JP6864287B2 - 細胞質の交換方法、細胞の製造方法、及び装置 - Google Patents
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Description
術がある。これは、2つ以上の細胞を融合させ、1つの細胞を形成する技術である。この方法では、細胞融合後の1つの細胞内には2つ以上の細胞に由来する細胞核と細胞質が存在する。
供することを目的とする。
に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
<実施形態I>
本発明の一実施形態に係る第1の細胞の細胞質の交換方法は、第1の細胞の細胞質を除去する第1の工程と、第2の細胞の細胞質を第1の細胞へ導入する第2の工程を含む、細胞質の交換方法であって、
(1)第1の工程の後で第2の工程が行われる、または
(2)第1の細胞の細胞質の40%〜60%と、第2の細胞の細胞質の40%〜60%とが交換される第1の細胞質交換工程によって、第1の工程と第2の工程が同時に行われる、方法である。
ここでは、図1を用いて、上記交換方法(1)を用いて行われる、本発明の一実施形態に係る細胞の製造方法を具体的に説明するが、本発明は本実施形態に限定されない。本実施形態では、第1の流路と第2の流路を備え、第1の流路の壁と第2の流路の壁は孔で連通している流路を用い、第1の細胞の細胞核を有し、第2の細胞の細胞核を有さず、第1の細胞の細胞膜と第2の細胞の細胞質とを含む細胞を製造する。
なる種類であってもよい。孔1080の形状は特に限定されず、スリット上、円状、長円上であってもよく、壁の厚みと同じ深さを有するため、厚い壁の場合は流路状であってもよい。
加する電圧は、従来細胞融合に用いられることが知られている強さとすることができるが、0.1〜50Vであることが好ましく、0.5V〜20Vであることがより好ましく、1〜10Vであることがさらに好ましく、1〜3Vであることがさらに好ましく、約2Vであることがさらに好ましい。また印加する時間は、特に限定されないが、1μsec〜1msecであることが好ましく、1μsec〜500μsecであることがより好ましく、1μsec〜100μsecであることがさらに好ましいが、可能な限り短い時間であることがより好ましい。中間体1040が細胞である場合、本工程では、細胞融合後、第1の細胞1030と中間体1040の細胞質がお互いに混入する。
電界を発生させ、その中で細胞を誘導してもよい。
による電界集中により流路の壁で生じる。
加する電圧は、従来細胞融合に用いられることが知られている強さであればよいが、1〜10Vであることが好ましく、2Vであることがさらに好ましい。また印加する時間は、100μsecであることが好ましく、100μsec以下で可能な限り短い時間であることがさらに好ましい。
の流路内の流れ1120の速度より大きくし、その流速差を利用することにより行うことができる。第1の流路内の流れ1120の流速は0、つまり第2の流路内に流れのない状態であってもよい。ここで、孔1080の最大幅または最大径を、第2の細胞の核の径より小さくしておくことにより、第2の細胞1150の細胞核1140は、孔1080を通過できずに第2の流路内に残る。具体的には、孔1080の最大幅または最大径は、第2の細胞1150の種類によって適宜調整すればよいが、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがさらに好ましい。なお、移動させる細胞質の割合は特に限定されないが、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
胞質1130に交換することによって、第1の細胞1030の細胞核1010を有し、第2の細胞1150の細胞核1140を有さず、第1の細胞1030の細胞膜と第2の細胞1150の細胞質1130とを含む細胞1170の製造が完了する。
ここでは、上記交換方法(2)を用いて行われる、本発明の一実施形態に係る細胞の製造方法を具体的に説明するが、本発明は本実施形態に限定されない。本実施形態では、第1の流路と第2の流路を備え、第1の流路の壁と第2の流路の壁は孔で連通している流路を用い、第1の細胞の細胞核を有し、第2の細胞の細胞核を有さず、第1の細胞の細胞膜と第2の細胞の細胞質とを含む細胞を製造する。第1の工程から第3の工程は、実施形態Iに準じるが、中間体として、第2の細胞を用いる。第3の工程終了後、第1の細胞と第2の細胞の細胞質がお互いに混入する。このように、本実施形態では、第1の細胞の細胞
