JP4123903B2 - 熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロール - Google Patents

熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間圧延用複合ロールに係り、とくに、耐摩耗性、耐焼付き性、耐肌荒れ性および、耐熱衝撃性に優れ、熱間圧延仕上ミル用や継目無鋼管造管用として好適な熱間圧延用複合ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、鋼板や鋼管の熱間圧延技術の進歩はめざましく、それに伴い、使用される熱間圧延用ロールの特性、とくに耐摩耗性の向上が強く要求されてきた。このような耐摩耗性向上の要求に対し、外層組成を高速度工具鋼組成に類似した組成とし、硬質な炭化物を析出させて、耐摩耗性を格段に向上させた高性能ロール(以下、ハイス系ロールともいう)が開発され実用化されている。
【0003】
一方、被圧延材の絞り圧延事故や、被圧延材の焼付きが生じやすい圧延スタンドやミルでは、黒鉛を含有し耐焼付き性に優れたNiグレン鋳鉄ロールが組み込まれて熱間圧延が行われてきた。熱間圧延用ロールに黒鉛を含有させることは、黒鉛が潤滑性に富むことから焼付き防止には有効である。しかし、従来のNiグレン鋳鉄ロールは、耐摩耗性が劣り、そのためロール寿命が短いという問題があった。一方、耐摩耗性に優れたハイス系ロールは、絞り事故や焼付きの発生によって粗大な熱衝撃亀裂が生成するなど、耐事故性の観点で問題がある。例えば、絞り圧延事故の発生頻度が高い鋼板の熱間圧延仕上後段スタンドでは、ハイス系ロールを安定して使用することはできず、依然として、多量のNiグレン鋳鉄ロールが使用されている。
【0004】
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、Niグレン鋳鉄に1.0 〜5.0 %のVを添加し、耐摩耗性を向上させるとした熱間圧延用ロールが提案されている。また、特許文献2には、Niグレン鋳鉄に2.0 〜8.0 %のVを添加し、0.5 〜5%の黒鉛に加えて0.2 〜10%のMC型炭化物を出現させて耐摩耗性を向上させるとした熱間圧延用ロールが提案されている。さらに特許文献3には、2〜10%のCrと0.1 〜10%のWと、V、Nbのうちの1種または2種を合計で、1.5 〜10%を含み、黒鉛を有するハイス系鋳鉄材が提案されている。
【0005】
また、鋼板圧延と同様に鋼管圧延においても、熱間圧延用ロールへの耐焼付き性と耐摩耗性の向上が強く要望されている。
最近では、圧延製品の品質向上と効率的生産のため、圧延速度の増加や連続圧延量の増加などが指向されており、熱間圧延用ロールの使用環境はますます過酷化している。さらに被圧延材の高合金化、圧延製品の表面品質要求の厳格化などにより、耐摩耗性、耐焼付き性に優れるとともに、耐肌荒れ性にも優れた熱間圧延作業ロールが要望されている。
【0006】
例えば、特許文献4には、Nb、Wの含有量を制御して、炭化物の重力偏析を抑制し、肌荒れの発生を抑制した熱間圧延用ロールが提案されている。また、特許文献5には、Cr、V、Nbの合計含有量を3%以下に制限し、2%以上の黒鉛を晶出させ、 肌荒れの発生を抑制した耐摩耗性熱間圧延用ロールが提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平1-287248号公報
【特許文献2】
特開平6-335712号公報
【特許文献3】
特開平6-256889号公報
【特許文献4】
特開2001-20335号公報
【特許文献5】
特開2001-181780 号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献4、 特許文献5に記載された技術で製造された熱間圧延用ロールでは、耐熱衝撃性が低く、要求される耐摩耗性、耐焼付き性、耐肌荒れ性および耐熱衝撃性を同時に満足することは不可能であった。
本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、耐摩耗性、耐焼付き性、耐肌荒れ性、および耐熱衝撃性がともに優れた、熱間圧延用ロール外層材及び熱間圧延用複合ロールを提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、熱間圧延用ロールの耐摩耗性、耐焼付き性、耐肌荒れ性、耐熱衝撃性に影響する種々の要因について鋭意検討した。
V、Nb、Mo、CrおよびWの多量添加で耐摩耗性が向上し、V>Nb>Mo>Cr、Wの順で、耐摩耗性向上効果を有していることは、 従来からよく知られている。しかし、本発明者らの検討によれば、耐摩耗性を向上させる目的で、CrやWを増量すると、肌荒れが一層顕著になる。また、Cr、WをV(Nb)と同時に増量すると、耐焼付き性、耐熱衝撃性が劣化する。これは、CrやWで形成される共晶炭化物が肌荒れや焼付きを発生させたり、熱衝撃亀裂の伝播を促進させるためと考えられる。
