以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る全体のシステム構成例を示す図である。図1を用いて、本実施形態の概要を説明する。図1のシステムは、基地局1と、無線通信端末2と、複数の受電端末3とを備える。図では無線通信端末2の台数は1台であるが、2台以上でもよい。
基地局1は、例えばIEEE802.11シリーズまたはその後継規格の無線LAN(Local Area Network)規格に準拠した無線通信装置である。基地局1は、アクセスポイント(AP)と呼ばれることもある。ここで、無線LANは例示であり、基地局1の用いる無線通信方式は、IEEE802.16シリーズ又はその後継規格の移動体通信方式、またはその他の通信方式であってもよい。
基地局1は更にBLE(Bluetooth Low Energy)による通信も可能である。BLE以外の通信、例えば、ZigBee、Z−Wave、Wireless USB、無線LAN通信などを行ってもよい。NFC(Near field radio communication)なども排除されない。
基地局1は、無線通信が可能な通信回路11と、BLEに対応したBLE回路12と、制御回路13とを備えている。制御回路13は、通信回路11およびBLE回路12の制御を行う。基地局1は、通信回路11が送受信に用いるアンテナ14と、BLE回路12が送受信に用いるアンテナ15とを備える。アンテナ14は1つでも複数であってもよく、アンテナの種類や形状は特に問わない。アンテナ15は1つでも複数であってもよく、アンテナの種類や形状は特に問わない。
無線通信端末2は、例えばIEEE802.11シリーズまたはその後継規格の無線LAN(Local Area Network)規格に準拠した無線通信装置である。無線通信端末2は、ステーションと呼ばれることもある。無線通信端末2の用いる通信方式も、IEEE802.16シリーズ又はその後継規格の移動体通信方式またはその他の通信方式であってもよく、特に問わない。ただし、無線通信端末2は、基地局1の用いる無線通信方式と同一または互換性のある無線通信規格に対応しているものとする。
無線通信端末2は、1つまたは複数のアンテナ21と、通信回路22とを備える。
各受電端末3は、BLEによる通信が可能な通信装置である。各受電端末3は、アンテナ4と、整流回路5と、キャパシタ6と、BLE回路7と、BLE用のアンテナ8と、センサ9とを備えている。アンテナ4と整流回路5は合わせてレクテナ(rectifying antenna)として動作する。キャパシタ6は電荷の蓄積と、放出とが可能である。キャパシタの代わりにリチウムイオン電池などの小型の2次電池を用いてもよい。BLE回路7は、BLEによる通信機能を提供する。
本実施形態においては、基地局1の通信回路11と、無線通信端末2の通信回路22とは無線LANによる通信を行うものとして説明をする。ただし、無線LANは例示であり、その他の無線通信方式を用いることを排除するものではない。
基地局1、無線通信端末2、各受電端末3は、自動車の上に搭載された機器であるとして説明をする。ただし、自動車は例示であり、鉄道車両、船舶、航空機、建設機械、ロボットなどその他の移動体上にあってもよいし、発電所、工場などの施設上にあってもよく、設置場所は特に問わない。
無線通信端末2は一例として車載カメラ、各受電端末3は一例として各種の監視センサである。監視センサの具体例としては、タイヤ空気圧センサ、エンジン温度センサ、室内の温度センサなどがあるが、これらに限定されない。
基地局1および無線通信端末2は、自動車に搭載されたバッテリーまたは自装置に搭載されたバッテリーにより動作する。一方、受電端末3におけるBLE回路7は、キャパシタ6に蓄積された電荷により動作する。またセンサ9も、キャパシタ6に蓄積された電荷により動作する。受電端末3は、基地局1から無線信号をアンテナ4で受信する。受電端末3は、受信した無線信号を整流回路5で直流エネルギーに変換し、直流エネルギーをキャパシタ6に蓄積する。
基地局1は、複数のアンテナ14に設定したウエイトにより、受電端末3に指向性を有する電波であるビームを送信することで、ビームによる無線給電を行うことができる。ビームは、複数のアンテナ14のウエイトで信号を重み付け合成することで生成される。なお、アンテナ自体が指向性可変である場合は、アンテナの設定を調整して、電波の指向性を制御してもよい。
図1のシステムの動作の一例として、基地局1は、無線通信端末2から定期的または任意のタイミングで、映像データを受信する。基地局1は、受信した映像データを内部の記憶装置に格納し、図示しない表示装置(例えば経路誘導装置の画面)に表示したり、画像解析を実行したりする。
また、基地局1は、無線給電用の無線信号(給電信号)を受電端末3に送信することで、受電端末3に無線給電を行う。また、基地局1は、BLE通信を行って受電端末3から定期的にセンサデータを収集したり、受電端末3の受電量に関する情報(受電量情報)を収集したりする。基地局1は、受電量情報を利用して受電端末3への給電を制御する。給電の制御の例として、無線給電用のパラメータ(給電パラメータ)を制御することがある。給電パラメータは給電信号の送信設定に係る項目を含む。例えば、受電端末3へ送信するビームのためのアンテナのウエイト制御、変調方式の制御、使用する無線周波数チャネル(以下、チャネル)の制御、使用する帯域幅の制御等がある。なお、基地局1が送信する給電信号は、BLEや無線LANなどの規格で定義される形式に従った信号である必要はない。
以下の説明では、無線LANで使用する周波数帯域と、BLEで使用する周波数帯域は異なるものとする。例えば無線LANでは、5GHz帯域を利用し、Bluetoothの一種であるBLEでは2.4GHz帯域を利用しているとする。ただし、無線LANがBLEと同じ2.4GHz帯域を利用し、無線LANとBLEの周波数帯域が重なっていてもよい。
本実施形態に係る基地局1は、受電端末3へ効率的な無線給電を行うことを特徴の1つとする。本システムが自動車に搭載される場合、エンジンが長期間起動されていない状態では、受電端末3のキャパシタ6に、BLE通信およびセンシング動作に必要な電荷が蓄えられていないと考えられる。基地局1および無線通信端末2は、バッテリーからのエネルギーで動作するため、エンジンの始動とともにエネルギーが供給され、ただちに動作可能となる。これに対し、受電端末3は、基地局1から無線給電を受けて動作するため、早期の無線給電が必要となる(Phase1)。
また、エンジンが起動して、基地局1および無線通信端末2が動作可能になった後、車内の環境に合わせて無線給電用のパラメータ(給電パラメータ)をできるだけ早く最適なものに設定することが必要である。例えば車の扉の開閉状態や、乗車人数によって、電波の伝搬環境が異なるため、環境によって、受電端末3に向けて形成する最適なビームも異なる。したがって、扉の開閉や乗車人数など環境の変化に応じて、速やかに給電パラメータも変更する必要がある(Phase2)。
また、車内の環境が安定した状態になった後は、決定した給電パラメータにより受電端末3の給電を行いつつ(通常の給電処理)、無線通信端末2のデータ伝送要求を満たすように、給電とデータ通信とのスケジューリングを行うことが必要である(Phase3)。定期的に、給電パラメータの更新(測定処理)を行ってもよい。
本実施形態および後述する各実施形態では、これらのPhaseの1つまたは複数を考慮し、受電端末の消費電力の削減を狙ったものである。
図2は、第1の実施形態に従った無線通信システムのブロック図である。なお、本実施形態において各図で共通する名称の要素には同一の符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
本実施形態に係る無線通信システムは、基地局1と、無線通信端末2と、受電端末3とを備える。図では、受電端末3は1台であるが、実際には複数台存在する(図1参照)。
基地局1が搭載する無線通信装置は、無線通信用の1つまたは複数のアンテナ14と、BLE用の1つまたは複数のアンテナ15と、スイッチ101と、無線受信部102と、無線送信部103と、フレーム生成部104と、制御部105と、スイッチ106と、BLE受信部107と、BLE送信部108と、IF部109と、記憶部110とを備える。
スイッチ101は、アンテナ14を無線送信部103または無線受信部102へ切り換えるためのスイッチである。
フレーム生成部104は、無線通信端末2に送信するためのフレームを生成する。基地局1が無線LANによる通信をする場合、フレームはMACフレームである。無線LAN規格のフレームには、データフレーム、管理フレーム、制御フレームがあるが、これらのいずれであってもよい。
基地局1が定期的に自身の属性または同期情報を通知するために送信するビーコンフレームは、管理フレームである。また、制御フレームには、相手の端末に送信要求を行うためのRTS(Request to Send)フレーム、送信許可を与えるためのCTS(Clear to Send)フレーム、送達確認フレームであるACKフレームまたはBA(Block Ack)フレームなどがある。ここで列挙したフレームは一例であり、他にも様々なフレームが存在する。
無線送信部103は、フレーム生成部104で生成されたフレームを、アンテナ14を介して送信する。フレームは、実際には、物理レイヤのヘッダが付加されてパケットとされ、パケットが送信される。無線送信部103は、フレーム(より詳細にはパケット)に対して、誤り訂正符号化と変調を行い、変調信号を生成する。変調信号は、アナログ信号に変換される。無線送信部103は、発振器とPLL(Phase Locked Loop)回路を用いて一定周波数の信号を生成しており、当該一定周波数の信号に基づいて、送信用ミキサで、アナログ信号を、無線周波数の信号にアップコンバートする。無線送信部103は、アップコンバートした信号を、RFアンプにより増幅し、増幅された信号を、アンテナから空間へ電波として送信する。これにより、無線周波数のフレーム(パケット)が送信される。
また、無線送信部103は、制御部105の制御のもと、無線給電用の無線信号である給電信号を生成し、給電信号を、アンテナ14を介して送信する。より詳細には、無線送信部103は、制御部105による給電パラメータに従って給電信号を生成する。給電信号は、フレームまたはパケットの送信時に用いる発振器の出力信号またはPLL回路の出力信号を利用して生成してもよい。一例として、給電パラメータに応じた給電用データを、送信用ミキサで当該出力信号にかけ合わせることで、給電信号を生成してもよい。給電信号用の信号源を用意し、当該信号源を利用して給電パラメータから給電信号を生成することも可能である。
なお、受電端末3へ送信する給電信号として、フレーム生成部104で生成するフレームを用いることも可能である。例えばビーコンフレームを、給電信号として用いることも可能である。あるいは、無線給電用のフレームを定義して、当該フレームを給電信号として送信してもよい。
制御部105は、フレーム生成部104を用いて、無線通信端末2との通信を制御する。
また、制御部105は、給電パラメータの設定を制御する。給電パラメータの設定項目の例として、複数のアンテナごとのウエイトがある。また、変調方式または変調符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)がある。または、使用するチャネルがある。例えば、無線LANの帯域に存在する複数のチャネルのうち使用するチャネルがある。
ウエイトとは送信信号の振幅および位相の調整値を意味する。アンテナごとに、送信する信号の振幅および位相を調整することで、様々なビームを形成できる。受電端末3に適したビームを形成することで、伝送効率の高い給電信号の送信が可能となる。伝送効率とは、送信電力に対する受電電力の比である。
各アンテナにどのようなウエイトを設定すれば、受電端末3に好適なビーム(伝送効率の高いビーム)を形成できるかは事前に分からないことが多い。そこで、様々なウエイトで給電信号を送信し、受電量情報のフィードバックを受けることで、受電端末3に適したウエイトを決定することができる。
上述した給電パラメータの設定項目は一例であり、他にも様々な項目を制御することが可能である。
無線受信部102は、無線通信端末2から受信した信号を復調して、フレームを取得する。より詳細には、アンテナ14で受信された信号は、無線受信部102に入力される。無線受信部102は、受信された信号を、LNA(Low Noise Amplifier)アンプで増幅する。無線受信部102は、増幅された信号から受信用フィルタを用いて所望帯域の信号を抽出する。無線受信部102は、発振器とPLL回路で生成される一定周波数の信号に基づいて、抽出した信号をダウンコンバートする。無線受信部102は、復調および復号してフレーム(より詳細にはパケット)を得る。
無線受信部102は、取得したフレームがデータフレームであれば、データフレームに含まれるデータをIF部109から出力する。IF部109は、無線受信部102で受信したフレームを上位層または、上位層との間のバッファに出力するためのインタフェースである。また、無線受信部102は、受信したフレームの種類に応じた動作を行うため、フレームの解析結果をフレーム生成部104または制御部105に出力する。例えば送達確認応答を行う場合は、送達確認応答に必要な情報をフレーム生成部104または制御部105またはこれらの両方に出力し、受信完了から一定時間後に送達確認応答フレームを送信するようにする。
