JP6891630B2 - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2には、フラックス中に金属弗化物を添加し、酸素量を低減し、併せてNi添加で靭性を向上させるフラックス入りワイヤが開示されている。
特許文献3には、フラックス中のスラグ成分をTi酸化物系から金属弗化物系に置き換えることで溶接金属酸素量を低減させ、弗化物と酸化物の比を規定させて低温靭性を向上させるフラックス入りワイヤが開示されている。
特許文献4には、強度780MPa以上の溶接金属において−40℃の靭性を確保するためにフラックスをTi酸化物系から金属弗化物系に置き換え、Mo添加量を規定している。
特許文献5には弗化物及び酸化物の含有量の比が所定範囲内とされ、さらにCeqの含有量が所定範囲内に制限されたフラックス入りワイヤを用いたパルスガスシールドアーク溶接方法が開示されている。特許文献5に記載のフラックス入りワイヤは多量のCaF2を含有しているため、100%CO2シールドガス溶接時には、多量のスパッタを発生することにより、溶接施工効率は著しく低下する。
非特許文献1には、Niを2%程度含有したフラックス入りワイヤを使用することで、−90℃での吸収エネルギーが100J程度となることが開示されている。
しかし、これら文献に開示されているフラックス入りワイヤを用いて溶接して得られた溶接金属に対して、−100℃で低温靭性を評価した場合、要求される水準に達しないことがあった。
(1)本発明の一態様に係るガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮と、前記鋼製外皮の内部に充填されたフラックスとを備え、前記フラックスが、前記フラックス入りワイヤの全質量に対するF換算値の合計が0.21%以上である、CaF2、MgF2、Na3AlF6、LiF、NaF、K2ZrF6、BaF2、及び、K2SiF6からなる群から選択される1種又は2種以上の弗化物と、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量の合計値が0.30%以上3.50%未満である、Fe酸化物、Ba酸化物、Na酸化物、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Mg酸化物、Al酸化物、Mn酸化物、及びK酸化物からなる群から選択される1種又は2種以上の酸化物と、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量の合計値が0〜3.50%である、MgCO3、Na2CO3、Li2CO3、CaCO3、K2CO3、BaCO3、FeCO3及びMnCO3からなる群から選択される1種又は2種以上の炭酸塩と、を含み、前記フラックス中のCaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0%以上0.20%未満であり、前記フラックス中の鉄粉の含有量が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0%以上10.0%未満であり、式(A)を用いて算出されるX値が前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対して5.00%以下であり、前記CaF2の含有量が前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0.50%未満であり、前記Ti酸化物の含有量が前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0.10%以上2.50%未満であり、前記MgCO3、前記Na2CO3、及び前記Li2CO3の含有量の合計値が前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0〜3.00%であり、さらに、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く化学成分が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、C:0.001%以上0.080%以下、Si:0.001%以上0.800%以下、Mn:0.10%以上1.50%以下、Al:0.005%以上0.500%以下、Ni:3.0%以上4.9%以下、Ti:0.005%以上0.100%以下、Mg:0.20%以上0.80%以下、P:0.030%以下、及び、S:0.030%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる。
X=[NaF]+[MgF2]+[Na3AlF6]+1.50×([K2SiF6]+[K2ZrF6]+[LiF]+[BaF2])+3.50×([CaF2])・・・(A)
なお、前記式(A)の[]付化学式は、それぞれの化学式に係る前記弗化物の前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量を表し、含有されない弗化物の含有量は0とみなす。
