JP6792978B2 - 非水系アルカリ金属型蓄電素子 - Google Patents

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本発明は、非水系アルカリ金属型蓄電素子に関する。
近年、地球環境の保全及び省資源を目指すエネルギーの有効利用の観点から、風力発電の電力平滑化システム又は深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システム等が注目を集めている。
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。
現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
電気二重層キャパシタのうち、電極に活性炭を用いたものは、0.5〜1kW/L程度の出力特性を有する。この電気二重層キャパシタは、耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)も高く、前記高出力が要求される分野で最適のデバイスと考えられてきた。しかしながら、そのエネルギー密度は1〜5Wh/L程度に過ぎないため、更なるエネルギー密度の向上が必要である。
他方、現在ハイブリッド電気自動車で採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ、160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力をより一層高めるとともに、耐久性(特に、高温における安定性)を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(蓄電素子の放電容量の何%を放電した状態かを示す値)50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されている。しかしながら、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計となっている。また、その耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)については、電気二重層キャパシタに比べ劣る。そのため、実用的な耐久性を持たせるためには、放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲での使用となる。実際に使用できる容量は更に小さくなるから、耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
前記のように、高エネルギー密度、高出力特性、及び耐久性を兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められている。しかしながら、上述した既存の蓄電素子には、それぞれ一長一短がある。それゆえ、これらの技術的要求を充足する新たな蓄電素子が求められている。その有力な候補として、リチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子が注目され、開発が盛んに行われている。
キャパシタのエネルギーは1/2・C・V(ここで、Cは静電容量、Vは電圧)で表される。
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(非水系リチウム型蓄電素子)の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着・脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵・放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。
上述の電極材料とその特徴をまとめると、電極に活性炭等の材料を用い、活性炭表面のイオンの吸着・脱離(非ファラデー反応)により充放電を行う場合は、高出力かつ高耐久性を実現するが、エネルギー密度が低くなる(例えば、1倍とする。)。他方、電極に酸化物や炭素材料を用い、ファラデー反応により充放電を行う場合、エネルギー密度が高くなる(例えば、活性炭を用いた非ファラデー反応の10倍とする。)が、耐久性及び出力特性に問題がある。
これらの電極材料の組合せとして、電気二重層キャパシタは、正極及び負極に活性炭(エネルギー密度1倍)を用い、正負極共に非ファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高出力かつ高耐久性を有するがエネルギー密度が低い(正極1倍×負極1倍=1)という特徴がある。
リチウムイオン二次電池は、正極にリチウム遷移金属酸化物(エネルギー密度10倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正負極共にファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高エネルギー密度(正極10倍×負極10倍=100)だが、出力特性及び耐久性に課題がある。更に、ハイブリッド電気自動車等で要求される高耐久性を満足させるためには放電深度を制限しなければならず、リチウムイオン二次電池では、そのエネルギーの10〜50%しか使用できない。
リチウムイオンキャパシタは、正極に活性炭(エネルギー密度1倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオン二次電池の特徴を兼ね備えた新規の非対称キャパシタであり、高出力かつ高耐久性でありながら、高エネルギー密度(正極1倍×負極10倍=10)を有し、リチウムイオン二次電池のように放電深度を制限する必要がないことが特徴である。
しかしながら、リチウム資源は希少であり、また地球上で偏在していることもあり、供給不安定化や価格高騰等が懸念されている。リチウム資源の需要は今後さらに拡大することが見込まれているため、リチウム代替元素を用いた、蓄電素子の開発が望まれている。実際に、ナトリウムやカリウムといったリチウム以外のアルカリ金属を蓄電素子に用いた研究が盛んに進められている。
以下の特許文献1には、カリウムを吸蔵放出可能な炭素材料を負極に用いることにより、サイクル耐久性に優れた、カリウムイオン二次電池およびカリウムイオンキャパシタが提案されている。
また、以下の特許文献2には、金属多孔体からなる正極用集電体の多孔部にナトリウムを吸着あるいは吸蔵脱離できる材料を充填することで、エネルギー密度、出力特性を向上したナトリウムイオンキャパシタが提案されている。
また、以下の特許文献3には、正極で被酸化物としての各種リチウム化合物を酸化し、劣化した蓄電素子の容量を回復させる方法が提案されている。
さらに、以下の特許文献4には、正極に炭酸リチウムを添加することにより、充放電サイクルに伴う容量劣化を抑制し、初期容量を増加させる方法が提案されている。
しかしながら、これらの文献に記載された方法においては、正極での電解液分解反応によるガス発生を十分に抑制できないため、高温耐久性や高負荷充放電サイクル特性が不十分であり、また、入出力特性についてもさらなる改善の余地がある。
国際公開第2016−059907号 特開2013−38170号公報 特許第5278467号公報 特開2001−84998号公報
以上の技術の現状に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、高負荷充放電サイクル特性に優れ、電子伝導性を下げることなく、高いエネルギー密度を有する非水系アルカリ金属型蓄電素子を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、正極中にアルカリ金属炭酸塩を含み、その被覆率、及びアルカリ金属炭酸塩粒子の数平均粒子径Xと正極活物質の数平均粒子径Yを、適切に制御することにより、初期の入出力特性と、高温耐久性、高負荷充放電サイクル特性が顕著に向上することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、下記のとおりのものである。
[1]ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、及びセシウムイオンからなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ金属イオンを含む非水系電解液、正極、負極、並びにセパレータを備える非水系アルカリ金属型蓄電素子であって、
該負極が、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、該負極活物質層は該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる炭素材料を含み、
該正極が、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
該正極が、該正極活物質層の全質量を基準として、該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを陽イオンとする炭酸塩粒子を1質量%以上50質量%以下で含有し、
該正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上50%以下であり、そして
前記炭酸塩粒子の数平均粒子径をXとするとき、1μm≦X≦5μmであり、前記正極活物質の数平均粒子径をYとするとき、3μm≦Y≦20μmであり、かつ、X<Yである、前記非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[2]前記正極集電体及び前記負極集電体が貫通孔を持たない金属箔である、前記[1]に記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[3]前記正極断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、2%以上15%以下である、前記[1]又は[2]に記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[4]前記正極活物質層に含まれる、前記非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを陽イオンとする炭酸塩の量が2.5質量%以上30質量%以下である、前記[1]〜[3]のいずれかにに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[5]前記正極の表面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率が30%以上99%以下である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[6]前記正極をBIB加工した断面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率が10%以上65%以下である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[7]前記正極が、正極集電体と、正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有し、前記正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
−ORO−X ...式(1)
{式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、X、Xはそれぞれ独立に−(COO)(ここで、nは0又は1である。)であり、M、Mはそれぞれ独立にNa、K、Rb、Csから選ばれるアルカリ金属である。}
−ORO−X ...式(2)
{式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X、Xはそれぞれ独立に−(COO)(ここで、nは0又は1である。)であり、MはそれぞれNa、K、Rb、Csから選ばれるアルカリ金属である。}
−ORO−X ...式(3)
{式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X、Xはそれぞれ独立に−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}からなる群から選択される1種以上の化合物を該正極物質層の単位質量当たり1.60×10−4mol/g〜300×10−4mol/gで含有する、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[8]前記アルカリ金属イオンがナトリウムイオンである、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[9]前記アルカリ金属イオンがカリウムイオンである、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[10]前記正極活物質層に含まれる正極活物質が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV(cc/g)とするとき、0.3<V≦0.8、及び0.5≦V≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下を示す活性炭である、前記[1]〜[9]のいずれかに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[11]前記正極活物質層に含まれる正極活物質が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量V(cc/g)が0.8<V≦2.5を満たし、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量V(cc/g)が0.8<V≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下を示す活性炭である、前記[1]〜[9]のいずれかに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[12]前記非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンの、前記負極活物質に対するドープ量が、単位質量当たり230mAh/g以上2,500mAh/g以下である、前記[1]〜[11]のいずれかに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[13]前記負極活物質のBET比表面積が100m/g以上1,500m/g以下である、前記[1]〜[12]のいずれかに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[14]前記非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンの、前記負極活物質に対するドープ量が、単位質量当たり20mAh/g以上700mAh/g以下である、前記[1]〜[11]のいずれかに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[15]前記負極活物質のBET比表面積が1m/g以上50m/g以下である、前記[1]〜[11]、及び[14]のいずれかに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[16]前記負極活物質の平均粒子径が1μm以上10μm以下である、前記[1]〜[11]、[14]、及び[15]のいずれかに記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[17]ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、及びセシウムイオンからなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ金属イオンを含む非水系電解液、正極、負極、並びにセパレータを備える非水系アルカリ金属型蓄電素子であって、
該負極が、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、該負極活物質層は該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる炭素材料を含み、
該正極が、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
該正極が、該正極活物質層の全質量を基準として、該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを陽イオンとする炭酸塩を1質量%以上50質量%以下含有し、
該正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上50%以下であり、
前記炭酸塩粒子の数平均粒子径をXとするとき、1μm≦X≦5μmであり、前記正極活物質の数平均粒子径をYとするとき、3μm≦Y≦20μmであり、かつ、X<Yであり、そして
該非水系アルカリ金属型蓄電素子において、セル電圧4Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、静電容量をF(F)、電力量をE(Wh)、蓄電素子の体積をV(L)としたとき、以下の:
(a)RaとFの積Ra・Fが0.3以上3.0以下である;
(b)E/Vが15以上50以下である;
を同時に満たすことを特徴とする、非水系アルカリ金属型蓄電素子。
[18]ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、及びセシウムイオンからなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ金属イオンを含む非水系電解液、正極、負極、並びにセパレータを備える非水系アルカリ金属型蓄電素子であって、
該負極が、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、該負極活物質層は該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる炭素材料を含み、
該正極が、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
該正極が、該正極活物質層の全質量を基準として、該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを陽イオンとする炭酸塩を1質量%以上50質量%以下で含有し、
該正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上50%以下であり、
前記炭酸塩粒子の数平均粒子径をXとするとき、1μm≦X≦5μmであり、前記正極活物質の数平均粒子径をYとするとき、3μm≦Y≦20μmであり、かつ、X<Yであり、そして
該非水系アルカリ金属型蓄電素子において、セル電圧4Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、セル電圧4V及び環境温度60℃において2か月間保存した後の、セル電圧4Vでの内部抵抗をRb(Ω)、環境温度25℃にて、セル電圧を2.2Vから3.8Vまで、300Cのレートでの充放電サイクルを60,000回行った後の内部抵抗をRc(Ω)としたとき、以下の:
(c)Rb/Raが3.0以下である;
(d)セル電圧4V及び環境温度60℃において2か月間保存した時に発生するガス量が、25℃において25×10−3cc/F以下である;
(e)Rc/Raが0.9以上2.0以下である;
を同時に満たすことを特徴とする、前記非水系アルカリ金属型蓄電素子。
本発明に係る非水系アルカリ金属型蓄電素子は、高負荷充放電サイクル特性に優れ、高出力かつ高エネルギー密度を有する。
以下、本発明の実施形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
[蓄電素子]
本実施形態に係る蓄電素子は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、及びセシウムイオンからなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ金属イオンを含む非水系電解液正極、負極、並びにセパレータを備える。
該負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、該負極活物質層は、該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる炭素材料を有する。
該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有する。
以下、本実施形態の正極及び負極の電極体の構成要素、作製方法について順に説明した後に、蓄電素子の組み立て、作製方法、評価方法を説明する。
[正極]
