JP6562623B2 - 固体酸化物型燃料電池用混合空気極材料、及び、固体酸化物型燃料電池 - Google Patents
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Description
この固体酸化物型燃料電池は、例えば、空気極、固体電解質、及び燃料極を備えた燃料電池セルを、多数積層してスタックを形成し、燃料極に燃料ガスを供給すると共に、空気極に空気を供給し、水素等の燃料と空気中の酸素とを固体電解質を介して化学反応させることによって電力を発生させるものである。
すなわち、空気極(カソード)は接触抵抗低減のため、空気極材料粒子同士が電気的に充分接合されていることが要求され、燃料電池の高性能化には、一般的に1000℃を超える高温での焼結が必要とされる。
しかし、高温で焼結すると、物質移動が促進し、粒同士の接触面積が拡大するため、空気極の比表面積が小さくなる。
したがって、高温で焼結すると比表面積の減少により電気化学反応場が減少し、電池出力が低下するため、接触抵抗の低減と比表面積の増大とを両立させて燃料電池の高性能化を図ることは困難である。また、高温での焼結は生産性を低下させるため製造コストを低減させることは困難である。
すなわち、上記電解質材料粒子は粒径が小さく熱容量が小さいため、焼結性が向上し、空気極材料における物質の移動が始まる前から物質の移動が始まり、空気極材料粒子同士を結合させるため、空気極材料粒子の比表面積を減少させずに低温での焼結が可能になる。
本発明の固体酸化物型燃料電池用混合空気極材料は、空気極材料と電解質材料とが混合されたものであり、前記電解質材料の平均一次粒径が前記空気極材料の平均一次粒径よりも小さいものである。
電解質材料は、空気極材料の融点と同程度の融点(1500℃以上)を有するものであり、焼結助剤としては機能し難いものである。
本発明においては、空気極材料粒子の平均一次粒径よりも、電解質材料粒子の平均一次粒径が小さく、1粒子あたりの熱容量が小さく焼結性が高いものを用いる。したがって、空気極材料粒子において物質の移動が始まる温度以下で、電解質材料粒子において物質の移動が始まるため、電解質材料が焼結助剤として機能し、低温での焼結が可能になる。
なお、結晶子とは、結晶とみなせる最小の単位である。また、一次粒子と二次粒子とは電子顕微鏡で粒と粒との境目(粒界)を観察することで区別できる。
上記電解質材料粒子の一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真により測定できる。
上記希土類元素ドープ酸化セリウムとしては、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、イットリウム(Y)、又はイッテルビウム(Yb)でドープされた酸化セリウムが挙げられ、また、希土類元素ドープ酸化ジルコニウムとしては、イットリウム(Y)、又はスカンジウム(Sc)ドープされたジルコニウム酸化物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
電解質材料粒子の粒径は、電解質材料にもよるが、温度、圧力及び処理時間を調節することで調節することができ、水熱成長法によれば、一次粒径が5nm程度までの小粒径の電解質材料微粒子を得ることが可能である。
上記空気極材料としては、従来から固体酸化物型燃料電池の空気極に用いられているペロブスカイト型酸化物材料を使用できる。
具体的には、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、コバルト(Co)、鉄(Fe)を含む(La,Sr)(Co,Fe)O3系複合酸化物(LSCF)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、コバルト(Co)を含む(La,Sr)CoO3系複合酸化物(LSC)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、マンガン(Mn)を含む(La,Sr)MnO3系複合酸化物(LSM)、ランタン(La)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)を含む(La,Ni)CoO3系複合酸化物(LNC)、ランタン(La)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)を含む(La,Ni)FeO3系複合酸化物(LNF)、ストロンチウム(Sr)、サマリウム(Sm)、コバルト(Co)を含む(Sr,Sm)CoO3系複合酸化物(SSC)を挙げることができる。これらは、一種又は2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の固体酸化物型燃料電池を説明する。図6は、固体酸化物型燃料電池の一例を模式的に示した断面構成図である。
支持体となる薄板状あるいはシート状の燃料極1と、該燃料極1の表面に形成された固体電解質膜2と、該固体電解質膜2の表面に形成された薄板状あるいはシート状の空気極3とが積層された構造を有する。
例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)その他の白金族元素、コバルト(Co)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)等からなる金属および/または金属元素のうちの1種類以上から構成される金属酸化物が挙げられる。これらは、一種又は二種以上を混合して用いてもよい。
硝酸セリウム(Ce(NO3)3)と硝酸サマリウム(Sm(NO3)3)とを、モル比でCe:Smが8:2になるように秤量して純水に溶かし、この溶液0.5Mにオレイン酸ナトリウムを0.5M加え、さらにアンモニア水5mLを加えてpHを10〜11に調整し、電解質原料の溶液を得た。
