本発明のフレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルムは、金属酸化物粒子とシランカップリング剤とポリイミドとが含有され、前記ポリイミドが、前記酸無水物B及び前記ジアミンBを重合させてなるポリイミド、並びに前記酸無水物C、前記ジアミンC及び前記ジアミンDを重合させてなるポリイミドのいずれかのポリイミドであり、金属酸化物粒子は、平均1次粒径が10〜100nmの範囲内であり、かつ、含有量が透明ポリイミドフィルム中の全固形分(100質量%)に対し、20〜70質量%の範囲内であり、透明ポリイミドフィルムの投影画像を評価したとき、8bitグレースケールにおけるグレーバリューの標準偏差σが0.50〜1.10の範囲内に、かつ2値化画像における黒部分の占有面積率が50%以下に調整されていることを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、金属酸化物粒子がシリカ粒子であることが好ましい。透明ポリイミドとシリカとの屈折率が近いことで散乱が起きにくく、より高透明にできる。
また、脱水縮合により発生した水を効果的に取り除く観点から、芳香族系化合物が更に含有されていることが好ましく、さらに前記芳香族系化合物が下記芳香族系化合物A、下記芳香族系化合物B、及び下記芳香族系化合物Cのいずれかの芳香族系化合物であることがより好ましい。
一方で、脱水縮合の反応速度を十分遅くすることでポリイミド製膜時の影響を少なくするという観点から、シランカップリング剤として、アミノ基等の触媒効果のある基を含まないものを用いることが好ましい。さらに、ポリイミドとの相溶性を考慮すると、シランカップリング剤が、アクリル基、メタクリル基、イソシアヌレート基、フェニル基及びフルオロ基から選択される少なくとも一つの基を有することが好ましい。
本発明は、金属酸化物粒子とシランカップリング剤とポリイミドとが含有されたフレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルムの製造方法であって、金属酸化物粒子と、シランカップリング剤と、ポリイミドと、溶剤とを含有するドープを調製する工程と、ドープを支持体上に流延してウェブを形成する工程と、を有し、前記ポリイミドが、前記酸無水物B及び前記ジアミンBを重合させてなるポリイミド、並びに前記酸無水物C、前記ジアミンC及び前記ジアミンDを重合させてなるポリイミドのいずれかのポリイミドであり、金属酸化物粒子は、平均1次粒径が10〜100nmの範囲内であり、かつ、含有量が透明ポリイミドフィルム中の全固形分(100質量%)に対し、20〜70質量%の範囲内であり、透明ポリイミドフィルムの投影画像を評価したとき、8bitグレースケールにおけるグレーバリューの標準偏差σを0.50〜1.10の範囲内に、かつ矩形エリアの2値化画像における黒部分の占有面積率を50%以下に調整するフレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルムの製造方法を提供することができる。
また、脱水縮合により発生した水を効果的に取り除く観点から、ドープを調製する工程において、ドープが更に共沸脱水剤を含有することが好ましい。
本発明は、上記透明ポリイミドフィルムを具備する有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを提供することができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
《透明ポリイミドフィルム》
本発明のフレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルム(以下、単にポリイミドフィルム、フィルムともいう。)は、金属酸化物粒子とシランカップリング剤とポリイミドとが含有され、前記ポリイミドが、前記酸無水物B及び前記ジアミンBを重合させてなるポリイミド、並びに前記酸無水物C、前記ジアミンC及び前記ジアミンDを重合させてなるポリイミドのいずれかのポリイミドであり、金属酸化物粒子の平均1次粒径が10〜100nmの範囲内であり、透明ポリイミドフィルムの投影画像を評価したとき、8bitグレースケールにおけるグレーバリューの標準偏差σが0.50〜1.10の範囲内に、かつ2値化画像における黒部分の占有面積率が50%以下に調整されていることを特徴とする。
ここで、透明とは、フィルムの全光線透過率が50%以上であることをいい、好ましくは70%以上であり、より好ましくは85%以上である。
以下、グレーバリューの標準偏差σ及び2値化画像における黒部分の占有面積率の測定方法について説明する。
〈グレーバリューの標準偏差σ及び2値化画像における黒部分の占有面積率〉
図1は、本発明の透明ポリイミドフィルムの投影画像の解析手法を示す模式図である。
まず、フィルム試料1(透明ポリイミドフィルム)と白色光源2(株式会社日本技術センター製 S−light)との距離を60cmに調整し、白色光源2からフィルム試料1に対し、斜め45°方向から光照射する。フィルム試料1と、当該フィルム試料1と平行に配設された投影面3との距離を70cmに調整し、フィルム試料1の影を投影面3に投影する。
この投影画像を投影面3から90°の方向に80cmの距離で配設されたカメラ4(例えば、Canon製EOS KISS50、レンズEF−S 18=55mm、ISO感度100、絞り5.6、シャッター速度1/10秒、ホワイトバランス マニュアル設定)にて撮影し撮影画像を得る。
白色光源2、フィルム試料1、投影面3及びカメラ4は、同一高さとなるようにする。
次いで、得られた投影画像について、以下の手順1〜7に従って、グレーバリューの標準偏差σ及び2値化画像における黒部分の占有面積率K(%)を算出する。
1.撮影画像をフリーソフトImageJを用いてパソコンに読み込む。
2.実際の撮影画像において1cm×5cmの矩形の評価エリアを設定する。このとき矩形の長辺がフィルム試料の搬送方向になるようにする。
3.フリーソフトImageJによって、8bitグレースケール化を行う。
4.フリーソフトImageJによってバックグラウンド補正を行う。
5.グレースケールにおけるグレーバリュー(画素値)の標準偏差σ及び平均値mを算出する。
6.平均値mを閾値として、矩形の評価エリアの2値化を行う。
7.2値化によって得られる黒部分(暗部)の面積を全体の面積で除して、黒部分の占有面積率K(%)を算出する。
ここで、フリーソフトImageJとは、WayneRasband作成のImageJ1.32Sである。
バックグラウンド補正は、例えば、画像の右半分と左半分の領域で同一の明るさを有しているにもかかわらず、異なる明るさとして出力されたり、画像の左側から右側にいくにしたがって徐々に明るくなる結果として出力されたりする場合に行い、ヒストグラム化、平均階調算出及び2値化処理をして黒部分(暗部)の占有面積率K(%)を求めることが好ましい。
グレースケールにおけるグレーバリューの標準偏差σは、下記方法にて算出する。
グレーバリューのN個のデータx1、x2、…、xNを母集団とし、その母集団の相加平均(母平均)mを下記数式(1)によって求める。
次に、上で求めた母平均mを使って下記数式(2)で分散σ2を求める。
この分散σ2の正の平方根を、標準偏差σとする。
本発明の透明ポリイミドフィルムのグレースケールにおけるグレーバリューの標準偏差σは0.50〜1.10の範囲内であるが、ムラとして視認されない範囲と生産性とを考慮すると、0.70〜1.05の範囲であることがより好ましい。
また、本発明の透明ポリイミドフィルムの矩形エリアの2値化画像における黒部分の占有面積率は50%以下に調整されているが、ムラとして視認されない範囲と生産性とを考慮すると、40〜50%の範囲内であることが好ましく、40〜45%の範囲内であることがより好ましい。
〈ポリイミド〉
本発明に係るポリイミドは、イミド構造を有する樹脂であり、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子である。ポリイミドは、ジアミン又はその誘導体と酸無水物又はその誘導体とから形成されることが好ましい。
具体的には、ポリイミドは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドであることが好ましい。下記一般式(1)において、(−C(=O))2−R−(C(=O)−)2を含む部分が酸無水物又はその誘導体由来の部分であり、=N−A−N=を含む部分がジアミン又はその誘導体由来の部分である。
一般式(1)中、Rは、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又は炭素数4〜39の脂肪族炭化水素若しくは脂環式炭化水素由来の4価の基、又はこれらの組み合わせからなる4価の基を表す。Aは、炭素数1〜39の2価の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素若しくは芳香族炭化水素環由来の2価の基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。
Rが上記いずれか二つ以上の組み合わせである場合には、これらは、−O−、−SO2−、−CO−、−CH2−、−C(CH3)2−、−OSi(CH3)2−、−(CH2)2O−、−CF2−、−C(CF3)2−、−OSi(CF3)2−、−(CF2)2O−及び−S−からなる群から選ばれる少なくとも一つの連結基を介して連結されてもよい。
また、Rで表される芳香族炭化水素環、芳香族複素環、炭素数4〜39の脂肪族炭化水素又は脂環式炭化水素中の少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子、好ましくはフッ素原子)、炭素数1〜8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基など)、又はこれらのハロゲン化アルキル基(例えば、モノフルオロメチル基(−CFH2)、ジフルオロメチル基(−CF2H)、トリフルオロメチル基(−CF3)、モノフルオロエチル基(−CHF−CH3、−CH2−CH2F)、ジフルオロエチル基(−CF2−CH3、−CHF−CH2F、−CH2−CHF2)など)で置換されてもよい。
Rで表される芳香族炭化水素環としては、例えば、フルオレン環、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
Rで表される芳香族複素環としては、例えば、シロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、チエノチオフェン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環(カルバゾール環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったもの)、ジベンゾシロール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾチオフェン環やジベンゾフラン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わった環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、アクリジン環、ベンゾキノリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、ジベンゾカルバゾール環、インドロカルバゾール環、ジチエノベンゼン環等が挙げられる。
Rで表される炭素数4〜39の4価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ブタン−1,1,4,4−トリイル基、オクタン−1,1,8,8−トリイル基、デカン−1,1,10,10−トリイル基等が挙げられる。
Rで表される炭素数4〜39の4価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブタン−1,2,3,4−テトライル基、シクロペンタン−1,2,4,5−テトライル基、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトライル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトライル基、3,3′,4,4′−ジシクロヘキシルテトライル基、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基等が挙げられる。
中でも、Rは、下記構造式で表される基R−1〜R−4であることが好ましい。
Rは、好ましくは基R−1〜R−3であり、特に好ましくは基R−1である。
Aが上記いずれか2以上の組み合わせである場合には、これらは、−O−、−SO2−、−CO−、−CH2−、−C(CH3)2−、−OSi(CH3)2−、−(CH2)2O−、−CF2−、−C(CF3)2−、−OSi(CF3)2−、−(CF2)2O−及び−S−からなる群から選ばれる少なくとも一つの連結基を介して連結されてもよい。
Aで表される炭素数1〜39の2価の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基若しくは芳香族炭化水素環基中の少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子、好ましくはフッ素原子)、炭素数1〜8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基など)、又はこれらのハロゲン化アルキル基(例えば、モノフルオロメチル基(−CFH2)、ジフルオロメチル基(−CF2H)、トリフルオロメチル基(−CF3)、モノフルオロエチル基(−CHF−CH3、−CH2−CH2F)、ジフルオロエチル基(−CF2−CH3、−CHF−CH2F、−CH2−CHF2)など)で置換されてもよい。
Aで表される、上記連結基を有する又は有さない炭素数1〜39の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基A1−1〜A1−4が挙げられる。
上記構造式において、m及びnは繰り返し単位の数を表す。Xは、炭素数1〜3のアルカンジイル基を表す。
繰り返し単位数nは、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数である。
Xは、炭素数1〜3のアルカンジイル基(メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基)を表すが、メチレン基であることが好ましい。
Aで表される炭素数1〜39の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基A2−1〜A2−8が挙げられる。
Aで表される、上記連結基を有する又は有さない炭素数1〜39の2価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、下記構造式で表される基A3−1〜A3−12が挙げられる。
Aで表される脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素環基の組み合わせからなる基としては、例えば、下記構造式で表される基A4−1〜A4−26が挙げられる。
中でも、Aは、基A4−7、A4−23、A4−25、A4−26であることが好ましく、基A4−7、A4−25であることがより好ましく、基A4−25であることが特に好ましい。
これらのうち、本発明に係るポリイミドは、フッ素原子を有することが、ポリイミドとシランカップリング剤の脱水縮合により生成した水を効率的に除去するという観点から好ましい。
以上から、ポリイミドは、Rが基R−1、Aが基A4−25である構造を有することが好ましい。
なお、ポリイミドがフッ化ポリイミドである場合、フッ素原子の含有率は、特に制限されないが、フィルム中に1〜40質量%程度であることが好ましい。このような量であれば、得られるフィルムは、透明性に優れ、また、熱収縮による熱矯正を行いやすい。
一般式(1)で表される繰り返し単位は、全ての繰り返し単位に対して、好ましくは10〜100mol%の範囲内、より好ましくは50〜100mol%の範囲内、更に好ましくは80〜100mol%の範囲内、特に好ましくは90〜100mol%の範囲内である。
また、ポリイミド1分子中の一般式(1)の繰り返し単位の個数は、10〜2000の範囲内、好ましくは20〜200の範囲内であり、この範囲において、更にガラス転移温度が230〜350℃の範囲内であることが好ましく、250〜330℃の範囲内であることがより好ましい。
〈ポリイミドの合成方法〉
上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの合成方法としては、特に制限されず、公知の方法を適用できる。例えば、芳香族、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸、又はその誘導体と、ジアミン又はその誘導体とを反応させてポリアミド酸を合成し、当該ポリアミド酸をイミド化させることによって、ポリイミドを合成することができる。
芳香族テトラカルボン酸としては、例えば、4,4′−ビフタル酸無水物、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,4′−オキシジフタル酸無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(ピグメントレッド224)、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−フェニル]フルオレン無水物等が挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が挙げられる。
脂環式テトラカルボン酸としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸の誘導体としては、例えば、脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸エステル類、脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸、又はその誘導体のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
ここで、誘導体とは、脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸に変化しうる化合物であり、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物の場合、当該無水物に代えて二つのカルボキシ基を有する化合物、これら二つのカルボキシ基の中の片方又は両方がエステル化されたエステル化物である化合物、これら二つのカルボキシ基の中の片方又は両方がクロル化された酸クロライド等が好適に用いられる。
このような化合物(アシル化合物)を用いることにより、高い耐熱性と優れた光学特性とを有し、着色(黄変)の少ないポリイミドフィルムを得ることができる。
脂肪族テトラカルボン酸エステル類としては、例えば、上記脂肪族テトラカルボン酸のモノアルキルエステル、ジアルキルエステル、トリアルキルエステル、テトラアルキルエステルが挙げられる。
脂環式テトラカルボン酸エステル類としては、例えば、上記脂環式テトラカルボン酸のモノアルキルエステル、ジアルキルエステル、トリアルキルエステル、テトラアルキルエステルが挙げられる。なお、アルキル基部位は、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましい。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物等が挙げられる。特に好ましくは、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である。
一般に、脂肪族ジアミンを構成成分とするポリイミドは、中間生成物であるポリアミド酸とジアミンが強固な塩を形成するため、高分子量化するためには塩の溶解性が比較的高い溶媒(例えば、クレゾール、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等)を用いることが好ましい。ところが、脂肪族ジアミンを構成成分とするポリイミドでも、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物を構成成分としている場合には、ポリアミド酸とジアミンの塩は比較的弱い結合で結ばれているので、高分子量化が容易で、フレキシブルなフィルムが得られやすい。
