JP6873456B2 - 細胞搬送システム - Google Patents

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Description

本発明は、一般的な顕微鏡装置への配設使用が可能である汎用性の高いシステムであって、細胞搬送操作においてオートフォーカス制御による焦点補正が正常に動作しない1細胞解析を想定した作業で使用した場合であっても、対象細胞を1細胞単位で所望の搬送先容器に効率的に搬送することを可能とする細胞搬送システムに関する。
近年における微少流量制御を可能とする無振動ポンプ技術等の発展により、「1細胞単位」での細胞搬送操作を実現可能とする極少液量での吸引及び吐出技術が実現可能となった。当該微小液量操作技術は、がん研究、幹細胞研究、iPS細胞研究等を進展させる「1細胞解析」の基盤技術であり、当該技術の操作性や効率の向上がこれらの研究の進展に影響を与える。
現在の生命科学分野では、コンピュータの演算処理速度の飛躍的な発展とも相関し、ハイスループット解析等の大規模解析技術の指向性が強い。そのため分析用容器として試料の大量処理が可能なマイクロウェルプレートが多用され、更に今後はマイクロチップ状の微小ホール及びチャンネルを備えたマイクロデバイス容器が発展することが予想される。
このような微小容器における「1細胞単位」での細胞搬送操作を行う場合、実際の作業現場では、ディッシュからマイクロウェルプレートへの分注操作、マイクロウェルプレートからマルチPCRチューブへの分注操作等、容器底面の形状や厚さが異なる容器間で細胞搬送操作を行う要望がある。当該操作においては、微小キャピラリー管内への細胞吸引操作及び吐出操作のそれぞれにおいて、試料ステージの底面方向又は上面方向に配設された対物レンズを介した顕微鏡観察により、「対象(容器底面)へのピント合わせ」及び「操作完了の確認」をその都度実行しながら行う必要が生じる。この点は分注操作を連続して行う大規模な試料解析であるほど、その作業効率に深刻に影響する操作工程となる。
そこで、1細胞単位での細胞搬送操作を効率良く実行する技術開発が期待されているが、以下に示す主たる課題によりその実現が阻まれていた。
1)オートフォーカス阻害現象
光学系におけるピント合わせの自動化技術としては、オートフォーカス画像処理によって焦点ズレを補正する制御手段が広く知られおり、当該技術は一般的な顕微鏡システムにおいても広く利用されている極めて有用な技術である。
顕微鏡におけるオートフォーカス制御機構としては、例えば、観測対象との焦点位置のズレを認識して当該ズレ量に応じた補正量を定量的に算出し、当該補正量に応じた焦点修正を自動的に実行する制御機構を挙げることができる(例えば、特許文献1等参照)。
しかしながら本願発明者が細胞搬送に関する技術開発に研究を重ねたところ、「1細胞解析」を行う際の細胞搬送操作においては、微細キャピラリー管内から細胞を「吐出」する際の搬送先容器側において、オートフォーカス制御での焦点補正が正常に動作しない場面が頻発する現象に直面した。この搬送先容器におけるオートフォーカス阻害現象は、搬送先容器内の溶液が数μLのような極微量である場合に発生し、表面張力により微量液体が視野内にてドロップ形状となることに起因する現象である。当該ドロップ形状の液体では、視野内に集光による明部分と影となる暗部分が生じて極めて高いコントラストが発生し、焦点補正量の自動認識機能が正常に作動しなくなることによって引き起こされる。
このようなオートフォーカス阻害現象は、遺伝子等の解析を行うために対象細胞をPCRチューブ等に搬送する場面において発生しやすく、解析用酵素等を含む反応溶液(高額な試薬)を少量スケールにして行う場合に特に多発する現象である。この点では高価な酵素等を含む反応試薬が大量に必要となる大規模解析において深刻な作業遅延を引き起こす。
また、遺伝子等の解析では対象細胞をマイクロウェルプレートやPCRチューブ等に搬送する場面が求められるところ、反応チューブはポロプロピレン等の材質で構成される容器が多いため、ガラス等より透明度が低く、この点もオートフォーカスの自動認識を阻害する方向に作用する。
更に、キャピラリー管の管先が容器底面に近接する状況下にてピント合わせを行う場面においては、視野内の微量液内に入り込んだ管先の映り込み現象等の影響で高コントラスト化が更に顕著になり、オートフォーカス制御をより困難なものとしている。
2)微細キャピラリー管内での細胞格納状態の確認
対象細胞を1細胞単位で所望の容器内へ搬送する操作においては、搬送元容器における細胞「吸引」の確認、並びに、搬送先容器における細胞「吐出」の確認、を行いながら確実に操作を行う必要がある。即ち、対象の1細胞をピンポイントにて所望の容器内に搬送するためには、上記1)で挙げたピント合わせの自動化の課題とは別の要求として、微細キャピラリー管内に対象細胞が確実に吸引されたこと、並びに、微細キャピラリー管内から対象細胞が確実に吐出されたことを、試料ステージの底面方向又は上面方向に配設された対物レンズを介して顕微鏡で確認しながら確実に行う操作が求められる。
しかしながら、1細胞解析では微小スケールで解析を行うことが求められるところ、マイクロプレート等の微細容器を用いて容器底面にアクセスするためには、微細キャピラリー管をほぼ垂直に挿入して操作を行うことが必要となる。このような状況では対物レンズ又は光源の配設位置の関係で相対焦点深度が深く光路が阻害されやすくなり、微細キャピラリー管内に格納された細胞の状態を確認することが困難になる現象が発生する。
当該現象は、特に微小なマイクロプレートを用いた多検体処理の場合に顕在化する傾向があり、吸引又は吐出した細胞数を誤認する問題を誘発し作業を遅延させる原因となる。
特許第4815179号公報
以上に示したように、1細胞搬送技術においては微細キャピラリー管での細胞吸引操作及び細胞吐出操作を顕微鏡にて確認しながら確実に行う必要があるところ、 i)1細胞解析において多用される遺伝子等の解析のための微量溶液内へ細胞搬送操作を行う場合では、搬送先容器でのオートフォーカス制御による焦点補正の正常動作が阻害されため、ピント合わせ操作を手動で行わざるを得ない状況にある。また、ii)1細胞解析において多用されるマイクロウェルプレート等を使用して細胞搬送を行う際には、微細キャピラリー管をほぼ垂直に挿入して容器底面にアクセスする必要があるところ、対物レンズ又は光源の配設位置の関係で微細キャピラリー管の先端管内に格納された細胞の状態を確認することが困難な状況となる。
これら上記課題は、飛躍的発展が予想される1細胞を対象とした大量解析技術の開発において認知された課題であり、「1細胞解析」を大規模に実行するために克服すべき課題と位置付けられる。
本発明は、上記従来技術の事情に鑑みてなされたものでありその課題とする処は、細胞搬送操作においてオートフォーカス制御による焦点補正が正常に動作しない1細胞解析を想定した作業(即ち、細胞搬送元容器と搬送先容器の底面構造が異なり、且つ、搬送先容器の溶液が高コントラスト化している状況下)であっても、1細胞単位での効率的な細胞搬送を実行可能とする技術を提供することを目的とする。
上記従来技術に係る状況において本発明者は鋭意研究を重ねたところ、細胞搬送システムにおける顕微鏡試料ステージ面に、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向での3次元方向の自由移動を可能とする駆動手段、並びに、前記顕微鏡試料ステージ面に関する3次元座標の記憶及び自動調節を可能とする制御手段を設けることに着想した。
ここで、従来の一般的な顕微鏡システムを用いて1細胞解析等で要求される微量スケールでの細胞搬送操作を行う場合では、オートフォーカス制御が正常に機能しない状況であり且つ対象細胞の搬送元容器と搬送先容器の底面形状が相違して手動ピント合わせ操作が必須となるところ、一方、本発明者が着想した顕微鏡試料ステージでは、搬送元容器と搬送先容器のそれぞれの底面の相違に対応するピントが合う位置を次々に自動移動させながら、細胞吸引と細胞吐出を連続して効率良く実行できることを見出した。
当該自動移動及び制御は、顕微鏡試料ステージ(1物品)の駆動手段を自動制御するのみで実行可能であるため、簡易な制御手段の付加により実現可能な技術であった。
更に、本発明者が着想した顕微鏡試料ステージは、一般の市販の顕微鏡装置に配設可能な実施態様とすることが可能であるため、顕微鏡装置本体とは別途の汎用部材として使用することが可能であった。これは、ピント合わせ手段を顕微鏡装置と一体化した物品である対物レンズの上下移動に依存したシステムでは実現不可能な態様であり、需要者の装置導入においてコスト的に大きな利点を提供し得る。
これに対して、従来の一般的な顕微鏡システムを用いて細胞搬送を行う場合、顕微鏡試料ステージとしてX軸方向及びY軸方向の2次元方向のみの移動を可能とするものが通常であるため、各容器の底面形状の相違に応じてその都度ピント合わせが必要となる。このような一般的な顕微鏡システムでは、対物レンズの上下移動によるピント合わせを行うことを要するところ、微液量系での細胞吐出の際にはオートフォーカス阻害現象により手動操作によりピント合わせ操作をその都度行わざるを得ない。
更に、一般的な顕微鏡システムで細胞搬送を行う場合、顕微鏡試料ステージを移動させるたびに容器壁面との接触を避けるためのキャピラリー管の上下移動が必須動作として必要になる。この点、仮に一般的な顕微鏡システムに3次元座標の記憶及び自動調節を可能とする制御手段を設けたシステムを構築した場合、顕微鏡ステージ、対物レンズ、及びキャピラリー管(3物品)の駆動手段を3次元的に連動させた上で自動制御することが必要となる。これは本発明に係るシステムと比較して複雑な装置構成であり、使用時において分離した物品間の精密な連動動作の調整確認を利用者に課す複雑な装置システムとなる。更に、対物レンズを含めた連動した制御システムである必要上、顕微鏡装置本体と一体化した製品形態とならざるを得ず、需要者の装置導入においてコスト的に大きな負担となる。
また、更に本発明者は鋭意研究を重ねたところ、微細キャピラリー管の細胞吸引及び吐出を行う先端付近の微細構造として90〜150°の範囲にある屈曲形状等を含んでなる微細キャピラリー管形状を着想した。
