以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下に記載する各寸法、形状、材質、各種の値などは、説明のための例示であって、記載されたものに限定されない。仕様に応じて、適宜変更可能である。また、各図面において、同一または類似の要素には同一の符号を付しており、重複する説明を省略している。
図1〜図3は、第1実施形態に係る非接触電力伝送システムS1を説明するための図である。図1は、非接触電力伝送システムS1の全体構成の概要を示している。図2は、非接触電力伝送システムS1の全体構成を示す回路図である。図3は、高周波電源装置1の内部構成の詳細を示す回路図である。
図1に示すように、非接触電力伝送システムS1は、電気自動車などの車体に備えられた受電装置Bと、駐車場などの床面に埋設された送電装置A1とを備えている。送電装置A1は床面に配置された送電コイルを備えており、受電装置Bは車体底面に配置された受電コイルを備えている。送電コイルと受電コイルとが磁気結合することで、受電装置Bは、送電装置A1から送電される高周波電力を受電する。すなわち、送電コイルに高周波電流が流れることで磁束が変化し、この磁束に鎖交する受電コイルに高周波電流が流れる。これにより、送電装置A1から受電装置Bに、非接触で電力を伝送することができる。受電装置Bは、高周波電流を整流平滑回路で整流して、蓄電デバイスDに供給する。
送電コイルおよび受電コイルは、渦巻状に巻回された平面コイルであり、それぞれコイル面が床面に対して略平行になるように配置されている。給電を行う場合は、図1に示すように、受電装置Bが送電装置A1の真上にきて、受電コイルが送電コイルに上方から見て重なり合うように、車体を配置する。図2は、受電コイルが送電コイルに磁気結合した状態を示している。
図2に示すように、送電装置A1は、高周波電源装置1、電流‐電圧変換回路51、および、送電ユニット2を備えている。
高周波電源装置1は、高周波電力を出力するものである。高周波電源装置1は、いわゆる定電流源であり、一定の大きさの高周波電流を出力する。図3に示すように、高周波電源装置1は、直流電源装置11、制御装置12、スイッチング素子Qs、ダイオードD1、インダクタL1,L2,L3、および、コンデンサC1,C2,C3,C4,C10を備えている。高周波電源装置1は、直流電源装置11が生成した直流電力を、スイッチング素子Qsのスイッチング動作によって高周波電力に変換する。
直流電源装置11は、直流電力を生成して出力するものである。直流電源装置11は、商用電源から入力される交流電圧(例えば、商用電圧200[V]など)を図示しない整流回路によって整流し、図示しない平滑回路によって平滑することで、直流電圧に変換する。そして、図示しないDC−DCコンバータによって、所定のレベル(目標電圧)の直流電圧に変換する。直流電源装置11は、制御装置12から入力される電圧制御信号CS1によって、DC−DCコンバータの変換動作を制御することにより、整流、平滑後の直流電圧を所定のレベルの直流電圧に変換する。なお、直流電源装置11の構成は限定されず、所定の直流電圧を出力するものであればよい。
スイッチング素子Qs、ダイオードD1、インダクタL1,L3、および、コンデンサC1,C3,C4,C10は、いわゆるE級アンプを構成する。E級アンプは、直流電源装置11より直流電力を入力され、高周波電力を生成して出力する。
コンデンサC10は、直流電源装置11に並列接続されており、直流電源装置11より入力される直流電圧を平滑化するものである。
インダクタL1は、直流電源装置11の高電位側の出力端子とスイッチング素子Qsとの間に直列接続されている。直流電源装置11が一定の直流電圧を出力することにより、インダクタL1は、スイッチング素子Qsに一定の直流電流を供給する。
スイッチング素子Qsは、制御装置12から入力される高周波制御信号CS2に応じて、オン状態とオフ状態とを切り替えるものである。本実施形態では、スイッチング素子QsとしてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を使用している。なお、スイッチング素子QsはMOSFETに限定されず、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor : 絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)などであってもよい。スイッチング素子Qsのドレイン端子は、インダクタL1の一方の端子(直流電源装置11の出力端子に接続されたのとは異なる方の端子)に接続されている。スイッチング素子Qsのソース端子は、直流電源装置11の低電位側の出力端子に接続されている。スイッチング素子Qsのゲート端子には、制御装置12から高周波制御信号CS2が入力される。高周波制御信号CS2は、所定の周波数f0(例えば、85[kHz]や13.56[MHz]など)でハイレベルとローレベルとを繰り返すパルス信号である。周波数f0は、スイッチング素子Qsをスイッチングさせる周波数なので、以下では「スイッチング周波数f0」と記載する場合がある。スイッチング素子Qsは、高周波制御信号CS2がローレベルのときオフ状態になり、高周波制御信号CS2がハイレベルのときオン状態になる。
ダイオードD1は、いわゆるフライホイールダイオードであって、スイッチング素子Qsのドレイン端子とソース端子との間に、逆並列に接続されている。すなわち、ダイオードD1のアノード端子はスイッチング素子Qsのソース端子に接続され、ダイオードD1のカソード端子はスイッチング素子Qsのドレイン端子に接続されている。ダイオードD1は、スイッチング素子Qsの切り替えによって発生する逆起電力による逆方向の高い電圧がスイッチング素子Qsに印加されないようにするためのものである。なお、スイッチング素子Qsが内部にダイオードの動作をする機能を有する場合は、ダイオードD1を設けないようにしてもよい。
コンデンサC1は、スイッチング素子Qsに並列接続されており、スイッチング素子Qsがオフ状態のときに電流が流れて、電気エネルギーを蓄積する。そして、コンデンサC1の両端電圧がピークになった後は放電を行い、電気エネルギーを放出する。そして、コンデンサC1の両端電圧がゼロになったタイミングで、スイッチング素子Qsがオフ状態からオン状態に切り替わる。