他にも、例えば、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[6.4.0.02,7]ドデカン−1,8:2,7−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等を用いることができる。
また、フルオレン骨格を有する酸無水物又はその誘導体を用いてもよい。ポリイミド特有の着色を改善する効果を有する。フルオレン骨格を有する酸無水物としては、例えば、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン酸二無水物等を用いることができる。
芳香族、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸、又はその誘導体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、ポリイミドの溶剤可溶性、ポリイミドフィルムのフレキシビリティ、熱圧着性、透明性を損なわない範囲で、他のテトラカルボン酸又はその誘導体(特に酸二無水物)を併用してもよい。
このような他のテトラカルボン酸又はその誘導体としては、例えば、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン等の芳香族系テトラカルボン酸及びこれらの誘導体(特に酸二無水物)、エチレンテトラカルボン酸等の炭素数1〜3の脂肪族テトラカルボン酸及びこれらの誘導体(特に酸二無水物)等が挙げられる。
酸二無水物としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、4,4′−オキシジフタル酸無水物であることが、透明性に優れる点、及び熱収縮による熱矯正をしやすい観点で好ましい。また、温湿度が変動する環境(特に高温高湿環境)下での黄変や濁りの更なる抑制効果の観点からは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリドが更に好ましい。
上記一般式(1)中の(−C(=O))2−R−(C(=O)−)2を含む部分(酸無水物又はその誘導体由来の部分)は任意に混合して用いてもよいが、上記好ましい酸二無水物由来の部分の含有量が、全体の50〜100mol%の範囲内となることが好ましく、80〜100mol%の範囲内となることがより好ましい。
ジアミン又はその誘導体としては、例えば、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、イソシアン酸エステル、又はこれらの混合物のいずれでもよく、芳香族ジアミンであることがポリイミドフィルムの白化を抑制できる観点から好ましい。
なお、本発明において、芳香族ジアミンとは、アミノ基が芳香族環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、その他の置換基(例えば、ハロゲン原子、スルホニル基、カルボニル基、酸素原子等)を含んでいてもよい。脂肪族ジアミンとは、アミノ基が脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香族炭化水素環基、その他の置換基(例えば、ハロゲン原子、スルホニル基、カルボニル基、酸素原子等)を含んでいてもよい。
芳香族ジアミンの例としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、オクタフルオロベンジジン、3,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノビフェニル、2,6−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(2−メチル−4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−メチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、α,α′−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(3−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(3−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)4−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)アダマンタン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)アダマンタン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)アダマンタン、1,4−フェニレンジアミン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3−アミノベンジルアミン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、ビス(2−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−エチレンジアニリン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル、2,5−ジエチル−4,6−ジメチルベンゼン−1,3−ジアミン、4,4′−[イソプロピリデンビス[(4,1−フェニレン)オキシ]]ビスアニリン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−イソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−アミノ−イソプロピル)ベンゼン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、シロキサンジアミン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,3−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,2−ビス(4,4′−ジアミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4′−ジアミノメチルシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
また、ポリイミド特有の着色を改善する目的でフルオレン骨格を有するジアミン又はその誘導体を用いてもよい。
フルオレン骨格を有するジアミン又はその誘導体としては、例えば、9,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−エチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン等が挙げられる。
また、トリアジン母核を有する下記一般式(2)で表される構造を有するジアミンを用いてもよい。
一般式(2)中、R1は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基を表す。R2は、炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基を表す。R1とR2とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
R1で表される炭素数1〜12のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましく炭素数1〜6のアルキル基である。
R2で表される炭素数1〜12のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましく炭素数1〜6のアルキル基である。
R1、R2で表される炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ビフェニル基などが挙げられる。
トリアジンの二つのNH基に結合するアミノアニリノ基は、4−アミノアニリノ又は3−アミノアニリノであり、同じであっても異なっていてもよいが、4−アミノアニリノが好ましい。
トリアジン母核を有する上記一般式(2)で表される構造を有するジアミンとしては、具体的には、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ビフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−N−メチルアニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−N−メチルナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−メチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−メチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジエチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−アミノ−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
ジアミン誘導体であるイソシアン酸エステルとしては、例えば、上記芳香族又は脂肪族ジアミンとホスゲンとを反応させて得られるジイソシアネートが挙げられる。
また、他のジアミン誘導体としては、ジアミノジシラン類も挙げられ、例えば上記芳香族又は脂肪族ジアミンとクロロトリメチルシランとを反応させて得られるトリメチルシリル化した芳香族又は脂肪族ジアミンが挙げられる。
ジアミンとしては、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル、2,5−ジエチル−4,6−ジメチルベンゼン−1,3−ジアミン、4,4′−[イソプロピリデンビス[(4,1−フェニレン)オキシ]]ビスアニリン、ビス(アミノメチル)ノルボルナンであることが好ましい。また、温湿度が変動する環境(特に高温高湿環境)下での黄変や濁りの更なる抑制効果の観点からは、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)ノルボルナンがより好ましく、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニルが特に好ましい。
上記一般式(1)中の=N−A−N=を含む部分(ジアミン又はその誘導体由来の部分)は任意に混合して用いてもよいが、上記好ましいジアミン由来の部分の含有量が、全体の20〜80mol%の範囲内となることが好ましく、40〜60mol%の範囲内となることがより好ましい。
ポリアミド酸は、テトラカルボン酸又はその誘導体とジアミン又はその誘導体とを反応させて合成する。詳細には、ポリアミド酸は、適当な溶剤中で、テトラカルボン酸類の少なくとも1種類とジアミン類の少なくとも1種類とを重合反応させることにより得られる。
ポリアミド酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物を、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコールを用いて開環することによりジエステル化し、得られたジエステルを適当な溶剤中でジアミンと反応させることにより得ることができる。さらに、ポリアミド酸エステルは、上記のようにして得られたポリアミド酸のカルボン酸基を、上記のようなアルコールと反応させることによりエステル化することによっても得ることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、従来知られている条件で行うことができる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの添加順序や添加方法には特に限定はない。例えば、溶剤にテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを順に投入し、適切な温度で撹拌することにより、ポリアミド酸を得ることができる。
ジアミンの量は、特に制限されず、上記好ましいポリイミドの組成となるような量であることが好ましい。具体的には、ジアミンの量は、テトラカルボン酸二無水物1molに対して、通常0.8mol以上、好ましくは1mol以上である。一方、通常1.2mol以下、好ましくは1.1mol以下である。ジアミンの量をこのような範囲とすることにより、得られるポリアミド酸の収率が向上し得る。
この反応で用いられる重合溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の炭化水素系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メトキシベンゼン等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン系極性溶剤、ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン、イソキノリン等の複素環系溶剤、フェノール、クレゾール等のフェノール系溶剤、等が挙げられるが、特に限定されるものではない。重合溶剤としては、1種のみを用いることもできるし、2種類以上の溶剤を混合して用いることもできる。
溶剤中のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの濃度は、反応条件やポリアミド酸溶液の粘度に応じて適宜設定する。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの合計の質量は、特に制限はないが、全溶液量に対し、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上であり、一方、通常70質量%以下、好ましくは35質量%以下である。反応基質の量をこのような範囲とすることにより、低コストで収率よくポリアミド酸を得ることができる。
反応温度は、特に制限はないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、一方、通常100℃以下、好ましくは80℃以下である。反応時間は、特に制限はないが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上であり、一方、通常100時間以下、好ましくは24時間以下である。このような条件で反応を行うことにより、低コストで収率よくポリアミド酸を得ることができる。
ポリアミド酸の末端基は、重合反応時のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとのいずれか一方を過剰に用いることによって、酸無水物基とアミノ基を任意に選ぶことができる。
末端基を酸無水物基とした場合には、その後の処理を行わず酸無水物末端のままでもよく、加水分解させてジカルボン酸としてもよい。また、炭素数4以下のアルコールを用いてエステルとしてもよい。さらに、単官能のアミン又はイソシアネートを用いて末端を封止してもよい。ここで用いるアミン又はイソシアネートとしては、単官能の第一級アミン又はイソシアネートであれば、特に制限はなく用いることができる。例えば、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、トリメチルアニリン、エチルアニリン、ジエチルアニリン、トリエチルアニリン、アミノフェノール、メトキシアニリン、アミノ安息香酸、ビフェニルアミン、ナフチルアミン、シクロヘキシルアミン、フェニルイソシアネート、キシリレンイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、メチルフェニルイソシアネート、トリフルオロメチルフェニルイソシアネート等を挙げることができる。
また、末端基をアミノ基とした場合には、単官能の酸無水物によって、末端アミノ基を封止することで、アミノ基が末端に残ることを回避できる。ここで用いる酸無水物としては、加水分解した際にジカルボン酸又はトリカルボン酸となる単官能の酸無水物であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、コハク酸無水物、ノルボルネンジカルボン酸無水物、4−(フェニルエチニル)フタル酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物、フタル酸無水物、メチルフタル酸無水物、ジメチルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ナフタレンジカルボン酸無水物、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、4−オキサトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカン−3,5−ジオン、オクタヒドロ−1,3−ジオキソイソベンゾフラン−5−カルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ジメチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等を挙げることができる。
次に、上記のようにして得られたポリアミド酸(好ましくは溶液形態)を加熱してポリアミド酸をイミド化させる方法(熱イミド化法)、又はポリアミド酸溶液に閉環触媒(イミド化触媒)を添加してポリアミド酸をイミド化させる方法(化学イミド化法)により、ポリイミドを得ることができる。
上記熱イミド化法又は化学イミド化法においては、酸無水物とジアミンとからポリアミド酸を重合する反応釜をそのまま継続して反応釜中でイミド化させてもよい。
反応釜中での熱イミド化法においては、上記重合溶剤中のポリアミド酸を、例えば80〜300℃の温度範囲で0.1〜200時間(好ましくは1〜100時間、より好ましくは3〜50時間)加熱処理してイミド化を進行させる。また、上記温度範囲を150〜200℃とすることが好ましく、150℃以上とすることにより、イミド化を確実に進行させて完了させることができ、一方、200℃以下とすることにより、溶剤や未反応原材料の酸化、溶剤の揮発による樹脂濃度の上昇を防止することができる。
さらに、熱イミド化法においては、イミド化反応により生成する水を効率よく除去するために、上記重合溶剤に共沸溶剤を加えることができる。共沸溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素や、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等を用いることができる。共沸溶剤を使用する場合は、その添加量は、全有機溶剤量中の1〜30質量%程度、好ましくは5〜20質量%の範囲内である。
一方、化学イミド化法においては、上記重合溶剤中のポリアミド酸に対し、公知の閉環触媒を添加してイミド化を進行させる。
閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン、イソキノリン、ピリジン、ピコリン等の複素環式第3級アミン等が挙げられるが、これ以外にも例えば、置換若しくは無置換の含窒素複素環化合物、含窒素複素環化合物のN−オキシド化合物、置換若しくは無置換のアミノ酸、ヒドロキシ基を有する芳香族炭化水素又は芳香族複素環化合物が挙げられ、特に1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、5−メチルベンズイミダゾール等の低級アルキルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジン等の置換ピリジン、p−トルエンスルホン酸等を好適に使用することができる。
閉環触媒の添加量は、ポリアミド酸のアミド酸単位に対して0.01〜2倍当量の範囲内、特に0.02〜1倍当量の範囲内であることが好ましい。閉環触媒を使用することによって、得られるポリイミドの物性、特に伸びや破断抵抗が向上する場合がある。
また、上記熱イミド化法又は化学イミド化法においては、ポリアミド酸溶液中に脱水剤を添加してもよく、そのような脱水剤としては、例えば、無水酢酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸無水物等の芳香族酸無水物等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用することができる。また、脱水剤を用いると、低温で反応を進めることができ好ましい。なお、ポリアミド酸溶液に対し脱水剤を添加するのみでもポリアミド酸をイミド化させることが可能ではあるが、反応速度が遅いため、上記したように加熱又は閉環触媒の添加によりイミド化させることが好ましい。
