JP6852722B2 - 熱間圧延粗圧延スタンド用ワークロール - Google Patents

熱間圧延粗圧延スタンド用ワークロール Download PDF

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Description

本発明は、耐摩耗性、耐肌荒れ性、耐熱亀裂性、耐スリップ性等に優れた、ホットストリップミル等における鋼材の熱間圧延に使用される粗圧延用ワークロールに関するものである。
ホットストリップミル等の熱間圧延機は、厚み200〜300mmのスラブを30mm程度まで減厚して粗バーとする粗圧延スタンドと、粗バーを2〜5mm程度まで減厚してホットコイルとする仕上圧延スタンドで構成される。圧延に使用されるワークロールのうち、特に熱的・機械的負荷の大きい粗圧延スタンドで使用されるワークロールは、圧延荷重に抗し得る強靱性と共に、耐摩耗、耐肌荒れ、耐熱亀裂等の各特性を具備するものであることが要求される。
過去には、アダマイト鋳鉄、ニッケルグレン鋳鉄等が代表的なロール材料として使用されてきたが、上記諸特性の全てを満足し得るものではなかった。その後、高C・高Cr鋳鉄ロールが開発され、粗圧延スタンドや仕上前段スタンドに適用されるようになった。高C・高Cr鋳鉄ロールは、2.5〜3.0%C、15〜20%Crを含有し、マルテンサイト基地中に硬質のM7 C3 型のCr系炭化物を多量に分散させた組織を形成した材料を外層に適用することにより優れた耐摩耗性を有する。しかし、高C・高Cr鋳鉄ロールにおいても、耐肌荒れ性、耐熱亀裂・欠け落ち性は充分なものといえず、特に、被圧延材とのスリップを生じ易いという問題があった。
こうした問題に対し、外層である高C・高Cr鋳鉄のC濃度を低減し、低C・高Cr鋳鉄、あるいは高Cr鋳鋼として適用することで課題の解決を試みた技術が開示されている。
特許文献1、および特許文献2には、外殻層を重量比でC0.8〜2.0%、Si0.3〜1.5%、Mn0.5〜1.5%、P0.1%以下、S0.05%以下、Ni0.5〜2.0%、Cr8〜18%、Mo0.5〜5.0%、残部実質的にFeおよび不可避的不純物からなる鋳鋼材料によって形成するとともに、外殻層の基地組織の製品外層殻の表面から深さ50mmの範囲において、30μmを超える基地組織の平均径を100μm以下とし、かつ表面から深さ50mmの位置の基地組織の平均径を、表面の基地組織の平均径の1.2倍以内とした圧延用ロールが開示されている。この技術は、外殻層を形成する溶湯の供給温度および積層速度を適切な範囲で制御することで、鋳造組織の粗大化や偏析等に起因した耐摩耗性や耐肌荒れ性の低下を防止するもので、注湯速度の制御や溶湯の保熱を可能とする設備を備えた工場でのみ適用可能な技術である。
特許文献3には、外殻層が質量%で、C:0.8〜1.2%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.5〜1.5%、Cr:3.0〜12.0%、Mo:1.0〜3.0%、V:0.5%以上、2.0%未満、Ni:0.5〜2.0%、残部実質的にFeおよび不可避的不純物からなる鋳鋼からなり、外殻層の組織に占める炭化物量(面積率)を8%以下とした熱間圧延用ワークロールが開示されている。この技術は、高C−高Cr鋳鉄に比べ、C量、およびCr量を低減するとともに、一定量のVを含有する組成に調整することで、組織を微細化するとともに、炭化物の生成量を抑制するものである。これにより、ロールの実機使用過程において被圧延材とのスリップを回避するに必要な適度な表面粗度を付与すると同時に、耐熱亀裂性、耐欠け落ち性に優れた特性が得られるとされている。しかしながら、この成分系は、低C、かつ初晶として高融点のVC炭化物が晶出するため溶湯の流動性が悪く、ザク巣と呼ばれるポロシティ欠陥や、異物噛み込み等の内部品質欠陥を生じやすいという問題がある。
