JP6858556B2 - 水性ボールペン用インキ組成物、およびそれを用いた水性ボールペン - Google Patents
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Description
こうした課題を解決するため、特許文献1では、1,4−シクロヘキサンジメタノールとエチルアルコール、nープロピルアルコール、イソプロピルアルコールのうち一つまたは二つ以上を含有してなるインキ組成物が開示され、特許文献2では、ジオクチルスルフォコハク酸塩を含有してなるインキ組成物が開示され、さらに特許文献3では、フッ素系界面活性剤を含有してなるインキ組成物が開示されるなど、水性インキ組成物の表面張力を下げて紙面への浸透性を向上させたインキ組成物が多数提案されている。
本発明による水性ボールペン用インキ組成物(以下、場合により、インキ組成物と表す。)は、水と、着色剤と、エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤と、オレフィン系樹脂粒子と、を含んでなることを一つの特徴とする。以下、本発明によるインキ組成物を構成する物性、各成分について説明する。
本発明のインキ組成物は、エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を含んでなる。
エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤とは、エチレンオキシドが付加されたアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤であって、該界面活性剤のエチレンオキシド付加モル数が10以下であるものである。例えば、エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレングリコール系界面活性剤やエチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレンアルコール系界面活性剤などが挙げられる。
このエチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤は、紙面に対する浸透性を顕著に向上させることができる。このため、前記アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を含んでなるインキ組成物は、紙に素早く浸透することができるようになり、よって、得られる筆跡が完全に乾燥するまでの時間が短縮され、紙面や筆跡自体がこすれて汚れることを防止できる筆跡乾燥性に優れたものとなる。
筆記後、インキ組成物が紙面に速やかに浸透するためには、筆記後のインキ組成物の表面張力を好適に制御する必要がある。筆記動作に伴う表面張力、いわゆる動的表面張力を瞬時に制御し、紙面への速やかな浸透性を得るためには界面活性剤分子のインキ中での挙動が重要である。動的条件において界面活性剤分子が気液界面に速やかに配列し、瞬時に、しかも効果的に表面張力を制御するためには、特定構造の界面活性剤を用いることで可能となることから、筆跡乾燥性に優れたインキ組成物を得ることができる。
アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤の親水性が高すぎると、インキ組成物への溶解性が高くなりすぎ、気液界面に対する界面活性剤分子の配列が速やかに成され難く、紙面に対する浸透性が向上しにくい傾向にある。逆に、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤の疎水性が高すぎると、インキ組成物への溶解性が低くなりすぎ、紙面への浸透性が向上しにくいだけでなく、分離などによるインキ組成物への安定性が劣る傾向にある。
エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤は、親水性と疎水性のバランスが保たれることから、該界面活性剤を用いると、活性剤分子は気液界面に適切に配列されるため、インキ組成物の表面張力はコントロールされ、インキ組成物の紙への浸透性が向上する。よって、エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を含んでなるインキ組成物は、紙面に対する浸透性が向上し、優れた筆跡乾燥性が得られると推測する。
尚、前記アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を含んでなる本発明のインキ組成物は、その他の潤滑剤を含ませることが可能であるが、特には、潤滑剤の中でも、後述するリン酸エステル系界面活性剤と併用することが好ましい。
これは、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤が、エチレンレンオキシドとプロピレンオキシドの二つが付加された場合、疎水性と親水性のバランスがさらに好適に保たれるためである。
前述の通り、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤の効果を得るためには、その親水性と疎水性のバランスが適切に保たれることが重要である。