インダクタL3とコンデンサC3とは、直列接続されて共振回路LC3を構成している。インダクタL3およびコンデンサC3は、共振周波数がスイッチング周波数f0と一致するように設計される。共振回路LC3は、スイッチング素子Qsのドレイン端子とインダクタL1の一方の端子との接続点と電流‐電圧変換回路51との間に、直列接続されている。共振回路LC3の共振特性により、出力電流が、共振周波数(スイッチング周波数f0)の正弦波状になる。なお、当該共振回路LC3が、本発明の「第1の共振回路」に相当する。
コンデンサC4は、共振回路LC3の出力側に、直流電源装置11に対して並列となるように、接続されている。コンデンサC4、インダクタL3およびコンデンサC3は、インピーダンス整合回路として機能する。また、コンデンサC3は、高周波電源装置1から出力される高周波電流から直流成分をカットする。
以上の構成から、スイッチング素子Qs、ダイオードD1、インダクタL1,L3、および、コンデンサC1,C3,C4,C10を備えたE級アンプは、制御装置12より入力される高周波制御信号CS2に応じてスイッチング素子Qsがスイッチングすることで、スイッチング周波数f0の高周波電流を生成して出力する。
また、本実施形態においては、高周波電源装置1は、インダクタL2とコンデンサC2とが直列接続された共振回路LC2を、スイッチング素子Qsに並列接続させている。インダクタL2およびコンデンサC2は、共振周波数がスイッチング周波数f0の2倍の周波数と一致するように設計される。共振回路LC2は、スイッチング周波数f0の2倍の周波数成分(2次高調波成分)に対して、低インピーダンスとなり、スイッチング周波数f0の成分(基本波成分)およびその3倍の周波数成分(3次高調波成分)に対して、高インピーダンスとなる。なお、当該共振回路LC2が、本発明の「第2の共振回路」に相当する。
また、インダクタL1およびコンデンサC1からなるフィルタLC1も、共振回路LC2と合わせたインピーダンスが、スイッチング周波数f0の成分(基本波成分)およびその3倍の周波数成分(3次高調波成分)に対して、高インピーダンスとなり、スイッチング周波数f0の2倍の周波数成分(2次高調波成分)に対して、低インピーダンスとなるように設計される。なお、コンデンサC1のキャパシタンスは、スイッチング素子Qsの内部の容量成分も考慮して設計される。
以上の構成から、発生した高周波電流のうちの2次高調波成分は、共振回路LC2に流れ、スイッチング素子Qsのドレイン‐ソース間の2次高調波成分電流による発生電圧を抑制することができる。
制御装置12は、高周波電源装置1を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を備えるマイクロコンピュータやFPGA(Field-Programmable Gate Array)で構成される。
制御装置12は、フィードバック制御によって、直流電源装置11から出力される直流電圧のレベルを制御する。具体的には、制御装置12は、直流電源装置11の出力電圧と設定された目標電圧との偏差をゼロにするための制御パルス信号を生成する。そして、当該制御パルス信号を図示しないドライブ回路でDC−DCコンバータを駆動できるレベルに増幅して、電圧制御信号CS1として直流電源装置11に出力する。これにより、制御装置12は、直流電源装置11から出力される直流電圧を目標電圧に制御して、直流電源装置11から一定の直流電圧を出力させることができる。また、制御装置12は、目標電圧を変更することで、直流電源装置11の出力電圧のレベルを変更する。
また、制御装置12は、基準クロックに基づいて、スイッチング周波数f0のパルス信号(なお、正弦波信号などでもよい)を生成し、当該パルス信号を図示しないドライブ回路でスイッチング素子Qsを駆動できるレベルに増幅して、高周波制御信号CS2としてスイッチング素子Qsのゲート端子に出力する。
電流‐電圧変換回路51は、電流出力を電圧出力に変換するものである。電流‐電圧変換回路51は、インダクタL11と2つのコンデンサC11、C12とを、π型に配置したフィルタ回路である。インダクタL11は、高周波電源装置1と送電ユニット2との間の電力線対の一方の電力線上に設けられている。コンデンサC11はインダクタL11の上流側に、コンデンサC12はインダクタL11の下流側に、電力線対間に並列接続されている。スイッチング周波数f0におけるインダクタL11およびコンデンサC11,C12の各インピーダンスの大きさが等しくなるように、各インダクタンスおよびキャパシタンスを決定している。電流‐電圧変換回路51は、高周波電源装置1からの電流出力を電圧出力に変換して、送電ユニット2に出力する。
送電ユニット2は、送電コイルLtおよび共振コンデンサCtを備えている。送電コイルLtは、電流‐電圧変換回路51を介して高周波電源装置1より供給される高周波電力を、受電装置Bに送電するものである。共振コンデンサCtは、送電コイルLtに直列接続されて、直列共振回路を構成するためのものである。
送電コイルLtおよび共振コンデンサCtは、共振周波数が高周波電源装置1より供給される高周波電力の周波数f0(スイッチング周波数f0)と一致するように設計される。すなわち、送電コイルLtの自己インダクタンスLtと、共振コンデンサCtのキャパシタンスCtとが、下記(1)式の関係になるように設計される。なお、スイッチング周波数f0が高い場合は、送電コイルLtの巻線間の浮遊キャパシタンスを共振コンデンサCtとして用いるようにしてもよい。
また、図2に示すように、受電装置Bは、受電ユニット3および整流平滑回路4を備えている。
受電ユニット3は、受電コイルLr、および、共振コンデンサCrを備えている。受電コイルLrは、送電コイルLtと磁気結合して、非接触で受電するものである。共振コンデンサCrは、受電コイルLrに直列接続されて、直列共振回路を構成するためのものである。
受電コイルLrおよび共振コンデンサCrは、送電コイルLtおよび共振コンデンサCtと同様に、共振周波数が高周波電源装置1より供給される高周波電力の周波数f0(スイッチング周波数f0)と一致するように設計される。なお、スイッチング周波数f0が高い場合は、受電コイルLrの巻線間の浮遊キャパシタンスを共振コンデンサCrとして用いるようにしてもよい。
送電ユニット2および受電ユニット3は、いずれも共振回路であり、送電ユニット2から受電ユニット3へは、磁界共鳴方式により、非接触で電力伝送が行われる。受電ユニット3が受電した電力は、整流平滑回路4に出力される。
