JP6869600B2 - システインタグを付加したフコース結合性レクチン、および当該レクチンを利用した吸着剤 - Google Patents
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Description
(2)フコース結合性レクチンが、
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも2番目のプロリンから156番目のグリシンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または
(B)上記(A)のタンパク質のアミノ酸配列において、1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたタンパク質である、
(1)記載のタンパク質。
(3)システインを1つ以上含むオリゴペプチドが、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドである、(1)または(2)記載のタンパク質。
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(5)(4)記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
(6)(5)記載の発現ベクターにより宿主を形質転換して得られる形質転換体。
(7)宿主が大腸菌である、(6)記載の形質転換体。
(8)フコース結合性レクチンのN末端またはC末端に、システインを1つ以上含むオリゴペプチドを有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを宿主に導入して得られた形質転換体を培養する工程と、得られる培養物から前記タンパク質を回収する工程とを含む、タンパク質の製造方法。
(9)フコース結合性レクチンが、
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも2番目のプロリンから156番目のグリシンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または
(B)上記(A)のタンパク質のアミノ酸配列において、1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたタンパク質であることを特徴とする(8)記載のタンパク質の製造方法。
(10)(8)または(9)に記載のタンパク質が、水に不溶性の担体に固定化されていることを特徴とする、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤。
(11)水に不溶性の担体が、システインのメルカプト基と反応して共有結合を形成する官能基を有することを特徴とする、(8)または(9)記載の吸着剤。
(12)(10)または(11)に記載の吸着剤を用いることを特徴とする、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の精製方法。
(A)本発明のタンパク質のアミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換し、当該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを人工的に合成する方法や、
(B)本発明のタンパク質のうちフコース結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、直接人工的に、またはBurkholderia cenocepaciaのゲノムDNA等からPCR法などのDNA増幅法を用いて調製後、当該調製したポリヌクレオチドの5’末端側または3’末端側に、配列番号2に記載のシステインタグをコードするオリゴヌクレオチドを遺伝子工学的手法により付加する方法、を例示することができる。
(ア)本発明の形質転換体を培養することで本発明のタンパク質を生産する工程、
(イ)工程(ア)で得られた培養物から本発明のタンパク質を回収する工程、
の2工程を含むことを特徴とする。なお、本明細書において、培養物とは、培養された形質転換体の細胞そのものや細胞分泌物のほかに、形質転換体の培養に用いた培地なども含まれる。以下に工程(ア)と工程(イ)の各工程の詳細を説明する。
本発明におけるタンパク質の製造方法に用いる形質転換体は、対象とする宿主の培養に適した培地で培養すればよく、例えば、宿主が大腸菌の場合は、Terrific Broth(TB)培地や、必要な栄養源を補ったLuria−Bertani(LB)培地が好ましい培地の一例としてあげられる。また、培地には炭素、窒素および無機塩のほかに、当該技術分野において一般的な栄養源を添加してもよい。
本発明の形質転換体を培養して得られた培養物から本発明のタンパク質を回収するには、当業者が通常用いる方法の中から適宜選択して用いればよく、前述の培養物から本発明のタンパク質を抽出は、発現の形態に応じて実施すればよい。本発明のタンパク質が細胞内(原核生物においてはペリプラズムも含む)に発現する場合には、遠心分離操作により菌体を集めたのち、酵素処理剤や界面活性剤などを添加することにより菌体を破砕し、本発明のタンパク質を抽出すればよい。一方、培養液中に分泌される場合は、菌体を遠心分離操作によって分離し、得られる培養上清から本発明のタンパク質を抽出すればよい。
実施例1 プラスミドpET−BC2LCNcysの作製
以下(1)から(5)記載の方法により、配列番号3に示したフコース結合性レクチンのアミノ酸配列をコードした配列番号4のポリヌクレオチドを作製した。
(試薬組成、総反応液量:50μL)
・0.025unit/μL PrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)
・各30nM 配列番号5から28に示したプライマー
・酵素に付属する緩衝液
(反応条件)
・サーマルサイクラーを用い、98℃・10秒間、55℃・5秒間、72℃・60秒間のPCR反応を5サイクル実施した。
(試薬組成、総反応液量:50μL)
・0.025unit/μL PrimeSTAR HS DNA Polymerase
(タカラバイオ社製)
・各500nM 配列番号29と30に示したプライマー
・1μL 1段階目のPCR反応液
・酵素に付属する緩衝液
(反応条件)
・サーマルサイクラーを用い、98℃・10秒間、55℃・5秒間、72℃・60秒間のPCR反応を30サイクル実施した。
実施例1で得られた組換え大腸菌BL21(DE3)/pET−BC2LCNcysより、以下(1)から(5)記載の方法で、システインタグを付加したフコース結合性レクチンを作製した。
(1)組換え大腸菌BL21(DE3)/pET−BC2LCNcysを、30μg/mLのカナマイシンを添加したLB/Km液体培地に接種し、37℃で一晩振盪することで前培養を行った。培養液の濁度(O.D.600)が0.6になるように植菌後、37℃で培養した。