質を除去する第1の工程と、第2の細胞の細胞質を第1の細胞へ導入する第2の工程が同時に行われる。この際に、第1の対を融合させたままで、長時間放置すると、第1の細胞と第2の細胞の間で細胞質が均一になるが、交換される細胞質の割合は特に限定されず、第1の細胞の細胞質の10%〜25%と、第2の細胞の細胞質の10%〜25%とが交換されることが好ましく、第1の細胞の細胞質の25%〜40%と、第2の細胞の細胞質の25%〜40%とが交換されることがより好ましく、第1の細胞の細胞質の40%〜60%と、第2の細胞の細胞質の40%〜60%とが交換されることがさらに好ましい。そして、その後、第1の細胞と中間体とを切り離す第5の工程を行う。第5の工程の詳細は、実施形態IIに準じる。
以下、上記の方法を実行することができる本発明の装置の一実施態様を、図2(1)を用いて詳細に説明する。本発明の装置は、細胞の細胞質を交換するための装置であって、第1の流路2030及び第2の流路2040と、第1の流路2030及び第2の流路2040のそれぞれ接続する第1の細胞供給部2010と第2の細胞供給部2020と、第1の流路の壁と第2の流路の壁との間に設けられた孔2050と、孔2050を挟んで設けられた電極2080と、第1の流路2030及び第2の流路2040の流速を調節する流速調節部2060と、流速調節部2060に設けられた吸引路2070と、各吸引口2071,2072,2073に設けられたポンプ2211,2212,2213と、直流交流信号発生装置2090と、顕微鏡2100とを備える。第1の流路2030及び第2の流路2040は、実質的に平行に走っていることが好ましい。
図2(2)(3)に、流速調節部2060の拡大図を示し、第1の流路2030及び第2の流路2040内の溶液の流速の調節方法を以下で説明する。
弁の構成例を図2(1)を参照しながら、以下に説明する。
孔2050は、図1で詳細に説明した物に準じる。
以下、本発明の一実施態様にかかる上記装置を用い、細胞質を交換するための使用方法と、それによる新規細胞の製造方法を詳細に説明する。
2の細胞を孔2050の入り口を構成する孔近傍へ誘導する。ここで、第3の細胞供給部を設け、第2の細胞供給部2020を中間体用にし、第3の細胞供給部を第2の細胞用にしてもよい。
本実施例では、Jurkat細胞の細胞質を、細胞質を除去した別のJurkat細胞内へ移植する。用いた装置は、以下の通りである。
交流印加条件:周波数1 MHz、電圧5 V
パルス印加条件:時間100 μs、電圧10 V
・デジタルオシロスコープ
・バイポーラ電力増幅装置
・位相差・蛍光顕微鏡
・Calcein, AM - Special Packaging (Excitation/Emission (nm): 494/514 C3100MP、サーモフィッシャーサイエンティフィック社、マサチューセッツ・米国)、細胞質を緑色染
色する
・CellTraceTM Calcein Red-Orange, AM - Special Packaging (Excitation/Emission (nm): 577/590、C34851、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、細胞質を赤色染色する
・CellstainR Hoechst 33342 solution (Excitation/Emission (nm): 350/461、346-0795
1、(株)同仁化学研究所、東京・日本)、細胞核を青色染色する
Jurkat細胞懸濁液(1x106個/mL、DMEM+10%FBS)1mLずつ2本の15mL遠心管に加え、一方の遠心管AにCalcein AM 1μL、もう一方の遠心管BにはCalcein red-orange 11μLを添加し、その後Hoechst33342 1μLを両方の遠心管に加えて、37℃で3分間インキュベーションして細胞質と細胞核を染色した。余分な染色試薬を除くため、遠心管を600rpmで2分間遠心した後、上清を除去した。
図2に示したようなPDMSデバイス上の細胞供給口Aへ遠心管Aの細胞懸濁液(細胞A含有)を加え、細胞供給口であるサンプリングポートBへ遠心管Bの細胞懸濁液(細胞B含有)を加えた。ピペットマン1で細胞懸濁液を吸引し、各細胞を細胞融合路上へ導いた(図4−1)。交流印加による誘電泳動力により細胞Aと細胞Bを細胞融合路内へ導き、細胞融合路を挟んで細胞AとBの対を形成させた(図4−2〜4、2:位相差;3〜4:蛍光視野)。パルスを1回以上印加しながら、パルス印加過程を位相差と蛍光視野で観察して、細胞融合による蛍光色素の移動を確認した(図4−5)。