正極は、正極集電体と、その片面又は両面に存在する正極活物質層とを有する。正極は、蓄電素子組み立て前の正極前駆体として、アルカリ金属炭酸塩(アルカリ金属を陽イオンとする炭酸塩)を含むことが好ましい。後述のように、本発明では蓄電素子組み立て工程内で、負極にアルカリ金属イオンをプレドープすることが好ましいが、そのプレドープ方法としては、前記アルカリ金属炭酸塩を含む正極前駆体、負極、セパレータ、外装体、及び非水系電解液を用いて蓄電素子を組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。前記アルカリ金属炭酸塩は前記正極前駆体の正極集電体上に形成された正極活物質層に含有されることが好ましい。
本明細書中、アルカリ金属ドープ工程前における正極状態のことを正極前駆体、アルカリ金属ドープ工程後における正極状態のことを正極と定義する。
[正極活物質層]
正極活物質層は、活性炭を含む正極活物質を含有することを特徴とする。これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
また、正極前駆体の正極活物質層には、アルカリ金属炭酸塩が含有されることが好ましい。
[正極活物質]
正極活物質としては、活性炭を含むことを特徴とする。正極活物質としては、活性炭のみを使用してもよく、又は活性炭に加えて、後述するような他の炭素材料を併用してもよい。この炭素材料としては、カーボンナノチューブ、導電性高分子、又は多孔性の炭素材料を使用することがより好ましい。正極活物質には活性炭を含む1種類以上の炭素材料を混合して使用してもよく、炭素材料以外の材料(例えば、非水系電解液に含まれるアルカリ金属と遷移金属との複合酸化物等)を含んでもよい。
好ましくは該正極活物質の総量に対する該炭素材料の含有率が50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。該炭素材料の含有率が100質量%であることができるが、他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。
活性炭を正極活物質として用いる場合、活性炭の種類及びその原料には特に制限はない。しかしながら、高い入出力特性と、高いエネルギー密度とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、
(1)高い入出力特性のためには、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下である活性炭(以下、活性炭1ともいう。)が好ましく、また
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下である活性炭(以下、活性炭2ともいう。)が好ましい。
以下、上記活性炭1及び活性炭2について、個別に順次説明していく。
[活性炭1]
活性炭1のメソ孔量V1は、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、正極の嵩密度の低下を抑える点から、0.8cc/g以下であることが好ましくい。V1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
活性炭1のマイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましい。他方、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。V2は、より好ましくは0.6cc/g以上1.0cc/g以下、更に好ましくは0.8cc/g以上1.0cc/g以下である。
マイクロ孔量V2に対するメソ孔量V1の比(V1/V2)は、0.3≦V1/V2≦0.9の範囲であることが好ましい。すなわち、高容量を維持しながら出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという点から、V1/V2が0.3以上であることが好ましい。他方、高出力特性を維持しながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという点から、V1/V2は0.9以下であることが好ましい。より好ましいV1/V2の範囲は0.4≦V1/V2≦0.7、更に好ましいV1/V2の範囲は0.55≦V1/V2≦0.7である。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
活性炭1の平均細孔径は、得られる蓄電素子の出力を最大にする点から、17Å以上であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが最も好ましい。また、容量を最大にする点から、活性炭1の平均細孔径は25Å以下であることが好ましい。
活性炭1のBET比表面積は、1,500m/g以上3,000m/g以下であることが好ましく、1,500m/g以上2,500m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1,500m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が3,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
上記のような特徴を有する活性炭1は、例えば、以下に説明する原料及び処理方法を用いて得ることができる。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
これらの原料を上記活性炭1とするための炭化及び賦活の方式としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃(好ましくは450〜600℃)程度において、30分〜10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
上記炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。このうち、賦活ガスとして、水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法が好ましい。
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h(好ましくは0.7〜2.0kg/h)の割合で供給しながら、上記炭化物を3〜12時間(好ましくは5〜11時間、更に好ましくは6〜10時間)かけて800〜1,000℃まで昇温して賦活するのが好ましい。
更に、上記炭化物の賦活処理に先立ち、予め上記炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素材料を水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活する方法が、好ましく採用できる。
上記炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、上記賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本実施形態において使用できる、上記の特徴を有する活性炭1を製造することができる。
活性炭1の平均粒子径は、3〜20μmであることが好ましい。
上記平均粒子径が3μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。ここで、平均粒子径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒子径が3μm以上であればそのような欠点が生じ難い。他方、平均粒子径が15μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。上記平均粒子径は、より好ましくは4〜15μmであり、更に好ましくは4〜10μmである。
[活性炭2]
活性炭2のメソ孔量V1は、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。V1は、より好ましくは1.00cc/g以上2.0cc/g以下、さらに好ましくは1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
活性炭2のマイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、活性炭の電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、3.0cc/g以下であることが好ましい。上記V2は、より好ましくは1.0cc/g超2.5cc/g以下、更に好ましくは1.5cc/g以上2.5cc/g以下である。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
上述したメソ孔量及びマイクロ孔量を有する活性炭2は、従来の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ用として使用されていた活性炭よりもBET比表面積が高いものである。活性炭2のBET比表面積の具体的な値としては、2,300m/g以上4,000m/g以下であることが好ましい。BET比表面積の下限としては、3,000m/g以上であることがより好ましく、3,200m/g以上であることが更に好ましい。他方、BET比表面積の上限としては、3,800m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が2,300m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が4,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
上記のような特徴を有する活性炭2は、例えば、以下に説明するような原料及び処理方法を用いて得ることができる。
活性炭2の原料として用いられる炭素源としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭を作製するのに適しており特に好ましい。
これらの原料を炭化する方式、賦活処理時の加熱方法としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の公知の方式が挙げられる。加熱時の雰囲気は窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分として他のガスとの混合したガスが用いられる。炭化温度は400〜700℃(下限について、好ましくは450℃以上、更に好ましくは500℃以上。上限について、好ましくは650℃以下)程度で0.5〜10時間程度焼成することが好ましい。
上記炭化処理後の炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法、及びアルカリ金属化合物と混合した後に加熱処理を行うアルカリ金属賦活方があるが、高比表面積の活性炭を作製するにはアルカリ金属賦活法が好ましい。
この賦活方法では、炭化物とKOH、NaOH等のアルカリ金属化合物との質量比が1:1以上(アルカリ金属化合物の量が、炭化物の量と同じかこれよりも多い量)となるように混合した後に、不活性ガス雰囲気下で600〜900℃(好ましくは650℃〜850℃)の範囲において、0.5〜5時間加熱を行い、その後アルカリ金属化合物を酸及び水により洗浄除去し、更に乾燥を行う。
前記したように、炭化物とアルカリ金属化合物の質量比(=炭化物:アルカリ金属化合物)は1:1以上が好ましいが、アルカリ金属化合物の量が増えるほど、メソ孔量が増えるが、質量比1:3.5付近を境に急激に孔量が増える傾向があるので、質量比は1:3よりアルカリ金属化合物が増えることが好ましく、1:5.5以下であることが好ましい。質量比はアルカリ金属化合物が増えるほど孔量が大きくなるが、その後の洗浄等の処理効率を考慮すると上記範囲であることが好ましい。
尚、マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないためには、賦活する際に炭化物の量を多めにしてKOHと混合するとよい。マイクロ孔量及びメソ孔量の双方を大きくするためには、KOHの量を多めに使用するとよい。また、主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に水蒸気賦活を行うことが好ましい。
活性炭2の平均粒子径は3μm以上20μm以下であることが好ましい。より好ましくは4μm以上15μm以下、更に好ましくは4μm以上10μm以下である。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
[活性炭の使用態様]
活性炭1及び2は、それぞれ、1種の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって上記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。
上記の活性炭1及び2は、これらのうちのいずれか一方を選択して使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
正極活物質は、活性炭1及び2以外の材料(例えば、前記特定のV1及び/若しくはV2を有さない活性炭、又は活性炭以外の材料(例えば、非水系電解液に含まれるアルカリ金属と遷移金属との複合酸化物等))を含んでもよい。例示の態様において、活性炭1の含有量、又は活性炭2の含有量、又は活性炭1及び2の合計含有量が、それぞれ、全正極活物質の50質量%より多いことが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
正極活物質層における正極活物質の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、35質量%以上95質量%以下であることが好ましい。正極活物質の含有割合の下限としては、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましい。他方、正極活物質の含有割合の上限としては、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。この範囲の含有割合とすることにより、好適な充放電特性を発揮する。
[アルカリ金属炭酸塩]
正極前駆体は、非水系電解液が含むアルカリ金属イオンを陽イオンとするアルカリ金属炭酸塩粒子を含有することが好ましく、正極前駆体の正極活物質層が、非水系電解液に含まれるアルカリ金属の炭酸塩を含有することが、より好ましい。アルカリ金属炭酸塩はアルカリ金属ドープ工程において正極で分解し、アルカリ金属イオンを放出することが可能であり、吸湿性が低く、空気中での取り扱いが可能である。
アルカリ金属炭酸塩は、粒子状であることが好ましい。アルカリ金属炭酸塩の微粒子化には、様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
正極前駆体のアルカリ金属炭酸塩の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。この範囲の含有割合とすることにより、負極へのドーパント源として好適な機能を発揮するとともに、正極に適当な程度の多孔性を付与することができ、両者相俟って高負荷充放電効率に優れる蓄電素子を与えることができ、好ましい。
本実施形態の正極は、非水系電解液が含むアルカリ金属イオンを陽イオンとするアルカリ金属炭酸塩粒子を含有する。アルカリ金属炭酸塩は、正極における正極活物質層の全質量を基準として、1質量%以上50質量%以下であることを特徴とし、2.5質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。アルカリ金属炭酸塩が1質量%以上であると、アルカリ金属炭酸塩が電解液中のフッ素イオンを吸着し、正極上での電解液の副反応をアルカリ金属炭酸塩が抑制するため、高温耐久性、高負荷充放電サイクル耐久性が向上し、2.5質量%以上でその効果が顕著になる。また、アルカリ金属炭酸塩が50質量%以下であると、正極活物質間の電子伝導性がアルカリ金属炭酸塩により阻害されることが小さいため、高い入出力特性を示し、30質量%以下であると、特に好ましい。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
[アルカリ金属炭酸塩、正極活物質の数平均粒子径]
正極が含むアルカリ金属炭酸塩及び正極活物質については、アルカリ金属炭酸塩の数平均粒子径をX、正極活物質の平均粒子径をYとするとき、1μm≦X≦5μmであり、3μm≦Y≦20μmであり、かつ、X<Yである。Xについてより好ましくは、2μm≦X≦4μmである。Yについてより好ましくは、4μm≦Y≦15μmであり、さらに好ましくは、4μm≦Y≦10μmである。Xが1μm以上であれば、アルカリ金属ドープ後の正極中にアルカリ金属炭酸塩を残存させることができるため、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンを吸着することにより高負荷充放電サイクル特性が向上する。Xが5μm以下であれば、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンとの反応面積が増加するため、フッ素イオンの吸着を効率良く行うことができる。Yが3μm以上であれば、正極活物質間の電子伝導性を確保できる。Yが20μm以下であれば、電解質イオンとの反応面積が増加するために高い出力特性を発現できる。X<Yであれば、正極活物質間に生じる隙間にアルカリ金属炭酸塩が充填されるため、正極活物質間の電子伝導性を確保しつつ、エネルギー密度を高めることができる。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
とYの測定方法は特に限定されないが、正極断面の顕微ラマン画像から算出することができる。正極断面の形成方法については、正極上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB加工を用いることができるが、断面の方向などは特に限定されない。
は、例えば、以下の方法で算出できる。正極断面の顕微ラマン画像の各測定点のラマンスペクトルについて、炭酸イオンのラマンピーク波長周辺で直線のベースラインを設定し、ベースラインより高い部分の面積を正に、低い部分の面積を負として、面積(a)を算出し、マッピング化する。面積(a)について度数分布表を作成し、ヒストグラム化する。最大度数を与える面積値以下の部分ノイズ成分としてガウス型関数で近似し、ヒストグラムから差し引く。ノイズ成分を差し引いたヒストグラムで最大頻度となる面積以上を示している、スペクトルの測定位置をマッピング化し、これをアルカリ金属炭酸塩粒子とする。測定範囲において、すべてのアルカリ金属炭酸塩粒子長径の平均を算出することで求められる。
は、例えば、以下の方法で算出できる。前記顕微ラマンを測定したのと同じ視野で、測定した光学顕微鏡画像と前記炭酸イオンマッピングデータとを重ね合わせ、光学顕微鏡像で確認される粒子から、炭酸塩粒子を除いたものを正極活物質粒子とし、視野内に確認されるすべての活物質粒子の長径の平均を算出することで求められる。
[正極活物質層のその他の成分]
正極活物質層は、必要に応じて、正極活物質及びアルカリ金属炭酸塩の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーとしては、特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等を用いることができる。導電性フィラーの使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは0質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上15質量部以下である。混合量が30質量部よりも多くなると、正極活物質層における正極活物質の含有割合が少なくなるために、正極活物質層体積当たりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。結着剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上27質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上25質量部以下である。結着剤の量が1質量%以上であれば、十分な電極強度が発現される。他方、結着剤の量が30質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。結着剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上10質量部以下である。分散安定剤の量が10質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
[正極集電体]