(2)前培養液を30μg/mLのカナマイシンを添加したLB/Km液体培地1Lに接種し、37℃で振盪培養した。培養液の濁度(O.D.600)が凡そ0.6になったところで、培養温度を20℃に切り替え、一晩培養した。
(3)培養終了後、培養液を氷冷したのち、遠心分離により集菌した。集めた菌を20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)および1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を添加したBugBuster Protein Extraction Reagent(メルク社製)を用いて処理し、可溶性画分を150mL得た。
(5)前述の(4)で得られたシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを含む溶出液を、D−PBS(−)(和光純薬製)に対して透析することにより、目的のシステインタグを付加したフコース結合性レクチンのD−PBS(−)溶液を75mL得た。
実施例3 システインタグを付加したフコース結合性レクチンの糖鎖への親和性評価
実施例2で得られたシステインタグを付加したフコース結合性レクチンのフコース含有糖鎖への親和性を評価するため、BIACORE T100(GEヘルスケア社製)を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)測定を行った。親和性を評価するための糖鎖として、α1−2結合したフコースとα1−3結合したフコースを含むLewis Y型糖鎖を用い、ストレプトアビジン(和光純薬社製)を固定化したCM5センサーチップ(GEヘルスケア社製)に、ビオチン−アビジン結合を利用してビオチン化Lewis Y型糖鎖(Ley−PAA−biotin、Glycotech社製)を固定した。以下にLewis Y型糖鎖の構造を示した。
Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc
システインタグを付加したフコース結合性レクチンはHBS−EP+緩衝液(GEヘルスケア社製)を用いて希釈し、0から1013nMの範囲の12種類の濃度でカイネティクス解析を行った。SPR測定は、各濃度のシステインタグを付加したフコース結合性レクチン溶液を30μL/分の流速で6分間注入し、Lewis Y型糖鎖を固定化したセンサーチップにシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを結合させた。センサーチップに結合したフコース結合性レクチンのセンサーチップからの解離は、10mM水酸化ナトリウム水溶液を30μL/分の流速で30秒間注入することで行った。得られた結果を、BIACORE T100に付属のソフトウェア(バージョン1.1.1)で解析した結果、システインタグを付加したフコース結合性レクチンのLewis Y型糖鎖に対する解離定数(Kd値)は46nMであった。
実施例4 エポキシ基を導入した担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価(その1)
以下の実施例4から実施例9は、システインタグを付加したフコース結合性レクチンを担体に固定化することによるフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤の作製と、フコース含有糖鎖およびフコースを含まない糖鎖を用いた吸着剤としての評価に関する。
Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
オリゴマンノース型糖鎖
Manα1−3(Manα1−6)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc
実施例4は、エポキシ基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
(1)エポキシ基を導入した合成高分子系担体の作製
合成高分子系担体として、水に懸濁したトヨパールHW−65F(東ソー社製)をグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用した。反応容器(PFA製ボトル、100mL容積、アズワン社製)に、含水状態のトヨパールHW−65F(10.0g)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(アルドリッチ社製、2.0g)、水(15.0g)を添加し、50℃で30分間撹拌したのち、48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製、280mg)を添加し、さらに50℃で8時間撹拌することによりエポキシ化反応を行なった。反応後、グラスフィルターを使用してろ液が中性になるまで多量の水で洗浄することにより、エポキシ基を導入したトヨパールHW−65F(以下、エポキシ化トヨパールHW−65F)を得た。
(1)で作製したエポキシ化トヨパールHW−65Fに水を添加することで調製した50容積%懸濁液(200μL)を反応容器(ミニバイオスピンクロマトグラフィーカラム、BIO−RAD社製)に添加し、500mMの塩化ナトリウム(和光純薬社製)と20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA、同仁化学研究所社製)を含む、リン酸二水素ナトリウム二水和物(和光純薬社製)とリン酸水素二ナトリウム(和光純薬社製)から調製した200mMのリン酸緩衝液(pH7.4、200μL)で5回洗浄した。なお、エポキシ化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液は、水で懸濁したエポキシ化トヨパールHW−65Fをメスシリンダー内で沈降させ、時々タッピングを行なって容積が一定になるまで放置したのち、エポキシ化トヨパールHW−65Fの容積が50%となるよう、水を添加することで調製した。
(2)で作製した吸着剤1にD−PBS(−)を添加することで調製した25容積%懸濁液(100μL)を反応容器(BIO−RAD社製、ミニバイオスピンクロマトグラフィーカラム)に添加し、D−PBS(−)(100μL)で4回洗浄した。なお、吸着剤1Eの25容積%懸濁液は、(2)で作製した吸着剤1(100μL)が入った反応容器に、D−PBS(−)(300μL)を添加することで調製した。
吸着率=((吸着処理に使用したフコース含有糖鎖量−洗浄液に含まれるフコース含有糖鎖量)/吸着処理に使用したフコース含有糖鎖量)×100
(4)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤1からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
(3)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤1(25μL)が入った反応容器に、L−フコース(和光純薬社製)のD−PBS(−)溶液(濃度15mM、50μL、L−フコース添加量750nmol)を添加し、25℃で1時間分間撹拌することにより、吸着剤1に吸着したフコース含有糖鎖を脱着させた。フコース含有糖鎖を脱着させた吸着剤はD−PBS(−)で洗浄し、洗浄液全量を回収した。