特許文献4には、成分組成が質量%でC:1.0〜2.0%、Si:0.2〜1.5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Ni:0.3〜2.0%、Cr:5〜20%、Mo:0.5〜5.0%、残部実質的にFeであり、組織中の炭化物量を体積比で5〜15%、硬さをHS70〜90としたことを特徴とする熱間薄板圧延用ロール材が、また、特許文献5には、特許文献4記載の成分に加え、Nb、V、Tiの1種もしくは2種以上が、質量%で1.0〜3.0%含有された熱間薄板圧延用ロール材が、それぞれ開示されている。文献によると、これら技術の適用先は、熱間薄板圧延機の仕上スタンド中段から後段と記載されているため、粗スタンドに適用した場合の効果は不明であるが、既定された組成範囲は、高C量、および高Cr量の組成を含んでおり、高C・高Cr鋳鉄ロールと同様の課題、特に粗スタンドで特有に要求される耐スリップ性に課題が残るものと考えられる。
そこで本発明は、耐摩耗、耐肌荒れ、耐熱亀裂、ならびに耐スリップの各特性に優れ、
然も、特別な設備を使用せずに製造できる内部品質の良好な熱間圧延粗スタンド用ワークロールを提供することを目的とする。
特開平5−247591号公報 特開平6−25794号公報 特開平7−126795号公報 特開平4−136137号公報 特開平5−271855号公報
そこで本発明は、耐摩耗、耐肌荒れ、耐熱亀裂、ならびに耐スリップの各特性に優れ、
然も、特別な設備を使用せずに製造できる内部品質の良好な熱間圧延粗スタンド用ワークロールを提供することを目的とする。
〔1〕質量%で、C:0.90〜1.40%、Si:0.50〜1.50%、Mn:0.50〜1.50%、Ni:0.5〜2.0%、Cr:9.0〜16.0%、Mo:1.00〜3.00%、Al:0.010〜0.030%、を含有するとともに、V:0.05〜0.50%、Ti:0.05〜0.50%、Nb:0.02〜0.20%、のうち少なくとも1種を含有し、
かつ、下記(1)式、(2)式、および(3)式を満足し、
残部Feおよび不可避的不純物からなる溶湯組成を有する鋳鋼からなる外殻層と、
該外殻層の内側に鋳造されたダクタイル鋳鉄からなる軸芯材が、
中間層を介して一体化している熱間圧延粗圧延スタンド用ワークロール。
8≦Cr/C≦14…(1)
3.0≦12.3C+0.55Cr−15.2≦7.0…(2)
26.0≦15.5C+Cr…(3)
ここで、Cr、Cは、各元素の含有量(質量%)である。
本発明により、耐摩耗、耐肌荒れ、耐熱亀裂、ならびに耐スリップの各特性に優れ、
然も、特別な設備を使用せずに製造できる内部品質の良好な熱間圧延粗スタンド用ワークロールを提供することが可能となった。
図1は炭化物面積率とK値(K=12.3×C+0.55×Cr−15.2)の関係を示す図である。 図2はデンドライト2次アーム間隔とL値(L=15.5×C+Cr)の関係を示す図である。
以下、本発明の熱間圧延粗圧延スタンド用ワークロールの外殻層成分について、元素ごとに組成範囲の限定理由を説明する。尚、以下、「%」は「質量%」を示す。
C:0.90〜1.40%
Cは、Cr、Mo、V等と結合して炭化物を形成し、耐摩耗性の向上に寄与する。0.90%に満たないと、炭化物量が不足し、耐摩耗性を充分に高めることができない。一方、1.40%を超えると、炭化物量が過剰になり、耐熱亀裂性が損なわれる。より好適な範囲は1.00〜1.30%である。
Si:0.5〜1.5%
Siは、溶湯の脱酸剤として添加される。その量が0.50%に満たないと、脱酸効果が不足し、鋳造欠陥を生じやすい。他方1.5%を超えると、脆化を招き、耐熱亀裂性が低下する。
Mn:0.5〜1.50%
Mnは、溶湯の脱酸剤として、また不純分であるSをMnSとして固定無害化する元素として、少なくとも0.5%を必要とする。しかし、1.50%を超えると、残留オーステナイトが生じ易くなり、硬さの低下や耐摩耗性の不足を招く。
