JP2019021783A - 正極前駆体、及びそれを用いた非水系リチウム型蓄電素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】正極前駆体の正極活物質層にリチウム化合物と正極活物質として炭素材料を含み、該正極活物質層単位質量当たりのZr元素の含有量を特定の範囲に調整することにより、非水系リチウム型蓄電素子のエネルギー密度と出力特性を向上することが可能な正極前駆体の提供。【解決手段】リチウム化合物と、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する正極前駆体であって、該正極活物質は炭素材料を含み、該正極活物質層におけるZr元素の含有量が、該正極活物質層単位質量当たり0.01ppm以上8ppm以下である、前記正極前駆体。【選択図】なし
Description
本発明は正極前駆体、及びそれを用いた非水系リチウム型蓄電素子に関する。
近年、地球環境の保全及び省資源を目指すエネルギーの有効利用の観点から、風力発電の電力平滑化システム又は深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システム等が注目を集めている。
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。
現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。
現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
電気二重層キャパシタのうち、電極に活性炭を用いたものは、0.5〜1kW/L程度の出力特性を有する。この電気二重層キャパシタは、耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)も高く、前記高出力が要求される分野で最適のデバイスと考えられてきた。しかしながら、そのエネルギー密度は1〜5Wh/L程度に過ぎない。そのため、更なるエネルギー密度の向上が必要である。
他方、現在ハイブリッド電気自動車で採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力をより一層高めるとともに、耐久性(特に、高温における安定性)を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(蓄電素子の放電容量の何%を放電した状態かを示す値)50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されている。しかしながら、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計となっている。また、その耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)については、電気二重層キャパシタに比べ劣る。そのため、実用的な耐久性を持たせるためには、放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲での使用となる。実際に使用できる容量は更に小さくなるから、耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
他方、現在ハイブリッド電気自動車で採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力をより一層高めるとともに、耐久性(特に、高温における安定性)を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(蓄電素子の放電容量の何%を放電した状態かを示す値)50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されている。しかしながら、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計となっている。また、その耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)については、電気二重層キャパシタに比べ劣る。そのため、実用的な耐久性を持たせるためには、放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲での使用となる。実際に使用できる容量は更に小さくなるから、耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
前記のように、高エネルギー密度、高出力特性、及び耐久性を兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められている。しかしながら、上述した既存の蓄電素子には、それぞれ一長一短がある。そのため、これらの技術的要求を充足する新たな蓄電素子が求められている。その有力な候補として、リチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子が注目され、開発が盛んに行われている。
キャパシタのエネルギーは1/2・C・V2(ここで、Cは静電容量、Vは電圧)で表される。
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(非水系リチウム型蓄電素子)の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着・脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵・放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。
キャパシタのエネルギーは1/2・C・V2(ここで、Cは静電容量、Vは電圧)で表される。
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(非水系リチウム型蓄電素子)の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着・脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵・放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。
上述の電極材料とその特徴をまとめると、電極に活性炭等の材料を用い、活性炭表面のイオンの吸着・脱離(非ファラデー反応)により充放電を行う場合は、高出力かつ高耐久性を実現するが、エネルギー密度が低くなる(例えば、1倍とする。)。他方、電極に酸化物又は炭素材料を用い、ファラデー反応により充放電を行う場合は、エネルギー密度が高くなる(例えば、活性炭を用いた非ファラデー反応の10倍とする。)が、耐久性及び出力特性に問題がある。
これらの電極材料の組合せとして、電気二重層キャパシタは、正極及び負極に活性炭(エネルギー密度1倍)を用い、正負極共に非ファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高出力かつ高耐久性を有するがエネルギー密度が低い(正極1倍×負極1倍=1)という特徴がある。
リチウムイオン二次電池は、正極にリチウム遷移金属酸化物(エネルギー密度10倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正負極共にファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高エネルギー密度(正極10倍×負極10倍=100)だが、出力特性及び耐久性に問題がある。更に、ハイブリッド電気自動車等で要求される高耐久性を満足させるためには放電深度を制限しなければならず、リチウムイオン二次電池では、そのエネルギーの10〜50%しか使用できない。
リチウムイオンキャパシタは、正極に活性炭(エネルギー密度1倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオン二次電池の特徴を兼ね備えた新規の非対称キャパシタである。それゆえ、高出力かつ高耐久性でありながら、高エネルギー密度(正極1倍×負極10倍=10)を有し、リチウムイオン二次電池の様に放電深度を制限する必要がないことが特徴である。
これらの電極材料の組合せとして、電気二重層キャパシタは、正極及び負極に活性炭(エネルギー密度1倍)を用い、正負極共に非ファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高出力かつ高耐久性を有するがエネルギー密度が低い(正極1倍×負極1倍=1)という特徴がある。
リチウムイオン二次電池は、正極にリチウム遷移金属酸化物(エネルギー密度10倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正負極共にファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高エネルギー密度(正極10倍×負極10倍=100)だが、出力特性及び耐久性に問題がある。更に、ハイブリッド電気自動車等で要求される高耐久性を満足させるためには放電深度を制限しなければならず、リチウムイオン二次電池では、そのエネルギーの10〜50%しか使用できない。
リチウムイオンキャパシタは、正極に活性炭(エネルギー密度1倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオン二次電池の特徴を兼ね備えた新規の非対称キャパシタである。それゆえ、高出力かつ高耐久性でありながら、高エネルギー密度(正極1倍×負極10倍=10)を有し、リチウムイオン二次電池の様に放電深度を制限する必要がないことが特徴である。
リチウムイオンキャパシタの用途としては、例えば、鉄道、建機、自動車用の蓄電素子等が挙げられる。これらの用途においては、さらなるエネルギー密度と出力特性の向上が求められる。
以下の特許文献1には、リチウムイオン二次電池用の正極活物質表面に、Zrを含有する層を設けることにより、電解液との反応を抑制することができ寿命特性を向上出来ることが開示されている。
また、以下の特許文献2には、Zr含有量が10〜800ppmのリチウム複合酸化物を含むリチウムイオン二次電池用正極材料を用いることで、充放電サイクル耐久性が悪化しないことが開示されている。
さらに、以下の特許文献3には、Zrを含有する表面部を備えたリチウム金属複合酸化物からなるリチウム二次電池用正極活物質において、XPSにより測定される表面元素と構成元素の比率等を制御することで、電解液とリチウム金属複合酸化物との反応を抑えると同時に、レート特性と出力特性を損なうことがないことが開示されている。
また、以下の特許文献2には、Zr含有量が10〜800ppmのリチウム複合酸化物を含むリチウムイオン二次電池用正極材料を用いることで、充放電サイクル耐久性が悪化しないことが開示されている。
さらに、以下の特許文献3には、Zrを含有する表面部を備えたリチウム金属複合酸化物からなるリチウム二次電池用正極活物質において、XPSにより測定される表面元素と構成元素の比率等を制御することで、電解液とリチウム金属複合酸化物との反応を抑えると同時に、レート特性と出力特性を損なうことがないことが開示されている。
本発明における正極前駆体を用いた非水系リチウム型蓄電素子は、後述のリチウムドープ工程を施すことにより正極前駆体に含まれるリチウム化合物が分解して負極へリチウムイオンをドープすることができる。しかし、このような非水系リチウム型蓄電素子において、リチウムドープ工程中に一部のリチウム化合物が分解されずに、正極中にリチウム化合物が残存する。また、正極活物質に導電性が高くかつ活性サイトの多い炭素材料を含むことで、リチウム化合物が分解する正極電位において正極前駆体中の非水系電解液の分解反応が顕著となり、それによりその分解副生成物が正極中に多数存在する。これら残存したリチウム化合物や非水系電解液の分解副生成物の影響により、非水系リチウム型蓄電素子のエネルギー密度と出力特性を十分に向上することは困難であった。
特許文献1〜3にはいずれもZr元素を含有するリチウム含有遷移金属複合酸化物をリチウムイオン二次電池用正極活物質に用いることにより、正極活物質と電解液との反応を抑制する等の効果により、レート特性や出力特性を損なうことなく充放電サイクル耐久性を向上出来ることが提案されている。
しかし、正極前駆体におけるZr元素の濃度を制御することによる非水系リチウム型蓄電素子のエネルギー密度と出力特性の向上については何ら言及されていない。
特許文献1〜3にはいずれもZr元素を含有するリチウム含有遷移金属複合酸化物をリチウムイオン二次電池用正極活物質に用いることにより、正極活物質と電解液との反応を抑制する等の効果により、レート特性や出力特性を損なうことなく充放電サイクル耐久性を向上出来ることが提案されている。
しかし、正極前駆体におけるZr元素の濃度を制御することによる非水系リチウム型蓄電素子のエネルギー密度と出力特性の向上については何ら言及されていない。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、正極前駆体の正極活物質層にリチウム化合物と正極活物質として炭素材料を含み、該正極活物質層単位質量当たりのZr元素の含有量を特定の範囲に調整することで、これを用いた非水系リチウム型蓄電素子のエネルギー密度と出力特性を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]リチウム化合物と、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する正極前駆体であって、
該正極活物質は炭素材料を含み、
該正極活物質層におけるZr元素の含有量が、該正極活物質層単位質量当たり0.01ppm以上8ppm以下である、前記正極前駆体。
[2]前記正極活物質層におけるFe元素の含有量が、該正極活物質層単位質量当たり0.3ppm以上150ppm以下である、[1]に記載の正極前駆体。
[3]前記正極前駆体中の前記リチウム化合物の含有割合が、前記正極前駆体における正極活物質層を基準として、10質量%以上60質量%以下である、[1]又は[2]に記載の正極前駆体。
[4]前記リチウム化合物が炭酸リチウム、酸化リチウム、及び水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[3]のいずれかに記載の正極前駆体。
[5]前記炭素材料が活性炭である、[1]〜[4]のいずれかに記載の正極前駆体。
[6]前記活性炭が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下である、[5]に記載の正極前駆体。
[7]前記活性炭が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下である、[5]に記載の正極前駆体。
[8]正極、負極、セパレータ、及びリチウムイオンを含む非水系電解液からなる非水系リチウム型蓄電素子であって、
該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
該正極活物質は炭素材料を含み、
該非水系リチウム型蓄電素子におけるZr元素の含有量が、該正極活物質層単位質量当たり0.01ppm以上8ppm以下である、前記非水系リチウム型蓄電素子。
[9]前記非水系リチウム型蓄電素子に含まれるFe元素が、該正極活物質層単位質量当たり0.3ppm以上150ppm以下である、[8]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[10]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、蓄電モジュール。
[11]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、電力回生システム。
[12]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、電力負荷平準化システム。
[13]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、無停電電源システム。
[14]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、非接触給電システム。
[15]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、エナジーハーベストシステム。
[16]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、蓄電システム。
[1]リチウム化合物と、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する正極前駆体であって、
該正極活物質は炭素材料を含み、
該正極活物質層におけるZr元素の含有量が、該正極活物質層単位質量当たり0.01ppm以上8ppm以下である、前記正極前駆体。
[2]前記正極活物質層におけるFe元素の含有量が、該正極活物質層単位質量当たり0.3ppm以上150ppm以下である、[1]に記載の正極前駆体。
[3]前記正極前駆体中の前記リチウム化合物の含有割合が、前記正極前駆体における正極活物質層を基準として、10質量%以上60質量%以下である、[1]又は[2]に記載の正極前駆体。
[4]前記リチウム化合物が炭酸リチウム、酸化リチウム、及び水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[3]のいずれかに記載の正極前駆体。
[5]前記炭素材料が活性炭である、[1]〜[4]のいずれかに記載の正極前駆体。
[6]前記活性炭が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下である、[5]に記載の正極前駆体。
[7]前記活性炭が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下である、[5]に記載の正極前駆体。
[8]正極、負極、セパレータ、及びリチウムイオンを含む非水系電解液からなる非水系リチウム型蓄電素子であって、
該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
該正極活物質は炭素材料を含み、
該非水系リチウム型蓄電素子におけるZr元素の含有量が、該正極活物質層単位質量当たり0.01ppm以上8ppm以下である、前記非水系リチウム型蓄電素子。
[9]前記非水系リチウム型蓄電素子に含まれるFe元素が、該正極活物質層単位質量当たり0.3ppm以上150ppm以下である、[8]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[10]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、蓄電モジュール。
[11]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、電力回生システム。
[12]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、電力負荷平準化システム。
[13]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、無停電電源システム。
[14]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、非接触給電システム。
[15]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、エナジーハーベストシステム。
[16]前記[8]又は[9]に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、蓄電システム。
本発明に係る正極前駆体を用いた非水系リチウム型蓄電素子は、高いエネルギー密度と出力特性を示す。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本実施形態の各数値範囲における上限値及び下限値は任意に組み合わせて任意の数値範囲を構成することができる。
非水系リチウム型蓄電素子は一般に、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを主な構成要素として備える。電解液としては、リチウムイオンを含む有機溶媒(以下、「非水系電解液」ともいう。)を用いる。
非水系リチウム型蓄電素子は一般に、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを主な構成要素として備える。電解液としては、リチウムイオンを含む有機溶媒(以下、「非水系電解液」ともいう。)を用いる。
<正極>
本実施形態における正極は、正極集電体と、その片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する。
本実施形態における正極は、正極集電体と、その片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する。
本実施形態における正極は、非水系リチウム型蓄電素子を組み立てる前の正極前駆体として、リチウム化合物を含有することを特徴とする。後述のように、本実施形態では非水系リチウム型蓄電素子を組み立てる工程において、負極にリチウムイオンをプレドープすることが好ましい。本実施形態におけるプレドープ方法としては、リチウム化合物を含む正極前駆体と、負極と、セパレータと、非水系電解液とを用いて非水系リチウム型蓄電素子を組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。リチウム化合物は、正極前駆体及び正極中にいかなる態様で含まれていてもよい。例えば、リチウム化合物は、正極集電体と正極活物質層との間に存在してもよく、正極活物質層の表面上に存在してもよい。リチウム化合物は、正極前駆体の正極集電体上に形成された正極活物質層内に含有されていることが好ましい。
本願明細書では、リチウムドープ工程前における正極を「正極前駆体」、リチウムドープ工程後における正極を「正極」と定義する。
本実施形態の正極前駆体における正極活物質層のZr元素の含有量は、正極活物質層単位質量当たり0.01ppm以上8ppm以下であることを特徴とする。前記Zr元素の含有量は、好ましくは、0.03ppm以上6ppm以下、より好ましくは0.05ppm以上5ppm以下、さらに好ましくは0.08ppm以上4ppm以下、特に好ましくは0.10ppm以上3ppm以下である。尚、下限と上限は任意の組み合わせとすることができる。
前記Zr元素の含有量を特定の範囲に調整することで、本発明の正極前駆体を用いリチウムドープ工程を施した非水系リチウム型蓄電素子において、高いエネルギー密度と出力特性を発現できる原理は明らかではないが、次のように推察される。本発明の非水系リチウム型蓄電素子はリチウムドープ工程により正極前駆体中のリチウム化合物を分解して、負極へリチウムイオンをドープすることができる。しかし、リチウムドープ工程において分解せずに残存したリチウム化合物や非水系電解液の分解副生成物により正極活物質の表面や細孔を閉塞し、非ファラデー反応に伴う容量や出力特性を低下させる。正極活物質に導電性が高くかつ活性サイトの多い炭素材料を含むことで、リチウム化合物が分解する正極電位において正極前駆体中の非水系電解液の分解反応が顕著となり、それによりその分解副生成物が正極中に多数存在する。正極前駆体にZr元素を含有することで、該Zr元素がリチウムドープ工程におけるリチウム化合物や非水系電解液の副生成物を効率的に分解する触媒の働きをするため、リチウムドープ工程後の非水系リチウム型蓄電素子において非ファラデー反応に伴う容量や出力特性を向上できると考えられる。
前記Zr元素の含有量が0.01ppm以上であれば、上述した理由により本発明の正極前駆体を用いリチウムドープ工程を施した非水系リチウム型蓄電素子においてエネルギー密度と出力特性を向上できる。他方、このZr元素の含有量が8ppm以下であれば、リチウムドープ工程中のZr元素による過剰な非水系電解液の副反応を抑制できるため、リチウムドープ工程後の非水系リチウム型蓄電素子の出力特性を向上できる。
正極前駆体における正極活物質層のZr元素の含有量は、正極活物質層の任意の構成要素に含有されるZr元素の総和により調整することができる。好ましくはリチウム化合物に含有されるZr元素の量により調整するとよい。リチウム化合物のZr元素の含有量の調整は、ZrOCl2等の無機ジルコニウム化合物含有水溶液やジルコニウムアルコキシド等の有機ジルコニウム化合物含有水溶液の中にリチウム化合物を溶解させ、これを加水分解や析出させることにより、Zr元素を含有したリチウム化合物を得ることができる。また、ZrO2、ZrSO4、ZrCl3、及びZrCl4等の無機ジルコニウム化合物とリチウム化合物を強いせん断力で接触させることによりリチウム化合物にZr元素を含有させることができる。
正極前駆体における正極活物質層のZr元素は金属、化合物のいかなる形態でも存在できるが、好ましくはZrO2等の無機ジルコニウム化合物として存在するとよい。
本実施形態の正極前駆体における正極活物質層のFe元素の含有量は、好ましくは正極活物質層単位質量当たり0.3ppm以上150ppm以下、より好ましくは0.6ppm以上80ppm以下、さらに好ましくは0.8ppm以上40ppm以下である。
前記Fe元素の含有量が0.3ppm以上であれば、Zr元素の触媒活性がFe元素により増幅するため、上述した理由により本発明の正極前駆体を用いリチウムドープ工程を施した非水系リチウム型蓄電素子においてエネルギー密度と出力特性が向上できる。他方、このFe元素の含有量が150ppm以下であれば、リチウムドープ工程中のFe元素の溶出により生じる負極での非水系電解液の還元分解を抑制でき、リチウムドープ工程後の非水系リチウム型蓄電素子の出力特性を向上できる。
正極前駆体における正極活物質層のFe元素の含有量は、正極活物質層の任意の構成要素に含まれるFe元素の総和により調整することができる。好ましくはリチウム化合物に含有されるFe元素の量により調整するとよい。リチウム化合物のFe元素の含有量の調整には、FeCl3等を溶解したFe2+又はFe3+イオンを含む水溶液の中にリチウム化合物を溶解させ、沈殿や析出によりFe元素を含有したリチウム化合物を得ることができる。また、FeO、Fe2O3、及びFeCl3等の鉄化合物とリチウム化合物を強いせん断力で接触させることによりリチウム化合物にFe元素を含有させることができる。
正極前駆体における正極活物質層のFe元素は金属、化合物のいかなる形態でも存在できるが、Fe2O3やFeCl3等の鉄化合物として存在することが好ましい。
