JP6835410B2 - 電子写真用トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる電子写真用トナー等に関する。
近年、プリンターやコピー機の高速化及び省エネ化に伴い、低温定着性と高温オフセットに優れた電子写真用トナーがますます必要となってきている。
特許文献1では、結着樹脂及びアミド化合物を含むトナー原料を混練する工程及び該混練工程以降のいずれかの工程において製造中間物を加熱処理する工程を含む電子写真用トナーの製造方法であって、前記結着樹脂が結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂を含有してなり、前記アミド化合物が、式(I):R1−CONH−X−NHCO−R2(I)で表される化合物である、電子写真用トナーの製造方法が記載されている。当該製造方法によれば、結着樹脂として結晶性ポリエステルを含有し、広範囲な定着温度領域と優れた耐久性とを兼ね備えた電子写真用トナーが得られると記載されている。
特開2009−251193号公報
低温定着性向上のため、結晶性ポリエステル系樹脂を用いることが知られている。特許文献1においては、結晶性ポリエステル、非晶質樹脂と共にアミド化合物を用い、混練工程の後、混練物を冷却ロールで圧延し、20℃以下に冷却した後、オーブン内にて加熱処理することで、広範囲な定着温度領域が得られるとされている。
一方、当該加熱処理工程がないと、結晶性ポリエステル系樹脂の結晶化が不十分となり、非晶質ポリエステル系樹脂が結晶性ポリエステル系樹脂に可塑化され、高温高湿下での保存性が悪化するという課題が生じる。トナーにおいては、当該加熱処理工程がなくても、優れた保存性に加え、低温定着性能と高温オフセットについても優れた特性を有すること、つまりは、広い定着温度領域を有することが求められる。
そこで、本発明は、当該加熱処理工程の有無に関わらず、優れた保存性、及び広い定着温度領域を有する、電子写真用トナーに関する。
本発明者は、特定の結晶性ポリエステル系樹脂と特定のアミド化合物と非晶質ポリエステル系樹脂と含有することで、トナー中の結晶性ポリエステル系樹脂の結晶化が向上し、保存性が向上し、定着温度領域が広がることが明らかとなった。
本発明は、結晶性ポリエステル系樹脂、非晶質ポリエステル系樹脂及びアミド化合物を含有する電子写真用トナーであって、
前記結晶性ポリエステル系樹脂が、炭素数4以上の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であり、
前記アミド化合物が、式(1):
−CONH−X−NHCO-R (1)
〔式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数12以上22以下のヒドロキシアルキル基であり、Xは、炭素数2以上12以下の2価の炭化水素基である。〕で表される化合物である、電子写真用トナーに関する。
本発明によれば、優れた保存性、及び広い定着温度領域を有する、電子写真用トナーを提供することができる。
[電子写真用トナー]
本発明の電子写真用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)は、結晶性ポリエステル系樹脂、非晶質ポリエステル系樹脂及びアミド化合物を含有する。
結晶性ポリエステル系樹脂は、炭素数4以上の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物である。
また、アミド化合物は、式(1)で表される化合物である。
以上の構成によれば、優れた保存性、及び広い定着温度領域を有する、電子写真用トナーを提供することができる。その理由は明らかでないが、以下の通りに考えられる。
特定の結晶性ポリエステル系樹脂と、特定のアミド化合物とが共存することで、アミド化合物が核となり、結晶性ポリエステル系樹脂の結晶化度が高くなったと考えられる。更に、特定の構造のアミド化合物との組合せを選択することで、非晶質ポリエステル系樹脂中でアミド化合物が広く行きわたり、各所で微小な結晶ドメインが生成されるため、保存性が向上したものと考えられる。加えて、特定の結晶性ポリエステル系樹脂の結晶化が向上することにより、高温での弾性率が向上したため、耐高温オフセット性が向上し、定着温度領域が広がったと考えられる。
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
樹脂が結晶性であるか非晶質であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4未満、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下の樹脂である。非晶質樹脂とは、結晶性指数が1.4以上、又は0.6未満の樹脂である。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
「カルボン酸化合物」とは、そのカルボン酸のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及びカルボン酸のアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)も含む概念である。
カルボン酸化合物がカルボン酸のアルキルエステルである場合、カルボン酸化合物の炭素数には、エステルのアルコール残基であるアルキル基の炭素数を算入しない。
「結着樹脂」とは、結晶性ポリエステル系樹脂、及び非晶質ポリエステル系樹脂を包含するトナー中に含まれる樹脂成分を意味する。
<アミド化合物>
アミド化合物は、トナーの優れた保存性及び広い定着温度領域を得る観点から、式(1):
−CONH−X−NHCO-R (1)
〔式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数12以上22以下のヒドロキシアルキル基であり、Xは、炭素数2以上12以下の2価の炭化水素基である。〕で表される化合物である。
及びRのヒドロキシアルキル基の炭素数は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、それぞれ独立に、好ましくは13以上、より好ましくは15以上であり、そして、好ましくは21以下、より好ましくは19以下である。
Xの2価の炭化水素基としては、例えば2価の脂肪族炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基である。
Xの2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。
2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、エチレン基、1,3-プロパンジイル基、1,4-ブタンジイル基、1,6-ヘキサンジイル基が挙げられる。
2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、m-キシリレン基、p-キシリレン基が挙げられる。
アミド化合物としては、例えば、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。これらの中でも、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド及びヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドが好ましい。
アミド化合物の融点は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは220℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは180℃以下である。
アミド化合物の含有量は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、結晶性ポリエステル系樹脂及び非晶質ポリエステル系樹脂の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