(2)上記(1)に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、前記炭酸塩を、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、合計で2.00%以下含有してもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、更に、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、B:0%以上0.0100%以下、Cu:0.5%以下、及びREM:0.050%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、下記式(B)で示される焼入れ性指標αが0.25%以上0.51%以下であってもよい。
α=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+([Ni]+[Cu])/15・・・(B)
なお、式(B)の[]付元素は、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分に含まれる元素の前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量を表す。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、下記式(C)で示される高温割れ感受性指標βが3.1以下であってもよい。
β=[Si]/6+[Mn]/1.5+[Ni]/3+200×[B]・・・(C)
なお、式(C)の[]付元素は、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分に含まれる元素の前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量を表す。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、下記式(D)で示される伸び指標γが1.8以下であってもよい。
γ=[Mn]+[Mg]・・・(D)
なお、式(D)の[]付元素は、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分に含まれる元素の前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量を表す。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記鋼製外皮がスリット状の隙間の無い形状であってもよい。
(8)上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記鋼製外皮がスリット状の隙間を有する形状であってもよい。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮の表面にパーフルオロポリエーテル油を備えてもよい。
(10)本発明の別の態様に係る溶接継手の製造方法は、上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて鋼板を溶接する工程を備える。
(11)上記(10)に記載の溶接継手の製造方法は、前記溶接する工程の、仮付け溶接において用いられるシールドガスが、100%CO2ガスであり、前記溶接する工程の、本溶接において用いられるシールドガスが、Arと2.5〜30.0体積%のCO2との混合ガスであってもよい。
本発明者らは、溶接金属の低温靭性が向上するフラックス入りワイヤについて検討した。低温環境下で使用される鋼材、特に、Ni系低温用鋼の接合で形成される溶接金属に対しては、−100℃での靭性(低温靭性)が34J以上であることが要求される。この低温靭性を確保するために、本発明者らは、(1−1)溶接金属中の酸素量の低減、及び(1−2)溶接金属の組織細粒化を行う必要があると考えた。更に本発明者らは、(1−3)溶接金属中での粒界フェライト生成の抑制、及び(1−4)溶接金属中での第二相生成の抑制を行うことが好ましいと考えた。なお、(1−5)溶接金属中のNi量も靭性に大きく影響を与える。ただし、フラックス入りワイヤのNi量を増大させると製造コストが増大するので、本発明者らは、Ni含有量は最低限とし、その他の(1−1)〜(1−4)の手段を用いて低温靭性を向上させることを試みた。
溶接金属中の酸素量の低減手段としては、LiF、NaF、CaF2、及びMgF2などの弗化物成分をフラックス入りワイヤに含有させること、Si、Mn、Ti、及びAlなどの脱酸元素を脱酸成分として(即ち弗化物、酸化物、及び炭酸塩を構成しない形態で)フラックス入りワイヤに含有させること、及び不活性ガスを使用してガスシールドアーク溶接を行うことが考えられた。しかし、不活性ガスを使用したガスシールドアーク溶接は、アークが不安定となること、溶込み深さが十分に得られないこと、及び、溶接欠陥がない健全な溶接金属を得ることができないことがあるので、溶接金属中の酸素量の低減手段として使用することが難しい場合もあると本発明者らは考えた。従って本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいては、溶接金属中の酸素量を低減させるために、弗化物成分及び金属脱酸成分が所定範囲内とされる。
