以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。まず、充填される高温の液体に対する耐熱性を有し、装着されるキャップの閉塞リングによって密封されるプラスチックボトルを成形するための本実施形態に係るプリフォーム1(予備成形体)の構成を詳細に説明する。図1は本実施形態に係るプリフォーム1の一例が示された正面図である。なお、以下では、説明の便宜上、プリフォーム1の一端側の開放された側が上を向いた図1の状態におけるプリフォーム1の口部10を上とする。
本実施形態に係るプリフォーム1は、一端側が開放された有底筒状であって、開放された側の口部10と、底の側の胴部15とを備える。口部10は、その上端に、環状の開口端11を有するとともに外方に突出する環状のサポートリング12をその下端に有する。
口部10の外周には、ここでは図示せぬブロー成形機でプリフォーム1がボトル状に成形された後にここでは図示せぬキャップが取り付けられるためのおねじ13(ねじ)が設けられる。更に、口部10は、その外周におけるサポートリング12と、おねじ13との間に外方に突出する環状のカブラ14を有する。なお、サポートリング12は、カブラ14よりも外方に突出する。
口部10は、ブロー成形機による成形後もその形状が変化しない。一方で、胴部15は、円筒状であって、ブロー成形の際に、ボトルの形状となるように膨らむ部分である。胴部15は、口部10(サポートリング12の下面)に連接された首部16と、首部16に連設された胴中部17と、胴中部17に連設された底部18とを有する。
首部16は例えば、口部10の側から胴中部17の側に向かって縮径する逆円錐台状に構成されている。すなわち、首部16の上端(サポートリング12の直下)における胴径より首部16の下端における胴径は小とされている。更に、首部16は、ブロー成形性を良好にする観点から、口部10の側から胴中部17の側に向かって厚みが増すように構成されていても良い。すなわち、首部16の上端における肉厚より首部16の下端における肉厚は大とされていても良い。
胴中部17の胴径、及び肉厚は上下方向にほとんど変化しない略真円筒形状である。ただし、胴中部17には、射出成形によるプリフォーム1の作製の際に用いられる金型からの取り出しを容易にするための傾斜である抜き勾配が設けられていても良く、その胴径、及び肉厚が上下方向にわずかに変化していても良い。
底部18は外方に湾曲した略半球状に構成されている。なお、底部18は、円錐形状であったり、角に丸みを持った円柱形状であったり、その他の形状であっても良い。底部18には、プリフォーム1が射出成形によって作製される際の溶融樹脂の流入口(ゲート)において付随的に形成された固化した部分が付着している。図1には、その部分が切り取られた後の形態が示されている。
なお、サポートリング12の下面から底部18の下端までの距離が胴部15の高さH1である。更に、胴中部17における外周側の直径が胴部15の外径D1とされる。胴部15の高さH1は50mm以上、90mm以下であることが好ましい。更に、胴部15の外径D1は16mm以上、25mm以下であることが好ましい。
プリフォーム1の材料としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、エチレン−ビニルアルコール共重合体、植物等を原料としたポリ乳酸等のブロー成形が可能な種々のプラスチックを用いることができる。しかしながら、プリフォーム1は、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、特に、ポリエチレンテレフタレートが主成分とされることが好ましい。なお、上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で、種々の添加剤、例えば、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤を配合することができる。