(5)エポキシ基を導入した合成高分子系担体へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
(2)に記載の方法により、(1)で作製したエポキシ化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのリン酸緩衝液(pH7.4、200μL)で5回洗浄した。
(3)に記載の方法により、吸着剤1の25容積%懸濁液(100μL)を反応容器に添加し、D−PBS(−)(100μL)で4回洗浄した。次に、吸着剤1(25μL)が入った反応容器に、オリゴマンノース型糖鎖のD−PBS(−)溶液(濃度500pmol/mL、50μL、添加量25pmol)を添加し、25℃で60分間撹拌することにより、吸着剤1にオリゴマンノース型糖鎖を吸着させた。オリゴマンノース型糖鎖を吸着させた吸着剤はD−PBS(−)で洗浄し、洗浄液全量を回収した。
実施例5は、エポキシ基を導入した多糖系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
多糖系担体として、水に懸濁したSepharose 4 Fast Flow(GEヘルスケア社製、以下、Sepharose4FFという)をグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用し、実施例4の(1)に記載の方法により、エポキシ基を導入したSepharose4FF(以下、エポキシ化Sepharose4FFという)を得た。
(2)エポキシ基を導入した多糖系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化(吸着剤2の作製)
実施例4の(2)に記載の方法により、(1)で作製したエポキシ化Sepharose4FFにシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤2を得た。同じく実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤2へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、固定化量は担体1mLあたり1.13mg、固定化率は50.4%であった。
実施例4の(3)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤2へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は90%であった。
(4)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤2からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
実施例4の(4)に記載の方法により、(3)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤2からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は84%であった。
(5)エポキシ基を導入した多糖系担体へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(5)に記載の方法により、(1)で作製したエポキシ化Sepharose4FFから、エポキシ基をα−チオグリセリンでブロッキングした吸着剤2Bを得た。実施例4の(3)に記載の方法により、吸着剤2Bへのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は3%であった。従って、吸着剤2Bにはフコース含有糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
実施例4の(6)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤2へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は5%であった。従って、吸着剤2にはオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
比較例1は、エポキシ基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加していないフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
システインタグを付加していないフコース結合性レクチンとして、α1−2結合したフコースを含むHタイプ1型糖鎖およびHタイプ3型糖鎖に結合性を有する、市販のフコース結合性レクチン(AiLecS1、和光純薬製、以下、市販フコース結合性レクチンという)を用いた。以下にHタイプ1型糖鎖およびHタイプ3型糖鎖の構造を示した。
Fucα1−2Galβ1−3GlcNAc
Hタイプ3型糖鎖
Fucα1−2Galβ1−3GalNAc
比較例1では、エポキシ基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの固定化を、実施例1と同様にpH7.4で行なった。
実施例4の(1)で作製したエポキシ化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのリン酸緩衝液(pH7.4、200μL)で5回洗浄した。
比較例2では、エポキシ基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの固定化をpH8.4で行なったのち、吸着剤としての評価を実施した。
(1)エポキシ基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの固定化(吸着剤4の作製)
実施例4の(1)で作製したエポキシ化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのTris−HCl緩衝液(pH8.4、200μL)で5回洗浄した。
次に、エポキシ化トヨパールHW−65F(100μL)が入った反応容器に、担体1mLあたりの市販フコース結合性レクチンの仕込み量を2.24mgとして、前述の市販フコース結合性レクチンのD−PBS(−)溶液(濃度1.60mg/mL、140μL)を添加し、40℃で15時間撹拌することにより、市販フコース結合性レクチンをエポキシ化トヨパールHW−65Fに固定化した。固定化反応後、担体を0.05重量%のTween20を含むD−PBS(−)で洗浄することにより、市販フコース結合性レクチンをエポキシ化トヨパールHW−65Fに固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤4を得た。実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤4への市販フコース結合性レクチンの固定化量と固定化率を算出した結果、固定化量は担体1mLあたり0.53mg、固定化率は23.8%であった。
