JP6830083B2 - 分散剤及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、リグニン誘導体を含有する分散剤及びその製造方法に関する。
リグニンは、樹木中に存在する天然高分子成分であり、木材を原料として使用する製紙産業で、大規模かつ商業的に発生している。例えば、クラフトパルプ廃液からはクラフトリグニンが得られ、亜硫酸パルプ廃液からはリグニンスルホン酸が得られる。クラフトリグニンとリグニンスルホン酸、又はそれらの加工品は、分散剤として染料、水硬性組成物(例えば、セメント、石膏)、無機及び有機顔料、石炭−水スラリー、農薬、窯業、油田掘削用泥水など広範囲な工業分野で多用されている。
例えば、特許文献1には、スルホン基量及びカルボキシル基量、ならびに分子量が制御された変性リグニンスルホン酸塩の染料分散剤としての用途が開示されている。また、特許文献2には、所定範囲の分子量分布を有するリグニンスルホン酸とアクリル系又はビニル系モノマーとのグラフト共重合体の、セメント分散剤としての用途が開示されている。さらに、特許文献3には、油田掘削用泥水分散安定剤として、アクリル酸とリグニンスルホン酸塩とのグラフト共重合体が開示されている。そして、特許文献4には、リグニンスルホン酸塩とポリアルキレンオキシド鎖を有する水溶性単量体との反応物からなるリグニン誘導体が開示されている。
特開2002−146028号公報 特開平01−145358号公報 米国特許第4,322,301号明細書 特許第5769930号公報
しかしながら、前述した従来のリグニン系分散剤の性能は不十分である。
そこで、本発明は、近年の環境負荷低減の観点から、循環可能なバイオマス資源としてのリグニンの有効利用を図ることを目的とする。具体的には、水硬性組成物、染料、無機及び有機顔料、石炭−水スラリー、農薬、窯業、油田掘削用泥水など用途を問わず各種の被分散体に対し、増粘性を付与し、その性状を向上させ得る分散剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、リグニンスルホン酸系化合物と芳香族系水溶性化合物との反応物であるリグニン誘導体が所定の条件を満たすことにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕〜〔8〕を提供する。
〔1〕リグニンスルホン酸系化合物と芳香族系水溶性化合物との反応物であり、下記条件(1)及び(2)を満たすリグニン誘導体を含有する分散剤。
条件(1):100℃での不揮発分が30%の溶液形態におけるB型粘度が30〜100mPa・sである。
条件(2):100℃での不揮発分が10%の溶液形態における表面張力が25〜55dyne/cmである。
〔2〕前記リグニン誘導体が、アニオン性官能基を有する上記〔1〕に記載の分散剤。
〔3〕前記リグニン誘導体が、アルキレンオキサイド平均付加モル数25以上であるポリアルキレンオキシド鎖を有する上記〔1〕又は〔2〕に記載の分散剤。
〔4〕前記リグニン誘導体において、前記リグニンスルホン酸系化合物〔L〕と前記芳香族系水溶性化合物〔M〕との反応重量比率(〔L〕/〔M〕)が、1〜99/99〜1である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の分散剤。
〔5〕前記芳香族系水溶性化合物が、ポリアルキレンオキシド鎖を有する芳香族系水溶性化合物、カルボキシル基を有する芳香族系水溶性化合物、及びスルホ基を有する芳香族系水溶性化合物からなる群より選ばれる1以上の化合物を含む、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の分散剤。
〔6〕液状物である上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の分散剤。
〔7〕水硬性組成物用分散剤である上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の分散剤。
〔8〕リグニンスルホン酸系化合物と芳香族系水溶性化合物を反応させる工程を含む、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の分散剤の製造方法。
本発明の分散剤によれば、水硬性組成物、染料、無機及び有機顔料、石炭−水スラリー、農薬、窯業、油田掘削用泥水など用途を問わず各種の被分散体に対し、増粘性を付与し、その性状を向上させ得る。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書中、「AA〜BB」と表記する場合、AA以上かつBB以下を示すものとする。また、「液状物」とは、溶質が溶媒に完全に溶解した水溶液に加え、溶質の少なくとも一部が溶媒中に分散した懸濁液を包含する概念である。
[1.分散剤]
本発明の分散剤は、リグニンスルホン酸系化合物と芳香族系水溶性化合物との反応物であり、条件(1)及び(2)を満たすリグニン誘導体を含有する。そのため、本発明の分散剤は、増粘性を付与し、その性状を向上させ得るので、種々の用途に使用することができる。
条件(1):100℃での不揮発分が30%の溶液形態におけるB型粘度が30〜100mPa・sである。
条件(2):100℃での不揮発分が10%の溶液形態における表面張力が25〜55dyne/cmである。
本発明の分散剤は、従来のリグニン由来の分散剤に比べて、水硬性組成物、染料、無機及び有機顔料、石炭−水スラリー、農薬、窯業、油田掘削用泥水など用途を問わず各種の被分散体に対し、非常に高い分散性能を発揮し得る。そのため、本発明の分散剤は、これまでリグニン由来の分散剤を適用し難い領域においても使用可能である。
従来のリグニン系分散剤を水硬性組成物に用いる場合、水硬性組成物原料(セメント、粗骨材、細骨材、石膏)と水の分離、いわゆるブリーディングが生じる恐れがある。一方、本発明の分散剤を水硬性組成物の分散に用いる場合、ブリーディングを抑制し、水硬性組成物原料と水の分離を抑制可能で、得られた水硬性組成物の硬化強度を向上させることが可能である。
本発明の分散剤は、従来のリグニン系分散剤及びポリカルボン酸系分散剤との併用性にも極めて優れており、様々な分野で好適に利用可能である。例えば、コンクリート用分散剤に用いる場合、従来の分散剤と組み合わせて使用することで、幅広い水セメント比の領域で、より高い分散性を発揮し得る。
本発明の分散剤は、液状物であることが好ましい。液状物であると、被分散物質と容易に混合し、所望の分散性能を発揮しやすくなる。
[1−1.リグニン誘導体]
リグニン誘導体は、リグニンスルホン酸系化合物と芳香族系水溶性化合物との反応物である。リグニン誘導体は、通常、リグニンスルホン酸系化合物由来の構成単位と芳香族系水溶性化合物由来の構成単位とを含むポリマーである。
リグニン誘導体は、「条件(1):100℃での不揮発分が30%の溶液形態におけるB型粘度が30〜100mPa・sである」と、「条件(2):100℃での不揮発分が10%の溶液形態における表面張力が25〜55dyne/cmである」を満たす。
ここで、「100℃での不揮発分」とは、リグニン誘導体を100℃の送風乾燥機にて24時間乾燥することで得られる残留物をいう。また、「不揮発分が30%の溶液形態」、「不揮発分が10%の溶液形態」とは、それぞれ、リグニン誘導体の不揮発分の濃度が28〜32%の水溶液、リグニン誘導体の不揮発分の濃度が8〜12%の水溶液をいう。
B型粘度は、30〜100mPa・sであり、35〜90mPa・sが好ましく、40〜80mPa・sがより好ましい。B型粘度が斯かる数値範囲であると、被分散体に対し適度な粘性を付与することが可能であり、被分散体スラリーのワーカビリティーを向上できる。なお、B型粘度は、BL型粘度計(東機産業社)を用いて、20℃、60rpm、2号ローター使用の条件で測定した値である。
表面張力は、25〜55dyne/cmであり、27〜50dyne/cmが好ましく、29〜45dyne/cmがより好ましい。表面張力が斯かる数値範囲であると、被分散体に対する濡れ性を担持させ、被分散体スラリーの状態を良好にできる。なお、表面張力は、表面張力計(協和界面化学社製のCBVP−A3)により測定した値である。
条件(1)〜(2)は、リグニンスルホン酸系化合物と芳香族系水溶性化合物との反応条件を適宣設計することで調整し得る。より詳細には、反応開始剤の種類や量、反応液の濃度、リグニンスルホン酸系化合物と芳香族系水溶性化合物の比率、芳香族系水溶性化合物の側鎖官能基の種類や量、反応温度、反応時間等を適宣変更することで調整し得る。
リグニン誘導体は、その分子中にアニオン性官能基及び/又はポリアルキレンオキシド鎖を有することが好ましい。これにより得られる分散剤の分散性をより向上し得る。
アニオン性官能基とは、水中でアニオンの形態をとる官能基を意味し、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基(スルホン酸基)、リン酸基、フェノール性水酸基等が例示される。このうち、カルボキシル基、スルホ基が好ましい。
アニオン性官能基は、リグニン誘導体のうち、芳香族系水溶性化合物由来の構成単位に含まれていてもよいし、リグニンスルホン酸系化合物を構成する部分に含まれていてもよいし、両者に含まれていてもよい。
なお、リグニン誘導体中のアニオン性官能基は、NMR、IR等の機器分析により、定量・定性的に観測することができる。
リグニン誘導体は、その分子中にポリアルキレンオキシド鎖を有することが好ましい。ポリアルキレンオキシド鎖を構成するアルキレンオキシド単位の炭素原子数は特に限定されず、通常、2〜18であり、好ましくは2〜4であり、より好ましくは2〜3である。アルキレンオキシド単位としては例えば、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、ブチレンオキシド単位が挙げられる。中でも、エチレンオキシド単位又はプロピレンオキシド単位が好ましい。
アルキレンオキシド単位の平均付加モル数は、25以上が好ましく、30以上がより好ましく、35以上がさらに好ましい。これにより、分散性が良好となり得る。上限は、300以下が好ましく、200以下がより好ましく、150以下がさらに好ましい。これにより、分散保持性の低下が抑制され得る。従って、平均付加モル数は、好ましくは25〜300であり、より好ましくは30〜200であり、さらに好ましくは35〜150である。