プリフォーム1を構成するエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂として、エステル反復部分の大部分、一般に70モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50℃以上、90℃以下であり、融点(Tm)が200℃以上、275℃以下の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートが耐圧性等の点で特に優れているものの、エチレンテレフタレート単位以外に、イソフタル酸や、ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸と、プロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは熱可塑性の合成樹脂の中では生産量が最も多い。そして、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、耐熱性、耐寒性や、耐薬品性、耐摩耗性に優れる等の種々の特性を有する。更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂はその原料に占める石油の割合が他のプラスチックと比べて低く、リサイクルも可能である。このように、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする構成によれば、生産量の多い材料を用いることができ、その優れた種々の特性を活用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール(エタン−1,2−ジオール)と、精製テレフタル酸との縮合重合によって得られる。ポリエチレンテレフタレートの重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられることが好ましい。これらの触媒が用いられることによって、アンチモン化合物が用いられるよりも、高い透明性を有し、耐熱性に優れた容器を形成することができる。
プリフォーム1は、主原料となるペレット形状のポリエチレンテレフタレートが例えば射出成形されることによって形成されたものである。射出成形には、ホッパドライヤ、ホッパ、加熱シリンダ、スクリュ、金型、冷却機等を備える射出成形装置が用いられる。ペレット形状のポリエチレンテレフタレートが、乾燥、可塑化、射出、及び加圧、並びに冷却の工程を経てプリフォーム1が形成される。
なお、プリフォーム1は多層で構成されていても良い。多層の内の少なくとも1層はバリア層や、酸素吸収層を有する構成であっても良い。バリア層には例えば、ポリアミドや、エチレン−ビニルアルコール共重合体が用いられる。酸素吸収層には、酸化可能有機成分、及び遷移金属触媒の組み合わせ、あるいは実質的に酸化しないガスバリア性樹脂等を含む層が用いられる。このようなバリア層や、酸素吸収層によって、酸素透過防止機能を付与することができる。
なお、プリフォーム1が単層で構成される場合においても、酸素除去化合物としての例えばポリアミドがポリエチレンテレフタレートに混合されても良い。このような構成によって、単層であっても、酸素透過防止機能を付与することができる。なお、紫外線遮蔽性等の他の特性についても同様である。
本実施形態に係るプリフォーム1からボトル状に成形されたプラスチックボトルにはキャップが取り付けられる。そこで、次に、口部10に装着されるキャップの構成を詳細に説明する。図2は、口部10に、ねじ込み式のキャップ60が装着された状態が示された部分断面図である。口部10に、キャップ60が巻き締めされて装着されることでプラスチックボトル、例えばPETボトル2が密封される。なお、キャップ60の材料としては、ポリプロピレンや、高密度ポリエチレン等が用いられる。
キャップ60は、口部10に装着された際に上側に位置するキャップ本体61と、その下側に位置する剥離リング70とを備える。剥離リング70はリング状である。剥離リング70は、その内周側の面から内方かつ上方に向かって突出する複数のフラップ71を備える。フラップ71は、PETボトル2が初期密封の状態となるまで口部10にキャップ60が巻き締めされる際には剥離リング70の内周の側に倒れ、カブラ14を乗り越えた後には、剥離リング70の内周から離れるように構成される。キャップ本体61と、剥離リング70とは、キャップ60の初期開栓時に破断可能に構成される連結部材72を介して連結されている。
初期密封時のフラップ71は、カブラ14と、サポートリング12との間に配置される。キャップ60が開封方向に回されると、フラップ71の上端がカブラ14に当たって、剥離リング70の上方向への移動が阻止される。更に、キャップ60が回されると、連結部材72が破断し、キャップ本体61と、剥離リング70とが切り離される。そして、剥離リング70が、カブラ14と、サポートリング12との間に残った状態で、キャップ本体61は口部10から取り外される。このように、キャップ60は、初期開栓が行われたか否かが一目でわかる不正開封防止機能、いわゆるタンパーエビデント性を有する。