【0010】
このように、Cr、Wは、V、Nb、Moに比べて耐摩耗性を向上させる作用が小さいうえ、肌荒れ、焼付き、熱衝撃亀裂の発生を促進する傾向を有することから、本発明者らは、熱間圧延用ロールではCrは必要最小限の含有にとどめ、Wは無添加とすることが良いという知見を得た。なお、Crを必要最小限の含有とし、Wを無添加とすることは、黒鉛化の促進に有効であり、耐肌荒れ性の向上とともに耐焼付き性の向上にも寄与する。
【0011】
また、本発明者らの検討によれば、熱間圧延用ロールとして必要最低限の耐摩耗性を確保するうえでは、Vは1.3 質量%以上の含有を必要とする。しかし、Vを1.3 質量%以上含有すると、粗大なMC炭化物が晶出する。この粗大なMC炭化物は熱間圧延においてロール表面に凸状に残存し、肌荒れを誘引する。本発明者らは、粗大なMC炭化物の晶出抑制方法について、更なる検討を行い、Vと同時にNbを添加することがよいことを見出した。Nbは、Nb炭化物を形成しそれを核としてMC炭化物が晶出する。このため、MC炭化物の粗大化が一定レベル以下に抑制される。
【0012】
また、本発明者らは、耐肌荒れ性向上のために、共晶炭化物を減少させる方法として、有効C量(=C− (0.24V+0.13Nb))を低減することを考えた。VとNbによってMC炭化物の形成に消費された残りのC量(有効C量)が、共晶炭化物や黒鉛の形成に寄与する。有効C量を低減すれば、共晶炭化物が減少し、耐肌荒れ性は向上すると考えられるが、耐焼付き性、耐熱衝撃性に効果がある黒鉛も減少する。
【0013】
そこで、本発明者らは、有効C量を2.0 %以上3.0 %以下と厳格に調整すれば、優れた耐焼付き性、耐肌荒れ性および耐熱衝撃性を兼備させることも可能であると考えた。
また、本発明者らの検討によれば、V、Nbに加え、有効C量を厳格に調整し、さらにAlまたはTiを含有することにより、Nb炭化物の生成核が形成され、そのためNb炭化物が微細に分散し、微細分散したNb炭化物を核にMC炭化物が生長し、MC炭化物の粗大化がさらに抑制されるという知見も得た。しかし、Nb、Al、Tiを含有した場合でも、肌荒れを抑制するためには、Vは2.5 質量%以下に限定する必要があることも見出した。
【0014】
また、本発明者らは、V、Nbに加え、有効C量を厳格に調整し、さらにAlまたはTiに加えてBを含有することにより、黒鉛の分岐化が促進され、この分岐化された黒鉛に沿って熱衝撃による亀裂が分岐・分散されるため、耐熱衝撃性が向上することも知見した。
また、本発明者らは、共晶炭化物量の増加や、黒鉛の減少に伴う耐熱衝撃性、耐焼付き性の劣化を防止するため、あるいは、基地や炭化物へのCr濃化に起因した焼付きの発生を防止するために、Cr/Cを1.0 未満に調整することが必要であることも知見した。また、耐摩耗性と耐肌荒れ性を両立させるためには、CrとVの合計量を3.0 〜4.5 質量%の範囲に調整する必要があることも見出した。
【0015】
まず、本発明者らが行った基礎的実験結果について、説明する。
質量%で、2.2 〜3.9 %C−1.5 〜1.9 %Si−0.5 〜0.6 %Mn−4.3 〜4.4 %Ni−1.7 〜1.8 %Cr−1.9 〜2.0 %Mo−1.9 〜3.2 %V−0.3 〜0.4 %Nb−0.03〜0.04%Ti−0.03〜0.04%B−残部Feを含有する主としてC、V含有量を変化した溶湯を溶製し、厚さ35mmのY型キールブロックを作製し、400 〜500 ℃での焼戻処理を施して、有効C量を変化した試験材とした。
【0016】
これら試験材から試験片を採取し、焼付き試験、摩耗試験、熱衝撃試験を実施した。また、質量%で、3.1 〜3.4 %C−1.6 〜1.8 %Si−0.5 〜0.6 %Mn−4.4 %Ni−1.8 %Cr−1.9 〜2.0 %Mo−1.9 〜2.0 %V−0.3 %Nbを含有し、あるいはさらにBを0.03%含有し、残部Feの溶湯(有効C量:2.8 、2.6 、2.9 )を溶製し、同様に試験材とし、試験を実施した。
【0017】
焼付き試験は、図3に示すように、高周波加熱コイルにより900 ℃に加熱され、150rpmで回転する円板状の相手材(材質:SUS410、大きさ:190mm φ)を25mm厚の板状試験片に荷重100kgfで10s 間圧接した。試験後、板状試験片の表面を観察し、表面に相手材の焼付き(へばりつき)が認められる場合を、焼付き有りとし、相手材の焼付き(へばりつき)が認められず摩耗している場合を、焼付き無しとした。
【0018】
また、摩耗試験は、相手材(材質:S45C、大きさ:190mm φ)と試験片(大きさ:60mmφ)の2円盤すべり摩耗方式で実施した。相手材を、回転数700rpmで回転させながら800 ℃に加熱し、試験片と相手材のすべり率を10%として、荷重100kg で圧接しながら合計240min間転動させた。なお、試験片を水冷しながら試験片(試験面)の表面温度が420 ℃となるように水量を調整した。