結晶子径は次式(1)によって計算した。
D=Kλ/βcosθ ・・・(1)
但し、Dは結晶子径、βは半値幅、Kはシェラー定数(SDCは0.9)、λは測定波長、θは回折角である。
比較例として、市販の電解質材料(SDC、AGCセイミケミカル株式会社、LOTNO.06031001)を使用した。
また、X線回析(XRD)の結果から、[電解質材料2]の平均結晶子径は26nmであった。[電解質材料1]と[電解質材料2]の電解質材料のXRD結果を図3に示す。
硝酸ランタン(La(NO3)2)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2)、硝酸鉄(Fe(NO3)2)、及び、硝酸コバルト(Co(NO3)2)を、La:Sr:Fe:Coがモル比で6:4:2:2になるように秤量して純水に溶解し、モル比でLSCF原料:クエン酸が1:1になるようにクエン酸を加え60℃で湯煎し、さらにLSCF原料:オレイン酸ナトリウムがモル比で1:1になるようにオレイン酸ナトリウムを加え、60℃で湯煎した。
上記原料粉末を徐々に温度を上げて焼成し[空気極材料(LSCF)]を得た。
焼成条件は、130℃で1時間加熱した後、200℃で1時間加熱し、その後さらに500℃で2時間加熱して行った。
X線回析(XRD)の結果から、[空気極材料]の平均結晶子径は15nmであった。
なお、LSCFのシェラー定数は1.33、βは積分幅とした。
以下の条件でペレット状に成形し、焼結後のペレットの重量を電子天秤で測定し、ノギスで寸法を測定して、ペレットの密度を測定した。
測定密度と理論密度との比(測定密度/理論密度)から焼結性(相対密度)を評価した。
なお、電解質材料1、電解質材料2、空気極材料各々の理論密度は各々のXRDの結果から、リートベルト解析することで求めた。また、比較例1、実施例1〜3の理論密度は、前記電解質材料1、電解質材料2、空気極材料各々の理論密度及び混合比から求めた。
粉末重量:0.22g
油圧プレス機面圧:200MPa
ペレット寸法:直径10mm 厚さ1mm
[焼結条件]
毎分4℃で昇温させ、900℃で4時間焼結させた。
上記[電解質材料2]の含有量が20質量%になるように[空気極材料]と混合し、[混合空気極材料1]を得た。
[混合空気極材料1]の焼結性を上記方法で評価した。[混合空気極材料1]の焼結性(相対密度)は60%であり、[空気極材料]単体よりも焼結性が低下した。
上記[電解質材料1]の含有量が5質量%になるように[空気極材料]と混合し、[混合空気極材料2]を得た。
[混合空気極材料2]の焼結性を上記方法で評価した。[混合空気極材料2]の焼結性(相対密度)は67%であり、[空気極材料]単体よりも焼結性が向上した。
上記[電解質材料1]の含有量が10質量%になるように空気極材料と混合し、[混合空気極材料3]を得た。
[混合空気極材料3]の焼結性を上記方法で評価した。[混合空気極材料3]の焼結性(相対密度)は70%であり、[空気極材料]単体よりも焼結性が向上した。
上記[電解質材料1]の含有量が20質量%になるように空気極材料と混合し、[混合空気極材料4]を得た。
[混合空気極材料4]の焼結性を上記方法で評価した。[混合空気極材料4]の焼結性(相対密度)は74%であり、[空気極材料]単体よりも焼結性が向上した。
評価結果を表1に示す。
また、低い温度で焼結した空気極は比表面積が大きく、燃料電池の電池出力を向上できる。
2 固体電解質膜
3 空気極
Claims (8)
- 空気極材料と電解質材料とが混合された固体酸化物型燃料電池用混合空気極材料であって、
該電解質材料の平均一次粒径が上記空気極材料の平均一次粒径よりも小さく、かつ上記空気極材料の結晶子径よりも小さいことを特徴とする固体酸化物型燃料電池用混合空気極材料。 - 空気極材料と電解質材料とが混合された固体酸化物型燃料電池用混合空気極材料であって、
該電解質材料の平均一次粒径が15nm以下であり、かつ上記空気極材料の平均一次粒径よりも小さいことを特徴とする固体酸化物型燃料電池用混合空気極材料。 - 上記電解質材料を5質量%以上含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物型燃料電池用混合空気極材料。
- 上記電解質材料が、蛍石型の結晶構造を有する固体酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の固体酸化物型燃料電池用混合空気極材料。
- 上記電解質材料が、希土類元素ドープ酸化セリウム又は希土類元素ドープ酸化ジルコニウムを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の固体酸化物型燃料電池用混合空気極材料。
- 上記空気極材料が、ペロブスカイト型酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の固体酸化物型燃料電池用混合空気極材料。
- 上記空気極材料が、(La,Sr)(Co,Fe)O3系複合酸化物(LSCF)を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の固体酸化物型燃料電池用混合空気極材料。
- 空気極と固体電解質とが積層された積層体を有する固体酸化物型燃料電池であって、上記空気極が請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の混合空気極材料を含み、上記電解質が上記混合空気極材料に含有される電解質材料を含有するものであることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
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