本発明者は、当該先端微細構造を備えた微細キャピラリー管を使用することによって、マイクロウェルプレートの微小ウェル等を微細キャピラリー管に垂直にアクセスさせた場合であっても、微細構造の管先が水平に又は適度な傾斜角度となるようにして容器底面にアクセス可能となることを見出した。これにより本発明者は、対物レンズ又は光源の配設が垂直方向であっても光路が遮断されず、微細キャピラリー管の先端管内の視認を容易に行うことが可能となることを見出した。
ここで特許文献1は、上述のようにオートフォーカス制御を利用した顕微鏡焦点補正技術を開示する文献であるところ、当該文献段落0037等にはオートフォーカス制御による焦点位置の自動補正手段の別態様の例として、対物レンズの代わりに顕微鏡台の上下移動によってもオートフォーカス制御での焦点補正が可能である旨が記載されている。
しかし、特許文献1はオートフォーカス制御による焦点補正技術を開示する内容の過ぎない文献であるため、1細胞解析を前提とした細胞搬送技術で見出されてきた「微液量」の溶液でのピント合わせの課題を開示又は示唆する記載はない。この点、当該課題を克服する解決手段として、オートフォーカス制御を「用いることなく」顕微鏡試料ステージ面に3次元方向の自由移動を可能とする駆動手段、並びに、前記顕微鏡試料ステージ面に関する制御手段を設ける着想を、特許文献1の記載から想到することはできない。
更に、引用文献1には、細胞搬送に関する微細キャピラリー管を開示する記載はなく、キャピラリー管内での格納細胞の視認性向上に関する微細キャピラリー管の管先微細構造に関する技術的特徴も開示するものでもない。
更に、特許文献1に係る「発明が解決しようとする課題」(段落0009)には、「焦点位置の自動補正を行うためにZ軸方向の駆動系を設けることはコスト等の問題で実際的ではない」旨が記載されており、この点は従来の一般的な顕微鏡システムの流通製品のピント合わせが「対物レンズ」側の上下移動によりに実行する機種が通常である点とも符合する内容が記載されている。これらの点は、本発明に関する技術分野において顕微鏡製品のピント合わせ手段として「顕微鏡試料ステージ」側を上下移動させる駆動手段及び制御手段を設けるという着想には、阻害要因的な技術常識が存在していたことを示すものと認められる。
Figure 0006873456
本発明者は上記知見に基づいて本発明を完成するに至った。本発明は具体的には以下に記載の発明に関する。
[項1]
対象細胞を1細胞単位で所望の搬送先容器に搬送することを可能とする細胞搬送システムであって、;
(A)試料ステージ面に試料容器保持手段を備え且つX軸、Y軸、及びZ軸方向への自動移動が可能な駆動手段を備えた顕微鏡試料ステージ、
(B)前記試料ステージ面に関する3次元座標が記憶可能であり、前記記憶された相対的位置情報に基づいて任意の設定された3次元座標へ前記試料ステージ面を自動移動させる制御手段、並びに、
(C)前記試料ステージ面の上方に配設される微細キャピラリー管であって、細胞吸引及び細胞吐出を行う先端微細構造が90〜150°の範囲にある屈曲又は湾曲した形状を含んでなる微細キャピラリー管、を備えてなる、;
ことを特徴とする、顕微鏡装置に配設して使用する細胞搬送システム。
[項2]
搬送先容器内の極微量で顕微鏡像が高コントラスト化した溶液に対して、オートフォーカス制御での焦点補正が正常に作動しない状況でも自動的なピント合わせ動作の実行が可能である、項1に記載の細胞搬送システム。
[項3]
前記微細キャピラリー管の先端微細構造が、内径5〜500μmの管構造であって、管先から5mm以下の範囲内に屈曲又は湾曲した形状部分を含んでなる先端微細構造である、項1又は2に記載の細胞搬送システム。
[項4]
前記顕微鏡試料ステージに備えられた駆動手段が、0.1〜100μm単位での移動動作を可能とする駆動部を有する第1〜第3のアクチュエーターがそれぞれの動作軸が3次元方向で異なる角度となるように配設されてなる構造、を含むものであり、;
顕微鏡試料ステージ支持手段に第1のアクチュエーターの支持体部が固定保持され、前記第1のアクチュエーターの駆動部に第2のアクチュエーターの支持体部が固定保持され、前記第2のアクチュエーターの駆動部に第3のアクチュエーターの支持体部が固定保持され、前記第3のアクチュエーターの駆動部に顕微鏡試料ステージのステージ面が固定されるものである、;
項1〜3のいずれかに記載の細胞搬送システム。
[項5]
更に顕微鏡装置を含んでなる、項1〜4のいずれかに記載の細胞搬送システム。
[項6]
項5に記載の細胞搬送システムを用いることを特徴とする、対象細胞を1細胞単位にて搬送先容器に搬送する方法。
本発明に係る細胞搬送システムを使用することにより、顕微鏡試料ステージ面の移動動作とピント合わせ動作を同時的に実行することが可能であり、また、搬送元容器及び搬送先容器の底面にアクセスした微細キャピラリー管の先端管内での細胞格納状態の容易な確認が可能となる。
これにより本発明では、細胞搬送操作においてオートフォーカス制御による焦点補正が正常に動作しない1細胞解析を想定した作業(即ち、細胞搬送元容器と搬送先容器の底面構造が異なり、且つ、搬送先容器の溶液が高コントラスト化している状況下)であっても、1細胞単位での効率的な細胞搬送を実行可能とする技術を提供することが可能となる。
上記により本発明では、例えば、1細胞解析等におけるマイクロウェルプレート等への多検体の連続的な細胞分配操作を効率的に行うことが可能となる。
更に本発明においては、例えば、従来一般的な顕微鏡装置への配設使用が可能である汎用性の高い細胞搬送システムの提供が可能となる。
実施例1にて製造した細胞搬送システムについて、3次元空間移動を可能とする顕微鏡試料ステージに関する構造を正面視方向から表した構造図である。図中の破線部分は顕微鏡装置本体の構造を示す。
実施例1にて製造した顕微鏡試料ステージについて、各アクチュエーターの外観を表した構造図である。図2A:X軸移動用アクチュエーターの上面視図。図2B:Y軸移動用アクチュエーターの上面視図。図2C:Z軸移動用アクチュエーターの正面視図。
実施例1にて製造した顕微鏡試料ステージについて、試料ステージ面の試料容器保持手段付近の構造を、上面視方向から表した構造図である。図中の破線部分は顕微鏡装置本体の構造を示す。
実施例1にて製造した微細キャピラリー管の外観を表した構造図である。
実施例1にて製造した顕微鏡試料ステージの外観構造を、斜視方向から表した模式図である。
実施例1にて製造した細胞搬送システムを顕微鏡装置に配設し、その全体の外観構造を斜視方向から表した模式図である。
実施例1にて製造した細胞搬送システムに付属する構成物品の外観構造を斜視方向から表した模式図である。
実施例1にて製造した微細キャピラリー管を試料ステージ面に上方配設した状態を示した写真像図である。
本発明に係るシステムを用いた細胞搬送操作において、顕微鏡試料ステージ面の移動状態を経時的に示した模式図である。図中の黒い太線の矢印は試料ステージ面の移動方向を示す。図9A:搬送元容器での細胞吸引操作。図9B:試料ステージ面の下方向移動。図9C:試料ステージ面のXY方向移動。図9D:試料ステージ面の上方向移動、及び、搬送先容器での細胞吐出操作。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。また、以下の説明における符号番号は、図面中に使用した符号番号を意味する。
[用語の説明]
本明細書中、3次元空間の軸方向を表す用語としてX軸、Y軸、及びZ軸方向という表現を使用する。ここで「X軸」とは、本発明に係る細胞搬送システムの正面視方向にて左右方向での水平軸を指す用語として使用する。また「Y軸」とは、同正面視方向にて手前奥方向での水平軸を指す用語として使用する。また「Z軸」とは、同正面視方向にて上下方向での垂直軸を指す用語として使用する。
本明細書中、細胞搬送システムの「正面視」とは、一般的な顕微鏡装置に配設した状態において顕微鏡の接眼レンズが備えられた方向からの視点を指す。
1.細胞搬送システムの構成
本発明は、対象細胞を1細胞単位で所望の搬送先容器に搬送することを可能とする細胞搬送システムに関する。
詳しくは、本発明は、対象細胞を1細胞単位で所望の搬送先容器に搬送することを可能とする細胞搬送システムであって、;
(A)試料ステージ面に試料容器保持手段を備え且つX軸、Y軸、及びZ軸方向への自動移動が可能な駆動手段を備えた顕微鏡試料ステージ、
(B)前記試料ステージ面に関する3次元座標が記憶可能であり、前記記憶された相対的位置情報に基づいて任意の設定された3次元座標へ前記試料ステージ面を自動移動させる制御手段、並びに、
(C)前記試料ステージ面の上方に配設される微細キャピラリー管であって、細胞吸引及び細胞吐出を行う先端微細構造が90〜150°の範囲にある屈曲又は湾曲した形状を含んでなる微細キャピラリー管、を備えてなる、;
ことを特徴とする、顕微鏡装置に配設して使用する細胞搬送システムに関する。
なお、本発明に係る細胞搬送システムに関する技術的範囲としては、当該必須となる特徴以外の特徴については、下記に記載した特徴の全て含む態様に限定されるものではない。
[顕微鏡試料ステージ]
本発明に係る細胞搬送システム(1)は、その構成物品として顕微鏡試料ステージ(2)を備えてなるものである。本発明に係る顕微鏡試料ステージ(2)としては、X軸、Y軸、及びZ軸方向への自動移動が可能な駆動手段(21)を備えてなることを特徴とするものである。即ち、本発明に係る顕微鏡試料ステージ(2)においては、当該駆動手段を備えることによって試料ステージ面(20)の3次元座標空間における任意設定座標への自動的な自在移動が実現される。
試料ステージ面の基本構造
本発明に係る顕微鏡試料ステージ(2)としては、試料用容器を配置するステージ面(20)に試料容器保持手段(201)を備えた顕微鏡用の試料ステージ面を採用することができる。ここで、試料容器保持手段(201)としては、対象細胞を格納又は載置するための容器等を配置可能な手段であれば、光学顕微鏡用の試料ステージ面に採用可能な如何なる構造を用いることが可能であるが、細胞の搬送元容器及び搬送先容器に相当する2以上の試料容器を保持可能な構造であることが望ましい。
当該手段を実現するための具体的な構造としては、例えば、試料ステージ面の上面側に配設された2以上の部材による挟持手段を備えた半枠型構造物、弾性体等の押力によって容器等を固定可能な構造物、試料容器と嵌合可能な枠型を穿った構造物、等を例示することができるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明に係る顕微鏡試料ステージ(2)としては、細胞の搬送元容器及び搬送先容器を保持するために、1の構造によって2以上、好ましくは2つの試料容器の保持を可能とする試料容器保持手段(201)を備えた態様を採用することが可能である。また、1ずつの試料容器の保持を可能とする試料容器保持手段を2以上、好ましくは2つ備えた態様を採用することもできる。
