本発明の各実施形態について、添付の図面を参照して説明する。本発明の各実施形態において、各装置の各構成要素は、機能単位のブロックを示している。各装置の各構成要素の一部又は全部は、例えば図15に示すような情報処理装置1000とプログラムとの任意の組み合わせにより実現される。情報処理装置1000は、一例として、以下のような構成を含む。
・CPU(Central Processing Unit)1001
・ROM(Read Only Memory)1002
・RAM(Random Access Memory)1003
・RAM1003にロードされるプログラム1004
・プログラム1004を格納する記憶装置1005
・記録媒体1006の読み書きを行うドライブ装置1007
・通信ネットワーク1009と接続する通信インターフェース1008
・データの入出力を行う入出力インターフェース1010
・各構成要素を接続するバス1011
各実施形態における各装置の各構成要素は、これらの機能を実現するプログラム1004をCPU1001が取得して実行することで実現される。各装置の各構成要素の機能を実現するプログラム1004は、例えば、予め記憶装置1005やRAM1003に格納されており、必要に応じてCPU1001が読み出す。なお、プログラム1004は、通信ネットワーク1009を介してCPU1001に供給されてもよいし、予め記録媒体1006に格納されており、ドライブ装置1007が当該プログラムを読み出してCPU1001に供給してもよい。
各装置の実現方法には、様々な変形例がある。例えば、各装置は、構成要素毎にそれぞれ別個の情報処理装置1000とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。また、各装置が備える複数の構成要素が、一つの情報処理装置1000とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。
また、各装置の各構成要素の一部又は全部は、プロセッサ等を含む汎用または専用の回路や、これらの組み合わせによって実現される。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
各装置の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントアンドサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
各実施形態の説明に先立ち、相関式漏洩検知手法について説明する。相関式漏洩検知手法は、以下の各実施形態において説明される分析装置が用いる手法と関連する。
図2は、相関式漏洩検知手法によって配管からの水等の流体の漏洩を検知する場合の一例を示す。図2に示す例では、配管501に、計測器550−1及び550−2の2つの計測器550が設置されている。計測器550の各々は、配管又は配管の内部の流体を伝搬する振動を計測する。
相関式漏洩検知手法では、計測器550−1及び550−2の各々にて検知された振動の波形に関して求められた相互相関関数がピークとなるような振動の到達時間差に基づいて、振動が発生した位置が特定される。相互相関関数のピークは、例えば、計測器550−1及び550−2にて検知された振動の波形に相互相関関数が求められた場合に、当該相互相関関数が最も大きくなる箇所を示す。
漏洩が発生した箇所を求めるために相関式漏洩検知手法が用いられる場合には、相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たす(すなわち、漏洩に起因する振動が発生していると判断される)場合に、上述のように特定された位置が、漏洩が発生した箇所とされる。
上述した相関式漏洩検知手法によって特定される振動の発生位置は、計測器550−1及び550−2の各々が設置された地点の間の位置となる。すなわち、計測器550−1及び550−2の間にある配管が、相関式漏洩検知手法における計測区間となる。一方、計測区間の外部で発生した振動が計測区間の配管501へ伝搬し、計測器550−1及び550−2によって検知される場合がある。そのため、相関式漏洩検知手法を用いることで特定される振動の発生位置は、振動が実際に発生している位置とは異なる場合がある。
図3は、相関式漏洩検知手法を用いることで、振動が実際に発生している位置とは異なる位置が振動の発生位置として特定される場合の例を示す。図3に示す例では、振動の計測の対象となる配管501−1に、他の配管501−2が接続されている。配管501−2は、配管501−1の上述した計測区間において配管501−1と接続されている。配管501−2は、上述した相関式漏洩検知手法による計測の対象とされていない。
図3に示す例において、配管501−2において漏洩等に起因する振動が発生している場合を想定する。この場合には、「実際の振動発生位置」として示されている位置において振動が発生していると想定する。配管501−2は、相関式漏洩検知手法による漏洩検知の計測区間外の区間となる。この例では、相関式漏洩検知手法を用いると、上述した実際の振動発生位置ではなく、配管501−1と501−2とが接続する位置(すなわち、「計測により求められた振動発生位置」として示されている位置)が振動の発生位置として特定される。
また、図4は、相関式漏洩検知手法を用いることで、振動が実際に発生している位置とは異なる位置が振動の発生位置として特定される場合の別の例を示す。
図4に示す例では、「実際の振動発生位置」として示されているように、配管501のうち、計測区間である計測器550−1及び550−2の間の区間の外側の地点において漏洩等に起因する振動が発生している。この地点は、相関式漏洩検知手法による漏洩検知の計測区間外の区間となる。そして、この場合には、「計測により求められた振動の発生位置」として示されているように、振動が発生した地点に近い側の計測器550が設けられた地点が、振動の発生位置として特定される。
また、相関式漏洩検知手法を用いることで、振動が発生した位置を求めることが可能となる。しかしながら、この手法においては、振動が発生した原因については考慮されていない。そのため、例えば、水道管からの漏水を検知するために相関式漏洩検知手法が用いられる場合に、水の使用に起因して発生した振動を、漏水に起因する振動と誤判定する可能性がある。
すなわち、相関式漏洩検知手法を用いて、配管からの水等の流体の漏洩を検知する場合には、当該手法によって特定された振動の発生位置等に基づいて、振動が実際に発生した位置や、振動が発生した原因等を適切に判断する必要がある。以下の各実施形態における分析装置等は、上述した判断を高い精度で行うことを可能とする。
なお、以下の各実施形態の説明においては、配管は、上水道網を構成する配管であると想定する。ただし、配管は、上水道網を構成する配管に限られない。配管は、他の流体を輸送する配管や、他の目的で用いられる配管であってもよい。
(第1の実施形態)
続いて、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態における分析装置を示す図である。
図1に示すとおり、本発明の第1の実施形態における分析装置100は、相互相関算出部110と、推定部120と、分析部130とを備える。相互相関算出部110は、配管の計測区間に含まれる2つの地点において検知された振動に対する相互相関関数を求める。推定部120は、相互相関関数のピークの連続性に基づいて、振動の原因を推定する。
分析部130は、相互相関関数のピークに基づき推定される振動の発生位置及び振動の原因と、管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際の振動の発生位置及び振動の原因を分析する。
上述のように、分析装置100は、配管501の2つの地点の各々において検知された振動の波形等に基づいて分析を行う。振動の計測は、配管に設置される計測器550によって行われる。一般に、2つの計測器550がそれぞれ設けられた2つの地点の間の区間が計測区間となる。また、分析装置100は、主に複数の配管501が接続されて構成される管路網を分析の対象とする。
計測器550は、配管又は配管の内部の流体を伝搬する振動を検知可能な性能があればよく、その原理的な種類は問われない。計測器550として、例えば、振動センサ、水圧センサ、ハイドロフォン等が用いられるが、これ以外の種類のセンサが用いられてもよい。
また、分析装置100と計測器550の各々とは、例えば有線又は無線の通信ネットワークを介して接続される。また、計測器550にて計測された振動に関するデータは、任意の種類の記録媒体を介して分析装置100へ転送されてもよい。
図5は、分析装置100と計測器550の各々とが通信ネットワークを接続される場合の例を示す。図5に示す例では、計測器550−1及び550−2の各々は、例えば配管501に設けられた弁栓502に取り付けられる。ただし、計測器550−1及び550−2が取り付けられる箇所は弁栓502に限られない。配管又は配管の内部の流体を伝搬する振動を検知可能であれば、計測器550が取り付けられる箇所は、特に制限されない。
なお、図5に示す例では、2つの計測器550は、分析装置100に接続されている。
しかしながら、分析装置100と接続される計測器550の数は特に制限されない。分析装置100は、3つ以上の計測器と接続されてもよい。3つ以上の計測器550が接続される場合に、分析装置100は、接続された計測器550のうち、隣接する2つの計測器550において計測された結果に基づいて分析を行う。
続いて、本実施形態における分析装置100の各構成要素について説明する。
