以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。この図1には、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面が示されている。
図1において、タイヤ2はリムRに組み込まれている。このリムRは、正規リムである。このタイヤ2には、空気が充填されている。これにより、このタイヤ2の内圧は正規内圧に調整されている。
タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、特に言及のない限り、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。タイヤ2が乗用車用である場合は、特に言及のない限り、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
本明細書において正規荷重とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
図1において、実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、タイヤ2が装着されるリムRのリム径(JATMA規格等参照)を規定する線である。このビードベースラインは、軸方向に延びる。
図1において、符号PEはタイヤ2の外面と赤道面との交点である。この交点PEは、赤道とも称される。この交点PEは、このタイヤ2の半径方向外側端でもある。両矢印Hは、ビードベースラインからこの赤道PEまでの半径方向距離である。JATMA規格において、この距離Hは「断面高さ」とも称されている。
図1において、符号PWはタイヤ2の外面上の特定の位置である。このタイヤ2は、この位置PWにおいて最大の軸方向幅を示す。この位置PWは、このタイヤ2の最大幅位置である。この最大の軸方向幅は、JATMA規格においては、「断面幅」とも称されている。なお、このタイヤ2の外面に、溝、ディンプル等の凹凸が設けられている場合には、この凹凸がないと仮定して得られる仮想外面、すなわち、プロファイルに基づいて、前述の位置PWは決められる。本発明においては、タイヤ2をリムRに組み込み、正規内圧となるようにこのタイヤ2に空気を充填し、このタイヤ2に荷重がかけられない状態での、このタイヤ2の外面が、プロファイルのベースとされる。
図1において、両矢印HWXはビードベースラインから最大幅位置PWまでの半径方向距離である。このタイヤでは、断面高さHに対する距離HWXの比は0.3から0.6までの範囲で設定される。言い換えれば、このタイヤでは、この比は0.3以上0.6以下である。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、一対の支持層14、ベルト16、バンド18、インナーライナー20、一対のチェーファー22及び一対の緩衝層24を備えている。タイヤ2は、多数のパーツで構成されている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面26を形成する。トレッド4には、溝28が刻まれている。この溝28により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、ベース層30とキャップ層32とを有している。キャップ層32は、ベース層30に積層されている。ベース層30は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。キャップ層32は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側部分は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側部分は、クリンチ8と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6の端から半径方向略内向きに延びている。クリンチ8は、軸方向において、ビード10及びカーカス12よりも外側に位置している。図1に示されているように、クリンチ8は、軸方向において緩衝層24よりも外側に位置している。クリンチ8は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ8は、リムRと当接する。
このタイヤ2では、クリンチ8の硬さHcは60以上90以下が好ましい。この硬さHcが60以上に設定されることにより、クリンチ8が剛性に寄与する。このタイヤ2では、ビード10の部分の変形が抑えられる。この観点から、この硬さHcは65以上がより好ましい。この硬さHcが90以下に設定されることにより、クリンチ8による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2は、乗り心地に優れる。この観点から、この硬さHcは85以下がより好ましい。
本発明において、タイヤ2を構成する各パーツの硬さは、「JIS K6253」の規定に準じ、タイプAのデュロメータによって測定される。図1に示された断面にこのデュロメータが押し付けられ、硬さが測定される。測定は、70℃の温度下でなされる。本発明においては、70℃の温度下で測定された硬さが「硬さ」として表されている。