本発明に係る顕微鏡試料ステージにおけるステージ面(20)を構成する構造としては、上記試料容器保持手段を備えたことを除いては、通常の光学顕微鏡用の試料ステージの構造を採用することが可能である。本発明に係る顕微鏡試料ステージの一態様としては、上面側の構造における試料容器を配設する部位が、平面状又は略平面状を備えた形状であることが望ましい。
ここで、通常の正立顕微鏡や倒立顕微鏡に適合可能な試料ステージの態様としては、透過照明を用いる場合での対物レンズと光源に挟まれる位置に試料ステージ面(20)が配設されることになるため、試料容器における試料を格納又は載置する部位に対応するステージ部分については、対物レンズ側と光源側との光路を確保するための光路透過構造を備えたものであることが好ましい。このような光路確保を担保するための構造としては、例えば、開口構造、窓構造、透光性部材にて形成された構造、等を採用することが可能である。当該光路確保部分を成形する部材として透光性部材を採用する場合には、光透過性に優れ且つ容器設置に耐える強度を備えたガラス、透明樹脂等を挙げることができる。
また、本発明に関する顕微鏡試料ステージの一態様においては、正立顕微鏡において落射照明を用いる顕微鏡装置の場合においては、当該試料ステージ面(20)において上記開口構造を備えた態様とすることは必須ではない。当該態様においては、試料容器を配設する部分が容器底面の設置に適した平面状の試料ステージを採用することが可能である。
また、本発明に関する顕微鏡試料ステージの一態様としては、試料ステージのステージ面(20)自体に照明手段を内蔵又は組み込んだ態様とすることも可能である。当該態様においては、試料容器における試料を格納又は載置する部位に接するステージ部分について、透光性部材にて形成された構造、等を採用することが好適である。内部に搭載した照明手段からの光は透光性部材を経て試料容器にある上面方向を照射することが可能となる。透光性部材については上記段落に記載した材質と同様のものを採用することが可能である。照明手段としては、LED等の既存の顕微鏡用の照明を採用することが可能である。蛍光フィルター等を備えた照明手段とすることも可能である。
X軸、Y軸、及びZ軸方向への駆動手段
本発明に係る顕微鏡試料ステージ(2)としては、X軸、Y軸、及びZ軸方向への自動移動が可能な駆動手段(21)を備えてなるものである。
本発明に係る顕微鏡試料ステージに備えられた駆動手段(21)としては、微小単位での移動動作を可能とする駆動部を有する第1〜第3のアクチュエーターがそれぞれの動作軸が3次元方向で異なる角度となるように配設されてなる構造、を含むものである。当該駆動手段を備えることによって試料ステージ面(20)の3次元座標空間における任意設定座標への自動移動が実現される。
本発明においては、X軸、Y軸、及びZ軸方向への自動移動を可能とする駆動手段(21)としては、3次元方向のそれぞれについての粗移動及び微移動を可能とする連動制御がされた3つ以上のアクチュエーターを備えてなる構造を採用することが可能であるが、好適態様としては、第1のアクチュエーター、第2のアクチュエーター、及び第3のアクチュエーターの3つのアクチュエーターを備えてなる構造を採用することができる。
本発明に係る顕微鏡試料ステージ(2)における一態様としては、;X軸方向の自在移動を可能とするアクチュエーター、Y軸方向の自在移動を可能とするアクチュエーター、並びにZ軸方向の自在移動を可能とするアクチュエーター、を備えてなり、;これらを連動して制御して3次元方向での自在な自動移動を可能とする駆動手段とすることができる。
また、別態様としては、;XY面における1方向の自在移動を可能とするアクチュエーター、XY面における前記1方向とは異なる角度方向での自在移動を可能とするアクチュエーター、並びにZX面若しくはZY面における1方向の自在移動を可能とするアクチュエーター、を備えてなり、;これらを連動して制御して3次元方向での自在な自動移動を可能とする駆動手段とすることもできる。
本発明に係る駆動手段として使用可能なアクチュエーター(22、23、24)としては、支持体部(221、231、241)、前記支持体部に保持された動力部(222、232、242)、前記動力部からの力により軸に沿った移動動作を行う駆動部(223、233、243)、等を主要部材として構成される構造体を挙げることができる。当該構造体においては、動力部からの力により駆動部が軸方向での自在移動が可能となり、駆動部に固定された被移動体の当該軸方向での自在な移動動作が実現される。
ここで、動力部及び駆動部としては、下記した粗移動及び微移動の実現を可能とする仕様のものであれば、特に制限なく使用することが可能である。
本発明に係るアクチュエーターの動力部(222、232、242)としては、制御手段による自動動作を実現するために、電気駆動によるモーターを利用したものが好適である。本発明に係るアクチュエーターの動力部及び駆動部としては、AC(交流電源)又はDC(直流電源)を利用したサーボモーターもしくはステッピングモーターを用いることが好適である。
本発明に係る第1〜第3のアクチュエーター(22、23、24)としては、各軸方向に応じてそれぞれを異なる仕様のものにすることが好適である。例えば、X軸方向及びY軸方向への移動を実現するアクチュエーターとしては、粗移動時の移動幅が大きい仕様とすることが好適である。また、Z軸方向への移動を実現するアクチュエーターとしては、ピント合わせ動作をより精密に実行するために微移動時の移動単位が小さい仕様であることが好適である。
本発明に係る顕微鏡試料ステージの駆動手段(21)としては、顕微鏡視野及びその周辺の空間内で自在な自動移動を可能とするためには、第1〜第3の各アクチュエーター(22、23、24)が連動して動作する構造となるように、各アクチュエーターを立体的に組み合わせた複合構造体に構成する必要がある。
ここで、第1〜第3のアクチュエーターの動作軸としては、それぞれの動作軸が3次元方向で異なる角度となるように組み合わせることによって、顕微鏡試料ステージ面(20)の3次元空間移動が実現可能となる。例えば、お互いの動作軸を30°〜150°、好ましくは45°〜135°程度に異なる角度となるように配設して組み合わせることによって、当該移動が実現可能となる。
本発明に係るシステムにおける好適態様としては、装置設計及び移動効率の観点から、3つの動作軸をそれぞれ直行させ、X軸移動用アクチュエーター、Y軸移動用アクチュエーター、Z軸移動用アクチュエーター、として組み合わせた態様とすることが好適である。
上記動作を実現するための構造の一態様としては、顕微鏡試料ステージ支持手段(25)に第1のアクチュエーターの支持体部が固定保持され、前記第1のアクチュエーターの駆動部に第2のアクチュエーターの支持体部が固定保持され、前記第2のアクチュエーターの駆動部に第3のアクチュエーターの支持体部が固定保持され、前記第3のアクチュエーターの駆動部に顕微鏡試料ステージのステージ面(20)が固定された、アクチュエーター複合構造体を挙げることができる。
ここで、第1〜第3のアクチュエーターの組み合わせの順番としては、通常の顕微鏡システムへの適用を想定した場合であれば、試料ステージ支持手段、X軸移動用アクチュエーター、Y軸移動用アクチュエーター、Z軸移動用アクチュエーター、及び試料ステージ面、の順に組み合わせを採用することができるが(図1及び5参照)、各アクチュエーターの順番を入れ替えて組み合わせの態様を採用することも可能である。例えば、試料ステージ支持手段、Y軸移動用アクチュエーター、X軸移動用アクチュエーター、Z軸移動用アクチュエーター、及び試料ステージ面、の順に組み合わせたアクチュエーター複合構造体を構成することも可能である。また、装置態様によっては、試料ステージ支持手段、Z軸移動用アクチュエーター、X軸移動用アクチュエーター(又はY軸移動用アクチュエーター)、Y軸移動用アクチュエーター(又はX軸移動用アクチュエーター)、及び試料ステージ面、の順に組み合わせたアクチュエーター複合構造体を構成することも可能である。
また、顕微鏡試料ステージ支持手段(25)、第1〜第3のアクチュエーター(22、23、24)、試料ステージのステージ面(20)の間での固定態様にとしては、各部材どうしを直接固定する態様だけでなく、支持部材や保持部材等を介した間接的な固定態様も含まれる。
本発明における顕微鏡試料ステージ支持手段(25)としては、上記アクチュエーターのうちの1つの支持体部(221、231、241)を固定保持することが可能な部材であって、第1〜第3のアクチュエーター(22、23、24)及び試料ステージ面(20)の重量を支え且つ駆動装置が上記に記載のように正常に動作可能な構造及び強度を備えたものであれば、特に制限なく如何なる構造のものを採用することが可能である。
顕微鏡試料ステージ支持手段(25)の一態様としては、例えば、2以上の架台(251)を備えた自立型の態様であって、当該架台間を支持部材(252)で架橋された構造体を挙げることができる。当該態様においては、顕微鏡装置(6)に配設しての使用時において、顕微鏡装置の上面視及び正面視の両方の視点にて対物レンズ部分(62)を挟む位置に設置された状態になるように架台を配設した構造体とすることが好適である。架台としては、架台間を架橋する支持部材の高さを調節可能とするように、架台の支持柱に高さ調節手段を設けた態様とすることも可能である。
架台間を架橋する支持部材(252)としては、顕微鏡試料ステージ面(20)の3次元方向の移動を担保し得る空間を確保するように設計されたものが好適である。特にZ軸方向の移動が担保されるように、対物レンズや照明手段と接触しないワーキングスペースが担保されるように設計されたものが好適である。ここで、架台間を架橋する支持部材(252)としては、板状又は棒状等の形状のものを採用することができるが、架台間での架橋状態が水平に架橋されたものであることが好適である。また、架台間を架橋する支持部材(252)としては、長さ調節手段を設けた態様とすることも可能である。