相互相関算出部110は、計測区間に含まれる配管の2つの地点において検知された振動に関する相互相関関数を求める。相互相関算出部110においては、配管の2つの地点において検知された振動として、例えば図5に示す計測器550−1及び550−2にて計測された振動波形が用いられる。つまり、相互相関算出部110は、2つの計測器550にて計測された、同じ時間帯の所定の長さの時間の振動波形について相互相関関数を求める。相互相関算出部110は、例えば、連続して計測された振動波形を所定の長さの時間毎に分割し、分割した複数の振動波形の各々について相互相関関数を求める。なお、2つの計測器550には、振動が同じ時間帯に計測されるよう、振動を計測する時刻を同期する(2つの計測器550の各々において振動が計測される時刻の差を所定の範囲内にする)ための機構が設けられてもよい。
上述した所定の長さの時間は、予め定めた一定の長さの時間である。所定の長さの時間は、推定部120にて振動の原因が推定される際の手順等に応じて適宜定められればよい。ただし、振動の原因の推定に影響が生じない範囲であれば一定の長さには誤差が含まれてもよい。また、所定の長さは、昼夜等の計測する時間帯に応じて変えられてもよい。予め定めた長さでは、振動が発生した位置の特定や、振動の原因の推定等の処理が困難である場合には、長さを変えてもよい。この場合には、長さは、短くされてもよいし、長くされてもよい。
また、相互相関算出部110が相互相関関数を求める場合に、対象となる振動波形の取得手順等は特に制限されない。この場合に、相互相関算出部110は、所定の長さの時間毎の振動波形として、所定の長さよりも長い時間計測された振動波形のデータから、所定の長さの時間の振動波形を抽出して取得してもよい。また、相互相関算出部110は、所定の長さの時間毎の振動波形として、所定の長さの時間毎に繰り返し計測して得られた振動波形のデータを取得してもよい。
なお、相互相関算出部110においては、相互相関関数を求める際に、既知の手法が適宜用いられる。本実施形態において、相互相関関数を求めるための具体的な手段は特に限定されない。
推定部120は、相互相関算出部110によって求められた相互相関関数のピークの連続性に基づいて、振動の原因を推定する。推定部120は、更に、相互相関関数のピークに基づいて振動が発生した位置を推定してもよい。振動が発生した位置の推定において、ピークの連続性が考慮されてもよい。振動の原因についての推定又は振動が発生した位置の推定は、個々に独立して行われてもよいし、双方が併せて行われてもよい。
推定部120は、まず、相互相関算出部110によって求められた相互相関関数がピークとなるような振動の到達時間差に基づいて、振動が発生した位置を推定する。推定部120は、例えば上述した既知の相関式漏洩検知手法を用いて、振動が発生した位置を推定する。推定部120によって推定される振動の発生位置は、上述した計測区間に含まれる位置となる。つまり、計測区間以外の位置において振動が発生し、当該振動が計測区間に伝搬した場合には、当該振動が伝搬した位置が、推定部120によって振動の発生位置として推定される。
上述の例にて示されたように、例えば、計測対象の配管に他の配管が計測区間において接続されており、他の配管にて振動が発生した場合には、接続する位置が推定部120によって振動の発生位置として推定される。また、計測区間以外の位置において計測対象の配管に振動が発生した場合には、計測器550のいずれかが設けられた位置が、推定部120によって振動の発生位置として推定される。
また、推定部120は、相互相関関数のピークの連続性に基づいて、振動の原因を推定する。推定部120は、主に、相互相関算出部110によって求められた相互相関関数のピークが連続して所定の条件を満たすか否かに基づいて、振動が配管からの流体の漏洩に起因するか、又は振動が漏洩以外の他の原因に起因するかを推定する。なお、所定の条件は、相互相関のピークの大きさに関する閾値等の条件である。
配管において検知された振動に基づいて漏洩の有無を判定する場合においては、計測器550等によって検知された振動が発生した位置に加えて、振動の原因を判別する必要がある。すなわち、漏洩の有無を判定する場合には、漏洩に起因する振動であるか、漏洩以外の他の原因に起因する振動であるかの判別が必要となる。他の原因に起因する振動として、例えば、配管501に接続された設備において配管501を流れる水等の流体が使用されることに起因して、配管501に発生する振動が含まれる。他の原因に起因する振動は、外乱振動とも呼ばれる。
また、水等の使用により発生する振動の特性は、漏洩に起因する振動の特性と類似している。したがって、周波数帯域を制限する等の手段を用いて水等の使用に起因する振動と漏洩に起因する振動とを区別することは、困難な場合がある。
一方で、振動が継続する期間は、一般に、振動の原因に応じて異なる。例えば、漏洩に起因する場合には、当該漏洩が修繕されない限り、振動は継続して発生する。この場合に、連続して計測された振動波形が分割された、所定の長さの時間の振動波形の各々について相互相関関数が求められると、相互相関関数のピークは継続して一定以上の大きさになると予想される。
これに対して、水の使用に起因して配管501に発生する振動は、一般に、水等が配管501に接続された設備において使用される場合に限って発生する。水等が使用されない場合には、水の使用に起因する振動は発生しない。また、地中に埋設された配管501の情報に位置する地表面に振動が加えられる等、配管501の外部から配管501に振動が加えられることで計測器550が計測する振動は、一般に、断続的に発生する場合が多いと想定される。この場合に、連続して計測された振動波形が分割された、所定の長さの時間の振動波形の各々について相互相関関数が求められると、相互相関関数のピークの大きさは、振動の発生の有無に応じて変化すると予想される。
そこで、推定部120は、連続する複数の所定の長さの時間の振動波形の各々に対して求められた相互相関関数の各々のピークの大きさが、所定の条件を満たすかを判定する。この振動波形は、連続して計測器550によって計測された振動波形を、所定の長さの時間毎に分割した振動波形である。そして、推定部120は、相互相関関数の各々のピークの大きさが、予め定めた回数より多く(又は予め定めた回数以上)連続して所定の条件を満たす場合に、計測された振動が漏洩に起因すると推定する。
つまり、推定部120は、継続して計測器550にて振動が計測される場合に、所定の長さの時間毎に分割された振動波形の各々について、相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たすかを判定する。相互相関関数は相互相関算出部110にて求められたものである。この判定は、求められた相互相関関数の各々に対して繰り返して行われる。そして、推定部120は、相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たすと連続して判定された回数が、予め定めた回数を超える(予め定めた回数に達する)と、計測された振動が漏洩に起因すると推定する。
また、推定部120は、上述した相互相関関数の各々のピークの大きさが、継続して予め定めた回数より多く所定の条件を満たさない場合には、計測された振動が、漏洩以外の他の原因に起因する振動であると推定する。他の原因には、例えば水等の使用が含まれるが、漏洩以外の原因であれば他の原因であってもよい。
なお、上述の回数は、漏洩と他の原因に起因する振動等が区別可能となるように、管路網の条件等に応じて適宜定められればよい。管路網の条件には、例えば管路網が上水道網であれば水の使用状況等が含まれるが、その他の条件が考慮されてもよい。
また、所定の条件は、例えば相互相関関数のピークの大きさに対する閾値である。すなわち、相互相関関数のピークの大きさが閾値を超えた場合には、何らかの原因によって配管に振動が発生していると判断される。閾値の大きさは、計測区間における配管や計測器550の種類、計測される振動の大きさ等の諸条件に応じて適宜定められればよい。また、所定の条件として、配管に振動が発生していることを判断可能にする他の条件が用いられてもよい。
分析部130は、推定部120によって相互相関関数のピークに基づき推定される振動の発生位置と、管路網の構成に関する情報とに基づいて、振動の原因についての分析を行う。また、分析部130は、上記に基づいて、実際に振動が発生した位置についての分析を行う。振動の原因についての分析又は振動の原因についての分析は、個々に独立して行われてもよいし、双方が併せて行われてもよい。
図3等の例に示すように、推定部120によって特定される振動の発生位置は、振動が実際に発生している位置とは異なる可能性がある。また、推定部120によって、振動が漏洩以外の他の原因に起因すると推定された場合に、振動が発生した位置において配管を流れる水等の流体を使用する設備等が接続されていることは、推定の妥当性を示す根拠となり得る。すなわち、推定部120によって推定された結果に対して、管路網の構成に関する情報を用いることで、振動が発生した位置及び振動の原因に関する分析の精度を高められる可能性がある。
そこで、分析部130は、管路網の構成に関する情報を用いて、実際に振動が発生した位置及び振動の原因についての分析を行う。
管路網の構成に関する情報には、例えば、管路網を構成する配管501の接続関係に関する情報が含まれる。配管501の接続関係に関する情報には、複数の配管501の接続関係や、配管501に接続されている施設等の情報が含まれる。ただし、実際に振動が発生した位置や振動の原因の推定に利用可能であれば、これらとは異なる他の情報が、管路網の構成に関する情報として用いられてもよい。また、管路網が上水道網である場合、配管501に接続されている施設には、水を利用する住宅や工業施設、商業施設等が含まれる。