キャップ本体61は、円板状の上部62と、上部62の周縁から垂下される円筒状の胴部63とを有する。胴部63は、その内周側の面に、口部10のおねじ13とかみ合うめねじ64を有する。キャップ60は、口部10と密着してPETボトル2を密封する閉塞リングを有する。図2では、閉塞リングが、キャップ60の径方向の内側から順に上部62の内面から環状に垂下されたインナーリング65と、コンタクトリング66と、アウターリング67とによって構成される例が示されている。
インナーリング65はその外周側の面に、キャップ60の外方に向かって突出する突出部を有し、このインナーリング65の突出部が口部10の内周面10aと接触する。コンタクトリング66の下方先端部は口部10の開口端11と接触する。アウターリング67はその内周側の面に、キャップ60の内方に向かって突出する突出部を有し、このアウターリング67の突出部が、口部10の外周面10bと接触する。そして、これらの3箇所の接触によってPETボトル2の密封が保たれている。なお、閉塞リングは、上述された3箇所の内の少なくとも1箇所あればPETボトル2を密封することができる。しかしながら、図2に例示されたように、インナーリング65と、コンタクトリング66と、アウターリング67とを備えることによってより確実な密封性を実現することができる。
プリフォーム1を構成する主原料のポリエチレンテレフタレートは、分子鎖が結晶化した結晶領域部分(結晶部)と、結晶化していない非晶領域部分(非晶部)とが混在している。ポリエチレンテレフタレートは、非晶部が流動性をもつガラス転移温度の約70℃以上、かつ結晶部も流動する融点の約260℃以下、特に140℃以上、160℃以下程度で加熱処理されると、分子鎖の配向が起こって結晶部の割合が増える性質を有する。このような、結晶部と、非晶部との和に対する結晶部は結晶化度と称される。そして、結晶化度が高いほど分子間力が強まるため耐熱性が向上することとなる。
なお、結晶部は、非晶部よりも密度が高いため、結晶化度が高いほど密度も高くなる。すなわち、ポリエチレンテレフタレートは、密度が高いほど耐熱性が高くなる特性を有する。更に、非晶部と、結晶部とでは屈折率が異なることによってこれらの境界で散乱が起こるため、結晶部が増えるほど光が散乱しやすくなって、ヘーズ(可視光領域での透過光の内の散乱光の百分率)が高くなる。すなわち、ポリエチレンテレフタレートは、ヘーズが高いほど耐熱性が高くなる特性を有する。
一方で、ポリエチレンテレフタレートは加熱処理を行うことで収縮や変形が生じ、これは、結晶化度が低いほど顕著になる。したがって、プリフォーム1の形状や寸法を維持する観点からは加熱処理の行われる箇所が可能な限り絞られることが好ましい。
口部10は、インナーリング65や、コンタクトリング66、アウターリング67との接触によってPETボトル2の密封が保たれている。口部10のインナーリング65等との接触部が変形してしまうとその度合いによっては、PETボトル2の密封が保てなくなる。したがって、口部10には特に、インナーリング65等との接触部において充填される高温の液体の熱による変形が生じないことが要求される。これに対し、口部10の中でも、インナーリング65等との接触部からは離れた箇所ではそれほど高い耐熱性が必要とされず、更に、加熱処理による収縮や変形が可及的に発生しないことが望まれる。例えば、おねじ13は、熱によって収縮すると、キャップ60のめねじ64とのかかりが悪くなって緩みやすくなる。更に、開口端11の側よりも、サポートリング12の側は厚肉であるため、もともと、熱への耐性がより強い。
以上のことから、本実施形態に係るプリフォーム1は、インナーリング65や、コンタクトリング66、アウターリング67との接触部を含む開口端11の側と、サポートリング12の側とで密度が異なり、開口端11の側は、サポートリング12の側よりも密度が高く構成される。これによって、プリフォーム1から成形されるPETボトル2の耐熱性を開口端11の側で特に高めることができる。そして、開口端11の側と、サポートリング12の側とで密度の差が0.004g/cm3以上、0.045g/cm3以下であることがより好ましい。このような密度の差が設けられることによって、開口端11の側での寸法の変化が極めて小さな水準の加熱処理でありながら耐熱性をより確実なものとすることができる。