ポリアルキレンオキシド鎖は、リグニン誘導体のうち、リグニンスルホン酸系化合物に由来する構成単位の一部に含まれていてもよいし、芳香族系水溶性化合物に由来する構成単位に含まれていてもよいし、両者に含まれていてもよく、後者に含まれることが好ましい。
なお、リグニン誘導体中のポリアルキレンオキシド鎖は、NMR、IR等の機器分析により、定量・定性的に観測することができる。
以下、リグニンスルホン酸系化合物、芳香族系水溶性化合物、他の芳香族系化合物、リグニン誘導体の調製、リグニン誘導体の物性の順に説明する。
[1−1−1.リグニンスルホン酸系化合物]
リグニンスルホン酸系化合物とは、リグニンのヒドロキシフェニルプロパン構造の側鎖α位の炭素が開裂してスルホ基が導入された骨格を有する化合物である。上記骨格部分の構造を式(1)に示す。
Figure 0006830083
リグニンスルホン酸系化合物は、上記式(1)で示される骨格を有する化合物の変性物(以下、「変性リグニンスルホン酸系化合物」ともいう)であってもよい。変性方法は特に限定されないが、加水分解、アルキル化、アルコキシル化、スルホン化、スルホン酸エステル化、スルホメチル化、アミノメチル化、脱スルホン化など化学的に変性する方法;リグニンスルホン酸系化合物を限外濾過により分子量分画する方法が例示される。このうち、化学的な変性方法としては、加水分解、アルコキシル化、脱スルホン化及びアルキル化から選ばれる1又は2以上の反応が好ましい。
リグニンスルホン酸系化合物は、塩の形態を取りうる。塩としては、例えば、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩が挙げられる。このうち、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カルシウム・ナトリウム混合塩などが好ましい。
リグニンスルホン酸系化合物の製造方法及び由来は特に限定されず、天然物や合成品などいずれをも用いることができる。リグニンスルホン酸系化合物は、酸性条件下で木材を蒸解して得られる亜硫酸パルプの廃液の主成分のひとつである。このため、亜硫酸パルプ廃液由来のリグニンスルホン酸系化合物を用いることもできる。
リグニンスルホン酸系化合物(変性リグニンスルホン酸系化合物)は、市販品に豊富に含まれているので、本発明においてはこのような市販品を用いてもよい。市販品としては、バニレックスHW(日本製紙社製)、サンエキスM(日本製紙社製)、パールレックスNP(日本製紙社製)、サンフローRH(日本製紙社製)などが例示される。
リグニンスルホン酸系化合物は、通常、芳香族系水溶性化合物と反応し得る官能基部位を少なくとも1つ有している。斯かる部位としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基(フェノール性水酸基、アルコール性水酸基)、チオール基、スルホ基、芳香環、エーテル結合、アルキル鎖などが挙げられる。
[1−1−2.芳香族系水溶性化合物]
芳香族系水溶性化合物とは、芳香族骨格を少なくとも1つ有し、水溶性を示す化合物を意味する。芳香族系水溶性化合物は、亜硫酸パルプ廃液、すなわち亜硫酸パルプ廃液の主成分と反応し得る化合物が好ましく、リグニンスルホン酸系化合物に含まれる官能基(例えば、フェノール性水酸基やアルコール性水酸基、カルボキシル基、チオール基)と化学反応により結合しうる化合物が好ましい。化学反応の形式も特に限定されず、ラジカル反応、イオン結合、配位結合、縮合反応、加水分解を伴う反応、脱水を伴う反応、酸化を伴う反応、還元を伴う反応、中和を伴う反応などが例示される。
芳香族系水溶性化合物は、極性基を少なくとも1つ有することが好ましい。これにより、リグニンスルホン酸系化合物に対し反応性が良好となる。極性基は、イオン性官能基であってもよい。極性基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホ基、ニトロキシル基、カルボニル基、リン酸基、アミノ基、エポキシ基などの官能基が挙げられる。芳香族系水溶性化合物は、1種単独でもよく、2種類以上の組み合わせでもよい。
芳香族系水溶性化合物としては、例えば、下記〔A〕〜〔C〕が挙げられる。芳香族系水溶性化合物は、〔A〕〜〔C〕から選ばれる少なくとも1つを用いることができ、〔A〕のみ、或いは〔A〕と〔B〕及び/又は〔C〕との組み合わせを用いることがより好ましい。
(〔A〕ポリアルキレンオキシド鎖を有する芳香族系水溶性化合物)
ポリアルキレンオキシド鎖(基)を構成するアルキレンオキシド単位の炭素原子数は特に限定されず、通常、2〜18であり、好ましくは2〜4であり、より好ましくは2〜3である。アルキレンオキシド単位としては、例えば、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、ブチレンオキシド単位が挙げられる。中でも、エチレンオキシド単位又はプロピレンオキシド単位が好ましい。
アルキレンオキシド単位の平均付加モル数は、25以上が好ましく、30以上がより好ましく、35以上がさらに好ましい。これにより、分散性が良好となり得る。上限は、300以下が好ましく、200以下がより好ましく、150以下がさらに好ましい。これにより、分散保持性の低下が抑制され得る。従って、平均付加モル数は、好ましくは25〜300であり、より好ましくは30〜200であり、さらに好ましくは35〜150である。なお、上述の平均付加モル数は目安であり、上述の範囲を満たすか否かに拘らず、〔A〕は、アルキレンオキシド単位が付加していないもの(モノアルキレンオキシド基)を有していてもよい。
ポリアルキレンオキシド鎖は、1種単独又は2種以上のアルキレンオキシド基から構成され得る。2種以上のアルキレンオキシド基から構成されるポリアルキレンオキシド鎖の、各アルキレンオキシド基の付加形態は、ランダム、ブロック及びこれらの混合のいずれでもよい。ポリアルキレンオキシド鎖の末端のユニットは、通常、ヒドロキシル基であるが、これに限定されず、リグニンスルホン酸系化合物との結合を妨げない限りにおいて、アルキルエーテル又はカルボン酸エステルであってもよい。
〔A〕としては、例えば、フェノール、クレゾール、ノニルフェノール、ナフトール、メチルナフトール、ブチルナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族化合物へのオキシアルキレン基付加物が挙げられる。より詳しくは、ポリアルキレンオキシドアルキルフェニルエーテル類、ポリアルキレンオキシドフェニルエーテル類、ポリアルキレンオキシドアルキルナフチルエーテル類、ポリアルキレンオキシドナフチルエーテル類が挙げられる。これらの中でも、共縮合性が良好となり得るので、ベンゼン環誘導体が好ましく、ポリアルキレンオキシドアルキルフェニルエーテル類及びポリアルキレンオキシドフェニルエーテル類の少なくともいずれかがより好ましく、ポリアルキレンオキシドフェニルエーテル類(中でも、フェノールへのオキシアルキレン基付加物)がさらに好ましい。〔A〕は、1種でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
(〔B〕カルボキシル基を有する芳香族系水溶性化合物)
〔B〕としては、例えば、少なくとも1つのカルボキシル基を有する、ナフタレン環又はベンゼン環誘導体が挙げられる。より詳しくは、イソフタル酸、オキシナフトエ酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、これらの異性体が挙げられる。反応性が良好であるため、o−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸が好ましい。〔B〕は、1種でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
(〔C〕スルホ基を有する芳香族系水溶性化合物)
〔C〕としては、例えば、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸、アニリンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸が挙げられる。より詳しくは、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、アニリンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、これらの異性体及び縮合物が挙げられる。縮合物としては例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。反応性が良好であるため、スルホ基を有するフェノール誘導体、アニリンスルホン酸が好ましく、フェノールスルホン酸、アニリンスルホン酸がより好ましい。〔C〕は、1種でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
芳香族系水溶性化合物としては、上記〔A〕〜〔C〕の他にも、〔D〕フェノール、クレゾール等の(アルキル)フェノールが挙げられる。〔D〕は、1種でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
[1−1−3.〔E〕他の芳香族系化合物(任意)]
リグニン誘導体の調製の際、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の芳香族系化合物を用いてもよい。〔E〕は、芳香族系水溶性化合物以外の芳香族系化合物であればよく、例えば、ベンゼン、ナフタレン等の単純芳香族炭化水素化合物が挙げられる。〔E〕は、1種でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
芳香族系水溶性化合物や他の芳香族系化合物の反応比率は特に規定されないが、〔A〕:〔B〕:〔C〕:(〔D〕+〔E〕)=50〜100重量%:0〜50重量%:0〜50重量%:0〜10重量%となる比率であることが好ましい。ただし、〔A〕+〔B〕+〔C〕+〔D〕+〔E〕=100重量%である。
[1−1−4.リグニン誘導体の調製]
リグニン誘導体の調製は、リグニンスルホン酸系化合物、芳香族系水溶性化合物、必要に応じて他の芳香族系化合物を反応させる方法であればよい。例えば、リグニンスルホン酸系化合物と芳香族系水溶性化合物とを化学的に結合する方法(リグニンスルホン酸系化合物中の官能基(例えば、フェノール性水酸基やアルコール性水酸基、カルボキシル基、チオール基)と、芳香族系水溶性化合物中の官能基とを結合させる方法、或いはリグニンスルホン酸系化合物の芳香族骨格部分と芳香族系水溶性化合物や他の芳香族系化合物を反応させる方法)が挙げられる。
