線通信装置内の集積回路、または無線端末に搭載される無線通信装置内の集積回路が備えてもよい。
(第8の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、クロック生成部を備える。クロック生成部は、クロックを生成して出力端子より無線通信装置の外部にクロックを出力する。このように、無線通信装置内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
(第9の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置)の構成に加えて、電源部、電源制御部、及び無線電力給電部を含む。電源制御部は、電源部と無線電力給電部とに接続され、無線通信装置に供給する電源を選択する制御を行う。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
(第10の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを含む。SIMカードは、無線通信装置における送信部または受信部または制御部またはこれらのうちの複数と接続される。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
(第11の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を含む。動画像圧縮/伸長部は、バスと接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
(第12の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、LED部を含む。LED部は、送信部または受信部または制御部またはこれらのうちの複数と接続される。このように、LED部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第13の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バイブレータ部を含む。バイブレータ部は、送信部または受信部または制御部またはこれらのうちの複数と接続される。このように、バイブレータ部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第14の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、ディスプレイを含む。ディスプレイは、図示しないバスを介して、無線通信装置の制御部に接続されてもよい。このようにディスプレイを備える構成とし、無線通信装置の動作状態をディスプレイに表示することで、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第15の実施形態)
本実施形態では、[1]無線通信システムにおけるフレーム種別、[2]無線通信装置間の接続切断の手法、[3]無線LANシステムのアクセス方式、[4]無線LANのフレーム間隔について説明する。
[1]通信システムにおけるフレーム種別
一般的に無線通信システムにおける無線アクセスプロトコル上で扱うフレームは、前述したように、大別してデータ(data)フレーム、管理(management)フレーム、制御(control)フレームの3種類に分けられる。これらの種別は、通常、フレーム間で共通に設けられるヘッダ部で示される。フレーム種別の表示方法としては、1つのフィールドで3種類を区別できるようにしてあってもよいし、2つのフィールドの組み合わせで区別できるようにしてあってもよい。IEEE802.11規格では、フレーム種別の識別は、MACフレームのフレームヘッダ部にあるFrame Controlフィールドの中のType、Subtypeという2つのフィールドで行う。データフレームか、管理フレームか、制御フレームかの大別はTypeフィールドで行われ、大別されたフレームの中での細かい種別、例えば管理フレームの中のBeaconフレームといった識別はSubtypeフィールドで行われる。
管理フレームは、他の無線通信装置との間の物理的な通信リンクの管理に用いるフレームである。例えば、他の無線通信装置との間の通信設定を行うために用いられるフレームや通信リンクをリリースする(つまり接続を切断する)ためのフレーム、無線通信装置でのパワーセーブ動作に係るフレームがある。
データフレームは、他の無線通信装置と物理的な通信リンクが確立した上で、無線通信装置の内部で生成されたデータを他の無線通信装置に送信するフレームである。データは本実施形態の上位層で生成され、例えばユーザの操作によって生成される。
制御フレームは、データフレームを他の無線通信装置との間で送受(交換)する際の制御に用いられるフレームである。無線通信装置がデータフレームや管理フレームを受信した場合にその送達確認のために送信される応答フレームは、制御フレームに属する。応答フレームは、例えばACKフレームやBlockACKフレームである。またRTSフレームやCTSフレームも制御フレームである。
これら3種類のフレームは、物理層で必要に応じた処理を経て物理パケットとしてアンテナを経由して送出される。なお、IEEE802.11規格(前述のIEEE Std
802.11ac−2013などの拡張規格を含む)では接続確立の手順の1つとしてアソシエーション(association)プロセスがあるが、その中で使われるAssociation RequestフレームとAssociation Responseフレームが管理フレームであり、Association RequestフレームやAssociation Responseフレームはユニキャストの管理フレームであることから、受信側無線通信端末に応答フレームであるACKフレームの送信を要求し、このACKフレームは上述のように制御フレームである。
[2]無線通信装置間の接続切断の手法
接続の切断(リリース)には、明示的な手法と暗示的な手法とがある。明示的な手法としては、接続を確立している無線通信装置間のいずれか一方が切断のためのフレームを送信する。IEEE802.11規格ではDeauthenticationフレームがこれに当たり、管理フレームに分類される。通常、接続を切断するフレームを送信する側の無線通信装置では当該フレームを送信した時点で、接続を切断するフレームを受信する側の無線通信装置では当該フレームを受信した時点で、接続の切断と判定する。その後、非基地局の無線通信端末であれば通信フェーズでの初期状態、例えば接続するBSS探索する状態に戻る。無線通信基地局がある無線通信端末との間の接続を切断した場合には、例えば無線通信基地局が自BSSに加入する無線通信端末を管理する接続管理テーブルを持っているならば当該接続管理テーブルから当該無線通信端末に係る情報を削除する。例えば、無線通信基地局が自BSSに加入する各無線通信端末に接続をアソシエーションプロセスで許可した段階で、AIDを割り当てる場合には、当該接続を切断した無線通信端末のAIDに関連づけられた保持情報を削除し、当該AIDに関してはリリースして他の新規加入する無線通信端末に割り当てられるようにしてもよい。
