JP6851776B2 - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層体及びその製造方法に関する。
基材上に金属層を備えて構成された積層体は、その金属層の特性を活用できるように、様々な分野で利用されている。広く知られているこのような積層体としては、例えば、金属層の導電性を利用した、回路基板、電極等が挙げられる。これに対して、金属層の光沢性を利用した積層体としては、例えば、装飾用又は加飾用の各種製品が挙げられる。
一方、これら積層体では、金属層上にさらに被覆層を備えているものが多い。このような被覆層としては、例えば、金属層の保護を目的とした保護層や、金属層だけでは表現できない色味を積層体において実現するための着色層等が挙げられ、保護層でかつ着色層である被覆層など、複数の機能を有する被覆層も利用される。
このように、基材上に金属層を備え、金属層上に被覆層を備えた積層体は、幅広い分野で汎用されている。
このような積層体は、基材上に金属層を形成し、次いで、金属層上に被覆層を形成することで、製造される(特許文献1参照)。
特開平7−79669号公報
しかし、例えば、基材上での金属層及び被覆層の配置位置を一致させる場合など、基材の表面に対して平行な方向において、金属層及び被覆層の周縁部(端部)の位置が一致するように、金属層及び被覆層を形成する必要がある場合には、上記のような従来の製造方法では、目的とする積層体を得ることは困難である。これは、以下のような理由による。
すなわち、従来の製造方法では、金属層及び被覆層を、それぞれに適した方法で形成するが、同じ装置を用いて金属層及び被覆層を連続的に形成することは困難である。例えば、基材上に金属層を形成した後は、通常は、このとき用いた装置から、金属層を備えた基材を取り出し、別の装置を用いて、金属層上に被覆層を形成する。すると、金属層を形成後の基材は、金属層上への被覆層の形成時に、基材の表面に対して平行な方向において、金属層及び被覆層の周縁部の位置が一致するように、正確に位置合わせをすることは困難である。その結果、例えば、基材上での金属層及び被覆層の配置位置はずれ易い。
図6は、上記の従来の積層体の製造方法における問題点を模式的に説明するための、積層体とその構成要素の平面図である。
上記の製造方法では、まず、図6(a)に示すように、基材11上に金属層92を形成する。次いで、図6(b)に示すように、金属層92上に被覆層93を形成して、積層体9を得る。被覆層93を上方から見下ろすように積層体9を平面視したときに、被覆層93を金属層92と同一の形状及び大きさとし、基材11の表面11aに対して平行な方向において、被覆層93の周縁部93cと、金属層92の周縁部92cと、の位置が一致するように、被覆層93を形成したい場合に、この製造方法では、ここに示すように、被覆層93及び金属層92の形成位置にずれが生じ易く、目的とする構成を有する積層体9を得ることは困難である。
基材の表面に対して平行な方向において、金属層及び被覆層の周縁部の位置を一致させるためには、ここで説明した方法以外の方法を採用できるが、工程数が増大したり、作業が煩雑化するなどの問題点がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材、金属層及び被覆層がこの順に積層されて構成され、基材の表面に対して平行な方向において、金属層及び被覆層の周縁部の位置が一致している領域を有する積層体と、その簡便な製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、基材、金属層及び被覆層を備え、これらがこの順に積層されてなり、前記基材の表面に対して平行な方向において、前記金属層の周縁部と、前記被覆層の周縁部と、の位置が一致している領域を有する積層体の製造方法であって、基材上に金属層を形成する工程と、前記金属層の、前記基材側とは反対側の表面の一部が露出するように、前記金属層上に前記被覆層を形成する工程と、前記金属層の表面が露出している露出部位を、この露出部位に隣接する前記被覆層とともに擦過することによって、前記金属層の露出部位のみを前記基材上から除去し、前記基材の前記金属層が形成されていた領域の表面を露出させる工程と、を有する、積層体の製造方法を提供する。
また、本発明は、基材、金属層及び被覆層を備え、これらがこの順に積層されてなり、前記基材の表面に対して平行な方向において、前記金属層の周縁部と、前記被覆層の周縁部と、の位置が一致している領域を有し、前記基材の前記金属層側の表面の一部が、前記金属層及び被覆層が形成されずに露出しており、前記基材と前記金属層との間に、前記基材、金属層及び被覆層の含有成分とは異なる成分を含む、積層体を提供する。
本発明によれば、基材、金属層及び被覆層がこの順に積層されて構成され、基材の表面に対して平行な方向において、金属層及び被覆層の周縁部の位置が一致している領域を有する積層体と、その簡便な製造方法が提供される。
本発明の製造方法で得られる積層体の一実施形態を模式的に示す平面図である。 図1に示す積層体のI−I線における断面図である。 本発明の製造方法の一実施形態を模式的に説明するための、積層体とその構成要素の平面図である。 図3に示す積層体とその構成要素のII−II線における断面図である。 本発明の製造方法で得られる積層体の他の実施形態を模式的に示す断面図である。 従来の積層体の製造方法における問題点を模式的に説明するための、積層体とその構成要素の平面図である。
<<積層体及びその製造方法>>
本発明の積層体の製造方法は、基材、金属層及び被覆層を備え、これらがこの順に積層されてなり、前記基材の表面に対して平行な方向において、前記金属層の周縁部と、前記被覆層の周縁部と、の位置が一致している領域を有する積層体の製造方法であって、基材上に金属層を形成する工程(以下、「金属層形成工程」と略記することがある)と、前記金属層の、前記基材側とは反対側の表面の一部が露出するように、前記金属層上に前記被覆層を形成する工程(以下、「被覆層形成工程」と略記することがある)と、前記金属層の表面が露出している露出部位を、この露出部位に隣接する前記被覆層とともに擦過することによって、前記金属層の露出部位のみを前記基材上から除去する工程(以下、「金属層除去工程」と略記することがある)と、を有する。
本発明の製造方法においては、基材上で、基材の表面に対して平行な方向において、金属層を被覆層よりも突出させて形成し、この突出により露出している金属層を、その近傍の被覆層とともに擦過することによって、被覆層で被覆されている金属層は基材上から除去せず、露出している金属層のみを基材上から除去する。このような工程を採用することにより、基材の表面に対して平行な方向において、金属層及び被覆層の周縁部(端部)の位置が一致している領域を有する積層体を、簡便に製造できる。
上記のような、特定の構造を有する積層体は、例えば、被覆層を保護層又は着色層とすることを目的とした各種積層体として、幅広い分野で利用可能である。
なお、本明細書においては、「金属層の周縁部と、被覆層の周縁部と、の位置が一致している」とは、特に断りのない限り、「基材の表面に対して平行な方向において、金属層の周縁部と、被覆層の周縁部と、の位置が一致している」ことを意味する。例えば、「金属層及び被覆層の周縁部の位置が一致している」等の同様の内容の記載も、同じことを意味する。
まず、本発明の製造方法に先立って、本発明の製造方法で得られる積層体の構造について、説明する。
図1は、本発明の製造方法で得られる積層体の一実施形態を模式的に示す平面図であり、図2は、図1に示す積層体のI−I線における断面図である。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
ここに示す積層体1は、基材11、金属層12及び被覆層13を備え、これら(基材11、金属層12及び被覆層13)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる。さらに、積層体1は、基材11の表面11aに対して平行な方向において、金属層12の周縁部12cと、被覆層13の周縁部13cと、の位置が一致している領域を有する。
ここで、基材11の表面11aとは、基材11の一方の表面で、金属層12が設けられている側の表面を意味する。
被覆層13を上方から見下ろすように積層体1を平面視したときに、積層体1においては、金属層12及び被覆層13は、互いに形状及び大きさが同じである。前記形状は、ここでは、四角形状である。すなわち、基材11上において、金属層12及び被覆層13は、配置位置が一致している。換言すると、基材11の表面11aに対して平行な方向において、金属層12の周縁部12cの全領域の位置は、被覆層13の周縁部13cの位置と一致しており、被覆層13の周縁部13cの全領域の位置は、金属層12の周縁部12cの位置と一致している。
本発明における積層体は、図1及び図2に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1及び図2に示す積層体において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、ここでは、金属層の周縁部の全領域の位置が、被覆層の周縁部の位置と一致している(換言すると、被覆層の周縁部の全領域の位置が、金属層の周縁部の位置と一致している)積層体について示しているが、必ずしも金属層及び被覆層の周縁部の全領域の位置が、互いに一致していなくてもよい。ただし、本発明の効果がより顕著に得られる点から、金属層の周縁部のうち、被覆層の周縁部と位置が一致している領域の比率は、50〜100面積%であることが好ましく、目的に応じて、例えば、60〜100面積%、70〜100面積%、80〜100面積%及び90〜100面積%のいずれかであってもよい。同様に、被覆層の周縁部のうち、金属層の周縁部と位置が一致している領域の比率は、50〜100面積%であることが好ましく、目的に応じて、例えば、60〜100面積%、70〜100面積%、80〜100面積%及び90〜100面積%のいずれかであってもよい。
また、ここでは、被覆層を上方から見下ろすように積層体を平面視したときの、金属層及び被覆層の形状が、いずれも四角形状である積層体について示しているが、金属層及び被覆層の前記形状は、これに限定されない。
金属層及び被覆層の他の前記形状としては、例えば、三角形状、五角形状、六角形状等の、四角形状以外の多角形状;円形状;楕円形状;前記多角形状、円形状又は楕円形状の一部の領域が欠けた形状(以下、「欠損形状」と略記することがある);直線状、曲線状等の線状;前記多角形状、円形状、楕円形状、欠損形状及び線状からなる群から選択される1種又は2種以上の形状が組み合わされた組み合わせ形状;不定形状等が挙げられる。
前記組み合わせ形状としては、例えば、配線の形状として好適な、格子状、短冊状等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、ここでは、同一の基材上に備える、金属層及び被覆層の積層単位の数が1である積層体について示しているが、金属層及び被覆層の積層単位の数は2以上であってもよい。そして、金属層及び被覆層の積層単位の数が2以上である場合、これら積層単位は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。ここで、「金属層及び被覆層の積層単位が異なる」とは、一の積層単位における金属層及び被覆層のいずれか一方又は両方が、形状、含有成分又は厚さの点で、他の積層単位とは異なることを意味する。
また、ここでは、基材上に金属層及び被覆層の積層単位のみを備える積層体について示しているが、本発明における積層体は、基材上に前記積層単位以外の他の構造物を備えていてもよい。
前記他の構造物は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の構造物として、具体的には、例えば、前記積層単位に該当しない金属層及び被覆層の積層物(換言すると、基材の表面に対して平行な方向において、金属層の周縁部と、被覆層の周縁部と、の位置が全く一致していない、金属層及び被覆層の積層物);金属層;被覆層;前記金属層及び被覆層とは材質が異なる層等が挙げられる。
上述の、前記積層単位に該当しない金属層及び被覆層の積層物としては、例えば、基材の表面に対して平行な方向において、金属層が被覆層よりも突出して露出しているか、又は被覆層が金属層よりも突出している積層物が挙げられる。
基材上において、前記他の構造物は、前記積層単位とは独立して(換言すると離間して)設けられていてもよいし、前記積層単位と一体化して設けられていてもよい。
同一の基材上に備える、前記他の構造物の数は、1でもよいし2以上でもよく、2以上である場合、これら他の構造物の組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
基材上での前記他の構造物の配置位置は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
なお、基材が例えば、厚さ100〜500μm程度のフィルム状である場合には、本発明における積層体は、この基材の裏面、すなわち、前記金属層の形成面とは反対側の面に、粘着剤層を備えたラベルであってもよい。
また、ここまでに説明した積層体は、基材上の積層物をすべてコートする、樹脂からなるオーバーコート層を、前記被覆層上に備えていてもよい。そして、前記積層体は、前記オーバーコート層上に、さらに粘着剤層(本明細書においては、この場合の粘着剤層を、基材の裏面に備える上述の粘着剤層と区別するために、「第2粘着剤層」と称し、基材の裏面に備える上述の粘着剤層を「第1粘着剤層」と称することがある。)を備えていてもよい。
次に、図1及び図2に示す積層体の場合を例に挙げて、本発明の製造方法について説明する。
