(5.詳細な説明)
(5.1 定義)
特許、出願、公開出願、及び他の刊行物は全て、引用により完全に組み込まれる。本明細書中の用語に対して複数の定義が存在する場合、別途明記されない限り、この節における定義が優先される。別途定義されない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語は全て、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書で使用されるように、「約(about)」又は「約(approximately)」という用語は、所与の値又は範囲の20%以内、好ましくは10%以内、及びより好ましくは5%以内(又は1%もしくはそれ未満)を意味する。
本明細書で使用されるように、「活性画分」という用語は、単独の又はそれと結合している関連分子もしくは残基、例えば、糖もしくはリン酸残基と一体になったタンパク質分子のポリペプチド鎖の任意の断片又は前駆体、或いはタンパク質分子もしくは糖残基それ自体の凝集体を意味することが意図され、但し、該画分は、細胞内のCRBNの天然の結合タンパク質と実質的に同様の活性を有する。
本明細書で使用されるように、「投与する」又は「投与」は、例えば、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内送達、及び/又は本明細書に記載のもしくは当技術分野で公知の任意の他の物理的送達方法によって、物質(例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子)を、それが体外に存在するあり方で、患者に注射するか又は別の方法で物理的に送達する行為を指す。CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状が治療されることになっているとき、物質の投与は、通常、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状の発症後に行われる。CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状が予防されることになっているとき、物質の投与は、通常、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状の発症前に行われる。
「ブロモドメイン含有7(BRD7)のアンタゴニスト」及び「BRD7アンタゴニスト」という用語は、本明細書で互換的に使用されており、BRD7の存在及び/又は少なくとも1つの生体活性を直接的又は間接的に阻害するか、下方調節する(例えば、抑制するもしくは阻害する)か、又は負に調節する薬剤を意味することが意図される。いくつかの実施態様において、BRD7のアンタゴニストは、CNS細胞の増殖及び分化におけるBRD7の阻害的機能を抑制する。いくつかの実施態様において、BRD7のアンタゴニストは、BRD7タンパク質の阻害因子である。本明細書で使用されるように、「BRD7タンパク質の阻害因子」は、BRD7の産生及び/又は作用が減弱し、低下し、又は部分的に、実質的に、もしくは完全に妨害もしくは阻止されるような方法でBRD7タンパク質の産生及び/又は作用を調節する任意の分子を意味することが意図される。「BRD7タンパク質の阻害因子」という用語は、BRD7産生の阻害因子及びBRD7作用の阻害因子を包含することが意図される。
「Ikarosのアンタゴニスト」及び「Ikarosアンタゴニスト」という用語は、本明細書で互換的に使用されており、Ikarosの存在及び/又は少なくとも1つの生体活性を直接的又は間接的に阻害するか、下方調節する(例えば、抑制するもしくは阻害する)か、又は負に調節する薬剤を意味することが意図される。いくつかの実施態様において、Ikarosのアンタゴニストは、CNS細胞の増殖及び分化におけるIkarosの阻害的機能を抑制する。いくつかの実施態様において、Ikarosのアンタゴニストは、Ikarosタンパク質の阻害因子である。本明細書で使用されるように、「Ikarosタンパク質の阻害因子」は、Ikarosの産生及び/又は作用が減弱し、低下し、又は部分的に、実質的に、もしくは完全に妨害もしくは阻止されるような方法でIkarosタンパク質の産生及び/又は作用を調節する任意の分子を意味することが意図される。「Ikarosタンパク質の阻害因子」という用語は、Ikaros産生の阻害因子及びIkaros作用の阻害因子を包含することが意図される。
「CRBN活性化因子」又は「CRBNの活性化因子」という用語は、本明細書で互換的に使用されており、CRBNの存在及び/又は少なくとも1つの生体活性を直接的又は間接的に上方調節する(例えば、刺激する)か又は正に調節する薬剤を意味することが意図される。いくつかの実施態様において、「CRBN活性化因子」(又は「CRBNの活性化因子」)は、CRBNの産生及び/又は作用が減弱することも、低下することも、部分的に、実質的に、もしくは完全に妨害されることも阻止されることもないような方法でCRBNタンパク質の産生及び/又は作用を調節する任意の分子を意味することが意図される。いくつかの実施態様において、CRBNの活性化因子は、CNS細胞の増殖及び分化における阻害的機能を抑制する。ある実施態様において、CRBNの活性化因子には、CRBNタンパク質の能動的調節因子、CRBN遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、又はその阻害タンパク質に対するそのアンチセンス化合物、及びCRBNが上方調節されている幹細胞又は神経始原細胞/前駆細胞が含まれるが、これらに限定されない。「CRBN活性化因子」(又は「CRBNの活性化因子」)という用語は、CRBN産生の活性化因子及びCRBN作用の上方調節因子を包含することが意図される。
本明細書で使用される「自己の」という用語は、それらが由来した同じ個体に再び埋め込まれる器官、組織、細胞、流体、又は他の生体活性分子を指す。
本明細書で使用されるように、「CNS細胞」という用語及び類似の用語は、限定されないが、脊髄又は脳を含む、CNSの細胞を指す。一実施態様において、該CNS細胞は、神経細胞である。別の実施態様において、該CNS細胞は、ニューロンである。他の実施態様において、該CNS細胞は、グリア細胞である。別の実施態様において、該CNS細胞は、放射状グリアである。別の実施態様において、該CNS細胞は、希突起神経膠細胞である。また別の実施態様において、該CNS細胞は、星状細胞である。
本明細書で使用されるように、「CNS始原細胞」、「CNS細胞の始原細胞」、「CNS始原細胞/前駆細胞」という用語及び類似の用語は、例えば、CNS細胞へと分化することができる幹細胞及び他の始原細胞/前駆細胞を指す。一実施態様において、該CNS始原細胞/前駆細胞は、神経幹細胞である。他の実施態様において、該CNS始原細胞/前駆細胞は、神経始原細胞/前駆細胞である。他の例示的な幹細胞及び始原細胞/前駆細胞は、本明細書中の別所に提供されている。
「CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病」及び「CNS細胞媒介障害」は互換的に使用されており、CNS細胞の機能の欠損又は他の欠陥もしくは欠如によって完全に又は部分的に引き起こされるか、或いはこれらの結果として生じるものである任意の疾患を指す。ある実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、及び他の障害、例えば、筋萎縮性側索硬化症;多発性硬化症;進行性運動衰弱;免疫性神経障害、CNS外傷;パーキンソニズムを伴うアルツハイマー病;運動緩慢;無動;細かい運動制御及び手指の器用さを損なう運動障害;発声不全;単調な発話;硬直;ジストニア;パーキンソン病と関連する炎症;顔、顎、舌、姿勢の振戦;パーキンソン病様歩行;すり足歩行;小刻み歩行;加速歩行;気分、認知、感覚、睡眠の障害;認知症;鬱病;薬物誘発性パーキンソニズム;血管性パーキンソニズム;多系統萎縮症;進行性核上麻痺;一次性タウ病変を有する障害;皮質基底核神経節変性症;認知症を伴うパーキンソニズム;多動性障害;舞踏病;ジストニア;ウィルソン病;トゥレット症候群;本態性振戦;ミオクローヌス;遅発性運動障害、又はこれらの2つ以上の任意の組合せである。本明細書で使用されるように、「CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病」には、前述のもののいずれかによって引き起こされるか、又はこれに続発する、疾患、障害、又は疾病が含まれる。ある実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、(例えば、平均又は中央値によって決定したとき)母集団に存在するCNS細胞の相対的な数又はパーセンテージよりも低いCNS細胞の相対的な数又はパーセンテージを特徴とする。他の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、(例えば、平均又は中央値によって決定したとき)母集団に存在するCNS細胞機能よりも低いCNS細胞機能を特徴とする。
本明細書で使用されるように、「組成物」という用語は、指定された成分(例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子)を、任意に、指定された量で含有する製品、及び任意に、指定された量の指定された成分の組合せから直接的又は間接的に得られる任意の製品を包含することが意図される。
本明細書で使用される「培養する」という用語は、細胞の繁殖又は生存を支持するのに十分な条件下、及び細胞の繁殖又は生存を支持するのに十分な期間、ある環境で培養することによる、細胞、細胞の集団、組織、又は器官の繁殖又は培養を指す。培養することは、細胞又は細胞の集団、例えば、CNS細胞を増幅又は増殖させることを含むことができる。
ポリペプチドとの関連において、本明細書で使用される「誘導体」という用語は、アミノ酸残基の置換、欠失、又は付加の導入によって改変されているポリペプチド又はポリペプチドの断片のアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。本明細書で使用される「誘導体」という用語はまた、例えば、任意の種類の分子のポリペプチドへの共有結合によって化学的に修飾されているポリペプチド又はポリペプチドの断片を指す。例えば、限定するものではないが、ポリペプチド又はポリペプチドの断片は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への結合などによって化学的に修飾することができる。誘導体は、結合した分子の種類又は位置のどちらかが天然ペプチドもしくはポリペプチド又は出発ペプチドもしくはポリペプチドと異なるように修飾される。誘導体は、ペプチド又はポリペプチド上に天然に存在する1以上の化学基の欠失をさらに含む。ポリペプチド又はポリペプチドの断片の誘導体は、限定されないが、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む、当業者に公知の技法を用いる化学修飾によって化学的に修飾することができる。さらに、ポリペプチド又はポリペプチドの断片の誘導体は、1以上の非典型的アミノ酸を含有することができる。ポリペプチド誘導体は、本明細書に記載のポリペプチド又はポリペプチドの断片と同様の又は同一の機能を保有し得る。
本明細書で使用される「有効量」という用語は、所与のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、及び/又はこれらに関連する症状の重症度及び/又は持続期間を低下させ及び/又は改善するのに十分である療法(例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、CRBN活性化因子、又は医薬組成物)の量を指す。この用語はまた、所与のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病の発達もしくは進行の低下もしくは改善、所与のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病の再発、発生、もしくは発症の低下もしくは改善、及び/又は別の療法(例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子以外の療法)の予防もしくは治療効果の改善もしくは増強に必要な量を包含する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量は、約0.1mg/kg(対象の重量1kg当たりのBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子のmg)〜約100mg/kgである。ある実施態様において、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kg、もしくは約100mg/kg(又はこれらの間の範囲)である。いくつかの実施態様において、本明細書で使用される「有効量」はまた、指定された結果(例えば、細胞内のCRBN生物活性の調節;又はCNS細胞の集団の増幅)を達成するための本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の量を指す。
本明細書で使用される「生着」という用語は、移植されたCNS細胞(又はそのCNS始原細胞/前駆細胞)が宿主組織によって受容され、その環境で生存し、存続する過程を指す。ある実施態様において、移植されたCNS細胞はさらに再生又は増殖する。
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、薬物用の希釈剤、ビヒクル、防腐剤、結合剤、又は安定化剤として一般に使用される不活性物質を指し、タンパク質(例えば、血清アルブミンなど)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、グリシン、ヒスチジンなど)、脂肪酸及びリン脂質(例えば、アルキルスルホネート、カプリレートなど)、界面活性剤(例えば、SDS、ポリソルベート、非イオン性界面活性剤など)、糖類(例えば、スクロース、マルトース、トレハロースなど)、並びにポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトールなど)を含むが、これらに限定されない(引用により完全に本明細書中に組み込まれる、レミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(1990) Mack Publishing Co., Easton, PAも参照されたい)。
本明細書で使用されるように、細胞の集団は、それがインビトロ又はインビボで増殖して、細胞***によって他の細胞を生じる場合、「増幅している」。細胞の増幅は、細胞が、例えば、培養物中で増殖するときに自然に起こり得るし、或いは特定の成長条件、例えば、細胞培養プレートの表面におけるコンフルエンス、最小細胞密度、又は成長因子、分化因子、もしくはシグナル伝達因子などの薬剤の添加を必要とする場合もある。ある実施態様において、該細胞は、CNS細胞である。他の実施態様において、該細胞は、CNS始原細胞である。他の実施態様において、該細胞は、CNS前駆細胞である。他の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。また他の実施態様において、該細胞は、神経幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、神経始原細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、神経前駆細胞である。他の実施態様において、該細胞は、神経細胞又はニューロンである。
本明細書で使用されるように、「機能的誘導体」という用語は、当技術分野で公知の手段によって、残基又はNもしくはC末端基上の側鎖として生じる官能基から調製し得る、細胞内のCRBNの天然の結合タンパク質の誘導体、並びにそのムテイン及び融合タンパク質を含むことが意図され、これらは、医薬として許容し得るものであり続ける限り、例えば、それを含有する組成物に対して毒性特性を付与しない限り、本明細書に包含される。
本明細書で使用される「生成する(generate)」、「生成」、及び「生成する(generating)」という用語は、対象における新しい細胞の産生を指す。いくつかの実施態様において、細胞の生成は、細胞の再生を含む。ある実施態様において、細胞の生成は、細胞の生存、生着、及び/又は増殖の改善を含む。ある実施態様において、該細胞は、CNS細胞である。他の実施態様において、該細胞は、CNS始原細胞である。他の実施態様において、該細胞は、CNS前駆細胞である。
本明細書で使用されるように、「宿主対移植片(HVG)拒絶反応」又は「宿主対移植片応答」という用語は、宿主免疫系細胞が外来の移植された(grafted)又は移植された(transplanted)材料(例えば、CNS細胞)を攻撃する細胞媒介性反応を指す。本明細書で使用されるように、「移植片対宿主(GVH)拒絶反応」又は「移植片対宿主応答」という用語は、移植された材料のT細胞が宿主の抗原と反応する細胞媒介性反応を指す。
本明細書で使用される「宿主」という用語は、動物、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトを指す。
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、核酸分子でトランスフェクトされた特定の対象細胞、及びそのような細胞の子孫又は潜在的子孫を指す。そのような細胞の子孫は、後続の世代で生じ得る突然変異もしくは環境的影響又は宿主細胞ゲノムへの核酸分子の組み込みのために、核酸分子でトランスフェクトされた親細胞と同一でない場合がある。
本明細書で使用される「免疫調節剤(immunomodulatory agent)」という用語及び限定されないが、免疫調節剤(immunomodulatory agents)を含む、その変化形は、宿主の免疫系を調節する薬剤を指す。ある実施態様において、本明細書に提供される併用療法で使用される免疫調節剤には、BRD7アンタゴニストも、Ikarosアンタゴニストも、CRBN活性化因子も含まれない。免疫調節剤には、小分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、無機分子、模倣剤、及び有機分子が含まれるが、これらに限定されない。「小分子」という用語及び類似の用語は、ペプチド、ペプチドミメティック、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、1モル当たり約10,000グラム未満の分子量を有する有機又は無機化合物(すなわち、ヘテロ有機化合物及び/又は有機金属化合物を含む)、1モル当たり約5,000グラム未満の分子量を有する有機又は無機化合物、1モル当たり約1,000グラム未満の分子量を有する有機又は無機化合物、1モル当たり約500グラム未満の分子量を有する有機又は無機化合物、並びにそのような化合物の塩、エステル、及び他の医薬として許容し得る形態を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、免疫調節剤は、免疫刺激剤である。具体的な実施態様において、免疫調節剤は、免疫抑制剤である。
本明細書で使用されるように、「免疫抑制剤」という用語は、宿主内の外来細胞、例えば、移植されたCNS細胞もしくはそのCNS始原細胞/前駆細胞に対する免疫反応を予防し、該免疫反応の発生を遅延させ、又は該免疫反応の強度を低下させる任意の薬剤を指す。ある実施態様において、本明細書に提供される免疫抑制剤は、宿主免疫系によって非自己と識別される細胞に対する細胞性免疫応答を抑制する。例示的な免疫抑制剤としては、デキサメタゾン、シクロスポリンA、アザチオプリン、ブレキナール、グスペリムス、6-メルカプトプリン、ミゾリビン、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、葉酸類似体(例えば、デノプテリン、エダトレキセート、メトトレキセート、ピリトレキシム、プテロプテリン、Tomudex(登録商標)、トリメトレキセート)、プリン類似体(例えば、クラドリビン、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チアグアニン)、ピリミジン類似体(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ドキシフルリジン、エミテフール、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、テガフール)、フルオシノロン、トリアミノロン(triaminolone)、酢酸アネコルタブ、フルオロメトロン、メドリゾン、コルチコステロイド(例えば、アセトニド、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロベタゾール-17-プロピオネート、酢酸コルチゾン、デソニド、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、デキサメタゾン、フルオシノロン、アセトニド、フルオシノニド、カプロン酸フルオコルトロン、ピバリン酸フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン、フルオコルトロン、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロ酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン-17-アセポネート、ヒドロコルチゾン-17-ブテプレート、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、ヒドロコルチゾン-17-バレレート、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、プレドニカルベート、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-ブチレート、プレドニゾロン、プレドニゾン、ピバル酸チキソコルトール、もしくはトリアムシノロンアルコール)、CD3に対する抗体、CD20に対する抗体、抗胸腺細胞グロブリン、シクロホスファミド、FK506、ミコフェノール酸、15-デオキシスペルグアリン、ミモリビン(mimoribine)、ミソプロストール、OKT3抗体、抗IL-2受容体抗体、又はこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。他の免疫抑制剤としては、当業者に公知の広範囲の受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、及び抗体が挙げられる。
本明細書で使用される「免疫応答」という用語は、外来物質に対する免疫系応答を指す。そのような免疫応答としては、抗体産生、移植もしくは移植片拒絶反応、炎症、又は抗原に対する抗原特異的リンパ球の応答を挙げることができるが、これらに限定されない。免疫応答は、当技術分野で公知の任意の手段によって、例えば、移植された細胞が生着に成功したか、それとも拒絶されたかを決定することによって検出することができる。移植片拒絶反応は、例えば、生存について染色するか、又は移植後の好適な時点で移植された材料の部位で免疫細胞化学染色を実施することにより解析することができる。移植された細胞又は組織が該部位で依然として検出可能であるか、又はさらに増殖して細胞もしくは組織塊になった場合、移植された細胞又は組織は生着に成功している(例えば、拒絶がほとんど又は全くない)。例えば、本明細書に提供される免疫調節剤、例えば、免疫抑制剤を用いることによって、免疫応答を抑制又は妨害し、それにより、生着に成功する機会を増加させることができる。ある実施態様において、(例えば、移植された材料上の抗原に特異的に結合する)特異的抗体の産生が、当技術分野で公知の免疫学的方法、例えば、ウェスタンブロット解析、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫染色、及び免疫沈降を用いて検出される場合、免疫応答が生じている。
本明細書で使用される「免疫抑制」という用語は、対象の免疫応答の強度を減少させ又は該免疫応答を検出未満のレベルにまで消失させるのに有効な量での(例えば、免疫調節剤、例えば、免疫抑制剤の投与による)免疫応答の予防を指す。本明細書で使用される「免疫抑制」という用語はまた、免疫応答の強度の減少を指す。いくつかの実施態様において、免疫応答の強度は、免疫抑制剤を受けていない移植レシピエントの免疫応答の強度の約5%〜約100%、例えば、約50%〜100%又は約75%〜約100%減少している。ある実施態様において、免疫応答の強度は、移植された材料が拒絶される時点を決定することによるか、又は免疫応答強度と直接相関する移植された材料に結合することができる抗体の量を評価することによって測定される。他の実施態様において、免疫応答強度は、抗体が検出される時点を評価することによって決定される。本明細書で使用されるように、「免疫抑制」という用語はまた、免疫抑制剤を受けなかった移植レシピエントと比較したときの、免疫応答の出現又は発生の遅延を指す。そのような遅延は、短い遅延(例えば、1〜24時間、1〜7日、もしくは1〜4週間、又はその任意の区間)、或いは長い遅延(例えば、1、2、3、6、もしくは9カ月、又は1年、2年、5年、もしくは10年、又はそれより長い間、或いはその任意の区間)を含む、任意の長さのものであることができる。
本明細書で使用されるように、他の療法の投与との関連における「組み合わせて」という用語は、複数の療法の使用を指す。「組み合わせて」という用語の使用は、療法が対象に投与される順序を制限するものではない。第1の療法を、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を有していたか、それを有しているか、又はそれに罹患しやすい対象への第2の療法の投与の前(例えば、1分、45分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もしくは12週間前)、該投与と同時、又は該投与の後(例えば、1分、45分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もしくは12週間後)に投与することができる。任意の追加の療法を他の追加の療法とともに任意の順序で投与することができる。ある実施態様において、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を、1以上の療法(例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニストでも、Ikarosアンタゴニストでも、CRBN活性化因子でもなく、かつCNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を予防、治療、管理、及び/又は改善するために現在投与されている療法)と組み合わせて投与することができる。本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と組み合わせて投与することができる療法の非限定的な例としては、鎮痛剤、麻酔剤、抗生物質、免疫調節剤、又は「米国薬局方(U.S. Pharmacopoeia)」及び/もしくは「医師の卓上参考書(Physician's Desk Reference)」に掲載されている任意の他の薬剤が挙げられる。
「単離された」又は「精製された」BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子が由来する細胞もしくは組織源由来の細胞物質もしくは他の夾雑タンパク質を実質的に含まないものであり、又は化学合成される場合、化学前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まないものである。「細胞物質を実質的に含まない」という言葉は、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子が、それが単離されるか又は組換えにより産生される細胞の細胞成分から分離されている、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の調製物を含む。したがって、細胞物質を実質的に含まないBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子には、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、又は5%未満の異種タンパク質(「夾雑タンパク質」とも呼ばれる)を有するBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の調製物が含まれる。BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子が組換えにより産生される場合、それは、培養培地を実質的に含まないものであることができ、すなわち、培養培地は、タンパク質調製物の容量の約20%、10%、又は5%未満に相当する。BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子が化学合成によって産生される場合、それは、化学前駆物質又は他の化学物質を実質的に含まないものであることができ、すなわち、それは、タンパク質の合成に関与する化学前駆物質又は他の化学物質から分離されている。したがって、そのようなアンタゴニストの調製物は、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、5%未満の化学前駆物質又は対象となるアンタゴニスト以外の化合物を有する。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、単離又は精製されている。
「単離された」核酸分子は、核酸分子の天然の源に存在する他の核酸分子から分離されている核酸分子である。さらに、「単離された」核酸分子、例えば、cDNA分子は、他の細胞物質を実質的に含まないものであり、又は組換え技法によって産生される場合は、培養培地を実質的に含まないものであり、又は化学合成される場合は、化学前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まないものであることができる。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子をコードする核酸分子は、単離又は精製されている。
本明細書で使用されるように、細胞(例えば、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞)を「単離する」とは、細胞を組織試料(例えば、CNS組織)から解離させるか、又は別の方法で取り出し、該細胞を該組織中の他の細胞又は非細胞から分離するプロセスを指す。単離された細胞は、通常、他の細胞型の混入がなく、かつ通常、繁殖及び増幅させることができる。いくつかの実施態様において、単離された細胞は、該細胞の解析、産生、又は増幅への該細胞の利用を妨げない少量の他の細胞型の存在下で存在する。単離された細胞の集団は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%純粋、又はその任意の区間であることができる。具体的な実施態様において、単離された細胞の集団は、少なくとも98%又は少なくとも99%純粋である。いくつかの実施態様において、該単離された細胞は、単離されたCNS細胞である。
本明細書で使用されるように、「管理する(manage)」、「管理する(managing)」、及び「管理」という用語は、対象が療法(例えば、予防剤又は治療剤)から得る有益な効果を指し、該療法は、該療法の治癒をもたらすものではない。ある実施態様において、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病の進行又は悪化を予防するために、対象に、1以上の療法(例えば、予防剤又は治療剤、例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子)を投与して、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病、これらの1以上の症状を「管理する」。
本明細書で使用されるように、「神経変性疾患」という用語は、ニューロンの死を含む、ニューロンの構造又は機能の進行性消失の状態を有する疾患を意味することが意図される。例示的な神経変性疾患としては、パーキンソン病、アルツハイマー病、及びハンチントン病、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、ハンチントン病(HD)、脊髄小脳性運動失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、並びに関連障害が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される「任意の」又は「任意に」という用語は、その後に記載される事象又は状況が生じても生じなくてもよいこと、及び該記載が、限定するものではないが、該事象又は状況が生じる場合とそれが生じない場合とを含むことを意味する。
本明細書で使用される「医薬として許容し得る」という用語は、動物、より具体的にはヒトでの使用について、連邦政府もしくは州政府の規制当局に承認されているか、又は米国薬局方、欧州薬局方、もしくは他の一般に認められた薬局方に掲載されていることを意味する。本明細書で使用されるように、「医薬として許容し得る」という用語は、活性成分の生物活性の有効性を妨げず、かつそれが投与される宿主にとって毒性がない、任意の担体を包含することも意図される。例として、非経口投与のために、活性タンパク質を、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン、及びリンガー溶液などのビヒクル中の注射用単位剤形として調剤することができる。
本明細書で使用されるように、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「核酸」、「核酸分子」という用語及び他の類似の用語は互換的に使用されており、DNA、RNA、mRNAなどを含む。
本明細書で使用されるように、損傷した組織との関連における「保持する(preserve)」、「の保持」、及び「保持する(preserving)」という用語は、該組織がさらに損傷したり、障害されたりしないような、又はさらなる損傷もしくは障害の速度が本明細書に提供される方法の非存在下での速度と比べて減速するような、該組織又はその機能の保護及び/又は維持を指す。ある実施態様において、損傷した組織を保持することは、CNS細胞及び/又はそのCNS細胞機能の破壊の予防又は軽減を含む。
本明細書で使用されるように、「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」、及び「予防」という用語は、本明細書に提供される療法又は療法の組合せ(例えば、予防剤又は治療剤、例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の組合せ)の投与によって結果として得られる、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、及び/又はこれらに関連する症状の発症、再発、発生、又は拡大の完全な又は部分的な阻害を指す。予防は、例えば、特定の障害を有する素因がある対象におけるものであることができる。
本明細書で使用されるように、「始原細胞」は、それ自体よりも分化している子孫を生み出す能力を有する細胞を意味することが意図される。例えば、この用語は、増殖可能であり、かつ分化した又は分化可能な娘細胞を次に生じることができる多数の母細胞を生成させる能力を有するより多くの始原細胞を生じることが可能である、未分化細胞又は最終分化に達しない程度まで分化した細胞を指すことができる。ある実施態様において、始原細胞という用語は、胚性細胞及び胚性組織の漸進的多様化で起こるように、その子孫(descendant)(子孫(progeny))が、分化によって、例えば、個々の個性を完全に獲得することによって、多くの場合、異なる方向に特殊化する一般的な母細胞を指す。細胞分化は、典型的には多くの細胞***を通じて起こる複雑なプロセスである。分化した細胞は、それ自体多能性細胞に由来する多能性細胞などから生じることができる。これらの多能性細胞の各々を幹細胞であるとみなすことができる一方で、各々が生じ得る細胞型の範囲はかなり異なり得る。一部の分化した細胞は、より大きな発生的可能性のある細胞を生じる能力も有する。そのような能力は、天然のものであってもよく、様々な因子を用いた処理によって人工的に誘導されてもよい。この定義によれば、幹細胞は、始原細胞、及び終末分化した細胞により近い前駆細胞でもあり得る。本明細書で使用される「前駆細胞」は、部分的に分化した細胞を指す。例示的な前駆細胞としては、例えば、間葉系前駆細胞、骨芽細胞、及び軟骨芽細胞などの骨始原細胞を挙げることができる。「始原細胞/前駆細胞」という用語を本明細書で使用する限りにおいて、「始原細胞」もしくは「前駆細胞」、又はその組合せを使用することができることが理解される。
本明細書で使用されるように、「予防剤」という用語は、対象のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、及び/又はこれらに関連する症状の発症、再発、発生、又は拡大を完全に又は部分的に阻害することができる任意の薬剤を指す。ある実施態様において、「予防剤」という用語は、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を指す。特定の他の実施態様において、「予防剤」という用語は、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子以外の薬剤を指す。ある実施態様において、予防剤は、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、及び/又はこれらに関連する症状を予防し、或いはCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、及び/又はこれらに関連する症状の発生、発症、進行、及び/又は重症度を妨害するために有用であることが知られているか、又はそのために使用されてきたか、又はそのために現在使用されている薬剤である。
損傷した組織との関連における本明細書で使用される「再生させる(regenerate)」、「再生」、及び「再生させる(regenerating)」という用語は、損傷した、例えば、疾患が原因で損傷したCNSで新しい細胞及び/又は新しい組織を成長及び/又は発生させるプロセスを指す。ある実施態様において、CNS組織再生は、CNS細胞増殖の活性化及び/又は増強を含む。
本明細書で使用されるように、「中枢神経系を再生させる」という用語は、中枢神経系の神経組織、細胞、又は細胞産物の少なくとも部分的な再成長又は少なくとも部分的な修復を意味することが意図される。「中枢神経系を再生させる」には、新しいニューロン、グリア、軸索、ミエリン、又はシナプスの少なくとも部分的な生成が含まれるが、これらに限定されない。「中枢神経系を再生させる」には、傷害を受けたニューロン、グリア、軸索、ミエリン、又はシナプスの少なくとも部分的な修復も含まれる。
本明細書で使用される「拒絶反応」という用語は、宿主レシピエントの免疫系による、移植された材料、例えば、移植されたCNS細胞の拒絶を指す。ある実施態様において、「拒絶反応」という用語は、全て又は一部宿主免疫応答によって引き起こされる、移植された細胞又は組織の75%、80%、85%、90%、又はそれより多くの壊死を指す。他の実施態様において、「拒絶反応」という用語は、全て又は一部宿主免疫応答によって引き起こされる、移植された材料の移植前の生存率と比較したときの、移植された材料、例えば、移植されたCNS細胞の生存率の75%、80%、85%、90%、又はそれより多くの低下を指す。生存率の低下は、当技術分野で公知の方法、例えば、トリパンブルー染色を用いて評価することができる。他の実施態様において、「拒絶反応」という用語は、移植された細胞の増殖の欠如を指す。増殖を測定する例示的な方法としては、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色が挙げられるが、当技術分野で公知の任意の方法を用いることができる。移植後に起こる移植拒絶反応の発生の頻度及び/又はタイミングは、移植された材料の細胞型及び数、並びに宿主(例えば、免疫抑制剤が投与されているか否かということ)を含む、種々の因子によって決まり得る。
本明細書で使用されるように、「副作用」という用語は、療法(例えば、予防剤又は治療剤)の望ましくない及び有害な作用を包含する。望ましくない作用が必ずしも有害であるとは限らない。療法(例えば、予防剤又は治療剤)による有害な作用は、有害又は不快又は危険なものであり得る。副作用の例としては、下痢、咳、胃腸炎、喘鳴、吐き気、嘔吐、食欲不振、腹部痙攣、発熱、疼痛、体重の減少、脱水症、脱毛症、呼吸困難、不眠症、目眩、粘膜炎、神経筋効果、疲労、口内乾燥症、及び食欲不振、投与部位での発疹又は腫脹、インフルエンザ様症状、例えば、発熱、悪寒、及び疲労、消化管異常、並びにアレルギー反応が挙げられる。患者が経験するさらなる望ましくない作用は数多くあり、当技術分野で公知である。多くは、医師の卓上参考書(Physician's Desk Reference)(第60版、2006)に記載されている。
本明細書で使用されるように、「幹細胞」という用語は、自己再生する能力及び分化した子孫を生成させる能力を有する細胞を指す。「多能性(pluripotent)幹細胞」という用語は、完全な分化多能性(differentiation versatility)、すなわち、胎児又は成体哺乳動物の体の約260種の細胞型のいずれかに成長する能力を有する幹細胞を指す。例えば、多能性(pluripotent)幹細胞は、3つの胚葉:内胚葉(例えば、血管)、中胚葉(例えば、筋肉、骨、及び血液)、並びに外胚葉(例えば、表皮組織及び神経系)に分化する能力を有し、それゆえ、任意の胎児又は成体細胞型を生じることができる。本明細書で使用される「人工多能性(pluripotent)幹細胞」という用語は、多能性の少なくとも1つの特徴を示すように再プログラミングされている分化した哺乳動物体細胞(例えば、成体体細胞、例えば、皮膚)を指す。本明細書で使用される「多能性(multipotent)幹細胞」という用語は、胎児又は成体哺乳動物の体の約260種の細胞型のいずれかのサブセットに成長する能力を有する幹細胞を指す。例えば、特定の多能性(multipotent)幹細胞は、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉のうちの少なくとも1つの細胞型に分化することができる。本明細書で使用される「胚性幹細胞」という用語は、インビトロで未分化状態で増殖することができ、かつ多能性がある(pluripotent)、初期胚、例えば、ヒトの内部細胞塊に由来する幹細胞を指す。本明細書で使用される「骨髄幹細胞」という用語は、骨髄から得られる又はそれに由来する幹細胞を指す。本明細書で使用される「胎盤由来幹細胞」又は「胎盤幹細胞」という用語は、哺乳動物の胎盤又はその一部(例えば、羊膜もしくは絨毛膜)から得られる又はそれに由来する幹細胞を指す。本明細書で使用される「羊膜幹細胞」という用語は、羊水又は羊膜から回収される幹細胞を指す。本明細書で使用される「胚性生殖細胞」という用語は、胚性多能性(pluripotent)細胞表現型を示す始原生殖細胞に由来する細胞を指す。
本明細書で使用されるように、「対象」及び「患者」という用語は、互換的に使用されている。本明細書で使用されるように、対象は、好ましくは、哺乳動物、例えば、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)又は霊長類(例えば、サル及びヒト)である。具体的な実施態様において、対象は、ヒトである。一実施態様において、対象は、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を有する哺乳動物(例えば、ヒト)である。別の実施態様において、対象は、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を発症するリスクがある哺乳動物(例えば、ヒト)である。
本明細書で使用されるように、「治療剤」という用語は、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、及び/又はこれらに関連する症状の治療、管理、又は改善において使用することができる任意の薬剤を指す。ある実施態様において、「治療剤」という用語は、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子体を指す。ある他の実施態様において、「治療剤」という用語は、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子以外の薬剤を指す。ある実施態様において、治療剤は、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらに関連する1以上の症状の治療、管理、又は改善に有用であることが知られているか、又はそのために使用されてきたか、又はそのために現在使用されている薬剤である。
本明細書で使用されるように、「療法」という用語は、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病の予防、管理、治療、及び/又は改善において使用することができる任意のプロトコル、方法、及び/又は薬剤を指す。ある実施態様において、「療法(therapies)」及び「療法(therapy)」という用語は、生物療法、支持療法、並びに/又は当業者、例えば、医療関係者に公知のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病の予防、管理、治療、及び/もしくは改善において有用な他の療法を指す。
本明細書で使用されるように、「移植(transplant)」、「移植(transplantation)」という用語、及び関連用語は、ある対象から別の対象への、ある対象から同じ対象の別の部分への、又はある対象から同じ対象の同じ部分への、組織、細胞、もしくは器官、又はこれらの部分の移入を指す。「自家移植」は、ある場所から同じ個体の別の場所への組織、細胞、もしくはこれらの部分の移植、又はある個体から別の個体への組織もしくはその部分の移植(この場合、2つの個体は遺伝的に同一である)を指す。「同種異系移植」は、ある個体から別の個体への移植を指す。同種異系移植は、遺伝的に異なる同じ種の2つの個体間で、又は2つの異なる種の個体間で行われ得る。本明細書に提供される細胞はまた、それが培養容器から対象に移されたときに、対象に「移植された」又は「導入された」ものとなり得る。細胞の「移植」は、細胞の集団を対象から単離し、その後、対象に移す工程を含むこともでき、任意に、該細胞の集団を培養し及び/又は増幅させる工程を含むことができる。移植は、対象への細胞懸濁液の注射、対象の組織もしくは器官への細胞塊の外科的埋込み、又は組織もしくは器官への細胞懸濁液の灌流によって、細胞の集団を対象に移すことを含むことができる。移植された細胞は、ある実施態様において、他の細胞の集団に含まれ得る。ある実施態様において、該細胞は、CNS細胞である。他の実施態様において、該細胞は、CNS始原細胞である。他の実施態様において、該細胞は、CNS前駆細胞である。
本明細書で使用されるように、「治療する(treat)」、「治療」、及び「治療する(treating)」という用語は、1以上の療法の投与(限定されないが、1以上の予防剤又は治療剤、例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与を含む)によって結果として得られる、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病の進行、重症度、及び/又は持続期間の低下又は改善を指す。具体的な実施態様において、該薬剤は、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子である。本明細書で使用される治療には、損傷したCNS組織(例えば、CNS細胞)を保持すること、新しいCNS組織(例えば、CNS細胞)を再生させること、CNS細胞機能を増大させること、CNS細胞塊を増加させること、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
(5.2 CNS細胞の増幅方法)
本発明は、BRD7がCNS神経細胞の発達(例えば、増殖及び分化)を阻害するという発見、並びにBRD7アンタゴニストが幹細胞又は始原細胞/前駆細胞などの細胞の増殖及び分化を増大させることができるという発見に一部基づいている。本発明はまた、IkarosがCNS神経細胞の発達(例えば、増殖及び分化)を阻害するという発見、並びにIkarosアンタゴニストが幹細胞又は始原細胞/前駆細胞などの細胞の増殖及び分化を増大させることができるという発見に一部基づいている。本発明はまた、CRBNが多能性遺伝子及び神経再プログラミング遺伝子の発現を増加させるのに役割を果たすという発見、並びにCRBNそれ自体及びその活性化因子が幹細胞又は始原細胞/前駆細胞などの細胞の増殖及び分化を増大させることができるという発見に一部基づいている。いくつかの実施態様において、該細胞は、神経細胞へと分化することができる神経幹細胞又は始原細胞/前駆細胞である。したがって、本明細書に提供されるのは、全体として、幹細胞(例えば、神経幹細胞)又は始原細胞/前駆細胞(例えば、神経始原細胞/前駆細胞)の増幅に関する方法である。また提供されるのは、特定の細胞(例えば、CNS細胞(例えば、神経細胞)及びCNS始原細胞/前駆細胞(例えば、神経幹細胞及び神経始原細胞/前駆細胞))の増殖を改善する方法である。また本明細書に提供されるのは、全体として、特定の細胞(例えば、神経幹細胞)又は始原細胞/前駆細胞(例えば、神経始原細胞/前駆細胞)の他の細胞型(例えば、神経細胞)への分化を誘導することに関する方法である。さらに本明細書に提供されるのは、全体として、特定の細胞(例えば、神経細胞)の再生に関する方法である。また提供されるのは、特定の細胞、例えば、CNS細胞、並びに幹細胞(例えば、神経幹細胞)、神経始原細胞/前駆細胞、及び他のCNS始原細胞/前駆細胞を生成及び増幅させるインビトロ及びインビボ法である。さらに本明細書に提供されるのは、特定の細胞(例えば、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞)を生着させる方法である。さらに提供されるのは、患者の損傷したCNS組織(例えば、脊髄、脳)を治療する方法である。また本明細書に提供されるのは、CRBNの活性化因子を用いて、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する方法である。さらに本明細書に提供されるのは、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際のCRBN活性化因子の効力を評価する方法である。
一態様において、本明細書に提供されるのは、細胞の集団を増幅させる方法であって、該細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させ、それにより、該細胞の集団を増幅させることを含む、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。ある実施態様において、該細胞は、幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、神経幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、神経始原細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、神経前駆細胞である。また他の実施態様において、該細胞は、CNS細胞、例えば、神経細胞である。ある実施態様において、該細胞は、CNS始原細胞である。ある実施態様において、該細胞は、CNS前駆細胞である。いくつかの実施態様において、本方法はインビトロ法である。他の実施態様において、本方法は、インビボ又はエクスビボ法である。