また、管路網の構成に関する情報は、台帳情報として、図示しない記憶装置等に予め格納される。分析部130は、必要に応じて記憶装置から管路網の構成に関する情報を読み出すことで取得する。また、分析部130は、分析装置100の外部の装置に保持された管路網の構成に関する情報を、分析の際に通信ネットワーク等を介して取得してもよい。
分析部130は、一例として、管路網の構成に関する情報のうち、推定部120によって推定された振動の発生位置における配管501の接続関係に関する情報を用いて分析を行う。分析部130は、推定部120によって推定された振動の発生位置において、計測器550による計測の対象となる配管501に他の配管が接続されている場合には、振動が実際には他の配管にて発生している可能性があると分析する。
例えば、振動が漏洩に起因することが推定部120によって推定され、かつ、推定部120によって推定された振動の発生位置に他の配管が接続されていることが、管路網の構成に関する情報によって示されている場合を想定する。この場合に、分析部130は、漏洩が、計測器550による計測の対象となる配管501ではなく、他の配管で発生している可能性があると分析する。
また、振動が漏洩以外の他の原因(水の使用等)に起因することが推定部120によって推定され、かつ、推定された振動の発生位置に他の配管が接続されていることが、管路網の構成に関する情報によって示されている場合を想定する。この場合に、分析部130は、漏洩以外の他の原因に起因する振動は、計測器550による計測の対象となる配管501ではなく、他の配管で発生している可能性があると分析する。
更に、配管501が上水道網の一部である場合において、振動の発生位置に、水等の流体を使用する施設への引込管が接続されている場合、分析部130は、推定部120による振動の原因に関する推定結果の妥当性について更に分析する。
例えば、推定部120が、振動が漏洩以外の他の原因(水の使用等)に起因すると推定し、かつ、管路網の構成に関する情報によって、住宅への引込管が振動の発生位置にて配管501と接続されていることが示されている場合を想定する。一般に、住宅においては水が使用されることから、管路網の構成に関する情報は、推定部120による原因の推定結果が妥当であることを示していると考えられる。そこで、この場合に、分析部130は、振動の原因として、住宅における水の使用が原因であると分析する。
また、振動が流体の漏洩に起因することが推定部120によって推定され、かつ、管路網の構成に関する情報によって、振動の発生位置に水を使用する施設への引込管が接続されていることが示されている場合を想定する。この場合には、分析部130は、引込管等を介して配管501と接続されている施設の種類に基づいて、振動の原因を分析する。
例えば、この場合において、施設が住宅である場合を想定する。住宅においては、水が連続して使用される可能性は低いと考えられる。すなわち、水の使用が振動の主な原因である可能性は小さいと考えられる。そこで、分析部130は、漏洩が発生している可能性が高いと分析する。
一方、上述の施設が工業施設である場合を想定する。工業施設においては、水が連続して使用される可能性もある。したがって、推定部120によって漏洩に起因すると推定された振動は、水の使用によって発生している可能性があると考えられる。そこで、分析部130は、漏洩が発生している可能性が低いと分析する。
このように、分析部130が管路網の構成に関する情報を用いることで、漏洩の可能性や、漏洩の実際の発生位置に関して様々な可能性が分析可能となる。そして、分析部130によって管路網の構成に関する情報を用いた分析が行われることで、漏洩の有無や、実際の振動の発生位置に関する誤判別の抑制が可能となる。
なお、分析部130による分析の結果は、図示しない表示装置等を介して適宜出力される。振動が発生した位置について配管網を示す地図上に振動が発生した箇所をプロットするような態様で出力される。分析部130は、振動が発生した位置の座標を出力してもよい。更に、分析部130は、振動が発生した位置と併せて、振動の原因を分析した結果を出力してもよい。
分析装置100の主に推定部120又は分析部130による分析等の処理について、更に具体例を用いて説明する。図6は、分析装置100による分析の対象となる配管の例を示す図である。図6の左側には、推定部120又は分析部130を含む分析装置100による分析の対象となる配管網が示されている。この例では、対象となる配管網は、例えば上水道網の一部である。
図6においては、配管501−1に計測器550−1及び550−2が設置されている。すなわち、図6に示す例では、配管501−1に計測区間が設定されており、当該計測区間に関して分析装置100が分析等を行うと想定する。また、配管501−1には、図6の地点Aにおいて、配管501−2が接続されている。更に、配管501−1には、図6の地点Bにおいて、住宅504への引込管503が接続されている。
また、図6の右側の座標には、相互相関関数の求める際に用いられた振動波形が計測された時間、相互相関関数のピークに対応する配管における位置、相互相関関数のピークの大きさとの関係が表される。
図6に示す座標において、縦軸は、相互相関関数のピークに対応する、配管における位置を示し、横軸は、相互相関関数を求める際に用いられた振動波形が計測された時間を示す。相互相関関数を求める際には、適宜定められた長さの時間に亘って計測された振動波形が用いられる。そして、相互相関関数がピークとなるような振動の到達時間差に基づいて、振動が発生した位置が求められる。そして、相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たす場合に、当該位置及び当該振動波形が計測された時間帯に対応する座標上の位置に黒丸の印が付される。
この例において、配管501−2に漏洩孔505が発生し、漏洩孔505から水が漏洩している場合を想定する。この場合には、好ましくは、分析装置100によって、配管501−2において漏洩が発生している可能性があるとの分析結果が得られることが求められる。
この場合に、相互相関算出部110によって、計測器550−1及び550−2にて計測された振動波形に対する相互相関関数が求められる。計測器550−1及び550−2の各々においては、連続して計測が行われる。そして、連続する計測結果を分割した所定の長さの時間毎の複数の振動波形に対して、相互相関算出部110によって相互相関関数がそれぞれ求められる。
続いて、推定部120によって振動の発生位置及び原因が推定される。推定部120は、まず、連続する複数の所定の長さの時間の振動波形の各々について求められた相互相関関数に対して、当該相互相関関数のピークに基づいて、各々の振動が発生した位置を推定する。得られた結果は、図6の右側の座標にある「ピーク1」のように表される。上述した黒丸の印は、配管501−1の地点Aに対応する座標上の位置に付されている。つまり、推定部120は、振動が発生している位置は配管501−1の地点Aであると推定する。
更に、推定部120は、相互相関関数のピークの連続性に基づいて、振動の原因を推定する。図6の「ピーク1」においては、地点Aに対応する座標上の位置に連続して黒丸が付されている。すなわち、連続して振動が発生していると考えられる。そこで、推定部120は、計測された振動が漏洩に起因する振動であると推定する。
このような推定に対して、更に、分析部130は、管路網の構成に関する情報を用いて実際に振動が発生した位置及び振動の原因についての分析を行う。
管路網の構成に関する情報によると、上述した地点Aにおいては、配管501−2が配管501−1と接続されている。したがって、地点Aにおいて漏洩が発生している可能性に加えて、配管501−2において漏洩が発生し、当該漏洩に起因する振動が配管501−1の地点Aに伝搬している可能性が考えられる。そこで、分析部130は、配管501−2において漏洩が発生している可能性があると分析する。すなわち、上述した所望の分析結果が得られている。
また、図6に示す例において、住宅504において水が使用され、その結果として発生した振動が引込管503を介して配管501−1へ伝搬する場合を想定する。この場合においては、好ましくは、分析装置100によって、水の使用に起因する振動が配管501−1と引込管503との接続地点である地点Bにて発生しているとの分析結果が得られることが求められる。
この場合においても、相互相関算出部110によって、計測器550−1及び550−2にて計測された振動波形に対する相互相関関数が求められる。そして、推定部120は、先の例と同様に、まず、連続して計測された複数の所定の長さの時間の振動波形の各々について求められた相互相関関数に対して、当該相互相関関数のピークに基づいて、各々の振動が発生した位置を推定する。得られた結果は、図6の「ピーク2」のように表される。上述した黒丸の印は、配管501−1の地点Bに対応する座標上の位置に付されている。つまり、推定部120は、振動が発生している位置は配管501−1の地点Bであると推定する。
更に、推定部120は、相互相関関数のピークの連続性に基づいて、振動の原因を推定する。図6の「ピーク2」においては、上述した「ピーク1」の場合と異なり、地点Bに対応する座標上の位置には、断続的に黒丸が付されている。すなわち、計測器550−1及び550−2によって計測された時間帯の中に、相互相関関数のピークが明確になるような振動が発生していない時間帯が含まれる。そこで、推定部120は、計測された振動が漏洩以外の他の原因に起因する振動であると推定する。