このように反応釜中でイミド化させたポリイミド溶液は、ポリイミド溶液と比較して経時による加水分解による分子量低下が起きにくいので有利である。また、あらかじめイミド化反応が進んでいるため、例えば、イミド化率100%のポリイミドの場合は、ウェブ上でのイミド化が不要となり乾燥温度を下げることができる。
また、閉環したポリイミドを、メタノール等の貧溶剤などを用いて再沈殿、精製して固体にしてから溶剤に溶解し流延乾燥して製膜を行ってもよい。
この方法によれば、重合溶剤と流延する溶剤とを異なる種類とすることが可能となり、それぞれに最適な溶剤を選択することで、ポリイミドフィルムの性能をより引き出すことが可能になる。
例えば、ポリアミド酸を高分子量化させるためにジメチルアセドアミドを用いて重合、閉環し、メタノールを用いて固体化、乾燥した後にジクロロメタンに再溶解させて流延、乾燥することで、高分子量化と低温乾燥とが可能となる。
また、溶剤としてジクロロメタンを使う場合、他の溶剤と組み合わせて使用することができる。例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、エタノール、メタノール、ブタノール、イロプロパノールなど、適宜補助溶剤を使用することもできる。
上記したポリイミドの他に、リン、ケイ素、イオウなどの原子を含むポリイミドを用いることもできる。
例えば、リンを含むポリイミドとしては、特開2011−74209号公報の段落[0010]−[0021]及び特開2011−074177号公報の段落[0011]−[0025]にそれぞれ記載のポリイミドを用いることができる。
ケイ素を含むポリイミドとしては、特開2013−028796号公報の段落[0030]−[0045]に記載の、ポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドを用いることができる。
イオウを含むポリイミドとしては、特開2010−189322号公報の段落[0009]−[0025]、特開2008−274234号公報の段落[0012]−[0025]及び特開2008−274229号公報の段落[0012]−[0023]にそれぞれ記載の、ポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドを用いることができる。
その他にも、特開2009−256590号公報の段落[0008]−[0012]、特開2009−256589号公報の段落[0008]−[0012]に記載の脂環式ポリイミドなどを好ましく用いることができる。
上記したポリイミドの他に、ポリアミドイミドを用いることもできる。ポリアミドイミドは、酸成分として、トリカルボン酸、テトラカルボン酸又はジカルボン酸、アミン成分として、ジアミンを構成単位として含むものである。
ポリアミドイミドは、酸成分として、下記a)〜c)がある。
a)トリカルボン酸:トリメリット酸、ジフェニルエーテル−3,3′,4′−トリカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3′,4′−トリカルボン酸、ベンゾフェノン−3,3′,4′−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸などのトリカルボン酸等の一無水物、エステル化物などの単独又は2種以上の混合物
b)テトラカルボン酸:3,3,4′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3,4′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸一無水物、二無水物、エステル化物などの単独又は2種以上の混合物
c)ジカルボン酸:アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサン−4,4′−ジカルボン酸のジカルボン酸、及びこれらの一無水物やエステル化物
また、アミン成分としては、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、3,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノベンズアニリド、4,4′−ジアミノベンズアニリド、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、3,4′−ジアミノベンゾフェノン、2,6−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、2,2′−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサン−1,4−ジアミン、ジアミノシロキサン、1,5−ナフタレンジアミン又はこれらに対応するジイソシアネート単独又は2種以上の混合物などが挙げられる。
特に、酸成分として、無水トリメリット酸(TMA)、3,3,4′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、及び3,3,4′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、イソシアネート成分として1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、を含む原料で重合されたポリアミドイミドであることが好ましい。
ポリアミドイミドのイミド結合とアミド結合とのmol比の値は、99/1〜60/40の範囲内が好ましく、より好ましくは99/1〜75/25の範囲内であり、更に好ましくは90/10〜80/20の範囲内である。イミド結合とアミド結合とのmol比の値が、60/40以上では、耐熱性、耐湿信頼性、耐熱信頼性が向上する。また、99/1以下であると、弾性率が低くなり、耐折特性、屈曲特性が向上する傾向にある。
上記したポリイミドの他に、下記式(3)で表される繰り返し単位を必須成分とし、更に、下記一般式(4)、(5)及び式(6)で表される群より選ばれる少なくとも1種の構造を繰り返し単位として分子鎖中に含有するポリアミドイミドを用いることもできる。
一般式(4)中、Xは、酸素原子、CO、SO2又は単結合を表す。nは、0又は1である。
一般式(5)中、Yは、酸素原子、CO、OOC−R3−COO又は単結合を表す。R3は、2価の有機基を表す。nは、0又は1である。
ここで、一般式(4)中、Xが、SO2若しくは単結合(ビフェニル結合)であること、又はn=0であることが好ましく、Xが結合手(ビフェニル結合)であること、又はn=0であることが更に好ましい。
式(6)中、Yは、ベンゾフェノン型(Y=CO)又は単結合型(ビフェニル結合型、Y=単結合)が好ましい。
一つの好ましい実施態様では、式(3)が無水トリメリット酸と1,5−ナフタレンジイソシアネートからの繰り返し単位、一般式(4)がテレフタル酸と1,5−ナフタレンジイソシアネートからの繰り返し単位、一般式(5)がビフェニルテトラカルボン酸二無水物、又はベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と1,5−ナフタレンジイソシアネートからの繰り返し単位で、その含有比が式(3)/{一般式(4)+一般式(5)+式(6)}=1/99〜40/60mol比で、かつ、一般式(4)/一般式(5)=10/90〜90/10mol比であることが好ましい。
イミド化率は高いほど好ましく、その上限は100%である。上記ポリアミドイミドは、通常の方法で合成することができる。例えば、イソシアネート法、アミン法(酸クロリド法、低温溶液重合法、室温溶液重合法等)などであるが、本発明においてポリアミドイミドは有機溶剤に可溶なものが好ましく、イソシアネート法による合成が好ましい。また、工業的にも、重合時の溶液がそのまま塗布できるため好ましい。
上記したポリイミドの他に、下記一般式(7)で表される繰り返し単位を含むポリアミドイミドを用いることもできる。
一般式(7)中、R4は、アリール基又はシクロアルカン基を表す。
この際、アリール基又はシクロアルカン基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びハロゲン原子の少なくとも一の原子を更に含んでもよい。
上記ポリアミドイミドが含み得るジアミン成分としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、3,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノベンズアニリド、4,4′−ジアミノベンズアニリド、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、3,4′−ジアミノベンゾフェノン、2,6−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,2′−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、4−メチル−1,3−フェニレンジアミン、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン(トランス/シス混合物)、1,3−ジアミノシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミン(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、イソホロンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、4,4′−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2−エチルシクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルシクロヘキシルアミン)、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミンなどの単独若しくは2種以上の混合物、又はこれらに対応するジイソシアネートなどの単独若しくは2種以上の混合物をジアミン成分として用いることができる。
好ましくは、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、ジシクロへキシルメタン−4,4′−ジアミン(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、4−メチル−1,3−フェニレンジアミンなどの単独若しくは2種以上の混合物、又はこれらに対応するジイソシアネートなどの単独若しくは2種以上の混合物をジアミン成分として用いることができる。
より好ましくは、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、ジシクロへキシルメタン−4,4′−ジアミン(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4−メチル−1,3−フェニレンジアミンなどの単独若しくは2種以上の混合物、又はこれらに対応するジイソシアネートなどの単独若しくは2種以上の混合物をジアミン成分として用いることができる。
さらに好ましくは、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、ジシクロへキシルメタン−4,4′−ジアミン(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、4−メチル−1,3−フェニレンジアミンなどの単独若しくは2種以上の混合物、又はこれらに対応するジイソシアネートなどの単独若しくは2種以上の混合物をジアミン成分として用いることができる。
上記酸成分、ジアミン成分の中でも、フィルム化するプロセスでの耐熱性、耐溶剤性、及び耐久性、並びに製造されるポリアミドイミドフィルムの耐熱性、表面平滑性及び透明性から、以下の成分が好ましく用いられる。
酸成分として、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物を用いることができる。
ジアミン成分として、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル及び4−メチル−1,3−フェニレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種の化合物、又は3,3′−ジメチル−4,4′−ジイソシアネートビフェニル(o−トリジンジイソシアネート)及び4−メチル−1,3−フェニレンジイソシアネート(トリレンジイソシアネート)からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種の化合物を用いることができる。
また、好ましいポリアミドイミドとして、下記一般式(8)で表される繰り返し単位を含む化合物を用いることができる。
一般式(8)中、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアリール基を表す。
この際、アルキル基又はアリール基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びハロゲン原子の少なくとも一の原子を更に含んでもよい。
一般式(8)におけるR5及びR6で表されるアリール基としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
全酸成分を100mol%とした場合、例示した酸成分は50〜100mol%の範囲内で含まれていることが好ましく、70〜100mol%の範囲内で含まれていることがより好ましい。
また、全ジアミン成分を100mol%とした場合、例示したジアミン成分は50〜100mol%の範囲内で含まれていることが好ましく、70〜100mol%の範囲内で含まれていることがより好ましい。
これらの範囲であれば、フィルム化するプロセスでの耐熱性、耐久性がよく、得られるポリアミドイミドフィルムの耐熱性、表面平滑性及び透明性が特によくなる。
用いられるポリアミドイミドの分子量は、N−メチル−2−ピロリドン中(ポリマー濃度0.5g/cm3)、30℃での対数粘度にして0.3〜2.5cm3/gの範囲内に相当する分子量を有するものが好ましく、より好ましくは0.5〜2.0cm3/gの範囲内に相当する分子量を有するものである。対数粘度が0.3cm3/g以上であればフィルム等の成型物にしたとき、機械的特性が十分となる。また、対数粘土が2.5cm3/g以下であると溶液粘度が高くなりすぎず、成形加工が容易となる。
上記したポリイミドの他に、ポリエーテルイミドを用いることもできる。ここで、ポリエーテルイミドは、その構造単位に芳香核結合及びイミド結合を含む熱可塑性樹脂であり、特に制限されるものでなく、具体的には、下記式(9)又は(10)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミドであることが好ましい。
上記式(9)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミドとしては、ゼネラルエレクトリック社製の商品名「Ultem 1000」(ガラス転移温度:216℃)、「Ultem 1010」(ガラス転移温度:216℃)、上記式(10)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミドとしては、「Ultem CRS5001」(ガラス転移温度Tg226℃)が挙げられ、その他の具体例として、三井化学株式会社製の商品名「オーラム(登録商標)PL500AM」(ガラス転移温度258℃)などが挙げられる。
ポリエーテルイミドの合成方法は特に限定されるものではないが、通常、上記式(9)で表される繰り返し単位を有する非晶性ポリエーテルイミドは、4,4′−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物とm−フェニレンジアミンとの重縮合物として、また、上記式(10)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミドは、4,4′−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの重縮合物として公知の方法によって合成される。
また、ポリエーテルイミドは、本発明の主旨を超えない範囲で、アミド基、エステル基、スルホニル基など共重合可能な他の単量体単位を含むものであってもよい。なお、ポリエーテルイミドは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
上記したポリイミドの他に、ポリエステルイミドを用いることもできる。ここで、ポリエステルイミドは、特に制限されないが、透明性及び耐熱性の観点から、下記一般式(11)で表されるポリエステルイミド構造を構成単位中に含有することが好ましい。
一般式(11)中、R7は、2価の基を表す。R8は、2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基を表す。
2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基は、それぞれ2価のヒドロキシ基を有する鎖式脂肪族化合物、2価のヒドロキシ基を有する環式脂肪族化合物、2価のヒドロキシ基を有する芳香族化合物等のジオールから誘導される残基であることが望ましい。また、上記ジオールと炭酸エステル類やホスゲン等から重合され得るポリカーボネートジオールから誘導される残基であってもよい。
2価のヒドロキシ基を有する鎖式脂肪族化合物としては、二つのヒドロキシ基を有する分岐状、又は直鎖状のジオールを用いることができる。例えば、アルキレンジオール、ポリオキシアルキレンジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
アルキレンジオールとして、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンジオールとして、例えば、ジメチロールプロピオン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸)、ジメチロールブタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、テトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのランダム共重合体等が挙げられる。好ましくは、ポリオキシテトラメチレングリコールがよい。
ポリエステルジオールとしては、例えば、以下に例示される多価アルコールと多塩基酸とを反応させて得られる、ポリエステルジオール等が挙げられる。
ポリエステルジオールに用いる「多価アルコール成分」としては、任意の各種多価アルコールが使用可能である。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルヒドロキシピパリン酸エステル、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−ドデカンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール等を使用できる。
ポリエステルジオールに用いる多塩基酸成分としては、任意の各種多塩基酸を使用することができる。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、2,2′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族や脂環族二塩基酸が使用できる。
ポリエステルジオールの市販品として、具体的には、ODX−688(DIC(株)製脂肪族ポリエステルジオール:アジピン酸/ネオペンチルグリコール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約2000)、Vylon(登録商標)220(東洋紡(株)製ポリエステルジオール、数平均分子量約2000)などを挙げることができる。
ポリカプロラクトンジオールとして、例えば、γ−ブチルラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類を開環付加反応させて得られるポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
上述の2価のヒドロキシ基を有する鎖式脂肪族化合物は、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