図3は、本発明の製造方法の一実施形態を模式的に説明するための、積層体とその構成要素の平面図であり、図4は、図3に示す積層体とその構成要素のII−II線における断面図である。
なお、図3以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
<金属層形成工程>
前記金属層形成工程においては、図3(a)及び図4(a)に示すように、基材11上に金属層12を形成する。
金属層12の形成方法は、特に限定されず、例えば、金属種の種類等も考慮の上、公知の方法から適宜選択できる。金属層とその具体的な形成方法については、後ほど詳細に説明する。
金属層形成工程においては、基材11を上方から見下ろすように、得られた積層物を平面視したときに、後述する被覆層形成工程において形成する被覆層13の大きさよりも大きくなるように、金属層12を形成する。
<被覆層形成工程>
前記被覆層形成工程においては、図3(b)及び図4(b)に示すように、金属層12の、基材11側とは反対側の表面(以下、「第1面」と称することがある)12aの一部が露出するように、金属層12上に被覆層13を形成する。
本工程においては、上記のように被覆層13を形成することで、基材11を上方から見下ろすように、得られた積層物を平面視したときに、金属層12の大きさは、被覆層13の大きさよりも大きくなる。すなわち、基材11の表面11aに対して平行な方向において、形成直後の金属層12の周縁部12c’は、被覆層13の周縁部13cよりも、基材11の周縁部(図示略)側に位置して突出している。
被覆層13の形成方法は、特に限定されず、例えば、被覆層13の材質等も考慮の上、公知の方法から適宜選択できる。被覆層とその具体的な形成方法については、後ほど詳細に説明する。
<金属層除去工程>
前記金属層除去工程においては、図3(c)及び図4(c)に示すように、金属層12の表面(第1面)12aが露出している露出部位120を、この露出部位120に隣接する被覆層13とともに擦過する。ここでは、擦過手段8によって、金属層12及び被覆層13をともに擦過する場合について示している。また、金属層12の露出部位120とともに擦過する、被覆層13の露出部位120に隣接する部位を、符号130を付して示している。
なお、図3(c)及び図4(c)においては、金属層12及び被覆層13の擦過対象部位のうち、一部のみに擦過手段8が接触している状態を示しているが、これは、擦過過程の途中の段階を示しているためである。本工程においては、擦過手段8を用いて、金属層12及び被覆層13の擦過対象部位のすべてを擦過する。
金属層除去工程においては、上記のとおり擦過することにより、金属層12の露出部位120のみを基材11上から除去する。これにより、図3(d)及び図4(d)に示すように、目的とする積層体1が得られる。
図3(b)及び図4(b)に示す状態の、金属層12を除去していない中間構造体1’においては、被覆層13と金属層12との間の密着力P;被覆層13で被覆されていない領域の金属層12(すなわち、前記露出部位120)と、基材11と、の間の密着力P;被覆層13で被覆されている領域の金属層12と、基材11と、の間の密着力Pを定義できる。金属層除去工程での擦過時には、P、P及びPのうち、少なくともPが最も大きくなっている。そのため、擦過時において、被覆層13は金属層12上から除去されず、被覆層13による保護作用によって、被覆層13で被覆されている領域の金属層12は、基材11から除去されないが、被覆層13で被覆されていない領域の金属層12は、基材11上から除去されると推測される。
擦過手段8は、上記のような露出部位120の除去を可能とするものであれば、特に限定されない。例えば、擦過手段8は、人工物であってもよいし、指等であってもよい。すなわち、金属層12及び被覆層13の擦過は、擦過に適する構成を備えた人工物を用いて行ってもよいし、このような人工物を用いずに、手技で行ってもよい。
人工物である擦過手段8の材質としては、例えば、紙、樹脂等が挙げられる。
擦過手段8の擦過面は、平滑面及び凹凸面のいずれであってもよい。
擦過手段8の形状、大きさ、厚さ等は、特に限定されず、金属層12及び被覆層13の種類に応じて、適宜選択すればよい。
金属層除去工程においては、溶媒の存在下で金属層12及び被覆層13を擦過することが好ましい。このようにすることで、金属層12の露出部位120を、より容易に基材11上から除去できる。これは、前記溶媒が適度に摩擦力を低減することにより、擦過をより円滑に行うことができ、さらに、除去された金属層12が擦過部位の金属層12以外の部位に対して与える悪影響を低減できるためであると推測される。
金属層除去工程で用いる前記溶媒は、基材11及び被覆層13を損なわないものであれば特に限定されない。好ましい前記溶媒としては、例えば、エタノール、2−プロパノール等のアルコール;アセトン等のケトン;ヘキサン、オクタン等の炭化水素;水等が挙げられる。
また、前記溶媒としては、各種基材の洗浄を行うために最適化された洗浄溶媒(例えば、タミヤ社製「プレペイントクリーナー」)等も用いることができる。
例えば、金属層の形成時に、後述する金属インク組成物として、バインダー等の樹脂成分を含有するものを用いた場合には、金属層はこの樹脂成分を含有している。このような場合、金属層除去工程で用いる前記溶媒は、前記樹脂成分を溶解可能なものが好ましい。このような溶媒を用いることで、金属層除去工程をより容易に行うことができる。
金属層除去工程において、前記溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
金属層除去工程における前記溶媒の使用方法は、特に限定されない。例えば、金属層12及び被覆層13の擦過対象部位に前記溶媒を付着させて、擦過手段8を用いて擦過してもよいし、擦過手段8の擦過面に前記溶媒を付着させるか、又は擦過手段8に前記溶媒を含浸させて、前記擦過対象部位を擦過してもよい。ただし、これら溶媒の使用方法は、本工程で適用できる方法の一例である。
金属層除去工程において、擦過方法は特に限定されない。例えば、金属層12及び被覆層13の擦過対象部位において、擦過を開始してから終了するまでの、擦過を行う領域の選択順、擦過手段8の動かし方、擦過時の圧力等の各種条件は、金属層12、被覆層13及び擦過手段8の材質、形状、大きさ並びに厚さ等を考慮して、適宜選択すればよい。
ここまでは、図1及び図2に示す積層体の製造方法について説明したが、それ以外の積層体を製造する場合には、上述の製造方法において、さらに必要な他の工程を適切なタイミングで別途追加して行うことで、製造すればよい。前記他の工程は、金属層形成工程の前後、被覆層形成工程の前後、及び金属層除去工程の前後のいずれにおいても行うことができる。
例えば、基材として、後述する基材本体上に受容層を備えたものを用いた積層体は、基材本体上に受容層を形成する受容層形成工程を別途追加して行うことで、製造できる。
また、基材の裏面(金属層の形成面とは反対側の面)に、上述の粘着剤層(第1粘着剤層)を備えた積層体は、前記裏面に前記粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程(第1粘着剤層形成工程)を別途追加して行うことで、製造できる。
また、上述のオーバーコート層、又はオーバーコート層とその上に第2粘着剤層を備えた積層体も、同様に、オーバーコート層形成工程、又は第2粘着剤層形成工程を別途追加して行うことで、製造できる。
前記受容層を備えた積層体の場合には、金属層及び被覆層をともに擦過したときに、受容層は、金属層とともに基材本体上から除去されてもよいし、基材本体上から除去されなくてもよい。受容層の除去の有無は、積層体の用途に応じて、適宜選択すればよい。
本発明の製造方法によれば、基材の表面に対して平行な方向において、金属層及び被覆層の周縁部の位置が一致している領域を有するという、特定の構造を有する積層体を、少ない工程数で、煩雑な作業を伴うことなく、簡便に製造できる。
次に、本発明の製造方法で得られる積層体の各構成要素について、より詳細に説明する。
<基材>
前記基材は、前記金属層を形成可能なものであれば、特に限定されないが、樹脂製基材であることが好ましい。樹脂製基材を用いることで、上述の製造方法において、金属層除去工程をより容易に行うことができる。
基材の材質である樹脂として具体的には、例えば、ポリエチレン(PE);ポリプロピレン(PP);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリ塩化ビニリデン(PVDC);ポリメチルペンテン(PMP);ポリシクロオレフィン;ポリスチレン(PS);ポリ酢酸ビニル(PVAc);ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂;AS樹脂;ABS樹脂;ナイロン6,6、ナイロン6等のポリアミド(PA);ポリイミド;ポリアミドイミド(PAI);ポリアセタール(POM);ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリブチレンテレフタレート(PBT);ポリトリメチレンテレフタレート(PTT);ポリエチレンナフタレート(PEN);ポリブチレンナフタレート(PBN);ポリフェニレンスルファイド(PPS);ポリスルホン(PSF);ポリエーテルスルホン(PES);ポリエーテルケトン(PEK);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリカーボネート(PC);ポリウレタン;ポリフェニレンエーテル(PPE);変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE);ポリアリレート;エポキシ樹脂;メラミン樹脂;フェノール樹脂;尿素樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
基材は、単層からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。基材が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
なお、本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
基材は、目的に応じて任意の形状を選択でき、例えば、フィルム状又はシート状であることが好ましい。フィルム状又はシート状である基材の厚さは、0.5〜5000μmであることが好ましく、0.5〜2500μmであることがより好ましい。基材の厚さが前記下限値以上であることで、金属層の構造をより安定して保持でき、基材の厚さが前記上限値以下であることで、金属層形成時の基材の取り扱い性がより良好となる。
基材が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材の厚さとなるようにするとよい。
基材が単層及び複数層のいずれであるかによらず、基材の金属層が直接接触する部位は、ポリカーボネートからなるか、又はポリカーボネートを主成分とすることが好ましい。このような基材を用いることで、上述の製造方法において、金属層除去工程をより容易に行うことができる。
ここで「ポリカーボネートを主成分とする」とは、「ポリカーボネートとそれ以外の成分を含有し、ポリカーボネートの含有量が50質量%以上である」ことを意味する。そして、ポリカーボネートを主成分とする部位の、ポリカーボネートの含有量は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上及び99質量%以上のいずれであってもよい。
[受容層]
基材は、金属層の積層面に受容層を備えたものであってもよい。受容層を備えた基材のうち、上述の樹脂基材等の、受容層の形成対象物を、本明細書においては「基材本体」と称することがある。すなわち、本発明の製造方法で得られる積層体は、基材本体、受容層、金属層及び被覆層を備え、これらがこの順に積層されてなり、前記受容層の表面に対して平行な方向において、前記金属層の周縁部と、前記被覆層の周縁部と、の位置が一致している領域を有するものも挙げられる。このような積層体は、基材が基材本体と受容層との積層物であり、受容層が金属層側に配置されている点以外は、上述の基材、金属層及び被覆層を備え、これらがこの順に積層されてなる積層体と同じである。
前記受容層は、基材表面の全面に設けられていてもよいし、基材表面の一部に設けられていてもよく、基材表面の一部に設けられている受容層は、パターニングされていてもよい。
前記受容層の構成材料としては、例えば、樹脂が挙げられ、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれであってもよい。
受容層の構成材料である樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
前記樹脂以外の受容層の構成材料としては、例えば、充填材(フィラー)、当該分野で公知の各種調整剤が挙げられる。
前記充填材として、例えば、受容層の屈折率、熱収縮率、又は後述する金属インク組成物の吸収性等を調節するものが挙げられる。
前記調整剤としては、例えば、受容層を形成するための、後述する受容層用組成物の印刷適性、塗工適性等を向上させるためのレベリング剤、増粘剤等が挙げられる。
受容層の構成材料である前記樹脂、充填材及び調整剤は、いずれも、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
受容層は、例えば、これを形成するための原料となる組成物(本明細書においては、「受容層用組成物」と略記することがある)を基材本体上の目的とする箇所に付着させて組成物層を形成し、この組成物層(受容層用組成物)に対して、乾燥処理を行うことで形成できる。
受容層用組成物は、後述する銀インク組成物の場合と同じ方法で、基材本体に付着させることができる。