このような推定に対して、更に、分析部130は、管路網の構成に関する情報を用いて実際に振動が発生した位置及び振動の原因についての分析を行う。
管路網の構成に関する情報によると、上述した地点Bにおいては、引込管503が配管501−1と接続されている。したがって、住宅504において水の使用により発生した振動が、引込管503を介して配管501−1へ伝搬している可能性が考えられる。そこで、分析部130は、配管501−1の地点Bにて計測された振動は、水の使用に起因する可能性があると分析する。すなわち、上述した所望の分析結果が得られている。
なお、推定部120及び分析部130は、上述した手順と異なる手順で振動の原因を推定してもよい。例えば、分析部130は、管路網の構成に関する情報を用いて、予め、相互相関関数に基づいて想定される振動発生位置が、実際の漏水発生位置とは異なる可能性が高い診断結果を絞り込んでもよい。そして、推定部120は、絞り込まれた診断結果に対して、相互相関関数のピークの連続性に基づく推定を行ってもよい。
続いて、図7に示すフローチャートを参照して、本実施形態における分析装置100の動作を説明する。
最初に、相互相関算出部110は、計測区間に含まれる配管の2つの地点において計測された、所定の長さの時間の振動波形に関する相互相関関数を求める(ステップS101)。
次に、推定部120は、ステップS101にて求められた相互相関関数のピーク及びピークの連続性に基づいて、振動の発生位置及び振動の原因を推定する(ステップS102)。
この場合の一例として、推定部120は、まず、ステップS101にて求められた、連続する複数の所定の長さの振動波形に対する相互相関関数の各々がピークとなる振動波形の到達時間差に基づいて、振動が発生した位置を推定する。そして、推定部120は、相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たすと連続して判定された回数が、予め定めた回数を超えるか否かに基づいて、振動の原因を推定する。
次に、分析部130は、ステップS102にて推定された振動の発生位置と、管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際に振動が発生した位置及び振動の原因について分析する(ステップS103)。この場合の一例として、まず、分析部130は、管路網の構成に関する情報を取得する。そして、分析部130は、ステップS102において推定された振動の発生位置における配管501の接続関係に関する情報を用いて分析を行う。分析部130は、計測対象とされた配管と接続する配管において漏洩が発生している可能性等について分析する。
なお、分析装置100の動作は、上述の順番に限られない。例えば、分析部130が、予め、診断結果を絞り込み、推定部120が、絞り込まれた診断結果に対する推定を行う場合等には、ステップS102及びS103の順序は逆であってもよい。また、この場合等には、ステップS102及びS103の処理が適宜繰り返して行われてもよい。
以上のとおり、本発明の第1の実施形態における分析装置100は、振動波形に対する相互相関関数のピーク等に基づいて推定された振動が発生した位置及び振動の原因に対して、管路網の構成に関する情報も用いて分析を行う。
上水道網において、漏洩以外の原因によって配管に振動が発生する場合に、水の使用は、振動の主要な原因の一つである。水が使用されることにより発生する振動の特性は、漏洩により発生する振動の特性と類似している。したがって漏洩の検知に際して、分析の対象とする周波数帯域を制限する等では区別が困難な場合がある。
また、上水道網等の実際の管路網は、複数の配管が接続されて構成される場合がある。
このような管路網において漏洩の発生が検知された場合においても、漏洩は、振動が計測された配管とは異なる他の配管において発生している可能性がある。
これに対して、分析装置100においては、推定部120が、相互相関関数のピークの連続性に基づいて、振動の原因を推定する。このようにすることで、振動が漏洩に起因するか、又はその他の原因に起因するかの判別が可能となる。また、分析装置100においては、分析部130が、管路網の構成に関する情報に基づいて、実際に振動が発生した位置及び振動の原因を分析する。このようにすることで、振動が計測された配管とは異なる他の配管において漏洩が発生している可能性等が示される。また、推定部120による推定の妥当性が確認される。
したがって、本実施形態における分析装置100は、誤判別の抑制を可能とする。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図8は、本発明の第2の実施形態における分析装置を示す図である。
図8に示すとおり、本発明の第3の実施形態における分析装置200は、相互相関算出部110と、推定部220と、分析部130とを備える。相互相関算出部110及び分析部130は、第1の実施形態における分析装置100が備える相互相関算出部110及び分析部130のそれぞれと同様の要素である。推定部220は、相互相関関数のピーク、ピークの大きさの変動及びピークの連続性に基づいて、振動が発生した位置及び振動の原因を推定する。
すなわち、分析装置200は、推定部120に代えて推定部220を備える点が、第1の実施形態における分析装置100と異なる。また、推定部220は、主に、振動の原因の推定に際して、相互相関関数のピークの大きさの変動を考慮する点が、推定部120と異なる。
続いて、本実施形態における分析装置200の各構成要素について説明する。なお、第1の実施形態における分析装置100が備える構成要素と同様の構成要素については、説明を適宜省略する。
相互相関算出部110は、第1の実施形態における分析装置100が備える相互相関算出部110と同様の要素である。相互相関算出部110は、上述したように、計測区間に含まれる2つの地点において検知された振動に対する相互相関関数を求める。
推定部220は、相互相関算出部110によって求められた相互相関関数のピーク、ピークの大きさの変動及びピークの連続性に基づいて、振動が発生した位置及び振動の原因を推定する。
上述のように、分析装置100が備える推定部120においては、ピークの連続性に基づいて振動の原因が推定される。推定部120は、連続する所定の長さの時間の各々の振動波形に対して求められた相互相関関数の各々のピークの大きさが、所定の条件を満たすかを判定する。相互相関関数のピークが所定の条件を満たす程度に連続しない場合に、振動が漏洩以外の他の原因に起因すると推定される。
一方、上水道網等の管路網においては、近接する複数の箇所や、計測器550によって計測される配管と接続する他の配管の複数の箇所において水等の配管を流れる流体が使用される場合が想定される。この場合には、上述した複数の箇所に含まれる個々の箇所で断続的に水が使用されるが、複数の箇所の全体では、継続して水が使用されている状態となる可能性がある。すなわち、この場合には、配管に継続的に振動が発生する可能性がある。
そして、この場合に2つの計測器550によって計測された結果に対して相互相関関数が求められると、相互相関関数のピークが所定の条件を満たすように継続する場合がある。この結果として、推定部120による振動の原因の推定において、水の使用に起因して振動が発生しているにもかかわらず、漏洩が発生していると推定されるような誤った推定がなされる可能性がある。
そこで、推定部220は、更に相互相関関数のピークの大きさに基づいて振動の原因を推定する。
漏洩に起因する振動は、漏洩箇所において継続して発生する。そのため、漏洩に起因する振動が計測された場合における相互相関関数のピークの大きさは概ね一定であることが多いと想定される。これに対し、配管の異なる箇所において、異なる振動の発生源から振動が発生した場合には、発生する振動の大きさや発生した振動の伝搬のしやすさ等はそれぞれ異なると想定される。そのため、相互相関関数のピークはそれぞれ異なる大きさとなることが想定される。
そこで、相互相関関数のピークの大きさが考慮されることで、複数の箇所に含まれる個々の箇所で断続的に水等が使用されるが、複数の箇所の全体では、継続して水等が使用されている場合等に、上述した誤った推定の回避が可能となる。なお、相互相関関数のピークの大きさは、相互相関関数のピークのレベルとも呼ばれる。
推定部220は、まず、相互相関算出部110によって求められた相互相関関数がピークとなるような振動の到達時間差に基づいて、振動が発生した位置を推定する。振動が発生した位置の推定は、推定部120と同様に行われる。すなわち、推定部220は、既知の相関式漏洩検知手法を用いて、振動が発生した位置を推定する。
また、推定部220は、相互相関関数のピークの大きさ及びピークの連続性に基づいて、振動の原因を推定する。推定部220は、推定部120と同様に、振動が配管からの流体の漏洩に起因するか、又は振動が漏洩以外の他の原因に起因するかを推定する。
推定部220は、連続する所定の長さの時間の各々の振動波形に対して求められた相互相関関数の各々のピークの大きさが、繰り返し所定の条件を満たすかを判定する。この場合に、推定部220は、相互相関関数の各々のピークの大きさが、予め定めた回数より多く連続して所定の条件を満たさない場合には、計測された振動が漏洩以外の他の原因に起因すると推定する。
これに対して、相互相関関数の各々のピークの大きさが、予め定めた回数より多く継続して所定の条件を満たす場合には、推定部220は、当該ピークの大きさの変動が所定の範囲を超えるか否かを併せて判定する。そして、推定部220は、相互相関関数の各々のピークの大きさが、予め定めた回数より多く継続して所定の条件を満たし、かつ当該ピークの大きさの変動が所定の範囲を超えない場合に、計測された振動が漏洩に起因すると推定する。つまり、推定部220は、相互相関関数の各々のピークの大きさの変動が所定の範囲に含まれる程度に小さい場合に、計測された振動が漏洩に起因すると推定する。
