JP6808544B2 - 固体酸化物形電気化学セル用ハーフセル、固体酸化物形電気化学セル及び固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルの製造方法 - Google Patents

固体酸化物形電気化学セル用ハーフセル、固体酸化物形電気化学セル及び固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルと、固体酸化物形電気化学セルと、固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルの製造方法とに関する。
近年、燃料電池は、クリーンエネルギー源として注目されている。燃料電池のうち、電解質に固体のセラミックを使用している固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」と記載する。)は、作動温度が高いため排熱を利用でき、さらに高効率で電力を得ることができる等の長所を有しており、家庭用電源から大規模発電まで幅広い分野での活用が期待されている。
SOFCは、基本構造として、空気極と燃料極との間にセラミックからなる固体電解質層が配置された構造を有する。例えば平型のSOFCは、空気極、固体電解質層及び燃料極を重ね合わせたものを単セルとし、この単セルがインターコネクタ等を挟んで複数積み重ねられることによって高出力を得る。
SOFCでは、空気極に導入された空気中の酸素が電子を受け取って酸素イオン(O2-)となり、この酸素イオンが固体電解質層中を移動して燃料極へ到達する。燃料極に到達した酸素イオンが、燃料極に供給される燃料ガスに含まれる水素や一酸化炭素などと電気化学的に反応することによって、電子が放出されて電気出力が得られる。
SOFCの燃料極には、例えばニッケル−ジルコニア系酸化物のサーメット(焼結体)が一般的に用いられている。ニッケル−ジルコニア系酸化物のサーメットからなる燃料極は、優れた発電性能を有する。例えば、特許文献1には、優れた導電性を発揮できる燃料極用材料として、第1成分としての酸化ニッケルと、第2成分としての酸化ジルコニウムと、第3成分としての酸化スカンジウム等とを含む組成を有し、さらに細孔容積が0.1cm3/g以上、かつ気孔率20%以上である粉末が開示されている。このような燃料極用材料を用いて作製された燃料極を備えたSOFCは、高い発電性能を実現することができる。
また、近年、SOFCと同様の基本構造を有するセルを、固体酸化物形電解セル(SOEC)として利用することも提案されている。SOECは、SOFCとは逆反応を動作原理とするセルであり、高温の水蒸気を電気分解することにより水素と酸素とを得るセルである。SOECについても、水素極(SOFCの燃料極に相当する電極)は、SOFCの燃料極と同様の特性を有することが望ましいとされる。したがって、SOFCの燃料極に好適な材料は、SOECの水素極にも好適に利用できる。なお、SOFC及びSOECとして機能し得るセルは、一般に、固体酸化物形電気化学セルと呼ばれている。
特開2008−293828号公報
SOFCの発電効率を上げるための1つの手段として、燃料の使用率、すなわち、燃料利用率を高める方法が挙げられる。しかし、SOFCの燃料極に供給される燃料ガスには水素又は一酸化炭素が多く含まれているので、燃料利用率を高めると、固体電解質層における燃料極との界面近傍、さらに燃料極で、酸素イオンと水素との反応又は酸素イオンと一酸化炭素との反応によって生じる水蒸気又は二酸化炭素が多くなり、その結果、燃料ガスにおける水蒸気濃度又は二酸化炭素濃度が高くなってしまう。燃料ガスにおける水蒸気濃度や二酸化炭素濃度が高くなると、燃料である水素や一酸化炭素が反応場まで十分にいきわたりにくくなる。その結果、水素や一酸化炭素の一部が、燃料極の材料(例えばNi)を酸化して酸化物(燃料極の材料がNiである場合はNiO)が生じてしまい、燃料極の導電性が低下し、電極の内部抵抗が増加することで出力が低下する、すなわち電流電圧特性が悪くなる。また、燃料ガスにおける水蒸気濃度や二酸化炭素濃度の上昇によって、燃料極の抵抗が増加して出力が低下する。また、出力が低下することで、燃料極はセルに対して高負荷状で稼働することになり、燃料極の劣化の進行が促進され、その結果、SOFC用単セルの電池性能の劣化が促進される。
また、SOECの場合でも、水の電気分解を高効率で行うためには水素極は高濃度の水蒸気と接触することになるため、高濃度の水蒸気と接触することによる水素極の劣化はセルの性能低下につながる。
そこで、本発明は、高い燃料利用率によって燃料ガスにおける水蒸気濃度が高くなった場合でも高い耐久性能を有するSOFC、及び、優れた性能を有するSOECを実現できる、燃料極(水素極)及び固体電解質層を備えた固体酸化物形電気化学セル用ハーフセル及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、高い燃料利用率によって燃料ガスにおける水蒸気濃度が高くなった場合でも、高い耐久性能を実現できるSOFC、及び、優れた性能を有するSOECとして機能し得る固体酸化物形電気化学セルを提供することも目的とする。
本発明の第1の態様は、
燃料極(水素極を含む)と、前記燃料極の一方の主面上に配置された固体電解質層とを備えた固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルであって、
前記固体電解質層は、ジルコニア系酸化物(A)を含んでおり、
前記燃料極は、YbをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の範囲内で含むジルコニア系酸化物(B)を含んでおり、
前記ジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径(B)に対する前記ジルコニア系酸化物(A)の平均粒子径(A)の比率(平均粒子径(A)/平均粒子径(B))が、1.0以上8.0以下である、
固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルを提供する。
本発明の第2の態様は、
第1の態様に係る固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルと、空気極(酸素極を含む)とを備えた固体酸化物形電気化学セルであって、
前記空気極は、前記空気極と前記燃料極との間に前記固体電解質層が配置されるように配置されている、
固体酸化物形電気化学セルを提供する。
本発明の第3の態様は、
固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルを製造する方法であって、
ジルコニア系酸化物(a)を含む固体電解質層用原料粉末を用いて、固体電解質層を作製する固体電解質層作製工程と、
酸化イッテルビウムYbをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の範囲内で含むジルコニア系酸化物(b)と、導電性金属の酸化物とを含む燃料極(水素極を含む)原料粉末を用いて燃料極(水素極を含む)を作製する燃料極(水素極を含む)作製工程と、
を含み、
前記燃料極原料粉末の細孔容積が0.012cm3/g以上0.9cm3/g以下であり、
前記固体電解質層用原料粉末の平均粒子径(a)に対する前記燃料極原料粉末の平均粒子径(b)の比率(平均粒子径(b)/平均粒子径(a))が、0.3以上4以下である、
固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルの製造方法を提供する。
本発明の第1の態様に係る固体酸化物形電気化学セル用ハーフセル及び第3の態様に係る製造方法によって得られる固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルによれば、高い燃料利用率によって燃料ガスにおける水蒸気濃度が高くなった場合でも高い耐久性能を有するSOFC、及び、優れた性能を有するSOECとして機能し得る固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルを実現できる。また、本発明の第2の態様に係る固体酸化物形電気化学セルは、高い燃料利用率によって燃料ガスにおける水蒸気濃度が多くなった場合でも、高い耐久性能を実現できるSOFC、及び、優れた性能を有するSOECとして機能し得る。