受容層の形成時においては、例えば、基材本体上に付着させる受容層用組成物の量、又は受容層用組成物における前記樹脂等の配合量を調節することで、受容層の厚さを調節できる。
<金属層>
前記金属層の金属種は特に限定されず、例えば、単体金属及び合金のいずれであってもよい。
なかでも、前記金属種は、銀又は銅であることが好ましく、銀であることがより好ましい。このような金属種である場合、上述の製造方法において、金属層除去工程をより容易に行うことができる。
金属層の厚さは、目的に応じて任意に設定できるが、3nm〜40μmであることが好ましく、4nm〜30μmであることがより好ましい。金属層の厚さが前記下限値以上であることで、金属層の構造をより安定して維持できる。また、金属層の厚さが前記上限値以下であることで、積層体をより薄層化できる。
金属層は、単層からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。金属層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
金属層が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい金属層の厚さとなるようにするとよい。
金属層は、例えば、これを形成するための原料となる組成物(以下、「金属層用組成物」と略記することがある)を基材上の目的とする箇所に付着させて組成物層を形成し、この組成物層(金属層用組成物)に対して、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理を適宜選択して行うことで形成できる。加熱処理は、乾燥処理を兼ねて行ってもよい。
また、金属層は、前記金属層用組成物を基材表面の所定の領域又は全面に付着させて組成物層を形成し、この組成物層(金属層用組成物)から上記と同様の方法で金属層(パターニング前の金属層)を形成した後、エッチング等の公知の手法でこの金属層を所望の形状となるようにパターニングすることでも形成できる。
また、金属層は、前記金属層用組成物を用いずに、蒸着等によっても形成でき、必要に応じて、エッチング等の公知の手法でこの金属層を所望の形状となるようにパターニングすることでも形成できる。
前記金属層用組成物としては、例えば、金属及び金属の形成材料のいずれか一方又は両方が配合されてなる金属インク組成物が挙げられる。
金属インク組成物中の金属及び金属の形成材料は、いずれも、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
配合される前記金属(単体金属又は合金)は、粒子状又は繊維状(チューブ状、ワイヤー状等)であることが好ましく、ナノ粒子又はナノワイヤーであることがより好ましく、銀ナノ粒子、銀ナノワイヤー、銅ナノ粒子又は銅ナノワイヤーであることがさらに好ましく、銀ナノ粒子又は銀ナノワイヤーであることが特に好ましい。
なお、本明細書において、「ナノ粒子」とは、粒径が1nm以上1000nm未満、好ましくは1〜100nmである粒子を意味し、「ナノワイヤー」とは、幅が1nm以上1000nm未満、好ましくは1〜100nmであるワイヤーを意味する。
配合される前記金属の形成材料は、該当する金属原子(元素)を有し、分解等の構造変化によって金属を生じるものであればよい。このような金属の形成材料としては、例えば、金属塩、金属錯体、有機金属化合物(金属−炭素結合を有する化合物)等が挙げられる。前記金属塩及び金属錯体は、有機基を有する金属化合物及び有機基を有しない金属化合物のいずれであってもよい。なかでも金属の形成材料は、金属塩であることが好ましく、銀塩又は銅塩であることがより好ましく、銀塩であることが特に好ましい。
金属インク組成物は、液状のものが好ましく、少なくとも前記金属の形成材料が配合されてなるものが好ましく、バインダー等の樹脂成分を含有しないものがより好ましく、前記金属の形成材料が均一に分散されたものが特に好ましい。
金属の形成材料を用いることで、この材料から金属が生じ、この金属を主成分として含む金属層が形成される。この場合の金属層においては、好ましくは前記樹脂成分を用いないことにより、前記金属の比率を、金属層が見かけ上金属だけからなるとみなし得る程度に十分に高くすることができる。この場合、例えば、金属層中の金属の比率は、好ましくは97質量%以上、より好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。金属層中の金属の比率の上限値は、例えば、100質量%、99.9質量%、99.8質量%、99.7質量%、99.6質量%、99.5質量%、99.4質量%、99.3質量%、99.2質量%及び99.1質量%のいずれかとすることができるが、これらに限定されない。
以下、金属インク組成物として、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を用いた場合の、金属層の形成方法について説明するが、金属種が銀以外の場合にも同様の方法で、金属層を形成できる。
前記金属銀の形成材料は、加熱等によって分解し、金属銀を形成するものである。
・銀インク組成物
[カルボン酸銀]
金属銀の形成材料としては、例えば、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀等が挙げられる。
本発明において、カルボン酸銀は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、1分子中の式「−COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「−COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
本発明におけるカルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有するものであり、式「−COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「−COOAg」で表される基の位置は特に限定されない。
本発明において、カルボン酸銀は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)及び下記一般式(4)で表されるカルボン酸銀(以下、「カルボン酸銀(4)」と略記することがある)からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
なお、本明細書においては、単なる「カルボン酸銀」との記載は、特に断りの無い限り、「β−ケトカルボン酸銀(1)」及び「カルボン酸銀(4)」だけではなく、これらを包括する、「式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀」を意味するものとする。
Figure 0006851776
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;
は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
Figure 0006851776
(式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基又は式「−C(=O)−OAg」で表される基であり、前記脂肪族炭化水素基がメチレン基を有する場合、1個以上の前記メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。)
(β−ケトカルボン酸銀(1))
β−ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基である。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
Rにおける直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
Rにおける前記アルケニル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)に置換された基等が挙げられる。
このような前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基(エテニル基、−CH=CH)、アリル基(2−プロペニル基、−CH−CH=CH)、1−プロペニル基(−CH=CH−CH)、イソプロペニル基(−C(CH)=CH)、1−ブテニル基(−CH=CH−CH−CH)、2−ブテニル基(−CH−CH=CH−CH)、3−ブテニル基(−CH−CH−CH=CH)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等が挙げられる。
Rにおける前記アルキニル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基等が挙げられる。
このような前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH−C≡CH)等が挙げられる。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また、前記脂肪族炭化水素基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(−OH)、シアノ基(−C≡N)、フェノキシ基(−O−C)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるYは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R−CY −」、「CY −」及び「R−C(=O)−CY −」においては、それぞれ複数個のYは、互いに同一でも異なっていてもよい。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C−)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、例えば、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、R及びRにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、一般式「R−C(=O)−CY −」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、Rは、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であることが好ましい。
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C−CH−)、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C−O−CH=CH−)、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基である。
における炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、例えば、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基及びベンジル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
におけるRは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(CS−)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C−C−)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。また、Rにおけるフェニル基及びジフェニル基が有する前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基及びジフェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
一般式(1)において、2個のXは、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよい。このようなXとしては、例えば、式「=CH−C−NO」で表される基等が挙げられる。
は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R−C(=O)−」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のXが水素原子であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、2−メチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、アセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−エチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、プロピオニル酢酸銀(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、カプロイル酢酸銀(CH(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−n−ブチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCHCHCH)−C(=O)−OAg)、2−ベンジルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−アセチルピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、2−アセチルイソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)を用いて、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)においては、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。このような導電体においては、原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、好ましくは60〜210℃、より好ましくは60〜200℃という低温で分解し、金属銀を形成できる。そして、β−ケトカルボン酸銀(1)は、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。還元剤については後ほど説明する。