このタイヤ2では、クリンチ8の損失正接(tanδ)Tcは0.08以下が好ましい。これにより、タイヤ2が繰り返し変形することによる、クリンチ8の発熱が抑えられる。このクリンチ8は、タイヤ2の耐久性に寄与する。この観点から、この損失正接Tcは0.07以下がより好ましく、0.06以下がより好ましい。損失正接Tcは小さいほど好ましいので、この損失正接Tcの好ましい下限は設定されない。
本発明において、タイヤ2を構成する各パーツの損失正接(tanδ)は、「JIS K 6394」の規定に準拠して測定される。測定条件は、以下の通りである。損失正接の測定温度は、70℃である。本発明においては、70℃の温度下で測定された損失正接が「損失正接」として表されている。
粘弾性スペクトロメーター:岩本製作所の「VESF−3」
初期歪み:10%
動歪み:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
図1において両矢印HCはビードベースラインからクリンチ8の半径方向外側端34までの半径方向距離である。
このタイヤ2では、クリンチ8の外側端34は半径方向においてこのタイヤ2の最大幅位置PWよりも内側に位置している。言い換えれば、距離HWXに対する距離HCの比率は100%未満である。このタイヤ2では、クリンチ8による乗り心地への影響が効果的に抑えられる。この観点から、この比率は90%以下が好ましく、85%以下がより好ましい。クリンチ8が剛性に効果的に寄与するとの観点から、この比率は50%以上が好ましく、55%以上がより好ましい。
それぞれのビード10は、クリンチ8よりも軸方向内側に位置している。ビード10は、コア36と、エイペックス38とを備えている。コア36はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス38は、コア36から半径方向略外向きに延びている。このエイペックス38は、半径方向外向きに先細りである。このタイヤ2では、エイペックス38は、半径方向において、コア36の外側に位置している。ビード10の半径方向内側部分において、エイペックス38がコア36を覆うように、このビード10が構成されてもよい。
このタイヤ2では、エイペックス38は高硬度な架橋ゴムからなる。このエイペックス38は、ビード10の部分の剛性に寄与する。
このタイヤ2では、エイペックス38の硬さHaは70以上95以下が好ましい。この硬さHaが70以上に設定されることにより、エイペックス38が剛性に寄与する。このタイヤ2では、ビード10の部分の変形が抑えられる。この観点から、この硬さHaは75以上がより好ましい。この硬さHaが95以下に設定されることにより、エイペックス38による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2では、良好な乗り心地が維持される。この観点から、この硬さHaは90以下がより好ましい。このエイペックス38の硬さHaは、前述されたクリンチ8の硬さHcと同様にして測定される。
このタイヤ2では、エイペックス38の損失正接Taは0.08以下が好ましい。これにより、タイヤ2が繰り返し変形することによる、エイペックス38の発熱が抑えられる。このエイペックス38は、タイヤ2の耐久性に寄与する。この観点から、この損失正接Taは0.07以下がより好ましく、0.06以下がより好ましい。損失正接Taは小さいほど好ましいので、この損失正接Taの好ましい下限は設定されない。この損失正接Taは、前述されたクリンチ8の損失正接Tcと同様にして測定される。
図1において、符号PAはエイペックス38の半径方向外側端である。符号PBは、エイペックス38の底の軸方向中心である。両矢印LAは、外側端PAと中心PBとを結ぶ線分の長さを表している。長さLAは、エイペックス38の長さである。
このタイヤ2では、エイペックス38の外側端PAは半径方向においてクリンチ8の外側端34よりも内側に位置している。特に、このタイヤ2では、エイペックス38の長さLAは20mm以下である。従来のタイヤでは、エイペックスは40mmから50mmの長さを有している。このエイペックス38は、従来のエイペックスよりも小さい。過小なエイペックス38では、ビード10の部分の剛性が不足し、操縦安定性が損なわれる恐れがある。この観点から、この長さLAは5mm以上が好ましい。
カーカス12は、第一カーカスプライ40及び第二カーカスプライ42を備えている。このカーカス12は、2枚のカーカスプライからなる。このカーカス12が1枚のカーカスプライから形成されてもよい。
このタイヤ2では、第一カーカスプライ40(以下、第一プライ)及び第二カーカスプライ42(以下、第二プライ)は、両側のビード10の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。第一プライ40は、それぞれのコア36の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第一プライ40には、主部40aと一対の折り返し部40bとが形成されている。第二プライ42は、それぞれのコア36の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第二プライ42には、主部42aと一対の折り返し部42bとが形成されている。