交流印加を停止して、ピペットマン2で吸引することで、細胞Bの細胞質を細胞Aへ移動させた(図4−6〜7、6:蛍光視野;7:位相差)。引き続きピペットマン2で吸引することで、細胞Bから細胞Aを分離した(図4−8〜9)。細胞Bを細胞融合路で保持するため再び交流を印加することで、細胞Bの核を孔に維持した(図4−10)。
再びピペットマン1で細胞懸濁液を吸引し、別の細胞Aを細胞融合路上へ導いた(図4−11〜12)。交流印加による誘電泳動力により細胞Aを細胞融合路内へ導いて、細胞融合路を挟んで細胞AとBの対を形成させた(図4−13〜15、13:位相差;14〜15:蛍光視野)。パルスを1回以上印加しながら、パルス印加過程を位相差と蛍光視野で観察し、細胞融合による蛍光色素の移動を確認した(図4−16)。
交流印加を停止して、ピペットマン3で吸引することで、細胞Bへ細胞Aの細胞質を移動させた(図4−17〜18、17:位相差;18:蛍光視野)。引き続きピペットマン3で吸引することで、細胞Bを細胞Aから分離した(図4−19〜20)。これにより、細胞Bの細胞核は、細胞質との関係において、細胞Aの細胞質内へ移植したのと同様の効果が得られた。
本実施例2では、iPS細胞の細胞質を、細胞質を除去した線維芽細胞へ移植した。すなわち、iPS細胞(Calcein AMとHoechst33342で染色)を実施例1の細胞Aの代わりに、線維芽細胞 (Calcein red-orangeとHoechs33342で染色)を実施例1の細胞Bの代わりに用い、同じ実験条件で、実験を行ったところ、実験1と同様に、iPS細胞の細胞質を、細胞質を除去した線維芽細胞へ移植することができ、iPS細胞の細胞核を線維芽細胞の細胞質に移植したのと同様の効果が得られた。
1020 第1の細胞の細胞質
1025 第1の細胞の細胞膜
1030 第1の細胞
1035 操作後の第1の細胞
1040 中間体
1045 操作後の中間体側
1050 溶液の流れ(第1の流路と第2の流路で流速が同じ場合)
1060 交流
1070 絶縁体の壁
1080 孔
1090 電圧印加
1100 第1の融合細胞
1110 第1の流路における溶液の流れ
1120 第2の流路における溶液の流れ
1130 第2の細胞の細胞質
1140 第2の細胞の細胞核
1150 第2の細胞
1160 第2の融合細胞
1170 細胞質を交換した細胞
2010 第1の細胞の細胞供給部
2020 第2の細胞及び中間体の細胞供給部
2030 第1の流路
2040 第2の流路
2050 孔
2060 流速調節部
2070 吸引路
2071 第1の吸引口
2072 第2の吸引口
2073 第3の吸引口
2080 電極
2090 直流交流信号発生制御装置
2100 顕微鏡
2110 圧力緩衝部
2200 画像認識部
2210 ポンプ
2211 ポンプ
2212 ポンプ
2213 ポンプ
2220 流速制御装置
Claims (16)
- 第1の流路及び第2の流路と、
第1の流路及び第2の流路のそれぞれの同じ側の一端に接続する細胞供給部と、
第1の流路の壁と第2の流路の壁との間に設けられた孔と、
孔を挟んで設けられた電極と、
前記電極に接続された直流交流信号発生装置と、
を備えた装置を用いて、
第1の細胞の細胞核を有し、第1の細胞の細胞膜と第2の細胞の細胞質とを含む細胞を製造する製造方法であって、
第1の流路にある第1の細胞と、第2の流路にある中間細胞を、流路中の溶液の流れ及び/又は前記直流交流信号発生装置によって発生させた交流電界によって、前記孔に誘導する第1の工程と、
前記直流交流信号発生装置による交流電界中の誘電泳動力により、前記孔を挟んで第1の細胞と前記中間細胞の第1の細胞対を形成させる第2の工程と、
第1の細胞対に前記直流交流信号発生装置で電圧を印加することによって細胞融合させて、第1の融合細胞を作製する第3の工程と、
第2の流路内の流れの速度を、第1の流路内の流れの速度より大きくすることにより、第1の細胞の細胞質を前記中間細胞へ移動させる第4の工程と、ひきつづき第1の細胞と前記中間細胞を切り離す第5の工程と、
第2の細胞を、流路中の溶液の流れ及び/又は前記直流交流信号発生装置によって発生させた交流電界により、第2の流路の前記孔に誘導する第6の工程と、
前記直流交流信号発生装置による交流電界中の誘電泳動力により、前記孔を挟んで第1の細胞と第2の細胞の第2の細胞対を形成させる第7の工程と、