本発明の一実施形態に係る固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルの一例であるSOFC用ハーフセルを示す断面図 本発明の一実施形態に係る固体酸化物形電気化学セルの一例であるSOFC用単セルを示す断面図
本発明の固体酸化物形電気化学セル用ハーフセル、固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルの製造方法及び固体酸化物形電気化学セルの実施形態について、具体的に説明する。
本実施形態の固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルは、燃料極と、燃料極の一方の主面上に配置された固体電解質層とを備えている。固体電解質層は、ジルコニア系酸化物(A)を含んでいる。なお、本実施形態において、固体酸化物形電気化学セルの「燃料極」との用語は「水素極」も含む意味で用いられているが、以下、便宜上単に「燃料極」とのみ記載する。
燃料極は、YbをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の範囲内で含むジルコニア系酸化物(B)を含んでいる。ここで、本明細書において、「YbをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の範囲内で含むジルコニア系酸化物(B)」とは、ジルコニア系酸化物(B)において、Yb原子の数が、Zr原子100モルに対して6モル以上30モル以下であることを意味する。
燃料極に含まれるジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径(B)に対する、固体電解質層に含まれるジルコニア系酸化物(A)の平均粒子径(A)の比率(平均粒子径(A)/平均粒子径(B))は、1.0以上8.0以下である。ここで、固体電解質層に含まれるジルコニア系酸化物(A)の平均粒子径(A)とは、固体電解質層を構成するジルコニア系酸化物粒子の周長円相当径の個数基準の平均値である。固体電解質層の断面の電子顕微鏡によって得られる断面2次電子像において、固体電解質層を構成する任意のジルコニア系酸化物粒子100個について、画像処理ソフトを用いてそれぞれの粒子の周長を計測し、計測された周長を円相当径に換算して、粒子の粒子径(周長円相当径)を求める。得られた粒子100個の粒子径(周長円相当径)の個数基準の平均値を固体電解質層に含まれるジルコニア系酸化物(A)の平均粒子径(A)とする。燃料極に含まれるジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径(B)も、電子顕微鏡によって得られる断面の2次電子像から同様の方法で求められる、ジルコニア系酸化物粒子の周長円相当径の個数基準の平均値である。計測する粒子数は100個が好ましい。100個であれば、ジルコニア系酸化物粒子の個数基準の平均値について、そのサンプルを十分代表する値と考えられるからである。計測する粒子は、多ければ多いほどそのサンプルを代表した値となるため好ましいと言える。しかし100個よりも多く計測する場合、多大な労力を伴う。そのため、計測する粒子数は100個で十分である。燃料極のジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径(B)を求めるための燃料極の断面像としては、還元状態(燃料極に導電成分として含まれる導電性金属が、酸化物ではなく金属となっている状態)の燃料極の断面像が好ましく用いられる。燃料極の断面像が2次電子像である場合、燃料極中のNiが金属の状態であるならば、ジルコニア系酸化物の粒子と導電成分として含まれる金属粒子との区別は、導電率が大きく異なることを利用して、画像における明暗の差により行うことが容易となるからである。燃料極が酸化状態(燃料極に導電成分として含まれる導電性金属が、金属ではなく酸化物状態)であるサンプルの断面を観察する際は、酸化ニッケル、ジルコニア系酸化物ともに導電性がないため、2次電子像ではジルコニア系酸化物の判別が難しい。その場合には、例えば、サンプルを約10cm2(例えば2cm×5cmの長方形)に切り出し、750℃の管状炉中で、1%以上の水素(窒素バランス)を十分な流量流すことにより、サンプルを還元させ、還元処理後のサンプルを2次電子像により観察することで、燃料極中のニッケルとジルコニア系酸化物を区別することができ、この方法を用いることにより燃料極に含まれるジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径を求めることができる。
本実施形態の固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルは、燃料極及び固体電解質層が上記構成を満たすことにより、水蒸気濃度が高い燃料ガスに接した際の劣化の進行促進を小さく抑えることができる。したがって、本実施形態の固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルによれば、高い燃料利用率によって燃料ガスにおける水蒸気濃度が高くなった場合でも高い耐久性能を有するSOFC、及び、優れた性能を有するSOECとして機能し得る固体酸化物形電気化学セルの実現が可能となる。
以下に、本実施形態の固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルの一例として、SOFC用ハーフセルについて説明する。なお、SOFC用ハーフセルは、電解質支持型セル用のハーフセルであっても、燃料極支持型セル用のハーフセルであってもよく、その種類は特には限定されない。ここでは、燃料極支持型セルのハーフセルである場合を例に挙げて、図1を参照しながら説明する。
図1に、燃料極支持型セル用のSOFC用ハーフセル1の断面図を示す。SOFC用ハーフセル1は、燃料極11と、固体電解質層12とを備えている。固体電解質層12において燃料極11と接している面と反対側の面には、バリア層13が設けられている。なお、バリア層14は、必要に応じて設けられればよいため、設けられなくてもよい。
燃料極11は、燃料極支持基板111と、燃料極支持基板111の固体電解質層12側の面上に配置された燃料極層112と、によって形成されている。なお、燃料極支持基板111自体が電極として十分に作用し得る場合には、燃料極層112が設けられない場合もある。固体電解質層12及びバリア層13は、燃料極支持基板111によって支持されている。
燃料極支持基板111は、導電性を与えるための導電成分と、骨格成分となるセラミック質とを含んでいる。導電成分としては、SOFC用ハーフセルの燃料極支持基板の導電成分として公知のものを含むことができる。燃料極支持基板111は、骨格成分となるセラミック質として、SOFC用ハーフセルの燃料極支持基板の骨格成分として公知のものを含むことができる。なお、燃料極支持基板111は、後述の燃料極層112に含まれるジルコニア系酸化物(B)として説明されるジルコニア系酸化物を含むことも可能である。
燃料極支持基板111の厚さは、特に限定されないが、例えば100μm以上が好ましく、120μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましい。また、燃料極支持基板111の厚さは、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましく、500μm以下が特に好ましい。燃料極支持基板111の厚さが上記範囲内であれば、燃料極支持基板111の機械的強度とガス通過性とをバランス良く両立しやすくなる。
燃料極層112は、導電性を与えるための導電成分と、骨格成分となるセラミック質とを含んでいる。
