実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の冷媒回路及びシステム構成を示す図である。図1には、負荷側の水の温度を上げる加熱運転(給湯運転)を実施している時の状態が示されている。
冷凍サイクル装置100は、圧縮機1と凝縮器3と膨張弁4と蒸発器5とが接続され、冷媒が循環する冷媒回路30を備える。図1において、冷凍サイクル装置100は、冷媒回路30に流路切替器2を備えているが、流路切替器2の設置は任意である。
圧縮機1は、例えば、容量制御可能にインバーター制御された、ロータリー式、スクロール式又はベーン式等の圧縮機で構成され、低温低圧ガス冷媒を吸引し、圧縮して高温高圧ガス冷媒の状態にして吐出するものである。流路切替器2は、例えば、四方弁からなり、圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒と圧縮機1に吸引される低温低圧のガス冷媒との方向を切り替えるものである。凝縮器3は、例えば、プレート式熱交換器で構成され、冷媒回路30を流れる冷媒と、冷却負荷(図示せず)から供給される被熱交換媒体とを熱交換させて放熱させるものである。膨張弁4は、高圧の冷媒を減圧させ低圧の二相冷媒にするものである。蒸発器5は、例えば、プレートフィン式熱交換器等で構成され、冷媒を空気と熱交換させて蒸発させるものである。
冷凍サイクル装置100は、圧縮機1の吐出側と吸入側とを接続する吐出ガスバイパス回路6と、凝縮器3の出口側と膨張弁4との間と、圧縮機1の吸入側と、を接続する吸入バイパス回路8と、圧縮機1の吐出側と、膨張弁4の出口側と蒸発器5との間と、を接続する冷媒排出バイパス回路10と、を備えている。冷凍サイクル装置100は、さらに冷媒排出バイパス回路10に配設され、開閉動作する冷媒排出弁11と、吐出ガスバイパス回路6に流れる冷媒の流量を調整する吐出ガスバイパス弁7と、吸入バイパス回路8に流れる冷媒の流量を調整する吸入バイパス弁9と、を備える。
吐出ガスバイパス回路6は、圧縮機1の吐出側と吸入側とを接続する。吐出ガスバイパス回路6は、圧縮機1から吐出された高温高圧ガスの吐出冷媒の一部を圧縮機1の吸入側にバイパスするものである。このとき、吐出ガスバイパス回路6を流れるガス冷媒と、流路切替器2から戻ったガス冷媒とを合流させる。吐出ガスバイパス弁7は、吐出ガスバイパス回路6に設けられ、吐出ガスバイパス回路6に流す吐出冷媒のバイパス量を調整するものである。吐出ガスバイパス弁7の開度を大きくすると減圧され、吐出ガスバイパス回路6を通って圧縮機1の吸入側に戻る高温低圧ガスの流量が増えるため、圧縮機1の吸入側の温度が上がる。一方、吐出ガスバイパス弁7の開度を小さくすると、吐出ガスバイパス回路6を通って圧縮機1の吸入側に戻る高温低圧ガスの流量が減少するため、圧縮機1の吸入側の温度変化は少なくなる。
吸入バイパス回路8は、凝縮器3の出口側と膨張弁4との間と、圧縮機1の吸入側と、を接続する。吸入バイパス回路8は、吐出ガスバイパス回路6と合流し、凝縮器3の出口の高圧冷媒を吐出ガスバイパス回路6の高温低圧ガス冷媒に合流させて圧縮機1の吸入側に流入させるものである。吸入バイパス弁9は、吸入バイパス回路8に設けられ、吸入バイパス回路8に流す冷媒流量を調整し、圧縮機1の吸入ガスの過熱度を制御するものである。吸入バイパス弁9の開度を大きくすると減圧膨張され、吸入バイパス回路8を通って圧縮機1の吸入側に流入する低温低圧の気液二相冷媒の流量が増えるため、圧縮機の吸入過熱度が下がる。一方、吸入バイパス弁9の開度を小さくすると、吸入バイパス回路8から圧縮機1の吸入側に流入する低温低圧の気液二相冷媒の流量が減少するため、圧縮機1の吸入過熱度が上がる。
冷媒排出バイパス回路10は、圧縮機1の吐出側と、膨張弁4の出口側と蒸発器5との間と、を接続する。冷媒排出バイパス回路10は、圧縮機1から吐出された吐出冷媒の一部を、蒸発器5と膨張弁4との間の冷媒回路30にバイパスするものである。冷媒排出弁11は、冷媒排出バイパス回路10に設けられる開閉弁である。膨張弁4を閉じ、冷媒排出弁11を開くことにより、冷媒排出バイパス回路10に冷媒ガスが流れ、蒸発器5内の液冷媒を押し出すことができる。なお、冷媒排出弁の容量係数Cv値は、吐出ガスバイパス弁の容量係数Cv値よりも小さい。
図1に示されるように、冷凍サイクル装置100は、制御装置15と、圧縮機1の吸入側の圧力を検知する圧縮機吸入圧力センサ16と、圧縮機1の吸入側の配管の温度を検知する圧縮機吸入温度センサ17と、外気温度センサ22とを備えている。
制御装置15は、冷凍サイクル装置100の制御を行うものである。制御装置15は、例えば、マイクロコンピュータで構成され、CPU、RAM及びROM等を備えている。ROMには制御プログラム及び図3のフローチャートに対応したプログラムが記憶されている。
制御装置15は、圧縮機吸入圧力センサ16と、圧縮機吸入温度センサ17と、外気温度センサ22とが検知した信号を受信できるように各センサと接続されている。制御装置15は、これらの検知信号に基づいて膨張弁4及び冷媒排出弁11を開閉し、吐出ガスバイパス弁7及び吸入バイパス弁9の開度制御を行う弁制御手段15aを備えている。弁制御手段15aは、吐出ガスバイパス回路6に流す吐出冷媒のバイパス量を調整する吐出ガスバイパス弁7の開度を制御するものである。また、弁制御手段15aは、通常の給湯運転時には開放し、負圧防止運転時には閉止するように膨張弁4を開閉制御するものである。また、弁制御手段15aは、負圧防止運転時に蒸発器5内の液冷媒を押し出すように冷媒排出弁11を開閉制御するものである。さらに、弁制御手段15aは、圧縮機1の吸入ガスの過熱度が、あらかじめ設定された設定値となるように、吸入バイパス回路8に流す冷媒流量を調整する吸入バイパス弁9の開度を制御するものである。この弁制御手段15aは、CPUと制御プログラムとにより機能的に構成されている。
