JP6791008B2 - 炭素鋼鋳片及び炭素鋼鋳片の製造方法 - Google Patents
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Description
従来、上述の炭素鋼においては、MnS等の延伸した硫化系介在物によって、穴拡げ性が劣化することが知られている。
例えば、特許文献2においては、REM添加濃度を0.0060%以下に抑えてCaを適度に添加することにより、浸漬ノズル詰まりや粗大な低融点介在物が大量に発生することを防止している。また、特許文献3においては、REM、Ca、Mgのいずれか一種または2種以上を含む鋼材も提案されている。
しかし、特許文献2,3のように、単に、REMとCaとを添加しただけでは、粗大な介在物が存在し、安定して穴拡げ性を向上することができなかった。
鋳片中に存在する比較的粗大なREM複合介在物(REM−Ca−O−S)は、数個のREMリッチの相と、それを囲うように存在するCaSが主体のCaリッチ相で構成されている。このREM複合介在物(REM−Ca−O−S)は硬質であり、圧延してもそのままの形態で存在しており、粗大なままとなる。
C;0.03%以上0.30%以下、
Si;0.08%以上2.1%以下、
Mn;0.5%以上4.0%以下、
P;0.05%以下、
S;0.0001%以上0.01%以下、
N;0.01%以下、
t.O;0.0005%以上0.005%以下、
Al;0.004%以上2.0%以下、
Ti;0.0001%以上0.20%以下、
REM;0.001%以上0.02%以下、
Ca;0.0011%以上0.005%以下、
を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、REM、Ca、t.Oの質量%をそれぞれ[REM]、[Ca]、[t.O]とした場合に、
0.25≦[Ca]/[REM]≦5 ・・・(1)
0.0011≦[Ca]−0.15×[t.O]≦0.005 ・・・(2)
を満たし、鋳片1/2厚部におけるREM複合介在物の円相当直径が0.5μm以上4μm以下の介在物の個数密度が20個/mm2以上、かつ、円相当直径が10μmを超える介在物の個数密度が0.2個/mm2未満であり、鋳片表面におけるオーステナイト粒径が0.05mm以下であることを特徴としている。
なお、本発明において、オーステナイト粒径は、鋳片表面のオーステナイト粒径を10個測定した測定値の平均値とした。
さらに、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)がAl2O3系耐火物とREM複合介在物(REM−Ca−O−S)の反応時に液相を生じさせるため、ノズルの閉塞を抑制することができる。よって、鋳造を安定して行うことが可能となる。
Mg;0.0003%以上0.002%以下、
Cr;0.001%以上2.0%以下、
Ni;0.001%以上2.0%以下、
Cu;0.001%以上2.0%以下、
Nb;0.001%以上0.2%以下、
V;0.001%以上1.0%以下、
W;0.001%以上1.0%以下、
Zr;0.0001%以上0.2%以下、
As;0.0001%以上0.5%以下、
Co;0.0001%以上1.0%以下、
Sn;0.0001%以上0.2%以下、
Pb;0.0001%以上0.2%以下、
Hf;0.0001%以上0.2%以下、
からなる群から選択される一種又は二種以上を含んでいてもよい。
なお、本発明においては、圧下工程における圧下率(%)を、「{(圧下前の鋳片厚み−圧下後の鋳片厚み)/圧下前の鋳片厚み}×100」と定義する。