燃料極層112は、導電成分として、SOFC用単セルの燃料極層の導電成分として公知のものを含むことができる。導電成分として、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、白金、パラジウム、ルテニウム等の金属;酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄のように燃料電池稼動時の還元性雰囲気で導電性金属に変化する金属酸化物;あるいはこれらの酸化物を2種以上含有するニッケルフェライトやコバルトフェライトのような複合金属酸化物、が挙げられる。これらは単独で使用し得るほか、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用できる。これらの中でも、金属ニッケル、金属コバルト、金属鉄又はこれらの酸化物が好ましい。
燃料極層112は、骨格成分となるセラミック質として、ジルコニア系酸化物(B)を含んでいる。このジルコニア系酸化物(B)は、YbをZr100モルに対して6モル%以上30モル以下の範囲内で含んでいる。なお、燃料極層112に含まれるジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径(B)は、後述の固体電解質層12に含まれるジルコニア系酸化物(A)の平均粒子径(A)と所定の関係を満たす。具体的には、ジルコニア系酸化物(B)は、ジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径(B)に対するジルコニア系酸化物(A)の平均粒子径(A)の比率(平均粒子径(A)/平均粒子径(B))(以下、「平均粒子径比率」と記載する。)が1.0以上8.0以下を満たすものである。平均粒子径比率が上記範囲を満たすジルコニア系酸化物(B)によって燃料極層112の骨格成分が構成されていることにより、水蒸気濃度が高い燃料ガスに接した場合でも劣化しにくい燃料極層112となる。
平均粒子径比率を上記範囲とすることによって、水蒸気濃度が高い燃料ガスに接した場合でも劣化しにくい燃料極および固体電解質層が得られ、その結果セルの劣化が抑制できる理由は明らかではないものの、例えば以下のようなメカニズムによって燃料極および固体電解質層の劣化が抑制され得ると考えることができる。
燃料極では、水蒸気や二酸化炭素が多い領域において、燃料極の導電成分(例えばNi)が凝集しやすくなる。このような凝集の発生は、特に燃料極の耐久性能に影響する。したがって、凝集の防止のために、燃料極中のジルコニア系酸化物(B)には、ある程度の範囲の大きさを有するジルコニア系酸化物が使用されることが望まれる。なお、ジルコニア系酸化物(B)は、大きすぎても小さすぎても、凝集を防げないと考えられる。一方、固体電解質層における酸素イオンの移動は、酸素イオンがジルコニア系酸化物(A)の粒子中を通って行われる。その際の抵抗成分としては、材料自身が持つ抵抗の他に、粒界抵抗が存在する。粒界抵抗とは、ある粒子から隣の粒子へ酸素イオンが移動する際に粒界(境界)を超える必要があり、この抵抗のことである。同じ厚みの電解質層を構成する粒子が細かすぎる場合には、酸素イオンを通過する粒子の数が多くなり、粒界抵抗が大きくなると考えられる。一方で、ジルコニア系酸化物(B)の粒子には、不純物として絶縁物質(例えば、SiやAlの酸化物)が含まれる場合があり、焼成する過程の中で、粒界に沿って集まる傾向があると考えられる。そのため、ジルコニア系酸化物(B)の粒子が大きいと、絶縁物質層の厚みが厚くなり、粒界抵抗が大きくなると考えられる。粒界抵抗が大きくなると、出力の低いセルとなる。出力の低いセルは、負荷が大きくなるので、劣化しやすいセルとなる。このため、電解質層中のジルコニア系酸化物(B)にも、ある程度の範囲の大きさを有するジルコニア系酸化物が使用されることが望まれる。
以上のような背景から、劣化しにくいセルには、ジルコニア系酸化物(A)とジルコニア系酸化物(B)とに最適な粒子径比があると考えられ、その最適な粒子径比の範囲が1.0以上8.0以下であると考えられる。
燃料極層に含まれるジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径(B)と、ジルコニア系酸化物(B)の粒子径の標準偏差との差は、0.15μm以上3.0μm以下であることが好ましい。平均粒子径(B)と標準偏差との差が上記範囲を満たすことにより、導電成分とジルコニア系酸化物粒子と気相との間で起こる反応が、均一に進行するので、局所的な発熱の影響による劣化が起こりにくく、耐久性能の高いセルとなる。なお、ジルコニア系酸化物(B)の粒子径の標準偏差は、ジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径(B)を求める場合と同様に任意のジルコニア系酸化物粒子100個の粒子径を求め、それら100個の粒子の粒子径を用いて求められる。なお、ジルコニア系酸化物(B)は、平均粒子径(B)が上記平均粒子径比率の範囲を満たしていればよいが、例えば平均粒子径(B)は、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、一方、4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。
燃料極層112は、ジルコニア系酸化物(B)に加えて、骨格成分として機能する他のセラミック質をさらに含んでいてもよい。他のセラミック質としては、SOFC用ハーフセルの燃料極層用の材料として公知の材料を用いることができる。しかし、上記効果をより確実に実現するために、燃料極層112の骨格成分は、ジルコニア系酸化物(B)を90質量%以上含むことが好ましく、95質量%以上含むことがさらに好ましく、実質的にジルコニア系酸化物(B)からなることが特に好ましい。なお、燃料極層112の骨格成分が実質的にジルコニア系酸化物(B)からなるとは、ジルコニア系酸化物(B)以外のセラミック質成分が、燃料極層112に製造上不可避な場合を除いて配合されないことを意味しており、好ましくは燃料極層112の骨格成分におけるジルコニア系酸化物(B)の割合が98質量%以上であり、100質量%であってもよい。
ここでの、他のセラミックス質とは、例えば、アルミナ、チタニア、シリカ、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化カルシウム、酸化セリウムなどの、本発明の効果を損なわずに、高いイオン伝導性などの機能を有する金属酸化物であり、これらは、電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析(EDX)や電子線マイクロアナライザ(EPMA)を併用することで、特定することができる。
燃料極層112に含まれるジルコニア系酸化物(B)は、走査型電子顕微鏡(SEM)などで断面の2次元画像を観察し、解析した際に、ジルコニア系酸化物にのみに内包される気孔の気孔率が、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、7%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが最も好ましい。このような場合、酸化物イオンの伝導が損なわれることなく、良好に行われるため、高い電流−電圧特性を発揮することができる。なお、ここで記載したジルコニア系酸化物にのみに内包される気孔とは、例えば、SEMなどの機器で、2次元画像を取得した際に、ジルコニア系酸化物のみで囲まれている気孔のことを言う。また、ジルコニア系酸化物にのみに内包される気孔の気孔率とは、燃料極層のうちの、所得した視野中の解析した領域のうちのジルコニア系酸化物のみで囲まれている気孔の面積を、解析した領域の面積で除した値で求めることができる。なお、酸化ニッケルとジルコニア系酸化物と気孔とは、2次元画像を取得するに当たり、反射電子像を取得したり、2次電子像とEDXを併用したりすることで、特定することができる。
燃料極層112の厚さは、特に限定されないが、例えば5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。また、燃料極層112の厚さは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。燃料極層112の厚さが上記範囲内であれば、電極反応が効率的に行われ、燃料極支持型セルとした場合に、電池性能がより良好となる。
固体電解質層12は、電解質材料としてジルコニア系酸化物(A)を含んでいる。ジルコニア系酸化物(A)は、例えば、イットリウム、スカンジウム、イッテルビウム等の希土類元素の少なくとも1種の元素の酸化物が固溶して、結晶構造が安定化された、安定化ジルコニアが好ましい。
