JP6818617B2 - 放射線検出器、放射線検出器の製造装置、および放射線検出器の製造方法 - Google Patents
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ここで、シンチレータと反射部は、水蒸気などに起因する特性の劣化を抑制するために外部雰囲気から隔離する必要がある。特に、シンチレータが、CsI(ヨウ化セシウム):Tl(タリウム)膜やCsI:Na(ナトリウム)膜などからなる場合には、湿度などによる特性劣化が大きくなるおそれがある。
そのため、高い防湿性能を得られる構造として、シンチレータと反射部をハット形状の防湿体で覆い、防湿体のつば(鍔)部をアレイ基板と接着する構造が提案されている。
そこで、X線検出器が大気圧よりも減圧された環境に置かれた場合に防湿体に作用する力を低減させることができる技術の開発が望まれていた。
前記シンチレータは、複数の柱状結晶の集合体であり、前記柱状結晶の充填率は85%以下である。
また、本発明の実施形態に係る放射線検出器は、X線のほかにもγ線などの各種放射線に適用させることができる。ここでは、一例として、放射線の中の代表的なものとしてX線に係る場合を例にとり説明をする。したがって、以下の実施形態の「X線」を「他の放射線」に置き換えることにより、他の放射線にも適用させることができる。
まず、本発明の実施形態に係るX線検出器1について例示をする。
図1は、本実施の形態に係るX線検出器1を例示するための模式斜視図である。
図2は、X線検出器1の模式断面図である。
なお、煩雑となるのを避けるために、図2においては、信号処理部3、画像処理部4などを省いて描いている。
アレイ基板2は、基板2a、光電変換部2b、制御ライン(又はゲートライン)2c1、データライン(又はシグナルライン)2c2、配線パッド2d1、2d2、および保護層2fなどを有する。
なお、光電変換部2b、制御ライン2c1、およびデータライン2c2の数などは例示をしたものに限定されるわけではない。
光電変換部2bは、基板2aの一方の表面に複数設けられている。
光電変換部2bは、矩形状を呈したものとすることができる。光電変換部2bは、平面視において、複数の制御ライン2c1と、複数のデータライン2c2と、により画された複数の領域のそれぞれに設けられている。複数の光電変換部2bは、マトリクス状に並べられている。光電変換部2bは、対応する制御ライン2c1と対応するデータライン2c2とに電気的に接続されている。
なお、1つの光電変換部2bは、X線画像の1つの画素(pixel)に対応する。
また、光電変換素子2b1において変換した電荷が供給される蓄積キャパシタを設けることができる。蓄積キャパシタは、例えば、矩形平板状を呈し、薄膜トランジスタ2b2の下に設けることができる。ただし、光電変換素子2b1の容量によっては、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタを兼ねることができる。なお、以下においては、一例として、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタを兼ねる場合を例示する。
薄膜トランジスタ2b2は、蓄積キャパシタの役割をはたす光電変換素子2b1への電荷の蓄積および放出のスイッチングを行う。
薄膜トランジスタ2b2は、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を有している。薄膜トランジスタ2b2のゲート電極は、対応する制御ライン2c1と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のソース電極は、対応するデータライン2c2と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のドレイン電極は、対応する光電変換素子2b1と電気的に接続される。また、光電変換素子2b1のアノード側は、対応する図示しないバイアスラインと電気的に接続される。なお、バイアスラインが設けられない場合には、光電変換素子2b1のアノード側はバイアスラインに代えてグランドに電気的に接続される。
1つの制御ライン2c1は、アレイ基板2の周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d1のうちの1つと電気的に接続されている。1つの配線パッド2d1には、フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線の他端は、信号処理部3に設けられた制御回路と電気的に接続されている。