<結晶性ポリエステル系樹脂>
結晶性ポリエステル系樹脂は、トナーの優れた保存性及び広い定着温度領域を得る観点から、炭素数4以上の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物である。
結晶性ポリエステル系樹脂としては、例えば、重縮合物からなる結晶性ポリエステル樹脂、変性された結晶性ポリエステル系樹脂が挙げられる。変性された結晶性ポリエステル系樹脂としては、例えば、結晶性ポリエステル樹脂のウレタン変性物、結晶性ポリエステル樹脂のエポキシ変性物、結晶性ポリエステル樹脂セグメントとビニル系樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。これらの中でも、結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
以下、結晶性ポリエステル系樹脂の各成分について説明する。
アルコール成分は、トナーの優れた保存性及び広い定着温度領域を得る観点から、炭素数4以上の脂肪族ジオールを含む。
脂肪族ジオールの炭素数は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、好ましくは6以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
炭素数4以上の脂肪族ジオールとしては、α,ω-脂肪族ジオールが好ましい。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましく、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。
炭素数4以上の脂肪族ジオールの量は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、アルコール成分中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
アルコール成分は、炭素数4以上の脂肪族ジオールとは異なる他のアルコール成分を含有していてもよい。他のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール等の炭素数3以下の脂肪族ジオール;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
カルボン酸成分は、トナーの優れた保存性及び広い定着温度領域を得る観点から、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸化合物を含む。
脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。これらの中でも、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、セバシン酸、ドデカン二酸が好ましく、ドデカン二酸がより好ましい。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸化合物の量は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、そして、更に好ましくは100モル%である。
カルボン酸成分は、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸化合物とは異なる他のカルボン酸化合物(以下、単に「他のカルボン酸化合物」ともいう)を含有していてもよい。
他のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数9以下の脂肪族ジカルボン酸化合物、芳香族ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。
炭素数9以下の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フマル酸、アジピン酸、又はこれらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。
3価以上の多価芳香族カルボン酸化合物としては、例えば、ピロメリット酸、トリメリット酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。これらの中でもトリメリット酸又はトリメリット酸無水物が好ましい。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.0以下である。
〔結晶性ポリエステル系樹脂の物性〕
結晶性ポリエステル系樹脂の軟化点は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下であり、そして、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上である。
結晶性ポリエステル系樹脂の融点は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下であり、そして、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。
結晶性ポリエステル系樹脂の酸価は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下、更に好ましくは15mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以下である。
結晶性ポリエステル系樹脂の重量平均分子量は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは12,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは30,000以下である。
結晶性ポリエステル系樹脂の数平均分子量は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは3,000以上であり、そして、好ましくは10,000以下、より好ましくは8,000以下、更に好ましくは6,000以下である。
〔結晶性ポリエステル系樹脂の製造方法〕
結晶性ポリエステル系樹脂は、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合により得られる。
必要に応じて、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のエステル化触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いてアルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合してもよい。
重縮合の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
トナーにおいて、結晶性ポリエステル系樹脂の含有量は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、結晶性ポリエステル系樹脂及び非晶質ポリエステル系樹脂の合計量に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
<非晶質ポリエステル系樹脂>
非晶質ポリエステル系樹脂としては、例えば、非晶質ポリエステル樹脂、変性された非晶質ポリエステル系樹脂が挙げられる。変性された非晶質ポリエステル系樹脂としては、例えば、非晶質ポリエステル樹脂のウレタン変性物、非晶質ポリエステル樹脂のエポキシ変性物、非晶質ポリエステル樹脂セグメントとビニル系樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。これらの中でも、非晶質ポリエステル樹脂(つまりは未変性の非晶質ポリエステル樹脂)がより好ましい。
非晶質ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