このタイヤ12では、第一プライ40の主部40aは第二プライ42の主部42aの内側に位置している。第一プライ40の折り返し部40bは、第二プライ42の折り返し部42bの外側に位置している。第一プライ40の折り返し部40bの端は、半径方向において、第二プライ42の折り返し部42bの端よりも外側に位置している。この第一プライ40の折り返し部40bの端が、半径方向において、第二プライ42の折り返し部42bの端よりも内側に位置してもよい。
このタイヤ2では、第一プライ40の折り返し部40bの端は、半径方向において、このタイヤ2が最大幅を示す位置PWの近く、詳細には、この位置PWよりも外側に位置している。このカーカス12は、「ハイターンアップ構造(HTU)」を有している。このタイヤ2では、折り返し部40bの端がベルト16の端の直下にまで至る、換言すれば、この折り返し部40bがベルト16の端の部分とオーバーラップするように、このカーカス12が構成されてもよい。このようなカーカス12の構造は、「超ハイターンアップ構造(U−HTU)」とも称される。
図示されていないが、それぞれのカーカスプライは並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス12はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
それぞれの支持層14は、サイドウォール6よりも軸方向内側に位置している。この支持層14は、カーカス12よりも軸方向内側に位置している。この支持層14は、カーカス12とインナーライナー20とに挟まれている。支持層14は、半径方向において、内向きに先細りであり外向きにも先細りである。この支持層14は、三日月に類似の形状を有する。このタイヤ2では、支持層14の半径方向外側端の部分はベルト16の端の部分と重複している。この支持層14の半径方向内側端の部分は、ビード10のエイペックス38の部分と重複している。
支持層14は、架橋ゴムからなる。タイヤ2がパンクしたとき、この支持層14が荷重を支える。この支持層14により、パンク状態であっても、タイヤ2はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ2は、ランフラットタイヤとも称されている。このタイヤ2は、サイド補強タイプである。
パンク状態での縦撓みの抑制の観点から、支持層14の硬さHiは60以上が好ましく、65以上がより好ましい。内圧が維持された状態、すなわち通常状態の乗り心地性の観点から、硬さHiは85以下が好ましく、80以下がより好ましい。この支持層14の硬さHiは、前述されたクリンチ8の硬さHcと同様にして測定される。
このタイヤ2では、支持層14の損失正接Tiは0.07以下が好ましい。これにより、タイヤ2が繰り返し変形することによる、支持層14の発熱が抑えられる。この支持層14は、タイヤ2の耐久性に寄与する。この観点から、この損失正接Tiは0.05以下がより好ましく、0.04以下がより好ましい。損失正接Tiは小さいほど好ましいので、この損失正接Tiの好ましい下限は設定されない。この損失正接Tiは、前述されたクリンチ8の損失正接Tcと同様にして測定される。
ベルト16は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト16は、カーカス12と積層されている。ベルト16は、カーカス12を補強する。ベルト16は、内側層44及び外側層46からなる。このベルト16が、3以上の層を備えてもよい。図示されていないが、内側層44及び外側層46のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層44のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層46のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。
このタイヤ2では、ベルト16によるカーカス12の補強の観点から、ベルト16の軸方向幅はタイヤ2の最大幅の0.6倍以上が好ましい。耐久性への影響の観点から、ベルト16の軸方向幅はタイヤ2の最大幅の0.9倍以下が好ましい。
バンド18は、ベルト16の半径方向外側に位置している。図示されていないが、このバンド18は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド18は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、好ましくは5°以下、さらに好ましくは2°以下である。このコードによりベルト16が拘束されるので、ベルト16のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
ベルト16及びバンド18は、補強層を構成している。ベルト16のみから、補強層が構成されてもよい。バンド18のみから、補強層が構成されてもよい。