より好ましい形態としては、YをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の割合で含有するジルコニア(イットリア安定化ジルコニア)、ScをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の割合で含有するジルコニア(スカンジア安定化ジルコニア)、ScをZr100モルに対して16モル以上30モル以下、CeをZr100モルに対して0.5モル%以上3モル以下で含有するジルコニア(スカンジア、セリア安定化ジルコニア)、または、YbをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の割合で含有するジルコニア(イッテルビア安定化ジルコニア)が挙げられる。これらの中でも、YbをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の範囲内で含んでいるジルコニア系酸化物が特に好適に用いられる。
固体電解質層12に含まれるジルコニア系酸化物(A)は、その平均粒子径(A)が、燃料極層112に含まれるジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径(B)との間で平均粒子径比率が1.0以上8.0以下の範囲内を満たすものである。なお、ジルコニア系酸化物(A)は、平均粒子径(A)が上記平均粒子径比率の範囲を満たしていればよいが、例えば平均粒子径(A)は、0.5μm以上が好ましく、0.7μm以上がより好ましく、一方、10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましい。
固体電解質層12におけるジルコニア系酸化物(A)の含有割合は、例えば80%以上であってよく、好ましくは82%以上、より好ましくは85%以上である。固体電解質層12は、製造上不可避な不純物を除き、上記ジルコニア系酸化物(A)からなるものであってもよい。
固体電解質層12は、ジルコニア系酸化物(A)以外の電解質材料をさらに含んでいてもよい。そのような電解質材料として、例えば、SOFC用単セルの固体電解質層の材料として公知の材料を用いることが可能である。
固体電解質層12に含まれるジルコニア系酸化物(A)は、走査型電子顕微鏡(SEM)などで断面の2次元画像を観察し、解析した際に、ジルコニア系酸化物にのみに内包される気孔の気孔率が、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、7%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが最も好ましい。このような場合、酸化物イオンの伝導が損なわれることなく、良好に行われるため、高い電流−電圧特性を発揮することができる。なお、ここで記載したジルコニア系酸化物にのみに内包される気孔とは、例えば、SEMなどの機器で、2次元画像を取得した際に、ジルコニア系酸化物のみで囲まれている気孔のことを言う。また、ジルコニア系酸化物にのみに内包される気孔の気孔率とは、固体電解質層のうちの、所得した視野中の解析した領域のうちのジルコニア系酸化物のみで囲まれている気孔の面積を、解析した領域の面積で除した値で求めることができる。なお、ジルコニア系酸化物と気孔とは、2次元画像を取得するに当たり、反射電子像を取得したり、2次電子像とEDXやEPMAを併用したりすることで、特定することができる。
固体電解質層12の厚さは、特に限定されないが、例えば1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましい。また、固体電解質層12の厚さは、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。固体電解質層12の厚さが上記範囲内であれば、燃料極支持型セルとした場合に、ガスのクロスリークを防ぎつつも、内部抵抗を小さくすることができるので、SOFC用ハーフセル1の電池性能がより良好となる。また、固体電解質層12は、単層であってもよいし多層構造であってもよい。
バリア層13には、公知のSOFC用単セルのバリア層を適用することができるため、その材料は特に限定されない。一般的に、バリア層13には酸化物イオン伝導性を有する材料が用いられ、例えばGd、Sm及びY等の希土類元素の酸化物等がドープされたセリアが用いられる。また、バリア層13の厚さは、20μm以下であることが好ましい。20μm以下であれば、後述の空気極14と固体電解質層12との材料の熱膨張率差が大きい場合であっても空気極形成時に空気極14に発生するクラック及び剥離等の欠陥を一層低減することができる。バリア層13の厚さは、10μm以下がより好ましく、7μm以下がさらに好ましく、5μm以下が特に好ましい。また、セル作製時又は発電中の高温雰囲気下において、固体電解質層12と空気極14との間で起こる絶縁物質の生成を抑えつつ、発電を促進させる高い効果が期待できることから、バリア層13の厚さは、特に限定されないが、例えば0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。
本実施形態の固体酸化物形電気化学セルの一例として、図2に示すSOFC用単セル2が挙げられる。SOFC用単セル2は、図1に示されているSOFC用ハーフセル1と、空気極14とを備えており、空気極14は、空気極14と燃料極11との間に固体電解質層12が配置されるように配置されている。図2に示す例では、空気極14は、SOFC用ハーフセル1のバリア層13上に配置されている。なお、固体酸化物形電気化学セルがSOECである場合は、空気極は酸素極となる。したがって、固体酸化物形電気化学セルの「空気極」との用語は「酸素極」も含む意味で用いられているが、ここでは便宜上単に「空気極」とのみ記載する。
空気極14は、電子伝導体を必須成分として含み、かつ、イオン伝導体を任意成分として含んでいる。例えば、電子伝導体は、電子伝導体とイオン伝導体との合計に対して25質量%以上100質量%以下の割合となるように、空気極14に含まれている。より低い電気抵抗率を有する空気極14を実現するために、電子伝導体は、電子伝導体とイオン伝導体との合計に対して30質量%以上であることが望ましく、50質量%以上であることがより望ましい。
空気極14に含まれる電子伝導体は、特には限定されず、SOFC用単セルの空気極用の電子伝導体として公知の材料を適宜用いることができる。例えば、電子伝導性に優れ、酸化雰囲気下でも安定な、ペロブスカイト形酸化物が好適に用いられる。
空気極14に含まれるイオン伝導体は、特には限定されず、SOFC用単セルの空気極用のイオン伝導体として公知の材料を用いることができる。
次に、本実施形態の固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルの製造方法の一例について説明する。
本実施形態の固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルの製造方法は、例えば、
ジルコニア系酸化物(a)を含む固体電解質層用原料粉末を用いて、固体電解質層を作製する固体電解質層作製工程と、
YbをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の範囲内で含むジルコニア系酸化物(b)と、導電性金属の酸化物とを含む燃料極原料粉末を用いて燃料極を作製する燃料極作製工程と、
を含み、
前記燃料極原料粉末の細孔容積が0.012cm3/g以上0.9cm3/g以下であり、
前記固体電解質層用原料粉末の平均粒子径(a)に対する前記燃料極原料粉末の平均粒子径(b)の比率(平均粒子径(b)/平均粒子径(a))が、0.3以上4以下である、
製造方法とできる。ここで、粉末の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される値であり、平均粒子径とは体積基準の累積粒度分布から求められるメジアン径、すなわち体積累積が50%に相当する粒子径(D50)のことである。本明細書においては、特に言及しない限り、粉末の平均粒子径は同様の方法によって求められる値である。