1つのデータライン2c2は、アレイ基板2の周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d2のうちの1つと電気的に接続されている。1つの配線パッド2d2には、フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線の他端は、信号処理部3に設けられた信号検出回路と電気的に接続されている。
信号処理部3には、制御回路と、信号検出回路とが設けられている。
制御回路は、薄膜トランジスタ2b2のオン状態とオフ状態を切り替える。
制御回路には、画像処理部4などから制御信号S1が入力される。制御回路は、X線画像の走査方向に従って、制御ライン2c1に制御信号S1を入力する。
例えば、制御回路は、フレキシブルプリント基板2e1と制御ライン2c1とを介して、制御信号S1を各制御ライン2c1毎に順次入力する。制御ライン2c1に入力された制御信号S1により薄膜トランジスタ2b2がオン状態となり、蓄積キャパシタの役割をはたす光電変換素子2b1からの電荷(画像データ信号S2)が受信できるようになる。
選択回路は、読み出しを行う積分アンプを選択し、電位情報へと変換された画像データ信号S2を順次読み出す。
ADコンバータは、読み出された画像データ信号S2をデジタル信号に順次変換する。デジタル信号に変換された画像データ信号S2は、画像処理部4に入力される。
画像処理部4は、信号処理部3と一体化されている。なお、画像処理部4は、配線を介して、信号処理部3の信号検出回路と電気的に接続されていてもよい。
シンチレータ5は、例えば、ヨウ化セシウム(CsI):タリウム(Tl)、ヨウ化ナトリウム(NaI):タリウム(Tl)、あるいは臭化セシウム(CsBr):ユーロピウム(Eu)などを用いて形成することができる。シンチレータ5は、真空蒸着法を用いて形成することができる。真空蒸着法を用いてシンチレータ5を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ5とすることができる。この場合、柱状結晶の太さは、最表面で3μm〜8μm程度とすることができる。シンチレータ5の厚みは、例えば、200μm〜600μm程度とすることができる。
反射部6は、アルミニウムなどの金属をシンチレータ5の上に成膜することで形成することもできる。
反射部6は、光散乱性を有する複数の粒子と樹脂を含むシート、アルミニウムなどの金属を含むシートなどとすることもできる。
防湿体7は、ハット形状を呈し、表面部7a、周面部7b、およびつば(鍔)部7cを有する。表面部7a、周面部7b、およびつば部7cは一体成形されたものとすることができる。
例えば、表面部7a、周面部7b、およびつば部7cは、アルミニウム、アルミニウム合金、樹脂層と無機材料(アルミニウムなどの軽金属、SiO2、SiON、Al2O3などのセラミック系材料)の層が積層された低透湿防湿材料などから形成することができる。例えば、表面部7a、周面部7b、およびつば部7cは、厚み寸法が50μm〜100μm程度のアルミニウム箔をプレス成形して形成することができる。
ところが、防湿体7のつば部7cをアレイ基板2に接着する際の環境の圧力を低くしすぎると、接着剤に溶存していた気体が気泡となり、気泡に押されて接着剤がつば部7cの内外にはみ出す場合がある。接着剤のはみ出し量が多くなると、接着層8における接着強度が低くなったり、水蒸気が接着層8を透過しやすくなったり、配線パッド2d1、2d2などに接着剤が付着したりするおそれがある。そのため、防湿体7のつば部7cをアレイ基板2に接着する際の環境の圧力を低くするのには限界がある。
充填率(%)=(W/(ρ×V))×100
また、防湿体7の内側の圧力の上昇は、防湿体7の表面部7aの張りを目視観察することにより評価することができる。例えば、防湿体7の内側の圧力が十分低くければ、表面部7aは反射部6に沿ってほぼ密着する。一方、防湿体7の内側の圧力が所定の圧力よりも高くなれば、表面部7aと反射部6との間に隙間が生じ、時には表面部7aが膨らんでいるように見える場合がある。表面部7aの張りの判定は、例えば、大気圧の環境において接着剤を硬化させる工程において行うことができる。
なお、表1における反射部6と表面部7aとの間の隙間は、つば部7cをアレイ基板2に接着する際の大気圧よりも減圧された環境(例えば、0.2Paの環境)における反射部6と表面部7aとの間の寸法である。
表1から分かるように、柱状結晶の充填率を85%以下とすれば、大気圧の環境において表面部7aの張りが弱くなること、すなわち、防湿体7の内側の圧力が当初の圧力よりも上昇するのを抑制することができる。
また、大気圧よりも減圧された環境(70kPa)においても、防湿体7の内側の圧力が所望の範囲内に収まることが確認できた。