アルコール成分としては、例えば、芳香族ジオール、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジオールが好ましい。
芳香族ジオールは、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、より好ましくは式(I):

(式中、R1O及びOR2はオキシアルキレン基であり、R1及びR2はそれぞれ独立にエチレン又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〕のポリオキシプロピレン付加物、ビスフェノールAのポリオキシエチレン付加物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の量は、アルコール成分中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
芳香族ジオールの他、アルコール成分として、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールを含んでいてもよい。
直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン〕、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド(平均付加モル数2以上12以下)付加物が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
カルボン酸成分としては、例えば、ジカルボン酸化合物、3価以上の多価カルボン酸化合物が挙げられる。ジカルボン酸化合物としては、例えば、芳香族ジカルボン酸化合物、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸化合物が好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下である。
カルボン酸成分は、好ましくは3価以上の多価カルボン酸化合物を含み、好ましくはトリメリット酸又はその無水物を含む。
3価以上の多価カルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上であり、そして、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは25モル%以下である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸が好ましい。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂の製造方法は、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合により得られる。重縮合の条件は、前述の結晶性ポリエステル系樹脂で示した重縮合の条件と同様の範囲が好ましい。
〔非晶質ポリエステル系樹脂の物性〕
非晶質ポリエステル系樹脂の酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、更に好ましくは4mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂の軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは85℃以上であり、そして、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂の酸価、軟化点、及びガラス転移温度は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
トナーにおいて、非晶質ポリエステル系樹脂の含有量は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、結晶性ポリエステル系樹脂及び非晶質ポリエステル系樹脂の合計量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更に好ましくは92質量%以下である。
〔樹脂H, L〕
前述の非晶質ポリエステル系樹脂の中でも、低温定着性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル系樹脂L(以下、単に「樹脂L」ともいう)と、当該非晶質ポリエステル系樹脂Lの軟化点よりも高い軟化点を有する非晶質ポリエステル系樹脂H(以下、単に「樹脂H」ともいう)とを含有することが好ましい。
樹脂Hの軟化点は、低温定着性を向上させる観点から、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下であり、そして、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上である。
樹脂Lの軟化点は、低温定着性を向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上であり、そして、好ましくは125℃以下、より好ましくは115℃以下である。
樹脂Hと樹脂Lの軟化点の差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下である。
樹脂Hと樹脂Lの質量比(H/L)は、好ましくは20/80以上、より好ましくは25/75以上、更に好ましくは30/70以上であり、そして、好ましくは60/40以下、より好ましくは50/50以下、更に好ましくは40/60以下である。
<荷電制御剤>
トナーは、荷電制御剤を含有していてもよい。
荷電制御剤は、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業株式会社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット株式会社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「TN-105」(保土谷化学工業株式会社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
荷電制御剤の中でも、負帯電性荷電制御剤が好ましく、ベンジル酸化合物の金属化合物又はサリチル酸化合物の金属化合物がより好ましい。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
<着色剤>
トナーは、着色剤を含有していてもよい。
着色剤としては、染料、顔料のいずれであってもよく、例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエローが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
<離型剤>
トナーは、離型剤を含有していてもよい。
離型剤は、好ましくはワックスである。離型剤としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
離型剤の融点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下である。
離型剤の融点は実施例に記載の方法による。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。
トナーは、例えば、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を含有していてもよい。
<トナーの物性等>
トナーは、前述の結晶性ポリエステル系樹脂、非晶質ポリエステル系樹脂及びアミド化合物を含有し、好ましくは前述の結晶性ポリエステル系樹脂、非晶質ポリエステル系樹脂及びアミド化合物を含有するトナー粒子を含有する。
トナー中での結晶性ポリエステル系樹脂の結晶化度は、トナーの保存性及び定着温度領域をより向上させる観点から、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上であり、そして、好ましくは98%以下、より好ましくは95%以下、更に好ましくは93%以下である。