本明細書中の正極前駆体における正極活物質層のZr元素とFe元素の含有量は、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)により測定できる。先ず、正極前駆体から正極活物質層を採取し(たとえば掻き取って)、秤量する。正極活物質層を採取する前に正極前駆体に真空乾燥等を施して正極前駆体に含まれる水分や有機溶媒等を除去することが好ましい。得られる正極活物質層を試料としてICP−MSにより試料中のZr元素又はFe元素の質量を測定する。得られるZr元素又はFe元素の質量を試料である正極活物質層の質量で除することにより、正極活物質層単位質量当たりのZr元素又はFe元素の含有量を算出できる。
[正極活物質層]
正極活物質層は正極活物質を含み、これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、及び分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
正極活物質層は正極活物質を含み、これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、及び分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
(正極活物質)
本発明の正極前駆体に含有される正極活物質は炭素材料を含むことを特徴とする。炭素材料としては、好ましくはカーボンナノチューブ、導電性高分子、及び多孔性の炭素材料が挙げられ、さらに好ましくは活性炭である。正極活物質は、炭素材料の加えて、炭素材料以外の材料、例えばリチウムと遷移金属との複合酸化物等の材料を混合し含んでもよい。
正極活物質の合計質量に対する炭素材料の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。炭素材料の含有率は100質量%であってもよいが、他の材料との併用による効果を良好に得る観点から、例えば、好ましくは90質量%以下であり、80質量%以下であってもよい。
本発明の正極前駆体に含有される正極活物質は炭素材料を含むことを特徴とする。炭素材料としては、好ましくはカーボンナノチューブ、導電性高分子、及び多孔性の炭素材料が挙げられ、さらに好ましくは活性炭である。正極活物質は、炭素材料の加えて、炭素材料以外の材料、例えばリチウムと遷移金属との複合酸化物等の材料を混合し含んでもよい。
正極活物質の合計質量に対する炭素材料の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。炭素材料の含有率は100質量%であってもよいが、他の材料との併用による効果を良好に得る観点から、例えば、好ましくは90質量%以下であり、80質量%以下であってもよい。
活性炭を正極活物質として用いる場合、活性炭の種類及びその原料は特に制限されない。しかしながら、高い入出力特性と、高いエネルギー密度とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、
(1)高い入出力特性を得るためには、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下である活性炭(以下、「活性炭1」ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下である活性炭(以下、「活性炭2」ともいう。)が好ましい。
(1)高い入出力特性を得るためには、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下である活性炭(以下、「活性炭1」ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下である活性炭(以下、「活性炭2」ともいう。)が好ましい。
以下、(1)活性炭1及び(2)活性炭2について説明する。
(活性炭1)
活性炭1のメソ孔量V1は、正極材料を非水系リチウム型蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、正極の嵩密度の低下を抑える点から、活性炭1のV1は0.8cc/g以下であることが好ましい。活性炭1のV1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
(活性炭1)
活性炭1のメソ孔量V1は、正極材料を非水系リチウム型蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、正極の嵩密度の低下を抑える点から、活性炭1のV1は0.8cc/g以下であることが好ましい。活性炭1のV1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
活性炭1のマイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましい。他方、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させる点から、活性炭1のV2は1.0cc/g以下であることが好ましい。活性炭1のV2は、より好ましくは0.6cc/g以上1.0cc/g以下、更に好ましくは0.8cc/g以上1.0cc/g以下である。
活性炭1のマイクロ孔量V2に対するメソ孔量V1の比(V1/V2)は、0.3≦V1/V2≦0.9の範囲であることが好ましい。すなわち、高容量を維持しながら出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという点から、活性炭1のV1/V2が0.3以上であることが好ましい。他方、高出力特性を維持しながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという点から、活性炭1のV1/V2は0.9以下であることが好ましい。活性炭1のV1/V2の範囲は、より好ましくは0.4≦V1/V2≦0.7、更に好ましくは0.55≦V1/V2≦0.7である。
活性炭1の平均細孔径は、得られる非水系リチウム型蓄電素子の出力を増大させる点から、17Å以上であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが更に好ましい。また容量を増大させる点から、活性炭1の平均細孔径は25Å以下であることが好ましい。
活性炭1のBET比表面積は、1,500m2/g以上3,000m2/g以下であることが好ましく、1,500m2/g以上2,500m2/g以下であることがより好ましい。活性炭1のBET比表面積が1,500m2/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、活性炭1のBET比表面積が3,000m2/g以下の場合には、電極の強度を保つために結着剤を多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
上記のような特徴を有する活性炭1は、例えば、以下に説明する原料及び処理方法を用いて得ることができる。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。活性炭1の炭素源としては、例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。活性炭1の炭素源としては、例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
これらの原料から活性炭1を作製するための炭化及び賦活の方式としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃、好ましくは450〜600℃程度において、30分〜10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
上記炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。賦活ガスとして水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法がより好ましい。
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h、好ましくは0.7〜2.0kg/hの割合で供給しながら、炭化物を3〜12時間、好ましくは5〜11時間、更に好ましくは6〜10時間かけて800〜1,000℃まで昇温して賦活することが好ましい。
更に、炭化物の賦活処理に先立ち、予め炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で炭素材料を焼成してガス賦活することが好ましい。
炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本実施形態において好ましい、上記の特徴を有する活性炭1を製造することができる。
活性炭1の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。活性炭1の平均粒子径が2μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。活性炭1の平均粒子径が小さいと耐久性が低くなる場合があるが、平均粒子径が2μm以上であれば耐久性が低くなり難い。活性炭1の平均粒子径が20μm以下であると、高速充放電に適合し易くなる傾向がある。活性炭1の平均粒子径は、より好ましくは2〜15μmであり、更に好ましくは3〜10μmである。
(活性炭2)
活性炭2のメソ孔量V1は、正極材料を非水系リチウム型蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、非水系リチウム型蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。活性炭2のV1は、より好ましくは1.00cc/g以上2.0cc/g以下、さらに好ましくは1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
活性炭2のメソ孔量V1は、正極材料を非水系リチウム型蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、非水系リチウム型蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。活性炭2のV1は、より好ましくは1.00cc/g以上2.0cc/g以下、さらに好ましくは1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
活性炭2のマイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。活性炭の電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、活性炭2のV2は、好ましくは3.0cc/g以下、より好ましくは1.0cc/g超2.5cc/g以下、更に好ましくは1.5cc/g以上2.5cc/g以下である。
上述したメソ孔量及びマイクロ孔量を有する活性炭2は、従来の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ用として使用されていた活性炭よりもBET比表面積が高いものである。活性炭2のBET比表面積の具体的な値としては、2,300m2/g以上4,000m2/g以下であることが好ましい。BET比表面積の下限としては、3,000m2/g以上であることがより好ましく、3,200m2/g以上であることが更に好ましい。BET比表面積の上限としては、3,800m2/g以下であることがより好ましい。活性炭2のBET比表面積が2,300m2/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、活性炭2のBET比表面積が4,000m2/g以下の場合には、電極の強度を保つために結着剤を多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
上記のような特徴を有する活性炭2は、例えば以下に説明するような原料及び処理方法を用いて得ることができる。
活性炭2の原料として用いられる炭素源としては、活性炭原料として通常用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭2を作製するのに適しており、特に好ましい。
活性炭2の原料として用いられる炭素源としては、活性炭原料として通常用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭2を作製するのに適しており、特に好ましい。
これらの原料を炭化する方式、又は賦活処理時の加熱方法としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の公知の方式が挙げられる。加熱時の雰囲気は窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分として他のガスとの混合したガスが用いられる。炭化温度は好ましくは400〜700℃である。炭化温度の下限値は、好ましくは450℃以上、更に好ましくは500℃以上である。炭化温度の上限値は、好ましくは650℃以下である。炭化時間については、0.5〜10時間程度で原料を焼成することが好ましい。
炭化処理後の炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法、及びアルカリ金属化合物と混合した後に加熱処理を行うアルカリ金属賦活法が挙げられる。高比表面積の活性炭を作製するには、アルカリ金属賦活法が好ましい。
この賦活方法では、炭化物とKOH、NaOH等のアルカリ金属化合物との質量比が1:1以上(アルカリ金属化合物の量が、炭化物の量と同じか、又はこれよりも多い量)となるように混合した後に、不活性ガス雰囲気下で600〜900℃、好ましくは650℃〜850℃の範囲において、0.5〜5時間加熱を行い、その後アルカリ金属化合物を酸及び水により洗浄除去し、更に乾燥を行うことが好ましい。
炭化物に対するアルカリ金属化合物の量が増えるほど、メソ孔量が増え、質量比1:3.5付近を境に急激に孔量が増える傾向があるので、炭化物:アルカリ金属化合物の質量比は、1:3よりアルカリ金属化合物が多いことが好ましく、1:5.5以下であることが好ましい。炭化物に対してアルカリ金属化合物が増えるほど孔量が大きくなるが、その後の洗浄等の処理効率を考慮すると1:5.5以下の範囲であることが好ましい。
マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないためには、賦活する際に炭化物の量を多めにしてKOHと混合するとよい。マイクロ孔量及びメソ孔量の双方を大きくするためには、KOHの量を多めに使用するとよい。また、主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に水蒸気賦活を行うことが好ましい。
活性炭2の平均粒子径は、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは2μm以上20μm以下、更に好ましくは3μm以上10μm以下である。
(活性炭の使用態様)
正極活物質に活性炭を使用する場合、活性炭1及び2は、それぞれ、単一の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって、混合物全体として上記の特徴を示すものであってもよい。
正極活物質に活性炭を使用する場合、活性炭1及び2は、それぞれ、単一の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって、混合物全体として上記の特徴を示すものであってもよい。
活性炭1及び2は、これらのうちのいずれか一方を選択して使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
正極活物質は、活性炭1及び2以外の材料、例えば、上記特定のV1及び/又はV2を有さない活性炭、又は活性炭以外の材料、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物等を含んでもよい。例示の態様において、活性炭1の含有量、活性炭2の含有量、又は活性炭1及び2の合計含有量が、それぞれ、全正極活物質の50質量%より多いことが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
正極における正極活物質の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、35質量%以上95質量%以下であることが好ましい。正極活物質の含有割合の下限としては、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましい。他方、正極活物質の含有割合の上限としては、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。正極活物質の含有割合をこの範囲に調整することにより、好適な充放電特性を発揮する。
(リチウム化合物)
本願明細書において、「リチウム化合物」とは、正極活物質ではないリチウム化合物を意味する。
リチウム化合物としては、後述のリチウムドープ工程において正極で分解し、リチウムイオンを放出することが可能である、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、シュウ化リチウム、ヨウ化リチウム、窒化リチウム、シュウ酸リチウム、及び酢酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、空気中での取り扱いが可能であり、吸湿性が低いという観点から、炭酸リチウム、酸化リチウム及び水酸化リチウムが好ましく、炭酸リチウムがより好ましい。このようなリチウム化合物は、電圧の印加によって分解し、負極へのリチウムドープのドーパント源として機能することができる。
本願明細書において、「リチウム化合物」とは、正極活物質ではないリチウム化合物を意味する。
リチウム化合物としては、後述のリチウムドープ工程において正極で分解し、リチウムイオンを放出することが可能である、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、シュウ化リチウム、ヨウ化リチウム、窒化リチウム、シュウ酸リチウム、及び酢酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、空気中での取り扱いが可能であり、吸湿性が低いという観点から、炭酸リチウム、酸化リチウム及び水酸化リチウムが好ましく、炭酸リチウムがより好ましい。このようなリチウム化合物は、電圧の印加によって分解し、負極へのリチウムドープのドーパント源として機能することができる。
リチウム化合物は粒子状であることが好ましい。粒子状のリチウム化合物の平均粒子径は0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。リチウム化合物の平均粒子径が0.1μm以上であれば、正極におけるリチウム化合物の酸化反応後に残る空孔の容積が非水系電解液を保持するのに十分に大きくなるため、高負荷充放電サイクル特性が向上する。粒子状のリチウム化合物の平均粒子径が10μm以下であれば、リチウム化合物の表面積が過度に小さくならず、リチウム化合物の酸化反応の速度を確保することができる。
リチウム化合物の微粒子化には、様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
リチウム化合物の微粒子化には、様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
正極前駆体中に含まれるリチウム化合物の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、好ましくは10質量%以上60質量%以下、より好ましくは20質量%以上50質量%以下である。正極前駆体中に含まれるリチウム化合物の含有割合を10質量%以上60質量%以下に調整することにより、負極へのドーパント源として好適な機能を発揮することができる。
[正極中のリチウム化合物の同定方法]
正極中に含まれるリチウム化合物の同定方法は特に限定されないが、例えば、下記の方法により同定することができる。リチウム化合物の同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
正極中に含まれるリチウム化合物の同定方法は特に限定されないが、例えば、下記の方法により同定することができる。リチウム化合物の同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
以下に記載するSEM−EDX、ラマン分光法、及びXPSを測定する際には、アルゴンボックス中で非水系リチウム型蓄電素子を解体して正極を取り出し、正極表面に付着した電解質を洗浄した後に測定を行うことが好ましい。正極を洗浄する溶媒としては、正極表面に付着した電解質を洗い流せればよく、例えばジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート溶媒が好適に利用できる。洗浄方法としては、例えば、正極質量の50〜100倍のジエチルカーボネート溶媒に正極を10分間以上浸漬させ、その後溶媒を取り替えて再度正極を浸漬させる。その後正極をジエチルカーボネートから取り出し、真空乾燥させた後に、SEM−EDX、ラマン分光法、及びXPSの解析を実施する。真空乾燥の条件は、温度:0〜200℃、圧力:0〜20kPa、時間:1〜40時間の範囲で正極中のジエチルカーボネートの残存が1質量%以下になる条件とする。ジエチルカーボネートの残存量については、後述する蒸留水洗浄、液量調整後の水のGC/MSを測定し、予め作成した検量線を基に定量することができる。
後述するイオンクロマトグラフィーでは、正極を蒸留水で洗浄した後の水を解析することにより陰イオンを同定することができる。
上記解析手法にてリチウム化合物を同定できなかった場合、その他の解析手法として、固体7Li−NMR、XRD(X線回折)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AES(オージェ電子分光)、TPD/MS(加熱発生ガス質量分析)、DSC(示差走査熱量分析)等を用いることにより、リチウム化合物を同定することもできる。
上記解析手法にてリチウム化合物を同定できなかった場合、その他の解析手法として、固体7Li−NMR、XRD(X線回折)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AES(オージェ電子分光)、TPD/MS(加熱発生ガス質量分析)、DSC(示差走査熱量分析)等を用いることにより、リチウム化合物を同定することもできる。
(エネルギー分散型X線分析(SEM−EDX))
酸素を含有するリチウム化合物及び正極活物質は、観察倍率を1,000倍〜4,000倍にして測定した正極表面のSEM−EDX画像の酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像は、例えば、加速電圧を10kV、エミッション電流を10μA、測定画素数を256×256ピクセル、積算回数を50回として測定できる。試料の帯電を防止するために、金、白金、オスミウム等を真空蒸着やスパッタリング等の方法により試料を表面処理することもできる。SEM−EDX画像の測定方法については、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化したとき、明部を面積で50%以上含む粒子をリチウム化合物とする。
酸素を含有するリチウム化合物及び正極活物質は、観察倍率を1,000倍〜4,000倍にして測定した正極表面のSEM−EDX画像の酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像は、例えば、加速電圧を10kV、エミッション電流を10μA、測定画素数を256×256ピクセル、積算回数を50回として測定できる。試料の帯電を防止するために、金、白金、オスミウム等を真空蒸着やスパッタリング等の方法により試料を表面処理することもできる。SEM−EDX画像の測定方法については、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化したとき、明部を面積で50%以上含む粒子をリチウム化合物とする。
(ラマン分光法)
炭酸イオンを含むリチウム化合物及び正極活物質は、観察倍率を1,000倍〜4,000倍にして測定した正極表面のラマンイメージングにより判別できる。測定条件として、励起光を532nm、励起光強度を1%、対物レンズの長作動を50倍、回折格子を1,800gr/mm、マッピング方式を点走査(スリット65mm、ビニング5pix)、1mmステップ、1点当たりの露光時間を3秒、積算回数を1回、ノイズフィルター有りの条件を例示することができる。測定したラマンスペクトルについて、1,071〜1,104cm−1の範囲で直線のベースラインを設定し、ベースラインより正の値を炭酸イオンのピークとして面積を算出し、頻度を積算する。このとき、ノイズ成分をガウス型関数で近似した炭酸イオンピーク面積に対する頻度を炭酸イオンの頻度分布から差し引く。
炭酸イオンを含むリチウム化合物及び正極活物質は、観察倍率を1,000倍〜4,000倍にして測定した正極表面のラマンイメージングにより判別できる。測定条件として、励起光を532nm、励起光強度を1%、対物レンズの長作動を50倍、回折格子を1,800gr/mm、マッピング方式を点走査(スリット65mm、ビニング5pix)、1mmステップ、1点当たりの露光時間を3秒、積算回数を1回、ノイズフィルター有りの条件を例示することができる。測定したラマンスペクトルについて、1,071〜1,104cm−1の範囲で直線のベースラインを設定し、ベースラインより正の値を炭酸イオンのピークとして面積を算出し、頻度を積算する。このとき、ノイズ成分をガウス型関数で近似した炭酸イオンピーク面積に対する頻度を炭酸イオンの頻度分布から差し引く。
(X線光電分光法(XPS))
リチウムの電子状態をXPSにより解析することによりリチウムの結合状態を判別することができる。測定条件として、X線源を単色化AlKα、X線ビーム径を100μmφ(25W、15kV)、パスエネルギーをナロースキャン:58.70eV、帯電中和有り、スイープ数をナロースキャン:10回(炭素、酸素)、20回(フッ素)、30回(リン)、40回(リチウム)、50回(ケイ素)、エネルギーステップをナロースキャン:0.25eVの条件を例示することができる。XPSの測定前に正極の表面をスパッタリングにてクリーニングすることが好ましい。スパッタリングの条件として例えば、加速電圧1.0kV、2mm×2mmの範囲を1分間(SiO2換算で1.25nm/min)の条件にて正極の表面をクリーニングすることができる。