密度は、開口端11の側、及びサポートリング12の側の一部をそれぞれ例えば1mm四方に切り取った切り取り片を試料として、比重法、例えば密度勾配管法によって測定することができる。開口端11の側、及びサポートリング12の側の密度をそれぞれ測定することによって、本実施形態に係るプリフォーム1であるか否かを判定することができる。
ここでの開口端11の側は、口部10のインナーリング65等との接触部が含まれれば良い。特に、口部10の側壁の部分が含まれることが重要とされる。図1には、開口端11の側の上下方向の長さaと、サポートリング12の側の上下方向の長さbとが示されている。より具体的に、開口端11の側は、開口端11からサポートリング12に向かって長さaが5mmまでの領域であれば良い。多くの場合において、口部10と、インナーリング65との接触する位置は開口端11の側から2mm乃至3mm程度である。したがって、開口端11からサポートリング12に向かって長さaが5mmまでの領域の耐熱性が高まっていれば、充填される高温の液体の熱によって、口部10のインナーリング65等との接触部が変形せず、PETボトル2の密封が保たれる。
本実施形態に係るプリフォーム1では、射出成形等によって形成された段階での口部10が非結晶である。したがって、口部10は、部分的に、開口端11の側が結晶化されており、サポートリング12の側が非結晶であれば良い。このように構成される本実施形態に係るプリフォーム1によれば加熱処理の際に、収縮や変形についての対策が必要となる範囲を小さくすることができる。
プリフォーム1の段階で、開口端11の側が、サポートリング12の側よりも密度が高く構成される口部10はPETボトル2に成形された後もその形状が変化しない。口部10の形状は、標準的に広く用いられているキャップ60との嵌合性、成形装置や充填装置等によるPETボトル2の搬送適性、搬送時や充填時等に必要とされる強度が考慮されて設計される。
したがって、本実施形態に係るプリフォーム1の口部10の外径(おねじ13の谷径D2(図1参照)に相当)、内径、おねじ13の山径D3、及び高さは例えば、飲料用のボトルで標準的に用いられている寸法とされることが好ましい。この際に、口部10は、常温充填に標準的に広く用いられる寸法から変更されることなく成形されることが特に好ましい。これによって、常温充填用の金型を活用して、耐熱性を有する本実施形態に係るプリフォーム1の成形用の金型を共用することができるため、効率を高めることができるとともに、新たな金型を必要としないため、費用を抑えることができる。
口部10は例えば、PCO(Plastic Closure Only)1810規格や、PCO1881規格に対応した寸法とされると良い。より具体的に、口部10の外径(おねじ13の谷径D2)は24.94mm±0.13mmであることが好ましい。更に、口部10の内径は21.74mm±0.13mmであることが好ましい。更に、おねじ13の山径D3は27.43mm±0.13mmであることが好ましい。更に、口部10の高さは21.00mm±0.25mm(PCO1810規格)、及び17.00mm±0.25mm(PCO1881規格)のいずれかであることが好ましい。なお、口部10の高さは、サポートリング12の下面から口部10の上端までの距離である。更に、常温充填用のキャップ60との嵌合性を考慮するとおねじ13の谷径D2は26mm以下であることが好ましい。
次に、本実施形態に係るプリフォーム1の結晶化装置の構成を詳細に説明する。図3は
プリフォーム1の結晶化装置90が例示された要部縦断面図であり、図4は、図3のIV−IV線断面図(横断面図)である。結晶化装置90は少なくとも、プリフォーム1の口部10を保持する保持具91と、口部10を加熱処理する加熱処理部92とを備える。そして、結晶化装置90は、プリフォーム1の口部10の内で開口端11の側を部分的に結晶化するために加熱処理するものである。
図3、及び図4に例示される保持具91には例えば、PCO1810規格による口部10の外径、及び内径に対応した環状の溝91aが形成されている。溝91aは、プリフォーム1の開口端11の側が入り込むように構成される。そして、溝91aは、少なくとも、口部10と、インナーリング65(図2参照)との接触する領域がすべて入り込む深さ、好ましくは、開口端11の側から5mm(開口端11の側の長さaに対応)入り込む深さを有している。保持具91は、おねじ13、及びおねじ13よりも開口端11の側に対応した形状、すなわち、プリフォーム1の仕上がり寸法に形成された溝91aを有する。