本発明においては、顕微鏡試料ステージを構成するステージ面(20)及び各アクチュエーター(22、23、24)、並びに、顕微鏡試料ステージ支持手段(25)、等の各構成部材どうしは、各部材が分離可能な態様とすることが可能であるが、製品として一体化させた構成態様とすることも可能である。
本発明に係る各アクチュエーター(22、23、24)としては、「粗移動」及び「微移動」の両方を実行可能とする駆動手段であることが求められる。
ここで、本発明に係る各アクチュエーター(22、23、24)が実行可能な「粗移動」としては、3次元座標のある「基準点」を置いた場合において、当該基準点から数cm〜数十cm単位の広い範囲での移動動作を、試料の状態を維持しつつ且つ適切なスピードにて移動を実現する動作を指す。
本発明に係る粗移動としては、装置態様の設計によって決定することが可能であるが、一態様としては次の移動幅を挙げることができる。例えば、X軸方向の駆動を行うアクチュエーター(22)としては、基準点に対して100cm以下の範囲にある移動幅、好ましくは基準点に対して50cm以下の範囲にある移動幅、より好ましくは30cm以下の範囲にある移動幅を挙げることができる。
また、Y軸方向への駆動を行うアクチュエーター(23)としては、基準点に対して100cm以下の範囲にある移動幅、好ましくは基準点に対して50cm以下の範囲にある移動幅、より好ましくは30cm以下の範囲にある移動幅を挙げることができる。
また、Z軸方向への駆動を行うアクチュエーター(24)としては、例えば基準点に対して30cm以下の範囲にある移動幅、好ましくは基準点に対して15cm以下の範囲にある移動幅を挙げることができる。
当該粗移動における移動速度としては、試料の液等が飛散せず且つ作業遅延にならない速度の範囲であれば特に制限はないが、例えばX軸方向及びY軸方向での移動では0.1〜20cm/秒程度の移動速度であることが好適である。また、Z軸方向での移動では0.01〜5cm/秒程度の移動速度であることが好適である。
本発明に係るアクチュエーター(22、23、24)としては、上記した広範囲で且つスムースな粗移動の機能に加えて、ピント合わせ動作を確保し得る程度の微移動の実現を可能とすることが求められる。
ここで、「微移動」としては、μm単位での微細な距離の移動を指すものであり、具体的には0.1〜100μm単位での微小距離の移動を実現可能とするものでる。当該微小距離の移動動作は、微小単位での移動動作を可能とする駆動部を有する第1〜3のアクチュエーターによって実現される。
好ましくは50μm単位以下、より好ましくは20μm単位以下、更に好ましくは10μm以下での微細な距離の移動であることが好適である。当該値の下限としては、技術的及びコスト的な制限を克服可能であれば特に制限はないが、例えば0.2μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であることが好適である。
本発明に係るアクチュエーター(22、23、24)では、上記範囲を最小単位とする微細移動が可能となるため、細胞搬送元及び/又は細胞搬送先容器の所定位置(具体的態様では、容器底面の上表面)又はこれより僅かに上方の地点を、対物レンズの焦点に合う位置(54)と一致するように移動させることが可能となる。
なお、本発明においては、当該微移動の単位が小さいものほど微細ウェルやマイクロチップ等にも対応可能なハイエンドの装置態様が実現される。また、本発明においては、微移動の単位が比較的大きいものであっても廉価な仕様での装置態様が可能であり、製品用途に応じた実施態様を採用することが可能となる。
本発明に係る顕微鏡試料ステージ面(20)の3次元方向への移動態様としては、試料ステージ面の姿勢を同一方向に維持しつつ、試料ステージ面の位置のみを3次元方向に自在に移動させることが可能となる。
本発明に係る試料ステージ(2)としては、試料容器を配設する側の方向が上方垂直方向を向くように顕微鏡試料ステージ面(20)を水平に設計することが好適であるが、用途に応じては、試料ステージ面がZ軸方向に対して角度を有する面を形成するような態様を採用することも可能である。また、試料ステージ面(20)の角度を調整可能とする手段を設ける態様とすることも可能である。
本発明に係る細胞搬送システム(1)では、精密なピント合わせ自動動作を試料ステージの駆動手段(21)によって実現する必要があるため、上記した各アクチュエーター駆動制御は、3次元座標情報に基づいた電動駆動による精密に制御されて実行される。
[制御手段]
本発明に係る細胞搬送システム(1)は、前記顕微鏡試料ステージ面(20)に関する3次元座標が記憶可能であり、前記記憶された相対的位置情報に基づいて任意の設定された3次元座標へ前記顕微鏡試料ステージ面(20)を自動移動させる制御手段を備えたものである。
本発明に係る顕微鏡試料ステージ面(20)の制御手段(3)は、3次元座標の位置情報の記憶手段を備えてなり、顕微鏡試料ステージの駆動手段(21)による移動が可能な3次元空間内において、3次元座標の位置情報を記憶可能とするものである。ここで、3座標空間内において記憶可能な座標は、顕微鏡試料ステージの駆動範囲において定められる3次元空間内の座標である。
移動元である座標点としては、初期設定した座標点を予め記憶させておき、これを原点座標として使用することが可能である。また、原点座標としては、任意設定した座標点を新たに記憶させて使用することが可能である。また、現在の試料ステージ面(20)の位置座標を原点とすることが可能である。これらの座標は「基準点」として相対的座標との位置関係の算出に使用することが可能である。
移動先である座標点としては、顕微鏡試料ステージの駆動手段(21)での移動が可能な3次元空間内であれば、任意に位置座標を設定して記憶させることが可能である。記憶させる移動先の位置座標としては、上記基準点(原点等)からの相対的な位置関係を表す数値として、座標値を直接数値入力して記憶させる態様とすることが可能である。また、基準点(原点等)からの差分相当の移動距離を入力して記憶させる態様とすることも可能である。
本発明に係る制御手段(3)において位置座標を記憶させる態様としては、所定の座標を直接記憶させる態様により行うことが可能である。また、顕微鏡試料ステージ面(20)を3次元座標内の任意地点に移動させて、当該地点の座標を表示させ入力記憶する及び/又は自動記憶させる態様、等を採用することも可能である。
ここで、顕微鏡試料ステージ面(20)の任意位置への移動操作は、一態様としては、下記の制御手段にマニュアル操作モードを設けておき、ボタン操作等での電動駆動にて任意位置に微調整をして移動させることが可能である。また、別途の動力部(例えばツマミやハンドルの人力回動運動)を利用した駆動による位置調整手段を設ける態様を採用することも可能である。このような補助的な動力部としては、顕微鏡試料ステージ(2)の横方向や下方等に、上記アクチュエーターの駆動部(223、233、243)と連動したツマミやハンドル等の操作部材を配設し、当該操作部材を介した手動での回動動作等を、上記駆動手段における軸に沿った移動運動に変換可能とする装置態様とすることが可能である。
ここで、上記基準点(原点等)からの相対座標として示される点としては、例えば、試料容器を設置した場合の底面の1点と対物レンズのピントが合う位置を特定して、その座標を設定することが可能である。なお、相対的な位置関係の表現が可能な位置座標であれば特に制限なく設定することが可能である。
本発明に係る制御手段としては、位置情報の記憶手段として通常のデータ記憶が可能である半導体回路、機器、装置、メディア等の如何なるものも利用可能であり特に制限はされない。本発明に係る当該制御手段においては、多数の位置情報の記憶を記憶手段に蓄積させて行うことが可能である。
本発明に係る制御手段(3)では、当該記憶手段に格納された3次元座標の記憶情報に基づいて駆動手段の動作が制御され、顕微鏡試料ステージ面(20)の精密な自動移動動作が実行される。
当該自動移動に関する動作としては、一態様としては、制御手段(3)により基準点及び/又は現在位置からの相対的な移動量を算出し、前記顕微鏡ステージの駆動手段(21)を構成する3軸方向に対応する各アクチュエーターのそれぞれの駆動量を正確に制御することにより、所定位置への顕微鏡試料ステージ面(20)の移動が達成される。
本発明に係る制御手段においては、上記記憶させた位置記憶情報に基づいて任意の位置座標に顕微鏡試料ステージ面(20)を順次自動移動させる細胞搬送システムが実現される。
本発明における各アクチュエーターの制御においては、試料ステージ面(2)の3次元方向自動移動が達成されるように駆動するところ、本発明に係るシステムの構成では微細キャピラリー管(4)が試料ステージ面(2)の上方に配設されることが通常の態様である。また、本発明に係る細胞搬送システムの通常の仕様態様では、対物レンズからのピント焦点が存在する位置(54)と微細キャピラリー管の管先位置(42)を固定した状態にして、試料ステージ面(2)の移動動作が実行されることが通常である(図9参照)。
そのため、本発明に係るシステムを用いて細胞の搬送元容器(51)から搬送先容器(53)に細胞を移動させる態様としては、微細キャピラリー管と容器壁との接触のない位置まで試料ステージのZ軸方向下方移動を行った後、XY平面方向での移動制御を行い、次いでZ軸方向での上方移動を行う軌跡となるように動作制御を行うことが好適である(図9参照)。
本発明に係る細胞搬送システム(1)における制御及び駆動動作は、微細キャピラリー管との位置関係を考慮し且つピント合わせをも可能とする一連の動作であるため、他の部材等の制御を要することなく顕微鏡試料ステージ単体のみの自立制御によって実行可能な動作である。そのため、対物レンズ等の制御及び微移動等の連動動作が不要であり、試料ステージに関する制御手段と駆動手段の構成により細胞搬送システムの構築が可能となる。
本発明に係る細胞搬送システムにおける制御手段(3)は、各アクチュエーターの支持体に半導体回路やチップ等を内蔵させて配置する態様が可能である。また、各アクチュエーターとは別の筐体を設けて、その内部に制御手段を配置することも可能である。また、制御手段として機能するアプリケーションソフト等を組み込んだPC等の電子計算装置を、制御手段として利用することも可能である。