実施例4の(3)に記載の方法により、(1)で作製した吸着剤4へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は15%であった。従って、吸着剤4へのフコース含有糖鎖の吸着率は低いことが明らかとなった。吸着剤4の吸着率が低かった原因として、担体への固定化反応時における市販フコース結合性レクチンの失活が考えられた。
実施例4の(4)に記載の方法により、(2)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤4からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は5%であった。
(4)吸着剤4へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(6)に記載の方法により、(1)で作製した吸着剤4へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は8%であった。従って、吸着剤4にはオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
実施例6は、マレイミド基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
合成高分子系担体として、水に懸濁したトヨパールHW−65F(東ソー社製)をグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用し、実施例4の(1)に記載の方法により、エポキシ化トヨパールHW−65Fを得た。
次に、得られたアミノ化トヨパールHW−65F(2.0g)、ジメチルスルホキシド(関東化学社製、2.0mL、以下DMSOという)、3−マレイミドプロピオン酸N−スクシンイミジル(東京化成社製)とDMSOから調製した3−マレイミドプロピオン酸N−スクシンイミジルのDMSO溶液(濃度10mg/mL、2.0mL)を混合し、35℃で4時間撹拌することにより、マレイミド化反応を行なった。反応後、グラスフィルターを使用してDMSOと水で順次洗浄することにより、マレイミド基を導入したトヨパールHW−65F(以下、マレイミド化トヨパールHW−65F)を得た。
(1)で作製したマレイミド化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのリン酸緩衝液(pH7.4、200μL)で5回洗浄した。
次に、マレイミド化トヨパールHW−65F(100μL)が入った反応容器に、担体1mLあたりのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの仕込み量を2.24mgとして、前述の実施例2で作製したシステインタグを付加したフコース結合性レクチンのD−PBS(−)溶液(濃度2.80mg/mL、80μL)とD−PBS(−)(20μL)を添加し、35℃で4時間撹拌することにより、システインタグを付加したフコース結合性レクチンを、マレイミド化トヨパールHW−65Fに固定化した。固定化反応後、担体を0.05重量%のTween20を含むD−PBS(−)で洗浄することにより、システインタグを付加したフコース結合性レクチンをマレイミド化トヨパールHW−65Fに固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤5を得た。
(3)吸着剤5へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(3)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤5へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は90%であった。
(4)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤5からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
実施例4の(4)に記載の方法により、(3)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤5からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は88%であった。
(5)マレイミド基を導入した多糖系担体へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
(2)に記載の方法により、(1)で作製したマレイミド化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのリン酸緩衝液(pH7.4、200μL)で5回洗浄した。
(3)に記載の方法により、吸着剤5Bへのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は5%であった。従って、吸着剤5Bにはフコース含有糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
実施例4の(6)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤5へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は6%であった。従って、吸着剤5にはオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
実施例7は、マレイミド基を導入した多糖系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
多糖系担体として、水に懸濁したSepharose4FFをグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用し、実施例6の(1)に記載の方法により、マレイミド基を導入したSepharose4FF(以下、マレイミド化Sepharose4FFという)を得た。
(2)マレイミド基を導入した多糖系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの担体への固定化(吸着剤6の作製)
実施例6の(1)に記載の方法により、(1)で作製したマレイミド化Sepharose4FFにシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤6を得た。実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤6へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、固定化量は担体1mLあたり1.18mg、固定化率は52.5%であった。