Ni:0.5〜2.0%
Niは基地中に固溶して焼入れ性を高める効果を有する。0.5%に満たないと、その効果が得られず、他方2.0%を超えると、残留オーステナイトを生じ易く、硬度の不足をきたす原因となる。より好適な範囲は0.7〜1.5%である。
Cr:9.0〜16.0%
Crは、基地中に固溶して基地を強化し、一部はCr系炭化物を形成して耐摩耗性の向上に寄与する。本発明の用途において必要な効果を得るためには、少なくとも9.0%を必要とする。添加増量により効果を増すが、16.0%を超えると、Cr系炭化物の生成量が不必要に増加するため、耐熱亀裂性の低下とそれに伴う耐肌荒れ性の低下や、耐スリップ性の低下等の不具合を招く。より好適な範囲は9.5〜14.0%である。
Mo:1.00〜3.00%
Moは、基地中に固溶して焼入れ性を向上させ、かつ高温特性の改善効果を有する。また、その一部はMo系炭化物を形成して耐摩耗性の向上に寄与する。これらの効果を充分なものとするには、少なくとも1.00%を必要とする。添加量の増加に伴い上記効果が増加するが、過度に増量すると、炭化物量が過剰となり、上記特性の改善効果が損なわれる。このため、3.00%以下とする。より好適な範囲は1.2〜2.4%である。
Al:0.010〜0.030%
Alは、溶湯の脱酸剤として添加される。その量が0.010%に満たないと、脱酸効果が不足し、鋳造欠陥を生じやすい。また本発明では、C量とCr量を好適な成分範囲内に精度良くに制御することが求められるが、Alの添加による脱酸効果で、成分調整が容易になる。他方0.030%を超えると、脱酸効果は飽和するため、この量を超えて添加する必要はない。
V:0.05%〜0.50%、Ti:0.05%〜0.50%、Nb:0.02%〜0.20%のうち少なくとも1種を含有する。
Vは、Cと結合して高硬度のMC型炭化物を形成することにより、耐摩耗性の向上に寄与する元素である。また、MC型炭化物は、M7C3 型炭化物に比べて微細に晶析出するため、この炭化物の生成により初晶オーステナイトのデンドライト成長が抑制され、オーステナイト結晶粒が微細化されると同時に、粒界に生成するM7C3 型のCr系炭化物の粗大化も抑制される。この組織の微細・均一化により、耐肌荒れ性、耐熱亀裂性の改善や欠け落ちの抑制等の特性が改善される。また後述するように、この組織の微細化効果は、ロール内面側における微細引け巣等の鋳造欠陥の発生防止にも寄与する。上記の効果を充分なものとするには、少なくとも0.05%を必要とする。添加増量により効果の増加をみるが、過度に増量すると、遠心鋳造工程において、遠心力による該炭化物の比重分離が生じ、上記効果が損なわれる。このため、0.50%以下とする。より好適な範囲は0.05〜0.40%である。
Tiは、Cと結合して高硬度のMC型炭化物の晶出核を形成することにより、微細な粒状MC型炭化物の分散晶出を促進し、耐摩耗性の向上に寄与する元素である。また、MC型炭化物は、M7C3 型炭化物に比べて微細に晶析出するため、この炭化物の生成により初晶オーステナイトのデンドライト成長が抑制され、オーステナイト結晶粒が微細化されると同時に、粒界に生成するM7C3 型のCr系炭化物の粗大化も抑制される。この組織の微細・均一化により、耐肌荒れ性、耐熱亀裂性の改善や欠け落ちの抑制等の特性が改善される。また後述するように、この組織の微細化効果は、ロール内面側における微細引け巣等の鋳造欠陥の発生防止にも寄与する。上記の効果を充分なものとするには、少なくとも0.05%を必要とする。添加増量により効果の増加をみるが、過度に増量すると、MC型炭化物を粗大化させ、遠心鋳造工程において、遠心力による該炭化物の比重分離に伴う炭化物偏析が生じ、上記効果が損なわれる。このため、0.50%未満とする。より好適な範囲は0.05〜0.20%である。