整流平滑回路4は、受電ユニット3より出力される高周波電流を整流して、直流電流に変換するものである。整流平滑回路4は、4つのダイオードをブリッジ接続した全波整流回路を備えている。また、整流平滑回路4は、整流後の出力を平滑するための平滑回路も備えている。なお、整流平滑回路4の構成は限定されず、高周波電流を直流電流に変換するものであればよい。整流平滑回路4から出力される直流電流は、蓄電デバイスDに供給される。
蓄電デバイスDは、例えばリチウムイオン電池などの二次電池である。蓄電デバイスDは、整流平滑回路4より出力される直流電力によって充電され、図示しないモータなどに電力を供給する。蓄電デバイスDには、蓄電デバイスDの充電状態に関係なく、一定大きさの電流が入力される。なお、二次電池の種類は限定されず、鉛蓄電池などであってもよい。また、蓄電デバイスDに代えて、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタを用いるようにしてもよい。
次に、蓄電デバイスDに供給される電流が一定になること、蓄電デバイスDに供給される電流が高周波電源装置1の出力電流と比べて大きい電流になることを説明する。
まず、比較のために、図4に示す非接触電力伝送システムS’において、蓄電デバイスDに供給される電流が一定になること、蓄電デバイスDに供給される電流が高周波電源装置1の出力電流と比べて小さい電流になることを説明する。非接触電力伝送システムS’は、高周波電源装置1を定電流源とし、送電ユニット2が直列共振回路を構成し、受電ユニット3’が並列共振回路を構成し、磁界共鳴方式で非接触電力伝送を行うことにより、受電ユニット3からの出力電流を一定の大きさとして、蓄電デバイスDを定電流充電する。非接触電力伝送システムS’は、送電装置A’が電流‐電圧変換回路51を備えていない点、および、受電装置B’の受電ユニット3’が並列共振回路を構成する点以外は、非接触電力伝送システムS1と同じ構成である。
図5(a)は、図4に示す非接触電力伝送システムS’の主要部分を抜き出したものである。
高周波電源装置1の出力電圧をV1、出力電流をI1とする。また、整流平滑回路4に印加される電圧をV2、整流平滑回路4に入力される電流をI2とする。なお、各電圧V1,V2および各電流I1,I2は、いずれもベクトルである。
一般的に、非接触電力伝送システムの等価回路は、磁気結合した送電コイルと受電コイルとを、3つのコイルで構成されたT型回路に置き換えて表すことができる。図5(a)に示す回路を、T型回路を用いて表した等価回路に変換すると、図5(b)に示す回路になる。図5(b)においては、図に示すように、コンデンサまたはコイルのインピーダンスをZ1〜Z4として表している。なお、各インピーダンスZ1〜Z4は、いずれもベクトルである。T型回路のコイルのうちの送電ユニット側のコイル(インピーダンスZ1に含まれるコイル)のインダクタンスは、送電コイルLtの自己インダクタンスから、送電コイルLtと受電コイルLrとの間の磁気結合による相互インダクタンスを減じたものとなる。T型回路のコイルのうちの受電ユニット側のコイル(インピーダンスZ3に含まれるコイル)のインダクタンスは、受電コイルLrの自己インダクタンスから、送電コイルLtと受電コイルLrとの間の磁気結合による相互インダクタンスを減じたものとなる。また、T型回路のコイルのうちの並列接続されたコイル(インピーダンスZ2に含まれるコイル)のインダクタンスは、送電コイルLtと受電コイルLrとの間の磁気結合による相互インダクタンスとなる。したがって、各インピーダンスZ1〜Z4は、下記(2)〜(5)式で表すことができる。なお、送電コイルLtおよび受電コイルLrの自己インダクタンスを、それぞれ、LtおよびLrとし、共振コンデンサCtおよび共振コンデンサCrのキャパシタンスを、それぞれ、CtおよびCrとしている。また、送電コイルLtと受電コイルLrの結合係数をkとし、周波数f0に対応する角周波数をω0(=2πf0)としている。
図5(c)は、図5(b)に示す回路を、Fパラメータを用いて表した等価回路を示す図である。なお、Fパラメータの各要素A,B,C,Dは、いずれもベクトルであり、Fパラメータは、下記(6)式のようになる。
磁界共鳴の条件式であるZ1+Z2=Z2+Z3+Z4=0を、上記(6)式に代入すると、下記(7)式になる。これより、下記(8)式および上記(3),(4)式から、下記(9)式が求められる。
送電コイルLtと受電コイルLrの距離が変化しなければ、結合係数kは変化しない。したがって、上記(9)式より、受電ユニット3から出力される電流I2の大きさは、送電ユニット2に入力される電流I1の大きさに比例する。また、送電ユニット2に入力される電流I1は、高周波電源装置1の出力電流I1である。直流電源装置11が出力する直流電圧が一定の場合、高周波電源装置1の出力電流I1の大きさは一定である。したがって、直流電源装置11が出力する直流電圧が一定の場合、受電ユニット3の出力電流I2の大きさは、接続される負荷のインピーダンスなどに関係なく、一定である。つまり、受電ユニット3の出力は、一定の大きさの電流I2を出力する定電流源と考えることができる。受電ユニット3の出力電流I2の大きさが一定なので、整流平滑回路4によって整流された電流は一定になる。したがって、蓄電デバイスDに供給される電流は、蓄電デバイスDの充電状態に関係なくほぼ一定になる。
また、送電コイルLtと受電コイルLrとが同様の仕様の場合、それぞれの自己インダクタンスLt,Lrはほぼ等しくなり、Lt/Lr≒1となる。結合係数k<1なので、上記(9)式より、電流I2の大きさは電流I1の大きさより小さくなる。また、結合係数kが小さいほど、電流I2の大きさは小さくなる。
図6は、図4に示す回路において、シミュレーションを行ったときの各波形を示している。直流電源装置11が出力する直流電圧を40[V]、高周波制御信号CS2を、周波数f=13.56[MHz]の矩形波信号とし、送電コイルLtと受電コイルLrの結合係数をk=0.2,0.4とし、整流平滑回路4のコンデンサのキャパシタンスを1[μF]、100[μF]として、シミュレーションを行った。自己インダクタンスLt,Lrはともに0.6[μH]とし、キャパシタンスCt,Crはともに230[pF]としている。図6(a)は、スイッチング素子Qsのドレイン‐ソース間電圧Vdsの波形を示しており、図6(b)は、高周波電源装置1の出力電流I1の波形を示している。また、図6(c)は、受電ユニット3の出力電流I2の波形を示しており、図6(d)は、整流平滑回路4のコンデンサを流れる電流ILOADの波形を示している。図6(c)、(d)において、振幅の大きい方が、結合係数をk=0.4としたときのものである。整流平滑回路4のコンデンサのキャパシタンスが1[μF]の場合と100[μF]の場合とで、各波形に大きな変化はなかったので、図6(a)〜(d)においては重なって表示されている。