2価のヒドロキシ基を有する環式脂肪族化合物又は2価のヒドロキシ基を有する芳香族化合物としては、芳香環やシクロヘキサン環に二つのヒドロキシ基を有する化合物、2個のフェノール又は脂環式アルコールが2価の官能基で結合された化合物、ビフェニル構造の両方の核にヒドロキシ基を一つずつ有する化合物、ナフタレン骨格に二つのヒドロキシ基を有する化合物などが用いられる。
芳香環やシクロヘキサン環に二つのヒドロキシ基を有する化合物としては、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、2−フェニルヒドロキノン、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3−アダマンタンジオール、ジシクロペンタジエンの2水和物、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸等のカルボキシル基含有ジオール等が挙げられる。
2個のフェノール又は脂環式アルコールが2価の官能基で結合された化合物としては、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−(9−フルオレニリデン)ジフェノール、4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルスルホン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等が挙げられる。
ビフェニル構造の両方の核にヒドロキシ基を一つずつ有する化合物としては、4,4′−ビフェノール、3,4′−ビフェノール、2,2′−ビフェノール、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ビフェノールなどが挙げられる。
ナフタレン骨格に二つのヒドロキシ基を有する化合物としては、2,6−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,8−ナフタレンジオール等が使用できる。
ジオールの数平均分子量は、100〜30000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは150〜20000の範囲内であり、更に好ましくは200〜10000の範囲内である。数平均分子量が上記範囲であれば、吸湿性、柔軟性、機械的特性、無色透明性を十分発揮できる。
ポリカーボネートジオールとしては、その骨格中、複数種のアルキレン基を有するポリカーボネートジオール(共重合ポリカーボネートジオール)であってもよい。例えば、2−メチル−1,8−オクタンジオールと1,9−ノナンジオールの組み合わせ、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせ、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせなどにより合成され得る共重合ポリカーボネートジオールなどを挙げることができる。好ましくは、2−メチル−1,8−オクタンジオールと1,9−ノナンジオールの組み合わせより合成され得る共重合ポリカーボネートジオールである。これらのポリカーボネートジオールを2種以上併用することもできる。
使用できるポリカーボネートジオールの市販品として(株)クラレ製クラレポリオールCシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)デュラノールシリーズなどが挙げられる。例えば、クラレポリオールC−1015N、クラレポリオールC−1065N((株)クラレ製カーボネートジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール、数平均分子量約1000)、クラレポリオールC−2015N、クラレポリオールC2065N((株)クラレ製カーボネートジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール、数平均分子量約2000)、クラレポリオールC−1050、クラレポリオールC−1090((株)クラレ製カーボネートジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約1000)、クラレポリオールC−2050、クラレポリオールC−2090((株)クラレ製カーボネートジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約2000)、デュラノールT5650E(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約500)、デュラノールT5651(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約1000)、デュラノールT5652(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約2000)などを挙げることができる。好ましくはクラレポリオールC−1015Nである。
ポリカーボネートジオールの合成方法としては、原料ジオールと炭酸エステル類とのエステル交換、原料ジオールとホスゲンとの脱塩化水素反応を挙げることができる。原料である炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、及びエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートが挙げられる。
一般式(11)におけるR7で表される2価の基は、下記一般式(12)、(13)又は(14)で表される構造を有する2価の基であることが好ましい。
まず、一般式(12)で表される構造を有する2価の基について説明する。
一般式(12)中、R9及びR10は、それぞれ独立に、2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基を表し、複数のR9は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。nは、1以上の整数である。
R9及びR10で表される2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基としては、一般式(11)におけるR8で表される2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基と同様のものが挙げられる。
R9及びR10で表される2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基は、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
mは1以上の正の整数であるが、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が更に好ましい。また、mの上限は特に限定されないが、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。25以下であれば耐熱性の低下を抑制することができる。
次に、一般式(13)で表される構造を有する2価の基について説明する。
一般式(13)中、R11は、単結合、アルキレン基(−CnH2n−)、パーフルオロアルキレン基(−CnF2n−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−S(=O)2−)、スルフィニル基(−SO−)、スルフェニル基(−S−)、カーボネート基(−OCOO−)又はフルオレニリデン基を表す。nは1以上の整数である。X1〜X8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(13)におけるnの上限は特に限定されないが、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
一般式(13)で表される構造を有する2価の基の具体例としては、特に限定されないが、ジフェニルエーテル骨格、ジフェニルスルホン骨格、9−フルオレニリデンジフェノール骨格、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物骨格又はビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格等が挙げられる。
一般式(13)で表される構造を有する基は、一般式(13)における二つのベンゼン環に各1個のヒドロキシ基を有する化合物から誘導される残基であることが好ましい。
一般式(13)で表される構造を有する2価の基の原料としては、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−(9−フルオレニリデン)ジフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、4,4′−ビフェノール、3,4′−ビフェノール、2,2′−ビフェノール、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ビフェノール、2,6−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,8−ナフタレンジオール等が使用できる。
好ましくは、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−(9−フルオレニリデン)ジフェノール又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物である。さらに好ましくは、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物である。
これらの化合物は、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
これらの原料を用いることで、一般式(11)のR7位に、ジフェニルエーテル骨格等を導入することができる。
次に、一般式(14)で表される構造を有する2価の基について説明する。
一般式(14)中、R11′は、単結合、アルキレン基(−CnH2n−)、パーフルオロアルキレン基(−CnF2n−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−S(=O)2−)、スルフィニル基(−SO−)、スルフェニル基(−S−)、カーボネート基(−OCOO−)、又はフルオレニリデン基を表す。nは1以上の整数である。X1′〜X8′は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(14)におけるnの上限は特に限定されないが、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
一般式(14)で表される構造を有する2価の基の具体例としては、特に限定されないが、ジシクロヘキシルエーテル骨格、ジシクロヘキシルスルホン骨格、水添ビスフェノールA骨格、水添ビスフェノールF骨格、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物骨格または水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物骨格等が挙げられる。
一般式(14)で表される構造を有する2価の基は、一般式(14)における二つのシクロヘキサン環に各1個のヒドロキシ基を有する化合物から誘導される残基であることが好ましい。一般式(14)で表される構造を有する2価の基の原料としては、4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルスルホン、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等が使用できる。
好ましくは、4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルエーテル又は4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルスルホンである。
これらの化合物は、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
これらの原料を用いることで、一般式(11)のR7位に、ジシクロヘキシルエーテル骨格等を導入することができる。
一般式(11)で表されるエステルイミド構造を有するポリエステルイミドは、例えば、シクロヘキサントリカルボン酸無水物のハロゲン化物とジオール類とを反応させエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を得、次いで、そのエステル基含有テトラカルボン酸二無水物とジアミン又はジイソシアネート等とを縮合反応(ポリイミド化)させて得ることができる。
ポリエステルイミドは、更に下記一般式(15)で表される繰り返し単位を含有してもよい。
一般式(15)中、R12は、2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基を表す。
R12で表される2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基としては、一般式(11)におけるR8で表される2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基と同様のものが挙げられ、一般式(11)におけるR8と一般式(15)におけるR12とは、同一であっても、異なっていてもよい。
R12としては、2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基、2価の芳香族基を単独又は2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
耐熱性、柔軟性、低吸湿性のバランス等の観点から、一般式(11)におけるR8は下記一般式(16)で表される構造を有する2価の基であることが好ましく、また、一般式(15)におけるR12は下記一般式(17)で表される構造を有する2価の基であることが好ましい。
一般式(16)中、R13は、単結合、アルキレン基(−CnH2n−)、パーフルオロアルキレン基(−CnF2n−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−S(=O)2−)、スルフィニル基(−SO−)又はスルフェニル基(−S−)を表す。nは1以上の整数である。X9〜X16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、同じであっても異なっていてもよい。
一般式(16)におけるnは1以上の整数であるが、1〜10の整数であることが好ましく、1〜5の整数であることがより好ましく、1〜3の整数であることが更に好ましい。
一般式(17)中、R13′は、単結合、アルキレン基(−CnH2n−)、パーフルオロアルキレン基(−CnF2n−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−S(=O)2−)、スルフィニル基(−SO−)又はスルフェニル基(−S−)を表す。nは1以上の整数である。X9′〜X16′は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、同じであっても異なっていてもよい。
一般式(17)におけるnは1以上の整数であるが、1〜10の整数であることが好ましく、1〜5の整数であることがより好ましく、1〜3の整数であることが更に好ましい。
一般式(11)及び一般式(15)において、2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基を一般式(11)のR8位及び一般式(15)のR12位に導入するために、それぞれ対応するジアミン成分又はジイソシアネート成分を用いることが好ましい。すなわち、鎖式脂肪族ジアミン又はそれに対応する鎖式脂肪族ジイソシアネート、環式脂肪族ジアミン又はそれに対応する環式脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジアミン又はそれに対応する芳香族ジイソシアネートを適宜選択することによって、耐熱性、柔軟性、低吸湿性に優れたポリエステルイミドを得ることができる。
一般式(11)のR8及び一般式(15)のR12のジアミン成分又はそれに対応するジイソシアネート成分は同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
一般式(11)のR8及び一般式(15)のR12を基本骨格とするジアミン成分又はそれに対応するジイソシアネート成分について説明する。
鎖式脂肪族ジアミン又はそれに対応する鎖式脂肪族ジイソシアネートとしては、ジアミンとして例示すると、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。
これらは、2種類以上併用することもできる。
環式脂肪族ジアミン又はそれに対応する環式脂肪族ジイソシアネートとしては、ジアミンとして例示すると、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン(トランス/シス混合物)、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、イソホロンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、4,4′−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2−エチルシクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルシクロヘキシルアミン)、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
これらは、2種類以上併用することもできる。
芳香族ジアミン又はそれに対応する芳香族ジイソシアネートとしては、具体的には、ジアミンとして例示すると、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、2,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノベンズアニリド、p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、ベンジジン、3,3′−ジヒドロキシベンジジン、3,3′−ジメトキシベンジジン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、o−トリジン、m−トリジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ジアミノターフェニル等が挙げられる。
これらは、2種類以上併用することもできる。
耐熱性、柔軟性、低吸湿性のバランス等から、一般式(11)のR8及び一般式(15)のR12のジアミン成分又はそれに対応するジイソシアネート成分として好ましい成分は、ジアミンとして例示すると、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジアミン、o−トリジン、ジアミノターフェニル、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン等から誘導される残基である。より好ましくは、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジアミン、o−トリジンから誘導される残基であり、更に好ましくは、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、o−トリジンから誘導される残基であり、最も好ましくは4,4′−ジアミノジフェニルメタン、o−トリジンから誘導される残基である。
〈金属酸化物粒子〉
本発明の透明ポリイミドフィルムは、平均1次粒径が10〜100nmの範囲内である金属酸化物粒子を、当該透明ポリイミドフィルム中の全固形分(100質量%)に対し、20〜70質量%の範囲内で含有することを特徴とする。
金属酸化物粒子の平均1次粒径は、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、30〜100nmの範囲内であることがより好ましい。平均1次粒径が10nmより小さいと粒子が凝集してしまい、100nmより大きいとフィルムの透明性が低下してしまう。