一方、暗示的な手法としては、接続を確立した接続相手の無線通信装置から一定期間フレーム送信(データフレーム及び管理フレームの送信、あるいは自装置が送信したフレームへの応答フレームの送信)を検知しなかった場合に、接続状態の切断の判定を行う。このような手法があるのは、上述のように接続の切断を判定するような状況では、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるなど物理的な無線リンクが確保できない状態が考えられるからである。すなわち、接続を切断するフレームの受信を期待できないからである。
暗示的な方法で接続の切断を判定する具体例としては、タイマーを使用する。例えば、送達確認応答フレームを要求するデータフレームを送信する際、当該フレームの再送期間を制限する第1のタイマー(例えばデータフレーム用の再送タイマー)を起動し、第1のタイマーが切れるまで(つまり所望の再送期間が経過するまで)当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行う。当該フレームへの送達確認応答フレームを受信すると第1のタイマーは止められる。
一方、送達確認応答フレームを受信せず第1のタイマーが切れると、例えば接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマー(例えば管理フレーム用の再送タイマー)を起動する。第1のタイマーと同様、第2のタイマーでも、第2のタイマーが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマーが切れると接続が切断されたと判定する。接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。
あるいは、接続相手の無線通信装置からフレームを受信すると第3のタイマーを起動し、新たに接続相手の無線通信装置からフレームを受信するたびに第3のタイマーを止め、再び初期値から起動する。第3のタイマーが切れると前述と同様に接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマー(例えば管理フレーム用の再送タイマー)を起動する。この場合も、第2のタイマーが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマーが切れると接続が切断されたと判定する。この場合も、接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。後者の、接続相手の無線通信装置がまだ存在するかを確認するための管理フレームは、前者の場合の管理フレームとは異なるものであってもよい。また後者の場合の管理フレームの再送を制限するためのタイマーは、ここでは第2のタイマーとして前者の場合と同じものを用いたが、異なるタイマーを用いるようにしてもよい。
[3]無線LANシステムのアクセス方式
例えば、複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した無線LANシステムがある。IEEE802.11無線LANではCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)をアクセス方式の基本としている。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了から固定時間を置いて送信を行う方式では、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置で同時に送信を行うことになり、その結果、無線信号が衝突してフレーム送信に失敗する。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了からランダム時間待つことで、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置での送信が確率的に分散することになる。よって、ランダム時間の中で最も早い時間を引いた無線通信装置が1つなら無線通信装置のフレーム送信は成功し、フレームの衝突を防ぐことができる。ランダム値に基づき送信権の獲得が複数の無線通信装置間で公平になることから、Carrier Avoidanceを採用した方式は、複数の無線通信装置間で無線媒体を共有するために適した方式であるということができる。
[4]無線LANのフレーム間隔
IEEE802.11無線LANのフレーム間隔について説明する。IEEE802.11無線LANで用いられるフレーム間隔は、distributed coordination function interframe space(DIFS)、arbitration interframe space(AIFS)、point coordination function interframe space(PIFS)、short interframe space(SIFS)、extended interframe space(EIFS)、reduced interframe space(RIFS)などがある。
フレーム間隔の定義は、IEEE802.11無線LANでは送信前にキャリアセンスアイドルを確認して開けるべき連続期間として定義されており、厳密な前のフレームからの期間は議論しない。従ってここでのIEEE802.11無線LANシステムでの説明においてはその定義を踏襲する。IEEE802.11無線LANでは、CSMA/CAに基づくランダムアクセスの際に待つ時間を固定時間とランダム時間との和としており、固定時間を明確にするため、このような定義になっているといえる。
DIFSとAIFSとは、CSMA/CAに基づき他の無線通信装置と競合するコンテンション期間にフレーム交換開始を試みるときに用いるフレーム間隔である。DIFSは、トラヒック種別による優先権の区別がないとき、AIFSはトラヒック種別(Traffic Identifier:TID)による優先権が設けられている場合に用いる。
DIFSとAIFSとで係る動作としては類似しているため、以降では主にAIFSを用いて説明する。IEEE802.11無線LANでは、MAC層でフレーム交換の開始などを含むアクセス制御を行う。さらに、上位層からデータを渡される際にQoS(Quality of Service)対応する場合には、データとともにトラヒック種別が通知され、トラヒック種別に基づいてデータはアクセス時の優先度のクラス分けがされる。このアクセス時のクラスをアクセスカテゴリ(Access Category:AC)と呼ぶ。従って、アクセスカテゴリごとにAIFSの値が設けられることになる。