冷凍サイクル装置100は、冷媒として、HFO−1234yf冷媒またはHFO−1234ze冷媒を含む冷媒を使用している。冷媒は、HFO−1234yfの単独冷媒、HFO−1234zeの単独冷媒、又は、HFO−1234yfもしくはHFO−1234zeを含む混合冷媒でもよい。これらのHFO−1234yf冷媒もしくはHFO−1234ze冷媒は、地球温暖化係数(GWP)が「4」と従来のR410A冷媒の「2090」及びR407C冷媒の「1770」に比べて低く、地球環境に与える影響が小さい冷媒である。ここで、従来使用していたR410A冷媒及びR407C冷媒と、HFO−1234yf冷媒及びHFO−1234ze冷媒とについて、飽和温度と飽和蒸気圧力との関係について説明する。
図2は、各種冷媒の飽和温度と飽和蒸気圧力との関係を比較したグラフである。図2では、各種冷媒として、R410A冷媒、R407C冷媒、HFO−1234yf冷媒及びHFO−1234ze冷媒を示している。図2によれば、例えば、HFO−1234yf冷媒は、従来使用していたR410A冷媒やR407C冷媒に比べて、飽和蒸気圧力が低い。このため、外気が例えば−25℃以下となるような極寒冷地域において給湯運転をすると、蒸発温度が大気圧における飽和蒸気温度である−29.5℃を下回り、圧縮機1の吸入圧力が大気圧以下の負圧運転となることが予想される。圧縮機1の吸入圧力が負圧となると、冷凍サイクル内に空気が吸引され、冷凍サイクルの動作不良を起こす場合がある。そこで、冷凍サイクル装置100は、圧縮機1の吸入圧力が負圧とならないように給湯運転を継続する負圧防止運転を実施する。
次に図1を参照しながら、冷凍サイクル装置100の冷凍サイクルの動作を説明する。まず、冷凍サイクル装置100における通常の給湯運転について説明する。
低温低圧のガス状態の冷媒が圧縮機1に吸引され、圧縮されて高温高圧ガスとなって吐出される。圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒は、流路切替器2を経由して凝縮器3へ流入する。凝縮器3に流入した高温高圧のガス冷媒は、被熱交換媒体である水に放熱し、高圧液冷媒となる。凝縮器3を流出した高圧液冷媒は、膨張弁4へ流入し、減圧膨張されて低温低圧の気液二相冷媒となる。膨張弁4を流出した気液二相冷媒は、蒸発器5に流入し、被熱交換媒体である空気を冷却し、蒸発して低温低圧のガス冷媒となる。蒸発器5を流出した低温低圧のガス冷媒は、再び流路切替器2を通過したのち圧縮機1に再び吸引される。なお、通常の給湯運転時は、吐出ガスバイパス弁7、吸入バイパス弁9および冷媒排出弁11は全閉とし、吐出ガスバイパス回路6、吸入バイパス回路8および冷媒排出バイパス回路10において冷媒の流れはない。
図3は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の負圧防止運転の制御手順を示すフローチャートである。次に図1および図3を参照しながら、冷凍サイクル装置100の負圧防止運転の制御の動作を説明する。
制御装置15は、圧縮機吸入圧力センサ16で検知された圧縮機吸入圧力Psを取得する(ステップS1)。制御装置15は、圧縮機吸入圧力Psと負圧防止運転を開始する上限圧力である開始設定圧力SET1(例えば、0.12Mpa(abs))とを比較する(ステップS2)。制御装置15は、圧縮機吸入圧力Psが開始設定圧力SET1以上の間は、ステップS1に戻り、通常の給湯運転を継続する。一方、圧縮機吸入圧力Psが開始設定圧力SET1未満になると、制御装置15は、圧縮機吸入圧力が負圧に近い運転状態にあるものと判断して負圧防止運転を開始する(ステップS3)。
負圧防止運転を開始すると、弁制御手段15aは、冷媒排出弁11を開く(ステップS4)。次に、弁制御手段15aは、膨張弁4を全閉もしくは全閉に近い開度まで小さくする(ステップS5)。次に、制御装置15は、圧縮機吸入圧力Psと圧縮機吸入圧力の目標値として設定された吐出弁設定圧力SET2(例えば、0.15Mpa(abs))とを比較する(ステップS6)。そして、圧縮機吸入圧力Psが吐出弁設定圧力SET2よりも低い場合には、弁制御手段15aは、吐出ガスバイパス弁7の開度を設定増加分大きくする(ステップS7)。一方、圧縮機吸入圧力Psが吐出弁設定圧力SET2よりも高い場合には、弁制御手段15aは、吐出ガスバイパス弁7の開度を設定減少分小さくする(ステップS8)。なお、図3には示していないが、圧縮機吸入圧力Psが吐出弁設定圧力SET2に一致する場合には、吐出ガスバイパス弁7の開度は現状維持とすればよい。
次に、制御装置15は、圧縮機吸入温度センサ17で検知された圧縮機吸入温度Tsを取得する(ステップS9)。そして、制御装置15は、圧縮機吸入圧力Psから吸入飽和温度f(Ps) を演算し、圧縮機吸入温度Tsから吸入飽和温度f(Ps)を減算して、圧縮機吸入過熱度SHsを算出する(ステップS10)。制御装置15は、算出された圧縮機吸入過熱度SHsと圧縮機吸入過熱度の目標値として設定された吸入弁設定温度SET3(例えば、3℃)とを比較する(ステップS11)。弁制御手段15aは、圧縮機吸入過熱度SHsが吸入弁設定温度SET3よりも小さい場合は、吸入バイパス弁9の設定減少分開度を小さくする(ステップS12)。弁制御手段15aは、圧縮機吸入過熱度SHsが吸入弁設定温度SET3よりも大きい場合は、吸入バイパス弁9の開度を設定増加分大きくする(ステップS13)。