リグニンスルホン酸系化合物と芳香族系水溶性化合物とを化学的に結合する方法としては、リグニンスルホン酸系化合物に芳香族系水溶性化合物を縮合(例えば、ホルムアルデヒド縮合)させる方法、ラジカル反応、イオン結合が例示される。より詳細には、リグニンスルホン酸系化合物にホルムアルデヒドを付加し、芳香族系水溶性化合物と結合させる方法;リグニンスルホン酸系化合物にラジカル開始剤を作用させるなどして水素ラジカルを引き抜き、発生させたラジカルと少なくとも1種類の芳香族系水溶性化合物をラジカル反応させる方法が挙げられる。
リグニン誘導体の調製の際の原料として使用されるリグニンスルホン酸系化合物は、粉末乾燥処理などの処理を経た粉末加工品を用いてもよい。粉末状であることにより取り扱いが容易となる。
リグニン誘導体を構成するリグニンスルホン酸系化合物〔L〕と芳香族系水溶性化合物〔M〕との反応重量比率(〔L〕/〔M〕)は、特には限定されないが、リグニンスルホン酸系化合物/芳香族系水溶性化合物(重量%)が、好ましくは99〜1/1〜99(重量%)であり、より好ましくは90〜2/10〜98(重量%)であり、さらに好ましくは70〜5/30〜95(重量%)である。芳香族系水溶性化合物〔M〕の比率が1.0重量%以上であることにより、得られるリグニン誘導体は、元来リグニン骨格が有する性能、すなわち分散性を向上させる効果を発現することができる。一方、芳香族系水溶性化合物〔M〕の比率が99重量%以下であることにより、分子量が適度な範囲となり、凝集性の発揮が抑制され、分散性能を発揮することができる。〔L〕/〔M〕は、(反応前のリグニンスルホン酸系化合物の固形分重量)/(反応前の芳香族系水溶性化合物の固形分重量)で定義され、後述の実施例でもこの方法で測定している。
芳香族系水溶性化合物の反応率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。該反応率が50%以上であることにより、得られるリグニン誘導体の分散性が良好に発揮され得る。芳香族系水溶性化合物の反応率は、以下のようにして測定でき、後述の実施例でもこの方法により測定している。ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)測定において、UV(検出波長280nm)を用いた場合の、反応前後のピーク面積を比較する。反応前のピーク面積を〔b〕、反応後のピーク面積を〔a〕とした場合に、反応率は、(〔b〕−〔a〕)/〔b〕で算出し得る。
反応温度は、用いる溶媒によって適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、通常、0〜200℃であり、好ましくは45〜150℃である。また、反応溶媒として、低沸点の化合物を用いる場合には、反応速度を向上させるために、オートクレーブを用いて加圧下で反応させることが好ましい。
リグニンスルホン酸系化合物に芳香族系水溶性化合物を反応させる際には、溶液反応及び塊状反応のいずれの反応形式もとりうる。
溶液反応の場合には、溶媒を用いてもよい。溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類が挙げられる。これらの中でも、水及び低級アルコールの少なくともいずれかを用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。これにより、原料単量体及び得られる共重合体の溶解性の面や、脱溶媒工程を省略できる。
なお、溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用(例えば、水−アルコール混合溶剤)してもよい。
リグニン誘導体の調製において、縮合粘度と縮合時間をコントロールするために水の添加調整を行ってもよい。また、反応中のpHを適当な数値となるように調整してもよい。反応は、通常、酸性条件下で行う。スルホ基を有する芳香族水溶性化合物やこれに含まれる未反応の酸により、反応系がすでに酸性条件下になっている場合、このままの酸性領域で縮合を行うことができる。また、反応系によって、酸性条件下ではない場合、予め塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒を加えてpH2以下にして反応を行うことができる。中でも、硫酸の使用が好ましい。但し、使用することのできる酸は、上記の酸に限定されない。
リグニン誘導体の調製時に、発泡が激しく適切な反応に支障をきたす場合は、適宜消泡剤を添加することにより、均一な反応系を構築することが可能である。
リグニン誘導体の調製においては、反応を安定に進行させることが好ましい。そのために、溶液反応で行う場合には、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を、好ましくは5ppm以下、より好ましくは0.01〜4ppm、さらに好ましくは0.01〜2ppm、さらにより好ましくは0.01〜1ppmの範囲に調節し得る。なお、溶存酸素濃度の調節は、反応槽で行ってもよく、予め溶存酸素濃度を調節したものを用いてもよい。
反応の進行は、粘度の明確な増大によって特徴付けられる。所望の粘度に達すれば、冷却又は塩基性化合物の添加によって反応を停止する。反応生成物及び触媒の中和は、通常用いられるアルカリ化合物、又は塩、特に水酸化物を使用して行う。中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムの使用が好ましい。
好ましい実施形態において、縮合反応終了後の反応溶液を、8.0〜13.0のpH条件下で60〜120℃の温度での熱による後処理に付す。この熱による後処理は、通常、10分〜3時間連続して行い、これによって反応溶液のアルデヒド含有量(例えば、ホルムアルデヒド含有量)を著しく低減させることが可能となる。上記のいわゆるカニッツァロ反応による遊離ホルムアルデヒドの除去に加えて、当然ながら、例えばメラミン−ホルムアルデヒド樹脂及びフェノール−ホルムアルデヒド樹脂の化学の分野で知られているような、過剰のホルムアルデヒドを低減させる他の既知の方法を行ってもよい。例えば、ホルムアルデヒド吸収剤として少量の亜硫酸水素ナトリウムを添加することや、過酸化水素の添加が挙げられる。
反応溶液のpHを1.0〜4.0、好ましくは1.5〜2.0に調整し、それにより反応生成物を固体として沈殿させて反応容器の底に沈降させることも可能である。次いで、上清の塩水溶液を分離除去する。そして、残存する大半が塩不含である遊離反応生成物を、所望の固体濃度が得られるような量の水にて再度溶解してリグニン誘導体を取得することができる。
上記反応後、水酸化カルシウム、Ba(OH)等の塩基性化合物を用いて中和反応を行ってもよい。これにより、可溶性の低い硫酸カルシウムや硫酸バリウムが遊離型の硫酸と共に形成されて、溶液から石膏等の形態で沈殿する。そのため、その後の濾過により沈殿物を分離除去し、塩不含のポリマーを得ることができる。さらに、透析又は限外濾過によって、望ましくない硫酸ナトリウムを分離除去することも可能である。
塩基性化合物の添加及び中和において、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、それらの水和物などの副生成物が生じる場合には、反応後の加温状態で塩基性化合物を添加し、加温状態を保つことでその副生成物の除去性を向上させることが好ましい。加温は、40℃以上で行うことが好ましく、加温状態の保持時間は30分以上が好ましい。
リグニン誘導体は、上述した反応により得られる反応生成物であればよく、遊離酸及びその中和塩のいずれでもよい。ポリマーの保存及び使用が容易であることから、中和塩が好ましい。反応生成物の中和塩としては、例えば、ナトリウム塩又はカリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;有機アミンの塩が挙げられる。
上記の得られたリグニン誘導体は、反応終了後、必要に応じて、濃度調整を行ってもよい。
なお、リグニン誘導体の化学構造を、一般式などで一律に特定することは困難である。その理由は、リグニン誘導体を構成するリグニンスルホン酸系化合物の骨格であるリグニンが非常に複雑な分子構造をしているためである。
[1−1−5.リグニン誘導体の物性]
リグニン誘導体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000であり、さらに好ましくは5,000〜100,000である。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にてポリエチレングリコール換算する公知の方法にて測定できる。
GPCの測定条件は、以下の条件である。
測定装置;東ソー製
使用カラム;Shodex Column OH−pak SB−806HQ、SB−804HQ、SB−802.5HQ
溶離液;0.05mM硝酸ナトリウム/アセトニトリル 8/2(v/v)
標準物質;ポリエチレングリコール(東ソー製又はGLサイエンス製)
検出器;示差屈折計(東ソー製)
[1−2.被分散体]
本発明の分散剤を使用して分散させる被分散体は、特に限定されるものではないが、種々の有機物質や無機物質が挙げられる。
有機物質としては、例えば以下のものが挙げられる。
ファストイエロー、ジスアゾイエロー、ジスアゾオレンジ、ナフトールレッド、銅フタロシアニン系顔料、リンモリブデンタングステン酸塩、タンニン酸塩、カタノール、タモールレーキ、イソインドリノンエローグリーニッシュ、イソインドリノンエローレディシュ、キナクリドン、ジオキサジンバイオレット、ペリノンオレンジ、ペリレンバーミリオン、ペリレンスカーレット、ペリレンレッド、ペリレンマルーンなどの有機顔料;
ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、フッ素樹脂などの合成樹脂;
ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛・ステアリン酸カルシウム複合体、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛などの金属石鹸など。