インナーライナー20は、カーカス12の内側に位置している。トレッド4の半径方向内側において、インナーライナー20は、カーカス12の内面に接合されている。サイドウォール6の軸方向内側において、インナーライナー20は、支持層14の内面に接合されている。インナーライナー20は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー20の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのチェーファー22は、ビード10の近傍に位置している。タイヤ2がリムRに組み込まれると、このチェーファー22がリムRと当接する。この当接により、ビード10の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー22は、クリンチ8と一体である。したがって、チェーファー22の材質はクリンチ8の材質と同じである。チェーファー22が、布とこの布に含浸したゴムとからなってもよい。
それぞれの緩衝層24は、軸方向においてカーカス12とクリンチ8との間に位置している。図1から明らかなように、この緩衝層24は、コア36の近くからカーカス12に沿って半径方向略外向きに延在している。
このタイヤ2では、クリンチ8の損失正接Tc、並びに、エイペックス38の硬さHa及び損失正接Taに対して、次のように整えられた硬さHk及び損失正接Tkを有する架橋ゴムが、緩衝層24に採用されている。なお、この硬さHkは前述されたクリンチ8の硬さHcと同様にして測定される。この損失正接Tkは、前述されたクリンチ8の損失正接Tcと同様にして測定される。
このタイヤ2では、緩衝層24の損失正接Tkはクリンチ8の損失正接Tc及びエイペックス38の損失正接Taと同等以下である。この緩衝層24の硬さHkは、エイペックス38の硬さHaと同等以上である。この緩衝層24は、クリンチ8の架橋ゴム及びエイペックス38の架橋ゴムよりも発熱しにくく、エイペックス38の架橋ゴムの剛性と同等以上の剛性を有する、架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、緩衝層24は硬質でしかも発熱しにくい。
図2には、図1に示されたタイヤ2のビード10の部分が示されている。図2において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
図2において、符号P1はタイヤ2の外面上の特定の位置を表している。このタイヤ2では、ビードベースラインからこの位置P1までの半径方向高さは14mmである。この位置P1は、タイヤ2の外面において、ビードベースラインからの半径方向高さが14mmとなる位置である。本発明においては、この位置P1は第一地点と称される。符号P2は、位置P1と同様、タイヤ2の外面上の特定の位置を表している。このタイヤ2では、ビードベースラインからこの位置P2までの半径方向高さは20mmである。この位置P2は、タイヤ2の外面において、ビードベースラインからの半径方向高さが20mmとなる位置である。本発明においては、この位置P2は第二地点と称される。
本発明においては、第一地点P1及び第二地点P2は、タイヤ2をリムRに組み込み、正規内圧となるようにこのタイヤ2に空気を充填し、このタイヤ2に荷重がかけられない状態で得られるこのタイヤ2の外面をベースとする、プロファイルによって決められる。
図2において、実線L1は第一地点P1を通り半径方向に延在する直線である。実線L2は、第二地点P2を通り半径方向に延在する直線である。
このタイヤ2では、緩衝層24は半径方向において第一地点P1及び第二地点P2のそれぞれと重複している。この緩衝層24は、半径方向において、第一地点P1から第二地点P2までのゾーンと重複している。この緩衝層24は、直線L1と直線L2との間を架け渡している。
このタイヤ2の製造では、複数のゴム部材がアッセンブリーされて、ローカバー(未加硫タイヤ2)が得られる。このローカバーが、モールドに投入される。ローカバーの外面は、モールドのキャビティ面と当接する。ローカバーの内面は、ブラダー又は中子に当接する。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ2が得られる。そのキャビティ面に凸凹模様を有するモールドが用いられることにより、タイヤ2に凹凸模様が形成される。
このタイヤ2は、リムRに嵌め合わされて使用される。この使用状態においては、タイヤ2のビード10の部分はリムRと接触する。これにより、タイヤ2とリムRとの間には接触面が形成される。
このタイヤ2では、その第一地点P1から第二地点P2までのゾーンは、接触面の半径方向外側部分に対応している。この部分よりも半径方向内側では、タイヤ2はリムRに強固に固定されている。この部分よりも半径方向外側では、タイヤ2はリムRから解放されている。このため、この部分の近くにおいては、歪みが集中しやすい。タイヤ2がパンクし内圧が低下すると、タイヤ2それ自体が車重を支える。このとき、タイヤ2には大きな荷重が掛けられる。このため、タイヤ2がパンクし内圧が低下した状態で走行する場合においては、つまり、ランフラット走行では、タイヤ2のビード10の部分には大きな荷重が掛かり歪みが特に集中しやすい傾向にある。