エチレンオキシドとプロピレンオキシドの両方が付加されたアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤は、親水性と疎水性のバランスが、さらに好適に保ちやすくなることから、該界面活性剤を用いると、インキ組成物中で非常に安定でありながら、活性剤分子は気液界面に速やかに配列される。このため、インキ組成物の表面張力は速やかにコントロールされ、インキ組成物の紙への浸透性が速やかに向上しやすい。よって、本発明において、エチレンオキシドとさらにプロピレンオキシドが付加されたアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を用いることにより、筆跡乾燥性はさらに向上し、またインキ経時安定性にも優れたインキ組成物を提供することができるため、好ましい。
また、気液界面への配列性を考慮すれば、エチレンオキシド付加モル数とプロピレンオキシド付加モル数の合計が10以下であることが好ましい。付加モル数が多くなりすぎると、界面活性剤分子が長くなりすぎ、気液界面へ配列時に立体障害を生じやすくなる傾向があるが、付加モル数の合計が10以下であると界面活性剤の疎水性と親水性のバランスを好適に保ち、かつ気液界面への配列時の立体障害の影響も考慮された効果を得られるため特に好ましい。
さらに、筆跡乾燥性の向上や、インキの経時安定性を考慮すると、エチレンオキシド付加モル数が5であり、プロピレンオキシド付加モル数が2である前記アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を用いることが、より好ましい。
前記エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレングリコール系界面活性剤としては、下記一般式(化1)で表される界面活性剤などが挙げられる。
特には、上記一般式(化1)において、rおよびtは、1または2であり、かつ、r=tであり、かつ、(n+m)=5であり、かつ(p+q)=2であるエチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレングリコール系界面活性剤を用いることがより好ましい。
前記動的表面張力とは、液体が動きのある状態(流動状態)で示す表面張力(即ち、動きのある気液界面における表面張力)であり、本発明では最大泡圧法で測定することができる。前記最大泡圧法は、液中に挿した細管(プローブ)の先端から気泡を発生させたとき(即ち、新たな界面が形成されたとき)の最大圧力(最大泡圧)をミリ秒単位で測定することにより、液体の表面張力(mN/m)を求める方法である。
具体的には、気泡がプローブ先端から放出されて新しい気泡表面が生成され(t1)、次の気泡が成長していく際に曲率半径が最小かつ圧力が最大となる(t2)〔詳細には、気泡の曲率半径Rとプローブ先端の半径rが等しくなったときに圧力は最大となる〕。その後、気泡は更に成長し、再びプローブ先端から放出される(t3)。尚、t1〜t3は各状態における時間tである。前述の経過で気泡の発生を繰り返すことで圧力変化が繰り返されており、特に、経過時間において、新しい表面が生成されてから圧力が最大になるまでの時間(t1−t2間)をライフタイム(気泡の寿命)といい、t2−t3間をデッドタイムという。
前記ライフタイムが短いほど、液体に動きのある動的状態の表面張力が得られ、前記ライフタイムが長いほど、液体に動きのない静的状態の表面張力が得られるものである。
本発明においては、最も動的であるライフタイムが10msのときの表面張力値を動的表面張力と規定する。
本発明においては、協和界面科学社製のBP−D5を用いて、気泡発生用ガス:空気、測定温度:20℃、サンプル量75mLの条件で自動測定され、また、ブランクとして脱イオン水の動的表面張力を同条件で測定している。
さらに、本発明のインキ組成物は、オレフィン系樹脂粒子を含んでなる。
本発明のインキ組成物は、エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤により、該インキ組成物の紙面に対する濡れ性が向上するため、紙への浸透性が向上し、良好な筆跡乾燥性と良好な書き味を得ることができるものの、ボールやボールペンチップとの濡れ性が高まり、ボールとボールペンチップ先端の内壁との隙間より、インキが漏れ出してしまう可能性を有する。特に、本発明のインキ組成物を出没式ボールペンのようなペン先が露出され、常時キャップオフ状態となり得るボールペンに用いた場合には、インキ漏れが起こり得る可能性は非常に高くなる。
このインキ漏れの課題に対し、インキ組成物のインキ粘度を高めるなどして防止することが考えられるが、この場合、得られる筆跡が完全に乾燥するまでの時間が増え、筆跡乾燥性能が劣り、さらには、インキ消費量が減少して書き味が劣る傾向となる。
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、インキ組成物中にオレフィン系樹脂粒子を含ませることにより、良好な筆跡乾燥性を維持しながらも、インキ漏れが防止でき、書き味を更に向上できることがわかった。
前記オレフィン樹脂粒子は、ボールとボールペンチップ先端の内壁との間の隙間に物理的な障害を起こして、インキ漏れを抑制することができるが、無機粒子と比較して硬度が低く、粒子同士が一部変形などして、お互い密着するため、微弱な凝集構造を形成することから、そのインキ漏れ抑制効果は非常に高い。
さらに、前記オレフィン樹脂粒子は、上述のようにインキ漏れを抑制するだけでなく、ボールとボール座との間に入り込み、直接接触しづらくすることができるため、ボールの回転抵抗を緩和してボール座の摩耗を抑制し、書き味を向上させることができる。