平均1次粒径は、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法など、従来公知の方法を用いて測定することができるが、例えば、ISO13320に規定されたレーザー回折散乱法により、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2、・・・、di、・・・、dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2、・・・、ni、・・・、nk個存在する粒子の集団において、粒子1個あたりの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径を算出することができる。
金属酸化物粒子の含有量は、ポリイミドフィルム中の全固形分(100質量%)に対して20〜70質量%の範囲内であり、好ましくは30〜50質量%の範囲内である。含有量が20質量%より小さいとフィルムの硬度(耐傷性)が不十分であり、70質量%より大きいとドープ調製時に粘度が高くなりすぎてしまう等の理由で設備負荷が大きくなり、フィルム化が困難となる。
金属酸化物粒子としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の微粒子が挙げられる。中でも、シリカを含んでいることが好ましい。これは、ポリイミドとシリカの屈折率が近く、散乱が起きにくいことで透明性が得られやすいためである。
シリカとしては、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日本アエロジル(株)から販売されているAEROSIL疎水性フュームドシリカシリーズ(AEROSIL R972、R974、R104、R106、R202、R208、R805等。AEROSILは登録商標。)や、日産化学工業(株)から販売されているスノーテックスシリーズ(スノーテックスOS、OXS、S、OS、20、30、40、O、N、C等。スノーテックスは登録商標。)が挙げられる。
〈シランカップリング剤〉
本発明の透明ポリイミドフィルムは、シランカップリング剤を含有することを特徴とする。
シランカップリング剤としては、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
市販品としては、例えば、信越化学工業(株)から販売されているKBMシリーズ(KBM−1003、303、402、1403、502、602、903等。)及びKBEシリーズ(KBE−1003、402、502、903、585等。)や、東レダウコーニング(株)、及びモメンティブ・パフォーマンス・マテリアル(株)から販売されているもの等が挙げられる。
また、シランカップリング剤としてポリマーシランカップリング剤を用いてもよい。ポリマーシランカップリング剤とは、重合性モノマーとシランカップリング剤(シラン化合物)との反応物をいう。このようなポリマーシランカップリング剤は、例えば、特開平11−116240号公報に開示された重合性モノマーと反応性シラン化合物との反応物の製法に準じて得ることができる。
重合性モノマーとして具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジバーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルシチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のニトリル基含有ビニル系モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニル等のビニルエステル類、エチレン、プロピレン等のアルケン類、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール、アクリル樹脂モノマー類、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメテクリレート、イソデシルメテクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメテクリレート、ウレタンアクリレート等及びこれらの混合物が挙げられる。
これらの重合性モノマーの重合物(オリゴマー、プレポリマー)を用いることも可能である。
重合性モノマーは、1種類を単独で用いてもよいし、複数の種類を用いてもよい。なお、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
反応性シラン化合物としては、下記一般式(A)で表される構造を有する有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。
一般式(A)
X−R−Si(OR)3
一般式(A)中、Rは、置換又は無置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の有機基を表す。Xは、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基(グリシド基)、ウレタン基、アミノ基、フルオロ基から選ばれる1種又は2種以上の官能基を表す。
一般式(A)で表される構造を有する有機ケイ素化合物としては、具体的には、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等及びこれらの混合物が挙げられる。
重合性モノマーと反応性シラン化合物とを反応させてポリマーシランカップリング剤が合成される。
一例として、重合性モノマー100質量部に対し反応性シラン化合物を0.5〜20質量部の範囲内、更には1〜10質量部の範囲内で混合した有機溶媒溶液を調製し、これに重合開始剤を添加し、加熱することによって得ることができる。
有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらは混合して用いることもできる。このときの重合性モノマーと反応性シラン化合物との合計の濃度は、固形分として1〜40質量%の範囲内、更には2〜30質量%の範囲内にあることが好ましい。
重合開始剤としては、アゾイソブチルニトリル、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサイノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテートなどの過酸化物重合開始剤、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物などが挙げられる。
反応温度は、30〜100℃の範囲内、更には50〜95℃の範囲内にあることが好ましい。反応温度が低いと、反応が遅く、分子量の大きいポリマーシランカップリング剤を合成するには時間がかかりすぎることがあり、また、反応温度が高すぎるとかえって、反応速度が速すぎてしまい、所望の分子量に制御できない場合がある。
また、脱水縮合の反応速度を十分遅くすることでポリイミド製膜時の影響を少なくするという観点から、シランカップリング剤として、アミノ基等の触媒効果のある基を含まないものを用いることが好ましい。
さらに、シランカップリング剤が、アクリル基、メタクリル基、イソシアヌレート基、フェニル基及びフルオロ基から選択される少なくとも一つの基を有することが本発明の効果の観点より好ましい。
シランカップリング剤の含有量は、金属酸化物粒子100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲内、更には0.1〜3質量部の範囲内にあることが好ましい。
〈芳香族系化合物〉
本発明の透明ポリイミドフィルムは、更に芳香族系化合物を含有することが好ましい。
本発明に係る芳香族系化合物とは、ポリイミド以外の化合物であって、分子内に芳香環を有していればよく、分子の母体的(主体的な)部分が芳香族性を有していなくてもよい。
芳香族系化合物を含有することにより、製造安定性がよく、表面変形故障が低減されたポリイミドフィルムが得られる。また、フィルムの膜厚方向の位相差値Rt(nm)を小さくすることができる。
芳香族系化合物は、分子量又は重量平均分子量が300〜10000の範囲内であって、かつ分子内に芳香環を有する化合物である。芳香族系化合物が、単一の構造を有する化合物である場合は分子量を用い、高分子やオリゴマーのように複数の構造を有する化合物の集合体である場合は重量平均分子量を用いる。分子量又は重量平均分子量が300より小さいと、ポリイミドフィルムの製造時に揮発成分が多くなりすぎて、フィルムの製造自体ができなくなりやすい。また、分子量又は重量平均分子量が10000より大きいと、芳香族系化合物自体の凝集異物が多大に発生して、フィルムの製造自体ができなくなりやすい。
したがって、芳香族系化合物の分子量又は重量平均分子量が300〜10000の範囲内であるとは、実質的にポリイミドフィルムを製造できる目安を示したものである。
芳香族系化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下のとおりである。
溶媒:ジクロロメタン
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する。)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0mL/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜2800000の範囲内の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
芳香族系化合物の重量平均分子量は、400〜10000の範囲内であることが好ましく、1000〜5000の範囲内であることがより好ましい。
本発明に係る芳香族系化合物は、分子内に芳香族環を有する。芳香族系化合物は、分子内に芳香族環を2個以上有することが、本発明の効果の観点から好ましく、4個以上有することがより好ましい。
芳香族系化合物の含有量は、ポリイミドフィルム中に、1〜30質量%の範囲内であることが、本発明の効果の観点から好ましい。15〜30質量%の範囲内で含有することが、フィルム膜厚方向の位相差値Rt(nm)が小さい観点からより好ましい。
芳香族系化合物は、分子内にエーテル結合、エステル結合又はアミド結を有する化合物であることが、ポリイミドとの相溶性が向上する観点から好ましい。
また、分子内にフルオレン構造を有する化合物であることが本発明の効果の観点から好ましい。
また、下記一般式(III)で表される構造を有する化合物(詳細は後述する。)であることが本発明の効果の観点から好ましい。
(分子内にエーテル結合を有する芳香族系化合物)
分子内にエーテル結合を有する芳香族系化合物としては、分子内に芳香族環を有する糖エステルが、本発明の効果の観点から好ましい。
本発明に用いることができる糖エステルは、フラノース構造又はピラノース構造を1〜12個有する化合物であって、化合物中のヒドロキシ基の全部又は一部がエステル化され、かつ分子内に芳香族環を有する化合物であることが好ましい。
そのような糖エステルの好ましい例には、下記一般式(I)で表される構造を有するスクロースエステルが挙げられる。
上記一般式(I)中、R14〜R21は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、又は置換若しくは無置換のアリールカルボニル基を表す。R14〜R21は、互いに同じであっても、異なってもよい。ただし、R14〜R21の少なくとも一つの置換基に、芳香環を有する。
一般式(I)のR14〜R21の置換又は無置換のアルキルカルボニル基は、炭素数2以上の置換又は無置換のアルキルカルボニル基であることが好ましい。置換又は無置換のアルキルカルボニル基としては、メチルカルボニル基(アセチル基)が挙げられる。アルキル基が有する置換基としては、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
置換又は無置換のアリールカルボニル基は、炭素数7以上の置換又は無置換のアリールカルボニル基であることが好ましい。アリールカルボニル基としては、フェニルカルボニル基が挙げられる。アリール基が有する置換基としては、メチル基等のアルキル基やメトキシ基等のアルコキシ基等が挙げられる。
スクロースエステルにおけるアシル基の平均置換度は、3.0〜7.5の範囲内であることが好ましい。
その他糖エステルとしては、特開昭62−42996号公報及び特開平10−237084号公報に記載の化合物が挙げられる。
(分子内にエステル結合を有する芳香族系化合物)
分子内のエステル結合を有する芳香族系化合物としては、上記糖エステルや、ポリエステルが、相溶性の観点から好ましい。
本発明に用いることができるポリエステルとしては、下記一般式(II)で表される構造を有するポリエステルが、相溶性の観点からより好ましい。
一般式(II)
B−(G−A)n−G−B
一般式(II)中、Bはヒドロキシ基又はカルボン酸残基を表す。Gは、炭素数2〜12のアルキレングリコール残基、炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール残基を表す。Aは、炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは、1以上の整数である。ただし、A、B又はGの少なくともいずれかは、芳香族環を有する。)
一般式(II)で表される構造を有するポリエステルのカルボン酸成分としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、脂肪族酸等が挙げられ、これらはそれぞれ1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
一般式(II)で表される構造を有するポリエステルの炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等が挙げられ、これらのグリコールは1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
一般式(II)で表される構造を有するポリエステルの炭素数6〜12のアリールグリコール成分としては、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,2−ベンゼンジメタノール等が挙げられる。
一般式(II)で表される構造を有するポリエステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられ、これらのグリコールは1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
一般式(II)で表される構造を有するポリエステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられ、これらはそれぞれ1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
一般式(II)で表される構造を有するポリエステルの炭素数6〜12のアリールジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
一般式(II)で表される構造を有するポリエステルの重量平均分子量は、好ましくは300〜1500の範囲内、より好ましくは400〜1000の範囲内である。
また、その酸価は0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ基(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシ基(水酸基)価は15mgKOH/g以下である。
以下に、本発明に用いることのできる一般式(II)で表される構造を有するポリエステルの具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
(分子内にアミド結合を有する芳香族系化合物)
本発明のポリイミドフィルムは、分子内にアミド結合を有する芳香族系化合物を含有することが、本願発明の効果の観点から好ましい。
分子内にアミド結合を有する芳香族系化合物としては、特開2014−153444号公報の段落0136〜0138に記載の化合物を使用することができる。
(分子内にフルオレン構造を有する芳香族系化合物)
本発明のポリイミドフィルムは、分子内にフルオレン構造を有する芳香族系化合物を含有することが、本願発明の効果の観点から好ましい。
特に、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が、ポリイミドフィルムの機械的強度を向上させる観点からより好ましい。
分子内にフルオレン構造を有する芳香族系化合物としては、特開2014−218659号公報の段落0048〜0053に記載の化合物を使用することができる。
(一般式(III)で表される化合物)
芳香族系化合物としては、下記一般式(III)で表される構造を有する化合物を用いることが、本発明の効果の観点から好ましい。
一般式(III)中、Xは、ヘテロ原子又は炭素原子を表す。Qは、窒素原子及びXとともに置換又は無置換の芳香族ヘテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。R22〜R25は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
芳香族ヘテロ環は、一般に不飽和ヘテロ環であり、好ましくは最多の二重結合を有するヘテロ環である。芳香族ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることが更に好ましい。芳香族ヘテロ環のヘテロ原子(Xで表されるヘテロ原子を含む。)は、N、S又はOであることが好ましく、Nであることが特に好ましい。
芳香族ヘテロ環としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、1,3,5−トリアジン環であることが好ましい。中でも、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、1,3,5−トリアジン環であることがより好ましい。
芳香族ヘテロ環は置換基を有してもよく、複数存在する場合は同じでも異なっていてもよく、それらが縮環して環を形成してもよい。