本発明に係る細胞搬送システム一態様としては、上記制御のための入力手段としてインターフェース手段(31、32)を設けることが好適である。例えば一態様としては、装置上のキー操作、PC操作でのキーボード操作、タッチパネル操作、等の入力手段を採用すると好適である。また、モニターやディスプレイ等を備えた表示手段を備えた態様とすることが好適である。このようなインターフェース態様を採用した場合、任意の3次元座標及び/又は移動幅等の入力設定を容易に実行することが可能となる。また、マニュアル操作モードを設けた態様では、当該インターフェース手段を操作ユニットとして使用することも可能である。
[微細キャピラリー管]
本発明に係る細胞搬送システム(1)は、顕微鏡試料ステージ面(20)上方に配設される微細キャピラリー管(4)を備えてなるものである。
ここで、本発明に係るシステムとしては、製品販売等の態様において微細キャピラリー管が上方配設「された」状態のものに制限されるものではなく、顕微鏡試料ステージ(2)と組み合わされて使用される微細キャピラリー管(4)を構成物品として備えてなる梱包状態等の製品形態が含まれるものである。
また、当該微細キャピラリー管(4)は、顕微鏡試料ステージ(2)とは別梱包や別発送の製品形態としている場合であっても、実質的に本発明に係る細胞搬送システム(1)の構成物品と一連不可分の製品形態と認められる場合には、本発明に係る細胞搬送システムの範囲に含まれる。
管先微細構造
本発明に係る微細キャピラリー管(4)としては、管先付近を構成する構造として1細胞単位での細胞吸引及び細胞吐出に適した先端微細構造(41)を備えた構造が採用される。ここで、微細キャピラリー管の管先の先端微細構造(41)としては、細胞吸引及び細胞吐出を行う先端微細構造が一定角度の範囲にある屈曲又は湾曲した形状(43)(本明細書中、第1の屈曲又は湾曲形状と表現する場合がある。)を含んでなる微細構造を備えてなることが好適である。ここで、先端微細構造における屈曲又は湾曲形状(43)とは、具体的には、急激な角度変更、緩やかなカーブによる角度変更、浅い角度変更の連続的な繰り返しによる角度変更、等を伴った形状を挙げることができる。
本発明に係る微細キャピラリー管において、先端微細構造の屈曲又は湾曲形状(43)の一定角度とは、具体的には90〜150°の範囲にある屈曲又は湾曲した形状を挙げることができる。好適態様としては、当該角度の範囲が好ましくは95〜140°、より好ましくは100〜120°の範囲にある角度であることが好適である。ここで、これらの角度としては、屈曲又は湾曲した形状の始点側の直管軸及び終点側の管長軸が交わる交点を設定した場合において、管先が曲がった方向での当該交点の角度として表現することが可能である。
ここで、当該先端微細構造(41)に含まれる屈曲形状等(43)の角度が鈍角すぎる場合には、管内の細胞状態への視野内に捉えることが難しくなり、一方、鋭角過ぎる場合には細胞の吸引吐出動作が阻害されやすくなるため、当該角度は上記範囲内に含まれるように適切に設定することが好適である。
本発明においては、微細キャピラリー管の管先(42)として上記構造と採用することによって、微小ウェル等を微細キャピラリー管に垂直に又はほぼ垂直にアクセスさせた場合であっても、微細構造である管先部分(42)が水平に又は適度な傾斜角度となるように試料容器(5)の底面にアクセスさせることが可能となる。これにより本発明に係るシステムでは、対物レンズ又は光源の配設が垂直方向にある場合であっても、光路が微細キャピラリー管の菅元側に遮られないため、微細キャピラリー管の先端管内の細胞の状態を視認することが可能となる。即ち、管先(42)における管内への細胞吸引、及び、管内からの細胞吐出の状態の視認による確認を行うことが可能となる。
本発明に係る微細キャピラリー管における上記屈曲又は湾曲形状(43)より先端側の構造としては、内容物視認性や操作性等に大きな影響が無い限りにおいては、上記第1の屈曲又は湾曲構造とは別途に、緩やかなカーブ等を有する構造を採用ことも可能である。但し、管先管内における細胞吸引吐出状態の視認確認容易性を考慮すると、好ましくは管先(42)の先端が直管形状又は略直管形状であることが好適である。更に好ましくは管先先端が直管形状であることが好適である。
本発明に係る微細キャピラリー管の先端微細構造(41)としては、微細ウェルを有するマイクロプレート等への適用を考慮すると、当該屈曲又は湾曲形状(43)が管先先端から一定範囲内に形成されたものであることが好適である。当該屈曲又は湾曲形状を形成させる位置の範囲としては、具体的には、マイクロプレート等の微細ウェルへの使用を鑑みると、管先(42)の先端から5mm以内、好ましく4mm以下、より好ましくは3mm以下であることが好適である。
本発明に係る微細キャピラリー管の先端微細構造(41)としては、1細胞単位での細胞吸引及び吐出の実現のために適した形状及びサイズであることが好適である。具体的には、先端微細構造(41)を構成する管形状としては、横断面の内径が500μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下であることが好適である。また、当該管先管径の内径の下限としては、対象細胞の用途に応じて設定可能であるが、例えば5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上を挙げることができる。
当該管先の管壁厚としては、管先の強度を担保しえる壁厚であれば特に制限はないが、1〜100μm、好ましくは3〜50μmの範囲を挙げることができる。
また、先端微細構造(41)を構成する管形状としては、横断面が円状又は略円状である円管状又は略円管状であることが好適である。
本発明に係る微細キャピラリー管(4)を構成する材質としては、管先部分における管内視認を可能とするために、少なくとも先端微細構造(41)を構成する部分が、好ましくは少なくとも管先からの管長10mm以内の部分が、より好ましくは少なくとも管先からの管長20mm以内の部分が、光透過性を備え且つ十分な強度を備えた材質で形成されてなることが好適である。具体的には、これらの部分が透明性を備えたガラス素材又は透明性樹脂で成形されてなるものであることが好適である。当該素材としては、強度、耐久性、及びコスト等を踏まえると、透明性を備えたガラス素材を採用することが好適である。
管先以外の構造
本発明に係る微細キャピラリー管における管先微細構造より菅元側の構造(44)としては、上記先端微細構造(41)とは異なり、管全体の強度保特に適するようにある程度の管径を備えたものを採用することが可能である。本発明に係る微細キャピラリー管の一態様としては、例えば、屈曲又は湾曲形状より菅元側の管(44)の外径が、0.5mm以上、好ましくは0.6mm以上、より好ましくは0.7mm以上のものを採用することができる。また、上限としては、微量操作に適したサイズであり且つ試料容器の微細ウェル等への対応を考慮すると、3mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1.5mm以下を挙げることが好適である。
菅元側のキャピラリー管構造(44)としては、内容物視認性や操作性等に大きな影響が無い限りにおいては緩やかなカーブ等を有する構造を採用ことも可能であるが、但し、微細ウェル等の底面へのアクセスを考慮すると、好ましくは上記第1の屈曲又は湾曲形状より菅元側の少なくとも10mm以内の範囲、好ましくは少なくとも15mm以内の範囲では、直管状又は略直管状の形状であることが好適である。更に好ましくは当該部分が直管形状であることが好適である。
当該管先微細構造より菅元側のキャピラリー管(44)を構成する材質としては、キャピラリー管としての機能を果たし得る材質であれば、ガラス製、樹脂製、金属製等、特に制限はないが、好ましくは光透過性を備えたガラス素材又は透明性樹脂で成形されてなるものであることが好適である。当該素材としては、強度、耐久性、及びコスト等を踏まえると、透明性を備えたガラス素材を採用することが好適である。
本発明に係る微細キャピラリー管(4)としては、強度やコスト等の点を鑑みると、管先微細構造及び管元側の管構造とが一体成形された部材であることが好適である。好ましくは、透明性を備えたガラス素材にて一体成型されたものであることが好適である。
また、菅元側構造(44)においては、顕微鏡ステージ面(20)上方のスペースにおける顕微鏡側の部材との接触等を回避するために、上記微細構造とは別途に第2の屈曲又は湾曲形状を備えた構造(45)を採用することもできる。第2の屈曲又は湾曲形状(45)としては、第1の屈曲又は湾曲形状(43)より菅元側に少なくとも10mm以上、好ましくは少なくとも15mm以上離れた位置に形成させることが好ましい。このような第2の屈曲又は湾曲形状(45)を備えた微細キャピラリー管においては、試料ステージ面(20)の上部スペースの確保が良好になり、顕微鏡装置(6)のワーキング空間内での上部構造物との接触回避等の点で好適な態様となる。
本発明に係る細胞搬送システム(1)の使用の一態様においては、本発明に係る微細キャピラリー管(4)は、その菅元側(44)を、細胞吸引及び突出の駆動及び制御を行う微少液量ポンプ(46)に接続した溶液供給管(47)等に接続して使用され得る。ここで微少液量ポンプ(46)としては、ポンプ振動が著しく低減され、且つ、1μL以下、好ましくは0.1pL〜0.1μLの微少液量の溶液の吸引及び吐出操作を実現可能とするポンプを採用することができる。このような微少液量ポンプとしては、例えば、電気浸透流ポンプ、油充填式無振動ポンプ、ピエゾ駆動式ポンプ、キャピラリー内瞬時高温冷却式ポンプ、等の原理を使用したポンプを使用することが可能であるが、上記液量制御を可能とする機能を発揮し得るものであれば他の原理を利用した技術のものも使用可能である。
本発明に係る細胞搬送システムの使用態様では、本発明に係る微細キャピラリー管(4)は、微細キャピラリー管支持手段(48)に直接的に又は間接的に固定又は保定されて使用され得る。微細キャピラリー管支持手段(48)への固定は、微細キャピラリー管の管元部分、前記菅元部分に接続した溶液供給管、微少液量ポンプ本体、等を固定又は保定して保持する態様を挙げることができるが、具体的な態様は特に限定されない。
微細キャピラリー管支持手段(48)の構造としては、微細キャピラリー管の管先の位置固定を実現可能とする支持部材であれば特に制限無く如何なる構造のものも採用することが可能である。例えば、当該支持手段としては、それ自体の独自の架台を備えた自立型の支持部材を採用することが可能である。また、当該支持部材としては、他の装置部材等(例えば、顕微鏡装置本体、上記顕微鏡試料ステージ支持手段、等)への接続によって、微細キャピラリー管の位置固定を可能とする部材を採用することも可能である。