また、解像度特性(MTF(modulation transfer function)特性)も良好であることが確認できた。
そのため、柱状結晶同士の間に光散乱性を有する粒子が設けられないようにすることが好ましい。
そこで、反射部6は、シンチレータ5の上に直接設けられるようにすることが好ましい。すなわち、反射部6はシンチレータ5の上に載置され、接着剤による固定を行わないようにすることが好ましい。
前述したように、柱状結晶の充填率を85%以下とすれば、防湿体7の内側の圧力が当初の圧力よりも上昇するのを抑制することができる。そのため、柱状結晶の充填率を85%以下とすれば、表面部7aおよび周面部7bと、シンチレータ5との間に反射部6を挟み込むことができるので、接着剤による固定を行わないようにしても反射部6を保持することができる。
この場合、反射部6の一方の面に粘着部9を貼り付け、粘着部9が貼り付けられた反射部6をシンチレータ5に固定するようにすれば、作業性を向上させることができる。
シート状の反射部6の厚みを厚くすれば、反射部6の反射率を高くすることができる。ところが、シート状の反射部6の厚みを厚くすると、元の形状に戻ろうとする力(弾性力)が大きくなる。反射部6の周縁近傍は、シンチレータ5の第2の入射面5bに設けられるので、弾性力が大きくなるとシンチレータ5の第2の入射面5bと反射部6との間に隙間が生じやすくなる。第2の入射面5bと反射部6との間に隙間が生じると、反射部6により反射した光が隣接する領域に混入し易くなる。
本発明者らの得た知見によれば、反射部16の材料が反射部6の材料と同じである場合には、反射部16の厚みは反射部6の厚みの3倍以上とすることが好ましい。例えば、反射部16の厚みを150μm程度とし、反射部6の厚みを50μm程度とすることができる。
次に、本発明の実施形態に係るX線検出器の製造装置100(以下、単に、製造装置100と称する)について例示をする。
製造装置100は、粘着部9を有するX線検出器1を製造する際に用いることができる。すなわち、製造装置100は、粘着部9を用いて反射部6をシンチレータ5の上に固定する際に用いることができる。
図4に示すように、製造装置100には、袋状部101および排気部102が設けられている。
まず、袋状部101の内部に、シンチレータ5が形成されたアレイ基板2と、粘着部9を介してシンチレータ5の上に載置された反射部6とを収納する。
次に、図4に示すように、袋状部101の開口端を排気部102に接続する。
次に、排気部102は、袋状部101の内部にある空気を排出する。
すると、袋状部101の内部の圧力が袋状部101の外部の圧力よりも低くなるので、袋状部101の内部にある反射部6が均一な圧力でシンチレータ5に押さえつけられる。反射部6は厚みの薄い樹脂シートであるため、反射部6はシンチレータ5の第1の入射面5aおよび第2の入射面5bに倣って変形する。そのため、反射部6は、粘着部9を介して第1の入射面5aおよび第2の入射面5bに密着する。
以上の様にして、反射部6がシンチレータ5の第1の入射面5aおよび第2の入射面5bに倣って貼り付けられる。
次に、本発明の実施形態に係るX線検出器1の製造方法について例示をする。
まず、基板2a上に光電変換部2b、制御ライン2c1、データライン2c2、配線パッド2d1、2d2、および保護層2fなどを順次形成してアレイ基板2を作成する。アレイ基板2は、例えば、半導体製造プロセスを用いて作成することができる。
前述したように、蒸着工程においては、蒸着材料がアレイ基板2の周縁近傍に到達しないようにマスクが用いられる。そのため、シンチレータ5の周縁領域は、外側になるに従い厚みが薄くなり、第1の入射面5aと交差する第2の入射面5bが形成される。
なお、粘着部9を用いてシンチレータ5の上に反射部6を固定することもできる。反射部6の固定は、例えば、前述した製造装置100を用いて行うことができる。製造装置100を用いれば、大気圧により、反射部6をシンチレータ5に押し付けることができる。 また、反射部16を設ける場合には、反射部16を反射部6の上に載置する。
以下においては、反射部6のみが設けられる場合を例示する。
まず、表面部7a、周面部7b、および、つば部7cを一体成形してハット形状の防湿体7を作成する。ハット形状の防湿体7は、例えば、厚みが50μm〜100μm程度のアルミニウム箔をプレス成形して形成することができる。この際、反射部6と表面部7aとの間の隙間、あるいは、反射部16と表面部7aとの間の隙間が0.5mm以下、好ましくは0.2mm以下となるように、つば部7cの接着面と表面部7aのアレイ基板2側の面との間の寸法を規定する。
また、大気圧により防湿体7が押さえつけられるので、反射部6が防湿体7とシンチレータ5との間に挟まれることで保持される。反射部16が設けられる場合には、反射部6および反射部16が防湿体7とシンチレータ5との間に挟まれることで保持される。