そして、Al2O3を含むREM介在物(REM2O3・Al2O3)が十分に存在する状態でCaを添加することで、REMとCaを含むREM複合介在物(REM−Ca−O−S)を安定して生成させることができる。このような溶鋼を連続鋳造し、鋳片1/2厚部の温度が当該炭素鋼鋳片の固相線温度以下であって、1200℃以上の範囲で圧下率10%以上50%以下の圧下をすることで、鋳片表面のオーステナイト粒径を0.05mm以下に制御することができる。本発明は、鋳造中の鋳片を大きく圧下する発明であって、鋳造中の鋳片は鋳片表面と鋳片1/2部の温度差が大きいことを利用して鋳片中心部の圧下効率を高める発明である。したがって、この圧下時の鋳片1/2厚部は鋳片表面よりも変形量が大きくなる。このため、変形量が大きくなる鋳片1/2厚部ほど凝固組織であるデンドライト組織が微細化する。オーステナイト粒径はいくつかのデンドライト組織が合体して形成するため、デンドライト組織が細かくなるほどオーステナイト粒径も微細化する。鋳片1/2厚部のオーステナイト粒径が微細化することによって、粗大なMnSが生成しやすい鋳片1/2厚部でのSの粒界拡散を促進することができ、これによりREM複合介在物(REM−Ca−O−S)を核としたMnSの生成が促進し、単独で生成するMnSの量が減少するため、粗大な介在物が減少し、上述の炭素鋼鋳片を製造することが可能となる。
0.25≦[Ca]/[REM]≦5 ・・・(1)
0.0011≦[Ca]−0.15×[t.O]≦0.005 ・・・(2)
を満たしている。
そして、本実施形態である炭素鋼鋳片においては、鋳片表面におけるオーステナイト粒径が0.05mm以下とされている。
Cは、鋼の焼入れ性と強度を制御する最も基本的な元素であり、焼入れ硬化層を硬くかつ深く形成することで、疲労強度が向上する。
ここで、Cの含有量が0.03%未満では、残留オーステナイト及び低温変態相を十分に生成できず、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Cの含有量が0.30%を超えると、加工性及び溶接性が低下してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Cの含有量を0.03%以上0.30%以下の範囲内に限定している。
Siは、焼入れのための加熱時にオーステナイトの核生成サイト数を増加させ、オーステナイトの粒成長を抑制して、焼入れ硬化層の粒径を微細化させる。また、Siは、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、さらに、ベイナイト組織の生成に対しても有効であり、材料全体の強度を確保する。
ここで、Siの含有量が0.08%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Siの含有量が2.1%を超えると、介在物中のSiO2濃度が高くなり、介在物が粗大化し、靭性、延性、溶接性が低下するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Siの含有量を0.08%以上2.1%以下の範囲内に限定している。
Mnは、鋼の強度を向上させる作用効果を有する元素である。
ここで、Mnの含有量が0.5%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Mnの含有量が4.0%を超えると、Mnの偏析及び固溶強化の増大により延性が低下する。また、溶接性及び母材の靭性が劣化する。
以上のことから、本実施形態では、Mnの含有量を0.5%以上4.0%以下の範囲内に限定している。
Pは、Fe原子よりも小さな置換型固溶強化元素として利用する場合において有効であるが、不可避的に0.0010%は含有される。
ここで、Pの含有量が0.05%を超えると、オーステナイトの粒界にPが偏析し、粒界強度が低下して、加工性が劣化することがある。
以上のことから、本実施形態では、Pの含有量を0.05%以下に限定している。
Sは、鋼中に不純物として含まれて偏析しやすく、MnS系の粗大な延伸介在物を形成して穴拡げ性を劣化させる。
ここで、Sの含有量を0.0001%未満に低減するためには、多大なコストが掛かる。一方、Sの含有量が0.01%を超えると、REMのS固定効果を加味しても、残存するS濃度が高く、穴拡げ性が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Sの含有量を0.0001%以上0.01%以下の範囲内に限定している。
Nは、Al、Ti等の元素と窒化物を形成し、母材組織の微細化を促進する作用効果を有する。