Nbは、MC型炭化物に固溶してMC型炭化物を強化し、MC型炭化物の破壊抵抗を増加させる作用を有し、耐摩耗性を向上させる。また、適量のNbの添加は、遠心鋳造における遠心力によるMC型炭化物の比重分離に伴う炭化物偏析を抑制する効果も有する。こうした作用により、強化された粒状MC型炭化物が分散晶出することで、耐摩耗性の向上に寄与する。また、MC型炭化物の分散晶出により、初晶オーステナイトのデンドライト成長が抑制され、オーステナイト結晶粒が微細化されると同時に、粒界に生成するM7C3 型のCr系炭化物の粗大化も抑制される。この組織の微細・均一化により、耐肌荒れ性、耐熱亀裂性の改善や欠け落ちの抑制等の特性が改善される。また後述するように、この組織の微細化効果は、ロール内面側における微細引け巣等の鋳造欠陥の発生防止にも寄与する。上記の効果を充分なものとするには、少なくとも0.02%を必要とする。添加増量により効果の増加をみるが、過度に増量するとMC型炭化物を粗大化させ、上記効果が損なわれる。このため、0.20%未満とする。より好適な範囲は0.05〜0.20%である。
上記のとおり、本発明の熱間圧延粗圧延スタンド用ワークロールの外殻層をなす鋳鋼は、高C−高Cr鋳鉄に比べ、C量が少なく、少量のVを含有する組成に調整されている。
上記元素ごとの組成範囲の限定に加え、主要な炭化物形成元素であるCr量をC量との関係で特定の範囲に規定する。以下にその技術思想を記す。
8≦Cr/C≦14
まず、具備すべき特性のうち、耐摩耗性については、高C−高Cr鋳鉄と同様、CrとCの結合により形成されるM7C3 型炭化物〔(Fe,Cr)7 C3 〕を必要十分な量だけ晶出させることにより満足させる。晶出炭化物をM7C3 型に制御するためには、C量に対するCr量の比、Cr/Cを特定の範囲内に収めることが有効であり、本発明では、Cr/Cを8以上14以下とすることで達成される。
3.0≦12.3C+0.55Cr−15.2≦7.0
M7C3 型炭化物の量は、少なすぎると耐摩耗性が低下し、多すぎると耐スリップ性が低下する。Cr/Cを一定の範囲内とすると、C量とCr量を増加、あるいは減少させれば、M7C3炭化物の晶出量はそれぞれ、増加、あるいは減少する。本発明者らの研究によれば、M7C3炭化物の晶出量と成分組成の関係は、下式で求められるK値で整理できることがわかった。
K=12.3×C+0.55×Cr−15.2
図1にK値と炭化物面積率の関係、および評価に用いた光学顕微鏡写真の例を示す。ここで炭化物面積率は、以下のようにして算出した。対象材料の観察用試料を研磨後、硝酸アルコール溶液でエッチングし、光学顕微鏡写真を撮影した。得られた写真より、画像解析によって基地部と炭化物部を2値化分離し、炭化物部の面積を求めた。写真の黒い部分はマトリックス、白い部分は炭化物である。図1より、算出したK値に対して直線的に増加する関係にあることがわかる。本発明者らは、後述する実施例に記載した実験を通じK値が3〜7に対応する範囲に炭化物量を制御すれば、耐摩耗性と耐スリップ性が両立できることを知見した従って、本発明においては、K値が3〜7の範囲内となるようC量、およびCr量を調整する。
26.0≦15.5C+Cr
ところで、本発明に関わる熱間圧延粗圧延スタンド用ワークロールの外殻層は、遠心鋳造法により製造することを想定しているが、一般にこの方法で製造された外殻層の凝固組織は、外表面側は比較的微細な組織となっているが、内面側に至るにつれて次第に粗大化する。これは、外表面側は鋳型(金型)に直接接触して抜熱されるため急冷されるものの、内面側は既に形成された凝固殻を介して金型へ抜熱されるので、冷却速度が小さくなるためである。一方、高C−高Cr鋳鉄ロールにおける熱亀裂や欠け落ちの発生は、凝固組織が不均一で粗大となった部位で生じやすいことが知られている。一般的な組成の高Cr鋳鉄、高Cr鋳鋼の凝固過程は、まず初晶としてオーステナイトがデンドライト状に晶出し、さらに温度が低下すると、残液相からオーステナイトとM7C3炭化物が同時に晶出する、いわゆる共晶凝固を生じて凝固が完了する。