このタイヤ2では、小さなエイペックス38が採用されている。このタイヤ2では、パンク状態において歪みが集中する領域から外れて、エイペックス38は配置される。このタイヤ2では、ランフラット走行において、エイペックス38の変形が効果的に抑えられる。このエイペックス38は、ビード10の部分での損傷防止に寄与する。
このタイヤ2では、前述したように、カーカス12とクリンチ8との間に緩衝層24が設けられている。
このタイヤ2では、前述したように、緩衝層24は、半径方向において、第一地点P1から第二地点P2までのゾーンと重複している。このタイヤ2では、この緩衝層24は、このタイヤ2がリムRに組み合わされた状態において、タイヤ2とリムRとが接触している部分を覆うように配置されている。このタイヤ2では、ランフラット走行において、特に、歪みが集中しやすい部分に、緩衝層24が設けられている。この緩衝層24は硬質でしかも発熱しにくいので、このタイヤ2では、ビード10の部分での損傷が効果的に抑えられる。
図1において、両矢印HKSはビードベースラインから緩衝層24の半径方向外側端48までの半径方向距離を表している。両矢印HKUは、ビードベースラインから緩衝層24の半径方向内側端50までの半径方向距離を表している。両矢印HBは、ビードベースラインからコア36の半径方向外側端52までの半径方向距離を表している。
このタイヤ2では、緩衝層24の外側端48はこのタイヤ2の最大幅位置PWよりも半径方向内側に位置している。具体的には、距離HWXに対する距離HKSの比率は100%未満である。これにより、外側端52への歪みの集中が抑えられ、この緩衝層24の外側端48の部分での発熱が効果的に抑えられている。このタイヤ12は、耐久性に優れる。緩衝層24のボリュームが適切に維持されるので、この緩衝層24による質量及び転がり抵抗への影響が抑えられる。この観点から、この比率は90%以下が好ましく、85%以下がより好ましい。緩衝層24がビード10の部分の剛性に効果的に寄与するとの観点から、この比率は50%以上が好ましく、55%以上がより好ましい。
このタイヤ2では、緩衝層24の外側端48は半径方向においてクリンチ8の外側端34の近くに位置している。具体的には、このタイヤ2では、ビードベースラインからクリンチ8の外側端34までの半径方向距離HCに対する距離HKSの比率は85%以上105%以下である。この比率が85%以上に設定されることにより、緩衝層24のボリュームが十分に確保される。この緩衝層24は、ビード10の部分の変形及び発熱の抑制に効果的に寄与する。このタイヤ2では、良好なランフラット走行での耐久性が維持されるとともに、転がり抵抗が効果的に低減される。この比率が105%以下に設定されることにより、緩衝層24がクリンチ8から半径方向に大きく突出することが防止される。このタイヤ2では、緩衝層24の外側端48への歪みの集中が抑えられるとともに、緩衝層24のボリュームが適切に維持される。このタイヤ2では、この緩衝層24による転がり抵抗及び質量への影響が抑えられるとともに、良好なランフラット走行での耐久性が維持される。
このタイヤ2では、半径方向において、緩衝層24の内側端50の位置はコア36の外側端52の位置と一致している、又は、この緩衝層24の内側端50はコア36の外側端52よりも外側に位置している。言い換えれば、距離HBに対する距離HKUの比率は100%以上である。このタイヤ2では、軸方向において、緩衝層24はコア36と重複していない。コア36の軸方向外側部分では、カーカス12以外はクリンチ8で構成される。コア36とクリンチ8との間に硬質な緩衝層24が配置されないので、クリンチ8のボリュームが十分に確保される。このタイヤ2では、クリンチ8は摩滅しにくい。このタイヤ2では、走行状態において、リムRに対するコア36の位置が安定に保持される。コア36がリムRに対して動きにくいので、このタイヤ2では、ビード10の部分の変形が効果的に抑えられる。発熱が抑えられるので、耐久性の一層の向上が図られる。この観点から、この比率は105%以上が好ましい。緩衝層24の内側端50がコア36から半径方向外方に離れると、緩衝層24のボリュームが小さくなり、この緩衝層24による発熱抑制効果が薄れる恐れがある。この緩衝層24による発熱抑制効果の発揮の観点から、この比率は150%以下が好ましく、145%以下がより好ましい。
以上説明したように、このタイヤ2では、硬質でしかも発熱しにくい緩衝層24が、歪みが集中する領域を考慮し、適切な位置に適切な大きさで配置されている。硬質な緩衝層24は、通常走行時はもちろんのこと、パンクによって内圧が低下した状態においても、ビード10の部分の変形を抑える。このタイヤ2では、ビード10の部分の変形による発熱が効果的に抑えられる。特にこのタイヤ2では、リムRとの接触面とカーカス12との間における発熱が抑えられる。このタイヤ2では、緩衝層24自体が発熱しにくいので、このビード10の部分において、発熱がかなり効果的に抑えられる。このタイヤ2では、ビード10の部分での損傷発生が効果的に抑えられている。