ここで、Nの含有量が0.01%を超えると、粗大な窒化物等が生成し、穴拡げ性が劣化してしまう。なお、Nの含有量を0.0005%未満に低減するためには、多大なコストが掛かる。
以上のことから、本実施形態では、Nの含有量を0.01%以下に限定している。
t.Oは、不可避的に0.0005%は含有される。ここで、t.Oの含有量が0.005%を超えると、粗大な酸化物等が生成し、鋳片の品質が劣化してしまう。
以上のことから、本実施形態では、t.Oの含有量を0.0005%以上0.005%以下の範囲内に限定している。なお、t.O(トータル酸素)は、化合物の状態で鋳片に分散しているOを含むものである。
Alは、溶鋼の脱酸を促進するために添加される元素である。
ここで、Alの含有量が0.004%未満では、十分に脱酸をすることができない。一方、Alの含有量が2.0%を超えると、粗大な介在物(Al2O3クラスター)が発生し、鋳片の品質が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Alの含有量を0.004%以上2.0%以下の範囲内に限定している。
Tiは、炭化物、窒化物、炭窒化物を形成し、結晶粒の微細化及び鋼板の高強度化に寄与し、穴拡げ性を向上させる元素である。
ここで、Tiの含有量が0.0001%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Tiの含有量が0.20%を超えると、粗大な炭窒化物が生成し、穴拡げ性が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Tiの含有量を0.0001%以上0.20%以下の範囲内に限定している。
REMは、Sc、Y、およびLaからLuまでのランタノイドを含む総称である。REMは、Caと共に添加することにより、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)を形成し、特許文献1に記載されているのと同様に、このREM複合介在物にMnSが付着することにより、延伸するMnSの生成を抑制し、穴拡げ性を改善する。
ここで、REMの含有量が0.001%未満では、上述の作用効果を奏することができないおそれがある。一方、REMの含有量が0.02%を超えると、粗大なREM複合介在物(REM−Ca−O−S)が形成され、穴拡げ性が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、REMの含有量を0.001%以上0.02%以下の範囲内に限定している。
なお、REMは、ミッシュメタルと呼ばれるCe、Laを主とする混合物が入手しやすいため、ミッシュメタルを用いて添加することが多い。
Caは、REMと共に添加することにより、上述のようにREM複合介在物(REM−Ca−O−S)を形成し、延伸するMnSの生成を抑制し、穴拡げ性を改善する。また、浸漬ノズルを構成するAl2O3系耐火物とREM複合介在物の反応時に液相を生じさせるため、ノズルの閉塞が抑制される。
ここで、Caの含有量が0.0011%未満では、上述の作用効果を奏することができないおそれがある。一方、Caの含有量が0.005%を超えると、溶鋼中でCaO−Al2O3系の液相介在物を形成し、介在物が粗大化して穴拡げ性を劣化させるおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Caの含有量を0.0011%以上0.005%以下の範囲内に限定している。
ラボ実験結果より、介在物におけるCaの含有量(Ca)とREMの含有量(REM)との比(Ca)/(REM)が0.25以上2.5以下の範囲であれば、浸漬ノズルを構成するAl2O3との反応時に液相を生成し、ノズル閉塞を抑制できることがわかっている。このとき、溶鋼中の[Ca]/[REM]が0.25以上5以下の範囲内に調整することで、生成する介在物において(Ca)/(REM)を0.25以上2.5以下の範囲に制御することが可能となる。
よって、本実施形態では、下記の(1)式を満足するように、鋼中のREMの含有量及びCaの含有量を規定した。