得られたXPSスペクトルについて、Li1sの結合エネルギー50〜54eVのピークをLiO2またはLi−C結合、55〜60eVのピークをLiF、Li2CO3、LixPOyFz(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である);C1sの結合エネルギー285eVのピークをC−C結合、286eVのピークをC−O結合、288eVのピークをCOO、290〜292eVのピークをCO3 2−、C−F結合;O1sの結合エネルギー527〜530eVのピークをO2−(Li2O)、531〜532eVのピークをCO、CO3、OH、POx(式中、xは1〜4の整数である)、SiOx(式中、xは1〜4の整数である)、533eVのピークをC−O、SiOx(式中、xは1〜4の整数である);F1sの結合エネルギー685eVのピークをLiF、687eVのピークをC−F結合、LixPOyFz(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である)、PF6 −;P2pの結合エネルギーについて、133eVのピークをPOx(式中、xは1〜4の整数である)、134〜136eVのピークをPFx(式中、xは1〜6の整である数);Si2pの結合エネルギー99eVのピークをSi、シリサイド、101〜107eVのピークをSixOy(式中、x、及びyは、それぞれ任意の整数である)として帰属することができる。
得られたスペクトルについて、ピークが重なる場合には、ガウス関数又はローレンツ関数を仮定してピーク分離し、スペクトルを帰属することが好ましい。得られた電子状態の測定結果及び存在元素比の結果から、存在するリチウム化合物を同定することができる。
リチウムの電子状態をXPSにより解析することによりリチウムの結合状態を判別することができる。測定条件として、X線源を単色化AlKα、X線ビーム径を100μmφ(25W、15kV)、パスエネルギーをナロースキャン:58.70eV、帯電中和有り、スイープ数をナロースキャン:10回(炭素、酸素)、20回(フッ素)、30回(リン)、40回(リチウム)、50回(ケイ素)、エネルギーステップをナロースキャン:0.25eVの条件を例示することができる。XPSの測定前に正極の表面をスパッタリングにてクリーニングすることが好ましい。スパッタリングの条件として例えば、加速電圧1.0kV、2mm×2mmの範囲を1分間(SiO2換算で1.25nm/min)の条件にて正極の表面をクリーニングすることができる。
得られたXPSスペクトルについて、Li1sの結合エネルギー50〜54eVのピークをLiO2またはLi−C結合、55〜60eVのピークをLiF、Li2CO3、LixPOyFz(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である);C1sの結合エネルギー285eVのピークをC−C結合、286eVのピークをC−O結合、288eVのピークをCOO、290〜292eVのピークをCO3 2−、C−F結合;O1sの結合エネルギー527〜530eVのピークをO2−(Li2O)、531〜532eVのピークをCO、CO3、OH、POx(式中、xは1〜4の整数である)、SiOx(式中、xは1〜4の整数である)、533eVのピークをC−O、SiOx(式中、xは1〜4の整数である);F1sの結合エネルギー685eVのピークをLiF、687eVのピークをC−F結合、LixPOyFz(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である)、PF6 −;P2pの結合エネルギーについて、133eVのピークをPOx(式中、xは1〜4の整数である)、134〜136eVのピークをPFx(式中、xは1〜6の整である数);Si2pの結合エネルギー99eVのピークをSi、シリサイド、101〜107eVのピークをSixOy(式中、x、及びyは、それぞれ任意の整数である)として帰属することができる。
得られたスペクトルについて、ピークが重なる場合には、ガウス関数又はローレンツ関数を仮定してピーク分離し、スペクトルを帰属することが好ましい。得られた電子状態の測定結果及び存在元素比の結果から、存在するリチウム化合物を同定することができる。
(イオンクロマトグラフィー)
正極を蒸留水で洗浄し、洗浄した後の水をイオンクロマトグラフィーで解析することにより、水中に溶出したアニオン種を同定することができる。使用するカラムとしては、イオン交換型、イオン排除型、逆相イオン対型等を使用することができる。検出器としては、電気伝導度検出器、紫外可視吸光光度検出器、電気化学検出器等を使用することができ、検出器の前にサプレッサーを設置するサプレッサー方式、又はサプレッサーを配置せずに電気伝導度の低い溶液を溶離液に用いるノンサプレッサー方式を用いることができる。また、質量分析計又は荷電化粒子検出器を検出器と組み合わせて測定することもできるため、SEM−EDX、ラマン分光法、XPS等の解析結果から同定されたリチウム化合物に基づいて、適切なカラム及び検出器を組み合わせることが好ましい。
サンプルの保持時間は、使用するカラムや溶離液等の条件が決まれば、イオン種成分毎に一定であり、またピークのレスポンスの大きさはイオン種毎に異なるが、イオン種の濃度に比例する。トレーサビリティーが確保された既知濃度の標準液を予め測定しておくことでイオン種成分の定性と定量が可能となる。
正極を蒸留水で洗浄し、洗浄した後の水をイオンクロマトグラフィーで解析することにより、水中に溶出したアニオン種を同定することができる。使用するカラムとしては、イオン交換型、イオン排除型、逆相イオン対型等を使用することができる。検出器としては、電気伝導度検出器、紫外可視吸光光度検出器、電気化学検出器等を使用することができ、検出器の前にサプレッサーを設置するサプレッサー方式、又はサプレッサーを配置せずに電気伝導度の低い溶液を溶離液に用いるノンサプレッサー方式を用いることができる。また、質量分析計又は荷電化粒子検出器を検出器と組み合わせて測定することもできるため、SEM−EDX、ラマン分光法、XPS等の解析結果から同定されたリチウム化合物に基づいて、適切なカラム及び検出器を組み合わせることが好ましい。
サンプルの保持時間は、使用するカラムや溶離液等の条件が決まれば、イオン種成分毎に一定であり、またピークのレスポンスの大きさはイオン種毎に異なるが、イオン種の濃度に比例する。トレーサビリティーが確保された既知濃度の標準液を予め測定しておくことでイオン種成分の定性と定量が可能となる。
[リチウム化合物の定量方法]
正極中に含まれるリチウム化合物の定量方法を以下に記載する。
正極を有機溶媒で洗浄し、その後蒸留水で洗浄し、蒸留水での洗浄前後の正極質量変化からリチウム化合物を定量することができる。測定する正極の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5cm2以上200cm2以下であることが好ましく、より好ましくは25cm2以上150cm2以下である。面積が5cm2以上あれば測定の再現性が確保される。面積が200cm2以下であればサンプルの取扱い性に優れる。有機溶媒による洗浄については、正極表面に堆積した非水系電解液分解物を除去できれば良いため、有機溶媒は特に限定されないが、前記リチウム化合物の溶解度が2%以下である有機溶媒を用いることでリチウム化合物の溶出が抑制されるため好ましい。例えば、メタノール、アセトン等の極性溶媒が好適に用いられる。
正極中に含まれるリチウム化合物の定量方法を以下に記載する。
正極を有機溶媒で洗浄し、その後蒸留水で洗浄し、蒸留水での洗浄前後の正極質量変化からリチウム化合物を定量することができる。測定する正極の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5cm2以上200cm2以下であることが好ましく、より好ましくは25cm2以上150cm2以下である。面積が5cm2以上あれば測定の再現性が確保される。面積が200cm2以下であればサンプルの取扱い性に優れる。有機溶媒による洗浄については、正極表面に堆積した非水系電解液分解物を除去できれば良いため、有機溶媒は特に限定されないが、前記リチウム化合物の溶解度が2%以下である有機溶媒を用いることでリチウム化合物の溶出が抑制されるため好ましい。例えば、メタノール、アセトン等の極性溶媒が好適に用いられる。
正極の洗浄方法については、正極の質量に対し50〜100倍のメタノール溶液に正極を3日間以上十分に浸漬させる。この時、メタノールが揮発しないよう容器に蓋をする等の対策を施すことが好ましい。その後正極をメタノールから取り出し、真空乾燥(温度:100〜200℃、圧力:0〜10kPa、時間:5〜20時間の範囲で正極中のメタノールの残存が1質量%以下になる条件とする。メタノールの残存量については、後述する蒸留水洗浄後の水のGC/MSを測定し、予め作成した検量線を基に定量することができる。)し、その時の正極の質量をM0(g)とする。続いて、正極の質量の100倍(100M0(g))の蒸留水に正極を3日間以上十分に浸漬させる。この時、蒸留水が揮発しないよう容器に蓋をする等の対策を施すことが好ましい。3日間以上浸漬させた後、蒸留水から正極を取り出し(前述のイオンクロマトグラフィーを測定する場合は、蒸留水の量が100M0(g)になるように液量を調整する。)、前記のメタノール洗浄と同様に真空乾燥する。この時の正極の質量をM1(g)とし、続いて、得られた正極の集電体の質量を測定するため、スパチュラ、ブラシ、刷毛等を用いて集電体上の正極活物質層を取り除く。得られた正極集電体の質量をM2(g)とすると、正極中に含まれるリチウム化合物の割合Z(質量%)は、次式:
Z=100×[1−(M1−M2)/(M0−M2)]
により算出できる。
Z=100×[1−(M1−M2)/(M0−M2)]
により算出できる。
[リチウム化合物及び正極活物質の平均粒子径]
リチウム化合物の平均粒子径をX1とするとき、0.1μm≦X1≦10μmであり、正極活物質の平均粒子径をY1とするとき、2μm≦Y1≦20μmであり、かつX1<Y1であることが好ましい。より好ましくは、X1は、0.5μm≦X1≦5μmであり、Y1は、3μm≦Y1≦10μmである。X1が0.1μm以上の場合、リチウムプレドープ後の正極中にリチウム化合物を残存させることができるため、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンを吸着することにより高負荷充放電サイクル特性が向上する。他方、X1が10μm以下の場合、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンとの反応面積が増加するため、フッ素イオンの吸着を効率良く行うことができる。Y1が2μm以上の場合、正極活物質間の電子伝導性を確保できる。他方、Y1が20μm以下の場合、電解質イオンとの反応面積が増加するために高い入出力特性を発現できる。X1<Y1であれば、正極活物質間に生じる隙間にリチウム化合物が充填されるため、正極活物質間の電子伝導性を確保しつつ、エネルギー密度を高めることができる。
X1及びY1の測定方法は特に限定されないが、正極断面のSEM画像、及びSEM−EDX画像から算出することができる。正極断面の形成方法については、正極上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB加工を用いることができる。正極に炭酸リチウムを含有させる場合、正極断面のラマンイメージングを測定することで炭酸イオンの分布を求めることもできる。
リチウム化合物の平均粒子径をX1とするとき、0.1μm≦X1≦10μmであり、正極活物質の平均粒子径をY1とするとき、2μm≦Y1≦20μmであり、かつX1<Y1であることが好ましい。より好ましくは、X1は、0.5μm≦X1≦5μmであり、Y1は、3μm≦Y1≦10μmである。X1が0.1μm以上の場合、リチウムプレドープ後の正極中にリチウム化合物を残存させることができるため、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンを吸着することにより高負荷充放電サイクル特性が向上する。他方、X1が10μm以下の場合、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンとの反応面積が増加するため、フッ素イオンの吸着を効率良く行うことができる。Y1が2μm以上の場合、正極活物質間の電子伝導性を確保できる。他方、Y1が20μm以下の場合、電解質イオンとの反応面積が増加するために高い入出力特性を発現できる。X1<Y1であれば、正極活物質間に生じる隙間にリチウム化合物が充填されるため、正極活物質間の電子伝導性を確保しつつ、エネルギー密度を高めることができる。
X1及びY1の測定方法は特に限定されないが、正極断面のSEM画像、及びSEM−EDX画像から算出することができる。正極断面の形成方法については、正極上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB加工を用いることができる。正極に炭酸リチウムを含有させる場合、正極断面のラマンイメージングを測定することで炭酸イオンの分布を求めることもできる。
[リチウム化合物と正極活物質の判別方法]
リチウム化合物及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極断面のSEM−EDX画像による酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像の測定方法については、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む粒子をリチウム化合物とする。
リチウム化合物及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極断面のSEM−EDX画像による酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像の測定方法については、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む粒子をリチウム化合物とする。
[X1及びY1の算出方法]
X1及びY1は、前記正極断面SEMと同視野にて測定した正極断面SEM−EDXから得られた画像を、画像解析することで求めることができる。前記正極断面のSEM画像にて判別されたリチウム化合物の粒子X、及びそれ以外の粒子を正極活物質の粒子Yとし、断面SEM画像中に観察されるX、Yそれぞれの粒子全てについて、断面積Sを求め、次式: d=2×(S/π)1/2
により粒子径dを求める(円周率をπとする。)。
得られた粒子径dを用いて、次式:
X0(Y0)=Σ[4/3×π×(d/2)3×d]/Σ[4/3×π×(d/2)3]
により体積平均粒子径X0及びY0を求める。
正極断面の視野を変えて5ヶ所以上測定し、それぞれのX0及びY0の平均値をもって平均粒子径X1及びY1とする。
X1及びY1は、前記正極断面SEMと同視野にて測定した正極断面SEM−EDXから得られた画像を、画像解析することで求めることができる。前記正極断面のSEM画像にて判別されたリチウム化合物の粒子X、及びそれ以外の粒子を正極活物質の粒子Yとし、断面SEM画像中に観察されるX、Yそれぞれの粒子全てについて、断面積Sを求め、次式: d=2×(S/π)1/2
により粒子径dを求める(円周率をπとする。)。
得られた粒子径dを用いて、次式:
X0(Y0)=Σ[4/3×π×(d/2)3×d]/Σ[4/3×π×(d/2)3]
により体積平均粒子径X0及びY0を求める。
正極断面の視野を変えて5ヶ所以上測定し、それぞれのX0及びY0の平均値をもって平均粒子径X1及びY1とする。
(任意成分)
本実施形態における正極活物質層は、必要に応じて、正極活物質及びリチウム化合物の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
本実施形態における正極活物質層は、必要に応じて、正極活物質及びリチウム化合物の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーとしては、特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等を用いることができる。導電性フィラーの使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下、より好ましくは0質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上15質量部以下である。導電性フィラーの使用量が30質量部以下であれば、正極活物質層における正極活物質の含有割合が多くなり、正極活物質層体積当たりのエネルギー密度を確保することができる。
結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。結着剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下、より好ましくは3質量部以上27質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上25質量部以下である。結着剤の使用量が1質量部以上であれば、十分な電極強度が発現される。 他方、結着剤の使用量が30質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、及びセルロース誘導体等を用いることができる。分散安定剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上10質量部以下である。分散安定剤の使用量が10質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
[正極集電体]
本実施形態における正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、非水系電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こり難い材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子における正極集電体としては、アルミニウム箔が特に好ましい。
本実施形態における正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、非水系電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こり難い材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子における正極集電体としては、アルミニウム箔が特に好ましい。
金属箔は、凹凸又は貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、及びエッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
それらの中でも、本実施形態における正極集電体は、貫通孔を持たない金属箔が好ましい。貫通孔を持たない方が、製造コストが安価であり、薄膜化が容易であるため高エネルギー密度化にも寄与でき、集電抵抗も低くできるため高入出力特性が得られる。
それらの中でも、本実施形態における正極集電体は、貫通孔を持たない金属箔が好ましい。貫通孔を持たない方が、製造コストが安価であり、薄膜化が容易であるため高エネルギー密度化にも寄与でき、集電抵抗も低くできるため高入出力特性が得られる。
正極集電体の厚みは、正極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
[正極前駆体の製造]
本実施形態において、非水系リチウム型蓄電素子の正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を、水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調整し、この塗工液を正極集電体の片面又は両面上に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることができる。得られた正極前駆体にプレスを施して、正極活物質層の膜厚や嵩密度を調整してもよい。或いは、溶剤を使用せずに、正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体に貼り付ける方法も可能である。
本実施形態において、非水系リチウム型蓄電素子の正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を、水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調整し、この塗工液を正極集電体の片面又は両面上に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることができる。得られた正極前駆体にプレスを施して、正極活物質層の膜厚や嵩密度を調整してもよい。或いは、溶剤を使用せずに、正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体に貼り付ける方法も可能である。
正極前駆体の塗工液は、正極活物質を含む各種材料粉末の一部若しくは全部をドライブレンドし、次いで水若しくは有機溶媒、及び/又はそれらに結着剤や分散安定剤が溶解若しくは分散した液状若しくはスラリー状の物質を追加して調製してもよい。水又は有機溶媒に結着剤や分散安定剤が、溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、正極活物質を含む各種材料粉末を追加して塗工液を調製してもよい。ドライブレンドする方法として、例えばボールミル等を使用して正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて導電性フィラーを予備混合して、導電性の低いリチウム化合物に導電材をコーティングさせる予備混合をしてもよい。これにより、後述のリチウムドープ工程において正極前駆体でリチウム化合物が分解し易くなる。塗工液の溶媒に水を使用する場合には、リチウム化合物を加えることで塗工液がアルカリ性になることもあるため、必要に応じてpH調整剤を添加してもよい。
溶解又は分散方法は、特に制限されるものではないが、好適にはホモディスパーや多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることができる。良好な分散状態の塗工液を得るためには、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。周速が1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解又は分散するため好ましい。周速が50m/s以下であれば、分散による熱やせん断力により各種材料が破壊され難く、再凝集が低減されるため好ましい。
塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、より好ましくは粒度が80μm以下、さらに好ましくは粒度が50μm以下である。粒度が0.1μm以上であることは、正極活物質を含む各種材料粉末が塗工液作製時に過度に破砕されていないことを意味する。また、粒度が100μm以下であれば、塗工液吐出時の詰まりや塗膜のスジを発生することが少なく安定に塗工ができる。
正極前駆体の塗工液の粘度(ηb)は、好ましくは1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下、より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。正極前駆体の塗工液の粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。正極前駆体の塗工液の粘度(ηb)が20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく安定に塗工でき、また所望の塗膜厚み以下に制御できる。
正極前駆体の塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。正極前駆体の塗工液のTI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
正極前駆体の塗膜の形成方法は特に制限されるものではないが、好適にはダイコーターやコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることができる。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工して形成してもよい。多層塗工の場合には、塗膜各層内のリチウム化合物の含有量が異なるように、塗工液の組成を調整してもよい。塗工速度は、好ましくは0.1m/分以上100m/分以下、より好ましくは0.5m/分以上70m/分以下、さらに好ましくは1m/分以上50m/分以下である。塗工速度が0.1m/分以上であれば、安定に塗工することができ、100m/分以下であれば、塗工精度を十分に確保できる。
正極前駆体の塗膜の乾燥方法は特に制限されるものではないが、好適には熱風乾燥や赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的に温度を変えて乾燥させてもよい。また、複数の乾燥方法を組み合わせて乾燥させてもよい。乾燥温度は、好ましくは25℃以上200℃以下、より好ましくは40℃以上180℃以下、さらに好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることができる。乾燥温度が200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れやマイグレーションによる結着剤の偏在、正極集電体や正極活物質層の酸化を抑制できる。
正極前駆体のプレス方法は特に制限されるものではないが、好適には油圧プレス機、真空プレス機等のプレス機を用いることができる。正極活物質層の膜厚、嵩密度及び電極強度は、後述するプレス圧力、隙間、プレス部の表面温度により調整できる。
プレス圧力は、好ましくは0.5kN/cm以上20kN/cm以下、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。プレス圧力が20kN/cm以下であれば、正極前駆体に撓みやシワが生じ難く、正極活物質層の所望の膜厚や嵩密度に調整し易い。
プレスロール同士の隙間は、正極活物質層の所望の膜厚や嵩密度となるように乾燥後の正極前駆体膜厚に応じて任意の値を設定できる。
プレス速度は、正極前駆体の撓みやシワを低減するよう任意の速度に設定できる。プレス部の表面温度は、室温でもよいし、必要により加熱してもよい。