本発明において、β−ケトカルボン酸銀(1)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(カルボン酸銀(4))
カルボン酸銀(4)は、前記一般式(4)で表される。
式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基(−COOH)又は式「−C(=O)−OAg」で表される基である。
における前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。ただし、Rにおける前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
における前記脂肪族炭化水素基がメチレン基(−CH−)を有する場合、1個以上の前記メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。カルボニル基で置換されていてもよいメチレン基の数及び位置は特に限定されず、すべてのメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよい。ここで「メチレン基」とは、単独の式「−CH−」で表される基だけでなく、式「−CH−」で表される基が複数個連なったアルキレン基中の1個の式「−CH−」で表される基も含むものとする。
カルボン酸銀(4)は、ピルビン酸銀(CH−C(=O)−C(=O)−OAg)、酢酸銀(CH−C(=O)−OAg)、酪酸銀(CH−(CH−C(=O)−OAg)、イソ酪酸銀((CHCH−C(=O)−OAg)、2−エチルへキサン酸銀(CH−(CH−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、ネオデカン酸銀(一例を挙げれば、CH−(CH−C(CH−C(=O)−OAg)、シュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)、又はマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。また、上記のシュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)及びマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)の2個の式「−COOAg」で表される基のうち、1個が式「−COOH」で表される基となったもの(HO−C(=O)−C(=O)−OAg、HO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)も好ましい。
カルボン酸銀(4)も、β−ケトカルボン酸銀(1)と同様に、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。そして、カルボン酸銀(4)も、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、カルボン酸銀(4)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、カプロイル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、ピバロイルアセト酢酸銀、イソブチリルアセト酢酸銀、アセトンジカルボン酸銀、ピルビン酸銀、酢酸銀、酪酸銀、イソ酪酸銀、2−エチルへキサン酸銀、ネオデカン酸銀、シュウ酸銀及びマロン酸銀からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
そして、これらカルボン酸銀の中でも、2−メチルアセト酢酸銀及びアセト酢酸銀は、後述する含窒素化合物(なかでもアミン化合物)との相溶性に優れ、銀インク組成物の高濃度化に、特に適したものとして挙げられる。
銀インク組成物において、前記カルボン酸銀に由来する銀の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。前記銀の含有量がこのような範囲であることで、形成された導電体(金属銀)は品質により優れたものとなる。前記銀の含有量の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、銀インク組成物の取り扱い性等を考慮すると25質量%であることが好ましい。
なお、本明細書において、「カルボン酸銀に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物の製造時に配合されたカルボン酸銀中の銀と同義であり、配合後も引き続きカルボン酸銀を構成している銀と、配合後にカルボン酸銀の分解で生じた分解物中の銀と、配合後にカルボン酸銀の分解で生じた銀そのもの(金属銀)と、のすべてを含む概念とする。
[含窒素化合物]
銀インク組成物は、特に前記金属銀の形成材料が前記カルボン酸銀である場合、前記金属銀の形成材料以外に、さらに含窒素化合物が配合されてなるものが好ましい。
前記含窒素化合物は、炭素数25以下のアミン化合物(以下、「アミン化合物」と略記することがある)、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩(以下、「第4級アンモニウム塩」と略記することがある)、アンモニア、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アミン化合物由来のアンモニウム塩」と略記することがある)、及びアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある)からなる群から選択される1種以上のものである。すなわち、配合される含窒素化合物は、1種のみでよいし、2種以上でもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(アミン化合物、第4級アンモニウム塩)
前記アミン化合物は、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(−NH)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
前記第1級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が挙げられる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、このようなアルキル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられる。前記アルキル基は、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン(2−アミノヘプタン)、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン等が挙げられる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。前記アリール基は、炭素数が6〜10であることが好ましい。
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子等が挙げられる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜4個有する単環状のものとしては、例えば、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、フラニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、チエニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、例えば、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、例えば、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、例えば、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、例えば、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、例えば、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(−NH)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたもの等が挙げられる。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン等が挙げられる。
前記第2級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が挙げられる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、例えば、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン等が挙げられる。
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6〜12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記第3級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が挙げられる。
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、例えば、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
本発明において、前記第4級アンモニウム塩としては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が挙げられる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物及び第4級有機アンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記第4級アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、例えば、ピリジン等が挙げられる。
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩における前記置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(−CF)等が挙げられる。ここで、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1〜5のアルキル基を有する、炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、例えば、2−ブロモベンジルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、前記アリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6〜10のアリール基であることが好ましい。このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、例えば、ブロモフェニルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、例えば、ジエタノールアミン、N−メチルベンジルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物は、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、2−フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン又はN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
そして、これらアミン化合物の中でも、2−エチルヘキシルアミンは、前記カルボン酸銀との相溶性に優れ、銀インク組成物の高濃度化に特に適しており、さらに導電層の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。
(アミン化合物由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩である。前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、例えば、n−プロピルアミン塩酸塩、N−メチル−n−ヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