0.25≦[Ca]/[REM]≦5 ・・・(1)
ノズル閉塞を防止するためには、上述のように、介在物において(Ca)/(REM)が0.25以上2.5以下の範囲内であることが重要となる。介在物の組成を上述の範囲に制御するためには、その条件の一つとして上記した(1)式を満たすことが重要であるが、それと同時に、生成する介在物がノズルとの反応時に液相を生成しノズル閉塞を防止し、かつ、溶鋼中で完全に液相となり粗大化してしまうことを防止するためにも、介在物中のAl含有量を調整する必要があることがラボ実験よりわかった。なお、平衡時の介在物中の平均のAl含有量は溶鋼中の酸素含有量とおおよそ比例の関係があることがわかった。このことから、Caとt.Oの関係により介在物中の(Ca)及び(Al)を定義した。
ここで、[Ca]−0.15×[t.O]が0.0011未満の場合、介在物組成のばらつきが大きく、ノズル閉塞の危険性が高い。一方、[Ca]−0.15×[t.O]が0.005超の場合、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)が溶鋼中で液相となり、粗大化するおそれがある。
よって、本実施形態では、下記の(2)式を満足するように、鋼中のCaの含有量及びt.Oの含有量を規定した。
0.0011≦[Ca]−0.15×[t.O]≦0.005 ・・・(2)
そして、残っている領域Eが、介在物の粗大化を防止すると共にMnS系介在物の延伸を抑制でき、かつ、ノズルの閉塞を抑制することができる組成範囲となる。本実施形態では、上述の(1)式によってREM複合介在物(REM−Ca−O−S)の主要成分である(REM)と(Ca)の存在比を規定している。溶鋼中に存在するREMおよびCaはほぼ全てREM複合介在物(REM−Ca−O−S)として存在するため、図1Bに示すように、(1)式に調整することで、領域Eの(REM)と(Ca)の存在比に制御可能となる。さらに、(2)式によって介在物中の(Al2O3)濃度を規定し、介在物組成が安定して領域Eの範囲内となるよう調整している。鋼中の酸素はREMおよびCaの酸化物のほかはほぼ全てAl2O3となり、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)に取り込まれる。REM複合介在物(REM−Ca−O−S)中のAl含有量を低位に制御することで、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)の液相率を抑制し、凝集合体により粗大化を防止している。
REM複合介在物の大部分は円相当直径が0.5μm以上4μm以下の介在物として、炭素鋼鋳片全体に存在する。本実施形態である炭素鋼鋳片において、円相当直径が0.5μm以上4μm以下の介在物の個数密度が20個/mm2未満の場合には、上述のREM複合介在物の個数が少なく、MnSが十分にREM複合介在物に付着できず、REM複合介在物によるMnSの延伸を抑制する効果が発揮できなくなる。このため、穴拡げ性を十分に向上させることができないおそれがある。
また、円相当直径が10μmを超える介在物の個数密度が0.2個/mm2以上である場合には、粗大な介在物によって穴拡げ性が劣化するとともに、粗大介在物に起因した欠陥が発生するおそれがある。
したがって、本実施形態では、REM複合介在物の円相当直径が0.5μm以上4μm以下の介在物の個数密度が20個/mm2以上、かつ、円相当直径が10μmを超える介在物の個数密度が0.2個/mm2未満とされている。
連続鋳造後の連続鋳造鋳片においては、凝固後の冷却時に形成される結晶組織を観察することができる。中でも、MnSが生成する温度以上でのオーステナイトの粒径が小さいほど、Sの拡散が促進しやすいので好ましい。ここでオーステナイト粒径とは、連続鋳造中において、凝固が完了した鋳片が冷却される過程で、鋳片温度がオーステナイト域にあるときに形成されたオーステナイト相の粒径を意味する。鋳造後の鋳片は、フェライト変態域を経由して冷却されるため、オーステナイト相が観察されないことが多いが、鋳片のオーステナイト粒径は凝固組織であるデンドライトの成長方向と垂直な断面を観察し、デンドライトの方向が同一である領域をオーステナイト粒径として評価することができる。