以下、図1に示すSOFC用ハーフセル1を製造する方法を例に挙げて、本実施形態のSOFC用ハーフセルの製造方法について詳しく説明する。なお、SOFC用ハーフセルの製造方法は、電解質支持型セルであっても、燃料極支持型セルであってもよく、その種類は特には限定されない。また、本例では、燃料極11、固体電解質層12及びバリア層13を含み、且つ所定の形状を有する多層焼成体を作製することによって、SOFC用ハーフセル1が製造され得る。
上記多層焼成体は、
(1)燃料極支持基板111用のグリーンシート上に、燃料極層112用のグリーン層(燃料極層112を設けない構成の場合は不要)と、固体電解質層12用のグリーン層と、バリア層13用のグリーン層(バリア層13を設けない構成の場合は不要)と、が順に積み重ねられた積層体を形成した後、これら全体を一括して焼成する方法、
又は、
(2)燃料極支持基板111用のグリーンシートを焼成して燃料極支持基板111を作製し、その上に燃料極層112用のグリーン層(燃料極層112を設けない構成の場合は不要)と、固体電解質層12用のグリーン層と、バリア層13用のグリーン層(バリア層14を設けない構成の場合は不要)と、が順に積み重ねられた積層体を形成した後、これらを焼成する方法、
を用いて作製できる。ここでは、(1)の方法を例に挙げて、多層焼成体の作製方法を説明する。
まず、燃料極支持基板111用のグリーンシートを準備する。燃料極支持基板111用のグリーンシートは、SOFC用の燃料極支持基板用の原料粉末と、気孔形成剤と、バインダー及び溶剤とを混合し、さらに必要に応じて分散剤及び可塑剤等を添加してスラリーを調製し、このスラリーをドクターブレード法、カレンダーロール法、押出し法等の任意の方法で所定の厚さを有するシート状に成形し、これを乾燥させて溶剤を揮発除去することによって得られる。燃料極支持基板111は、導電性を与えるための導電成分と、骨格成分となるセラミック質とを含む。したがって、燃料極支持基板用の原料粉末は、導電成分用の材料と、骨格成分用の材料とを含む。導電成分用の材料及び骨格成分用の材料には、それぞれ、SOFC用の燃料極支持基板用の導電成分用の材料及び骨格成分用の材料として公知の材料を用いることができる。また、燃料極支持基板用の原料粉末として、後述の燃料極層112を作製する際に用いられる燃料極層用原料粉末を用いることも可能である。燃料極支持基板111用グリーンシートの作製に用いられる気孔形成剤、バインダー、溶剤、分散剤及び可塑剤等は、SOFCの燃料極支持基板の製造方法において公知となっている気孔形成剤、バインダー、溶剤、分散剤及び可塑剤等の中から適宜選択できる。燃料極支持基板111用のグリーンシートは、焼成後に燃料極支持基板111の厚さが目的の厚さとなるように形成されるとよい。
燃料極支持基板111用のグリーンシート上に、燃料極層112用のペーストを用いて、燃料極層112用のグリーン層が形成される。燃料極層112用のペーストは、SOFC用の燃料極層用原料粉末と、気孔形成剤と、バインダー及び溶剤とを混合し、さらに必要に応じて分散剤及び可塑剤等を添加することによって、調製される。このペーストを燃料極支持基板111用のグリーンシート上に、スクリーン印刷等の方法を用いて塗布し、これを乾燥させることによって、燃料極層112用のグリーン層が形成される。燃料極層112は、導電性を与えるための導電成分と、骨格成分となるセラミック質とを含む。したがって、燃料極層112用のグリーン層の形成に用いられる燃料極層用原料粉末は、導電成分用の材料と、骨格成分用の材料とを含む。導電成分用の材料には、SOFC用の燃料極層用導電成分用の材料として公知の材料である導電性金属の酸化物(例えばニッケル酸化物)を用いることができる。また、燃料極層用の骨格成分用の材料には、YbをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の範囲内で含むジルコニア系酸化物(b)の粉末が用いられる。上記導電性金属の酸化物及びジルコニア系酸化物(b)を含む燃料極層用原料粉末は、細孔容積が0.012cm3/g以上0.9cm3/g以下を満たす。さらに、この燃料極層用原料粉末は、後述の固体電解質層用原料粉末の平均粒子径(a)に対する燃料極層用原料粉末の平均粒子径(b)の比率(平均粒子径(b)/平均粒子径(a))が、0.3以上4以下を満たすものである。また、気孔形成剤、バインダー、溶剤、分散剤及び可塑剤等は、SOFCの燃料極層の製造方法において公知となっている気孔形成剤、バインダー、溶剤、分散剤及び可塑剤等の中から適宜選択できる。燃料極層112用のグリーン層は、焼成後に燃料極層112の厚さが目的の厚さとなるように形成されるとよい。
燃料極層112用のグリーン層の上に、固体電解質層12用のペーストを用いて、固体電解質層12用のグリーン層が形成される。固体電解質層12用のペーストは、少なくとも、ジルコニア系酸化物(a)を含む固体電解質層用原料粉末と、溶媒とを混合して作製される。ジルコニア系酸化物(a)は、例えば、SOFC用の電解質材料として用いられる公知の材料で、酸素イオン伝導性を示すものが好ましく、例えば、Y、Sc、Ybなどの希土類元素により安定化されたジルコニア系酸化物が好ましい。硝酸塩や硫酸塩などの前駆体を用意し、焼成工程中に、希土類元素により安定化されたジルコニア系酸化物になれば、それをSOFC用の電解質として機能する。しかし、焼成と同時に固層反応しなければならなくなるので、電解質層中の組成に偏りが生じたり、電解質に貫通孔が生じたり、完成後のセルの電解質面に突起やくぼみが生じやすい。このような理由から、あらかじめ安定化されたジルコニア系酸化物を準備し、それを用いることが好ましい。なお、目的とする固体電解質層の厚み:tと、使用するジルコニア系酸化物粉体の95%粒子径:D95が、D95≦tを満たす関係にあると、完成後の電解質層に貫通孔が生じにくく、また完成後のセルの電解質面に突起やくぼみが生じにくくなるのでより好ましい。これらの中でも、YbをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の範囲内で含んでいるジルコニア系酸化物が特に好適に用いられる。なお、固体電解質層12用のペーストは、本実施形態のジルコニア系酸化物(a)以外の電解質材料をさらに含んでいてもよいが、高い耐久性能を実現するためには、電解質成分としてジルコニア系酸化物(a)のみを含むことが好ましい。固体電解質層12用のペーストに用いられる溶媒は、特に限定されず、SOFC用単セルの固体電解質層の製造方法において公知となっている溶媒の中から適宜選択できる。固体電解質層12用のグリーン層は、焼成後の固体電解質層12の厚さが目的の厚さとなるように形成されるとよい。
固体電解質層12用のペーストには、本実施形態の固体電解質層用原料粉末及び溶媒に加えて、バインダー、分散剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等を添加してもよい。バインダー、分散剤及び可塑剤は、成膜する固体電解質層12の材料に合わせて、SOFC用単セルの固体電解質層の製造方法において公知となっているバインダー、分散剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等の中から適宜選択できる。
固体電解質層12用のグリーン層上に、バリア層13用のグリーン層を形成する。バリア層13用のグリーン層も、燃料極層112及び固体電解質層12と同様に、バリア層13を構成する原料粉末を含むペーストを調製し、それを固体電解質層12用のグリーン層上に塗布し、乾燥させることによって形成できる。バリア層13を構成する原料粉末としては、SOFC用単セルのバリア層の材料として公知の材料を用いることができる。
燃料極支持基板111用のグリーンシート上に、燃料極層112用のグリーン層と、固体電解質層12用のグリーン層と、バリア層13用のグリーン層と、が順に積み重ねられることによって形成された積層体が、一括して焼成される。積層体の焼成温度は、特に限定されないが、1100℃以上が好ましく、1200℃以上がより好ましく、1250℃以上がさらに好ましい。また、焼成温度は、1500℃以下が好ましく、1450℃以下がより好ましく、1400℃以下がさらに好ましい。また、焼成時の焼成時間は、特に限定されないが、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましい。また、焼成時間は、10時間以下が好ましく、7時間以下がより好ましく、5時間以下がさらに好ましい。