本発明に係る微細キャピラリー管支持手段(48)としては、微細キャピラリー管(4)のZ軸方向への移動を可能とする駆動手段を備えた態様とすることも可能である。また、本発明に係る微細キャピラリー管支持手段としては、ジョイステック等の操作手段(49)によって管先の位置調整動作を可能とする態様とすることも可能である。
[その他の構成物品]
本発明に係る細胞搬送システム(1)としては、上記に記載した顕微鏡試料ステージ(2)、制御手段(3)、微細キャピラリー管(4)、等以外の構成物品を含んでなるシステムが除外されるものではない。例えば、試料容器、各支持手段、微少液量ポンプ、入力手段、表示手段、等を含んでなるシステム態様も、本発明に係るシステムには含まれる。また、顕微鏡装置本体(6)に既に配設されて使用可能な状態のものについても、本発明に係る細胞搬送システムに含まれる。
2.上記細胞搬送システムが発揮する作用機能
本発明に係る細胞搬送システム(1)においては、上記段落1.に記載のシステム構成部材を顕微鏡装置(6)に配設使用することによって、1細胞単位での細胞搬送用途での使用が可能な高機能細胞搬送システムとして使用することが可能となる。
[自動ピント合わせ動作及び視認容易性]
本発明に係る細胞搬送システム(1)では、上記段落に記載した構成の作用により、1細胞搬送技術において必要となる試料容器(5)の底面へのピント合わせ動作を、顕微鏡試料ステージ面(20)(1物品)の自動的な移動動作「のみ」によって実現することが可能となる。これにより、本発明に係るシステムでは、オートフォーカス制御での焦点補正が正常に作動しない高コントラスト化した溶液に対しても自動的なピント合わせ動作の実行が可能となり、搬送元容器と搬送先容器のそれぞれの底面の相違に対応するピントが合う位置を次々に行き来させながら、細胞吸引と細胞吐出を連続して効率良く実行することが可能となる。
ここで、顕微鏡視野内の高コントラスト化に起因したオートフォーカス阻害現象は、大量の遺伝子解析等を伴う1細胞分析のように、搬送先容器に充填した極微量溶液への搬送時に頻発する現象である。そのため、オートフォーカス制御に依存したピント合わせを必要としない本発明に係る細胞搬送システム(1)は、当該用途における効率の良い作業性を提供する技術となり得る。
本発明に係る細胞搬送システム(1)においては、搬送元容器内の対象細胞を1細胞単位で所望の搬送先容器に搬送することを可能とする高い機能を備えた細胞搬送システムである。本発明に係る細胞搬送システム(1)では、対象細胞を1細胞単位にて微細キャピラリー管を使用して吸引及び吐出可能とする機能を有するものであるが、設定条件及び/又は装置構成によっては、2細胞以上の吸引又は吐出操作を実行することも可能である。また同様に、本発明に係る細胞搬送システム(1)の態様としては、細胞塊や組織片等を吸引又は吐出操作を実行可能とするものを排除するものでない。
本発明に係る細胞搬送システム(1)は、操作前において対象細胞が格納又は配置された搬送元容器(51)、並びに、移動先容器である搬送先容器(53)、等を試料容器保持手段(201)に設置して使用するものである。これらの試料容器を試料容器保持手段に設置する際には、アダプター部材等を用いる態様とすることも可能である。
ここで「搬送元容器」(51)としては、対象の細胞が容器内に格納又は容器上への配置が可能な上面開口した試料容器を挙げることができる。本発明に係るシステム(1)の通常の使用態様においては、当該容器(51)に細胞を培地等の溶液と共に格納又は配置した状態にして用いられる。当該容器形状としては特に制限はないが、細胞が個別に分注されている容器や、培養した分注元の細胞の培養液等が入った容器等を用いることが可能である。当該容器の具体的な態様として、マルチウェルプレート、培養用ディッシュ、PCRチューブ、培地リザーバー、スライドグラス、マイクロチップ、等の容器を挙げることができる。なお、本明細書中においては、スライドグラスやマイクロチップについても、試料容器に含まれるものとして用いることが可能である。
また「搬送先容器」(53)とは、対象の細胞の移動先である試料容器を指す。当該容器としては、上記搬送元容器で挙げたものと同様のものを用いることが可能であるが、分析用試薬や培養用培地が分注された微細容器を用いることが可能である。また、1細胞分析等での細胞搬送操作を行う場合にあっては、微細な微細ウェルを備えた48〜384穴等のマイクロウェルプレート、PCRチューブプレート、PCRキャップ、マイクロホールを備えたマイクロデバイス、スライドグラス様プレート上親水化スポット、等の容器を挙げることができる。
なお、本発明に係るシステムの技術的特徴を鑑みると、使用可能な搬送先容器(53)はこれらのみに制限されることを意味するものではない。本発明に係るシステム(1)においては、口径の大きい試料容器の使用が可能であることに加えて、従来の顕微鏡技術等では適用が困難であった微細ウェル等への細胞吐出を伴う効率的な細胞搬送が可能となる。
本発明に係る細胞搬送システム(1)では、搬送元容器及び搬送先容器等の底面にアクセスした微細キャピラリー管の先端(42)管内における細胞格納状態の確認を可能とするものである。
詳しくは、本発明に係る細胞搬送システム(1)では、微細キャピラリー管の先端微細構造(41)の独特な形状によって、微小ウェル等を微細キャピラリー管に垂直に又はほぼ垂直にアクセスさせた場合であっても、微細構造である管先部分が水平に又は適度な傾斜角度となるように試料容器(5)の底面にアクセスさせることが可能となる。これにより本発明に係るシステム(1)では、対物レンズ又は光源の配設が垂直方向にある場合であっても、光路が微細キャピラリー管の菅元側(44)に遮られないため、微細キャピラリー管の先端(42)管内の細胞の状態を視認することが可能となる。即ち、当該管先微細構造における管内への細胞吸引、及び、管内からの細胞吐出の状態の視認確認を行うことが可能となる。
ここで、微細キャピラリー管の管先(42)が試料容器(5)の底面に「アクセスした」とは、容器底面の上面に接触した状態だけでなく、管先が底面にある細胞を吸引可能な程度に近接した状態も含まれる。具体的な距離の数値として表現すると、例えば2mm以内、好ましくは1mm以内、より好ましくは0.5mm以内の範囲にて近接した状態が含まれる。
本発明に係るシステム(1)の使用態様では、微細キャピラリー管(4)を顕微鏡試料ステージ面(20)の上方に配設された状態にして、顕微鏡試料ステージ面(20)の3次元移動を実行することにより、管先(42)下方向からの移動による試料容器(5)のアクセス動作を実行するものである。
ここで、本発明に係る当該アクセス動作においては、対物レンズ(62)からのピント焦点が存在する位置(54)と微細キャピラリー管の管先(42)の位置を固定した状態にして、顕微鏡試料ステージ面(20)の自動的な移動動作「のみ」によって実行可能となる。当該動作においては、微細キャピラリー管の管先(42)を固定状態のままにして、試料容器(5)の上面開口部から底面方向への管先(42)のアクセス動作が実行される。
本発明に係る当該アクセス動作においては、試料ステージ面(20)の移動動作の後に細胞吸引又は吐出を行うために微細キャピラリー管の先端(42)位置を微調整する操作を行うことも可能であるが、基本動作として管先側を積極的に移動させることは必須ではない。
本発明に係るシステム(1)の仕様態様では、当該アクセス動作における微細キャピラリー管(4)の姿勢として、管先(42)が試料容器(5)の底面に対して水平に又は適度な傾きとなるように配設されることが好適である。具体的には、管先が搬送元容器及び搬送先容器の底面に対して、水平面に対して45°以内、好ましくは30°以内、より好ましくは20°以内、更に好ましくは10°以内の傾きであることが好適である。
ここで、本発明におけるアクセス動作においては、微少ウェルを備えたマイクロプレート等を用いた場合に、微細キャピラリー管の微細構造より菅元側構造部分を容器壁面に対して垂直に(又は、大きくても20°以内、好ましく10°以内)にしてアクセス動作を行う必要が生じるところ、本発明に係る微細キャピラリー管の先端微細構造(41)の特徴により、管先を水平に又は適度な傾斜角度となるようにして容器底面にアクセスさせることが可能となる。
[顕微鏡装置への配設使用]
本発明に係る細胞搬送システム(1)では、顕微鏡試料ステージ面(20)単体のみの自立制御によって、ピント合わせ動作を兼ね備えた微細キャピラリー管の管先(42)への自動アクセス動作が実行可能となる。そのため、本発明に係る細胞搬送システム(1)では、微細キャピラリー管(4)や対物レンズ(62)等の他部材の制御や連動動作等を伴うことなく、顕微鏡と一体化した装置構成となることを要しない細胞搬送システムの構築が可能となる。
本発明に係る細胞搬送システム(1)では、通常の顕微鏡装置(6)に配設した使用を可能とする構成物品からなるシステム構成部材を備えてなる。そのため、上記段落1.に記載のシステム構成部材を従来の一般的な顕微鏡装置(6)に配設することによって、1細胞搬送技術に使用可能な高機能細胞搬送システムとして使用することが可能となる。
本発明に係る細胞搬送システム(1)は、段落1.に記載のように、顕微鏡試料ステージ面(20)及び試料ステージ支持手段(25)の配置を、対物レンズ(62)との位置関係が適切となる態様に設計することによって、一般的な顕微鏡装置への配設使用が可能である。即ち、本発明に係る細胞搬送システムは、既存の顕微鏡装置(6)に対する汎用部材として使用する態様が可能である。
本発明に係る細胞搬送システム(1)の顕微鏡装置(6)への配設態様としては、一態様としては、本発明に係る顕微鏡試料ステージ(2)を顕微鏡装置本体が元々備えている試料ステージ(61)の上方に又は当該試料ステージ(61)と代替して配設する態様が挙げることができる。
また、本発明に係る微細キャピラリー管支持手段(48)の配設態様としては、顕微鏡装置(6)本体に又は本実施例に係る顕微鏡試料ステージ(2)を構成する部材の不動部分に固定して、微細キャピラリー管(4)を試料ステージ面(20)の上方に配設して用いる態様を挙げることができる。
ここで、本発明に係る細胞搬送システムの配設使用が可能な顕微鏡装置(6)としては、通常の光学顕微鏡装置への適用が可能である。当該配設使用が可能な顕微鏡装置(6)としては、正立顕微鏡又は倒立顕微鏡等のいずれに対しても適用することが可能である。また、実体顕微鏡への配設使用も可能である。また、蛍光顕微鏡装置への使用も可能である。