有機物質の平均粒子径は、一般的には100μm以下であり、好ましくは0.1〜50μmである。これらの有機物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機物質としては、例えば以下のものが挙げられる。
カオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、セリサイト、ベントナイトなどのケイ酸塩;
炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸鉛などの炭酸塩;
硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;
ストロンチウムクロメート、ピグメントイエローなどのクロム酸塩;
モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウムなどのモリブデン酸塩;
アルミナ、酸化アンチモン、酸化チタニウム、酸化コバルト、四酸化三鉄、三酸化二鉄、四酸化三鉛、一酸化鉛、酸化クロムグリーン、三酸化タングステン、酸化イットリウムなどの金属酸化物;
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、メタチタン酸などの金属水酸化物;
炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、炭化チタンなどの金属炭化物;
窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、チタン酸バリウム、サチンホワイト、カーボンブラック、グラファイト、クロムイエロー、硫化水銀、ウルトラマリン、パリスブルー、チタニウムイエロー、クロムバーミリオン、リトポン、アセト亜ヒ酸銅、ニッケル、銀、パラジウム、チタン酸ジルコン酸鉛など。
無機物質の平均粒子径は、一般的には100μm以下であり、好ましくは0.1〜50μmである。これらの無機物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、被分散体の形状としては、特に限定されるものではなく、粉体状、粒子状、顆粒状、繊維状、平板状などが挙げられる。
[1−3.分散媒]
本発明の分散剤を用いて被分散体(例えば、上記の有機物質及び/又は無機物質)を分散させる場合に用い得る分散媒としては、特に限定されず、例えば以下のものが挙げられる。
水;
灯油、軽油、ケロシンなどの燃料油類;
ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾールなどの芳香族炭化水素類;
エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコールなどのアルコール類;
酢酸エチル、ジオクチルフタレートなどのエステル類;
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、カルビトール、モノグライム、ジグライム、テトラグライム、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどのエーテル類;
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどのジオール類;
1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレン、クロロジフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素類;
メチルイソアミルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;
ターピネオール、流動パラフィン、ミネラルスピリット、N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドン、グリセリンなど。
上記の分散媒の中でも、水が好ましい。これらの分散媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[1−4.分散剤の使用方法]
本発明の分散剤を使用する方法は、特に限定されるものではない。例えば、本発明の分散剤を分散媒と混合してから被分散体を添加してもよく、本発明の分散剤を分散媒に被分散体と同時に又は逐次に添加してもよく、或いは、予め分散媒に被分散体を混合した後に本発明の分散剤を添加してもよい。
本発明の分散剤の使用量は、特に限定されるものではなく、被分散体の種類や量に応じて適宜調節すればよい。一例としては、被分散体100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
分散媒の使用量は、通常、被分散体100重量部に対して、20〜1,000重量である。
(リグニン誘導体の含有量)
本発明の分散剤における有効成分であるリグニン誘導体の含有量は、分散剤の全重量に対して、25〜100重量%が好ましく、50〜100重量%がより好ましい。本発明の分散剤は、その目的を損なわない程度に、本発明における有効成分であるリグニン誘導体以外に公知の他の添加剤を配合することができる。
[1−5.分散剤の用途]
本発明の分散剤は、前述した種々の用途に利用することができる。例えば、水硬性組成物用分散剤、油田掘削用泥水分散剤、染料分散剤、キレート剤、洗浄剤、凝集剤、増粘剤、コーティング剤、塗料、接着剤、吸水性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、水硬性組成物用分散剤、油田掘削用泥水分散剤、染料分散剤が好ましく、水硬性組成物用分散剤がより好適である。
[1−5−1.水硬性組成物用分散剤]
以下に、本発明の分散剤を水硬性組成物用分散剤として使用する場合について詳しく説明する。
(水硬性組成物用分散剤の使用方法)
水硬性組成物用分散剤としての使用形態は特に制限されない。例えば、水溶液の形態で使用してもよい。また、本発明の分散剤を水硬性組成物用分散剤として使用する場合、分散剤を予めセメント粉末やドライモルタルのような水を含まないセメント組成物に配合して、左官、床仕上げ、グラウトなどに用いるプレミックス製品としてもよいし、セメント組成物の混練時に配合してもよい。
(水硬性組成物用分散剤の被分散体)
本発明の分散剤を水硬性組成物用分散剤として使用する場合の被分散体としては、各種水硬性材料が例示される。水硬性材料は、セメントや石膏などのセメント組成物と、それ以外の水硬性材料とに分類されるが、そのいずれであってもよい。本発明の分散剤は、水硬性組成物用分散剤として、上記水硬性材料と水とともに水硬性組成物を構成し得る。水硬性組成物は、さらに必要に応じて、細骨材(砂など)や粗骨材(砕石など)を含み得る。水硬性材料としては、例えば、セメントペースト、モルタル、コンクリート、石膏、プラスターが挙げられる。
水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物(本発明の分散剤、セメント及び水を必須成分として含有する組成物)が最も一般的であり、本発明の好ましい実施形態の1つである。以下、水硬性組成物がセメントを含む場合(セメント分散剤)について説明する。
セメント組成物に使用され得るセメントは、特に限定されるものではないが、具体的には以下のもが挙げられる。
ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形);
各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);
白色ポルトランドセメント;
アルミナセメント;
超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);
グラウト用セメント;
油井セメント;
低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);
超高強度セメント;
セメント系固化材;
エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)など。
セメント組成物には、上記セメント以外の成分を添加してもよい。かかる成分としては以下のものが挙げられる。
微粉体(高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末など);
石膏(無水石膏、焼石膏、半水石膏、二水石膏、石膏プラスター、ドロマイトプラスター);
骨材(砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質などの耐火骨材など)など。
セメント組成物においては、その1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比(質量比)は特に限定されず、貧配合から富配合まで幅広く使用可能である。単位水量は、好ましくは100〜185kg/mであり、より好ましくは120〜175kg/mである。使用セメント量は、好ましくは200〜800kg/mであり、より好ましくは250〜800kg/mである。水/セメント比(重量比)は、好ましくは0.15〜0.7であり、より好ましくは0.25〜0.65である。
本発明の分散剤は、高減水率領域、すなわち、水/セメント比(重量比)の低い領域(例えば0.15〜0.5)のセメント組成物においても使用可能である。さらに、単位セメント量が多く、水/セメント比が小さい高強度コンクリートや、使用セメント量(単位セメント量)が少ない(例えば、約300kg/m以下の)貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
セメント組成物において、本発明の分散剤の配合量は、例えば、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリートなどに使用する場合、固形分換算で、セメントの質量に対して、好ましくは0.01〜10.0重量%であり、より好ましくは0.02〜7.0重量%であり、さらに好ましくは0.05〜5.0重量%である。このような配合量により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上などの各種の好ましい諸効果がもたらされる。本発明の分散剤の配合量が0.01重量%以上であると、分散性能を充分に発揮し得る。一方、本発明の分散剤の配合量が10.0重量%以内であると、分散性を向上させる効果が実質的に飽和して頭打ちとなり、経済性の面からも不利となることを抑制し得、さらに硬化遅延や強度低下など、モルタル及びコンクリートの諸性状に悪影響を与えることを防止し得る。