以上のような方法によって、多層焼成体が得られる。所定の形状を有する多層焼成体を得る方法は特に限定されないが、焼成後の収縮を考慮して、焼成後に目的の形状になるように、燃料極支持基板111用のグリーンシート上に、燃料極層112用のグリーン層と、固体電解質層13用のグリーン層と、バリア層14用のグリーン層とが順に積み重ねられることによって形成された積層体を、切断及び/又は打ち抜きしてから焼成してもよいし、前記積層体を焼成して得られた多層焼成体をレーザ又はセラミックカッターを用いて切断してもよい。
以上の方法によって、燃料極支持型のSOFC用ハーフセル1を製造できる。
上記方法によって得られたSOFC用ハーフセル1において、燃料極11と反対側の面上に、空気極14を作製する。空気極14用のペーストを用いて空気極14用のグリーン層を形成し、それを焼成することによって空気極14が作製される。空気極14用のペーストは、空気極14を構成する原料粉末、バインダー及び溶剤と、必要により気孔形成剤、分散剤及び可塑剤等とを共に均一に混合することによって、調製される。空気極14を構成する原料粉末、バインダー、溶剤、気孔形成剤、分散剤及び可塑剤等は、SOFC用単セルの空気極の製造方法において公知となっている空気極材料、バインダー、溶剤、気孔形成剤、分散剤及び可塑剤等の中から適宜選択できる。調製したペーストを、多層焼成体上にスクリーン印刷等により塗布し、乾燥させることによって、空気極12用のグリーン層が形成される。これを焼成することによって、空気極12が作製される。焼成温度は、特に限定されないが、800℃以上が好ましく、850℃以上がより好ましく、950℃以上がさらに好ましい。また、焼成温度は、1300℃以下が好ましく、1250℃以下がより好ましく、1200℃以下がさらに好ましい。また、焼成時の焼成時間は、特に限定されないが、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましい。また、焼成時間は、10時間以下が好ましく、7時間以下がより好ましく、5時間以下がさらに好ましい。空気極12用のグリーン層は、焼成後の空気極12の厚さが目的の厚さとなるように形成されるとよい。
以上のような方法によって、SOFC用単セル2を製造することができる。
上記の実施形態では、本発明の固体酸化物形電気化学セル用ハーフセル及び固体酸化物形電気化学セルの実施形態として、SOFC用ハーフセル及びSOFCを例に挙げて詳しく説明したが、本発明の固体酸化物形電気化学セル用ハーフセル及び固体酸化物形電気化学セルはSOFC用ハーフセル及びSOFCには限定されず、SOEC用ハーフセル及びSOECとしても機能し得ることは言うまでもない。
以下では、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
<実施例1>
(燃料極支持基板グリーンシートの作製)
導電成分としての酸化ニッケル(正同化学工業社製、商品名「Green」)60質量部、骨格成分としての3モル%イットリア安定化ジルコニア粉末(東ソー社製、商品名「TZ3Y」)40質量部、気孔形成剤としてのカーボンブラック(SECカーボン社製、SGP−3)10質量部、メタクリレート系共重合体からなるバインダー(分子量:30,000、ガラス転移温度:−8℃、固形分濃度:50質量部)30質量部、可塑剤としてジブチルフタレート2質量部及び分散媒としてトルエン/イソプロピルアルコール(質量比=3/2)の混合溶剤80質量部を、ボールミルにより混合して、スラリーを調製した。得られたスラリーを使用し、ドクターブレード法によりシート成形し、70℃で5時間乾燥させて、燃料極支持基板グリーンシートを作製した。なお、グリーンシートの厚さについては、同じ組成のスラリーを用いて予備実験を行い、グリーンシートと焼成後のシートとの厚さの関係を考慮して、焼成後のシートの厚さが400μmになるようにコントロールしてグリーンシート(1)を作製した。
(ジルコニア系酸化物粉末(1)の作製)
塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、YbがZr100モルに対して17.4モルになるように計量した。超純水(抵抗率:17.5MΩ・cm)を用意し、加温機能付きのマグネチックスターラーを用いて水温が20℃になるようにコントロールし、上記塩化物を溶解させた。なお、30分経っても溶解しない場合には、さらに超純水を加え、目視で、塩化物が溶解するまで溶解させた。目視で塩化物が溶解したことを確認した後、それまで溶解に必要とした超純水の10質量%に当たる量の超純水をさらに加え、水溶液を25℃になるように加温・保温しながらさらに1時間攪拌して、塩化物を完全に溶解させた。得られた水溶液をアンモニア水に滴下して得られた沈殿物を、洗浄及び乾燥後、800℃で1時間仮焼した。仮焼した粉末にエタノールを加え、ボールミルで10時間粉砕混合してから乾燥させて、さらに乳鉢にて解砕を行い、解砕した粉を1200℃で焼成して、ジルコニア系酸化物粉末(1)としてYbがZr100モルに対して17.4モルである粉末を得た。得られたジルコニア系酸化物粉末(1)の平均粒子径(D50)は1.79μmであった。
(燃料極層用原料粉末の調製)
ポリ容器に、導電成分としての酸化ニッケル(日興リカ株式会社、商品名「高純度酸化ニッケルF」)60質量部、骨格成分であり、かつイオン伝導成分としての上記ジルコニア系酸化物粉末(1)40質量部、さらに分散媒としてのエタノールを加え、これをボールミルで粉砕混合してから乾燥させて、混合粉末(1b)(NiO/8YbSZ混合粉末)を得た。なお、このボールミル処理では、回転時間を調整して、平均粒子径(D50)が0.29μmの粉末を得た。
(燃料極層用ペースト(1)の作製)
上記のボールミル処理により得られた混合粉末(1b)60質量部、溶剤としてのα−テルピネオール(和光純薬工業社製)36質量部、バインダーとしてのエチルセルロース(和光純薬工業製)4質量部、可塑剤としてのジブチルフタレート(和光純薬工業社製)6質量部及び分散剤としてのソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤4質量部を、乳鉢を用いて混合した後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M−80S」、ロール材質:アルミナ)を用いて解砕し、燃料極層用ペースト(1)を作製した。なお、このペースト化処理では、3本ロールミル間のギャップと回転速度とを調整することによって、後述の<ペースト中の凝集物の評価>に記載されたグラインドメータで計測される最大粒子径の大きさが10μm以下になるまで解砕/混練した。
(固体電解質層用原料粉末のボールミル処理)
ポリ容器に、上記ジルコニア系酸化物粉末(1)、さらに分散媒としてのエタノールを加え、これをボールミルで粉砕してから乾燥させて、ボールミル処理した固体電解質層用原料粉末(1)を得た。なお、このボールミル処理では、回転時間を調整して、平均粒子径(D50)が0.25μmの粉末を得た。
(固体電解質層用ペースト(1)の作製)
上記のボールミル処理により得られた固体電解質層用原料粉末(1)を60質量部、バインダーとしてエチルセルロース(和光純薬工業社製)を5質量部、溶剤としてα−テルピネオール(和光純薬工業社製)を40質量部、可塑剤としてジブチルフタレート(和光純薬工業社製)を6質量部及び分散剤としてソルビタン酸エステル系界面活性剤(三洋化成工業株式会社製、商品名「イオネットS−80」)5質量部を、乳鉢を用いて混合した後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M−80S」ロール材質:アルミナ)を用いて解砕し、固体電解質層用ペースト(1)を作製した。なお、このペースト化処理では、3本ロールミル間のギャップと回転速度を調整することによって、後述の<ペースト中の凝集物の評価>に記載されたグラインドメータで計測される最大粒子径の大きさが10μm以下になるまで解砕/混練した。
(バリア層用のペースト(1)の作製)