正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こらない材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施形態の非水系アルカリ金属型蓄電素子における正極集電体としては、アルミニウム箔が好ましい。また、前記非水系電解液が含むアルカリ金属と合金を形成しない金属箔(たとえば、銅箔)であれば、好適に使用することもできる。
該金属箔は凹凸や貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
正極集電体の厚みは、正極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
[正極前駆体の製造]
非水系アルカリ金属型蓄電素子の正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質及びアルカリ金属炭酸塩、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることができる。さらに得られた正極前駆体にプレスを施して、正極活物質層の膜厚や、かさ密度を調整してもよい。溶剤を使用せずに、正極活物質及びアルカリ金属炭酸塩、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体に貼り付ける方法も可能である。
正極前駆体の塗工液の調整は、正極活物質を含む各種材料粉末の一部若しくは全部をドライブレンドし、次いで水又は有機溶媒、及び/又はそれらに結着剤や分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質を追加して調整してもよい。また、水又は有機溶媒に結着剤や分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、正極活物質を含む各種材料粉末を追加して調整してもよい。前記ドライブレンドする方法として、例えばボールミル等を使用して正極活物質及びアルカリ金属炭酸塩、並びに必要に応じて導電性フィラーを予備混合して、導電性の低いアルカリ金属炭酸塩に導電材をコーティングさせる予備混合をしてもよい。これにより、後述のアルカリ金属ドープ工程において正極前駆体でアルカリ金属炭酸塩が分解し易くなる。前記塗工液の溶媒に水を使用する場合には、アルカリ金属炭酸塩を加えることで塗工液がアルカリ性になることもあるため、必要に応じてpH調整剤を添加してもよい。
正極前駆体の塗工液の調整は特に制限されるものではないが、好適にはホモディスパーや多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることができる。良好な分散状態の塗工液を得るためには、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。周速1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解又は分散するため好ましい。また、50m/s以下であれば、分散による熱やせん断力により各種材料が破壊されることなく、再凝集が生じることがないため好ましい。
前記塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、より好ましくは粒度が80μm以下、さらに好ましくは粒度が50μm以下である。粒度が0.1μm以下では、正極活物質を含む各種材料粉末の粒径以下のサイズとなり、塗工液作製時に材料を破砕していることになり好ましくない。また、粒度が100μm以下であれば、塗工液吐出時の詰まりや塗膜のスジ発生等なく安定に塗工ができる。
正極前駆体の塗工液の粘度(ηb)は、1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。また、20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく安定に塗工でき、また所望の塗膜厚み以下に制御できる。
また、該塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
正極前駆体の塗膜の形成は特に制限されるものではないが、好適にはダイコーターやコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることができる。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工して形成してもよい。多層塗工の場合には、塗膜各層内のアルカリ金属炭酸塩の含有量が異なるように塗工液組成を調整してもよい。また、塗工速度は0.1m/分以上100m/分以下であることが好ましく、より好ましくは0.5m/分以上70m/分以下、さらに好ましくは1m/分以上50m/分以下である。塗工速度が0.1m/分以上であれば、安定に塗工できる。他方、100m/分以下であれば、塗工精度を十分に確保できる。
正極前駆体の塗膜の乾燥は特に制限されるものではないが、好適には熱風乾燥や赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的に温度を変えて乾燥させてもよい。また、複数の乾燥方法を組み合わせて乾燥させてもよい。乾燥温度は、25℃以上200℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以上180℃以下、さらに好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることができる。他方、200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れやマイグレーションによる結着剤の偏在、正極集電体や正極活物質層の酸化を抑制できる。
正極前駆体のプレスは特に制限されるものではないが、好適には油圧プレス機、真空プレス機等のプレス機を用いることができる。正極活物質層の膜厚、かさ密度、電極強度は後述するプレス圧力、隙間、プレス部の表面温度により調整できる。プレス圧力は0.5kN/cm以上20kN/cm以下が好ましく、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。他方、20kN/cm以下であれば、正極前駆体に撓みやシワが生じることがなく、所望の正極活物質層膜厚や、かさ密度に調整できる。また、プレスロール同士の隙間は所望の正極活物質層の膜厚や、かさ密度となるように乾燥後の正極前駆体膜厚に応じて任意の値を設定できる。さらに、プレス速度は正極前駆体に撓みやシワが生じない任意の速度に設定できる。また、プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要により加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用する結着剤の融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは30℃以上である。他方、加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、使用する結着剤の融点プラス50℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。例えば、結着剤としてPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、90℃以上200℃以下に加温することが好ましく、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下に加熱することである。また、結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、40℃以上150℃以下に加温することが好ましく、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下に加温することである。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
また、プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
正極活物質層の厚みは、正極集電体の片面当たり20μm以上200μm以下であることが好ましく、より好ましくは片面当たり25μm以上100μm以下であり、更に好ましくは30μm以上80μm以下である。正極活物質層の厚みが20μm以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。他方、正極活物質層の厚みが200μm以下であれば、電極内のイオン拡散抵抗を低く維持することができるため、十分な出力特性が得られるとともに、セル体積を縮小することができ、従ってエネルギー密度を高めることができる。尚、集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における正極活物質層の厚さとは、集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分の片面当たりの厚さの平均値をいう。
後述のアルカリ金属ドープ工程後の正極における正極活物質層の嵩密度は、0.50g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.55g/cm以上1.3g/cm以下の範囲である。正極活物質層の嵩密度が0.50g/cm以上であれば、高いエネルギー密度を発現でき、蓄電素子の小型化を達成できる。また、この嵩密度が1.3g/cm以下であれば、正極活物質層内の空孔における電解液の拡散が十分となり、高い出力特性が得られる。
BET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量、平均細孔径は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。試料を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行なう。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法又はBET1点法により、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。
BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett, Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(E. P. Barrett, L. G. Joyner and P. Halenda, J. Am. Chem. Soc., 73, 373(1951))。
また、MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、M.Mikhail, Brunauer, Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45 (1968))。
また、平均細孔径とは、液体窒素温度下で、各相対圧力下における窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる、試料の質量あたりの全細孔容積を上記BET比表面積で除して求めたものを指す。
平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定した際、全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径(すなわち、50%径(Median径))を指す。この平均粒子径は市販のレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
分散度は、JIS K5600に規定された粒ゲージによる分散度評価試験により求められる値である。すなわち、粒のサイズに応じた所望の深さの溝を有する粒ゲージに対して、溝の深い方の先端に十分な量の試料を流し込み,溝から僅かに溢れさせる。次いで、スクレーパーの長辺がゲージの幅方向と平行になり、粒ゲージの溝の深い先端に刃先が接触するように置き、スクレーパーをゲージの表面になるように保持しながら、溝の長辺方向に対して直角に、ゲージの表面を均等な速度で、溝の深さ0まで1〜2秒間かけて引き、引き終わってから3秒以内に20°以上30°以下の角度で光を当てて観察し、粒ゲージの溝に粒が現れる深さを読み取る。
粘度(ηb)及びTI値は、それぞれ以下の方法により求められる値である。まず、E型粘度計を用いて温度25℃、ずり速度2s−1の条件で2分以上測定した後の安定した粘度(ηa)を取得する。次いで、ずり速度を20s−1に変更した他は上記と同様の条件で測定した粘度(ηb)を取得する。上記で得た粘度の値を用いてTI値はTI値=ηa/ηbの式により算出される。ずり速度を2s−1から20s−1へ上昇させる際は、1段階で上昇させても良いし、上記の範囲で多段的にずり速度を上昇させ、適宜そのずり速度における粘度を取得しながら上昇させてもよい。
[電極中のアルカリ金属炭酸塩の同定方法]
正極中に含まれるアルカリ金属炭酸塩の同定方法は特に限定されないが、例えば、下記の方法により同定することができる。アルカリ金属炭酸塩の同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
以下に記載するSEM−EDX、ラマン、XPSを測定する際には、アルゴンボックス中で非水系アルカリ金属型蓄電素子を解体して正極を取り出し、正極表面に付着した電解質を洗浄した後に測定を行うことが好ましい。正極の洗浄方法については、正極表面に付着した電解質を洗い流せればよいため、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート溶媒が好適に利用できる。洗浄方法としては例えば、正極重量の50〜100倍のジエチルカーボネート溶媒に正極を10分間以上浸漬させ、その後溶媒を取り替えて再度正極を浸漬させる。その後正極をジエチルカーボネートから取り出し、真空乾燥(温度:0〜200℃、圧力:0〜20kPa、時間:1〜40時間の範囲で正極中のジエチルカーボネートの残存が1質量%以下になる条件とする。ジエチルカーボネートの残存量については、後述する蒸留水洗浄、液量調整後の水のGC/MSを測定し、予め作成した検量線を基に定量することができる。)させた後に、上記SEM−EDX、ラマン、XPSの解析を実施する。
後述するイオンクロマトグラフィーについては、正極を蒸留水で洗浄した後の水を解析することにより炭酸イオンを同定することができる。
上記解析手法にてアルカリ金属炭酸塩を同定できなかった場合、その他の解析手法として、XRD(X線回折)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AES(オージェ電子分光)、TPD/MS(加熱発生ガス質量分析)、DSC(示差走査熱量分析)等を用いることにより、アルカリ金属炭酸塩を同定することもできる。
[SEM−EDX]
アルカリ金属炭酸塩及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極表面のSEM−EDX画像による酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像の測定例として、加速電圧を10kV、エミッション電流を1μA、測定画素数を256×256ピクセル、積算回数を50回として測定できる。試料の帯電を防止するために、金、白金、オスミウム等を真空蒸着やスパッタリング等の方法により表面処理することもできる。SEM−EDX画像の測定方法については、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む粒子をアルカリ金属炭酸塩とする。
[ラマン]
アルカリ金属炭酸塩及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極表面のラマンイメージングにより判別できる。測定条件の例として、励起光を532nm、励起光強度を1%、対物レンズの長作動を50倍、回折格子を1800gr/mm、マッピング方式を点走査(スリット65mm、ビニング5pix)、1mmステップ、1点当たりの露光時間を3秒、積算回数を1回、ノイズフィルター有りの条件にて測定することができる。測定したラマンスペクトルについて、1071〜1104cm−1の範囲で直線のベースラインを設定し、ベースラインより正の値を炭酸イオンのピークとして面積を算出し、頻度を積算するが、この時にノイズ成分をガウス型関数で近似した炭酸イオンピーク面積に対する頻度を上記炭酸イオンの頻度分布から差し引く。
[XPS]
アルカリ金属の電子状態をXPSにより解析することによりアルカリ金属の結合状態を判別することができる。測定条件の例として、X線源を単色化AlKα、X線ビーム径を100μmφ(25W、15kV)、パスエネルギーをナロースキャン:58.70eV、帯電中和を有り、スイープ数をナロースキャン:10回(炭素、酸素)20回(フッ素)30回(リン)40回(アルカリ金属)50回(ケイ素)、エネルギーステップをナロースキャン:0.25eVの条件にて測定できる。XPSの測定前に正極の表面をスパッタリングにてクリーニングすることが好ましい。スパッタリングの条件として、例えば、加速電圧1.0kV、2mm×2mmの範囲を1分間(SiO換算で1.25nm/min)の条件にて正極の表面をクリーニングすることができる。得られたXPSスペクトルについて、C1sの結合エネルギー285eVのピークをC−C結合、286eVのピークをC−O結合、288eVのピークをCOO、290〜292eVのピークをCO 2−、C−F結合、O1sの結合エネルギー527〜530eVのピークをO2−、531〜532eVのピークをCO、CO、OH、PO(xは1〜4の整数)、SiO(xは1〜4の整数)、533eVのピークをC−O、SiO(xは1〜4の整数)、F1sの結合エネルギー685eVのピークをF、687eVのピークをC−F結合、MPO(MはNa、K、Rb、Csから選ばれるアルカリ金属、x、y、zは1〜6の整数)、PF 、P2pの結合エネルギーについて、133eVのピークをPO(xは1〜4の整数)、134〜136eVのピークをPF(xは1〜6の整数)、Si2pの結合エネルギー99eVのピークをSi、シリサイド、101〜107eVのピークをSi(x、yは任意の整数)として帰属することができる。得られたスペクトルについて、ピークが重なる場合には、ガウス関数又はローレンツ関数を仮定してピーク分離し、スペクトルを帰属することが好ましい。前記で得られた電子状態の測定結果及び存在元素比の結果から、存在するアルカリ金属炭酸塩を同定することができる。
[イオンクロマトグラフィー]
正極の蒸留水洗浄液をイオンクロマトグラフィーで解析することにより、水中に溶出したアニオン種を同定することができるため、炭酸イオンを検出できる。使用するカラムとしては、イオン交換型、イオン排除型、逆相イオン対型を使用することができる。検出器としては、電気伝導度検出器、紫外可視吸光光度検出器、電気化学検出器等を使用することができ、検出器の前にサプレッサーを設置するサプレッサー方式、サプレッサーを配置せずに電気伝導度の低い溶液を溶離液に用いるノンサプレッサー方式を用いることができる。また、質量分析計や荷電化粒子検出を検出器と組み合わせて測定することもできる。
サンプルの保持時間は、使用するカラムや溶離液等の条件が決まれば、イオン種成分毎に一定であり、また、ピークのレスポンスの大きさはイオン種毎に異なるが濃度に比例する。トレーサビリティーが確保された既知濃度の炭酸イオン標準液を予め測定しておくことで炭酸イオン種成分の定量が可能となる。
[アルカリ金属炭酸塩の定量方法]
正極におけるアルカリ金属炭酸塩の含有割合は、正極中に含まれるアルカリ金属炭酸塩重量を正極活物質層重量で除することによって求められる。正極に含有されるアルカリ金属炭酸塩の具体的な定量方法を以下に記載する。正極を有機溶媒で洗浄し、その後蒸留水で洗浄し、蒸留水での洗浄前後の正極重量変化からアルカリ金属炭酸塩を定量することができる。測定する正極の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5cm以上200cm以下であることが好ましく、更に好ましくは25cm以上150cm以下である。面積が5cm以上あれば測定の再現性が確保される。面積が200cm以下であればサンプルの取扱い性に優れる。有機溶媒による洗浄については正極表面に堆積した電解液分解物を除去できれば良いため、有機溶媒は特に限定されないが、アルカリ金属炭酸塩の溶解度が2%以下である有機溶媒を用いることでアルカリ金属炭酸塩の溶出が抑制されるため好ましい。例えば、メタノール、アセトン等の極性溶媒が好適に用いられる。