セメント組成物は、高減水率領域においても高い分散性と分散保持性能を有する。そして、低温時においても十分な初期分散性と粘性低減性とを発揮し、優れたワーカビリティを有する。従って、上記のセメント組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等として有効である。さらに、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材などの高い流動性が要求されるモルタルやコンクリートとしても有効である。
(他の有効成分)
本発明の分散剤をセメント分散剤として用いる場合には、その有効成分であるリグニン誘導体を含んでいればよく、さらに他のセメント分散剤の有効成分や他のコンクリート用添加剤の有効成分を含んでいてもよいし、また本発明の分散剤を他のセメント分散剤や他のコンクリート用添加剤と併用することも可能である。
他のセメント分散剤の有効成分や他のコンクリート用添加剤の有効成分としては、例えば、以下に列挙したものを使用することができる。
リグニンスルホン酸塩;
ポリオール誘導体;
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;
メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;
ポリスチレンスルホン酸塩;
アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物などのアミノスルホン酸系化合物(例えば、特開平1−113419号公報);
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物と(メタ)アクリル酸系化合物との共重合体及びその塩の少なくともいずれかである(a)成分と、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と無水マレイン酸との共重合体、その加水分解物、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくともいずれかである(b)成分と、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物とポリアルキレングリコール系化合物のマレイン酸エステルとの共重合体及びその塩の少なくともいずれかである(c)成分とからなる組成物(例えば、特開平7−267705号公報);
(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステルと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体からなる成分であるA成分と、特定のポリエチレングリコールポリプロピレングリコール系化合物からなる成分であるB成分と、特定の界面活性剤からなる成分であるC成分とからなる組成物(例えば、特許第2508113号公報参照);
(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル又はポリエチレン(プロピレン)グリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、及び、(メタ)アクリル酸(塩)のそれぞれからなる構成単位を含むビニル共重合体(例えば、特開昭62−216950号公報);
(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、及び(メタ)アクリル酸(塩)を水溶液重合させて得られる水溶性ビニル共重合体(例えば、特開平1−226757号公報参照);
(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)又はp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、及び(メタ)アクリル酸(塩)から得られる共重合体(例えば、特公平5−36377号公報参照);
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)とのそれぞれから形成される単量体単位を有する共重合体(例えば、特開平4−149056号公報参照);
(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステルに由来する構成単位、(メタ)アリルスルホン酸(塩)に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構成単位、アルカンジオールモノ(メタ)アクリレートやポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートに由来し、分子中にアミド基を有するα,β−不飽和単量体をラジカル重合して得られる重合体ブロックを含む構成単位で構成されたグラフト共重合体(例えば、特開平5−170501号公報参照);
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(塩)、及び(メタ)アリルスルホン酸(塩)又はp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)を水系ラジカル共重合して得られる水溶性ビニル共重合体(例えば、特開平6−191918号公報参照);
ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、マレイン酸系単量体、及びこれらの単量体と共重合可能な単量体を用いて得られる共重合体(例えば、特公昭58−38380号公報参照);
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及びこれらの単量体と共重合可能な単量体を用いて得られる共重合体を、アルカリ性物質で中和して得られる共重合体(例えば、特公昭59−18338号公報参照);
スルホン酸基を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル及び必要によりこれと共重合可能な単量体を用いて得られる重合体、又はこれをアルカリ性物質で中和して得られた重合体(例えば、特開昭62−119147号公報参照);
アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端にアルケニル基を有するポリアルキレンオキシド誘導体とのエステル化反応物(例えば、特開平6−271347号公報参照);
アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端にヒドロキシ基を有するポリアルキレンオキシド誘導体とのエステル化反応物(例えば、特開平6−298555号公報参照);
3−メチル−3−ブテン−1−オールなどの特定の不飽和アルコールにエチレンオキシドなどを付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、又はその塩などのポリカルボン酸(塩)(例えば、特開昭62−68806号公報参照)。
これらのセメント分散剤の有効成分や他のコンクリート用添加剤の有効成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、他のセメント分散剤及び他のコンクリート用添加剤としては、水溶性高分子、高分子エマルジョン、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、効果促進剤、消泡剤、AE剤、分離低減剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤その他の界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を用いてもよい。これらの添加剤の例としては、下記(1)〜(11)が挙げられる。
(1)水溶性高分子物質:
ポリアクリル酸又はその塩(例えばナトリウム塩)、ポリメタクリル酸又はその塩(例えばナトリウム塩)、ポリマレイン酸又はその塩(例えばナトリウム塩)、アクリル酸・マレイン酸共重合物又はその塩(例えばナトリウム塩)などの不飽和カルボン酸重合物;
メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの非イオン性セルロースエーテル類;
多糖類のアルキル化又はヒドロキシアルキル化誘導体(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)を骨格とする多糖誘導体であって、一部若しくは全部のヒドロキシ基の水素原子が、炭素原子数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として有するイオン性親水性置換基とで置換されてなる多糖誘導体;
酵母グルカン、キサンタンガム、β−1,3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナランなど)などの微生物醗酵によって製造される多糖類;
ポリアクリルアミド;
ポリビニルアルコール;
デンプン;
デンプンリン酸エステル;
アルギン酸ナトリウム;
ゼラチン;及び
分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物など。
(2)高分子エマルジョン:
(メタ)アクリル酸アルキルなどの各種ビニル単量体の共重合物など。
(3)オキシカルボン酸系化合物以外の硬化遅延剤:
単糖類(例えば、グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖)、二糖類、三糖類、オリゴ糖類(例えば、デキストリンの)、多糖類(例えば、デキストラン)、これらの少なくともいずれかを含む糖組成物(例えば、糖蜜)などの糖類;
ソルビトールなどの糖アルコール;
ケイフッ化マグネシウム;
リン酸及びその塩又はホウ酸エステル類;
アミノカルボン酸及びその塩;
アルカリ可溶タンパク質;
フミン酸;
タンニン酸;
フェノール;
グリセリンなどの多価アルコール;及び
ホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などのホスホン酸及びその誘導体類など。
(4)早強剤・促進剤:
塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウムなどの可溶性カルシウム塩;
塩化鉄、塩化マグネシウムなどの塩化物;
硫酸塩;
水酸化カリウム;
水酸化ナトリウム;
炭酸塩;
チオ硫酸塩;
ギ酸及びギ酸カルシウムなどのギ酸塩;
アルカノールアミン;
アルミナセメント;及び
カルシウムアルミネートシリケートなど。
(5)オキシアルキレン系以外の消泡剤:
燈油、流動パラフィンなどの鉱油系消泡剤;
動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物などの油脂系消泡剤;
オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物などの脂肪酸系消泡剤;
グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックスなどの脂肪酸エステル系消泡剤;
オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類などのアルコール系消泡剤;
アクリレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;
リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;
アルミニウムステアレート、カルシウムオレエートなどの金属石鹸系消泡剤;及び
ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサンなどのポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油などのシリコーン系消泡剤など。
(6)AE剤:
樹脂石鹸;
飽和又は不飽和脂肪酸;
ヒドロキシステアリン酸ナトリウム;
ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル、及びそれらの塩;
ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩;
蛋白質材料;
アルケニルスルホコハク酸;並びに
α−オレフィンスルホネートなど。
(7)その他界面活性剤:
オクタデシルアルコールやステアリルアルコールなどの、分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール;
アビエチルアルコールなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール;
ドデシルメルカプタンなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン;
ノニルフェノールなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール;
ドデシルアミンなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン;
ラウリン酸やステアリン酸などの分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;
アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有してもよい、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;
上記以外の各種アニオン性界面活性剤;
アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドなどの各種カチオン性界面活性剤;
各種ノニオン性界面活性剤;及び
各種両性界面活性剤など。
(8)防水剤:
脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックスなど。
(9)防錆剤:
亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛など。
(10)ひび割れ低減剤:
ポリオキシアルキルエーテルなど。
(11)膨張材:
エトリンガイト系、石炭系など。
本発明の分散剤は、上記の他のセメント分散剤や他のコンクリート用添加剤以外に、オキシカルボン酸系化合物を併用することができる。オキシカルボン酸系化合物を含有させることにより、高温の環境下においても、より高い分散保持性能を発揮することができる。
オキシカルボン酸系化合物としては、炭素原子数4〜10のオキシカルボン酸又はその塩が好ましく、例えば、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸や、これらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミンなどの無機塩又は有機塩が挙げられる。これらのオキシカルボン酸系化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのオキシカルボン酸系化合物のうち、グルコン酸又はその塩が好適である。貧配合コンクリートの場合には、分子中にスルホ基を有するスルホン酸系分散剤としてリグニンスルホン酸塩系の分散剤を使用し、オキシカルボン酸系化合物としてグルコン酸又はその塩を使用することが好ましい。
本発明の分散剤と、上記の他のセメント分散剤及び他のコンクリート用添加剤からなる他の添加剤から選ばれる1種又は2種以上の化合物とを併用する場合、本発明の分散剤と当該他の添加剤との配合比率(すなわち、固形分換算による本発明の分散剤/当該他の添加剤:重量比)は、好ましくは1〜99/99〜1であり、より好ましくは5〜95/95〜5であり、さらに好ましくは10〜90/90〜10であり、さらにより好ましくは20〜80/80〜20である。
また、本発明のリグニン誘導体(分散剤)とオキシカルボン酸系化合物とを併用する場合、本発明の分散剤とオキシカルボン酸系化合物との配合比率(すなわち、固形分換算における本発明の分散剤/オキシカルボン酸系化合物:重量比)は、好ましくは1〜99/99〜1であり、より好ましくは5〜95/95〜5であり、さらに好ましくは10〜90/90〜10であり、さらにより好ましくは20〜80/80〜20である。さらに、本発明の分散剤、上記他の添加剤及びオキシカルボン酸系化合物の3成分を併用する場合、本発明の分散剤、上記他の添加剤及びオキシカルボン酸系化合物の配合比率(すなわち、固形分換算による本発明の分散剤/他の添加剤/オキシカルボン酸系化合物:重量比)は、好ましくは1〜98/1〜98/1〜98であり、より好ましくは5〜90/5〜90/5〜90であり、さらに好ましくは10〜90/5〜85/5〜85であり、さらにより好ましくは20〜80/10〜70/10〜70である。
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。しかしながら、本発明はもとより下記実施例により制限されるものではなく、前・後記述の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、実施例中、特に断りの無い限り、「%」は重量%を示し、「部」は重量部を示す。また、物性値等の測定方法は、別途記載がない限り、上記に記載した測定方法である。
(実施例1:リグニン誘導体(1)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水236g、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:100)92g、p−ヒドロキシ安息香酸5g、アニリンスルホン酸11g、サンフローRH(リグニンスルホン酸塩、日本製紙社製)60g、37%ホルムアルデヒド水溶液13g、72%硫酸水溶液55g、及び消泡剤プロナール753(東邦化学社製)0.05gを仕込み、撹拌下で反応容器を105℃に昇温した。反応は、液温が105℃、10時間で完結した。反応終了後に、250g/L水酸化カルシウム水溶液93g及び31%水酸化ナトリウム水溶液24gを反応容器に添加し、さらに1時間撹拌した。これら混合物を濾過して中和で生じた石膏を除去することで、重量平均分子量45,300の共重合体を含むリグニン誘導体(1)の液状物を得た。
(実施例2:リグニン誘導体(2)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水229g、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:50)92g、サンフローRH(リグニンスルホン酸塩、日本製紙社製)60g、37%ホルムアルデヒド水溶液13g、72%硫酸水溶液55g、及び消泡剤プロナール753(東邦化学社製)0.05gを仕込み、撹拌下で反応容器を105℃に昇温した。反応は、液温が105℃、14時間で完結した。反応終了後、反応物温度を90℃に降温させ、250g/L水酸化カルシウム水溶液93g及び31%水酸化ナトリウム水溶液24gを反応容器に添加し、さらに1時間撹拌した。これら混合物を濾過して中和で生じた石膏を除去することで、重量平均分子量41,300の共重合体を含むリグニン誘導体(2)の液状物を得た。
(実施例3:リグニン誘導体(3)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水283g、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:25)92g、サンフローRH(リグニンスルホン酸塩、日本製紙社製)80g、37%ホルムアルデヒド水溶液12g、72%硫酸水溶液72g、及び消泡剤プロナール753(東邦化学社製)0.05gを仕込み、撹拌下で反応容器を105℃に昇温した。反応は、液温が105℃、10時間で完結した。反応液の冷却後に、250g/L水酸化カルシウム水溶液95g及び31%水酸化ナトリウム水溶液25gを反応容器に添加した。これら混合物を濾過して中和で生じた石膏を除去することで、重量平均分子量26,900の共重合体を含むリグニン誘導体(3)の液状物を得た。