低温靭性を確保するための組織細粒化手段として、本発明者らは、微細な粒内変態組織の生成核と言われているTi、Al化合物(主に、Ti酸化物及びAl酸化物)を活用することとした。溶接金属に微細分散されたTi酸化物及びAl酸化物は、結晶粒の個数を増やすことにより、溶接金属の組織における結晶粒径を微細化させることができる。溶接金属に含まれるTi酸化物及びAl酸化物の個数を増大させるために、本実施形態に係るフラックス入りワイヤでは、合金Al含有量、合金Ti含有量、及びTi酸化物の含有量が所定範囲内とされる。なお、後述されるスラグ成分としてのTi酸化物及びAl酸化物は、その大半が溶接の際に溶接金属から排出されてスラグとなるので、溶接金属に含まれるTi酸化物及びAl酸化物とは区別される。
上記(1−1)及び(1−2)の手段により、Ni含有量を十分に低減させながら溶接金属の低温靭性を高めることができる。しかしながら、溶接金属における粒界フェライトの生成を抑制することにより、一層の低温靭性向上が可能となる。溶接による溶融・凝固後の溶接金属では、温度低下の際にオーステナイト組織から粒界フェライトが生成し、この粒界フェライトが溶接金属の低温靭性を劣化させる場合がある。低温靭性の向上のためには、溶接金属における粒界フェライト生成を抑制することが好ましい。本発明者らは、粒界フェライト生成の抑制のために、Bを活用することが有効であると知見した。フラックス入りワイヤのB含有量を増加させることにより、オーステナイト粒界の焼入れ性を向上させて、粒界フェライト生成を抑制することができる。従って、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、好ましくは所定量のBをさらに含有する。
上記(1−1)〜(1−3)の手段により、Ni含有量を十分に低減させながら溶接金属の低温靭性を高めることができる。しかしながら、溶接金属における第二相の生成を抑制することにより、一層の低温靭性向上が可能となる。第二相とは、MA(島状マルテンサイト)などである。本発明者らは、以下の式によって定義される焼入れ性指標αを所定範囲内とすることにより、溶接金属において第二相の生成が抑制されることを知見した。
α=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+([Ni]+[Cu])/15・・・(2)
なお、式(2)の[]付元素は、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分に含まれる元素の前記フラックス入りワイヤ全質量に対する質量%での含有量を表す。
溶接金属の伸びは、溶接金属の硬さ及び引張強さと反比例する傾向にある。従って本実施形態に係るフラックス入りワイヤでは、溶接金属に必要とされる引張強さを確保可能な範囲内で、C、Si、Mn、及びNiなどの焼入れ性を高める元素の量を減少させることで、溶接金属の伸びが確保される。また、B含有によりオーステナイト粒界の焼入れ性を高めることで、C、Si、Mn、Niなどの焼入れ性を高める元素の添加量を抑えることができるため、溶接金属の強度が過剰に上昇せず、靭性と伸びの確保に繋がる。
γ=[Mn]+[Mg]・・・(4)
なお、式(4)の[]付元素は、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分に含まれる元素の前記フラックス入りワイヤ全質量に対する質量%での含有量を表す。
上述したように、低温靭性に優れた溶接金属を得るためには、フラックス入りワイヤに弗化物を含有させて溶接金属の酸素量を低減することが必須である。しかしながら弗化物は、溶接の際に生じるスパッタ量を著しく増大させる。多量のスパッタは、溶接後の塗装ムラ及び後続溶接における欠陥発生をもたらす。
X=[NaF]+[MgF2]+[Na3AlF6]+1.50×([K2SiF6]+[K2ZrF6]+[LiF]+[BaF2])+3.50×([CaF2])・・・(1)
なお、前記式(1)の[]付化学式は、それぞれの化学式に係る弗化物のフラックス入りワイヤ全質量に対する質量%での含有量を表し、含有されない弗化物の含有量は0とみなす。
Cは、溶接金属の焼入れ性を向上させ、粒内変態を促進させ、これにより溶接金属の強度を確保する元素である。粒内変態を促進するためには、Cをフラックス入りワイヤに0.001%以上含有させる必要がある。溶接金属の強度の向上のために、C含有量の下限を0.005%、0.008%、0.010%、又は、0.013%としてもよい。一方で、3.0〜5.5%のNiを含有する溶接金属では、焼入れ性が高い組織となるので、フラックス入りワイヤにCを0.080%超含有させると、溶接金属が極めて硬化し、その靭性及び伸びが大きく低下し、また、高温割れ及び低温割れが溶接金属に発生する。安定して靭性を確保するためには、C含有量の上限を0.070%、又は、0.060%としてもよい。
Siは、溶接金属の清浄度を向上し、ブローホールなどの溶接欠陥の発生を抑制するために必要な元素である。これらの効果を得るためには、フラックス入りワイヤにおいて0.001%以上のSiの含有が必要である。溶接欠陥の発生を一層防止するために、Siの下限を0.250%、又は、0.300%としてもよい。一方で、3.0〜5.5%のNiを含有する溶接金属では、Siはミクロ偏析しやすく、0.800%超のSiをフラックス入りワイヤに含有させると、Si偏析部で顕著な脆化が生じる。従ってSi含有量の上限値は0.800%とする。また、溶接金属の靭性を安定して確保するためには、Si上限を0.600%、又は、0.550%としてもよい。