スイッチ106は、アンテナ15をBLE受信部107またはBLE送信部108へ切り換えるためのスイッチである。
BLE受信部107は、BLEの信号を受信する。BLE受信部107は、BLE用のアンテナ15を介して、受電端末3からデータまたは情報を受信する。一例として、BLE受信部107は、受電端末3で検出されたセンサデータを受信する。また、BLE受信部107は、受電端末3が受電した受電量に関する情報(受電量情報)を受信する。
BLE受信部107は、制御部105に接続されており、受電量情報を制御部105に供給する。またBLE受信部107は、センサデータを図示しない車内の監視装置に送信してもよい。監視装置は、センサデータに基づき、センシング箇所の異常の有無等を確認する。制御部105が監視装置の役割を兼ねてもよく、その場合、BLE受信部107は、センサデータを制御部105に供給する。
BLE送信部108は、制御部105に接続されており、アンテナ15を介して、データを受電端末3に送信する。BLE送信部108から受電端末3に送信されるデータの一例として、測定指示情報がある。測定指示情報は、一例として、受電量の測定期間を含む。測定期間以外の情報、例えば、給電信号の送信に使用する各アンテナのウエイトなども、測定指示情報に含めてもよい。
記憶部110は、制御部105に接続されており、制御データの保存をする。記憶部110は、SRAM、DRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM、FRAM等の不揮発性メモリでもよい。またハードディスク、SSD等のストレージ装置でもよい。
無線送信部103、無線受信部102およびフレーム生成部104は、一例として、基地局1が備える通信回路11に対応する。制御部105は、一例として、基地局1が備える制御回路13に対応する。BLE受信部107とBLE送信部108は、一例として、基地局1が備えるBLE回路12に対応する。
無線通信端末2が搭載する無線通信装置は、アンテナ23と、スイッチ24と、無線送信部25と、無線受信部26とを備える。スイッチ24は、アンテナ23を無線送信部25または無線受信部26へ切り換えるためのスイッチである。無線送信部25は、無線通信端末2で生成されたデータを、アンテナ23を介して送信する。無線受信部26は、基地局1および他の無線通信端末からデータを受信する。
アンテナ23は、無線LANの信号を送受信可能なアンテナである。無線送信部25および無線受信部26は、基地局1の無線送信部103および無線受信部102と同様の機能を有する。無線送信部25および無線受信部26は、一例として、図1の無線通信端末2が備える通信回路22に対応する。
受電端末3が搭載する無線通信装置は、センサ9と、無線LAN用のアンテナ31と、受電部32と、受電量測定部33と、BLE送信部34と、BLE用のアンテナ35と、スイッチ36と、BLE受信部37と、記憶部38とを備える。
受電部32は、アンテナ31を介して、基地局1から送信される給電信号を受信し、受信した給電信号を直流に整流(変換)する。受電部32は、変換された直流電流を、キャパシタ6に充電する。
受電量測定部33は、受電された電力量(受電量)を測定する。電力量とは電気エネルギーまたは電荷量のことである。受電量の測定方法は任意でよい。例えば、測定前後のキャパシタの電圧の変化に応じて受電量を測定してもよい。より詳細には、測定前後の電圧の差分と、キャパシタンス値とから受電量を測定する。受電量測定部33が測定した受電量に関する情報は、記憶部38に保存される。
BLE送信部34は、BLEによる通信を行う。BLE送信部34は、測定された受電量に関する情報(受電量情報)を、BLE用のアンテナ35を介して、送信する。ここでは受電量情報は、測定された受電量を特定するための値を含んでもよいし、受電量が閾値以上か否かを示す値を含んでもよいし、これらの両方の値を含んでもよい。受電量を特定するための値は、受電量の値でもよいし、測定前後のキャパシタ6の電圧の変化値でもよい。キャパシタ6の特性を基地局1側で把握できる場合には、電圧の変化値から、受電量を基地局1で計算することができる。
スイッチ36は、アンテナ35をBLE送信部34またはBLE受信部37へ切り換えるためのスイッチである。
BLE受信部37は、BLEの信号を受信する。BLE受信部37は、BLE用のアンテナ35を介して、基地局1からデータまたは情報を受信する。一例として、BLE受信部37は、基地局1から測定指示情報を受信する。
記憶部38は、受電量測定部33で測定した受電量に関する情報(受電量情報)またはその他任意のデータを保存する。記憶部38は、SRAM、DRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM、FRAM等の不揮発性メモリでも、ハードディスク、SSD等のストレージ装置でも、これらの組み合わせからなるものであってもよい。
アンテナ31および受電部32は、一例として、図1の受電端末3が備えるアンテナ4、整流回路5およびキャパシタ6に対応する。受電量測定部33、BLE送信部34およびBLE受信部37は、一例として、図1の受電端末3が備えるBLE回路7に対応する。
図3は、図2の無線通信システムにおける測定処理の基本的なシーケンスの例を示す図である。本実施形態の特徴的なシーケンスについては後述する。基地局1、受電端末3および無線通信端末2の動作が時間軸に沿って示されている。時間軸の上側が無線LANの動作、下側がBLEの動作を表す。
本シーケンスの概要は以下の通りである。基地局1は、送信禁止を指示するフレーム(ここではCTS−to−selfフレーム)を送信し、無線通信端末2の送信動作を禁止させる。送信動作の禁止中に、基地局1が受電端末3に給電パラメータ(例えばウエイト1)で無線給電を行う。基地局1から受電端末3への給電中に、無線通信端末2の送信が抑制されるため、受電端末3は、基地局1から受電したエネルギーを高精度に測定できる。ただしCTS−to−selfフレームなどの送信禁止を指示するフレームの送信は必須ではなく、当該フレームの送信を省略することも可能である。受電端末3は、当該測定に基づく受電量情報を基地局1に送信(フィードバック)する。基地局1は、受電量情報に基づき、受電端末3に必要な電力量を給電できたかを判断する。給電パラメータを変えつつ、同様の処理を繰り返すことで、受電端末3に対して適正な給電パラメータを決定できる。以下、本シーケンスの詳細を示す。
まず、基地局1は、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)に従って無線媒体へのアクセス権を獲得する。具体的に固定時間と、ランダムに決定したバックオフ時間との合計である待機時間の間、キャリアセンスを行い、無線媒体の状態がアイドルであると判定すれば、アクセス権を獲得する。
基地局1は、アクセス権に基づき、CTS−to−selfフレーム41を送信する。CTS−to−selfフレームは、受信先アドレス(RA: Receiver Address)フィールドを自局のアドレス(すなわちAP1のBSSID)に設定したCTSフレームである。CTS−to−selfフレーム41を受信した無線通信端末2は、CTSフレームのDuration/IDフィールドに設定された期間の間、送信を行うことを禁止される。具体的には、自端末宛でないCTSフレームを受信した無線通信端末2は、フレームの末尾から、Duration/IDフィールドに設定された値の長さの期間の間、NAV(Network Allocation Vector)を設定し、この間、送信を控える。この期間のことを、送信禁止期間またはNAV期間と呼ぶ。
基地局1は、受電端末3に無線給電を行うために必要な期間の長さに応じた値をDuration/IDフィールドに設定する。なお、送信禁止を指示するフレームとして、CTS−to−selfフレーム以外のフレームを定義して、これを用いてもかまわない。
無線通信端末2は、CTS−to−selfフレーム41を受信し、Duration/IDフィールドに設定された値に基づき、送信禁止期間を設定する。送信禁止期間の間、送信動作を控える。
基地局1は、CTS−to−selfフレーム41を送信後、測定指示情報42をBLE送信部108から送信する。受電端末3はBLE受信部37で測定指示情報42を受信し、受電量測定部33に測定指示情報42を供給する。受電量測定部33は、測定指示情報42に基づき測定期間を特定する。
基地局1は測定期間の間、無線送信部103を用いて、受電端末3に給電信号(無線信号)43を送信する。この際、給電信号は第1給電パラメータ(ここではウエイト1)を用いて生成される。ウエイトは、一例として、予め定義された複数の中から任意に選択する。ただし、この方法に限定されるものではない。到来方向推定などを利用してウエイトを決定してもよい。ウエイトに関してここで述べたことは、後述する他のシーケンスでも同様である。受電エネルギーの測定精度を確保するため、測定期間、および給電期間(無線信号の送信期間)は無線通信端末2の送信禁止期間内に設定するのが望ましい。
受電端末3は、基地局1から送信された給電信号43を受電部32で受信する。受電端末3は、給電信号に基づきキャパシタ6を充電するとともに、受電量を測定する。受電量測定部33は、測定指示情報42で指定された測定期間の間のみ測定を行う。
受電端末3は、測定した受電量に関する情報(受電量情報)を、BLEで基地局1に送信する。すなわち受電端末3は、BLE送信部34を用いて受電量情報を送信する。前述したように受電量情報は、受電量の値を示す情報でもよいし、受電量が閾値(要求値)以上か否かの情報でもよいし、その他の情報でもよい。
基地局1は、受電端末3から送信された受電量情報を、BLE受信部107で受信する。
なお、BLEと無線LANとは、使用する周波数帯域が異なっている。基地局1は受電端末3から受信した受電量情報を、給電信号43の生成に用いた第1給電パラメータ(ここではウエイト1)と関連づけて、記憶部110に格納する。記憶部は制御部105の内部バッファであってもよい。
基地局1は、再度、固定時間とバックオフ時間との待機時間の間キャリアセンスを行うことにより、無線媒体へのアクセス権を獲得し、CTS−to−selfフレーム44を送信する。無線通信端末2はCTS−to−selfフレーム44を受信し、Duration/IDフィールドに設定された値に従って、送信禁止期間を設定する。
基地局1は、CTS−to−selfフレーム44を送信後、測定指示情報45をBLE送信部108から送信する。受電端末3はBLE受信部37で測定指示情報45を受信し、受電量測定部33に測定指示情報45を供給する。受電量測定部33は、測定指示情報45に基づき測定期間を特定する。
基地局1は、測定期間の間、受電端末3に、第2給電パラメータによる給電信号(無線信号)46を送信する。給電パラメータ2は、給電パラメータ1の設定項目のうち、少なくとも1つを変更したものである。例えば第1給電パラメータがウエイト1の場合に、ウエイト1をウエイト2に変更する。その他の設定項目(給電期間の長さ等)は同じとする。
受電端末3は、基地局1から送信された給電信号46を受信する。受電端末3は、給電信号46に基づきキャパシタ6を充電し、受電量を測定する。受電量測定部33は、測定指示情報45で指定された測定期間の間のみ測定を行う。
受電端末3は、測定した受電量に関する情報(受電量情報)を、記憶部38に保存する。受電端末3は、さらに受電量情報をBLEで基地局1に送信する。基地局1は、受電端末3から送信された受電量情報をBLE受信部107において受信する。基地局1は、受電量情報を、第2給電パラメータ(ここではウエイト2)と関連づけて、記憶部110等に格納する。
以降、同様の動作を繰り返すことで、基地局1は複数の給電パラメータのそれぞれに対する受電量情報を取得することできる。基地局1は、これら複数の受電量情報に基づき、受電端末3に適用する給電パラメータを決定する。例えば受電量が最も高い給電パラメータを選択する。なお、各繰り返しの測定処理において、給電期間の長さは同じであるとする。
測定処理が完了すると、基地局1は、通常の給電処理として、決定した給電パラメータ(ウエイト等)を利用して、受電端末3へ無線給電を行う。例えば、間欠的に(例えば一定の周期で)、一定時間長の給電信号を送信する。送信の前に、キャリアセンスにより無線媒体の状態を確認し、無線媒体のアイドルが確認できた場合に、送信してもよい。あるいは、CSMA/CAのプロセスを行わずに、事前にスケジュールしたタイミングで、給電信号を送信する構成もあり得る。
いったん決定したパラメータも、車内の環境変化に応じて受電端末3に適さなくなる可能性がある。このため、基地局1は、定期的に上述した測定処理により、パラメータ更新処理を実行してもよい。または、所定のイベントを検知した場合に、パラメータ更新処理を行ってもよい。所定のイベントとして、例えば車の窓または扉の開閉を検知してもよい。その他のイベントを検知してもよい。
以下では、本実施形態の特徴となる測定処理のシーケンスについて説明する。