セラミック質として、10モル%ガドリニアがドープされているセリア粉末(阿南化成株式会社製)60質量部、バインダーとしてのエチルセルロース(和光純薬工業株式会社製)5質量部、溶剤としてのα−テルピネオール(和光純薬工業株式会社製)40質量部、可塑剤としてのジブチルフタレート(和光純薬工業株式会社製)6質量部及び分散剤としてのソルビタン酸エステル系界面活性剤(三洋化成工業株式会社製、商品名「イオネットS−80」)5質量部、を乳鉢を用いて混合した後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M−80S」、ロール材質:アルミナ)を用いて解砕した。これにより、バリア層用ペースト(1)を得た。なお、このペースト化処理では、3本ロールミル間のギャップと回転速度を調整することによって、後述の<ペースト中の凝集物の評価>に記載されたグラインドメータで計測される最大粒子径の大きさが10μm以下になるまで解砕/混練した。
(燃料極層用グリーン層(1)の形成)
上記燃料極層用ペースト(1)をスクリーン印刷により、上記で得た燃料極支持基板グリーンシート(1)に、焼成後の厚さが20μmとなるように印刷し、100℃で30分間乾燥させ、燃料極層用グリーン層(1)を形成した。
(固体電解質層用グリーン層(1)の形成)
上記で得た燃料極層用グリーン層(1)上に、上記固体電解質層用ペースト(1)をスクリーン印刷により、焼成後の厚さが7μmとなるように印刷し、100℃で30分間乾燥させ、固体電解質層用グリーン層(1)を形成した。
(バリア層用グリーン層(1)の形成)
上記で得た固体電解質層用グリーン層(1)上に、上記バリア層用ペースト(1)をスクリーン印刷により、焼成後の厚さが3μmとなるように印刷した。これを100℃で30分間乾燥させることによって、バリア層用グリーン層(1)を形成した。
(焼成)
上記で得たバリア層用グリーン層(1)、固体電解質層用グリーン層(1)、燃料極層用グリーン層(1)が形成された燃料極支持基板グリーンシート(1)を、焼成後の1辺が60mmの正方形になるように打ち抜いた。打ち抜いた後、1350℃で2時間焼成して燃料極支持基板上に燃料極層、固体電解質層およびバリア層を有するハーフセル(1)を得た。
(空気極層用のLSCF粉末の調製)
空気極層の原料となる粉末材料として、LSCFの粉末(1)を以下のようにして調製した。すなわち、市販の純度99.9%のLa23、SrO、純度99%のCoO及びFe23の粉末を元素比がLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8となるように混合した。得られた混合物にエタノールを加えて、これをビーズミルで1時間粉砕混合した。次いで、得られた混合物を乾燥させてから、800℃で1時間仮焼した。仮焼後の混合物に対し、さらにエタノールを加えてビーズミルで1時間粉砕混合してから、乾燥させた。その後、1200℃で混合物を5時間加熱することによって、粉末を得た。得られた粉末にエタノールを加え、さらにこれをボールミルで10時間粉砕混合してから乾燥させて、粉末を得た。なお、得られた粉末は、X線回折によって、ペロブスカイトからなる単一相であることが確認された。さらにその後、遊星ボールミルを用い、回転数と回転時間を調製しながら粉砕することによって、平均粒子径(D50)が0.52μmである、LSCF粉末(1)を得た。
(空気極層用ペースト(1)の調製)
上記の方法で調製されたLSCF粉末(1)100質量部に対して、バインダーとしてのエチルセルロースが3質量%、溶剤としてのα−テルピネオールが30質量%の割合となるように加え、これを乳鉢を用いて予備混合した。その後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M−80S」、ロール材質:アルミナ)を用いて混練し、空気極層用ペースト(1)を得た。
(空気極の形成)
上記バリア層を有する燃料極支持型ハーフセル(1)のバリア層の表面に、スクリーン印刷により、上記空気極層用ペースト(1)を1cm×1cmの正方形に塗布し、90℃で1時間乾燥させ、空気極層用グリーン層(1)を形成した。この空気極層用グリーン層(1)を1000℃で2時間焼成して空気極を形成し、実施例1に係るSOFC用単セル(1)を得た。
<実施例2>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)として、Zr100モルに対してYbが17.4モルであるジルコニア系酸化物の代わりに、Zr100モルに対してYbが27.3モルであるジルコニア系酸化物を製造して使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2のSOFC用単セル(2)を作製した。
<実施例3>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)からの固体電解質層用原料粉末(1)の調製において、ボールミル処理する際の回転数と回転時間とを変更することによって、平均粒子径(D50)が0.89μmの粉体を得、その粉体を固体電解質層用原料粉末(3)として使用した以外は、実施例1と同様に実施例3のSOFC用単セル(3)を作製した。
<実施例4>
実施例1における酸化ニッケル粉末とジルコニア系酸化物粉末(1)とから燃料極層用原料粉末を調製する際のボールミル処理条件である回転数と回転時間とを変更することによって、平均粒子径(D50)が0.98μmの粉体を得、その粉体を燃料極層用原料粉末(4b)として使用して燃料極層用ペースト(4)を作製した以外は、実施例1と同様に実施例4のSOFC用単セル(4)を作製した。
<実施例5>
実施例1における燃料極層用原料粉末の調製においてボールミル処理条件である回転数と回転時間とを変更することによって、平均粒子径(D50)が0.11μmの粉体を得、その粉体を燃料極層用原料粉末(5b)として使用して燃料極層用ペースト(5)を作製した以外は、実施例1と同様に実施例4のSOFC用単セル(5)を作製した。
<実施例6>
実施例1における燃料極層用原料粉末の調製においてボールミル処理条件である回転数と回転時間とを変更することによって、平均粒子径(D50)が0.098μmの粉体を得、その粉体を燃料極層用原料粉末(6b)として使用して燃料極層用ペースト(6)を作製した以外は、実施例1と同様に実施例4のSOFC用単セル(6)を作製した。
<比較例1>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)として、Zr100モルに対してYbが17.4モルであるジルコニア系酸化物の代わりに、Zr100モルに対してScが17.4モルであるジルコニア系酸化物を製造して使用した以外は、実施例1と同様にして比較例1のSOFC用単セル(c1)を作製した。
<比較例2>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)として、Zr100モルに対してYbが17.4モルであるジルコニア系酸化物の代わりに、Zr100モルに対してYが17.4モルであるジルコニア系酸化物を製造して使用した以外は、実施例1と同様にして比較例2のSOFC用単セル(c2)を作製した。
<比較例3>
実施例1において、固体電解質層用原料粉末(1)の代わりに、ジルコニア系酸化物粉末(1)をボールミル処理を行わずに用いて固体電解質層用ペースト(c3)を作製した以外は、実施例1と同様にして比較例3のSOFC用単セル(c3)を作製した。
<比較例4>
実施例1の「燃料極層用原料粉末の調製」において、酸化ニッケル粉末、ジルコニア系酸化物粉末(1)およびエタノールを実施例1と同様の比率で混合し、しかしボールミル処理は行わずに得た粉末を燃料極層用原料粉末として用いて燃料極層用ペースト(c4)を作製した以外は、実施例1と同様にして比較例4のSOFC用単セル(c4)を作製した。
<比較例5>
実施例1の燃料極層用原料粉末の調製」において、ボールミル処理条件である回転数と回転時間とを変更することによって、平均粒子径(D50)が0.089μmの粉体を得、その粉体を燃料極層用原料粉末として使用して燃料極層用ペースト(c5)を作製した以外は、実施例1と同様に比較例5のSOFC用単セル(c5)を作製した。
以下に、実施例及び比較例において実施した測定方法及び評価方法について説明する。