加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、好ましくは使用する結着剤の融点マイナス60℃以上、より好ましくは結着剤の融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは結着剤の融点マイナス30℃以上である。加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、好ましくは使用する結着剤の融点プラス50℃以下、より好ましくは結着剤の融点プラス30℃以下、さらに好ましくは結着剤の融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、好ましくは90℃以上200℃以下、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下にプレス部の表面を加熱する。結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下にプレス部の表面を加温する。
プレス圧力は、好ましくは0.5kN/cm以上20kN/cm以下、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。プレス圧力が20kN/cm以下であれば、正極前駆体に撓みやシワが生じ難く、正極活物質層の所望の膜厚や嵩密度に調整し易い。
プレスロール同士の隙間は、正極活物質層の所望の膜厚や嵩密度となるように乾燥後の正極前駆体膜厚に応じて任意の値を設定できる。
プレス速度は、正極前駆体の撓みやシワを低減するよう任意の速度に設定できる。プレス部の表面温度は、室温でもよいし、必要により加熱してもよい。
加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、好ましくは使用する結着剤の融点マイナス60℃以上、より好ましくは結着剤の融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは結着剤の融点マイナス30℃以上である。加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、好ましくは使用する結着剤の融点プラス50℃以下、より好ましくは結着剤の融点プラス30℃以下、さらに好ましくは結着剤の融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、好ましくは90℃以上200℃以下、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下にプレス部の表面を加熱する。結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下にプレス部の表面を加温する。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
正極活物質層の膜厚は、正極集電体の片面当たり20μm以上200μm以下であることが好ましく、より好ましくは片面当たり25μm以上100μm以下であり、更に好ましくは30μm以上80μm以下である。正極活物質層の膜厚が20μm以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。正極活物質層の膜厚が200μm以下であれば、電極内のイオン拡散抵抗を低く維持することができる。そのため、正極集電体層の膜厚が20μm以上200μm以下であれば、十分な出力特性が得られるとともに、非水系リチウム型蓄電素子の体積を縮小することができるため、エネルギー密度を高めることができる。なお、正極集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における正極活物質層の膜厚とは、正極集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分における片面当たりの正極活物質層の膜厚の平均値をいう。
[正極]
後述のリチウムドープ工程後の正極における正極活物質層の嵩密度は、好ましくは0.50g/cm3以上、より好ましくは0.55g/cm3以上1.3g/cm3以下の範囲である。正極活物質層の嵩密度が0.50g/cm3以上であれば、高いエネルギー密度を発現でき、非水系リチウム型蓄電素子の小型化を達成できる。他方、正極活物質層の嵩密度が1.3g/cm3以下であれば、正極活物質層内の空孔における非水系電解液の拡散が十分となり、高い出力特性が得られる。
後述のリチウムドープ工程後の正極における正極活物質層の嵩密度は、好ましくは0.50g/cm3以上、より好ましくは0.55g/cm3以上1.3g/cm3以下の範囲である。正極活物質層の嵩密度が0.50g/cm3以上であれば、高いエネルギー密度を発現でき、非水系リチウム型蓄電素子の小型化を達成できる。他方、正極活物質層の嵩密度が1.3g/cm3以下であれば、正極活物質層内の空孔における非水系電解液の拡散が十分となり、高い出力特性が得られる。
<負極>
本実施形態における負極は、負極集電体と、その片面又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有する。
本実施形態における負極は、負極集電体と、その片面又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有する。
[負極活物質層]
負極活物質層は、負極活物質を含み、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
負極活物質層は、負極活物質を含み、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
(負極活物質)
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な物質を用いることができる。負極活物質としては、具体的には、炭素材料、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫、及び錫化合物等が挙げられる。炭素材料の含有率は、負極活物質の合計質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。炭素材料の含有率は100質量%であってもよいが、しかしながら、他の材料との併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な物質を用いることができる。負極活物質としては、具体的には、炭素材料、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫、及び錫化合物等が挙げられる。炭素材料の含有率は、負極活物質の合計質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。炭素材料の含有率は100質量%であってもよいが、しかしながら、他の材料との併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。
負極活物質には、リチウムイオンをドープすることが好ましい。本実施形態において、負極活物質にドープされたリチウムイオンとしては、主に3つの形態が包含される。
第一の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子を作製する前に、負極活物質に設計値として予め吸蔵させるリチウムイオンである。
第二の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子を作製し、出荷する際の負極活物質に吸蔵されているリチウムイオンである。
第三の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子をデバイスとして使用した後の負極活物質に吸蔵されているリチウムイオンである。
負極活物質にリチウムイオンをドープしておくことにより、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及び作動電圧を良好に制御することが可能となる。
第一の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子を作製する前に、負極活物質に設計値として予め吸蔵させるリチウムイオンである。
第二の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子を作製し、出荷する際の負極活物質に吸蔵されているリチウムイオンである。
第三の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子をデバイスとして使用した後の負極活物質に吸蔵されているリチウムイオンである。
負極活物質にリチウムイオンをドープしておくことにより、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及び作動電圧を良好に制御することが可能となる。
炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素材料(ハードカーボン);易黒鉛化性炭素材料(ソフトカーボン);カーボンブラック;カーボンナノ粒子;活性炭;黒鉛系炭素材料;ポリアセン系物質等のアモルファス炭素質材料;石油系のピッチ、石炭系のピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等の炭素質材料前駆体を熱処理して得られる炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂又はノボラック樹脂の熱分解物;フラーレン;カーボンナノフォーン;及びこれらの複合炭素材料を挙げることができる。
黒鉛系炭素材料としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、低結晶黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン小球体、黒鉛ウイスカ、高比表面積黒鉛などの黒鉛質材料、及びこれらの黒鉛質材料に後述する非晶質部の形成方法を施した炭素材料等を用いることができる。
黒鉛系炭素材料の非晶質部の形成方法は、特に制限されるものではないが、黒鉛質材料と、後述する炭素質材料とを複合化させる方法;前記黒鉛質材料にレーザー、プラズマ、コロナ処理等の物理的表面改質を施す方法;前記黒鉛質材料を酸又はアルカリ溶液に浸して加熱することにより黒鉛質材料に化学的表面改質を施す方法;ニードルコークス等の黒鉛系炭素材料の原料を黒鉛化する際の焼成パターン(例えば、2,000℃〜3,000℃の範囲に急激に昇温し、その後100℃以下になるまで急激に降温する等)により黒鉛質と非晶質をランダム(ガラス状)に形成させる方法等が挙げられる。非晶質部は黒鉛系炭素材料の表面に形成されてもよいし、黒鉛系炭素材料の内部に形成されてもよいが、上述した理由により黒鉛系炭素材料の表面に形成されることが好ましい。
これらの中でも負極の抵抗を下げる観点から、上記炭素材料1種以上(以下、「基材」ともいう。)と炭素質材料前駆体とを共存させた状態で熱処理を行い、基材と炭素質材料前駆体由来の炭素質材料とを複合させた複合炭素材料が好ましい。炭素質材料前駆体としては、熱処理により炭素質材料となるものであれば特に制限はないが、石油系のピッチ又は石炭系のピッチが特に好ましい。熱処理を行う前に、炭素質材料前駆体の融点より高い温度において、基材と炭素質材料前駆体とを混合してもよい。熱処理温度は、使用する炭素質材料前駆体が揮発又は熱分解して発生する成分が炭素質材料となる温度であればよいが、好ましくは400℃以上2,500℃以下、より好ましくは500℃以上2,000℃以下、さらに好ましくは550℃以上1,500℃以下である。熱処理を行う雰囲気は特に制限はないが、非酸化性雰囲気が好ましい。
複合炭素材料の好ましい例は、後述の複合炭素材料1及び2である。これらの内どちらか一方を使用してもよく、又はこれらの両方を併用してもよい。
(複合炭素材料1)
本願明細書において、複合炭素材料1とは、BET比表面積が100m2/g以上3,000m2/g以下の炭素材料1種以上を基材として用いた、複合炭素材料である。複合炭素材料1の基材はBET比表面積が100m2/g以上3,000m2/g以下であれば特に制限されるものではないが、活性炭、カーボンブラック、鋳型多孔質炭素、高比表面積黒鉛、カーボンナノ粒子等を好適に用いることができる。
本願明細書において、複合炭素材料1とは、BET比表面積が100m2/g以上3,000m2/g以下の炭素材料1種以上を基材として用いた、複合炭素材料である。複合炭素材料1の基材はBET比表面積が100m2/g以上3,000m2/g以下であれば特に制限されるものではないが、活性炭、カーボンブラック、鋳型多孔質炭素、高比表面積黒鉛、カーボンナノ粒子等を好適に用いることができる。
複合炭素材料1のBET比表面積は、好ましくは100m2/g以上1,500m2/g以下、より好ましくは150m2/g以上1,100m2/g以下、さらに好ましくは180m2/g以上550m2/g以下である。複合炭素材料1のBET比表面積が100m2/g以上であれば、細孔を適度に保持することができ非水系電解液中のリチウムイオンの拡散が良好となるため、高い入出力特性を示すことができ、かつ非水系電解液中のリチウムイオンとの反応サイトを十分に多くできるため、高い入出力特性を示すことができる。複合炭素材料1のBET比表面積が1,500m2/g以下であることにより、リチウムイオンの充放電効率が向上し、また、非水系電解液の過剰な還元分解を抑制できるため、高負荷充放電サイクル特性が損なわれることが少なくなる。
複合炭素材料1における、基材に対する炭素質材料の質量比率は、好ましくは10質量%以上200質量%以下、より好ましくは12質量%以上180質量%以下、更に好ましくは15質量%以上160質量%以下、より更に好ましくは18質量%以上150質量%以下である。炭素質材料の質量比率が10質量%以上であれば、基材が有するマイクロ孔を炭素質材料で適度に埋めることができ、リチウムイオンの充放電効率が向上するため、良好な高負荷充放電サイクル特性を示すことができる。基材に対する炭素質材料の質量比率が200質量%以下であれば、細孔を適度に保持することができリチウムイオンの拡散が良好となるため、高い入出力特性を示すことができる。
複合炭素材料1の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量は、好ましくは530mAh/g以上2,500mAh/g以下、より好ましくは620mAh/g以上2,100mAh/g以下、さらに好ましくは760mAh/g以上1,700mAh/g以下、より更に好ましくは840mAh/g以上1,500mAh/g以下である。
リチウムイオンを負極にドープすることにより、負極電位が低くなる。従って、リチウムイオンがドープされた複合炭素材料1を含む負極を正極と組み合わせた場合には、非水系リチウム型蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。そのため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及びエネルギー密度が高くなる。
複合炭素材料1の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が530mAh/g以上であれば、複合炭素材料1におけるリチウムイオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもリチウムイオンが良好にドープされ、更に所望のリチウム量に対する複合炭素材料1の量を低減することができる。そのため、負極膜厚を薄くすることが可能となり、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。
複合炭素材料1の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が2,500mAh/g以下であれば、リチウム金属の析出等の副作用が発生し難くなる。
以下、複合炭素材料1の好ましい例として、基材として活性炭を用いた複合炭素材料1aについて説明していく。
複合炭素材料1aは、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とするとき、0.010≦Vm1≦0.300、0.001≦Vm2≦0.650であることが好ましい。
メソ孔量Vm1は、より好ましくは0.010≦Vm1≦0.225、さらに好ましくは0.010≦Vm1≦0.200である。マイクロ孔量Vm2は、より好ましくは0.001≦Vm2≦0.200、更に好ましくは0.001≦Vm2≦0.150、特に好ましくは0.001≦Vm2≦0.100である。
メソ孔量Vm1が0.300cc/g以下であれば、BET比表面積を大きくすることができ、リチウムイオンのドープ量を高めることができることに加え、負極の嵩密度を高めることができる。その結果、負極を薄膜化することができる。マイクロ孔量Vm2が0.650cc/g以下であれば、リチウムイオンに対する高い充放電効率を維持できる。他方、メソ孔量Vm1及びマイクロ孔量Vm2が、0.010≦Vm1、かつ0.001≦Vm2であれば、高い入出力特性が得られる。
複合炭素材料1aのBET比表面積は、好ましくは100m2/g以上1,500m2/g以下、より好ましくは150m2/g以上1,100m2/g以下、さらに好ましくは180m2/g以上550m2/g以下である。複合炭素材料1aのBET比表面積が100m2/g以上であれば、細孔を適度に保持することができ非水系電解液中のリチウムイオンの拡散が良好となるため、高い入出力特性を示すことができ、かつ非水系電解液中のリチウムイオンとの反応サイトを十分に多くできるため、高い入出力特性を示すことができる。複合炭素材料1aのBET比表面積が1,500m2/g以下であることにより、リチウムイオンの充放電効率が向上し、また、非水系電解液の過剰な還元分解を抑制できるため、高負荷充放電サイクル特性が損なわれることが少なくなる。
複合炭素材料1aの平均細孔径は、高い入出力特性にする点から、20Å以上であることが好ましく、25Å以上であることがより好ましく、30Å以上であることがさらに好ましい。高エネルギー密度にする点から、複合炭素材料1aの平均細孔径は、65Å以下であることが好ましく、60Å以下であることがより好ましい。
複合炭素材料1aの平均粒子径は、好ましくは1μm以上10μm以下であり、下限値は、より好ましくは2μm以上であり、更に好ましくは2.5μm以上であり、上限値は、より好ましくは6μm以下であり、更に好ましくは4μm以下である。複合炭素材料1aの平均粒子径が1μm以上10μm以下であれば、良好な耐久性が保たれる。
複合炭素材料1aの水素原子/炭素原子の原子数比(H/C)は、0.05以上0.35以下であることが好ましく、0.05以上0.15以下であることがより好ましい。複合炭素材料1aのH/Cが0.35以下である場合には、活性炭表面に被着している炭素質材料の構造、典型的には、多環芳香族系共役構造が良好に発達して、容量(エネルギー密度)及び充放電効率が高くなる。複合炭素材料1aのH/Cが0.05以上である場合には、炭素化が過度に進行することはないため良好なエネルギー密度が得られる。なお、H/Cは元素分析装置により測定される。
複合炭素材料1aは、基材の活性炭に由来するアモルファス構造を有するが、同時に、主に被着した炭素質材料に由来する結晶構造を有する。X線広角回折法によると、複合炭素材料1aは、(002)面の面間隔d002が3.60Å以上4.00Å以下であり、かつ、このピークの半価幅から得られるc軸方向の結晶子サイズLcが8.0Å以上20.0Å以下であるものが好ましく;d002が3.60Å以上3.75Å以下であり、かつ、このピークの半価幅から得られるc軸方向の結晶子サイズLcが11.0Å以上16.0Å以下であるものがより好ましい。
複合炭素材料1aの基材として用いる活性炭としては、得られる複合炭素材料1aが所望の特性を発揮する限り、特に制限はない。複合炭素材料1aの活性炭としては、例えば石油系、石炭系、植物系、高分子系等の各種の原材料から得られた市販品を使用することができる。特に、平均粒子径が1μm以上15μm以下の活性炭粉末を用いることが好ましい。活性炭粉末の平均粒子径は、より好ましくは2μm以上10μm以下である。
本実施形態において特定の細孔分布範囲を有する複合炭素材料1aを得るためには、基材に用いる活性炭の細孔分布が重要である。
複合炭素材料1aの基材として用いる活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)としたとき、0.050≦V1≦0.500、0.005≦V2≦1.000、かつ0.2≦V1/V2≦20.0であることが好ましい。
メソ孔量V1は、好ましくは0.050≦V1≦0.350、より好ましくは0.100≦V1≦0.300である。マイクロ孔量V2は、好ましくは0.005≦V2≦0.850、より好ましくは0.100≦V2≦0.800である。メソ孔量/マイクロ孔量の比率は、好ましくは0.22≦V1/V2≦15.0、より好ましくは0.25≦V1/V2≦10.0である。活性炭のメソ孔量V1が0.500以下である場合、及びマイクロ孔量V2が1.000以下である場合、本実施形態における複合炭素材料1aの細孔構造を得るためには、適量の炭素質材料を被着させればよいので、細孔構造を制御し易くなる。活性炭のメソ孔量V1が0.050以上である場合、及びマイクロ孔量V2が0.005以上である場合、V1/V2が0.2以上である場合、及びV1/V2が20.0以下である場合にも、所望の細孔構造が容易に得られる。
複合炭素材料1aの原料として用いる炭素質材料前駆体とは、熱処理することにより、活性炭に炭素質材料を被着させることができる、固体、液体、又は溶剤に溶解可能な有機材料である。炭素質材料前駆体としては、例えば、ピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、及び合成樹脂、例えばフェノール樹脂等を挙げることができる。これらの炭素質材料前駆体の中でも、安価であるピッチを用いることが、製造コスト上好ましい。ピッチは、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。石油系ピッチとしては、例えば原油の蒸留残査、流動性接触分解残査(デカントオイル等)、サーマルクラッカーに由来するボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタール等が例示される。
ピッチを用いる場合、ピッチを活性炭との共存下で熱処理し、活性炭の表面においてピッチの揮発成分又は熱分解成分を熱反応させて、活性炭に炭素質材料を被着させることにより、複合炭素材料1aが得られる。この場合、200〜500℃程度の温度において、ピッチの揮発成分又は熱分解成分の活性炭細孔内への被着が進行し、約400℃以上で被着成分が炭素質材料となる反応が進行する。熱処理時のピーク温度(最高到達温度)は、得られる複合炭素材料1aの特性、熱反応パターン、熱反応雰囲気等により適宜決定され、400℃以上であることが好ましく、より好ましくは450℃〜1,000℃であり、さらに好ましくは500〜800℃程度である。また、熱処理時のピーク温度を維持する時間は、30分間〜10時間であることが好ましく、より好ましくは1時間〜7時間、更に好ましくは2時間〜5時間である。例えば、500〜800℃程度のピーク温度で2時間〜5時間に亘って熱処理する場合、活性炭表面に被着している炭素質材料は多環芳香族系炭化水素になるものと考えられる。
ピッチの軟化点は、30℃以上250℃以下が好ましく、60℃以上130℃以下が更に好ましい。軟化点が30℃以上であるピッチはハンドリング性に支障がなく、精度よく仕込むことが可能である。軟化点が250℃以下であるピッチは比較的低分子の化合物を多く含有し、従って軟化点が250℃以下であるピッチを用いると、活性炭内の細かい細孔まで被着することが可能となる。
複合炭素材料1aを製造するための具体的方法としては、例えば、炭素質材料前駆体から揮発した炭化水素ガスを含む不活性雰囲気中で活性炭を熱処理し、気相で炭素質材料を被着させる方法が挙げられる。また、活性炭と炭素質材料前駆体とを予め混合して熱処理する方法、又は溶媒に溶解させた炭素質材料前駆体を活性炭に塗布して乾燥させた後に熱処理する方法も可能である。
複合炭素材料1aにおける、活性炭に対する炭素質材料の質量比率は、好ましくは10質量%以上100質量%以下、より好ましくは15質量%以上80質量%以下である。炭素質材料の質量比率が10質量%以上であれば、活性炭が有するマイクロ孔を炭素質材料で適度に埋めることができ、リチウムイオンの充放電効率が向上するので、高負荷充放電サイクル特性が損なわれることが少ない。炭素質材料の質量比率が100質量%以下であれば、複合炭素材料1aの細孔が適度に保持されて比表面積が大きいまま維持される。そのため、リチウムイオンのドープ量を高めることができ、負極を薄膜化しても高出力密度かつ高耐久性を維持することができる。
(複合炭素材料2)
本願明細書において、複合炭素材料2とは、BET比表面積が0.5m2/g以上80m2/g以下の炭素材料1種以上を基材として用いた、複合炭素材料である。複合炭素材料2の基材は、BET比表面積が0.5m2/g以上80m2/g以下であれば特に制限されるものではないが、黒鉛質材料、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック等を好適に用いることができる。
本願明細書において、複合炭素材料2とは、BET比表面積が0.5m2/g以上80m2/g以下の炭素材料1種以上を基材として用いた、複合炭素材料である。複合炭素材料2の基材は、BET比表面積が0.5m2/g以上80m2/g以下であれば特に制限されるものではないが、黒鉛質材料、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック等を好適に用いることができる。
複合炭素材料2のBET比表面積は、好ましくは1m2/g以上50m2/g以下、より好ましくは1.5m2/g以上40m2/g以下、さらに好ましくは2m2/g以上25m2/g以下である。複合炭素材料2のBET比表面積が1m2/g以上であれば、非水系電解液中のリチウムイオンとの反応サイトを十分に多く確保できるため、高い入出力特性を示すことができる。複合炭素材料2のBET比表面積が50m2/g以下であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上し、かつ充放電中の非水系電解液の分解反応が抑制されるため、高い高負荷充放電サイクル特性を示すことができる。
複合炭素材料2の平均粒子径は、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上8μm以下、さらに好ましくは3μm以上6μm以下である。複合炭素材料2の平均粒子径が1μm以上であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上できるため、高い高負荷充放電サイクル特性を示すことができる。複合炭素材料2の平均粒子径が10μm以下であれば、複合炭素材料2と非水系電解液中のリチウムイオンとの反応サイトが増加するため、高い入出力特性を示すことができる。