図4は、本実施形態に係る測定処理の第1のシーケンス図である。時間軸の上側が無線LANの動作、下側がBLEの動作を表す。第1のシーケンスでは、受電量を測定した複数の受電端末のうち、受電量の少ない受電端末のみが受電量情報のフィードバックを行うことを特徴とする。図4では、3台の受電端末3を区別するため、それぞれ受電端末3A、3B、3Cと表されている。受電端末3A、3B、3Cはそれぞれ異なる場所に配置されているとする。受電端末3A、3B、3Cは同じ設計のハードウェアであってもよいし、異なる設計のハードウェアであってもよい。以下では、特定の受電端末ではなく、受電端末3一般に関して述べるときは「受電端末」と記載する。
基地局1はCTS−to−selfフレーム41aを無線通信端末2に送信する。フレーム41aを受信した無線通信端末2は送信動作を停止する。
基地局1は、測定期間を含む測定指示情報42aを、BLEで受電端末3A、3B、3Cに送信する。測定指示情報は、受電端末3A、3B、3Cに、同じ長さの測定期間を指定する。受電端末3A、3B、3Cに送信する測定指示情報を同じ符号42aによって表しているが、これらの測定指示情報が同じである必要はない(以下の説明で複数の受電端末に順次送信する情報に同じ符号を付しているが、これらの情報も同じである必要はない)。
測定指示情報42aの送信後、基地局1は、給電パラメータ1(例えばウエイト1)による給電信号(無線信号)43aを送信する。給電信号の送信期間は、測定指示情報で指定した測定期間と一致しているとする。受電端末3A、3B、3Cはそれぞれ測定期間の間、受信した給電信号に基づきキャパシタ6を充電し、受電量の測定を行う。測定された受電量に関する情報(受電量情報)は、記憶部38に保存される。
図5に、受電端末3A、3B、3Cで測定された受電量のグラフを示す。受電端末3Aで測定された受電量のみ、閾値を下回っている。閾値を50としているが、これに限定されない。受電量が少なくなる理由としては、受電端末の位置に起因して他の受電端末より到達する給電信号が弱くなる場合や、受電端末のアンテナ4の形状や整流回路5の性質により、受電量が少なくなる場合もある。
測定期間後、測定した受電量が閾値を下回った受電端末のみが、受電量情報を基地局1に送信する。ここでは、受電端末3Aのみが、受電量情報を送信する。受電端末3B、3Cは、測定した受電量が閾値以上であったため、受電量情報を送信しない。
なお、各受電端末が受電量情報を送信可能なタイミングは事前に定まっていてもよいし、各受電端末が受電量情報を送信するタイミングを、測定指示情報で指定してもよい。また、各受電端末の閾値は、各受電端末で事前に指定されてもよいし、測定指示情報で各受電端末の閾値を指定してもよい。各受電端末3A〜3Cの閾値は同じ値でもよいし、異なる値でもよい。
基地局1は、受信端末3A〜3Cからの受電量情報の受信有無に応じて、再度の測定処理を実行する受電端末を選択する。基地局1は、受電端末3Aから受電量情報44aを受信し、受電端末3B、3Cからは受電量情報を受信しない。このため、基地局1は、受電端末3B、3Cに対しては、現在の給電パラメータ1で必要な電力量を供給できると判断し、再度の測定処理は不要と決定する。この結果、基地局1は、受電端末3B、3Cに対して、現在の給電パラメータ1を、通常の給電処理で利用することを決定する。一方、基地局1は、受電端末3Aに対しては、現在の給電パラメータ1では必要な電力量を供給できないと判断し、再度、測定処理を行うことを決定する。このため、基地局1は、受電端末3Aを選択し、選択した受電端末3Aに対してのみ、測定指示情報を送信し、さらに、更新された給電パラメータ2(例えばウエイト2)で給電信号を送信する。
本シーケンスによれば、複数の受電端末3A〜3Cのうち少なくとも1台(受電端末3A)から受電量情報が受信され、少なくとも別の1台(受電端末3B、3C)から受電量情報が受信されなかった場合、少なくとも1台(受電端末3A)に対して測定指示情報を再度送信し、その後、給電信号(無線信号)を送信することで、再測定処理を行う。これにより、受電端末3B、3Cからのフィードバックを不要にすることで、受電端末3B、3Cの消費電力を低減しつつ、受電端末3Aの再測定処理ができる。すなわち、受電量情報の送信に使われる電力は、キャパシタ6に蓄えられている電荷の電気エネルギーである。したがって、受電量情報のフィードバックを不要にすることで、キャパシタ6に蓄えられている電荷減少を抑制し、消費電力の低減に貢献できる。また、基地局1は、受電端末3B、3Cに測定指示情報を再度送信する必要はないため、基地局1の処理負荷を低減できる。受電端末の台数が多くなるにしたがい、この効果は大きくなる。
図6は、本実施形態に係る測定処理の第2のシーケンスを示す図である。第1のシーケンスと異なる部分を中心に説明する。
基地局1は、CTS−to−selfフレーム41bを無線通信端末2に送信する。フレーム41bを受信した無線通信端末2は送信動作を停止する。
次に、基地局1は、測定期間を含む測定指示情報42bを、BLEで受電端末3A、3B、3Cに順次送信する。ここで測定指示情報42bは、受電端末3A、3B、3Cに対し、同じ長さの測定期間を指定する。
測定指示情報42bを送信後、基地局1は、給電パラメータ1(例えばウエイト1)による給電信号(無線信号)43bを送信する。ここで、給電信号43bの送信期間は測定指示情報42bで指定された測定期間と一致しているとする。受電端末3A、3B、3Cはそれぞれ測定期間の間、受信した給電信号43bに基づきキャパシタ6を充電し、受電量の測定を行う。測定された受電量に関する情報は、記憶部38に保存される。
図7に、受電端末3A、3B、3Cの受電量のグラフを示す。上述した第1のシーケンスと同様、受電端末3Aの受電量は閾値未満であり、受電端末3B、3Cの受電量は閾値(受電量50)以上となっている。
本シーケンスでは、測定期間の終了後、受電量が閾値(受電量50)以上である受電端末のみが、受電量情報を送信する。ここでは受電端末3B、3Cのみが、受電量情報44bを送信する。受電端末3Aは、受電量情報を送信しない。
このように、受電量が多い受電端末にのみ受電量情報44bを送信させることにより、受電量が少なかった受電端末3Aの送信による電力消費の影響を低減できる。
基地局1は、受信端末3A〜3Cからの受電量情報の受信有無に応じて、再度の測定処理を実行する受電端末を選択する。基地局1は、受電量情報を送信しなかった受電端末3Aに対して現在の給電パラメータ1が不十分であると判断し、測定処理の再実行を決定する。基地局1は、受電端末3Aを選択し、給電パラメータの変更(再設定)を行い、再度、測定指示情報、および、変更後の給電パラメータ2(例えばウエイト2)による給電信号を送信する。これにより、初回の給電時の受電量が閾値未満であった受電端末3Aに対して、より効率的な給電ができる給電パラメータを見つけることが可能となる。基地局1は、受電量情報を送信した受電端末3B、3Cについては、測定処理の再実行は不要と判断し、現在の給電パラメータ1を通常の給電処理で使用することを決定する。
このように、第2のシーケンスでは、基地局1は受電端末3Aから受電量情報に係る信号を受信しなかった事実をもって、受電端末3Aの受電量が、閾値未満であったと判断できる。
第2のシーケンスによれば、複数の受電端末3A〜3Cのうち少なくとも1台(受電端末3B、3C)から受電量情報が受信され、少なくとも別の1台(受電端末3A)から受電量情報が受信されなかった場合、少なくとも別の1台(受電端末3A)に対して測定指示情報を再度送信し、その後、給電信号(無線信号)を送信することで、再測定処理を行う。これにより、受電量が少なかった受電端末3Aの消費電力を低減しつつ、受電端末3Aの再測定処理ができる。また、基地局1は、受電端末3B、3Cに測定指示情報を再度送信する必要はないため、基地局1の処理負荷を低減できる。受電端末の台数が多くなるにしたがい、この効果は大きくなる。
図8は、本実施形態に係る測定処理の第3のシーケンスを示す。本シーケンスは、上述した第2のシーケンスの拡張であり、受電量が閾値未満であった受電端末に対して、再測定処理を行う動作が追加されている。なお、本図では、無線通信端末2の動作については省略されている。
基地局1は、CTS−to−selfフレーム51を無線通信端末2に送信する。フレーム51を受信した無線通信端末2は送信動作を停止する。
無線通信端末2の送信禁止期間内に、基地局1は、測定期間を指定した測定指示情報52をBLEで受電端末3A、3B、3Cに順次送信する。ここでは測定期間は、各受電端末で同じであるとする。
受電端末3A〜3Cに指定した測定期間で、基地局1は給電パラメータ1(ウエイト1)を用いて給電信号(無線信号)53を送信する。受電端末3A、3B、3Cはそれぞれ測定期間の間、受電した給電信号に基づきキャパシタ6を充電し、受電量の測定を行う。測定された受電量に関する情報は、記憶部38に保存される。各受電端末に適用する給電パラメータ1(ウエイト1)は同じである。
ここでは受電端末3Cの受電量が閾値以上であり、受電端末3A、3Bについては受電量が閾値未満であったとする。この場合、受電端末3Cのみが、測定期間後に受電量情報54を送信する。
基地局1は受電端末3Cから送信された受電量情報54を受信する。基地局1は、受電端末3Cに対しては、測定処理の再実行は不要と判断し、給電パラメータ1を通常の給電処理で用いることを決定する。一方、基地局1は、受電端末3A、3Bから受電量情報を受信しないため、測定処理の再実行を決定する。すなわち、基地局1は、給電パラメータ1による給電では、受電端末3A、3Bに、必要な電力量を供給できないと判断する。
基地局1は、給電設定テーブルに、受電端末ごとに、決定された給電パラメータを設定する。給電設定テーブルは、基地局1の記憶部110に作成される。図9に、給電設定テーブルの例を示す。給電設定テーブル53aにおいて、受電端末3Cに係るエントリに、給電パラメータ1として、ウエイト1を表す識別子等が設定される。図では、ウエイト1を表す識別子のみを示しているが、その他の設定項目の値も設定してよい(以下、同様)。受電端末3A、3Bに対しては、まだ必要な電力量を供給可能な給電パラメータ(ウエイト)が決定されていないため、給電設定テーブルに受電端末3A、3Bのエントリは設定されない。
基地局1は、受電端末3A、3Bについては、再度、測定処理を行う。
基地局1は再びCTS−to−selfフレーム55を無線通信端末2に送信する。フレーム55を受信した無線通信端末2は送信動作を停止する。
基地局1は、無線通信端末2の送信禁止期間内で、測定期間を指定した測定指示情報56をBLEで受電端末3A、3Bに順次、送信する。測定期間は、受電端末3A、3Bで同じであるとする。受電端末3Cには、測定指示情報を送信しない。
基地局1は給電パラメータ2(ウエイト2)を用いて給電信号(無線信号)57を送信する。給電パラメータ2は、給電パラメータ1の設定項目のうち、少なくとも1つを変更したものである。ここでは、例えば、ウエイトをウエイト2に変更している。受電端末3A、3Bはそれぞれ測定期間の間、給電信号57を受信して、キャパシタ6を充電し、受電量を測定する。測定した受電量に関する情報は、記憶部38に保存される。また、受電端末3Cは、通常の給電処理の一環として、給電信号57を受信し、キャパシタ6を充電してもよい。
受電端末3A、3Bの受電量が閾値以上であったため、受電端末3A、3Bは基地局1に受電量情報58を送信する。
基地局1は、受電端末3A、3Bから受電量情報58を受信したため、受電端末3A、3Bとも、測定処理の再実行は不要と判断し、給電パラメータ2を、受電端末3A、3Bに対して決定する。基地局1は、図9に示すように、給電設定テーブル53bに、受電端末3A、3Bの給電に適用する給電パラメータとして、給電パラメータ2(ウエイト2)を設定する。ここではウエイト2を表す識別子を設定しているが、その他の設定項目の値も設定してよい(以下、同様)。
仮に受電端末3A、3Bの受電量が閾値未満であった場合には、基地局1は受電端末3A、3Bから受電量情報を受信しない。この場合、基地局1は、受電端末3A、3Bに対して、3回目の測定処理を行う。
図10は第1の実施形態に係る無線通信装置の測定処理のフローチャートである。図10のフローチャートは、図8の第2のシーケンスに対応する。
ステップS101で、基地局1は、候補となる給電パラメータを決定する。ここで決定した給電パラメータを給電パラメータ1と記載する。給電パラメータ1は、少なくとも1つの設定項目を含む。ここでは給電パラメータ1としてウエイト1を決定したとする。
ステップS102で、基地局1は、測定指示情報を生成し、生成した測定指示情報をBLEで、各受電端末に送信する。測定指示情報は、一例として、測定期間を含み、その他、受電量の閾値、給電パラメータ1(ウエイト1)などを含んでもよい。給電期間と測定期間とが同一でも異なってもよいが、ここでは同一であるとする。また、測定期間は、すべての受電端末で同一でも、受電端末ごとに異なってもよいが、ここでは同一とする。受電量の閾値も、受電端末によってハードウェアに差異がある場合など、端末ごとに異なる値を使ってもよい。
ステップS103で、基地局1は、ステップS101で決定した給電パラメータ1を用いて、測定用の給電信号を受電端末へ送信する。