(アンモニア由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩である。ここで酸としては、例えば、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じもの等が挙げられる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム等が挙げられるが、これに限定されない。
本発明においては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩は、それぞれ1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記含窒素化合物を用いる場合、銀インク組成物において、前記含窒素化合物の配合量は、金属銀の形成材料の配合量1モルあたり、0.3〜15モルであることが好ましく、0.3〜12モルであることがより好ましく、0.3〜8モルであることが特に好ましい。前記含窒素化合物の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物は安定性がより向上し、金属銀の品質がより向上する。さらに、高温による加熱処理を行わなくても、より安定して金属銀を形成できる。
[アルコール]
銀インク組成物は、特に前記金属銀の形成材料が前記カルボン酸銀である場合、金属銀の形成材料以外に、さらにアルコールが配合されてなるものが好ましい。
前記アルコールは、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)であることが好ましい。
Figure 0006851776
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
[アセチレンアルコール(2)]
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられる。
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、例えば、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が挙げられる。これら前記置換基は、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様のものである。そして、置換基を有する前記フェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R’及びR’’は、水素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
好ましいアセチレンアルコール(2)としては、例えば、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、2−プロピン−1−オール、4−エチル−1−オクチン−3−オール、3−エチル−1−ヘプチン−3−オール等が挙げられる。
アセチレンアルコール(2)を用いる場合、銀インク組成物において、アセチレンアルコール(2)の配合量は、金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.01〜0.7モルであることが好ましく、0.02〜0.5モルであることがより好ましく、0.02〜0.3モルであることが特に好ましい。アセチレンアルコール(2)の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物の安定性がより向上する。
アセチレンアルコール(2)以外の前記アルコールとしては、例えば、エタノール、2−プロパノール等の飽和脂肪族アルコール等が挙げられる。
前記アルコールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
[ネオデカン酸]
銀インク組成物は、特に前記金属銀の形成材料が前記カルボン酸銀である場合、金属銀の形成材料以外に、さらにネオデカン酸(C19COOH)が配合されてなるものが好ましい。
本明細書において、ネオデカン酸とは、炭素数10の飽和モノカルボン酸の異性体の混合物を意味し、1種の化合物だけを意味するものではない。
そして、ネオデカン酸中の、2種以上の炭素数10の飽和モノカルボン酸の組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
上述のとおり、前記銀インク組成物は、ネオデカン酸が配合されていることで、印刷対象物を加熱しながら印刷を行った場合に、光沢性が高い金属銀を形成できる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
すなわち、印刷対象物上に印刷された銀インク組成物中においては、まず、金属銀の形成材料から銀イオン(Ag)が生じる。そして、印刷対象物の加熱によって、銀イオンに酸素が配位する(Ag・・・O)。次いで、金属銀を形成するための、銀インク組成物の乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理によって、酸素が配位した銀イオンから酸化銀(AgO)が生じる。ここで、ネオデカン酸が配合されていない銀インク組成物の場合には、この銀インク組成物の固化処理によって最終的に生成した金属銀中に、副生した酸化銀が不純物として混入し、金属銀の光沢性が低下してしまうと推測される。一方で、ネオデカン酸が配合されている銀インク組成物の場合には、このネオデカン酸が酸化銀と反応することで、ネオデカン酸銀(C19COOAg)が生じる。このネオデカン酸銀は、上述のカルボン酸銀(4)、すなわち有機銀化合物であり、当初から配合されている有機銀化合物と同様に、銀インク組成物の固化処理によって最終的に金属銀を生成する。このようにネオデカン酸を用いることにより、印刷対象物の加熱が原因となって生じた酸化銀が、ネオデカン酸の作用によって、金属銀の光沢性の低下原因である不純物ではなく、金属銀そのものに転換されることによって、光沢性が高い金属銀を形成できると推測される。
ネオデカン酸は、金属銀の光沢性の低下を抑制する適度な反応性と、銀インク組成物中から揮発し難い一方で、銀インク組成物の固化処理時には気化し易い、適度な沸点と、を有しており、本発明の効果を奏するものとして、特に適した特性を有する。
ネオデカン酸を用いる場合、銀インク組成物において、ネオデカン酸の配合量は、金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.04〜0.5モルであることが好ましく、0.06〜0.4モルであることがより好ましく、0.08〜0.3モルであることが特に好ましい。ネオデカン酸の前記配合量がこのような範囲であることで、印刷対象物を加熱しながら印刷を行った場合であっても、光沢性が高い金属銀を形成する効果がより高くなる。
ネオデカン酸以外のカルボン酸も、ネオデカン酸と同様に、印刷対象物を加熱しながら印刷を行った場合であっても、光沢性が高い金属銀の形成を可能とする。
このようなネオデカン酸以外のカルボン酸(本明細書においては「他のカルボン酸」と称することがある)は、一価カルボン酸であってもよいし、二価以上の多価カルボン酸であってもよく、脂肪族カルボン酸であってもよいし、芳香族カルボン酸であってもよい。
前記他のカルボン酸は、ホルミル基(−C(=O)−H)等の還元力を有する基を含まないものが好ましい。このような基を含まない他のカルボン酸が配合されてなる銀インク組成物は、その保存中に金属銀の形成材料由来の不溶物の生成が抑制され、印刷時の取り扱い性がより高い。
前記他のカルボン酸の炭素数は、5〜17であることが好ましく、例えば、5〜15、5〜13及び5〜11のいずれかであってもよい。
前記他のカルボン酸の沸点は、150〜290℃であることが好ましく、例えば、155〜280℃、160〜270℃及び160〜260℃のいずれかであってもよい。他のカルボン酸の沸点が前記下限値以上であることで、銀インク組成物中からの他のカルボン酸の揮発が抑制されて、他のカルボン酸を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、他のカルボン酸の沸点が前記上限値以下であることで、銀インク組成物の固化処理によって得られた金属銀中での他のカルボン酸の残存が抑制され、光沢性、導電性等が高いなど、より好ましい特性の金属銀が得られる。
銀インク組成物において、前記他のカルボン酸の配合量は、上述のネオデカン酸の配合量と同様とすることができる。
[還元剤]
銀インク組成物は、特に前記金属銀の形成材料が前記カルボン酸銀であり、ネオデカン酸銀が配合されていない場合、金属銀の形成材料以外に、さらに還元剤が配合されてなるものでもよい。
前記還元剤は、シュウ酸(HOOC−COOH)、ヒドラジン(HN−NH)及び下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」と略記することがある)からなる群から選択される1種以上のものである。
H−C(=O)−R21 ・・・・(5)
(式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
すなわち、配合される還元剤は、1種のみでよいし、2種以上でもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
21における炭素数20以下のアルキル基は、炭素数が1〜20であり、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。R21における前記アルキル基としては、例えば、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のもの等が挙げられる。
21における炭素数20以下のアルコキシ基は、炭素数が1〜20であり、このようなアルコキシ基としては、例えば、R21における前記アルキル基が酸素原子に結合してなる一価の基等が挙げられる。
21における炭素数20以下のN,N−ジアルキルアミノ基は、炭素数が2〜20であり、窒素原子に結合している2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。N,N−ジアルキルアミノ基における前記アルキル基は、それぞれ炭素数が1〜19である。ただし、これら2個のアルキル基の炭素数の合計値は2〜20である。
窒素原子に結合している前記アルキル基は、それぞれ直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。このようなアルキル基としては、例えば、炭素数が1〜19である点以外は、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のもの等が挙げられる。
前記還元剤としてのヒドラジンは、一水和物(HN−NH・HO)であってもよい。
前記還元剤で好ましいものとしては、例えば、ギ酸(H−C(=O)−OH);ギ酸メチル(H−C(=O)−OCH)、ギ酸エチル(H−C(=O)−OCHCH)、ギ酸ブチル(H−C(=O)−O(CHCH)等のギ酸エステル;プロパナール(H−C(=O)−CHCH)、ブタナール(H−C(=O)−(CHCH)、ヘキサナール(H−C(=O)−(CHCH)等のアルデヒド;ホルムアミド(H−C(=O)−NH)、N,N−ジメチルホルムアミド(H−C(=O)−N(CH)等のホルムアミド類(式「H−C(=O)−N(−)−」で表される基を有する化合物);シュウ酸等が挙げられる。
還元剤を用いる場合、銀インク組成物において、還元剤の配合量は、金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.04〜3.5モルであることが好ましく、0.06〜2.5モルであることがより好ましい。還元剤の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物は、より容易に、より安定して導電体(金属銀)を形成できる。
[その他の成分]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料、含窒素化合物、アルコール、ネオデカン酸及び還元剤以外の、その他の成分が配合されてなるものでもよい。
銀インク組成物における前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。前記その他の成分としては、例えば、アルコール以外の溶媒等が挙げられ、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。
銀インク組成物における前記その他の成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(溶媒)
前記溶媒は、アルコール以外のもの(水酸基を有しないもの)であれば、特に限定されない。
ただし、前記溶媒は、常温で液状であるものが好ましい。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
前記溶媒としては、例えば、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、デカヒドロナフタレン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、グルタル酸モノメチル、グルタル酸ジメチル等のエステル;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン(ジメチルセロソルブ)等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン;アセトニトリル等のニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド等が挙げられる。
