JP6800190B2 - カバー装着用グロメット及びカバー - Google Patents

Description

本発明は、自動車のエンジン等の被カバー体に防音用のカバーを装着する際に使用されるカバー装着用グロメットと、そのグロメットを用いたカバーとに関する。

例えば自動車のエンジンには、防音用のエンジンカバーが取り付けられる。このエンジンカバーは、特許文献１，２に開示のように、裏面に突設した複数の受け部内に、下方へ開口するゴム製の取付部材やグロメットを保持している。この取付部材やグロメットを、エンジンの表面に突設されるボールスタッド等の取付ピンにあてがって押し込むことでエンジンカバーが装着される。特に特許文献１では、取付部材がエンジンカバーと一体成形されており、特許文献２では、グロメットは別体で受け部に嵌合されているが、このグロメットには、スリットが設けられて、取付ピンに押し込む際の荷重の低減を図っている。

特許第６０７３６１０号公報 特開２００６−３３６７４３号公報

上記カバーが防音性の高いウレタンで形成されるのに対し、グロメットがゴムで形成されると、ウレタンとゴムとの接着性が悪いため、プライマー等の接着処理が必要となり、工数が増えてコストアップに繋がる。グロメットをウレタンと接着性のある樹脂製とすれば、接着処理が不要となって軽量化にも繋がるが、樹脂製ではゴムのように圧縮変形しないので、取付ピンに嵌合させたり取り外したりする際に大きな力が必要となって着脱に係る作業性が悪くなる上、着脱の際の過度な押し込みや引っ張りによってグロメットが破損するおそれも生じる。

そこで、本発明は、カバーの着脱に係る作業性を良好として軽量化やコスト低減も達成できるカバー装着用グロメット及びカバーを提供することを目的としたものである。

上記目的を達成するために、請求項１に記載の発明は、カバー本体の裏面に突設した取付部に一体成形され、被カバー体に設けられた取付ピンの先端部が嵌合されるカバー装着用グロメットであって、
先端部が嵌合される凹部と、取付部内に埋設されて取付部からの抜けを防止する引抜防止部とを備え、凹部は、先端部の外径よりも大きい内径を有する開口端部と、開口端部に連設され、先端部の外径以下の入口を有して先端部が収まる嵌合部と、開口端部から取付ピンの嵌合方向に沿って形成され、凹部の周方向に所定間隔をおいて複数配置されるスリットとを含み、引抜防止部は、各スリットの延長線上に位置する複数の第１リブを含むことを特徴とする。
請求項２に記載の発明は、請求項１の構成において、第１リブはスリットと非連続で形成されていることを特徴とする。
請求項３に記載の発明は、請求項１の構成において、第１リブはスリットと連続して形成されていることを特徴とする。
請求項４に記載の発明は、請求項１乃至３の何れかの構成において、スリットは、引抜防止部まで延設されていることを特徴とする。
請求項５に記載の発明は、請求項１乃至４の何れかの構成において、引抜防止部には、引抜防止部の周方向に隣接する第１リブ同士を当該周方向に連結する第２リブが形成されていることを特徴とする。
請求項６に記載の発明は、請求項１乃至５の何れかの構成において、開口端部の内面には、嵌合部の入口に向けて内径が徐々に小さくなるテーパ面が形成されていることを特徴とする。
請求項７に記載の発明は、請求項１乃至６の何れかの構成において、凹部と引抜防止部とは熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする。
請求項８に記載の発明は、請求項１乃至７の何れかの構成において、スリットは４つであり、開口端部から嵌合部へ行くに従って徐々に幅が狭くなることを特徴とする。
請求項９に記載の発明は、請求項１乃至８の何れかの構成において、カバー本体及び取付部はウレタン製であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項１０に記載の発明は、カバー本体と、被カバー体に設けられた取付ピンに対応してカバー本体の裏面に突設される複数の取付部とを有するカバーであって、
各取付部に、請求項１乃至９の何れかに記載のカバー装着用グロメットが一体成形されていることを特徴とする。