このような凝固パスを経るため、得られる凝固組織は、デンドライト状初晶の間隙を菊花弁状のM7C3炭化物を包含した共晶コロニーが埋める、といった形態となる。ここでデンドライト状初晶が粗大になると、液相中の初晶の充填度が粗となり、その間隙で生じる共晶凝固相も粗大なものとなる。さらに、初晶間隙の共晶凝固相は、ミクロ組織レベルでは最終凝固部となるので、この部位に凝固収縮に伴う微細な引け巣が発生する場合もある。従って、冷却速度が低下する内面側においても凝固組織の粗大化、および微細引け巣等の鋳造欠陥の発生を防止するためには、初晶のデンドライト成長を抑制する必要がある。本発明者らは、各種成分組成の高Cr鋳鉄、および高Cr鋳鋼材料を、同一冷却条件で凝固させ、得られた鋳塊の凝固組織を光学顕微鏡で観察した。観察に当たっては、デンドライト状初晶の粗大化の程度を示す指標にデンドライト2次アーム間隔をとり、その長さを測定した。その結果、初晶オーステナイトのデンドライト2次アーム間隔は、下式で示されるL値で整理できることがわかった。
L=15.5×C+Cr
図2にデンドライト2次アーム間隔とL値の関係を示す。デンドライト2次アーム間隔はL値の減少に対して単調に増加するが、Lが26未満になるとその勾配の絶対値が大きくなり、デンドライト2次アーム間隔の増大、すなわち初晶デンドライトの粗大化が急激に進行することがうかがえる。従って、本発明においては、L値が26以上となるようC量、およびCr量を調整する。
軸芯材には、鋳造性と加工性に優れた高強度材料を適用することが望ましい。本発明では実用性を考慮して、ダクタイル鋳鉄を適用するものとする。ダクタイル鋳鉄は、鋳鉄溶湯にMg等の添加を行なって、黒鉛の球状化処理を施した鋳鉄で、ねずみ鋳鉄などと呼ばれる球状化処理を施していない鋳鉄に比較して、靱性に富み、優れた機械的性質を有する。一方、ロールの外層と軸材を直接溶着一体化させると、軸材に外層の合金成分が多量に混入し、軸材が脆化する。このような外層成分の軸材への混入を抑制するため、外層と軸材の間に中間層を設ける必要がある。中間層の成分は厳密に規定する必要はないが、軸材の脆化をもたらす合金成分であるCr、Mo、V、Nb等の含有量はできるだけ低く抑えることが望ましい。また、鋳造性を確保するため、中間層用の溶湯は、Cを0.5%以上、Siを0.5%以上含有することが望ましい。
〔1〕試験片による評価
ロール外殻層に相当する第1表に示す16種類の化学組成の溶湯を各々遠心鋳造し、肉厚100mmのスリーブ状試料を作製した。この試料を1050℃で焼入れ、550℃で焼戻し処理を行なった後、摩耗試験片を切り出した。摩耗試験は、相手材(S45C)と試験片の2円盤のすべり摩耗方式で、相手材を800℃に加熱し、試験片の摩耗面が420℃となるよう水冷しながら800rpmで回転させ、試験片と相手片のすべり率を10%として、荷重70kgfで45分間圧接した。この試験を、相手材を変えて3回行った後の試験片の摩耗量を測定した。また、この間の試験片に作用するトルクを計測し、この値から見かけの摩擦係数を算出した。
結果を表1に示す。ロール外層材1、ロール外層材2、ロール外層材3、およびロール外層材4は本発明の成分範囲を満たす例であり、以下に示す比較例よりも、摩耗量が少なく、見かけの摩擦係数が大きいという結果を得、本発明に対し好適な材料特性を有した。
比較例のうち、ロール外層材5、ロール外層材7、およびロール外層材9の3種類は、摩耗量が多かった。耐摩耗性は炭化物の量に大きく依存するが、これらの外層材では炭素、または炭化物形成元素であるCrやMoの含有量が少なかったため、炭化物量が不十分となり必要な耐摩耗性を得るには至らなかった。