前記その他の成分を用いる場合、銀インク組成物における前記その他の成分の配合量は、前記その他の成分の種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、前記その他の成分がアルコール以外の溶媒である場合、前記溶媒の配合量は、銀インク組成物の粘度等、目的に応じて選択すればよい。ただし通常は、銀インク組成物において、配合成分の総量に対する前記溶媒の配合量の割合は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
また、前記その他の成分が前記溶媒以外の成分である場合、銀インク組成物において、配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合が0質量、すなわちその他の成分を配合しなくても、銀インク組成物は十分にその効果を発現する。
銀インク組成物において、配合成分はすべて溶解していてもよいし、一部又は全ての成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
本発明で用いる、好ましい銀インク組成物としては、例えば、前記金属銀の形成材料、含窒素化合物、アルコール及びネオデカン酸が配合されてなる銀インク組成物;前記金属銀の形成材料、含窒素化合物及びアルコールが配合されてなる銀インク組成物;前記金属銀の形成材料、含窒素化合物、アルコール及び還元剤が配合されてなる銀インク組成物等が挙げられる。
・銀インク組成物の製造方法
前記銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料及びそれ以外の成分を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られたものをそのまま銀インク組成物としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを銀インク組成物としてもよい。本発明においては、特に金属銀の形成材料としてβ−ケトカルボン酸銀(1)を用いた場合、上記の各成分の配合時において、導電性を低下させる不純物が生成しないか、又はこのような不純物の生成量を極めて少量に抑制できる。したがって、精製操作を行っていない銀インク組成物を用いても、十分な導電性を有する金属銀が得られる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。各成分の好ましい配合方法の一例を以下に示す。
例えば、前記金属銀の形成材料、含窒素化合物、アルコール及びネオデカン酸が配合されてなる銀インク組成物を製造する場合には、ネオデカン酸以外の成分をすべて配合した後、ネオデカン酸を最後に配合することが好ましい。
例えば、前記金属銀の形成材料、含窒素化合物、アルコール及び還元剤が配合されてなる銀インク組成物を製造する場合には、前記還元剤を滴下により配合することが好ましく、さらに滴下速度の変動を抑制することで、銀層の表面粗さをより低減できる傾向にある。
配合成分の混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
銀インク組成物において、溶解していない成分を均一に分散させる場合には、例えば、上記の三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を用いて分散させる方法を適用することが好ましい。
前記配合工程、撹拌工程等の、銀インク組成物を得るまでの各工程における温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。そして、前記温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
前記配合工程及び撹拌工程の合計時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、10分〜36時間であることが好ましい。
[二酸化炭素]
銀インク組成物は、さらに二酸化炭素が供給されてなるものでもよい。このような銀インク組成物は高粘度となり、例えば、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等の、インクを厚盛りすることが必要な印刷法への適用に好適である。
二酸化炭素は、銀インク組成物製造時のいずれの時期に供給してもよい。
そして、本発明においては、例えば、前記金属銀の形成材料及び含窒素化合物が配合されてなる第1混合物に、二酸化炭素を供給して第2混合物とし、必要に応じて前記第2混合物に、さらに、前記還元剤を配合して、銀インク組成物を製造することが好ましい。また、前記アルコール又はその他の成分を配合する場合、これらは、第1混合物及び第2混合物のいずれか一方又は両方の製造時に配合でき、目的に応じて任意に選択できる。
前記第1混合物は、配合成分が異なる点以外は、上記の銀インク組成物と同様の方法で製造できる。
第1混合物は、すべての成分が溶解していてもよいし、一部又は全ての成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、すべての成分が溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
第1混合物製造時の配合温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜30℃であることが好ましい。また、配合時間は、配合成分の種類や配合時の温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば、0.5〜12時間であることが好ましい。
第1混合物に供給される二酸化炭素(CO)は、ガス状及び固形状(ドライアイス)のいずれでもよく、ガス状及び固形状の両方でもよい。二酸化炭素が供給されることにより、この二酸化炭素が第1混合物に溶け込み、第1混合物中の成分に作用することで、得られる第2混合物の粘度が上昇すると推測される。
二酸化炭素ガスの供給は、液体中にガスを吹き込む公知の各種方法で行えばよく、適した供給方法を適宜選択すればよい。例えば、配管の一端を第1混合物中に浸漬し、他端を二酸化炭素ガスの供給源に接続して、この配管を通じて二酸化炭素ガスを第1混合物に供給する方法が挙げられる。この時、配管の端部から直接二酸化炭素ガスを供給してもよいが、例えば、多孔質性のものなど、ガスの流路となり得る空隙部が多数設けられ、導入されたガスを拡散させて微小な気泡として放出することが可能なガス拡散部材を配管の端部に接続し、このガス拡散部材を介して二酸化炭素ガスを供給してもよい。また、第1混合物の製造時と同様の方法で、第1混合物を撹拌しながら二酸化炭素ガスを供給してもよい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
二酸化炭素ガスの供給量は、供給先の第1混合物の量や、目的とする銀インク組成物又は第2混合物の粘度に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、20〜25℃における粘度が5Pa・s以上である銀インク組成物を100〜1000g程度得るためには、二酸化炭素ガスを100L以上供給することが好ましく、200L以上供給することがより好ましい。なお、ここでは銀インク組成物の20〜25℃における粘度について説明したが、銀インク組成物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。また、本明細書において「粘度」とは、特に断りのない限り、超音波振動式粘度計を用いて測定したものを意味する。
二酸化炭素ガスの流量は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量を考慮して適宜調節すればよいが、第1混合物1gあたり0.5mL/min以上であることが好ましく、1mL/min以上であることがより好ましい。流量の上限値は特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると、混合物1gあたり40mL/minであることが好ましい。
そして、二酸化炭素ガスの供給時間は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量や、流量を考慮して適宜調節すればよい。
二酸化炭素ガス供給時の第1混合物の温度は、5〜70℃であることが好ましく、7〜60℃であることがより好ましく、10〜50℃であることが特に好ましい。前記温度が前記下限値以上であることで、より効率的に二酸化炭素を供給でき、前記温度が前記上限値以下であることで、不純物が少ないより良好な品質の銀インク組成物が得られる。
二酸化炭素ガスの流量及び供給時間、並びに二酸化炭素ガス供給時の前記温度は、それぞれの値を相互に考慮しながら適した範囲に調節すればよい。例えば、前記温度を低めに設定しても、二酸化炭素ガスの流量を多めに設定するか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。また、二酸化炭素ガスの流量を少なめに設定しても、前記温度を高めにするか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。すなわち、二酸化炭素ガスの流量、二酸化炭素ガス供給時の前記温度として例示した上記数値範囲の中の数値を、二酸化炭素ガスの供給時間も考慮しつつ柔軟に組み合わせることで、良好な品質の銀インク組成物が効率的に得られる。
二酸化炭素ガスの供給は、第1混合物を撹拌しながら行うことが好ましい。このようにすることで、供給した二酸化炭素ガスがより均一に第1混合物中に拡散し、より効率的に二酸化炭素を供給できる。
この時の撹拌方法は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時における前記混合方法の場合と同様でよい。
ドライアイス(固形状二酸化炭素)の供給は、第1混合物中にドライアイスを添加することで行えばよい。ドライアイスは、全量を一括して添加してもよいし、分割して段階的に(添加を行わない時間帯を挟んで連続的に)添加してもよい。
ドライアイスの使用量は、上記の二酸化炭素ガスの供給量を考慮して調節すればよい。
ドライアイスの添加中及び添加後は、第1混合物を撹拌することが好ましく、例えば、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時と同様の方法で撹拌することが好ましい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
撹拌時の温度は、二酸化炭素ガス供給時と同様でよい。また、撹拌時間は、撹拌温度に応じて適宜調節すればよい。
第2混合物の粘度は、銀インク組成物又は第2混合物の取り扱い方法など、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、銀インク組成物をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、第2混合物の20〜25℃における粘度は、3Pa・s以上であることが好ましい。なお、ここでは第2混合物の20〜25℃における粘度について説明したが、第2混合物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。
前記第2混合物には、さらに、必要に応じて前記還元剤、アルコール及びその他の成分からなる群から選択される1種以上を配合して、銀インク組成物とすることができる。
このときの銀インク組成物は、配合成分が異なる点以外は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物と同様の方法で製造できる。そして、得られた銀インク組成物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
前記還元剤配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、配合時間は、配合成分の種類や配合時の温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば、0.5〜12時間であることが好ましい。
前記その他の成分は、先に説明したように、前記第1混合物及び第2混合物のいずれかの製造時に配合されてもよく、両方の製造時に配合されてもよい。例えば、第1混合物及び第2混合物を経て銀インク組成物を製造する過程において、二酸化炭素以外の配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合([その他の成分(質量)]/[金属銀の形成材料、含窒素化合物、還元剤、アルコール、及びその他の成分(質量)]×100)は、前記その他の成分がアルコール以外の溶媒である場合、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。一方、前記その他の成分が前記溶媒以外の成分である場合、前記配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。そして、前記配合量の割合が0質量%、すなわちその他の成分を配合しなくても、銀インク組成物は十分にその効果を発現する。
二酸化炭素が供給されてなる銀インク組成物は、例えば、銀インク組成物をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、20〜25℃における粘度が、1Pa・s以上であることが好ましい。