請求項１及び１０に記載の発明によれば、カバー装着用グロメットの凹部は、取付ピンの先端部の外径よりも大きい内径を有する開口端部と、開口端部に連設され、先端部の外径以下の入口を有して先端部が収まる嵌合部と、開口端部から取付ピンの嵌合方向に沿って形成され、凹部の周方向に所定間隔をおいて複数配置されるスリットとを含み、引抜防止部は、各スリットの延長線上に位置する複数の第１リブを含むことで、スリットによる凹部の弾性変形が確保でき、カバーの着脱に係る作業性が良好となる。また、樹脂による形成も可能となるため、軽量化が達成できると共に、ウレタン製のカバーに対して接着性の高い樹脂が選択でき、接着処理が不要となってコスト低減も達成できる。
請求項２に記載の発明によれば、請求項１の効果に加えて、第１リブはスリットと非連続で形成されているので、スリットを短く形成でき、凹部の強度を維持することができる。
請求項３に記載の発明によれば、請求項１の効果に加えて、第１リブはスリットと連続して形成されているので、スリットの端部が第１リブによって補強される。
請求項４に記載の発明によれば、請求項１乃至３の何れかの効果に加えて、スリットは、引抜防止部まで延設されているので、スリットをより長く形成できて凹部を大きく弾性変形させることができる。
請求項５に記載の発明によれば、請求項１乃至４の何れかの効果に加えて、引抜防止部には、引抜防止部の周方向に隣接する第１リブ同士を当該周方向に連結する第２リブが形成されているので、引抜防止部が補強されると共に、抜け方向への抵抗も増加する。
請求項６に記載の発明によれば、請求項１乃至５の何れかの効果に加えて、開口端部の内面には、嵌合部の入口に向けて内径が徐々に小さくなるテーパ面が形成されているので、取付ピンの先端部が入口へスムーズに案内され、カバーの装着に係る作業性がより良好となる。
請求項７に記載の発明によれば、請求項１乃至６の何れかの効果に加えて、凹部と引抜防止部とが熱可塑性樹脂で形成されているので、ウレタン製のカバーであっても高い接着性が得られる。
請求項８に記載の発明によれば、請求項１乃至７の何れかの効果に加えて、スリットは４つであり、開口端部から嵌合部へ行くに従って徐々に幅が狭くなることで、開口端部側での大きな弾性変形が確保できる。
請求項９に記載の発明によれば、請求項１乃至９の何れかの効果に加えて、カバー本体及び取付部はウレタン製であるため、一層の軽量化に繋がる。

エンジンにエンジンカバーを装着する状態を示す説明図である。 エンジン側の突起とカバー装着用グロメットとを抜き出して示す分解斜視図である。 カバー装着用グロメットの斜視図である。 カバー装着用グロメットの説明図で、開口端側を上として（Ａ）は平面、（Ｂ）は正面、（Ｃ）は底面をそれぞれ示す。 （Ａ）は図４のＡ−Ａ線拡大断面図、（Ｂ）はＢ−Ｂ線拡大断面図である。 エンジンにエンジンカバーを装着した状態を示す説明図である。

以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図１は、カバーの一例であるエンジンカバー１を、被カバー体であるエンジン２０に装着する状態を示す説明図である。まず、エンジン２０の表面には、エンジンカバー１の取付用の複数（図１では１つのみ示す）の突起２１，２１・・が突設されて、各突起２１には、先端部２３を球状とした金属製の取付ピンとしてのボールスタッド２２が突設されている。
一方、エンジンカバー１は、ウレタン製で、エンジン２０の表面を非接触で覆うカバー本体２と、カバー本体２の裏面にボールスタッド２２の位置に合わせて下向きに突設された複数（図１では１つのみ示す）の取付部３，３・・とを有し、各取付部３には、カバー装着用グロメット（以下単に「グロメット」という。）４がそれぞれ保持されている。

このグロメット４は、ウレタンと接着性のある一体発泡可能な熱可塑性樹脂（例えばＰＡ６、ＰＣ／ＰＥＴ、ＡＢＳ等）製で、図２にも示すように、上端から下端へ行くに従って徐々に拡径する棒状体となっている。グロメット４の下端の拡径側には、ボールスタッド２２の先端部２３が嵌合可能な凹部５が、上端の縮径側には、取付部３に埋設されて取付部３からの抜けを防止する引抜防止部６がそれぞれ形成されている。
まず、凹部５は、図３〜５にも示すように、ボールスタッド２２の先端部２３の外径よりも大径で開口する開口端部７と、開口端部７に連設され、先端部２３の外径よりも小径となる入口９を有して先端部２３が収まる嵌合部８とを備えている。開口端部７の内面は、先端部２３の外径より大きい径の等径面１０と、等径面１０から入口９へ行くに従って徐々に小径となるテーパ面１１とから形成されている。開口端部７の外周には、突条１２が形成されている。