芳香族ヘテロ環が有していてもよい置換基及びR22〜R25で表される置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基であり、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基(炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を1個取り去った1価の基である。)であり、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基であり、例えば、ビニル基)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基(炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を1個取り去った1価の基)であり、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(置換又は無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基(二重結合を1個持つビシクロアルケンの水素原子を1個取り去った1価の基)であり、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基であり、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換又は無置換の芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基、更に好ましくは炭素数3〜30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基であり、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基であり、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜20のシリルオキシ基であり、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基であり、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基であり、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルオキシ基であり、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基であり、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、アミノ基(好ましくはアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアニリノ基であり、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくはホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基であり、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基であり、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基であり、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基であり、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基であり、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N′フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基であり、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基であり、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールカルボニル基であり、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル基であり、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換又は無置換のヘテロ環アゾ基であり、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくはN−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィノ基であり、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニル基であり、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基であり、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基であり、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を挙げることができる。
一般式(III)で表される構造を有する化合物は、Qで表される芳香族ヘテロ環が1,2,3−トリアゾール環であることが好ましく、下記一般式(IV)で表される構造を有するベンゾトリアゾール系化合物であることがより好ましい。
一般式(IV)中、G1は、水素原子を表す。G2は、水素原子、シアノ基、塩素原子、フッ素原子、−CF3、−CO−G3、−SOE3又は−SO2E3を表す。G3は、炭素数1〜24の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数2〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜15のフェニルアルキル基、フェニル基、又は置換基として炭素数1〜4のアルキル基を1〜4個有するフェニル基若しくはフェニルアルキル基を表す。
E1は、炭素数7〜15のフェニルアルキル基、フェニル基、又は置換基として炭素数1〜4のアルキル基を1〜4個有するフェニル基若しくはフェニルアルキル基を表す。
E2は、炭素数1〜24の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数2〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜15のフェニルアルキル基、フェニル基、又は置換基として炭素数1〜4のアルキル基を1〜3個有するフェニル基若しくはフェニルアルキル基を表す。
又は、E2は、置換基として少なくとも一つの−OH基、−OCOE5基、−OE4基、−NCO基、−NH2基、−NHCOE5基、−NHE4基又は−N(E4)2基、又はそれらを組み合わせた基を有する炭素数1〜24のアルキル基又は炭素数2〜18のアルケニル基を表す。
又は、少なくとも一つの−O−基、−NH−基、又は−NE4−基、又はそれらを組み合わせた基により連結され、かつ無置換又は置換基として少なくとも一つの−OH基、−OE4基、−NH2基、若しくはそれらを組み合わせた基を有する炭素数1〜24のアルキル基又は炭素数2〜18のアルケニル基を表す。
E4は、炭素数1〜24の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。
E5は、水素原子、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数2〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、炭素数6〜14のアリール基又は炭素数7〜15のアラルキル基を表す。
E3は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のヒドロキシアルキル基、炭素数3〜18のアルケニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜15のフェニルアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、置換基として炭素数1〜4のアルキル基を1個若しくは2個有するアリール基、又は1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロアルキル基(この基のペルフルオロアルキル部分は、6〜16個の炭素原子からなる。)を表す。
又は、一般式(2)中、G1は水素原子を表し、G2は塩素原子、フッ素原子、−CF3基、−SOE3基又は−SO2E3基を表し、E1は水素原子又は炭素数1〜24の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、E2は上記において定義されたE2と同じ基を表し、E3は炭素数1〜7の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基で表される構造を有するベンゾトリアゾール系化合物である。
本発明に特に好ましく用いられるベンゾトリアゾール系化合物としては、一般式(III)で表される構造を有する化合物のうち、R22〜R25の少なくとも一つの置換基が芳香環を有する化合物である。
以下、本発明に好適なベンゾトリアゾール系化合物(例示化合物1〜6)を示すが、これに限定されるものではない。
上記ベンゾトリアゾール系化合物のうち、最も好ましい化合物は例示化合物1である。
また、一般式(III)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(V)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
一般式(V)中、R26は炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアルキルアリール基又は炭素数7〜18のアリールアルキル基を表す。ただし、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基は、置換基としてヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素原子数1〜12のアルコキシ基を有していてもよいし、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基又はイミノ基で連結されていてもよく、これら置換基及び連結基は組み合わせて用いられてもよい。R27は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜8のアルケニル基を表す。R28は、水素原子又はヒドロキシ基を表し、少なくとも一つはヒドロキシ基である。R29は、水素原子又は−O−R26を表す。
一般式(V)のR26で表される炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
一般式(V)のR26で表される炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
一般式(V)のR26で表される炭素数3〜8のアルケニル基としては、例えば、直鎖又は分岐のプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基が不飽和結合の位置によらず挙げられる。
一般式(V)のR26で表される炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアルキルアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ビニルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−オクチルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,6−ジ−−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ペンチルフェニル基、2,5−ジ−tert−アミルフェニル基、2,5−ジ−tert−オクチルフェニル基、ビフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基等が挙げられる。
一般式(V)のR26で表される炭素数7〜18のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、2−フェニルプロパン−2−イル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
一般式(V)のR27で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−二ブチル、tert−ブチル基、イソブチル基、アミル基、tert−アミル基、オクチル基、tert−オクチル基等が挙げられ、中でも、メチル基が紫外線吸収能力に優れるため好ましい。
一般式(V)のR27で表される炭素数3〜8のアルケニル基としては、一般式(V)のR26で表される炭素数3〜8のアルケニル基と同様のものが挙げられる。
以下、一般式(V)で表されるトリアジン系化合物(例示化合物7〜17)を示すが、これに限定されるものではない。
本発明において、一般式(III)で表される構造を有する化合物は、1種単独で又は2種以上を併用することができる。
一般式(III)で表される構造を有する化合物の分子量は、当該化合物と溶媒又はポリイミドとの相溶性の観点から、100〜3000の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは100〜800の範囲内である。100〜800の範囲内であれば、化合物自体の析出やブリードアウトの発生を抑制でき、ドープ内で化合物を均一に分散させることができる。
一般式(III)で表される構造を有する化合物の添加方法は、後述するメタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやジクロロメタン、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。また、有機溶剤は、1種類の有機溶剤を単独で用いてもよく、2種類以上の有機溶剤を任意の割合で混合して用いてもよい。
一般式(III)で表される構造を有する化合物の使用量は、本発明の効果を奏する範囲で特に制限ないが、ブリードアウトや析出の防止の観点から、ポリイミドに対して2〜20質量%の範囲内が好ましく、3〜10質量%の範囲が更に好ましい。
〈その他の添加剤〉
(無機フィラー)
本発明のポリイミドフィルムには、本発明の効果を阻害しない範囲において、無機フィラーを混合することができる。
無機フィラーとしては、無機化合物粒子を用いることが好ましい。無機化合物粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等が挙げられる。無機化合物粒子は、ケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。
無機化合物粒子の1次粒子の平均粒径は、5〜400nmの範囲内が好ましく、更に好ましくは10〜300nmの範囲内である。これらは、主に粒径0.05〜0.3μmの範囲内の2次凝集体として含有されていてもよく、平均粒径80〜400nmの範囲内の粒子であれば、凝集せずに1次粒子として含まれていることも好ましい。
フィルム中のこれら粒子の含有量は、0.01〜1質量%の範囲内であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量%の範囲内であることが好ましい。
共流延法による多層構成のフィルムの場合は、表面にこの添加量の粒子を含有することが好ましい。
二酸化ケイ素の粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル、株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
酸化ジルコニウムの粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
樹脂の粒子としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。中でもシリコーン樹脂が好ましく、特に3次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でも、アエロジル200V、アエロジルR972Vが、フィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。
(紫外線吸収剤)
本発明のポリイミドフィルムは、紫外線吸収剤を含有することが耐光性を向上する観点から好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐光性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が0.1〜30%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1〜20%の範囲内、更に好ましくは2〜10%の範囲内である。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤である。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖又は側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン(株)製の市販品であり好ましく使用できる。これらの中でも、ハロゲンフリーのものが好ましい。
このほか、1,3,5−トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本発明のポリイミドフィルムは、紫外線吸収剤を2種以上含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号公報に記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。また、紫外線吸収剤は、ハロゲン基を有していないことが好ましい。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやジクロロメタン、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒又はこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒とポリイミドフィルム中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、ポリイミドフィルムの乾燥膜厚が15〜50μmの範囲内である場合は、ポリイミドフィルムに対して0.5〜10質量%の範囲内が好ましく、0.6〜4質量%の範囲内が更に好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、劣化防止剤ともいわれる。
電子デバイスなどが高湿高温の状態に置かれた場合には、ポリイミドフィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、ポリイミドフィルム中の残留溶媒中のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりポリイミドフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、本発明のポリイミドフィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等が挙げられる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。
また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、ポリイミドフィルムに対して質量割合で1〜10000ppmの範囲内が好ましく、10〜1000ppmの範囲内が更に好ましい。
(剥離促進剤)
ポリイミドフィルムの剥離抵抗を小さくする添加剤としては、界面活性剤に効果の顕著なものが多く、好ましい剥離剤としてはリン酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸又はカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸又はスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また、上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。以下に剥離剤を例示する。
RZ−1:C8H17O−P(=O)−(OH)2
RZ−2:C12H25O−P(=O)−(OK)2
RZ−3:C12H25OCH2CH2O−P(=O)−(OK)2
RZ−4:C15H31(OCH2CH2)5O−P(=O)−(OK)2
RZ−5:{C12H25O(CH2CH2O)5}2−P(=O)−OH
RZ−6:{C18H35(OCH2CH2)8O}2−P(=O)−ONH4
RZ−7:(t−C4H9)3−C6H2−OCH2CH2O−P(=O)−(OK)2
RZ−8:(iso−C9H19−C6H4−O−(CH2CH2O)5−P(=O)−(OK)(OH)
RZ−9:C12H25SO3Na
RZ−10:C12H25OSO3Na
RZ−11:C17H33COOH
RZ−12:C17H33COOH・N(CH2CH2OH)3
RZ−13:iso−C8H17−C6H4−O−(CH2CH2O)3−(CH2)2SO3Na
RZ−14:(iso−C9H19)2−C6H3−O−(CH2CH2O)3−(CH2)4SO3Na
RZ−15:トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−16:トリ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−17:C17H33CON(CH3)CH2CH2SO3Na
RZ−18:C12H25−C6H4SO3・NH4
剥離促進剤の添加量は、ポリイミド(100質量部)に対して、0.05〜5質量部の範囲内が好ましく、0.1〜2質量部の範囲内が更に好ましく、0.1〜0.5質量部の範囲内が最も好ましい。
なお、本発明のポリイミドフィルムに含有される添加剤は、上記したものに限られるものではない。
〈ポリイミドフィルムの製造方法〉
以下では、本発明のポリイミドフィルムの製造方法の具体例を説明する。なお、下記形態は好ましい形態であり、本発明はこれに限定されない。