複合炭素材料2における、基材に対する炭素質材料の質量比率は、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは1.2質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上20質量%以下である。炭素質材料の質量比率が1質量%以上であれば、炭素質材料により非水系電解液中のリチウムイオンとの反応サイトを十分に増加でき、かつリチウムイオンの脱溶媒和も容易となるため、高い入出力特性を示すことができる。炭素質材料の質量比率が20質量%以下であれば、炭素質材料と基材との間のリチウムイオンの固体内拡散を良好に保持できるため、高い入出力特性を示すことができる。また、リチウムイオンの充放電効率が向上できるため、高い高負荷充放電サイクル特性を示すことができる。
複合炭素材料2の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量は、好ましくは50mAh/g以上700mAh/g以下、より好ましくは70mAh/g以上650mAh/g以下、さらに好ましくは90mAh/g以上600mAh/g以下、特に好ましくは100mAh/g以上550mAh/g以下である。
リチウムイオンを負極にドープすることにより、負極電位が低くなる。従って、リチウムイオンがドープされた複合炭素材料2を含む負極を正極と組み合わせた場合には、非水系リチウム型蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。そのため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及びエネルギー密度が高くなる。
複合炭素材料2の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が50mAh/g以上であれば、複合炭素材料2におけるリチウムイオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもリチウムイオンが良好にドープされるため、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。
複合炭素材料2の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が700mAh/g以下であれば、リチウム金属の析出等の副作用が発生し難くなる。
以下、複合炭素材料2の好ましい例として、基材として黒鉛質材料を用いた複合炭素材料2aについて説明していく。
複合炭素材料2aのBET比表面積は、好ましくは1m2/g以上50m2/g以下、より好ましくは1m2/g以上20m2/g以下、更に好ましくは1m2/g以上15m2/g以下である。複合炭素材料2aのBET比表面積が1m2/g以上であれば、非水系電解液中のリチウムイオンとの反応サイトを十分に多く確保できるため、高い入出力特性を示すことができる。複合炭素材料2aのBET比表面積が50m2/g以下であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上し、かつ充放電中の非水系電解液の分解反応が抑制されるため、高い高負荷充放電サイクル特性を示すことができる。
複合炭素材料2aの平均細孔径は、好ましくは1.5nm以上25nm以下、より好ましくは2nm以上22nm以下、さらに好ましくは3nm以上20nm以下、特に好ましくは3.5nm以上18nm以下である。複合炭素材料2aの平均細孔径が1.5nm以上であれば、非水系電解液中の溶媒和したリチウムイオンのサイズ(約0.9nm〜1.2nm)よりも大きい細孔が多いため、複合炭素材料2a内における溶媒和したリチウムイオンの拡散が良好となり、これを用いた非水系リチウム型蓄電素子は高い入出力特性を示すことができる。他方、複合炭素材料の平均細孔径が25nm以下であれば、これを用いた負極活物質層の嵩密度を十分に向上できるため、高いエネルギー密度を示すことができる。
複合炭素材料2aの平均粒子径は、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上8μm以下、さらに好ましくは3μm以上6μm以下である。複合炭素材料2aの平均粒子径が1μm以上であれば、リチウムイオンの充放電効率を向上できるため、高い高負荷充放電サイクル特性を示すことができる。複合炭素材料2aの平均粒子径が10μm以下であれば、非水系電解液中のリチウムイオンとの反応サイトが増加するため、高い入出力特性を示すことができる。
複合炭素材料2aにおける、黒鉛質材料に対する炭素質材料の質量比率は、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは1.2質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上10質量%以下、特に好ましくは2質量%以上5質量%以下である。炭素質材料の質量比率が1質量%以上であれば、炭素質材料により非水系電解液中のリチウムイオンとの反応サイトを十分に増加でき、かつリチウムイオンの脱溶媒和も容易となるため、高い入出力特性を示すことができる。炭素質材料の質量比率が20質量%以下であれば、炭素質材料と黒鉛質材料との間のリチウムイオンの固体内拡散を良好に保持できるため、高い入出力特性を示すことができる。また、リチウムイオンの充放電効率が向上できるため、高い高負荷充放電サイクル特性を示すことができる。
複合炭素材料2aの単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量は、好ましくは50mAh/g以上700mAh/g以下、より好ましくは70mAh/g以上650mAh/g以下、さらに好ましくは90mAh/g以上600mAh/g以下、より更に好ましくは100mAh/g以上550mAh/g以下である。
リチウムイオンを負極にドープすることにより、負極電位が低くなる。従って、リチウムイオンがドープされた複合炭素材料2aを含む負極を正極と組み合わせた場合には、非水系リチウム型蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。そのため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及びエネルギー密度が高くなる。
複合炭素材料2aの単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が50mAh/g以上であれば、複合炭素材料2aにおけるリチウムイオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもリチウムイオンが良好にドープされるため、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。
複合炭素材料2aの単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が700mAh/g以下であれば、リチウム金属の析出等の副作用が発生し難くなる。
リチウムイオンを負極にドープすることにより、負極電位が低くなる。従って、リチウムイオンがドープされた複合炭素材料2aを含む負極を正極と組み合わせた場合には、非水系リチウム型蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。そのため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及びエネルギー密度が高くなる。
複合炭素材料2aの単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が50mAh/g以上であれば、複合炭素材料2aにおけるリチウムイオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもリチウムイオンが良好にドープされるため、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。
複合炭素材料2aの単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が700mAh/g以下であれば、リチウム金属の析出等の副作用が発生し難くなる。
複合炭素材料2aに用いる黒鉛質材料のBET比表面積は、好ましくは0.5m2/g以上80m2/g以下、より好ましくは1m2/g以上70m2/g以下、さらに好ましくは1.5m2/g以上60m2/g以下である。複合炭素材料2aに用いる黒鉛質材料のBET比表面積が上記範囲であれば、複合炭素材料2aのBET比表面積を上述する範囲に調整できる。
複合炭素材料2aに用いる黒鉛質材料の平均粒子径は、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上8μm以下である。複合炭素材料2aに用いる黒鉛質材料の平均粒子径が1μm以上10μm以下の範囲内であれば、複合炭素材料2aの平均粒子径を上述する範囲に調整できる。
複合炭素材料2aの原料として用いる炭素質材料前駆体とは、熱処理することにより、黒鉛質材料に炭素質材料を複合させることができる、固体、液体、又は溶剤に溶解可能な有機材料である。この炭素質材料前駆体としては、例えば、ピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、及び合成樹脂、例えばフェノール樹脂等を挙げることができる。これらの炭素質材料前駆体の中でも、安価であるピッチを用いることが、製造コスト上好ましい。ピッチは、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。石油系ピッチとしては、例えば原油の蒸留残査、流動性接触分解残査(デカントオイル等)、サーマルクラッカーに由来するボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタール等が例示される。
(任意成分)
本実施形態における負極活物質層は、負極活物質の他に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
本実施形態における負極活物質層は、負極活物質の他に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーの種類は特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維等が例示される。導電性フィラーの使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下、より好ましくは0質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは0質量部以上15質量部以下である。
結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。結着剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下、より好ましくは2質量部以上27質量部以下、さらに好ましくは3質量部以上25質量部以下である。結着剤の使用量が1質量部以上であれば、十分な電極強度が発現される。結着剤の使用量が30質量部以下であれば、負極活物質へのリチウムイオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。分散安定剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上10質量部以下である。分散安定剤の使用量が10質量部以下であれば、負極活物質へのリチウムイオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
[負極集電体]
本実施形態における負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、非水系電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こり難い金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子における負極集電体としては、銅箔が好ましい。
本実施形態における負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、非水系電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こり難い金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子における負極集電体としては、銅箔が好ましい。
金属箔は、凹凸又は貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
それらの中でも、本実施形態における負極集電体は、貫通孔を持たない金属箔が好ましい。貫通孔を持たない方が、製造コストが安価であり、薄膜化が容易であるため高エネルギー密度化にも寄与でき、集電抵抗も低くできるため高入出力特性が得られる。
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば1〜100μmが好ましい。なお、負極集電体が貫通孔又は凹凸を有するときには、貫通孔又は凹凸が存在しない部分に基づいて負極集電体の厚みを測定するものとする。
それらの中でも、本実施形態における負極集電体は、貫通孔を持たない金属箔が好ましい。貫通孔を持たない方が、製造コストが安価であり、薄膜化が容易であるため高エネルギー密度化にも寄与でき、集電抵抗も低くできるため高入出力特性が得られる。
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば1〜100μmが好ましい。なお、負極集電体が貫通孔又は凹凸を有するときには、貫通孔又は凹凸が存在しない部分に基づいて負極集電体の厚みを測定するものとする。
[負極の製造]
負極は、負極集電体の片面又は両面上に負極活物質層を有する。典型的には、負極活物質層は負極集電体の片面又は両面上に固着している。
負極は、負極集電体の片面又は両面上に負極活物質層を有する。典型的には、負極活物質層は負極集電体の片面又は両面上に固着している。
負極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、負極活物質を含む各種材料を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調整し、この塗工液を負極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより負極を得ることができる。得られた負極にプレスを施して、負極活物質層の膜厚や嵩密度を調整してもよい。或いは、溶剤を使用せずに、負極活物質を含む各種材料を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて負極集電体に貼り付ける方法も可能である。
塗工液は、負極活物質を含む各種材料粉末の一部若しくは全部をドライブレンドし、次いで水若しくは有機溶媒、及び/又はそれらに結着剤や分散安定剤が溶解若しくは分散した液状若しくはスラリー状の物質を追加して調製してもよい。また、水又は有機溶媒に結着剤や分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、負極活物質を含む各種材料粉末を追加して塗工液を調製してもよい。
溶解又は分散方法は特に制限されるものではないが、好適にはホモディスパーや多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることができる。良好な分散状態の塗工液を得るためには、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。周速が1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解又は分散するため好ましい。周速が50m/s以下であれば、分散による熱やせん断力により各種材料が破壊され難く、再凝集が低減されるため好ましい。
負極の塗工液の粘度(ηb)は、好ましくは1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下、より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。負極の塗工液の粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。負極の塗工液の粘度(ηb)が20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく安定に塗工でき、また所望の塗膜厚み以下に制御できる。
負極の塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。負極の塗工液のTI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
負極の塗膜の形成方法は特に制限されるものではないが、好適にはダイコーターやコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることができる。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工して形成してもよい。塗工速度は、好ましくは0.1m/分以上100m/分以下、より好ましくは0.5m/分以上70m/分以下、さらに好ましくは1m/分以上50m/分以下である。塗工速度が0.1m/分以上であれば、安定に塗工することができ、100m/分以下であれば、塗工精度を十分に確保できる。
負極の塗膜の乾燥方法は特に制限されるものではないが、好適には熱風乾燥や赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的に温度を変えて乾燥させてもよい。また、複数の乾燥方法を組み合わせて乾燥させてもよい。乾燥温度は、好ましくは25℃以上200℃以下、より好ましくは40℃以上180℃以下、さらに好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることができる。乾燥温度が200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れやマイグレーションによる結着剤の偏在、負極集電体や負極活物質層の酸化を抑制できる。
負極のプレス方法は特に制限されるものではないが、好適には油圧プレス機、真空プレス機等のプレス機を用いることができる。負極活物質層の膜厚、嵩密度及び電極強度は後述するプレス圧力、隙間、プレス部の表面温度により調整できる。
プレス圧力は、好ましくは0.5kN/cm以上20kN/cm以下、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。プレス圧力が20kN/cm以下であれば、負極に撓みやシワが生じ難く、負極活物質層の所望の膜厚や嵩密度に調整し易い。
プレスロール同士の隙間は、負極活物質層の所望の膜厚や嵩密度となるように乾燥後の負極膜厚に応じて任意の値を設定できる。
プレス速度は、負極の撓みやシワを低減するよう任意の速度に設定できる。プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要により加熱してもよい。
加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、好ましくは使用する結着剤の融点マイナス60℃以上、より好ましくは結着剤の融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは結着剤の融点マイナス30℃以上である。加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、好ましくは使用する結着剤の融点プラス50℃以下、より好ましくは結着剤の融点プラス30℃以下、さらに好ましくは結着剤の融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、好ましくは90℃以上200℃以下、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下にプレス部の表面を加熱する。結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下にプレス部の表面を加温する。
プレス圧力は、好ましくは0.5kN/cm以上20kN/cm以下、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。プレス圧力が20kN/cm以下であれば、負極に撓みやシワが生じ難く、負極活物質層の所望の膜厚や嵩密度に調整し易い。
プレスロール同士の隙間は、負極活物質層の所望の膜厚や嵩密度となるように乾燥後の負極膜厚に応じて任意の値を設定できる。
プレス速度は、負極の撓みやシワを低減するよう任意の速度に設定できる。プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要により加熱してもよい。
加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、好ましくは使用する結着剤の融点マイナス60℃以上、より好ましくは結着剤の融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは結着剤の融点マイナス30℃以上である。加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、好ましくは使用する結着剤の融点プラス50℃以下、より好ましくは結着剤の融点プラス30℃以下、さらに好ましくは結着剤の融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、好ましくは90℃以上200℃以下、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下にプレス部の表面を加熱する。結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下にプレス部の表面を加温する。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
負極活物質層の膜厚は、負極集電体の片面当たり5μm以上100μm以下が好ましい。負極活物質層の膜厚の下限は、より好ましくは7μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。負極活物質層の膜厚の上限は、より好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは60μm以下である。負極活物質層の膜厚が5μm以上であれば、負極活物質層を塗工した際にスジ等が発生し難く、塗工性に優れる。負極活物質層の膜厚が100μm以下であれば、非水系リチウム型蓄電素子の体積を縮小することによって高いエネルギー密度を発現できる。なお、負極集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における負極活物質層の膜厚とは、負極集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分における片面当たりの負極活物質層の膜厚の平均値をいう。
負極活物質層の嵩密度は、好ましくは0.30g/cm3以上1.8g/cm3以下、より好ましくは0.40g/cm3以上1.5g/cm3以下、さらに好ましくは0.45g/cm3以上1.3g/cm3以下である。負極活物質層の嵩密度が0.30g/cm3以上であれば、十分な強度を保つことができるとともに、負極活物質間の十分な導電性を発現することができる。負極活物質層の嵩密度が1.8g/cm3以下であれば、負極活物質層内でイオンが十分に拡散できる空孔が確保できる。
本実施形態におけるBET比表面積、メソ孔量、及びマイクロ孔量は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。試料を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行う。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法又はBET1点法により、平均細孔径は質量当たりの全細孔容積をBET比表面積で除すことにより、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。
BJH法とは、メソ孔の解析に一般的に用いられる計算方法で、Barrett,Joyner,Halendaらにより提唱されたものである(E.P.Barrett,L.G.Joyner and P.Halenda,J.Am.Chem.Soc.,73,373(1951))。
MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、R.S.Mikhail,Brunauer,Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45(1968))。
本実施形態における平均粒子径とは、粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定した際、全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径(すなわち、50%径(Median径))を指す。この平均粒子径は市販のレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
本実施形態における出荷時及び使用後の非水系リチウム型蓄電素子における負極活物質のリチウムイオンのドープ量(mAh/g)は、例えば、以下のようにして知ることができる。
先ず、本実施形態における負極活物質層をエチルメチルカーボネート又はジメチルカーボネートで洗浄し風乾した後、メタノール及びイソプロパノールから成る混合溶媒により抽出した抽出液と、抽出後の負極活物質層とを得る。この抽出は、典型的にはArボックス内にて、環境温度23℃で行われる。
上記のようにして得られた抽出液と、抽出後の負極活物質層とに含まれるリチウム量を、それぞれ、例えばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)等を用いて定量し、その合計を求めることによって、負極活物質におけるリチウムイオンのドープ量を知ることができる。得られた値を抽出に供した負極活物質量で割り付けて、リチウムイオンのドープ量(mAh/g)を算出すればよい。
先ず、本実施形態における負極活物質層をエチルメチルカーボネート又はジメチルカーボネートで洗浄し風乾した後、メタノール及びイソプロパノールから成る混合溶媒により抽出した抽出液と、抽出後の負極活物質層とを得る。この抽出は、典型的にはArボックス内にて、環境温度23℃で行われる。