なお、図3には示していないが、圧縮機吸入過熱度SHsが吸入弁設定温度SET3に一致する場合、吸入バイパス弁9の開度は現状維持とすればよい。そして、ステップS12又はステップS13の処理後、制御装置15は、圧縮機吸入圧力Psと圧縮機吸入圧力の目標値として設定された吐出弁設定圧力SET9(例えば、0.18Mpa(abs))とを比較する。あるいは、制御装置15は、外気温度センサ22が検知した外気温度と設定外気温度SET10(例えば、−15℃)とを比較する(ステップS14)。圧縮機吸入圧力Psが吐出弁設定圧力SET9よりも低い場合、あるいは、外気温度が設定外気温度SET10よりも低い場合には、制御装置15は、ステップS4に戻り、弁制御手段15aは、冷媒排出弁11を開く。圧縮機吸入圧力Psが吐出弁設定圧力SET9よりも高い場合、あるいは、外気温度が設定外気温度SET10よりも高い場合には、制御装置15は、負圧防止運転を終了し、通常の給湯運転を開始する(ステップS15)。
図4は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置における負圧防止運転の動作状態を示すP−h線図である。次に、冷凍サイクル装置100における負圧防止運転の動作について図1の冷媒回路図および図4のP−h線図を用いて説明する。図4における[A]〜[E]は、図1における[A]〜[E]の各位置での冷媒状態を示している。なお、負圧防止運転時には、膨張弁4の開度は、全閉もしくは実質的に全閉に近い極めて小さい開度に閉じられる。
低温低圧のガス状態の冷媒([A])が圧縮機1に吸引され、圧縮されて高温高圧ガスとなって吐出される。圧縮機1から吐出された高温高圧の冷媒([B])は3分岐し、第1の枝において、高温高圧の冷媒([B])は、吐出ガスバイパス回路6に流入し、吐出ガスバイパス弁7で減圧されて高温低圧ガス冷媒([C])となり、圧縮機1の吸入側にバイパスされる。第2の枝において、高温高圧の冷媒([B])は、流路切替器2を経由して凝縮器3へ流入する。凝縮器3に流入した高温高圧ガス冷媒は、被熱交換媒体である水に放熱し、高圧液冷媒([D])となる。
凝縮器3を流出した高圧液冷媒は、吸入バイパス回路8へ流入し、吸入バイパス弁9で減圧膨張されて低温低圧の気液二相冷媒([E])となる。吐出ガスバイパス弁7で減圧された高温低圧ガス([C])と、吸入バイパス弁9で減圧膨張された低温低圧の気液二相冷媒([E])とは、合流して、低温低圧のガス冷媒([A])となり、圧縮機1に再び吸引される。
また、負圧防止運転時は、膨張弁4の開度は全閉若しくは極めて小さな開度とするため、蒸発器5には膨張弁4を介して低圧二相冷媒はほとんど流れない。しかし、外気との熱交換と吐出ガスバイパス弁7を流出した高温低圧冷媒が流路切替器2を経由して、低温の蒸発器5に流れ込むことにより蒸発器5内へ液状の冷媒が溜まっていく。その結果、負圧防止運転中に冷媒が不足したり、通常運転への切り替え時に蒸発器5内に溜まっていた液冷媒が圧縮機1へ一気に流れ込むことにより液バックに至る場合がある。そのため、負圧防止運転中は、第3の枝において、冷媒排出弁11を開いて、圧縮機1からの吐出冷媒を冷媒排出バイパス回路10を通して、蒸発器5へ流す。吐出冷媒を蒸発器5に流すことにより蒸発器5内の液冷媒を押し出すことができ、蒸発器5内の液冷媒の滞留を防止することができる。
以上のように、冷凍サイクル装置100は、吐出ガスバイパス回路6を流れるガス冷媒と、吸入バイパス回路8を流れるガス冷媒とを合流させ、圧縮機1の吸入側の温度を上げて圧縮機1の吸入圧力が負圧となることを防止し、吸入圧力が大気圧以上になるようにすることで、圧縮機1の動作不良を回避することができる。
また、外気温度が低く圧縮機1の吸入圧力が負圧に近い運転状態になると、膨張弁4を全閉にして蒸発器5での冷媒の蒸発を行うことなく給湯運転を継続する。そして、圧縮機1の吸入圧力を吐出ガスバイパス弁7の開度で制御する。このため、圧縮機1の吸入圧力が負圧になることを防止する。また、圧縮機1の吸入過熱度を吸入バイパス弁9の開度で制御する。このため、圧縮機1の吸入過熱度を適正な状態で給湯運転を継続することができる。よって、外気が低下しても空気吸引による動作不良等の不都合を回避することができる。さらに、給湯機において低外気条件でも水の温度を上げる給湯運転を停止する必要がないため、水配管の凍結等も防止することができる。
さらに、冷媒排出弁11を開閉制御して、圧縮機1からの吐出冷媒を、冷媒排出バイパス回路10を通して蒸発器5に流すことにより蒸発器5内の液冷媒を押し出すことができ、蒸発器5内の液冷媒の滞留を防止することができる。
さらに、負圧防止運転中の加熱能力は膨張弁4が閉じられ蒸発器5による熱交換を行わないため、圧縮機1の入力と同等以下である。そのため、通常運転中の最低加熱能力を下回る運転が可能となるため加熱能力の制御領域を拡張することができる。通常運転だけでは、圧縮機1の運転と停止を繰り返すことにより加熱能力を下げていた低負荷時にも継続運転し圧縮機1の発停運転による電力ロス削減することができる。
さらに、冷媒排出弁11を開き高温低圧の冷媒を蒸発器5に流しつつ加熱運転できるため、蒸発器5の除霜を行いつつ、加熱運転ができる。そのため、除霜中の加熱運転できない時間を削減することができる。
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の冷媒回路及びシステム構成を示す図である。図1〜図4の冷凍サイクル装置と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。実施の形態2に係る冷凍サイクル装置110は、冷媒排出弁11の開閉工程をさらに備えた点が実施の形態1と異なり、それ以外は同様である。