図6(b)に示されているように、電流I1の振幅が約1[A]であるところ、図6(c)に示されているように、電流I2の振幅は、k=0.4の場合に約0.4[A]となり、k=0.2の場合に約0.2[A]となっている。つまり、電流I2の大きさが電流I1の大きさより小さくなり、結合係数kが小さいほど、電流I2の大きさが小さくなることが確認できた。
次に、図2に示す非接触電力伝送システムS1において、蓄電デバイスDに供給される電流が一定になること、蓄電デバイスDに供給される電流が高周波電源装置1の出力電流と比べて大きい電流になることを説明する。
図7(a)は、図2に示す非接触電力伝送システムS1の主要部分を抜き出したものである。
高周波電源装置1の出力電圧をV1、出力電流をI1とする。また、電流‐電圧変換回路51の出力電圧をV2、出力電流をI2とする。また、受電ユニット3の出力電圧をV3、出力電流をI3とする。つまり、整流平滑回路4に印加される電圧がV3、整流平滑回路4に入力される電流がI3となる。なお、各電圧V1,V2,V3および各電流I1,I2,I3は、いずれもベクトルである。
図7(b)は、電流‐電圧変換回路51の回路を示している。図7(b)においては、図に示すように、コンデンサまたはコイルのインピーダンスをZ1〜Z3として表している。なお、各インピーダンスZ1〜Z3は、いずれもベクトルである。図7(b)に示す回路をFパラメータを用いて表した場合、Fパラメータは、下記(10)式のようになる。なお、Fパラメータの各要素A,B,C,Dは、いずれもベクトルである。
高周波電源装置1より供給される高周波電力の周波数f0(スイッチング周波数f0)におけるインダクタL11およびコンデンサC11,C12の各インピーダンスの大きさが等しくなるように、インダクタンスや各キャパシタンスを決定している。インダクタL11およびコンデンサC11,C12の各インピーダンスを特性インピーダンスZ0とし、周波数f0に対応する角周波数をω0(=2πf0)とすると、各インピーダンスZ1〜Z3は、下記(11)、(12)式で表すことができる。
上記(11)、(12)式を、上記(10)式に代入すると、下記(13)式になる。これより、下記(14)式が求められる。
図7(c)は、送電ユニット2および受電ユニット3の等価回路を示しており、磁気結合した送電コイルLtと受電コイルLrとを、3つのコイルで構成されたT型回路に置き換えて表したものである。図7(c)においては、図に示すように、コンデンサまたはコイルのインピーダンスをZ4〜Z6として表している。なお、各インピーダンスZ4〜Z6は、いずれもベクトルであり、下記(15)〜(17)式で表すことができる。なお、送電コイルLtおよび受電コイルLrのインダクタンスを、それぞれ、LtおよびLrとし、共振コンデンサCtおよび共振コンデンサCrのキャパシタンスを、それぞれ、CtおよびCrとしている。また、送電コイルLtと受電コイルLrの結合係数をkとし、周波数f0に対応する角周波数をω0(=2πf0)としている。
図7(c)に示す回路をFパラメータを用いて表した場合、Fパラメータは、下記(18)式のようになる。なお、Fパラメータの各要素A,B,C,Dは、いずれもベクトルである。
磁界共鳴の条件式であるZ4+Z5=Z5+Z6=0を、上記(18)式に代入すると、下記(19)式になる。これより、上記(16)式を用いて、下記(20)式が求められる。
上記(14)、(20)式より下記(21)式となり、下記(22)式が求められる。
送電コイルLtと受電コイルLrの距離が変化しなければ、結合係数kは変化しない。したがって、上記(22)式より、受電ユニット3から出力される電流I3の大きさは、高周波電源装置1の出力電流I1の大きさに比例する。また、直流電源装置11が出力する直流電圧が一定の場合、高周波電源装置1の出力電流I1の大きさは一定なので、受電ユニット3の出力電流I3の大きさは、接続される負荷のインピーダンスなどに関係なく、一定である。つまり、受電ユニット3の出力は、一定の大きさの電流I3を出力する定電流源と考えることができる。受電ユニット3の出力電流I3の大きさが一定なので、整流平滑回路4によって整流された電流は一定になる。したがって、蓄電デバイスDに供給される電流は、蓄電デバイスDの充電状態に関係なくほぼ一定になる。
送電コイルLtと受電コイルLrとの間の磁気結合による相互インダクタンスMのインピーダンスZM(=jω0M)は、下記(23)式になるので、上記(22)式より下記(24)式となる。したがって、ZM<Z0とすることで、電流I3の大きさを電流I1の大きさより大きくすることができる。
図8は、図2に示す回路において、シミュレーションを行ったときの各波形を示している。直流電源装置11が出力する直流電圧を40[V]、高周波制御信号CS2を、周波数f=13.56[MHz]の矩形波信号とし、送電コイルLtと受電コイルLrの結合係数をk=0.2,0.4とし、整流平滑回路4のコンデンサのキャパシタンスを1[μF]、100[μF]として、シミュレーションを行った。自己インダクタンスLt,Lrはともに0.6[μH]とし、キャパシタンスCt,Crはともに230[pF]としている。図8(a)は、スイッチング素子Qsのドレイン‐ソース間電圧Vdsの波形を示しており、図8(b)は、高周波電源装置1の出力電流I1の波形を示している。また、図8(c)は、受電ユニット3の出力電流I3の波形を示しており、図8(d)は、整流平滑回路4のコンデンサを流れる電流ILOADの波形を示している。図8(c)、(d)において、振幅の大きい方が、結合係数をk=0.2としたときのものである。図8(a)〜(d)において、整流平滑回路4のコンデンサのキャパシタンスが1[μF]の場合と100[μF]の場合とで、位相に若干のずれがあるが、同様の波形になっている。
図8(b)に示されているように、電流I1の振幅が約1.2[A]であるところ、図8(c)に示されているように、電流I3の振幅は、k=0.4の場合に約2.5[A]となり、k=0.2の場合に約5[A]となっている。つまり、電流I3の大きさが電流I1の大きさより大きくなり、結合係数kが小さいほど、電流I2の大きさが大きくなることが確認できた。
次に、第1実施形態に係る非接触電力伝送システムS1の作用効果について説明する。