一実施態様において、本方法は、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をドナーから採取することをさらに含む。別の実施態様において、本方法は、CNS組織をドナーから採取することをさらに含み、ここで、該組織は、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を含む。本明細書に提供される方法のある実施態様において、本方法は、CNS組織を培養することをさらに含む。いくつかの実施態様において、本方法は、CNS組織を細胞懸濁液に調製することをさらに含む。いくつかの実施態様において、本方法は、増幅させた集団のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞を患者に移植することをさらに含む。ある実施態様において、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞を1以上の他の細胞型とともに移植する。ある実施態様において、該患者は、ドナーである。他の実施態様において、該患者は、ドナーではない。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、CNS細胞を患者に移植する方法であって:(a)CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をドナーから採取すること、(b)該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を培養すること;(c)該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させ、それにより、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を増幅させること;及び(d)増幅させた集団のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞を該患者に移植することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、本方法は、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をドナーから採取することをさらに含む。別の実施態様において、本方法は、CNS組織をドナーから採取することをさらに含み、ここで、該CNS組織は、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を含む。いくつかの実施態様において、本方法は、該CNS組織を解離させて、CNS細胞懸濁液にすることをさらに含む。いくつかの実施態様において、本方法は、増幅させた集団のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞を患者に移植することをさらに含む。ある実施態様において、該患者は、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する。ある実施態様において、該患者は、ドナーである。他の実施態様において、該患者は、ドナーではない。
ある実施態様において、該CNS細胞は、CNS始原細胞を含む。いくつかの実施態様において、該CNS細胞は、本質的にCNS始原細胞からなる。他の実施態様において、該CNS細胞は、CNS始原細胞からなる。ある実施態様において、該CNS細胞は、CNS前駆細胞を含む。いくつかの実施態様において、該CNS細胞は、本質的にCNS前駆細胞からなる。他の実施態様において、該CNS細胞は、CNS前駆細胞からなる。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する方法であって:(a)CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をドナーから採取すること、(b)該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を培養すること;(c)該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させ、それにより、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を増幅させること;及び(d)増幅させた集団のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞を該患者に移植し、それにより、該患者の該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を治療することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、本方法は、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防する方法である。別の実施態様において、本方法は、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を治療する方法である。他の実施態様において、本方法は、CNS組織を患者から採取することを含み、ここで、該組織は、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を含む。いくつかの実施態様において、本方法は、CNS組織を解離させて、CNS細胞懸濁液にすることをさらに含む。ある実施態様において、該ドナーは、患者である。他の実施態様において、該ドナーは、患者ではない。いくつかの実施態様において、CNS始原細胞/前駆細胞の集団を含むCNS組織を、インビトロでニューロスフェアとして培養する。ある実施態様において、該ニューロスフェアは、神経幹細胞、神経始原細胞、神経前駆細胞、放射状グリア、又はこれらの任意の組合せを含む。
本明細書に提供される様々な方法又は様々な組成物のいくつかの実施態様において、該CNS細胞は、他の細胞から生成させられるか、又は他の細胞に由来する。ある実施態様において、該細胞は、CNS始原細胞である。ある実施態様において、該細胞は、CNS前駆細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、多能性(multipotent)細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、多能性(pluripotent)細胞である。ある実施態様において、該多能性(pluripotent)細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該幹細胞は、胚性幹細胞(例えば、ヒト胚性幹細胞)である。他の実施態様において、該幹細胞は、人工多能性幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、骨髄幹細胞、胎盤由来幹細胞、羊膜幹細胞、又は胚性生殖細胞である。ある実施態様において、該CNS細胞は、神経幹細胞である。他の実施態様において、該CNS細胞は、神経始原細胞である。他の実施態様において、該CNS細胞は、神経前駆細胞である。また他の実施態様において、該CNS細胞は、神経細胞又はニューロンである。
本明細書に提供される方法のある実施態様において、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を、薬剤、例えば、CNS細胞(又はそのCNS始原細胞/前駆細胞)の増殖、増幅、及び/又は機能を保持又は増強する薬剤とも接触させる。一実施態様において、該薬剤は、成長因子又はサイトカインである。他の実施態様において、該薬剤は、上皮成長因子(EGF)、エリスロポエチン、線維芽細胞成長因子(FGF)、ガレクチン-1、G-CSF、Six3、Lhx2、Foxg1、Sox2、Oct3/4、C-Myc、Klf4、Nanog、NeuroD、Ascl1、Pou3f2/3、Myt1l、Wnt3、Frizzled、β-カテニン、Tcf、Lef、NeuroD、Shh、Patched、GPCR、BMP、BMPR、Noggin、Chordin、Follistatin、Notch、Nrp2、Elav13、Zic2/3、P53、P63、Nodal、ADAMTS1、BMI-1、CRABP1、及び甲状腺放出ホルモンからなる群から選択される。前述の薬剤のうちの2つ又はそれより多くの任意の組合せも想定される。ある実施態様において、これらの薬剤のうちの1つ又は複数をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と組み合わせて接触させる。いくつかの実施態様において、これらの薬剤のうちの1つ又は複数をBRD7アンタゴニストと組み合わせて接触させる。別の実施態様において、これらの薬剤のうちの1つ又は複数をIkarosアンタゴニストと組み合わせて接触させる。他の実施態様において、これらの薬剤のうちの1つ又は複数をCRBN活性化因子と組み合わせて接触させる。
本明細書に提供される方法のいくつかの実施態様において、該方法は、免疫調節剤を患者に投与することをさらに含む。ある実施態様において、該免疫調節剤は、免疫抑制剤である。一実施態様において、該免疫抑制剤は、免疫応答を予防する。いくつかの実施態様において、該免疫抑制剤は、免疫応答の発生を遅延させる。他の実施態様において、該免疫抑制剤は、免疫応答の強度又は重症度を軽減する。いくつかの実施態様において、該免疫応答は、移植拒絶反応である。いくつかの実施態様において、該免疫抑制剤は、デキサメタゾン、シクロスポリンA、アザチオプリン、ブレキナール、グスペリムス、6-メルカプトプリン、ミゾリビン、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、葉酸類似体(例えば、デノプテリン、エダトレキセート、メトトレキセート、ピリトレキシム、プテロプテリン、Tomudex(登録商標)、トリメトレキセート)、プリン類似体(例えば、クラドリビン、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チアグアニン)、ピリミジン類似体(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ドキシフルリジン、エミテフール、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、テガフール)、フルオシノロン、トリアミノロン(triaminolone)、酢酸アネコルタブ、フルオロメトロン、メドリゾン、コルチコステロイド(例えば、アセトニド、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロベタゾール-17-プロピオネート、酢酸コルチゾン、デソニド、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、デキサメタゾン、フルオシノロン、アセトニド、フルオシノニド、カプロン酸フルオコルトロン、ピバリン酸フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン、フルオコルトロン、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロ酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン-17-アセポネート、ヒドロコルチゾン-17-ブテプレート、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、ヒドロコルチゾン-17-バレレート、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、プレドニカルベート、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-ブチレート、プレドニゾロン、プレドニゾン、ピバル酸チキソコルトール、もしくはトリアムシノロンアルコール)、CD3に対する抗体、CD20に対する抗体、抗胸腺細胞グロブリン、シクロホスファミド、FK506、ミコフェノール酸、15-デオキシスペルグアリン、ミモリビン(mimoribine)、ミソプロストール、OKT3抗体、抗IL-2受容体抗体、又はこれらの任意の組合せからなる群からのものである。免疫抑制剤を、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の投与の開始時、例えば、該投与の24〜0時間前に、該患者に投与し、その後、最長2週間継続することができる。該免疫抑制剤を、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の投与の後、任意の期間、例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日間、もしくはそれより長い間、又はその任意の区間の時間、投与することができる。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者の細胞の集団を増幅させる方法であって、該患者の細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させ、それにより、該患者の細胞の集団を増幅させることを含む、方法である。一実施態様において、該細胞は始原細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。いくつかの実施態様において、該細胞は、CNS始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、CNS前駆細胞である。ある実施態様において、該細胞は、幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、神経幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、神経始原細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、神経前駆細胞である。また他の実施態様において、該細胞は、CNS細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、神経細胞である。ある実施態様において、本方法は、該CNSに、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量を投与することを含む。いくつかの実施態様において、該細胞を、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と直接的に接触させる。他の実施態様において、該細胞を、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と間接的に接触させる。
いくつかの実施態様において、該細胞を、約10%〜約100%、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、もしくは約100%、又はこれらの列挙されたパーセンテージの任意の範囲、増幅させる。ある実施態様において、該CNS細胞塊又は集団を、約10%〜約10倍、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、もしくは約10倍、又はこれらの任意の範囲もしくは区間、増加させる。いくつかの実施態様において、該細胞を(例えば、平均又は中央値によって決定したとき)母集団に存在する細胞の数の約20%、約10%、又は約5%以内の量にまで増幅させる。
他の実施態様において、本方法は、CNS組織及び/又はCNS細胞もしくはそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を採取することをさらに含む。いくつかの実施態様において、本方法は、採取されたCNS組織及び/又はCNS細胞もしくはそのCNS始原細胞/前駆細胞を培養することをさらに含む。ある実施態様において、本方法は、採取されたCNS組織及び/又はCNS細胞もしくはそのCNS始原細胞/前駆細胞をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させ、それにより、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をさらに増幅させることをさらに含む。ある実施態様において、本方法は、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の増幅した集団を移植レシピエントに移植することをさらに含む。いくつかの実施態様において、該移植レシピエントは、患者である。他の実施態様において、該移植レシピエントは、患者ではない。ある実施態様において、該CNS組織及び/又はCNS細胞もしくはそのCNS始原細胞/前駆細胞をドナーから採取する。ある実施態様において、該ドナーは、患者である。他の実施態様において、該ドナーは、患者ではない。いくつかの実施態様において、該ドナーは、死体である。
いくつかの実施態様において、該患者は、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する。他の実施態様において、該移植レシピエントは、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する。ある実施態様において、1以上の症状を予防又は治療する。
いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、対象の神経細胞を再生させる方法であって、該対象に、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量を投与することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、BRD7アンタゴニストを投与する。別の実施態様において、Ikarosアンタゴニストを投与する。他の実施態様において、CRBN活性化因子を投与する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、神経細胞及びその始原細胞/前駆細胞の増殖を誘導する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、神経細胞への分化を誘導する。
いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、対象のCNSを再生させる方法であって、該対象に、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量を投与することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、BRD7アンタゴニストを投与する。別の実施態様において、Ikarosアンタゴニストを投与する。他の実施態様において、CRBN活性化因子を投与する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、中枢神経幹細胞、神経始原細胞、神経前駆細胞、神経細胞、及び/又は放射状グリアの増殖を誘導する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、神経細胞への分化を誘導する。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、脳の体積を拡大させる。
いくつかの実施態様において、再生は、中枢神経系における神経組織、細胞、もしくは細胞産物の少なくとも部分的な再成長もしくは少なくとも部分的な修復を含むか、又はこれらをもたらす。ある実施態様において、再生は、新しいニューロン、グリア、軸索、ミエリン、もしくはシナプスの少なくとも部分的な発生を含むか、又はこれらをもたらす。ある実施態様において、再生は、新しい放射状グリアの少なくとも部分的な発生を含むか、又はこれらをもたらす。他の実施態様において、再生は、傷害を受けたニューロン、グリア、軸索、ミエリン、もしくはシナプスの少なくとも部分的な修復を含むか、又はこれらをもたらす。ある実施態様において、再生は、傷害を受けた放射状グリアの少なくとも部分的な修復を含むか、又はこれらをもたらす。いくつかの実施態様において、再生は、神経細胞及び/又はその始原細胞もしくは前駆細胞の増殖の刺激を含むか、或いはこれらをもたらす。また他の実施態様において、再生は、神経細胞への分化の誘発を含むか、又はこれらをもたらす。
ある実施態様において、例えば、CNS細胞の数及び/又は機能の増大は、CNS細胞もしくはそのCNS始原細胞/前駆細胞、及び/又はCNS組織を、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させた後の時点で決定される。他の実施態様において、例えば、CNS細胞の数及び/又は機能の増大は、本明細書に提供されるCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を投与した後の時点で決定される。いくつかの実施態様において、該時点は、1週間、2週間、4週間、6週間、8週間、10週間、12週間、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、2年、5年、10年の時点、もしくはそれより後、又はこれらの任意の区間である。CNS細胞の数の増加は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、PET-スキャン、点算法、形態学的検査、又は中赤外線イメージングプローブを用いて評価又は定量することができる。
いくつかの実施態様において、CNS細胞の機能は、例えば、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させられていないCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞と比較したとき、CNS細胞を、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させた後に改善される。本明細書に提供される方法のいくつかの実施態様において、CNS細胞の改善は、Oct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Brn2、Asc11、Pou3f2b、Myt11、BAM因子、又は山中因子の発現レベルの増加によって評価することができる。
本明細書に提供される方法のいくつかの実施態様において、該有効量は、約1mg/kg〜約100mg/kgである。
ある実施態様において、該有効量は、1以上の用量、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくはそれより多くの用量、又はこれらの任意の区間で投与される。他の実施態様において、該有効量は、4週間以上、例えば、約5週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約4カ月、約5カ月、約6カ月、約1年、約2年、もしくはそれより長い間、又はこれらの任意の区間、毎週送達される。
ある実施態様において、BRD7のアンタゴニストとしては、BRD7タンパク質の阻害因子、BRD7遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、及びBRD7が下方調節されている幹細胞又は神経始原細胞もしくは前駆細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
ある実施態様において、Ikarosのアンタゴニストとしては、Ikarosタンパク質の阻害因子、Ikaros遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、及びIkarosが下方調節されている幹細胞又は神経始原細胞もしくは前駆細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
ある実施態様において、CRBNの活性化因子としては、CRBNタンパク質の能動的調節因子、CRBN遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、又はその阻害タンパク質に対するそのアンチセンス化合物、及びCRBNが上方調節されている幹細胞又は神経始原細胞もしくは前駆細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
また別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者の損傷したCNS組織を治療する方法であって、該患者の損傷したCNS組織内のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させることを含む、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者の損傷したCNS組織を治療する方法であって、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該患者の損傷したCNS組織を該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞を接触させることを含み、その結果、該損傷したCNS組織が治療される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。
他の態様において、本明細書に提供されるのは、患者の損傷したCNS組織を治療する方法であって、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、該患者の損傷したCNS組織を該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞と接触させること、及び該損傷したCNS組織をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子とさらに接触させることを含み、その結果、該損傷したCNS組織が治療される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。
本明細書に提供されるCNS損傷又はCNS傷害は、発生時の年齢、又は根本原因に関わらず、脳又は脊髄に対する任意の損傷に関するものである。根本原因は、例えば、機械的なもの、又は感染であり得る。CNS損傷は、例えば、脳又は脊髄の外傷又は任意の他の傷害を含み、それは、神経外傷と呼ばれる場合もある。脳損傷は、例えば、以下のもの:注意障害;認知障害;言語障害;記憶障害;行為障害;運動障害;及び任意の他の神経学的機能障害のうちのいずれか1つもしくは複数を含むか、又はこれらをもたらし得る。脊髄損傷は、例えば、対麻痺又は四肢麻痺をもたらし得る。
CNS損傷又はCNS傷害の合併症又は晩期障害も、本明細書に提供される方法に従って治療及び/又は予防することができる。脳損傷の合併症及び晩期障害としては、例えば、昏睡、髄膜炎、外傷後てんかん、外傷後認知症、神経線維の変性、もしくは外傷後脊髄空洞症、又は出血が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に提供される方法のある実施態様において、該損傷したCNS組織は、脊髄である。他の実施態様において、該損傷したCNS組織は、脳組織である。他の実施態様において、該損傷したCNS組織は、大脳皮質である。ある実施態様において、該損傷したCNS組織は、CNS細胞(例えば、神経細胞;ニューロン)の数、機能、又はその両方が低下している。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を治療又は予防する方法であって:該患者の細胞の集団を含むCNSに、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量(ここで、該量は、該細胞の集団を増幅させ及び/又は該患者の細胞機能を増大させるのに有効である)を投与し、それにより、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を治療又は予防することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、BRD7アンタゴニストを投与する。別の実施態様において、Ikarosアンタゴニストを投与する。他の実施態様において、CRBN活性化因子を投与する。
CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、及び他の障害、例えば、筋萎縮性側索硬化症;多発性硬化症;進行性運動衰弱;免疫性神経障害、CNS外傷;パーキンソニズムを伴うアルツハイマー病;運動緩慢;無動;細かい運動制御及び手指の器用さを損なう運動障害;発声不全;単調な発話;硬直;ジストニア;パーキンソン病と関連する炎症;顔、顎、舌、姿勢の振戦;パーキンソン病様歩行;すり足歩行;小刻み歩行;加速歩行;気分、認知、感覚、睡眠の障害;認知症;鬱病;薬物誘発性パーキンソニズム;血管性パーキンソニズム;多系統萎縮症;進行性核上麻痺;一次性タウ病変を有する障害;皮質基底核神経節変性症;認知症を伴うパーキンソニズム;多動性障害;舞踏病;ジストニア;ウィルソン病;トゥレット症候群;本態性振戦;ミオクローヌス;並びに遅発性運動障害が挙げられるが、これらに限定されない。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、アルツハイマー病である。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、パーキンソン病である。いくつかの実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、ハンチントン病である。他の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、クロイツフェルト・ヤコブ病である。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、進行性核上麻痺である。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、大脳皮質基底核変性症である。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、筋萎縮性側索硬化症である。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、多発性硬化症である。いくつかの実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、進行性運動衰弱である。他の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、免疫性神経障害である。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、CNS外傷である。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、パーキンソニズムを伴うアルツハイマー病である。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、運動緩慢である。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、無動である。いくつかの実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、細かい運動制御及び手指の器用さを損なう運動障害である。他の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、発声不全である。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、単調な発話である。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、硬直である。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、ジストニアである。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、パーキンソン病と関連する炎症である。いくつかの実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、顔、顎、又は舌の振戦である。他の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、姿勢と関連するものである。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、パーキンソン病様歩行である。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、すり足歩行である。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、小刻み歩行である。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、加速歩行である。いくつかの実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、気分、認知、感覚、又は睡眠の障害である。他の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、認知症である。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、鬱病である。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、薬物誘発性パーキンソニズムである。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、血管性パーキンソニズムである。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、多系統萎縮症である。いくつかの実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、進行性核上麻痺である。他の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、一次性タウ病変を有する障害である。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、皮質基底核神経節変性症である。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、認知症を伴うパーキンソニズムである。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、多動性障害である。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、舞踏病である。いくつかの実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、ジストニアである。他の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、ウィルソン病である。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、トゥレット症候群である。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、本態性振戦である。一実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、ミオクローヌスである。別の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、遅発性運動障害である。
ある実施態様において、本方法は、患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の効力を評価する工程であって、該患者のCNS細胞(例えば、神経細胞)の数及び/又は機能を該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与の前後で比較することを含む工程をさらに含み、ここで、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与前と比較したときの該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与後のCNS細胞(例えば、神経細胞;ニューロン)の数及び/又は機能の増大は、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際の該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の効力を示す。いくつかの実施態様において、BRD7アンタゴニストの効力を評価する。別の実施態様において、Ikarosアンタゴニストの効力を評価する。他の実施態様において、CRBN活性化因子の効力を評価する。
いくつかの実施態様において、本方法は、患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の効力を評価する工程であって、該患者における山中因子(例えば、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子(例えば、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、Myt1l)の発現レベルを該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与の前後で比較することを含む工程をさらに含み、ここで、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与前と比較したときの該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与後の山中因子(例えば、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子(例えば、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、Myt1l)の発現レベルの増加は、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際の該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の効力を示す。いくつかの実施態様において、BRD7アンタゴニストの効力を評価する。別の実施態様において、Ikarosアンタゴニストの効力を評価する。
いくつかの実施態様において、本方法は、患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際のCRBN活性化因子の効力を評価する工程であって、該患者における山中因子(例えば、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子(例えば、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、Myt1l)の発現レベルを該CRBN活性化因子の投与の前後で比較することを含む工程をさらに含み、ここで、該CRBN活性化因子の投与前と比較したときの該CRBN活性化因子の投与後の該山中因子(例えば、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又は該BAM因子(例えば、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、Myt1l)の発現レベルの増加は、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際のCRBN活性化因子の効力を示す。
いくつかの実施態様において、本方法は、患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際のBRD7アンタゴニスト効力を評価する工程であって、該患者におけるOct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Brn2、Asc11、Myt11、BAM因子、又は山中因子の発現レベルを該アンタゴニストの投与の前後で比較することを含む工程をさらに含み、ここで、該BRD7アンタゴニストの投与前と比較したときの該BRD7アンタゴニストの投与後のOct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Brn2、Asc11、Myt11、BAM因子、又は山中因子の発現レベルの増加は、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際の該BRD7アンタゴニストの効力を示す。いくつかの実施態様において、本方法は、効力を評価した後の該患者に対する該BRD7アンタゴニストの1回以上の事後投与をさらに含む。
いくつかの実施態様において、本方法は、該患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際のIkarosアンタゴニストの効力を評価する工程であって、該患者におけるOct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Sox2、Brn2、Asc11、Pou3f2b、Myt1l、BAM因子、又は山中因子の発現レベルを該アンタゴニストの投与の前後で比較することを含む工程をさらに含み、ここで、該Ikarosアンタゴニストの投与前と比較したときの該Ikarosアンタゴニストの投与後のOct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Sox2、Brn2、Asc11、Pou3f2b、Myt1l、BAM因子、又は山中因子の発現レベルの増加は、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際の該Ikarosアンタゴニストの効力を示す。いくつかの実施態様において、本方法は、効力を評価した後の該患者に対する該Ikarosアンタゴニストの1回以上の事後投与をさらに含む。
いくつかの実施態様において、本方法は、効力を評価した後の該患者に対する該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の1回以上の事後投与をさらに含む。
他の実施態様において、本方法は、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する患者の集団を、CNS細胞(例えば、神経細胞;ニューロン)の数及び/又は機能に基づいて選択することをさらに含む。いくつかの実施態様において、本方法は、BRD7アンタゴニストの投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするためのものである。いくつかの実施態様において、本方法は、Ikarosアンタゴニストの投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするためのものである。いくつかの実施態様において、本方法は、CRBN活性化因子の投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするためのものである。
ある実施態様において、本方法は、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する患者の集団を、山中因子(例えば、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子(例えば、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、Myt1l)の発現レベルに基づいて選択することをさらに含む。ある実施態様において、該レベルは、正常な集団と比較したときのものである。いくつかの実施態様において、該発現レベルは、Oct 3/4、Sox 2、c-Myc、Klf4、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13(Huc)、Brn2(Pou3f2)、Asc11、Myt11、又はこれらの任意の組合せのものである。一実施態様において、該患者をBRD7アンタゴニストの投与に対するコンプライアンスについてモニタリングする。別の実施態様において、該患者をIkarosアンタゴニストの投与に対するコンプライアンスについてモニタリングする。他の実施態様において、該患者をCRBN活性化因子の投与に対するコンプライアンスについてモニタリングする。ある実施態様において、該レベルは、正常な集団と比較したときのものである。いくつかの実施態様において、該発現レベルは、Oct 3/4、Sox 2、c-Myc、Klf4、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13(Huc)、Brn2(Pou3f2)、Asc11、Myt11、又はこれらの任意の組合せのものである。いくつかの実施態様において、該発現レベルは、山中因子のものである。他の実施態様において、該発現レベルは、BAM因子のものである。一実施態様において、該発現レベルは、Oct 3/4のものである。別の実施態様において、該発現レベルは、Sox 2のものである。一実施態様において、該発現レベルは、c-Mycのものである。別の実施態様において、該発現レベルは、Klf4のものである。ある実施態様において、該発現レベルは、Nanogのものである。一実施態様において、該発現レベルは、Zic3のものである。一実施態様において、該発現レベルは、Elav13(Huc)のものである。いくつかの実施態様において、該発現レベルは、Brn2(Pou3f2)のものである。一実施態様において、該発現レベルは、Asc11のものである。別の実施態様において、該発現レベルは、Myt11のものである。いくつかの実施態様において、本方法は、BRD7アンタゴニストの投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするためのものである。いくつかの実施態様において、本方法は、Ikarosアンタゴニストの投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするためのものである。いくつかの実施態様において、本方法は、CRBN活性化因子の投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするためのものである。
ある実施態様において、本方法は、CRBN活性化因子の投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する患者の集団を、山中因子(例えば、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子(例えば、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、Myt1l)の発現レベルに基づいて選択することをさらに含む。
ある実施態様において、本方法は、BRD7アンタゴニストの投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する患者の集団を、Oct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Brn2、Asc11、Myt11、BAM因子、又は山中因子の発現レベルに基づいて選択することをさらに含む。ある実施態様において、該レベルは、正常な集団と比較したときのものである。いくつかの実施態様において、該発現レベルは、Oct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、又はこれらの任意の組合せである。
ある実施態様において、本方法は、Ikarosアンタゴニストの投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する患者の集団を、Oct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Sox2、Brn2、Asc11、Pou3f2b、Myt1l、BAM因子、又は山中因子の発現レベルに基づいて選択することをさらに含む。ある実施態様において、該レベルは、正常な集団と比較したときのものである。いくつかの実施態様において、該発現レベルは、Oct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Sox2、Ascl1、Pou3f3a、Pou3f2b、もしくはMyt11a、又はこれらの任意の組合せである。
ある実施態様において、本方法は、CRBN活性化因子の投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する患者の集団を、山中因子(例えば、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子(例えば、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、Myt1l)の発現レベルに基づいて選択することをさらに含む。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、CNS組織内のCNS細胞(例えば、神経細胞;ニューロン)の生存を改善する方法であって、該CNS細胞をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させることを含み、その結果、該CNS細胞の生存が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させられていないCNS細胞の生存と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、CNS組織内のCNS始原細胞(例えば、神経幹細胞又は神経始原細胞)の生存を改善する方法であって、該CNS始原細胞をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させることを含み、その結果、該CNS始原細胞の生存が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させられていないCNS始原細胞の生存と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該CNS始原細胞をCNS細胞へとさらに分化させる。また本明細書に提供されるのは、CNS組織内のCNS前駆細胞(例えば、神経前駆細胞)の生存を改善する方法であって、該CNS前駆細胞をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させることを含み、その結果、該CNS前駆細胞の生存が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させられていないCNS前駆細胞の生存と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該CNS前駆細胞をCNS細胞へとさらに分化させる。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者のCNS細胞を生成させる方法であって、CNS細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させることを含み、その結果、CNS細胞が生成する、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者のCNS細胞を生成させる方法であって、CNS始原細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させることを含み、その結果、CNS細胞が生成する、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該CNS始原細胞をCNS細胞へとさらに分化させる。また本明細書に提供されるのは、患者のCNS細胞を生成させる方法であって、CNS前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させることを含み、その結果、CNS細胞が生成する、方法である。一実施態様において、該CNS前駆細胞をCNS細胞へとさらに分化させる。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者のCNS組織にCNS細胞を生着させる方法であって、CNS細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該CNS組織を該CNS細胞と接触させることを含み、その結果、該CNS細胞の生着が生じる、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。ある実施態様において、本方法は、該CNS組織をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させることをさらに含む。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者のCNS組織にCNS始原細胞を生着させる方法であって、CNS始原細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該CNS組織を該CNS始原細胞と接触させることを含み、その結果、該CNS始原細胞の生着が生じる、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。ある実施態様において、本方法は、CNS組織をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させることをさらに含む。ある実施態様において、該CNS始原細胞をCNS細胞へとさらに分化させる。また本明細書に提供されるのは、患者のCNS組織にCNS前駆細胞を生着させる方法であって、CNS前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該CNS組織を該CNS前駆細胞と接触させることを含み、その結果、該CNS前駆細胞の生着が生じる、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。ある実施態様において、本方法は、CNS組織をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させることをさらに含む。ある実施態様において、該CNS前駆細胞をCNS細胞へとさらに分化させる。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者のCNS組織内のCNS細胞の増殖を改善する方法であって、CNS細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該CNS組織を該CNS細胞と接触させることを含み、その結果、該CNS細胞の増殖が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させられていないCNS細胞の増殖と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者のCNS組織内のCNS始原細胞の増殖を改善する方法であって、CNS始原細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該CNS組織を該CNS始原細胞と接触させることを含み、その結果、該CNS始原細胞の増殖が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させられていないCNS始原細胞の増殖と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該CNS始原細胞をCNS細胞へとさらに分化させる。また本明細書に提供されるのは、患者のCNS組織内のCNS前駆細胞の増殖を改善する方法であって、CNS前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該CNS組織を該CNS前駆細胞と接触させることを含み、その結果、該CNS前駆細胞の増殖が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させられていないCNS前駆細胞の増殖と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該CNS前駆細胞をCNS細胞へとさらに分化させる。