【0019】
試験後、試験片の摩耗減量(摩耗量)を測定した。さらに試験片表面の肌荒れ状況を目視で観察すると共に、肌荒れの大きな部分を試験片周辺方向に10mmの長さについて、 触針式粗さ計を用いてJIS B 0601-1994 の規定に準拠して粗さ曲線を求め、十点平均粗さRz を求めた。
また、熱衝撃試験は、高周波加熱コイルにより820 ℃に加熱され、150rpmで回転する円板状の相手材(材質:S45C、大きさ:190mm φ)を25mm厚の板状試験片に100kgfで10s 間圧接して、板状試験片を急加熱し、除荷と同時に水冷して板状試験片に熱衝撃を印加した。試験後、開口の大きな亀裂がある位置2ヶ所で切断し断面を観察して最大亀裂深さを測定した。
【0020】
得られた結果を、有効C量:{C−(0.24V+0.13Nb)}との関係で図1に示す。なお、Cr、C、V、Nbは、各元素の含有量(質量%)である。
図1(a)から、有効C量が3.0 %を超えると、粗さ(Rz :μm )が著しく増加し、著しい肌荒れが発生することがわかる。また、有効C量が2.0 %未満では焼付きが発生する。すなわち、有効C量を2.0 〜3.0 %に限定することにより、耐焼付き性、耐肌荒れ性を兼備した熱間圧延用ロールが得られる。
【0021】
なお、図1(a)から、この有効C量の範囲内でも、V量が3.1 質量%、3.2 質量%と3.0 質量%を超えて高くなる(□印)と、著しい肌荒れが発生することがわかる。また、この有効C量の範囲内でも、Al、Tiのいずれも含まない場合には、著しい肌荒れが発生する。これに加えてBをも含まない場合(△印)には、焼付きも発生する。
【0022】
また、図1(b)から、有効C量が2.0 〜3.0 %の範囲を外れると、熱亀裂深さが著しく深くなり、耐熱衝撃性が劣化することがわかる。また、有効C量が2.0 〜3.0 %の範囲内であっても、V含有量が3.0 質量%を超えるか、2.0 質量%未満となると、熱亀裂深さが顕著に増加している。また、この有効C量の範囲内でも、Al、Tiのいずれも含まない場合あるいはさらにAl、Ti、Bを含まない場合(△印)には、熱亀裂深さが顕著に増加している。
【0023】
このように、有効C量が所定の範囲内であっても、耐肌荒れ性が劣化する場合があり、本発明者らは、更なる検討を行なった。優れた耐摩耗性、優れた耐肌荒れ性、優れた耐焼付き性および優れた耐熱衝撃性を兼備した熱間圧延作業用ロールとするためには、有効C量を2.0 〜3.0 %の範囲に調整したうえで、さらにCrとVの合計含有量(Cr+V)を、3.0 〜4.5 質量%の範囲内に調整する必要があることを知見した。Crは、硬質な共晶炭化物を形成して耐摩耗性を向上するがCr量を増加すると共晶炭化物が増加し、耐肌荒れ性や耐熱衝撃性が劣化する。また、Vは、耐摩耗性向上に極めて有用であるがV量が増加するとMC炭化物が粗大化して肌荒れが発生する。このため耐肌荒れ性、耐熱衝撃性と耐摩耗性を両立するには、Cr量とV量を好適範囲にバランスさせることが有効となる。
【0024】
次に、このような知見を得る基礎的な実験結果について、説明する。
質量%で、3.1 〜3.4 %C−1.5 〜1.8 %Si−0.4 〜0.5 %Mn−4.6 〜4.8 %Ni−1.6 〜3.1 %Cr−2.0 〜2.4 %Mo−1.2 〜3.9 %V−0.3 〜0.4 %Nb−0.05〜0.09%Al−0.05〜0.06%B−残部Feを含有し、主としてCr、V含有量を変化した溶湯を溶製し、厚さ35mmのY型キールブロックを作製した。ついで、これらキールブロックに400 〜500 ℃での焼戻処理を実施して試験材とした。なお、試験材の有効C量は2.21〜2.95%であった。これら試験材から試験片を採取し、摩耗試験、熱衝撃試験を実施した。
【0025】
摩耗試験は、相手材(材質:S45C、大きさ:190mm φ)と試験片(大きさ:60mmφ)の2円盤すべり摩耗方式で実施した。相手材を、回転数700rpmで回転させながら800 ℃に加熱し、試験片と相手材のすべり率を10%として、荷重100kgfで圧接しながら合計240min間転動させた。なお、試験片を水冷しながら試験片(試験面)の表面温度が420 ℃となるように水量を調整した。
【0026】
試験後、試験片の摩耗減量(摩耗量)を測定した。さらに試験片表面の肌荒れ状況を目視で観察すると共に、肌荒れの大きな部分を試験片周辺方向に10mmの長さについて、 触針式粗さ計を用いてJIS B 0601-1994 の規定に準拠して粗さ曲線を求め、十点平均粗さRz を求めた。
また、熱衝撃試験は、高周波加熱コイルにより820 ℃に加熱され、150rpmで回転する円板状の相手材(材質:S45C、大きさ:190mm φ)を25mm厚の板状試験片に荷重100kgfで10s 間圧接し、板状試験片を急加熱し、除荷と同時に水冷して板状試験片に熱衝撃を印加した。試験後、開口の大きな亀裂が存在する位置2ヶ所で切断し断面を観察して最大亀裂深さを測定した。