正極の洗浄方法は、正極の重量に対し50〜100倍のメタノール溶液に正極を3日間以上十分に浸漬させる。この時、メタノールが揮発しないよう容器に蓋をするなどの対策を施すことが好ましい。その後、正極をメタノールから取り出し、真空乾燥(温度:100〜200℃、圧力:0〜10kPa、時間:5〜20時間の範囲で正極中のメタノールの残存が1質量%以下になる条件とする。メタノールの残存量については、後述する蒸留水洗浄後の水のGC/MSを測定し、予め作成した検量線を基に定量することができる。)し、その時の正極の重量をM[g]とする。次いで、正極の重量の100倍(100M[g])の蒸留水に正極を3日間以上十分に浸漬させる。この時、蒸留水が揮発しないよう容器に蓋をする等の対策を施すことが好ましい。3日間以上浸漬させた後、蒸留水から正極を取り出し(前述のイオンクロマトグラフィーを測定する場合は、蒸留水の量が100M[g]になるように液量を調整する。)、上記のメタノール洗浄と同様に真空乾燥する。この時の正極の重量をM[g]とし、続いて、得られた正極の集電体の重量を測定するため、スパチュラ、ブラシ、刷毛等を用いて集電体上の正極活物質層を取り除く。得られた正極集電体の重量をM[g]とすると、正極中に含まれるアルカリ金属炭酸塩の質量%Zは、下記式(4):
Z=100×[1−(M−M)/(M−M)] …式(4)
により算出できる。
[正極活物質層断面積に占めるアルカリ金属炭酸塩面積比率]
正極活物質層は、アルカリ金属炭酸塩を含有し、正極断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上50%以下であることを特徴とする。炭酸イオンマッピングの面積比率は、より好ましくは2.5%以上30%以下である。炭酸イオンマッピングの面積比率が1%以上であると、高温保存耐久性、高負荷充放電サイクル特性が向上する。理由は定かではないが、高温保存時やサイクル試験時に生成する水素イオンを炭酸イオンがトラップすることによって、電解液の副反応を抑制していると推察される。炭酸イオンマッピングの面積比率が50%以下であると、アルカリ金属炭酸塩が正極活物質間の導電パスを妨げることがないため、高い入出力特性が得られる。
[アルカリ金属炭酸塩のフッ素化合物被覆率]
正極中に含有されたアルカリ金属炭酸塩は、副反応により、分解してガス化してしまうと、抵抗上昇の原因や高温保存時のガス発生の要因となってしまう。そのため、アルカリ金属炭酸塩の表面には、フッ素含有化合物からなる被膜を形成し、アルカリ金属炭酸塩の前記分解反応を抑制することが好ましい。
フッ素含有化合物の被膜の形成方法は特に限定されないが、フッ素含有化合物を電解液中に含有させ、非水系アルカリ金属型蓄電素子に前記フッ素含有化合物の分解電位以上の高電圧を印加する方法や、分解温度以上の温度をかける方法等が挙げられる。
アルカリ金属炭酸塩表面に被覆するフッ素化合物の被覆率(正極表面SEM−EDX画像における酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率A)は30%以上99%以下であることが好ましい。Aが30%以上であれば、アルカリ金属炭酸塩の分解を抑制することができる。Aが99%以下であれば正極近傍を塩基性に保つことができるため、高負荷サイクル特性に優れる。
被覆率の測定方法としては、正極表面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対してフッ素マッピングの面積重複率を算出することで求められる。
SEM−EDXの元素マッピングの測定条件は特に限定されないが、画素数は128×128ピクセル〜512×512ピクセルの範囲であることが好ましく、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。
正極断面のSEM−EDXにより得られた元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率Aが10%以上65%以下であることが好ましい。Aが10%以上であれば、アルカリ金属炭酸塩の分解を抑制することができる。Aが65%以下であれば、アルカリ金属炭酸塩の内部までフッ素化されていない状態であるため、正極近傍を塩基性に保つことができ、高負荷サイクル特性に優れる。
正極活物質層は、下記式(1)乃至(3):
−ORO−X ...式(1)
{式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、X、Xはそれぞれ独立に−(COO)(ここで、nは0又は1である。)であり、M、Mはそれぞれ独立にNa、K、Rb、Csから選ばれるアルカリ金属である。}
−ORO−X ...式(2)
{式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X、Xはそれぞれ独立に−(COO)(ここで、nは0又は1である。)であり、MはそれぞれNa、K、Rb、Csから選ばれるアルカリ金属である。}
−ORO−X ...式(3)
{式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X、Xはそれぞれ独立に−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}からなる群から選択される1種以上の化合物を該正極物質の単位質量当たり1.60×10−4mol/g〜300×10−4mol/g含有することが好ましい。
式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基であり、X、Xはそれぞれ独立に−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。
特に好ましい化合物は、MOCOM、MOCOM、MOCOCOOM、MOCOOCOM、MOCOOCOCOOM及びMOCOOCOCOOMで表される化合物(Mはそれぞれ独立にNa、K、Rb、Csから選ばれるアルカリ金属である。)である。
式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基であり、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基又はそのアルカリ金属アルコキシド、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X、Xはそれぞれ独立に−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。
特に好ましい化合物は、MOCOH、MOCOH、MOCOCOOH、MOCOCOOH、MOCOOCOCOOH、MOCOOCOCOOH、MOCOCH、MOCOCH、MOCOCOOCH、MOCOCOOCH、MOCOOCOCOOCH、MOCOOCOCOOCH、MOCOC、MOCOC、MOCOCOOC、MOCOCOOC、MOCOOCOCOOC、MOCOOCOCOOCで表される化合物(Mはそれぞれ独立にNa、K、Rb、Csから選ばれるアルカリ金属である。)である。
式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基であり、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基又はそのアルカリ金属アルコキシド、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X、Xはそれぞれ独立に−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。
特に好ましい化合物は、HOCOH、HOCOH、HOCOCOOH、HOCOCOOH、HOCOOCOCOOH、HOCOOCOCOOH、HOCOCH、HOCOCH、HOCOCOOCH、HOCOCOOCH、HOCOOCOCOOCH、HOCOOCOCOOCH、HOCOC、HOCOC、HOCOCOOC、HOCOCOOC、HOCOOCOCOOC、HOCOOCOCOOC、CHOCOCH、CHOCOCH、CHOCOCOOCH、CHOCOCOOCH、CHOCOOCOCOOCH、CHOCOOCOCOOCH、CHOCOC、CHOCOC、CHOCOCOOC、CHOCOCOOC、CHOCOOCOCOOC、CHOCOOCOCOOC、COCOC、COCOC、COCOCOOC、COCOCOOC、COCOOCOCOOC、COCOOCOCOOC
で表される化合物である。
前記化合物を正極活物質層内に含有させるための方法としては、例えば、正極活物質層に前記化合物を混合する方法、正極活物質層に前記化合物を吸着させる方法、正極活物質層に前記化合物を電気化学的に析出させる方法等が挙げられる。
中でも、非水系電解液中に、分解してこれらの前記化合物を生成し得る前駆体を含有させておき、蓄電素子を作製する工程における前記前駆体の分解反応を利用して、正極活物質層内に前記化合物を堆積させる方法が好ましい。
前記化合物を形成する前駆体としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートおよびフルオロエチレンカーボネートから選択される少なくとも1種の有機溶媒を使用することが好ましく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートを使用することがさらに好ましい。
ここで、前記化合物の総量は、前記正極活物質の単位質量当たり、1.60×10−4mol/g以上であることが好ましく、5.0×10−4mol/g以上であることがより好ましい。前記化合物の総量が正極活物質層の単位質量当たり1.60×10−4mol/g以上であれば、非水系電解液が正極活物質に接することがなく、非水系電解液が酸化分解することを抑制できる。
ここで、前記化合物の総量は、前記正極活物質の単位質量当たり、300×10−4mol/g以下であり、150×10−4mol/g以下であることがより好ましく、100×10−4mol/g以下であることがより好ましい。前記化合物の総量が正極活物質の単位質量当たり300×10−4mol/g以下であれば、アルカリ金属イオンの拡散を阻害することがなく、高い入出力特性を発現することができる。
[負極]
負極は、負極集電体と、その片面又は両面に存在する負極活物質層とを有する。
[負極活物質層]
負極活物質層は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む。これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散材安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
[負極活物質]
負極活物質は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能な物質を用いることができる。具体的には、炭素材料、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫及び錫化合物等が例示される。好ましくは該負極活物質の総量に対する該炭素材料の含有率が50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。該炭素材料の含有率が100質量%であることができるが、他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。
負極活物質には、アルカリ金属イオンをドープすることが好ましい。本明細書において、負極活物質にドープされたアルカリ金属イオンとしては、主に3つの形態が包含される。
第一の形態としては、非水系アルカリ金属型蓄電素子を作製する前に、負極活物質に設計値として予め吸蔵させるアルカリ金属イオンである。
第二の形態としては、非水系アルカリ金属型蓄電素子を作製し、出荷する際の負極活物質に吸蔵されているアルカリ金属イオンである。
第三の形態としては、非水系アルカリ金属型蓄電素子をデバイスとして使用した後の負極活物質に吸蔵されているアルカリ金属イオンである。
負極活物質にアルカリ金属イオンをドープしておくことにより、得られる非水系アルカリ金属型蓄電素子の容量及び作動電圧を良好に制御することが可能となる。
炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素材料;易黒鉛化性炭素材料;カーボンブラック;カーボンナノ粒子;活性炭;人造黒鉛;天然黒鉛;黒鉛化メソフェーズカーボン小球体;黒鉛ウイスカ;ポリアセン系物質等のアモルファス炭素質材料;石油系のピッチ、石炭系のピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えば、フェノール樹脂等)等の炭素質材料前駆体を熱処理して得られる炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂又はノボラック樹脂の熱分解物;フラーレン;カーボンナノフォーン;及びこれらの複合炭素材料を挙げることができる。
これらの中でも負極の抵抗を下げる観点から、前記炭素材料1種以上(以下、基材ともいう。)と前記炭素質材料前駆体とを共存させた状態で熱処理を行い、該基材と該炭素質材料前駆体由来の炭素質材料とを複合させた複合炭素材料が好ましい。該炭素質材料前駆体としては、熱処理により該炭素質材料となるものであれば特に制限はないが、石油系のピッチ又は石炭系のピッチが特に好ましい。熱処理を行う前に、該炭素質材料前駆体の融点より高い温度において、該基材と該炭素質材料前駆体とを混合してもよい。熱処理温度は、使用する該炭素質材料前駆体が揮発又は熱分解して発生する成分が該炭素質材料となる温度であればよいが、好ましくは400℃以上2500℃以下、より好ましくは500℃以上2000℃以下、さらに好ましくは550℃以上1500℃以下である。熱処理を行う雰囲気は特に制限はないが、非酸化性雰囲気が好ましい。
前記複合炭素材料の好ましい例は、後述の複合炭素材料1及び2である。これらの内どちらかを選択して使用してもよく、又はこれらの双方を併用してもよい。
[複合炭素材料1]
複合炭素材料1は、BET比表面積が100m/g以上3000m/g以下の炭素材料1種以上を該基材として用いた該複合炭素材料である。該基材は、特に制限されるものではないが、活性炭やカーボンブラック、鋳型多孔質炭素、高比表面積黒鉛、カーボンナノ粒子等を好適に用いることができる。
複合炭素材料1のBET比表面積は、100m/g以上1,500m/g以下が好ましく、より好ましくは150m/g以上1,100m/g以下、さらに好ましくは180m/g以上550m/g以下である。このBET比表面積が100m/g以上であれば、細孔を適度に保持することができアルカリ金属イオンの拡散が良好となるため、高い入出力特性を示すことができる。他方、1,500m/g以下であることにより、アルカリ金属イオンの充放電効率が向上するため、サイクル耐久性が損なわれることがない。
複合炭素材料1における該炭素質材料の該基材に対する質量比率は10%以上200%以下が好ましく、好ましくは12%以上180%以下、より好ましくは15%以上160%以下、特に好ましくは18%以上150%以下である。炭素質材料の質量比率が10%以上であれば、該基材が有していたマイクロ孔を該炭素質材料で適度に埋めることができ、アルカリ金属イオンの充放電効率が向上するため、良好なサイクル耐久性を示すことができる。他方、炭素質材料の質量比率が200%以下であれば、細孔を適度に保持することができアルカリ金属イオンの拡散が良好となるため、高い入出力特性を示すことができる。
複合炭素材料1の単位質量当たりのアルカリ金属イオンのドープ量は、230mAh/g以上2,500mAh/g以下であることが好ましく、より好ましくは320mAh/g以上2,100mAh/g以下、さらに好ましくは460mAh/g以上1,700mAh/g以下、よりさらに好ましくは540mAh/g以上1,500mAh/g以下である。
アルカリ金属イオンをドープすることにより、負極電位が低くなるため、アルカリ金属イオンがドープされた複合炭素材料1を含む負極を正極と組み合わせた場合、非水系アルカリ金属型蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。その結果、得られる非水系アルカリ金属型蓄電素子の容量及びエネルギー密度が高くなる。
該ドープ量が230mAh/g以上であれば、複合炭素材料1におけるアルカリ金属イオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもアルカリ金属イオンが良好にドープされ、更に所望のアルカリ金属量に対する複合炭素材料1を低減することができる。そのため、負極膜厚を薄くすることが可能となり、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。他方、ドープ量が2,500mAh/g以下であれば、アルカリ金属の析出等の副作用が発生するおそれがない。
以下、複合炭素材料1の好ましい例として、該基材として活性炭を用いた複合炭素材料1aについて説明する。
複合炭素材料1aは、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とするとき、0.010≦Vm1≦0.300、0.001≦Vm2≦0.650であることが好ましい。
メソ孔量Vm1は、より好ましくは0.010≦Vm1≦0.225、さらに好ましくは0.010≦Vm1≦0.200である。マイクロ孔量Vm2は、より好ましくは0.001≦Vm2≦0.200、更に好ましくは0.001≦Vm2≦0.150、特に好ましくは0.001≦Vm2≦0.100である。
メソ孔量Vm1が0.300cc/g以下であれば、BET比表面積を大きくすることができ、アルカリ金属イオンのドープ量を高めることができることに加え、負極の嵩密度を高めることができる。その結果、負極を薄膜化することができる。また、マイクロ孔量Vm2が0.650cc/g以下であれば、アルカリ金属イオンに対する高い充放電効率が維持できる。他方、メソ孔量Vm1及びマイクロ孔量Vm2が下限以上(0.010≦Vm1、0.001≦Vm2)であれば、高い入出力特性が得られる。
複合炭素材料1aのBET比表面積は、100m/g以上1,500m/g以下が好ましく、より好ましくは150m/g以上1,100m/g以下、さらに好ましくは180m/g以上550m/g以下である。このBET比表面積が100m/g以上であれば、細孔を適度に保持することができるため、アルカリ金属イオンの拡散が良好となるため、高い入出力特性を示すことができる。また、アルカリ金属イオンのドープ量を高めることができるため、負極を薄膜化することができる。他方、1,500m/g以下であることにより、アルカリ金属イオンの充放電効率が向上するので、サイクル耐久性が損なわれることがない。
複合炭素材料1aの平均細孔径は、高い入出力特性にする点から、20Å以上であることが好ましく、25Å以上であることがより好ましく、30Å以上であることがさらに好ましい。他方、高エネルギー密度にする点から、平均細孔径は、65Å以下であることが好ましく、60Å以下であることがより好ましい。
複合炭素材料1aの平均粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。下限については、より好ましくは2μm以上であり、更に好ましくは2.5μm以上である。上限については、より好ましくは6μm以下であり、更に好ましくは4μm以下である。平均粒子径が1μm以上10μm以下であれば良好な耐久性が保たれる。
複合炭素材料1aの水素原子/炭素原子の原子数比(H/C)は、0.05以上0.35以下であることが好ましく、0.05以上0.15以下であることが、より好ましい。H/Cが0.35以下である場合には、活性炭表面に被着している炭素質材料の構造(典型的には、多環芳香族系共役構造)が良好に発達して容量(エネルギー密度)及び充放電効率が高くなる。他方、H/Cが0.05以上である場合には、炭素化が過度に進行することはないため良好なエネルギー密度が得られる。尚、H/Cは元素分析装置により測定される。
複合炭素材料1aは、前記基材の活性炭に由来するアモルファス構造を有するが、同時に、主に被着した炭素質材料に由来する結晶構造を有する。X線広角回折法によると、該複合炭素材料1aは、(002)面の面間隔d002が3.60Å以上4.00Å以下であり、このピークの半価幅から得られるc軸方向の結晶子サイズLcが8.0Å以上20.0Å以下であるものが好ましく、d002が3.60Å以上3.75Å以下であり、このピークの半価幅から得られるc軸方向の結晶子サイズLcが11.0Å以上16.0Å以下であるものがより好ましい。
複合炭素材料1aの基材として用いる活性炭としては、得られる複合炭素材料1aが所望の特性を発揮する限り、特に制限はない。例えば、石油系、石炭系、植物系、高分子系等の各種の原材料から得られた市販品を使用することができる。特に、平均粒子径が1μm以上15μm以下の活性炭粉末を用いることが好ましく、より好ましくは2μm以上10μm以下である。
本実施形態において規定する細孔分布範囲を有する複合炭素材料1aを得るためには、基材に用いる活性炭の細孔分布が重要である。
活性炭においては、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)としたとき、0.050≦V1≦0.500、0.005≦V2≦1.000、かつ、0.2≦V1/V2≦20.0であることが好ましい。