他の態様において、本明細書に提供されるのは、患者のCNS組織内のCNS細胞の数及び/又は機能を増大させる方法であって、CNS細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該CNS組織を該CNS細胞と接触させることを含み、その結果、CNS細胞の数及び/又は機能が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触する前のCNS細胞の数及び/又は機能と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者のCNS組織内のCNS始原細胞の数及び/又は機能を増大させる方法であって、CNS始原細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該CNS組織を該CNS始原細胞と接触させることを含み、その結果、CNS始原細胞の数及び/又は機能が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触する前のCNS始原細胞の数及び/又は機能と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該CNS始原細胞をCNS細胞へとさらに分化させる。別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者のCNS組織内のCNS前駆細胞の数及び/又は機能を増大させる方法であって、CNS前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該CNS組織を該CNS前駆細胞と接触させることを含み、その結果、CNS前駆細胞の数及び/又は機能が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触する前のCNS前駆細胞の数及び/又は機能と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該CNS前駆細胞をCNS細胞へとさらに分化させる。
他の態様において、本明細書に提供されるのは、患者のCNS組織内のCNS細胞の数及び/又は機能を増大させる方法であって、CNS始原細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること(ここで、該CNS始原細胞を任意にCNS細胞へとさらに分化させる)、並びに該CNS組織を該CNS始原細胞及び/又はCNS細胞と接触させることを含み、その結果、CNS始原細胞の数及び/又は機能が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触する前のCNS細胞の数及び/又は機能と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。また本明細書に提供されるのは、患者のCNS組織内のCNS細胞の数及び/又は機能を増大させる方法であって、CNS前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること(ここで、該CNS前駆細胞を任意にCNS細胞へとさらに分化させる)、並びに該CNS組織を該CNS前駆細胞及び/又はCNS細胞と接触させることを含み、その結果、CNS前駆細胞の数及び/又は機能が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触する前のCNS細胞の数及び/又は機能と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。
本明細書に提供される様々な方法又は組成物のある実施態様において、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子とインビトロで接触させる。他の実施態様において、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子とエクスビボで接触させる。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。いくつかの実施態様において、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞は、患者のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞である。他の実施態様において、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞は、ドナーのCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞である。別の実施態様において、該患者は、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する。
本明細書に提供される様々な方法又は組成物のいくつかの実施態様において、該患者は、それを必要としている患者である。
本明細書に提供される様々な方法又は組成物のある実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、大脳皮質の疾患である。他の実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、大脳皮質の外科的損傷である。また想定されるのは、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を投与することにより、大脳皮質を再生させる方法である。大脳皮質の例示的な疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、進行性核上麻痺、及び大脳皮質基底核変性症が挙げられる。いくつかの実施態様において、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、神経変性疾患である。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を治療、予防、又は管理する方法であり、ここで、該CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病は、パーキンソン病;アルツハイマー病;クロイツフェルト・ヤコブ病;大脳皮質基底核変性症;筋萎縮性側索硬化症;多発性硬化症;進行性運動衰弱;免疫性神経障害、CNS外傷;パーキンソニズムを伴うアルツハイマー病;運動緩慢;無動;運動障害(例えば、細かい運動制御及び手指の器用さを損なうもの);発声不全;単調な発話;硬直;ジストニア;パーキンソン病と関連する炎症;顔、顎、舌、姿勢の振戦;パーキンソン病様歩行;すり足歩行;小刻み歩行;加速歩行;気分、認知、感覚、睡眠の障害;認知症;鬱病;薬物誘発性パーキンソニズム;血管性パーキンソニズム;多系統萎縮症;進行性核上麻痺;一次性タウ病変を有する障害;皮質基底核神経節変性症;認知症を伴うパーキンソニズム;多動性障害;舞踏病;ハンチントン病;ジストニア;ウィルソン病;トゥレット症候群;本態性振戦;ミオクローヌス;又は遅発性運動障害からなる群から選択される。
一実施態様において、本明細書に提供される方法を用いて、限定されないが、進行性の運動機能低下、緩慢な実行、又は運動緩慢、寡動又は無動、細かい運動制御及び手指の器用さを損なう運動障害、並びに運動緩慢の他の徴候、例えば、限定されないが、発声不全及び単調な発話を含む、運動に関連する障害を予防又は治療する。別の実施態様において、本明細書に提供される方法を用いて、限定されないが、他動運動に対する抵抗性の均一な増加、他動運動の中断、並びに硬直とジストニアの併発を含む、筋硬直に関連する障害を治療又は予防する。具体的な実施態様において、本明細書に提供される方法を用いて、パーキンソン病又は関連疾患と関連する炎症を治療する。また別の実施態様において、限定されないが、顔、顎、舌、姿勢の振戦、並びに安静時に存在する他の振戦及び運動時に減弱する他の振戦を含む、パーキンソン病様振戦に類似した障害を、本明細書に提供される方法によって治療又は予防する。別の実施態様において、本明細書に提供される方法を用いて、限定されないが、パーキンソン病様歩行、すり足歩行、小刻み歩行、アンブロックで回転する傾向(tendency to turn en bloc)、及び加速歩行に類似したものを含む、歩行障害を治療又は予防する。別の実施態様において、限定されないが、気分、認知、感覚、睡眠の障害、認知症、及び鬱病を含む、非運動性症状を、本明細書に提供される方法を用いて治療又は予防する。他の実施態様において、限定されないが、薬物誘発性パーキンソニズム、血管性パーキンソニズム、多系統萎縮症、進行性核上麻痺、一次性タウ病変を有する障害、皮質基底核神経節変性症、認知症を伴うパーキンソニズム、多動性障害、舞踏病、ハンチントン病、ジストニア、ウィルソン病、トゥレット症候群、本態性振戦、ミオクローヌス、及び遅発性運動障害を含む、パーキンソニズムの二次形態を、本明細書に提供される方法によって治療又は予防する。他の実施態様において、限定されないが、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及びCNS外傷を含む、他の中枢神経系障害を、本明細書に提供される方法によって治療又は予防する。
(5.2 他の細胞の増幅方法)
本明細書に提供されるいくつかの実施態様は、例えば、CNSの再生療法に関するものであるが、本明細書に提供される組成物及び方法が、他の組織及び細胞型にも有用で有り得ることが理解されるであろう。
したがって、一態様において、本明細書に提供されるのは、細胞の集団を増幅させる方法であって、細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させ、それにより、該細胞の集団を増幅させることを含む、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞及び組織始原細胞/前駆細胞も本明細書で想定されている。いくつかの実施態様において、本方法はインビトロ法である。他の実施態様において、本方法は、インビボ又はエクスビボ法である。
本明細書に提供される方法のある実施態様において、該細胞の集団を、細胞の増殖、増幅、分化、及び/又は機能を保持し又は増強させる薬剤とも接触させる。一実施態様において、該薬剤は、成長因子又はサイトカインである。他の実施態様において、該薬剤は、上皮成長因子(EGF)、エリスロポエチン、線維芽細胞成長因子(FGF)、ガレクチン-1、G-CSF、Six3、Lhx2、Foxg1、Sox2、Oct3/4、c-Myc、Klf4、Nanog、NeuroD、Ascl1、Pou3f2/3、Myt1l、Wnt3、Frizzled、β-カテニン、Tcf、Lef、NeuroD、Shh、Patched、GPCR、BMP、BMPR、Noggin、Chordin、Follistatin、Notch、Nrp2、Elav13、Zic2/3、P53、P63、Nodal、ADAMTS1、BMI-1、CRABP1、及び甲状腺放出ホルモンからなる群から選択される。ある実施態様において、該薬剤は、山中因子である。他の実施態様において、該薬剤は、BAM因子である。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者の細胞の集団を増幅させる方法であって、該患者の細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させ、それにより、該患者の細胞の集団を増幅させることを含む、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞及び組織始原細胞/前駆細胞も本明細書で想定されている。いくつかの実施態様において、該細胞を、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と直接的に接触させる。他の実施態様において、該細胞を、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と間接的に接触させる。
いくつかの実施態様において、該細胞を、約10%〜約100%、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、もしくは約100%、又はこれらの列挙されたパーセンテージの任意の範囲、増幅させる。ある実施態様において、該細胞塊又は集団を、約10%〜約10倍、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、もしくは約10倍、又はこれらの任意の範囲もしくは区間、増加させる。いくつかの実施態様において、該細胞を、(例えば、平均又は中央値によって決定したとき)母集団に存在する細胞の数の約20%、約10%、又は約5%以内の量にまで増幅させる。
いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、対象の細胞を再生させる方法であって、該対象に、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量を投与し、それにより、該対象の細胞を再生させることを含む、方法である。いくつかの実施態様において、BRD7アンタゴニストを投与する。別の実施態様において、Ikarosアンタゴニストを投与する。他の実施態様において、CRBN活性化因子を投与する。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞及び組織始原細胞/前駆細胞も本明細書で想定されている。
本明細書に提供される方法のいくつかの実施態様において、該有効量は、約1mg/kg〜約100mg/kgである。
ある実施態様において、該有効量は、1以上の用量、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくはそれより多くの用量、又はこれらの任意の区間で投与される。他の実施態様において、該有効量は、4週間以上、例えば、約5週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約4カ月、約5カ月、約6カ月、約1年、約2年、もしくはそれより長い間、又はこれらの任意の区間、毎週送達される。
ある実施態様において、BRD7のアンタゴニストとしては、BRD7タンパク質の阻害因子、BRD7遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、又はそのアンチセンス化合物、及びBRD7が下方調節されている幹細胞又は神経始原細胞/前駆細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
ある実施態様において、Ikarosのアンタゴニストとしては、Ikarosタンパク質の阻害因子、Ikaros遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、又はそのアンチセンス化合物、及びIkarosが下方調節されている幹細胞又は神経始原細胞/前駆細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
ある実施態様において、CRBNの活性化因子としては、CRBNタンパク質の能動的調節因子、CRBN遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、又はその阻害タンパク質に対するそのアンチセンス化合物、及びCRBNが上方調節されている幹細胞又は神経始原細胞/前駆細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者の損傷した組織を治療する方法であって、細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させることを含み、その結果、該損傷した組織が治療される、方法である。ある実施態様において、該細胞の集団は、該損傷した組織内のものであるか、又は該組織に由来するものである。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞及び組織始原細胞/前駆細胞も本明細書で想定されている。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者の損傷した組織を治療する方法であって、細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該患者の損傷した組織を該細胞又はその始原細胞/前駆細胞と接触させることを含み、その結果、該損傷した組織が治療される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。ある実施態様において、該細胞の集団又はその始原細胞/前駆細胞は、該損傷した組織内のものであるか、又は該組織に由来するものである。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞及び組織始原細胞/前駆細胞も本明細書で想定されている。
他の態様において、本明細書に提供されるのは、患者の損傷した組織を治療する方法であって、細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、該患者の損傷した組織を該細胞又はその始原細胞/前駆細胞と接触させること、及び該損傷した組織をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子とさらに接触させることを含み、その結果、該損傷した組織が治療される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞及び組織始原細胞/前駆細胞も本明細書で想定されている。
本明細書に提供される方法のいくつかの実施態様において、該損傷した組織は、肝臓組織である。いくつかの実施態様において、該損傷した組織は、***組織である。ある実施態様において、該損傷した組織は、結腸組織である。いくつかの実施態様において、該損傷した組織は、腸組織である。他の実施態様において、該損傷した組織は、軟骨又は骨組織である。別の実施態様において、該損傷した組織は、内皮組織である。他の実施態様において、該損傷した組織は、皮膚組織である。いくつかの実施態様において、該損傷した組織は、CNS組織である。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者の癌もしくは腫瘍、又はこれらの症状を治療又は予防する方法であって:細胞、例えば、幹細胞、始原細胞、又は前駆細胞の集団を、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量(ここで、該量は、該患者において、細胞の集団を増幅させ及び/又は細胞機能を増大させるのに有効である)と接触させ、それにより、該癌もしくは腫瘍、又はこれらの症状を治療又は予防することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞及び組織始原細胞/前駆細胞も本明細書で想定されている。
ある実施態様において、該癌又は腫瘍は、血液癌であり、該細胞は、造血幹細胞、始原細胞、又は前駆細胞である。ある実施態様において、該癌又は腫瘍は、肝臓癌(又は肝硬変)であり、該細胞は、肝臓幹細胞、始原細胞、又は前駆細胞である。ある実施態様において、該癌又は腫瘍は、乳癌であり、該細胞は、***幹細胞、始原細胞、又は始原細胞である。ある実施態様において、該癌又は腫瘍は、結腸癌であり、該細胞は、腸幹細胞、始原細胞、又は前駆細胞である。ある実施態様において、該癌又は腫瘍は、腸癌であり、該細胞は、腸幹細胞、始原細胞、又は前駆細胞である。ある実施態様において、該癌又は腫瘍は、軟骨肉腫、過誤腫、新生物、又は他の癌であり、該細胞は、間葉系幹細胞、始原細胞、又は前駆細胞である。ある実施態様において、該癌又は腫瘍は、内皮癌であり、該細胞は、内皮幹細胞、始原細胞、又は前駆細胞である。ある実施態様において、該癌又は腫瘍は、黒色腫又は他の癌であり、該細胞は、神経堤幹細胞、始原細胞、又は前駆細胞である。ある実施態様において、該細胞は、胚性幹細胞、始原細胞、又は前駆細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞、始原細胞、又は前駆細胞である。癌組織又は腫瘍組織に由来する幹細胞又は始原細胞も想定される。ある実施態様において、治療又は予防する方法は、組織の再生を含む。
ある実施態様において、本方法は、患者の癌もしくは腫瘍、又はこれらの症状を予防又は治療する際のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の効力を評価する工程であって、該患者の細胞の数及び/又は機能を該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与の前後で比較することを含む工程をさらに含み、ここで、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与前と比較したときの、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与後の細胞の数及び/又は機能の増大は、該癌もしくは腫瘍もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の効力を示す。いくつかの実施態様において、BRD7アンタゴニストの効力を評価する。別の実施態様において、Ikarosアンタゴニストの効力を評価する。他の実施態様において、CRBN活性化因子の効力を評価する。
いくつかの実施態様において、本方法は、患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際のBRD7アンタゴニスト効力を評価する工程であって、該患者におけるOct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Brn2、Asc11、Myt11、BAM因子、又は山中因子の発現レベルを該アンタゴニストの投与の前後で比較することを含む工程をさらに含み、ここで、該BRD7アンタゴニストの投与前と比較したときの該BRD7アンタゴニストの投与後のOct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Brn2、Asc11、Myt11、BAM因子、又は山中因子の発現レベルの増加は、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際の該BRD7アンタゴニストの効力を示す。
いくつかの実施態様において、本方法は、患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際のIkarosアンタゴニストの効力を評価する工程であって、該患者におけるOct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Sox2、Brn2、Asc11、Pou3f2b、Myt1l、BAM因子、又は山中因子の発現レベルを該アンタゴニストの投与の前後で比較することを含む工程をさらに含み、ここで、該Ikarosアンタゴニストの投与前と比較したときの該Ikarosアンタゴニストの投与後のOct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Sox2、Brn2、Asc11、Pou3f2b、Myt1l、BAM因子、又は山中因子の発現レベルの増加は、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際の該Ikarosアンタゴニストの効力を示す。
いくつかの実施態様において、本方法は、患者の癌もしくは腫瘍、又はこれらの症状を予防又は治療する際のCRBN活性化因子の効力を評価する工程であって、該患者における山中因子(例えば、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子(例えば、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、Myt1l)の発現レベルを該CRBN活性化因子の投与の前後で比較することを含む工程をさらに含み、ここで、該CRBN活性化因子の投与前と比較したときの該CRBN活性化因子の投与後の山中因子(例えば、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子(例えば、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、Myt1l)の発現レベルの増加は、該癌もしくは腫瘍、又はこれらの症状を予防又は治療する際のCRBN活性化因子の効力を示す。
いくつかの実施態様において、本方法は、効力を評価した後の患者に対するBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の1回以上の事後投与をさらに含む。いくつかの実施態様において、BRD7アンタゴニストを投与する。別の実施態様において、Ikarosアンタゴニストを投与する。他の実施態様において、CRBN活性化因子を投与する。いくつかの実施態様において、評価される発現レベルは、多能性遺伝子の発現レベルである。
他の実施態様において、本方法は、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、癌もしくは腫瘍、又はこれらの症状を有する患者の集団を、細胞の数及び/又は機能に基づいて選択することをさらに含む。いくつかの実施態様において、本方法は、BRD7アンタゴニストの投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするためのものである。いくつかの実施態様において、本方法は、Ikarosアンタゴニストの投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするためのものである。いくつかの実施態様において、本方法は、CRBN活性化因子の投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするためのものである。
ある実施態様において、本方法は、BRD7アンタゴニストの投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する患者の集団を、Oct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Brn2、Asc11、Myt11、BAM因子、又は山中因子の発現レベルに基づいて選択することをさらに含む。
ある実施態様において、本方法は、Ikarosアンタゴニストの投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する患者の集団を、Oct 3/4、Nanog、NeuroD、Sox2、Zic3、Huc、Sox2、Brn2、Asc11、Pou3f2b、Myt1l、BAM因子、又は山中因子の発現レベルに基づいて選択することをさらに含む。
ある実施態様において、本方法は、CRBN活性化因子の投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、癌もしくは腫瘍、又はこれらの症状を有する患者の集団を、山中因子(例えば、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子(例えば、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、Myt1l)の発現レベルに基づいて選択することをさらに含む。
また別の態様において、本明細書に提供されるのは、組織内の細胞の生存を改善する方法であって、細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させることを含み、その結果、該細胞の生存が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させられていない細胞の生存と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞、組織始原細胞、及び組織前駆細胞も本明細書で想定されている。
他の態様において、本明細書に提供されるのは、患者において細胞を生成させる方法であって、細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させることを含み、その結果、さらなる細胞が生成する、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞、組織始原細胞、及び組織前駆細胞も本明細書で想定されている。
他の態様において、本明細書に提供されるのは、患者の組織に細胞を生着させる方法であって、細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該組織を該細胞と接触させることを含み、その結果、該細胞の生着が生じる、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。ある実施態様において、本方法は、該組織をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させることをさらに含む。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞、組織始原細胞、及び組織前駆細胞も本明細書で想定されている。
他の態様において、本明細書に提供されるのは、患者の組織内の細胞の増殖を改善する方法であって、細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該組織を該細胞と接触させることを含み、その結果、該細胞の増殖が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させられていない細胞の増殖と比べて改善される、方法である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞、組織始原細胞、及び組織前駆細胞も本明細書で想定されている。
他の態様において、本明細書に提供されるのは、患者の組織内の細胞の数及び/又は機能を増大させる方法であって、細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該組織を該細胞と接触させることを含み、その結果、細胞の数及び/又は機能が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触する前の細胞の数及び/又は機能と比べて改善される、方法である。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞、組織始原細胞、及び組織前駆細胞も本明細書で想定されている。
本明細書に提供される様々な方法又は組成物のある実施態様において、細胞の集団を該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子とインビトロで接触させる。他の実施態様において、細胞の集団を該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子とエクスビボで接触させる。いくつかの実施態様において、該細胞をBRD7アンタゴニストと接触させる。別の実施態様において、該細胞をIkarosアンタゴニストと接触させる。他の実施態様において、該細胞をCRBN活性化因子と接触させる。いくつかの実施態様において、該細胞は、患者の細胞である。他の実施態様において、該細胞は、ドナーの細胞である。別の実施態様において、該患者は、癌もしくは腫瘍、又はこれらの症状を有する。一実施態様において、該細胞は、始原細胞である。一実施態様において、該細胞は、前駆細胞である。別の実施態様において、該細胞は、幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、造血幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、肝臓幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、***幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、腸幹細胞である。ある実施態様において、該細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの実施態様において、該細胞は、内皮幹細胞である。他の実施態様において、該細胞は、成体嗅覚幹細胞である。一実施態様において、該細胞は、神経堤幹細胞である。他の組織幹細胞、組織始原細胞、及び組織前駆細胞も本明細書で想定されている。
本明細書に提供される様々な方法又は組成物のいくつかの実施態様において、該患者は、それを必要としている患者である。
いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、癌もしくは腫瘍、又はこれらの症状の予防又は治療において使用するための、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子、及び担体を含む、医薬組成物、単一単位剤形、及びキットである。
(5.3 BRD7アンタゴニスト)
本明細書に提供される方法のいくつかの実施態様において、BRD7のアンタゴニストは、CNS神経細胞の増殖及び分化におけるBRD7の阻害的機能を抑制する。
いくつかの態様において、BRD7のアンタゴニストは、BRD7タンパク質の阻害因子である。いくつかの実施態様において、該BRD7タンパク質の阻害因子は、BRD7タンパク質の産生を阻害する。産生の阻害因子は、BRD7タンパク質の合成、プロセッシング、又は成熟に悪影響を及ぼす任意の分子であることができる。本明細書で使用されるBRD7タンパク質の阻害因子は、例えば、BRD7タンパク質の正確なフォールディングを損なうか、又はBRD7タンパク質の分泌を部分的にもしくは実質的に妨げるタンパク質、ひとたびBRD7が合成されたとすれば、それを分解するプロテアーゼ、又は成熟したBRD7を生成させるためにBRD7を切断するプロテアーゼの阻害因子、或いはこれらの任意の組合せであることができる。
いくつかの実施態様において、該BRD7タンパク質の阻害因子は、BRD7作用を阻害する。BRD7作用の阻害因子は、例えば、細胞内のBRD7の可溶性の天然の生物学的結合パートナーもしくはそのような結合パートナーを模倣する分子、又はそのような結合パートナーを遮断する薬剤、又はBRD7抗体、例えば、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、又はその細胞標的に対するBRD7の結合を妨げ、それにより、BRD7によって媒介される細胞内もしくは細胞外の反応及び/もしくは経路の誘発を減少させもしくは妨害する任意の他の薬剤もしくは分子、又はこれらの任意の組合せであることができる。
いくつかの実施態様において、BRD7の阻害因子は、BRD7又はそのパートナーに対するBRD7結合に関与するBRD7結合部位(例えば、ブロモドメイン)を部分的に又は実質的に中和するのに十分な親和性及び特異性で、BRD7分子それ自体に結合するか、又はそれを隔離する。BRD7の阻害因子は、BRD7がそのパートナーに結合したときに細胞内で活性化されるシグナル伝達/生物学的経路を阻害することもできる。
いくつかの実施態様において、該BRD7タンパク質の阻害因子は、タンパク質と別の分子、例えば、標的ペプチド又は酵素基質との間の相互作用を阻害し又は減少させる化合物である。いくつかの実施態様において、BRD7の阻害因子は、BRD7タンパク質に結合し、BRD7タンパク質構造を変化させる化合物である。いくつかの実施態様において、該阻害因子は、Brd7遺伝子の発現を下方調節するか、又は発現されたBRD7の存在量を低下させる化合物である。
いくつかの実施態様において、該BRD7タンパク質の阻害因子は、タンパク質である。該タンパク質は、グリコシル化されているものであっても、グリコシル化されていないものであってもよく、それらは、尿などの天然源に由来するものであってもよく、又はそれらは、好ましくは組換えにより産生されたものであってもよい。組換え発現は、大腸菌(E. coli)などの原核生物の発現系で、又は真核生物、好ましくは、哺乳動物の発現系で実施されてもよい。
ある実施態様において、該BRD7アンタゴニストは、CNSの障害、損傷、又は傷害の治療、予防、又は管理のための医薬の調製における、BRD7阻害因子のコード配列を含む核酸分子である。
一実施態様において、該核酸分子は、細胞内のBRD7の天然の結合タンパク質、そのムテイン、機能的誘導体、又は活性画分のコード配列を含む。
一実施態様において、本明細書に提供されるムテインは、細胞内のBRD7の天然の結合タンパク質の類似体である。任意のそのようなムテインは、好ましくは、BRD7阻害因子のアミノ酸の配列と十分に重複するアミノ酸の配列を有し、例えば、該細胞内のBRD7の天然の結合タンパク質と実質的に同様の活性を有する。該細胞内のBRD7の天然の結合タンパク質の1つの活性は、BRD7タンパク質に結合し及び/又はBRD7タンパク質を阻止するその能力である。ムテインがBRD7に対する実質的な結合活性を有する限り、それを、例えば、親和性クロマトグラフィーによるBRD7タンパク質の精製において使用することができ、したがって、該細胞内のBRD7の天然の結合タンパク質と実質的に同様の活性を有すると考えることができる。
ある実施態様において、該核酸分子は、融合タンパク質のコード配列を有する。
ある実施態様において、該核酸分子は、BRD7タンパク質に対する抗体、又はBRD7タンパク質に対する抗体の断片のコード配列を含む。
ある実施態様において、該核酸分子は、例えば、本明細書に提供されるBRD7阻害因子を投与するための遺伝子治療を使用するために、発現ベクターの配列をさらに含む。ある実施態様において、該核酸分子は、筋肉内に投与される。
ある実施態様において、CNSの障害、損傷、又は傷害を治療及び/又は予防するために、BRD7の産生及び/又は作用の阻害因子の配列を含む遺伝子治療ベクターを罹患組織に直接注射し、例えば、それにより、ベクターの希釈のような遺伝子治療ベクターの全身投与に関与する問題、標的細胞又は組織への到達及び標的細胞又は組織の標的化に関与する問題、並びに副作用の問題を回避することができる。
BRD7阻害因子の発現を通常休止している細胞又は十分でない量の該阻害因子を発現している細胞におけるBRD7の阻害因子の内在性産生を誘導及び/又は増強するためのベクターの使用も、CNS損傷の治療及び/又は予防のために、本明細書で想定されている。該ベクターは、BRD7の阻害因子を発現することが望ましい細胞で機能する調節エレメントを含んでもよい。そのような調節配列又はエレメントは、例えば、プロモーター又はエンハンサーであってもよい。その後、該調節配列をゲノムの正しい遺伝子座に相同組換えによって導入し、それにより、該調節配列を、その発現が誘導又は増強されることが必要とされる遺伝子と機能的に連結することができる。この技術は、当技術分野では通常、「内在性遺伝子活性化」(EGA)と呼ばれる。
いくつかの態様において、BRD7のアンタゴニストは、BRD7遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸である。本明細書に提供される核酸は、BRD7発現をノックダウンすることができる。
ある実施態様において、BRD7のアンタゴニストは、BRD7遺伝子に由来するmRNA又はDNAのどちらかに特異的にハイブリダイズ可能であるか又は特異的に相補的であるアンチセンス分子である。一実施態様において、該BRD7のアンタゴニストは、BRD7 mRNAに特異的にハイブリダイズし、その翻訳を阻害するアンチセンス分子である。
いくつかの実施態様において、該BRD7のアンタゴニストはRNAである。本明細書に提供されるRNAとしては、Brd7遺伝子の遺伝子発現を調節するために使用し得る、siRNA、shRNA、マイクロRNAが挙げられるが、これらに限定されない。二本鎖オリゴヌクレオチドは、1つの鎖のオリゴヌクレオチド配列が第2の鎖のオリゴヌクレオチド配列と相補的である2つの異なるオリゴヌクレオチド配列のアセンブリによって形成されてもよく;該二本鎖オリゴヌクレオチドは、2つの別々のオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)から、又はそれ自体の上でフォールディングして二本鎖構造(例えば、shRNAもしくは短いヘアピンRNA)を形成する単一の分子から構築されてもよい。これらの二本鎖オリゴヌクレオチドの各々の鎖は、異なるヌクレオチド配列を有していてもよく、その場合、一方のヌクレオチド配列領域(ガイド配列又はアンチセンス配列)のみが、Brd7遺伝子の核酸配列の部分との相補性を有し、もう一方の鎖(センス配列)は、Brd7遺伝子の核酸配列の部分と相同であるヌクレオチド配列を含む。
ある実施態様において、該BRD7のアンタゴニストは、マイクロRNA(miRNA)である。ある実施態様において、該miRNAは、長さが約21〜23ヌクレオチドの一本鎖RNA分子であり、BRD7遺伝子に由来するRNA(mRNA)分子と部分的に相補的である。
ある実施態様において、該BRD7のアンタゴニストは、阻害性RNA(RNAi)分子である。ある実施態様において、本開示は、センス鎖及びアンチセンス鎖(ここで、該アンチセンス鎖は、Brd7遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む)を含むRNAi分子に関する。好ましくは、本明細書に提供されるRNAi分子は、10ヌクレオチド塩基(nb)〜1000nbの長さを有する。一実施態様において、該RNAi分子は、該RNAi剤が生体試料又は環境中で増大した安定性を有するようにさせる修飾を含む。RNAiは、当技術分野で周知の技法であり、当業者は、Brd7遺伝子のノックダウン用のRNAiを調製する方法を理解しているであろう(例えば、Fraser, AGの文献(2000)、「系統的RNA干渉による線虫第I番染色体の機能的ゲノム解析(Functional genomics analysis of C. elegans chromosome I by systematic RNA interference)」、Nature 408(6810): 325-330;Aagaard, Lの文献(2007)、「RNAi治療学:原理、展望、及び課題(RNAi therapeutics: principles, prospects and challenges)」、Advanced Drug Delivery Review 59(2-3): 75-86;Kamath, RSの文献(2003)、「線虫におけるゲノム規模のRNAiスクリーニング(Genome-wide RNAi screening in Caenorhabditis elegans)」、Methods 30: 313-321を参照されたい)。
ある実施態様において、該BRD7のアンタゴニストは、モルフォリノオリゴヌクレオチド又は他のRNアーゼ-H非依存的アンチセンスである。一実施態様において、該BRD7のアンタゴニストは、モルフォリノオリゴヌクレオチドである。モルフォリノオリゴヌクレオチドは、天然の核酸と構造が異なり、それらは、RNA又はDNAのリボース又はデオキシリボース糖部分の代わりにモルフォリノ環を保有し、RNA又はDNAのアニオン性ホスフェートの代わりに非イオン性ホスホロジアミデート結合を保有している。各々のモルフォリノ環は、25塩基のモルフォリノオリゴヌクレオチドがワトソン-クリック型対形成を介してRNAの鎖中のその相補的な25塩基の標的部位に強くかつ特異的に結合するように、標準的な塩基(A、G、C、T/U)のうちの1つを好適に配置する。しかしながら、該モルフォリノオリゴヌクレオチドの骨格は、シグナル伝達タンパク質の細胞酵素によって認識されないので、それはヌクレアーゼに対して安定であり、toll様受容体を介した自然免疫応答を誘発しない。これにより、該オリゴヌクレオチドの損失が回避されるだけでなく、炎症又はインターフェロン誘導も減弱される。モルフォリノオリゴヌクレオチドは電荷を有さず、タンパク質と強くは相互作用せず、その活性に、RNアーゼ-H、Argonaute、又は他の触媒タンパク質の活性を必要としない。本明細書に提供されるモルフォリノは、組織への直接注射、又は注入ポンプ及び急速静注によるものを含む、いくつかの技法によって送達することができる(Moultonらの文献(2009)、成体動物における遺伝子ノックダウン:PPMO及びビボ-モルフォリノ(Gene Knockdowns in Adult Animals: PPMOs and Vivo-Morpholinos)、Molecules 14: 1304-1323)。
モルフォリノオリゴヌクレオチドは当技術分野で周知であり、当業者は、標的遺伝子のノックダウン用のモルフォリノオリゴヌクレオチドの作製及び使用方法を理解しているであろう(例えば、Amantanaらの文献(2005)、ホスホロジアミデートモルフォリノアンチセンスオリゴマーの薬物動態及び生体内分布(Pharmacokinetics And Biodistribution Of Phosphorodiamidate Morpholino Antisense Oligomers)、Current Opinion in Pharmacology 5:550-555;Billらの文献(2009)、ゼブラフィッシュにおけるモルフォリノ用途のプライマー(A Primer for Morpholino Use in Zebrafish)、Zebrafish 6(1):69-77;Heasmanの文献(2002)、モルフォリノオリゴ:アンチセンスの意味が分かりますか?(Morpholino Oligos: Making Sense of Antisense?)、Devel. Biol. 243:209-214;Karkareらの文献(2006)、有望な核酸類似体及び模倣体: PNA、LNA、及びモルフォリノの特徴的な特性及び用途(Promising Nucleic Acid Analogs And Mimics: Characteristic Features And Applications Of PNA, LNA, And Morpholino)、Appl. Microbiol. Biotechnol. 71 :575-586;Moultonらの文献(2009)、成体動物における遺伝子ノックダウン: PPMO及びビボ-モルフォリノ(Gene Knockdowns in Adult Animals: PPMOs and Vivo-Morpholinos)、Molecules 14: 1304-1323;Moultonらの文献(2010)、モルフォリノ及びそのペプチドコンジュゲート:デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する治療的有望性及び課題(Morpholinos And Their Peptide Conjugates: Therapeutic Promise And Challenge For Duchenne Muscular Dystrophy)、Biochimica et Biophysica Acta 1798:2296-2303を参照されたい)。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるBRD7のアンタゴニストは、
という配列を有するモルフォリノオリゴヌクレオチドである。
いくつかの態様において、BRD7のアンタゴニストは、BRD7が下方調節されている幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される始原細胞は、それ自体よりも分化している子孫を生み出す能力を有する細胞である。いくつかの実施態様において、該始原細胞は、増殖可能であり、かつ分化した又は分化可能な娘細胞を次に生じることができる多数の母細胞を生成させる能力を有するより多くの始原細胞を生じることが可能である、未分化細胞又は最終分化に達しない程度まで分化した細胞である。ある実施態様において、該始原細胞は、胚性細胞及び胚性組織の漸進的多様化で起こるように、その子孫(descendant)(子孫(progeny))が、分化によって、例えば、個々の個性を完全に獲得することによって、多くの場合、異なる方向に特殊化する一般的な母細胞である。細胞分化は、典型的には多くの細胞***を通じて起こる複雑なプロセスである。分化した細胞は、それ自体多能性細胞に由来する多能性細胞などから生じることができる。これらの多能性細胞の各々を幹細胞であるとみなすことができる一方で、各々が生じ得る細胞型の範囲はかなり異なり得る。一部の分化した細胞は、より大きな発生的可能性のある細胞を生じる能力も有する。そのような能力は、天然のものであってもよく、又は様々な因子を用いた処理によって人工的に誘導されてもよい。この定義によれば、幹細胞は、始原細胞、及び終末分化した細胞により近い前駆細胞でもあり得る。いくつかの実施態様において、該前駆細胞は、部分的に分化した細胞である。いくつかの実施態様において、該前駆細胞は、始原細胞に由来する。いくつかの実施態様において、該前駆細胞は、自己再生することができない。例示的な前駆細胞としては、例えば、間葉系前駆細胞、骨芽細胞、及び軟骨芽細胞などの骨始原細胞が挙げられる。
いくつかの実施態様において、BRD7が下方調節されている幹細胞は、ES細胞、成体幹細胞、又は臍帯血幹細胞である。好ましい実施態様において、BRD7が下方調節されている幹細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞である。一実施態様において、BRD7が下方調節されている幹細胞は、拒絶反応を回避することができるよう、患者(男性/女性)自身から得られた人工多能性幹(iPS)細胞である。成人から得られるiPS幹細胞は、公知の技術である。体細胞由来細胞株である人工多能性幹(iPS)細胞は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)及び皮膚線維芽細胞を用いて、Oct4、Sox2、Klf4、及びc-Mycをコードする4つの転写因子遺伝子を単に発現させることにより、山中伸弥及び高橋和利によって樹立された(Takahashi及びYamanakaの文献(2006)、特定の因子によるマウス胚及び成体の線維芽細胞培養物からの多能性幹細胞の誘導(Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors)、Cell 126, 663-676)。それ以来、多くのグループが同じ戦略を用いて、測定される全ての基準でヒトES細胞に類似しているヒトiPS細胞を作製した。
いくつかの実施態様において、該iPS細胞は、患者のニューロン始原(もしくは前駆)細胞、角化細胞、肝細胞、B細胞、線維芽細胞の先端、腎臓、筋肉、又は副腎から誘導される。ある実施態様において、該iPS細胞は、線維芽細胞から誘導される。再プログラミング用の線維芽細胞は、患者の皮膚生検から獲得してもよい。別の実施態様において、皮膚生検由来のヒト角化細胞を再プログラミングしてiPSにする。皮膚生検由来の角化細胞を線維芽細胞よりもはるかに高い頻度及び速い速度で再プログラミングして多能性状態にすることができることが示されている。1つの理論は、この違いが、角化細胞が線維芽細胞よりもはるかに高いレベルの内在性c-Myc及びKlf4を発現し、それにより、角化細胞からiPS細胞への転換が加速され得るという研究結果によるものとされるということである(Aasenらの文献(2008)、ヒト角化細胞からの効率的かつ迅速な人工多能性幹細胞の作製(Efficient and rapid generation of induced pluripotent stem cells from human keratinocytes)、Nat Biotechnol., 26(11):1276-84)。また別の実施態様において、患者の血液から回収された造血(血液)細胞を再プログラミングに用いて、iPS細胞を産生する。