また、推定部220は、相互相関関数の各々のピークの大きさが、予め定めた回数より多く連続して所定の条件を満たすが、ピークの大きさの変動が所定の範囲を超える場合、計測された振動が漏洩以外の他の原因に起因すると推定する。
すなわち、推定部220は、相互相関関数の各々のピークの大きさが所定の範囲を超えて大きく変動する場合に、計測された振動が漏洩以外の他の原因に起因すると推定する。なお、上述した、予め定めた回数より多く連続して所定の条件を満たす場合が、予め定めた回数以上連続して所定の条件を満たす場合であってもよい。
すなわち、推定部220は、相互相関関数のピークの大きさの変動が所定の範囲を超える、換言すると相互相関関数のピークの大きさの変動が大きい場合に、計測された振動が漏洩以外の他の原因(水の使用等)に起因すると推定する。
相互相関関数のピークの大きさの変動は、例えば、ある所定の長さの時間における相互相関関数のピークの大きさと、それに続く所定の長さの時間における相互相関関数のピークの大きさの差分として求められる。この場合に、ピークの大きさの変動が所定の範囲を超える場合は、当該差分が所定の範囲を超えて大きくなる場合に対応する。
ただし、ピークの大きさの変動は、上述とは異なる基準を用いて求められてもよい。例えば、ピークの大きさの変動は、ある期間における相互相関関数のピークのトレンドラインとの差分に基づいて求められてもよい。また、上述した所定の条件を満たすような相互相関関数のピークについて、更に閾値を用いて分類する等によって、ピークの大きさの変動が所定の範囲を超えるか否かが判断されてもよい。
分析部130は、第1の実施形態における分析装置100が備える分析部130と同様の要素である。分析部130は、上述したように実際に振動が発生した位置及び振動の原因を分析する。
なお、本実施形態においては、推定部220によって、相互相関関数のピークの大きさの変動が所定の範囲を超えることで計測された振動が漏洩以外の他の原因に起因すると推定される場合が想定される。この場合に、分析部130は、振動が複数の箇所で発生している可能性があると分析してもよい。
分析装置200の推定部220による推定について、更に図9及び図10に示す具体例を用いて説明する。図9及び10の各々は、分析装置200による分析の対象となる配管の例を示す図である。図9及び図10の各々の左側には、先に説明した図6の例と同様に、推定部220又は分析部130を含む分析装置100による分析の対象となる配管網が示されている。この例では、対象となる配管網は、例えば上水道網の一部である。
図9に示す例においては、配管501−1に計測器550−1及び550−2が設置されている。すなわち、図9に示す例では、配管501−1に計測区間が定められ、分析装置200が当該計測区間に関して分析等を行うと想定する。また、配管501−1には、配管501−2が接続されている。そして、配管501−2に漏洩孔505が発生し、漏洩孔505から水が漏洩している場合を想定する。
図10に示す例においても、図9と同様に、配管501−1に計測器550−1及び550−2が設置されている。つまり、図10に示す例においても、配管501−1に計測区間が設定され、当該計測区間に関して分析装置200が分析等を行うと想定する。また、配管501−1には、配管501−2が接続されている。更に、配管501−2には、住宅504−1及び504−2のそれぞれへの引込管503−1及び503−2が接続されている。そして、住宅504−1及び504−2の各々において、水が使用されている場合を想定する。
また、図9及び図10の右側の座標には、相互相関関数を求める際に用いられた振動波形が計測された時間、相互相関関数のピークに対応する配管における位置、相互相関関数のピークの大きさとの関係が表される。
図9及び10に示す座標において、縦軸は、相互相関関数のピークに対応する配管における位置を示し、横軸は、相互相関関数を求める際に用いられた振動波形が計測された時間を示す。そして、ある時点から所定の長さの時間において求められた相互相関関数がピークとなるような振動の到達時間差に基づいて、振動が発生した位置が求められる。そして、相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たす場合に、当該位置及び当該時点に対応する座標上の位置に印が付される。
この場合に、相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たし、更に第2の閾値と比較して大きい場合には、黒丸の印が付される。相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たすが、更に第2の閾値と比較して小さい場合には、白丸の印が付される。後述のように、推定部220は、相互相関関数のピークの大きさの変動に基づいて振動の原因を推定する際に、相互相関関数のピークが当該第2の閾値と比較して大きいか否かを考慮する。
更に、図10の右上には、振動波形が計測される時間に対応して、住宅504−1及び504−2の各々での水の使用によって発生した振動の大きさが示されている。住宅504−1での水の使用による振動の大きさは、住宅504−2での水の使用による振動の大きさと比較して小さいことが示されている。
最初に、図9に示す例について、分析装置200の主に推定部220による推定等の例を説明する。上述のように、配管501−2に漏洩孔505が発生し、漏洩孔505から水が漏洩している。この場合には、好ましくは、分析装置200によって、配管501−2において漏洩が発生している可能性があるとの分析結果が得られることが求められる。
この場合に、相互相関算出部110によって、計測器550−1及び550−2にて計測された振動波形に対する相互相関関数が求められる。そして、推定部220は、まず、連続する複数の所定の長さの時間の振動波形の各々について求められた相互相関関数に対して、当該相互相関関数のピークに基づいて、各々の振動が発生した位置を推定する。得られた結果は、図9の右側の座標に示されるように表される。すなわち、上述した黒丸の印は、配管501−1と配管501−2とが接続する座標上の位置に付されている。つまり、推定部120は、配管501−1と配管501−2とが接続する地点を振動が発生している位置であると推定する。
更に、推定部120は、相互相関関数のピークの連続性に基づいて、振動の原因を推定する。図9の右側の座標においては、配管501−1と配管501−2とが接続する地点に対応して、座標上の位置に連続して黒丸が付されている。すなわち、連続して振動が発生していると考えられる。また、相互相関関数のピークの大きさの変動の程度が小さいと考えられる。そこで、推定部120は、計測された振動が漏洩に起因する振動であると推定する。
次に、図10に示す例について、分析装置200の主に推定部220による推定等の例を説明する。上述のように、それぞれ引込管503−1及び503−2を介して配管501−2と接続された住宅504−1及び504−2の各々において水が使用されている。
この場合には、好ましくは、分析装置200によって、水の使用に起因する振動が配管501−1及び501−2の接続地点にて発生しているとの分析結果が得られることが求められる。
この場合に、図9に示す例と同様に相互相関算出部110によって、計測器550−1及び550−2にて計測された振動波形に対する相互相関関数が求められる。そして、推定部220は、まず、連続する複数の所定の長さの時間の振動波形の各々について求められた相互相関関数に対して、当該相互相関関数のピークに基づいて、各々の振動が発生した位置を推定する。また、推定部220は、相互相関関数の値の大きさが上述した第2の閾値を超えるか否かを判別する。得られた結果は、図10の右側の座標に示されるように表される。すなわち、上述した黒丸又は白丸の印は、配管501−1と配管501−2とが接続する座標上の位置に付されている。つまり、推定部120は、配管501−1と配管501−2とが接続する地点を振動が発生している位置であると推定する。
推定部220は、連続する所定の長さの時間の各々の振動波形に対して求められた相互相関関数の各々のピークの大きさが、繰り返し所定の条件を満たすかを判定する。図10に示す例では、右側の座標上に継続して白丸又は黒丸の印が付されていることから、当該ピークの大きさが繰り返し所定の条件を満たすと判定される。
推定部220は、更に、相互相関関数の各々のピークの大きさの変動が所定の範囲を超えるか否かを併せて判定する。図10に示す例では、相互相関関数の各々のピークの大きさは、白丸又は黒丸の両方の印にて表される。
この例では、住宅504−1にて水が使用されている時間帯において計測された振動波形に基づく相互相関関数のピークは白丸にて表されている。また、住宅504−2にて水が使用されている時間帯において計測された振動波形に基づく相互相関関数のピークは黒丸にて表されている。つまり、住宅504−1及び504−2の各々にて発生した振動の大きさの違いに応じて、相互相関関数のピークの大きさにも差異が生じている。
以上より、図10に示す例において、当該ピークの大きさは、上述した閾値をまたいで変動していると考えられる。そこで、推定部220は、計測された振動は、漏洩以外の他の原因に起因して発生していると推定する。すなわち、上述した所望の分析結果が得られている。