ステップS104で、基地局1は各受電端末から受電量情報の送信を一定期間待機する。基地局1は、受電量情報をフィードバックした受電端末に対しては、測定処理の再実行は不要と判断し、現在の給電パラメータ1を、通常の給電処理で使用する給電パラメータとして設定する(ステップS105)。受電量情報をフィードバックしなかった受電端末に対しては、再度測定処理を行う。すなわち、次の候補となる給電パラメータ2(例えばウエイト2)を決定し、測定指示情報を送信し、給電パラメータ2を用いて、給電信号を送信する(S104のNO、ステップS101〜S103)。
なお、基地局1は、各受電端末の死活監視(動作確認)またはプレゼンス確認(存在確認)を実行していてもよい。この場合、各受電端末が、受電量情報とは別のハートビート信号などを送信し、基地局1はこの信号に基づきプレゼンス確認等を行ってもよい。基地局1は、受電端末から受電量情報の送信も、ハートビート信号の送信もない場合、当該受電端末が停止または故障したか、電波の到達しない場所に移動したと判断し、給電対象から除外してもよい。
(第2の実施形態)
本実施形態は、基地局が、1回目の測定処理で受電量が不足した端末については、次回の測定処理で、給電期間を1回目より長く設定する。以下、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
第2の実施形態に係る無線通信システムの構成は、第1の実施形態に係る無線通信システムの構成と同様である。このため、本実施形態の説明においては、適宜第1の実施形態に係る無線通信システムの構成要素を参照する。
図11は、第2の実施形態における測定処理のシーケンス図である。時間軸の上側が無線LANの動作、下側がBLEの動作を表す。上から順番に、基地局1、受電端末3A、3B、3Cに係る時間軸が表されている。無線通信端末2に係る時間軸については省略されている。
基地局1は、1回目の測定処理で用いる給電パラメータを決定する。ここでは、給電パラメータ1が決定される。給電パラメータ1の項目のうちの1つは、給電期間の長さであり、ここでは、給電期間の長さが0.5時間に決定されたとする。またウエイトも決定したとする。
基地局1は、CTS−to−selfフレーム61を無線通信端末2に送信する。フレーム61を受信した無線通信端末2は、送信動作を停止する。
基地局1は、送信禁止期間内で、測定期間を含む測定指示情報62を、BLEで受電端末3A、3B、3Cに順次送信する。測定期間の長さは、各受電端末とも、給電期間と同じ0.5時間に設定されたとする。
基地局1は、給電パラメータ1に基づき給電信号(無線信号)63を送信する。給電期間の長さは0.5時間であるため、給電信号は0.5時間、送信される。受電端末3A、3B、3Cはそれぞれ給電信号を受信してキャパシタ6を充電し、受電量を測定する。受電量の測定期間は、給電期間と同じである。測定された受電量に関する情報は、記憶部38に保存される。
測定の結果、受電端末3Cの受電量は閾値以上であったが、受電端末3A、3Bについては受電量が閾値未満であったとする。この場合、受電端末3Cのみが、受電量情報64を基地局1に送信する。
基地局1は受電端末3Cから送信された受電量情報64を受信する。基地局1は、受電端末3Cに対しては、測定処理の再実行は不要と判断する。基地局1は給電パラメータ1で0.5時間、給電信号を送信すると、受電端末3Cに、必要な電力量が供給できると判断する。
基地局1は、図12に示すように、給電設定テーブル63aの受電端末3Cに係るエントリに、ウエイト1を表す識別子と、給電時間の0.5Hを示す値とを設定する。
基地局1は、受電端末3A、3Bから、受電量情報を受信しなかったため、測定処理の再実行を決定する。すなわち、基地局1はウエイト1で0.5時間、給電信号を送信しても、受電端末3A、3Bに必要な量の電力を供給できないと判断する。
基地局1は、2回目の測定処理における給電期間の長さを決定する。給電期間以外の設定項目は変更しないものとする。例えばウエイトは前回と同じウエイト1とする。ここでは、2回目の測定処理における給電期間の長さを、3.0時間に決定したとする。
基地局1は、CTS−to−selfフレーム65を無線通信端末2に送信する。フレーム65を受信した無線通信端末2は送信動作を停止する。
基地局1は、送信禁止期間内で、測定期間を含む測定指示情報66をBLEで受電端末3A、3Bに送信する。ここで測定期間の長さは、給電期間の長さと同じ3.0時間であるとする。
基地局1はウエイト1を用いて、3.0時間、給電信号(無線信号)67を送信する。受電端末3A、3Bはそれぞれ給電信号67を受信してキャパシタ6を充電し、受電量を測定する。測定期間は、給電時間と同じ3.0時間である。測定された受電量に関する情報は、記憶部38に保存される。なお、受電端末3Cは通常の給電処理として、当該給電信号を受信し、キャパシタ6の充電を行ってもよい。
受電端末3A、3Bで測定した受電量が閾値以上であったため、受電端末3A、3Bは受電量情報68を、基地局1に送信(フィードバック)する。なお、もし受電端末3A、3Bの受電量が閾値未満である場合は、受電端末3A、3Bは受電量情報のフィードバックを行わない。
基地局1は受電端末3A、3Bから受電量情報68を受信する。これにより、基地局1は、受電端末3A、3Bに対して、測定処理の再実行は不要と判断する。基地局1は、ウエイト1で3.0時間、給電信号を送信すると、受電端末3A、3Bに、必要な電力量を供給できると判断する。基地局1は、図12の右に示すように、給電設定テーブル63bに、受電端末3A、3Bの給電に適用する給電パラメータとしてウエイト2を表す識別子と、給電時間3.0Hとを設定する。
もし、受電端末3A、3Bの受電量が閾値未満であった場合、基地局1は、受電端末3A、3Bについては、次回(3回目)の測定処理において3.0時間より長い給電期間を設定する。
本実施形態では、受電量が閾値以上であった受電端末がフィードバックを行ったが、第1の実施形態の第1のシーケンスと同様に、受電量が閾値未満での受電端末がフィードバックを行うことも可能である。
本実施形態によれば、給電期間を徐々に長くしながら、各受電端末に適用する給電期間を決定するため、受電端末ごとに、必要な電力量を供給可能な給電期間の長さを効率的に見つけることができる。
(第3の実施形態)
本実施形態は、1回目の測定処理の給電で受電量が不足する端末については、次回の給電で、測定期間を1回目より長く設定する、または、測定期間の長さを給電期間より長くする。以下、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
第3の実施形態に係る無線通信システムの構成は第1の実施形態に係る無線通信システムの構成と同様である。このため、本実施形態の説明においては、適宜第1の実施形態に係る無線通信システムの構成要素を参照する。
第1の実施形態では、受電端末3が基地局1からの給電の受電量をできるだけ正確に測定できるようにするため、無線通信端末2の送信を停止させるとともに、基地局1による給電期間と、受電端末による測定期間とを一致させていた。本実施形態は、測定期間を給電期間よりも広くすることを許容し、受電端末3が、測定期間のうち給電期間以外の期間(非給電測定期間)で、基地局1以外の任意の無線通信装置が送信する無線信号を受電し、この無線信号による受電量も、測定対象とする。基地局1または受電端末の周囲では、異なるグループまたは通信方式の複数の無線通信装置が通信している場合もある。これらの無線通信装置が送信する無線信号も利用してキャパシタを充電することで、基地局1以外から送信される無線信号を利用した、充電スケジュールを立てることも可能となる。特に周囲の無線通信装置が周期的または規則的な通信を行っていれば、このような充電スケジュールはより有効なものとなる。
図13は、第3の実施形態における測定処理のシーケンス図である。時間軸の上側が無線LANの動作、下側がBLEの動作を表す。上から順番に、基地局1、受電端末3A、3B、3Cに係る時間軸が表されている。図14は、図13のシーケンスの説明で使用する給電設定テーブルを示している。以下では図13および図14を参照しながら、第3の実施形態に係る測定処理について説明する。
基地局1は、1回目の測定処理で用いる給電パラメータ、および測定期間を決定する。ここでは、給電パラメータの項目として、ウエイト、給電周期および給電期間を決定する。具体的にそれぞれの値は、ウエイト1、給電周期はなし(すなわち1回のみ送信)、給電期間の長さ0.5時間とする。測定期間は、給電時間と同じ0.5時間に設定されたとする。ウエイト、給電周期、給電期間および測定期間は、受電端末3A〜3Cで同じであるとする。また、測定期間は、受電端末3A、3B、3Cとも同じとする。
基地局1は、CTS−to−selfフレーム71を送信後、測定期間等を含む測定指示情報72を、BLEで受電端末3A、3B、3Cに送信する。一例として、CTS−to−selfフレーム71により送信を禁止する期間は、測定期間80−1の終わりまで、または測定期間80−1の開始前までとする。なお、CTS−to−selfフレーム71の送信は必須ではない。
基地局1はウエイト1を用いて、0.5時間、給電信号(無線信号)73を送信する。受電端末3A、3B、3Cは、測定期間80−1において、給電信号73を受信してキャパシタ6を充電し、受電量を測定する。測定された受電量に関する情報は、記憶部38に保存される。
測定の結果、受電端末3Cの受電量は閾値以上であったが、受電端末3A、3Bについては受電量が閾値未満であったとする。この場合、受電端末3Cのみが、受電量情報74を送信する。
基地局1は、受電端末3Cから受電量情報74を受信する。基地局1は、受電端末3Cに対しては、測定処理の再実行は不要と判断する。基地局1は、ウエイト1を用いて0.5時間、給電信号を送信することで、受電端末3Cに、必要な電力量が供給できると判断する。
基地局1は、図14に示すように、給電設定テーブル73aの受電端末3Cに係るエントリに、ウエイト1を表す識別子、給電時間0.5H、給電周期なし、測定時間0.5Hの情報を設定する。給電設定テーブル73aは、基地局1が備える記憶部110に作成される。
基地局1は、受電端末3A、3Bから、受電量情報を受信しなかったため、受電端末3A、3Bに対して、測定処理の再実行を決定する。すなわち、基地局1は、ウエイト1を用いて0.5時間、給電信号を送信しても、受電端末3A、3Bに、必要な電力量を供給できないと判断する。
基地局1は、2回目の測定処理について、給電パラメータ(ウエイト、給電周期、給電期間)と測定期間とを決定する。測定期間は、少なくとも前回よりも長くする。給電期間は、前回と同じでもよいし、前回より長くまたは短くしてもよい。前回は、給電期間は1つのみであったが、ここでは、2つ以上の給電期間を間欠的に配置し、給電期間の周期を設ける。具体的には、給電周期が3.0時間、給電期間の長さが1.0時間、測定期間の長さが5.75時間に設定されたとする。その他の給電パラメータは変更されないものとする(例えばウエイト1を引き続き用いる)。ただし、その他の給電パラメータを変更してもよい。例えば、給電期間およびウエイトの少なくとも一方を変更してもよい。
基地局1は、CTS−to−selfフレーム75を送信後、測定期間等を含む測定指示情報を、BLEで受電端末3A、3Bに送信する。CTS−to−selfフレーム75により送信を禁止する期間は、一例として、最初に送信する給電信号78の送信終了まで、または測定期間の80−2の開始前までとする。これにより、測定期間のうち、少なくとも基地局1による給電が行われていない非給電測定期間において、無線通信端末2の送信を許容する。なお、このCTS−to−selfフレーム75の送信を省略してもよい。
時刻77で測定期間80−2が開始される。給電期間も同時に開始される。給電期間は、測定期間内で、給電周期で繰り返される。測定期間80−2の長さが5.75時間であり、1つの給電期間の長さが1.0時間であり、給電周期が3.0時間のため、測定期間80−2内に、給電期間が2回到来する。時刻77から3.0時間後に、2つめの給電期間が開始され、2つめの給電期間の終了後、時刻82まで、測定期間80−2が続く。基地局1は、1回目の給電期間で給電信号(無線信号)78を送信し、2回目の給電期間で給電信号(無線信号)79を送信する。受電端末3A、3Bは、給電信号78、79を受信し、キャパシタ6の充電を行う。受電端末3A、3Bは、時刻77から時刻82までの間の受電量を測定する。一例として、時刻82におけるキャパシタ6の電圧と、時刻77におけるキャパシタ6の電圧との差分に基づき受電量を測定する。
測定期間80−2内には、基地局1が給電信号を送信していない期間(非給電測定期間)が存在している。受電端末3A、3Bは、非給電測定期間では、基地局1以外の無線通信装置から送信された無線信号を受信し、キャパシタ6の充電を行うことができる。ここで充電された電力量も測定対象となる。基地局1以外の無線通信装置は、無線通信端末2であってもよいし、その他の無線通信装置であってもよい。なお、各給電期間にも、基地局1以外の無線通信装置から無線信号が送信され、受電端末3A、3Bが無線信号を受信してもよい。
なお、受電端末3Cは、通常の給電処理として、給電信号78、79を受信し、キャパシタ6の充電を行ってもよい。また、受電端末3Cは、通常の給電処理として、非給電測定期間で基地局1以外の無線通信装置からの無線信号を受信し、キャパシタ6の充電を行ってもよい。