(5.4 Ikarosアンタゴニスト)
本明細書に提供される方法のいくつかの実施態様において、Ikarosのアンタゴニストは、CNS神経細胞の増殖及び分化におけるIkarosの阻害的機能を抑制する。
いくつかの態様において、Ikarosのアンタゴニストは、Ikarosタンパク質の阻害因子である。いくつかの実施態様において、該Ikarosタンパク質の阻害因子は、Ikarosタンパク質の産生を阻害する。産生の阻害因子は、Ikarosタンパク質の合成、プロセッシング、又は成熟に悪影響を及ぼす任意の分子であることができる。本明細書で使用されるIkarosタンパク質の阻害因子は、例えば、Ikarosタンパク質の正確なフォールディングを損なうか、又はIkarosタンパク質の分泌を部分的にもしくは実質的に妨げるタンパク質、ひとたびIkarosが合成されたとすれば、それを分解するプロテアーゼ、又は成熟したIkarosを生成させるためにIkarosを切断するプロテアーゼの阻害因子、或いはこれらの任意の組合せであることができる。
いくつかの実施態様において、該Ikarosタンパク質の阻害因子は、Ikaros作用を阻害する。Ikaros作用の阻害因子は、例えば、細胞内のIkarosの可溶性の天然の生物学的結合パートナーもしくはそのような結合パートナーを模倣する分子、又はそのような結合パートナーを遮断する薬剤、又はIkaros抗体、例えば、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、又はその細胞標的に対するIkarosの結合を妨げ、それにより、Ikarosによって媒介される細胞内もしくは細胞外反応及び/もしくは経路の誘発を減少させもしくは妨害する任意の他の薬剤もしくは分子、又はこれらの任意の組合せであることができる。
いくつかの実施態様において、Ikarosの阻害因子は、Ikaros又はそのパートナーに対するIkaros結合に関与するIkaros結合部位(例えば、ブロモドメイン)を部分的に又は実質的に中和するのに十分な親和性及び特異性で、Ikaros分子それ自体に結合するか、又はそれを隔離する。Ikarosの阻害因子は、Ikarosがそのパートナーに結合したときに細胞内で活性化されるシグナル伝達/生物学的経路を阻害することもできる。
いくつかの実施態様において、該Ikarosタンパク質の阻害因子は、タンパク質と別の分子、例えば、標的ペプチド又は酵素基質との間の相互作用を阻害し又は減少させる化合物である。いくつかの実施態様において、Ikarosの阻害因子は、Ikarosタンパク質に結合し、Ikarosタンパク質構造を変化させる化合物である。いくつかの実施態様において、該阻害因子は、Ikaros遺伝子の発現を下方調節するか、又は発現されたIkarosの存在量を低下させる化合物である。
いくつかの実施態様において、該Ikarosタンパク質の阻害因子は、タンパク質である。該タンパク質は、グリコシル化されているものであっても、グリコシル化されていないものであってもよく、それらは、尿などの天然源に由来するものであってもよく、又はそれらは、好ましくは組換えにより産生されたものであってもよい。組換え発現は、大腸菌などの原核生物の発現系で、又は真核生物、好ましくは、哺乳動物の発現系で実施されてもよい。
ある実施態様において、該Ikarosアンタゴニストは、CNSの障害、損傷、又は傷害の治療、予防、又は管理のための医薬の調製における、Ikaros阻害因子のコード配列を含む核酸分子である。
一実施態様において、該核酸分子は、細胞内のIkarosの天然の結合タンパク質、そのムテイン、機能的誘導体、又は活性画分のコード配列を含む。
一実施態様において、本明細書に提供されるムテインは、細胞内のIkarosの天然の結合タンパク質の類似体である。任意のそのようなムテインは、好ましくは、Ikaros阻害因子のアミノ酸の配列と十分に重複するアミノ酸の配列を有し、例えば、該細胞内のIkarosの天然の結合タンパク質と実質的に同様の活性を有する。該細胞内のIkarosの天然の結合タンパク質の1つの活性は、Ikarosタンパク質に結合し及び/又はIkarosタンパク質を阻止するその能力である。ムテインがIkarosに対する実質的な結合活性を有する限り、それを、例えば、親和性クロマトグラフィーによるIkarosタンパク質の精製において使用することができ、したがって、該細胞内のIkarosの天然の結合タンパク質と実質的に同様の活性を有すると考えることができる。
ある実施態様において、該核酸分子は、融合タンパク質のコード配列を有する。
ある実施態様において、該核酸分子は、Ikarosタンパク質に対する抗体、又はIkarosタンパク質に対する抗体の断片のコード配列を含む。
ある実施態様において、該核酸分子は、例えば、本明細書に提供されるIkaros阻害因子を投与するための遺伝子治療を使用するために、発現ベクターの配列をさらに含む。ある実施態様において、該核酸分子は、筋肉内に投与される。
ある実施態様において、CNSの障害、損傷、又は傷害を治療及び/又は予防するために、Ikarosの産生及び/又は作用の阻害因子の配列を含む遺伝子治療ベクターを罹患組織に直接注射し、例えば、それにより、該ベクターの希釈のような遺伝子治療ベクターの全身投与に関与する問題、標的細胞又は組織への到達及び標的細胞又は組織の標的化に関与する問題、並びに副作用の問題を回避することができる。
Ikaros阻害因子の発現を通常休止している細胞又は十分でない量の該阻害因子を発現している細胞におけるIkarosの阻害因子の内在性産生を誘導及び/又は増強するためのベクターの使用も、CNS損傷の治療及び/又は予防のために、本明細書で想定されている。該ベクターは、Ikarosの阻害因子を発現することが望ましい細胞で機能的な調節エレメントを含んでもよい。そのような調節配列又はエレメントは、例えば、プロモーター又はエンハンサーであってもよい。その後、該調節配列をゲノムの正しい遺伝子座に相同組換えによって導入し、それにより、該調節配列を、その発現が誘導又は増強されることが必要とされる遺伝子と機能的に連結することができる。この技術は、当技術分野では通常、「内在性遺伝子活性化」(EGA)と呼ばれる。
いくつかの態様において、Ikarosのアンタゴニストは、Ikaros遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸である。本明細書に提供される核酸は、Ikaros発現をノックダウンすることができる。
ある実施態様において、Ikarosのアンタゴニストは、Ikaros遺伝子に由来するmRNA又はDNAのどちらかに特異的にハイブリダイズ可能であるか又は特異的に相補的であるアンチセンス分子である。一実施態様において、該Ikarosのアンタゴニストは、Ikaros mRNAに特異的にハイブリダイズし、その翻訳を阻害するアンチセンス分子である。
いくつかの実施態様において、該IkarosのアンタゴニストはRNAである。本明細書に提供されるRNAとしては、Ikaros遺伝子の遺伝子発現を調節するために使用し得る、siRNA、shRNA、マイクロRNAが挙げられるが、これらに限定されない。二本鎖オリゴヌクレオチドは、1つの鎖のオリゴヌクレオチド配列が第2の鎖のオリゴヌクレオチド配列と相補的である2つの異なるオリゴヌクレオチド配列のアセンブリによって形成されてもよく;該二本鎖オリゴヌクレオチドは、2つの別々のオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)から、又はそれ自体の上でフォールディングして二本鎖構造(例えば、shRNAもしくは短いヘアピンRNA)を形成する単一の分子から組み立てられてもよい。これらの二本鎖オリゴヌクレオチドの各々の鎖は、異なるヌクレオチド配列を有していてもよく、その場合、一方のヌクレオチド配列領域(ガイド配列又はアンチセンス配列)のみが、Ikaros遺伝子の核酸配列の部分との相補性を有し、もう一方の鎖(センス配列)は、Ikaros遺伝子の核酸配列の部分と相同であるヌクレオチド配列を含む。
ある実施態様において、該Ikarosのアンタゴニストは、マイクロRNA(miRNA)である。ある実施態様において、該miRNAは、長さが約21〜23ヌクレオチドの一本鎖RNA分子であり、Ikaros遺伝子に由来するRNA(mRNA)分子と部分的に相補的である。
ある実施態様において、該Ikarosのアンタゴニストは、阻害性RNA(RNAi)分子である。ある実施態様において、本開示は、センス鎖及びアンチセンス鎖(ここで、該アンチセンス鎖は、Ikaros遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む)を含むRNAi分子に関する。好ましくは、本明細書に提供されるRNAi分子は、10ヌクレオチド塩基(nb)〜1000nbの長さを有する。一実施態様において、該RNAi分子は、該RNAi剤が生体試料又は環境中で増大した安定性を有するようにさせる修飾を含む。RNAiは、当技術分野で周知の技法であり、当業者は、Ikaros遺伝子のノックダウン用のRNAiを調製する方法を理解しているであろう(例えば、Fraser, AGの文献(2000)、「系統的RNA干渉による線虫第I番染色体の機能的ゲノム解析(Functional genomics analysis of C. elegans chromosome I by systematic RNA interference)」、Nature 408(6810): 325-330;Aagaard, Lの文献(2007)、「RNAi治療学:原理、展望、及び課題(RNAi therapeutics: principles, prospects and challenges)」、Advanced Drug Delivery Review 59(2-3): 75-86;Kamath, RSの文献(2003)、「線虫におけるゲノム規模のRNAiスクリーニング(Genome-wide RNAi screening in Caenorhabditis elegans)」、Methods 30: 313-321を参照されたい)。
ある実施態様において、該Ikarosのアンタゴニストは、モルフォリノオリゴヌクレオチド又は他のRNアーゼ-H非依存的アンチセンスである。一実施態様において、該Ikarosのアンタゴニストは、モルフォリノオリゴヌクレオチドである。モルフォリノオリゴヌクレオチドは、天然の核酸と構造が異なり、それらは、RNA又はDNAのリボース又はデオキシリボース糖部分の代わりにモルフォリノ環を保有し、RNA又はDNAのアニオン性ホスフェートの代わりに非イオン性ホスホロジアミデート結合を保有している。各々のモルフォリノ環は、25塩基のモルフォリノオリゴヌクレオチドがワトソン-クリック型対形成を介してRNAの鎖中のその相補的な25塩基の標的部位に強くかつ特異的に結合するように、標準的な塩基(A、G、C、T/U)のうちの1つを好適に配置する。しかしながら、該モルフォリノオリゴヌクレオチドの骨格は、シグナル伝達タンパク質の細胞酵素によって認識されないので、それはヌクレアーゼに対して安定であり、toll様受容体を介した自然免疫応答を誘発しない。これにより、該オリゴヌクレオチドの損失が回避されるだけでなく、炎症又はインターフェロン誘導も減弱される。モルフォリノオリゴヌクレオチドは電荷を有さず、タンパク質と強くは相互作用せず、その活性のために、RNアーゼ-H、Argonaute、又は他の触媒タンパク質の活性を必要としない。本明細書に提供されるモルフォリノは、組織への直接注射、又は注入ポンプ及び急速静注によるものを含む、いくつかの技法によって送達することができる(Moultonらの文献(2009)、成体動物における遺伝子ノックダウン: PPMO及びビボ-モルフォリノ(Gene Knockdowns in Adult Animals: PPMOs and Vivo-Morpholinos)、Molecules 14: 1304-1323)。
モルフォリノオリゴヌクレオチドは当技術分野で周知であり、当業者は、標的遺伝子のノックダウン用のモルフォリノオリゴヌクレオチドの作製及び使用方法を理解しているであろう(例えば、Amantanaらの文献(2005)、ホスホロジアミデートモルフォリノアンチセンスオリゴマーの薬物動態及び生体内分布(Pharmacokinetics And Biodistribution Of Phosphorodiamidate Morpholino Antisense Oligomers)、Current Opinion in Pharmacology 5:550-555;Billらの文献(2009)、ゼブラフィッシュにおけるモルフォリノ用途のプライマー(A Primer for Morpholino Use in Zebrafish)、Zebrafish 6(1):69-77;Heasmanの文献(2002)、モルフォリノオリゴ:アンチセンスの意味が分かりますか?(Morpholino Oligos: Making Sense of Antisense?)、Devel. Biol. 243:209-214;Karkareらの文献(2006)、有望な核酸類似体及び模倣体: PNA、LNA、及びモルフォリノの特徴的な特性及び用途(Promising Nucleic Acid Analogs And Mimics: Characteristic Features And Applications Of PNA, LNA, And Morpholino)、Appl. Microbiol. Biotechnol. 71 :575-586;Moultonらの文献(2009)、成体動物における遺伝子ノックダウン: PPMO及びビボ-モルフォリノ(Gene Knockdowns in Adult Animals: PPMOs and Vivo-Morpholinos)、Molecules 14: 1304-1323;Moultonらの文献(2010)、モルフォリノ及びそのペプチドコンジュゲート:デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する治療的有望性及び課題(Morpholinos And Their Peptide Conjugates: Therapeutic Promise And Challenge For Duchenne Muscular Dystrophy)、Biochimica et Biophysica Acta 1798:2296-2303を参照されたい)。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるIkarosのアンタゴニストは、
という配列を有するモルフォリノオリゴヌクレオチドである。
いくつかの態様において、Ikarosのアンタゴニストは、Ikarosが下方調節されている幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される始原細胞は、それ自体よりも分化している子孫を生み出す能力を有する細胞である。いくつかの実施態様において、該始原細胞は、増殖可能であり、かつ分化した又は分化可能な娘細胞を次に生じることができる多数の母細胞を生成させる能力を有するより多くの始原細胞を生じることが可能である、未分化細胞又は最終分化に達しない程度まで分化した細胞である。ある実施態様において、該始原細胞は、胚性細胞及び胚性組織の漸進的多様化で起こるように、その子孫(descendant)(子孫(progeny))が、分化によって、例えば、個々の個性を完全に獲得することによって、多くの場合、異なる方向に特殊化する一般的な母細胞である。細胞分化は、典型的には多くの細胞***を通じて起こる複雑なプロセスである。分化した細胞は、それ自体多能性細胞に由来する多能性細胞などから生じることができる。これらの多能性細胞の各々を幹細胞であるとみなすことができる一方で、各々が生じ得る細胞型の範囲はかなり異なり得る。一部の分化した細胞は、より大きな発生的可能性のある細胞を生じる能力も有する。そのような能力は、天然のものであってもよく、又は様々な因子を用いた処理によって人工的に誘導されてもよい。この定義によれば、幹細胞は、始原細胞、及び終末分化した細胞により近い前駆細胞でもあり得る。いくつかの実施態様において、該前駆細胞は、部分的に分化した細胞である。いくつかの実施態様において、該前駆細胞は、始原細胞に由来する。いくつかの実施態様において、該前駆細胞は、自己再生することができない。例示的な前駆細胞としては、例えば、間葉系前駆細胞、骨芽細胞、及び軟骨芽細胞などの骨始原細胞が挙げられる。
いくつかの実施態様において、Ikarosが下方調節されている幹細胞は、ES細胞、成体幹細胞、又は臍帯血幹細胞である。好ましい実施態様において、Ikarosが下方調節されている幹細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞である。一実施態様において、Ikarosが下方調節されている幹細胞は、拒絶反応を回避することができるよう、患者(男性/女性)自身から得られた人工多能性幹(iPS)細胞である。成人から得られるiPS幹細胞は、公知の技術である。体細胞由来細胞株である人工多能性幹(iPS)細胞は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)及び皮膚線維芽細胞を用いて、Oct4、Sox2、Klf4、及びc-Mycをコードする4つの転写因子遺伝子を単に発現させることにより、山中伸弥及び高橋和利によって樹立された(Takahashi及びYamanakaの文献(2006)、特定の因子によるマウス胚及び成体の線維芽細胞培養物からの多能性幹細胞の誘導(Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors)、Cell 126, 663-676)。それ以来、多くのグループが同じ戦略を用いて、測定される全ての基準でヒトES細胞に類似しているヒトiPS細胞を作製した。
いくつかの実施態様において、該iPS細胞は、患者のニューロン始原(もしくは前駆)細胞、角化細胞、肝細胞、B細胞、線維芽細胞の先端、腎臓、筋肉、又は副腎から誘導される。ある実施態様において、該iPS細胞は、線維芽細胞から誘導される。再プログラミング用の線維芽細胞は、患者の皮膚生検から獲得してもよい。別の実施態様において、皮膚生検由来のヒト角化細胞を再プログラミングしてiPSにする。皮膚生検由来の角化細胞を線維芽細胞よりもはるかに高い頻度及び速い速度で再プログラミングして多能性状態にすることができることが示されている。1つの理論は、この違いが、角化細胞が線維芽細胞よりもはるかに高いレベルの内在性c-Myc及びKlf4を発現し、それにより、角化細胞からiPS細胞への転換が加速され得るという研究結果によるものとされるということである(Aasenらの文献(2008)、ヒト角化細胞からの効率的かつ迅速な人工多能性幹細胞の作製(Efficient and rapid generation of induced pluripotent stem cells from human keratinocytes)、Nat Biotechnol., 26(11):1276-84)。また別の実施態様において、患者の血液から回収された造血(血液)細胞を再プログラミングに用いて、iPS細胞を産生する。
(5.5 CRBN活性化因子)
本明細書に提供される方法のいくつかの実施態様において、CRBNの活性化因子は、CNS神経細胞の増殖及び分化におけるその基質又は下流分子の阻害的機能を抑制する。
いくつかの態様において、CRBNの活性化因子は、そのCRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子である。いくつかの実施態様において、そのCRBNの基質又は下流タンパク質の阻害因子は、該CRBN基質又は下流タンパク質の産生を阻害する。産生の阻害因子は、CRBN基質又は下流タンパク質の合成、プロセッシング、又は成熟に悪影響を及ぼす任意の分子であることができる。本明細書で使用されるCRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子は、例えば、CRBN基質もしくは下流タンパク質の正確なフォールディングを損なうか、又はCRBN基質もしくは下流タンパク質の分泌を部分的にもしくは実質的に妨げるタンパク質、ひとたびCRBN基質又は下流タンパク質が合成されたとすれば、それを分解するプロテアーゼ、或いは成熟したCRBN基質又は下流タンパク質を生成させるためにそれらを切断するプロテアーゼの阻害因子、或いはこれらの任意の組合せであることができる。
いくつかの実施態様において、CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子は、該CRBN基質又は下流タンパク質の作用を阻害する。CRBN基質又は下流タンパク質作用の阻害因子は、例えば、細胞内の該CRBN基質もしくは下流タンパク質の可溶性の天然の生物学的結合パートナー又はそのような結合パートナーを模倣する分子、或いはそのような結合パートナーを遮断する薬剤、或いはCRBN、そのCRBN基質又は下流タンパク質に結合する抗体、例えば、ポリクローナル又はモノクローナル抗体、或いはその基質又は細胞標的に対するCRBNの結合を妨げ、それにより、CRBN、そのCRBN基質又は下流タンパク質によって媒介される細胞内又は細胞外反応及び/又は経路の誘発を減少させ又は妨害する任意の他の薬剤又は分子、或いはこれらの任意の組合せであることができる。
いくつかの実施態様において、CRBN基質又は下流タンパクの阻害因子は、該CRBN基質もしくは下流タンパク質、又はそのパートナーに対する該CRBN基質もしくは下流タンパク質結合に関与するCRBN基質もしくは下流タンパク質結合部位を部分的に又は実質的に中和するのに十分な親和性及び特異性で、該CRBN基質もしくは下流タンパク質分子それ自体に結合するか、又はそれを隔離する。CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子は、CRBN、CRBN基質又は下流タンパク質がそのパートナーに結合したときに細胞内で活性化されるシグナル伝達/生物学的経路を阻害することもできる。
いくつかの実施態様において、該CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子は、タンパク質と別の分子、例えば、標的ペプチド又は酵素基質との間の相互作用を阻害し又は減少させる化合物である。いくつかの実施態様において、CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子は、CRBN基質又は下流タンパク質に結合し、CRBN基質又は下流タンパク質の構造を変化させる化合物である。いくつかの実施態様において、該阻害因子は、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子の発現を下方調節するか、又は発現された該CRBN基質又は下流タンパク質の存在量を低下させる化合物である。
いくつかの実施態様において、該CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子は、タンパク質である。該タンパク質は、グリコシル化されているものであっても、グリコシル化されていないものであってもよく、それらは、尿などの天然源に由来するものであってもよく、又はそれらは、好ましくは組換えにより産生されたものであってもよい。組換え発現は、大腸菌などの原核生物の発現系で、又は真核生物、好ましくは、哺乳動物の発現系で実施されてもよい。
ある実施態様において、該CRBN活性化因子は、CNSの障害、損傷、又は傷害の治療、予防、又は管理のための医薬の調製における、CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子のコード配列を含む核酸分子である。
一実施態様において、該核酸分子は、細胞内のCRBN基質又は下流タンパク質の天然の結合タンパク質、そのムテイン、機能的誘導体、又は活性画分のコード配列を含む。
一実施態様において、本明細書に提供されるムテインは、細胞内のCRBN基質又は下流タンパク質の天然の結合タンパク質の類似体である。任意のそのようなムテインは、好ましくは、CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子のアミノ酸の配列と十分に重複するアミノ酸の配列を有し、例えば、該細胞内のCRBN基質又は下流タンパク質の天然の結合タンパク質と実質的に同様の活性を有する。該細胞内のCRBN基質又は下流タンパク質の天然の結合タンパク質の1つの活性は、該CRBN基質もしくは下流タンパク質に結合し及び/又は該CRBN基質もしくは下流タンパク質を阻止するその能力である。ムテインがCRBN基質又は下流タンパク質に対する実質的な結合活性を有する限り、それを、例えば、親和性クロマトグラフィーによる該CRBN基質又は下流タンパク質の精製において使用することができ、したがって、該細胞内のCRBN基質又は下流タンパク質の天然の結合タンパク質と実質的に同様の活性を有すると考えることができる。
ある実施態様において、該核酸分子は、融合タンパク質のコード配列を有する。
ある実施態様において、該核酸分子は、CRBN基質もしくは下流タンパク質に対する抗体、又はCRBN基質もしくは下流タンパク質に対する抗体の断片のコード配列を含む。
ある実施態様において、該核酸分子は、例えば、本明細書に提供されるCRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子を投与するための遺伝子治療を使用するために、発現ベクターの配列をさらに含む。ある実施態様において、該核酸分子は、筋肉内に投与される。
ある実施態様において、CNSの障害、損傷、又は傷害を治療及び/又は予防するために、CRBN基質又は下流タンパク質の産生及び/又は作用の阻害因子の配列を含む遺伝子治療ベクターを罹患組織に直接注射し、例えば、それにより、該ベクターの希釈のような遺伝子治療ベクターの全身投与に関与する問題、標的細胞又は組織への到達及び標的細胞又は組織の標的化に関与する問題、並びに副作用の問題を回避することができる。
CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子の発現を通常休止している細胞又は十分でない量の該阻害因子を発現している細胞におけるCRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子の内在性産生を誘導及び/又は増強するためのベクターの使用も、CNS損傷の治療及び/又は予防のために、本明細書で想定されている。該ベクターは、CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子を発現することが望ましい細胞で機能的な調節エレメントを含んでもよい。そのような調節配列又はエレメントは、例えば、プロモーター又はエンハンサーであってもよい。その後、該調節配列をゲノムの正しい遺伝子座に相同組換えによって導入し、それにより、該調節配列を、その発現が誘導又は増強されることが必要とされる遺伝子と機能的に連結することができる。この技術は、当技術分野では通常、「内在性遺伝子活性化」(EGA)と呼ばれる。
いくつかの態様において、CRBNの活性化因子は、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸である。本明細書に提供される核酸は、CRBN基質又は下流タンパク質の発現をノックダウンすることができる。
ある実施態様において、CRBNの活性化因子は、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子に由来するmRNA又はDNAのどちらかに特異的にハイブリダイズ可能であるか又は特異的に相補的であるアンチセンス分子である。一実施態様において、該CRBNの活性化因子は、CRBN基質又は下流タンパク質mRNAに特異的にハイブリダイズし、その翻訳を阻害するアンチセンス分子である。
いくつかの実施態様において、該CRBNの活性化因子はRNAである。本明細書に提供されるRNAとしては、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子の遺伝子発現を調節するために使用し得る、siRNA、shRNA、マイクロRNAが挙げられるが、これらに限定されない。二本鎖オリゴヌクレオチドは、1つの鎖のオリゴヌクレオチド配列が第2の鎖のオリゴヌクレオチド配列と相補的である2つの異なるオリゴヌクレオチド配列のアセンブリによって形成されてもよく;該二本鎖オリゴヌクレオチドは、2つの別々のオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)から、又はそれ自体の上でフォールディングして二本鎖構造(例えば、shRNAもしくは短いヘアピンRNA)を形成する単一の分子から組み立てられてもよい。これらの二本鎖オリゴヌクレオチドの各々の鎖は、異なるヌクレオチド配列を有していてもよく、その場合、一方のヌクレオチド配列領域(ガイド配列又はアンチセンス配列)のみが、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子の核酸配列の部分との相補性を有し、もう一方の鎖(センス配列)は、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子の核酸配列の部分と相同であるヌクレオチド配列を含む。
ある実施態様において、該CRBNの活性化因子は、マイクロRNA(miRNA)である。ある実施態様において、該miRNAは、長さが約21〜23ヌクレオチドの一本鎖RNA分子であり、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子に由来するRNA(mRNA)分子と部分的に相補的である。
ある実施態様において、該CRBNの活性化因子は、阻害性RNA(RNAi)分子である。ある実施態様において、本開示は、センス鎖及びアンチセンス鎖(ここで、該アンチセンス鎖は、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む)を含むRNAi分子に関する。好ましくは、本明細書に提供されるRNAi分子は、10ヌクレオチド塩基(nb)〜1000nbの長さを有する。一実施態様において、該RNAi分子は、該RNAi剤が生体試料又は環境中で増大した安定性を有するようにさせる修飾を含む。RNAiは、当技術分野で周知の技法であり、当業者は、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子のノックダウン用のRNAiを調製する方法を理解しているであろう(例えば、Fraser, AGの文献(2000)、「系統的RNA干渉による線虫第I番染色体の機能的ゲノム解析(Functional genomics analysis of C. elegans chromosome I by systematic RNA interference)」、Nature 408(6810): 325-330;Aagaard, Lの文献(2007)、「RNAi治療学:原理、展望、及び課題(RNAi therapeutics: principles, prospects and challenges)」、Advanced Drug Delivery Review 59(2-3): 75-86;Kamath, RSの文献(2003)、「線虫におけるゲノム規模のRNAiスクリーニング(Genome-wide RNAi screening in Caenorhabditis elegans)」、Methods 30: 313-321を参照されたい)。
ある実施態様において、該CRBNの活性化因子は、モルフォリノオリゴヌクレオチド又は他のRNアーゼ-H非依存的アンチセンスである。一実施態様において、該CRBNの活性化因子は、モルフォリノオリゴヌクレオチドである。モルフォリノオリゴヌクレオチドは、天然の核酸と構造が異なり、それらは、RNA又はDNAのリボース又はデオキシリボース糖部分の代わりにモルフォリノ環を保有し、RNA又はDNAのアニオン性ホスフェートの代わりに非イオン性ホスホロジアミデート結合を保有している。各々のモルフォリノ環は、25塩基のモルフォリノオリゴヌクレオチドがワトソン-クリック型対形成を介してRNAの鎖中のその相補的な25塩基の標的部位に強くかつ特異的に結合するように、標準的な塩基(A、G、C、T/U)のうちの1つを好適に配置する。しかしながら、該モルフォリノオリゴヌクレオチドの骨格は、シグナル伝達タンパク質の細胞酵素によって認識されないので、それはヌクレアーゼに対して安定であり、toll様受容体を介した自然免疫応答を誘発しない。これにより、該オリゴヌクレオチドの損失が回避されるだけでなく、炎症又はインターフェロン誘導も減弱される。モルフォリノオリゴヌクレオチドは電荷を有さず、タンパク質と強くは相互作用せず、その活性のために、RNアーゼ-H、Argonaute、又は他の触媒タンパク質の活性を必要としない。本明細書に提供されるモルフォリノは、組織への直接注射、又は注入ポンプ及び急速静注によるものを含む、いくつかの技法によって送達することができる(Moultonらの文献(2009)、成体動物における遺伝子ノックダウン: PPMO及びビボ-モルフォリノ(Gene Knockdowns in Adult Animals: PPMOs and Vivo-Morpholinos)、Molecules 14: 1304-1323)。
モルフォリノオリゴヌクレオチドは当技術分野で周知であり、当業者は、標的遺伝子のノックダウン用のモルフォリノオリゴヌクレオチドの作製及び使用方法を理解しているであろう(例えば、Amantanaらの文献(2005)、ホスホロジアミデートモルフォリノアンチセンスオリゴマーの薬物動態及び生体内分布(Pharmacokinetics And Biodistribution Of Phosphorodiamidate Morpholino Antisense Oligomers)、Current Opinion in Pharmacology 5:550-555;Billらの文献(2009)、ゼブラフィッシュにおけるモルフォリノ用途のプライマー(A Primer for Morpholino Use in Zebrafish)、Zebrafish 6(1):69-77;Heasmanの文献(2002)、モルフォリノオリゴ:アンチセンスの意味が分かりますか?(Morpholino Oligos: Making Sense of Antisense?)、Devel. Biol. 243:209-214;Karkareらの文献(2006)、有望な核酸類似体及び模倣体: PNA、LNA、及びモルフォリノの特徴的な特性及び用途(Promising Nucleic Acid Analogs And Mimics: Characteristic Features And Applications Of PNA, LNA, And Morpholino)、Appl. Microbiol. Biotechnol. 71 :575-586;Moultonらの文献(2009)、成体動物における遺伝子ノックダウン: PPMO及びビボ-モルフォリノ(Gene Knockdowns in Adult Animals: PPMOs and Vivo-Morpholinos)、Molecules 14: 1304-1323;Moultonらの文献(2010)、モルフォリノ及びそのペプチドコンジュゲート:デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する治療的有望性及び課題(Morpholinos And Their Peptide Conjugates: Therapeutic Promise And Challenge For Duchenne Muscular Dystrophy)、Biochimica et Biophysica Acta 1798:2296-2303を参照されたい)。
いくつかの態様において、CRBNの活性化因子は、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子が下方調節されている、幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される始原細胞は、それ自体よりも分化している子孫を生み出す能力を有する細胞である。いくつかの実施態様において、該始原細胞は、増殖可能であり、かつ分化した又は分化可能な娘細胞を次に生じることができる多数の母細胞を生成させる能力を有するより多くの始原細胞を生じることが可能である、未分化細胞又は最終分化に達しない程度まで分化した細胞である。ある実施態様において、該始原細胞は、胚性細胞及び胚性組織の漸進的多様化で起こるように、その子孫(descendant)(子孫(progeny))が、分化によって、例えば、個々の個性を完全に獲得することによって、多くの場合、異なる方向に特殊化する一般的な母細胞である。細胞分化は、典型的には多くの細胞***を通じて起こる複雑なプロセスである。分化した細胞は、それ自体多能性細胞に由来する多能性細胞などから生じることができる。これらの多能性細胞の各々を幹細胞であるとみなすことができる一方で、各々が生じ得る細胞型の範囲はかなり異なり得る。一部の分化した細胞は、より大きな発生的可能性のある細胞を生じる能力も有する。そのような能力は、天然のものであってもよく、又は様々な因子を用いた処理によって人工的に誘導されてもよい。この定義によれば、幹細胞は、始原細胞、及び終末分化した細胞により近い前駆細胞でもあり得る。いくつかの実施態様において、該前駆細胞は、部分的に分化した細胞である。いくつかの実施態様において、該前駆細胞は、始原細胞に由来する。いくつかの実施態様において、該前駆細胞は、自己再生することができない。例示的な前駆細胞としては、例えば、間葉系前駆細胞、骨芽細胞、及び軟骨芽細胞などの骨始原細胞が挙げられる。
いくつかの実施態様において、CRBN基質又は下流タンパク質が下方調節されている幹細胞は、ES細胞、成体幹細胞、又は臍帯血幹細胞である。好ましい実施態様において、CRBN基質又は下流タンパク質が下方調節されている幹細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞である。一実施態様において、CRBN基質又は下流タンパク質が下方調節されている幹細胞は、拒絶反応を回避することができるよう、患者(男性/女性)自身から得られた人工多能性幹(iPS)細胞である。成人から得られるiPS幹細胞は、公知の技術である。体細胞由来細胞株である人工多能性幹(iPS)細胞は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)及び皮膚線維芽細胞を用いて、Oct4、Sox2、Klf4、及びc-Mycをコードする4つの転写因子遺伝子を単に発現させることにより、山中伸弥及び高橋和利によって樹立された(Takahashi及びYamanakaの文献(2006)、特定の因子によるマウス胚及び成体の線維芽細胞培養物からの多能性幹細胞の誘導(Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors)、Cell 126, 663-676)。それ以来、多くのグループが同じ戦略を用いて、測定される全ての基準でヒトES細胞に類似しているヒトiPS細胞を作製した。
いくつかの実施態様において、該iPS細胞は、患者のニューロン始原(もしくは前駆)細胞、角化細胞、肝細胞、B細胞、線維芽細胞の先端、腎臓、筋肉、又は副腎から誘導される。ある実施態様において、該iPS細胞は、線維芽細胞から誘導される。再プログラミング用の線維芽細胞は、患者の皮膚生検から獲得してもよい。別の実施態様において、皮膚生検由来のヒト角化細胞を再プログラミングしてiPSにする。皮膚生検由来の角化細胞を線維芽細胞よりもはるかに高い頻度及び速い速度で再プログラミングして多能性状態にすることができることが示されている。1つの理論は、この違いが、角化細胞が線維芽細胞よりもはるかに高いレベルの内在性c-Myc及びKlf4を発現し、それにより、角化細胞からiPS細胞への転換が加速され得るという知見によるものであるということである(Aasenらの文献(2008)、ヒト角化細胞からの効率的かつ迅速な人工多能性幹細胞の作製(Efficient and rapid generation of induced pluripotent stem cells from human keratinocytes)、Nat Biotechnol., 26(11):1276-84)。また別の実施態様において、患者の血液から回収された造血(血液)細胞を再プログラミングに用いて、iPS細胞を産生する。
(5.6 医薬組成物)
また本明細書に提供されるのは、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の治療的有効量を含む、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状の治療、予防、及び/又は管理に特に有用な、医薬組成物である。いくつかの実施態様において、該医薬組成物は、BRD7アンタゴニストを含む。別の実施態様において、該医薬組成物は、Ikarosアンタゴニストを含む。また別の実施態様において、該医薬組成物は、CRBN活性化因子を含む。
いくつかの実施態様において、該医薬組成物は、BRD7タンパク質の阻害因子を含む。ある実施態様において、該BRD7の阻害因子は、BRD7産生の阻害因子である。ある実施態様において、該BRD7の阻害因子は、BRD7作用の阻害因子である。ある実施態様において、BRD7の阻害因子は、BRD7の阻害因子のコード領域を含む核酸である。ある実施態様において、BRD7のアンタゴニストとして、該組成物は、BRD7に対する抗体、BRD7の生物学的結合パートナーに対する抗体、BRD7のシグナル伝達/生物学的経路の阻害因子、BRD7と競合し、該パートナーに対するBRD7の結合を阻止する分子、及びBRD7の結合タンパク質、同じ活性を有するそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性画分、又は循環置換された誘導体(circularly permutated)を含み得る。
いくつかの実施態様において、該医薬組成物は、Ikarosタンパク質の阻害因子を含む。ある実施態様において、該Ikarosの阻害因子は、Ikaros産生の阻害因子である。ある実施態様において、該Ikarosの阻害因子は、Ikaros作用の阻害因子である。ある実施態様において、Ikarosの阻害因子は、Ikarosの阻害因子のコード領域を含む核酸である。ある実施態様において、Ikarosのアンタゴニストとして、該組成物は、Ikarosに対する抗体、Ikarosの生物学的結合パートナーに対する抗体、Ikarosのシグナル伝達/生物学的経路の阻害因子、Ikarosと競合し、該パートナーに対するIkarosの結合を阻止する分子、及びIkarosの結合タンパク質、同じ活性を有するそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性画分、又は循環置換された誘導体を含み得る。
いくつかの実施態様において、該医薬組成物は、CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子を含む。ある実施態様において、該CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子は、CRBN基質又は下流タンパク質産生の阻害因子である。ある実施態様において、該CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子は、CRBN基質又は下流タンパク質作用の阻害因子である。ある実施態様において、CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子は、CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子のコード領域を含む核酸である。ある実施態様において、CRBNの活性化因子として、該組成物は、CRBN基質又は下流タンパク質に対する抗体、CRBN基質又は下流タンパク質の生物学的結合パートナーに対する抗体、CRBN基質又は下流タンパク質のシグナル伝達/生物学的経路の阻害因子、CRBN基質又は下流タンパク質と競合し、該パートナーに対するCRBN基質又は下流タンパク質の結合を阻止する分子、及びCRBN基質又は下流タンパク質の結合タンパク質、同じ活性を有するそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性画分、又は循環置換された誘導体を含み得る。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、BRD7遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸を含む。ある実施態様において、該核酸は、ベクターに挿入される。ある実施態様において、該核酸は、BRD7遺伝子に特異的なアンチセンス分子である。ある実施態様において、該アンチセンス分子は、RNAi分子である。ある実施態様において、該BRD7のアンタゴニストは、BRD7遺伝子に特異的なモルフォリノオリゴヌクレオチドである。具体的な実施態様において、モルフォリノオリゴヌクレオチドは、
からなる群から選択される配列を含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、Ikaros遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸を含む。ある実施態様において、該核酸 は、ベクターに挿入される。ある実施態様において、該核酸は、Ikaros遺伝子に特異的なアンチセンス分子である。ある実施態様において、該アンチセンス分子は、RNAi分子である。ある実施態様において、該Ikarosのアンタゴニストは、Ikaros遺伝子に特異的なモルフォリノオリゴヌクレオチドである。具体的な実施態様において、モルフォリノオリゴヌクレオチドは、
からなる群から選択される配列を含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸を含む。ある実施態様において、該核酸は、ベクターに挿入される。ある実施態様において、該核酸は、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子に特異的なアンチセンス分子である。ある実施態様において、該アンチセンス分子は、RNAi分子である。ある実施態様において、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子に特異的なモルフォリノオリゴヌクレオチドである。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、BRD7が下方調節されている、幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞を含む。ある実施態様において、該BRD7のアンタゴニストは、該医薬組成物を必要としている対象から得られる人工多能性幹(iPS)細胞である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、Ikarosが下方調節されている、幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞を含む。ある実施態様において、該Ikarosのアンタゴニストは、該医薬組成物を必要としている対象から得られるiPS細胞である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、CRBN基質又は下流タンパク質が下方調節されている、幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞を含む。ある実施態様において、該CRBN活性化因子は、該医薬組成物を必要としている対象から得られるiPS細胞である。
本明細書に提供される医薬組成物及び剤形は、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子、又はこれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包摂化合物、もしくはプロドラッグを含む。
一実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、個別の単一単位剤形の調製において使用される。いくつかの実施態様において、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、複数剤形で製剤化及び投与される。本明細書で使用される単位用量形態は、ヒト及び動物対象に好適で、かつ当技術分野で知られているように個別包装された、物理的に分離した単位を指す。各々の単位用量は、所要の医薬担体、ビヒクル、又は希釈剤と関連した、所望の治療効果を生じるのに十分な所定の分量のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を含む。単位用量形態の例としては、アンプル及び注射器及び個別包装された錠剤又はカプセル剤が挙げられる。単位用量形態は、その分数又は倍数単位で投与することができる。複数用量形態は、分離された単位用量形態で投与されるように単一の容器中に包装された複数の同一の単位剤形である。複数用量形態の例としては、バイアル、錠剤もしくはカプセル剤の瓶、又はパイント瓶もしくはガロン瓶が挙げられる。したがって、複数用量形態は、包装中で分離されていない複数の単位用量である。
本明細書に提供される医薬組成物は、1以上のBRD7アンタゴニストを含有することができる。本明細書に提供される医薬組成物は、1以上のIkarosアンタゴニストを含有することができる。本明細書に提供される医薬組成物は、1以上のCRBNの活性化因子を含有することができる。該医薬組成物及び剤形は、1以上の追加の活性成分を含むこともできる。ある実施態様において、製剤は、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子、及び互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有する1以上の追加の活性成分を含む。そのような分子は、好適には、意図された目的のために効果的である量で併存する。そのような併用療法を連続的に又は同時に又は順々に患者に投与することができる。
1以上のBRD7アンタゴニスト、1以上のIkarosアンタゴニスト、及び/又は1以上のCRBN活性化因子の組合せも、本明細書に提供される組成物及び方法において使用するために想定される。
本明細書で使用される療法の組合せ(例えば、予防剤又は治療剤の使用)は、任意の2以上の単剤療法の相加作用よりも効果的であり得る。例えば、予防剤及び/又は治療剤の組合せの相乗作用は、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を有する対象に対して、1以上の該薬剤のより少ない投薬量を使用し、及び/又は該薬剤をより低い頻度で投与することを可能にする。より少ない投薬量の予防的もしくは治療的療法を利用し、及び/又はより低い頻度で該療法を投与する能力は、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病の予防、管理、治療、又は改善における該療法の効力を低下させることなく、該療法の対象への投与と関連する毒性を低下させる。さらに、相乗作用は、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病の予防における、又は管理、治療、もしくは改善における療法の効力の改善をもたらすことができる。最後に、療法(例えば、予防剤又は治療剤)の組合せの相乗作用は、任意の単剤療法の使用と関連する有害な又は望ましくない副作用を回避又は軽減することができる。
本明細書に提供される医薬組成物は、医薬として許容し得る担体をさらに含み得る。本明細書に提供される活性成分の投与に好適な医薬担体には、特定の投与様式に好適であることが当業者に知られている任意のそのような担体が含まれる。
本明細書に提供される剤形の組成、形状、及び種類は、通常、その用途によって異なる。例えば、疾患の急性治療で使用される剤形は、同じ疾患の慢性治療で使用される剤形よりも多くの量のそれが含む1以上の該活性成分を含有し得る。同様に、非経口剤形は、同じ疾患を治療するために使用される経口剤形よりも少ない量のそれが含む1以上の該活性成分を含有し得る。本明細書に提供される包含される具体的な剤形が互いに異なるこれらの及びその他のあり様は、当業者には容易に明らかになるであろう。例えば、レミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第18版、Mack Publishing, Easton Pa.(1990)を参照されたい。