本発明に係る細胞搬送システムとしては、上記した顕微鏡装置(6)本体に既に配設されて使用可能な状態となっている構成されたシステム態様についても、本発明に係る細胞搬送システム(1)に含まれる。即ち、本発明においては、上記段落1.に記載の構成物品を含んでなる細胞搬送システムに加えて、更に顕微鏡装置を含んでなる態様のものも本発明に係る細胞搬送システム(1)に含まれる。また、最初から顕微鏡装置本体と一体化した製品とする態様も本発明に係る細胞搬送システム(1)の態様に含まれる。
[操作性の比較]
本発明に係る細胞搬送システム(1)は、例えば実施例3のような1細胞解析を想定した作業(即ち、細胞搬送元容器と搬送先容器の底面構造が異なり、且つ、搬送先容器の溶液が高コントラスト化している状況下)で使用した場合、細胞吸引から細胞吐出までに要する操作工程が次の4操作工程のみで実行可能となる。
即ち、i)顕微鏡試料ステージ面の自動移動及び自動ピント合わせ操作(Z軸方向への下方移動、XY方向への移動、Z軸方向への上方移動)、ii)搬送元容器での細胞吸引操作、iii)顕微鏡試料ステージ面の自動移動及び自動ピント合わせ操作(Z軸方向への下方移動、XY方向への移動、Z軸方向への上方移動)、iv)搬送先容器での細胞吐出操作、の「4つ」の操作工程のみで、簡便な操作のみで細胞搬送の実行が可能となる(図9参照)。
当該態様においては、搬送元容器と搬送先容器で底面形状が異なる場合を想定しているが、顕微鏡ステージ面の移動時にピント合わせ動作が同時的に行われるため、容器底を管先に移動させる動作とピント合わせ動作が「1動作のみ」によって達成可能となる。また、搬送先容器中の溶液としては、高コントラスト化してオートフォーカス制御が機能しない状況を想定しているが、本発明に係るシステムではオートフォーカス制御とは全く異なる原理により自動ピント合わせ動作を実行可能となる。
一方、これと同様の動作内容を、従来技術であるXY平面移動顕微鏡ステージにて用いて実行した場合に要する操作工程は、次の通りである。即ち、i)顕微鏡試料ステージ面の自動移動(XY方向への移動)、ii)微細キャピラリー管の下方移動操作、iii)手動によるピント合わせ、iv)搬送元容器での細胞吸引操作、v)微細キャピラリー管の上方移動操作、vi)顕微鏡試料ステージ面の自動移動(XY方向への移動)、vii)微細キャピラリー管の下方移動操作、viii)手動によるピント合わせ、ix)搬送先容器での細胞吐出操作、の「9つ」の操作工程が必要となる。
ここで、当該比較態様においては、オートフォーカスが機能しないことを補うために、「手動」によるピント合わせ操作が必要となる。更に、当該比較態様では、微細キャピラリー管と容器壁との接触を回避するため、微細キャピラリー管の上方及び下方への移動操作が必ず必要となる。
従来のXY平面移動顕微鏡ステージを備えた細胞搬送装置との必要工程数の相違は、細胞搬送操作の繰り返しが必要な多くなるほど作業効率の相違が顕著になる。即ち、本発明に係る細胞搬送システム(1)は、多検体解析や大規模解析であるほど作業効率に関する優位性を有するシステムであると認められる。
3.細胞搬送方法
本発明においては、上記細胞搬送システム(1)を用いることを特徴とする対象細胞を1細胞単位で所望の搬送先容器に搬送する方法に関する発明が含まれる。当該方法を構成する工程としては、上記段落に記載の操作手順等が参照される。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。以下、構造図や使用態様図等を参照して、本実施例にて製造した細胞搬送システムを説明する。
[実施例1]『細胞搬送システムの製造』
本発明に係る細胞搬送システムの一態様として、以下に示す構成物品を備えてなる細胞搬送システムを製造した。
(1)3次元自動移動顕微鏡試料ステージ
本実施例に係る細胞搬送システム(1)を構成するX軸、Y軸、及びZ軸方向への自動移動を可能とする顕微鏡試料ステージ(2)を製作した。本実施例に係る顕微鏡試料ステージ(2)の構造を図1〜3及び5に示す。
本実施例における顕微鏡試料ステージ(2)は、試料ステージ面(20)、X軸移動用アクチュエーター(22)、Y軸移動用アクチュエーター(23)、及びZ軸移動用アクチュエーター(24)から主として構成されてなる。
試料ステージ面(20)の上面は試料容器保持手段(201)を備えてなり、試料容器(5)を設置する中央付近に開口構造を備えてなる。
各アクチュエーターは、支持体部(221、231、241)、前記支持体部の内部に埋設された動力部(222、232、242)、及び前記動力部からの力により軸に沿った移動動作を行う駆動部(223、233、243)等を主要部材として構成される構造体である。各アクチュエーターは、各軸方向の自在移動を可能とする電動駆動手段を備えたアクチュエーター部材である。本実施例に係るアクチュエーターの動力部及び駆動部としては、DC(直流電源)駆動を利用したサーボモーター(RCP6ロボシリンダ、IAI社製)を用いた。
顕微鏡試料ステージ(2)の構成物品は、各物品が組み合わされて構成された状態にて顕微鏡試料ステージ支持手段(25)に固定保持されてなる。顕微鏡試料ステージ支持手段(25)は、顕微鏡装置(6)での配設使用時において、顕微鏡装置(6)の上面視及び正面視の両方の視点にて対物レンズ部分(62)を挟む位置に架台(251)を備え、両架台間に支持部材(252)が水平架橋されてなる構造体である。
顕微鏡試料ステージ支持手段の架橋された支持体(252)には、X軸移動用アクチュエーターの支持体部(221)が固定保持され、:前記X軸移動用アクチュエーターの駆動部(223)にはY軸移動用アクチュエーターの支持体部(231)が固定保持され、;前記Y軸移動用アクチュエーターの駆動部(233)にはZ軸移動用アクチュエーターの支持体部(241)が固定保持され、;前記Z軸移動用アクチュエーターの駆動部(243)には、顕微鏡試料ステージのステージ面(20)が固定されてなる。
顕微鏡試料ステージ(2)の移動制御は、本体とは別の筐体内に配置された半導体回路である制御手段(3)によって行われる。当該制御手段(3)には任意の3次元座標内の位置座標を記憶させることが可能であり、当該記憶情報に基づいて3つの各アクチュエーターの駆動量を連動して制御することにより、顕微鏡試料ステージの移動が行われる。本実施例に係るシステムでは、入力手段としてタッチパネルコントローラー(31)を備えてなり、位置座標を入力して記憶させることが可能である。
(2)特殊形状微細キャピラリー管
本実施例に係る細胞搬送システム(1)の構成物品である微細キャピラリー管(4)を製作した。本実施例に係る微細キャピラリー管の外観を図4に示す。
微細キャピラリー管(4)は、先端から1.25mmの位置の先端微細構造部分(41)に100°の第1の屈曲形状(43)を備えてなり、先端部分(42)は内径φ0.05mmの直円管形状である。第1の屈曲形状より菅元側(44)は、先端微細構造(41)より太い外径φ1mmの直円管形状で構成されてなり、第1の屈曲形状より菅元側22mmの位置に、第1の屈曲形状の屈曲方向とは反対の方向に105°屈曲した第2の屈曲形状(45)を備えてなる。
微細キャピラリー管(4)は、先端微細構造及び菅元側構造を含む全体がボロシリケイトガラスにて一体成型されてなる。
微細キャピラリー管(4)は、菅元側が微少液量ポンプ(46)側の溶液供給管(47)に接続されてなる。微少液量ポンプ(46)としては、油充填式無振動ポンプであるTOPickポンプ(ヨダカ技研株式会社製)を用いた。微少液量ポンプ(46)は、微細キャピラリー管支持手段(48)に接続され固定保持されてなる。本実施例においては、微細キャピラリー管支持手段(48)は、顕微鏡装置本体(6)に直接接続して固定可能な態様であり、ジョイステックを用いた操作手段(49)により管先位置の微調整が可能である。微細キャピラリー管(4)を試料ステージ面(20)の上方に配設した状態を撮影した写真像を図8に示した。
(3)顕微鏡装置への配設
本実施例では、上記細胞搬送システムの構成物品を市販の顕微鏡装置(6)である倒立式光学顕微鏡製品(CKX41、オリンパス社製)に配設したシステムを構築した。本実施例においては、上記製作した顕微鏡試料ステージ(2)は、顕微鏡装置(6)本体が元々備えているステージ面(61)の上方であり且つ照明手段(63)の下方の位置に配設して用いる態様を示す。また、本実施例においては、微細キャピラリー管支持手段(48)は、顕微鏡装置(6)本体が元々備えている試料ステージ(61)の側面に接続固定し、当該管先(42)が本実施例に係る顕微鏡試料ステージ面(20)の上方に配設して用いる態様を示す。
本実施例に係るシステム(1)では、3次元座標の位置情報の入力手段としてタッチパネルコントローラー(31)を備えてなる。また、顕微鏡像を映すモニター(32)を備えてなる。
(4)装置仕様
本実施例にて製造した細胞搬送システム(1)の仕様を以下に示す。
[顕微鏡試料ステージ]
X軸方向移動範囲: 20cm
Y軸方向移動範囲: 10cm
Z軸方向移動範囲: 5cm
ステージ移動速度: 5cm/秒
最小微移動単位: 5μm
[微少液量ポンプ]
種類: 油充填式無振動ポンプ
設定流量: 300〜900pL
[微細キャピラリー管]
先端微細構造: 先端1.25mmでの100°屈曲形状
管径: 先端内径φ0.05mm、菅元外径φ1mm
材質: 透明ボロシリケート製
[実施例2]『従来の細胞搬送システム技術との比較:自動ピント合わせ動作』
実施例1で製造した細胞搬送システム(本発明品1)を用いて1細胞解析を想定した操作を行う場合において、従来技術と比較した自動ピント合わせ動作の性能評価を行った。
粒径30μmのアガロース微粒子懸濁液を搬送元容器(51)であるスライドグラス上に載置し、当該スライドグラスを実施例1で製作した顕微鏡試料ステージ面(20)上の試料容器保持手段(201)に配置した。配置後、アガロース微粒子がスライドグラス底面に沈んだ状態となったことを確認した。
また、1μLの蒸留水を搬送先容器(53)であるポリプロピレン製の8連PCRキャップの底面に分注し、上記とは別の試料容器保持手段(201)に配置した。ここで、PCRキャップ底面の微量溶液は、表面張力により液面がドロップ状化していることを確認した。