ポリイミドフィルムの製造方法は、ポリイミドを溶媒に溶解し、金属酸化物粒子及びシランカップリング剤を投入してドープを調製する工程(ドープ調製工程)、ドープを支持体上に流延して流延膜を形成する工程(流延工程)、支持体上で流延膜から溶媒を蒸発させる工程(溶媒蒸発工程)、流延膜を支持体から剥離する工程(剥離工程)、得られたフィルムを乾燥させる工程(第1乾燥工程)、フィルムを延伸する工程(延伸工程)、延伸後のフィルムを更に乾燥させる工程(第2乾燥工程)、得られたポリイミドフィルムを巻き取る工程(巻取り工程)を含む。
なお、ポリイミドの代わりにポリアミド酸を使用する場合には、上記延伸後のフィルムを加熱処理してイミド化させる工程(加熱工程)等を更に有することが好ましい。
また、本発明の透明ポリイミドフィルムの製造方法は、透明ポリイミドフィルムの投影画像から切り取った所定の矩形エリアにおいて、8bit化のグレースケールにおけるグレーバリューの標準偏差σを0.50〜1.10の範囲内とし、かつ矩形エリアの2値化画像における黒部分の占有面積率を50%以下に調整し、点光源を通して観察した際の投影像のムラの発生を抑制する。
この具体的な達成手段としては、以下の方法(i)〜(iii)等が挙げられる。
(i)金属酸化物粒子がシランカップリング剤を介して繋がっていく際の脱水縮合の反応速度を制御する。
例えば、反応速度の遅いシランカップリング剤を選択し、フィルムが硬化した後に徐々に発生した水が抜けていくようにする。反応速度は、ドープ中のpHが塩基性側に触れると反応促進されることが多いため、このような基を有さないシランカップリング剤、例えば、アミノ基を有さないシランカップリング剤を選択する。
(ii)ポリイミドと溶媒との相分離が起こる前に発生した水が抜けるようにする。
この達成手段として、一つには上述したような芳香族系化合物等の芳香族性を有する添加剤を添加する。芳香族性を有する化合物は疎水性が高いため、水と弾き合い、水がはやく抜けるようになる。
もう一つには、水と混和する共沸脱水剤を添加し、この共沸脱水剤の気化をはやめて水をはやく抜く方法が挙げられる。
(iii)ポリイミド溶液、金属酸化物粒子、シランカップリング剤の溶媒への投入順を変更する。
すなわち、金属酸化物粒子とシランカップリング剤との脱水縮合により発生する水の影響をできるだけ低減させる(水との接触時間を減らす)ために、金属酸化物粒子及びシランカップリング剤を溶媒に添加して所定時間経過した後、ポリイミド(溶液)を混合する。
以下、本形態に係るポリイミドフィルムの製造方法の各工程について説明する。
(ドープ調製工程)
ドープ調製工程では、少なくともポリイミド、金属酸化物粒子、シランカップリング剤及び溶媒を混合してドープを調整する。必要に応じて、芳香族系化合物等のその他の添加剤や共沸脱水剤(詳細は後述する。)を混合してもよい。なお、ポリイミド、金属酸化物粒子、シランカップリング剤及びその他の添加剤は、上述したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
溶媒としては、ポリイミド及びその他の添加剤を同時に溶解し、かつ金属酸化物粒子がよく分散するものであればよく、例えば、ジクロロメタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、ニトロエタン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、ジメチルスルホキシド、m−クレゾール、フェノール、p−クロルフェノール、2−クロル−4−ヒドロキシトルエン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ジオキサン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、シクロペンタノン、イプシロンカプロラクタム、クロロホルム等を挙げることができる。
また、これらの溶媒と併せて、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の貧溶媒を、本発明に係るポリイミド及び添加剤が析出しない程度に使用してもよい。
また、アルコール系溶媒を用いることもでき、例えば、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができる。中でも、メタノール、エタノール及びブタノールから選択されることが、剥離性を改善し、高速度流延を可能にする観点から好ましく、メタノール又はエタノールを用いることがより好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になる。
これらの溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属酸化物粒子とシランカップリング剤とが脱水縮合した際に発生する水をフィルム乾燥工程で共沸脱水するために、ドープ調整工程において、あらかじめ共沸脱水剤を添加しておいてもよい。
共沸脱水剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素や、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等を用いることができる。
共沸脱水剤を使用する場合は、その添加量は、全有機溶媒量中の1〜30質量%程度である。
ポリイミド及び(添加した場合には)その他の添加剤の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報又は特開平9−95538号公報に記載の冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の高圧で行う方法等、種々の溶解方法を用いることができる。
調製したドープは、送液ポンプ等により濾過器に導いて濾過してもよい。濾過に用いる濾材としては、金属焼成フィルター、金属不織布フィルター、綿布フィルター、紙フィルター等を適宜用いることができる。また、ドープと金属酸化物粒子を添加する前に、別々に濾過してもよいし、添加した後に濾過してもよい。また、濾過時の温度については、例えば、ドープの主たる溶媒がジクロロメタンの場合、当該ジクロロメタンの1気圧における沸点+5℃以上の温度で当該ドープを濾過することにより、ドープ中のゲル状異物を取り除くことができる。好ましい温度範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
また、多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%の範囲内程度含まれることがある。返材とは、何らかの理由で原料として再利用される部分のことをいい、例えば、ポリイミドフィルムを細かく粉砕した物で、ポリイミドフィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでフィルムの規定値を越えたポリイミドフィルム原反等が使用される。
また、ドープ調製に用いられる樹脂の原料としては、あらかじめポリイミド及びその他の化合物などをペレット化したものを用いることもできる。
(流延膜形成工程)
流延膜形成工程では、ドープ調製工程で調製したドープ(主ドープ)を支持体上に流延して流延膜を形成する。例えば、ドープを送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通してダイスに送液し、無限に移送する無端の支持体、例えば、ステンレスベルト、回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置(例えば、無端ベルト流延装置)に、ダイスからドープを流延する。
流延(キャスト)における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、支持体としては、ステンレススティールベルト、鋳物で表面をめっき仕上げしたドラム、ステンレスベルト、ステンレス鋼ベルト等の金属支持体が好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mの範囲内、好ましくは1.5〜3mの範囲内、更に好ましくは2〜2.8mの範囲内とすることができる。
なお、支持体は、金属製でなくともよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ナイロン6フィルム、ナイロン6,6フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレン等のベルト等を用いることができる。フレキシブル基板としてポリイミドを用いる場合、ポリイミドを流延した金属支持体ごとポリイミドを巻き取ってもよい。
金属支持体の走行速度は特に制限されないが、通常は5m/分以上であり、好ましくは10〜180m/分の範囲内、特に好ましくは80〜150m/分の範囲内である。金属支持体の走行速度は、高速であるほど同伴ガスが発生しやすくなり、外乱による膜厚ムラの発生が顕著になる。なお、金属支持体の走行速度とは、金属支持体外表面の移動速度である。
金属支持体の表面温度は、温度が高いほうが流延膜の乾燥速度を速くできるため好ましいが、あまり高すぎると流延膜が発泡したり、平面性が劣化したりする場合があるため使用する溶媒の沸点に対して−50〜−10℃の温度の範囲内で行うことが好ましい。
ダイスは、幅方向に対する垂直断面において、吐出口に向かうにしたがい次第に細くなる形状を有している。ダイスは通常、具体的には、下部の走行方向で下流側と上流側とにテーパー面を有し、当該テーパー面の間に吐出口がスリット形状で形成されている。ダイスは金属からなるものが好ましく使用され、具体例として、例えば、ステンレス、チタン等が挙げられる。本発明において、厚さが異なるフィルムを製造するとき、スリット間隙の異なるダイスに変更する必要はない。
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイを用いることが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。厚さが異なるフィルムを連続的に製造する場合であっても、ダイスの吐出量は略一定の値に維持されるので、加圧ダイを用いる場合、押し出し圧力、せん断速度等の条件もまた略一定の値に維持される。また、製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して積層してもよい。
(溶媒蒸発工程)
溶媒蒸発工程では、支持体上で流延膜から溶媒を蒸発させる。すなわち、本工程は、金属支持体上で行われ、流延膜を金属支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる予備乾燥工程である。
溶媒を蒸発させるには、例えば、乾燥機により流延膜側及び金属支持体裏側から加熱風を吹き付ける方法、金属支持体の裏面から加熱液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等を挙げることができる。それらを適宜選択して組み合わせる方法も好ましい。金属支持体の表面温度は全体が同じであってもよいし、位置によって異なっていてもよい。加熱風の温度は10〜220℃の範囲内が好ましい。
溶媒蒸発工程においては、流延膜の剥離性及び剥離後の搬送性の観点から、残留溶媒量が10〜150質量%の範囲内になるまで、流延膜を乾燥することが好ましい。本発明において、残留溶媒量は下記数式(3)で表される。
数式(3)
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
上記数式(3)において、Mは、流延膜(フィルム)の所定の時点での質量である。Nは、Mのものを200℃で3時間乾燥させた時点での質量である。特に、溶媒蒸発工程において達成された残留溶媒量を算出するときのMは、剥離工程直前の流延膜の質量である。
(剥離工程)
剥離工程では、溶媒蒸発工程で金属支持体上で溶媒が蒸発した流延膜を剥離位置で支持体から剥離する。
金属支持体と流延膜とを剥離する際の剥離張力は、通常、60〜400N/mの範囲内であるが、剥離の際にシワが入りやすい場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましい。
金属支持体上の剥離位置における温度は、−50〜60℃の範囲内とすることが好ましく、10〜40℃の範囲内とすることがより好ましく、15〜40℃の範囲内とすることが最も好ましい。
剥離されたフィルムは、延伸工程に直接送られてもよいし、所望の残留溶媒量を達成するように第1乾燥工程に送られた後に延伸工程に送られてもよい。本発明においては、延伸工程での安定搬送の観点から、剥離工程後、フィルムは、第1乾燥工程及び延伸工程に順次送られることが好ましい。
(第1乾燥工程)
第1乾燥工程は、フィルムを加熱し、溶媒を更に蒸発させる乾燥工程である。乾燥手段は特に制限されず、例えば、熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等を用いることができる。簡便さの観点からは、千鳥状に配置したローラーでフィルムを搬送しながら、熱風等で乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は、残留溶媒量及び搬送における伸縮率等を考慮して、30〜200℃の範囲内が好ましい。
(延伸工程)
延伸工程では、フィルムを延伸する。このように金属支持体から剥離されたフィルムを延伸することで、フィルムの膜厚や平坦性、配向性等を制御することができる。
本形態に係る製造方法においては、長手方向及び/又は幅手方向に延伸する。延伸操作は多段階に分割して実施してもよい。また、2軸延伸を行う場合には、同時2軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
すなわち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
・長手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
・幅手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を張力を緩和して収縮する場合も含まれる。
延伸開始時の残留溶媒量は0.1〜200質量%の範囲内であることが好ましい。当該残留溶媒量が上記範囲であれば、延伸による平面性向上の効果が得られ、十分なフィルム強度が得られる。
本形態に係る製造方法においては、延伸後の膜厚が所望の範囲になるように長手方向及び/又は幅手方向に、好ましくは幅手方向に延伸してもよい。フィルムのガラス転移温度(Tg)に対して、(Tg−200)〜(Tg+100)℃の温度範囲で延伸することが好ましい。上記温度範囲で延伸すると、延伸応力を低減できるのでヘイズが低くなる。また、破断の発生を抑制し、平面性、フィルム自身の着色性に優れたポリイミドフィルムが得られる。延伸温度は、(Tg−150)〜(Tg+50)℃の温度範囲で行うことがより好ましい。なお、本工程は、第1乾燥工程と同一工程で(同時に)行ってもよい。
本形態に係る製造方法では、支持体から剥離された自己支持性を有するフィルムを、延伸ローラーで走行速度を規制することにより長手方向に延伸することができる。
幅手方向に延伸するには、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全処理又は一部の処理を幅方向にクリップ又はピンでフィルムの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる。)、中でも、クリップを用いるテンター方式が好ましく用いられる。長手方向に延伸されたフィルム又は未延伸のフィルムは、クリップに幅方向両端部を把持された状態にてテンターへ導入され、クリップ式テンターとともに走行しながら、幅方向へ延伸されることが好ましい。
幅手方向への延伸に際し、フィルム幅手方向に50〜1000%/minの範囲内の延伸速度で延伸することが、フィルムの平面性を向上する観点から好ましい。延伸速度が50%/min以上であれば、平面性が向上し、またフィルムを高速で処理することができるため、生産適性の観点で好ましく、1000%/min以内であれば、フィルムが破断することなく処理することができ好ましい。より好ましい延伸速度は、100〜500%/minの範囲内である。なお、延伸速度は下記数式(4)によって定義される。
数式(4)
延伸速度(%/min)={(d1/d2)−1}×100(%)/t
上記数式(4)において、d1は、延伸後のフィルムの延伸方向の幅寸法である。d2は、延伸前のフィルムの延伸方向の幅寸法である。tは、延伸に要する時間(min)である。
延伸工程では、通常、延伸した後、保持・緩和が行われる。すなわち、本工程は、フィルムを延伸する延伸段階、フィルムを延伸状態で保持する保持段階及びフィルムを延伸した方向に緩和する緩和段階をこれらの順序で行うことが好ましい。保持段階では、延伸段階で達成された延伸倍率での延伸を延伸段階における延伸温度で保持する。緩和段階では、延伸段階における延伸を保持段階で保持した後、延伸のための張力を解除することによって、延伸を緩和する。緩和段階は、延伸段階における延伸温度以下で行えばよい。
(第2乾燥工程)
第2乾燥工程では、上記延伸後のフィルムを更に加熱して乾燥させる。熱風等によりフィルムを加熱する場合、使用済みの熱風(溶媒を含んだエアーや濡れ込みエアー)を排気できるノズルを設置して、使用済み熱風の混入を防ぐ手段も好ましく用いられる。熱風温度は、40〜350℃の範囲内が好ましい。また、乾燥時間は、5秒〜30分程度が好ましく、10秒〜15分がより好ましい。
また、加熱乾燥手段としては、熱風に制限されず、例えば、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等を用いることができる。簡便さの観点からは、千鳥状に配置したローラーでフィルムを搬送しながら、熱風等で乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は、残留溶媒量、搬送における伸縮率等を考慮して、40〜350℃の範囲内が好ましい。
第2乾燥工程においては、残留溶媒量が0.5質量%以下になるまで、フィルムを乾燥することが好ましい。
(巻取り工程)
巻取り工程では、上記にて得られたフィルムを巻き取る。好ましくは、巻取り工程では、得られたフィルムを巻き取った後、室温まで冷却する。巻取り機は、一般的に使用されているものでよく、例えば、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻取り方法で巻き取ることができる。
ここで、得られるフィルムの厚さは特に制限されず、例えば、1〜200μmの範囲内、特に10〜100μmの範囲内であることが好ましい。
巻取り工程においては、延伸搬送したときにクリップ式テンター(テンタークリップ)等で挟み込んだフィルムの両端をスリット加工してもよい。スリットしたフィルム端部は、1〜30mm幅の範囲内に細かく断裁された後、溶媒に溶解させて返材として再利用することが好ましい。
成形されたフィルムのうち返材として再利用される部分の比は、10〜90質量%が好ましく、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲内である。
製膜工程の途中又は最終的に発生する返材の量により投入量は若干変わるが、通常、ドープ中の全固形分に対する返材の混合率は10〜50質量%程度であり、好ましくは15〜40質量%程度である。返材の混合率は、できるだけ一定量とすることが生産安定上好ましい。
上述した溶媒蒸発工程から巻取り工程までの各工程は、空気雰囲気下で行ってもよいし、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。また、各工程、特に乾燥工程や延伸工程は、雰囲気における溶媒の爆発限界濃度を考慮して行うことが好ましい。
(加熱工程)
上述したように、ポリイミドの代わりにポリアミド酸を使用する場合には、上記延伸後のフィルムを加熱処理してイミド化することが好ましい。具体的には、上記巻取り工程後に、ポリマー鎖分子内及びポリマー鎖分子間でのイミド化を進行させて機械的特性を向上させるべく、上記第2乾燥工程で乾燥したフィルムを更に熱処理する加熱工程を行う。
また、ポリイミド(イミド化率100%)を用いてドープを調製した場合や、上記第2乾燥工程を行うことによりフィルムのイミド化率が100%となった場合であっても、フィルムの残留応力を緩和させる目的で、加熱工程を行う。なお、上記第2乾燥工程が、加熱工程を兼ねるものであってもよい。
加熱手段は、例えば、熱風、電気ヒーター、マイクロ波等の公知の手段を用いて行われる。電気ヒーターとしては、上記した赤外線ヒーターを用いることができる。
加熱処理条件は、200〜450℃の温度範囲内で、30秒〜1時間の範囲内で適宜行うことが好ましい。これにより、ポリイミドフィルムの寸法安定性を向上させることができる。加熱工程において、フィルムを急激に加熱すると表面欠点が増加する等の不具合が生じるため、加熱方法は適宜選択することが好ましい。また、加熱工程は、低酸素雰囲気下で行うことが好ましい。