これは、オレフィン系樹脂粒子は、炭化水素化合物であり無極性であるため水中で凝集が起こりやすく、インキ漏れを抑制しながらも、インキ消費量不足などの不具合を起こさない最適化された凝集構造を形成しやすいことから、オレフィン系樹脂粒子を用いることは、インキ漏れを効果的に抑制できるためと推定される。また、オレフィン系樹脂粒子は、インキ漏れを効果的に抑制しながらも、最適なインキ消費量を保ち、良好な筆跡をもたらすことができる。
さらには、オレフィン系樹脂粒子は溶融温度が高いため、高温環境下であっても安定して存在しやすく、高圧環境にあった場合では、変形はしやすく変性はしにくいという特徴を持つことから、ボールとボール座の間に挟まれても安定している。このため、クッション効果が得られ、書き味を更に向上し、さらに、ボール座の摩耗も抑制できることから、前記アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤と併用することにより、より潤滑性を向上することができる。
オレフィン系樹脂粒子は必要に応じて、ポリオレフィン以外の材料を含んでいても良い。
本発明で用いる着色剤は、特に限定されないが、水性ボールペン用インキ組成物に用いられる顔料、染料などを使用することができる。
染料については、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、及び各種造塩タイプ染料等が採用可能である。これらの顔料および染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
また、顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320−X100」、日機装株式会社)を用いてレーザー回折法で測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により測定することができる。
カーボンブラック10質量%の水分散体のpH値とは、カーボンブラックの濃度が10質量%の時のカーボンブラック水分散体を測定した値を用いる。
前記カーボンブラック10質量%の水分散体は、カーボンブラックを水中に攪拌などしながら分散することや、市販のカーボンブラック水分散体を希釈するなどして、調整することができる。
水としては、特に制限はなく、例えば、イオン交換水、限外ろ過水または蒸留水などを用いることができる。
潤滑剤は、ボールペンが有するボールとボールペンチップの間の潤滑性を向上して、ボールの回転をスムーズにすることで、ボール座の摩耗抑制し、書き味を向上するようなものであり、本発明においては、リン酸エステル系界面活性剤や脂肪酸を用いることが好ましい。
中でも、本発明においては、リン酸基を有するリン酸エステル系界面活性剤を用いることが、より好ましい。これは、リン酸基は金属に吸着しやすい性質にあることから、潤滑性を向上させ、ボール座の摩耗抑制や書き味を向上しやすくできるためである。
前記リン酸エステル系界面活性剤の種類としては、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、ラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系、オクチルフェノール系、ヘキサノール系等が挙げられる。この中でも、フェニル骨格を有すると立体障害により潤滑性に影響が出やすいことから、フェニル骨格を有さないリン酸エステル系界面活性剤を用いることが、好ましい。更なる潤滑性の向上を考慮すれば、ラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系のリン酸エステル系界面活性剤が好ましい。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
特に、本発明においては、エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤と、オレフィン系樹脂粒子と、リン酸エステル系界面活性剤とを併用することにより、より高い潤滑性が得られ、書き味やボール座の摩耗抑制を向上しやすくできるため、より効果的である。
また、前記脂肪酸の具体例としては、OSソープ、NSソープ、FR−14、FR−25(花王(株))等が挙げられる。
これらのリン酸エステル系界面活性剤、脂肪酸塩は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
前記剪断減粘性付与剤としては、架橋型アクリル酸重合体や、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム、λ−カラギーナン、セルロース誘導体、ダイユータンガムなどの多糖類や、会合型増粘剤が挙げられる。前記会合型増粘剤としては、会合性疎水性基によってポリエステル系、ポリエーテル系、ウレタン変性ポリエーテル系、ポリアミノプラスト系などの会合型増粘剤や、アルカリ膨潤会合型増粘剤、ノニオン会合型増粘剤などが挙げられ、これらの中でも、インキ経時安定性などを考慮すると、多糖類や会合型増粘剤を選択して用いることが好ましい。
これらの剪断減粘性付与剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
これは、デキストリンを用いることで、ペン先のインキが乾燥する際、皮膜を形成することから、ボールとチップ先端の内壁との間の隙間からのインキ漏れを抑制したり、ペン先の耐ドライアップ性能を向上したりする効果が得られやすいためである。特に、本発明においては、前記オレフィン樹脂粒子とデキストリンと併用することは、インキ漏れ抑制において、より効果的である。