<粉末の平均粒子径の測定方法>
ピロリン酸ナトリウム(和光純薬製、商品名「ピロリン酸ナトリウム+水和物」)を0.2重量%になるように純水に溶解し、分散媒とした。この分散媒に粉末を分散させ、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、型番LA−920)を用いて、粉末の平均粒子径を測定した。なお、ここで測定された平均粒子径とは、体積基準の累積粒度分布から求められるメジアン径、すなわち体積累積が50%に相当する粒子径(D50)のことである。各実施例及び各比較例における燃料極層用原料粉末及び固体電解質用原料粉末の平均粒子径の測定結果を表1に示す。
<ペースト中の凝集物の最大粒子径の評価>
ペースト中の凝集物の最大粒子径は、JIS K5600−2−5.分散度に従い、グラインドメータを用いて測定した。具体的には、グラインドメータ(BYK社製)の溝にペーストを垂らし、スクレーバーを用いてしごき溝の中に厚さが連続して変化したペースト層を作る。この時、ペースト中の凝集物による顕著な斑点が現れ始めた箇所の層の厚さを読み取り、凝集物の最大粒子径とする。なお、この測定を3回行い、3回の平均値を求めてペースト中の凝集物の最大粒子径とした。
<燃料極層用原料粉末の細孔容積の測定>
燃料極層用原料粉末のボールミル処理後の粉末の細孔容積は、水銀ポロシメータにより求めた。具体的には、マイクロメリティックス社製 AutoPore IV 9520を用いて、粉末の細孔容積を計測した。各実施例及び各比較例における燃料極層用原料粉末の細孔容積の測定結果を表1に示す。
<粉末の組成の評価>
作製したジルコニア系酸化物粉末、およびLSCF粉末の組成は、粉末をペレット状に圧縮成型したものについて、XRF(BRUKER社製:S8 TIGER)を用いて分析を行い、目的の組成となっているとことを確認した。
<結晶構造の評価>
作製したジルコニア系酸化物粉末の結晶構造は、XRD(スペクトリス株式会社製:X PERT−MPD)を用いて分析を行い、安定化されていることを確認した。作製したLSCF粉末の結晶構造については、XRD(スペクトリス株式会社製:X PERT−MPD)により、分析を行ない、ペロブスカイトからなる単一相であることを確認した。
<電池性能評価試験>
各実施例及び比較例のSOFC用単セルについて、以下の方法で電池性能を評価した。SOFC用単セルの燃料極に100mL/分の窒素を、空気極に100mL/分の空気を供給しつつ、100℃/時間の速度で測定温度(750℃)まで昇温した。昇温後、燃料極、空気極の出口側のガスについて、流量計で、流量を測定し、漏れが無いことを確認した。次いで、水温25℃のバブラーにより加湿した、水素6mL/分及び窒素194mL/分の混合ガスを燃料極へ、400mL/分の空気を空気極へ供給した。10分以上経過後に起電力が発生し、漏れが無いことを再度確認した後、燃料極側のガスを、水素/水蒸気が20/80vol%であって、かつ水素及び水蒸気の合計の流量が200mL/分になるようにバブラーの温度と水素流量とを調整して変更し、燃料極へ供給した。起電力が安定してから、10分以上経過後に、電流密度を0.4A/cm2にし耐久試験(一定電流下におけるにおける電圧の劣化試験)を実施した。初期電圧V0h及び500時間後の電圧V500hから、以下の式により劣化率を求めた。各実施例及び各比較例の電池性能評価試験の結果を表1に示す。
劣化率(%)={(V500h−V0h)÷V0h}×100
<固体電解質層及び燃料極層中のジルコニア系酸化物の平均粒子径の測定>
上記の電池性能評価試験後の各実施例及び比較例のSOFC用単セルについて、水素を6mL/分、窒素を194mL/分の混合ガスを燃料極へ供給しながら降温を行い、常温において、燃料極層が金属Niを維持したまま(燃料極層が還元状態)のサンプルを得た。各サンプルをガラスカッターを用いて切断し、断面観察用サンプルを作製した。電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM−7600F)を用いてその断面観察用サンプルの固体電解質層及び燃料極層の断面観察を行い、8000倍拡大写真を撮影した。なお、撮影は、SOFC用単セルにおいて空気極が形成されている領域の中央部分と空気極の端部から約2mm離れた部分との2か所を1視野内に含む3視野について行った。得られた写真を用いて固体電解質層及び燃料極層中のジルコニア系酸化物の結晶粒子の大きさを測定した。具体的には固体電解質層及び燃料極層中の任意のジルコニア系酸化物の粒子100個について、Media Cybernetics社製画像解析用ソフトImage−Pro(version4.0.0.11)を用いて写真中のジルコニア系酸化物の粒子の周長を計測し、その周長を円相当径に変換し、得られた円相当径から個数基準の平均粒子径を求めた。すなわち、固体電解質層中のジルコニア系酸化物(A)の平均粒子径(A)と燃料極層中のジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径(B)とを求め、これらの比(A/B)を求めた。また、同様にして、得られた燃料極層中のジルコニア系酸化物の粒子の粒子径の標準偏差(C)を求め、燃料極層中のジルコニア系酸化物の粒子(B)の平均粒子径(B)と粒子径の標準偏差(C)との差:(B−C)を求めた。結果を表1に示す。
Figure 0006808544
本発明の電解質材料及びSOFC用単セルによれば、SOFCの耐久性能を向上させることができる。したがって、本発明は、SOFCの高耐久性能化に寄与できるものである。
1 SOFC用ハーフセル
2 SOFC用単セル
11 燃料極
12 固体電解質層
13 バリア層
14 空気極
111 燃料極支持基板
112 燃料極層

Claims (4)

  1. 燃料極(水素極を含む)と、前記燃料極の一方の主面上に配置された固体電解質層とを備えた固体酸化物形燃料電池用ハーフセルであって、
    前記固体電解質層は、ジルコニア系酸化物(A)を含んでおり、
    前記燃料極は、YbをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の範囲内で含むジルコニア系酸化物(B)含んでおり、
    前記ジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径(B)に対する前記ジルコニア系酸化物(A)の平均粒子径(A)の比率(平均粒子径(A)/平均粒子径(B))が、1.0以上8.0以下である、
    固体酸化物形電気化学セル用ハーフセル。
  2. 前記ジルコニア系酸化物(B)の平均粒子径(B)と、前記ジルコニア系酸化物(B)の粒子径の標準偏差との差が、0.15μm以上3.0μm以下である、
    請求項1に記載の固体酸化物形電気化学セル用ハーフセル。
  3. 請求項1又は2に記載の固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルと、空気極(酸素極を含む)とを備えた固体酸化物形燃料電池用単セルであって、
    前記空気極は、前記空気極と前記燃料極との間に前記固体電解質層が配置されるように配置されている、
    固体酸化物形電気化学セル。
  4. 固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルを製造する方法であって、
    ジルコニア系酸化物(a)を含む固体電解質層用原料粉末を用いて、固体電解質層を作製する固体電解質層作製工程と、
    YbをZr100モルに対して6モル以上30モル以下の範囲内で含むジルコニア系酸化物(b)と導電性金属の酸化物とを含む燃料極(水素極を含む)原料粉末を用いて燃料極(水素極を含む)を作製する燃料極(水素極を含む)作製工程と、
    を含み、
    前記燃料極原料粉末の細孔容積が0.012cm3/g以上0.9cm3/g以下であり、
    前記固体電解質層用原料粉末の平均粒子径(a)に対する前記燃料極原料粉末の平均粒子径(b)の比率(平均粒子径(b)/平均粒子径(a))が、0.3以上4以下である、
    固体酸化物形電気化学セル用ハーフセルの製造方法。
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