第2の細胞対に前記直流交流信号発生装置で電圧を印加することによって細胞融合させて第2の融合細胞を作製する第8の工程と、
第1の流路内の流れの速度を、第2の流路内の流れの速度より大きくすることにより、第2の細胞の細胞質を第1の細胞へ移動させる第9の工程と、ひきつづき第1の細胞を、第2の細胞から切り離す第10の工程と、
を含み、
第4の工程において、第1の細胞の細胞質が90%以上除去され、
第9の工程において、第2の細胞の細胞質が、90%以上の細胞質が除去された前記第1の細胞へ導入される、製造方法。 - 前記製造された細胞が、90%以上の第1の細胞の細胞膜と、90%以上の第2の細胞の細胞質を含む、請求項1に記載の細胞の製造方法。
- 前記製造された細胞が、95%以上の第1の細胞の細胞膜と、95%以上の第2の細胞の細胞質を含む、請求項1に記載の細胞の製造方法。
- 第1の流路及び第2の流路は、前記細胞供給部と反対側の端に共通して第1の吸引口を有し、第1の吸引口にはポンプが設けられ、
第1の工程および/または第6の工程において、第1の吸引口からポンプで吸引することによって細胞を前記孔へ誘導する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞の製造方法。 - 第1の流路及び第2の流路はそれぞれ、前記孔の第1の吸引口側で分岐し、分岐した第1の流路及び第2の流路のそれぞれの端に第2の吸引口及び第3の吸引口を有し、第2の吸引口及び第3の吸引口にはそれぞれポンプが設けられ、
第4の工程及び第9の工程において、それぞれ第3の吸引口及び第2の吸引口から、ポンプで吸引することによって細胞質を移動させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞の製造方法。 - 第1の流路及び第2の流路はそれぞれ、前記孔の第1の吸引口側で分岐し、分岐した第1の流路及び第2の流路のそれぞれの端に第2の吸引口及び第3の吸引口を有し、第2の吸引口及び第3の吸引口にはそれぞれポンプが設けられ、
第5の工程において、第1の細胞を誘電泳動力で前記孔で保持しながら、第3の吸引口から、ポンプで吸引することによって第1の細胞から中間細胞が切り離される、請求項1〜3に記載の細胞の製造方法。 - 第1の流路及び第2の流路はそれぞれ、前記孔の第1の吸引口側で分岐し、分岐した第1の流路及び第2の流路のそれぞれの端に第2の吸引口及び第3の吸引口を有し、第2の吸引口及び第3の吸引口にはそれぞれポンプが設けられ、
第10の工程において、第2の細胞を誘電泳動力で前記孔で保持しながら、第2の吸引口から、ポンプで吸引することによって第2の細胞から第1の細胞が切り離される、請求項1〜3に記載の細胞の製造方法。 - 前記孔の最大幅または最大径は第1の細胞の核の径及び第2の細胞の核の径より小さい、請求項1〜7のいずれか1項に記載の細胞の製造方法。
- 前記孔の最大幅または最大径は6μm以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の細胞の製造方法。
- 第1の流路及び第2の流路が平行である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の細胞の製造方法。
- 前記第1の細胞は体細胞であり、前記第2の細胞は幹細胞である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の細胞の製造方法。
- 前記幹細胞は、iPS細胞、ES細胞、神経幹細胞、上皮幹細胞、肝幹細胞、生殖幹細胞、造血幹細胞、間葉幹細胞、骨格筋幹細胞からなる群から選択される、請求項11に記載の細胞の製造方法。
- 前記体細胞は、線維芽細胞または血球細胞である、請求項11に記載の細胞の製造方法。
- 前記装置が、前記孔と前記第1〜第3の吸引口のうち少なくとも1つの吸引口間に圧力緩衝部を備える、請求項1〜13のいずれか1項に記載の細胞の製造方法。
- 前記装置において、
画像認識装置を備えた顕微鏡が設けられ、
前記画像認識装置と前記ポンプに、流速制御装置が設けられた、請求項1〜14のいずれか1項に記載の細胞の製造方法。 - 前記中間細胞が第2の細胞と同じ種類の細胞である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の細胞の製造方法。
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