さらにこのタイヤ2では、緩衝層24は、カーカス12、特に、第一プライ40の折り返し部40bを、この緩衝層24が設けられていない従来のタイヤにおける折り返し部よりも軸方向内側に配置させる。より詳細には、この緩衝層24の採用により、第一プライ40の折り返し部40bは、図2に示されているように、直線L1から直線L2までの領域において、このタイヤ2のビード10の部分の略中央に配置される。このタイヤ2では、カーカス12、詳細には、第一プライ40の折り返し部40bに、圧縮方向又引張方向の力が作用することが防止される。このカーカス12には、歪みが集中しにくい。このタイヤ2では、カーカス12に損傷は生じにくい。このタイヤ2では、ビード10の部分での損傷発生が効果的に抑えられている。
このタイヤ2では、小さなエイペックス38を採用するとともに、硬質でしかも発熱しにくい緩衝層24を適切な位置に適切な大きさで配置させることで、パンクによって内圧が低下した状態での走行、すなわち、ランフラット走行において、ビード10の部分に損傷が生じることが効果的に抑えられている。このタイヤ2では、パンクによって内圧が低下した状態でも十分な走行距離が確保される。このタイヤ2は、ランフラット走行での耐久性に優れる。
このタイヤ2では、エイペックス38及び緩衝層24の相乗的な作用により、ビード10の部分での損傷発生が抑えられるので、支持層14のボリュームの低減が可能である。この支持層14のボリュームの低減は、タイヤ2の軽量化及び転がり抵抗の低減に寄与する。このタイヤ2では、ランフラット走行での耐久性の向上を図りながら、軽量化及び転がり抵抗の低減が達成できる。本発明によれば、ランフラット走行での耐久性の向上を図りながら、軽量化及び転がり抵抗の低減が考慮された空気入りタイヤ2が得られる。
このタイヤ2では、緩衝層24の発熱性はクリンチ8の発熱性と同程度であるか、この緩衝層24はクリンチ8よりも発熱しにくい。具体的には、クリンチ8の損失正接Tcと緩衝層24の損失正接Tkとの差(Tc−Tk)は、0.00以上が好ましい。これにより、ビード10の部分の変形による発熱の抑制に、緩衝層24が効果的に寄与する。このタイヤ2は、ランフラット走行での耐久性に優れる。この観点から、この差は0.01以上がより好ましく、0.02以上がさらに好ましい。損失正接Tkは損失正接Tcに対して小さいほど好ましいので、この差の上限は設定されない。
このタイヤ2では、緩衝層24の発熱性はエイペックス38の発熱性と同程度であるか、この緩衝層24はエイペックス38よりも発熱しにくい。具体的には、エイペックス38の損失正接Taと緩衝層24の損失正接Tkとの差(Ta−Tk)は、0.00以上が好ましい。これにより、ビード10の部分の変形による発熱の抑制に、緩衝層24が効果的に寄与する。このタイヤ2は、ランフラット走行での耐久性に優れる。この観点から、この差はこの差は0.01以上がより好ましく、0.02以上がさらに好ましい。損失正接Tkは損失正接Taに対して小さいほど好ましいので、この差の上限は設定されない。
このタイヤ2では、緩衝層24の損失正接Tkは0.06以下が好ましい。これにより、ビード10の部分の変形による発熱の抑制に、緩衝層24が効果的に寄与する。このタイヤ2は、ランフラット走行での耐久性に優れる。この観点から、この損失正接Tkは0.05以下がより好ましく、0.04以下がさらに好ましい。損失正接Tkは小さいほど好ましいので、この損失正接Tkの好ましい下限は設定されない。
このタイヤ2では、好ましくは、緩衝層24の損失正接Tkは支持層14の損失正接Tiと同等以下である。言い換えれば、支持層14の損失正接Tiと緩衝層24の損失正接Tkとの差(Ti−Tk)は0.00以上が好ましい。これにより、緩衝層24による発熱抑制効果が一層高められる。このタイヤ2は、ランフラット走行での耐久性に一層優れる。この観点から、この差は0.01以上がより好ましい。損失正接Tkは損失正接Tiに対して小さいほど好ましいので、この差の上限は設定されない。
このタイヤ2では、緩衝層24の損失正接Tkはクリンチ8の損失正接Tc及びエイペックス38の損失正接Taよりも低いのがより好ましい。このタイヤ2では、緩衝層24の損失正接Tkは支持層14の損失正接Tiと同等以下であり、クリンチ8の損失正接Tc及びエイペックス38の損失正接Taよりも低いのがさらに好ましい。これにより、タイヤ全体の剛性バランスが適切に整えられ、ランフラット走行での耐久性だけでなく、通常走行での操縦安定性及び乗り心地の向上が達成される。
このタイヤ2では、緩衝層24の剛性はエイペックス38の剛性と同程度であるか、この緩衝層24はこのエイペックス38よりも硬質である。具体的には、この緩衝層24の硬さHkとエイペックス38の硬さHaとの差(Hk−Ha)は0以上が好ましい。これにより、緩衝層24が、通常走行時はもちろんのこと、ランフラット走行において、ビード10の部分の変形の抑制に寄与する。このタイヤ2では、ビード10の部分の損傷が効果的に抑えられる。この観点から、この差は5以上がより好ましい。緩衝層24とエイペックス38との剛性差による歪みの集中を防止するとの観点から、この差は20以下が好ましい。
このタイヤ2では、緩衝層24の硬さHkは60以上95以下が好ましい。この硬さHkが60以上に設定されることにより、緩衝層24が適度な剛性を有する。このタイヤ2では、ビード10の部分の変形の程度が適切に維持される。この観点から、この硬さHkは65以上がより好ましい。この硬さHkが95以下に設定されることにより、緩衝層24の剛性が適切に維持される。このタイヤ2では、良好な乗り心地が維持される。この観点から、この硬さHkは90以下がより好ましい。