そして、凹部５には、図４，５にも示すように、開口端部７から軸方向に切込み形成されて嵌合部８に至るスリット１３，１３・・が、周方向に等間隔をおいて４つ形成されている。各スリット１３の幅は、開口端部７側の始端が最も広く、嵌合部８に至る終端が最も狭くなるようにテーパ状に形成されている。

次に、引抜防止部６は、グロメット４の軸心から径方向へ放射状に延びる４つの第１リブ１４，１４・・を有する横断面十字状で、各第１リブ１４は、凹部５のスリット１３の位相に合わせてスリット１３の終端から連続形成され、軸方向でスリット１３の延長上に位置している。また、引抜防止部６の軸方向の略中間部には、周方向に隣接する第１リブ１４，１４同士を連結する４つの第２リブ１５,１５・・が周方向に形成されている。
また、各第１リブ１４は、引抜防止部６の外径が凹部５と反対側へ行くに従って徐々に小径となるように径方向への突出量が小さくなっており、引抜防止部６の当該反対側の端部では、各第１リブ１４の径方向外側の面による外径よりも大径の円板部１６と連設されている。

以上の如く構成されたグロメット４及びエンジンカバー１においては、エンジンカバー１をウレタンによって発泡成形する際に各取付部３においてグロメット４を一体成形する。このときグロメット４は、図１に示すように、凹部５の外周の突条１２が、取付部３の突出面に位置するように一体成形する。すなわち、開口端部７が取付部３の端面よりもやや突出させる状態とする。これによりグロメット４は、凹部５の弾性変形が確保されると共に、引抜防止部６の全体が取付部３内に埋設されることで、第１リブ１４と第２リブ１５と円板部１６とによって抜け止め及び回り止めされた状態で取付部３と一体化される。

こうしてグロメット４を保持するエンジンカバー１は、エンジン２０に設けた各ボールスタッド２２に各取付部３の位置を合わせてエンジン２０側へ各取付部３をそれぞれ押し込む。すると、ボールスタッド２２の先端部２３がグロメット４の開口端部７から等径面１０に進入し、テーパ面１１によって入口９へ案内される。ここで先端部２３は入口９に当接するが、凹部５はスリット１３によって弾性変形が許容されているので、先端部２３が相対的に入口９を押し広げて嵌合部８へ進入する。その後、図６に示すように、凹部５が原形に復帰して入口９が先端部２３の根元側に係止して先端部２３を保持する。このとき入口９が先端部２３を乗り越えて原形に復帰することで、良好な嵌合感が得られる。よって、各ボールスタッド２２は各グロメット４に連結されてエンジンカバー１の取付が完了する。

一方、エンジンカバー１を取り外す際には、エンジンカバー１の各取付部３をボールスタッド２２から離れる方向へ引っ張ってグロメット４から先端部２３を抜き外すことになる。このときグロメット４は第１リブ１４に加えて、第２リブ１５と円板部１６とによっても取付部３と一体化しているため、抜き方向での抵抗が大きくなり、グロメット４が取付部３から外れてボールスタッド２２に残るようなことは生じにくい。

このように、上記形態のグロメット４及びエンジンカバー１によれば、グロメット４の凹部５は、ボールスタッド２２の先端部２３の外径よりも大きい内径を有する開口端部７と、開口端部７に連設され、先端部２３の外径より小さい入口９を有して先端部２３が収まる嵌合部８と、開口端部７からボールスタッド２２の嵌合方向に沿って形成され、凹部５の周方向に所定間隔をおいて複数配置されるスリット１３とを含み、引抜防止部６は、各スリット１３の延長線上に位置する複数の第１リブ１４を含むことで、スリット１３による凹部５の弾性変形が確保でき、エンジンカバー１の着脱に係る作業性が良好となる。また、樹脂による形成も可能となるため、軽量化が達成できると共に、ウレタン製のエンジンカバー１に対して接着性の高い樹脂が選択でき、接着処理が不要となってコスト低減も達成できる。

特にここでは、第１リブ１４はスリット１３と連続して形成されているので、スリット１３の端部が第１リブ１４によって補強される。
また、引抜防止部６には、引抜防止部６の周方向に隣接する第１リブ１４，１４同士を当該周方向に連結する第２リブ１５が形成されているので、引抜防止部６が補強されると共に、抜け方向への抵抗も増加する。
さらに、開口端部７の内面には、嵌合部８の入口９に向けて内径が徐々に小さくなるテーパ面１１が形成されているので、ボールスタッド２２の先端部２３が入口９へスムーズに案内され、エンジンカバー１の装着に係る作業性がより良好となる。