第1の実施形態の推定部120においては、相互相関関数のピークの大きさの変動は考慮されない。そのため、図10に示す例では、相互相関関数の各々のピークの大きさが、連続して繰り返し所定の条件を満たすことから、推定部120は、計測された振動が漏洩に起因する振動であると推定する。すなわち、推定部120は、このような場合に振動の原因を誤判別する可能性がある。
一方、本実施形態において、推定部220では、相互相関関数のピークの大きさの変動が考慮される。そのため、推定部220は、図10に示すような漏洩以外の他の複数の原因によって配管に継続して振動が発生している場合において、漏洩以外の他の原因によって配管に振動が発生しているとの推定を可能とする。そのため、推定部220によって、誤判別の抑制が可能となる。
続いて、図11に示すフローチャートを参照して、本実施形態における分析装置200の動作を説明する。なお、第1の実施形態における分析装置100と同様の動作については説明を適宜省略する。
最初に、相互相関算出部110は、配管の2つの地点において計測された、所定の長さの時間の振動波形に関する相互相関関数を求める(ステップS201)。ステップS201の処理は、第1の実施形態におけるステップS101の処理と同様に行われる。
次に、推定部220は、ステップS201にて求められた相互相関関数のピーク、ピークの大きさの変動及びピークの連続性に基づいて、振動の発生位置及び振動の原因を推定する(ステップS202)。
この場合の一例として、推定部220は、まず、ステップS201にて求められた、連続する複数の所定の長さの振動波形に対する相互相関関数がピークとなる振動波形の到達時間差に基づいて、振動が発生した位置を推定する。振動の発生位置の推定に関しては、第1の実施形態におけるステップS102の処理と同様に行われる。
そして、推定部220は、相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たすと連続して判定された回数が、予め定めた回数を超えるか否かを判定する。また、推定部220は、当該ピークが予め定めた回数を超えて連続して所定の条件を満たす場合等に、当該ピークの大きさの変動が所定の範囲を超えるか否かを併せて判定する。これらの判定に基づいて、推定部220は、振動の原因を推定する。
次に、分析部130は、ステップS202において推定された振動の発生位置及び原因と、管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際の振動の発生位置及び原因について分析する(ステップS203)。
以上のとおり、本発明の第2の実施形態における分析装置200では、推定部220が、相互相関関数のピークの連続性に加えて、当該ピークの大きさの変動に基づいて振動の原因を推定する。このようにすることで、漏洩以外の他の複数の原因によって継続して配管に振動が発生している場合において、漏洩以外の他の原因によって振動が発生していることが推定可能となる。したがって、分析装置200は、誤判別の更なる抑制を可能とする。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図12は、本発明の第3の実施形態における分析装置を示す図である。
図12に示すとおり、本発明の第3の実施形態における分析装置300は、相互相関算出部310と、推定部320と、分析部330とを備える。相互相関算出部310は、複数の計測区間に含まれる2つの地点の各々において計測された振動に対する相互相関関数を求める。推定部320は、複数の計測区間の各々における相互相関関数のピーク及びピークの連続性に基づいて、複数の計測区間の各々に関して振動の発生位置及び振動の原因をそれぞれ推定する。分析部330は、複数の計測区間に対する相互相関関数のピークに基づき推定される振動の発生位置及び原因と、管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際に振動が発生した位置及び振動の原因を分析する。なお、推定部320は、更に相互相関関数のピークの大きさの変動に基づいて、複数の計測区間の各々に関して振動の発生位置及び原因を推定してもよい。
すなわち、本実施形態における分析装置300は、各構成要素が、複数の計測区間において計測された振動や当該振動に対する相互相関関数に基づいて分析等を行う点が、上述した分析装置100又は200とは異なる。
上述のように、上水道網のような管路網は、一般に複数の配管が接続されて構成される。そのため、一箇所で発生した振動が、一つの配管の複数の箇所や、複数の配管において検知されうる。そして、複数の計測区間に関して振動の計測や分析が行われることで、高い精度での振動の発生位置や原因の判定が可能となると考えられる。そこで、本実施形態において、分析装置300は、複数の計測区間において検知された振動に対する相互相関関数に基づいて、実際の振動の発生位置及び振動の原因等の推定や分析を行う。
続いて、本実施形態における分析装置300の各構成要素について説明する。なお、第1の実施形態における分析装置100又は第2の実施形態における分析装置200が備える構成要素と同様の構成要素については、説明を適宜省略する。
相互相関算出部310は、配管の複数の計測区間に含まれる2つの地点の各々において検知された振動に対する相互相関関数を求める。個々の計測区間について、相互相関関数は、相互相関算出部110と同様に求められる。
なお、複数の計測区間は、例えば複数の配管に対して各々定められる。ただし、一つの配管に対して、複数の計測区間が定められてもよい。上述した図6等の例のように、一つの配管の計測区間において、他の配管が接続されている場合には、当該他の配管の少なくとも一部に別の計測区間が定められることが好ましい。
推定部320は、複数の計測区間の各々における相互相関関数のピーク及びピークの連続性に基づいて、複数の計測区間の各々について、振動の発生位置及び振動の原因をそれぞれ推定する。
推定部320は、複数の計測区間の各々について、例えば推定部120と同様に、相互相関関数のピーク及びピークの連続性に基づいて、振動の発生位置及び振動の原因をそれぞれ推定する。また、推定部320は、第2の実施形態における推定部220のように、ピークの大きさの変動に基づいて、振動の原因を推定してもよい。
分析部330は、複数の計測区間に対する相互相関関数のピーク及びピークの連続性に基づきそれぞれ推定される振動の発生位置及び原因と、管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際の振動の発生位置及び振動の原因を分析する。分析部330は、上述した分析部130と同様に、実際に振動が発生した位置及び振動の原因を分析する。そして、分析部330は、複数の計測区間においてそれぞれ検知された振動が、同じ振動であるか否かの分析を行う。
この場合に、分析部330は、複数の計測区間の各々において検知された振動に対して求められた相互相関関数のピークの連続性と、管路網の構成に関する情報とに基づいて、当該振動が同じ振動であるかを分析する。また、推定部320が、ピークの大きさの変動に基づいて振動の原因を推定する場合がある。この場合に、分析部330は、相互相関関数のピークの大きさの変動と、管路網の構成に関する情報とに基づいて、複数の計測区間の各々において検知された振動が同一の振動であるかを分析してもよい。
一例として、ある計測区間に関して、振動が他の配管で発生している可能性があると分析する場合を想定する。分析部330は、当該他の配管に設けられた計測区間における相互相関関数のピークやピークの連続性に基づいて、振動が同一の原因に起因するかを分析する。
分析部330においては、各々の計測区間に関して、振動が他の配管で発生している可能性の分析は、分析部130と同様に行われる。つまり、ある計測区間に関して、推定部320によって推定された振動の発生位置に他の配管が接続されていることが、管路網の構成に関する情報によって示されている場合に、当該他の配管において振動が発生していると分析される。
そして、他の配管にも計測区間が定められている場合に、分析部330は、ある計測区間及び他の計測区間の各々における相互相関関数のピークの連続性が同じか否かを判定する。相互相関関数のピークの連続性が同じであるか否かは、例えば、各々の計測区間において同じ時間に振動が計測された場合に、ピークの大きさが、振動が計測された所定の長さの時間毎に一致するか否かに基づいて判定される。分析部330は、ピークの連続性が同じ場合に、各々の計測区間で検知された振動が同一の振動である可能性があると分析する。
また、分析部330は、各々の計測区間に関する相互相関関数のピークの連続性の差異が所定の範囲にある場合に、各々の計測区間で検知された振動が同一の振動である可能性があると分析してもよい。所定の範囲は、計測区間における配管や振動の大きさ等の諸条件に応じて適宜定められればよい。
更に、推定部320によって、相互相関関数のピークの大きさの変動に基づいて振動の原因が推定されている場合がある。この場合に、分析部330は、ある計測区間及び他の計測区間の各々における相互相関関数のピークの大きさの変動が同じか否かを判定してもよい。
ピークの大きさの変動が同じであるか否かは、例えば、各々の計測区間において同じ時間に振動が計測された場合に、当該ピークの大きさの変動が、振動の計測単位である上述の所定の長さの時間毎に一致するか否かに基づいて判定される。分析部330は、ある計測区間及び他の計測区間の各々における相互相関関数のピークの大きさの変動が同じである場合に、各々の計測区間で検知された振動が同一の振動である可能性があると分析する。
また、分析部330は、当該ピークの大きさの変動の差異が所定の範囲にある場合に、各々の計測区間で検知された振動が同一の振動である可能性があると分析してもよい。この場合に、所定の範囲は、諸条件に応じて適宜定められればよい。