(実施例4:リグニン誘導体(4)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水229g、ポリ(プロピレンオキシド)モノフェニルエーテル(PO付加モル数:130)92g、サンフローRH(リグニンスルホン酸塩、日本製紙社製)22g、p−ヒドロキシ安息香酸10g、37%ホルムアルデヒド水溶液13g、72%硫酸水溶液55g、及び消泡剤プロナール753(東邦化学社製)0.05gを仕込み、撹拌下で反応容器を105℃に昇温した。反応は、液温が105℃、14時間で完結した。反応終了後、反応物温度を90℃に降温させ、31%水酸化ナトリウム水溶液54gを反応容器に添加し、さらに1時間撹拌した。これら混合物を濾過して中和で生じた石膏を除去することで、重量平均分子量21,200の共重合体を含むリグニン誘導体(4)の液状物を得た。
(実施例5:リグニン誘導体(5)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水229g、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:50)92g、パールレックスNP(リグニンスルホン酸塩、日本製紙社製)60g、37%ホルムアルデヒド水溶液13g、72%硫酸水溶液55g、及び消泡剤プロナール753(東邦化学社製)0.05gを仕込み、撹拌下で反応容器を105℃に昇温した。反応は、液温が105℃、3時間で完結した。反応終了後に、250g/L水酸化カルシウム水溶液72g及び31%水酸化ナトリウム水溶液24gを反応容器に添加し、さらに1時間撹拌した。これら混合物を濾過して中和で生じた石膏を除去することで、重量平均分子量39,700の共重合体を含むリグニン誘導体(5)の液状物を得た。
(実施例6:リグニン誘導体(6)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水229g、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:50)82g、サンフローRH(リグニンスルホン酸塩、日本製紙社製)70g、37%ホルムアルデヒド水溶液13g、72%硫酸水溶液55g、及び消泡剤プロナール753(東邦化学社製)0.05gを仕込み、撹拌下で反応容器を加圧下120℃に昇温した。反応は、液温が120℃、2時間で完結した。反応終了後、反応物温度を50℃に降温させ、250g/L水酸化カルシウム水溶液93g及び31%水酸化ナトリウム水溶液24gを反応容器に添加し、さらに2時間撹拌した。これら混合物を濾過して中和で生じた石膏を除去することで、重量平均分子量34,400の共重合体を含むリグニン誘導体(6)の液状物を得た。
(実施例7:リグニン誘導体(7)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水229g、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:70)122g、バニレックスHW(リグニンスルホン酸塩、日本製紙社製)20g、p−ヒドロキシ安息香酸5g、37%ホルムアルデヒド水溶液13g、72%硫酸水溶液58g、及び消泡剤プロナール753(東邦化学社製)0.05gを仕込み、撹拌下で反応容器を105℃に昇温した。反応は、液温が105℃、14時間で完結した。反応終了後に、250g/L水酸化カルシウム水溶液62g及び31%水酸化ナトリウム水溶液39gを反応容器に添加し、さらに1時間撹拌した。これら混合物を濾過して中和で生じた石膏を除去することで、重量平均分子量16,800の共重合体を含むリグニン誘導体(7)の液状物を得た。
(実施例8:リグニン誘導体(8)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水192g、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:70)52g、サンフローRH(リグニンスルホン酸塩、日本製紙社製)35g、アニリンスルホン酸10g、37%ホルムアルデヒド水溶液11g、72%硫酸水溶液55g、及び消泡剤プロナール753(東邦化学社製)0.05gを仕込み、撹拌下で反応容器を105℃に昇温した。反応は、液温が105℃、14時間で完結した。反応終了後に、250g/L水酸化カルシウム水溶液90g及び31%水酸化ナトリウム水溶液24gを反応容器に添加し、さらに1時間撹拌した。これら混合物を濾過して中和で生じた石膏を除去することで、重量平均分子量29,900の共重合体を含むリグニン誘導体(8)の液状物を得た。
(実施例9:リグニン誘導体(9)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水229g、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:25)43g、ナフタレン10g、サンエキスM(リグニンスルホン酸塩、日本製紙社製)90g、37%ホルムアルデヒド水溶液21g、72%硫酸水溶液77g、及び消泡剤プロナール753(東邦化学社製)0.05gを仕込み、撹拌下で反応容器を105℃に昇温した。反応は、液温が105℃、8時間で完結した。反応終了後に、250g/L水酸化カルシウム水溶液52g及び31%水酸化ナトリウム水溶液34gを反応容器に添加し、さらに2時間撹拌した。これら混合物を濾過して中和で生じた石膏を除去することで、重量平均分子量18,300の共重合体を含むリグニン誘導体(9)の液状物を得た。
(実施例10:リグニン誘導体(10)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水229g、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:70)92g、サンフローRH(リグニンスルホン酸塩、日本製紙社製)57g、37%ホルムアルデヒド水溶液13g、72%硫酸水溶液55g、及び消泡剤プロナール753(東邦化学社製)0.05gを仕込み、撹拌下で反応容器を105℃に昇温した。重合反応は、液温が105℃、14時間で完結した。反応終了後、反応物温度を90℃に降温させ、250g/L水酸化カルシウム水溶液97g及び31%水酸化ナトリウム水溶液19gを反応容器に添加し、さらに30分間撹拌した。これら混合物を濾過して中和で生じた石膏を除去することで、重量平均分子量29,300の共重合体を含むリグニン誘導体(10)の液状物を得た。
(比較例1:リグニン系分散剤(a))
従来のリグニン系分散剤(a)として、サンフローRH(変性リグニンスルホン酸系化合物、日本製紙社製)を用いた。
(比較例2:リグニン誘導体(b)の製造)
特表2008−514402号公報の記載にしたがって、温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水98.7g、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3ブテニル)エーテル(エチレンオキシドの平均付加モル数50個)152.4g、アクリル酸0.3g及びクラフトリグニン(アルドリッチ社製、商品番号:37095−9)2.1gを仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した。液温が58℃に達した後、30%過酸化水素水溶液0.5gを水6.3gで希釈した水溶液を加え、直ちに、アクリル酸9.2gを水21.5gで希釈したモノマー水溶液と、L−アスコルビン酸0.2g及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.4gを混合した連鎖移動剤水溶液32.6gとを滴下開始した。モノマー水溶液は3時間、連鎖移動剤水溶液は3時間30分かけて滴下した。連鎖移動剤水溶液を滴下終了後、2時間引き続いて58℃に温度を維持し、重量平均分子量33,000の共重合体水溶液を含むリグニン誘導体(b)の液状物を得た。
(比較例3:芳香族系水溶性化合物ホモポリマー(c)の製造)
実施例1において、サンフローRHを使用しないこと以外はすべて同様の操作を行うことにより、重量平均分子量31,800の共重合体水溶液として芳香族系水溶性化合物ホモポリマー(c)を得た。芳香族系水溶性化合物の反応率は95%であった。
(比較例4:ナフタレンスルホン酸系分散剤(d))
ナフタレンスルホン酸系分散剤(d)として、サンフローPS(ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、日本製紙社製)を用いた。
(比較例5、6:ポリカルボン酸系分散剤(e)(f))
ポリカルボン酸系分散剤(e)として、市販のフローリックSF−500S(フローリック社製)、ポリカルボン酸系分散剤(f)として、市販のフローリックSF−500R(フローリック社製)を用いた。
(比較例7:リグニン誘導体(11)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水229g、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:50)92g、サンフローRH(リグニンスルホン酸塩、日本製紙社製)59g、37%ホルムアルデヒド水溶液13g、72%硫酸水溶液20g、及び消泡剤プロナール753(東邦化学社製)0.05gを仕込み、撹拌下で反応容器を105℃に昇温した。重合反応は、液温が105℃、6時間で完結した。反応終了後、反応物温度を90℃に降温させ、250g/L水酸化カルシウム水溶液35gおよび31%水酸化ナトリウム水溶液10gを反応容器に添加し、さらに30分間撹拌した。これら混合物を濾過して中和で生じた石膏を除去することで、重量平均分子量18,200の共重合体を含むリグニン誘導体(11)の液状物を得た。
(比較例8:リグニン誘導体(12)の製造)
温度計、撹拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水208g、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:50)126g、サンフローRH(リグニンスルホン酸塩、日本製紙社製)14g、37%ホルムアルデヒド水溶液10g、72%硫酸水溶液41g、及び消泡剤プロナール753(東邦化学社製)0.05gを仕込み、撹拌下で反応容器を105℃に昇温した。重合反応は、液温が105℃、14時間で完結した。反応終了後、反応物温度を90℃に降温させ、250g/L水酸化カルシウム水溶液97gおよび31%水酸化ナトリウム水溶液19gを反応容器に添加し、さらに30分間撹拌した。これら混合物を濾過して中和で生じた石膏を除去することで、重量平均分子量30,900の共重合体を含むリグニン誘導体(12)の水溶液を得た。