このタイヤ2では、好ましくは、緩衝層24の硬さHkは、支持層14の硬さHiと同等以上である。言い換えれば、この緩衝層24の硬さHkと支持層14の硬さHiとの差(Hk−Hi)は0以上が好ましい。これにより、緩衝層24が、通常走行時はもちろんのこと、ランフラット走行において、ビード10の部分の変形の抑制に寄与する。このタイヤ2では、ビード10の部分の損傷が効果的に抑えられる。この観点から、この差は5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。緩衝層24と支持層14との剛性差による歪みの集中を防止するとの観点から、この差は30以下が好ましい。
このタイヤ2では、緩衝層24の硬さHkはエイペックス38の硬さHaと同等以上であり、支持層14の硬さHiよりも大きいのがより好ましい。これにより、タイヤ全体の剛性バランスが適切に整えられ、ランフラット走行での耐久性だけでなく、通常走行での操縦安定性及び乗り心地の向上が達成される。
図2において、実線LTはこのタイヤ2の外面の法線である。この法線LTは、第二基準点P2を通る。本発明においては、この第二基準点P2における、このタイヤ2の外面の法線LTは、基準法線と称される。
この図2において、両矢印tはタイヤ2の外面からカーカス12までの長さを表している。この長さtは、第二基準点P2における、このタイヤ2のカーカス12の外側部分の厚さである。両矢印tkは、第二基準点P2における、緩衝層24の厚さである。両矢印tcは、第二基準点P2における、クリンチ8の厚さである。厚さt、厚さtk及び厚さtcは、基準法線LTに沿って計測される。厚さtは、厚さtk及び厚さtcの和(tk+tc)に等しい。この厚さtは、基準法線LTに沿って計測される、緩衝層24の厚さtkとクリンチ8の厚さtcとの合計厚さである。両矢印tLは、この基準法線LTに沿って計測される支持層14の厚さである。
このタイヤ2では、緩衝層24の厚さtkは1mm以上が好ましい。この厚さtkが1mm以上に設定されることにより、ビード10の部分における発熱の抑制に緩衝層24が効果的に寄与する。この観点から、この厚さtkは2mm以上がより好ましい。この厚さtkは6mm以下が好ましい。この厚さtkが6mm以下に設定されることにより、ビード10の部分の剛性への緩衝層24の影響が抑えられる。このタイヤ2では、ビード10の部分の剛性が適切に維持される。この観点から、この厚さtkは5mm以下がより好ましい。
このタイヤ2では、クリンチ8の厚さtcは1mm以上が好ましい。この厚さtcが1mm以上に設定されることにより、クリンチ8の剛性が適切に維持される。このタイヤ2では、リムRとの接触によりビード10の部分が摩滅されるのを、このクリンチ8が効果的に防止する。このタイヤ2は、耐摩耗性に優れる。この観点から、この厚さtcは2mm以上がより好ましい。この厚さtcは6mm以下が好ましい。この厚さtcが6mm以下に設定されることにより、ビード10の部分の剛性へのクリンチ8の影響が抑えられる。このタイヤ2では、ビード10の部分の剛性が適切に維持される。この観点から、この厚さtcは5mm以下がより好ましい。
このタイヤ2では、合計厚さtに対する厚さtkの比率は15%以上85%以下が好ましい。この比率が15%以上に設定されることにより、ビード10の部分における発熱の抑制に緩衝層24が効果的に寄与する。この比率が85%以下に設定されることにより、ビード10の部分の剛性への緩衝層24の影響が抑えられる。このタイヤ2では、ビード10の部分の剛性が適切に維持される。
このタイヤ2では、合計厚さtの、厚さtLに対する比率は80%以上120%以下が好ましい。この比率が80%以上に設定されることにより、カーカス12の外側部分の厚さと荷重支持層14の厚さとのバランスが整えられ、カーカス12に、圧縮方向の力が作用することが防止される。カーカス12の損傷が防止されるので、このタイヤ2は耐久性に優れる。この比率が120%以下に設定されることにより、カーカス12の外側部分の厚さと支持層14の厚さとのバランスが整えられ、カーカス12に、引張方向の力が作用することが防止される。この場合においても、カーカス12の損傷が防止されるので、このタイヤ2は耐久性に優れる。
このタイヤ2では、緩衝層24の厚さtk、クリンチ8の厚さtc、及び、支持層14の厚さtLの和(tk+tc+tL)は18mm未満が好ましい。このタイヤ2では、ビード10の部分は小さな厚さを有する。このタイヤ2では、軽量化及び転がり抵抗の低減が図られる。この観点から、この和(tk+tc+tL)は17mm以下がより好ましい。ビード10の部分の剛性が適切に維持され、ランフラット走行での耐久性の向上が達成されるとの観点から、この和(tk+tc+tL)は10mm以上が好ましい。
図2において、両矢印tiは支持層14の厚さを表している。この厚さtiは、位置PWを通り、軸方向に延びる直線に沿って計測される。本発明において、この厚さtiはタイヤ2の最大幅位置PWにおける支持層14の厚さである。