上記のようにして得られた抽出液と、抽出後の負極活物質層とに含まれるリチウム量を、それぞれ、例えばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)等を用いて定量し、その合計を求めることによって、負極活物質におけるリチウムイオンのドープ量を知ることができる。得られた値を抽出に供した負極活物質量で割り付けて、リチウムイオンのドープ量(mAh/g)を算出すればよい。
本実施形態における1次粒子径とは、粉体を電子顕微鏡で数視野撮影し、それらの視野中の粒子の粒子径を、全自動画像処理装置等を用いて2,000〜3,000個程度計測し、これらを算術平均した値を1次粒子径とする方法により得ることができる。
本実施形態における分散度とは、JIS K5600に規定された粒ゲージによる分散度評価試験に準拠して求められる値である。すなわち、粒のサイズに応じた所望の深さの溝を有する粒ゲージに対して、溝の深い方の先端に十分な量の試料を流し込み、溝から僅かに溢れさせる。次いで、スクレーパーの長辺がゲージの幅方向と平行になり、粒ゲージの溝の深い先端に刃先が接触するように置き、スクレーパーをゲージの表面になるように保持しながら、溝の長辺方向に対して直角に、ゲージの表面を均等な速度で、溝の深さ0まで1〜2秒間かけて引き、引き終わってから3秒以内に20°以上30°以下の角度で光を当てて観察し、粒ゲージの溝に粒が現れる深さを読み取る。
本実施形態における粘度(ηb)、及びTI値とは、それぞれ以下の方法により求められる値である。まず、E型粘度計を用いて、温度25℃、ずり速度2s−1の条件で2分以上測定した後の安定した粘度(ηa)を取得する。次いで、ずり速度を20s−1に変更した他は上記と同様の条件で測定した粘度(ηb)を取得する。上記で得た粘度の値を用いて、TI値は、TI値=ηa/ηbの式により算出される。ずり速度を2s−1から20s−1へ上昇させる際は、1段階で上昇させてもよいし、上記の範囲で多段的にずり速度を上昇させ、適宜そのずり速度における粘度を取得しながら上昇させてもよい。
<非水系電解液>
本実施形態における電解液は、リチウムイオンを含む非水系電解液である。すなわちこの非水系電解液は、後述する非水溶媒を含む。非水系電解液は、非水系電解液の合計体積を基準として、0.5mol/L以上のリチウム塩を含有することが好ましい。すなわち、非水系電解液は、リチウムイオンを電解質として含む。
本実施形態における電解液は、リチウムイオンを含む非水系電解液である。すなわちこの非水系電解液は、後述する非水溶媒を含む。非水系電解液は、非水系電解液の合計体積を基準として、0.5mol/L以上のリチウム塩を含有することが好ましい。すなわち、非水系電解液は、リチウムイオンを電解質として含む。
リチウム塩としては、例えば、(LiN(SO2F)2)、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C2F5)、LiN(SO2CF3)(SO2C2F4H)、LiC(SO2F)3、LiC(SO2CF3)3、LiC(SO2C2F5)3、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiPF6、及びLiBF4等が挙げられ、これらは単独で用いることができ、2種以上を混合して用いてもよい。高い伝導度を発現できることから、リチウム塩はLiPF6及び/又はLiN(SO2F)2を含むことが好ましい。
非水系電解液中のリチウム塩濃度は、0.5mol/L以上であることが好ましく、0.5〜2.0mol/Lの範囲がより好ましい。リチウム塩濃度が0.5mol/L以上であれば、陰イオンが十分に存在するので非水系リチウム型蓄電素子の容量を十分高くできる。リチウム塩濃度が2.0mol/L以下である場合、未溶解のリチウム塩が非水系電解液中に析出すること、及び非水系電解液の粘度が高くなり過ぎることを防止でき、伝導度が低下し難く、出力特性も低下し難いため好ましい。
本実施形態における非水系電解液は、非水溶媒として、好ましくは、環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有する。非水系電解液が環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有することは、所望の濃度のリチウム塩を溶解させる点、及び高いリチウムイオン伝導度を発現する点で有利である。環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びブチレンカーボネート等に代表されるアルキレンカーボネート化合物が挙げられる。アルキレンカーボネート化合物は、典型的には非置換である。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、及びジブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネート化合物が挙げられる。ジアルキルカーボネート化合物は典型的には非置換である。
環状カーボネート及び鎖状カーボネートの合計含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。環状カーボネート及び鎖状カーボネートの合計含有量が50質量%以上であれば、所望の濃度のリチウム塩を溶解させることが可能であり、高いリチウムイオン伝導度を発現することができる。環状カーボネート及び鎖状カーボネートの合計濃度が95質量%以下であれば、非水系電解液が、後述する添加剤をさらに含有することができる。
本実施形態における非水系電解液は、更に添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、特に制限されないが、例えば、スルトン化合物、環状ホスファゼン、非環状含フッ素エーテル、含フッ素環状カーボネート、環状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル、及び環状酸無水物等が挙げられ、これらは単独で用いることができ、また2種以上を混合して用いてもよい。
スルトン化合物としては、例えば、下記一般式(5)〜(7)のそれぞれで表されるスルトン化合物を挙げることができる。これらのスルトン化合物は、単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
本実施形態では、抵抗への悪影響が少なく、非水系電解液の高温における分解を抑制してガス発生を抑えるという観点から、式(5)で表されるスルトン化合物としては、好ましくは、1,3−プロパンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−ブタンスルトン、及び2,4−ペンタンスルトンが挙げられ;式(6)で表されるスルトン化合物としては、好ましくは、1,3−プロペンスルトン、及び1,4−ブテンスルトンが挙げられ;式(7)で表されるスルトン化合物としては、好ましくは、1,5,2,4−ジオキサジチエパン2,2,4,4−テトラオキシドが挙げられ;その他のスルトン化合物としては、好ましくは、メチレンビス(ベンゼンスルホン酸)、メチレンビス(フェニルメタンスルホン酸)、メチレンビス(エタンスルホン酸)、メチレンビス(2,4,6,トリメチルベンゼンスルホン酸)、及びメチレンビス(2−トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸)が挙げられ、これら群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
本実施形態における非水系リチウム型蓄電素子の非水系電解液中に含まれるスルトン化合物の合計含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%〜15質量%であることが好ましい。非水系電解液中に含まれるスルトン化合物の合計含有量が0.5質量%以上であれば、高温における非水系電解液の分解を抑制してガス発生を抑えることが可能となる。スルトン化合物の合計含有量が15質量%以下であれば、非水系電解液のイオン伝導度の低下を抑えることができ、高い入出力特性を保持することができる。非水系リチウム型蓄電素子の非水系電解液中に存在するスルトン化合物の合計含有量は、高い入出力特性と耐久性を両立する観点から、好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以上8質量%以下である。
環状ホスファゼンとしては、例えば、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、ジエトキシテトラフルオロシクロトリホスファゼン、及びフェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン等を挙げることができ、これらの群から選択される少なくとも1種が好ましい。
非水系電解液における環状ホスファゼンの含有率は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%〜20質量%であることが好ましい。環状ホスファゼンの含有率が0.5質量%以上であれば、高温における非水系電解液の分解を抑制してガス発生を抑えることが可能となる。環状ホスファゼンの含有率が20質量%以下であれば、非水系電解液のイオン伝導度の低下を抑えることができ、高い入出力特性を保持することができる。以上の理由により、環状ホスファゼンの含有率は、好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以上12質量%以下である。
尚、これらの環状ホスファゼンは、単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
非水系電解液における環状ホスファゼンの含有率は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%〜20質量%であることが好ましい。環状ホスファゼンの含有率が0.5質量%以上であれば、高温における非水系電解液の分解を抑制してガス発生を抑えることが可能となる。環状ホスファゼンの含有率が20質量%以下であれば、非水系電解液のイオン伝導度の低下を抑えることができ、高い入出力特性を保持することができる。以上の理由により、環状ホスファゼンの含有率は、好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以上12質量%以下である。
尚、これらの環状ホスファゼンは、単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
非環状含フッ素エーテルとしては、例えばHCF2CF2OCH2CF2CF2H、CF3CFHCF2OCH2CF2CF2H、HCF2CF2CH2OCH2CF2CF2H、及びCF3CFHCF2OCH2CF2CFHCF3等が挙げられ、これらの中でも、電気化学的安定性の観点から、HCF2CF2OCH2CF2CF2Hが好ましい。
非環状含フッ素エーテルの含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。非環状含フッ素エーテルの含有量が0.5質量%以上であれば、非水系電解液の酸化分解に対する安定性が高まり、高温時耐久性が高い非水系リチウム型蓄電素子が得られる。非環状含フッ素エーテルの含有量が15質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができるため、高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、非環状含フッ素エーテルは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
非環状含フッ素エーテルの含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。非環状含フッ素エーテルの含有量が0.5質量%以上であれば、非水系電解液の酸化分解に対する安定性が高まり、高温時耐久性が高い非水系リチウム型蓄電素子が得られる。非環状含フッ素エーテルの含有量が15質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができるため、高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、非環状含フッ素エーテルは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
含フッ素環状カーボネートとしては、他の非水溶媒との相溶性の観点から、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びジフルオロエチレンカーボネート(dFEC)からなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。
含フッ素環状カーボネートの含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。含フッ素環状カーボネートの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上における非水系電解液の還元分解を抑制することによって、高温における耐久性が高い非水系リチウム型蓄電素子が得られる。含フッ素環状カーボネートの含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、含フッ素環状カーボネートは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
含フッ素環状カーボネートの含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。含フッ素環状カーボネートの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上における非水系電解液の還元分解を抑制することによって、高温における耐久性が高い非水系リチウム型蓄電素子が得られる。含フッ素環状カーボネートの含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、含フッ素環状カーボネートは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
環状炭酸エステルとしては、ビニレンカーボネートが好ましい。環状炭酸エステルの含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。環状炭酸エステルの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上の良質な被膜を形成することができ、負極上での非水系電解液の還元分解を抑制することにより、高温における耐久性が高い非水系リチウム型蓄電素子が得られる。環状炭酸エステルの含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
環状カルボン酸エステルとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、及びイプシロンカプロラクトン等を挙げることができ、これらの群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。中でも、ガンマブチロラクトンは、リチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性を向上させる点で、特に好ましい。
環状カルボン酸エステルの含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。環状カルボン酸エステルの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上の良質な被膜を形成することができ、負極上での非水系電解液の還元分解を抑制することにより、高温時耐久性が高い非水系リチウム型蓄電素子が得られる。環状カルボン酸エステルの含有量が5質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、環状カルボン酸エステルは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
環状カルボン酸エステルの含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。環状カルボン酸エステルの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上の良質な被膜を形成することができ、負極上での非水系電解液の還元分解を抑制することにより、高温時耐久性が高い非水系リチウム型蓄電素子が得られる。環状カルボン酸エステルの含有量が5質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、環状カルボン酸エステルは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
環状酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、及び無水イタコン酸からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。中でも工業的な入手のし易さによって非水系電解液の製造コストが抑えられる点、非水系電解液中に溶解し易い点等から、無水コハク酸及び無水マレイン酸から選択することが好ましい。
環状酸無水物の含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。環状酸無水物の含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上における非水系電解液の還元分解を抑制することにより、高温時耐久性が高い非水系リチウム型蓄電素子が得られる。環状酸無水物の含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、環状酸無水物は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
環状酸無水物の含有量は、非水系電解液の合計質量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。環状酸無水物の含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上における非水系電解液の還元分解を抑制することにより、高温時耐久性が高い非水系リチウム型蓄電素子が得られる。環状酸無水物の含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、環状酸無水物は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
<セパレータ>
正極前駆体及び負極は、一般に、セパレータを介して積層又は捲回され、正極前駆体と、負極と、セパレータとを有する電極積層体、又は電極捲回体を形成する。
正極前駆体及び負極は、一般に、セパレータを介して積層又は捲回され、正極前駆体と、負極と、セパレータとを有する電極積層体、又は電極捲回体を形成する。
セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。これらのセパレータの片面又は両面上に、有機又は無機の微粒子から構成される膜が積層されていてもよい。また、セパレータの内部に有機又は無機の微粒子が含まれていてもよい。
セパレータの厚みは5μm以上35μm以下が好ましい。セパレータの厚みが5μm以上であることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。セパレータの厚みが35μm以下であることにより、非水系リチウム型蓄電素子の入出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
有機又は無機の微粒子から構成される膜の厚さは、1μm以上10μm以下であることが好ましい。有機又は無機の微粒子から構成される膜の厚さが1μm以上であることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。有機又は無機の微粒子から構成される膜の厚さが10μm以下であることにより、非水系リチウム型蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
<非水系リチウム型蓄電素子の製造>
本実施形態による非水系リチウム型蓄電素子は、典型的には、後述する電極積層体又は電極捲回体が、非水系電解液とともに外装体内に収納されて構成される。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、例えば、複数個の非水系リチウム型蓄電素子を直列、又は並列に接続して蓄電モジュールを作ることができる。本発明の非水系リチウム型蓄電素子及び蓄電モジュールは、高負荷充放電サイクル特性が求められる自動車のハイブリット駆動システムの電力回生システム、太陽光発電や風力発電等の自然発電やマイクログリッド等における電力負荷平準化システム、工場の生産設備等における無停電電源システム、マイクロ波送電や電界共鳴等の電圧変動の平準化及びエネルギーの蓄電を目的とした非接触給電システム、並びに振動発電等で発電した電力の利用を目的としたエナジーハーベストシステムに好適に利用できる。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、例えば、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池として適用したときに、本発明の効果が最大限に発揮されるため好ましい。
本実施形態による非水系リチウム型蓄電素子は、典型的には、後述する電極積層体又は電極捲回体が、非水系電解液とともに外装体内に収納されて構成される。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、例えば、複数個の非水系リチウム型蓄電素子を直列、又は並列に接続して蓄電モジュールを作ることができる。本発明の非水系リチウム型蓄電素子及び蓄電モジュールは、高負荷充放電サイクル特性が求められる自動車のハイブリット駆動システムの電力回生システム、太陽光発電や風力発電等の自然発電やマイクログリッド等における電力負荷平準化システム、工場の生産設備等における無停電電源システム、マイクロ波送電や電界共鳴等の電圧変動の平準化及びエネルギーの蓄電を目的とした非接触給電システム、並びに振動発電等で発電した電力の利用を目的としたエナジーハーベストシステムに好適に利用できる。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、例えば、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池として適用したときに、本発明の効果が最大限に発揮されるため好ましい。
[組立]
組み立て工程では、例えば、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して成る積層体に、正極端子及び負極端子を接続して、電極積層体を作製する。あるいは、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層及び捲回した捲回体に、正極端子及び負極端子を接続して、電極捲回体を作製してもよい。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子及び負極端子の接続の方法は特に限定されないが、抵抗溶接や超音波溶接などの方法で行うことができる。
組み立て工程では、例えば、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して成る積層体に、正極端子及び負極端子を接続して、電極積層体を作製する。あるいは、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層及び捲回した捲回体に、正極端子及び負極端子を接続して、電極捲回体を作製してもよい。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子及び負極端子の接続の方法は特に限定されないが、抵抗溶接や超音波溶接などの方法で行うことができる。
[外装体]
外装体としては、金属缶、ラミネート包材等を使用できる。金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。ラミネート包材としては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内装樹脂フィルムの3層から構成されるラミネート包材が例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内装樹脂フィルムは、内部に収納する非水系電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン等が好適に使用できる。
外装体としては、金属缶、ラミネート包材等を使用できる。金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。ラミネート包材としては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内装樹脂フィルムの3層から構成されるラミネート包材が例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内装樹脂フィルムは、内部に収納する非水系電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン等が好適に使用できる。
[外装体への収納]
乾燥した電極積層体又は電極捲回体は、金属缶又はラミネート包材に代表される外装体の中に収納し、開口部を1方だけ残して封止することが好ましい。外装体の封止方法は特に限定されないが、ラミネート包材を用いる場合は、ヒートシールやインパルスシールなどの方法を用いることができる。
乾燥した電極積層体又は電極捲回体は、金属缶又はラミネート包材に代表される外装体の中に収納し、開口部を1方だけ残して封止することが好ましい。外装体の封止方法は特に限定されないが、ラミネート包材を用いる場合は、ヒートシールやインパルスシールなどの方法を用いることができる。
[乾燥]
外装体の中に収納した電極積層体または電極捲回体は、乾燥することで残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法は限定されないが、真空乾燥などにより乾燥することができる。残存溶媒は、正極活物質層または負極活物質層の質量を基準として、1.5質量%以下が好ましい。残存溶媒が1.5質量%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性やサイクル特性を悪化させることがあるため好ましくない。