本明細書に提供される1以上のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子(例えば、CRBN基質もしくは下流タンパク質の阻害因子)を含有する治療用製剤は、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を任意の生理的に許容し得る担体、賦形剤、又は安定化剤(レミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(1990)、Mack Publishing Co., Easton, PA)と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、保存用に調製することができる。許容し得る担体、賦形剤、又は安定化剤は、利用される投薬量及び濃度ではレシピエントに無毒であり、これには、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン;単糖、二糖、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート化剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);並びに/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。本明細書で使用される「界面活性剤」という用語は、両親媒性構造を有する有機物質を指し;すなわち、それらは、反対の可溶性傾向の基、典型的には、油溶性炭化水素鎖と水溶性イオン基から構成される。界面活性剤は、表面活性部分の電荷に応じて、アニオン性、カチオン性、及び非イオン性界面活性剤に分類することができる。界面活性剤は、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、及び分散剤として、生体材料の様々な医薬組成物及び調製物に使用されることが多い。
本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、例えば、リポソーム中に製剤化することもできる。対象となる分子を含有するリポソームは、例えば、Epsteinらの文献(1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688;Hwangらの文献(1980)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030;並びに米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号に記載されている、当技術分野で公知の方法によって調製される。増大した循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
一実施態様において、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、抗体である。本明細書に提供される抗体は、免疫リポソームとして形成されてもよい。特に有用な免疫リポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含有する脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって作製することができる。リポソームを規定の孔径のフィルターから押し出して、所望の直径を有するリポソームを生じさせる。本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を、ジスルフィド交換反応を介して、Martinらの文献(1982)、J. Biol. Chem., 257:286-288に記載されているようなリポソームとコンジュゲートすることができる。化学療法剤(例えば、ドキソルビシン)を任意にリポソームに含める(Gabizonらの文献(1989) J. National Cancer Inst., 81(19):1484)。
BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、例えば、コアセルベーション法によるか又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中、又はマクロエマルジョン中に封入することもできる。そのような技法は、レミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(1990)、Mack Publishing Co., Easton, PAに開示されている。
インビボ投与用に使用されることになる製剤は滅菌性であることができる。これは、例えば、滅菌濾過膜に通す濾過によって容易に達成される。
持続放出調製物を調製することもできる。持続放出調製物の好適な例としては、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形態のものである。持続放出マトリックスの例としては、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-ビニルアセテート、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射用マイクロスフェア)、並びにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-ビニルアセテート及び乳酸-グリコール酸などのポリマーが、100日間を超える分子の放出を可能にする一方、特定のハイドロゲルは、より短い期間、タンパク質を放出する。本明細書に提供される特定のCRBN活性化因子は、封入された場合、長時間体内に留まり、37℃で水分に曝される結果として、変性又は凝集し、生物活性の喪失及び免疫原性のあり得る変化がもたらされる可能性がある。関与する機構に応じて、安定化のための合理的戦略を考案することができる。例えば、凝集機構が、チオ-ジスルフィド交換を介した分子間S--S結合形成であることが明らかになっている場合、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥させること、水分含量を制御すること、適当な添加剤を使用すること、及び特定のポリマーマトリックス組成物を開発することにより達成することができる。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される活性成分は、制御放出手段によるか、又は当業者に周知である送達装置によって投与される。そのような剤形を用いて、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、マイクロスフェア、又はこれらの組合せを所望の放出プロファイルを提供するために様々な割合で用いて、1以上の活性成分の低速又は制御放出をもたらすことができる。本明細書に記載されているものを含む、当業者に公知の好適な制御放出製剤は、本明細書に提供される活性成分とともに使用するために容易に選択することができる。
制御放出医薬製品は全て、その非制御対応物によって達成されるものよりも薬物療法を改善するという共通の目的を有する。理想的には、医学的処置における最適に設計された制御放出調製物の使用は、疾病を最小限の量の時間で治癒させ又は制御するために最小限の原薬が利用されることを特徴とする。制御放出製剤の利点としては、薬物の活性の延長、投薬頻度の低下、及び患者コンプライアンスの向上が挙げられる。さらに、制御放出製剤を用いて、作用の開始時間又は他の特徴、例えば、薬物の血液レベルに影響を及ぼすことができ、したがって、副作用(例えば、有害作用)の発生に影響を及ぼすことができる。
大部分の制御放出製剤は、所望の治療効果を即座に生じる量の薬物(活性成分)を最初に放出し、かつ長期間にわたってこのレベルの治療又は予防効果を維持するために他の量の薬物を徐々にかつ断続的に放出するように設計される。この一定レベルの薬物を体内で維持するために、薬物は、代謝され、体から排出されつつある薬物の量を補う速度で剤形から放出されなければならない。活性成分の制御放出は、限定されないが、pH、温度、酵素、水、又は他の生理的条件もしくは化合物を含む、様々な条件によって刺激することができる。
いくつかの実施態様において、非経口剤形は、限定されないが、皮下、静脈内(急速静注を含む)、筋肉内、及び動脈内を含む、様々な経路によって患者に投与される。その投与は、通常、夾雑物に対する患者の自然防御を迂回するので、非経口剤形は、患者に投与する前に滅菌されているか、又は滅菌化されることができることが好ましい。
ある実施態様において、医薬組成物は、注射又は点滴によって投与される。ある実施態様において、医薬組成物は、脳室、皮膚、腹腔、静脈、動脈、もしくは脊髄液に向けて、又はこれらの中へ投与される。
非経口剤形の例としては、すぐに注射可能な液剤、注射用の医薬として許容し得るビヒクルにすぐに溶解又は懸濁可能な乾燥製品、すぐに注射可能な懸濁剤、及び乳剤が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施態様において、非経口投与用の調製物としては、すぐに注射可能な滅菌液剤、皮下注射錠を含む、使用直前に溶媒とすぐに組み合わせることができる滅菌乾燥可溶性製品、例えば、凍結乾燥粉末、すぐに注射可能な滅菌懸濁剤、使用直前にビヒクルとすぐに組み合わせることができる滅菌乾燥不溶性製品、及び滅菌乳剤が挙げられる。液剤は、水性又は非水性のいずれかであることができる。
静脈内投与される場合、好適な担体としては、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、並びに増粘剤及び可溶化剤、例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール、並びにこれらの混合物を含む溶液が挙げられる。
非経口調製物で使用される医薬として許容し得る担体としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗微生物剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局部麻酔薬、懸濁化剤及び分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤又はキレート剤、並びに他の医薬として許容し得る物質が挙げられる。
水性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース、及び乳酸加リンガー注射液が挙げられる。非水性非経口ビヒクルとしては、植物起源の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、及びピーナッツ油が挙げられる。静菌濃度又は静真菌濃度の抗微生物剤を複数用量容器中に包装された非経口調製物に添加することができ、該抗微生物剤としては、フェノール又はクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル及びp-ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、並びに塩化ベンゼトニウムが挙げられる。等張剤としては、塩化ナトリウム及びデキストロースが挙げられる。緩衝剤としては、リン酸塩及びクエン酸塩が挙げられる。抗酸化剤としては、重硫酸ナトリウムが挙げられる。局部麻酔薬としては、塩酸プロカインが挙げられる。懸濁化剤及び分散剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。乳化剤としては、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標) 80)が挙げられる。金属イオンの封鎖剤又はキレート剤としては、EDTAが挙げられる。医薬担体としては、水混和性ビヒクル用のエチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコール、並びにpH調整用の水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、又は乳酸も挙げられる。
医薬活性化合物の濃度は、注射によって所望の薬理作用を生じさせる有効量が提供されるように調整される。当技術分野で公知であるように、正確な用量は、患者又は動物の年齢、重量、及び状態によって決まる。
単位用量非経口調製物は、アンプル、バイアル、又は針付き注射器に充填することができる。非経口投与用の調製物は全て、当技術分野で知られ、かつ実施されているように、滅菌性であることができる。
実例として、活性成分を含有する滅菌水性液剤の静脈内又は動脈内注入は、効果的な投与様式である。別の実施態様は、所望の薬理作用を生じさせるために必要に応じて注射される活性材料を含有する滅菌された水性又は油性の液剤又は懸濁剤である。
注射剤は、局部及び全身投与用に設計される。一実施態様において、治療的有効投薬量は、治療される組織に対して、少なくとも約0.1%w/wから最大約90%w/w、又はそれを上回る濃度、ある実施態様においては、1%w/wを上回る濃度の活性成分を含有するように製剤化される。
BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、微粉化形態又は他の好適な形態で懸濁させることができる。得られる混合物の形態は、意図される投与様式及び選択される担体又はビヒクルへの化合物の溶解度を含む、いくつかの因子によって決まる。有効濃度は、疾病の症状を改善するのに十分なものであり、実験的に決定することができる。
他の実施態様において、医薬製剤は、溶液、エマルジョン、及び他の混合物としての投与用に再構成することができる凍結乾燥粉末である。これらを固体又はゲルとして再構成し、製剤化することもできる。
凍結乾燥粉末は、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子、又はこれらの医薬として許容し得る誘導体を好適な溶媒に溶解させることにより調製される。いくつかの実施態様において、該凍結乾燥粉末は、滅菌性である。該溶媒は、粉末又は該粉末から調製される再構成溶液の安定性又は他の薬理学的要素を改善する賦形剤を含有することができる。使用し得る賦形剤としては、デキストロース、ソルビタール(sorbital)、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、又は他の好適な薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。該溶媒は、緩衝剤、例えば、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム、又は一実施態様において、約中性pHの、当業者に公知の他のそのような緩衝剤を含有することもできる。その後の溶液の滅菌濾過と、それに続く、当業者に公知の標準条件下での凍結乾燥によって、所望の製剤が提供される。一実施態様において、得られる溶液は、凍結乾燥用のバイアルに分注される。各々のバイアルは、単回投薬量又は複数回投薬量の化合物を含有する。該凍結乾燥粉末は、適当な条件下、例えば、約4℃〜室温で保存することができる。
この凍結乾燥粉末を注射用水で再構成することにより、非経口投与で使用するための製剤が提供される。再構成のために、凍結乾燥粉末を滅菌水又は他の好適な担体に添加する。正確な量は、選択される化合物によって決まる。そのような量は、実験的に決定することができる。
本明細書に提供される局所及び粘膜剤形としては、スプレー、エアロゾル、液剤、乳剤、懸濁剤、又は当業者に公知の他の形態が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、レミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第16版及び第18版、Mack Publishing, Easton, Pa.(1980 & 1990);並びに医薬剤形入門(Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms)、第4版、Lea & Febiger, Philadelphia(1985)を参照されたい。
局所及び粘膜剤形を提供するために使用することができる好適な賦形剤(例えば、担体及び希釈剤)並びに他の材料は、医薬分野の当業者に周知であり、所与の医薬組成物又は剤形が適用される具体的な組織によって決まる。その事実を考慮に入れると、典型的な賦形剤としては、無毒でかつ医薬として許容し得る液剤、乳剤、又はゲル剤を形成させるための、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。望ましい場合、保湿剤(moisturizer)又は保湿剤(humectant)を医薬組成物及び医薬剤形に添加することもできる。そのような追加の成分の例は、当技術分野で周知である。例えば、レミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第16版及び第18版、Mack Publishing, Easton, Pa.(1980 & 1990)を参照されたい。
医薬組成物又は医薬剤形のpHを調整して、1以上の活性成分の送達を改善することもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、又は張性を調整して、送達を改善することができる。送達を改善するために、ステアレートなどの化合物を医薬組成物又は医薬剤形に添加して、1以上の活性成分の親水性又は親油性を有利に変化させることもできる。この点に関して、ステアレートは、製剤用の脂質ビヒクルとしての、乳化剤又は界面活性剤としての、及び送達増強剤又は浸透増強剤としての役割を果たすことができる。活性成分の様々な塩、水和物、又は溶媒和物を用いて、得られる組成物の性質をさらに調整することができる。
本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子;又は本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子を含有するその組成物は、治療されることになる対象の体の特定の組織、受容体、又は他の部分を標的とするように製剤化することもできる。多くのそのような標的化方法が当業者に周知である。そのような標的化方法は全て、本組成物での使用のために本明細書で想定されている。標的化方法の非限定的な例については、例えば、米国特許第6,316,652号、第6,274,552号、第6,271,359号、第6,253,872号、第6,139,865号、第6,131,570号、第6,120,751号、第6,071,495号、第6,060,082号、第6,048,736号、第6,039,975号、第6,004,534号、第5,985,307号、第5,972,366号、第5,900,252号、第5,840,674号、第5,759,542号、及び第5,709,874号を参照されたい。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される組成物は、例えば、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有するか、或いはこれらを有するリスクのある患者のCNSの組織に標的化される(又は別の方法で投与される)。
一実施態様において、組織標的化リポソームを含む、リポソーム懸濁液も、医薬として許容し得る担体として好適であり得る。これらは、当業者に公知の方法に従って調製することができる。例えば、リポソーム製剤は、米国特許第4,522,811号に記載されている通りに調製することができる。簡潔に説明すると、多層膜小胞(MLV)などのリポソームは、卵ホスファチジルコリン及び脳ホスファチジルセリン(7:3のモル比)をフラスコの内部でしっかりと乾燥させることにより形成させることができる。二価陽イオンを欠くリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の溶液を添加し、脂質膜が分散するまでフラスコを振盪させる。得られる小胞を洗浄して、封入されていないアンタゴニストを除去し、遠心分離によってペレット化し、その後、PBSに再懸濁させる。
治療的有効濃度は、化合物をインビトロ及びインビボ系でルーチンの方法を用いて試験することにより実験的に決定し、その後、それからヒトに対する投薬量を推定することができる。医薬組成物中のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の濃度は、例えば、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の物理化学的特性、投薬スケジュール、及び投与される量、並びに当業者に公知の他の因子によって決まる。
一実施態様において、治療的有効投薬量は、約0.1ng/mlから約50〜100μg/mlの血清濃度のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を生じさせる。医薬組成物は、別の実施態様において、1日に体重1キログラム当たり約0.001mg〜約2000mgの投薬量のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を提供する。医薬投薬単位形態は、投薬単位形態当たり、約0.01mg、0.1mg、又は1mg〜約500mg、1000mg、又は2000mg、一実施態様において、約10mg〜約500mgのBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子、及び/又は他の任意の必須成分の組合せを提供するように調製することができる。
BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、一度に投与することができ、又は時間間隔を置いて投与されるいくつかのより小さい用量に分割することができる。正確な投薬量及び治療期間は、治療されている疾患の関数であり、公知の試験プロトコルを用いて実験的に、又はインビボもしくはインビトロの試験データからの推定によって決定することができることが理解される。濃度及び投薬量値は、緩和されるべき状態の重症度によっても異なり得ることに留意すべきである。任意の特定の対象について、具体的な投薬レジメンが個々の必要性及び組成物の投与を管理又は監督する人の専門的な判断に応じて経時的に調整されるべきであること、並びに本明細書に示される濃度範囲が例示的なものであるに過ぎず、特許請求された組成物の範囲又は実施を限定することを意図するものではないことがさらに理解されるべきである。
BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を混合又は添加したとき、得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョンなどであることができる。得られる混合物の形態は、意図される投与様式及び選択される担体又はビヒクルへの該アンタゴニストの溶解度を含む、いくつかの因子によって決まる。有効濃度は、治療される疾患、障害、又は疾病の症状を改善するのに十分なものであり、実験的に決定することができる。
(5.7 投与及び投薬の方法)
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象に、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子の有効量、又は本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を含む医薬組成物を投与することにより、対象のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防、管理、治療、及び/又は改善する方法である。いくつかの実施態様において、BRD7アンタゴニストを投与する。別の実施態様において、Ikarosアンタゴニストを投与する。他の実施態様において、CRBN活性化因子を投与する。いくつかの実施態様において、BRD7アンタゴニストを含む医薬組成物を投与する。別の実施態様において、Ikarosアンタゴニストを含む医薬組成物を投与する。他の実施態様において、CRBN活性化因子を含む医薬組成物を投与する。
また本明細書に提供されるのは、例えば、本明細書に提供されるCNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病の予防、管理、治療、及び/又は改善において使用するための1以上のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を含む組成物である。いくつかの実施態様において、該組成物は、BRD7アンタゴニストを含む。別の実施態様において、該組成物は、Ikarosアンタゴニストを含む。他の実施態様において、該組成物は、投与されるCRBN活性化因子を含む。
本明細書の別所でより詳細に論じられているように、本明細書に提供される組成物を、単独で又は他の化合物もしくは組成物と組み合わせて使用することができる。さらに、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子をさらに、N末端もしくはC末端で異種ポリペプチドに組換えにより融合させるか、又はポリペプチドもしくは他の組成物に化学的にコンジュゲートする(共有結合的及び非共有結合的コンジュゲーションを含む)ことができる。例えば、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子(例えば、CRBN基質もしくは下流タンパク質に対する抗体)を、検出アッセイにおける標識として有用な分子及び異種ポリペプチド、薬物、放射性ヌクレオチド、又は毒素などのエフェクター分子に組換えにより融合させるか又はコンジュゲートすることができる。例えば、PCT公開WO 92/08495号;WO 91/14438号;WO 89/12624号;米国特許第5,314,995号;及びEP 396,387号を参照されたい。該組成物並びに投与及び投薬の方法は、本明細書に提供される他の方法においても有用である。
一実施態様において、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、実質的に精製されている(すなわち、その効果を限定するか又は望ましくない副作用を生じる物質を実質的に含まない)。療法が投与される対象は、ある実施態様において、哺乳動物、例えば、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)、又は霊長類(例えば、サル、例えば、カニクイザル、もしくはヒト)である。具体的な実施態様において、該対象は、ヒトである。別の実施態様において、該対象は、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を有するヒトである。別の実施態様において、該対象は、損傷したCNS組織を有するヒトである。
様々な送達系が公知であり、かつ予防剤又は治療剤(例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子)を投与するために使用することができ、該送達系には、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシス(例えば、Wu及びWuの文献(1987)、J. Biol. Chem., 262:4429-4432を参照されたい)、レトロウイルスもしくは他のベクターの部分としての核酸の構築などが含まれるが、これらに限定されない。予防剤もしくは治療剤(例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子)、又は医薬組成物を投与する方法としては、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、及び皮下)、硬膜外、並びに粘膜(例えば、鼻腔内及び経口経路)が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、予防剤もしくは治療剤(例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子)、又は医薬組成物は、鼻腔内、筋肉内、静脈内、又は皮下に投与される。予防剤もしくは治療剤、又は組成物は、任意の好都合な経路によって、例えば、点滴又は急速静注によって、上皮又は皮膚粘膜(例えば、口腔粘膜、鼻腔内粘膜、直腸及び腸粘膜など)からの吸収によって投与することができ、かつ他の生物活性剤と一緒に投与することができる。投与は、全身又は局部へのものであることができる。さらに、例えば、吸入器又は噴霧器と、エアロゾル化剤を含む製剤とを用いることにより、肺投与を利用することもできる。例えば、米国特許第6,019,968号、第5,985,320号、第5,985,309号、第5,934,272号、第5,874,064号、第5,855,913号、第5,290,540号、及び第4,880,078号;並びにPCT公開WO 92/19244号、WO 97/32572号、WO 97/44013号、WO 98/31346号、及びWO 99/66903号を参照されたい。
治療において又は予防として、活性剤を、個体に、注射用組成物として、例えば、滅菌水性分散剤として投与することができる。アンタゴニストをニューロンもしくはCNSのある領域に直接投与してもよく、又はニューロンもしくは該領域に全身投与を介して標的化してもよい。
具体的な実施態様において、予防剤もしくは治療剤、又は医薬組成物を、治療を必要としている部分に局部的に投与することが望ましいことがある。ある実施態様において、該部分は、CNS組織である。具体的な実施態様において、該部分は、脳である。これは、例えば、限定するものではないが、局部注入によって、局所投与によって(例えば、鼻腔内スプレーによって)、注射によって、又はインプラントによって達成することができ、該インプラントは、シアラスティック(sialastic)膜などの膜、又は繊維を含む、多孔性、非多孔性、又はゼラチン性材料のものである。ある実施態様において、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を投与する場合、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子が吸収されない材料を使用するように配慮しなければならない。
別の実施態様において、予防剤もしくは治療剤、又は組成物は、小胞、特に、リポソームに入れて送達することができる(Langerの文献(1990)、Science 249:1527-1533;感染症及び癌の治療におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer)、Lopez-Berestein及びFidler(編)、Liss, New York, 353〜365ページのTreatらの文献(1989);Lopez-Beresteinの文献(同書)、317〜327ページを参照されたく;通常は同書を参照されたい)。
別の実施態様において、予防剤もしくは治療剤、又は組成物を制御放出又は持続放出系で送達することができる。一実施態様において、ポンプを用いて、制御又は持続放出を達成することができる(Langer及びSeftonの文献(1987)、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng., 14:20;Buchwaldらの文献(1980)、Surgery, 88:507;Saudekらの文献(1989)、N. Engl. J. Med., 321:574)を参照されたい)。別の実施態様において、ポリマー材料を用いて、予防剤もしくは治療剤(例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子)又は組成物の制御又は持続放出を達成することができる(例えば、制御放出の医学的応用(Medical Applications of Controlled Release)、Langer及びWise(編)、CRC Pres., Boca Raton, Florida(1974);薬物バイオアベイラビリティーの制御、医薬品設計、及び性能(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance)、Smolen及びBall(編)、Wiley, New York(1984);Ranger及びPeppasの文献(1983)、J., Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照されたく;Levyらの文献(1985)、Science 228:190;Duringらの文献(1989)、Ann. Neurol. 25:351;Howardらの文献(1989)、J. Neurosurg. 7 1:105);米国特許第5,679,377号;米国特許第5,916,597号;米国特許第5,912,015号;米国特許第5,989,463号;米国特許第5,128,326号;PCT公開WO 99/15154号;及びPCT公開WO 99/20253号を参照されたい)。持続放出製剤で使用されるポリマーの例としては、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、及びポリオルトエステルが挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、持続放出製剤で使用されるポリマーは、不活性で、浸出性不純物を含まず、保存時に安定で、滅菌性で、かつ生体分解性である。また別の実施態様において、制御又は持続放出系を治療標的の近くに配置することができ、したがって、全身用量のごく一部しか必要としない(例えば、Goodsonの文献(1984)、制御放出の医学的応用(Medical Applications of Controlled Release)、上記、第2巻、115〜138ページを参照されたい)。制御放出系は、Langerの総説(Langerの文献(1990)、Science 249:1527-1533)において論じられている。当業者に公知の任意の技法を用いて、本明細書に提供される1以上のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を含む持続放出製剤を産生することができる。例えば、米国特許第4,526,938号、PCT公開WO 91/05548号、PCT公開WO 96/20698号、Ningらの文献(1996)、持続放出ゲルを用いたヒト結腸癌異種移植片の腫瘍内放射免疫療法(Intratumoral Radioimmunotherapy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained-Release Gel)、Radiotherapy & Oncology 39:179-189を参照されたい)。
本開示は、本明細書に記載の治療剤(例えば、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子)の送達のためのナノ粒子の使用も想定している。通常、1〜100ナノメートルの粒子と定義されるナノ粒子の有利な特徴は、その高い表面積対体積比から生じる。ナノ医療−ナノ粒子の治療的使用−は、歴史的に、抗癌薬及びワクチンの送達系としてのリポソーム性ナノ粒子の臨床評価に限定されてきた。しかしながら、ナノ医療の分野の進歩は、今後何年かのうちに、この技術の使用の急速な拡大をもたらすと考えられる(例えば、Freitasの文献(2005)、ナノ医療(Nanomedicine): Nanotech. Biol. Med., 1(1): 2-9を参照されたい)。
ナノ医療は、特定の細胞/部位への治療剤の送達の機会を提供する。ナノ粒子は活性剤を病的領域そのものに届けることができるので、多くの場合、従来の薬物送達技術と比較してより少ない用量の治療剤が必要とされ、有害作用の軽減という追加の利益をもたらすことが多い。
具体的な実施態様において、組成物が、予防剤又は治療剤(例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子)をコードする核酸を含む場合、該核酸は、それを適当な核酸発現ベクターの一部として構築し、該ベクターを、それが細胞内のものとなるように、例えば、レトロウイルスベクターの使用によって(米国特許第4,980,286号を参照されたい)、又は直接的な注射によって、又は微粒子衝撃(例えば、遺伝子銃;Biolistic(商標), Dupont)、又は脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト剤によるコーティングの使用によって投与することによるか、或いはそれを核内に侵入することが知られているホメオボックス様ペプチドと連結させて投与することによるか(例えば、Joliotらの文献(1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:1864-1868を参照されたい)、その他によってインビボに投与して、そのコードされた予防剤又は治療剤の発現を促進することができる。或いは、核酸を細胞内に導入し、発現のために相同組換えによって宿主細胞DNAに組み込むことができる。
具体的な実施態様において、組成物は、1つ、2つ、又はそれより多くのBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を含む。別の実施態様において、組成物は、1つ、2つ、又はそれより多くのBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子、及び本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子以外の予防剤又は治療剤を含む。ある実施態様において、薬剤は、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病の予防、管理、治療、及び/又は改善のために有用であることが知られているか、又はそのために使用されてきたか、又はそのために現在使用されている。予防剤又は治療剤の他に、組成物は、担体を含むこともできる。
組成物には、単位剤形の調製において使用することができる医薬組成物(例えば、対象又は患者への投与に好適である組成物)の製造において有用な原薬組成物が含まれる。具体的な実施態様において、組成物は、医薬組成物である。そのような組成物は、予防的又は治療的有効量の1以上の予防剤又は治療剤(例えば、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子、又は他の予防剤もしくは治療剤)、及び医薬として許容し得る担体を含む。ある実施態様において、該医薬組成物は、対象への投与の経路に好適なものとなるように製剤化される。
具体的な実施態様において、「担体」という用語は、それとともに治療薬が投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントのアジュバント(完全もしくは不完全))、賦形剤、又はビヒクルを指す。そのような医薬担体は、滅菌液、例えば、水及び油であることができ、油には、石油、動物、植物、又は合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが含まれる。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合の好ましい担体である。食塩水溶液並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液を、特に、注射用溶液のための液体担体として利用することもできる。好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、望ましい場合、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、又はpH緩衝化剤を含有することもできる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤などの形態を取ることができる。経口製剤は、標準的な担体、例えば、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことができる。好適な医薬担体の例は、レミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(1990)、Mack Publishing Co., Easton, PAに記載されている。そのような組成物は、予防的又は治療的有効量のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を、好ましくは精製された形態で、患者への適切な投与のための形状を提供するための好適な量の担体と一緒に含有する。製剤は、投与様式に適するべきである。
具体的な実施態様において、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適した医薬組成物としてルーチンの手順に従って製剤化される。一般に、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物は、溶解剤及び局部麻酔薬、例えば、注射部位での痛みを緩和するリグノカインを含むこともできる。しかしながら、そのような組成物は、静脈内以外の経路によって投与することができる。
通常、組成物の成分は、例えば、活性剤の分量を示すアンプル又は小袋などの密閉容器中の乾燥した凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、個別に又は混合して、単位剤形中に供給される。組成物が点滴によって投与されることになる場合、それを滅菌された医薬品等級水又は生理食塩水を含む点滴ボトルを用いて投薬することができる。組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分を混合することができるように、滅菌注射用水又は生理食塩水のアンプルを提供することができる。
ある実施態様において、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の分量を示すアンプル又は小袋などの密閉容器に包装される。一実施態様において、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、密閉容器中の乾燥した滅菌凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として供給され、例えば、水又は生理食塩水で、対象への投与のための適切な濃度に再構成することができる。ある実施態様において、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、密閉容器中の乾燥した滅菌凍結乾燥粉末として、少なくとも0.1mg、少なくとも0.5mg、少なくとも1mg、少なくとも2mg、又は少なくとも3mg、より好ましくは、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも30mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも60mg、少なくとも75mg、少なくとも80mg、少なくとも85mg、少なくとも90mg、少なくとも95mg、又は少なくとも100mgの単位投薬量で供給される。凍結乾燥されたBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、そのもとの容器中に2〜8℃で保存することができ、かつ該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、再構成した後、12時間以内に、好ましくは、6時間以内に、5時間以内に、3時間以内に、又は1時間以内に投与することができる。代替の実施態様において、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の分量及び濃度を示す密閉容器中に液体形態で供給される。ある実施態様において、液体形態のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、密閉容器中に、少なくとも0.1mg/ml、少なくとも0.5mg/ml、又は少なくとも1mg/ml、より好ましくは、少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも60mg/ml、少なくとも70mg/ml、少なくとも80mg/ml、少なくとも90mg/ml、又は少なくとも100mg/mlで供給される。
組成物は、中性形態又は塩形態として製剤化することができる。医薬として許容し得る塩としては、陰イオンとともに形成されるもの、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるもの、及び陽イオンとともに形成されるもの、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されるものが挙げられる。
活性タンパク質の治療的有効量は、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子の種類;BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子の親和性;BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子によって示される任意の残存する細胞毒性活性;投与の経路、及び/又は患者の臨床状態を含む、多くの変数の関数である。
BRD7アンタゴニストの治療的有効量は、投与されたときに、該BRD7のアンタゴニストが、BRD7の少なくとも1つの生物活性の少なくとも部分的な阻害をもたらすようなものであることができる。
Ikarosアンタゴニストの治療的有効量は、投与されたときに、Ikarosのアンタゴニストが、Ikarosの少なくとも1つの生物活性の少なくとも部分的な阻害をもたらすようなものであることができる。
CRBN活性化因子の治療的有効量は、投与されたときに、CRBN活性化因子が、CRBNの少なくとも1つの生物活性の少なくとも部分的な増大をもたらすようなものであることができる。治療的有効量は、投与されたときに、CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子が、該CRBN基質又は下流タンパク質の少なくとも1つの生物活性の少なくとも部分的な阻害をもたらすようなものであることもできる。
単一用量又は複数用量として個体に投与される投薬量は、アンタゴニストの性質、投与の経路、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康、大きさなど)、症状の度合い、併用している治療、治療の頻度、及び所望の効果を含む、種々の因子によって異なる。
確立された投薬量範囲の調整及び操作、並びに個体において、(i)BRD7の阻害、(ii)Ikarosの阻害、或いは(iii)CRBNの活性化又はCRBN基質もしくは下流タンパク質の阻害を決定するインビトロ及びインビボの方法は、十分に当業者の能力の範囲内である。
一実施態様において、予防剤又は治療剤(例えば、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子、例えば、CRBN基質もしくは下流タンパク質の阻害因子)、又は組成物がCNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病の予防、管理、治療、及び/又は改善において有効であり得る量は、標準的な臨床的技法によって決定することができる。
したがって、約0.1μg/ml〜約450μg/ml、いくつかの実施態様においては、少なくとも0.1μg/ml、少なくとも0.2μg/ml、少なくとも0.4μg/ml、少なくとも0.5μg/ml、少なくとも0.6μg/ml、少なくとも0.8μg/ml、少なくとも1μg/ml、少なくとも1.5μg/ml、好ましくは、少なくとも2μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/ml、少なくとも20μg/ml、少なくとも25μg/ml、少なくとも30μg/ml、少なくとも35μg/ml、少なくとも40μg/ml、少なくとも50μg/ml、少なくとも75μg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも125μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも250μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも350μg/ml、少なくとも400μg/ml、又は少なくとも450μg/mlの血清濃度を生じさせるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子、又は組成物の投薬量を、本明細書に提供される方法、例えば、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病の予防、管理、治療、及び/又は改善において使用するためにヒトに投与することができる。さらに、インビトロアッセイを任意に利用して、最適な投薬量範囲を特定するのを助けることができる。製剤中で利用されることなる正確な用量は、投与の経路、及びCNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病の重篤度によっても決まり、医師の判断及び各々の患者の状況によって決定されるべきである。
有効用量は、本明細書に提供される実験の節及び実施例に提供されているものを含む、インビトロ又は動物モデルの試験系から導出される用量応答曲線から推定することができる。
本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子について、患者に投与される投薬量は、通常、患者の体重1kg当たり0.1mg〜100mgである。いくつかの実施態様において、患者に投与される投薬量は、患者の体重1kg当たり約1mg〜約75mgである。ある実施態様において、患者に投与される投薬量は、患者の体重1kg当たり1mg〜20mg、より好ましくは、患者の体重1kg当たり1mg〜5mgである。通常、ヒトのBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、外来ポリペプチドに対する免疫応答のために、他の種由来のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子よりも長いヒト体内での半減期を有する。したがって、より少ない用量のヒトのBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子及びより低い頻度の投与が可能となることが多い。さらに、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与の投薬量及び頻度は、例えば、脂質化などの修飾によって、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の取込み及び組織浸透を増強することにより、低下させることができる。
一実施態様において、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を管理するために、約100mg/kg以下、約75mg/kg以下、約50mg/kg以下、約25mg/kg以下、約10mg/kg以下、約5mg/kg以下、約1mg/kg以下、約0.5mg/kg以下、又は約0.1mg/kg以下のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を、5回、4回、3回、2回、又はある実施態様においては、1回投与する。いくつかの実施態様において、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を約1〜12回投与し、その場合、用量は、必要に応じて、例えば、医師によって決定されるように、1週間に1回、2週間に1回、1カ月に1回、2カ月に1回、3カ月に1回などで投与することができる。いくつかの実施態様において、より少ない用量(例えば、1〜15mg/kg)をより高い頻度で(例えば、3〜6回)投与することができる。他の実施態様において、より多い用量(例えば、25〜100mg/kg)をより低い頻度で(例えば、1〜3回)投与することができる。しかしながら、当業者には明らかなように、他の投与量及びスケジュールが容易に決定可能であり、本明細書に提供される方法の範囲内である。
具体的な実施態様において、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を予防、管理、治療、及び/又は改善するために、持続放出製剤中の約100mg/kg、約75mg/kg以下、約50mg/kg以下、約25mg/kg以下、約10mg/kg以下、約5mg/kg以下、約1mg/kg以下、約0.5mg/kg以下、約0.1mg/kg以下の本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を、対象、好ましくは、ヒトに投与する。別の具体的な実施態様において、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を予防、管理、治療、及び/又は改善するために、持続放出製剤中のものではない、約100mg/kg、約75mg/kg以下、約50mg/kg以下、約25mg/kg以下、約10mg/kg以下、約5mg/kg以下、約1mg/kg以下、約0.5mg/kg以下、又は約0.1mg/kg以下のボーラス投与量のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を、対象、好ましくは、ヒトに投与し、一定期間の後、持続放出製剤中の約100mg/kg、約75mg/kg以下、約50mg/kg以下、約25mg/kg以下、約10mg/kg以下、約5mg/kg以下、約1mg/kg以下、約0.5mg/kg以下、又は約5mg/kg以下のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を、2回、3回、又は4回(好ましくは、1回)、対象に(例えば、鼻腔内又は筋肉内に)投与する。この実施態様によれば、一定期間は、1〜5日、1週間、2週間、又は1カ月であることができる。