本実施形態によると、高周波電源装置1が出力する一定の高周波電流は、電流‐電圧変換回路51によって、一定の高周波電圧に変換される。そして、送電ユニット2および受電ユニット3は、ともに直列共振回路であり、磁界共鳴方式で電力伝送を行う。したがって、受電ユニット3の出力が定電流源の出力と等価になる。よって、蓄電デバイスDの充電状態に関係なく、蓄電デバイスDに出力される電流はほぼ一定になる。つまり、蓄電デバイスDを、定電流で充電することができる。また、高周波電源装置1の出力電流I1と受電ユニット3の出力電流I3とは、上記(24)式の関係になる。したがって、相互インダクタンスM(インピーダンスZM)を調整することで、出力電流I3を出力電流I1より大きくすることができる。
また、本実施形態によると、高周波電源装置1は、1つのスイッチング素子Qsに高周波制御信号CS2を入力することで、一定の大きさの高周波電流を出力することができる。スイッチング素子が1つのため、ドライブ回路を単純な構成とすることができる。また、高周波電源装置1のスイッチング素子Qsには、インダクタL2とコンデンサC2からなる共振回路LC2が並列接続されている。当該共振回路LC2は、スイッチング周波数f0の2倍の周波数成分(2次高調波成分)に対して、低インピーダンスとなり、スイッチング周波数f0の成分(基本波成分)およびその3倍の周波数成分(3次高調波成分)に対して、高インピーダンスとなる。したがって、高周波電源装置1で発生した高周波電流のうちの2次高調波成分は、共振回路LC2に流れ、スイッチング素子Qsのドレイン‐ソース間の2次高調波成分電流による発生電圧を抑制することができる。よって、スイッチング素子Qsを高耐圧のものにする必要がない。
上記第1実施形態においては、電流‐電圧変換回路51を、インダクタL11と2つのコンデンサC11,C12とをπ型に配置したフィルタ回路とした場合について説明したが、電流‐電圧変換回路51の回路構成は、上述したものに限定されない。例えば、2つのインダクタと1つのコンデンサとをπ型に配置したフィルタ回路(図9(a)参照)としてもよいし、1つのインダクタと2つのコンデンサとをT型に配置したフィルタ回路(図9(b)参照)としてもよいし、2つのインダクタと1つのコンデンサとをT型に配置したフィルタ回路(図9(c)参照)としてもよい。
また、電流‐電圧変換回路51は、インダクタとコンデンサを組み合わせたフィルタ回路に限定されない。電流‐電圧変換回路51は、高周波電源装置1からの電流出力を電圧出力に変換するものであればよい。
図10(a)は、第2実施形態に係る非接触電力伝送システムS2の構成を示す回路図である。なお、受電装置Bの構成は第1実施形態に係る受電装置Bと同様なので、送電装置A2のみを記載している。非接触電力伝送システムS2は、電流‐電圧変換回路52の構成が、第1実施形態に係る非接触電力伝送システムS1の電流‐電圧変換回路51と異なっている。
電流‐電圧変換回路52は、電流出力を電圧出力に変換するものである。電流‐電圧変換回路52は、伝送線路TLを備えている。伝送線路TLは、高周波電源装置1と送電ユニット2との間に直列接続されている。本実施形態においては、伝送線路TLを同軸ケーブルとしている。なお、伝送線路TLは、同軸ケーブルに限定されず、例えば、同軸管、基板上に形成された線路などであってもよい。
伝送線路TLの長さは、高周波電源装置1が出力する高周波の基本波の、伝送線路TLにおける伝送波長の略4分の1としている。高周波電源装置1が出力する高周波の波長λは、周波数をfとして、伝送線路TL内の電波の速度をνとすると、λ[m]=ν[m/s]/f[Hz]で表わされる。同軸ケーブル(ポリエチレン製)上の電波の速度νは、真空中の電波の速度(3.0×108[m/s])の約66%程度なので、例えば、スイッチング周波数f0=13.56[MHz]とすると、高周波電源装置1が出力する高周波の波長λは、λ=(3.0×108)×(66/100)/(13.56×106)≒14.60[m]となる。伝送線路TLの長さは、この波長λの略1/4であるので、14.60×(1/4)≒3.65[m]となる。なお、上記同軸ケーブル上の電波の速度νを、真空中の電波の速度の約66%としたが、同軸ケーブル上の電波の速度は、用いる同軸ケーブルの波長短縮率(詳細には同軸ケーブルの絶縁材料)により異なる。したがって、伝送線路TLの長さは、用いる同軸ケーブルの種類に応じて、適宜変更すればよい。また、上記算出式から分かるように、高周波電源装置1が出力する高周波の周波数が低ければ低いほど、波長λは長くなる。したがって、周波数が低い場合、長い伝送線路TLを用いる必要があり、当該伝送線路TLを送電装置A2の筺体に収容するために、送電装置A2の大きさを大きくしなければならない。よって、高周波電源装置1が出力する高周波の周波数は、6.78MHz以上であることが望ましい。
図10(b)は、図10(a)に示す非接触電力伝送システムS2の主要部分を抜き出したものである。
高周波電源装置1の出力電圧をV1、出力電流をI1とする。また、電流‐電圧変換回路52の出力電圧をV2、出力電流をI2とする。また、受電ユニット3の出力電圧をV3、出力電流をI3とする。つまり、整流平滑回路4に印加される電圧がV3、整流平滑回路4に入力される電流がI3となる。なお、各電圧V1,V2,V3および各電流I1,I2,I3は、いずれもベクトルである。
電流‐電圧変換回路52の回路をFパラメータを用いて表した場合、Fパラメータは、下記(25)式のようになる。なお、Fパラメータの各要素A,B,C,Dは、いずれもベクトルである。Z0は伝送線路TLの特性インピーダンスであり、βは位相定数(2π/λ)であり(λは伝送線路TLにおける伝送波長)、lは線路長である。伝送線路TLの線路長lは、伝送波長λの4分の1なので、β・l=π/2となる。したがって、Fパラメータは、下記(26)式のようになる。これより、下記(27)式が求められる。
つまり、電流‐電圧変換回路52の回路をFパラメータを用いて表した場合、電流‐電圧変換回路51の回路をFパラメータを用いて表した場合と同じになる(上記(13),(14)式参照)。また、送電ユニット2および受電ユニット3は第1実施形態と共通しているので、送電ユニット2および受電ユニット3の等価回路は、図7(c)と同様であり、上記(20)式が求められる。したがって、非接触電力伝送システムS2の場合も、非接触電力伝送システムS1の場合と同様に、上記(22)式が求められる。