いずれの場合においても、ピークの連続性やピークの大きさが異なる場合には、分析部330は、例えば各々の計測区間において検知された振動がそれぞれ別の振動であると分析する。すなわち、分析部330は、上述したある計測区間及び他の計測区間の各々にて検知された振動は、それぞれ別個の地点で発生した別の振動であると分析する。
管路網の一箇所で発生した振動が複数の計測区間において計測されると、管路網の二箇所で振動が発生していると分析される可能性がある。また、この場合には、分析結果を参照する管路網の管理者等によって、管路網の二箇所で振動が発生していると解釈される可能性がある。分析部330が、管路網の構成に関する情報を参照しつつ、実際の振動の発生位置及び振動の原因を分析することで、上述した誤判別等の抑制が可能となる。
なお、分析部330は、3つ以上の計測区間に関して上述の分析を行うことで、これらの計測区間において検知された振動が同一の振動である可能性を分析してもよい。
なお、いずれの場合においても、振動は、漏洩に起因した振動であってもよいし、漏洩以外の他の原因に起因した振動であってもよい。分析部330は、分析部130と同様に振動の原因を分析する。
分析装置300の分析部330による分析について、更に図13に示す具体例を用いて説明する。図13は、分析装置300による分析の対象となる配管の例を示す図である。
図13の左側には、先に説明した図6や図9等の例と同様に、推定部320又は分析部330を含む分析装置300による分析の対象となる配管網が示されている。この例では、対象となる配管網は、例えば上水道網の一部である。
図13に示す例においては、配管501−1に計測器550−1及び550−2が設置されている。すなわち、図13に示す例では、配管501−1に1つ目の計測区間が定められている。
また、配管501−1には、配管501−2が接続されている。配管501−1と配管501−2とが接続される地点は、上述した1つ目の計測区間に含まれる。そして、配管501−2には、計測器550−3及び550−4が設置されている。すなわち、配管501−2に2つ目の計測区間が定められている。また、配管501−2には、住宅504への引込管が接続されている。そして、住宅504において、水が使用されている場合を想定する。したがって、好ましくは、分析装置300によって、水の使用に起因する振動が、配管501−2の引込管が接続された地点にて発生しているとの分析結果が得られることが求められる。
また、図13の右側の座標には、相互相関関数を求める際に用いられた振動波形が計測された時間、相互相関関数のピークに対応する配管における位置、相互相関関数のピークの大きさとの関係が表される。図13の右上の座標は、計測区間1における関係を表し、図13の右下の座標は、計測区間2における関係を表す。
図9及び10の例と同様に、図13に示す座標において、縦軸は、相互相関関数のピークに対応する配管における位置を示し、横軸は、相互相関関数を求める際に用いられた振動波形が計測された時間を示す。そして、ある時点から所定の長さの時間において求められた相互相関関数がピークとなるような振動の到達時間差に基づいて、振動が発生した位置が求められる。そして、相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たす場合に、当該位置及び当該時点に対応する座標上の位置に印が付される。なお、図13に示す例では、計測区間1及び計測区間2の時間は対応付けられている。つまり、計測区間1及び2の横軸方向において、同じ位置は同じ時間を表す。
また、図13に示す座標においては、図9及び10の例と同様に、相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たし、更に第2の閾値と比較して大きい場合には、黒丸の印が付される。相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たすが、更に第2の閾値と比較して小さい場合には、白丸の印が付される。
この場合に、まず、計測区間1に関する相互相関関数が求められる。また、計測区間1に関する振動の発生箇所や原因の推定が行われる。相互相関算出部310によって、計測器550−1及び550−2にて計測された振動波形に対する相互相関関数が求められる。そして、推定部320は、まず、連続する複数の所定の長さの時間の振動波形の各々について求められた相互相関関数に対して、当該相互相関関数のピークに基づいて、各々の振動が発生した位置を推定する。得られた結果は、図13の右上の座標に示されるように表される。すなわち、上述した黒丸の印は、配管501−1と配管501−2とが接続する座標上の位置に付されている。つまり、推定部320は、配管501−1と配管501−2とが接続する地点を振動が発生している位置であると推定する。
また、推定部320は、連続する所定の長さの時間の各々の振動波形に対して求められた相互相関関数の各々のピークの大きさが、繰り返し所定の条件を満たすかを判定する。
図13の右上に示す例では、一時的に相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たさない時間帯があるが、座標上に継続して白丸又は黒丸の印が付されていることから、当該ピークの大きさが繰り返し所定の条件を満たすと判定される。
推定部320は、更に、相互相関関数の各々のピークの大きさの変動が所定の範囲を超えるか否かを併せて判定する。図13の右上に示す例では、相互相関関数の各々のピークの大きさは、白丸又は黒丸の両方の印にて表される。また、相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たさない時間帯が含まれる。すなわち、当該ピークの大きさは上述した第2の閾値をまたいで変動していると考えられる。そこで、推定部320は、計測された振動は、漏洩以外の他の原因に起因して発生していると推定する。
続いて、計測区間2に関する相互相関関数が求められる。また、計測区間2に関して振動の発生箇所や原因の推定が行われる。相互相関算出部310によって、計測器550−3及び550−4にて計測された振動波形に対する相互相関関数が求められる。そして、推定部320は、まず、連続する複数の所定の長さの時間の振動波形の各々について求められた相互相関関数に対して、当該相互相関関数のピークに基づいて、各々の振動が発生した位置を推定する。得られた結果は、図13の右下の座標に示されるように表される。
すなわち、上述した黒丸の印は、住宅504への引込管が接続される座標上の位置に付されている。つまり、推定部320は、引込管が接続する地点を振動が発生している位置であると推定する。
また、推定部320は、連続する所定の長さの時間の各々の振動波形に対して求められた、計測区間2に対する相互相関関数の各々のピークの大きさが、繰り返し所定の条件を満たすかを判定する。図13の右下に示す例では、一時的に相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たさない時間帯があるが、座標上に連続して白丸又は黒丸の印が付されていることから、当該ピークの大きさが繰り返し所定の条件を満たすと判定される。
推定部320は、更に、相互相関関数の各々のピークの大きさの変動が所定の範囲を超えるか否かを併せて判定する。図13の右下に示す例では、相互相関関数の各々のピークの大きさは、白丸又は黒丸の両方の印にて表される。また、相互相関関数のピークの大きさが所定の条件を満たさない時間帯が含まれる。すなわち、当該ピークの大きさは上述した第2の閾値をまたいで変動していると考えられる。そこで、推定部320は、計測された振動は、漏洩以外の他の原因に起因して発生していると推定する。
推定部320による推定結果に対して、分析部330は、管路網の構成に関する情報を参照して分析を行う。上述のように、計測区間1において推定された振動の発生位置には、配管501−2が接続されている。分析部330は、そこで、計測区間1において検知された振動は、計測区間2で発生している可能性があると分析する。
図13の例では、相互相関関数の各々のピークの大きさの変動が一致している。より詳しくは、図13の右上及び右下の座標において、相互相関関数の大きさについて、黒丸又は白丸によって表される時間帯が一致している。また、図13の右上及び右下の座標において、相互相関関数の大きさが所定の条件を満たさない時間帯が一致している。したがって、分析部330は、振動は同じ原因で発生していると分析する。
以上より、分析部330は、振動が配管501−2において漏洩以外の他の原因によって発生していると分析する。すなわち、図13に示す例において、上述した所望の分析結果が得られている。
続いて、図14に示すフローチャートを参照して、本実施形態における分析装置300の動作を説明する。なお、第1の実施形態における分析装置100と同様の動作については説明を適宜省略する。
最初に、相互相関算出部310は、複数の計測区間に含まれる配管の2つの地点の各々において計測された所定の長さの時間の振動波形に関して、相互相関関数を求める(ステップS301)。ステップS301においては、複数の計測区間に含まれる配管の2つの地点の各々について、相互相関関数は、順次求められてもよいし、並列に求められてもよい。
次に、推定部320は、複数の計測区間の各々に関して、ステップS301にて求められた相互相関関数のピーク及びピークの連続性に基づいて、振動の発生位置及び振動の原因を推定する(ステップS302)。ステップS302において、推定部320は、更に、ピークの大きさの変動に基づいて、振動の原因を推定してもよい。