実施例4の(3)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤6へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は95%であった。
(4)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤6からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
実施例4の(4)に記載の方法により、(3)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤6からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は90%であった。
実施例6の(5)に記載の方法により、(1)で作製したマレイミド化Sepharose4FFから、マレイミド基をα−チオグリセリンでブロッキングした吸着剤6Bを得た。実施例4の(3)に記載の方法により、吸着剤6Bへのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は3%であった。従って、吸着剤6Bにはフコース含有糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
(6)吸着剤6へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(6)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤6へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は3%であった。従って、吸着剤6にはフコースを含まないオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
比較例3 マレイミド基を導入した担体へのシステインタグを付加していないフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価
比較例3は、マレイミド基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
実施例6の(1)で作製したマレイミド化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのリン酸緩衝液(pH7.4、200μL)で5回洗浄した。
実施例8は、ハロアセチル基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
合成高分子系担体として、水に懸濁したトヨパールHW−65F(東ソー社製)をグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用し、実施例4の(1)に記載の方法により、アミノ化トヨパールHW−65Fを得た。
実施例6の(1)に記載の方法により、(1)で作製したブロモアセチル化トヨパールHW−65Fにシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを固定化した、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤8を得た。実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤8へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、固定化量は担体1mLあたり1.10mg、固定化率は48.9%であった。
実施例4の(3)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤8へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は89%であった。
(4)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤2からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
実施例4の(4)に記載の方法により、(3)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤8からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は86%であった。
(5)マレイミド基を導入した多糖系担体へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例6の(5)に記載の方法により、(1)で作製したブロモアセチル化トヨパールHW−65Fのブロモアセチル基をα−チオグリセリンでブロッキングした吸着剤8Bを得た。実施例4の(3)に記載の方法により、吸着剤8Bへのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は4%であった。従って、吸着剤8Bにはフコース含有糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
実施例4の(6)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤8へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は5%であった。従って、吸着剤8にはフコースを含まないオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
実施例9は、ハロアセチル基を導入した多糖系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
多糖系担体として、水に懸濁したSepharose4FFをグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用し、実施例8の(1)に記載の方法により、ブロモアセチル基を導入したSepharose4FF(以下、ブロモアセチル化Sepharose4FFという)を得た。
(2)ハロアセチル基を導入した多糖系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの担体への固定化(吸着剤9の作製)
実施例8の(1)に記載の方法により、(1)で作製したブロモアセチル化Sepharose4FFにシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤9を得た。実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤9へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、固定化量は担体1mLあたり1.21mg、固定化率は53.8%であった。