上記(22)式より、受電ユニット3から出力される電流I3の大きさは、高周波電源装置1の出力電流I1の大きさに比例する。また、直流電源装置11が出力する直流電圧が一定の場合、高周波電源装置1の出力電流I1の大きさは一定なので、受電ユニット3の出力電流I3の大きさは、接続される負荷のインピーダンスなどに関係なく、一定である。つまり、受電ユニット3の出力は、一定の大きさの電流I3を出力する定電流源と考えることができる。受電ユニット3の出力電流I3の大きさが一定なので、整流平滑回路4によって整流された電流は一定になる。したがって、蓄電デバイスDに供給される電流は、蓄電デバイスDの充電状態に関係なくほぼ一定になる。
また、非接触電力伝送システムS2の場合も、非接触電力伝送システムS1の場合と同様に、上記(24)式が求められる。したがって、ZM<Z0とすることで、電流I3の大きさを電流I1の大きさより大きくすることができる。
図11は、図10(a)に示す回路において、シミュレーションを行ったときの各波形を示している。なお、図10(a)においては、蓄電デバイスDおよび受電装置Bの記載は省略されている。当該シミュレーションの各条件は、図8に示すシミュレーションと同様である。つまり、直流電源装置11が出力する直流電圧を40[V]、高周波制御信号CS2を、周波数f=13.56[MHz]の矩形波信号とし、送電コイルLtと受電コイルLrの結合係数をk=0.2,0.4とし、整流平滑回路4のコンデンサのキャパシタンスを1[μF]、100[μF]としている。また、自己インダクタンスLt,Lrはともに0.6[μH]とし、キャパシタンスCt,Crはともに230[pF]としている。また、本シミュレーションでは、伝送線路TLの特性インピーダンスZ0=50[Ω]としている。なお、伝送線路TLの線路長は、伝送波長λの4分の1(0.25λ)である。図11(a)は、スイッチング素子Qsのドレイン‐ソース間電圧Vdsの波形を示しており、図11(b)は、高周波電源装置1の出力電流I1の波形を示している。また、図11(c)は、受電ユニット3の出力電流I3の波形を示しており、図11(d)は、整流平滑回路4のコンデンサを流れる電流ILOADの波形を示している。図11(c)、(d)において、振幅の大きい方が、結合係数をk=0.2としたときのものである。図11(a)〜(d)において、整流平滑回路4のコンデンサのキャパシタンスが1[μF]の場合と100[μF]の場合とで、位相に若干のずれがあるが、同様の波形になっている。
図11(b)に示されているように、電流I1の振幅が約1.2[A]であるところ、図11(c)に示されているように、電流I3の振幅は、k=0.4の場合に約2.5[A]となり、k=0.2の場合に約5[A]となっている。つまり、電流I3の大きさが電流I1の大きさより大きくなり、結合係数kが小さいほど、電流I2の大きさが大きくなることが確認できた。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態の場合、所定の長さの同軸ケーブルなどの伝送線路TLで、高周波電源装置1と送電ユニット2とを接続すればよいので、インダクタとコンデンサとを組み合わせたフィルタ回路を必要としない。
ただし、第2実施形態の場合、伝送線路TLの長さが限定されるので、不必要に長い伝送線路TLを用いる必要がある。以下では、伝送線路TLを所望の長さとする場合を、第3および第4実施形態として説明する。
図12は、第3実施形態に係る非接触電力伝送システムS3の構成を示す回路図である。なお、受電装置Bの構成は第1実施形態に係る受電装置Bと同様なので、送電装置A3のみを記載している。非接触電力伝送システムS3は、電流‐電圧変換回路53の構成が、第1実施形態に係る非接触電力伝送システムS1の電流‐電圧変換回路51と異なっている。
電流‐電圧変換回路53は、電流出力を電圧出力に変換するものである。電流‐電圧変換回路53は、インダクタL11’と2つのコンデンサC11’、C12’とをπ型に配置したフィルタ回路と伝送線路TL’とを備えている。伝送線路TL’は、第2実施形態に係る電流‐電圧変換回路52の伝送線路TLと同様の構成であり、その長さは、高周波電源装置1が出力する高周波の基本波の、伝送線路TL’における伝送波長λのx倍(xλ)としている。また、フィルタ回路は、第1実施形態に係る電流‐電圧変換回路51のフィルタ回路と同様の構成であり、インダクタL11’の自己インダクタンスと2つのコンデンサC11’,C12’のキャパシタンスは、伝送線路TL’の長さxλに応じて設計される。電流‐電圧変換回路53では、フィルタ回路が高周波電源装置1側に接続され、伝送線路TL’が送電ユニット2側に接続されている。
次に、フィルタ回路の設計について説明する。
フィルタ回路は、線路長l=(0.25−x)λの伝送線路と等価となるように設計される。つまり、フィルタ回路と伝送線路TL’とを合わせて、0.25λ(伝送波長λの4分の1)となるようにしている。
コンデンサC11’のインピーダンスをZ1、インダクタL11’のインピーダンスをZ2、コンデンサC12’のインピーダンスをZ3とした場合、フィルタ回路のFパラメータは、下記(28)式になる。
一方、特性インピーダンスがZ0で、線路長lの伝送線路のFパラメータは、下記(29)式になる。なお、βは位相定数(2π/λ)である。
上記(28)式および上記(29)式のFパラメータが一致するように、インダクタL11’の自己インダクタンスと2つのコンデンサC11’,C12’のキャパシタンスとを設計する。コンデンサC11’のキャパシタンスとコンデンサC12’のキャパシタンスを同一とする。上記(28),(29)式より、下記(30a)〜(30d)式が求められる。
上記(30b)、(30d)式およびZ1=Z3より、下記(31)式となる。
インダクタL11’の自己インダクタンスをLとし、コンデンサC11’,C12’のキャパシタンスをCとすると、Z1=Z3=1/(j2πf0C)、Z2=j2πf0Lなので、(30b),(31)式より、下記(32),(33)式となる。
インダクタL11’の自己インダクタンスLおよびコンデンサC11’,C12’のキャパシタンスCが、上記(32),(33)式となるように設計することで、電流‐電圧変換回路53は、線路長0.25λ(伝送波長λの4分の1)の伝送線路と等価になり、電流出力を電圧出力に変換することができる。
電流‐電圧変換回路53の回路をFパラメータを用いて表した場合、電流‐電圧変換回路51,52の回路をFパラメータを用いて表した場合と同じになる(上記(13),(14)式参照)。また、送電ユニット2および受電ユニット3は第1実施形態と共通しているので、送電ユニット2および受電ユニット3の等価回路は、図7(c)と同様であり、上記(20)式が求められる。したがって、非接触電力伝送システムS3の場合も、非接触電力伝送システムS1の場合と同様に、上記(22)式が求められる。