このタイヤ2では、タイヤ2がパンクしたとき、支持層14が荷重の支持に寄与するとの観点から、この支持層14の厚さtiは6mm以上が好ましい。通常状態の乗り心地性の観点から、この支持層14の厚さtiは15mm以下が好ましい。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1−2に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、245/45RF19である。この実施例1の諸元は、下記の表1に示された通りである。
緩衝層は、半径方向において、第一地点P1から第二地点P2までのゾーンと重複するように配置されている。このことが、表の第一地点(14mm)及び第二地点(20mm)の欄に「Y」で表されている。
この表1における、緩衝層の損失正接Tk及び硬さHkは、70℃の温度下で計測されている。70℃の温度下で計測されたクリンチの損失正接Tcは、0.06であった。70℃の温度下で計測されたクリンチの硬さHcは、75であった。70℃の温度下で計測されたエイペックスの損失正接Taは、0.06であった。70℃の温度下で計測されたエイペックスの硬さHaは、80であった。70℃の温度下で計測された支持層の損失正接Tiは、0.04であった。70℃の温度下で計測された支持層の硬さHiは、70であった。
[比較例1]
下記の表1に示された損失正接Tk及び硬さHkを有する緩衝層を用い、この緩衝層を第一地点P1から第二地点P2までのゾーンよりも軸方向内側に配置させた他は、実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。この比較例1では、緩衝層は半径方向において第一地点P1及び第二地点P2とは重複していない。このことが、表1の第一地点(14mm)及び第二地点(20mm)の欄に「N」で表されている。この比較例1の諸元は、下記の表1に示された通りである。この比較例1では、法線LTはエイペックスとも交差するので、表1の「厚さtL」の欄には、厚さtLとエイペックスの厚さとの合計が記載されている。
[比較例2]
下記の表1に示された損失正接Tk及び硬さHkを有する緩衝層を用い、この緩衝層を第一地点P1から第二地点P2までのゾーンよりも軸方向外側に配置させた他は、実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。この比較例2においても、比較例1と同様、緩衝層は半径方向において第一地点P1及び第二地点P2とは重複していない。このことが、表1の第一地点(14mm)及び第二地点(20mm)の欄に「N」で表されている。この比較例2の諸元は、下記の表1に示された通りである。この比較例2においても、前述の比較例1と同様、法線LTはエイペックスとも交差するので、表1の「厚さtL」の欄には、厚さtLとエイペックスの厚さとの合計が記載されている。
[実施例2]
緩衝層の損失正接Tkを変えて、損失正接Tcと損失正接Tkとの差(Tc−Tk)、損失正接Taと損失正接Tkとの差(Ta−Tk)及び損失正接Tiと損失正接Tkとの差(Ti−Tk)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。
[実施例3]
緩衝層の厚さtk及びクリンチの厚さtcを下記の表1に示される通りとした他は実施例2と同様にして、実施例3のタイヤを得た。
[実施例4]
緩衝層の厚さtk、クリンチの厚さtc及び支持層の厚さtLを変えて、比率((tk+tc)/tL)を下記の表1に示される通りとした他は実施例2と同様にして、実施例4のタイヤを得た。
[耐久性(ランフラット)]
タイヤをリム(サイズ=19×8J)に組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を180kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、このタイヤの最大負荷荷重の80%に相当する縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤの内圧を常圧(計測圧としては、0kPa)としてパンク状態を再現し、このタイヤを80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行距離を、測定した。この結果が、指数として下記の表1に示されている。数値が大きいほどランフラット耐久性に優れ、好ましい。
[転がり抵抗係数(RRC)]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗係数(RRC)を測定した。
使用リム:19×8J(アルミニウム合金製)
内圧:220kPa
荷重:4.6kN
速度:80km/h
この結果が、測定された転がり抵抗係数の逆数に基づいて表された指数で、下記の表1に示されている。数値が大きいほど、転がり抵抗の低減が図られており、好ましい。
[質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、測定された質量の逆数に基づいて表された指数で、下記の表1に示されている。数値が大きいほど、軽量化が図られており、好ましい。
表1に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。