その他、回路部品などを適宜実装する。
そして、必要に応じて、光電変換部2bの異常の有無や電気的な接続の異常の有無を確認する電気試験、X線画像試験などを行う。
以上のようにして、X線検出器1を製造することができる。
なお、製品の防湿信頼性や温度環境変化に対する信頼性を確認するために、高温高湿試験、冷熱サイクル試験などを実施することもできる。
アレイ基板2の複数の光電変換部2bが設けられた領域の上に、中央領域の外側に位置する周縁領域の厚みが外側になるに従い薄くなるシンチレータ5を形成する工程。
シンチレータ5の中央領域におけるX線の第1の入射面5aと、シンチレータ5の周縁領域におけるX線の第2の入射面2bの少なくとも一部と、を覆う反射部6をシンチレータ5の上に載置する工程。
ハット形状を呈し、反射部6を覆う防湿体7をアレイ基板2に接着する工程。
そして、シンチレータ5を形成する工程において、複数の柱状結晶の集合体であるシンチレータ5が形成されるとともに、柱状結晶の充填率が85%以下とされる。また、防湿体7をアレイ基板2に接着する工程は、大気圧よりも減圧された環境において行われる。
また、反射部6をシンチレータ5の上に載置する工程において、粘着部9を介して、反射部6をシンチレータ5の上に載置することができる。
また、反射部6の、第1の入射面5aを覆う部分を覆い、反射部6の厚みよりも厚い反射部16を反射部6の上に載置する工程をさらに備えることができる。
なお、各工程における内容は、前述したものと同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
Claims (10)
- 複数の光電変換部を有するアレイ基板と、
前記複数の光電変換部の上に設けられ、中央領域の外側に位置する周縁領域の厚みが外側になるに従い薄くなるシンチレータと、
前記シンチレータの中央領域における放射線の第1の入射面と、前記シンチレータの周縁領域における放射線の第2の入射面の少なくとも一部と、を覆う第1の反射部と、
ハット形状を呈し、前記第1の反射部を覆う防湿体と、
前記防湿体のつば部と、前記アレイ基板と、の間に設けられた接着層と、
を備え、
前記シンチレータは、複数の柱状結晶の集合体であり、前記柱状結晶の充填率は85%以下である放射線検出器。 - 前記第1の反射部は、樹脂を含むシート状の基材と、前記基材の内部に設けられた光散乱性を有する複数の粒子と、を有する請求項1記載の放射線検出器。
- 前記第1の反射部の厚みは、100μm以下である請求項1または2に記載の放射線検出器。
- 前記第1の反射部と、前記シンチレータと、の間に設けられた粘着部をさらに備えた請求項1〜3のいずれか1つに記載の放射線検出器。
- 前記第1の反射部の、前記第1の入射面を覆う部分を覆う第2の反射部をさらに備え、
前記第2の反射部の厚みは、前記第1の反射部の厚みよりも厚い請求項1〜4のいずれか1つに記載の放射線検出器。 - 請求項4記載の放射線検出器を製造する製造装置であって、
袋状を呈し、一方の端部が開口した袋状部と、
前記袋状部の開口端と接続される排気部と、
を備えた放射線検出器の製造装置。 - アレイ基板の複数の光電変換部が設けられた領域の上に、中央領域の外側に位置する周縁領域の厚みが外側になるに従い薄くなるシンチレータを形成する工程と、
前記シンチレータの中央領域における放射線の第1の入射面と、前記シンチレータの周縁領域における放射線の第2の入射面の少なくとも一部と、を覆う第1の反射部を前記シンチレータの上に載置する工程と、
ハット形状を呈し、前記第1の反射部を覆う防湿体を前記アレイ基板に接着する工程と、
を備え、
前記シンチレータを形成する工程において、複数の柱状結晶の集合体である前記シンチレータが形成されるとともに、前記柱状結晶の充填率が85%以下とされ、
前記防湿体を前記アレイ基板に接着する工程は、大気圧よりも減圧された環境において行われる放射線検出器の製造方法。 - 前記第1の反射部は、樹脂を含むシート状の基材と、前記基材の内部に設けられた光散乱性を有する複数の粒子と、を有する請求項7記載の放射線検出器の製造方法。
- 前記第1の反射部を前記シンチレータの上に載置する工程において、
粘着部を介して、前記第1の反射部を前記シンチレータの上に載置する請求項7または8に記載の放射線検出器の製造方法。 - 前記第1の反射部の、前記第1の入射面を覆う部分を覆い、前記第1の反射部の厚みよりも厚い第2の反射部を前記第1の反射部の上に載置する工程をさらに備えた請求項7〜9のいずれか1つに記載の放射線検出器の製造方法。
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