基地局1は、測定期間80−2の終了後に、受電端末3A、3Bから受電量情報81を受信する。基地局1は給電パラメータ2(ウエイト1、3.0時間の周期、1.0時間の給電時間)で給電信号を送信し、測定期間の長さを5.75時間にすると、受電端末3A、3Bに、必要な電力量が供給できると判断する。基地局1は、図14に示すように、給電設定テーブル73bにおける受電端末3A、3Bに係るエントリに、給電パラメータ2(ウエイト2、給電時間1.0H、給電周期3.0H)を設定し、測定時間として5.75Hを設定する。
もし受電端末3A、3Bの少なくとも一方から測定期間80−2で測定した受電量が閾値未満である場合、基地局1は当該少なくとも一方の受電端末から受電量情報を受信しない。この場合、基地局1は、当該少なくとも一方の受電端末については、測定期間の長さ、給電期間の長さ、給電周期の少なくとも1つなどを変更して、次回の測定処理を行う。
本実施形態のように、2回目以降の測定処理において、測定期間を前回より長く設定するまたは給電期間よりも長く設定することにより、受電端末が基地局1以外の無線通信装置が送信する信号による受電量も測定対象に含め、受電端末の測定受電量を増やすこともできる。
第3の実施形態によれば、本無線通信システムと近接する別の無線通信システムが存在する環境において、効率的な給電をすることができる。都市部の駅とその周辺、繁華街、来客数の多い店舗、イベント会場などでは、スマートフォン、携帯電話、ゲーム機、ノートパソコン、タブレットなど、多くの無線通信端末が同時に利用されるため、これらの無線通信端末から送信される無線信号を充電に利用することで、本実施形態を適用する利点が特に大きい。
(第4の実施形態)
本実施形態は、受電量が閾値以上となった受電端末でも、その後の測定処理で、受電量が前より大きくなる場合には、後に行われた測定処理で用いた給電パラメータを優先的に選択する。以下、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
第4の実施形態に係る無線通信システムの構成は第1の実施形態に係る無線通信システムの構成と同様である。このため、本実施形態の説明においては、適宜第1の実施形態に係る無線通信システムの構成要素を参照する。
図15は、第4の実施形態における測定処理のシーケンス図である。時間軸の上側が無線LANの動作、下側がBLEの動作を表す。上から順番に、基地局1、受電端末3A、3B、3Cに係る時間軸が表されている。無線通信端末2の表記は省略している。
基地局1は、CTS−to−selfフレーム82を無線通信端末2に送信する。フレーム82を受信した無線通信端末2は送信動作を停止する。
基地局1は、測定期間を含む測定指示情報83を、BLEで受電端末3A、3B、3Cに順次送信する。ここでは測定期間は、給電期間と同一とする。また、各受電端末の測定期間は同一とする。
基地局1は、給電期間において給電パラメータ1(ウエイト1)で給電信号(無線信号)84を送信する。受電端末3A、3B、3Cは、給電信号を受信して、キャパシタ6を充電する。受電端末3A、3B、3Cは、それぞれ測定指示情報83で指定された測定期間の間、受電量の測定を行う。測定された受電量に関する情報は、記憶部38に保存される。
受電端末3Cの受電量は閾値以上であったが、受電端末3A、3Bについては受電量が閾値未満であったする。このため、受電端末3Cのみが、受電量情報85を送信(フィードバック)する。なお、各受電端末の閾値は、予め基地局1から指定されていてもよいし、予め仕様またはシステムで決められていてもよい。または、各受電端末の閾値は、測定指示情報83で通知されてもよい。各受電端末の閾値は、各端末で同じでも、異なってもよい。
基地局1は、受電端末3Cから送信された受電量情報85を受信する。これにより、基地局1は、給電パラメータ1で給電信号を送信することで、受電端末3Cに、必要な量の電力が供給されると判断する。
基地局1は、図16に示すように、給電設定テーブル84aの受電端末3Cに係るエントリに、給電パラメータ1を設定する。図では給電パラメータ1として、ウエイト1を表す識別子を設定している。
基地局1は、受電端末3A、3Bから受電量情報を受信しなかったため、給電パラメータ1では、受電端末3A、3Bに、必要な電力量を供給できないと判断する。
基地局1は、受電端末3A〜3Cのうち少なくとも1台から受電量情報を受信しなかった場合は、受電端末3A〜3Cのすべてとも測定処理の再実行を行うことを決定する。
基地局1は、再びCTS−to−selfフレーム86を無線通信端末2に送信する。フレーム86を受信した無線通信端末2は送信動作を停止する。
基地局1は、測定期間を含む測定指示情報87を、BLEで受電端末3A、3B、3Cに送信する。ここでは測定期間は、給電期間と同一の期間とする。また、各受電端末に設定される測定期間は同一とする。
基地局1は、給電パラメータ2(ウエイト2)により給電信号(無線信号)88を送信する。給電パラメータ2は、給電パラメータ1に含まれる設定項目のうち、少なくとも1つ(例えばウエイト)を変更したものである。ここでは、ウエイトを、ウエイト1からウエイト2に変更している。受電端末3A、3B、3Cは給電信号88を受信してキャパシタ6を充電し、受電量の測定を行う。
受電端末3A、3Bの受電量が閾値以上であったため、受電端末3A、3Bは受電量情報89を基地局1に送信(フィードバック)する。
基地局1は受電端末3A、3Bから受電量情報89を受信する。基地局1は給電パラメータ2(ウエイト2)で給電信号を送信することで、受電端末3A、3Bに必要な電力量を供給できると判断する。基地局1は、図16に示すように、給電設定テーブル84bに、受電端末3A、3Bの給電に適用する給電パラメータとして、給電パラメータ2を設定する。図では、給電パラメータ2として、ウエイト2を表す識別子を設定している。
一方、受電端末3Cでは、受電量が閾値以上で、かつ、前回測定した受電量を上回る場合、基地局1に受電量情報を送信する。今回、測定した受電量は前回より大きかったため、受電端末3Cは、基地局1に受電量情報89を送信する。受電量情報89を受信した基地局1は、給電パラメータ2(ウエイト2)の方が、給電パラメータ1に比べ、受電端末3Cに効率的な給電ができると判断する。基地局1は、図16に示すように、給電設定テーブル84bに設定されている受電端末3Cの給電パラメータ1(ウエイト1)を、給電パラメータ2(ウエイト2)に変更する。
もし、受電端末3Cにおける受電量が、前回測定した受電量以下となった場合には、受電端末3Cは基地局1に受電量情報を送信しない。この場合、受電端末3Cに設定される給電パラメータは、給電パラメータ1(ウエイト1)のままとなる。
図15のシーケンス例においては、測定処理を2回実行したが、測定処理を3回以上実行してもよい。
本実施形態によれば、複数の受電端末3A〜3Cのうち少なくとも1台(受電端末3C)から受電量情報が受信され、少なくとも別の1台(受電端末3A、3B)から受電量情報が受信されなかった場合、複数の受電端末3A〜3Cに対して測定指示情報を再度送信し、その後、給電信号(無線信号)を送信することで、受電端末3A〜3Cに対して、再測定処理を行う。これにより、いったん閾値以上の受電量を供給可能な給電パラメータが見つかった受電端末3Cに対しても、より大きい電力量を供給できる給電パラメータを効率的に見つけることができる。
(第5の実施形態)
図17は、本実施形態に係る基地局(アクセスポイント)400の機能ブロック図である。このアクセスポイントは、通信処理部401と、送信部402と、受信部403と、アンテナ42A、42B、42C、42Dと、ネットワーク処理部404と、有線I/F405と、メモリ406とを備えている。アクセスポイント400は、有線I/F405を介して、サーバ407と接続されている。通信処理部401およびネットワーク処理部404の少なくとも前者は、第1の実施形態で説明した制御部と同様な機能を有している。送信部402および受信部403は、第1の実施形態で説明した送信部および受信部と同様な機能を有している。または、送信部402および受信部403が、第1の実施形態の送信部および受信部のアナログ領域の処理に対応し、第1の実施形態の送信部および受信部のデジタル領域の処理は、通信処理部401に対応してもよい。ネットワーク処理部404は、上位処理部と同様な機能を有している。ここで、通信処理部401は、ネットワーク処理部404との間でデータを受け渡しするためのバッファを内部に保有してもよい。このバッファは、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ネットワーク処理部404は、通信処理部401とのデータ交換、メモリ406とのデータ書き込み・読み出し、および、有線I/F405を介したサーバ407との通信を制御する。ネットワーク処理部404は、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理やアプリケーション層の処理を行ってもよい。ネットワーク処理部の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
一例として、通信処理部401は、ベースバンド集積回路に対応し、送信部402と受信部403は、フレームを送受信するRF集積回路に対応する。通信処理部401とネットワーク処理部404とが1つの集積回路(1チップ)で構成されてもよい。送信部402および受信部403のデジタル領域の処理を行う部分とアナログ領域の処理を行う部分とが異なるチップで構成されてもよい。また、通信処理部401が、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理を実行するようにしてもよい。また、アンテナの個数はここでは4つであるが、少なくとも1つのアンテナを備えていればよい。
メモリ406は、サーバ407から受信したデータや、受信部403で受信したデータの保存等を行う。メモリ406は、例えば、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、SSDやHDD、SDカード、eMMC等であってもよい。メモリ406が、基地局400の外部にあってもよい。
有線I/F405は、サーバ407とのデータの送受信を行う。本実施形態では、サーバ407との通信を有線で行っているが、サーバ407との通信を無線で実行するようにしてもよい。
サーバ407は、データの送信を要求するデータ転送要求を受けて、要求されたデータを含む応答を返す通信装置であり、例えばHTTPサーバ(Webサーバ)、FTPサーバ等が想定される。ただし、要求されたデータを返す機能を備えている限り、これに限定されるものではない。PCやスマートフォン等のユーザが操作する通信装置でもよい。また、基地局400と無線で通信してもよい。
基地局400のBSSに属するSTAが、サーバ407に対するデータの転送要求を発行した場合、このデータ転送要求に関するパケットが、基地局400に送信される。基地局400は、アンテナ42A〜42Dを介してこのパケットを受信し、受信部403で物理層の処理等を、通信処理部401でMAC層の処理等を実行する。
ネットワーク処理部404は、通信処理部401から受信したパケットの解析を行う。具体的には、宛先IPアドレス、宛先ポート番号等を確認する。パケットのデータがHTTP GETリクエストのようなデータ転送要求である場合、ネットワーク処理部404は、このデータ転送要求で要求されたデータ(例えば、HTTP GETリクエストで要求されたURLに存在するデータ)が、メモリ406にキャッシュ(記憶)されているかを確認する。メモリ406には、URL(またはその縮小表現、例えばハッシュ値や、代替となる識別子)とデータとを対応づけたテーブルが格納されている。ここで、データがメモリ406にキャッシュされていることを、メモリ406にキャッシュデータが存在すると表現する。
メモリ406にキャッシュデータが存在しない場合、ネットワーク処理部404は、有線I/Fを405介して、サーバ407に対してデータ転送要求を送信する。つまり、ネットワーク処理部404は、STAの代理として、サーバ407へデータ転送要求を送信する。具体的には、ネットワーク処理部404は、HTTPリクエストを生成し、TCP/IPヘッダの付加などのプロトコル処理を行い、パケットを有線I/F405へ渡す。有線I/F405は、受け取ったパケットをサーバ407へ送信する。
有線I/F405は、データ転送要求に対する応答であるパケットをサーバ407から受信する。ネットワーク処理部404は、有線I/F405を介して受信したパケットのIPヘッダから、STA宛のパケットであることを把握し、通信処理部401へパケットを渡す。通信処理部401はこのパケットに対するMAC層の処理等を、送信部402は物理層の処理等を実行し、STA宛のパケットをアンテナ42A〜42Dから送信する。ここで、ネットワーク処理部404は、サーバ407から受信したデータを、URL(またはその縮小表現)と対応づけて、メモリ406にキャッシュデータとして保存する。