Mnは、溶接金属の清浄度を向上し、さらにMnSを形成することで、Sを無害化し、溶接金属の靭性を向上させるのに必要な元素である。その効果を得るためには、フラックス入りワイヤにMnを0.10%以上含有させる必要がある。靭性の一層の向上のために、Mn含有量の下限を0.20%、0.30%、又は、0.40%としてもよい。一方、3.0〜5.5%のNiを含有する溶接金属では、Mnはミクロ偏析しやすく、フラックス入りワイヤにMnを1.50%超含有させると、Mn偏析部で顕著な脆化が生じる。また、溶接金属の靭性を一層安定して確保するためには、Mn含有量の上限を1.10%、1.00%、又は、0.95%としてもよい。
Alは、強脱酸剤であり、スラグ剤であるTi酸化物からTiを還元し、溶接金属のミクロ組織微細化に有効な微細Ti酸化物を確保する上で必須の元素である。しかし、フラックス入りワイヤにおけるAl含有量が0.005%未満では、Alによるスラグ剤Ti酸化物の還元効果が不足するので、粒内フェライトの核となる溶接金属中の微細Ti酸化物が確保できない。この場合、溶接金属のミクロ組織が細粒化されないので、溶接金属の低温靭性が改善されない。靭性の一層の向上のために、Al含有量の下限を0.030%、又は、0.040%としてもよい。一方、0.500%超のAlをフラックス入りワイヤに含有させると、Al酸化物量が大幅に増加して、Al酸化物とTi酸化物との大形の複合酸化物が溶接金属中に形成される。この結果、溶接金属中のTi酸化物が粒内フェライトの核として機能しなくなり、溶接金属のミクロ組織が微細化されないので、溶接金属の靭性が低下する。また、この場合、Al窒化物の生成量が多くなることによっても溶接金属の靭性が低下する。従ってAl含有量の上限を0.500%とする。また、溶接金属の靭性を一層安定して確保するためには、Al含有量の上限を0.200%、0.100%、又は0.050%としてもよい。
Niは、固溶靭化(固溶により靭性を高める作用)により、溶接金属の組織、成分によらず、その靭性を向上できる唯一の元素である。特に、−100℃での溶接金属の低温靭性を確保するためには、Niは必須の元素である。この効果を得るためには、3.0%以上のNiをフラックス入りワイヤに含有させる必要がある。一層安定して低温靭性を確保するためには、Ni含有量の下限を3.1%、3.2%、又は、3.5%としてもよい。一方、5.5%超のNiをフラックス入りワイヤに含有させると、その効果が飽和するのに加え、溶接材料コストが高騰し、さらに溶接金属の高温割れが発生する。従って、Ni含有量を5.5%以下とする。Ni含有量の上限を5.3%、5.2%又は、5.0%にしてもよい。
Tiは、強脱酸剤であり、フラックス入りワイヤに含まれる金属Tiのうち一部が酸化されスラグオフされ、その残りが溶接金属中に留まる。この溶接金属中に留まるTiは、微細なTi介在物を形成して、粒内変態核として働き、溶接金属の組織を微細化させる。従って、Tiは溶接金属の低温靱性を向上させる働きがある。また、フラックス入りワイヤにBが含まれる場合、TiはBの効果を促進させる働きを有する。初期の溶融金属凝固過程の高温域で、TiはBより先に窒化物を形成してNを固定する。これにより、以降の溶融金属凝固過程でBがBNを形成することがない。つまりTiは、BをフリーBとしてオーステナイト粒界に偏析させる上で必須の成分である。このフリーBは、粒界での粗大なフェライトの生成を抑制することにより、Ti酸化物による粒内フェライト微細化効果と相乗して、溶接金属の低温靭性の改善効果を奏する。この効果は、Ti酸化物の還元によるTi量確保のみでは不十分であり、金属Tiをフラックス入りワイヤに含有させることにより初めて上記効果が得られる。しかし、フラックス入りワイヤにおけるTi含有量が0.005%未満では、金属Tiのほとんどが酸化消耗され、溶接金属にTiNを形成する上で十分なTiが留まらないので、上記効果が十分得られず、ミクロ組織の微細化が不十分となり、靭性改善効果が得られない。靭性の一層の向上のために、Ti含有量の下限を0.030%、又は、0.040%としてもよい。また、0.100%超のTiをフラックス入りワイヤに含有させると、固溶Tiが増加し、溶接金属が過度に硬化し、著しく靭性が低下する。従って、Ti含有量は0.100%以下とする。また、溶接金属の靭性を一層安定して確保するためには、Ti含有量の上限を0.080%、又は、0.070%としてもよい。
Pは、不純物元素であり、溶接金属の靭性を劣化させるので、極力低減する必要があるが、この悪影響が許容できる範囲として、フラックス入りワイヤのP含有量を0.030%以下に制限する。溶接金属の靭性の一層の向上のために、P含有量の上限を0.015%、0.010%、0.008%、又は、0.006%としてもよい。
Sは、不純物元素であり、溶接金属の靭性を著しく劣化させるので、極力低減することが好ましい。靭性への悪影響が許容できる範囲として、フラックス入りワイヤのS含有量を0.030%以下に制限する。溶接金属の靭性の一層の向上のために、S含有量の上限を0.008%、0.006%、0.004%、又は、0.003%としてもよい。