第2乾燥工程及び加熱工程における加熱温度は450℃を超えると、加熱に必要なエネルギーが非常に大きくなることから、製造コストが高くなり、更に環境負荷が増大するため、当該加熱温度は450℃以下にすることが好適である。
なお、巻取り工程後であって、加熱工程の前又は後に、ポリイミドフィルムの幅方向端部をスリットする工程や、ポリイミドフィルムが帯電していた場合にはこれを除電する工程等を更に行うものとしてもよい。
《有機ELディスプレイ》
本発明の透明ポリイミドフィルムは、各種フレキシブルディスプレイの前面板として用いることができ、例えば、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機ELディスプレイ)が挙げられる。
本発明の有機ELディスプレイは、本発明の透明ポリイミドフィルムを具備することにより、偏光サングラスをとおして見たときのフィルムのムラが目立たず、視認性を向上させることができる。
本発明の有機ELディスプレイに適用可能な有機EL素子の概要については、例えば、特開2013−157634号公報、特開2013−168552号公報、特開2013−177361号公報、特開2013−187211号公報、特開2013−191644号公報、特開2013−191804号公報、特開2013−225678号公報、特開2013−235994号公報、特開2013−243234号公報、特開2013−243236号公報、特開2013−242366号公報、特開2013−243371号公報、特開2013−245179号公報、特開2014−003249号公報、特開2014−003299号公報、特開2014−013910号公報、特開2014−017493号公報、特開2014−017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、フレキシブルディスプレイの前面板として使用する際に、前面板に適用可能な公知の各種機能層を更に有していてもよい。機能層としては、例えば、紫外線吸収、表面硬度、粘着性、色相調整、屈折率調整等の機能を有する層が挙げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
《ポリイミド溶液の調製》
以下のようにして、ポリイミド溶液A〜Cを調製した。
〈ポリイミド溶液Aの調製〉
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、トルエンを満たしたDean−Stark凝集器、撹拌機を備えた4口フラスコに、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物(酸無水物A)(ダイキン工業社製)25.59g(57.6mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(134g)に加え、窒素気流下、室温で撹拌した。
これに4,4′−ジアミノ−2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(ジアミンA)(ダイキン工業社製)19.2g(60mmol)を加え、80℃で6時間加熱撹拌した。その後、外温を190℃まで加熱して、イミド化に伴って発生する水をトルエンとともに共沸留去した。6時間加熱、還流、撹拌を続けたところ、水の発生は認められなくなった。引き続きトルエンを留去しながら7時間加熱し、更にトルエン留去後にメタノールを投入して再沈殿し、固形分を乾燥後に20質量%のN,N−ジメチルアセトアミド溶液にしてポリイミド溶液Aを調製した。
〈ポリイミド溶液Bの調製〉
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、トルエンを満たしたDean−Stark凝集器、撹拌機を備えた4口フラスコに、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(酸無水物B)(ダイキン工業社製)17.87g(57.6mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド(134g)に加え、窒素気流下、室温で撹拌した。
これに2,5−ジエチル−4,6−ジメチルベンゼン‐1,3−ジアミン(ジアミンB)(ダイキン工業社製)11.5g(60mmol)を加え、80℃で6時間加熱撹拌した。その後、外温を190℃まで加熱して、イミド化に伴って発生する水をトルエンとともに共沸留去した。6時間加熱、還流、撹拌を続けたところ、水の発生は認められなくなった。引き続きトルエンを留去しながら7時間加熱し、更にトルエン留去後にメタノールを投入して再沈殿し、固形分を乾燥後に20質量%のN,N−ジメチルアセトアミド溶液にしてポリイミド溶液Bを調製した。
〈ポリイミド溶液Cの調製〉
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、トルエンを満たしたDean−Stark凝集器、撹拌機を備えた4口フラスコに、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物(酸無水物C)(ダイキン工業社製)14.30g(57.6mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド(134g)に加え、窒素気流下、室温で撹拌した。
これに4,4′−[イソプロピリデンビス[(4,1−フェニレン)オキシ]]ビスアニリン(ジアミンC)(ダイキン工業社製)12.3g(30mmol)と、4,4′−[(4,4′−ビフェニリレン)ビスオキシ]ビスアニリン(ジアミンD)(ダイキン工業社製)11.1g(30mmol)とを加え、80℃で6時間加熱撹拌した。その後、外温を190℃まで加熱して、イミド化に伴って発生する水をトルエンとともに共沸留去した。6時間加熱、還流、撹拌を続けたところ、水の発生は認められなくなった。引き続きトルエンを留去しながら7時間加熱し、更にトルエン留去後にメタノールを投入して再沈殿し、固形分を乾燥後に20質量%のN,N−ジメチルアセトアミド溶液にしてポリイミド溶液Cを調製した。
《金属酸化物粒子分散液の調製》
以下のようにして、金属酸化物粒子分散液A〜Cを調製した。
〈金属酸化物粒子分散液Aの調製〉
20質量%のシリカゾルゲルの酸性水溶液(球形、粒径20nm)100g、イソプロパノール80g、N,N−ジメチルアセトアミド80gを500mlの反応フラスコに投入し、25〜40℃に加熱して水及びイソプロパノールを蒸留した。これを減圧下で乾燥させ、20質量%のシリカ粒子のN,N−ジメチルアセトアミド分散液である金属酸化物粒子分散液Aを得た。
〈金属酸化物粒子分散液B及びCの調製〉
金属酸化物粒子分散液Aの調製において、シリカゾルゲルをアルミナ(球形、粒径30nm)、二酸化チタン(球形、粒径50nm)にそれぞれ変更した以外は同様にして、金属酸化物粒子分散液B及びCを調製した。
《ドープの調製》
以下のようにして、ドープ101〜119を調製した。
〈ドープ101の調製〉
ポリイミド溶液A、金属酸化物粒子分散液A、下記シランカップリング剤A及び下記芳香族系化合物AのN,N−ジメチルアセトアミド溶液を混合し、30分間攪拌することでドープ101を調製した。
金属酸化物粒子(シリカ粒子)及び芳香族系化合物Aの添加量は、ドープ中の全固形分(100質量%)に対し、それぞれ20質量%、3質量%とした。
また、シランカップリング剤Aの添加量は、金属酸化物粒子(シリカ粒子)及びポリイミドの合計(100質量部)に対し、1.67質量部とした。
〈ドープ102〜119の調製〉
ドープ101の調製において、ポリイミド溶液、金属酸化物粒子分散液及びその添加量、芳香族系化合物及びその添加量、並びに溶剤を表Iに記載のとおりに変更した以外は同様にして、ドープ102〜119を調製した。
《ポリイミドフィルムの作製》
得られたドープ101〜119を、それぞれ離型剤が極少量散布された平滑なガラス板上にコーターで塗布した後、160℃のホットプレート上で30分加温して自己支持性フィルムを作製した。ガラス板から剥離したフィルムをステンレス製型枠にクリップで数箇所固定した後、200℃の真空乾燥機中で2時間置くことで有機溶剤をほぼ完全に除去し(1質量%未満)、ポリイミドフィルム101〜119を得た。
《評価》
以下のようにして、作製したポリイミドフィルム101〜119について、グレーバリューの標準偏差σ、2値化画像における黒部分の占有面積率、耐傷性及び画像の歪みを評価した。
評価結果を表Iに示す。
〈グレーバリューの標準偏差σ及び2値化画像における黒部分の占有面積率〉
図1に示すフィルムの投影画像の解析手法にしたがい、グレーバリューの標準偏差σ及び2値化画像における黒部分の占有面積率を算出した。
具体的には、フィルム試料1(ポリイミドフィルム101〜119)と白色光源2(株式会社日本技術センター製 S−light)との距離を60cmに調整し、白色光源2からフィルム試料1に対し、斜め45°方向から光照射した。フィルム試料1と、当該フィルム試料1と平行に配設された投影面3との距離を70cmに調整し、フィルム試料1の影を投影面3に投影した。
この投影画像を投影面3から90°の方向に80cmの距離で配設されたカメラ4(Canon製EOS KISS50、レンズEF−S 18=55mm、ISO感度100、絞り5.6、シャッター速度1/10秒、ホワイトバランス マニュアル設定)にて撮影し撮影画像を得た。
次いで、得られた投影画像について、以下の手順1〜7に従って、グレーバリューの標準偏差σ及び2値化画像における黒部分の占有面積率K(%)を算出した。
1.撮影画像をフリーソフトImageJを用いてパソコンに読み込んだ。
2.実際の撮影画像において1cm×5cmの矩形の評価エリアを設定した。このとき矩形の長辺がフィルム試料の搬送方向になるようにした。
3.フリーソフトImageJによって、8bitグレースケール化を行った。
4.フリーソフトImageJによってバックグラウンド補正を行った。
5.グレースケールにおけるグレーバリュー(画素値)の標準偏差σ及び平均値mを算出した。
6.平均値mを閾値として、矩形の評価エリアの2値化を行った。
7.2値化によって得られる黒部分(暗部)の面積を全体の面積で除して、黒部分の占有面積率K(%)を算出した。
ここで、フリーソフトImageJとは、WayneRasband作成のImageJ1.32Sである。
〈耐傷性の評価〉
作製したポリイミドフィルム101〜119について、表面の耐傷性を耐スチールウール擦傷性試験により評価した。具体的には、学振型耐磨耗試験機(テスター産業社製)を用い、200g荷重をかけた#0000スチールウールをフィルム上にて10回往復させ、フィルムの表面の傷付き状態を目視にて観察し、以下の評価基準に従って評価した。
○:傷が0〜5本
×:傷が6本以上
〈画像歪みの評価〉
作製したポリイミドフィルム101〜119を用いて、それぞれ有機EL表示デバイス101〜119を作製し、目視にて画像歪みの評価を行った。
具体的には、透明基板として上記ポリイミドフィルム101〜119を用いて、その上にクロムからなる反射電極、反射電極上に金属電極(陽極)としてITO(スズドープ酸化インジウム)を用いて金属電極を形成した。
有機機能層として、陽極上に正孔輸送層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)をスパッタリング法で厚さ80nmで形成し、次いで、正孔輸送層上にシャドーマスクを用いて、RGBそれぞれの発光層R、G、Bを100nmの層厚で形成した。赤色発光層Rとしては、ホスト化合物としてトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)と、発光性化合物として[4−ジシアノメチレン−2−メチル−6(4−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン](DCM)とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。緑色発光層Gとしては、ホスト化合物としてAlq3と、発光性化合物としてクマリン6(3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン)とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。青色発光層Bとしては、ホスト化合物としてBAlqと、発光性化合物としてペリレンとを共蒸着(質量比90:10)して厚さ100nmで形成した。
さらに、有機機能層に電子が効率的に注入できるような仕事関数の低い第1の陰極としてカルシウムを真空蒸着法により4nmの厚さで成膜し、第1の陰極上に第2の陰極としてアルミニウムを2nmの厚さで形成した。ここで、第2の陰極として用いたアルミニウムは、その上に透明導電膜をスパッタリング法により成膜する際に、第1の陰極であるカルシウムが化学的変質を起こすことを防ぐ役割がある。次に、陰極上にスパッタリング法によって透明導電膜を80nmの厚さで成膜し透明電極とした。ここで透明導電膜としてはITOを用いた。さらに、透明電極上にCVD法によって窒化ケイ素を200nm成膜することで、絶縁層とし、20cm×20cm有機EL素子ユニットを作製した。
次に、ガスバリアーフィルムとして、厚さ20μmのガスバリアー層付きポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、このガスバリアーフィルムの片面に、熱硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ25μmで付与した封止ユニットを作製した。
次に、90℃、0.1MPaの減圧条件下で、透明基板から絶縁層まで形成した有機EL素子ユニットと封止ユニットとを積層して圧力をかけて5分間保持した。続いて、積層体を大気圧環境に戻し、更に90℃で30分間加熱して接着剤を硬化させて、有機EL表示デバイス101〜119を作製した。
作製した各有機EL表示デバイスを斜め45°の角度から目視にて観察し、以下の評価基準に従って評価した。
○:画像の歪みが気にならないレベル
×:画像の歪みが気になるレベル
〈まとめ〉
表Iから明らかなように、本発明のポリイミドフィルムは、比較例のポリイミドフィルムと比べて、耐傷性及び画像歪みの点において優れていることがわかる。
以上から、金属酸化物粒子とシランカップリング剤とポリイミドとが含有され、金属酸化物粒子は、平均1次粒径が10〜100nmの範囲内であり、かつ、含有量が透明ポリイミドフィルム中の全固形分(100質量%)に対し、20〜70質量%の範囲内であり、透明ポリイミドフィルムの投影画像を評価したとき、8bitグレースケールにおけるグレーバリューの標準偏差σが0.50〜1.10の範囲内に、かつ2値化画像における黒部分の占有面積率が50%以下に調整されていることが画像歪みを抑えるとともに、耐傷性にも優れたフレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルムを提供することに有用であることが確認された。
[実施例2]
《ドープの調製》
以下のようにして、ドープ201〜211を調製した。
〈ドープ201の調製〉
ポリイミド溶液A、金属酸化物粒子分散液A及びシランカップリング剤AのN,N−ジメチルアセトアミド溶液を混合し、30分間攪拌することでドープ201を調製した。
金属酸化物粒子(シリカ粒子)の添加量は、ドープ中の全固形分(100質量%)に対し、50質量%とした。
また、シランカップリング剤Aの添加量は、金属酸化物粒子(シリカ粒子)及びポリイミドの合計(100質量部)に対し、1.67質量部とした。
〈ドープ202〜211の調製〉
ドープ201の調製において、ポリイミド溶液、金属酸化物粒子の添加量及びシランカップリング剤を表IIに記載のとおりに変更した以外は同様にして、ドープ202〜211を調製した。なお、シランカップリング剤Bとして信越シリコーン社製のKR−511、シランカップリング剤Eとして信越シリコーン社製のKBM−5103、シランカップリング剤Fとして信越シリコーン社製のKBM−502を用いた。
《ポリイミドフィルムの作製》
得られたドープ201〜211を、それぞれ離型剤が極少量散布された平滑なガラス板上にコーターで塗布した後、160℃のホットプレート上で30分加温して自己支持性フィルムを作製した。ガラス板から剥離したフィルムをステンレス製型枠にクリップで数箇所固定した後、200℃の真空乾燥機中で2時間置くことで有機溶剤をほぼ完全に除去し(1質量%未満)、ポリイミドフィルム201〜211を得た。
《評価》
作製したポリイミドフィルム201〜211について、実施例1と同様にして、グレーバリューの標準偏差σ、2値化画像における黒部分の占有面積率、耐傷性及び画像の歪みを評価した。
評価結果を表IIに示す。
〈まとめ〉
表IIから明らかなように、本発明のポリイミドフィルムは、比較例のポリイミドフィルムと比べて、耐傷性及び画像歪みの点において優れていることがわかる。
以上から、金属酸化物粒子とシランカップリング剤とポリイミドとが含有され、金属酸化物粒子は、平均1次粒径が10〜100nmの範囲内であり、かつ、含有量が透明ポリイミドフィルム中の全固形分(100質量%)に対し、20〜70質量%の範囲内であり、透明ポリイミドフィルムの投影画像を評価したとき、8bitグレースケールにおけるグレーバリューの標準偏差σが0.50〜1.10の範囲内に、かつ2値化画像における黒部分の占有面積率が50%以下に調整されていることが画像歪みを抑えるとともに、耐傷性にも優れたフレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルムを提供することに有用であることが確認された。
[実施例3]
《ドープの調製》
以下のようにして、ドープ301〜309を調製した。
〈ドープ301の調製〉
ポリイミド溶液A、金属酸化物粒子分散液A及びシランカップリング剤Aを混合し、30分間攪拌することでドープ301を調製した。
金属酸化物粒子(シリカ粒子)の添加量は、ドープ中の全固形分(100質量%)に対し、50質量%とした。
また、シランカップリング剤Aの添加量は、金属酸化物粒子(シリカ粒子)及びポリイミドの合計(100質量部)に対し、1.67質量部とした。
〈ドープ302の調製〉
ポリイミド溶液A、金属酸化物粒子分散液A、シランカップリング剤A及び共沸脱水剤としてトルエンを混合し、30分間攪拌することでドープ302を調製した。
金属酸化物粒子(シリカ粒子)の添加量は、ドープ中の全固形分(100質量%)に対し、50質量%とした。
また、シランカップリング剤Aの添加量は、金属酸化物粒子(シリカ粒子)及びポリイミドの合計(100質量部)に対し、1.67質量部とした。
共沸脱水剤は、主溶剤であるN,N−ジメチルアセトアミド100質量部に対し、1.00質量部の割合で混合した。
〈ドープ303〜309の調製〉
ドープ302の調製において、ポリイミド溶液、金属酸化物粒子分散液の添加量及び共沸脱水剤を表IIIに記載のとおりに変更した以外は同様にして、ドープ302〜309を調製した。
《ポリイミドフィルムの作製》
得られたドープ301〜309を、それぞれ離型剤が極少量散布された平滑なガラス板上にコーターで塗布した後、160℃のホットプレート上で30分加温して自己支持性フィルムを作製した。ガラス板から剥離したフィルムをステンレス製型枠にクリップで数箇所固定した後、200℃の真空乾燥機中で2時間置くことで有機溶剤をほぼ完全に除去し(1質量%未満)、ポリイミドフィルム301〜309を得た。
《評価》
作製したポリイミドフィルム301〜309について、実施例1と同様にして、グレーバリューの標準偏差σ、2値化画像における黒部分の占有面積率、耐傷性及び画像の歪みを評価した。
評価結果を表IIIに示す。
〈まとめ〉
表IIIから明らかなように、本発明のポリイミドフィルムは、比較例のポリイミドフィルムと比べて、耐傷性及び画像歪みの点において優れていることがわかる。
以上から、金属酸化物粒子とシランカップリング剤とポリイミドとが含有され、金属酸化物粒子は、平均1次粒径が10〜100nmの範囲内であり、かつ、含有量が透明ポリイミドフィルム中の全固形分(100質量%)に対し、20〜70質量%の範囲内であり、透明ポリイミドフィルムの投影画像を評価したとき、8bitグレースケールにおけるグレーバリューの標準偏差σが0.50〜1.10の範囲内に、かつ2値化画像における黒部分の占有面積率が50%以下に調整されていることが画像歪みを抑えるとともに、耐傷性にも優れたフレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルムを提供することに有用であることが確認された。