メモリ406にキャッシュデータが存在する場合、ネットワーク処理部404は、データ転送要求で要求されたデータをメモリ406から読み出して、このデータを通信処理部401へ送信する。具体的には、メモリ406から読み出したデータにHTTPヘッダ等を付加して、TCP/IPヘッダの付加等のプロトコル処理を行い、通信処理部401へパケットを送信する。このとき、一例として、パケットの送信元IPアドレスは、サーバと同じIPアドレスに設定し、送信元ポート番号もサーバと同じポート番号(通信端末が送信するパケットの宛先ポート番号)に設定する。したがって、STAから見れば、あたかもサーバ407と通信をしているかのように見える。通信処理部401はこのパケットに対するMAC層の処理等を、送信部402は物理層の処理等を実行し、STA宛のパケットをアンテナ42A〜42Dから送信する。
このような動作により、頻繁にアクセスされるデータは、メモリ406に保存されたキャッシュデータに基づいて応答することになり、サーバ407と基地局400間のトラフィックを削減できる。なお、ネットワーク処理部404の動作は、本実施形態の動作に限定されるものではない。STAの代わりにサーバ407からデータを取得して、メモリ406にデータをキャッシュし、同一のデータに対するデータ転送要求に対しては、メモリ406のキャッシュデータから応答するような一般的なキャッシュプロキシであれば、別の動作でも問題はない。
本実施形態の基地局(アクセスポイント)を、上述したいずれかの実施形態の基地局として適用することが可能である。上述したいずれかの実施形態で使ったフレーム、データまたはパケットの送信を、メモリ406に保存されたキャッシュデータを用いて実行してもよい。また、上述したいずれかの実施形態の基地局が受信したフレーム、データまたはパケットで得られた情報を、メモリ406にキャッシュしてもよい。上述したいずれかの実施形態において、アクセスポイントが送信するフレームは、キャッシュされたデータまたは当該データに基づく情報を含んでもよい。データに基づく情報は、例えばデータのサイズに関する情報、データの送信に必要なパケットのサイズに関する情報でもよい。またデータの送信に必要な変調方式等の情報でもよい。また、端末宛のデータの有無の情報を含んでもよい。
本実施形態の基地局(アクセスポイント)を、上述したいずれかの実施形態の基地局として適用することが可能である。本実施形態では、キャッシュ機能を備えた基地局について説明を行ったが、図17と同じブロック構成で、キャッシュ機能を備えた端末(STA)を実現することもできる。この場合、有線I/F405を省略してもよい。上述したいずれかの実施形態における端末によるフレーム、データまたはパケットの送信を、メモリ406に保存されたキャッシュデータを用いて実行してもよい。また、上述したいずれかの実施形態の端末が受信したフレーム、データまたはパケットで得られた情報を、メモリ406にキャッシュしてもよい。上述したいずれかの実施形態において、端末が送信するフレームは、キャッシュされたデータまたは当該データに基づく情報を含んでもよい。データに基づく情報は、例えばデータのサイズに関する情報、データの送信に必要なパケットのサイズに関する情報でもよい。またデータの送信に必要な変調方式等の情報でもよい。また、端末宛のデータの有無の情報を含んでもよい。
(第6の実施形態)
図18は、端末(非アクセスポイントの端末)またはアクセスポイントの全体構成例を示したものである。この構成例は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。端末またはアクセスポイントは、1つまたは複数のアンテナ1〜n(nは1以上の整数)と、無線LANモジュール148と、ホストシステム149を備える。無線LANモジュール148は、前述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置に対応する。無線LANモジュール148は、ホスト・インターフェースを備え、ホスト・インターフェースで、ホストシステム149と接続される。接続ケーブルを介してホストシステム149と接続される他、ホストシステム149と直接接続されてもよい。また、無線LANモジュール148が基板にはんだ等で実装され、基板の配線を介してホストシステム149と接続される構成も可能である。ホストシステム149は、任意の通信プロトコルに従って、無線LANモジュール148およびアンテナ1〜nを用いて、外部の装置と通信を行う。通信プロトコルは、TCP/IPと、それより上位の層のプロトコルとを含んでもよい。または、TCP/IPは無線LANモジュール148に搭載し、ホストシステム149は、それより上位層のプロトコルのみを実行してもよい。この場合、ホストシステム149の構成を簡単化できる。本端末は、例えば、移動体端末、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置、自動車等でもよい。
無線LANモジュール148(または無線通信装置)は、IEEE802.11に加え、LTE(Long Term Evolution)またはLTE−Advanced(standards for mobile phones)のような他の無線通信規格の機能を備えていてもよい。
図19は、アクセスポイント(基地局)、無線LAN端末およびBLE端末のいずれかが備える無線通信装置のハードウェア構成例を示す。無線LANとBLEの両方の機能を備える場合は、図示の構成を各機能に対応して備えればよい。無線LANとBLEとの機能が1チップに搭載されてもよいし、別々のチップとして構成されてもよい。なお、図示の構成のすべてを備える必要はなく、一部の構成が省略または置換されてもよいし、別の要素が追加されてもよい。
この構成例では、アンテナは1本のみであるが、2本以上のアンテナを備えていてもよい。この場合、各アンテナに対応して、送信系統(216、222〜225)、受信系統(217、232〜235)、PLL242、水晶発振器(基準信号源)243およびスイッチ245のセットが複数配置され、各セットがそれぞれ制御回路212に接続されてもよい。PLL242または水晶発振器243またはこれらの両方は、本実施形態に係る発振器に対応する。
無線LANモジュール(無線通信装置)は、ベースバンドIC(Integrated
Circuit)211と、RF(Radio Frequency)IC221と、バラン225と、スイッチ245と、アンテナ247とを備える。
ベースバンドIC211は、ベースバンド回路(制御回路)212、メモリ213、ホスト・インターフェース214、CPU215、DAC(Digital to Analog Conveter)216、およびADC(Analog to Digital Converter)217を備える。
ベースバンドIC211とRF IC221は同じ基板上に形成されてもよい。また、ベースバンドIC211とRF IC221は1チップで構成されてもよい。DAC216およびADC217の両方またはいずれか一方が、RF IC221に配置されてもよいし、別のICに配置されてもよい。またメモリ213およびCPU215の両方またはいずれか一方が、ベースバンドICとは別のICに配置されてもよい。
メモリ213は、ホストシステムとの間で受け渡しするデータを格納する。またメモリ213は、端末またはアクセスポイントに通知する情報、または端末またはアクセスポイントから通知された情報、またはこれらの両方を格納する。また、メモリ213は、CPU215の実行に必要なプログラムを記憶し、CPU215がプログラムを実行する際の作業領域として利用されてもよい。メモリ213はSRAM、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ホスト・インターフェース214は、ホストシステムと接続するためのインターフェースである。インターフェースは、UART、SPI、SDIO、USB、PCI Expressなど何でも良い。
CPU215は、プログラムを実行することによりベースバンド回路212を制御するプロセッサである。ベースバンド回路212は、主にMAC層の処理および物理層の処理を行う。ベースバンド回路212、CPU215またはこれらの両方は、通信を制御する通信制御装置、または通信を制御する制御部に対応する。
ベースバンド回路212およびCPU215の少なくとも一方は、クロックを生成するクロック生成部を含み、当該クロック生成部で生成するクロックにより、内部時間を管理してもよい。
ベースバンド回路212は、送信するフレームに、物理層の処理として、物理ヘッダの付加、符号化、暗号化、変調処理(MIMO変調を含んでもよい)など行い、例えば2種類のデジタルベースバンド信号(以下、デジタルI信号とデジタルQ信号)を生成する。
DAC216は、ベースバンド回路212から入力される信号をDA変換する。より詳細には、DAC216はデジタルI信号をアナログのI信号に変換し、デジタルQ信号をアナログのQ信号に変換する。なお、直交変調せずに一系統の信号のままで送信する場合もありうる。複数のアンテナを備え、一系統または複数系統の送信信号をアンテナの数だけ振り分けて送信する場合には、アンテナの数に応じた数のDAC等を設けてもよい。
RF IC221は、一例としてRFアナログICあるいは高周波IC、あるいはこれらの両方である。RF IC221は、フィルタ222、ミキサ223、プリアンプ(PA)224、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)242、低雑音増幅器(LNA)、バラン235、ミキサ233、およびフィルタ232を備える。これらの要素のいくつかが、ベースバンドIC211または別のIC上に配置されてもよい。フィルタ222、232は、帯域通過フィルタでも、低域通過フィルタでもよい。
フィルタ222は、DAC216から入力されるアナログI信号およびアナログQ信号のそれぞれから所望帯域の信号を抽出する。PLL242は、水晶発振器243から入力される発振信号を用い、発振信号を分周または逓倍またはこれらの両方を行うことで、入力信号の位相に同期した、一定周波数の信号を生成する。なお、PLL242は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を備え、水晶発振器243から入力される発振信号に基づき、VCOを利用してフィードバック制御を行うことで、当該一定周波数の信号を得る。生成した一定周波数の信号は、ミキサ223およびミキサ233に入力される。PLL242は、一定周波数の信号を生成する発振器の一例に相当する。
ミキサ223は、フィルタ222を通過したアナログI信号およびアナログQ信号を、PLL242から供給される一定周波数の信号を利用して、無線周波数にアップコンバートする。プリアンプ(PA)は、ミキサ223で生成された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号を、所望の出力電力まで増幅する。バラン225は、平衡信号(差動信号)を不平衡信号(シングルエンド信号)に変換するための変換器である。RF IC221では平衡信号が扱われるが、RF IC221の出力からアンテナ247までは不平衡信号が扱われるため、バラン225で、これらの信号変換を行う。
スイッチ245は、送信時は、送信側のバラン225に接続され、受信時は、受信側の低雑音増幅器(LNA)234またはRF IC221に接続される。スイッチ245の制御はベースバンドIC211またはRF IC221により行われてもよいし、スイッチ245を制御する別の回路が存在し、当該回路からスイッチ245の制御を行ってもよい。
プリアンプ224で増幅された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号は、バラン225で平衡−不平衡変換された後、アンテナ247から空間に電波として放射される。
アンテナ247は、チップアンテナでもよいし、プリント基板上に配線により形成したアンテナでもよいし、線状の導体素子を利用して形成したアンテナでもよい。
RF IC221におけるLNA234は、アンテナ247からスイッチ245を介して受信した信号を、雑音を低く抑えたまま、復調可能なレベルまで増幅する。バラン235は、低雑音増幅器(LNA)234で増幅された信号を、不平衡−平衡変換する。なお、バラン135とLNA234の順番を逆にした構成でもよい。ミキサ233は、バラン235で平衡信号に変換された受信信号を、PLL242から入力される一定周波数の信号を用いてベースバンドにダウンコンバートする。より詳細には、ミキサ233は、PLL242から入力される一定周波数の信号に基づき、互いに90°位相のずれた搬送波を生成する手段を有し、バラン235で変換された受信信号を、互いに90°位相のずれた搬送波により直交復調して、受信信号と同位相のI(In−phase)信号と、これより90°位相が遅れたQ(Quad−phase)信号とを生成する。フィルタ232は、これらI信号とQ信号から所望周波数成分の信号を抽出する。フィルタ232で抽出されたI信号およびQ信号は、ゲインが調整された後に、RF IC221から出力される。
ベースバンドIC211におけるADC217は、RF IC221からの入力信号をAD変換する。より詳細には、ADC217はI信号をデジタルI信号に変換し、Q信号をデジタルQ信号に変換する。なお、直交復調せずに一系統の信号だけを受信する場合もあり得る。
複数のアンテナが設けられる場合には、アンテナの数に応じた数のADCを設けてもよい。ベースバンド回路212は、デジタルI信号およびデジタルQ信号に基づき、復調処理、誤り訂正符号処理、物理ヘッダの処理など、物理層の処理(MIMO復調を含んでもよい)等を行い、フレームを得る。ベースバンド回路212は、フレームに対してMAC層の処理を行う。なお、ベースバンド回路212は、TCP/IPを実装している場合は、TCP/IPの処理を行う構成も可能である。