Mgは、強脱酸元素であり、溶接金属の酸素を低減し、溶接金属の靭性の改善に効果がある。この効果を得るために、フラックス入りワイヤにおけるMg含有量を0.20%以上とする。溶接金属の靭性の一層の向上のために、Mg含有量の下限を0.25%又は0.30%としてもよい。一方、0.80%超のMgをフラックス入りワイヤに含有させると、溶接時にスパッタ量が増加し、溶接作業性を劣化させる。溶接作業性の向上のために、Mg含有量の上限を0.70%、0.60%、又は、0.50%としてもよい。
Bは、フラックス入りワイヤを介して溶接金属中に適正量含有させると、固溶Nと結びついてBNを形成して、溶接金属の靭性に対する固溶Nの悪影響を減じる効果があり、また、溶接金属においてオーステナイト粒界の焼入れ性を高めることで、粗大な粒界フェライト生成を抑制し、低温靭性を確保できる効果があるので、添加してもよい。しかし、フラックス入りワイヤにBを0.0100%超含有させると、溶接金属中のBが過剰となり、粗大なBNやFe23(C、B)6などのB化合物を形成して靭性を逆に劣化させる。靭性の一層の向上のため、B含有量の上限を0.0080%、又は、0.0060%としてもよい。B含有の効果を一層確実に得るためには、B含有量の下限を0.0001%、0.0002%、または0.0010%としてもよい。
Cuは、ワイヤの外皮表面のめっき、及び、フラックスに単体又は合金として含有される場合があり、溶接金属の強度を向上させる効果があるので、添加してもよい。0.5%超のCuをフラックス入りワイヤに含有させると、溶接金属の靭性が低下する。溶接金属の靭性の一層の向上のために、Cu含有量の上限を0.3%、0.2%、又は、0.1%としてもよい。なお、Cuの含有量については、外皮自体やフラックス中に含有されている分に加えて、ワイヤ表面に銅めっきされる場合には、その分も含む。上述の効果を得るためには、Cu含有量の下限を0.01%としてもよい。
REMは、溶接金属中での硫化物及び酸化物のサイズを微細化して、溶接金属の靭性向上に寄与することができる元素であるので、添加してもよい。しかし、フラックス入りワイヤに0.050%超のREMを含有させると、スパッタが激しくなり、溶接作業性が劣悪となる。また、スパッタの低減及びアークの安定に寄与するために、REM含有量の上限を、0.030%、0.020%、0.010%、0.005%、又は0.001%としてもよい。なお「REM」との用語は、Sc、Yおよびランタノイドからなる合計17元素を指し、上記「REMの含有量」とは、これらの17元素の合計含有量を意味する。ランタノイドをREMとして用いる場合、工業的には、REMはミッシュメタルの形で添加される。
溶接金属の靭性を高めるために、下記(2)式で示される焼入れ性の指標αが0.25%以上0.51%以下となるように、合金成分又は脱酸成分(即ち弗化物、酸化物、及び炭酸塩を除く化学成分)の含有量を調整することが好ましい。焼入れ性指標αが0.25%以上である場合、溶接金属の靭性を損なう粒界フェライトの生成を一層抑制することができるので好ましい。一方、焼入れ性指標αが0.51%以下である場合、溶接金属の靭性を損なう第二相(例えばMA等)の生成を一層抑制し、さらに溶接金属の過剰な硬化を確実に防ぐこともできるので好ましい。
α=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+([Ni]+[Cu])/15・・・(2)
なお、式(2)の[]付元素は、合金成分又は脱酸成分として含まれるそれぞれの元素のフラックス入りワイヤ全質量に対する質量%での含有量を表す。
フラックス入りワイヤに含有される合金成分は、高温割れを発生させやすくする場合があり、これを抑制するべく、下記式(3)で示される高温割れ感受性の指標βが3.1以下となるように、合金成分又は脱酸成分の含有量を調整することが好ましい。Si、Mn、Ni、及びBは特に高温割れ感受性に影響を及ぼす元素であるので、これら元素の量を上述の限定に加えて式(3)によっても限定することが、高温割れを防止しながら各元素の効果を得るために好ましい。
β=[Si]/6+[Mn]/1.5+[Ni]/3+200×[B]・・・(3)
なお、式(3)の[]付元素は、合金成分又は脱酸成分として含まれるそれぞれの元素のフラックス入りワイヤ全質量に対する質量%での含有量を表す。
溶接金属の伸びを改善するために、下記(4)式で示される伸びの指標γが1.8以下となるように合金成分又は脱酸成分の含有量を調整することが好ましい。Mn及びMgは、溶接金属を硬化させて伸びを低下させる作用が特に強い元素であるので、これら元素の量を上述の限定に加えて式(4)によっても限定することが、溶接金属の伸びを確保しながら各元素の効果を得るために好ましい。
γ=[Mn]+[Mg]・・・(4)
なお、式(4)の[]付元素は、合金成分又は脱酸成分として含まれるそれぞれの元素のフラックス入りワイヤ全質量に対する質量%での含有量を表す。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤでは、CaF2、MgF2、Na3AlF6、LiF、NaF、K2ZrF6、BaF2、及び、K2SiF6からなる群から選択された1種以上の弗化物を、フラックス入りワイヤの全質量に対するF換算値で、合計0.21%以上含有させる。フラックス入りワイヤの全質量に対するF換算値とは、弗化物に含まれる弗素(F)の量を、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で示すものである。例えば、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%でn%のCaF2がフラックス入りワイヤに含まれる場合、CaF2のF換算値は以下の式5で求められる。