前記水溶性有機溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール溶剤、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
筆跡乾燥性の向上には、インキ組成物の表面張力(静的表面張力)をも考慮することが好ましい。また、インキ漏れ抑制においても、適正な表面張力に調整することが好ましい。インキ組成物の表面張力が20mN/m以上であれば、ペン先からのインキ漏れを抑制しやすく、さらに筆跡滲みをも防止しやすい。60mN/m以下であれば、優れた筆跡乾燥性と、発色の良好な筆跡を得ることができる。より上記効果の向上を考慮すると、25〜40mN/mであることが好ましい。
尚、前記表面張力とは静的表面張力を表し、20℃環境下において、協和界面科学株式会社製の表面張力計測器を用い、白金プレートを用いて、垂直平板法によって測定して求められる。
具体的には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、コハク酸系界面活性剤などの濡れ剤、アクリル系樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、スチレン−ブタジエン樹脂エマルジョンなどの定着剤、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等の防菌剤、尿素、ソルビット等の保湿剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤などを添加することができる。これらは単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明のインキ組成物は、インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有した水性ボールペンに好適に用いることができる。
そこで、本発明者は、さらに鋭意検討した結果、ボールペンチップの仕様とインキ消費量の関係を、水性ボールペンの100mあたりのインキ消費量をA(mg)、前記ボール径をB(mm)とした場合、110≦A/B≦600とすることにより、発色良好な筆跡と良好な書き味が得られ、インキ漏れを抑制し、さらに筆跡乾燥性に優れるものとなることがわかった。また、ボテを抑制し、紙面への余剰なインキの転写を抑え、筆跡乾燥性の向上を考慮すれば、120≦A/B≦500とすることが好ましく、さらに、より上記効果の向上を考慮すれば、150≦A/B≦450とすることが好ましい。尚、水性ボールペンの100mあたりのインキ消費量とは、100mの筆記線を筆記するのに用いたインキの使用量であり、25℃、筆記用紙JIS P3201、筆記角度65°、筆記荷重100gの条件にて、筆記速度4m/minの速度で、25分間、試験サンプル5本を用いて、らせん筆記試験を行い、そのときに用いたインキの使用量(減少量)の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義する。
また、ボール径については、特に限定されないが、0.1〜2.0mm程度のボールを用いる。
また、エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を含んでなる本発明のインキ組成物は、表面の算術平均粗さ(Ra)が上記数値範囲内であるボールの表面上にのりやすく、さらに均一にのることができる。このため、紙面に対して適正量のインキ組成物を転写することが可能となるため、発色性を十分に保ちながらも、過剰なインキ組成物が紙面に転写されにくく、筆跡乾燥性は向上する。
さらに、良好な筆跡乾燥性と良好な書き味を得ることを考慮すると、前記ボールの表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.5〜3nmとすることが好ましい。
尚、上記算術平均粗さ(Ra)は、表面粗さ測定器(セイコーエプソン社製、機種名SPI3800N)により測定することができ、測定された粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。
また、移動量(クリアランス)が上記数値範囲であれば、水性ボールペンの100mあたりのインキ消費量をA(mg)、ボール径をB(mm)としたときの、インキ消費量とボール径との関係を、110≦A/B≦600に設定しやすいため、優れた筆跡乾燥性が得られ、紙面や筆跡がこすれて汚れることなく、同時にインキ漏れも抑制でき、良好な筆跡と書き味が得られやすい。
上記効果の向上を考慮すれば、移動量(クリアランス)は、30〜45μmとするのが好ましく、さらに考慮すれば、30〜40μmとするのが好ましい。
ボールペンチップのボールの縦軸方向への移動量(クリアランス)とは、ボールがボールペンチップ本体の縦軸方向への移動可能な距離を示す。
本発明によるインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
下記の配合組成および方法により、水性ボールペン用インキ組成物を得た。
・エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤(エチレンオキシド付加モル数=7、HLB値=8) 0.3質量%
・着色剤(顔料分散体:カーボンブラック、固形分25%、カーボンブラック10質量%の水分散体のpH値=9、一次平均粒子径=17nm) 20.0質量%
・オレフィン系樹脂粒子(低密度ポリエチレン分散体、固形分40%) 0.5質量%