メソ孔量V1については、0.050≦V1≦0.350がより好ましく、0.100≦V1≦0.300が更に好ましい。マイクロ孔量V2については、0.005≦V2≦0.850がより好ましく、0.100≦V2≦0.800が更に好ましい。メソ孔量/マイクロ孔量の比率については、0.22≦V1/V2≦15.0がより好ましく、0.25≦V1/V2≦10.0が更に好ましい。活性炭のメソ孔量V1が0.500以下である場合及びマイクロ孔量V2が1.000以下である場合、上記本実施形態における複合炭素材料1aの細孔構造を得るためには適量の炭素質材料を被着させれば足りるので、細孔構造を制御し易くなる。他方、活性炭のメソ孔量V1が0.050以上である場合及びマイクロ孔量V2が0.005以上である場合、V1/V2が0.2以上である場合、及びV1/V2が20.0以下である場合にも構造が容易に得られる。
複合炭素材料1aの原料として用いる炭素質材料前駆体とは、熱処理することにより、活性炭に炭素質材料を被着させることができる、固体、液体、又は溶剤に溶解可能な有機材料である。この炭素質材料前駆体としては、例えば、ピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えば、フェノール樹脂等)等を挙げることができる。これらの炭素質材料前駆体の中でも、安価であるピッチを用いることが、製造コスト上好ましい。ピッチは、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。石油系ピッチとしては、例えば原油の蒸留残査、流動性接触分解残査(デカントオイル等)、サーマルクラッカーに由来するボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタール等が例示される。
ピッチを用いる場合、該ピッチを活性炭との共存下で熱処理し、活性炭の表面においてピッチの揮発成分又は熱分解成分を熱反応させて該活性炭に炭素質材料を被着させることにより、複合炭素材料1aが得られる。この場合、200〜500℃程度の温度において、ピッチの揮発成分又は熱分解成分の活性炭細孔内への被着が進行し、400℃以上で該被着成分が炭素質材料となる反応が進行する。熱処理時のピーク温度(最高到達温度)は、得られる複合炭素材料1aの特性、熱反応パターン、熱反応雰囲気等により適宜決定されるものであるが、400℃以上であることが好ましく、より好ましくは450℃〜1,000℃であり、さらに好ましくは500〜800℃程度である。また、熱処理時のピーク温度を維持する時間は、30分間〜10時間であることが好ましく、より好ましくは1時間〜7時間、更に好ましくは2時間〜5時間である。例えば、500〜800℃程度のピーク温度で2時間〜5時間に亘って熱処理する場合、活性炭表面に被着している炭素質材料は多環芳香族系炭化水素になっているものと考えられる。
また、用いるピッチの軟化点は、30℃以上250℃以下が好ましく、60℃以上130℃以下がより好ましい。軟化点が30℃以上であるピッチはハンドリング性に支障がなく、精度よく仕込むことが可能である。軟化点が250℃以下であるピッチには比較的低分子の化合物を多く含有するため、該ピッチを用いると、活性炭内の細かい細孔まで被着することが可能となる。
複合炭素材料1aを製造するための具体的方法としては、例えば、炭素質材料前駆体から揮発した炭化水素ガスを含む不活性雰囲気中で活性炭を熱処理し、気相で炭素質材料を被着させる方法が挙げられる。また、活性炭と炭素質材料前駆体とを予め混合し熱処理する方法、溶媒に溶解させた炭素質材料前駆体を活性炭に塗布して乾燥させた後に熱処理する方法も可能である。
複合炭素材料1aにおける該炭素質材料の該活性炭に対する質量比率が10%以上100%以下であるものが好ましく、より好ましくは15%以上80%以下でありである。炭素質材料の質量比率が10%以上であれば、該活性炭が有していたマイクロ孔を該炭素質材料で適度に埋めることができ、アルカリ金属イオンの充放電効率が向上するから、サイクル耐久性が損なわれることがない。また、炭素質材料の質量比率が100%以下であれば、複合炭素材料1aの細孔が適度に保持されて比表面積が大きいまま維持される。そのため、アルカリ金属イオンのドープ量を高めることができる結果から、負極を薄膜化しても高出力密度かつ高耐久性を維持することができる。
[複合炭素材料2]
複合炭素材料2は、BET比表面積が0.5m/g以上80m/g以下の炭素材料1種以上を前記基材として用いた前記複合炭素材料である。該基材は、特に制限されるものではないが、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック等を好適に用いることができる。
複合炭素材料2のBET比表面積は、1m/g以上50m/g以下が好ましく、より好ましくは1.5m/g以上40m/g以下、さらに好ましくは2m/g以上25m/g以下である。このBET比表面積が1m/g以上であれば、アルカリ金属イオンとの反応場を十分に確保できるため、高い入出力特性を示すことができる。他方、50m/g以下であれば、アルカリ金属イオンの充放電効率が向上し、かつ充放電中の非水系電解液の分解反応が抑制されるため、高いサイクル耐久性を示すことができる。
複合炭素材料2の平均粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上8μm以下、さらに好ましくは3μm以上6μm以下である。平均粒子径が1μm以上であれば、アルカリ金属イオンの充放電効率が向上できるため、高いサイクル耐久性を示すことができる。他方、10μm以下であれば、複合炭素材料2と非水系電解液との反応面積が増加するため、高い入出力特性を示すことができる。
複合炭素材料2における該炭素質材料の該基材に対する質量比率は1%以上30%以下が好ましく、より好ましくは1.2%以上25%以下、さらに好ましくは1.5%以上20%以下である。炭素質材料の質量比率が1%以上であれば、該炭素質材料によりアルカリ金属イオンとの反応サイトを十分に増加でき、かつ、アルカリ金属イオンの脱溶媒和も容易となるため、高い入出力特性を示すことができる。他方、炭素質材料の質量比率が20%以下であれば、該炭素質材料と該基材との間のアルカリ金属イオンの固体内拡散を良好に保持できるため、高い入出力特性を示すことができる。また、アルカリ金属イオンの充放電効率が向上出来るため、高いサイクル耐久性を示すことができる。
複合炭素材料2の単位質量当たりのアルカリ金属イオンのドープ量は、20mAh/g以上700mAh/g以下であることが好ましく、り好ましくは40mAh/g以上650mAh/g以下、さらに好ましくは60mAh/g以上600mAh/g以下、よりさらに好ましくは70mAh/g以上550mAh/g以下である。
アルカリ金属イオンをドープすることにより、負極電位が低くなるため、アルカリ金属イオンがドープされた複合炭素材料2を含む負極を正極と組み合わせた場合、非水系アルカリ金属型蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。その結果、得られる非水系アルカリ金属型蓄電素子の容量及びエネルギー密度が高くなる。
該ドープ量が20mAh/g以上であれば、複合炭素材料2におけるアルカリ金属イオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもアルカリ金属イオンが良好にドープされるため、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。他方、ドープ量が700mAh/g以下であれば、アルカリ金属の析出等の副作用が発生するおそれがない。
以下、複合炭素材料2の好ましい例として、複合炭素材料2aについて説明する。
複合炭素材料2aの平均粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上8μm以下、さらに好ましくは3μm以上6μm以下である。平均粒子径が1μm以上であれば、アルカリ金属イオンの充放電効率が向上できるため、高いサイクル耐久性を示すことができる。他方、10μm以下であれば、複合炭素材料2aと非水系電解液との反応面積が増加するため、高い入出力特性を示すことができる。
複合炭素材料2aのBET比表面積は、1m/g以上20m/g以下であることが好ましく、より好ましくは1m/g以上15m/g以下である。このBET比表面積が1m/g以上であれば、アルカリ金属イオンとの反応場を十分に確保できるため、高い入出力特性を示すことができる。他方、20m/g以下であれば、アルカリ金属イオンの充放電効率が向上し、かつ充放電中の非水系電解液の分解反応が抑制されるため、高いサイクル耐久性を示すことができる。
複合炭素材料2aの基材として用いる炭素材料としては、得られる複合炭素材料2aが所望の特性を発揮する限り、特に制限はない。基材炭素材料の平均粒子径は、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上8μm以下である。
複合炭素材料2aの原料として用いる炭素質材料前駆体とは、熱処理することにより、該基材炭素材料に炭素質材料を複合させることができる、固体、液体、又は溶剤に溶解可能な有機材料である。この炭素質材料前駆体としては、例えば、ピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等を挙げることができる。これらの炭素質材料前駆体の中でも、安価であるピッチを用いることが、製造コスト上好ましい。ピッチは、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。石油系ピッチとしては、例えば、原油の蒸留残査、流動性接触分解残査(デカントオイル等)、サーマルクラッカーに由来するボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタール等が例示される。
複合炭素材料2aにおける該炭素質材料の該基材炭素材料に対する質量比率は1%以上10%以下が好ましく、より好ましくは1.2%以上8%以下、さらに好ましくは1.5%以上6%以下、特に好ましくは2%以上5%以下である。炭素質材料の質量比率が1%以上であれば、該炭素質材料によりアルカリ金属イオンとの反応サイトを十分に増加でき、かつアルカリ金属イオンの脱溶媒和も容易となるため、高い入出力特性を示すことができる。他方、炭素質材料の質量比率が20%以下であれば、該炭素質材料と該基材炭素材料との間のアルカリ金属イオンの固体内拡散を良好に保持できるため、高い入出力特性を示すことができる。また、アルカリ金属イオンの充放電効率が向上出来るため、高いサイクル耐久性を示すことができる。
[任意成分]
負極活物質層は、必要に応じて、負極活物質の他に、導電性フィラー、結着剤、分散材安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーの種類は特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維等が例示される。導電性フィラーの使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは0質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは0質量部以上15質量部以下である。
結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。結着剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは2質量部以上27質量部以下、さらに好ましくは3質量部以上25質量部以下である。結着剤の量が1質量%以上であれば、十分な電極強度が発現される。他方、結着剤の量が30質量部以下であれば、負極活物質へのアルカリ金属イオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。結着剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上10質量部以下である。分散安定剤の量が10質量部以下であれば、負極活物質へのアルカリ金属イオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
[負極集電体]
負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、非水系電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化がおこらない金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施の形態の非水系アルカリ金属型蓄電素子における負極集電体としては、銅箔が好ましい。
金属箔は凹凸や貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
[負極の製造]
負極は、負極集電体の片面上又は両面上に負極活物質層を有して成る。典型的な態様において負極活物質層は負極集電体に固着している。
負極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、負極活物質を含む各種材料を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を負極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより負極を得ることができる。さらに得られた負極にプレスを施して、負極活物質層の膜厚や、かさ密度を調整してもよい。溶剤を使用せずに、負極活物質を含む各種材料を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて負極集電体に貼り付ける方法も可能である。
塗工液の調製においては、負極活物質を含む各種材料粉末の一部若しくは全部をドライブレンドし、次いで水又は有機溶媒、及び/又はそれらに結着剤や分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質を追加してもよい。また、水又は有機溶媒に結着剤や分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、負極活物質を含む各種材料粉末を追加してもよい。前記塗工液の調製には、特に制限されるものではないが、好適にはホモディスパーや多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることができる。良好な分散状態の塗工液を得るためには、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。周速1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解又は分散するため好ましい。他方、50m/s以下であれば、分散による熱やせん断力により各種材料が破壊されることなく、再凝集が生じることがないため好ましい。
塗工液の粘度(ηb)は、1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。他方、20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく安定に塗工でき、また所望の塗膜厚み以下に制御できる。
また、該塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
塗膜の形成には、特に制限されるものではないが、好適にはダイコーターやコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることができる。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工して形成してもよい。また、塗工速度は0.1m/分以上100m/分以下であることが好ましく、より好ましくは0.5m/分以上70m/分以下、さらに好ましくは1m/分以上50m/分以下である。塗工速度が0.1m/分以上であれば、安定に塗工できる。他方、100m/分以下であれば、塗工精度を十分に確保できる。
塗膜の乾燥には、特に制限されるものではないが、好適には熱風乾燥や赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的に温度を変えて乾燥させてもよい。また、複数の乾燥方法を組み合わせて乾燥させてもよい。乾燥温度は、25℃以上200℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以上180℃以下、さらに好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることができる。他方、200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れやマイグレーションによる結着剤の偏在、負極集電体や負極活物質層の酸化を抑制できる。
負極のプレスは特に制限されるものではないが、好適には油圧プレス機、真空プレス機等のプレス機を用いることが出来る。負極活物質層の膜厚、かさ密度、電極強度は後述するプレス圧力、隙間、プレス部の表面温度により調整できる。プレス圧力は0.5kN/cm以上20kN/cm以下が好ましく、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。他方、20kN/cm以下であれば、負極に撓みやシワが生じることがなく、所望の負極活物質層膜厚や、かさ密度に調整できる。また、プレスロール同士の隙間は所望の負極活物質層の膜厚や、かさ密度となるように乾燥後の負極膜厚に応じて任意の値を設定できる。さらに、プレス速度は負極に撓みやシワが生じない任意の速度に設定できる。また、プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要により加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用する結着材の融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは30℃以上である。他方、加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、使用する結着剤の融点プラス50℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。例えば、結着剤としてPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いる場合、90℃以上200℃以下に加温することが好ましく、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下に加熱することである。また、結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いる場合、40℃以上150℃以下に加温することが好ましく、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下に加温することである。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
また、プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
負極活物質層の厚みは、片面当たり、5μm以上100μm以下が好ましい。該負極活物質層の厚みの下限は、さらに好ましくは7μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。該負極活物質層の厚みの上限は、さらに好ましくは80μm以下であり、より好ましくは60μm以下である。負極活物質層の厚みが5μm以上であれば、負極活物質層を塗工した際にスジ等が発生せず塗工性に優れる。他方、負極活物質層の厚みが100μm以下であれば、セル体積を縮小することによって高いエネルギー密度を発現できる。尚、集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における負極活物質層の厚みとは、集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分の片面当たりの厚さの平均値をいう。
負極活物質層の嵩密度は、好ましくは0.30g/cm以上1.8g/cm以下であり、より好ましくは0.40g/cm以上1.5g/cm以下、さらに好ましくは0.45g/cm以上1.3g/cm以下である。嵩密度が0.30g/cm以上であれば、十分な強度を保つことができるとともに、負極活物質間の十分な導電性を発現することができる。また、1.8g/cm以下であれば、負極活物質層内でイオンが十分に拡散できる空孔が確保できる。