アンテナ247は、フェーズドアレイアンテナでもよいし、指向性可変アンテナでもよい。
(第7の実施形態)
図20は、第7の実施形態に係る端末(STA)500の機能ブロック図である。このSTA500は、通信処理部501と、送信部502と、受信部503と、アンテナ51Aと、アプリケーションプロセッサ504と、メモリ505と、第2無線通信モジュール506とを備えている。基地局(AP)が同様の構成を有しても良い。
通信処理部501は、第1の実施形態で説明した制御部と同様な機能を有している。送信部502および受信部503は、第1の実施形態で説明した送信部および受信部と同様な機能を有している。または、送信部502および受信部503が、第1の実施形態で説明した送信部および受信部のアナログ領域の処理に対応し、第1の実施形態で説明した送信部および受信部のデジタル領域の処理は、通信処理部501に対応してもよい。ここで、通信処理部501は、アプリケーションプロセッサ504との間でデータを受け渡しするためのバッファを内部に保有してもよい。このバッファは、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
アプリケーションプロセッサ504は、通信処理部501を介した無線通信、メモリ505とのデータ書き込み・読み出し、および、第2無線通信モジュール506を介した無線通信を制御する。また、アプリケーションプロセッサ504は、Webブラウジングや、映像や音楽などのマルチメディア処理など、STAにおける各種処理も実行する。アプリケーションプロセッサ504の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
メモリ505は、受信部503や第2無線通信モジュール506で受信したデータや、アプリケーションプロセッサ504で処理したデータの保存等を行う。メモリ505は、例えば、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、SSDやHDD、SDカード、eMMC等であってもよい。メモリ505が、アクセスポイント500の外部にあってもよい。
第2無線通信モジュール506は、一例として、図18または図19で示した無線LANモジュールと同様な構成を有する。第2無線通信モジュール506は、通信処理部501、送信部502、受信部503で実現される無線通信とは異なる方法で無線通信を実行する。例えば、通信処理部501、送信部502、受信部503がIEEE802.11規格に沿った無線通信である場合、第2無線通信モジュール506は、Bluetooth(登録商標)、LTE、Wireless HDなど、他の無線通信規格に沿った無線通信を実行してもよい。また、通信処理部501、送信部502、受信部503が2.4GHz/5GHzで無線通信を実行し、第2無線通信モジュール506が60GHzで無線通信を実行するようにしてもよい。
なお、この例では、アンテナの個数はここでは1つであり、送信部502・受信部503と、第2無線通信モジュール506とでアンテナを共有している。ここで、アンテナ51Aの接続先を制御するスイッチを設けることで、アンテナを共有してもよい。また、複数のアンテナを備え、送信部502・受信部503と、第2無線通信モジュール506とで別のアンテナを使用するようにしてもよい。
一例として、通信処理部501は、ベースバンド集積回路に対応し、送信部502と受信部503は、フレームを送受信するRF集積回路に対応する。ここで、通信処理部501とアプリケーションプロセッサ504とが1つの集積回路(1チップ)で構成されてもよい。さらに、第2無線通信モジュール506の一部とアプリケーションプロセッサ504とが1つの集積回路(1チップ)で構成されてもよい。
アプリケーションプロセッサは、通信処理部501を介した無線通信および第2無線通信モジュール506を介した無線通信の制御を行う。
(第8の実施形態)
図21(A)および図21(B)は、本実施形態に係る無線端末の斜視図である。図21(A)の無線端末はノートPC301であり、図21(B)の無線端末は移動体端末321である。ノートPC301および移動体端末321は、それぞれ無線通信装置305、315を搭載している。無線通信装置305、315として、これまで説明してきた無線端末に搭載されていた無線通信装置、またはアクセスポイントに搭載されていた無線通信装置、またはこれらの両方を用いることができる。無線通信装置を搭載する無線端末は、ノートPCや移動体端末に限定されない。例えば、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置、自動車等にも搭載可能である。
また、無線端末またはアクセスポイント、またはこれらの両方に搭載されていた無線通信装置は、メモリーカードにも搭載可能である。当該無線通信装置をメモリーカードに搭載した例を図22に示す。メモリーカード331は、無線通信装置355と、メモリーカード本体332とを含む。メモリーカード331は、外部の装置(無線端末またはアクセスポイント、またはこれらの両方等)との無線通信のために無線通信装置335を利用する。なお、図22では、メモリーカード331内の他の要素(例えばメモリ等)の記載は省略している。
(第9の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バス、プロセッサ部、及び外部インターフェース部を備える。プロセッサ部及び外部インターフェース部は、バスを介して外部メモリ(バッファ)と接続される。プロセッサ部ではファームウエアが動作する。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。ファームウエアが動作するプロセッサ部は、本実施形態に係る制御部または制御部の処理を行うプロセッサであってもよいし、当該処理の機能拡張または変更に係る処理を行う別のプロセッサであってもよい。ファームウエアが動作するプロセッサ部を、本実施形態に係るアクセスポイントあるいは無線端末あるいはこれらの両方が備えてもよい。または当該プロセッサ部を、アクセスポイントに搭載される無線通信装置内の集積回路、または無線端末に搭載される無線通信装置内の集積回路が備えてもよい。
(第10の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、クロック生成部を備える。クロック生成部は、クロックを生成して出力端子より無線通信装置の外部にクロックを出力する。このように、無線通信装置内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
(第11の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置)の構成に加えて、電源部、電源制御部、及び無線電力給電部を含む。電源制御部は、電源部と無線電力給電部とに接続され、無線通信装置に供給する電源を選択する制御を行う。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
(第12の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを含む。SIMカードは、無線通信装置における送信部または受信部または制御部またはこれらのうちの複数と接続される。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
(第13の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を含む。動画像圧縮/伸長部は、バスと接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
(第14の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、LED部を含む。LED部は、送信部または受信部または制御部またはこれらのうちの複数と接続される。このように、LED部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第15の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バイブレータ部を含む。バイブレータ部は、送信部または受信部または制御部またはこれらのうちの複数と接続される。このように、バイブレータ部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第16の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、ディスプレイを含む。ディスプレイは、図示しないバスを介して、無線通信装置の制御部に接続されてもよい。このようにディスプレイを備える構成とし、無線通信装置の動作状態をディスプレイに表示することで、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第17の実施形態)
本実施形態では、[1]無線通信システムにおけるフレーム種別、[2]無線通信装置間の接続切断の手法、[3]無線LANシステムのアクセス方式、[4]無線LANのフレーム間隔について説明する。
[1]通信システムにおけるフレーム種別
一般的に無線通信システムにおける無線アクセスプロトコル上で扱うフレームは、前述したように、大別してデータ(data)フレーム、管理(management)フレーム、制御(control)フレームの3種類に分けられる。これらの種別は、通常、フレーム間で共通に設けられるヘッダ部で示される。フレーム種別の表示方法としては、1つのフィールドで3種類を区別できるようにしてあってもよいし、2つのフィールドの組み合わせで区別できるようにしてあってもよい。IEEE802.11規格では、フレーム種別の識別は、MACフレームのフレームヘッダ部にあるFrame Controlフィールドの中のType、Subtypeという2つのフィールドで行う。データフレームか、管理フレームか、制御フレームかの大別はTypeフィールドで行われ、大別されたフレームの中での細かい種別、例えば管理フレームの中のBeaconフレームといった識別はSubtypeフィールドで行われる。
管理フレームは、他の無線通信装置との間の物理的な通信リンクの管理に用いるフレームである。例えば、他の無線通信装置との間の通信設定を行うために用いられるフレームや通信リンクをリリースする(つまり接続を切断する)ためのフレーム、無線通信装置でのパワーセーブ動作に係るフレームがある。
データフレームは、他の無線通信装置と物理的な通信リンクが確立した上で、無線通信装置の内部で生成されたデータを他の無線通信装置に送信するフレームである。データは本実施形態の上位層で生成され、例えばユーザの操作によって生成される。
制御フレームは、データフレームを他の無線通信装置との間で送受(交換)する際の制御に用いられるフレームである。無線通信装置がデータフレームや管理フレームを受信した場合にその送達確認のために送信される応答フレームは、制御フレームに属する。応答フレームは、例えばACKフレームやBlockACKフレームである。またRTSフレームやCTSフレームも制御フレームである。
これら3種類のフレームは、物理層で必要に応じた処理を経て物理パケットとしてアンテナを経由して送出される。なお、IEEE802.11規格(前述のIEEE Std
802.11ac−2013などの拡張規格を含む)では接続確立の手順の1つとしてアソシエーション(association)プロセスがあるが、その中で使われるAssociation RequestフレームとAssociation Responseフレームが管理フレームであり、Association RequestフレームやAssociation Responseフレームはユニキャストの管理フレームであることから、受信側無線通信端末に応答フレームであるACKフレームの送信を要求し、このACKフレームは上述のように制御フレームである。
[2]無線通信装置間の接続切断の手法
接続の切断(リリース)には、明示的な手法と暗示的な手法とがある。明示的な手法としては、接続を確立している無線通信装置間のいずれか一方が切断のためのフレームを送信する。IEEE802.11規格ではDeauthenticationフレームがこれに当たり、管理フレームに分類される。通常、接続を切断するフレームを送信する側の無線通信装置では当該フレームを送信した時点で、接続を切断するフレームを受信する側の無線通信装置では当該フレームを受信した時点で、接続の切断と判定する。その後、非基地局の無線通信端末であれば通信フェーズでの初期状態、例えば接続するBSS探索する状態に戻る。無線通信基地局がある無線通信端末との間の接続を切断した場合には、例えば無線通信基地局が自BSSに加入する無線通信端末を管理する接続管理テーブルを持っているならば当該接続管理テーブルから当該無線通信端末に係る情報を削除する。例えば、無線通信基地局が自BSSに加入する各無線通信端末に接続をアソシエーションプロセスで許可した段階で、AIDを割り当てる場合には、当該接続を切断した無線通信端末のAIDに関連づけられた保持情報を削除し、当該AIDに関してはリリースして他の新規加入する無線通信端末に割り当てられるようにしてもよい。