外装体の中に収納した電極積層体または電極捲回体は、乾燥することで残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法は限定されないが、真空乾燥などにより乾燥することができる。残存溶媒は、正極活物質層または負極活物質層の質量を基準として、1.5質量%以下が好ましい。残存溶媒が1.5質量%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性やサイクル特性を悪化させることがあるため好ましくない。
[注液、含浸、封止工程]
組立工程の終了後に、外装体の中に収納された電極積層体または電極捲回体に、非水系電解液を注液する。注液後に、更に含浸を行い、正極、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に非水系電解液が浸っていない状態では、後述するリチウムドープ工程において、リチウムドープが不均一に進むため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後の電極積層体または電極捲回体を、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸後に、外装体が開口した状態の電極積層体または電極捲回体を減圧しながら封止することで密閉することができる。
組立工程の終了後に、外装体の中に収納された電極積層体または電極捲回体に、非水系電解液を注液する。注液後に、更に含浸を行い、正極、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に非水系電解液が浸っていない状態では、後述するリチウムドープ工程において、リチウムドープが不均一に進むため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後の電極積層体または電極捲回体を、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸後に、外装体が開口した状態の電極積層体または電極捲回体を減圧しながら封止することで密閉することができる。
[リチウムドープ工程]
リチウムドープ工程では、正極前駆体と負極との間に電圧を印加して、正極前駆体中のリチウム化合物を分解してリチウムイオンを放出し、負極でリチウムイオンを還元することにより負極活物質層にリオチウムイオンをプレドープすることが好ましい。
リチウムドープ工程では、正極前駆体と負極との間に電圧を印加して、正極前駆体中のリチウム化合物を分解してリチウムイオンを放出し、負極でリチウムイオンを還元することにより負極活物質層にリオチウムイオンをプレドープすることが好ましい。
リチウムドープ工程において、正極前駆体中のリチウム化合物の酸化分解に伴い、CO2等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;等を挙げることができる。
[エージング工程]
リチウムドープ工程後に、電極積層体又は電極捲回体にエージングを行うことが好ましい。エージング工程では、非水系電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にリチウムイオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば高温環境下で非水系電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
リチウムドープ工程後に、電極積層体又は電極捲回体にエージングを行うことが好ましい。エージング工程では、非水系電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にリチウムイオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば高温環境下で非水系電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
[ガス抜き工程]
エージング工程後に、更にガス抜きを行い、非水系電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。非水系電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の抵抗が上昇してしまう。
ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、外装体を開口した状態で電極積層体または電極捲回体を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。ガス抜き後、外装体をシールすることにより外装体を密閉し、非水系リチウム型蓄電素子を作製することができる。
エージング工程後に、更にガス抜きを行い、非水系電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。非水系電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の抵抗が上昇してしまう。
ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、外装体を開口した状態で電極積層体または電極捲回体を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。ガス抜き後、外装体をシールすることにより外装体を密閉し、非水系リチウム型蓄電素子を作製することができる。
<非水系リチウム型蓄電素子の特性評価>
[静電容量]
本明細書では、静電容量F(F)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、非水系リチウム型蓄電素子を25℃に設定した恒温槽内で、2Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行う。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQとする。ここで得られたQを用いて、F=Q/(3.8−2.2)により算出される値を、静電容量F(F)という。
[静電容量]
本明細書では、静電容量F(F)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、非水系リチウム型蓄電素子を25℃に設定した恒温槽内で、2Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行う。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQとする。ここで得られたQを用いて、F=Q/(3.8−2.2)により算出される値を、静電容量F(F)という。
[電力量]
本明細書では、電力量E(Wh)とは、以下の方法によって得られる値である。
先に述べた方法で算出された静電容量F(F)を用いて、
F×(3.82−2.22)/2/3,600により算出される値を、電力量E(Wh)という。
本明細書では、電力量E(Wh)とは、以下の方法によって得られる値である。
先に述べた方法で算出された静電容量F(F)を用いて、
F×(3.82−2.22)/2/3,600により算出される値を、電力量E(Wh)という。
[体積]
非水系リチウム型蓄電素子の体積は、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層及び負極活物質層が積重された領域が、外装体によって収納された部分の体積を指す。
例えば、ラミネートフィルムによって収納された電極積層体又は電極捲回体の場合は、典型的には、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層および負極活物質層が存在する領域が、カップ成形されたラミネートフィルムの中に収納される。この非水系リチウム型蓄電素子の体積(V1)は、このカップ成形部分の外寸長さ(l1)と、外寸幅(w1)と、ラミネートフィルムを含めた非水系リチウム型蓄電素子の厚み(t1)とにより、V1=l1×w1×t1で計算される。
角型の金属缶に収納された電極積層体又は電極捲回体の場合は、非水系リチウム型蓄電素子の体積としては、単にその金属缶の外寸での体積を用いる。すなわち、この非水系リチウム型蓄電素子の体積(V2)は、角型の金属缶の外寸長さ(l2)と、外寸幅(w2)と、外寸厚み(t2)とにより、V2=l2×w2×t2で計算される。
また、円筒型の金属缶に収納された電極捲回体の場合においても、非水系リチウム型蓄電素子の体積としては、その金属缶の外寸での体積を用いる。すなわち、この非水系リチウム型蓄電素子の体積(V3)は、円筒型の金属缶の底面または上面の外寸半径(r)と、外寸長さ(l3)とにより、V3=3.14×r×r×l3で計算される。
非水系リチウム型蓄電素子の体積は、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層及び負極活物質層が積重された領域が、外装体によって収納された部分の体積を指す。
例えば、ラミネートフィルムによって収納された電極積層体又は電極捲回体の場合は、典型的には、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層および負極活物質層が存在する領域が、カップ成形されたラミネートフィルムの中に収納される。この非水系リチウム型蓄電素子の体積(V1)は、このカップ成形部分の外寸長さ(l1)と、外寸幅(w1)と、ラミネートフィルムを含めた非水系リチウム型蓄電素子の厚み(t1)とにより、V1=l1×w1×t1で計算される。
角型の金属缶に収納された電極積層体又は電極捲回体の場合は、非水系リチウム型蓄電素子の体積としては、単にその金属缶の外寸での体積を用いる。すなわち、この非水系リチウム型蓄電素子の体積(V2)は、角型の金属缶の外寸長さ(l2)と、外寸幅(w2)と、外寸厚み(t2)とにより、V2=l2×w2×t2で計算される。
また、円筒型の金属缶に収納された電極捲回体の場合においても、非水系リチウム型蓄電素子の体積としては、その金属缶の外寸での体積を用いる。すなわち、この非水系リチウム型蓄電素子の体積(V3)は、円筒型の金属缶の底面または上面の外寸半径(r)と、外寸長さ(l3)とにより、V3=3.14×r×r×l3で計算される。
[エネルギー密度]
本明細書において、エネルギー密度とは、非水系リチウム型蓄電素子の電気量E及び体積Vi(i=1、2、3)を用いて、E/Vi(Wh/L)の式により得られる値である。
E/Viは十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、15以上であることが好ましい。E/Viが15以上であれば、優れた体積エネルギー密度を有する非水系リチウム型蓄電素子を得ることができるため、この非水系リチウム型蓄電素子を用いた蓄電システムを、例えば自動車のエンジンと組み合わせて使用する場合に、自動車内の限られた狭いスペースに蓄電システムを設置することが可能となり、好ましい。E/Viの上限値としては、好ましくは50以下である。
本明細書において、エネルギー密度とは、非水系リチウム型蓄電素子の電気量E及び体積Vi(i=1、2、3)を用いて、E/Vi(Wh/L)の式により得られる値である。
E/Viは十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、15以上であることが好ましい。E/Viが15以上であれば、優れた体積エネルギー密度を有する非水系リチウム型蓄電素子を得ることができるため、この非水系リチウム型蓄電素子を用いた蓄電システムを、例えば自動車のエンジンと組み合わせて使用する場合に、自動車内の限られた狭いスペースに蓄電システムを設置することが可能となり、好ましい。E/Viの上限値としては、好ましくは50以下である。
[内部抵抗]
本明細書では、内部抵抗Ra(Ω)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、非水系リチウム型蓄電素子を25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行う。続いて、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとしたときに、降下電圧ΔE=3.8−Eo、及びRa=ΔE/(20C(電流値A))により算出される値を、内部抵抗Ra(Ω)という。
Ra・Fは、大電流に対して十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.2以下である。Ra・Fが3.0以下であれば、優れた入出力特性を有する非水系リチウム型蓄電素子を得ることができる。そのため、この非水系リチウム型蓄電素子を用いた蓄電システムと、例えば高効率エンジンとを組み合わせること等によって、非水系リチウム型蓄電素子に印加される高負荷にも十分に耐え得ることとなり、好ましい。Ra・Fの下限値としては、好ましくは0.3以上である。
本明細書では、内部抵抗Ra(Ω)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、非水系リチウム型蓄電素子を25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行う。続いて、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとしたときに、降下電圧ΔE=3.8−Eo、及びRa=ΔE/(20C(電流値A))により算出される値を、内部抵抗Ra(Ω)という。
Ra・Fは、大電流に対して十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.2以下である。Ra・Fが3.0以下であれば、優れた入出力特性を有する非水系リチウム型蓄電素子を得ることができる。そのため、この非水系リチウム型蓄電素子を用いた蓄電システムと、例えば高効率エンジンとを組み合わせること等によって、非水系リチウム型蓄電素子に印加される高負荷にも十分に耐え得ることとなり、好ましい。Ra・Fの下限値としては、好ましくは0.3以上である。
非水系リチウム型蓄電素子におけるZr元素の含有量は、正極活物質層単位質量当たり0.01ppm以上8ppm以下である。前記Zr元素の含有量は、好ましくは、0.03ppm以上6ppm以下、より好ましくは0.05ppm以上5ppm以下、さらに好ましくは0.08ppm以上4ppm以下、特に好ましくは0.10ppm以上3ppm以下である。
非水系リチウム型蓄電素子におけるZr元素の含有量が、正極活物質層単位質量当たり0.01ppm以上であれば、上述した理由によりリチウムドープ工程後に残存するリチウム化合物やリチウムドープ工程中の非水系電解液の副生成物を抑制できため、エネルギー密度と出力特性が優れる。他方、このZr元素の含有量が、正極活物質層単位質量当たり8ppm以下であれば、リチウムドープ工程中の過剰な非水系電解液の分解を抑制出来る為、出力特性に優れる。
非水系リチウム型蓄電素子におけるFe元素の含有量は、好ましくは正極活物質層単位質量当たり0.3ppm以上150ppm以下、より好ましくは0.6ppm以上80ppm以下、さらに好ましくは0.8ppm以上40ppm以下である。
非水系リチウム型蓄電素子におけるFe元素の含有量が、正極活物質層単位質量当たり0.3ppm以上であれば、Zr元素の触媒活性がFe元素により増幅するため、上述した理由により、リチウムドープ工程後に残存するリチウム化合物やリチウムドープ工程中の非水系電解液の副生成物を抑制できため、エネルギー密度と出力特性が優れる。他方、このFe元素の含有量が正極活物質層単位質量当たり150ppm以下であれば、Fe元素の溶出により生じる負極での非水系電解液の還元分解を抑制でき、出力特性に優れる。
非水系リチウム型蓄電素子に含有されるZr元素及びFe元素は、正極、負極、セパレータ、非水系電解液のいずれか1つ以上に含有することができるが、正極により多く含有されることが好ましい。また、含有されるZr元素及びFe元素は、金属、化合物のいかなる形態でも含有することができるが、化合物として含有されることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を示して本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
<実施例1>
[リチウム化合物の調整]
リチウム化合物種として炭酸リチウムを100質量部、ZrOCl2・8H2Oを2.5×10−4質量部、FeCl3・6H2Oを1.8×10−3質量部とを蒸留水に添加し、炭酸リチウムの濃度として0.5wt%の水溶液となるように調整した。得られた水溶液をオイルバスで60℃に加熱し、ホモディスパ―で1時間撹拌した。次いで100℃に加熱して、水分を蒸発させ、Zr元素とFe元素を含有する炭酸リチウム粉末を析出させた。得られた炭酸リチウム粉末をアルミナ容器に入れて、これをマッフル炉で窒素/水素混合ガスをフローしながら300℃で10時間加熱し、脱塩素化処理を施した。次いで、得られた炭酸リチウム粉末をジェットミルで粉砕した。島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて炭酸リチウム粉末の平均粒子径を測定した結果、0.8μmであった。
[活性炭の調製]
[活性炭1]
破砕されたヤシ殻炭化物を小型炭化炉内へ入れ、窒素雰囲気下、500℃で3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、予熱炉で加温した水蒸気を1kg/hで上記賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間かけて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた賦活された活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りし、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて、活性炭1の平均粒子径を測定した結果、4.2μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、活性炭1の細孔分布を測定した結果、BET比表面積が2,360m2/g、メソ孔量(V1)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)が0.88cc/g、V1/V2=0.59であった。
[リチウム化合物の調整]
リチウム化合物種として炭酸リチウムを100質量部、ZrOCl2・8H2Oを2.5×10−4質量部、FeCl3・6H2Oを1.8×10−3質量部とを蒸留水に添加し、炭酸リチウムの濃度として0.5wt%の水溶液となるように調整した。得られた水溶液をオイルバスで60℃に加熱し、ホモディスパ―で1時間撹拌した。次いで100℃に加熱して、水分を蒸発させ、Zr元素とFe元素を含有する炭酸リチウム粉末を析出させた。得られた炭酸リチウム粉末をアルミナ容器に入れて、これをマッフル炉で窒素/水素混合ガスをフローしながら300℃で10時間加熱し、脱塩素化処理を施した。次いで、得られた炭酸リチウム粉末をジェットミルで粉砕した。島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて炭酸リチウム粉末の平均粒子径を測定した結果、0.8μmであった。
[活性炭の調製]
[活性炭1]
破砕されたヤシ殻炭化物を小型炭化炉内へ入れ、窒素雰囲気下、500℃で3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、予熱炉で加温した水蒸気を1kg/hで上記賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間かけて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた賦活された活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りし、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて、活性炭1の平均粒子径を測定した結果、4.2μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、活性炭1の細孔分布を測定した結果、BET比表面積が2,360m2/g、メソ孔量(V1)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)が0.88cc/g、V1/V2=0.59であった。
[活性炭2]
フェノール樹脂を、焼成炉内へ入れ、窒素雰囲気下、600℃で2時間炭化処理を行った後、ボールミルで粉砕し、分級して平均粒子径7.0μmの炭化物を得た。得られた炭化物とKOHとを、質量比1:5で混合し、焼成炉内へ入れ、窒素雰囲下、800℃で1時間加熱して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、濃度2mol/Lに調製した希塩酸中で1時間撹拌洗浄し、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄した後に乾燥することにより、活性炭2を得た。
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて、活性炭2の平均粒子径を測定した結果、7.1μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、活性炭2の細孔分布を測定した結果、BET比表面積が3,627m2/g、メソ孔量(V1)が1.50cc/g、マイクロ孔量(V2)が2.28cc/g、V1/V2=0.66であった。
フェノール樹脂を、焼成炉内へ入れ、窒素雰囲気下、600℃で2時間炭化処理を行った後、ボールミルで粉砕し、分級して平均粒子径7.0μmの炭化物を得た。得られた炭化物とKOHとを、質量比1:5で混合し、焼成炉内へ入れ、窒素雰囲下、800℃で1時間加熱して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、濃度2mol/Lに調製した希塩酸中で1時間撹拌洗浄し、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄した後に乾燥することにより、活性炭2を得た。
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて、活性炭2の平均粒子径を測定した結果、7.1μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、活性炭2の細孔分布を測定した結果、BET比表面積が3,627m2/g、メソ孔量(V1)が1.50cc/g、マイクロ孔量(V2)が2.28cc/g、V1/V2=0.66であった。
[正極前駆体の調製]
上記で得た炭酸リチウム粉末をリチウム化合物として、活性炭1を正極活物質として用いて正極前駆体を製造した。
活性炭1を57.5質量部、炭酸リチウム粉末を30.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス(登録商標)」を用いて、周速17m/sの条件で分散して塗工液を得た。上記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ15μmの貫通孔を持たないアルミニウム箔の片面又は両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度100℃で乾燥して正極前駆体(以下、それぞれ「片面正極前駆体」、及び「両面正極前駆体」ともいう。)を得た。得られた正極前駆体についてロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施した。
上記で得た炭酸リチウム粉末をリチウム化合物として、活性炭1を正極活物質として用いて正極前駆体を製造した。
活性炭1を57.5質量部、炭酸リチウム粉末を30.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス(登録商標)」を用いて、周速17m/sの条件で分散して塗工液を得た。上記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ15μmの貫通孔を持たないアルミニウム箔の片面又は両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度100℃で乾燥して正極前駆体(以下、それぞれ「片面正極前駆体」、及び「両面正極前駆体」ともいう。)を得た。得られた正極前駆体についてロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施した。
得られた正極前駆体の一部について180℃で20時間真空乾燥を行い、露点−40℃以下のドライエアー環境下で正極前駆体から正極活物質層を採取し、秤量した。採取したサンプルを用いてICP−MSで正極前駆体の正極活物質層に含まれるZr元素とFe元素の含有量を測定し、これを測定に用いた正極前駆体の正極活物質層の質量で除すことにより正極前駆体の正極活物質層単位質量当たりのZr元素とFe元素の含有量を算出した。その結果を表1に示す。
[負極の調製]
平均粒子径4.8μm、BET比表面積が3.1m2/gの人造黒鉛150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)15gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合炭素材料を得た。この熱処理は窒素雰囲気下で行い、1000℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合炭素材料を炉から取り出した。
得られた複合炭素材料について、上記と同様の方法で平均粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、平均粒子径は4.9μm、BET比表面積は6.1m2/gであった。石炭系ピッチ由来の炭素質材料の人造黒鉛に対する質量比率は2%であった。
平均粒子径4.8μm、BET比表面積が3.1m2/gの人造黒鉛150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)15gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合炭素材料を得た。この熱処理は窒素雰囲気下で行い、1000℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合炭素材料を炉から取り出した。