オーステナイト粒径は、凝固直後圧下時の変形量が小さい鋳片表層部で評価した。板厚中心部は、鋳片表面よりも温度が高いため変形量が大きく、微細となる。鋳片表面でのオーステナイト粒径が0.05mmを超える場合には、凝固途中でSの粒界拡散が充分進行せず、付着MnSの生成量が減少し、穴拡げ性が劣化するおそれがある。したがって、本実施形態では、鋳片表面でのオーステナイト粒径の平均値を0.05mm以下に設定している。
なお、オーステナイト粒径の下限に特に制限はないが、本発明に係る鋳片の製造方法によっても、平均値で0.0005mm程度が下限である。
また、オーステナイト粒径は、鋳片表面のオーステナイト粒径を10個測定した測定値の平均値とした。
次に、本実施形態である炭素鋼鋳片の製造方法について、図2のフロー図を参照しつつ説明する。
まず、質量%で、C;0.03%以上0.30%以下、Si;0.08%以上2.1%以下、Mn;0.5%以上4.0%以下、P;0.05%以下、S;0.0001%以上0.01%以下、N;0.01%以下、Ti;0.0001%以上0.20%以下、を含む溶鋼を準備する。
次に、溶鋼にAl等の脱酸剤を添加し、t.Oの含有量が0.0005%以上0.005%以下になるように脱酸処理する。Oの含有量は溶存酸素と介在物中の酸素とを合わせた全酸素濃度であるから、Alの含有量を0.004%以上2.0%以下の範囲内とすることによって、この工程後の介在物の浮上除去の影響なども含めて、通常の操業技術の範囲で予測調整が可能である。なお、必要に応じて脱硫剤を添加して仕上げ脱硫処理を行っても良い。また、Cr,Ni,Cu等の任意添加元素をこの工程で添加しても良い。
次に、溶鋼にREMを、鋳片内で0.001%以上0.02%以下になるように添加する。すると、Al2O3およびMgO・Al2O3とREMとが反応し、ついでにSとも反応して、REM−Al−O−S介在物が多数形成される。
そして、REMを添加後に5分以上撹拌を実施する。これにより、上述のREM−Al−O−S介在物を十分に形成する。
次に、(1)式および(2)式を考慮しつつ、Ca添加歩留まりも考慮して、溶鋼にCaを鋳片内で0.0011%以上0.005%以下になるように添加する。すると、REM−Al−O−S介在物とCaとが反応し、REM複合介在物(REM−Ca−O−S)が多数形成される。
次に、上述の溶鋼を連続鋳造装置の鋳型へと注入して炭素鋼鋳片を連続的に鋳造する。このとき、鋳片1/2厚部の温度が当該炭素鋼鋳片の固相線温度以下から1200℃以上の温度範囲で、圧下率10%以上50%以下の圧下を行う。これにより、粗大なREM複合介在物(REM−Ca−O−S)が破砕される。
そして、微細に分散されたREM複合介在物(REM−Ca−O−S)にMnSが付着することで粗大なMnSの生成を抑制し、圧延時のMnSの延伸を抑制することができる。よって、穴拡げ性を確実に向上させることが可能となる。
さらに、Al2O3系耐火物とREM複合介在物(REM−Ca−O−S)の反応時に液相を生じさせるため、ノズルの閉塞が抑制される。よって、鋳造を安定して行うことができる。
この後にREMを添加するREM添加工程S03を有しているので、Al2O3を含むREM介在物(REM2O3・Al2O3)が生成される。また、REMを添加して5分以上撹拌する撹拌工程S04を備えているので、Al2O3を含むREM介在物(REM2O3・Al2O3)を確実に生成することができる。
さらに、連続鋳造工程S06及び圧下工程S07を有しているので、粗大なREM複合介在物(REM−Ca−O−S)が圧下により破砕され、上述の炭素鋼鋳片を製造することが可能となる。
例えば、Al等の脱酸剤および脱硫剤を添加することによってOおよびS濃度を調整するものとして説明したが、これに限定されることはなく、その他の手段によってOおよびS濃度を調整してもよい。
表1に記載した溶鋼成分に調整した溶鋼を、垂直曲げ連続鋳造装置を用いて、鋳造幅2000mm、鋳片厚み240mmの鋳型に鋳造した。なお、本鋼種における固相線温度は1459℃である。