【0027】
得られた結果を、(Cr+V)との関係で図2に示す。なお、Cr,Vは、各元素の含有量(質量%)である。
図2(a)から、(Cr+V)が3.0 未満では摩耗量が増大し、 耐摩耗性が低下することがわかる。また、(Cr+V)が4.5 を超えて増大すると、表面粗さ(Rz )が増大し耐肌荒れ性が劣化することがわかる。また、図2(b)から、(Cr+V)が4.5 を超えて増大すると、熱衝撃による亀裂深さが増大し、耐熱衝撃性が劣化することがわかる。このようなことから、本発明者らは、耐摩耗性、耐肌荒れ性および耐熱衝撃性をともに向上させるために、Cr含有量とV含有量との合計(Cr+V)を3.0 〜4.5 の範囲に限定する必要があることを知見した。なお、Al、Tiのいずれも含有しない場合では、肌荒れが発生し、かつ熱亀裂深さも深く耐肌荒れ性、耐熱衝撃性がともに劣化することを示している。
【0028】
本発明は、上記した知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明は、熱間圧延用複合ロールの外層に用いられるロール外層材であって、質量%で、C:2.6 〜3.5 %、Si:1.0 〜2.5 %、Mn:0.2 〜1.5 %、Cr:0.8 〜2.7 %、Mo:1.0 〜3.0 %、Ni:2.0 〜7.0 %、V:1.3 〜2.5 %、Nb:0.1 〜0.8 %、B:0.020 〜0.2 %を含み、かつC、Cr、Nb、V含有量が次(1)〜(3)式
2.0 ≦ C−(0.24 ×V+0.13×Nb) ≦ 3.0 ・・・(1)
Cr/C <1.0 ・・・(2)
3.0 ≦ Cr+V ≦4.5 ・・・(3)
(ここで、C、V、Nb、Cr:各元素の含有量(質量%))
を満足し、さらに、Ti:0.05%未満、Al:0.1 %以下のうちから選ばれた1種または2種を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする熱間圧延用ロール外層材である。また、本発明では、前記組成に加えてさらに、質量%で、Co:0.1 〜4.0 %を含むことが好ましい。
【0029】
また、本発明は、外層と内層が溶着一体化してなる熱間圧延用複合ロールであって、前記外層が、質量%で、C:2.6 〜3.5 %、Si:1.0 〜2.5 %、Mn:0.2 〜1.5 %、Cr:0.8 〜2.7 %、Mo:1.0 〜3.0 %、Ni:2.0 〜7.0 %、V:1.3 〜2.5 %、Nb:0.1 〜0.8 %、B:0.020 〜0.2 %を含み、かつC、Cr、Nb、V含有量が前記(1)〜(3)式を満足し、さらに、Ti:0.05%未満、Al:0.1 %以下のうちから選ばれた1種または2種を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする熱間圧延用複合ロールであり、また、本発明では、前記外層が、前記組成に加えて、さらに質量%で、Co:0.1 〜4.0 %を含むことが好ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の熱間圧延用複合ロールの外層(外層材)の組成限定理由について説明する。なお、組成における質量%は単に%と記す。
C:2.6 〜3.5 %
Cは、V、Nb、Cr、Moと結合して、ロールの耐摩耗性を向上するための硬質炭化物形成に必須な元素であるとともに、黒鉛の晶出ならびに耐焼付き性、耐熱衝撃性を確保するために必要な元素であり、本発明では2.6 %以上の含有を必要とする。一方、3.5 %を超えて含有すると共晶炭化物が多量に出現し、またMC型炭化物が粗大化して、耐肌荒れ性が低下する。このため、Cは2.6 〜3.5 %の範囲に限定した。なお、好ましくは、2.8 〜3.3 %である。
【0031】
Si:1.0 〜2.5 %
Siは、脱酸剤として作用するとともに、Cの活量を増加し黒鉛を晶出させやすくする元素であり、本発明では1.0 %以上の含有を必要とする。一方、2.5 %を超えて含有すると、黒鉛の粗大化及び組織の粗大化を生じ、ロールの耐肌荒れ性や耐摩耗性が著しく低下する。このようなことから、Siは1.0 〜2.5 %の範囲に限定した。
【0032】
Mn:0.2 〜1.5 %
Mnは、溶鋼中のSをMnS として固定し、耐摩耗性を阻害するSを無害、安定化するために有効である。また、焼入れ性を向上させ硬さを増加させるという効果もある。このような効果を得るためには、0.2 %以上の含有が必要である。しかし、1.5 %を超えて含有すると凝固界面に偏析し材料を脆化させる。このため、Mnは0.2 〜1.5 %の範囲に含有した。なお、好ましくは0.3 〜1.0 %である。
【0033】
Cr:0.8 〜2.7 %
Crは、共晶炭化物を増量させ、硬質化させる元素であり、Moとともに含有させることにより、ロール圧延時の炭化物破壊を抑制し耐摩耗性を向上させる効果を有する。このような効果を得るためには、0.8 %以上の含有を必要とする。一方、2.7 %を超えて含有すると、共晶炭化物が増加し耐肌荒れ性が低下するとともに、黒鉛量が減少して耐焼付き性、耐熱衝撃性も低下する。このため、Crは0.8 〜2.7 %に限定した。