他の比較例の、ロール外層材6、ロール外層材8、およびロール外層材10は、見かけの摩擦係数が小さく、実際の圧延に供した場合にはスリップの発生が懸念された。これらの外層材では炭素、または炭化物形成元素であるCrやMoの含有量が過剰であったため、炭化物量が多くなり、圧延使用時に適度な表面粗度が得られないと考えられる。ロール外層材11、ロール外層材13、およびロール外層材15は、本発明の成分範囲に対して、それぞれV、Ti、Nbが少ない場合の比較例であるが、ロール外層材5、ロール外層材7、およびロール外層材9よりは摩耗量が減少し、また、ロール外層材6、ロール外層材8、およびロール外層材10よりは見かけの摩擦係数が増加したものの、充分なレベルには至らなかった。これらの外層材では、V、Ti、およびNbといったMC炭化物形成元素が添加されてはいるが、その量が効果を発現するには不十分であった。ロール外層材12、ロール外層材14、およびロール外層材16は、本発明の成分範囲に対して、それぞれV、Ti、Nbが過剰な場合の比較例であり、摩耗量および見かけの摩擦係数とも比較的良好な値を得た。しかし、本発明例のロール外層材1、ロール外層材2、ロール外層材3、およびロール外層材4を凌駕するには至らなかった。この結果は、V、Ti、およびNbといったMC炭化物形成元素は過剰に添加しても遠心鋳造中の遠心分離作用により内部に残存するMC炭化物量は一定量以上には増加しないことによる。さらに、内部に残存したMC炭化物も凝集・粗大化した状態で凝固するものが増加し、その部分を起点とした試験片の欠けが発生して試験後試験片の重量減少が大きくなり、みかけ摩耗量が増加する。このように、V、Ti、Nbは過剰に添加しても、工業的な観点から費用対効果が見合わない。
Figure 0006852722
〔2〕供試ロールによる評価
(1)供試ロールの製造
表2に示す組成の溶湯を溶製し、外殻層、中間層の順で遠心鋳造してスリーブ状の鋳造体を形成した。凝固後、鋳型回転を停止し、鋳型を直立させて、軸芯材となる溶湯を静止鋳造した。凝固・冷却後、型バラシを行ない、鋳放しロールを取り出した。鋳放しロールを粗加工(胴部表面を径方向に4mm研削等)後、自動超音波探傷器により内質の中間検査を行なった(検査方法および結果は後述)。中間検査結果が合格基準内にあることを確認後、ロールに熱処理を施し、仕上げ機械加工を加えて供試ロールセットA(発明例1)、ロールセットB(発明例2)、ロールセットC(比較例1)、ロールセットD(比較例2)、ロールセットE(比較例3)、およびロールセットF(比較例4)を得た。なお、ロールは2本で1セットであり、2本のロールは同一の溶湯を分湯して鋳造した。表2に記載の成分組成は、分湯前の溶湯成分である。製品ロールサイズは、胴部外径1250mm,胴長2000mmである。胴部表面の硬さは、いずれのロールも76〜78HSである。
Figure 0006852722
(2)内質中間検査
自動超音波探傷器による内質の中間検査条件は下記のとおりである。なお、ここで用いる用語は基本的にJIS Z 2300「非破壊検査用語」、およびJIS Z 2344「金属材料のパルス反射法による超音波探傷試験方法通則」による。
測定は、ロール全体を水槽に浸漬する水浸法で行なった。探触子は垂直型、発信周波数2MHzのものを用い、探傷感度は、基準感度V5=50%に対し0dBとした。きずエコー(以下、Fエコー)高さ20%以上の信号を検出し、欠陥有無の判定、外層/中間層境界、および中間層/軸材境界位置の測定を行なう。欠陥有無の判定は、Fエコー高さ100%以上の信号がなければ合格とし、次工程である熱処理を施すこととした。今回は全てのロールセット(計8本)で合格範囲であったが、内部品質のレベルをより詳細に評価するため、得られた探傷信号よりUT20と称する指標を用いて比較を行なった。ここでUT20値とは、ロール胴部の廃却径近傍径領域の全長全周に対する測定データを、θ(ロール周方向)−z(ロール軸方向)面に対しCスコープ表示し、各(θ、z)座標におけるFエコー高さ(20%以上)の値を全て足し合わせたものとして定義した。第2表に各ロールセットのUT20値を示す。UT20値は、本発明例2(B)<本発明例1(A)<比較例1(C)<比較例2(D)<比較例4(F)、<比較例3(E)、の順となっており、本発明例のロールは、内部欠陥が少ないものと見込まれる。特に、比較例2のロールはL≧26を満たしていないため、凝固組織の粗大化に伴う微小引け巣が存在している可能性がある。