表1に、実施例1〜10で得られたリグニン誘導体(1)〜(10)、比較例1のリグニン系分散剤(a)、比較例2で得られたリグニン誘導体(b)、比較例3で得られた芳香族系水溶性化合物ホモポリマー(c)、比較例4のナフタレンスルホン酸系分散剤、比較例5、6のポリカルボン酸系分散剤、比較例7〜8で得られたリグニン誘導体(11)〜(12)について、用いた芳香族系水溶性化合物、リグニンスルホン酸系化合物〔L〕と芳香族系水溶性化合物〔M〕との反応重量比率(〔L〕/〔M〕)、芳香族系水溶性化合物の反応率(%)、100℃での不揮発分が30%の溶液形態におけるB型粘度(mPa・s)、100℃での不揮発分が10%の溶液形態における表面張力(dyne/cm)をそれぞれ示す。
なお、B型粘度と、表面張力の測定方法を下記に記す。
[粘度(mPa・s)]
対象サンプルの100℃での不揮発分が30%の溶液形態になるようにイオン交換水を添加し、調製した溶液100gを、B型粘度計(商品名「BL型粘度計」、東機産業社製)により、20℃、60rpm、2号ローターで測定した。
[表面張力(dyne/cm)]
対象サンプルの100℃での不揮発分が10%の溶液形態になるようにイオン交換水を添加し、調製した溶液100gを、表面張力計(商品名「CBVP−A3」、協和界面化学社製)により測定した。
Figure 0006830083
表1の脚注
PEOPH100:ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:100)
PEOPH50:ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:50)
PEOPH25:ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:25)
PEOPH70:ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(EO付加モル数:70)
PPOPH130:ポリ(プロピレンオキシド)モノフェニルエーテル(PO付加モル数:130)
PHB:p−ヒドロキシ安息香酸
ANS:アニリンスルホン酸
NAP:ナフタレン
(実施例11〜20及び比較例9〜16:セメント組成物試験)
実施例1〜10及び比較例1〜8のサンプルを添加したセメント組成物を下記手順により調製した。
環境温度(20℃)において、表2(W/C=45%)のように配合した粗骨材、細骨材、セメント、及び水、並びに表3に記載の量(固形分換算)の各サンプルを強制二軸ミキサに投入して、強制二軸ミキサによる機械練りにより90秒間練り混ぜることによりセメント組成物を得た(各サンプルは水に混合して投入した)。得られたセメント組成物について、以下の手順でスランプ試験、空気量測定、粘性評価を行った。
[スランプ試験、空気量測定]
セメント組成物が強制二軸ミキサから排出された直後に、以下のフレッシュセメント組成物について下記の試験を行った。試験結果を表3に示す。
スランプ試験:JIS A 1101(フレッシュセメント組成物の頂点からの落下距離をスランプ値として、広がりをフロー値として測定)に従った。
空気量測定試験:JIS A 1128に従った。
[セメント組成物粘性評価]
評価者5名による官能評価で、以下の基準により評価した。
<粘性の評価基準>
A:セメント組成物に適度な粘性が付与されており、ブリーディングはほとんど見られない。
B:セメント組成物に粘性が付与されているが、ブリーディングが見られる。
C:セメント組成物に粘性が付与されておらず、大きなブリーディングも見られる。
Figure 0006830083
表2の脚注
C:以下の3種を等量混合
普通ポルトランドセメント(宇部三菱セメント社製、比重3.16)
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、比重3.16)
普通ポルトランドセメント(トクヤマ製、比重3.16)
W:水道水
S1:掛川産山砂(細骨材、比重2.57)
S2:岩瀬産砕砂(細骨材、比重2.61)
G:青梅産砕石(粗骨材、比重2.65)
Figure 0006830083
表3の脚注
添加率(質量%):セメント組成物100質量%に対するセメント分散剤の固形分添加率
SL:スランプ値(cm)
表3から以下のことが明らかである。リグニン誘導体(1)〜(10)と、ポリカルボン酸系分散剤(e)を用いて得られたモルタルのフロー値を同一添加率どうしで比較すると、概ねスランプ値は同一であり、一部のリグニン誘導体はポリカルボン酸系分散剤(e)よりもスランプ値が高かった。また、比較のリグニン系分散剤(a)又はリグニン誘導体(b)と、リグニン誘導体(1)〜(10)とを比較した場合、後者が著しく高いスランプ値を示していた。このことから、リグニン誘導体を含有する本発明の分散剤は、高い分散性能を持つことがわかり、アルキレンオキサイドの付加モル数が25以上であることや芳香族系水溶性化合物の反応率が高いことにより高い分散性を発揮することが理解できる。
また、実施例12のリグニン誘導体(2)と、比較例15のリグニン誘導体(11)とを比較した場合、実施例12のスランプ値が明らかに高いことがわかる。リグニン誘導体(2)は、リグニンスルホン酸系化合物と芳香族性水溶性化合物の反応率が95%と高いが、他方リグニン誘導体(11)はその反応率が38%と低いことから、本発明におけるリグニン誘導体は、リグニンスルホン酸系化合物と芳香族性水溶性単量体が高い反応率で反応し、それによって得られるリグニン誘導体の粘度と表面張力が所定の範囲内に位置することで性能を発現することが明らかである。
さらに、リグニン誘導体(1)〜(10)は、従来のリグニン系分散剤(a)と比べて大幅に空気量が低くなっており、リグニン系分散剤の欠点である高い空気連行性を抑えることができていることが明らかである。
また、リグニン誘導体(1)〜(10)は、従来のリグニン系分散剤(a)のみでなく、ポリカルボン酸系減水剤(e)と比べても、大幅にコンクリート粘性を改善することが可能であり、コンクリートの状態面に置いても優位性があることがわかる。
(実施例21〜30、比較例17〜24:石膏組成物試験)
実施例1〜10及び比較例1〜8のサンプルについて、石膏組成物における分散性を比較した。表4に示す石膏の分散フロー及び硬化時間は、以下のようにして評価した。
[石膏の分散フロー(mm)]
表4に記載した固形分添加量(石膏組成物に対する重量%)の各サンプルを含む液状物110g(溶媒:水)と、睦化学社製石膏SK71.5gを混合し、アジテーターによって600rpmの回転数で20秒撹拌した。その後直ちに、スラリーをガラス板上のフロー測定用円柱管(内径40mm、高さ50mm)に流し込んだ後、円柱管を引き抜き、スラリーのフロー値を2か所測定し、その平均値を分散フローとした。
[石膏の硬化時間(min)]
ビガー針凝結時間測定装置を用い、JIS R 9112:2015(陶磁器型材用せっこうの物理試験方法)に準拠して測定した。硬化時間は、測定器の標準針が供試体表面から1mmの深さに止まるまでの時間を示す。
[石膏のB型粘度(mPa・s)]
上記分散フローと同様の試験条件で石膏組成物を作製し、撹拌直後の石膏の粘度を、B型粘度計(BL型、東機産業社)を用い、20℃、60rpm、2号ローターまたは3号ローター使用の条件で測定した。
Figure 0006830083
表4から明らかなように、各実施例のリグニン誘導体は、リグニン系分散剤(a)と比較して、分散フローが増加し、硬化時間が短く、B型粘度が減少していた。また既存のナフタレンスルホン酸系分散剤(d)と比較して、同等の分散フローを示し、硬化時間も同等な一方、B型粘度については減少していた。さらに、ポリカルボン酸系分散剤(e)〜(f)と比較して、分散フローには劣るが、硬化時間が短く、更にB型粘度も減少していた。比較例のリグニン誘導体(11)〜(12)と比較した場合、分散フローが増加し、硬化時間も短かった。
以上の結果から、各実施例のリグニン誘導体は、石膏組成物に対して少ない添加量で分散性を付与するのみでなく、硬化時間を短縮させ、更に石膏組成物の粘性も低減できることがわかる。この特性は、石膏組成物の生産効率の向上や、石膏の型枠への充填性の向上に寄与する。

Claims (8)

  1. リグニンスルホン酸系化合物と芳香族系水溶性化合物との反応物であり、下記条件(1)及び(2)を満たすリグニン誘導体を含有する分散剤。
    条件(1):100℃での不揮発分が30%の溶液形態におけるB型粘度が30〜100mPa・sである。
    条件(2):100℃での不揮発分が10%の溶液形態における表面張力が25〜55dyne/cmである。
  2. 前記リグニン誘導体が、アニオン性官能基を有する請求項1に記載の分散剤。
  3. 前記リグニン誘導体が、アルキレンオキサイド平均付加モル数25以上であるポリアルキレンオキシド鎖を有する請求項1又は2に記載の分散剤。
  4. 前記リグニン誘導体において、前記リグニンスルホン酸系化合物〔L〕と前記芳香族系水溶性化合物〔M〕との反応重量比率(〔L〕/〔M〕)が、1〜99/99〜1である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散剤。
  5. 前記芳香族系水溶性化合物が、ポリアルキレンオキシド鎖を有する芳香族系水溶性化合物、カルボキシル基を有する芳香族系水溶性化合物、及びスルホ基を有する芳香族系水溶性化合物からなる群より選ばれる1以上の化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分散剤。
  6. 液状物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の分散剤。
  7. 水硬性組成物用分散剤である請求項1〜6のいずれか1項に記載の分散剤。
  8. リグニンスルホン酸系化合物と芳香族系水溶性化合物を反応させる工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分散剤の製造方法。
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