上記(22)式より、受電ユニット3から出力される電流I3の大きさは、高周波電源装置1の出力電流I1の大きさに比例する。また、直流電源装置11が出力する直流電圧が一定の場合、高周波電源装置1の出力電流I1の大きさは一定なので、受電ユニット3の出力電流I3の大きさは、接続される負荷のインピーダンスなどに関係なく、一定である。つまり、受電ユニット3の出力は、一定の大きさの電流I3を出力する定電流源と考えることができる。受電ユニット3の出力電流I3の大きさが一定なので、整流平滑回路4によって整流された電流は一定になる。したがって、蓄電デバイスDに供給される電流は、蓄電デバイスDの充電状態に関係なくほぼ一定になる。
また、非接触電力伝送システムS3の場合も、非接触電力伝送システムS1の場合と同様に、上記(24)式が求められる。したがって、ZM<Z0とすることで、電流I3の大きさを電流I1の大きさより大きくすることができる。
図13は、図12に示す回路において、シミュレーションを行ったときの各波形を示している。なお、図12においては、蓄電デバイスDおよび受電装置Bの記載は省略されている。当該シミュレーションの各条件は、図8に示すシミュレーションと同様である。つまり、直流電源装置11が出力する直流電圧を40[V]、高周波制御信号CS2を、周波数f=13.56[MHz]の矩形波信号とし、送電コイルLtと受電コイルLrの結合係数をk=0.2,0.4とし、整流平滑回路4のコンデンサのキャパシタンスを1[μF]、100[μF]としている。また、自己インダクタンスLt,Lrはともに0.6[μH]とし、キャパシタンスCt,Crはともに230[pF]としている。また、本シミュレーションでは、伝送線路TL’の特性インピーダンスZ0=50[Ω]とし、線路長を伝送波長λの8分の1(x=0.125)としている。インダクタL11’の自己インダクタンスLおよびコンデンサC11’,C12’のキャパシタンスCは、上記(32),(33)式において、l=(0.25−0.125)λとして算出しており、自己インダクタンスLは0.415[μH]、キャパシタンスCは97[pF]となっている。図13(a)は、スイッチング素子Qsのドレイン‐ソース間電圧Vdsの波形を示しており、図13(b)は、高周波電源装置1の出力電流I1の波形を示している。また、図13(c)は、受電ユニット3の出力電流I3の波形を示しており、図13(d)は、整流平滑回路4のコンデンサを流れる電流ILOADの波形を示している。図13(c)、(d)において、振幅の大きい方が、結合係数をk=0.2としたときのものである。図13(a)〜(d)において、整流平滑回路4のコンデンサのキャパシタンスが1[μF]の場合と100[μF]の場合とで、位相に若干のずれがあるが、同様の波形になっている。
図13(b)に示されているように、電流I1の振幅が約1.2[A]であるところ、図13(c)に示されているように、電流I3の振幅は、k=0.4の場合に約2.5[A]となり、k=0.2の場合に約5[A]となっている。つまり、電流I3の大きさが電流I1の大きさより大きくなり、結合係数kが小さいほど、電流I2の大きさが大きくなることが確認できた。
第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第3実施形態においては、伝送線路TL’の長さに応じてフィルタ回路を設計すればよいので、伝送線路TL’を所望の長さにすることができる。
図14は、第4実施形態に係る非接触電力伝送システムS4の構成を示す回路図である。なお、受電装置Bの構成は第1実施形態に係る受電装置Bと同様なので、送電装置A4のみを記載している。非接触電力伝送システムS4は、電流‐電圧変換回路54の構成が、第1実施形態に係る非接触電力伝送システムS1の電流‐電圧変換回路51と異なっている。
電流‐電圧変換回路54は、第3実施形態に係る電流‐電圧変換回路53のフィルタ回路と伝送線路TL’の位置を入れ替えたものである。すなわち、電流‐電圧変換回路54は、インダクタL11’と2つのコンデンサC11’、C12’とをπ型に配置したフィルタ回路が送電ユニット2側に接続され、線路長が伝送波長λのx倍(xλ)である伝送線路TL’が高周波電源装置1側に接続されている。インダクタL11’の自己インダクタンスと2つのコンデンサC11’,C12’のキャパシタンスは、第3実施形態の場合と同様に、伝送線路TL’の長さxλに応じて設計される。したがって、電流‐電圧変換回路54は、線路長0.25λ(伝送波長λの4分の1)の伝送線路と等価になり、電流出力を電圧出力に変換することができる。
第4実施形態に係る非接触電力伝送システムS4においても、蓄電デバイスDに供給される電流は、蓄電デバイスDの充電状態に関係なくほぼ一定になる。また、送電コイルLtと受電コイルLrとの間の磁気結合による相互インダクタンスMのインピーダンスZM(=jω0M)を特性インピーダンスZ0より小さくすることで、受電ユニット3の出力電流の大きさを高周波電源装置1の出力電流の大きさより大きくすることができる。
第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第4実施形態においては、伝送線路TL’の長さに応じてフィルタ回路を設計すればよいので、伝送線路TL’を所望の長さにすることができる。
上記第3および第4実施形態においては、電流‐電圧変換回路53(54)のフィルタ回路を、インダクタL11と2つのコンデンサC11,C12とをπ型に配置したフィルタ回路とした場合について説明したが、フィルタ回路の回路構成は、上述したものに限定されない。例えば、2つのインダクタと1つのコンデンサとをπ型に配置したフィルタ回路(図9(a)参照)としてもよいし、1つのインダクタと2つのコンデンサとをT型に配置したフィルタ回路(図9(b)参照)としてもよいし、2つのインダクタと1つのコンデンサとをT型に配置したフィルタ回路(図9(c)参照)としてもよい。
フィルタ回路が2つのインダクタと1つのコンデンサとをT型に配置したフィルタ回路である場合(図15参照)のフィルタ回路の設計について説明する。
フィルタ回路は、線路長l=(0.25−x)λの伝送線路と等価となるように設計される。つまり、フィルタ回路と伝送線路TL’とを合わせて、0.25λ(伝送波長λの4分の1)となるようにしている。