結晶化度の測定方法は、実施例に記載の方法による。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像を得る観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下、更に好ましくは8μm以下である。
トナー粒子は、その表面が外添剤により処理されていてもよい。
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子、及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いる場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
[トナーの製造方法]
トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法、乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
粉砕トナーである場合、トナーの製造方法は、例えば
工程1:結晶性ポリエステル系樹脂、非晶質ポリエステル系樹脂及びアミド化合物を含むトナー原料を溶融混練する工程、及び
工程2:工程1で得られた溶融混合物を粉砕、分級しトナー粒子を得る工程
を含む。
工程1では、トナー原料中に、荷電制御剤、着色剤、離型剤等のその他添加剤を含んでいてもよい。これらのトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
溶融混練の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、好ましくは140℃以下である。
工程1の溶融混練には、密閉式ニーダー、一軸押出機、二軸押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。結晶を溶融混合する観点から、高温条件に設定することのできる二軸押出機が好ましい。
工程1で得られた溶融混合物を、粉砕が可能な程度に冷却した後、続く工程2に供する。
工程2の粉砕は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混合物を硬化させて得られた樹脂混練物を、1mm以上5mm以下に粗粉砕した後、更に所望の粒径に微粉砕してもよい。
粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックスが挙げられる。微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミルが挙げられる。粉砕効率の観点から、流動層式ジェットミル、及び衝突板式ジェットミルを用いることが好ましく、衝突板式ジェットミルを用いることがより好ましい。
分級に用いられる分級機としては、例えば、ロータ式分級機、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程を繰り返してもよい。
トナーは、必要に応じて、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理する。
トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる。トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
以下、実施例として、具体的な実施態様を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[測定方法]
樹脂等の各物性値については次の方法により測定した。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070:1992規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、非晶質ポリエステルの場合はアセトンとトルエンの混合溶媒〔アセトン:トルエン=1:1(容量比)〕に、結晶性ポリエステルの場合はクロロホルムの溶媒に変更する。
〔樹脂の平均分子量〕
以下の方法により得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量及び重量平均分子量を求める。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料を、非晶質ポリエステル系樹脂の場合テトラヒドロフランに、結晶性ポリエステル系樹脂の場合クロロホルムに、25℃で溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC-25JP」(ADVANTEC社製)を用いて濾過して不溶解分を除き、試料溶液とする。
(2)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液として、非晶質ポリエステル系樹脂の場合テトラヒドロフラン、結晶性ポリエステル系樹脂の場合クロロホルムを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン「A-500」(5.0×102)、「A-1000」(1.01×103)、「A-2500」(2.63×103)、「A-5000」(5.97×103)、「F-1」(1.02×104)、「F-2」(1.81×104)、「F-4」(3.97×104)、「F-10」(9.64×104)、「F-20」(1.90×105)、「F-40」(4.27×105)、「F-80」(7.06×105)、「F-128」(1.09×106)(以上、東ソー株式会社製、かっこ内の数値は分子量を示す)を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:「HLC-8220CPC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「GMHXL+G3000HXL」(東ソー株式会社製)
〔樹脂の軟化点、最大ピーク温度、及びガラス転移温度〕
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
(2)吸熱の最大ピーク温度
示差走査熱量計「Q-20」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのままの温度で1分間維持し、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も大きいピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とする。
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計「Q-20」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで-10℃まで冷却し1分間静止する。次に試料を昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで-30℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピーク温度を融点とする。
〔ワックスの融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
〔トナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、次の通り測定する。