次に図1を参照しながら、実施の形態2に係る冷凍サイクルの動作を説明する。なお、通常の給湯運転については実施の形態1と同様であるので省略し、負圧防止運転についてのみ説明する。
実施の形態2に係る冷凍サイクル装置110における負圧防止運転では、低温低圧のガス状態の冷媒が圧縮機1に吸引され、圧縮されて高温高圧ガスとなって吐出される。圧縮機1から吐出された高温高圧の冷媒は3分岐し、第1の枝において、高温高圧の冷媒は、吐出ガスバイパス回路6に流入し、吐出ガスバイパス弁7で減圧されて高温低圧ガス冷媒となり、圧縮機1の吸入側にバイパスされる。第2の枝において、高温高圧の冷媒は、流路切替器2を経由して凝縮器3へ流入する。凝縮器3に流入した高温高圧ガス冷媒は、被熱交換媒体である水に放熱し、高圧液冷媒となる。
凝縮器3を流出した高圧液冷媒は、吸入バイパス回路8へ流入し、吸入バイパス弁9で減圧膨張されて低温低圧の気液二相冷媒となる。吐出ガスバイパス弁7で減圧された高温低圧ガスと、吸入バイパス弁9で減圧膨張された低温低圧の気液二相冷媒とは、合流して、低温低圧のガス冷媒となり、圧縮機1に再び吸引される。
また、負圧防止運転時は、膨張弁4の開度は全閉若しくは極めて小さな開度とするため、蒸発器5には膨張弁4を介して低圧二相冷媒はほとんど流れない。しかし、外気との熱交換と吐出ガスバイパス弁7を流出した低圧高温冷媒が流路切替器2を経由して、低温の蒸発器5に流れ込むことにより蒸発器5内へ液状の冷媒が溜まっていく。その結果、負圧防止運転中に冷媒が不足したり、通常運転への切り替え時に蒸発器5内に溜まっていた液冷媒が圧縮機1へ一気に流れ込むことにより液バックに至る場合がある。そのため、負圧防止運転中は、第3の枝において、冷媒排出弁11を開閉制御して、圧縮機1からの吐出冷媒を冷媒排出バイパス回路10を通して、蒸発器5へ流す。吐出冷媒を蒸発器5に流すことにより蒸発器5内の液冷媒を押し出すことができ、蒸発器5内の液冷媒の滞留を防止することができる。
図5に示されるように、冷凍サイクル装置110は、制御装置115と、圧縮機吸入圧力センサ16と、圧縮機吸入温度センサ17と、蒸発器出口温度センサ18と、外気温度センサ22とを備えている。
制御装置115は、冷凍サイクル装置110の制御を行うものである。制御装置115は、例えば、マイクロコンピュータで構成され、CPU、RAM及びROM等を備えている。ROMには制御プログラム及び図6、図7又は図8のフローチャートに対応したプログラムが記憶されている。
制御装置115は、圧縮機吸入圧力センサ16と、圧縮機吸入温度センサ17と、蒸発器出口温度センサ18と及び外気温度センサ22とが検知した信号を受信できるように各センサと接続されている。制御装置115は、これらの検知信号に基づいて膨張弁4、吐出ガスバイパス弁7及び吸入バイパス弁9の開度制御並びに冷媒排出弁11の開閉制御を行う弁制御手段115aを備えている。弁制御手段115aは、吐出ガスバイパス回路6に流す吐出冷媒のバイパス量を調整する吐出ガスバイパス弁7の開度を制御するものである。また、弁制御手段115aは、通常の給湯運転時には開放し、負圧防止運転時には閉止するように膨張弁4を開閉制御するものである。また、弁制御手段115aは、負圧防止運転時に蒸発器5内の液冷媒を押し出すように冷媒排出弁11を開閉制御するものである。さらに、弁制御手段115aは、圧縮機1の吸入ガスの過熱度が、あらかじめ設定された設定値となるように、吸入バイパス回路8に流す冷媒流量を調整する吸入バイパス弁9の開度を制御するものである。この弁制御手段115aは、CPUと制御プログラムとにより機能的に構成されている。
図6は、本発明の実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の負圧防止運転中における冷媒排出弁の制御手順を示すフローチャートである。次に、図5及び図6を参照しながら、冷凍サイクル装置110の負圧防止運転中における冷媒排出弁11のステップS4における制御の動作を説明する。なお、冷凍サイクル装置110における負圧防止運転は、図3に示した実施の形態1のフローチャートにおいて、冷媒排出弁11の開閉工程をさらに備えた点が実施の形態1と異なり、それ以外は同様である。冷媒排出弁11の開閉工程は、ステップS3とステップS5との間であればよい。
負圧防止運転を開始する(ステップS3)と、制御装置115は、蒸発器出口温度センサ18が検知した蒸発器出口温度Tvから外気温度センサ22が検知した外気温度を減算した値と、冷媒排出弁11を開閉制御する目標値として設定された排出弁第1設定温度SET4(例えば、3℃)とを比較する(ステップS4−1a)。そして、蒸発器出口温度Tvから外気温度を減算した値が、排出弁第1設定温度SET4よりも低い場合には、弁制御手段115aは、冷媒排出弁11を開く(ステップS4−2a)。一方、蒸発器出口温度Tvから外気温度を減算した値が、排出弁第1設定温度SET4よりも高い場合には、弁制御手段115aは、冷媒排出弁11を閉じる(ステップS4−3a)。なお、図6には示していないが、蒸発器出口温度Tvから外気温度を減算した値が排出弁第1設定温度SET4に一致する場合には、冷媒排出弁の開閉は現状維持とすればよい。
以上のように、冷凍サイクル装置110は、蒸発器5内に冷媒が溜まる量が増えることによって、蒸発器出口の冷媒温度が低下し外気温度との差が小さくなることを利用して、冷媒排出弁11を開閉する。その結果、冷媒排出のために蒸発器5へ流す冷媒量を最小限にすることができ、冷媒排出弁11を常時開く場合に比べ、蒸発器5での加熱ロスを小さくし、より効率のよい運転をすることができる。さらに、圧縮機吸入圧力が負圧になることなく、給湯運転を継続することができる。
変形例1.