(3)吸着剤9へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(3)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤9へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は94%であった。
(4)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤6からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
実施例4の(4)に記載の方法により、(3)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤9からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は91%であった。
実施例6の(5)に記載の方法により、(1)で作製したマレイミド化Sepharose4FFから、マレイミド基をα−チオグリセリンでブロッキングした吸着剤9Bを得た。実施例4の(3)に記載の方法により、吸着剤9Bへのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は4%であった。従って、吸着剤9Bにはフコース含有糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
(6)吸着剤9へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(6)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤9へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は4%であった。従って、吸着剤9にはフコースを含まないオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
比較例4は、ハロアセチル基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
比較例3の(1)に記載の方法により、実施例8の(1)で作製したブロモアセチル化トヨパールHW−65Fに市販フコース結合性レクチンを固定化した、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤10を得た。実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤10への市販フコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、反応に使用した市販フコース結合性レクチン量と未反応の市販フコース結合性レクチン量が同じであったことから、市販フコース結合性レクチンはブロモアセチル化トヨパールHW−65Fに固定化されていないことが明らかとなった。従って、吸着剤10へのフコース含有糖鎖およびオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定は行わなかった。
参考例1は、リジンのε−アミノ基を利用した、ホルミル基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
合成高分子系担体として、水に懸濁したトヨパールHW−65F(東ソー社製)をグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用し、実施例4の(1)に記載の方法により、エポキシ化トヨパールHW−65Fを得た。
次に、得られたD−グルカミン導入トヨパールHW−65F(2.0g)と、過ヨウ素酸ナトリウム(関東化学社製)と水から調製した過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(10mg/mL、1.5mL)、水(1.5mL)を混合し、25℃で60分間撹拌することによりホルミル化反応を行なった。反応後、グラスフィルターを使用して多量の水で洗浄することにより、ホルミル基を導入したトヨパールHW−65F(以下、ホルミル化トヨパールHW−65F)を得た。
(1)で作製したホルミル化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0、200μL)で5回洗浄した。
また、実施例4から実施例9および比較例2で作製した吸着剤の、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤としての評価結果を表2に示す。
Claims (9)
- フコース結合性レクチンのN末端またはC末端に、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドを有することを特徴とするタンパク質であって、
フコース結合性レクチンが、(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも2番目のプロリンから156番目のグリシンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または(B)上記(A)のタンパク質のアミノ酸配列において、1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたタンパク質。 - 請求項1に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
- 請求項2記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
- 請求項3記載の発現ベクターにより宿主を形質転換して得られる形質転換体。
- 宿主が大腸菌である、請求項4記載の形質転換体。
- 請求項1に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを宿主に導入して得られた形質転換体を培養する工程と、得られる培養物から前記タンパク質を回収する工程とを含む、タンパク質の製造方法。
- 請求項1に記載のタンパク質が、水に不溶性の粒子状担体に固定化されていることを特徴とする、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤。
- 水に不溶性の粒子状担体が、システインのメルカプト基と反応して共有結合を形成する官能基を有することを特徴とする、請求項7記載の吸着剤。
- 請求項7または8に記載の吸着剤を用いることを特徴とする、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の精製方法。
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