【0034】
Mo:1.0 〜3.0 %
Moは、共晶炭化物を過度に増量させることなく、炭化物や基地を強化する作用を有し、優れた耐肌荒れ性を維持しつつ耐摩耗性を向上させる効果を有する。特に、Nbと複合して含有することにより、硬質なMC型炭化物を強化し、耐摩耗性を顕著に向上させる重要な効果を発揮するが、このような効果を得るためには、1.0 %以上の含有を必要とする。一方、3.0 %を超えて含有すると、Mo主体の硬く脆弱な炭化物が多量に形成され、耐肌荒れ性、耐熱衝撃性が劣化する。このため、Moは1.0 〜3.0 %に限定した。なお、好ましくは1.2 〜2.7 %である。
【0035】
Ni:2.0 〜7.0 %
Niは、焼入れ性を向上し、材料の硬さを増加させて耐摩耗性を向上させる効果を有する。また、Niは黒鉛の晶出を促進させる効果も有する。このような効果は2.0 %以上の含有で認められるが、7.0 %を超えて含有すると、オーステナイトが著しく安定化し、残留オーステナイト量が増加し耐焼付き性を低下させる。このため、Niは2.0 〜7.0 %の範囲に限定した。なお、好ましくは3.0 〜6.0 %である。
【0036】
V:1.3 〜2.5 %
Vは、硬質なMC型炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる効果を有する元素である。本発明では、一定レベル以上の耐摩耗性を得るために、1.3 %以上の含有を必要とする。一方、2.5 %を超えると、MC型炭化物が粗大化して肌荒れが発生する。さらに、焼付きが発生しやすくなったり、耐熱衝撃性が劣化する等の弊害もある。このため、Vは1.3 〜2.5 %の範囲に限定した。
【0037】
Nb:0.1 〜0.8 %
Nbは、MC型炭化物に固溶して炭化物を強化する作用を有する元素であり、とくに、所定範囲のCr、Mo、Vと複合して含有することにより、炭化物を著しく強化して耐摩耗性を顕著に向上させる重要な効果を有している。また、Vのみの含有ではMC型炭化物が羽毛状に成長して組織が粗大化し、ロールの肌荒れを誘引するが、NbとVを複合して含有することにより、MC型炭化物の羽毛状化を抑制することができ、さらにTiおよび/またはAlと複合添加することにより、Tiおよび/またはAlの酸化物、窒化物、炭化物等がNbC の晶出核となって、NbC を微細分散させるとともに、次にNbC を核としてMC型炭化物が微細分散して、肌荒れが抑制されるという効果もある。このような効果を得るためには、0.1 %以上の含有を必要とする。なお、Nbが0.1 %未満では、MC型炭化物の偏析や粗大化が発生する。一方、0.8 %を超えて含有すると、MC型炭化物がデンドライト状に粗大化するため、却って肌荒れが発生するようになる。また、遠心鋳造法で製造すると、MC型炭化物の偏析が生じる。このようなことから、Nbは0.1 〜0.8 %の範囲に限定した。なお、MC型炭化物粗大化の観点から、Nbは0.1 〜0.5 %とすることが好ましい。
【0038】
B:0.020 〜0.2 %
Bは、黒鉛を微細分散する作用を有し、さらに耐焼付き性、耐熱衝撃性を向上させる効果を有する。このような効果はAlおよび/またはTiの共存下で0.020 %以上の含有で認められるが、0.2 %を超えて含有すると、炭化物が脆弱化し、耐摩耗性が低下するとともに、黒鉛量も減少する。このため、Bは0.020 〜0.2 %の範囲に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.10%である。
【0039】
Ti:0.05%未満、Al:0.1 %以下のうちから選ばれた1種または2種
Ti、Alは、いずれも、黒鉛化を促進するとともに、黒鉛形状を分岐形状とすることを助長し、耐焼付き性、耐熱衝撃性を向上させる重要な効果を有する。また、Nb炭化物の核となることによりMC炭化物を微細分散させる効果も有する。このような効果は、Tiが0.005 %以上、Alが0.003 %以上の含有で顕著に認められる。 一方、Tiを0.05%以上含有すると、微細MC型炭化物が密集し、その部分で大きな肌荒れを発生させる。また、Alを0.1 %を超えて含有すると、溶湯の流動性が低下して鋳造欠陥が発生しやすくなる。このため、Tiは0.05%未満、Alは0.1 %以下に限定した。なお、Al、Tiのいずれも含有しない場合には、耐焼付き性、耐熱衝撃性が著しく劣化すると共に、MC型炭化物を粗大化し、顕著な肌荒れ性が発生する。なお、Tiは0.01〜0.04%とすることが好ましい。また、Alが0.01〜0.07%とすることが好ましい。
【0040】
また、本発明では、上記した成分範囲内としたうえで、さらに次(1)〜(3)式
2.0 ≦ C−(0.24 ×V+0.13×Nb) ≦ 3.0 ・・・(1)