一方、暗示的な手法としては、接続を確立した接続相手の無線通信装置から一定期間フレーム送信(データフレーム及び管理フレームの送信、あるいは自装置が送信したフレームへの応答フレームの送信)を検知しなかった場合に、接続状態の切断の判定を行う。このような手法があるのは、上述のように接続の切断を判定するような状況では、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるなど物理的な無線リンクが確保できない状態が考えられるからである。すなわち、接続を切断するフレームの受信を期待できないからである。
暗示的な方法で接続の切断を判定する具体例としては、タイマーを使用する。例えば、送達確認応答フレームを要求するデータフレームを送信する際、当該フレームの再送期間を制限する第1のタイマー(例えばデータフレーム用の再送タイマー)を起動し、第1のタイマーが切れるまで(つまり所望の再送期間が経過するまで)当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行う。当該フレームへの送達確認応答フレームを受信すると第1のタイマーは止められる。
一方、送達確認応答フレームを受信せず第1のタイマーが切れると、例えば接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマー(例えば管理フレーム用の再送タイマー)を起動する。第1のタイマーと同様、第2のタイマーでも、第2のタイマーが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマーが切れると接続が切断されたと判定する。接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。
あるいは、接続相手の無線通信装置からフレームを受信すると第3のタイマーを起動し、新たに接続相手の無線通信装置からフレームを受信するたびに第3のタイマーを止め、再び初期値から起動する。第3のタイマーが切れると前述と同様に接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマー(例えば管理フレーム用の再送タイマー)を起動する。この場合も、第2のタイマーが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマーが切れると接続が切断されたと判定する。この場合も、接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。後者の、接続相手の無線通信装置がまだ存在するかを確認するための管理フレームは、前者の場合の管理フレームとは異なるものであってもよい。また後者の場合の管理フレームの再送を制限するためのタイマーは、ここでは第2のタイマーとして前者の場合と同じものを用いたが、異なるタイマーを用いるようにしてもよい。
[3]無線LANシステムのアクセス方式
例えば、複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した無線LANシステムがある。IEEE802.11無線LANではCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)をアクセス方式の基本としている。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了から固定時間を置いて送信を行う方式では、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置で同時に送信を行うことになり、その結果、無線信号が衝突してフレーム送信に失敗する。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了からランダム時間待つことで、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置での送信が確率的に分散することになる。よって、ランダム時間の中で最も早い時間を引いた無線通信装置が1つなら無線通信装置のフレーム送信は成功し、フレームの衝突を防ぐことができる。ランダム値に基づき送信権の獲得が複数の無線通信装置間で公平になることから、Carrier Avoidanceを採用した方式は、複数の無線通信装置間で無線媒体を共有するために適した方式であるということができる。
[4]無線LANのフレーム間隔
IEEE802.11無線LANのフレーム間隔について説明する。IEEE802.11無線LANで用いられるフレーム間隔は、distributed coordination function interframe space(DIFS)、arbitration interframe space(AIFS)、point coordination function interframe space(PIFS)、short interframe space(SIFS)、extended interframe space(EIFS)、reduced interframe space(RIFS)などがある。
フレーム間隔の定義は、IEEE802.11無線LANでは送信前にキャリアセンスアイドルを確認して開けるべき連続期間として定義されており、厳密な前のフレームからの期間は議論しない。従ってここでのIEEE802.11無線LANシステムでの説明においてはその定義を踏襲する。IEEE802.11無線LANでは、CSMA/CAに基づくランダムアクセスの際に待つ時間を固定時間とランダム時間との和としており、固定時間を明確にするため、このような定義になっているといえる。
DIFSとAIFSとは、CSMA/CAに基づき他の無線通信装置と競合するコンテンション期間にフレーム交換開始を試みるときに用いるフレーム間隔である。DIFSは、トラヒック種別による優先権の区別がないとき、AIFSはトラヒック種別(Traffic Identifier:TID)による優先権が設けられている場合に用いる。
DIFSとAIFSとで係る動作としては類似しているため、以降では主にAIFSを用いて説明する。IEEE802.11無線LANでは、MAC層でフレーム交換の開始などを含むアクセス制御を行う。さらに、上位層からデータを渡される際にQoS(Quality of Service)対応する場合には、データとともにトラヒック種別が通知され、トラヒック種別に基づいてデータはアクセス時の優先度のクラス分けがされる。このアクセス時のクラスをアクセスカテゴリ(Access Category:AC)と呼ぶ。従って、アクセスカテゴリごとにAIFSの値が設けられることになる。
PIFSは、競合する他の無線通信装置よりも優先権を持つアクセスができるようにするためのフレーム間隔であり、DIFS及びAIFSのいずれの値よりも期間が短い。SIFSは、応答系の制御フレームの送信時あるいは一旦アクセス権を獲得した後にバーストでフレーム交換を継続する場合に用いることができるフレーム間隔である。EIFSはフレーム受信に失敗した(受信したフレームがエラーであると判定した)場合に起動されるフレーム間隔である。
RIFSは一旦アクセス権を獲得した後にバーストで同一無線通信装置に複数のフレームを連続して送信する場合に用いることができるフレーム間隔であり、RIFSを用いている間は送信相手の無線通信装置からの応答フレームを要求しない。
ここでIEEE802.11無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を図23に示す。
ある無線通信装置においてデータフレーム(W_DATA1)の送信要求が発生した際に、キャリアセンスの結果、媒体がビジーである(busy medium)と認識する場合を想定する。この場合、キャリアセンスがアイドルになった時点から固定時間のAIFSを空け、その後ランダム時間(random backoff)空いたところで、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。なお、キャリアセンスの結果、媒体がビジーではない、つまり媒体がアイドル(idle)であると認識した場合には、キャリアセンスを開始した時点から固定時間のAIFSを空けて、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。
ランダム時間は0から整数で与えられるコンテンションウィンドウ(Contention Window:CW)の間の一様分布から導かれる擬似ランダム整数にスロット時間をかけたものである。ここで、CWにスロット時間をかけたものをCW時間幅と呼ぶ。CWの初期値はCWminで与えられ、再送するたびにCWの値はCWmaxになるまで増やされる。CWminとCWmaxとの両方とも、AIFSと同様アクセスカテゴリごとの値を持つ。W_DATA1の送信先の無線通信装置では、データフレームの受信に成功し、かつ当該データフレームが応答フレームの送信を要求するフレームであるとそのデータフレームを内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS時間後に応答フレーム(W_ACK1)を送信する。W_DATA1を送信した無線通信装置は、W_ACK1を受信すると送信バースト時間制限内であればまたW_ACK1を内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS時間後に次のフレーム(例えばW_DATA2)を送信することができる。
AIFS、DIFS、PIFS及びEIFSは、SIFSとスロット時間との関数になるが、SIFSとスロット時間とは物理層ごとに規定されている。また、AIFS、CWmin及びCWmaxなどアクセスカテゴリごとに値が設けられるパラメータは、通信グループ(IEEE802.11無線LANではBasic Service Set(BSS))ごとに設定可能であるが、デフォルト値が定められている。
例えば、802.11acの規格策定では、SIFSは16μs、スロット時間は9μsであるとして、それによってPIFSは25μs、DIFSは34μs、AIFSにおいてアクセスカテゴリがBACKGROUND(AC_BK)のフレーム間隔はデフォルト値が79μs、BEST EFFORT(AC_BE)のフレーム間隔はデフォルト値が43μs、VIDEO(AC_VI)とVOICE(AC_VO)のフレーム間隔はデフォルト値が34μs、CWminとCWmaxとのデフォルト値は、各々AC_BKとAC_BEとでは31と1023、AC_VIでは15と31、AC_VOでは7と15になるとする。なお、EIFSは、基本的にはSIFSとDIFSと最も低速な必須の物理レートで送信する場合の応答フレームの時間長の和である。なお効率的なEIFSの取り方ができる無線通信装置では、EIFSを起動した物理パケットへの応答フレームを運ぶ物理パケットの占有時間長を推定し、SIFSとDIFSとその推定時間の和とすることもできる。
なお、各実施形態で記載されているフレームは、Null Data Packetなど、IEEE802.11規格または準拠する規格で、パケットと呼ばれるものを指してもよい。
本実施形態で用いられる用語は、広く解釈されるべきである。例えば用語“プロセッサ”は、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシンなどを包含してもよい。状況によって、“プロセッサ”は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路 (PLD)などを指してもよい。“プロセッサ”は、複数のマイクロプロセッサのような処理装置の組み合わせ、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサを指してもよい。
別の例として、用語“メモリ”は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を包含してもよい。“メモリ”は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、磁気または光学データストレージを指してもよく、これらはプロセッサによって読み出し可能である。プロセッサがメモリに対して情報を読み出しまたは書き込みまたはこれらの両方を行うならば、メモリはプロセッサと電気的に通信すると言うことができる。メモリは、プロセッサに統合されてもよく、この場合も、メモリは、プロセッサと電気的に通信していると言うことができる。また、回路は、単一チップに配置された複数の回路でもよいし、複数のチップまたは複数の装置に分散して配置された1つ以上の回路でもよい。
また本明細書において “a,bおよび(または)cの少なくとも1つ”は、a,b,c,a−b, a−c,b−c,a−b−cの組み合わせだけでなく、a−a,a−b−b,a−a−b−b−c−cなどの同じ要素の複数の組み合わせも含む表現である。また、a−b−c−dの組み合わせのように、a,b,c以外の要素を含む構成もカバーする表現である。
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。