図7は、本発明の実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の負圧防止運転中における冷媒排出弁の制御手順を示す変形例1のフローチャート図である。図1〜図6の冷凍サイクル装置と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。次に、図5及び図7を参照しながら、冷凍サイクル装置110の負圧防止運転中における冷媒排出弁11のステップS4における制御の動作を説明する。
負圧防止運転を開始する(ステップS3)と、制御装置115は、蒸発器出口温度センサ18が検知した蒸発器出口温度Tvと、冷媒排出弁11を開閉制御する目標値として設定された排出弁第2設定温度SET5(例えば、−20℃)とを比較する(ステップS4−1b)。そして、蒸発器出口温度Tvが、排出弁第2設定温度SET5よりも低い場合には、弁制御手段115aは、冷媒排出弁11を開く(ステップS4−2b)。一方、蒸発器出口温度Tvが、排出弁第2設定温度SET5よりも高い場合には、弁制御手段115aは、冷媒排出弁11を閉じる(ステップS4−3b)。なお、図7には示していないが、蒸発器出口温度Tvが排出弁第2設定温度SET5に一致する場合には、冷媒排出弁の開閉は現状維持とすればよい。
以上のように、冷凍サイクル装置110は、蒸発器5内に冷媒が溜まる量が増えることによって、蒸発器出口の冷媒温度が低下し外気温度との差が小さくなることを利用して、冷媒排出弁11を開閉する。その結果、冷媒排出のために蒸発器5へ流す冷媒量を最小限にすることができ、冷媒排出弁11を常時開く場合に比べ、蒸発器5での加熱ロスを小さくし、より効率のよい運転をすることができる。さらに、圧縮機吸入圧力が負圧になることなく、給湯運転を継続することができる。
変形例2.
図8は、本発明の実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の負圧防止運転中における冷媒排出弁の制御手順を示す変形例2のフローチャート図である。図1〜図7の冷凍サイクル装置と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。次に、図5及び図8を参照しながら、冷凍サイクル装置110の負圧防止運転中における冷媒排出弁11のステップS4における制御の動作を説明する。
負圧防止運転を開始する(ステップS3)と、制御装置115は、圧縮機吸入圧力センサ16が検知した圧縮機吸入圧力Psと、圧縮機吸入圧力Psの目標値として設定された排出弁設定圧力SET6(例えば、0.15Mpa(abs))とを比較する(ステップS4−1c)。そして圧縮機吸入圧力Psが、排出弁設定圧力SET6よりも低い場合には、弁制御手段115aは、冷媒排出弁11を開く(ステップS4−2c)。一方、圧縮機吸入圧力Psが、排出弁設定圧力SET6よりも高い場合には、弁制御手段115aは、冷媒排出弁11を閉じる(ステップS4−3c)。なお、図8には示していないが、圧縮機吸入圧力Psが、排出弁設定圧力SET6に一致する場合には、冷媒排出弁の開閉は現状維持とすればよい。
以上のように、蒸発器5内に冷媒が溜まる量が増えることによって、圧縮機吸入圧力センサ16が検知した圧縮機吸入圧力Psが低下することを利用して、冷媒排出弁11を開閉する。その結果、冷媒排出のために蒸発器5へ流す冷媒量を最小限にすることができ、冷媒排出弁11を常時開く場合に比べ、蒸発器5での加熱ロスを小さくし、より効率のよい運転をすることができる。さらに、圧縮機吸入圧力が負圧になることなく、給湯運転を継続することができる。
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の冷媒回路及びシステム構成を示す図である。図1〜図8の冷凍サイクル装置と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。図9に示されるように、実施の形態3の冷凍サイクル装置120は、実施の形態1の冷凍サイクル装置100にレシーバ12を設けたものである。なお、その他の構成要素については図1と同じである。
レシーバ12は、凝縮器3と吸入バイパス弁9とを接続する配管に配置され、運転中に発生した余剰冷媒を貯溜するものである。
図9に示されるように、冷凍サイクル装置120は、制御装置125と、圧縮機1の吐出側の圧力を検知する圧縮機吐出圧力センサ19と、レシーバ12の入口の配管温度を検知するレシーバ温度センサ20と、外気温度センサ22とを備えている。なお、図9では、レシーバ温度センサ20は、レシーバ12の入口の配管に設置されているが、レシーバ12の出口の配管に設置されてもよい。
制御装置125は、冷凍サイクル装置120の制御を行うものである。制御装置125は、例えば、マイクロコンピュータで構成され、CPU、RAM及びROM等を備えている。ROMには制御プログラム及び図10又は図13のフローチャートに対応したプログラムが記憶されている。