Cr/C <1.0 ・・・(2)
3.0 ≦ Cr+V ≦4.5 ・・・(3)
(ここで、C、V、Nb、Cr:各元素の含有量(質量%))
を満足するように各成分の含有量を調整することが重要である。これにより、優れた耐摩耗性、耐肌荒れ性、耐焼付き性および耐熱衝撃性を兼備した熱間圧延作業用ロール外層 (外層材)となる。
【0041】
2.0 ≦C−(0.24V+0.13 Nb )≦3.0 % ……(1)
有効C量が2.0 未満では、黒鉛量が著しく減少し、耐焼付き性、耐熱衝撃性が劣化する。一方、有効C量が3.0 %を超えると共晶炭化物が過度に増加し、顕著な肌荒れが発生し耐肌荒れ性が劣化するとともに、耐熱衝撃性が劣化する。このため、有効C量を2.0 以上3.0 以下に限定した。なお、V含有量が2.1 %を超える場合には、有効C量は2.2 〜2.9 とすることが好ましい。
【0042】
なお、(0.24V+0.13 Nb )は、VとNbによってMC型炭化物の形成に消費されるC量を意味し、{C−(0.24V+0.13Nb)}は、耐焼付き性向上、耐熱衝撃性向上に有利な黒鉛や耐摩耗性や耐肌荒れ性に影響する共晶炭化物の生成に寄与する残されたC量を示す値である。
Cr/C<1.0 ……(2)
Cr/Cが1.0 以上、すなわちCr含有量がC含有量以上となる場合には、共晶炭化物が過度に生成し、また黒鉛量が著しく減少し、焼付きが発生しやすくなるとともに、耐熱衝撃性も著しく劣化する。このため、本発明では、Cr/Cを1.0 未満に限定した。
【0043】
3.0 ≦Cr+V≦4.5 ……(3)
Cr、Vは、耐肌荒れ性、耐熱衝撃性、耐摩耗性に大きな影響を与える元素であり、本発明では(Cr+V)が(3)式を満足するように調整する。(Cr+V)が3.0 未満では、摩耗量が著しく増大し、耐摩耗性が低下する。一方、4.5 を超えると肌荒れが著しく大きくなり、また耐熱衝撃性が劣化する。このため、本発明では、(Cr+V)を3.0 〜4.5 の範囲に限定した。なお、耐肌荒れ性、耐熱衝撃性を重視する場合には、Cr+Vを3.0 近い組成とし、耐摩耗性を重視する場合は、Cr+Vを4.5 に近い組成とすることが好ましい。
【0044】
上記した成分範囲と、上記した(1)、(2)、(3)式をすべて満足するように組成を調整することにより、耐摩耗性、 耐焼付き性、耐肌荒れ性および耐熱衝撃性を同時に向上させることができる。
また、本発明のロール外層材 (外層)は、上記した組成に加えてさらに、Co:0.1 〜4.0 %を含有してもよい。
【0045】
Co:0.1 〜4.0 %
Coは、基地に分配され、基地の合金元素固溶量を増加すると共に、基地を強化し、粗大な絞りクラックの生成を抑える効果があり、必要に応じ含有することができる。このような効果を得るためには、0.1 %以上含有することが好ましい。一方、4.0 %を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず、高価な元素であるため経済的に不利となる。このため、Coは0.1 〜4.0 %の範囲に限定することが好ましい。
【0046】
上記した組成範囲に調整することにより、耐摩耗性、 耐肌荒れ性、 耐焼付き性および耐熱衝撃性に優れたロール外層材(外層)とすることができる。上記した組成範囲内で、より耐焼付き性、 耐熱衝撃性を向上させるには、より多くの黒鉛を生成させることが好ましい。Fe−Si、Ca−Si等のSi接種剤でSiを接種することが好ましい。接種により添加されるSi量は0.5 〜1.0 質量%とすることが好ましい。なお、Si接種剤にREM 、Mg等の黒鉛球状化元素を含有する場合には、黒鉛の分岐化が阻害されるとともに黒鉛量も減少して、かえって耐焼付き性、耐熱衝撃性が劣化する。
【0047】
本発明では、ロール外層材の製造方法は特に限定されないが、上記した組成の溶湯を、遠心鋳造法で所定の寸法形状のロール外層材とすることが製造コストの観点から好ましい。この場合、ロール外層材の凝固途中あるいは完全凝固後に、鋳型の回転を停止し内層材を静置鋳造して、複合ロールとすることが好ましい。これによりロール外層材の内面側が再溶解され外層と内層が溶着一体化した、複合ロールとなる。
【0048】
静置鋳造される内層は、鋳造性と機械的性質に優れた球状黒鉛鋳鉄やいも虫状黒鉛鋳鉄あるいは黒鉛鋼などを用いるのが好ましい。また、外層と内層の間に、黒鉛鋼や高炭素鋼からなる中間層を設けてもよい。遠心鋳造法でロールを製造する場合、中間層は、外層の遠心鋳造に引きつづいて、遠心鋳造すれば良い。
なお、以上の説明は、主として、鋼板の熱間圧延用ロールを対象に説明してきたが、本発明は、鋼板の熱間圧延用複合ロールに限定されることはなく、カリバー付き鋼管圧延用複合ロールに適用しても何ら問題ないことはいうまでもない。なお、鋼管圧延用のスリープ式ロールを製造する場合は、外層を遠心鋳造後、球状黒鉛鋳鉄や、高炭素鋼を内層材として、遠心鋳造すれば良い。