BET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。試料を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行なう。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法又はBET1点法により、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。
BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett, Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(E. P. Barrett, L. G. Joyner and P. Halenda, J. Am. Chem. Soc., 73, 373(1951))。
また、MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、M.Mikhail, Brunauer, Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45 (1968))。
[セパレータ]
正極前駆体及び負極は、セパレータを介して積層又は捲回され、正極前駆体、負極及びセパレータを有する電極積層体または電極捲回体が形成される。
前記セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。これらのセパレータの片面または両面に、有機または無機の微粒子からなる膜が積層されていてもよい。また、セパレータの内部に有機または無機の微粒子が含まれていてもよい。
セパレータの厚みは5μm以上35μm以下が好ましい。5μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、35μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
また、有機または無機の微粒子からなる膜は、1μm以上10μm以下が好ましい。1μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、10μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
[組立]
セル組み立て工程で得られる電極積層体は、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して成る積層体に、正極端子および負極端子を接続したものである。また、電極捲回体は、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して捲回して成る捲回体に正極端子及び負極端子を接続したものである。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子及び負極端子の接続の方法には特に制限はないが、抵抗溶接や超音波溶接などの方法で行う。
[外装体]
外装体としては、金属缶、ラミネート包材等を使用できる。
前記の金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。
ラミネート包材としては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内装樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内装樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変成ポリオレフィン等が好適に使用できる。
[外装体への収納]
正極端子及び負極端子を接続した電極積層体または電極捲回体は、金属缶やラミネート包材に代表される外装体の中に収納し、開口部を1方だけ残した状態で封止することが好ましい。外装体の封止方法は特に限定しないが、ラミネート包材を用いる場合は、ヒートシールやインパルスシールなどの方法を用いる。
[乾燥]
電極積層体又は電極捲回体は、乾燥することで残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法に限定はないが、真空乾燥などにより乾燥する。乾燥工程は、電極積層体または電極捲回体に正極端子及び負極端子を接続する前に行ってもよいし、接続後に行ってもよい。また、電極積層体または電極捲回体を外装材の中に収納する前に行ってもよいし、収納する後に行ってもよい。残存溶媒は、正極活物質層または負極活物質層の重量あたり、1.5wt.%以下が好ましい。残存溶媒が1.5wt.%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性やサイクル特性を悪化させるため、好ましくない。
[電解液]
本実施形態における電解液は非水系電解液である。すなわちこの電解液は、後述する非水溶媒を含む。前記非水系電解液は、前記非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上のアルカリ金属塩を含有する。すなわち、非水系電解液は、アルカリ金属イオンを電解質として含む。
本実施形態における非水系電解液は、アルカリ金属塩として、例えば、(MN(SOF))、MN(SOCF、MN(SO、MN(SOCF)(SO)、MN(SOCF)(SOH)、MC(SOF)、MC(SOCF、MC(SO、MCFSO、MCSO、MPF、MBF等(Mはそれぞれ独立にNa、K、Rb、Csから選ばれるアルカリ金属である。)を単独で用いることができ、2種以上を混合して用いてもよい。高い伝導度を発現できることから、MPF及び/又はMN(SOF)を含むことが好ましい。
非水系電解液中のアルカリ金属塩濃度は、0.5mol/L以上であることが好ましく、0.5〜2.0mol/Lの範囲がより好ましい。アルカリ金属塩濃度が0.5mol/L以上であれば、陰イオンが十分に存在するので蓄電素子の容量を十分高くできる。また、アルカリ金属塩濃度が2.0mol/L以下である場合、未溶解のアルカリ金属塩が非水系電解液中に析出すること、及び電解液の粘度が高くなり過ぎることを防止でき、伝導度が低下せず、出力特性も低下しないため好ましい。
非水系電解液は、非水溶媒として、好ましくは、環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有する。非水系電解液が環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有することは、所望の濃度のアルカリ金属塩を溶解させる点、及び高いアルカリ金属イオン伝導度を発現する点で有利である。環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等に代表されるアルキレンカーボネート化合物が挙げられる。アルキレンカーボネート化合物は、典型的には非置換である。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネート化合物が挙げられる。ジアルキルカーボネート化合物は典型的には非置換である。
環状カーボネート及び鎖状カーボネートの合計含有量は、非水系電解液の総量基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。前記合計含有量が50質量%以上であれば、所望の濃度のアルカリ金属塩を溶解させることが可能であり、高いアルカリ金属イオン伝導度を発現することができる。前記合計濃度が95質量%以下であれば、電解液が、後述する添加剤をさらに含有することができる。
非水系電解液は、更に添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、特に制限されないが、例えば、スルトン化合物、環状ホスファゼン、非環状含フッ素エーテル、含フッ素環状カーボネート、環状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル、及び環状酸無水物等を単独で用いることができ、また2種以上を混合して用いてもよい。
抵抗への悪影響の少なさの観点、及び非水系電解液の高温における分解を抑制してガス発生を抑えるという観点から、飽和環状スルトン化合物としては、1,3−プロパンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−ブタンスルトン又は2,4−ペンタンスルトンが好ましく、不飽和環状スルトン化合物としては、1,3−プロペンスルトン又は1,4−ブテンスルトンが好ましく、その他のスルトン化合物としては、メチレンビス(ベンゼンスルホン酸)、メチレンビス(フェニルメタンスルホン酸)、メチレンビス(エタンスルホン酸)、メチレンビス(2,4,6,トリメチルベンゼンスルホン酸)、及びメチレンビス(2−トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸)を挙げることができ、これらのうちから選択される少なくとも1種以上を選択することが好ましい。
本実施形態における非水系アルカリ金属型蓄電素子の非水系電解液中のスルトン化合物の総含有量は、非水系電解液の総量を基準として、0.1質量%〜15質量%であることが好ましい。非水系電解液中のスルトン化合物の総含有量が0.1質量%以上であれば、高温における電解液の分解を抑制してガス発生を抑えることが可能となる。他方、この総含有量が15質量%以下であれば、電解液のイオン伝導度の低下を抑えることができ、高い入出力特性を保持することができる。また、非水系アルカリ金属型蓄電素子の非水系電解液に存在するスルトン化合物の含有量は、高い入出力特性と耐久性を両立する観点から、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
環状ホスファゼンとしては、例えば、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、ジエトキシテトラフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上が好ましい。
非水系電解液における環状ホスファゼンの含有率は、前記非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%〜20質量%であることが好ましい。この値が0.5重量%以上であれば、高温における電解液の分解を抑制してガス発生を抑えることが可能となる。他方、この値が20質量%以下であれば、電解液のイオン伝導度の低下を抑えることができ、高い入出力特性を保持することができる。環状ホスファゼンの含有率は、より好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%以上12質量%以下である。
尚、これらの環状ホスファゼンは、単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
非環状含フッ素エーテルとしては、例えば、HCF2CF2OCH2CF2CF2H、CF3CFHCF2OCH2CF2CF2H、HCF2CF2CH2OCH2CF2CF2H、CF3CFHCF2OCH2CF2CFHCF3等が挙げられ、中でも、電気化学的安定性の観点から、HCF2CF2OCH2CF2CF2Hが好ましい。
非環状含フッ素エーテルの含有量は、前記非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。非環状含フッ素エーテルの含有量が0.5質量%以上であれば、非水系電解液の酸化分解に対する安定性が高まり、高温時耐久性が高い蓄電素子が得られる。他方、非環状含フッ素エーテルの含有量が15質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができるため、高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、前記の非環状含フッ素エーテルは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
含フッ素環状カーボネートについては、他の非水溶媒との相溶性の観点から、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びジフルオロエチレンカーボネート(dFEC)から選択して使用されることが好ましい。
フッ素原子を含有する環状カーボネートの含有量は、前記非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。フッ素原子を含有する環状カーボネートの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上における電解液の還元分解を抑制することで、高温における耐久性が高い蓄電素子が得られる。他方、フッ素原子を含有する環状カーボネートの含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができるため、高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、前記のフッ素原子を含有する環状カーボネートは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
環状炭酸エステルについては、ビニレンカーボネートが好ましい。
環状炭酸エステルの含有量は、前記非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。環状炭酸エステルの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上の良質な被膜を形成することができ、負極上での電解液の還元分解を抑制することにより、高温における耐久性が高い蓄電素子が得られる。他方、環状炭酸エステルの含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができるため、高度の入出力特性を発現することが可能となる。
環状カルボン酸エステルとしては、例えば、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。中でも、ガンマブチロラクトンが、アルカリ金属イオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から、特に好ましい。
環状カルボン酸エステルの含有量は、前記非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。環状酸無水物の含有量が0.5質量%以上であれば、負極上の良質な被膜を形成することができ、負極上での電解液の還元分解を抑制することにより、高温時耐久性が高い蓄電素子が得られる。他方、環状カルボン酸エステルの含有量が5質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、前記の環状カルボン酸エステルは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
環状酸無水物については、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、及び無水イタコン酸から選択される1種以上が好ましい。中でも工業的な入手のし易さによって電解液の製造コストが抑えられる点、非水系電解液中に溶解し易い点等から、無水コハク酸及び無水マレイン酸から選択することが好ましい。
環状酸無水物の含有量は、前記非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。環状酸無水物の含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上における電解液の還元分解を抑制することにより、高温時耐久性が高い蓄電素子が得られる。他方、環状酸無水物の含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、前記の環状酸無水物は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
[注液、含浸、封止工程]
組立工程の終了後に、外装体の中に収納された電極積層体に、非水系電解液を注液する。注液工程の終了後に、更に、含浸を行い、正極、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に電解液が浸っていない状態では、後述するアルカリ金属ドープ工程において、ドープが不均一に進むため、得られる非水系アルカリ金属型蓄電素子の抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。上記含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後の非水系アルカリ金属型蓄電素子を、外装材が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸工程終了後には、外装材が開口した状態の非水系アルカリ金属型蓄電素子を減圧しながら封止することで密閉する。
[アルカリ金属ドープ工程]
アルカリ金属ドープ工程において、好ましい工程としては、前記正極前駆体と負極との間に電圧を印加して前記アルカリ金属炭酸塩を分解することにより、正極前駆体中のアルカリ金属炭酸塩を分解してアルカリ金属イオンを放出し、負極でアルカリ金属イオンを還元することにより負極活物質層にアルカリ金属イオンがプレドープされる。
このアルカリ金属ドープ工程において、正極前駆体中のアルカリ金属炭酸塩の酸化分解に伴い、CO等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;前記外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;等を挙げることができる。
[エージング工程]
アルカリ金属ドープ工程の終了後に、非水系アルカリ金属型蓄電素子にエージングを行うことが好ましい。エージング工程において電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にアルカリ金属イオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
上記エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば、高温環境下で電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
[ガス抜き工程]
エージング工程の終了後に、更にガス抜きを行い、電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系アルカリ金属型蓄電素子の抵抗が上昇してしまう。
上記ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、前記外装体を開口した状態で非水系アルカリ金属型蓄電素子を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。
[蓄電素子の特性評価]
[静電容量]
本明細書中、静電容量F(F)とは、以下の方法によって得られる値である:
先ず、非水系アルカリ金属型蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、2Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行う。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQとする。ここで得られたQを用いて、F=Q/(3.8−2.2)により算出される値をいう。
ここで電流のCレートとは、上限電圧から下限電圧まで定電流放電を行う際、1時間で放電が完了する電流値のことを1Cという。本明細書中、上限電圧3.8Vから下限電圧2.2Vまで定電流放電を行う際に1時間で放電が完了する電流値のことを1Cとする。
[内部抵抗]
本明細書中、内部抵抗とは、それぞれ、以下の方法によって得られる値である:
先ず、非水系アルカリ金属型蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、次いで、3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行う。次いで、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとしたときに、降下電圧ΔE=3.8−Eo、及びR=ΔE/(20C(電流値A))により算出される値である。
[電力量]
本明細書中、電力量E(Wh)とは、以下の方法によって得られる値である:
先に述べた方法で算出された静電容量F(F)を用いて、F×(3.8−2.2)/7200により算出される値をいう。
[体積]
蓄電素子の体積は、特に指定はないが、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層および負極活物質層が積重された領域が、外装体によって収納された部分の体積を指す。