次いで、スライドグラスの上側表面(容器底面)の3次元座標、及び、8連PCRキャップのうちの1つの底面の3次元座標を設定し、ピント焦点位置が対物レンズ4倍でワーキングディスタンス10mmになるよう設定した。次いで、スライドグラス上表面にピントが合った状態であることを確認して微細粒子の1つを微細キャピラリー管内に吸引し、8連PCRキャップの1つ容器の底面上面を微細キャピラリー管の管先位置に自動移動させ、手動での焦点合わせ等を行わない状態で顕微鏡像の状態を確認した。
その結果、顕微鏡試料ステージ面(20)を移動させて、搬送先である8連PCRキャップの底面を微細キャピラリー管の管先(42)の位置に移動させる操作を行うことによって、移動後に自動的にピントが合った状態となることが確認された。これは、対物レンズからのピント焦点が存在する位置(54)と微細キャピラリー管の管先(42)位置を固定した状態のままにして、容器側のみの位置調整にてピント焦点を合わせる動作を達成可能とした作用効果であると認められた(図9参照)。
一方、比較試験として、オートフォーカス制御による焦点補正機能を備えた従来の顕微鏡装置を用いて、上記8連PCRキャップ底の微量溶液に対する自動ピント合わせ操作を実行したところ、高コントラス化現象の発生により自動焦点補正が正常に機能せず、鮮明な顕微鏡像を得ることができなかった。
以上の結果から、本発明に係る細胞搬送システムにおいては、細胞搬送先の溶液がオートフォーカス制御の困難な高コントラスト化した微量溶液の場合であっても、ピント合わせ動作が問題なく実行可能であることが示された。
このことから、本発明に係る細胞搬送システムにおいては、1細胞解析を想定した作業(即ち、細胞搬送元容器と搬送先容器の底面構造が異なり、且つ、搬送先容器の溶液が高コントラスト化している状況下)であっても、顕微鏡試料ステージの移動動作を1動作行うのみによって、ピント合わせ動作を同時的に実行可能であることが示された。
[実施例3]『従来の細胞搬送システム技術との比較:操作効率の評価』
実施例1で製造した細胞搬送システム(本発明品1)を用いて1細胞解析を想定した細胞搬送操作を行った場合において、従来技術と比較した細胞搬送操作の効率評価を行った。
実施例1で製造した細胞搬送システム(本発明品1)に、実施例2に記載の方法と同様にして、アガロース微粒子が底面に沈んだ状態のスライドグラスと、1μLの蒸留水が分注されたポリプロピレン製の8連PCRキャップを、実施例1で製作した顕微鏡試料ステージ面(20)上の試料容器保持手段(201)に配置した。ここで、搬送元容器(51)であるスライドグラスと搬送先容器(53)であるPCRキャップとは、底面(液と接する上側面)の形状が異なる容器どうしであった。
次いで、スライドグラスの上側表面(容器底面)の3次元座標、及び、8連PCRキャップのそれぞれの底面の3次元座標を設定し、ピント焦点位置が対物レンズ4倍でワーキングディスタンス10mmになるよう設定した。スライドグラスから8連PCRキャップのそれぞれのホールに微細粒子を1つずつ搬送する操作を行った。
一方、比較試験として、従来技術であるXY平面移動顕微鏡試料ステージに、実施例1で製造した微細キャピラリー管を備えた支持手段を接続固定したシステム(比較品1)を構築し、同様にして微細粒子を1つずつ搬送する操作を行った。
その結果、本実施例で使用したスライドグラスとPCRキャップとでは両者の底面(液と接する面)の透過光量や厚さが異なるところ、それにも関わらず、顕微鏡ステージ移動動作及びピント合わせ動作を1動作のみで簡便に実行可能であることが示された。
具体的には、本発明に係る細胞搬送システム(本発明品1)では、対物レンズからのピント焦点が存在する位置(54)と微細キャピラリー管の管先(42)位置を固定した状態のまま、細胞搬送動作が可能となることが示された。当該動作の特徴により本発明品1では、細胞吸引から細胞吐出までの1回の動作に要する操作工程は、表2に示した4つの操作工程のみで実行可能であることが示された(図9参照)。また、これらの操作工程は簡便なボタン操作のみで実行可能であった。
それに対して、従来技術であるXY平面移動顕微鏡試料ステージ(比較品1)を用いた場合では、細胞吸引と細胞吐出を行うその都度にオートフォーカスが機能しないことを補うための手動ピント合わせ操作を要した。これに加えて比較品1を用いた操作では、微細キャピラリー管と容器壁との接触回避のために、顕微鏡試料ステージの平面移動の都度、微細キャピラリー管の上下移動操作が別途に必要であった。
最終的に、比較品1を用いて細胞吸引から細胞吐出までの1回の動作を行うためには、表2に示した9つの操作工程が必要であり、8連PCRキャップのそれぞれへの繰り返し操作を行う場合の労力は大きかった。
以上の結果が示すように、本発明に係るシステム(1)を用いて細胞搬送操作を行った場合、1細胞解析を想定した作業(即ち、細胞搬送元容器と搬送先容器の底面構造が異なり、且つ、搬送先容器の溶液が高コントラスト化している状況下)であっても、顕微鏡試料ステージ面(20)の移動動作とピント合わせ動作が同時的に実行可能であり、連続的な細胞搬送操作を効率的行うことが可能であることが示された。
これにより本発明に係る細胞搬送システム(1)では、細胞搬送操作の繰り返し工程が多く必要な多検体解析であるほど、作業効率の点での利点を発揮し得る構成的特徴を備えたシステムであることが示された。
Figure 0006873456
1.細胞搬送システム
2.顕微鏡試料ステージ(3次元空間移動試料ステージ)
20.試料ステージ面
201.試料容器保持手段
21.駆動手段
22.X軸移動用アクチュエーター
221.支持体部
222.動力部
223.駆動部
225.ケーブル
23.Y軸移動用アクチュエーター
231.支持体部
232.動力部
233.駆動部
235.ケーブル
24.Z軸移動用アクチュエーター
241.支持体部
242.動力部
243.駆動部
244.ケーブル
25.顕微鏡試料ステージ支持手段
251.架台
252.支持部材
3.制御手段
31.入力手段(タッチパネルコントローラー)
32.モニター(顕微鏡像出力手段)
4.微細キャピラリー管
41.先端微細構造
42.管先
43.第1の屈曲又は湾曲形状
44.菅元側管構造
45.第2の屈曲又は湾曲形状
46.微少液量ポンプ
47.溶液供給管
48.微細キャピラリー管支持手段
49.微細キャピラリー管操作手段
5.試料容器
51.搬送元容器
52.試料
53.搬送先容器
54.ピント焦点が存在する位置
6.顕微鏡装置
61.元々の顕微鏡試料ステージ
62.対物レンズ
63.照明手段
64.接眼レンズ
本発明は、微小液量の細胞搬送を可能とする理化学機器として、細胞搬送操作を必要とする様々な産業分野で有効に利用されることが期待される。例えば、生命科学分野、医学分野、薬学分野、食品分野、バイオ関連製品開発分野、農業分野、畜産分野、等の各産業分野において有効に利用されることが期待される。
本発明は、特には1細胞解析の効率を大幅に向上させる基盤技術として有効に利用され、がん研究、幹細胞研究、iPS細胞研究、バイオ医薬品研究、微生物物質生産等の研究進展にも貢献することが期待される。

Claims (3)

  1. 試料ステージ面に試料容器である搬送元容器及び搬送先容器を保持した細胞搬送システムを用いて、当該細胞搬送システムが備える微細キャピラリー管の先端微細構造の管先にて当該試料ステージ面の搬送元容器から搬送先容器内の溶液に、対象細胞を1細胞単位にて搬送する方法であって、;
    前記細胞搬送システムが、対象細胞を1細胞単位で所望の搬送先容器に搬送することを可能とする細胞搬送システムであって、(構成物品A)試料ステージ面に試料容器保持手段を備え且つX軸、Y軸、及びZ軸方向への自動移動が可能な駆動手段を備えた顕微鏡試料ステージ、(構成物品B)前記試料ステージ面に関する3次元座標が記憶可能であり、前記記憶された相対的位置情報に基づいて任意の設定された3次元座標へ前記試料ステージ面を自動移動させる制御手段、(構成物品C)前記試料ステージ面の上方に配設される微細キャピラリー管であって、細胞吸引及び細胞吐出を行う先端微細構造が100〜120°の範囲にある屈曲又は湾曲した形状を含んでなる微細キャピラリー管、並びに、(構成物品D)光学顕微鏡装置、を備えてなる、細胞搬送システムであり、;
    (搬送先容器内の溶液)前記搬送先容器内の溶液が極微量で表面張力によって液面がドロップ状化して顕微鏡像が高コントラスト化した溶液であり、;
    (工程A)光学顕微装置の対物レンズからのピント焦点が存在する位置を搬送元容器の底面に合う位置とし、微細キャピラリー管の先端微細構造の管先を前記ピント焦点が合った状態で管内に細胞吸引できる位置とし、前記ピント焦点の位置及び微細キャピラリー管の先端微細構造の管先の位置を固定した状態にし、
    (工程B)当該試料ステージ面に保持された前記搬送先容器の底面を、予め記憶された相対的位置情報に基づいて設定された3次元座標へ当該試料ステージ面をZ軸方向への下方移動、XY平面方向での移動、及びZ軸方向への上方移動の順に自動移動させることによって移動させ、当該移動によって当該対物レンズからのピント焦点が存在する位置及び先端微細構造の管先を固定した状態のままで当該搬送先容器内の微量溶液に対するピント合わせ動作を行う、;
    工程を含む、前記対象細胞を1細胞単位にて搬送する方法
  2. 前記微細キャピラリー管の先端微細構造が、内径5〜500μmの管構造であって、管先から5mm以下の範囲内に屈曲又は湾曲した形状部分を含んでなる先端微細構造である、請求項1に記載の対象細胞を1細胞単位にて搬送する方法。
  3. 前記顕微鏡試料ステージに備えられた駆動手段が、0.1〜100μm単位での移動動作を可能とする駆動部を有する第1〜第3のアクチュエーターがそれぞれの動作軸が3次元方向で異なる角度となるように配設されてなる構造、を含むものであり、;
    顕微鏡試料ステージ支持手段に第1のアクチュエーターの支持体部が固定保持され、前記第1のアクチュエーターの駆動部に第2のアクチュエーターの支持体部が固定保持され、前記第2のアクチュエーターの駆動部に第3のアクチュエーターの支持体部が固定保持され、前記第3のアクチュエーターの駆動部に顕微鏡試料ステージのステージ面が固定されるものである、;
    請求項1又は2に記載の対象細胞を1細胞単位にて搬送する方法。
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