得られた複合炭素材料について、上記と同様の方法で平均粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、平均粒子径は4.9μm、BET比表面積は6.1m2/gであった。石炭系ピッチ由来の炭素質材料の人造黒鉛に対する質量比率は2%であった。
次いで、複合炭素材料を負極活物質として用いて負極を製造した。
複合炭素材料を85質量部、アセチレンブラックを10質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を5質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス(登録商標)」を用いて、周速15m/sの条件で分散して塗工液を得た。上記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ10μmの貫通孔を持たない電解銅箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度85℃で乾燥して負極(以下、「両面負極」ともいう。)を得た。得られた負極についてロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施した。
複合炭素材料を85質量部、アセチレンブラックを10質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を5質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス(登録商標)」を用いて、周速15m/sの条件で分散して塗工液を得た。上記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ10μmの貫通孔を持たない電解銅箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度85℃で乾燥して負極(以下、「両面負極」ともいう。)を得た。得られた負極についてロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施した。
[非水系電解液の調製]
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(EMC)=33:67(体積比)の混合溶媒を用い、全非水系電解液に対してLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度比が25:75(モル比)であり、かつLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度の和が1.2mol/Lとなるようにそれぞれの電解質塩を溶解して得た溶液を非水系電解液として使用した。
調製した非水系電解液におけるLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度は、それぞれ、0.3mol/L及び0.9mol/Lであった。
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(EMC)=33:67(体積比)の混合溶媒を用い、全非水系電解液に対してLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度比が25:75(モル比)であり、かつLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度の和が1.2mol/Lとなるようにそれぞれの電解質塩を溶解して得た溶液を非水系電解液として使用した。
調製した非水系電解液におけるLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度は、それぞれ、0.3mol/L及び0.9mol/Lであった。
[非水系リチウム型蓄電素子の製造]
上記で得た正極前駆体と負極を用いて、後述する条件で非水系リチウム型蓄電素子を製造した。
[組立]
得られた両面負極と片面及び両面正極前駆体とを10cm×10cm(100cm2)にカットした。最上面と最下面は片面正極前駆体を用い、更に両面負極21枚と両面正極前駆体20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。その後、負極と正極前駆体とに、それぞれ負極端子及び正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体を得た。この電極積層体を、アルミラミネート包材から構成される外装体内に収納し、電極端子部およびボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、及びシール圧1.0MPaの条件下でヒートシールした。封止体を、温度80℃、圧力50Paで、乾燥時間60hrの条件で真空乾燥した。
上記で得た正極前駆体と負極を用いて、後述する条件で非水系リチウム型蓄電素子を製造した。
[組立]
得られた両面負極と片面及び両面正極前駆体とを10cm×10cm(100cm2)にカットした。最上面と最下面は片面正極前駆体を用い、更に両面負極21枚と両面正極前駆体20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。その後、負極と正極前駆体とに、それぞれ負極端子及び正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体を得た。この電極積層体を、アルミラミネート包材から構成される外装体内に収納し、電極端子部およびボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、及びシール圧1.0MPaの条件下でヒートシールした。封止体を、温度80℃、圧力50Paで、乾燥時間60hrの条件で真空乾燥した。
[注液、含浸、封止工程]
アルミラミネート包材の中に収納された電極積層体に、大気圧下、温度25℃、及び露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液を約80g注入した。続いて、電極積層体を収納しているアルミラミネート包材を減圧チャンバーの中に入れ、大気圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。その後、大気圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す工程を4回繰り返した後、15分間静置した。さらに、大気圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す工程を合計7回繰り返した(大気圧から、それぞれ−95,−96,−97,−81,−97,−97,−97kPaまで減圧した)。以上の工程により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
その後、アルミラミネート包材の中に収納されており、かつ非水系電解液を含浸させた電極積層体を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止して、非水系リチウム型蓄電素子を作製した。
アルミラミネート包材の中に収納された電極積層体に、大気圧下、温度25℃、及び露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液を約80g注入した。続いて、電極積層体を収納しているアルミラミネート包材を減圧チャンバーの中に入れ、大気圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。その後、大気圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す工程を4回繰り返した後、15分間静置した。さらに、大気圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す工程を合計7回繰り返した(大気圧から、それぞれ−95,−96,−97,−81,−97,−97,−97kPaまで減圧した)。以上の工程により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
その後、アルミラミネート包材の中に収納されており、かつ非水系電解液を含浸させた電極積層体を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止して、非水系リチウム型蓄電素子を作製した。
[リチウムドープ工程]
得られた非水系リチウム型蓄電素子に対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、50℃環境下、電流値50mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を20時間継続する手法により初期充電を行い、負極にリチウムドープを行った。
得られた非水系リチウム型蓄電素子に対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、50℃環境下、電流値50mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を20時間継続する手法により初期充電を行い、負極にリチウムドープを行った。
[エージング工程]
リチウムドープ後の非水系リチウム型蓄電素子を25℃環境下、150mAで電圧2.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、150mAで電圧4.0Vに到達するまで定電流充電行い、さらに4.0V定電流放電を1時間行う定電流定電圧充電工程を実施した。
リチウムドープ後の非水系リチウム型蓄電素子を25℃環境下、150mAで電圧2.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、150mAで電圧4.0Vに到達するまで定電流充電行い、さらに4.0V定電流放電を1時間行う定電流定電圧充電工程を実施した。
[ガス抜き工程]
エージング後の非水系リチウム型蓄電素子を、温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下でアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に上記非水系リチウム型蓄電素子を入れ、KNF社製のダイヤフラムポンプ(N816.3KT.45.18)を用いて大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機に非水系リチウム型蓄電素子を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
エージング後の非水系リチウム型蓄電素子を、温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下でアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に上記非水系リチウム型蓄電素子を入れ、KNF社製のダイヤフラムポンプ(N816.3KT.45.18)を用いて大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機に非水系リチウム型蓄電素子を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
[非水系リチウム型蓄電素子の評価]
上記で得た非水系リチウム型蓄電素子を用いて、[静電容量、Ra・Fの測定]及び[非水系リチウム型蓄電素子中のZr元素、Fe元素含有量の測定]を実施した。
上記で得た非水系リチウム型蓄電素子を用いて、[静電容量、Ra・Fの測定]及び[非水系リチウム型蓄電素子中のZr元素、Fe元素含有量の測定]を実施した。
[静電容量、Ra・Fの測定]
得られた非水系リチウム型蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、上述した方法により、静電容量Fと25℃における内部抵抗Raを算出し、エネルギー密度E/V1とRa・Fを得た。結果を下記表1に示す。
[非水系リチウム型蓄電素子中のZr元素、Fe元素含有量の測定]
上記で得た非水系リチウム型蓄電素子を露点温度−72℃のアルゴンボックス中で解体し、非水系電解液、正極及び負極をそれぞれサンプリングした。次いで、塗膜部分の幾何面積が5cm2となるよう両面正極(2枚)と両面負極(1枚)を切り出し、ジメチルカーボネートに10分間含浸して、その後風乾した。得られた非水系電解液、両面正極(1枚)、及び両面負極(1枚)に含まれるZr元素及びFe元素をそれぞれICP−MSにて測定した。また、もう1枚の両面正極を180℃で20時間真空乾燥し、両面正極の質量M1を測定した。その後、正極活物質層をスパチュラで掻き取り、さらに蒸留水に含浸して超音波を1時間照射することで正極集電体から正極活物質層を除去し、正極集電体の質量M2を測定した。
次いで、非水系電解液に含有されるZr元素及びFe元素の総量を次式:
Zrtotal_sol=Zrsol×非水系電解液の仕込み量
Fetotal_sol=Fesol×非水系電解液の仕込み量
にて算出した。
ここで、Zrsol(ppm)及びFesol(ppm)はICP−MSにより検出された非水系電解液単位質量当たりのZr元素とFe元素の濃度である。
また、両面負極に含有されるZr元素及びFe元素の総量を次式:
Zrtotal_ano=Zrano/5×Sano
Fetotal_ano=Feano/5×Sano
にて算出した。
ここで、Zrano及びFeanoはICP−MSにより検出された塗膜部分の幾何面積が5cm2の両面負極中のZr元素とFe元素の含有量である。また、Sano(cm2)は非水系リチウム型蓄電素子に含まれる両面負極の全塗膜部分の幾何面積である。
同様に、正極に含有されるZr元素及びFe元素の総量を次式:
Zrtotal_cath=Zrcath/5×Scath
Fetotal_cath=Fecath/5×Scath
にて算出した。
ここで、Zrcath及びFecathはICP−MSにより検出された塗膜部分の幾何面積が5cm2の両面正極中のZr元素とFe元素の含有量である。また、Scath(cm2)は非水系リチウム型蓄電素子に含まれる片面及び両面正極の全塗膜部分の幾何面積である。ただし、本明細書における片面正極の塗膜部分の幾何面積は、両面正極に換算するために実際の片面正極の塗膜部分の幾何面積の半分の値を使用する。
また、次式:
Mtotal=(M1−M2)/5×Scath
により非水系リチウム型蓄電素子に含まれる全正極活物質層の質量を算出した。
非水系リチウム型蓄電素子における正極活物質層単位質量当たりのZr元素及びFe元素の含有量を、次式:
Zrtotal=(Zrtotal_sol+Zrtotal_ano+Zrtotal_cath)/Mtotal
Fetotal=(Fetotal_sol+Fetotal_ano+Fetotal_cath)/Mtotal
により算出した。
結果を下記表1に示す。
得られた非水系リチウム型蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、上述した方法により、静電容量Fと25℃における内部抵抗Raを算出し、エネルギー密度E/V1とRa・Fを得た。結果を下記表1に示す。
[非水系リチウム型蓄電素子中のZr元素、Fe元素含有量の測定]
上記で得た非水系リチウム型蓄電素子を露点温度−72℃のアルゴンボックス中で解体し、非水系電解液、正極及び負極をそれぞれサンプリングした。次いで、塗膜部分の幾何面積が5cm2となるよう両面正極(2枚)と両面負極(1枚)を切り出し、ジメチルカーボネートに10分間含浸して、その後風乾した。得られた非水系電解液、両面正極(1枚)、及び両面負極(1枚)に含まれるZr元素及びFe元素をそれぞれICP−MSにて測定した。また、もう1枚の両面正極を180℃で20時間真空乾燥し、両面正極の質量M1を測定した。その後、正極活物質層をスパチュラで掻き取り、さらに蒸留水に含浸して超音波を1時間照射することで正極集電体から正極活物質層を除去し、正極集電体の質量M2を測定した。
次いで、非水系電解液に含有されるZr元素及びFe元素の総量を次式:
Zrtotal_sol=Zrsol×非水系電解液の仕込み量
Fetotal_sol=Fesol×非水系電解液の仕込み量
にて算出した。
ここで、Zrsol(ppm)及びFesol(ppm)はICP−MSにより検出された非水系電解液単位質量当たりのZr元素とFe元素の濃度である。
また、両面負極に含有されるZr元素及びFe元素の総量を次式:
Zrtotal_ano=Zrano/5×Sano
Fetotal_ano=Feano/5×Sano
にて算出した。
ここで、Zrano及びFeanoはICP−MSにより検出された塗膜部分の幾何面積が5cm2の両面負極中のZr元素とFe元素の含有量である。また、Sano(cm2)は非水系リチウム型蓄電素子に含まれる両面負極の全塗膜部分の幾何面積である。
同様に、正極に含有されるZr元素及びFe元素の総量を次式:
Zrtotal_cath=Zrcath/5×Scath
Fetotal_cath=Fecath/5×Scath
にて算出した。
ここで、Zrcath及びFecathはICP−MSにより検出された塗膜部分の幾何面積が5cm2の両面正極中のZr元素とFe元素の含有量である。また、Scath(cm2)は非水系リチウム型蓄電素子に含まれる片面及び両面正極の全塗膜部分の幾何面積である。ただし、本明細書における片面正極の塗膜部分の幾何面積は、両面正極に換算するために実際の片面正極の塗膜部分の幾何面積の半分の値を使用する。
また、次式:
Mtotal=(M1−M2)/5×Scath
により非水系リチウム型蓄電素子に含まれる全正極活物質層の質量を算出した。
非水系リチウム型蓄電素子における正極活物質層単位質量当たりのZr元素及びFe元素の含有量を、次式:
Zrtotal=(Zrtotal_sol+Zrtotal_ano+Zrtotal_cath)/Mtotal
Fetotal=(Fetotal_sol+Fetotal_ano+Fetotal_cath)/Mtotal
により算出した。
結果を下記表1に示す。
<実施例2〜20、及び比較例1〜4>
表1に示すリチウム化合物種とその量、及びZrOCl2・8H2OとFeCl3・6H2Oの量をそれぞれ表1に示す通りとした他は、実施例1と同様にしてリチウム化合物を作製した。作製したリチウム化合物と表1に示す正極活物質を用いた他は、実施例1と同様にして正極前駆体を調製した。また、作製した正極前駆体の正極活物質層に含有されるZr元素及びFe元素の量を実施例1と同様にして測定した。結果を下記表1に示す。さらに、実施例1と同様にして非水系リチウム型蓄電素子を調製し、評価を行った。結果を下記表1に示す。
表1に示すリチウム化合物種とその量、及びZrOCl2・8H2OとFeCl3・6H2Oの量をそれぞれ表1に示す通りとした他は、実施例1と同様にしてリチウム化合物を作製した。作製したリチウム化合物と表1に示す正極活物質を用いた他は、実施例1と同様にして正極前駆体を調製した。また、作製した正極前駆体の正極活物質層に含有されるZr元素及びFe元素の量を実施例1と同様にして測定した。結果を下記表1に示す。さらに、実施例1と同様にして非水系リチウム型蓄電素子を調製し、評価を行った。結果を下記表1に示す。
<実施例21>
[リチウム化合物の調整]
リチウム化合物種として炭酸リチウムを100質量部、FeCl3・6H2Oを1.8×10−3質量部を蒸留水に添加し、炭酸リチウムの濃度が0.5wt%の水溶液となるように調整した。得られた水溶液をオイルバスで60℃に加熱し、ホモディスパ―で1時間撹拌した。次いで100℃に加熱して、水分を蒸発させ、Fe元素を含有する炭酸リチウム粉末を析出させた。得られた炭酸リチウム粉末をアルミナ容器に入れて、これをマッフル炉で窒素/水素混合ガスをフローしながら300℃で10時間加熱し、脱塩素化処理を施した。次いで、ジルコニア容器に上記で得た炭酸リチウム粉末と3mmφのジルコニアビーズとを入れて、フリッチェ社製遊星型ボールミルP5を用いて300rpmで5時間運転し、炭酸リチウム粉末とジルコニア(ZrO2)とを強いせん断応力で接触させ、炭酸リチウム粉末にZr元素を含有させた。また、得られた炭酸リチウム粉末の平均粒子径は0.7μmであった。
[リチウム化合物の調整]
リチウム化合物種として炭酸リチウムを100質量部、FeCl3・6H2Oを1.8×10−3質量部を蒸留水に添加し、炭酸リチウムの濃度が0.5wt%の水溶液となるように調整した。得られた水溶液をオイルバスで60℃に加熱し、ホモディスパ―で1時間撹拌した。次いで100℃に加熱して、水分を蒸発させ、Fe元素を含有する炭酸リチウム粉末を析出させた。得られた炭酸リチウム粉末をアルミナ容器に入れて、これをマッフル炉で窒素/水素混合ガスをフローしながら300℃で10時間加熱し、脱塩素化処理を施した。次いで、ジルコニア容器に上記で得た炭酸リチウム粉末と3mmφのジルコニアビーズとを入れて、フリッチェ社製遊星型ボールミルP5を用いて300rpmで5時間運転し、炭酸リチウム粉末とジルコニア(ZrO2)とを強いせん断応力で接触させ、炭酸リチウム粉末にZr元素を含有させた。また、得られた炭酸リチウム粉末の平均粒子径は0.7μmであった。
上記で得た炭酸リチウム粉末を用い、正極活物質に活性炭2を用いた他は、実施例1と同様にして正極前駆体を調製した。また、正極前駆体の正極活物質層に含有されるZr元素及びFe元素の量を実施例1と同様にして測定した。結果を下記表1に示す。さらに、実施例1と同様にして非水系リチウム型蓄電素子を調製し、評価を行った。結果を下記表1に示す。
実施例1〜21、及び比較例1〜4から、正極前駆体の正極活物質層のZr元素の含有量を正極活物質層単位質量当たり0.01ppm以上8ppm以下に調整することにより、これを用いた非水系リチウム型蓄電素子において高いエネルギー密度と低抵抗(すなわち高い出力特性)が発現できることが分かる。
本発明の正極前駆体を用いた非水系リチウム型蓄電素子は、例えば自動車のハイブリット駆動システムの分野において、内燃機関、燃料電池、又はモーターと組み合わせて使用することができ、例えば瞬間電力ピーク時のアシスト用途等に好適に利用できる。
Claims (16)
- リチウム化合物と、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する正極前駆体であって、
該正極活物質は炭素材料を含み、
該正極活物質層におけるZr元素の含有量が、該正極活物質層単位質量当たり0.01ppm以上8ppm以下である、前記正極前駆体。 - 前記正極活物質層におけるFe元素の含有量が、該正極活物質層単位質量当たり0.3ppm以上150ppm以下である、請求項1に記載の正極前駆体。
- 前記正極前駆体中の前記リチウム化合物の含有割合が、前記正極前駆体における正極活物質層を基準として、10質量%以上60質量%以下である、請求項1又は2に記載の正極前駆体。
- 前記リチウム化合物が炭酸リチウム、酸化リチウム、及び水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の正極前駆体。
- 前記炭素材料が活性炭である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の正極前駆体。
- 前記活性炭が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下である、請求項5に記載の正極前駆体。
- 前記活性炭が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下である、請求項5に記載の正極前駆体。
- 正極、負極、セパレータ、及びリチウムイオンを含む非水系電解液からなる非水系リチウム型蓄電素子であって、
該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
該正極活物質は炭素材料を含み、
該非水系リチウム型蓄電素子におけるZr元素の含有量が、該正極活物質層単位質量当たり0.01ppm以上8ppm以下である、前記非水系リチウム型蓄電素子。 - 前記非水系リチウム型蓄電素子に含まれるFe元素が、該正極活物質層単位質量当たり0.3ppm以上150ppm以下である、請求項8に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
- 請求項8又は9に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、蓄電モジュール。
- 請求項8又は9に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、電力回生システム。
- 請求項8又は9に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、電力負荷平準化システム。
- 請求項8又は9に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、無停電電源システム。
- 請求項8又は9に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、非接触給電システム。
- 請求項8又は9に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、エナジーハーベストシステム。
- 請求項8又は9に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、蓄電システム。
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JP2017139368A JP2019021783A (ja) | 2017-07-18 | 2017-07-18 | 正極前駆体、及びそれを用いた非水系リチウム型蓄電素子 |
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CN114744196A (zh) * | 2022-03-28 | 2022-07-12 | 蜂巢能源科技股份有限公司 | 一种c掺杂和包覆的无钴正极材料及制备方法和锂离子电池 |
-
2017
- 2017-07-18 JP JP2017139368A patent/JP2019021783A/ja active Pending
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CN114744196A (zh) * | 2022-03-28 | 2022-07-12 | 蜂巢能源科技股份有限公司 | 一种c掺杂和包覆的无钴正极材料及制备方法和锂离子电池 |
CN114744196B (zh) * | 2022-03-28 | 2024-03-12 | 蜂巢能源科技股份有限公司 | 一种c掺杂和包覆的无钴正极材料及制备方法和锂离子电池 |
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