加熱処理部92は、口部10の開口端11の側を加熱処理するように構成される。加熱処理部92は保持具91の中に、例えばヒータが埋め込まれることによって構成されている。ヒータとしては、例えばシリコンラバーヒータが用いられても良い。図3に例示される加熱処理部92は、口部10の外周面10bに沿った位置に設けられている。
なお、加熱処理部92は、図4に示されるように、開口端11の周方向に不連続に配置されることがより好ましい。加熱処理部92が不連続に配置されることによって開口端11の側が加熱処理された際に周方向の全体で一斉に変形することが防止されるため、結果的に、加熱処理による変形を効果的に抑制することができる。更に、加熱処理部92が周方向に不連続に配置される場合にはその数が8箇所であることが特に好ましい。加熱処理部92が8箇所であることによって、対称性を有して均整のとれた加熱処理を行うことができ、かつ加熱処理による変形をより効果的に抑制することができる。
結晶化装置90は、加熱処理部92によって、例えば160℃〜180℃程度にまで温められたヒータが、開口端11に接触することで開口端11の側の領域が加熱されて部分的に結晶化されるように構成されている。
一方で、保持具91の溝91aは、プリフォーム1の外周の側、及び内周の側の両方において、開口端11の側の領域が加熱された際の膨張、及びその後の収縮や変形を抑制することができるように構成されている。
このように、結晶化装置90は、加熱処理部92によって、開口端11の側の領域を加熱して部分的に結晶化させ、保持具91によって、加熱による開口端11の側の領域の収縮や変形を抑え込み、寸法の変化が許容範囲に収まるように構成されている。したがって、本実施形態によれば、口部10が、常温充填に標準的に広く用いられる形状であっても、充填される高温の液体による収縮や変形に起因する密封性の低下が抑制されたプリフォーム1に仕立てるためのプリフォーム1の結晶化装置90を提供することができる。
結晶化装置90には、プリフォーム1の加熱される箇所を開口端11の側の局所的に限定するために断熱材93が更に設けられていても良い。断熱材93は例えば、保持具91に積層するように設けられても良く、開口端11の側と、サポートリング12の側との間、特に、おねじ13の付近に対応して配置されると良い。更に、図3に例示されるように、加熱処理部92が、口部10の外周面10bに沿って設けられる場合には、断熱材93は、口部10の内周面10aや、開口端11に沿って設けられても良い。断熱材93には、耐熱性、及び圧縮強度に優れた材料が選択される。断熱材93としては例えば、ガラス繊維に、熱硬化性樹脂が含浸された上で板状に加熱、及び加圧処理された材料が用いられれば良い。
結晶化装置90には、プリフォーム1の加熱される範囲を限定するために冷却装置94が更に設けられていても良い。冷却装置94は、加熱される口部10の特にサポートリング12の側の周辺を冷却するように構成される。図3、及び図4に例示される冷却装置94は例えば、伝熱媒体を冷却する冷風発生装置94aと、冷風発生装置94aによって冷やされた冷風acを送り出す図示せぬ送風機と、口部10の内周の側に導かれる冷風acが通過する冷風導入流路94bとによって構成されている。
冷風導入流路94bは、平面視で、保持具91の中央に形成されている。冷風導入流路94bは、保持具91にプリフォーム1が設置された際の開口端11の内周に対応する位置に、プリフォーム1の軸方向に沿って延びて形成されている。
すなわち、結晶化装置90は、冷却装置94によって、例えば0℃程度にまで冷やされた冷風acが、冷風導入流路94bを通過して口部10の内周の側に接触することでサポートリング12の側が冷却されるように構成されている。なお、冷風導入流路94bを通過する冷風acによって保持具91の特に中央も加熱されることが防止されるように構成されている。そして、保持具91を通して、開口端11の側の領域が加熱されすぎないように構成されている。したがって、冷却装置94は、加熱処理部92による加熱によってプリフォーム1が収縮、及び変形することを防止する機能を有している。
なお、加熱処理部92が、プリフォーム1の内周の側に設けられ、冷却装置94が、プリフォーム1の外周の側に設けられ、加熱処理部92と、冷却装置94との配置が逆とされていても構わない。更に、冷却装置94は、いわゆるチラーによって構成され、伝熱媒体が保持具91の中央を循環するようになされていても良い。なお、冷却装置94の伝熱媒体は、断熱材93よりもサポートリング12の側を循環するようになされていても良い。