一方、凹部５と引抜防止部６とが熱可塑性樹脂で形成されているので、ウレタン製のエンジンカバー１であっても高い接着性が得られる。
また、スリット１３を４つとして、開口端部７から嵌合部８へ行くに従って徐々に幅を狭くしているので、開口端部７側での大きな弾性変形が確保できる。
さらに、エンジンカバー１はウレタン製であるため、一層の軽量化に繋がる。

なお、上記形態では第１リブをスリットと連続形成しているが、スリットと非連続で形成しても差し支えない。この場合、スリットを短く形成でき、凹部の強度を維持することができる。
また、スリットは嵌合部までに限らず、引抜防止部まで長く延設してもよい。この場合、スリットをより長く形成できて凹部を大きく弾性変形させることができる。
さらに、凹部の構造も上記形態に限らず、開口端部のテーパ面を省略したり、スリットの数を増減したりしても差し支えない。凹部の入口の径をボールスタッドの先端部の外径と等しくすることもできる。引抜防止部においても、第２リブを省略したり、逆に第２リブを軸方向に所定間隔をおいて複数形成したりすることができる。

そして、取付ピンについても、先端部が球状となるボールスタッド以外でも本発明のグロメットは採用できる。この場合、凹部の形状を取付ピンの先端部に合わせて角筒状等にすればよい。
また、本発明は、防音を目的としたカバーであれば、被カバー体としては自動車のエンジンに限らず、コンプレッサや減速機、ポンプやモータ等の他の機械装置にも適用可能である。

１・・エンジンカバー、２・・カバー本体、３・・取付部、４・・カバー装着用グロメット、５・・凹部、６・・引抜防止部、７・・開口端部、８・・嵌合部、９・・入口、１０・・等径面、１１・・テーパ面、１３・・スリット、１４・・第１リブ、１５・・第２リブ、２０・・エンジン、２１・・突起、２２・・ボールスタッド、２３・・先端部。

Claims (10)

1. カバー本体の裏面に突設した取付部に一体成形され、被カバー体に設けられた取付ピンの先端部が嵌合されるカバー装着用グロメットであって、
   前記先端部が嵌合される凹部と、前記取付部内に埋設されて前記取付部からの抜けを防止する引抜防止部とを備え、
   前記凹部は、前記先端部の外径よりも大きい内径を有する開口端部と、前記開口端部に連設され、前記先端部の外径以下の入口を有して前記先端部が収まる嵌合部と、前記開口端部から前記取付ピンの嵌合方向に沿って形成され、前記凹部の周方向に所定間隔をおいて複数配置されるスリットとを含み、
   前記引抜防止部は、各前記スリットの延長線上に位置する複数の第１リブを含むことを特徴とするカバー装着用グロメット。
2. 前記第１リブは前記スリットと非連続で形成されていることを特徴とする請求項１に記載のカバー装着用グロメット。
3. 前記第１リブは前記スリットと連続して形成されていることを特徴とする請求項１に記載のカバー装着用グロメット。
4. 前記スリットは、前記引抜防止部まで延設されていることを特徴とする請求項１乃至３の何れかに記載のカバー装着用グロメット。
5. 前記引抜防止部には、前記引抜防止部の周方向に隣接する前記第１リブ同士を当該周方向に連結する第２リブが形成されていることを特徴とする請求項１乃至４の何れかに記載のカバー装着用グロメット。
6. 前記開口端部の内面には、前記嵌合部の前記入口に向けて内径が徐々に小さくなるテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項１乃至５の何れかに記載のカバー装着用グロメット。
7. 前記凹部と前記引抜防止部とが熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする請求項１乃至６の何れかに記載のカバー装着用グロメット。
8. 前記スリットは４つであり、前記開口端部から前記嵌合部へ行くに従って徐々に幅が狭くなることを特徴とする請求項１乃至７の何れかに記載のカバー装着用グロメット。
9. 前記カバー本体及び前記取付部はウレタン製であることを特徴とする請求項１乃至８の何れかに記載のカバー装着用グロメット。
10. カバー本体と、被カバー体に設けられた取付ピンに対応して前記カバー本体の裏面に突設される複数の取付部とを有するカバーであって、
    各前記取付部に、請求項１乃至９の何れかに記載のカバー装着用グロメットが一体成形されていることを特徴とするカバー。

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