例えば、還元剤の配合時には、得られる配合物(銀インク組成物)は比較的発熱し易い。そして、還元剤の配合時の温度が高い場合、この配合物は、後述する銀インク組成物の加熱処理時と同様の状態になるため、還元剤による前記金属銀の形成材料の分解促進作用によって、金属銀の形成材料の少なくとも一部において金属銀の形成が開始されることがあると推測される。このような金属銀を含有する銀インク組成物は、金属銀の形成時において、金属銀を含有しない銀インク組成物よりも温和な条件で後処理を行うことにより、金属銀を形成できることがある。また、還元剤の配合量が十分に多い場合にも、同様に温和な条件で後処理を行うことにより、金属銀を形成できることがある。このように、金属銀の形成材料の分解を促進する条件を採用することで、後処理として、より低温での加熱処理で、あるいは加熱処理を行わずに常温での乾燥処理のみで、金属銀を形成できることがある。また、このような金属銀を含有する銀インク組成物は、金属銀を含有しない銀インク組成物と同様に取り扱うことができ、特に取り扱い性が劣ることもない。
なお、本発明における第2混合物は、上記のように二酸化炭素の供給によって、粘度が通常よりも高い。一方で、第2混合物への還元剤の配合時には、第2混合物又は還元剤の種類によっては、上記のように前記金属銀の形成材料の少なくとも一部において金属銀の形成が開始され、金属銀が析出することがある。ここで、第2混合物の粘度が高い場合には、析出した金属銀の凝集が抑制され、得られた銀インク組成物中での金属銀の分散性が向上する。このような銀インク組成物を用いて、後述する方法で形成された金属銀は、粘度が低い、すなわち二酸化炭素が供給されていない混合物に還元剤が配合されて得られた銀インク組成物を用いた場合の金属銀よりも、導電性が高く(体積抵抗率が低く)、表面粗さも小さくなり、より好ましい特性を有するものとなる。
また、本発明においては、前記金属銀の形成材料、アルコール及び含窒素化合物が配合されてなる混合物に、二酸化炭素を供給して、銀インク組成物を製造することも好ましい。この場合、二酸化炭素の供給方法としては、上記と同様の方法が採用できる。
[銀層の形成方法]
銀層(金属銀層)は、例えば、基材上に前記銀インク組成物を付着させ、次いで付着させた銀インク組成物に対して、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理を適宜選択して行い、金属銀を生じさせることで形成できる。前記加熱処理は、乾燥処理を兼ねて行ってもよい。
銀インク組成物は、例えば、印刷法、塗布法、浸漬法等の公知の方法で基材に付着させることができる。
前記印刷法としては、例えば、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、ジェットディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が挙げられる。
前記塗布法としては、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が挙げられる。
銀層の形成時においては、基材上に付着させる銀インク組成物の量、又は銀インク組成物における前記金属銀の形成材料等の配合量を調節することで、銀層の厚さを調節できる。
銀層の形成時においては、銀インク組成物を付着させる前に、基材を加熱処理(アニール処理)してもよい。基材を加熱処理しておくことで、例えば、銀インク組成物を加熱(焼成)処理したときに、基材の収縮が抑制され、寸法安定性が向上する。
銀インク組成物を付着させる前の、基材の加熱処理の条件は、基材の種類に応じて適宜調節すればよく、特に限定されないが、60〜200℃で10〜60分間加熱処理することが好ましく、例えば、銀層の形成時における、銀インク組成物の加熱(焼成)処理の条件と同じであってもよい。
また、銀層の形成時においては、銀インク組成物を付着させる前に、基材の表面をプラズマ処理してもよい。基材をプラズマ処理しておくことで、銀インク組成物の滲みが抑制されることがある。
プラズマ処理は公知の方法で行えばよく、例えば、大気圧プラズマ処理の場合には、電圧290〜300W、気流速度1.0〜5.0m/分等の条件で行うことができる。
基材上に付着させた銀インク組成物を乾燥処理する場合には、公知の方法で行えばよい。すなわち前記乾燥処理は、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれで行ってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれでもよい。加熱処理が不要な場合の好ましい乾燥方法としては、例えば、18〜30℃で大気下において乾燥させる方法等が挙げられる。
基材上に付着させた銀インク組成物を加熱(焼成)処理する場合、その条件は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよい。通常は、加熱温度が60〜370℃であることが好ましく、70〜280℃であることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分〜24時間であることが好ましく、1分〜12時間であることがより好ましい。前記金属銀の形成材料の中でも前記カルボン酸銀、特にβ−ケトカルボン酸銀(1)は、例えば、酸化銀等の金属銀の形成材料とは異なり、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、低温で分解する。そして、このような分解温度を反映して、前記銀インク組成物は、上記のように、従来のものより極めて低温で金属銀(銀層)を形成できる。
銀インク組成物を耐熱性が低い基材に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、加熱温度は130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
銀インク組成物の加熱処理の方法は、特に限定されない。前記加熱処理は、例えば、電気炉による加熱、感熱方式の熱ヘッドによる加熱、遠赤外線照射による加熱、高熱ガスの吹き付けによる加熱等で行うことができる。また、前記加熱処理は、大気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、加湿条件下で行ってもよい。そして、前記加熱処理は、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれで行ってもよい。
本明細書において「加湿」とは、特に断りのない限り、湿度を人為的に増大させることを意味し、好ましくは相対湿度を5%以上とすることである。加熱処理時には、処理温度が高いことによって、処理環境での湿度が極めて低くなるため、5%という相対湿度は、明らかに人為的に増大されたものであるといえる。
銀インク組成物の加熱処理を加湿条件下で行う場合の相対湿度は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましく、90%以上であってもよいし、100%であってもよい。そして、加湿条件下での加熱処理は、100℃以上に加熱した高圧水蒸気の吹き付けにより行ってもよい。このように加湿条件下で加熱処理することにより、短時間でより高純度の金属銀(銀層)を形成できる。
銀インク組成物の加熱処理は、二段階で行ってもよい。例えば、一段階目の加熱処理では、金属銀の形成ではなく銀インク組成物の乾燥を主に行い、二段階目の加熱処理で、金属銀の形成を最後まで行う方法が挙げられる。
一段階目の加熱処理において、加熱温度は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜110℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、5秒〜12時間であることが好ましく、30秒〜2時間であることがより好ましい。
二段階目の加熱処理において、加熱温度は、金属銀が良好に形成されるように、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜280℃であることが好ましく、70〜260℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分〜12時間であることが好ましく、1分〜10時間であることがより好ましい。
銀インク組成物を耐熱性が低い基材に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、一段階目及び二段階目の加熱処理における加熱温度は、130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
ここまでで説明した銀インク組成物の加熱処理は、いずれも気相中で行うものであるが、銀インク組成物の加熱処理を二段階で行う場合、二段階目の加熱処理は、気相中ではなく液相中で行ってもよい。一段階目の加熱処理を経て、完全に又はある程度乾燥した銀インク組成物は、加熱した液体と接触させることで、その形状を損なうことなく、二段階目の加熱処理を行うことができる。そして、銀インク組成物の、一段階目の加熱処理を行った後の二段階目の液相中での加熱処理は、加熱した液体に銀インク組成物を浸漬することで行うことが好ましい。この液相中での加熱処理における加熱温度及び加熱時間は、先に説明した二段階目の加熱処理における加熱温度及び加熱時間と同じである。
上記の加熱した液体は湯(加熱した水)であることが好ましく、二段階目の加熱処理は、一段階目の加熱処理を行った銀インク組成物を湯中に浸漬すること、すなわち湯煎によって行うことが好ましい。
二段階目の加熱処理を液相中で行った場合には、この加熱処理によって形成された金属銀を、さらに乾燥させればよい。
銀インク組成物の二段階目の加熱処理を液相中で行う場合、銀インク組成物の一段階目の加熱処理は、非加湿条件下で行うことが好ましい。
なお、本明細書において「非加湿」とは、上述の「加湿」を行わないこと、すなわち、湿度を人為的に増大させないことを意味し、好ましくは相対湿度を5%未満とすることである。
加湿条件下での加熱処理を採用する場合、銀インク組成物の加熱処理は、以下に示す二段階の方法で行うことが特に好ましい。すなわち、一段階目の加熱処理において、非加湿条件下で、上述のように金属銀の形成ではなく銀インク組成物の乾燥を主に行い、二段階目の加熱処理において、加湿条件下で、上述のように金属銀の形成を最後まで行うことにより、銀インク組成物の加熱処理を行うことが特に好ましい。
二段階目の加熱処理を加湿条件下で行う場合、一段階目の非加湿条件下での加熱処理時の加熱温度は、60〜110℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、5秒〜1時間であることが好ましく、30秒〜30分であることがより好ましく、30秒〜10分であることが特に好ましい。
一段階目の非加湿条件下での加熱処理に次いで行う、二段階目の加湿条件下での加熱処理時の加熱温度は、60〜140℃であることが好ましく、70〜130℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、1分〜2時間であることが好ましく、1分〜1時間であることがより好ましく、1分〜30分であることが特に好ましい。
銀インク組成物を耐熱性が低い基材に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、一段階目の非加湿条件下での加熱処理及び二段階目の加湿条件下での加熱処理における加熱温度は、いずれも130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
以上のように、好ましい銀層の形成方法としては、例えば、銀インク組成物を用いて、金属銀を形成する工程を有するものが挙げられ、なかでも好ましい形成方法としては、例えば、前記金属銀を形成する工程において、前記カルボン酸銀、好ましくはβ−ケトカルボン酸銀(1)が配合されてなる銀インク組成物を、非加湿条件下で加熱処理した後、さらに加湿条件下で、又は加熱した液体と接触させて、加熱処理することで、金属銀を形成するものが挙げられる。
<被覆層>
前記被覆層は、金属層を被覆し、前記金属層除去工程においては、除去対象外の金属層の保護作用を有するものであれば、特に限定されず、積層体の用途に応じて、任意の構成を採用できる。
好ましい被覆層としては、例えば、積層体中の金属層の保護を目的として、保護層として機能するもの;金属層だけでは表現できない色味を積層体において実現することを目的として、着色層として機能するもの;前記保護層及び着色層の両方として機能するもの等が挙げられる。被覆層を保護層として機能させる場合には、主成分の種類を調節することで、保護能を種々調節できる。また、被覆層を着色層として機能させる場合には、用いる着色剤の種類を調節することで、積層体の色味を種々調節できる。例えば、金属層の光沢性も利用して、積層体の色味をカラーメタリック調とすることも可能である。
被覆層の材質は、被覆層が層構成を維持できる限り特に限定されず、積層体の用途に応じて、適宜選択できる。
好ましい被覆層の構成材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。
被覆層における前記樹脂は、硬化性樹脂の硬化物であることが好ましく、エネルギー線硬化性樹脂の硬化物であることがより好ましい。
前記エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線等の紫外線;赤外線;X線、γ線等の電磁放射線;電子線、陽子線、中性子線等の粒子放射線等が挙げられる。
なかでも、前記樹脂は、紫外線硬化性樹脂の硬化物であることが特に好ましい。
前記硬化性樹脂としては、例えば、アクリル酸エステル、二アクリル酸ヘキサメチレン等が挙げられるが、これらに限定されない。