いくつかの実施態様において、単一用量のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を、例えば、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を予防、管理、治療、及び/又は改善するための、本明細書に提供される方法で使用するために、1年間にわたって、2週間(例えば、約14日)に1回の間隔で、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、21回、22回、23回、24回、25回、又は26回、患者に投与し、その場合、用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、又はこれらの組合せからなる群から選択される(すなわち、各用量は、同一であっても、同一でなくてもよい)。
別の実施態様において、単一用量のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を、例えば、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を予防、管理、治療、及び/又は改善するための、本明細書に提供される方法で使用するために、1年間にわたって、約1カ月(例えば、約30日)に1回の間隔で、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、又は12回、患者に投与し、その場合、用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、又はこれらの組合せからなる群から選択される(すなわち、各用量は、同一であっても、同一でなくてもよい)。
一実施態様において、単一用量のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を、例えば、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を予防、管理、治療、及び/又は改善するための、本明細書に提供される方法で使用するために、1年間にわたって、約2カ月(例えば、約60日)に1回の間隔で、2回、3回、4回、5回、又は6回、患者に投与し、その場合、用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、又はこれらの組合せからなる群から選択される(すなわち、各用量は、同一であっても、同一でなくてもよい)。
いくつかの実施態様において、単一用量のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を、例えば、CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病を予防、管理、治療、及び/又は改善するための、本明細書に提供される方法で使用するために、1年間にわたって、約3カ月(例えば、約120日)に1回の間隔で、2回、3回、又は4回、患者に投与し、その場合、用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、又はこれらの組合せからなる群から選択される(すなわち、各用量は、同一であっても、同一でなくてもよい)。
別の実施態様において、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、第2の活性剤とともに投与される。第2の活性剤は、経口的に、静脈内に、又は皮下に、1日に1回又は2回、約1〜約1000mg、約5〜約500mg、約10〜約350mg、又は約50〜約200mgの量で投与される。第2の活性剤の具体的な量は、使用される具体的な薬剤、治療又は管理されている障害、中枢神経系障害の重症度及び段階、並びに患者に同時に投与されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子及び何らかの任意の追加の活性剤の量によって決まる。
ある実施態様において、本明細書に提供される予防剤又は治療剤は、患者に周期的に投与される。周期的療法は、一定期間の第1の薬剤の投与、その後の一定期間の該薬剤及び/又は第2の薬剤の投与、並びにこの逐次的投与の反復を含む。周期的療法は、該療法のうちの1つもしくは複数に対する抵抗性の発生を低下させ、該療法のうちの1つの副作用を回避もしくは軽減し、及び/又は治療の効力を向上させることができる。
(5.8 BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の組換え産生)
具体的な実施態様において、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子をコードする配列を含む核酸を、例えば、遺伝子治療によって、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病を予防、治療、及び/もしくは改善するための、又はCNS組織損傷を治療及び/もしくは予防するための、本明細書に提供される方法において使用するために、対象に投与する。そのような療法は、対象への発現される又は発現可能な核酸の投与によって実施される療法を包含する。ある実施態様において、該核酸は、それにコードされる抗体を産生し、該抗体は、予防又は治療効果を媒介する。
当技術分野で利用可能な組換え遺伝子発現(又は遺伝子治療)方法のいずれかを使用することができる。例示的な方法は下に記載され、かつ実施例の節で提供されている。
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielらの文献(1993)、Clinical Pharmacy 12:488-505;Wu及びWuの文献(1991)、Biotherapy 3:87-95;Tolstoshevの文献(1993)、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol., 32:573-596;Mulliganの文献(1993)、Science 260:926-932;並びにMorgan及びAndersonの文献(1993)、Ann. Rev. Biochem. 62:191-217;Mayの文献(1993)、TIBTECH 11(5):155-215を参照されたい。使用することができる組換えDNA技術の分野で一般に公知の方法は、Ausubelら(編)、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、John Wiley & Sons, NY(1993);及びKrieglerの文献、遺伝子導入及び発現、実験マニュアル(Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual)、Stockton Press, NY(1990)に記載されている。
具体的な実施態様において、組成物は、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子をコードする核酸を含み、該核酸は、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を好適な宿主で発現する発現ベクターの一部である。特に、そのような核酸は、アンタゴニストのコード領域に機能的に連結された、プロモーター、好ましくは、異種プロモーターを有し、該プロモーターは、誘導性又は構成的であり、任意に、組織特異的である。別の具体的な実施態様において、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子をコードする配列及び任意の他の望ましい配列がゲノム中の望ましい部位で相同組換えを促進する領域に隣接しており、その結果、アンタゴニストをコードする核酸の染色体内発現をもたらす、核酸分子が使用される(Koller及びSmithiesの文献(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:8932-8935;Zijlstraらの文献(1989)、Nature, 342:435-438)。
対象への核酸の送達は、直接的(この場合、対象を核酸もしくは核酸担持ベクターに直接曝露させる)、又は間接的(この場合、細胞をまずインビトロで核酸で形質転換し、その後、対象に移植する)であることができる。これら2つの手法は、それぞれ、インビボ又はエクスビボ遺伝子治療として知られている。
具体的な実施態様において、核酸配列をインビボに直接投与し、そこで、該配列が発現されて、コードされた産物が産生される。これは、当技術分野で公知の多くの方法のいずれかによって、例えば、それらを適当な核酸発現ベクターの一部として構築し、該ベクターを、該配列が細胞内のものとなるように、例えば、欠損又は弱毒型レトロウイルス又は他のウイルスベクターを用いた感染によって(米国特許第4,980,286号を参照されたい)、或いは裸のDNAの直接的な注射によって、或いは微粒子衝撃(例えば、遺伝子銃;Biolistic(商標), Dupont)、又は脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト剤によるコーティング、リポソーム、微粒子、もしくはマイクロカプセルへの封入の使用によって投与することによるか、或いはそれを核内に侵入することが知られているペプチドと連結させて投与することによるか、それを受容体媒介性エンドサイトーシスを受けるリガンドと連結させて投与することによるか(例えば、Wu及びWuの文献(1987)、J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照されたい)(これを用いて、該受容体を特異的に発現する細胞型を標的化することができる)、その他によって投与することにより達成することができる。別の実施態様において、リガンドが融合性ウイルスペプチドを含む核酸-リガンド複合体を形成させて、エンドソームを破壊し、核酸がリソソーム分解を回避することを可能にすることができる。また別の実施態様において、細胞特異的な取込み及び発現のために、特異的受容体を標的化することによって、核酸をインビボで標的化することができる(例えば、PCT公開WO 92/06180号;WO 92/22635号;WO 92/20316号;W093/14188号、WO 93/20221号を参照されたい)。或いは、核酸を細胞内に導入し、発現のために相同組換えによって宿主細胞DNAに組み込むことができる(Koller及びSmithiesの文献(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932-8935;並びにZijlstraらの文献(1989)、Nature 342:435-438)。
具体的な実施態様において、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子をコードする核酸配列を含有するウイルスベクターを使用する。例えば、レトロウイルスベクターを使用することができる(Millerらの文献(1993)、Meth. Enzymol. 217:581-599を参照されたい)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正確なパッケージング及び宿主細胞DNAへの組み込みに必要な構成要素を含有する。遺伝子治療で使用されることになるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子をコードする核酸配列を、対象への遺伝子の送達を促進する1以上のベクターにクローニングすることができる。レトロウイルスベクターについてのさらなる詳細は、造血幹細胞を化学療法に対してより抵抗性にするために、mdr 1遺伝子を該幹細胞に送達するためのレトロウイルスベクターの使用を記載している、Boesenらの文献(1994)、Biotherapy, 6:291-302に見出すことができる。遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を例示している他の参考文献は、以下のものである: Clowesらの文献(1994)、J. Clin. Invest., 93:644-651;Kleinらの文献(1994)、Blood, 83:1467-1473;Salmons及びGunzbergの文献(1993)、Human Gene Therapy, 4:129-141;並びにGrossman及びWilsonの文献(1993)、Curr. Opin. in Genetics and Devel., 3:110-114。
アデノウイルスは、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の組換え産生において使用することができる他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、遺伝子を呼吸上皮に送達するための特に魅力的なビヒクルである。アデノウイルスは本来呼吸上皮に感染し、そこで、それらは軽度の疾患を引き起こす。アデノウイルスに基づく送達系の他の標的は肝臓、中枢神経系、内皮細胞、及び筋肉である。アデノウイルスは、非***細胞に感染することができるという利点を有する。Kozarsky及びWilsonの文献(1993)、Current Opinion in Genetics and Development, 3:499-503には、アデノウイルスに基づく遺伝子治療の総説が示されている。Boutらの文献(1994)、Human Gene Therapy, 5:3-10では、アカゲザルの呼吸上皮に遺伝子を移入するためのアデノウイルスベクターの使用が示された。遺伝子治療におけるアデノウイルスの他の使用例は、Rosenfeldらの文献(1991)、Science, 252:431-434;Rosenfeldらの文献(1992)、Cell, 68:143-155;Mastrangeliらの文献(1993)、J. Clin. Invest., 91:225-234;PCT公開W094/12649号;及びWangらの文献(1995)、Gene Therapy 2:775-783に見出すことができる。具体的な実施態様において、アデノウイルスベクターを使用する。
アデノ随伴ウイルス(AAV)も利用することができる(Walshらの文献(1993)、Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 204:289-300;及び米国特許第5,436,146号)。具体的な実施態様において、AAVベクターを用いて、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を発現させる。
遺伝子治療の別の手法は、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、又はウイルス感染のような方法によって、遺伝子を組織培養物中の細胞に移入することを含む。通常、移入方法は、細胞への選択可能マーカーの移入を含む。その後、細胞を選択下に置いて、移入された遺伝子を取り込み、それを発現している細胞を単離する。その後、これらの細胞を対象に送達する。
一実施態様において、得られる組換え細胞のインビボ投与の前に、核酸を細胞に導入する。そのような導入は、限定されないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスもしくはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体媒介性遺伝子移入、マイクロセル媒介性遺伝子移入、スフェロプラスト融合などを含む、当技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。外来遺伝子を細胞に導入するための数多くの技法が当技術分野で公知であり(例えば、Loeffler及びBehrの文献(1993)、Meth. Enzymol., 217:599-618;Cohenらの文献(1993)、Meth. Enzymol., 217:618-644;Clin. Pharma. Ther. 29:69-92(1985)を参照されたい)、レシピエント細胞の必要とされる発生上の及び生理的な機能が破壊されないという条件で、本明細書に提供される方法に従って使用することができる。この技法は、核酸が細胞によって発現可能となり、いくつかの実施態様においては、その細胞子孫によって遺伝可能かつ発現可能となるように、細胞への核酸の安定な移入を提供すべきである。
得られる組換え細胞を当技術分野で公知の様々な方法によって対象に送達することができる。組換え血液細胞(例えば、造血幹細胞又は始原細胞)を静脈内投与することが好ましい。使用のために想定される細胞の量は、所望の効果、患者の状態などによって決まり、当業者によって決定されることができる。
遺伝子治療のために核酸を導入することができる細胞は、任意の望ましい利用可能な細胞型を包含し、これには、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;血液細胞、例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球;様々な幹細胞又は始原細胞、特に、例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られる造血幹細胞又は始原細胞が含まれるが、これらに限定されない。
具体的な実施態様において、遺伝子治療に使用される細胞は、対象にとって自己のものである。
組換え細胞が遺伝子治療において使用される実施態様において、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子をコードする核酸配列を、それらが該細胞又はその子孫によって発現可能となるように該細胞に導入し、その後、治療効果を得るために、該組換え細胞をインビボに投与する。具体的な実施態様において、幹細胞又は始原細胞を使用する。インビトロで単離及び維持することができる任意の幹細胞及び/又は始原細胞を、本明細書に提供される方法のこの実施態様に従って使用することができる可能性がある(例えば、PCT公開WO 94/08598号;Stemple及びAndersonの文献(1992)、Cell 7 1:973-985;Rheinwaldの文献(1980)、Meth. Cell Bio. 21A:229;並びにPittelkow及びScottの文献(1986)、Mayo Clinic Proc. 61:771を参照されたい)。
具体的な実施態様において、遺伝子治療のために導入されることになる核酸は、該核酸の発現が適当な転写誘導因子の存在又は不在を制御することによって制御可能となるように、コード領域に機能的に連結された誘導性プロモーターを含む。
BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子は、抗体の合成についての当技術分野で公知の任意の方法によって、特に、化学合成によって、又はある実施態様においては、組換え発現技法によって産生することができる。実施においては、別途示されないかぎり、分子生物学、微生物学、遺伝学的解析、組換えDNA、有機化学、生化学、PCR、オリゴヌクレオチド合成及び修飾、核酸ハイブリダイゼーション、並びに当技術分野の技術の範囲内の関連分野における従来の技法が利用される。これらの技法は、本明細書に引用されている参考文献に記載されており、かつ文献中で十分に説明されている。例えば、Maniatisらの文献(1982)、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press;Sambrookらの文献(1989)、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press;Sambrookらの文献(2001)、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY;Ausubelらの文献、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、John Wiley and Sons(1987及び年次更新);免疫学の最新プロトコル(Current Protocols in Immunology)、John Wiley and Sons(1987及び年次更新)、Gait(編)(1984);オリゴヌクレオチド合成:実践的アプローチ(Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach)、IRL Press;Eckstein(編)(1991);オリゴヌクレオチド及び類似体:実践的アプローチ(Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach)、IRL Press;Birrenら(編)(1999);ゲノム解析:実験マニュアル(Genome Analysis: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
(5.9 キット)
一般に、本明細書に提供される活性成分は、同時に又は同じ投与経路で患者に投与されないことが好ましい。したがって、また本明細書に提供されるのは、医師が使用するときに、患者への適切な量の活性成分の投与を簡単にすることができるキットである。
本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される医薬組成物の成分のうちの1つ又は複数、例えば、本明細書に提供される1以上の抗体が充填された1以上の容器を含む医薬パック又はキットである。そのような容器には、医薬品又は生物学的製剤の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって定められた形での注意書きが任意に関連付けられることがあり、この注意書きは、該機関による、ヒト投与のための製造、使用、又は販売の認可を示すものである。
典型的なキットは、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、もしくはCRBN活性化因子、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包摂化合物、もしくはプロドラッグの剤形を含む。キットは、追加の活性成分をさらに含み得る。
キットは、活性成分を投与するために使用される装置をさらに含むことができる。そのような装置の例としては、注射器、点滴バッグ、パッチ、及び吸入器が挙げられるが、これらに限定されない。
キットは、1以上の活性成分を投与するために使用することができる医薬として許容し得るビヒクルをさらに含むことができる。例えば、活性成分が、非経口投与用に再構成されなければならない固体形態で提供される場合、キットは、非経口投与に好適である微粒子非含有滅菌溶液を形成するように活性成分を溶解させることができる好適なビヒクルの密閉容器を含むことができる。医薬として許容し得るビヒクルの例としては:注射用水USP;水性ビヒクル、例えば、限定されないが、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、並びに乳酸加リンガー注射液;水混和性ビヒクル、例えば、限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール;並びに非水性ビヒクル、例えば、限定されないが、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、並びに安息香酸ベンジルが挙げられるが、これらに限定されない。
また本明細書に提供されるのは、上記の方法で使用することができるキットである。一実施態様において、キットは、1以上の容器中に、本明細書に提供されるBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を含む。
(5.10 CNS細胞の増幅及び機能に対するBRD7アンタゴニストの効果の評価)
下記の実施例において、CNS細胞の増幅及び機能に対するBRD7アンタゴニストの効果が評価されている。下に示されているように、BRD7アンタゴニストは、脳のサイズを拡大し、発生途中の脳及び脊髄の神経始原細胞を増加させる。BRD7アンタゴニストは、多能性遺伝子の発現も誘導する。
下の実施例19に示されているように、BRD7のノックダウンは、ゼブラフィッシュ胚の脳を拡大させる。脳の成長に対するBRD7のアンタゴニストの効果を調べるために、BRD7をゼブラフィッシュ胚でノックダウンするか又は過剰発現させた。BRD7のノックダウンは、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド(AMO)のマイクロインジェクションによって実施した。BRD7の過剰発現は、合成されたキャップ化mRNAのマイクロインジェクションによって実施した。窒素ガス圧マイクロインジェクターIM 300(Narishige)を用いて、AMO又はキャップ化mRNAを1細胞期胚に導入した。マイクロインジェクションの条件は次の通りである:ガス圧は約15ピコシーメンスであり;放出期間は、注射1回当たり約30〜約50ミリ秒であり;AMO及びキャップ化mRNAの濃度は、それぞれ、ヌクレアーゼ非含有水中、400ng/μl及び250ng/μlであった。キャップ化mRNAは、mMESSAGE mMachine(登録商標)インビトロ転写キット(Ambion)を用いて、pCS2+プラスミドにクローニングされたcDNAからインビトロで合成された。
これらの胚の脳を、形態及び体積について、磁気共鳴イメージング(MRI)によって調べた。図9A、9B、及び9Cは、それぞれ、未処理ゼブラフィッシュ胚、BRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚、及びBRD7過剰発現ゼブラフィッシュ胚の顕微鏡写真を示している。図9D、9E、及び9Fは、それぞれ、未処理ゼブラフィッシュ胚、BRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚、及びBRD7過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳領域の蛍光顕微鏡写真を示している。これらの図に示されているように、BRD7ノックダウン魚は、未処理胚よりも大きい頭部を有している。対照的に、BRD7過剰産生をもたらすBRD7 mRNAが注射された胚は、未処理胚よりも小さい頭部及び眼を発生させる。脳全体(終脳から脊髄まで)の取り込みMRI画像の横断面図による脳の様々な領域の体積の測定により、脳の全ての部分(終脳、間脳、中脳、大脳、及び脊髄)がBRD7ノックダウン又はBRD7過剰発現によって影響を受けることが明らかなった。BRD7ノックダウン魚の脳全体の体積は未処理魚よりもずっと大きいが、BRD7過剰発現魚については、脳の体積はより小さい。
CNS細胞の機能に対するBRD7アンタゴニストの効果をインサイチュハイブリダイゼーションによって評価した。下の実施例20に示されているように、BRD7のノックダウンは、ゼブラフィッシュ胚におけるPou5f1(Oct3/4)、Klf4、c-Myc、及びHuC(Elav13)の発現を活性化させる。特に、後脳の第2及び第4菱脳節におけるPou5f1(Oct3/4)の発現は、10hpf及び11hpfのBRD7ノックダウン胚で増加した。Klf4の発現も、BRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚の神経管の吻側部分において18hpfで増加した。さらに、BRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚では、c-Mycの発現が、神経幹細胞及び始原細胞が存在する内側領野及び外側領野の視蓋増殖帯、並びに網膜幹細胞が局在する網膜の毛様体辺縁部(CMZ)の最末梢領域において30hpfで明らかに強化された。同様に、神経始原細胞マーカー遺伝子であるHucの発現は、CRBN過剰発現胚及びBRD7ノックダウン胚の脳及び脊髄で増加した。BRD7ノックダウン胚の脳及び脊髄のHuC陽性神経始原細胞の数は15hpfで増加し、終脳ニューロン及び脊髄ニューロンの数は、16hpfのBRD7ノックダウン胚で増加した。
下の実施例21に示されているように、11hpfのBRD7ノックダウン胚におけるHuCの発現の増加は、定量的PCRによっても示された。また、下の実施例23の定量的PCR解析において示されているように、Pou5f1の発現は、11hpfのCRBN過剰発現胚又はBRD7ノックダウン胚で有意に増加し;Pou5f1標的遺伝子Zic3及び別の多能性遺伝子Nanogの発現もCRBN過剰発現胚又はBRD7ノックダウン胚で増加した。対照的に、実施例23において、Pou5f1、Zic3、及びNanogの発現は、同じ段階のCRBNノックダウン胚、BARD過剰発現胚、及びサリドマイド処理胚で減少した。
実施例20は、BRD7のノックダウンが、ゼブラフィッシュ胚で、Pou5f1(Oct3/4)、Klf4、c-Myc、及びHucを上方調節することを示している。BRD7ノックダウン胚又はBRD7過剰発現胚におけるPou5f1、Klf4、c-Myc、及びHucの発現をインサイチュハイブリダイゼーションによって解析した。これら4つの遺伝子は、マウス体細胞とヒト体細胞の両方で多能性を誘導することがよく知られている。図10に示されているように、BRD7のノックダウンは、発生途中の脳におけるこれらの遺伝子の発現を強化し、増幅させる。
Ascl1、Brn2(Pou3f2)、及びMyt1laという3つの遺伝子のプールの発現は、胚性線維芽細胞及び出生後線維芽細胞を機能的ニューロンへと直接的に再プログラミングするのに十分である(例えば、Vierbuchen及びWernigの文献、Nat Biotechnol. 29:892-907(2011)を参照されたい)。そこで、下の実施例24において、Ascl1、Pou3f3a、及びMyt1laの発現を、定量的PCRにより、28hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びBRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚で解析した。示されているように、BRD7のノックダウンは、28hpfでAscl1、Pou3f3a、及びMyt1laの発現を増加させ、11hpfでAscl1、Brn2(Pou3f2b)、及びMytlの発現を増加させた。
(5.11 CNS細胞の増幅及び機能に対するIkarosアンタゴニストの効果の評価)
下記の実施例において、CNS細胞の増幅及び機能に対するIkarosアンタゴニストの効果が評価されている。下に示されているように、Ikarosアンタゴニストは、脳のサイズを拡大し、発生途中の脳及び脊髄の神経始原細胞を増加させる。Ikarosアンタゴニストは、多能性遺伝子の発現も誘導する。
下の実施例25に示されているように、Ikarosのノックダウンは、ゼブラフィッシュ胚の脳を拡大させる。脳の成長に対するIkarosのアンタゴニストの効果を調べるために、Ikarosをゼブラフィッシュ胚でノックダウンするか又は過剰発現させた。Ikarosのノックダウンは、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド(AMO)のマイクロインジェクションによって実施した。Ikarosの過剰発現は、合成されたキャップ化mRNAの注射によって実施した。AMO又はキャップ化mRNAを、窒素ガス圧マイクロインジェクターIM 300(Narishige)を用いることによって、1細胞期胚に導入した。マイクロインジェクションの条件は次の通りである:ガス圧は約15ピコシーメンスであり;放出期間は、注射1回当たり約30〜約50ミリ秒であり;AMO及びキャップ化mRNAの濃度は、それぞれ、ヌクレアーゼ非含有水中、400ng/μl及び250ng/μlであった。キャップ化mRNAは、mMESSAGE mMachine(登録商標)インビトロ転写キット(Ambion)を用いて、pCS2+プラスミドにクローニングされたcDNAからインビトロで合成された。
これらの胚の脳を、形態及び体積について、磁気共鳴イメージング(MRI)によって調べた。図15A、15B、及び15Cは、それぞれ、55hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚、及びIkaros過剰発現ゼブラフィッシュ胚の顕微鏡写真を示している。これらの図に示されているように、Ikarosノックダウン魚は、未処理胚よりも大きい頭部を有していた。対照的に、Ikaros過剰産生をもたらすIkaros mRNAが注射された胚は、未処理胚よりも小さい頭部及び眼を発生させた。脳全体(終脳から脊髄まで)の取り込みMRI画像の横断面図による脳の様々な領域の体積の測定により、脳の全ての部分(終脳、間脳、中脳、大脳、及び脊髄)がIkarosノックダウン又はIkaros過剰発現によって影響を受けることが明らかなった。Ikarosノックダウン魚の脳全体の体積は、未処理魚の脳全体の体積よりもずっと大きかったが、Ikaros過剰発現魚については、脳の体積はより小さかった。
ゼブラフィッシュ胚の脳の発達に対する2つのIkaros変異体の過剰発現の効果を実施例26で解析した。2つの新しいIkaros変異体ikzf1-006及びikzf1-007を単離した。Ikzf1-006はエキソン7を欠いており、ikzf1-007はエキソン4及び7を欠いている。図16A、16B、16C、及び16Eは、それぞれ、22hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚、ikzf1-007(Ikaros変異体)過剰発現ゼブラフィッシュ胚、及びikzf1-006(Ikaros変異体)過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳の顕微鏡写真を示している。図16D及び16Fは、それぞれ、22hpfのikzf1-007過剰発現ゼブラフィッシュ胚及びikzf1-006過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳の蛍光顕微鏡写真である。これらの写真は同じ倍率で撮影された。示されているように、22hpfで、融合型Ikzf1:EGFPタンパク質の過剰発現は、ikzf1-006過剰発現胚とikzf1-007過剰発現胚の両方で脳の発達の低下を引き起こした。前脳は、終脳、間脳、及び中脳の不完全な成長により切形であった(図16C〜16F参照;16D及び16FはEGFP蛍光画像である)。対照的に、Ikarosのノックダウンは、図16Bに示されているような、巨頭症を引き起こした。
実施例27に示されているように、一次ニューロン及び増殖性細胞の数を27hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚における免疫染色によって解析した。図17A及び17Dは、それぞれ、抗アセチル化チューブリン抗体を用いた免疫染色による27hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚のCNSの一次ニューロンを示している。図17B及び17Eは、それぞれ、抗ホスホ-ヒストンH3抗体を用いた免疫染色による27hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚のCNSの増殖性細胞を示している。図17Cは、図17Aと図17Bの重ね合わせ画像を示している。図17Fは、図17Dと図17Eの重ね合わせ画像を示している。示されているように、免疫染色画像から、増殖性細胞の数と一次ニューロンの数が両方とも、Ikarosノックダウン胚で増加することが示された。一次ニューロンの全体的な分布は、示されている通り、正常であった(スケールバー:50μm)。リン酸化ヒストンH3陽性細胞の数を、27hpfで、レーザー共焦点顕微鏡の積層された焦点面で計数した。終脳、間脳、及び中脳におけるH3陽性細胞の平均数を未処理胚とIkarosノックダウン胚で統計的に比較した(各実験でn=3)。図18に示されているように、終脳、間脳、及び中脳領域におけるH3陽性増殖性細胞の数は全て、27hpfのIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚で増加した。
実施例28に示されているように、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚における放射状グリア細胞及びセロトニン陽性細胞の数を免疫染色によって解析した。図19A及び19C〜19Eは、54hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚の脳の蛍光顕微鏡写真を示している。図19B及び19F〜19Hは、54hpfのIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚の脳の蛍光顕微鏡写真を示している。細胞を抗放射状グリアマーカー(Zrf-2)抗体(緑)及び抗セロトニン抗体(赤)で免疫染色した。これらの図において、rnは縫線核を表し;RGは放射状グリアを表し;vptは後腹側結節を表し;pは松果器官を表し;CMZは毛様体辺縁部を表す(スケールバー:50μm)。示されているように、放射状グリア細胞及びセロトニン陽性細胞の数は増加したが、その空間的分布はIkarosノックダウン幼生で正常であった。
多能性遺伝子の発現に対するIkarosアンタゴニストの効果を解析した。下の実施例29に示されているように、定量的PCRによると、Ikarosノックダウンは、ゼブラフィッシュ胚におけるc-Myc、Sox2、及びNanogの発現を活性化させた。
実施例30において、Ascl1、Pou3f3a、Pou3f2b、及びMyt1laの発現を、定量的PCRにより、28hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚、及びIkaros過剰発現ゼブラフィッシュ胚で解析した。示されているように、Ikarosのノックダウンは、28hpfのゼブラフィッシュ胚におけるAscl1、Pou3f3a、Pou3f2b、及びMyt1laの発現を増加させ、Ikarosの過剰発現は、28hpfのゼブラフィッシュ胚におけるAscl1、Pou3f3a、Pou3f2b、及びMyt1laの発現を減少させた。
実施例31において、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚におけるAscl1a及びPou3f2bの発現をインサイチュハイブリダイゼーションによっても解析した。示されているように、Ascl1a及びPou3f2bの発現は、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚で増加した。特に、松果体、視床前部、視床、及び視床下部におけるAscl1aの発現は、25hpfのIkarosノックダウン胚で顕著に増加した。Pou3f2bの発現も、26hpfで、間脳、中脳後脳境界、及び小脳原基で増加した。Ascl1a及びPou3f2bでマーキングされた領域は全て、CNSにおける神経幹細胞及び始原細胞の溜まり場である増殖帯に空間的に対応していた。
(5.12 CNS細胞の増幅及び機能に対するCRBN活性化因子の効果の評価)
下記の実施例において、CNS細胞の増幅及び機能に対するCRBN活性化因子の効果が評価されている。下に示されているように、CRBN活性化因子は、脳のサイズを拡大し、発生途中の脳及び脊髄の神経始原細胞を増加させる。CRBN活性化因子は、多能性遺伝子の発現も誘導する。
下の実施例36に示されているように、インサイチュハイブリダイゼーションによって決定したとき、CRBNの過剰発現は、ゼブラフィッシュ胚におけるSox2、Pou5f1(Oct 3/4)、c-Myc、及びKlfの発現を活性化させる。図27A及び27Bは、インサイチュハイブリダイゼーションによる、それぞれ、9hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるSox2発現を示している。示されているように、前頭領域(ab)におけるSox2の発現は9phfで増幅した(CRBN過剰発現胚において、79.4%、n=68;図27B参照)。図27C及び27Dは、インサイチュハイブリダイゼーションによる、それぞれ、10hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるPou5f1発現を示している。示されているように、10hpfで、Pou5f1は、中脳後脳境界の近く、後脳の菱脳節2及び4(r2及びr4)と推定される場所で、並びに軸方向の中胚葉性組織、例えば、内側縦条(mls)で発現していた(図27C参照)。CRBNを過剰発現させたとき、Pou5f1の発現は、特に、初期の脳領域で増加し、増幅した(81.9%、n=72;図27D参照)。図27E、27G、27I、及び27Kは、インサイチュハイブリダイゼーションによる30hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚におけるc-Myc発現を示している。図27F、27H、27J、及び27Lは、インサイチュハイブリダイゼーションによる30hpfのCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるc-Myc発現を示している。示されているように、30hpfで、c-Mycは、神経幹細胞が存在する内側及び外側領野の視蓋増殖帯(tpz)、及び網膜幹細胞が局在する網膜の周囲辺縁部(CMZ)の最末梢領域で大量に発現していた。m-Mycの発現は、CRBN過剰発現胚の両方の帯域において、明らかにより高く、かつより広範囲に分布していた(CRBN過剰発現胚において、73.5%、n=68;図27F、27H、27J、及び27L参照)。CMZにおいて、c-Myc発現細胞の数はCRBN過剰発現胚で増加し(図27H参照)、視蓋増殖帯におけるc-Myc発現細胞の厚さも増大した(図27L参照)。図27M及び27Nは、インサイチュハイブリダイゼーションによる、それぞれ、18hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるKlf4発現を示している。示されているように、18hpfで、Klf4は、三叉神経プラコード、孵化腺、及び神経管の吻側部で発現していた。CRBN過剰発現胚において、Klf4発現は、明らかに、三叉神経プラコード(tgp)及び前方神経管(bars)で増加していた(図27N参照)。
下の実施例37に示されているように、CRBNの過剰発現は、放射状グリア細胞及び成熟ニューロンの数を増加させる。CNSの放射状グリア細胞は、ニューロン及び希突起神経膠細胞の前駆細胞として、並びにニューロンの移動を支持する足場として機能する。図28A及び28Bは、星状細胞のグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)を標識するZrf-1抗体で免疫染色された56hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚の脳領域を示している。図28C及び28Dは、星状細胞のグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)を標識するZrf-1抗体で免疫染色された56hpfのCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳領域を示している。示されているように、56hpfでは、CRBN過剰発現幼生で、Zrf-1によって検出されるGFAP陽性星状細胞の数は、細胞体と線維の両方で増加した(図28C及び28D参照;角括弧はGFAP陽性グリアの細胞体を示している)。図28E及び28Fは、放射状グリア細胞を標識するZrf-2抗体で免疫染色された56hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚の脳領域を示している。図28G及び28Hは、放射状グリア細胞を標識するZrf-2抗体で免疫染色された56hpfのCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳領域を示している。示されているように、後脳の放射状グリア細胞の数は、CRBN過剰発現幼生で増加した(図28G及び28H参照)。図28I及び28Jは、網膜のミューラーグリアを標識するZrf-2抗体で免疫染色された48hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳領域を示している。ミューラーグリアは、網膜の神経幹細胞としての役割を果たす可能性があり、Zrf-2によって標識された。示されているように、ミューラーグリアの数は、48hpfのCRBN過剰発現幼生で増加し(図28J参照)、眼のサイズがより大きくなるのに比例していた(図28I及び28J参照)。図28K及び28Lは、それぞれ、33hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の耳胞及び脊髄の神経堤細胞(NCC)におけるSox10を示している。示されているように、33hpfで、Sox10は、耳胞及び脊髄の神経堤細胞(NCC)で発現していた(図28K参照)。この段階で、Sox10陽性NCCは、不特定のニューロン及びグリア細胞を含有していた。これらの細胞は、CRBN過剰発現胚で増加した(図28L参照)。図28Mは、定量的PCRによる、それぞれ、11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるGfap mRNAレベルを示したヒストグラムである。示されているように、CRBN過剰発現胚におけるGfapは、11hpfの未処理胚におけるレベルの4倍超にまで増加した(図28M参照)。
下の実施例38に示されているように、CRBNの過剰発現は、細胞増殖の正の調節遺伝子を増加させる。Notch3及びNeuropilin2b(Nrp2b)は、細胞増殖の進行に必要とされる。Notch3は、未分化又は未成熟細胞からの神経分化のタイミングの調節において役割を果たしており、Nrp2bも、PDGF(血小板由来成長因子)との協調による間葉系幹細胞の細胞増殖及び再構築を調節している。そこで、Notch3及びNeuropilin 2b(Nrp2b)の発現を、定量的PCRにより、未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚で解析した。図29Aは、定量的PCRによる11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚、及びサリドマイド処理ゼブラフィッシュ胚におけるNotch3及びNrp2bのmRNAレベルを示したヒストグラムである。示されているように、CRBN過剰発現胚におけるNotch3の発現は、11hpfの未処理胚におけるレベルの1.8倍に増加し、CRBN過剰発現胚におけるNrp2bの発現は、同じ段階の未処理胚におけるレベルの2.7倍に増加した。対照的に、サリドマイド処理は、両方の遺伝子の発現を、それぞれ、未処理胚におけるレベルの0.3倍及び0.4倍に減少させた。これらのデータは、CRBNが、これらのシグナル分子の発現を上方調節することによって細胞増殖を活性化させることを強く示唆している。Elval3(Huc)は、神経始原細胞マーカーである。Elav13(Huc)の発現も、定量的PCR及びインサイチュハイブリダイゼーションによって解析した。図29Bは、定量的PCRによる11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるElav13 mRNAレベルを示したヒストグラムである。示されているように、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるElav13の発現は、11hpfの未処理胚におけるレベルの1.7倍に増加した。Elav13の発現の増加をインサイチュハイブリダイゼーションによって確認した。図29C及び29Dは、インサイチュハイブリダイゼーションによる14hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるElav13陽性神経始原細胞を示している。示されているように、CNSのElav13陽性神経始原細胞の数は、14hpfのCRBN過剰発現胚で増加した。終脳及び脊髄の微分干渉(DIC)画像は、Elav13陽性神経始原細胞が各領域で増加することをはっきりと示した(図29D参照)。
実施例39に示されているように、CRBNの過剰発現は、希突起神経膠細胞を増加させる。未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の前脳、耳胞、及び脊髄における希突起神経膠細胞の分布及び成長をインサイチュハイブリダイゼーションによって解析した。図30A及び30Bは、インサイチュハイブリダイゼーションによる36hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の前脳、耳胞、及び脊髄における希突起神経膠細胞を示している。図30C及び30Dは、36hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の松果体における希突起神経膠細胞を示している。示されているように、前脳、耳胞、及び脊髄における希突起神経膠細胞の空間的分布は、未処理胚及びCRBN過剰発現胚で同一であるように見えた(図30A及び30B参照)。しかしながら、微分干渉(DIC)画像から、olig2陽性細胞の数が、明らかに、CRBN過剰発現胚の前脳でより多いことが示された(図30C及び30D参照)。
実施例40に示されているように、定量的PCRによって決定したとき、Six3b、Lhx2b、及びCRBN過剰発現は、多能性遺伝子の発現を増加させる。図31Aは、定量的PCRによる11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びSix3b過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるLhx2b、Wnt3a、CRBN、Sox2、Pou5f1、及びNanogの発現レベルを示したヒストグラムである。示されているように、Six3bの過剰発現は、Lhx2b、Wnt3a、CRBN、並びに多能性遺伝子(Sox2、Pou5f1、及びNanog)の発現レベルを増加させた。mRNAの相対的発現を縦軸により示した。未処理胚と比較して、Six3b過剰発現胚では、Lhx2bの発現は、約1.2倍に増加し、Wnt3a、CRBN、及びSox2の発現は、約1.5倍に増加し、pou5f1の発現は、約1.7倍に増加し、Nanogの発現は、約2.4倍に増加した。図31Bは、定量的PCRによる11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びLhx2b過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるCRBN、Sox2、Pou5f1、Nanog、及びZic3の発現レベルを示したヒストグラムである。示されているように、未処理胚と比較して、CRBN、Sox2、Pou5f1、及びNanogの発現は、Lhx2b過剰発現胚で、それぞれ、約1.2倍、2.3倍、1.6倍、及び1.3倍増加した。図31Cは、定量的PCRによる11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚、CRBNノックダウンゼブラフィッシュ胚、及び100μMのサリドマイド処理したゼブラフィッシュ胚におけるSox2、Pou5f1、Nanog、及びZic3の発現レベルを示したヒストグラムである。示されているように、CRBNの過剰発現及びノックダウンは、多能性遺伝子の発現に対する反対の効果を示した。サリドマイド処理は、多能性遺伝子の発現を、CRBNノックダウン胚で観察されるレベル近くまで低下させた。CRBN過剰発現胚では、Sox2、Pou5f1、Nanog、及びZic3の発現は、それぞれ、注射を受けていない胚における発現の1.2倍、1.9倍、4.6倍、1.3倍にまで増加した。対照的に、CRBNをノックダウンしたとき、各遺伝子の発現は、未処理胚における発現の0.7倍、0.8倍、0.8倍、0.8倍にまで減少した。サリドマイド処理は、各遺伝子の発現をより激しく(約0.5〜0.7倍)減少させた。
実施例41に示されているように、CRBNの過剰発現は、神経再プログラミング遺伝子の発現を増加させる。Ascl1、Pou3f3a、及びMyt1laの発現を、定量的PCRにより、24hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚で解析した。図32は、定量的PCRによる24hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるAscl1a、Pou3f2b、及びMyt1laの発現レベルを示したヒストグラムである。示されているように、CRBNの過剰発現は、24hpfでのAscl1、Pou3f3a、及びMyt1laの発現を増加させた。
本発明の様々な実施態様の物質に実質的には影響を及ぼさない修飾もまた、本明細書に提供される本発明の定義に含まれることが理解される。したがって、以下の実施例は、本発明を限定することではなく、本発明を例証することが意図される。
(6.実施例)
(6.1 実施例1−ゼブラフィッシュ胚における全身性の遺伝子過剰発現)