(CaF2のF換算値)=n×(19.00×2/78.08)・・・(式5)
上の式4中の「19.00」は、Fの原子量であり、「2」は、1個のCaF2に含まれるF原子の個数であり、「78.08」は、CaF2の分子量である。CaF2以外の弗化物に関しても、同様にF換算値が算出できる。フラックス中に複数種類の弗化物が含まれる場合、各弗化物のF換算値の合計値が、フラックスに含まれる弗化物のF換算値とみなされる。
CaF2は、MgF2、Na3AlF6、LiF、NaF、K2ZrF6、BaF2、及び、K2SiF6と比べて、100%CO2ガスを使用するガスシールドアーク溶接において、スパッタを多量に発生させるため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤに添加しないことが好ましい。従って、本実施形態に係るフラックス入りワイヤではCaF2含有量を0.50%未満に制限する。CaF2含有量を0.50%未満に制限すれば、スパッタの問題は無視できる。スパッタの発生をさらに確実に回避するために、CaF2含有量の上限値を0.40%、又は、0.30%としてもよい。また、CaF2含有量の下限値を0.10%又は、0.00%としてもよい。
ガスシールドアーク溶接、特にシールドガスが100%CO2ガスであるガスシールドアーク溶接において、弗化物のうち、CaF2がスパッタを増加させることは上述した。さらに、本発明者らは、弗化物の種類とスパッタ量との関係を調査するために、多種の弗化物を含有させて、鋼製外皮にスリット状の隙間のない(植物油を外皮に塗布した)1.2mmφのワイヤを多数作成した。銅製の捕集箱内で、鋼板上に、ビードオンプレートで、溶接電流280A、電圧27V、溶接速度30cm/min、入熱14.0kJ/cm、シールドガス100%CO2、ガス流量25l/min、及び予熱なしの条件で、上述の種々のフラックス入りワイヤを用いて、1分間、溶接ビードを作製した。この溶接ビードの作成の間に箱内に飛散したスパッタ及び鋼板に付着したスパッタを回収し、これらのうち直径1.0mm超のものの総重量を測定した。スパッタ発生量、弗化物の種類、及び各弗化物の含有量のデータを多元解析した結果、式1を用いて算出されるX値とスパッタ発生量との間に、図1に示される良好な相関関係があることが見出された。
X=[NaF]+[MgF2]+[Na3AlF6]+1.50×([K2SiF6]+[K2ZrF6]+[LiF]+[BaF2])+3.50×([CaF2])・・・(式1)
なお、式(1)の[]付化学式は、それぞれの化学式に係る弗化物のフラックス入りワイヤ全質量に対する質量%での含有量を表し、含有されない弗化物の含有量は0とみなす。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤのフラックスは、酸化物を合計で0.30%以上3.50%未満含有する。この酸化物の種類は、Fe酸化物、Ba酸化物、Na酸化物、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Mg酸化物、Al酸化物、Mn酸化物、及びK酸化物からなる群から選択される1種又は2種以上であり、後述するCaOは含まれない。本実施形態では、「CaOを除く酸化物」を単に「酸化物」と称する場合がある。
フラックスに含まれるTiO2等のTi酸化物は、溶接中にその大半がスラグとして溶接金属の外部に放出される。しかし上述されたように、本実施形態に係るフラックス入りワイヤのフラックス中のTi酸化物の一部は、Alによって一旦還元されて金属Tiとなった後、溶接金属中の酸素と結びついて、溶接金属中で、溶接金属のミクロ組織微細化に有効なTi酸化物となる。従って、Ti酸化物は、合金成分としてのAlとの相乗効果として、溶接金属の微細化及び低温靭性向上に寄与する。さらにTi酸化物は、溶接ビード形状の改善にも寄与する。CaOを除く酸化物の含有量の合計が0.30%以上3.50%未満である場合でも、CaOを除く酸化物に含まれるTi酸化物が0.10%未満である場合、溶接ビード形状が悪くなることがある。これら効果を得るために、Ti酸化物の含有量の下限値を0.10%とする必要がある。Ti酸化物をアーク安定剤として用いることで、さらに良好な溶接ビード形状を得るために、Ti酸化物の含有量の下限値を0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.40%、又は、0.45%としてもよい。一方、Ti酸化物の含有量が2.50%以上である場合、溶接金属の酸素量を増大させて、溶接金属の靭性を低下させることがある。従って、Ti酸化物の含有量を2.50%未満とする必要がある。溶接金属の靭性のさらなる改善のために、Ti酸化物の含有量の上限値を2.40%、2.20%、2.00%、1.80%、1.50%、1.25%、1.00%、0.90%、0.80%、0.70%、0.60%、又は0.50%としてもよい。