PIFSは、競合する他の無線通信装置よりも優先権を持つアクセスができるようにするためのフレーム間隔であり、DIFS及びAIFSのいずれの値よりも期間が短い。SIFSは、応答系の制御フレームの送信時あるいは一旦アクセス権を獲得した後にバーストでフレーム交換を継続する場合に用いることができるフレーム間隔である。EIFSはフレーム受信に失敗した(受信したフレームがエラーであると判定した)場合に起動されるフレーム間隔である。
RIFSは一旦アクセス権を獲得した後にバーストで同一無線通信装置に複数のフレームを連続して送信する場合に用いることができるフレーム間隔であり、RIFSを用いている間は送信相手の無線通信装置からの応答フレームを要求しない。
ここでIEEE802.11無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を図20に示す。
ある無線通信装置においてデータフレーム(W_DATA1)の送信要求が発生した際に、キャリアセンスの結果、媒体がビジーである(busy medium)と認識する場合を想定する。この場合、キャリアセンスがアイドルになった時点から固定時間のAIFSを空け、その後ランダム時間(random backoff)空いたところで、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。なお、キャリアセンスの結果、媒体がビジーではない、つまり媒体がアイドル(idle)であると認識した場合には、キャリアセンスを開始した時点から固定時間のAIFSを空けて、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。
ランダム時間は0から整数で与えられるコンテンションウィンドウ(Contention Window:CW)の間の一様分布から導かれる擬似ランダム整数にスロット時間をかけたものである。ここで、CWにスロット時間をかけたものをCW時間幅と呼ぶ。CWの初期値はCWminで与えられ、再送するたびにCWの値はCWmaxになるまで増やされる。CWminとCWmaxとの両方とも、AIFSと同様アクセスカテゴリごとの値を持つ。W_DATA1の送信先の無線通信装置では、データフレームの受信に成功し、かつ当該データフレームが応答フレームの送信を要求するフレームであるとそのデータフレームを内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS時間後に応答フレーム(W_ACK1)を送信する。W_DATA1を送信した無線通信装置は、W_ACK1を受信すると送信バースト時間制限内であればまたW_ACK1を内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS時間後に次のフレーム(例えばW_DATA2)を送信することができる。
AIFS、DIFS、PIFS及びEIFSは、SIFSとスロット時間との関数になるが、SIFSとスロット時間とは物理層ごとに規定されている。また、AIFS、CWmin及びCWmaxなどアクセスカテゴリごとに値が設けられるパラメータは、通信グループ(IEEE802.11無線LANではBasic Service Set(BSS))ごとに設定可能であるが、デフォルト値が定められている。
例えば、802.11acの規格策定では、SIFSは16μs、スロット時間は9μsであるとして、それによってPIFSは25μs、DIFSは34μs、AIFSにおいてアクセスカテゴリがBACKGROUND(AC_BK)のフレーム間隔はデフォルト値が79μs、BEST EFFORT(AC_BE)のフレーム間隔はデフォルト値が43μs、VIDEO(AC_VI)とVOICE(AC_VO)のフレーム間隔はデフォルト値が34μs、CWminとCWmaxとのデフォルト値は、各々AC_BKとAC_BEとでは31と1023、AC_VIでは15と31、AC_VOでは7と15になるとする。なお、EIFSは、基本的にはSIFSとDIFSと最も低速な必須の物理レートで送信する場合の応答フレームの時間長の和である。なお効率的なEIFSの取り方ができる無線通信装置では、EIFSを起動した物理パケットへの応答フレームを運ぶ物理パケットの占有時間長を推定し、SIFSとDIFSとその推定時間の和とすることもできる。
なお、各実施形態で記載されているフレームは、Null Data Packetなど、IEEE802.11規格または準拠する規格で、パケットと呼ばれるものを指してもよい。
本実施形態で用いられる用語は、広く解釈されるべきである。例えば用語“プロセッサ”は、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシンなどを包含してもよい。状況によって、“プロセッサ”は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路 (PLD)などを指してもよい。“プロセッサ”は、複数のマイクロプロセッサのような処理装置の組み合わせ、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサを指してもよい。
別の例として、用語“メモリ”は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を包含してもよい。“メモリ”は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、磁気または光学データストレージを指してもよく、これらはプロセッサによって読み出し可能である。プロセッサがメモリに対して情報を読み出しまたは書き込みまたはこれらの両方を行うならば、メモリはプロセッサと電気的に通信すると言うことができる。メモリは、プロセッサに統合されてもよく、この場合も、メモリは、プロセッサと電気的に通信していると言うことができる。また、回路は、単一チップに配置された複数の回路でもよいし、複数のチップまたは複数の装置に分散して配置された1つ以上の回路でもよい。
また本明細書において “a,bおよび(または)cの少なくとも1つ”は、a,b,c,a−b, a−c,b−c,a−b−cの組み合わせだけでなく、a−a,a−b−b,a−a−b−b−c−cなどの同じ要素の複数の組み合わせも含む表現である。また、a−b−c−dの組み合わせのように、a,b,c以外の要素を含む構成もカバーする表現である。
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。