JP6870581B2 - 射出圧縮成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、射出圧縮成形品の製造方法を用いて製造した、車両のバックドア40の外観の例を示している。本実施の形態にて説明するバックドア40は、ルーフ部41、スポイラ部42、リア枠部43、リアサイド部44、バックウィンドウ45等を有し、樹脂にて一体成形されているが、バックウィンドウ45と、バックウィンドウ45の周囲の少なくとも一部を有しているものであってもよい。バックウィンドウ45は無色の透明であるが、バックウィンドウ45以外の個所は、例えば塗装等にて不透明な有色部とされている。
図2に示すフローチャートは、本実施の形態の射出圧縮成形品の製造方法における各工程を示している。射出圧縮成形品の製造工程は、金型開き工程S10、射出工程S20、全体圧縮工程S30、部分圧力付与工程S40、冷却工程S50、を有している。以下、各工程の詳細について説明する。
金型開き工程S10では、図3に示すように、予め設定された規定間隔(この場合、図5に示す全体圧縮工程、図6に示す部分圧力付与工程、図7に示す冷却工程、における間隔D2)よりも少し大きな間隔D1で第1金型11、第2金型12が保持される。なお、間隔D1は、適宜設定される。また、通路G1、G2は、次の工程である射出工程にて、第1金型11と第2金型12との間隔Kに溶融樹脂を射出するために、第1金型11に予め形成されている通路である。通路G1における間隔Kへの射出口であるゲートG1A、通路G2における間隔Kへの射出口であるゲートG2Aは、射出圧縮成形品の見栄えに影響を及ぼさない適切な位置に設定されている。本実施の形態の説明では、図8に示すように、ゲートG1Aは、薄肉領域A11に配置されており、ゲートG2Aは、厚肉領域A12に配置されている例にて説明する。
射出工程S20では、図4に示すように、通路G1を経由させてゲートG1Aから、及び通路G2を経由させてゲートG2Aから、第1金型11と第2金型12との間隔K(キャビティ)に、溶融樹脂20が射出される。なお、第1金型11及び第2金型12は、予め設定された保持温度に保持されている。射出する溶融樹脂20の温度は、例えば、約300[℃]である。また樹脂の材質は、例えばポリカーボネートである。
全体圧縮工程S30では、図5に示すように、第1金型11と第2金型12との間隔D2が予め設定された規定間隔となるように、第1金型11と第2金型12に全体圧力P1を付与する。なお、全体圧力P1は、第1金型11と第2金型12の双方を可動体として双方に付与してもよいし、第1金型11を固定して第2金型12を可動体として第2金型12に付与してもよいし、第2金型12を固定して第1金型11を可動体として第1金型11に付与してもよい。第1金型11と第2金型12の間隔を間隔D2(間隔D2<間隔D1)とすることで、間隔K内に射出された溶融樹脂を押しつぶし、間隔K内に溶融樹脂を均一に行き渡らせるとともに、溶融樹脂を間隔K内に充填させる。全体圧縮工程において間隔K内の樹脂は、溶融状態の溶融層21のみであり、硬化した固化層を有していない。
部分圧力付与工程S40では、図6に示すように、射出圧縮成形品の板厚が周囲の板厚よりも厚くなる領域である厚肉領域A12(図8参照)に、第1金型11及び第2金型12に付与する全体圧力P1とは別の圧力である部分圧力P2を、第1金型11または第2金型12の一部を間隔Kの方向に移動させることなく付与する。この場合、図6に示すように、通路G2に所定圧力(この場合、部分圧力P2)の溶融樹脂20を供給する。これにより、図8に示すように、厚肉領域A12に配置されているゲートG2Aから、溶融樹脂が間隔K内に吐出される力によって、部分圧力P2が間隔K内の溶融樹脂に付与される。厚肉領域に配置されているゲートから吐出する溶融樹脂にて部分圧力を付与するために、冷却工程の終了の直前まで溶融層21(図8、図9参照)が残っている個所にゲートが配置されていることが好ましい。なお、部分圧力P2の値は、適宜設定される。
冷却工程S50では、図7に示すように、全体圧力P1と部分圧力P2が付与されている状態を維持しながら、第1金型11と第2金型12の温度が、保持温度から徐々に低下されて冷却される。そして冷却が終了して間隔K内に充填されていた溶融樹脂がすべて固化した後、第1金型11と第2金型12の間隔が開かれて、射出圧縮成形品が取り出される。