(3)実機圧延による評価
供試ロールセットA、B、C、D、E、およびFを、ホットストリップミルの粗圧延機用ワークロールとして、実機使用試験に供した。供試ロールセットは、まず粗圧延機の前段スタンドに投入し、外径が1180mmとなるまで前段スタンドで使用した(約50000トン圧延ごとに研削)。その後、後段スタンドで廃却まで使用した。
前段スタンドでの使用結果を表3に示す。平均圧延量(ロール消耗1mmあたりの圧延量)は、本発明例2(B)>本発明例1(A)≒比較例1(C)≒比較例3(E)>比較例4(F)>比較例2(D)、の順となった。圧延使用後のロールについて熱亀裂深さを測定したところ(胴中央、周方向に4か所について、亀裂が消えるまで0.01mmずつ研削して測定)、本発明例1(A)≒比較例2(D)<発明例2(B)<比較例4(F)<比較例3(E)<比較例1(C)の順で深くなった。これらの結果より、比較例2(D)は、耐摩耗性に劣るためロール消耗が早く、比較例1(C)は、材料自体の耐摩耗性は良好であるが、熱亀裂が深いためロール改削量が多くなり、圧延量が伸びないことが伺える。また、使用期間中、肌荒れの発生も認められた。これに対し、本発明例1(A)、および本発明例2(B)は、耐摩耗性と耐熱亀裂性のバランスが良く、結果として満足できるレベルの圧延量を確保している。
Figure 0006852722
この他、比較例1(C)のロールでは、前段スタンド使用中にスリップが1回発生した。本発明で規定する成分範囲よりC量やCr量が高いため、炭化物量が過大となりスリップが発生しやすくなったと考えられる。また、比較例4(F)のロールでは、前段スタンド使用中に欠け落ちが1回発生した。本発明で規定する成分範囲よりV量が低いため、組織が粗大化し、欠け落ちが発生しやすくなったと考えられる。さらに、比較例3(E)、および比較例4(F)のロールでは、後段スタンドでの使用中、研削後の超音波探傷検査で欠陥が認められ、それぞれロール径1190mm、および1110mmで廃却とした。これは、ロール外層内に存在した微細な引け巣欠陥を起点に、使用に伴い徐々に亀裂が進展し、探傷可能なレベルまで成長したと考えられる。
これらに対し、本発明例1(A)、および本発明例2(B)は、スリップ等の操業トラブル、欠け落ちや欠陥検出等の品質トラブルの両者ともは発生せず、廃却径(1100mm)までの使用を完了した。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.90〜1.40% 、Si:0.50〜1.50%、Mn:0.50〜1.50%、Ni:0.5〜2.0%、Cr:9.0〜16.0%、Mo:1.00〜3.00%、Al:0.010〜0.030%、を含有するとともに、V:0.05〜0.50%、Ti:0.05〜0.50%、Nb:0.02〜0.20%、のうち少なくとも1種を含有し、
    かつ、下記(1)式、(2)式、および(3)式を満足し、
    残部Feおよび不可避的不純物からなる溶湯組成を有する鋳鋼からなる外殻層と、
    該外殻層の内側に鋳造されたダクタイル鋳鉄からなる軸芯材が、
    中間層を介して一体化している熱間圧延粗圧延スタンド用ワークロール。
    8≦Cr/C≦14…(1)
    3.0≦12.3C+0.55Cr−15.2≦6.88…(2)
    26.0≦15.5C+Cr…(3)
    ここで、Cr、Cは、各元素の含有量(質量%)である。
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