CaOは、他の酸化物とは異なる性質を有し、0.20%以上含有されると、シールドガスが100%CO2ガスであるガスシールドアーク溶接において、スパッタを多く発生させる。さらに、CaOは、大気に触れると水素を含む化合物であるCaOHに変化するので、溶接金属の拡散性水素を増加させる。CaOはフラックス原料に不純物として含まれる場合があるので、CaO含有量が0.20%未満になるように、フラックスの原料を選定する必要がある。CaO含有量は好ましくは0.10%以下、又は0.10%未満である。CaOは本実施形態に係るフラックス入りワイヤに必要とされないので、CaO含有量の下限値は0%である。CaO含有量の下限値を0.01%、0.02%、又は0.05%としてもよい。
(MgCO3、Na2CO3、及びLi2CO3の含有量の合計値:フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0〜3.00%)
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、炭酸塩を含有する必要はない。従って本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおける炭酸塩の合計含有量の下限値は0%である。しかし本実施形態に係るフラックス入りワイヤには、更に、MgCO3、Na2CO3、Li2CO3、CaCO3、K2CO3、BaCO3、FeCO3、及び、MnCO3からなる群から選択される1種又は2種以上の炭酸塩を、合計で3.50%以下含有させることが好ましい。
鉄粉(Fe粉)は、フラックス入りワイヤにおけるフラックスの充填率の調整のために、または溶着効率の向上のために必要に応じて含有させる場合がある。しかし、鉄粉の表層は酸化されているので、フラックスが鉄粉を過剰に含有すると、溶接金属の酸素量を増加させて靭性を低下させる場合がある。したがって、鉄粉は含有させなくてもよい。充填率の調整のために鉄粉を含有させる場合には、溶接金属の靭性を確保するために、鉄粉の含有量を10.0%未満にする。鉄粉の含有量の上限値を5.0%、3.0%、2.0%、又は1.7%としてもよい。一方、鉄粉は本実施形態に係るフラックス入りワイヤの課題解決のために必須ではないので、鉄粉の含有量の下限値は0%である。
図2に、フラックス入りワイヤの切断面を示す。図2(a)に、エッジ面を突合せて溶接して作ったフラックス入りワイヤ、図2(b)に、エッジ面を突合せて作ったフラックス入りワイヤ、及び、図2(c)に、エッジ面をかしめて作ったフラックス入りワイヤを示す。このように、フラックス入りワイヤには、図2(a)に示すように鋼製外皮にスリット状の隙間がないワイヤと、図2(b)、(c)に示すように鋼製外皮のスリット状の隙間を有するワイヤとに大別できる。本実施形態に係るフラックス入りワイヤでは、いずれの断面構造も採用することができるが、溶接金属の低温割れを抑制するためには、スリット状の隙間がないワイヤ(シームレスワイヤ)とすることが好ましい。
図2(b)にエッジ面を突き合わせた例を、図2(c)にエッジ面をかしめた例を示すが、図2(b)のように突合せてから、ろう付けしたり、図2(c)のようにかしめてから、ろう付けしたりしても、スリット状の隙間が無いワイヤが得られる。また、図2(b)、(c)において、ろう付けせず、そのままのワイヤは、スリット状の隙間が有るワイヤとなる。
一方、比較例であるワイヤ番号B1〜B9は、本発明で規定する要件を満たしていないため、溶接金属の引張強さ、全伸び、及び低温靭性、並びに仮付溶接性の1つ以上を満足できず、不合格となった。
Claims (11)
- 鋼製外皮と、前記鋼製外皮の内部に充填されたフラックスとを備えるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤであって、
前記フラックスが、
前記フラックス入りワイヤの全質量に対するF換算値の合計が0.21%以上である、CaF2、MgF2、Na3AlF6、LiF、NaF、K2ZrF6、BaF2、及び、K2SiF6からなる群から選択される1種又は2種以上の弗化物と、
前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量の合計値が0.30%以上3.50%未満である、Fe酸化物、Ba酸化物、Na酸化物、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Mg酸化物、Al酸化物、Mn酸化物、及びK酸化物からなる群から選択される1種又は2種以上の酸化物と、
前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量の合計値が0〜3.50%である、MgCO3、Na2CO3、Li2CO3、CaCO3、K2CO3、BaCO3、FeCO3及びMnCO3からなる群から選択される1種又は2種以上の炭酸塩と、
を含み、
前記フラックス中のCaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0%以上0.20%未満であり、
前記フラックス中の鉄粉の含有量が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0%以上10.0%未満であり、
式(1)を用いて算出されるX値が前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対して5.00%以下であり、