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王株式会社製、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)=13.6〕を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:上記の分散液5mLに乾燥後のトナー粒子の測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔結晶化度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し1分間静止する。次に試料を昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、観測される結晶性ポリエステル系樹脂の結晶融解に起因する吸熱ピークについて、該ピークの開始点温度以下のベースライン上の最もピークに近い点と該ピークの終点温度以上のベースライン上の最もピークに近い点とを結ぶ直線を引くことにより、ピーク面積を算出して、結晶融解に要する吸熱量とする。試料としてトナー及びその原料の結晶性ポリエステル系樹脂を用い、結晶性ポリエステル系樹脂の結晶融解に要する吸熱量をそれぞれ求め、原料の結晶性ポリエステル系樹脂の1g当たりの結晶融解に要する吸熱量を算出することにより、以下の式に従って、トナー中の結晶性ポリエステル系樹脂の結晶化度を算出した。結果を表3に示す。
結晶化度(%)=トナー中の結晶性ポリエステル系樹脂1g当たりの結晶融解に要する吸熱量/原料の結晶性ポリエステル系樹脂1g当たりの結晶融解に要する吸熱量×100
[樹脂の製造]
製造例AL1〔樹脂AL-1〕
表1に示すアルコール成分、テレフタル酸、エステル化触媒及び助触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、6h常圧で反応を行った後、8kPaにて1h減圧で反応を行った。その後、常圧で190℃まで冷却し、コハク酸を添加したあと、210℃まで10℃/30minの速度で段階的に昇温した。その後、210℃、8kPaにて所望の軟化点まで減圧反応を行い、非晶質ポリエステル樹脂AL-1を得た。各種物性を測定し表1に示した。
製造例AH1〔樹脂AH-1〕
表1に示すアルコール成分、テレフタル酸、エステル化触媒及び助触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、2.5h常圧で反応を行った後、8kPaにて1時間減圧で反応を行った。その後、常圧で190℃まで冷却し、アジピン酸と無水トリメリット酸を添加したあと、210℃まで10℃/hの速度で段階的に昇温した。その後、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、非晶質ポリエステル樹脂AH-1を得た。各種物性を測定し表1に示した。
製造例C1〜C3〔樹脂C-1〜C-3〕
表2に示すアルコール成分、酸成分、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、140℃まで昇温し、5時間反応を行った後、200℃まで10℃/hの速度で段階的に昇温を行った。その後、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂C-1〜C-3を得た。各種物性を測定し表2に示した。
製造例C51〔樹脂C-51〕
表2に示すアルコール成分と酸成分、エステル化触媒及び重合禁止剤を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、140℃まで昇温し、5時間反応を行った後、200℃まで10℃/hの速度で段階的に昇温を行った。その後8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂C-51を得た。各種物性を測定し表2に示した。
[トナーの製造]
実施例1〜6, 比較例1〜4〔トナー1〜6, 51〜54〕
表3に示す配合比の結着樹脂100質量部とアミド化合物を、負帯電性荷電制御剤「ボントロンE-81」(オリヱント化学工業株式会社製)1質量部、着色剤「Pigment Blue 15:3」(大日精化工業株式会社製)5質量部、及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、パラフィンワックス、融点:80℃)2質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度100℃で溶融混練した。混合物の供給速度は20kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、外添剤として疎水性シリカ「AEROSIL NAX 50」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、平均粒子径:約30nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
[評価]
トナーの評価は、次の方法により行った。
〔保存性〕
20mL容の容器(直径約3cm)にトナー4gを入れ、温度55℃、相対湿度60%の環境下で48時間放置した。その後、前記環境下で、6時間毎に72時間までトナー凝集の発生程度を目視にて観察した。凝集の発生が認められた時点の時間の値が大きいほど高温高湿下での保存性が良好である。結果を表3に示す。なお、表3中「>72」は観察した72時間後も凝集は認められないことを示す。
〔定着性〕
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、未定着で画像出しを行った(印字面積:4.1cm×13.0cm、付着量:0.45±0.03mg/cm2)。得られた未定着画像について、「Microline3010」(株式会社沖データ製)の定着機(定着速度:300mm/sec)を用いて、90℃から240℃へ5℃ずつ順次定着温度を上昇させながら、600r/minで用紙に定着させた。オフセットの発生を目視にて観察し、オフセットが発生しない温度領域(定着温度領域)を調べた。
上記の実施例の電子写真用トナーによれば、優れた保存性、及び広い定着温度領域を有することがわかる。

Claims (5)

  1. 結晶性ポリエステル系樹脂、非晶質ポリエステル系樹脂及びアミド化合物を含有する電子写真用トナーであって、
    前記結晶性ポリエステル系樹脂が、炭素数4以上の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であり、
    前記アミド化合物が、式(1):
    −CONH−X−NHCO-R (1)
    〔式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数12以上22以下のヒドロキシアルキル基であり、Xは、炭素数2以上12以下の2価の炭化水素基である。〕で表される化合物である、電子写真用トナー。
  2. 前記結晶性ポリエステル系樹脂の含有量が、前記結晶性ポリエステル系樹脂及び前記非晶質ポリエステル系樹脂の合計量に対して、0.5質量%以上30質量%以下である、請求項1に記載の電子写真用トナー。
  3. 前記アミド化合物の含有量が、前記結晶性ポリエステル系樹脂及び前記非晶質ポリエステル系樹脂の合計量100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下である、請求項1又は2に記載の電子写真用トナー。
  4. 前記非晶質ポリエステル系樹脂が、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分と、カルボン酸成分との重縮合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用トナー。
  5. 前記非晶質ポリエステル系樹脂が、非晶質ポリエステル系樹脂Lと、前記非晶質ポリエステル系樹脂Lの軟化点よりも高い軟化点を有する非晶質ポリエステル系樹脂Hとを含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用トナー。
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