【0049】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す組成を有する溶湯を溶解し、Ca−Siで接種した後、遠心鋳造法によりリング状試験材( 外径:250 mmφ、肉厚:80mm) を鋳造した。なお、鋳込み温度は1450℃、遠心力は、重力倍数で160 Gとした。鋳造後、試験材に400 〜500 ℃で焼戻し処理を施した。焼戻し後の硬さは、Hs77〜86であった。なお、Niグレン鋳鉄を従来例とした。
【0050】
これらリング状試験材から試験片を採取し、摩耗試験、焼付き試験、熱衝撃試験を行った。
(1)摩耗試験
リング状試験材から試験片(大きさ:60mmφ)を採取し、相手材(材質:S45C、大きさ:190 mmφ) と試験片の2円盤すべり摩耗方式で摩耗試験を実施した。試験片を回転数700rpmで回転させながら、相手材を800 ℃に加熱し、試験片を水冷し、試験片と相手材のすべり率を10%として、荷重100 kgf ( 980N) で圧接しながら150min間転動させた。試験後、試験片の摩耗減量(摩耗量)を測定した。さらに試験片表面の肌荒れ状況を目視で観察し、一部の肌荒れの大きな部分について試験片周辺方向に10mmの長さにわたり、 触針式粗さ計を用いてJIS B 0601-1994 の規定に準拠して粗さ曲線を求め、十点平均粗さRz を求めた。
(2) 焼付き試験
リング状試験材から試験片(25mm厚の板状) を採取し、図3に示す方式の試験機で焼付き試験を実施した。試験片(25mm厚板状) に、高周波加熱コイルにより、900 ℃に加熱されて150rpmで回転する円板状の相手材(材料:SUS410、大きさ:190 mmφ) を荷重100kgf( 980N )で10s間圧接した。試験後の試験片表面に相手材(金属)のへばり付きがある場合を「焼付き有り」(×)、へばり付きがなく表面が摩耗している場合を「焼付きなし」(○)として、耐焼付き性を評価した。
(3)熱衝撃試験
リング状試験材から25mm厚の板状試験片を採取し、円板状の相手材(材質:S45C、大きさ:190mm φ)を用いて、図3に示す構成の試験機で実施した。
【0051】
高周波加熱コイルにより820 ℃に加熱され、150rpmで回転する円板状の相手材(材質:S45C、大きさ:190mm φ)を25mm厚の板状試験片に荷重100kgfで10s 間圧接して、板状試験片を急加熱し、除荷と同時に水冷して板状試験片に熱衝撃を印加した。試験後、浸透探傷試験を実施し、現像液の滲みが多い2ヶ所で切断し断面を観察して亀裂の最大深さを測定し亀裂深さとして、耐熱衝撃性を評価した。
【0052】
得られた結果を表2に示す。
【0053】
【表1】
Figure 0004123903
【0054】
【表2】
Figure 0004123903
【0055】
本発明例は、いずれも耐摩耗性に優れ、かつ焼付きや肌荒れの発生がなく、また、亀裂深さも浅く、極めて優れた耐摩耗性、耐焼付き性、耐肌荒れ性および耐熱衝撃性を兼備したロール外層材となっている。
一方、本発明の範囲から外れる比較例は、耐摩耗性、耐肌荒れ性、耐焼付き性、および耐熱衝撃性の少なくとも1つ以上が著しく低下している。
【0056】
Nb含有量が本発明範囲を高く外れる比較例(リング材No. I)では、肌荒れが著しくなり、また亀裂深さが深く、耐肌荒れ性、 耐熱衝撃性が劣化している。また、Nb無添加、Al、Tiのいずれも含有しない比較例(リング材No. J)では、肌荒れが発生し、亀裂深さも深く、耐肌荒れ性、耐熱衝撃性が低下している。また、Mo、V含有量、(Cr+V)量が本発明範囲を高く外れ、Nb、Bを含有しない比較例(リング材No. K)では、著しい肌荒れ、焼付きが発生し、亀裂深さも深く、耐肌荒れ性、耐焼付き性、および耐熱衝撃性が低下している。V含有量が少なく、Wを含有する比較例(リング材No. L)では、摩耗量が増加し耐摩耗性が低下するとともに、肌荒れが発生し耐肌荒れ性が低下している。Wを含有し、Cr、Cr/C、(Cr+V)量が本発明範囲を高く外れる比較例(リング材No. M)では、著しい肌荒れ、焼付きが発生し、亀裂深さも深く、耐肌荒れ性、耐焼付き性、および耐熱衝撃性が低下している。Wを含有し、V含有量、(Cr+V)量が本発明範囲を低く外れ、B、Al、Tiのいずれも含有しない比較例(リング材No. N)では、摩耗量が増加し耐摩耗性が低下し、肌荒れが発生し、亀裂深さが深く、耐肌荒れ性、耐熱衝撃性が低下している。Mo含有量が本発明範囲より低く外れ、有効C量が本発明範囲から高く外れ、Al、Tiのいずれも含有しない比較例(リング材No. O)では、摩耗量が増加し耐摩耗性が低下し、肌荒れが発生し、亀裂深さが深く、耐肌荒れ性、耐熱衝撃性が低下している。なお、従来例(リング材No.NiG)は耐焼付き性、耐熱衝撃性に優れるが耐摩耗性が著しく劣っている。
(実施例2)
製品胴径685 mm、胴長2380mmの複合ロールを以下の手順で製造した。
【0057】