例えば、ラミネートフィルムによって収納された電極積層体又は電極捲回体の場合は、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層および負極活物質層が存在する領域が、カップ成形されたラミネートフィルムの中に収納されるが、この蓄電素子の体積(V)は、このカップ成形部分の外寸長さ(l)と外寸幅(w)、およびラミネートフィルムを含めた蓄電素子の厚み(t)により、V=l×w×tで計算される。
角型の金属缶に収納された電極積層体又は電極捲回体の場合は、蓄電素子の体積としては、単にその金属缶の外寸での体積を用いる。すなわち、この蓄電素子の体積(V)は、角型の金属缶の外寸長さ(l)と外寸幅(w)、外寸厚み(t)により、V=l×w×tで計算される。
また、円筒型の金属缶に収納された電極捲回体の場合においても、蓄電素子の体積としては、その金属缶の外寸での体積を用いる。すなわち、この蓄電素子の体積(V)は、円筒型の金属缶の底面または上面の外寸半径(r)、外寸長さ(l)により、V=3.14×r×r×lで計算される。
[高負荷充放電サイクル試験]
本明細書中、高負荷充放電サイクル試験後の抵抗上昇率は、以下の方法によって測定する:
先ず、非水系アルカリ金属型蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、300Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて300Cの電流値で2.2Vに到達するまで定電流放電を行う。前記充放電工程を60000回繰り返し、試験開始前と、試験終了後に内部抵抗測定を行い、試験開始前の内部抵抗をRa(Ω)、試験終了後の内部抵抗をRc(Ω)としたとき、試験開始前に対する高負荷充放電サイクル試験後の抵抗上昇率はRc/Raにより算出される。
本実施形態における非水系アルカリ金属型蓄電素子は、セル電圧4Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、静電容量をF(F)、電力量をE(Wh)、蓄電素子の体積をV(L)とした時、以下の:
(a)RaとFの積Ra・Fが0.3以上3.0以下である;
(b)E/Vが15以上50以下である;
を同時に満たすものであることが好ましい。
(a)について、Ra・Fは、大電流に対して十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、3.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.9以下であり、更に好ましくは1.6以下である。Ra・Fが上記の上限値以下であれば、優れた入出力特性を有する蓄電素子を得ることができる。そのため、蓄電素子を用いた蓄電システムと、例えば高効率エンジンと、を組み合わせること等によって該蓄電素子に印加される高負荷にも十分に耐え得ることとなり、好ましい。
(b)について、E/Vは十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、15以上であることが好ましく、より好ましくは18以上であり、更に好ましくは20以上である。E/Vが上記の下限値以上であれば、優れた体積エネルギー密度を有する蓄電素子を得ることができるため、蓄電素子を用いた蓄電システムを、例えば自動車のエンジンと組み合わせて使用する場合に、自動車内の限られた狭いスペースに蓄電システムを設置することが可能となり、好ましい。
本実施形態における非水系アルカリ金属型蓄電素子は、セル電圧4Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、セル電圧4V及び環境温度60℃において2か月間保存した後の、セル電圧4Vでの内部抵抗をRb(Ω)、環境温度25℃にて、セル電圧を2.2Vから3.8Vまで、300Cのレートでの充放電サイクルを60,000回行った後の内部抵抗をRc(Ω)としたとき、以下の:
(c)Rb/Raが3.0以下である;
(d)セル電圧4V及び環境温度60℃において2か月間保存した時に発生するガス量が、25℃において30×10−3cc/F以下である;
(e)Rc/Raが0.9以上2.0以下である;
を同時に満たすことが好ましい。
(c)について、Rb/Raは、高温環境下に長時間曝された場合に、大電流に対して十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、3.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以下であり、更に好ましくは1.5以下である。Rc/Raが上記の上限値以下であれば、長期間安定して優れた出力特性を得ることができるため、デバイスの長寿命化につながる。
(d)について、セル電圧4.0V及び環境温度60℃において2か月間保存した際に発生するガス量は、発生したガスにより素子の特性を低下させないとの観点から、発生ガス量を25℃において測定した値として、25×10−3cc/F以下であることが好ましく、より好ましくは16×10−3cc/F以下であり、更に好ましくは6.0×10−3cc/F以下である。上記の条件下で発生するガス量が上記の上限値以下であれば、デバイスが長期間高温に曝された場合であっても、ガス発生によってセルが膨張するおそれがない。そのため、十分な安全性及び耐久性を有する蓄電素子を得ることができる。
(e)について、高負荷充放電サイクル試験後の抵抗上昇率Rc/Raは、2.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.5以下であり、更に好ましくは1.2以下である。高負荷充放電サイクル試験後の抵抗上昇率が上記の上限値以下であれば、充放電を繰り返してもデバイスの特性が維持されるため、長期間安定して優れた出力特性を得ることができ、デバイスの長寿命化につながる。
本実施形態における非水系アルカリ金属型蓄電素子は、セル電圧4Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、静電容量をF(F)、電力量をE(Wh)、蓄電素子の体積をV(L)、環境温度25℃にて、セル電圧を2.2Vから3.8Vまで、300Cのレートでの充放電サイクルを60,000回行った後の内部抵抗をRc(Ω)、としたとき、以下の:
(a)RaとFの積Ra・Fが0.3以上3.0以下である;
(b)E/Vが15以上50以下である;
(e)Rc/Raが0.9以上2.0以下である;
を同時に満たすものであることが好ましい。
以下に、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[炭酸ナトリウムの粉砕]
平均粒子径53μmの炭酸ナトリウム200gを、アイメックス社製の粉砕機(液体窒素ビーズミルLNM)を用い、液体窒素で−196℃に冷却化した後、ドライアイスビーズを用い、周速10.0m/sにて15分間粉砕した。−196℃で熱変性を防止し、脆性破壊することにより得られた炭酸ナトリウムについて平均粒子径を測定することで仕込みの炭酸ナトリウム粒子径を求めたところ、4.7μmであった。
[正極前駆体の製造]
[活性炭1の調製]
破砕されたヤシ殻炭化物を、小型炭化炉において窒素中、500℃において3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で前記賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間かけて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りした。その後、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。この活性炭1について、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて平均粒径を測定した結果、4.2μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2360m/g、メソ孔量(V1)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)が0.88cc/g、V1/V2=0.59であった。
[活性炭2の調製]
フェノール樹脂について、窒素雰囲気下、焼成炉中600℃において2時間の炭化処理を行った後、ボールミルにて粉砕し、分級を行って平均粒径7μmの炭化物を得た。この炭化物とKOHとを、質量比1:5で混合し、窒素雰囲下、焼成炉中800℃において1時間加熱して賦活化を行った。その後濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で1時間撹拌洗浄を行った後、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄した後に乾燥を行うことにより、活性炭2を得た。この活性炭2について、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が3627m/g、メソ孔量(V1)が1.50cc/g、マイクロ孔量(V2)が2.28cc/g、V1/V2=0.66であった。
[正極塗工液(組成a)の調製]
正極活物質として上記で得た活性炭1又は2を、仕込みのアルカリ金属炭酸塩として上記で得た炭酸ナトリウムを用いて下記方法で正極塗工液(組成a)を製造した。
活性炭1又は2を34.5質量部、炭酸ナトリウムを56.0質量部、ケッチェンブラックを2.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を6.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15.0m/sの条件で分散して塗工液を得た。
[正極塗工液(組成b)の調製]
正極活物質として上記で得た活性炭1又は2を、仕込みの炭酸ナトリウムとして上記で得た炭酸ナトリウムを用いて下記方法で正極塗工液(組成b)を製造した。
活性炭1又は2を59.5質量部、炭酸ナトリウムを28.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15.0m/sの条件で分散して塗工液を得た。
[正極前駆体の製造]
上記で得た塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ15μmのアルミニウム箔の片面又は両面に塗工速度4m/sの条件で塗工し、乾燥温度100℃で乾燥して正極前駆体1を得た。得られた正極前駆体1についてロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施した。
[負極1の調製]
平均粒子径3.0μm、BET比表面積が1,780m/gの市販のヤシ殻活性炭150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)270gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合炭素材料1aを得た。この熱処理は窒素雰囲気下で行い、600℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合炭素材料1を炉から取り出した。
得られた複合炭素材料1について、上記と同様の方法で平均粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、平均粒子径は3.2μm、BET比表面積は262m/gであった。石炭系ピッチ由来の炭素質材料の活性炭に対する質量比率は78%であった。
次いで、複合炭素材料1を負極活物質として用いて負極を製造した。
複合炭素材料1を85質量部、アセチレンブラックを10質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を5質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15m/sの条件で分散して塗工液を得た。得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。粘度(ηb)は2,789mPa・s、TI値は4.3であった。上記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度85℃で乾燥して負極1を得た。得られた負極1についてロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施した。上記で得られた負極1の負極活物質層の膜厚を小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、負極1の任意の10か所で測定した厚さの平均値から、銅箔の厚さを引いて求めた。負極1の負極活物質層の膜厚は片面あたりの厚さは40μmであった。
[負極2の調製]
BET比表面積が4.0m/g、平均粒子径が4.8μmの市販のハードカーボン150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)15gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合炭素材料2を得た。この熱処理は窒素雰囲気下で行い、1000℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合炭素材料2を炉から取り出した。
得られた複合炭素材料2について、上記と同様の方法で平均粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、平均粒子径は4.9μm、BET比表面積は6.1m/gであった。石炭系ピッチ由来の炭素質材料のハードカーボンに対する質量比率は2%であった。
次いで、複合炭素材料2を負極活物質として用いて負極を製造した。
複合炭素材料2を80質量部、アセチレンブラックを8質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を12質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15m/sの条件で分散して塗工液を得た。得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。粘度(ηb)は2,798mPa・s、TI値は2.7であった。上記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度85℃で乾燥して負極2を得た。得られた負極2についてロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施した。上記で得られた負極2の負極活物質層の膜厚を小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、負極2の任意の10か所で測定した厚さの平均値から、銅箔の厚さを引いて求めた。負極1の負極活物質層の膜厚は片面あたりの厚さは25μmであった。
<電解液の調製>
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(EMC)=33:67(体積比)の混合溶媒を用い、NaPFの濃度が1.2mol/Lとなるように電解質塩を溶解して非水系電解液を得た。
[実施例1]
[蓄電素子の作製]
[蓄電素子の組立、乾燥]
得られた両面負極1、正極活物質として活性炭1、仕込みアルカリ金属炭酸塩として平均粒径4.7μmの炭酸ナトリウムを用いて作製した塗工液組成(a)より得られた正極前駆体を10cm×10cm(100cm)にカットした。最上面と最下面は片面正極前駆体を用い、更に両面負極1を21枚と両面正極前駆体を20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。その後、負極1と正極前駆体とに、それぞれ負極端子と正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体とした。この電極積層体を、温度80℃、圧力50Paで、乾燥時間60hrの条件で真空乾燥した。乾燥した電極積層体を露点−45℃のドライ環境下にて、アルミラミネート包材からなる外装体内に収納し、電極端子部およびボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、シール圧1.0MPaの条件でヒートシールした。
[蓄電素子の注液、含浸、封止]
アルミラミネート包材の中に収納された電極積層体に、温度25℃、露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液約80gを大気圧下で注入した。続いて、減圧チャンバーの中に前記非水系アルカリ金属型蓄電素子を入れ、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。その後、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す工程を4回繰り返したのち、15分間静置した。さらに、常圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す工程を合計7回繰り返した。(それぞれ−95,96,97,81,97,97,97kPaまで減圧した)。以上の工程により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
その後、非水系アルカリ金属型蓄電素子を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
[アルカリ金属ドープ工程]
得られた非水系アルカリ金属型蓄電素子に対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、25℃環境下、電流値1.0Aで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を72時間継続する手法により初期充電を行い、負極にアルカリ金属ドープ(ナトリウムドープ)を行った。
[エージング工程]
アルカリ金属ドープ後の非水系アルカリ金属型蓄電素子を25℃環境下、1.0Aで電圧3.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、3.0V定電流放電を1時間行うことにより電圧を3.0Vに調整した。次いで、非水系アルカリ金属型蓄電素子を60℃の恒温槽に60時間保管した。
[ガス抜き工程]
エージング後の非水系アルカリ金属型蓄電素子を、温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下でアルミラミネート包材の一部を開封した。次いで、減圧チャンバーの中に前記非水系アルカリ金属型蓄電素子を入れ、KNF社製のダイヤフラムポンプ(N816.3KT.45.18)を用いて大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。次いで、減圧シール機に非水系アルカリ金属型蓄電素子を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
以上の工程により、蓄電素子が完成した。
[蓄電素子の評価]
[静電容量の測定]
得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、2Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行った。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQとし、F=Q/(3.8−2.2)により算出した静電容量Fは、1000Fであった。
[Ra・Fの算出]
得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、20Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、次いで、3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行い、その後、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得た。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとし、降下電圧ΔE=3.8−Eo、及びR=ΔE/(20C(電流値A))により常温内部抵抗Raを算出した。
静電容量Fと25℃における内部抵抗Raとの積Ra・Fは1.05ΩFであった。
[E/Vの算出]
E/Vは、前記方法で得られた静電容量Fの値と、蓄電素子のラミネートフィルムのカップ成形部分の外寸長さ(l)と外寸幅(w)、並びにラミネートフィルムを含めた蓄電素子の厚み(t)により求められるV=l×w×tを用いて、E/V=F×(3.8−2.2)/7200/Vより18.5Wh/Lと算出された。
[高温保存試験後のガス発生量]