結晶化装置90は、プリフォーム1の成形装置と、PETボトル2の成形装置との間においてインライン方式で構成されていても良く、特に、結晶化装置90は、プリフォーム1の成形装置とインライン方式で構成されていることが好ましい。結晶化装置90は、プリフォーム1の成形装置に組み込まれていても良い。
次に、本実施形態に係るプリフォーム1の製造方法を詳細に説明する。まず、プリフォーム1は、例えば射出成形によって口部10が非結晶の状態で形成される。そして、プリフォーム1はこの状態から、結晶化装置90によって開口端11の側が、サポートリング12の側よりも密度が高くなるように加熱処理される。より具体的に、プリフォーム1は、結晶化装置90の溝91aに押し込まれることによって保持具91に取り付けられる。結晶化装置90に取り付けられたプリフォーム1の開口端11の側は、プリフォーム1の仕上がり寸法に形成された溝91aを有する保持具91に固定された状態となる。
この状態で、開口端11の側の外周側から当てられているヒータが、例えば180℃に温められる。そして、結晶化装置90は、インナーリング65、コンタクトリング66、及びアウターリング67(図2参照)との接触部を含む開口端11の側をサポートリング12の側よりも密度が高くなるように加熱処理する。ヒータによって加熱される開口端11の側は結晶化が進む。その際に、開口端11の側には収縮や変形が生じるものの、溝91aに嵌合されているため開口端11の側からおねじ13の周辺までの寸法の変化は許容範囲に収まる。一方で、サポートリング12の側は加熱されないので収縮や変形は生じず、結晶化もされない。
なお、図4に示されるように、開口端11の側を周方向に不連続に加熱処理することがより好ましい。開口端11の側を周方向に不連続に加熱処理することによって周方向の全体で一斉に変形することが防止されるため、結果的に、加熱処理による変形を効果的に抑制することができる。更に、周方向に8箇所で加熱処理することが特に好ましい。8箇所で加熱処理することによって、対称性を有して均整のとれた加熱処理を行うことができ、かつ加熱処理による変形をより効果的に抑制することができる。
このようにして、充填される高温の液体に対する耐熱性を有し、装着されるキャップ60のインナーリング65、コンタクトリング66、及びアウターリング67によって密封されるPETボトル2を成形するためのプリフォーム1を製造することができる。
ここで、ホット充填に多用されている結晶化口では、結晶化の際の収縮分が予め含まれた設計で金型が製作されている場合が多い。一方で、常温充填に多用されている非結晶化口では、その厚さを大とすること等によってある程度は耐熱性を有する状態にできるもののそれにも限度があり、熱による非結晶化口の天面付近での内周の側や外周の側への変形、すなわち、この部分からの漏れが特に問題になる。更に、非結晶化口のその厚さを大にするほど、キャップ60とのかみ合わせが難しくなる。これに対し、本実施形態に係るプリフォーム1では、口部10が非結晶である状態から結晶化させることによって非結晶化口と金型を共通化させることができて効率的である。更に、本実施形態に係るプリフォーム1では、口部10の寸法変化を一定以下に抑えることによって広く用いられている非結晶化口用のキャップ60を使用しながら高温充填することができる。
結晶化装置90によって、プリフォーム1の開口端11の側が加熱される際には開口端11の側と、サポートリング12の側との間が断熱されることがより好ましい。例えば、開口端11の側と、サポートリング12の側との間に対応して設けられた断熱材93は、加熱処理部92から開口端11の側に加わる熱がサポートリング12の側に伝わることを防止する。したがって、断熱材93が設けられることによって、プリフォーム1の加熱される箇所を開口端11の側の局所的に限定することができる。
更に、結晶化装置90によって、プリフォーム1の開口端11の側が加熱される際にはサポートリング12の側の付近が冷却されることがより好ましい。例えば、保持具91の中央に設けられた冷却装置94はサポートリング12の側を冷却する。そして、保持具91を通して、加熱処理部92が開口端11の側を加熱しすぎることを防止する。したがって、冷却装置94が設けられることによって、プリフォーム1の加熱される範囲を開口端11の側の局所的に限定することができる。なお、開口端11の側が加熱される前に予め、サポートリング12の側の付近が冷却されることが、加熱される範囲を開口端11の側の局所的に限定する上でより好ましい。