制御装置125は、圧縮機吐出圧力センサ19と、レシーバ温度センサ20と、外気温度センサ22とが検知した信号を受信できるように各センサと接続されている。制御装置125は、これらの検知信号に基づいて圧縮機1の出力の制御を行う圧縮機制御手段125bを備えている。圧縮機制御手段125bは、圧縮機1の周波数を調整して圧縮機の出力制御を行うものである。この圧縮機制御手段125bは、CPUと制御プログラムとにより機能的に構成されている。また、制御装置125は、弁制御手段15aも備えている。
次に図9を参照しながら、実施の形態3に係る冷凍サイクルの動作を説明する。なお、通常の給湯運転については実施の形態1と同様であるので省略し、負圧防止運転についてのみ説明する。
実施の形態3に係る冷凍サイクル装置120における負圧防止運転では、低温低圧のガス状態の冷媒が圧縮機1に吸引され、圧縮されて高温高圧ガスとなって吐出される。圧縮機1から吐出された高温高圧の冷媒は3分岐し、第1の枝において、高温高圧の冷媒は、吐出ガスバイパス回路6に流入し、吐出ガスバイパス弁7で減圧されて高温低圧ガス冷媒となり、圧縮機1の吸入側にバイパスされる。第2の枝において、高温高圧の冷媒は、流路切替器2を経由して凝縮器3へ流入する。凝縮器3に流入した高温高圧ガス冷媒は、被熱交換媒体である水に放熱し、高圧液冷媒となる。
凝縮器3を流出した高圧液冷媒は、レシーバ12を経由して吸入バイパス回路8へ流入し、吸入バイパス弁9で減圧膨張されて低温低圧の気液二相冷媒となる。吐出ガスバイパス弁7で減圧された高温低圧ガスと、吸入バイパス弁9で減圧膨張された低温低圧の気液二相冷媒とは、合流して、低温低圧のガス冷媒となり、圧縮機1に再び吸引される。
また、負圧防止運転時は、膨張弁4の開度は全閉若しくは極めて小さな開度とするため、蒸発器5には膨張弁4を介して低圧二相冷媒はほとんど流れない。しかし、外気との熱交換と吐出ガスバイパス弁7を流出した低圧高温冷媒が流路切替器2を経由して、低温の蒸発器5に流れ込むことにより蒸発器5内へ液状の冷媒が溜まっていく。その結果、負圧防止運転中に冷媒が不足したり、通常運転への切り替え時に蒸発器5内に溜まっていた液冷媒が圧縮機1へ一気に流れ込むことにより液バックに至る場合がある。そのため、負圧防止運転中は、第3の枝において、冷媒排出弁11を開いて、圧縮機1からの吐出冷媒を冷媒排出バイパス回路10を通して、蒸発器5へ流す。吐出冷媒を蒸発器5に流すことにより蒸発器5内の液冷媒を押し出すことができ、蒸発器5内の液冷媒の滞留を防止することができる。負圧防止運転では、蒸発器5を使わないため、通常の給湯運転に比べて必要冷媒量が少ない。このため、負圧防止運転では余剰冷媒が発生するが、実施の形態3の冷凍サイクル装置120ではレシーバ12に余剰冷媒を貯溜させることができる。
図10は、本発明の実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の冷媒回路中への空気混入検知の制御手順を示すフローチャート図である。次に、図9および図10を参照しながら、冷凍サイクル装置120の負圧防止運転中を含む運転中における冷媒回路中への空気の混入を検知する制御の動作を説明する。
制御装置125は、圧縮機吐出圧力センサ19で検知した冷凍サイクルの圧縮機吐出圧力Pdを取得する(ステップST1)。また、制御装置125は、レシーバ温度センサ20で検知したレシーバ温度Trを取得する(ステップST2)。次に、制御装置125は、圧縮機吐出圧力Pdから吐出飽和温度f(Pd) を演算し、吐出飽和温度f(Pd)からレシーバ温度Trを減算した値と、圧縮機吐出圧力Pdの目標値として設定された圧縮機第1設定温度SET7(例えば、3℃)とを比較する(ステップST3)。次に、圧縮機制御手段125bは、吐出飽和温度f(Pd)からレシーバ温度Trを減算した値が、圧縮機第1設定温度SET7よりも小さい場合には、圧縮機1を継続運転させる(ステップST4)。一方、圧縮機制御手段125bは、吐出飽和温度f(Pd)からレシーバ温度Trを減算した値が、圧縮機第1設定温度SET7以上の場合には、圧縮機1の運転を停止する(ステップST5)。
以上のように、冷凍サイクル装置120は、冷媒回路中に空気が混入することによる冷媒物性値の変化を利用し、冷媒回路中への空気の混入を検知している。具体的には、負圧防止運転を含む運転中において、レシーバ温度Trと、圧縮機吐出圧力Pdの吐出飽和温度f(Pd)とはほとんど同値である。しかし、冷媒回路中に空気が混入すると冷媒の物性値が変化するため、レシーバ温度Trと、圧縮機吐出圧力Pdの吐出飽和温度f(Pd)との間に温度差が生じる。圧縮機制御手段125bは、その温度差が大きくなると冷媒回路中に空気が混入していると判断して圧縮機1の運転を停止させる。そのため、冷媒回路中へ空気が混入してしまったときに、空気を吸引することによる圧縮機1の動作不良を回避することができる。
また、冷凍サイクル装置120は、負圧防止運転時にレシーバ12に余剰冷媒を貯溜することができるため、圧縮機1の吸入側への液バック運転を防止し、信頼性の高い負圧防止運転を継続することができる。さらに、冷凍サイクル装置120は、圧縮機吸入圧力が負圧になることなく、給湯運転を継続することができる。
実施の形態3は、冷媒貯留容器(ここではレシーバ12)を備えた構成であるが、冷媒貯留容器の配置は、図9に示した配置に限られず、以下の変形例1及び変形例2のように実施することが可能である。
変形例1.