得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、100Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で10分間行った。その後、セルを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、同様の充電工程にてセル電圧を4.0Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存した。この工程を2か月間繰り返し実施し、保存試験開始前のセル体積Va、保存試験2か月後のセルの体積Vbをアルキメデス法によって測定した。Vb−Vaにより求めたガス発生量は10.3×10−3cc/Fであった。
[Rb/Raの算出]
高温保存試験後の蓄電素子に対して、前記[Ra・Fの算出]と同様にして高温保存試験後の常温内部抵抗Rbを算出した。
このRb(Ω)を、前記[Ra・Fの算出]で求めた高温保存試験前の内部抵抗Ra(Ω)で除して算出した比Rb/Raは1.38であった。
[高負荷充放電サイクル試験]
得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、300Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて300Cの電流値で2.2Vに到達するまで定電流放電を行う充放電工程を60000回繰り返した。高負荷充放電サイクル試験後に前記[Ra・Fの算出]と同様にして高温保存試験後の常温内部抵抗Rcを算出した。このRc(Ω)を、前記[Ra・Fの算出]で求めた高負荷充放電サイクル試験前の内部抵抗Ra(Ω)で除して算出した比Rc/Raは1.17であった。
[正極の顕微ラマン測定]
完成した複数の非水系アルカリ金属型蓄電素子のうち、数点の素子を2.9Vに調整した後、23℃の部屋に設置された露点−90℃以下、酸素濃度1ppm以下で管理されているArボックス内で解体して正極電極体を取り出した。取り出した正極電極体を、ジメチルカーボネート(DMC)で浸漬洗浄した後、大気非暴露を維持した状態下サイドボックス中で真空乾燥させた。
乾燥後の正極電極体を、大気非暴露を維持した状態でサイドボックスからArボックスに移した。上記正極電極体を、大気非暴露を維持した状態で断面加工装置に搬送し、断面作製を実施した。Arボックスから断面加工装置までの電極体の搬送の際は、大気非暴露が維持できる密封容器を使用した。断面加工装置は、試料にイオンビームを照射することによるエッチング加工を特徴としており、例えば、日本電子製のSM−09020CPなどが用いられる。断面加工条件は特に制限されないが、試料への加工ダメージが抑制される条件であることが好ましい。上記手法により作製された断面を有する正極電極体を、大気非暴露を維持した状態で断面加工装置からArボックスに搬送し、顕微ラマン測定に対応した大気非暴露セル、例えば、ナノフォトン社製LIBcellに移し替えて、顕微ラマン測定用試料とした。
炭酸イオンマッピングは、レニショー社の顕微ラマン分光装置inVia Reflexを用いて実施した。励起光のレーザーの波長は532 nmとし、長作動距離の50倍対物レンズを用いて、試料位置で約0.7 mWのパワーとなるよう集光した。正極断面の厚み方向に90μm、厚み方向と垂直方向に30μmの範囲を1μm間隔で点走査し、各測定点のラマンスペクトルを得た。ラマンスペクトルで1086 cm-1に観測される炭酸イオンによるピークについて、1071 cm-1から1104 cm-1に直線のベースラインを引き、ベースラインより正の領域に現れる面積とベースラインより負に現れる面積をそれぞれピーク面積として算出した。ベースラインより負に現れる面積の符号は負の値となるようにした。この炭酸イオンのピーク面積の空間分布として描き、炭酸イオンのイメージング画像を得た。
[炭酸イオンマッピングの面積比率の算出方法]
炭酸イオンマッピングの面積比率は以下のように算出できる。各測定位置で得られた2700点のラマンスペクトルにおいて1071、1104cm−1の位置で直線のベースラインを設定し、ベースラインよりも高い部分の面積を正に、低い部分の面積を負とし、面積(a)とした。この面積(a)のマッピングデータを作成する。さらに、面積(a)の最大値から最小値を100個の区間数に分割し、ヒストグラムAを作成する。次に、ヒストグラムAにおいて、最大度数を与える面積値より負側の部分について、ガウス関数を用いて、最小二乗法でフィッティングすることで、ノイズ成分をガウス関数Bで近似した。元のヒストグラムAからこのフィッティングしたガウス関数Bを引いた差分が、CO32−のピーク面積のヒストグラムCとなる。このヒストグラムCにおいて、最大頻度を与える面積(b)以上の累積頻度をCO32−イオンのマッピング度数を求めたところ、462であった。これを全体の度数2700で除することによって、炭酸イオンマッピングの面積比率を算出したところ、7.8%と求められた。
[炭酸ナトリウム粒子の数平均粒子径Xの算出方法]
炭酸ナトリウムの数平均粒子径Xの算出方法としては、前記方法で得られたヒストグラムCで最大頻度を与えた面積(b)以上を与えた測定位置をマッピングし、これを炭酸ナトリウム粒子のマッピングデータとした。このデータより、炭酸ナトリウム粒子の個数n、粒子長径X(i=1,2,3,…,n)を求めた。さらに、数平均粒子径Xを下記式(5):
Figure 0006792978
により算出したところ、Xは2.0μmと求められた。
[前記正極活物質粒子の数平均粒子径Yの算出方法]
正極活物質粒子の数平均粒子径Yは前記顕微ラマンを測定したのと同じ視野で、測定した光学顕微鏡画像と前記炭酸イオンマッピングデータとを重ね合わせた。これにより、光学顕微鏡像で確認される粒子から、炭酸塩粒子を除いたものを正極活物質粒子とし、視野内に確認される活物質粒子の個数m、粒子長径Y(i=1,2,3,…,m)を求めた。さらに、数平均粒子径Yを下記式(6):
Figure 0006792978
により算出したところ、Yは12.3μmと求められた。
[炭酸ナトリウムの定量]
正極試料1を5cm×5cmの大きさ(重量0.256g)に切り出し、20gのメタノールに浸し、容器に蓋をして25℃環境下、3日間静置した。その後正極を取り出し、120℃、5kPaの条件にて10時間真空乾燥した。この時の正極重量Mは0.250gであり、洗浄後のメタノール溶液について、予め検量線を作成した条件にてGC/MSを測定し、ジエチルカーボネートの存在量が1%未満であることを確認した。次いで、25.00gの蒸留水に正極を含浸させ、容器に蓋をして45℃環境下、3日間静置した。3日間静置後の蒸留水の重量は24.65gであったため、蒸留水を0.35g追加した。その後正極を取り出し、150℃、3kPaの条件にて12時間真空乾燥した。この時の正極重量Mは0.223gであり、洗浄後の蒸留水について、予め検量線を作成した条件にてGC/MSを測定し、メタノールの存在量が1%未満であることを確認した。その後、スパチュラ、ブラシ、刷毛を用いて正極集電体上の活物質層を取り除き、正極集電体の重量Mを測定したところ0.099gであった。前記した式(4)により正極中の炭酸ナトリウムを定量したところ6.0質量%であった。
[A、Aの算出]
[正極試料の調製]
得られた残りの非水系アルカリ金属型蓄電素子を露点温度−72℃のアルゴンボックス中で解体し、両面に正極活物質層が塗工された正極を10cm×5cmの大きさに切り出し、30gのジエチルカーボネート溶媒に浸し、時折ピンセットで正極を動かし、10分間洗浄した。続いて正極を取り出し、アルゴンボックス中で5分間風乾させ、新たに用意した30gのジエチルカーボネート溶媒に正極を浸し、前記と同様の方法にて10分間洗浄した。正極をアルゴンボックスから取り出し、真空乾燥機(ヤマト科学製、DP33)を用いて、温度25℃、圧力1kPaの条件にて20時間乾燥し、正極試料1を得た。
[正極表面SEM及びEDX測定]
正極試料1から1cm×1cmの小片を切り出し、10Paの真空中にて金をスパッタリングにより表面にコーティングした。次いで、下記条件下、大気暴露下で正極表面のSEM、及びEDXを測定した。
[SEM−EDX測定条件]
・測定装置:日立ハイテクノロジー製、電解放出型走査型電子顕微鏡 FE−SEM S−4700
・加速電圧:10kV
・エミッション電流:1μA
・測定倍率:2000倍
・電子線入射角度:90°
・X線取出角度:30°
・デッドタイム:15%
・マッピング元素:C,O,F
・測定画素数:256×256ピクセル
・測定時間:60sec.
・積算回数:50回
・明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整した。
[SEM−EDXの解析]
得られた酸素マッピング及びフッ素マッピングに対し、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて明るさの平均値を基準に二値化した。この時の酸素マッピングの面積は全画像に対して15.1%であり、フッ素マッピングの面積は31.5%であった。前記二値化して得た酸素マッピングとフッ素マッピングの重複する面積は全画像に対して14.0%であり、酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率をA[%]とすると、A=100×11.7/15.1より77.5%と算出できた。
[正極断面SEM及びEDX測定]
正極試料1から1cm×1cmの小片を切り出し、日本電子製のSM−09020CPを用い、アルゴンガスを使用し、加速電圧4kV、ビーム径500μmの条件にて正極試料1の面方向に垂直な断面を作製した。その後、上述の方法により正極断面SEM及びEDXを測定した。
得られた正極断面のSEM−EDXについて、前記と同様に酸素マッピング及びフッ素マッピングを二値化し、酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率Aを算出したところ32.6%であった。
[正極活物質層の解析]
完成した複数の非水系アルカリ金属型蓄電素子のうち、数点の素子を2.9Vに調整した後、23℃の部屋に設置された露点−90℃以下、酸素濃度1ppm以下で管理されているArボックス内で解体して正極電極体を取り出した。取り出した正極電極体を、ジメチルカーボネート(DMC)で浸漬洗浄した後、大気非暴露を維持した状態下サイドボックス中で真空乾燥させた。
乾燥後の正極電極体を、大気非暴露を維持した状態でサイドボックスからArボックスに移し、重水で浸漬抽出して、正極電極体抽出液を得た。抽出液の解析は、(1)IC及び(2)H−NMRにて行い、求めた正極電極体抽出液中の各化合物の濃度A(mol/ml)、抽出に用いた重水の体積B(ml)、及び抽出に用いた正極の活物質の質量C(g)から、下記式(7):
単位質量当たりの存在量(mol/g)=A×B÷C ...式(7)
により、正極電極体に堆積する各化合物の、正極活物質単位質量当たりの存在量(mol/g)を求めた。
尚、抽出に用いた正極活物質層の質量は、以下の方法によって求めた。
重水抽出後に残った正極電極体の集電体から合剤(正極活物質層)を剥がし取り、該剥がし取った合剤を、水洗した後、真空乾燥した。真空乾燥して得た合剤を、NMP又はDMFにより洗浄した。続いて、得られた正極活物質層を再度真空乾燥した後、秤量することにより、抽出に用いた正極活物質層の質量を調べた。
正極電極体抽出液を3mmφNMRチューブ(株式会社シゲミ製PN−002)に入れ、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン入りの重水素化クロロホルムの入った5mmφNMRチューブ(日本精密科学株式会社製N−5)に挿し込み、二重管法にて、H NMR測定を行った。1,2,4,5−テトラフルオロベンゼンのシグナル7.1ppm(m,2H)で規格化して、観測された各化合物の積分値を求めた。
また、濃度既知のジメチルスルホキシドの入った重水素化クロロホルムを3mmφNMRチューブ(株式会社シゲミ製PN−002)に入れ、上記と同一の1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン入りの重水素化クロロホルムの入った5mmφNMRチューブ(日本精密科学株式会社製N−5)に挿し込み、二重管法にて、H NMR測定を行った。上記と同様に、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼンのシグナル7.1ppm(m,2H)で規格化して、ジメチルスルホキシドのシグナル2.6ppm(s,6H)の積分値を求めた。用いたジメチルスルホキシドの濃度と積分値の関係から、正極電極体抽出液中の各化合物の濃度Aを求めた。
H NMRスペクトルの帰属は、以下のとおりである。
[XOCHCHOXについて]
XOCHCHOXのCH:3.7ppm(s,4H)
CHOX:3.3ppm(s,3H)
CHCHOXのCH:1.2ppm(t,3H)
CHCHOXのCHO:3.7ppm(q,2H)上記のように、XOCHCHOXのCHのシグナル(3.7ppm)はCHCHOXのCHOのシグナル(3.7ppm)と重なってしまうため、CHCHOXのCHのシグナル(1.2ppm)から算出されるCHCHOXのCHO相当分を除いて、XOCHCHOX量を算出する。
ここで、上記Xは、それぞれ、−(COO)M又は−(COO)(ここで、MはNa、K、Rb、Csから選ばれるアルカリ金属、nは0又は1、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基である。
上記(1)IC及び(2)H−NMRの解析により求めた各化合物の抽出液中の濃度、抽出に用いた重水の体積、抽出に用いた正極の活物質質量より、上記の正極電極体には、XOCHCHOXが229.8×10−4mol/g存在した。
[実施例2〜49、並びに比較例1〜7]
正極前駆体の正極活物質、正極前駆体に仕込むアルカリ金属炭酸塩の種類と粒径、塗工液組成、フィルミクスの周速、負極、アルカリ金属ドープ工程の電圧と時間を、それぞれ、以下の表1に記載の通りとした他は、実施例1と同様にして、実施例2〜49と比較例1〜7の非水系アルカリ金属型蓄電素子をそれぞれ作製し、各種の評価を行った。得られた非水系アルカリ金属型蓄電素子の評価結果を以下の表2に示す。
Figure 0006792978
Figure 0006792978
以上の実施例より、本実施の形態にかかる蓄電素子は、初期入出力特性に優れ、高いエネルギー密度を有し、高負荷充放電サイクル特性、高温保存耐久性に優れた、非水系アルカリ金属型蓄電素子であることが検証された。
本発明に係る非水系アルカリ金属型蓄電素子は、初期入出力特性に優れ、高いエネルギー密度を有し、高負荷充放電サイクル特性、高温保存耐久性に優れるため、例えば、自動車において、内燃機関又は燃料電池、モーター、及び蓄電素子を組み合わせたハイブリット駆動システムの分野、更には瞬間電力ピークのアシスト用途等で好適に利用できる。

Claims (5)

  1. ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びルビジウムイオンからなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ金属イオンを含む非水系電解液、正極、負極、並びにセパレータを備える非水系アルカリ金属型蓄電素子であって、
    該負極が、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、該負極活物質層は該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる炭素材料を含み、
    該正極が、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
    該正極が、該正極活物質層の全質量を基準として、該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを陽イオンとする炭酸塩粒子を1質量%以上50質量%以下で含有し、
    該正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上50%以下であり、そして
    前記炭酸塩粒子の数平均粒子径をXとするとき、1μm≦X≦5μmであり、前記正極活物質の数平均粒子径をYとするとき、3μm≦Y≦20μmであり、かつ、X<Yである、前記非水系アルカリ金属型蓄電素子。
  2. 前記正極集電体及び前記負極集電体が貫通孔を持たない金属箔である、請求項1に記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
  3. 前記正極断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、2%以上15%以下である、請求項1又は2に記載の非水系アルカリ金属型蓄電素子。
  4. ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びルビジウムイオンからなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ金属イオンを含む非水系電解液、正極、負極、並びにセパレータを備える非水系アルカリ金属型蓄電素子であって、
    該負極が、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、該負極活物質層は該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる炭素材料を含み、
    該正極が、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
    該正極が、該正極活物質層の全質量を基準として、該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを陽イオンとする炭酸塩粒子を1質量%以上50質量%以下含有し、
    該正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上50%以下であり、
    前記炭酸塩粒子の数平均粒子径をXとするとき、1μm≦X≦5μmであり、前記正極活物質の数平均粒子径をYとするとき、3μm≦Y≦20μmであり、かつ、X<Yであり、そして
    該非水系アルカリ金属型蓄電素子において、セル電圧4Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、静電容量をF(F)、電力量をE(Wh)、蓄電素子の体積をV(L)としたとき、以下の:
    (a)RaとFの積Ra・Fが0.3以上3.0以下である;
    (b)E/Vが15以上50以下である;
    を同時に満たすことを特徴とする、非水系アルカリ金属型蓄電素子。
  5. ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びルビジウムイオンからなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ金属イオンを含む非水系電解液、正極、負極、並びにセパレータを備える非水系アルカリ金属型蓄電素子であって、
    該負極が、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、該負極活物質層は該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる炭素材料を含み、
    該正極が、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
    該正極が、該正極活物質層の全質量を基準として、該非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンを陽イオンとする炭酸塩粒子を1質量%以上50質量%以下で含有し、
    該正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上50%以下であり、
    前記炭酸塩粒子の数平均粒子径をXとするとき、1μm≦X≦5μmであり、前記正極活物質の数平均粒子径をYとするとき、3μm≦Y≦20μmであり、かつ、X<Yであり、そして
    該非水系アルカリ金属型蓄電素子において、セル電圧4Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、セル電圧4V及び環境温度60℃において2か月間保存した後の、セル電圧4Vでの内部抵抗をRb(Ω)、環境温度25℃にて、セル電圧を2.2Vから3.8Vまで、300Cのレートでの充放電サイクルを60,000回行った後の内部抵抗をRc(Ω)としたとき、以下の:
    (c)Rb/Raが3.0以下である;
    (d)セル電圧4V及び環境温度60℃において2か月間保存した時に発生するガス量が、25℃において25×10−3cc/F以下である;
    (e)Rc/Raが0.9以上2.0以下である;
    を同時に満たすことを特徴とする、前記非水系アルカリ金属型蓄電素子。
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