・インキ粘度調整剤(アルカリ膨潤会合型増粘剤) 0.6質量%
・潤滑剤(リン酸エステル系界面活性剤) 1.0質量%
・デキストリン(重量平均分子量:100000) 1.0質量%
・pH調整剤(トリエタノールアミン) 2.0質量%
・水溶性有機溶剤(エチレングリコール) 10.0質量%
・防錆剤(ベンゾトリアゾール) 0.5質量%
・水残部
その後、上記作製したベースインキを加温しながら、インキ粘度調整剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合撹拌した後、濾紙を用いて濾過を行い、参考例1の水性ボールペン用インキ組成物を得た。
尚、得られた水性ボールペン用インキ組成物の粘度をE型回転粘度計(機種:DV−II+Pro、ローター:CPE−42、ブルックフィールド社製)により、20℃環境下にて剪断速度1.92sec−1(回転数0.5rpm)の条件にてインキ粘度を測定したところ、480mPa・sであった。
さらに、IM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、20℃において水性インキ組成物のpH値を測定した結果、pH値は8.6であった。
参考例2〜参考例16、実施例17および18は、インキ組成物に含まれる成分の種類や配合量を表1〜表4において表される組成に変更した以外は、参考例1と同様にして水性ボールペン用インキ組成物を得た。
比較例1〜比較例5は、インキ組成物に含まれる成分の種類や配合量を表5において表される組成に変更した以外は、参考例1と同様にして水性ボールペン用インキ組成物を得た。
参考例1〜参考例16、実施例17および18及び比較例1〜比較例5で作製した水性ボールペン用インキ組成物を、インキ収容筒の先端にボール(ボール径:0.7mm、ボール表面の算術平均粗さ(Ra):1nm)を回転自在に抱持したボールペンチップをチップホルダーに介して具備したインキ収容筒内(ポリプロピレン製)に充填したレフィル(1.0g)を(株)パイロットコーポレーション製のゲルインキボールペン(商品名:G−2)に装着した。尚、ボールペンチップのボールの縦軸方向への移動量(クリアランス)は、表1〜表5で表す仕様とした。
これらの水性ボールペンを試験用水性ボールペンとし、以下の試験および評価を行った。尚、筆記性試験は、筆記試験用紙としてJISP3201筆記用紙Aを用いた。
また、参考例1の水性ボールペン用インキ組成物を用いて水性ボールペンとして、らせん筆記試験を行ったところ、水性ボールペンの100mあたりのインキ消費量をA(mg)、前記ボール径をB(mm)とした場合、A=197(mg)、ボール径をB=0.7(mm)となり、A/B=281であった。
試験用水性ボールペンで、筆記試験用紙上に筆記し、その時の書き味を官能試験により、筆記性(書き味)を下記基準に従って評価した。得られた評価結果を表1〜表5にまとめた。
◎:極めて滑らかな書き味であった。
○:滑らかな書き味であった。
△:やや重い書き味を感じたが、実用上問題のないレベルであった。
×:重く、滑りが悪い書き味であった。
筆記性試験で得られた筆跡を、経時時間毎にティッシュペーパーで擦過させ、その筆跡の状態を下記基準に従って、筆跡乾燥性を評価した。得られた評価結果を表1〜表5にまとめた。
◎◎:筆記3秒未満で、筆跡が乾燥した。
◎:筆記3秒以上、5秒未満で、筆跡が乾燥した。
○:筆記5秒以上、10秒未満で、筆跡が乾燥した。
△:筆記10秒以上、20秒未満で、筆跡が乾燥した。
×:筆記20秒越えても、筆跡が乾燥しなかった。
40gの重りを、試験用水性ボールペンの軸筒部分に付けて、ボールペンチップを吐出させて下向きにし、ボールペンチップのボールがボールペン用陳列ケースの底部に当接させた状態を保ち、20℃、65%RHの環境下に1日放置し、ボールペンチップ先端からのインキ漏れ量を測定し、下記基準に従って、耐インキ漏れ性を評価した。得られた評価結果を表1〜表5にまとめた。
◎:インキ漏れ量が20mg未満であった。
○:インキ漏れ量が20〜50mgであった。
△:インキ漏れ量が50〜100mgであった。
×:インキ漏れ量が100mg以上であった。
Claims (5)
- 水と、着色剤と、エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤と、オレフィン系樹脂粒子と、を含んでなり、前記界面活性剤が、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの両方が付加されたものであり、エチレンオキシド付加モル数: プロピレンオキシド付加モル数=1:1〜5:1であることを特徴とする、水性ボールペン用インキ組成物。
- 前記着色剤が、顔料である、請求項1または2に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
- 前記エチレンオキシド付加モル数が10以下であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤のHLB値が、3〜14である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
- インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性インキ組成物を収容してなることを特徴とする、水性ボールペン。
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