図11は、本発明の実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の変形例1の冷媒回路及びシステム構成を示す図である。図1〜図10の冷凍サイクル装置と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。図11に示されるように、冷凍サイクル装置130は、レシーバ12aと、逆止弁13とを備えたものである。なお、その他の構成要素については図9と同じである。
レシーバ12aは、凝縮器3の出口と吸入バイパス弁9とを接続する配管と並列に配置され、運転中に発生した余剰冷媒を貯溜する冷媒貯留容器である。逆止弁13は、レシーバ12aの出口側の配管に設置され、膨張弁4側からレシーバ12aに冷媒が流入するのを防止するものである。給湯運転中、蒸発器5に霜がつく場合があり、霜を除去するためにリバースデフロスト運転が行われる。リバースデフロスト運転とは、流路切替器2の方向を切り替え、圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒を蒸発器5に供給することにより、蒸発器5に付着した霜を除去する運転である。逆止弁13は、このリバースデフロスト運転を行う場合に、冷媒がレシーバ12aに流入することを防止するものである。
次に図11を参照しながら、冷凍サイクル装置130の動作を説明する。なお、通常の給湯運転については実施の形態1と同様であるので省略し、負圧防止運転についてのみ説明する。
実施の形態3に係る冷凍サイクル装置130における負圧防止運転では、低温低圧のガス状態の冷媒が圧縮機1に吸引され、圧縮されて高温高圧ガスとなって吐出される。圧縮機1から吐出された高温高圧の冷媒は3分岐し、第1の枝において、高温高圧の冷媒は、吐出ガスバイパス回路6に流入し、吐出ガスバイパス弁7で減圧されて高温低圧ガス冷媒となり、圧縮機1の吸入側にバイパスされる。第2の枝において、高温高圧の冷媒は、流路切替器2を経由して凝縮器3へ流入する。凝縮器3に流入した高温高圧ガス冷媒は、被熱交換媒体である水に放熱し、高圧液冷媒となる。
凝縮器3を流出した高圧冷媒は2分岐し、一方は吸入バイパス回路8へ流れ、もう一方はレシーバ12aに凝縮して貯溜される。吸入バイパス回路8へ流入した高圧冷媒は、吸入バイパス弁9で減圧膨張されて低温低圧の気液二相冷媒となる。吐出ガスバイパス弁7で減圧された高温低圧ガスと、吸入バイパス弁9で減圧膨張された低温低圧の気液二相冷媒は、合流して、低温低圧のガス冷媒となり、圧縮機1に再び吸引される。
また、負圧防止運転時は、膨張弁4の開度は全閉若しくは極めて小さな開度とするため、蒸発器5には膨張弁4を介して低圧二相冷媒はほとんど流れない。しかし、外気との熱交換と吐出ガスバイパス弁7を流出した低圧高温冷媒が流路切替器2を経由して、低温の蒸発器5に流れ込むことにより蒸発器5内へ液状の冷媒が溜まっていく。その結果、負圧防止運転中に冷媒が不足したり、通常運転への切り替え時に蒸発器5内に溜まっていた液冷媒が圧縮機1へ一気に流れ込むことにより液バックに至る可能性がある。そのため、負圧防止運転中は、第3の枝において、冷媒排出弁11を開いて、圧縮機1からの吐出冷媒を冷媒排出バイパス回路10を通して、蒸発器5へ流す。吐出冷媒を蒸発器5に流すことにより蒸発器5内の液冷媒を押し出すことができ、蒸発器5内の液冷媒の滞留を防止することができる。負圧防止運転では、蒸発器5を使わないため、通常の給湯運転に比べて必要冷媒量が少ない。このため、負圧防止運転では余剰冷媒が発生するが、実施の形態3の冷凍サイクル装置130ではレシーバ12aに余剰冷媒を貯溜させることができる。
以上のように、冷凍サイクル装置130では、レシーバ12aが凝縮器3の出口と吸入バイパス弁9を接続する配管と並列に設けられている。このため、凝縮器3の出口が二相冷媒の状態であっても、レシーバ12aに余剰冷媒を貯溜することが可能である。その結果、余剰冷媒が発生する負圧防止運転時に、圧縮機1の吸入側への液バック運転を防止し、信頼性の高い負圧防止運転を継続することができる。
変形例2.