なお、ここでは、プリフォーム1の開口端11の側を加熱処理する方法としてヒータで直接加熱処理する方法が例示されたものの、開口端11の側が部分的に加熱処理されれば良く、その方法は限定されない。例えば、熱風を供給する方法でも良く、赤外線ランプの輻射熱によるものでも良く、オイルバスに浸漬する方法でも良い。更に、高周波誘電加熱による方法でも良い。
次に、本実施形態に係る充填体の製造方法において形成されるプラスチックボトルの構成を詳細に説明する。図5は本実施形態に係るプラスチックボトルの一例としてのPETボトル2が示された正面図である。図5に例示されたPETボトル2は水平方向の断面視が略正方形の角ボトルである。PETボトル2は、口部10と、肩部20と、胴部30と、底部40とを有する。なお、上述されたように、PETボトル2の口部10の構成はプリフォーム1の口部10の構成と同様である。そして、PETボトル2の口部10は部分的に結晶化された状態である。すなわち、PETボトル2の口部10は、開口端11の側が、サポートリング12の側よりも密度が高く構成される。
肩部20は、その上側が口部10のサポートリング12の下面に連なり、一方で、その下側が胴部30に連なる。肩部20は、上方から下方に向かって拡径する略四角錐台の形状を有する。肩部20は、胴部30との接続端から鉛直方向に延びる長さLの直線部21を有していることが好ましい。肩部20は、直線部21を有する構成によって賦形性を良好とすることができる。
胴部30は、互いに同一の形状からなる4つの壁部31が周(水平)方向に連接して、全体として略正四角筒の形状を有している。壁部31の各々は、1段内方に凹んだ圧力吸収パネル32を備えている。圧力吸収パネル32は、PETボトル2の内部の圧力変化、特に減圧変化を吸収し、かつPETボトル2の強度、特に、胴部30の水平方向の荷重に耐える強度である側壁強度を保持する機能を有する。
圧力吸収パネル32は、周囲の壁部31の表面から1段内方に凹んだ段壁面33と、段壁面33から内方に更に凹んで段壁面33の対辺の間、例えば水平方向に直線状に延びる複数の凹状リブ34(リブ)とを有している。更に、段壁面33の周囲を取り囲み、段壁面33に対して傾斜する傾斜面が形成されている。壁部31と、段壁面33とは傾斜面によって接続されている。
圧力吸収パネル32を構成する段壁面33は水平方向に、左右両端から中央に向け、PETボトル2の内方に湾曲している。一方で、垂直方向においても、段壁面33の上下両端から中央に向け、PETボトル2の内方に湾曲していても良い。このように構成されることによってPETボトル2が陽圧になっても、圧力吸収パネル32の段壁面33は鉛直となるまでは変形せず、その後に、PETボトル2が陰圧になると内側に湾曲するという挙動を示すようにすることができる。このように、段壁面33は、高温の液体が充填された後に密封され、常温に冷却されるまで、内方への湾曲が維持されるように構成されることが好ましい。
段壁面33の表面には、段壁面33の左端から右端まで連続的に延びる凹状リブ34を有している。凹状リブ34は、その本数、及び寸法が適切となるように設計されることが好ましい。図5の例示では凹状リブ34は、段壁面33の上端から下端まで上下方向の全域にわたって等間隔に9本配置されている。凹状リブ34が、適切に配置されることによって、減圧吸収機能を充分に発揮することができ、更に、PETボトル2に加わった応力を分散させ、PETボトル2を補強する効果が充分に得られる。
凹状リブ34は、その深さが一定に形成されていても良いものの、左右両端から中央に向けてより深くなるように形成されることが好ましい。凹状リブ34は中央で最深である構成によれば、陽圧によって、PETボトル2の外側に出っ張りやすくなることを防止することができる。
PETボトル2はわずかながら、酸素の透過性を有している。そして、PETボトル2内での保存が長期間に及ぶと、内容物によっては酸化が起こり、これによって、PETボトル2内が減圧する。その他にも、内容物の充填時と、保管時との温度差によってもPETボトル2の内部の圧力が変化する。内部で減圧が生じたPETボトル2は内方に引っ張られて変形が生じる。このとき、圧力吸収パネル32は、段壁面33と、凹状リブ34との凹凸面が伸ばされることによって容易に内方に向けて変形する。圧力吸収パネル32は、PETボトル2内が減圧された際に、PETボトル2の内方に凹むことによって、PETボトル2全体の変形を防止する役割を果たす。すなわち、圧力吸収パネル32は、PETボトル2の壁部31の外方には出っ張らず、内方にはある程度凹むように構成されている。