前記樹脂以外の被覆層の構成材料は、任意成分であり、被覆層の機能に応じて適宜選択できる。
例えば、被覆層を着色層として機能させる場合には、樹脂以外の構成材料としては、顔料、染料等の着色剤が挙げられる。
また、前記樹脂がエネルギー線硬化性樹脂の硬化物である場合、被覆層は、光開始剤やそれに由来する成分を含有していてもよい。
被覆層の厚さは、目的に応じて任意に設定できるが、200nm〜50μmであることが好ましく、500nm〜40μmであることがより好ましく、800nm〜30μmであることが特に好ましい。被覆層の厚さが前記下限値以上であることで、金属層除去工程における除去対象外の金属層の保護作用がより向上し、また、積層体において被覆層の構造をより安定して維持できる。また、被覆層の厚さが前記上限値以下であることで、被覆層が過剰に厚くなることを抑制でき、積層体をより薄層化できる。
被覆層は、単層からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。被覆層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
被覆層が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい被覆層の厚さとなるようにするとよい。
被覆層は、例えば、これを形成するための原料となる組成物(以下、「被覆層用組成物」と略記することがある)を、金属層上の目的とする箇所に付着させて、金属層を被覆する組成物層を形成し、この組成物層(被覆層用組成物)に対して、乾燥処理、加熱処理又は硬化等の固化処理を適宜選択して行うことで形成できる。前記被覆層用組成物が硬化性樹脂組成物である場合、前記組成物層を硬化させて被覆層としてもよい。そして、前記加熱処理は、乾燥処理や硬化を兼ねて行ってもよい。
被覆層用組成物における配合成分としては、例えば、樹脂、溶媒、前記樹脂及び溶媒以外の成分が挙げられる。
被覆層用組成物における前記樹脂としては、例えば、上述の被覆層の構成材料である樹脂、又は、硬化によって被覆層の構成材料である樹脂を形成するための樹脂前駆体(プレポリマー)等が挙げられる。
被覆層用組成物における前記溶媒としては、例えば、上述の銀インク組成物におけるアルコール以外の溶媒、アセチレンアルコール(2)以外のアルコール等が挙げられる。
被覆層用組成物における前記樹脂及び溶媒以外の成分としては、例えば、前記着色剤、前記光開始剤、硬化剤、硬化促進剤等が挙げられる。
被覆層用組成物における前記配合成分は、いずれも1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
被覆層用組成物は、例えば、上述の銀インク組成物の場合と同様に、印刷法、塗布法等の公知の方法で、目的とする箇所に付着させることができる。
被覆層の形成時には、目的とする箇所に付着させる被覆層用組成物の量、又は被覆層用組成物における樹脂等の配合量を調節することで、被覆層の厚さを調節できる。
被覆層用組成物の乾燥処理や加熱処理等の固化処理は、銀インク組成物の場合と同様の方法で行うことができる。
被覆層用組成物を硬化させる場合には、配合されている樹脂成分の種類に応じて、紫外線等のエネルギー線の照射又は加熱を行えばよい。
<<他の積層体>>
本発明の製造方法で得られた積層体のうち、上述の金属の形成材料が配合されてなる金属インク組成物を用いて、金属層を形成して得られた積層体は、前記基材と金属層との間に、前記基材、金属層及び被覆層の含有成分とは異なる成分(以下、「混在成分」と略記することがある)を含み得る。
前記混在成分を含む積層体は、先に説明したように、前記基材の表面に対して平行な方向において、金属層の周縁部と、被覆層の周縁部と、の位置が一致している領域を有しているのに加え、前記混在成分を含む点において、従来の積層体とは異なる。
前記混在成分は、前記金属インク組成物から金属を形成する過程で生じた特有の成分であり、典型的には、金属インク組成物の加熱(焼成)処理によって生じた炭素含有成分である。金属インク組成物が上述の銀インク組成物である場合に、前記混在成分は特に生じ易い。
前記混在成分は、前記金属インク組成物に由来する成分であるため、前記積層体においては、金属層の形成領域、すなわち、基材と金属層との間に存在する。
前記混在成分を含む積層体は、その使用時において、通常は、被覆層が設けられている側から観察され、基材が設けられている側から観察されることはない。このような積層体において、前記混在成分は、基材と金属層との間に含まれるため、積層体を被覆層が設けられている側から観察した場合、不透明な金属層に遮られて、前記混在成分は視認されない。すなわち、前記混在成分を含む積層体は、外観上の問題点を有しない。
また、このような積層体において、前記混在成分の含有量は微量であり、金属層と基材との間の密着力(例えば、前記密着力P、前記密着力P)を明確に低減する成分でもないため、前記混在成分を含む積層体は、安定性の問題点を有しない。
図5は、このような混在成分を含む積層体の一実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示す積層体2は、基材11と金属層12との間に混在成分14を含む点以外は、図1及び図2に示す積層体1と同じである。ただし、図5においては、混在成分14が存在していることを判り易くするために、混在成分14を強調表示している。
積層体における前記混在成分の分布の仕方(例えば、混在成分の位置、量等)は、積層体の各層の材質や形成方法に依存して、基材と金属層との間において変化し得るため、図5に示す分布の仕方に限定されない。
例えば、前記混在成分は、基材と金属層との間において、ここに示すように、一定量以上が集合して、基材の表面に対して平行な方向において広がった状態で存在し、層状に分布することがある。また、前記混在成分は、明確な層状にはならずに、局所的に点在して分布することもある。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
<積層体の製造>
[実施例1]
(銀インク組成物の製造)
ビーカー中に2−エチルヘキシルアミン(75.61g、後述するピバロイル酢酸銀に対して6.32倍モル量)と、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(以下、「DMHO」と略記することがある)(1.17g、ピバロイル酢酸銀に対して0.10倍モル量)と、を加えて混合し、メカニカルスターラーを回転させて撹拌しながら、さらにここへ、液温が40℃以下となるようにピバロイル酢酸銀(23.23g)を添加して、各配合成分を溶解させ、室温でそのまま1日撹拌を続けた。
次いでこの撹拌液に、液温が30℃以下となるように、ネオデカン酸(ピバロイル酢酸銀に対して0.13倍モル量)を滴下して撹拌することにより、銀インク組成物を得た。
なお、DMHOとしては、日信化学社製「サーフィノール61」を用い、ネオデカン酸としては、ジャパンケムテック社製「バーサティック10」を用いた。これは、以降の実施例でも同様である。
各配合成分の種類と配合比を表1に示す。表1中、「含窒素化合物(モル比)」とは、金属銀の形成材料の配合量1モルあたりの含窒素化合物の配合量(モル数)([含窒素化合物のモル数]/[金属銀の形成材料のモル数])を意味する。「アルコール(モル比)」も同様に、金属銀の形成材料の配合量1モルあたりのアルコールの配合量(モル数)([アルコールのモル数]/[金属銀の形成材料のモル数])を意味する。「ネオデカン酸のモル比」も同様に、金属銀の形成材料の配合量1モルあたりのネオデカン酸の配合量(モル数)([ネオデカン酸のモル数]/[金属銀の形成材料のモル数])を意味する。
なお、本実施例において「金属銀の形成材料」とは、「β−ケトカルボン酸銀(1)」のことである。
(積層体の製造)
基材としてポリカーボネート製のスマートフォンケース(厚さ1〜2mm)を用い、その外表面全面に、スピンコーターを用いて、上記で得られた銀インク組成物を塗工した。スピンコーターによる塗工時の回転条件は、550rpmで5秒、次いで1000rpmで10秒とした。
次いで、ドライヤーを用いて、この基材上の塗工物を、120℃で15分加熱(焼成)処理することにより、銀層(厚さ約0.1μm)を形成した。
次いで、インクジェットプリンタ(ミマキエンジニアリング社製「UJF−3042」)と、紫外線硬化性インク(ミマキエンジニアリング純正インク「UVインクLH−10」)とを用いて、上記で形成した銀層上に、銀層の第1面の一部が露出するようなパターンを印刷し、前記インクを硬化及び乾燥させることで、被覆層(厚さ約15μm)を形成した。
次いで、擦過手段として、紙ワイパー(日本製紙クレシア社製「ケイドライ」)に2−プロパノールを含浸させたものを用いて、銀層の露出部位を、この露出部位に隣接する被覆層とともに擦過することによって、銀層の露出部位のみを基材上から除去した。
以上により、積層体、すなわち、銀層の高い光沢性と、被覆層の色を利用して、色彩上の装飾を施したスマートフォンケースを得た。
得られた積層体を目視により詳細に観察した結果、基材の表面に対して平行な方向において、銀層の周縁部の全領域の位置が、被覆層の周縁部の位置と一致している(被覆層の周縁部の全領域の位置が、銀層の周縁部の位置と一致している)、目的とする構成の積層体が得られたことを確認できた。
本実施例では、少ない工程数で、煩雑な作業を伴うことなく、簡便に前記積層体を製造できた。
[実施例2]
(銀インク組成物の製造)
ビーカー中に2−エチルヘキシルアミン(78.18g、後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して6.53倍モル量)と、DMHO(1.17g、2−メチルアセト酢酸銀に対して0.10倍モル量)と、を加えて混合し、メカニカルスターラーを回転させて撹拌しながら、さらにここへ、液温が40℃以下となるように2−メチルアセト酢酸銀(20.65g)を添加して、各配合成分を溶解させ、室温でそのまま1日撹拌を続けた。
次いでこの撹拌液に、液温が30℃以下となるように、ネオデカン酸(2−メチルアセト酢酸銀に対して0.13倍モル量)を滴下して撹拌することにより、銀インク組成物を得た。
(積層体の製造)
基材としてポリカーボネート製のスマートフォンケース(厚さ1〜2mm)を用い、その外表面に対して、インクジェットプリンタ(富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ社製「DMP2831」)を用いて、上記で得られた銀インク組成物で印刷を行った。このときの印刷パターンは、設計パターンよりも太さが1mmだけ太いパターンとした。
次いで、ドライヤーを用いて、この基材上の印刷パターンを、120℃で15分加熱(焼成)処理することにより、銀層(厚さ約0.1μm)を形成した。
次いで、インクジェットプリンタ(ミマキエンジニアリング社製「UJF−3042」)と、紫外線硬化性インク(ミマキエンジニアリング純正インク「UVインクLH−10」)とを用いて、上記で形成した銀層上に、銀層の第1面の一部が露出するようなパターンを印刷し、前記インクを硬化及び乾燥させることで、被覆層(厚さ約15μm)を形成した。このとき、銀層の周縁部の全領域に沿って、銀層の露出部位が生じるように、被覆層を形成した。
次いで、擦過手段として、紙ワイパー(日本製紙クレシア社製「ケイドライ」)に2−プロパノールを含浸させたものを用いて、銀層の露出部位を、この露出部位に隣接する被覆層とともに擦過することによって、銀層の露出部位のみを基材上から除去した。
以上により、積層体、すなわち、銀層の高い光沢性と、被覆層の色を利用して、色彩上の装飾を施したスマートフォンケースを得た。
得られた積層体を目視により詳細に観察した結果、基材の表面に対して平行な方向において、銀層の周縁部の全領域の位置が、被覆層の周縁部の位置と一致している(被覆層の周縁部の全領域の位置が、銀層の周縁部の位置と一致している)、目的とする構成の積層体が得られたことを確認できた。
本実施例では、少ない工程数で、煩雑な作業を伴うことなく、簡便に前記積層体を製造できた。
Figure 0006851776
本発明は、装飾用又は加飾用の各種製品、金属層を配線として用いる配線板等に利用可能である。
1・・・積層体、11・・・基材、11a・・・基材の表面、12・・・金属層、12a・・・金属層の第1面、12c・・・金属層の周縁部、120・・・金属層の露出部位、13・・・被覆層、13c・・・被覆層の周縁部、130・・・金属層の露出部位に隣接する被覆層、14・・・混在成分

Claims (2)

  1. 基材、金属層及び被覆層を備え、これらがこの順に積層されてなり、前記基材の表面に対して平行な方向において、前記金属層の周縁部と、前記被覆層の周縁部と、の位置が一致している領域を有する積層体の製造方法であって、
    基材上に金属層を形成する工程と、
    前記金属層の、前記基材側とは反対側の表面の一部が露出するように、前記金属層上に前記被覆層を形成する工程と、
    前記金属層の表面が露出している露出部位を、この露出部位に隣接する前記被覆層とともに擦過することによって、前記金属層の露出部位のみを前記基材上から除去し、前記基材の前記金属層が形成されていた領域の表面を露出させる工程と、
    を有する、積層体の製造方法。
  2. 基材、金属層及び被覆層を備え、これらがこの順に積層されてなり、
    前記基材の表面に対して平行な方向において、前記金属層の周縁部と、前記被覆層の周縁部と、の位置が一致している領域を有し、
    前記基材の前記金属層側の表面の一部が、前記金属層及び被覆層が形成されずに露出しており、
    前記基材と前記金属層との間に、前記基材、金属層及び被覆層の含有成分とは異なる成分を含む、積層体。
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