ゼブラフィッシュは、脊椎動物発生の解析のための重要な脊椎動物モデル及びヒト疾患のモデル系である。Barbazukらの文献、ゼブラフィッシュゲノムとヒトゲノムのシンテニー関係(The Syntenic Relationship of the Zebrafish and Human Genomes)、Genome Res., 10: 1351-1358(2000)を参照されたい。ヒトゲノムとゼブラフィッシュゲノムの間に高いシンテニー関係が存在し、ゲノムシンテニーの70〜80%がヒトとゼブラフィッシュの間で保存されている。Lieschke及びCurrieの文献、ヒト疾患の動物モデル:ゼブラフィッシュが泳いで姿を現す(Animal Models of Human Disease: Zebrafish Swim into View)、Nature Reviews Genetics., 8, 353-367(2007)を参照されたい。したがって、ゼブラフィッシュモデルは、発生生物学者の間で好んで選ばれるモデルとして長年にわたって使用されている。Fleischらの文献、CNSニューロンの再生及び機能的統合の研究:ゼブラフィッシュ遺伝学及び他の魚種からのレッスン(Investigating Regeneration and Functional Integration of CNS Neurons: Lessons from Zebrafish Genetics and Other Fish Species)、Biochim. Biophys. Acta, 1812:364-380(2011);Kishimotoらの文献、成体脳損傷のゼブラフィッシュモデルにおけるニューロン再生(Neuronal Regeneration in Zebrafish Model of Adult Brain Injury)、Disease Models and Mechanisms, 5:200-209(2012);及びBeckerらの文献、良好な中枢神経系再生のモデルとしての成体ゼブラフィッシュ(Adult Zebrafish as a Model for Successful Central Nervous System Regeneration)、Restorative Neurol. Neurosci., 26:71-80(2008)を参照されたい。
成魚を28.5℃の一定温度で飼育し、14時間の点灯及び10時間の消灯の日内周期下で維持し、繁殖させた。受精卵を雄と雌の自然交配によって確保し、インビトロで合成された600ng/μlのキャップ化mRNAの水溶液を、30psiの窒素ガス圧及び30msec(ミリ秒)の開弁時間の条件下、第1卵割(1細胞期)前に、胚の細胞質に注射した。lhx2遺伝子を除く全ての遺伝子(すなわち、CRBN遺伝子、six3.2遺伝子、及びCRBNとともにE3ユビキチンリガーゼ複合体を構成するタンパク質をコードする遺伝子)の発現は、全身性に発現された場合でも胚発生にほとんど影響を及ぼさなかったので、この方法を用いて、最初のデータを取得した。
(6.2 実施例2−ゼブラフィッシュ胚の頭部における局所的な遺伝子過剰発現)
全身性に発現されたときに胚の非特異的な背方化を示すlhx2遺伝子を検討するために、及び脳の体積に対して及ぼされる効果を具体的に調べる正確な実験のために、胚の将来頭部になる領域へのインビボRNAリポフェクションを実施した。リポフェクションの方法は、Andoらによって開発及び公表された技法に完全に従うものであった。Ando及びOkamotoの文献、ゼブラフィッシュにおける遺伝子発現の空間的時間的制御のための効率的なトランスフェクション戦略(Efficient Transfection Strategy for the Spatiotemporal Control of Gene Expression in Zebrafish)、Biotechnol., 8(3): 295-303(2006)を参照されたい。
(6.3 実施例3−ゼブラフィッシュ胚を用いた遺伝子ノックダウン)
ノックダウンされる遺伝子のcDNA配列中の翻訳開始コドンの付近に対応する25-merのアンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド(AMO、Gene Tools, LLC)の水溶液(700ng/μlの注射条件はRNAに対して用いられる条件と同じであった)を1細胞期の胚に注射した。CRBN遺伝子ノックダウンに用いられたAMOの配列は、
である。Lhx2遺伝子ノックダウンに用いられたAMOの配列は、
である。BRD7遺伝子ノックダウンに用いられたAMOの配列は、
である。Ikaros遺伝子ノックダウンに用いられたAMOの配列は、
である。
(6.4 実施例4−ゼブラフィッシュを用いた遺伝子機能的階層性の決定)
このプロセスは、以下の手順を除き、Andoらの技法に完全に従って実施された。Andoらの文献、Lhx2はゼブラフィッシュの前脳の成長におけるSix3の活性を媒介する(Lhx2 Mediates the Activity of Six3 in Zebrafish Forebrain Growth)、Dev. Biol., 287(2): 456-468(2005)を参照されたい。頭部特異的遺伝子発現は、RNAのケージ解除の代わりに、上の実施例2に記載のインビボリポフェクション法によって実施した。日本特許第2002-315576号、及びAndoらの文献、ゼブラフィッシュ胚におけるケージ化RNA/DNAを用いた光媒介遺伝子活性化(Photo-mediated Gene Activation Using Caged RNA/DNA in Zebrafish Embryos)、Nat. Genet., 28, 317-325(2001)を参照されたい。基本原理は、次の通りである:機能的関連を有することが示唆される2つの遺伝子のうちの1つ(A)が上の実施例3に記載の方法によってノックダウンされている胚を受精後6時間(原腸期)まで培養し、この胚の将来前脳になる領域で、もう1つの遺伝子(B)の発現を上の実施例2に記載のインビボリポフェクション法によって誘導する。受精後24時間以内に、Aをノックダウンした効果がレスキューされるのに対し、Bをノックダウンした効果がAとBの反対の組合せによってレスキューされない場合、Aは機能的にBの上流にあると決定される。
(6.5 実施例5−免疫組織化学)
ゼブラフィッシュの初期ニューロンの抗体染色を以下の技法によって実施した。受精後24〜28時間の胚を、4%パラホルムアルデヒド/リン酸バッファー(pH 8.0)中で、4℃で12時間固定した。リン酸バッファーで4回洗浄した後(この場合、各洗浄は15分間行なう)、ブロッキングを、0.5%Triton X-100/リン酸バッファーに溶解した5%新生ヤギ血清中で、常温で1時間実施した。一次抗体反応を、同じ溶液に1:1000で希釈したモノクローナル抗アセチル化チューブリン抗体を用いて、4℃で12時間実施した。次いで、この胚をリン酸バッファーで同様に洗浄した後、一次抗体反応で適用された条件と同じ条件下でAlexa Fluoro 488(Molecular Probes)とコンジュゲートされた抗マウス抗体を用いて、二次抗体反応を実施した。その後、この胚をリン酸バッファーで洗浄し、30%/50%/70%グリセロール(リン酸バッファーに溶解したもの)で透明化し、その後、488nmで励起しながら、蛍光顕微鏡で観察した。
(6.6 実施例6−ホールマウントインサイチュハイブリダイゼーション)
このプロセスは、基本的に、Thisseらの技法に従って実施した。ホールマウントゼブラフィッシュ胚に対する高分解能インサイチュハイブリダイゼーション(High-resolution In Situ Hybridization to Whole-mount Zebrafish Embryos)、Nat. Protcol., 3(1)59-69,(2008)を参照されたい。相違点は、5mg/mlのトルラ酵母RNAをプローブハイブリダイゼーション溶液中のブロッカーとして用いること、及び0.5%のブロッキング試薬(Roche)を抗体反応溶液中のブロッカーとして用いることであった。プローブとして用いられた遺伝子(six3.2遺伝子、emx1遺伝子、pax2.1遺伝子、foxg1遺伝子、及びotx2遺伝子)のcDNAは、原提供者からの寄贈品であった。lhx2遺伝子のプローブとしては、Andoによって最初にクローニングされたものを用いた。CRBN遺伝子及び関連遺伝子のプローブについては、プライマーをゼブラフィッシュのESTデータベースに基づいて設計し、プローブをcDNAライブラリーからクローニングした。
ゼブラフィッシュBRD7 cDNAを、24時間胚から抽出された全RNAから合成された逆転写された鋳型のプールからクローニングした。ReverTra Ace(登録商標) qPCR RT Kit(Toyobo, Japan)によって合成された1.7μgのランダム及びオリゴ-dTプライムドcDNAを鋳型として用いた。BRD7遺伝子をpCS2+ベクターにクローニングするためのプライマーは次の通りであった:フォワード
(HindIII認識配列に下線が付されている);及びリバース
(XbaI認識配列に下線が付されている)。増幅された断片をpCS2+ベクターのHindIII/XbaI部位にクローニングした。プローブは、ジゴキシゲニン標識ミックス(Roche)を用いて、HindIII線状化ベクターからT7 RNAポリメラーゼによって合成された。
ゼブラフィッシュIkaros cDNAを、24時間胚から抽出された全RNAから合成された逆転写された鋳型のプールからクローニングした。ReverTra Ace(登録商標) qPCR RT Kit(Toyobo, Japan)によって合成された1.7μgのランダム及びオリゴ-dTプライムドcDNAを鋳型として用いた。Ikaros遺伝子をpCS2+ベクターにクローニングするためのプライマーは次の通りであった:フォワード
(下線;EcoRI認識配列);リバース
(下線;XhoI認識配列)。増幅された断片をpCS2+ベクターのEcoRI/XhoI部位にクローニングした。プローブは、ジゴキシゲニン標識ミックス(Roche)を用いて、EcoRI線状化ベクターからT7 RNAポリメラーゼによって合成された。
(6.7 実施例7−細胞移植)
適当な濃度のローダミンデキストラン(分子量10,000)及び600ng/μlの最終濃度のCRBN RNAをヌクレアーゼ非含有水に溶解させ、その後、上の実施例1に記載の方法の条件下で、1細胞期のゼブラフィッシュ胚に注射した。得られた胚は、ドナーとしての役割を果たした。ドナーの受精から3〜4時間後、10〜50個の細胞を、蛍光顕微鏡観察下で、ガラスマイクロキャピラリーによって吸引した。これらの細胞を同じ段階の宿主胚の動物極に移植した。いかなる修飾も加えずに宿主胚を2日間培養した後、CRBNを発現するドナー由来細胞の分化の局在を蛍光顕微鏡下で観察した。また、陰性対照として、胚発生に影響がないと考えられる緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現させた細胞を同じ条件下で移植し、分化の局在を実験胚と対照胚で比較した。
(6.8 実施例8−インビトロ反応系を用いたCRBNのユビキチンリガーゼ活性の検出及び測定)
このプロセスは、基本的に、Groismanらの方法に従って実施した。Groismanらの文献、Cell, 113:357-367(2003);Groismanらの文献、Genes Dev., 20:1429-1434(2006)を参照されたい。まず、CRBN及び結合タンパク質(CRBN複合体と呼ぶ)を、M2 FLAGアガロースビーズ(SIGMA)を用いて、FLAGエピトープタグと融合したCRBNを発現する哺乳動物細胞の細胞ライセート溶液から精製した。その後、このように精製されたCRBN複合体を、Uba1(E1)、UbcH5b(E2)、及び組換えGST融合ユビキチン(Ub)タンパク質を含む水溶液と混合し、ATPを添加した後、混合物を30〜37℃で2時間放置しておいた。その後、反応をSDSによって終結させ、結合タンパク質の自己ユビキチン化及びユビキチン化をポリアクリルアミドゲル電気泳動及び免疫ブロッティングによって可視化し、それにより、ユビキチンリガーゼ活性を検出及び測定した。
(6.9 実施例9−生きた細胞を用いたCRBNのユビキチンリガーゼ活性の検出及び測定)
このプロセスは、基本的に、Ohtakeらの方法に従って実施した。Ohtakeらの文献、Nature, 446:562-566(2007)を参照されたい。プロテアソーム阻害剤であるMG132を、FLAGエピトープタグと融合したCRBNを発現する哺乳動物細胞に適用し、細胞を静置しておいた。その後、これらの細胞を破壊し、得られた細胞ライセート溶液から、FLAGを精製し、CRBNを抽出した。その後、免疫ブロッティングを、上記と同様の、しかし、より厳しい条件下で実施し、それにより、自己ユビキチン化を検出及び測定した。
(6.10 実施例10−グリア細胞及びセロトニン産生細胞の蛍光染色)
2日齢のゼブラフィッシュを用いた(グリア細胞染色及びセロトニン産生細胞染色のために、それぞれ、受精後56時間及び49時間のゼブラフィッシュを用いた)。ゼブラフィッシュを4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、その後、リン酸バッファー(PBS)で洗浄し、その後、表皮の部分消化のために、10μg/mlのプロテアーゼKで処理した。消化反応の後、ゼブラフィッシュをPBST(PBS+0.5%Triton X-100)で20分間洗浄し、その後、PFAで再び固定した。固定されたゼブラフィッシュを、PBSTで、室温で1時間洗浄し、その後、PBST+5%ヤギ血清を用いてブロッキングした。得られた標本をモノクローナル抗グリア抗体(zrf-1/zrf-2)又はウサギ抗セロトニン抗体と4℃で一晩(12〜18時間)反応させた。その後、標本をPBST+5%ヤギ血清で、室温で1時間洗浄し、抗体の代わりにヤギ抗マウスIgG抗体(グリア細胞染色用のCy-2コンジュゲート)又はヤギ抗ウサギIgG抗体(セロトニン産生細胞染色用のCy-5コンジュゲート)を4℃で一晩(12〜18時間)用いることにより、二次抗体反応を実施した。その後、標本を、PBSTで、室温で1時間洗浄した。洗浄後、PBSTを30%、50%、及び70%グリセロール/PBSに交換し、ゼブラフィッシュ全体をスライドガラス上で標本化して、プレパラートを得た。蛍光をCy-2及びCy-5の励起波長下で観察し、グリア細胞又はセロトニン産生細胞の分布を記録した。グリア細胞は、ゼブラフィッシュの側面から観察したが、セロトニン産生細胞は、正中線に沿った細胞の分布を観察するために、背側から撮影した。
(6.11 実施例11−CRBN発現細胞の間脳脳室への移植)
CRBNをコードするRNA(700ng/μl)と2%ローダミンデキストランの混合溶液を、受精直後の1細胞期のゼブラフィッシュ胚に注射した。この胚を受精後4時間まで培養し、10〜20個の細胞を吸引キャピラリーによって回収し、これを受精後30時間の胚の間脳脳室に注射し、それにより、細胞を移植した。移植を受けたゼブラフィッシュを受精後3日までゼブラフィッシュ生理食塩水(E3リンガー)中で飼育し、その後、4%パラホルムアルデヒドで固定した。常法に従って、一次抗体反応及び二次抗体反応を、それぞれ、モノクローナル抗アセチル化チューブリン抗体及びAlexa Fluor(登録商標)(488nmで励起される)とコンジュゲートされた抗マウスIgG抗体を用いて実施した。その後、蛍光標識された神経細胞軸索を観察しながら、ローダミンデキストラン(543nmで励起される)で標識された移植細胞の分布を調べた。
(6.12 実施例12−Lhx2及びCRBNの機能的階層の決定)
正常胚(図1、左上のパネル)と比較して、lhx2遺伝子ノックダウン胚(図1、左下のパネル)で、脳の縮小が観察された。一方、CRBN遺伝子過剰発現胚(図1、右上のパネル)と同様に、lhx2遺伝子がノックダウンされている胚、及びCRBN遺伝子が過剰発現されている胚で、脳の拡大が観察された(図1、右下のパネル)。この観察から、CRBNがLhx2の下流で機能し、中枢神経幹細胞の増殖及びこれらの細胞の神経細胞への分化を直接誘導するものと考えられる。
(6.13 実施例13−CRBN過剰発現実験)
大脳でのCRBNによる神経幹細胞への分化の誘導を確認するために、CRBN過剰発現実験をゼブラフィッシュ胚の前脳及び中脳で実施した。結果として、両方の脳は、その形状を保持しながら、体積が約1.5倍拡大した(図2、右)。その上、脳のニューロンネットワークは形態学的に正常であった(図2、右)。
(6.14 実施例14−CRBN過剰発現細胞の移植実験)
まず、CRBNが過剰発現されるように、CRBNをコードするmRNA及び蛍光物質(ローダミン)をドナー胚に一緒に注射した。得られた胞胚を別の個体に移植し、脳室に分布したドナー由来細胞の分化を蛍光顕微鏡下で観察した。結果として、移植されたドナー由来細胞は、ゼブラフィッシュの終脳組織である嗅球へと顕著に分化した(図3、矢尻)。これは、CRBN発現細胞が脳室に分布すると、それらが神経幹細胞へと分化し、吻側移動経路(RMS)と呼ばれる細胞移動経路に沿って移動し、哺乳動物で大脳皮質が発生する背側終脳の脳組織に分化したことを示している。
(6.15 実施例15−インビトロ反応系を用いたCRBNのユビキチンリガーゼ活性の検出及び測定)
CRBN(FH-CRBN複合体)を、Uba1(ユビキチン活性化酵素)、UbcH5b(ユビキチン転移酵素)、及び組換えGST融合ユビキチンタンパク質(Ub/E1/E2)を含む水溶液に添加したとき、CRBNが存在しなければ検出されないタンパク質が検出された(図4、左、中央、及び右の画像のレーン2)。タンパク質のユビキチン化のためには、ユビキチンの他に、3種類の酵素、すなわち、ユビキチン活性化酵素、ユビキチン転移酵素、及びユビキチンリガーゼが、通常必要とされる。ユビキチンリガーゼが存在しなかったので、ユビキチン化タンパク質は、左、中央、及び右の画像のレーン1で検出されなかった。一方、左、中央、及び右の画像のレーン2では、おそらくは、ユビキチン化タンパク質を産生するユビキチンリガーゼとしてのCRBNの機能のために、ユビキチン化タンパク質が電気泳動によって検出された。
(6.16 実施例16−生きた細胞を用いたCRBNユビキチンリガーゼ活性の検出及び測定)
MG132を添加したとき、CRBN含有タンパク質を表すいくつかのバンドが検出された(図5、右のレーン)。対照的に、MG132を添加しなかったとき、CRBN含有タンパク質を表すバンドはほとんど検出されなかった(図5、左のレーン)。
これらの結果は、生きた細胞のCRBNが他の因子と協調して自己ユビキチン化を受け、様々な分子量のユビキチン化タンパク質を生じることを示している。しかしながら、それらのほとんどは、細胞内プロテアソームによって分解されると考えられる。図5の左のレーンでは、いくつかのバンドが検出されたが、これは、プロテアソームがMG132によって阻害され、自己ユビキチン化によって産生されたタンパク質が残存することが可能になり、それにより、いくつかのバンドの検出がもたらされたことを示している。対照的に、図5の右のレーンでは、おそらくは、産生されたタンパク質のほとんどがプロテアソームによって分解されたために、バンドはほとんど検出されなかった。
(6.17 実施例17−グリア細胞及びセロトニン産生細胞の蛍光染色)
CRBN過剰発現個体(図6及び7、右の写真を参照)では、グリア細胞(図6参照)及びセロトニン産生細胞(図7参照)が増加する一方で、正常な空間的分布が維持された。これは、CRBNが増殖するように及び細胞を分化させるように作用する一方で、脳の空間パターンを正常に認識することを意味している。
(6.18 実施例18−CRBN発現細胞の間脳脳室への移植)
CRBNを発現しない細胞を移植したとき、これらの細胞は脳組織に分化しなかったが(図8A〜8D)、CRBNを発現する細胞を移植したとき、これらの細胞は脳組織に分化した(図8E〜8H)。適当な濃度のローダミンデキストラン(分子量10,000)及び600ng/μlの最終濃度のCRBN RNAが溶解しているヌクレアーゼ非含有水を、上記の方法の条件下で、1細胞期のゼブラフィッシュ胚に注射し、得られた胚はドナーとしての役割を果たした。ドナーの受精から3〜4時間後、10〜50個の細胞を、蛍光顕微鏡観察下で、ガラスマイクロキャピラリーによって吸引した。これらの細胞を同じ段階の宿主胚の動物極にさらに移植した。いかなる修飾も加えずに宿主胚を2日間培養した後、CRBNを発現するドナー由来細胞の分化の局在を蛍光顕微鏡下で観察した。また、陰性対照として、胚発生に影響を及ぼさないと考えられる緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現させた細胞を同じ条件下で移植し、分化の局在を実験胚と対照胚で比較した。
(6.19 実施例19−BRD7のノックダウンはゼブラフィッシュ胚の脳を拡大させる)
実施例19は、BRD7のノックダウンがゼブラフィッシュ胚の脳を拡大させることを示している。脳の成長に対するBRD7のアンタゴニストの効果を調べるために、BRD7をゼブラフィッシュ胚でノックダウンするか又は過剰発現させた。BRD7のノックダウンは、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド(AMO)のマイクロインジェクションによって実施した。BRD7の過剰発現は、合成されたキャップ化mRNAのマイクロインジェクションによって実施した。窒素ガス圧マイクロインジェクターIM 300(Narishige)を用いて、AMO又はキャップ化mRNAを1細胞期胚に導入した。マイクロインジェクションの条件は次の通りである:ガス圧は約15ピコシーメンスであり;放出期間は、注射1回当たり約30〜約50ミリ秒であり;AMO及びキャップ化mRNAの濃度は、それぞれ、ヌクレアーゼ非含有水中、400ng/μl及び250ng/μlであった。キャップ化mRNAは、mMESSAGE mMachine(登録商標)インビトロ転写キット(Ambion)を用いて、pCS2+プラスミドにクローニングされたcDNAからインビトロで合成された。
これらの胚の脳を、形態及び体積について、磁気共鳴イメージング(MRI)によって調べた。図9A、9B、及び9Cは、それぞれ、未処理ゼブラフィッシュ胚、BRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚、及びBRD7過剰発現ゼブラフィッシュ胚の顕微鏡写真を示している。図9D、9E、及び9Fは、それぞれ、未処理ゼブラフィッシュ胚、BRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚、及びBRD7過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳領域の蛍光顕微鏡写真を示している。これらの図に示されているように、BRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚は、未処理胚よりも大きい頭部を有していた。対照的に、BRD7過剰産生をもたらすBRD7 mRNAが注射された胚は、未処理胚よりも小さい頭部及び眼を発生させた。脳全体(終脳から脊髄まで)の取り込みMRI画像の横断面図による脳の様々な領域の体積の測定により、脳の全ての部分(終脳、間脳、中脳、大脳、及び脊髄)がBRD7ノックダウン又はBRD7過剰発現によって影響を受けることが明らかなった。BRD7ノックダウン魚の脳全体の体積は、未処理魚の脳全体の体積よりもずっと大きかったが、BRD7過剰発現魚については、脳の体積はより小さかった。興味深いことに、終脳の体積(中脳と間脳の中間の領域の断面積)は、BRD7ノックダウン魚で比例的に変化した。
(6.20 実施例20−BRD7のノックダウンはゼブラフィッシュ胚でPou5f1(Oct3/4)、Klf4、c-Myc、及びHuC(Elav13)を上方調節する)
ゼブラフィッシュ胚におけるPou5f1(Oct3/4)、Klf4、c-Myc、及びHuC(Elav13)の発現をインサイチュハイブリダイゼーションによって解析した。胚を、4%パラホルムアルデヒドで、室温で1時間固定し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)ですすいだ。固定された胚を100%メタノールで再固定し、-80℃で12時間以上置いた。この胚をPBSですすぐことにより脱固定し、皮膚をプロナーゼ(2mg/ml)で消化し、その後、再固定及び脱固定し、HYB*バッファー(50%ホルムアミド、5×SSC、10mMクエン酸、0.1%Tween 20)中で15分間、及びHYB+(5mg/mlトルラ(酵母)RNA、50μg/mlヘパリンとしてHYB*に添加されたもの)中で1時間、65℃でプレハイブリダイズさせた。1ng/μlのDIG(ジゴキシゲニン)標識プローブを添加した後、ハイブリダイゼーションを65℃で一晩実施した。ハイブリダイゼーション後、胚を、2×SSC中の50%ホルムアミドにより30分間(2回)、2×SSCにより15分間、0.2×SSCにより30分間(2回)、65℃で洗浄した。その後、ブロッキング処理を、PBSTw(PBS+0.1%Tween 20)中の0.5%精製カゼインにより、室温で1時間行った。その後、免疫染色を、PBSTw中の0.5%精製カゼイン中の抗DIG Fab-AP断片の1/4000希釈液中で、室温で4時間実施した。
PBSTwで90分間洗浄した後、染色を、アルカリホスファターゼの基質(ニトロブルーテトラゾリウム及び5-ブロモ 4-クロロ 3-インドリルホスフェート)の存在下、100mM Tris pH 9.5、50mM MgCl2、100mM NaCl、及び0.1%Tween-20中で実施した。反応バッファーをPBSTwへと速やかに交換することにより、反応を停止させ、グリセロール系列(PBS中、30%、50%、及び70%)で清浄化した。
図10に示されているように、BRD7のノックダウンは、ゼブラフィッシュ胚におけるPou5f1(Oct3/4)、Klf4、c-Myc、及びHuC(Elav13)の発現を活性化させる。図10G及び10Iは、それぞれ、10hpf及び11hpfでのインサイチュハイブリダイゼーションによる未処理ゼブラフィッシュ胚におけるPou5f1(Oct3/4)発現を示している。図10H及び10Jは、それぞれ、10hpf及び11hpfでのインサイチュハイブリダイゼーションによるBRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚におけるPou5f1(Oct3/4)発現を示している。示されているように、後脳の第2及び第4菱脳節におけるPou5f1(Oct3/4)の発現は、10hpf及び11hpfのBRD7ノックダウン胚で増加した。
図10K及び10Lは、18hpfでのインサイチュハイブリダイゼーションによる未処理ゼブラフィッシュ胚及びBRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚におけるKlf4発現を示している。示されているように、Klf4の発現も、BRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚の神経管の吻側部分において18hpfで増加した。
図10M及び10Nは、30hpfでのインサイチュハイブリダイゼーションによる未処理ゼブラフィッシュ胚の内側領野及び外側領野の視蓋増殖帯並びに網膜の毛様体辺縁部(CMZ)の最末梢領域におけるc-Mycの発現を示している。図10O及び10Pは、30hpfでのインサイチュハイブリダイゼーションによるBRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚の内側領野及び外側領野の視蓋増殖帯並びに網膜の毛様体辺縁部(CMZ)の最末梢領域におけるc-Mycの発現を示している。示されているように、c-Mycの発現は、神経幹細胞及び始原細胞が存在する内側領野及び外側領野の視蓋増殖帯、並びに網膜幹細胞が局在する網膜の毛様体辺縁部(CMZ)の最末梢領域において30hpfで明らかに増加した。
図10Q及び10Tは、11hpfでのインサイチュハイブリダイゼーションによる未処理ゼブラフィッシュ胚の脳及び脊髄におけるHuC(Elav13)発現を示している。図10R及び10Uは、11hpfでのインサイチュハイブリダイゼーションによるCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳及び脊髄におけるHuC発現を示している。図10S及び10Vは、11hpfでのインサイチュハイブリダイゼーションによるBRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚の脳及び脊髄におけるHuC発現を示している。示されているように、神経始原細胞マーカー遺伝子であるHucの発現は、CRBN過剰発現胚及びBRD7ノックダウン胚の脳及び脊髄で増加した。未処理ゼブラフィッシュ胚及びBRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚の脳及び脊髄のHuC陽性神経始原細胞を15hpf及び16hpfでのインサイチュハイブリダイゼーションによっても解析した。図11Bに示されているように、BRD7ノックダウン胚の脳及び脊髄のHuC陽性神経始原細胞の数は15hpfで増加した。図11Cに示されているように、終脳ニューロン及び脊髄ニューロンの数は、16hpfのBRD7ノックダウン胚で増加した。
(6.21 実施例21−BRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚とCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚との比較)
BRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚は、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚と同様の表現型を示す。例えば、未処理ゼブラフィッシュ胚、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚、及びBRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚におけるHuCの発現を定量的PCRによって比較した。定量的PCRは次のように実施した: ReverTra Ace qPCR RT Kit(TOYOBO, Japan)によって(鋳型として)合成された1.7μgのランダムヘキサン及びオリゴ-dTプライムドcDNAをTHUNDERBIRD(商標) SYBR(登録商標) qPCR Mix(Toyobo, Japan)による逆転写に用いた。0.25mMの各々のフォワードプライマー及びリバースプライマーを反応に用い、その場合、フォワードプライマーの配列は
であり;リバースプライマーの配列は
であった。図11Aに示されているように、CRBN過剰発現胚及びBRD7ノックダウン胚におけるHuCの発現レベルは類似しており、どちらも、11hpfの未処理胚におけるHuCのレベルの1.7倍にまで増加した。
同様に、下の実施例23及び図13に示されているように、Pou5f1、Zic3、及びNanogの発現レベルは、11hpfのCRBN過剰発現又はBRD7ノックダウン胚で増加した。対照的に、Pou5f1、Zic3、及びNanogの発現は、同じ段階のCRBNノックダウン胚、BRD7過剰発現胚、又はサリドマイド処理胚で減少した。
(6.22 実施例22−BRD7ノックダウンゼブラフィッシュの脳の発達中のサリドマイドに対する抵抗性の決定)
サリドマイドとBRD7の機能的関係を解析するために、サリドマイドで処理されたBRD7ノックダウンゼブラフィッシュの脳の発達を調べ、サリドマイドで処理された正常ゼブラフィッシュの脳の発達と比較した。図12に示されているように、BRD7ノックダウンゼブラフィッシュは、脳の発達中のサリドマイド処理に対して抵抗性である。図12A及び12Bは、400μMのサリドマイドで処理された正常ゼブラフィッシュを示している。図12C及び12Dは、400μMのサリドマイドで処理されたBRD7ノックダウンゼブラフィッシュを示している。図12A'及び12C'は、400μMのサリドマイドで処理された正常ゼブラフィッシュの脳領域を示している。図12B'及び12D'は、400μMのサリドマイドで処理されたBRD7ノックダウンゼブラフィッシュの脳領域を示している。示されているように、正常な魚は、400μMのサリドマイドの存在下で脳の発達の遅滞を示した(図12A、12B、12A'、及び12C')。対照的に、BRD7ノックダウン幼生の脳は、サリドマイド溶液中でほぼ正常に発達した(図12C、12D、12B'、及び12D')。サリドマイド処理あり又はなしでの、正常ゼブラフィッシュ及びBRD7ノックダウンゼブラフィッシュの体長に対する脳の厚さのパーセンテージも測定した。図12Eに示されているように、サリドマイド処理なしでは、BRD7ノックダウン幼生の脳のサイズは、通常のE3培地中の正常な幼生の脳のサイズの120.7%であり、BRD7ノックダウン幼生の脳のサイズは、400μMのサリドマイド中の正常な幼生の脳のサイズの140.0%である(n=12)。サリドマイド中でインキュベートされたBRD7ノックダウン幼生の脳のサイズは、サリドマイドの非存在下でインキュベートされたBRD7ノックダウン幼生の脳のサイズの98.8%である。
(6.23 実施例23−未処理ゼブラフィッシュ、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ、及びBRD7ノックダウンゼブラフィッシュにおけるPou5f1、Nanog、Zic3、及びSox2の発現レベルの決定)
11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚、CRBNノックダウンゼブラフィッシュ胚、BRD7過剰発現ゼブラフィッシュ胚、BRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚、及びサリドマイド処理ゼブラフィッシュ胚におけるPou5f1、Nanog、Zic3、及びSox2の発現を定量的PCRによって解析した。図13に示されているように、Pou5f1の発現は、11hpfのCRBN過剰発現及びBRD7ノックダウン胚で有意に増加した。Zic3(Pou5f1標的遺伝子)及び別の多能性遺伝子Nanogの発現もCRBN過剰発現及びBRD7ノックダウン胚で増加した。対照的に、Pou5f1、Zic3、及びNanogの発現は、同じ段階のCRBNノックダウン胚、BRD7過剰発現胚、及びサリドマイド処理胚で減少した。
(6.24 実施例24−未処理ゼブラフィッシュ及びBRD7ノックダウンゼブラフィッシュにおけるAscl1、Pou3f3a、及びMyt1laの発現レベルの決定)
Ascl1、Brn2(Pou3f2)、及びMyt1lという3つの遺伝子のプールの発現は、胚性線維芽細胞及び出生後線維芽細胞を機能的ニューロンへと直接的に再プログラミングするのに十分である。例えば、Vierbuchen及びWernigの文献、Nat Biotechnol. 29:892-907(2011)を参照されたい。そこで、Ascl1、Pou3f3a、Pou3f2b、及びMyt1laの発現を、定量的PCRにより、未処理ゼブラフィッシュ胚及びBRD7ノックダウンゼブラフィッシュ胚で解析した。図14に示されているように、BRD7のノックダウンは、28hpfでAscl1、Pou3f3a、及びMyt1laの発現を増加させ、BRD7のノックダウンは、Ascl1、Myt1l、及びBrn2(Pou3f2b)の発現を増加させた。
(6.25 実施例25−Ikarosのノックダウンはゼブラフィッシュ胚の脳を拡大させる)
実施例25は、Ikarosのノックダウンがゼブラフィッシュ胚の脳を拡大させることを示した。脳の成長に対するIkarosのアンタゴニストの効果を調べるために、Ikarosをゼブラフィッシュ胚でノックダウンするか又は過剰発現させた。Ikarosのノックダウンは、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド(AMO)のマイクロインジェクションによって実施した。Ikarosの過剰発現は、合成されたキャップ化mRNAの注射によって実施した。AMO又はキャップ化mRNAを、窒素ガス圧マイクロインジェクターIM 300(Narishige)を用いることによって、1細胞期胚に導入した。マイクロインジェクションの条件は次の通りである:ガス圧は約15ピコシーメンスであり;放出期間は、注射1回当たり約30〜約50ミリ秒であり;AMO及びキャップ化mRNAの濃度は、それぞれ、ヌクレアーゼ非含有水中、400ng/μl及び250ng/μlであった。キャップ化mRNAは、mMESSAGE mMachine(登録商標)インビトロ転写キット(Ambion)を用いて、pCS2+プラスミドにクローニングされたcDNAからインビトロで合成された。
これらの胚の脳を、形態及び体積について、磁気共鳴イメージング(MRI)によって調べた。図15A、15B、及び15Cは、それぞれ、55hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚、及びIkaros過剰発現ゼブラフィッシュ胚の顕微鏡写真を示している。これらの図に示されているように、Ikarosノックダウン魚は、未処理胚よりも大きい頭部を有していた。対照的に、Ikaros過剰産生をもたらすIkaros mRNAが注射された胚は、未処理胚よりも小さい頭部及び眼を発生させた。脳全体(終脳から脊髄まで)の取り込みMRI画像の横断面図による脳の様々な領域の体積の測定により、脳の全ての部分(終脳、間脳、中脳、大脳、及び脊髄)がIkarosノックダウン又はIkaros過剰発現によって影響を受けることが明らかなった。Ikarosノックダウン魚の脳全体の体積は、未処理魚の脳全体の体積よりもずっと大きかったが、Ikaros過剰発現魚については、脳の体積はより小さかった。興味深いことに、終脳の体積(中脳と間脳の中間の領域の断面積)は、Ikarosノックダウン魚で比例的に変化した。
(6.26 実施例26−Ikaros変異体を過剰発現するゼブラフィッシュ胚における脳の発達の決定)
ゼブラフィッシュ胚の脳の発達に対する2つのIkaros変異体の過剰発現の効果を解析した。2つの新しいIkaros変異体ikzf1-006及びikzf1-007を単離した。
Ikzf1-006はエキソン7を欠いており、ikzf1-007はエキソン4及び7を欠いている。ikzf1-006 Ikaros変異体のヌクレオチド配列は次の通りであり(CDS:cDNA配列)、エキソンが交互に記載されている:
ikzf1-006 Ikaros変異体翻訳産物のアミノ酸配列は次の通りである(495アミノ酸;54.45kDa;エキソン7が欠如している):
ikzf1-007 Ikaros変異体のヌクレオチド配列は次の通りであり(CDS:cDNA配列)、エキソンが交互に記載されている:
ikzf1-007 Ikaros変異体翻訳産物のアミノ酸配列は次の通りである(484アミノ酸;54.24kDa;エキソン4及び7が欠如している):
図16A、16B、16C、及び16Eは、それぞれ、22hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚、ikzf1-007(Ikaros変異体)過剰発現ゼブラフィッシュ胚、及びikzf1-006(Ikaros変異体)過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳の顕微鏡写真を示している。図16D及び16Fは、それぞれ、22hpfのikzf1-007過剰発現ゼブラフィッシュ胚及びikzf1-006過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳の蛍光顕微鏡写真である。これらの写真は同じ倍率で撮影された。示されているように、22hpfで、融合型Ikzf1:EGFPタンパク質の過剰発現は、ikzf1-006過剰発現胚とikzf1-007過剰発現胚の両方で脳の発達の低下を引き起こした。前脳は、終脳、間脳、及び中脳の不完全な成長により切形であった(図16C〜16F参照;16D及び16FはEGFP蛍光画像である)。対照的に、Ikarosのノックダウンは、図16Bに示されているような、巨頭症を引き起こした。
(6.27 実施例27−Ikarosノックダウンゼブラフィッシュにおける細胞増殖及び神経分化の解析)
一次ニューロン及び増殖性細胞の数を27hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚における免疫染色によって解析した。図17A及び17Dは、それぞれ、抗アセチル化チューブリン抗体を用いた免疫染色による27hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚のCNSの一次ニューロンを示している。図17B及び17Eは、それぞれ、抗ホスホ-ヒストンH3抗体を用いた免疫染色による27hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚のCNSの増殖性細胞を示している。図17Cは、図17Aと図17Bの重ね合わせ画像を示している。図17Fは、図17Dと図17Eの重ね合わせ画像を示している。示されているように、免疫染色画像から、増殖性細胞の数と一次ニューロンの数が両方とも、Ikarosノックダウン胚で増加することが示された。一次ニューロンの全体的な分布は、示されている通り、正常であった(スケールバー:50μm)。
リン酸化ヒストンH3陽性細胞の数を、27hpfで、レーザー共焦点顕微鏡の積層された焦点面で計数した。終脳、間脳、及び中脳におけるH3陽性細胞の平均数を未処理胚とIkarosノックダウン胚で統計的に比較した(各実験でn=3)。図18に示されているように、終脳、間脳、及び中脳領域におけるH3陽性増殖性細胞の数は全て、27hpfのIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚で増加した。
(6.28 実施例28−Ikarosノックダウンゼブラフィッシュにおける放射状グリア細胞及びセロトニン陽性細胞の数の決定)
Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚における放射状グリア細胞及びセロトニン陽性細胞の数を免疫染色によって解析した。図19A及び19C〜19Eは、54hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚の脳の蛍光顕微鏡写真を示している。図19B及び19F〜19Hは、54hpfのIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚の脳の蛍光顕微鏡写真を示している。細胞を抗放射状グリアマーカー(Zrf-2)抗体(緑)及び抗セロトニン抗体(赤)で免疫染色した。これらの図において、rnは縫線核を表し;RGは放射状グリアを表し;vptは後腹側結節を表し;pは松果器官を表し;CMZは毛様体辺縁部を表す(スケールバー:50μm)。示されているように、放射状グリア細胞及びセロトニン陽性細胞の数は増加したが、その空間的分布はIkarosノックダウン幼生で正常であった。
(6.29 実施例29−Ikarosノックダウンゼブラフィッシュにおける多能性遺伝子の発現レベルの決定)
ゼブラフィッシュ胚におけるPou5f1(Oct3/4)、c-Myc、Sox2、及びNanogの発現を定量的PCRによって解析した。定量的RT(qRT)-PCRは次の通りに実施した: ReverTra Ace qPCR RT Kit(TOYOBO, Japan)によって(鋳型として)合成された1.7μgのランダムヘキサマー及びオリゴ-dTプライムドcDNAをTHUNDERBIRD(商標) SYBR(登録商標) qPCR Mix(Toyobo, Japan)による逆転写に用いた。0.25mMの各々のフォワードプライマー及びリバースプライマーを反応で用いた。c-Mycのプライマーの配列は次の通りである:フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
である。sox2のプライマーの配列は次の通りである:フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
である。nanogのプライマーの配列は次の通りである:フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
である。
図20は、28hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚における定量的PCRによるPou5f1、c-Myc、Sox2、及びNanog発現レベルを示したヒストグラムである。示されているように、Ikarosノックダウンは、ゼブラフィッシュ胚におけるc-Myc、Sox2、及びNanogの発現を活性化させた。
(6.30 実施例30−Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ及びIkaros過剰発現ゼブラフィッシュにおけるAscl1、Pou3f3a、Pou3f2b、及びMyt1laの発現レベルの決定)
Ascl1、Brn2(Pou3f2)、及びMyt1laという3つの遺伝子のプールの発現は、胚性線維芽細胞及び出生後線維芽細胞を機能的ニューロンへと直接的に再プログラミングするのに十分である。例えば、Vierbuchen及びWernigの文献、Nat Biotechnol. 29:892-907(2011)を参照されたい。そこで、Ascl1、Pou3f3a、Pou3f2b、及びMyt1laの発現を、定量的PCRにより、28hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚、及びIkaros過剰発現ゼブラフィッシュ胚で解析した。Ascl1aの増幅のためのプライマー配列は次の通りである:フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
である。Pou3f2bの増幅のためのプライマー配列は次の通りである:フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
である。Myt1laの増幅のためのプライマー配列は次の通りである:フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
である。図21は、28hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚における定量的PCRによるAscl1、Pou3f3a、Pou3f2b、及びMyt1laの発現レベルを示したヒストグラムである。示されているように、Ikarosのノックダウンは、28hpfのゼブラフィッシュ胚におけるAscl1、Pou3f3a、Pou3f2b、及びMyt1laの発現を増加させ、Ikarosの過剰発現は、28hpfのゼブラフィッシュ胚におけるAscl1、Pou3f3a、Pou3f2b、及びMyt1laの発現を減少させた。
(6.31 実施例31−Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュにおけるAscl1及びPou3f2bの発現レベルの決定)
CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚及びIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚におけるAscl1a及びPou3f2bの発現をインサイチュハイブリダイゼーションによって解析した。胚を、4%パラホルムアルデヒドで、室温で1時間固定し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)ですすいだ。固定された胚を100%メタノールで再固定し、-80℃で12時間以上置いた。この胚をPBSですすぐことにより脱固定し、皮膚をプロナーゼ(2mg/ml)で消化し、その後、再固定及び脱固定し、HYB*バッファー(50%ホルムアミド、5×SSC、10mMクエン酸、0.1%Tween 20)中で15分間、及びHYB+(5mg/mlトルラ(酵母)RNA、50μg/mlヘパリンとしてHYB*に添加されたもの)中で1時間、65℃でプレハイブリダイズさせた。1ng/μlのDIG(ジゴキシゲニン)標識プローブを添加した後、ハイブリダイゼーションを65℃で一晩実施した。ハイブリダイゼーション後、胚を、2×SSC中の50%ホルムアミドにより30分間(2回)、2×SSCにより15分間、0.2×SSCにより30分間(2回)、65℃で洗浄した。その後、ブロッキング処理を、PBSTw(PBS+0.1%Tween 20)中の0.5%精製カゼインにより、室温で1時間行った。その後、免疫染色を、PBSTw中の0.5%精製カゼイン中の抗DIG Fab-AP断片の1/4000希釈液中で、室温で4時間実施した。
PBSTwで90分間洗浄した後、染色を、アルカリホスファターゼの基質(ニトロブルーテトラゾリウム及び5-ブロモ 4-クロロ 3-インドリルホスフェート)の存在下、100mM Tris pH 9.5、50mM MgCl2、100mM NaCl、及び0.1%Tween-20中で実施した。反応バッファーをPBSTwへと速やかに交換することにより、反応を停止させ、グリセロール系列(PBS中、30%、50%、及び70%)で清浄化した。
図22の上のパネルは、25hpfでのインサイチュハイブリダイゼーションによる未処理ゼブラフィッシュ胚、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚、及びIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚におけるAscl1a発現を示している。図22の下のパネルは、26hpfでのインサイチュハイブリダイゼーションによる未処理ゼブラフィッシュ胚、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚、及びIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚におけるPou3f2b発現を示している。示されているように、Ascl1a及びPou3f2bの発現は、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚及びIkarosノックダウンゼブラフィッシュ胚で増加した。特に、松果体、視床前部、視床、及び視床下部におけるAscl1aの発現は、25hpfのIkarosノックダウン胚で顕著に増加した。Pou3f2bの発現も、26hpfで、間脳、中脳後脳境界、及び小脳原基で増加した。Ascl1a及びPou3f2bでマーキングされた領域は全て、CNSにおける神経幹細胞及び始原細胞の溜まり場である増殖帯に空間的に対応している。
(6.32 実施例32−CRBN過剰発現ゼブラフィッシュにおけるIkarosの発現レベルの決定)
CRBNとIkarosの遺伝的関係性を調べるために、Ikaros発現を、インサイチュハイブリダイゼーションにより、24hpfのCRBN過剰発現胚で解析した。図23A及び23Bは、24hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるインサイチュハイブリダイゼーションによるIkaros発現を示している。図23Cは、24hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚における定量的PCRによるIkaros、Tp53、及びTp63発現を示している。示されているように、Ikarosの発現は、主に、未処理胚の中枢神経系及び中間細胞塊ICMで観察された(図23Aの紫色のシグナル)。対照的に、Ikarosの発現は、CRBN過剰発現胚で有意に減少した(図23B参照)。定量的PCRにより、同じ段階のCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるIkaros発現の激しい減少が確認された(図23C参照)。
(6.33 実施例33−Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ、Ikaros過剰発現ゼブラフィッシュ、Ikaros及びCRBN二重ノックダウンゼブラフィッシュ、並びにCRBNノックダウンゼブラフィッシュにおける脳の発達の決定)
未処理ゼブラフィッシュ、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ、Ikaros過剰発現ゼブラフィッシュ、Ikaros及びCRBN二重ノックダウンゼブラフィッシュ、並びにCRBNノックダウンゼブラフィッシュにおける脳の発達を解析した。図24は、(左から右に)2日目の未処理ゼブラフィッシュ胚、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚、Ikaros過剰発現ゼブラフィッシュ胚、Ikaros及びCRBN二重ノックダウンゼブラフィッシュ胚、並びにCRBNノックダウンゼブラフィッシュ胚の顕微鏡写真を示している。これらの写真は同じ倍率で撮影された。示されているように、Ikarosノックダウン幼生は2日目に拡大した脳を有しており;CRBNノックダウン及びIkaros過剰発現幼生は2日目により小さい脳を有しており;CRBN及びIkaros二重ノックダウン幼生は2日目に拡大した脳を有していた。
(6.34 実施例34−CRBNノックダウンゼブラフィッシュ、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ、並びにIkaros及びCRBN二重ノックダウンゼブラフィッシュにおけるAscl1a及びPou3f2bの発現レベルの決定)
未処理ゼブラフィッシュ胚、CRBNノックダウンゼブラフィッシュ胚、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚、並びにIkaros及びCRBN二重ノックダウンゼブラフィッシュ胚におけるAscl1及びPou3f2bの発現レベルを23hpfで定量的PCRにより解析した。図25は、23hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚、CRBNノックダウンゼブラフィッシュ胚、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚、並びにIkaros及びCRBN二重ノックダウンゼブラフィッシュ胚における定量的PCRによるAscl1及びPou3f2bの発現レベルを示したヒストグラムである。示されているように、Ascl1a及びPou3f2bの発現は、Ikarosノックダウン及びIkaros及びCRBN二重ノックダウンゼブラフィッシュ胚で増加したが、Ascl1a及びPou3f2bの発現は、CRBNノックダウンゼブラフィッシュ胚で減少した。