次に、実施例1の結果に基づいて、炭素鋼鋳片の成分組成の影響について確認を行った。
表3に記載された溶鋼成分になるように、図2に示した手順で添加元素を添加した。すなわち、RHでAlを添加した後に、REMとしてFe−Si−REM合金をRHで添加した。REM添加後5分以上撹拌した後で、Ca−Siをワイヤーで添加した。そして、得られた溶鋼を連続鋳造機によって鋳造した。連続鋳造中の冷却過程において、鋳片1/2厚部の温度が当該炭素鋼鋳片の固相線温度以下で1200℃以上の温度範囲内で、連続鋳造中の鋳片を20%圧下した。鋳造後、得られた鋳片の1/2厚部から観察試料を採取し、円相当直径が粒径10μmを超える介在物および0.5μm以上4μm以下の介在物の個数密度を算出した。評価結果を表4に示す。
REMの含有量が本発明の範囲よりも多かった比較例2−2においては、(1)式の範囲を外れてもいたが、そもそもREMが多すぎたために粗大な介在物(REM−Ca−O−S)が多く生成し、穴拡げ性の改善が不十分であった。また、ノズル閉塞が認められた。
Caの含有量が本発明の範囲よりも少なく(2)式の範囲を外れた比較例2−4においては、ノズルの閉塞が認められた。
S03 REM添加工程
S04 撹拌工程
S05 Ca添加工程
S06 連続鋳造工程
S07 圧下工程
Claims (3)
- 質量%で、
C;0.03%以上0.30%以下、
Si;0.08%以上2.1%以下、
Mn;0.5%以上4.0%以下、
P;0.05%以下、
S;0.0001%以上0.01%以下、
N;0.01%以下、
t.O;0.0005%以上0.005%以下、
Al;0.004%以上2.0%以下、
Ti;0.0001%以上0.20%以下、
REM;0.001%以上0.02%以下、
Ca;0.0011%以上0.005%以下、
を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、
REM、Ca、t.Oの質量%をそれぞれ[REM]、[Ca]、[t.O]とした場合に、
0.25≦[Ca]/[REM]≦5 ・・・(1)
0.0011≦[Ca]−0.15×[t.O]≦0.005 ・・・(2)
を満たし、
鋳片1/2厚部のREM複合介在物の円相当直径が0.5μm以上4μm以下の介在物の個数密度が20個/mm2以上、かつ、円相当直径が10μmを超える介在物の個数密度が0.2個/mm2未満であり、
鋳片表面におけるオーステナイト粒径が0.05mm以下であることを特徴とする炭素鋼鋳片。 - さらに、質量%で、
Mg;0.0003%以上0.002%以下、
Cr;0.001%以上2.0%以下、
Ni;0.001%以上2.0%以下、
Cu;0.001%以上2.0%以下、
Nb;0.001%以上0.2%以下、
V;0.001%以上1.0%以下、
W;0.001%以上1.0%以下、
Zr;0.0001%以上0.2%以下、
As;0.0001%以上0.5%以下、
Co;0.0001%以上1.0%以下、
Sn;0.0001%以上0.2%以下、
Pb;0.0001%以上0.2%以下、
Hf;0.0001%以上0.2%以下、
からなる群から選択される一種又は二種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の炭素鋼鋳片。 - 請求項1又は請求項2に記載の炭素鋼鋳片を製造するための炭素鋼鋳片の製造方法であって、
溶鋼に対してAlを添加して脱酸を行うAl脱酸工程と、
Alを添加した溶鋼に、REMを添加するREM添加工程と、
REMを添加して5分以上撹拌する撹拌工程と、
撹拌後の溶鋼にCaを添加するCa添加工程と、
Caを添加した後に連続鋳造する連続鋳造工程と、
連続鋳造工程の冷却過程において、鋳片の圧下を行う圧下工程と、を備えており、
前記圧下工程では、鋳片1/2厚部の温度が当該炭素鋼鋳片の固相線温度以下で1200℃以上の温度範囲内で、圧下率10%以上50%以下の圧下をすることを特徴とする炭素鋼鋳片の製造方法。
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