インダクタL11”のインピーダンスをZ1、コンデンサC11”のインピーダンスをZ2、インダクタL12”のインピーダンスをZ3とした場合、フィルタ回路のFパラメータは、下記(34)式になる。
一方、特性インピーダンスがZ0で、線路長lの伝送線路のFパラメータは、下記(35)式になる。なお、βは位相定数(2π/λ)である。
上記(34)式および上記(35)式のFパラメータが一致するように、2つのインダクタL11”,L12”の自己インダクタンスとコンデンサC11”のキャパシタンスとを設計する。インダクタL11”の自己インダクタンスとインダクタL12”の自己インダクタンスを同一とする。上記(34),(35)式より、下記(36a)〜(36d)式が求められる。
上記(36c)式より下記(37)式になり、上記(36d)式および下記(37)式より下記(38式)となる。
インダクタL11”,L12”の自己インダクタンスをLとし、コンデンサC11”のキャパシタンスをCとすると、Z1=Z3=j2πf0L、Z2=1/(j2πf0C)なので、(37),(38)式より、下記(39),(40)式となる。
インダクタL11”,L12”の自己インダクタンスLおよびコンデンサC11”のキャパシタンスCが、上記(39),(40)式となるように設計することで、電流‐電圧変換回路53(54)は、線路長0.25λ(伝送波長λの4分の1)の伝送線路と等価になり、電流出力を電圧出力に変換することができる。
図16は、図15に示す回路において、シミュレーションを行ったときの各波形を示している。なお、図15においては、蓄電デバイスDおよび受電装置Bの記載は省略されている。当該シミュレーションの各条件は、図8に示すシミュレーションと同様である。つまり、直流電源装置11が出力する直流電圧を40[V]、高周波制御信号CS2を、周波数f=13.56[MHz]の矩形波信号とし、送電コイルLtと受電コイルLrの結合係数をk=0.2,0.4とし、整流平滑回路4のコンデンサのキャパシタンスを1[μF]、100[μF]としている。また、自己インダクタンスLt,Lrはともに0.6[μH]とし、キャパシタンスCt,Crはともに230[pF]としている。また、本シミュレーションでは、伝送線路TL’の特性インピーダンスZ0=50[Ω]とし、線路長を伝送波長λの0.15倍(x=0.15)としている。インダクタL11”,L12”の自己インダクタンスLおよびコンデンサC11”のキャパシタンスCは、上記(39),(40)式において、l=(0.25−0.15)λとして算出しており、自己インダクタンスLは0.299[μH]、キャパシタンスCは190[pF]となっている。図16(a)は、スイッチング素子Qsのドレイン‐ソース間電圧Vdsの波形を示しており、図16(b)は、高周波電源装置1の出力電流I1の波形を示している。また、図16(c)は、受電ユニット3の出力電流I3の波形を示しており、図16(d)は、整流平滑回路4のコンデンサを流れる電流ILOADの波形を示している。図16(c)、(d)において、振幅の大きい方が、結合係数をk=0.2としたときのものである。図16(a)〜(d)において、整流平滑回路4のコンデンサのキャパシタンスが1[μF]の場合と100[μF]の場合とで、位相に若干のずれがあるが、同様の波形になっている。
図16(b)に示されているように、電流I1の振幅が約1.2[A]であるところ、図16(c)に示されているように、電流I3の振幅は、k=0.4の場合に約2.5[A]となり、k=0.2の場合に約5[A]となっている。つまり、電流I3の大きさが電流I1の大きさより大きくなり、結合係数kが小さいほど、電流I2の大きさが大きくなることが確認できた。
上記第1ないし第4実施形態においては、高周波電源装置1と送電ユニット2との間に、ハードウエアとしての電流−電圧変換回路を備えた場合について説明したが、これに限られない。例えば、FPGA(field-programmable gate array)などによる制御で、高周波電源装置1からの電流出力を電圧出力に変換するようにしてもよい。
上記第1ないし第4実施形態においては、高周波電源装置1がいわゆるE級アンプに共振回路LC2を追加したアンプを利用した場合について説明したが、これに限られない。例えば、共振回路LC2を設けないようにした、いわゆるE級アンプを利用してもよい。高周波電源装置1は、いわゆる定電流源であればよい。
上記第1ないし第4実施形態においては、送電装置A1〜A4(以下では「送電装置A」と記載する)が床面に埋設されている場合(図1参照)について説明したが、これに限られない。例えば、送電コイルのみが床面に埋設されるようにしてもよいし、送電コイルを床面に埋設せずに床面上に配置するようにしてもよい。また、送電コイルおよび受電コイルが、床面に対して略平行となるように設けられる場合に限定されない。例えば、図17(a)に示すように、受電装置Bが車体の後部に配置され、送電装置Aが車庫の壁面に配置され、送電コイルおよび受電コイルが床面に対して略垂直になるようにしてもよい。また、図17(b)に示すように、受電装置Bが車体の側面に配置され、送電装置Aが車庫の壁面に配置され、送電コイルおよび受電コイルが床面に対して略垂直になるようにしてもよい。要するに、送電コイルと受電コイルとが略平行で向かい合う位置に配置できるように、それぞれ、車体と車庫(駐車場)に配置されていればよい。
上記第1ないし第4実施形態においては、本発明に係る非接触電力伝送システムを、電気自動車に内蔵された蓄電デバイスの充電に利用する場合を例として説明したが、これに限られない。例えば、工場内の搬送に用いられる無人搬送車の蓄電デバイスへの充電にも、利用することができる。また、電動工具やノートパソコンなどの電気製品の蓄電デバイスに充電を行う場合にも、本発明を適用することができる。また、蓄電デバイスに充電するのではなく、受電装置に接続された電気製品などの負荷に直接、電力を供給する場合にも、本発明を適用することができる。この場合、負荷に一定の電流を供給することができる。また、負荷に高周波電力をそのまま供給するのであれば、整流平滑回路4を設けないようにしてもよい。また、整流後の直流電力を、インバータ回路で適切な交流電力に変換して用いるようにしてもよい。
本発明に係る非接触電力伝送システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る非接触電力伝送システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。