(6.35 実施例35−Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚、Ikaros及びCRBN二重ノックダウンゼブラフィッシュ胚、並びにCRBNノックダウンゼブラフィッシュ胚における放射状グリア及びセロトニン陽性細胞の数の決定)
Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚、Ikaros及びCRBN二重ノックダウンゼブラフィッシュ胚、並びにCRBNノックダウンゼブラフィッシュ胚における放射状グリア及びセロトニン陽性細胞の数を免疫染色によって解析した。図26A、26B、26C、及び26Dは、それぞれ、55hfpの未処理ゼブラフィッシュ胚、Ikarosノックダウンゼブラフィッシュ胚、Ikaros及びCRBN二重ノックダウンゼブラフィッシュ胚、並びにCRBNノックダウンゼブラフィッシュ胚の脳の蛍光顕微鏡写真を示している。胚を抗放射状グリアマーカー抗体(Zrf-2)(緑)及び抗セロトニン抗体(赤)で免疫染色した。これらの図において、rnは縫線核を表し;RGは放射状グリアを表し;vptは後腹側結節を表し;pは松果器官を表し;CMZは毛様体辺縁部(スケールバー:50μm)を表す。示されているように、放射状グリア細胞及びセロトニン陽性細胞の数は、Ikarosノックダウン魚並びにIkaros及びCRBN二重ノックダウン魚で増加したが、放射状グリア細胞及びセロトニン陽性細胞の数は、CRBNノックダウン魚で減少した。
(6.36 実施例36−CRBNの過剰発現はSox 2、Pou5f1(Oct3/4)、c-Myc、及びKlf4の発現を活性化させる)
ゼブラフィッシュ胚におけるSox2、Pou5f1(Oct3/4)、c-Myc、及びKlf4の発現を、インサイチュハイブリダイゼーションにより、未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚で解析した。過剰発現を次の通りに実施した:1細胞期胚に、インビトロで合成された250ng/μlのキャップ化mRNAをマイクロインジェクションした。キャップ化mRNAを以下の条件に従って細胞質に注射した:ガス圧は15ピコシーメンスであり;放出期間は、注射1回当たり30〜50ミリ秒であった。
CRBNの過剰発現によるSox2、Pou5f1、c-Myc、及びKlf4の発現の活性化をインサイチュハイブリダイゼーションによって観察した。胚を、4%パラホルムアルデヒドで、室温で1時間固定し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)ですすいだ。固定された胚を100%メタノールで再固定し、-80℃で12時間以上置いた。この胚をPBSですすぐことにより脱固定し、皮膚をプロナーゼ(2mg/ml)で消化し、その後、再固定及び脱固定し、HYB*バッファー(50%ホルムアミド、5×SSC、10mMクエン酸、0.1%Tween 20)中で15分間、及びHYB+(5mg/mlトルラ(酵母)RNA、50μg/mlヘパリンとしてHYB*に添加されたもの)中で1時間、65℃でプレハイブリダイズさせた。1ng/μlのDIG(ジゴキシゲニン)標識プローブを添加した後、ハイブリダイゼーションを65℃で一晩実施した。ハイブリダイゼーション後、胚を、2×SSC中の50%ホルムアミドにより30分間(2回)、2×SSCにより15分間、0.2×SSCにより30分間(2回)、65℃で洗浄した。その後、ブロッキング処理を、PBSTw(PBS+0.1%Tween 20)中の0.5%精製カゼインにより、室温で1時間行った。その後、免疫染色を、PBSTw中の0.5%精製カゼイン中の抗DIG Fab-AP断片の1/4000希釈液中で、室温で4時間実施した。
PBSTwで90分間洗浄した後、染色を、アルカリホスファターゼの基質(ニトロブルーテトラゾリウム及び5-ブロモ 4-クロロ 3-インドリルホスフェート)の存在下、100mM Tris pH 9.5、50mM MgCl2、100mM NaCl、及び0.1%Tween-20中で実施した。反応バッファーをPBSTwへと速やかに交換することにより、反応を停止させ、グリセロール系列(PBS中、30%、50%、及び70%)で清浄化した。
胚の形態を対物顕微鏡による微分干渉(DIC)イメージングによって撮影した。図27A及び27Bは、インサイチュハイブリダイゼーションによる、それぞれ、9hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるSox2発現を示している。示されているように、前頭領域(ab)におけるSox2の発現は9phfで増幅した(CRBN過剰発現胚において、79.4%、n=68;図27B参照)。
図27C及び27Dは、インサイチュハイブリダイゼーションによる、それぞれ、10hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるPou5f1発現を示している。示されているように、10hpfで、Pou5f1は、中脳後脳境界の近く、後脳の菱脳節2及び4(r2及びr4)と推定される場所で、並びに軸方向の中胚葉性組織、例えば、内側縦条(mls)で発現していた(図27C参照)。CRBNを過剰発現させたとき、Pou5f1の発現は、特に、初期の脳領域で増加し、増幅した(81.9%、n=72;図27D参照)。
図27E、27G、27I、及び27Kは、インサイチュハイブリダイゼーションによる30hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚におけるc-Myc発現を示している。図27F、27H、27J、及び27Lは、インサイチュハイブリダイゼーションによる30hpfのCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるc-Myc発現を示している。示されているように、30hpfで、c-Mycは、神経幹細胞が存在する内側及び外側領野の視蓋増殖帯(tpz)、及び網膜幹細胞が局在する網膜の周囲辺縁部(CMZ)の最末梢領域で大量に発現していた。m-Mycの発現は、CRBN過剰発現胚の両方の帯域において、明らかにより高く、かつより広範囲に分布していた(CRBN過剰発現胚において、73.5%、n=68;図27F、27H、27J、及び27L参照)。CMZにおいて、c-Myc発現細胞の数はCRBN過剰発現胚で増加し(図27H参照)、視蓋増殖帯におけるc-Myc発現細胞の厚さも増大した(図27L参照)。
図27M及び27Nは、インサイチュハイブリダイゼーションによる、それぞれ、18hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるKlf4発現を示している。示されているように、18hpfで、Klf4は、三叉神経プラコード、孵化腺、及び神経管の吻側部で発現していた。CRBN過剰発現胚において、Klf4発現は、明らかに、三叉神経プラコード(tgp)及び前方神経管(bars)で増加していた(図27N参照)。
(6.37 実施例37−CRBNの過剰発現は放射状グリア細胞及び成熟ニューロンの数を増加させる)
放射状グリア細胞及び成熟ニューロンの数を未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚で解析した。色素沈着を阻止するために、これらの胚を0.003%のN-フェニルチオウレア(PTU)/E3培地中でインキュベートした。これらの胚を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)で、室温で1時間固定し、PBS中に移した。一次抗体とのインキュベーションにより、免疫蛍光標識を幼生に対して実施した。Zrf-1及びZrf-2抗体を用いて、それぞれ、星状細胞のグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)及び放射状グリア細胞を標識した。CNSの放射状グリア細胞は、ニューロン及び希突起神経膠細胞の前駆細胞として、並びにニューロンの移動を支持する足場として機能する。その後、ウサギ又はマウスIgGに対するフルオレセインコンジュゲート化二次モノクローナル抗体(Alexa Fluor、Molecular Probes)を、アセチル化チューブリン、GFAP、及び放射状グリアマーカーの標識に用いた。試料をPBSで洗浄し、グリセロール系列(PBS中、30%、50%、及び70%)で透明化し、その後、スライドガラス上で標本化し、蛍光顕微鏡を用いて、画像を取得した。
図28A及び28Bは、星状細胞のグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)を標識するZrf-1抗体で免疫染色された56hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚の脳領域を示している。図28C及び28Dは、星状細胞のグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)を標識するZrf-1抗体で免疫染色された56hpfのCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳領域を示している。示されているように、56hpfでは、CRBN過剰発現幼生で、Zrf-1によって検出されるGFAP陽性星状細胞の数は、細胞体と線維の両方で増加した(図28C及び28D参照;角括弧はGFAP陽性グリアの細胞体を示している)。
図28E及び28Fは、放射状グリア細胞を標識するZrf-2抗体で免疫染色された56hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚の脳領域を示している。図28G及び28Hは、放射状グリア細胞を標識するZrf-2抗体で免疫染色された56hpfのCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳領域を示している。示されているように、後脳の放射状グリア細胞の数は、CRBN過剰発現幼生で増加した(図28G及び28H参照)。
図28I及び28Jは、網膜のミューラーグリアを標識するZrf-2抗体で免疫染色された48hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の脳領域を示している。ミューラーグリアは、網膜の神経幹細胞としての役割を果たす可能性があり、Zrf-2によって標識された。示されているように、ミューラーグリアの数は、48hpfのCRBN過剰発現幼生で増加し(図28J参照)、眼のサイズがより大きくなるのに比例していた(図28I及び28J参照)。
図28K及び28Lは、それぞれ、33hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の耳胞及び脊髄の神経堤細胞(NCC)におけるSox10を示している。示されているように、33hpfで、Sox10は、耳胞及び脊髄の神経堤細胞(NCC)で発現していた(図28K参照)。この段階で、Sox10陽性NCCは、不特定のニューロン及びグリア細胞を含有していた。これらの細胞は、CRBN過剰発現胚で増加した(図28L参照)。
図28Mは、定量的PCRによる、それぞれ、11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるGfap mRNAレベルを示したヒストグラムである。示されているように、CRBN過剰発現胚におけるGfapは、11hpfの未処理胚におけるレベルの4倍超にまで増加した(図28M参照)。
(6.38 実施例38−CRBNの過剰発現は細胞増殖の正の調節遺伝子の発現を増加させる)
Notch3及びNeuropilin2b(Nrp2b)は、細胞増殖の進行に必要とされる。Notch3は、未分化又は未成熟細胞からの神経分化のタイミングを調節し、Nrp2bは、PDGF(血小板由来成長因子)との協調による間葉系幹細胞の細胞増殖及び再構築を調節する。そこで、Notch3及びNeuropilin 2b(Nrp2b)の発現を、定量的PCRにより、未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚で解析した。Notch3に用いられたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。Nrp2bに用いられたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。図29Aは、定量的PCRによる11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚、及びサリドマイド処理ゼブラフィッシュ胚におけるNotch3及びNrp2bのmRNAレベルを示したヒストグラムである。示されているように、CRBN過剰発現胚におけるNotch3の発現は、11hpfの未処理胚におけるレベルの1.8倍に増加し、CRBN過剰発現胚におけるNrp2bの発現は、同じ段階の未処理胚におけるレベルの2.7倍に増加した。対照的に、サリドマイド処理は、両方の遺伝子の発現を、それぞれ、未処理胚におけるレベルの0.3倍及び0.4倍に減少させた。これらのデータは、CRBNが、これらのシグナル分子の発現を上方調節することによって細胞増殖を活性化させることを強く示唆している。
Elval3(Huc)は、神経始原細胞マーカーである。Elav13(Huc)の発現も、定量的PCR及びインサイチュハイブリダイゼーションによって解析した。Elav13に用いられたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。図29Bは、定量的PCRによる11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるElav13 mRNAレベルを示したヒストグラムである。示されているように、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるElav13の発現は、11hpfの未処理胚におけるレベルの1.7倍に増加した。Elav13の発現の増加をインサイチュハイブリダイゼーションによって確認した。図29C及び29Dは、インサイチュハイブリダイゼーションによる14hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるElav13陽性神経始原細胞を示している。示されているように、CNSのElav13陽性神経始原細胞の数は、14hpfのCRBN過剰発現胚で増加した。終脳及び脊髄の微分干渉(DIC)画像は、Elav13陽性神経始原細胞が各領域で増加することをはっきりと示した(図29D参照)。
(6.39 実施例39−CRBNの過剰発現は希突起神経膠細胞を増加させる)
未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の前脳、耳胞、及び脊髄における希突起神経膠細胞の分布及び成長を、36phfの希突起神経膠細胞を選択的に染色するための、olig2プローブを用いたインサイチュハイブリダイゼーションによって解析した。
図30A及び30Bは、インサイチュハイブリダイゼーションによる36hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の前脳、耳胞、及び脊髄における希突起神経膠細胞を示している。図30C及び30Dは、36hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚の松果体における希突起神経膠細胞を示している。示されているように、前脳、耳胞、及び脊髄における希突起神経膠細胞の空間的分布は、未処理胚及びCRBN過剰発現胚で同一であるように見えた(図30A及び30B参照)。しかしながら、微分干渉(DIC)画像から、olig2陽性細胞の数が、明らかに、CRBN過剰発現胚の前脳でより多いことが示された(図30C及び30D参照)。
(6.40 実施例40−Six3b、Lhx2b、及びCRBNの過剰発現は多能性遺伝子の発現を増加させる)
多能性遺伝子の発現に対するSix3b、Lhx2b、及びCRBNの過剰発現の効果を定量的PCRによって解析した。Sox2の定量的PCRで使用されたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。Pou5f1の定量的PCRで使用されたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。Nanogの定量的PCRで使用されたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。Zic3の定量的PCRで使用されたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。CRBNの定量的PCRで使用されたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。Wnt3aの定量的PCRで使用されたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。Lhx2bの定量的PCRで使用されたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。Pou3f2bの定量的PCRで使用されたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。
図31Aは、定量的PCRによる11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びSix3b過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるLhx2b、Wnt3a、CRBN、Sox2、Pou5f1、及びNanogの発現レベルを示したヒストグラムである。示されているように、Six3bの過剰発現は、Lhx2b、Wnt3a、CRBN、並びに多能性遺伝子(Sox2、Pou5f1、及びNanog)の発現レベルを増加させた。mRNAの相対的発現を縦軸により示した。未処理胚と比較して、Six3b過剰発現胚では、Lhx2bの発現は、約1.2倍に増加し、Wnt3a、CRBN、及びSox2の発現は、約1.5倍に増加し、pou5f1の発現は、約1.7倍に増加し、Nanogの発現は、約2.4倍に増加した。
図31Bは、定量的PCRによる11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びLhx2b過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるCRBN、Sox2、Pou5f1、Nanog、及びZic3の発現レベルを示したヒストグラムである。示されているように、未処理胚と比較して、CRBN、Sox2、Pou5f1、及びNanogの発現は、Lhx2b過剰発現胚で、それぞれ、約1.2倍、2.3倍、1.6倍、及び1.3倍増加した。
図31Cは、定量的PCRによる11hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚、CRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚、CRBNノックダウンゼブラフィッシュ胚、及び100μMのサリドマイド処理したゼブラフィッシュ胚におけるSox2、Pou5f1、Nanog、及びZic3の発現レベルを示したヒストグラムである。示されているように、CRBNの過剰発現及びノックダウンは、多能性遺伝子の発現に対する反対の効果を示した。サリドマイド処理は、多能性遺伝子の発現を、CRBNノックダウン胚で観察されるレベル近くまで低下させた。CRBN過剰発現胚では、Sox2、Pou5f1、Nanog、及びZic3の発現は、それぞれ、注射を受けていない胚における発現の1.2倍、1.9倍、4.6倍、1.3倍にまで増加した。対照的に、CRBNをノックダウンしたとき、各遺伝子の発現は、未処理胚における発現の0.7倍、0.8倍、0.8倍、0.8倍にまで減少した。サリドマイド処理は、各遺伝子の発現をより激しく(約0.5〜0.7倍)減少させた。
(6.41 実施例41−CRBNの過剰発現は神経再プログラミング遺伝子の発現を増加させる)
Ascl1、Brn2(Pou3f2)、及びMyt1laという3つの遺伝子のプールの発現は、胚性線維芽細胞及び出生後線維芽細胞を機能的ニューロンへと直接的に再プログラミングするのに十分であることが示されている。例えば、Vierbuchen及びWernigの文献、Nat Biotechnol. 29:892-907(2011)を参照されたい。そこで、Ascl1、Pou3f3a、及びMyt1laの発現を、定量的PCRにより、24hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚で解析した。Ascl1の定量的PCRで使用されたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。Pou3f2の定量的PCRで使用されたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。Myt1laの定量的PCRで使用されたプライマーは次の通りである:フォワードプライマーの配列は
であり、リバースプライマーの配列は
である。
図32は、定量的PCRによる24hpfの未処理ゼブラフィッシュ胚及びCRBN過剰発現ゼブラフィッシュ胚におけるAscl1a、Pou3f2b、及びMyt1laの発現レベルを示したヒストグラムである。示されているように、CRBNの過剰発現は、24hpfでのAscl1、Pou3f3a、及びMyt1laの発現を増加させた。
本出願の全体を通じて、様々な刊行物が参照されている。これらの刊行物の完全な開示は、本発明が属する技術の水準をより十分に説明するために、本出願において引用により本明細書中に組み込まれている。本発明は、上に提供されている実施例及び実施態様を参照して説明されているが、本発明の精神から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることが理解されるべきである。
(7.配列表)
本明細書は、配列表のコンピュータ可読形態(CRF)のコピーとともに出願されている。2015年2月19日に作成された、サイズが20,469バイトであるSEQLIST_12827-711-228.txtという名称のCRFは、配列表のペーパーコピーと同一であり、引用により完全に本明細書中に組み込まれている。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
患者の中枢神経系(CNS)細胞の疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を治療又は予防する方法であって、該患者に、(i)ブロモドメイン含有7(BRD7)アンタゴニスト、(ii)Ikarosファミリージンクフィンガータンパク質1(Ikaros)アンタゴニスト、又は(iii)セレブロン(CRBN)活性化因子の有効量を投与し;それにより、該患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を治療することを含む、前記方法。
(構成2)
前記量が、前記患者のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を増幅させ、それにより、前記CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を治療又は予防するのに有効である、構成1記載の方法。
(構成3)
前記CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞が、幹細胞、神経幹細胞、神経始原細胞、神経前駆細胞、神経細胞、星状細胞、グリア細胞、放射状グリア、及び希突起神経膠細胞からなる群から選択される、構成1又は2記載の方法。
(構成4)
患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する方法であって:
(a)CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をドナーから採取すること;
(b)該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を培養すること;
(c)該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を、(i)BRD7アンタゴニスト、(ii)Ikarosアンタゴニスト、又は(iii)CRBN活性化因子の有効量と接触させ、それにより、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を増幅させること;及び
(d)増幅させた集団のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞を該患者に移植し、それにより、該患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を治療すること
を含む、前記方法。
(構成5)
前記BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子を前記患者に投与することをさらに含む、構成4記載の方法。
(構成6)
前記ドナーが前記患者である、構成4又は5記載の方法。
(構成7)
患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の効力を評価する方法であって、該患者におけるCNS細胞塊を、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与の前後で比較することを含み、ここで、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与前と比較したときの該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与後のCNS細胞塊の増加が、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際の該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の効力を示す、前記方法。
(構成8)
効力の評価の後、前記患者への前記BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の1回以上の事後投与をさらに含む、構成7記載の方法。
(構成9)
患者のCNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際のBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の効力を評価する方法であって、該患者における山中因子、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子の発現レベルを、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与の前後で比較することを含み、ここで、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与前と比較したときの該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与後の該山中因子、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子の発現レベルの増加が、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防又は治療する際の該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の効力を示す、前記方法。
(構成10)
前記山中因子が、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、又はKlf4である、構成9記載の方法。
(構成11)
前記BAM因子が、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、又はMyt1lである、構成9又は10記載の方法。
(構成12)
効力の評価の後、前記患者への前記BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の1回以上の事後投与をさらに含む、構成9〜11のいずれか一項記載の方法。
(構成13)
前記BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する患者の集団を、CNS細胞塊に基づいて選択することをさらに含む、構成1〜12のいずれか一項記載の方法。
(構成14)
BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する患者の集団を、該患者における山中因子、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子の発現レベルに基づいて選択することをさらに含む、構成1〜13のいずれか一項記載の方法。
(構成15)
前記山中因子が、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、又はKlf4である、構成14記載の方法。
(構成16)
前記BAM因子が、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、又はMyt1lである、構成14記載の方法。
(構成17)
前記CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病が、大脳皮質の疾患、大脳皮質の外科的損傷、又は神経変性疾患である、構成1〜16のいずれか一項記載の方法。
(構成18)
前記CNS細胞の疾患、障害、又は疾病が、パーキンソン病;アルツハイマー病;クロイツフェルト・ヤコブ病;大脳皮質基底核変性症;筋萎縮性側索硬化症;多発性硬化症;進行性運動衰弱;免疫性神経障害、CNS外傷;パーキンソニズムを伴うアルツハイマー病;運動緩慢;無動;細かい運動制御及び手指の器用さを損なう運動障害;発声不全;単調な発話;硬直;ジストニア;パーキンソン病と関連する炎症;顔、顎、舌、姿勢の振戦;パーキンソン病様歩行;すり足歩行;小刻み歩行;加速歩行;気分、認知、感覚、睡眠の障害;認知症;鬱病;薬物誘発性パーキンソニズム;血管性パーキンソニズム;多系統萎縮症;進行性核上麻痺;一次性タウ病変を有する障害;皮質基底核神経節変性症;認知症を伴うパーキンソニズム;多動性障害;舞踏病;ハンチントン病;ジストニア;ウィルソン病;トゥレット症候群;本態性振戦;ミオクローヌス;及び遅発性運動障害からなる群から選択される、構成1〜16のいずれか一項記載の方法。
(構成19)
前記CNS細胞の疾患、障害、又は疾病が、アルツハイマー病である、構成18記載の方法。
(構成20)
前記CNS細胞の疾患、障害、又は疾病が、パーキンソン病である、構成18記載の方法。
(構成21)
前記CNS細胞の疾患、障害、又は疾病が、クロイツフェルト・ヤコブ病である、構成18記載の方法。
(構成22)
前記CNS細胞の疾患、障害、又は疾病が、ハンチントン病である、構成18記載の方法。
(構成23)
前記CNS細胞の疾患、障害、又は疾病が、進行性核上麻痺である、構成18記載の方法。
(構成24)
前記CNS細胞の疾患、障害、又は疾病が、大脳皮質基底核変性症である、構成19記載の方法。
(構成25)
患者の損傷したCNS組織を治療する方法であって、該損傷したCNS組織内のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させることを含み、その結果、該損傷したCNS組織が治療される、前記方法。
(構成26)
患者の損傷したCNS組織を治療する方法であって、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該損傷したCNS組織を該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団と接触させることを含み、その結果、該損傷したCNS組織が治療される、前記方法。
(構成27)
前記損傷したCNS組織を前記BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させることをさらに含む、構成26記載の方法。
(構成28)
前記損傷したCNS組織が脳である、構成25〜27のいずれか一項記載の方法。
(構成29)
前記損傷したCNS組織が脊髄である、構成25〜27のいずれか一項記載の方法。
(構成30)
前記損傷したCNS組織が大脳皮質である、構成25〜27のいずれか一項記載の方法。
(構成31)
細胞の集団を増幅させる方法であって、該細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させ、それにより、該細胞の集団を増幅させることを含む、前記方法。
(構成32)
前記細胞の集団が、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞である、構成31記載の方法。
(構成33)
対象のCNS細胞を生成又は再生させる方法であって、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量を該対象に投与することを含み、その結果、該CNS細胞が該患者において生成又は再生する、前記方法。
(構成34)
CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の増殖を改善する方法であって、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量を該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞に投与し、それにより、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の増殖を改善することを含む、前記方法。
(構成35)
CNS始原細胞/前駆細胞のCNS細胞への分化を誘導する方法であって、BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量を該細胞に投与し、それにより、該CNS始原細胞/前駆細胞を該CNS細胞へと誘導することを含む、前記方法。
(構成36)
CNS組織内のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の生存を改善する方法であって、該CNS組織内のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をアンタゴニストの有効量と接触させることを含み、その結果、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の生存が、該BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させられていないCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の生存と比べて改善される、前記方法。
(構成37)
対象におけるCNS細胞移植の方法であって:
(a)CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をドナーから採取すること;
(b)該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を培養すること;
(c)該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること(ここで、CNS始原細胞/前駆細胞を任意にCNS細胞へとさらに分化させる);及び
(d)増幅させた集団のCNS細胞を該患者に移植すること
を含む、前記方法。
(構成38)
前記対象のCNS細胞を増幅させる、構成37記載の方法。
(構成39)
対象のCNS組織にCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞を生着させる方法であって、該細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該CNS組織を該細胞の集団と接触させることを含み、その結果、該細胞の生着が起こる、前記方法。
(構成40)
前記CNS組織を前記BRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子と接触させることをさらに含む、構成39記載の方法。
(構成41)
対象のCNS組織内のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の増殖を改善する方法であって、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること、及び該CNS組織を該細胞の集団と接触させることを含み、その結果、該細胞の増殖が向上する、前記方法。
(構成42)
対象のCNS組織内のCNS細胞塊を増加させる方法であって、CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をBRD7アンタゴニスト、Ikarosアンタゴニスト、又はCRBN活性化因子の有効量と接触させること(ここで、該CNS始原細胞/前駆細胞を任意にCNS細胞へとさらに分化させる);及び該CNS組織を該CNS細胞の集団と接触させることを含み、その結果、CNS細胞塊が増加する、前記方法。
(構成43)
前記CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞が、幹細胞、神経幹細胞、神経始原細胞、神経前駆細胞、神経細胞、星状細胞、グリア細胞、放射状グリア、及び希突起神経膠細胞からなる群から選択される、構成32〜42のいずれか一項記載の方法。
(構成44)
前記対象がヒトである、構成33及び37〜42のいずれか一項記載の方法。
(構成45)
前記対象がそれを必要としている患者である、構成33及び37〜42のいずれか一項記載の方法。
(構成46)
前記BRD7アンタゴニストが、BRD7タンパク質の阻害因子、BRD7遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、及びBRD7が下方調節されている幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞からなる群から選択される、構成1〜45のいずれか一項記載の方法。
(構成47)
前記BRD7アンタゴニストが、BRD7タンパク質の阻害因子である、構成46記載の方法。
(構成48)
前記BRD7タンパク質の阻害因子が、BRD7産生の阻害因子、BRD7作用の阻害因子、及びBRD7の阻害因子のコード領域を含む核酸からなる群から選択される、構成47記載の方法。
(構成49)
前記BRD7アンタゴニストがBRD7遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸である、構成46記載の方法。
(構成50)
前記核酸がベクターに挿入される、構成49記載の方法。
(構成51)
前記核酸がBRD7遺伝子に特異的なアンチセンス分子である、構成49記載の方法。
(構成52)
前記アンチセンス分子がRNAi分子である、構成51記載の方法。
(構成53)
前記BRD7のアンタゴニストがBRD7遺伝子に特異的なモルフォリノオリゴヌクレオチドである、構成49記載の方法。
(構成54)
前記モルフォリノオリゴヌクレオチドが配列番号1の配列を含む、構成53記載の方法。
(構成55)
前記BRD7のアンタゴニストが、BRD7が下方調節されている幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞である、構成46記載の方法。
(構成56)
前記BRD7のアンタゴニストが人工多能性幹(iPS)細胞である、構成46記載の方法。
(構成57)
前記BRD7のアンタゴニストが、神経細胞、神経細胞の始原細胞、及び神経細胞の前駆細胞からなる群から選択される細胞の増殖を誘導する、構成46記載の方法。
(構成58)
前記BRD7のアンタゴニストが神経細胞への分化を誘導する、構成46記載の方法。
(構成59)
前記Ikarosのアンタゴニストが、Ikarosタンパク質の阻害因子、Ikaros遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、及びIkarosが下方調節されている幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞からなる群から選択される、構成1〜45のいずれか一項記載の方法。
(構成60)
前記IkarosのアンタゴニストがIkarosタンパク質の阻害因子である、構成59記載の方法。
(構成61)
前記Ikarosタンパク質の阻害因子が、Ikaros産生の阻害因子、Ikaros作用の阻害因子、及びIkarosの阻害因子のコード領域を含む核酸からなる群から選択される、構成60記載の方法。
(構成62)
前記IkarosのアンタゴニストがIkaros遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸である、構成59記載の方法。
(構成63)
前記核酸がベクターに挿入される、構成62記載の方法。
(構成64)
前記核酸がIkaros遺伝子に特異的なアンチセンス分子である、構成62記載の方法。
(構成65)
前記アンチセンス分子がRNAi分子である、構成64記載の方法。
(構成66)
前記IkarosのアンタゴニストがIkaros遺伝子に特異的なモルフォリノオリゴヌクレオチドである、構成59記載の方法。
(構成67)
前記モルフォリノオリゴヌクレオチドが配列番号2の配列を含む、構成66記載の方法。
(構成68)
前記Ikarosのアンタゴニストが、Ikarosが下方調節されている幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞である、構成59記載の方法。
(構成69)
前記Ikarosのアンタゴニストが人工多能性幹(iPS)細胞である、構成59記載の方法。
(構成70)
前記Ikarosのアンタゴニストが、神経細胞、神経細胞の始原細胞、及び神経細胞の前駆細胞からなる群から選択される細胞の増殖を誘導する、構成59記載の方法。
(構成71)
前記Ikarosのアンタゴニストが神経細胞への分化を誘導する、構成59記載の方法。
(構成72)
前記CRBN活性化因子が、CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、及びCRBN基質又は下流タンパク質が下方調節されている幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞からなる群から選択される、構成1〜45のいずれか一項記載の方法。
(構成73)
前記CRBN活性化因子がCRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子である、構成72記載の方法。
(構成74)
前記CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子が、CRBN基質又は下流タンパク質産生の阻害因子、CRBN基質又は下流タンパク質作用の阻害因子、及びCRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子のコード領域を含む核酸からなる群から選択される、構成73記載の方法。
(構成75)
前記CRBN活性化因子がCRBN基質又は下流タンパク質遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸である、構成72記載の方法。
(構成76)
前記核酸がベクターに挿入される、構成75記載の方法。
(構成77)
前記核酸がCRBN基質又は下流タンパク質遺伝子に特異的なアンチセンス分子である、構成75記載の方法。
(構成78)
前記アンチセンス分子がRNAi分子である、構成77記載の方法。
(構成79)
前記CRBN活性化因子がCRBN基質又は下流タンパク質遺伝子に特異的なモルフォリノオリゴヌクレオチドである、構成72記載の方法。
(構成80)
前記CRBN活性化因子が、CRBN基質又は下流タンパク質が下方調節されている幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞である、構成72記載の方法。
(構成81)
前記CRBN活性化因子が人工多能性幹(iPS)細胞である、構成72記載の方法。
(構成82)
前記CRBN活性化因子が、神経細胞、神経細胞の始原細胞、及び神経細胞の前駆細胞からなる群から選択される細胞の増殖を誘導する、構成72記載の方法。
(構成83)
前記CRBN活性化因子が神経細胞への分化を誘導する、構成72記載の方法。
(構成84)
(a)CNS始原細胞/前駆細胞のCNS細胞への分化を誘導し、(b)CNS細胞又はCNS始原細胞/前駆細胞の増殖を改善し、又は(c)CNS細胞又はCNS始原細胞/前駆細胞の生存を改善する方法であって、該細胞を(i)BRD7アンタゴニスト、(ii)Ikarosアンタゴニスト、又は(iii)CRBN活性化因子と接触させることを含む、前記方法。
(構成85)
CNS細胞又はCNS始原細胞/前駆細胞が、幹細胞、神経幹細胞、神経始原細胞、神経前駆細胞、神経細胞、星状細胞、グリア細胞、放射状グリア、及び希突起神経膠細胞からなる群から選択される、構成84記載の方法。
(構成86)
(a)患者の中枢神経系(CNS)細胞の疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を治療又は予防する方法;
(b)患者の損傷したCNS組織を治療する方法;
(c)対象のCNS組織にCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞を生着させる方法;
(d)対象のCNS組織内のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の増殖を改善する方法;或いは
(e)対象のCNS組織内のCNS細胞塊を増加させる方法
における使用のための、(i)BRD7アンタゴニスト、(ii)Ikarosアンタゴニスト、及び/又は(iii)CRBN活性化因子を含む組成物。
(構成87)
構成86記載の使用のための組成物であって、前記方法が:
(a)CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団をドナー(好ましくは、該ドナーは前記患者である)から採取すること;
(b)該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を培養すること;
(c)該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を該組成物と接触させ、それにより、該CNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞の集団を増幅させること;及び
(d)増幅させた集団のCNS細胞又はそのCNS始原細胞/前駆細胞を該患者に移植し、それにより、該患者の該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を治療すること
を含む、前記組成物。
(構成88)
前記方法が、前記組成物を前記患者に投与することをさらに含む、構成87記載の使用のための組成物。
(構成89)
前記方法が、
(i)前記患者におけるCNS細胞塊を前記組成物の投与の前後で比較すること(ここで、該組成物の投与前と比較したときの該組成物の投与後のCNS細胞塊の増加は、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防もしくは治療する際の該組成物の効力を示す);或いは
(ii)該患者における山中因子、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子の発現レベルを該組成物の投与の前後で比較すること(ここで、該組成物の投与前と比較したときの該組成物の投与後の該山中因子、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/又はBAM因子の発現レベルの増加は、該CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を予防もしくは治療する際の該組成物の効力を示す)
によって、該組成物の効力を評価することをさらに含む、構成86〜88のいずれか一項記載の使用のための組成物。
(構成90)
前記方法が、前記組成物の投与に対する臨床応答を予測し、該投与に対する臨床応答をモニタリングし、又は該投与に対する患者コンプライアンスをモニタリングするために、CNS細胞欠損性疾患、障害、もしくは疾病、又はこれらの症状を有する患者の集団を、該患者における(i)CNS細胞塊、又は(ii)山中因子、Nanog、NeuroD、Zic3、Elav13、及び/もしくはBAM因子の発現レベルに基づいて選択することをさらに含む、構成86〜89のいずれか一項記載の使用のための組成物。
(構成91)
前記山中因子が、Oct 3/4、Sox2、c-Myc、もしくはKlf4であり、及び/又は前記BAM因子が、Brn2(Pou3f2)、Ascl1、もしくはMyt11である、構成89又は90記載の使用のための組成物。
(構成92)
前記CNS細胞欠損性疾患、障害、又は疾病が、大脳皮質の疾患、大脳皮質の外科的損傷、又は神経変性疾患である、構成86〜91のいずれか一項記載の使用のための組成物。
(構成93)
前記CNS細胞の疾患、障害、又は疾病が、パーキンソン病;アルツハイマー病;クロイツフェルト・ヤコブ病;大脳皮質基底核変性症;筋萎縮性側索硬化症;多発性硬化症;進行性運動衰弱;免疫性神経障害、CNS外傷;パーキンソニズムを伴うアルツハイマー病;運動緩慢;無動;細かい運動制御及び手指の器用さを損なう運動障害;発声不全;単調な発話;硬直;ジストニア;パーキンソン病と関連する炎症;顔、顎、舌、姿勢の振戦;パーキンソン病様歩行;すり足歩行;小刻み歩行;加速歩行;気分、認知、感覚、睡眠の障害;認知症;鬱病;薬物誘発性パーキンソニズム;血管性パーキンソニズム;多系統萎縮症;進行性核上麻痺;一次性タウ病変を有する障害;皮質基底核神経節変性症;認知症を伴うパーキンソニズム;多動性障害;舞踏病;ハンチントン病;ジストニア;ウィルソン病;トゥレット症候群;本態性振戦;ミオクローヌス;及び遅発性運動障害からなる群から選択される、構成86〜92のいずれか一項記載の使用のための組成物。
(構成94)
前記BRD7アンタゴニストが、BRD7タンパク質の阻害因子、BRD7遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、及びBRD7が下方調節されている幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞からなる群から選択され、好ましくは、
該BRD7タンパク質の阻害因子が、BRD7産生の阻害因子、BRD7作用の阻害因子、及びBRD7の阻害因子のコード領域を含む核酸からなる群から選択され;並びに/又は
該核酸が、BRD7遺伝子に特異的なアンチセンス分子、RNAi分子、もしくはBRD7遺伝子に特異的なモルフォリノオリゴヌクレオチドである、
構成84もしくは構成85記載の方法、又は構成86〜93のいずれか一項記載の使用のための組成物。
(構成95)
前記Ikarosのアンタゴニストが、Ikarosタンパク質の阻害因子、Ikaros遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、及びIkarosが下方調節されている幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞からなる群から選択され、好ましくは、
該Ikarosタンパク質の阻害因子が、Ikaros産生の阻害因子、Ikaros作用の阻害因子、及びIkarosの阻害因子のコード領域を含む核酸からなる群から選択され;並びに/又は
該核酸が、Ikaros遺伝子に特異的なアンチセンス分子、RNAi分子、もしくはIkaros遺伝子に特異的なモルフォリノオリゴヌクレオチドである、
構成84もしくは構成85記載の方法、又は構成86〜93のいずれか一項記載の使用のための組成物。
(構成96)
前記CRBN活性化因子が、CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子、CRBN基質又は下流タンパク質遺伝子の核酸配列の少なくとも一部を含む核酸、及びCRBN基質又は下流タンパク質が下方調節されている幹細胞、神経始原細胞、又は神経前駆細胞からなる群から選択され、好ましくは、
該CRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子が、CRBN基質又は下流タンパク質産生の阻害因子、CRBN基質又は下流タンパク質作用の阻害因子、及びCRBN基質又は下流タンパク質の阻害因子のコード領域を含む核酸からなる群から選択され;並びに/或いは
該核酸が、CRBN基質もしくは下流タンパク質遺伝子に特異的なアンチセンス分子、RNAi分子、又はCRBN基質もしくは下流タンパク質遺伝子に特異的なモルフォリノオリゴヌクレオチドである、
構成84もしくは構成85記載の方法、又は構成86〜93のいずれか一項記載の使用のための組成物。