前記CaF2の含有量が前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0.50%未満であり、
前記Ti酸化物の含有量が前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0.10%以上2.50%未満であり、
前記MgCO3、前記Na2CO3、及び前記Li2CO3の含有量の合計値が前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0〜3.00%であり、
さらに、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く化学成分が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、
C :0.001%以上0.080%以下、
Si:0.001%以上0.800%以下、
Mn:0.10%以上1.50%以下、
Al:0.005%以上0.500%以下、
Ni:3.0%以上4.9%以下、
Ti:0.005%以上0.100%以下、
Mg:0.20%以上0.80%以下、
P :0.030%以下、及び、
S :0.030%以下
を含有し、残部がFe及び不純物からなる
ことを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
X=[NaF]+[MgF2]+[Na3AlF6]+1.50×([K2SiF6]+[K2ZrF6]+[LiF]+[BaF2])+3.50×([CaF2])・・・(1)
なお、前記式(1)の[]付化学式は、それぞれの化学式に係る前記弗化物の前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量を表し、含有されない弗化物の含有量は0とみなす。 - 前記炭酸塩を、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、合計で2.00%以下含有する
ことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - 更に、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、
B :0.0100%以下、
Cu:0.5%以下、及び
REM:0.050%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - 下記式(2)で示される焼入れ性指標αが0.25%以上0.51%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
α=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+([Ni]+[Cu])/15・・・(2)
なお、式(2)の[]付元素は、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分に含まれる元素の前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量を表す。 - 下記式(3)で示される高温割れ感受性指標βが3.1以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。β=[Si]/6+[Mn]/1.5+[Ni]/3+200×[B]・・・(3)
なお、式(3)の[]付元素は、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分に含まれる元素の前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量を表す。 - 下記式(4)で示される伸び指標γが1.8以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
γ=[Mn]+[Mg]・・・(4)
なお、式(4)の[]付元素は、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分に含まれる元素の前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量を表す。 - 前記鋼製外皮がスリット状の隙間の無い形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記鋼製外皮がスリット状の隙間を有する形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記鋼製外皮の表面にパーフルオロポリエーテル油を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて鋼板を溶接する工程を備えることを特徴とする溶接継手の製造方法。
- 前記溶接する工程の、仮付け溶接において用いられるシールドガスが、100%CO2ガスであり、
前記溶接する工程の、本溶接において用いられるシールドガスが、Arと2.5〜30.0体積%のCO2との混合ガスであることを特徴とする請求項10に記載の溶接継手の製造方法。
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