遠心力140 Gで回転する鋳型内に、外層として肉厚120mm になるように、外層材溶湯を鋳込んだ。外層が凝固した後に鋳型の回転を停止し、鋳型を立てて内層材( 球状黒鉛鋳鉄)を鋳造することで、外層−内層を一体化させ、外層の表面温度が80℃以下になるまで冷却した後、鋳型を解体し、外層−内層からなる複合ロールとした。
【0058】
得られた複合ロールは、400 〜500 ℃に30時間加熱したのち徐冷する熱処理(焼戻し処理)を実施し、外層の硬さを80〜83Hsとした。
熱処理後、ロール胴端部から外層の化学組成分析用試験材、組織観察用試験片を採取した。なお、内層についてはロール軸端の中心部から化学組成分析用試料を採取した。各複合ロールの外層、内層の化学組成を表3に示す。
【0059】
得られた複合ロールを、熱間仕上圧延ミルのF7スタンドの作業ロールとして投入し、炭素鋼100 本の試験圧延を実施した。なお、その中の1本で絞り圧延を再現し、焼付き状況を比較した。
【0060】
【表3】
Figure 0004123903
【0061】
本発明例(複合ロールNo.1)は、従来ロールであるNiG 鋳鉄ロールの約1.6 倍の極めて良好な耐摩耗性と耐肌荒れ性を有することが確認された。また、絞り圧延において焼付きは発生しなかった。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、鋼板の熱間圧延の後段圧延スタンド用ロールとして、優れた耐摩耗性、耐焼付き性、耐肌荒れ性および耐熱衝撃性を兼備した複合ロールが安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明の複合ロールは、鋼板の熱間圧延において絞り事故の多発する、後段圧延スタンド用ロールとして安定して使用できる。また、本発明の複合ロールは、優れた耐焼付き性、耐肌荒れ性および耐摩耗性が要求される鋼管圧延用ロールとしても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)十点平均粗さ(Rz )と有効C量との関係、(b)亀裂深さと有効C量との関係を示すグラフである。
【図2】(a)摩耗量、十点平均粗さ(Rz )と(Cr+V)量の関係、(b)亀裂深さと(Cr+V)量の関係を示すグラフである。
【図3】焼付き試験の概要を示す概略説明図である。

Claims (4)

  1. 熱間圧延用複合ロールの外層に用いられるロール外層材であって、質量%で、
    C:2.6 〜3.5 %、 Si:1.0 〜2.5 %、
    Mn:0.2 〜1.5 %、 Cr:0.8 〜2.7 %、
    Mo:1.0 〜3.0 %、 Ni:2.0 〜7.0 %、
    V:1.3 〜2.5 %、 Nb:0.1 〜0.8 %、
    B:0.020 〜0.2 %
    を含み、かつC、Cr、Nb、V含有量が下記(1)〜(3)式を満足し、さらに、Ti:0.05%未満、Al:0.1 %以下のうちから選ばれた1種または2種を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする熱間圧延用ロール外層材。

    2.0 ≦ C−(0.24 ×V+0.13×Nb) ≦ 3.0 ・・・(1)
    Cr/C <1.0 ・・・(2)
    3.0 ≦ Cr+V ≦4.5 ・・・(3)
    ここで、C、V、Nb、Cr:各元素の含有量(質量%)
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Co:0.1 〜4.0 %を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延用ロール外層材。
  3. 外層と内層が溶着一体化してなる熱間圧延用複合ロールであって、前記外層が、質量%で、
    C:2.6 〜3.5 %、 Si:1.0 〜2.5 %、
    Mn:0.2 〜1.5 %、 Cr:0.8 〜2.7 %、
    Mo:1.0 〜3.0 %、 Ni:2.0 〜7.0 %、
    V:1.3 〜2.5 %、 Nb:0.1 〜0.8 %、
    B:0.020 〜0.2 %
    を含み、かつC、Cr、Nb、V含有量が下記(1)〜(3)式を満足し、さらに、Ti:0.05%未満、Al:0.1 %以下のうちから選ばれた1種または2種を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする熱間圧延用複合ロール。

    2.0 ≦ C−(0.24 ×V+0.13×Nb) ≦ 3.0 ・・・(1)
    Cr/C <1.0 ・・・(2)
    3.0 ≦ Cr+V ≦4.5 ・・・(3)
    ここで、C、V、Nb、Cr:各元素の含有量(質量%)
  4. 前記外層が、前記組成に加えて、さらに質量%で、Co:0.1 〜4.0 %を含むことを特徴とする請求項3に記載の熱間圧延用複合ロール。
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