次に図8〜図10を用いて、冷却工程中における樹脂の固化状態の変化について説明する。図8は、冷却工程の開始時点における樹脂の状態を示しており、図9は、冷却工程の中間時点における樹脂の状態を示しており、図10は、冷却工程の終了時点の樹脂の状態を示している。なお、冷却工程が開始される前の部分圧力付与工程では、間隔K内に充填されている樹脂は、すべて溶融状態の樹脂である溶融層21である。
図8に示すように、冷却工程が開始された時点(冷却初期の時点)では、間隔K内の樹脂は、ほとんどが溶融状態の樹脂である溶融層21であり、固化した樹脂である固化層22は、第1金型11及び第2金型12の表面に対向して(接して)薄く形成されている。冷却工程が開始されて第1金型11及び第2金型12の温度が徐々に低下されると、第1金型11及び第2金型12の表面に接触している樹脂の固化が始まり、第1金型11及び第2金型12の表面には、固化した樹脂である固化層22が形成される。そして第1金型11及び第2金型12の温度が低下するに従って、固化層22が板厚方向に成長して厚くなっていき、溶融層21が薄くなっていく。冷却工程の開始時点では、板厚D11が周囲の板厚よりも薄い薄肉領域A11、板厚D12が周囲の板厚よりも厚い厚肉領域A12、のいずれの領域も、第1金型11及び第2金型12の表面に接する個所に薄い固化層22が形成され、溶融層21が固化層22に挟まれている。
図8の状態からさらに第1金型11及び第2金型12の温度が低下されて冷却工程の中間時点に達した状態を図9に示す。図9に示す状態は、薄肉領域A11では、溶融層21が無くなり固化層22のみとなり、厚肉領域A12では、溶融層21と固化層22が混在した状態を示している。
図9の状態からさらに第1金型11及び第2金型12の温度が低下されて冷却工程の終了時点に達した状態を図10に示す。図10に示す状態は、薄肉領域A11、厚肉領域A12、ともに溶融層21が無くなり、固化層22のみとなった状態を示している。なお、ヒータ15の温度は、第1金型11及び第2金型12の温度の低下と、厚肉領域A12内の溶融層21の厚さに応じて、適切な温度に調整されている。
12 第2金型
15 ヒータ
20 溶融樹脂
21 溶融層
22 固化層
40 バックドア(射出圧縮成形品)
41 ルーフ部
42 スポイラ部
43 リア枠部
44 リアサイド部
45 バックウィンドウ
A11 薄肉領域
A12 厚肉領域
D1、D2 間隔
D11、D12 板厚
G1、G2 通路
G1A、G2A ゲート
K 間隔
P1 全体圧力
P2 部分圧力
S10 金型開き工程
S20 射出工程
S30 全体圧縮工程
S40 部分圧力付与工程
S50 冷却工程
Claims (3)
- 射出圧縮成形品の製造方法であって、
予め設定された規定間隔よりも大きな間隔で金型を保持する金型開き工程と、
前記金型の間隔に溶融樹脂を射出する射出工程と、
前記金型の間隔が前記規定間隔となるように前記金型に全体圧力を付与する全体圧縮工程と、
前記射出圧縮成形品の板厚が周囲の板厚よりも厚くなる領域である厚肉領域に、前記金型に付与する前記全体圧力とは別の圧力である部分圧力を、前記金型の一部を前記金型の間隔の方向に移動させることなく付与する部分圧力付与工程と、
前記全体圧力と前記部分圧力とを付与した状態で前記金型を冷却する冷却工程と、
を有し、
前記射出工程において前記溶融樹脂が射出される射出口であるゲートには、前記厚肉領域に配置されているゲートと、前記厚肉領域の板厚よりも薄い領域であって前記射出圧縮成形品の板厚が周囲の板厚よりも薄くなる領域である薄肉領域に配置されているゲートと、が有り、
前記部分圧力付与工程にて付与する前記部分圧力を、
前記薄肉領域に配置されているゲートからは前記溶融樹脂を吐出しないことで付与せず、
前記厚肉領域に配置されているゲートから前記溶融樹脂を所定圧力で前記金型の間隔に吐出する力によって付与することで、前記金型の一部を前記金型の間隔の方向に移動させることなく付与する、
射出圧縮成形品の製造方法。 - 請求項1に記載の射出圧縮成形品の製造方法であって、
前記溶融樹脂は、透明である、
射出圧縮成形品の製造方法。 - 請求項1または2に記載の射出圧縮成形品の製造方法であって、
前記射出圧縮成形品は、車両のバックウィンドウと、当該バックウィンドウの周囲の少なくとも一部と、を含み、
前記厚肉領域は、透明な前記バックウィンドウである、
射出圧縮成形品の製造方法。
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