図12は、本発明の実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の変形例2の冷媒回路及びシステム構成を示す図である。図1〜図11の冷凍サイクル装置と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。図12に示されるように、冷凍サイクル装置140は、アキュームレータ14を備えたものである。なお、その他の構成要素については図9と同じである。
アキュームレータ14は、圧縮機1の吸入側に設けたものであり、運転中に発生した余剰冷媒を貯溜する冷媒貯留容器である。
図12に示されるように、冷凍サイクル装置140は、制御装置125と、圧縮機吸入圧力センサ16と、アキュームレータ14の出口の配管温度を検知するアキュームレータ温度センサ21と、外気温度センサ22とを備えている。なお、図12では、アキュームレータ温度センサ21は、アキュームレータ14の出口の配管に設置されているが、アキュームレータ14の出口の配管に設置されてもよい。
制御装置125は、圧縮機吸入圧力センサ16と、アキュームレータ温度センサ21と、外気温度センサ22とが検知した信号を受信できるように各センサと接続されている。制御装置125は、これらの検知信号に基づいて圧縮機1の出力の制御を行う圧縮機制御手段125bを備えている。
次に図12を参照しながら、冷凍サイクル装置140の動作を説明する。なお、通常の給湯運転については実施の形態1と同様であるので省略し、負圧防止運転についてのみ説明する。
実施の形態3に係る冷凍サイクル装置140における負圧防止運転では、低温低圧のガス状態の冷媒が圧縮機1に吸引され、圧縮されて高温高圧ガスとなって吐出される。圧縮機1から吐出された高温高圧の冷媒は3分岐し、第1の枝において、高温高圧の冷媒は、吐出ガスバイパス回路6に流入し、吐出ガスバイパス弁7で減圧されて高温低圧ガス冷媒となり、圧縮機1の吸入側にバイパスされる。第2の枝において、高温高圧の冷媒は、流路切替器2を経由して凝縮器3へ流入する。凝縮器3に流入した高温高圧ガス冷媒は、被熱交換媒体である水に放熱し、高圧液冷媒となる。
凝縮器3を流出した高圧冷媒は吸入バイパス回路8へ流入し、吸入バイパス回路8へ流入した高圧冷媒は、吸入バイパス弁9で減圧膨張されて低温低圧の気液二相冷媒となる。吐出ガスバイパス弁7で減圧された高温低圧ガスと、吸入バイパス弁9で減圧膨張された低温低圧の気液二相冷媒は、合流して低温低圧の冷媒となる。低温低圧の冷媒は、アキュームレータ14を経由して、圧縮機1に再び吸引される。
また、負圧防止運転時は、膨張弁4の開度は全閉若しくは極めて小さな開度とするため、蒸発器5には膨張弁4を介して低圧二相冷媒はほとんど流れない。しかし、外気との熱交換と吐出ガスバイパス弁7を流出した低圧高温冷媒が流路切替器2を経由して、低温の蒸発器5に流れ込むことにより蒸発器5内へ液状の冷媒が溜まっていく。その結果、負圧防止運転中に冷媒が不足したり、通常運転への切り替え時に蒸発器5内に溜まっていた液冷媒が圧縮機1へ一気に流れ込むことにより液バックに至る可能性がある。そのため、負圧防止運転中は、第3の枝において、冷媒排出弁11を開いて、圧縮機1からの吐出冷媒を冷媒排出バイパス回路10を通して、蒸発器5へ流す。吐出冷媒を蒸発器5に流すことにより蒸発器5内の液冷媒を押し出すことができ、蒸発器5内の液冷媒の滞留を防止することができる。負圧防止運転では、蒸発器5を使わないため、通常の給湯運転に比べて必要冷媒量が少ない。このため、負圧防止運転では余剰冷媒が発生するが、実施の形態3の冷凍サイクル装置140ではアキュームレータ14に余剰冷媒を貯溜させることができる。
図13は、本発明の実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の冷媒回路中への空気混入検知の制御手順を示す変形例2のフローチャート図である。次に、図12および図13を参照しながら、冷凍サイクル装置140の負圧防止運転中を含む運転中における冷媒回路中への空気混入検知の制御の動作を説明する。
制御装置125は、圧縮機吸入圧力センサ16で検知した冷凍サイクルの圧縮機吸入圧力Psを取得する(ステップST21)。また、制御装置125は、アキュームレータ温度センサ21で検知したアキュームレータ温度Taを取得する(ステップST22)。次に、制御装置125は、圧縮機吸入圧力Psから吸入飽和温度f(Ps) を演算し、吸入飽和温度f(Ps)からアキュームレータ温度Taを減算した値と、圧縮機吸入圧力Psの目標値として設定された圧縮機第2設定温度SET8(例えば、3℃)とを比較する(ステップST23)。次に、圧縮機制御手段125bは、吸入飽和温度f(Ps)からアキュームレータ温度Taを減算した値が、圧縮機第2設定温度SET8よりも小さい場合には、圧縮機1を継続運転させる(ステップST24)。一方、圧縮機制御手段125bは、吸入飽和温度f(Ps)からアキュームレータ温度Taを減算した値が、圧縮機第2設定温度SET8以上の場合には、圧縮機1の運転を停止する(ステップST25)。
以上のように、冷凍サイクル装置140は、冷媒回路中に空気が混入することによる冷媒物性値の変化を利用し、冷媒回路中への空気の混入を検知している。具体的には、負圧防止運転を含む運転中において、アキュームレータ温度Taと、圧縮機吸入圧力Psの吸入飽和温度f(Ps)とはほとんど同値である。しかし、冷媒回路中に空気が混入すると冷媒の物性値が変化するため、アキュームレータ温度Taと、圧縮機吸入圧力Psの吸入飽和温度f(Ps)との間に温度差が生じる。圧縮機制御手段125bは、その温度差が大きくなると冷媒回路中に空気が混入していると判断して圧縮機の運転を停止させる。そのため、冷媒回路中へ空気が混入してしまったときに、空気を吸引することによる圧縮機の動作不良を回避することができる。
また、冷凍サイクル装置140は、負圧防止運転時にアキュームレータ14に余剰冷媒を貯溜することができるため、圧縮機1の吸入側への液バック運転を防止し、信頼性の高い負圧防止運転を継続することができる。さらに、冷凍サイクル装置140は、圧縮機吸入圧力が負圧になることなく、給湯運転を継続することができる。
なお、本発明の実施の形態は、上記実施の形態1〜3に限定されず、種々の変更を加えることができる。例えば、凝縮器3は、プレート式熱交換器で構成されているが、プレートフィン式熱交換器等で構成され、冷媒を空気と熱交換させてもよい。