次に、分析部330は、ステップS302にて各々の計測区間に関して推定された配管における振動の発生位置及び原因と管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際の振動の発生位置及び原因について分析する(ステップS303)。分析部330は、上述した分析部130と同様の分析に加えて、複数の計測区間においてそれぞれ検知された振動が、同一の振動であるか否かの分析を行う。
以上のとおり、本実施形態における分析装置300においては、相互相関算出部310及び推定部320が、それぞれ、複数の計測区間に関して相互相関関数を求め、かつ、振動の発生位置及び原因の推定を行う。そして、分析部330は複数の計測区間に関して推定される振動の発生位置及び原因と、管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際の振動の発生位置及び振動の原因を分析する。
より具体的には、分析部330は、複数の計測区間の各々において検知された振動について、同じ振動であるか否かの分析を行う。このような分析が行われることで、複数の計測区間の各々において振動が検知された場合に、当該振動が別個の原因で発生しているとの誤判別の回避が可能となる。したがって、分析装置300は、誤判別の更なる抑制を可能とする。
この発明の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、これに限られない。
(付記1)
配管の計測区間に含まれる2つの地点において検知された振動に対する相互相関関数を求める相互相関算出手段と、
前記相互相関関数のピークの連続性に基づいて、振動の原因を推定する推定手段と、
推定された前記振動の原因と、管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際の前記振動の発生位置及び前記振動の原因を分析する分析手段と、
を備える分析装置。
(付記2)
前記推定手段は、前記相互相関関数のピークの大きさが所定の回数より多く連続して所定の条件を満たすか否かに基づいて、前記振動の原因を推定する、付記1に記載の分析装置。
(付記3)
前記推定手段は、前記相互相関関数のピークの大きさが所定の回数より多く連続して所定の条件を満たす場合に、前記振動が漏洩に起因すると推定する、付記1又は2に記載の分析装置。
(付記4)
前記推定手段は、前記相互相関関数のピークの大きさが所定の回数より多く連続して所定の条件を満たさない場合に、前記振動が漏洩以外の原因に起因すると推定する、
付記1から3のいずれか一項に記載の分析装置。
(付記5)
前記分析手段は、前記相互相関関数のピークに基づいて推定された前記振動の発生位置における前記配管の接続関係に関する情報に基づいて、前記実際の前記振動の発生位置及び前記振動の原因を分析する、
付記1から4のいずれか一項に記載の分析装置。
(付記6)
前記分析手段は、前記推定された前記振動の発生位置において他の配管が接続されている場合に、前記実際の前記振動の発生位置が前記他の配管にある可能性があると分析する、
付記5に記載の分析装置。
(付記7)
前記推定手段は、前記相互相関関数のピークの大きさの変動に基づいて前記振動の原因を推定する、
付記1から6のいずれか一項に記載の分析装置。
(付記8)
前記推定手段は、前記相互相関関数のピークの大きさの変動が所定の範囲を超える場合に、前記振動が漏洩以外の原因に起因すると推定する、
付記1から7のいずれか一項に記載の分析装置。
(付記9)
前記推定手段は、前記相互相関関数のピークの大きさの変動が所定の範囲を超えない場合に前記振動が漏洩に起因すると推定する、
付記1から8のいずれか一項に記載の分析装置。
(付記10)
前記相互相関算出手段は、複数の前記計測区間に含まれる2つの地点の各々において検知された振動に対する前記相互相関関数を求め、
前記推定手段は、前記複数の計測区間の各々における前記相互相関関数のピーク及びピークの連続性に基づいて、前記振動の発生位置及び前記振動の原因をそれぞれ推定し、
前記分析手段は、複数の計測区間に対する相互相関関数のピークに基づき推定される前記振動の発生位置及び原因と、前記管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際の前記振動の発生位置及び前記振動の原因を分析する、
付記1から9のいずれか一項に記載の分析装置。
(付記11)
前記分析手段は、前記複数の計測区間の各々における前記相互相関関数のピークの連続性及び前記ピークの大きさの変動に基づいて、前記複数の計測区間においてそれぞれ検知された振動が、同一の振動であるかを分析する、
付記10に記載の分析装置。
(付記12)
前記分析手段は、前記複数の計測区間の各々における前記相互相関関数のピークの連続性の差異が所定の範囲にある場合に、同一の振動であると分析する、
付記11に記載の分析装置。
(付記13)
配管の計測区間に含まれる2つの地点において検知された振動に対する相互相関関数を求める相互相関算出手段と、
前記相互相関関数のピークに基づいて、振動の発生位置を推定する推定手段と、
推定された前記振動の発生位置における前記配管の接続関係に関する情報に基づいて、実際の前記振動の発生位置を分析する分析手段と、
を備える分析装置。
(付記14)
前記分析手段は、前記推定された前記振動の発生位置において他の配管が接続されている場合に、前記実際の前記振動の発生位置が前記他の配管にある可能性があると分析する、
付記13に記載の分析装置。
(付記15)
配管の計測区間に含まれる2つの地点において検知された振動に対する相互相関関数を求め、
前記相互相関関数のピークの連続性に基づいて、振動の原因を推定し、
推定された前記振動の原因と、管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際の前記振動の発生位置及び前記振動の原因を分析する、
分析方法。
(付記16)
前記相互相関関数のピークの大きさが所定の回数より多く連続して所定の条件を満たすか否かに基づいて、前記振動の原因を推定する、
付記15に記載の分析方法。
(付記17)
前記相互相関関数のピークの大きさの変動に基づいて前記振動の原因を推定する、
付記15又は16に記載の分析方法。
(付記18)
複数の前記計測区間に含まれる2つの地点の各々において検知された振動に対する前記相互相関関数を求め、
前記複数の計測区間の各々における前記相互相関関数のピーク及びピークの連続性に基づいて、前記振動の発生位置及び前記振動の原因をそれぞれ推定し、
複数の計測区間に対する相互相関関数のピークに基づき推定される前記振動の発生位置及び原因と、前記管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際の前記振動の発生位置及び前記振動の原因を分析する、
付記15から17のいずれか一項に記載の分析方法。
(付記19)
配管の計測区間に含まれる2つの地点において検知された振動に対する相互相関関数を求め、
前記相互相関関数のピークに基づいて、振動の発生位置を推定し、
推定された前記振動の発生位置における前記配管の接続関係に関する情報に基づいて、実際の前記振動の発生位置を分析する、
分析方法。
(付記20)
コンピュータに、
配管の計測区間に含まれる2つの地点において検知された振動に対する相互相関関数を求める算出処理と、
前記相互相関関数のピークの連続性に基づいて、振動の原因を推定する推定処理と、
推定された前記振動の原因と、管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際の前記振動の発生位置及び前記振動の原因を分析する分析処理と、
を実行させるプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
(付記21)
前記推定処理は、前記相互相関関数のピークの大きさが所定の回数より多く連続して所定の条件を満たすか否かに基づいて、前記振動の原因を推定する、
付記20に記載の記憶媒体。
(付記22)
前記推定処理は、前記相互相関関数のピークの大きさの変動に基づいて前記振動の原因を推定する、
付記20又は21に記載の記憶媒体。
(付記23)
前記算出処理は、複数の前記計測区間に含まれる2つの地点の各々において検知された振動に対する前記相互相関関数を求め、
前記推定処理は、前記複数の計測区間の各々における前記相互相関関数のピーク及びピークの連続性に基づいて、前記振動の発生位置及び前記振動の原因をそれぞれ推定し、
前記分析処理は、複数の計測区間に対する相互相関関数のピークに基づき推定される前記振動の発生位置及び原因と、前記管路網の構成に関する情報とに基づいて、実際の前記振動の発生位置及び前記振動の原因を分析する、
付記20から22のいずれか一項に記載の記憶媒体。
(付記24)
コンピュータに、
配管の計測区間に含まれる2つの地点において検知された振動に対する相互相関関数を求める算出処理と、
前記相互相関関数のピークに基づいて、振動の発生位置を推定する推定処理と、
推定された前記振動の発生位置における前記配管の接続関係に関する情報に基づいて、実際の前記振動の発生位置を分析する分析処理と、
を実行させるプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施形態における構成は、本発明のスコープを逸脱しない限りにおいて、互いに組み合わせることが可能である。
本出願は、2017年7月26日に出願された日本出願特願2017−144431を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。