なお、圧力吸収パネル32は、PETボトル2内が増圧された際にもPETボトル2全体の変形を防止する役割を果たす。このような構成を有する圧力吸収パネル32によって、PETボトル2の開栓時に、PETボトル2の壁が内方へ押圧されて内容物が口部10から押し出されてこぼれることも防止することができる。そして、圧力吸収パネル32は、胴部30の剛性を高めることができる。
PETボトル2の壁部31はラベルが装着される部位である。ラベルは、例えば、PETボトル2に被せられた筒状のポリスチレン(PS:PolyStyrene)や、ポリエチレンテレフタレート等の熱収縮性フィルムに熱を当てて収縮させるシュリンクラベルによって装着される。そして、筒状の熱収縮性フィルムの寸法は予め定められた値に決まっているので、壁部31が膨れていると、熱収縮性フィルムが詰まったり、入らなかったりする不具合が生じる。
しかしながら、圧力吸収パネル32を備えることによって、壁部31の外方への出っ張りが阻止され、ラベルの装着が円滑に行われ、生産性を向上させることができる。更に、圧力吸収パネル32を備えることによって、PETボトル2に内容物が充填された商品の外観を良好に保ち、商品価値の低下を防止することができる。
なお、上述のように、圧力吸収パネル32は、水平方向に延びる複数の凹状リブ34を備えることが圧力が分散される点でより好ましいものの、任意の方向に延びる凹状や凸状の図示せぬリブを有していても良い。
更に、凸状のリブの場合には、PETボトル2が陽圧の際にリブの凸部が、壁部31の表面より外方に突出しないように設計されることが好ましい。したがって、PETボトル2が陽圧の際に、凸状のリブの突出方向の真横からPETボトル2を見ると凸状のリブは見えない。このように構成されるリブは、PETボトル2の対面の寸法に影響を与えない。したがって、本実施形態に係るPETボトル2は段ボール等への箱詰めの積載効率が優れている。更に、本実施形態に係るPETボトル2は、シュリンクラベルの装着に影響を与えない効果も有している。
PETボトル2は、圧力吸収パネル32の上方、及び下方に、壁部31を横切る環状の横溝35を有することが好ましい。横溝35は、側壁強度を向上させる機能を有する。なお、横溝35は、ラベルの装着の際の位置合わせに用いることもできる。
一方で、横溝35のような水平方向の補強リブが1本でも存在すると、そこがクッションとなり、上下方向の荷重に対して、座屈はしないものの変位が大きくなる。そして、変位が小さい範囲での上下方向の荷重に耐える強度である座屈強度が下がる。そこで、横溝35が形成されている場合には、PETボトル2は、隣り合う壁部31の間に、縦方向に延びる縦溝36を有することが好ましい。縦溝36は、胴部30の座屈強度を向上させる。縦溝36は、同じ箇所に、少なくとも1本形成される。場合によっては、縦溝36は、同じ箇所に2本から3本形成されていても良い。しかしながら、縦溝36の数が多すぎると、凹凸が多くなり、賦形性が悪くなる。なお、PETボトル2が横溝35を有する構成の場合には、上述された肩部20の直線部21がより長く形成されることが賦形性の観点から好ましい。
胴部30の最も下側の領域がヒール部37である。ヒール部37は、プリフォーム1からPETボトル2が成形される際に、プリフォーム1の底部18(図1参照)からの距離が長く、その分だけ延伸倍率が高くなるので、薄肉化し、時には白化してしまいやすい箇所である。
底部40はその上方が、胴部30の下方に連なる。底部40は、底壁41と、ドーム42とを有している。略平板環状の底壁41は、胴部30に対して垂直方向に延び、PETボトル2の接地面となる。ドーム42は、底壁41の内周において底壁41から、PETボトル2の内方(上方)へ突出するように構成され、底部40の強度を向上させる機能を有する。なお、ドーム42には、ドーム42を補強する機能を有する図示せぬリブが底面視で放射状に複数設けられることが好ましい。
底壁41からドーム42の中央部42cまでの高さhは仮に、ドーム42が熱によって変形してもPETボトル2の接地面よりも高く維持されるように設計されれば良い。これによって仮に変形したとしても、底壁41より外方に突出することが防止され、PETボトル2のがたつきや、転倒を防止することができる。したがって、充填体をインラインで、外観が良好な状態で作製することができ、充填体の搬送適性や、積載効率が低下することを防止することができる。なお、底部40の構成は、図5の例示に限らず、熱によって変形しやすい状態で陽圧化しても外側に出っ張りにくく構成されていれば良い。
なお、サポートリング12の下面から底部40の下端の底壁41までの距離が胴部30の高さH2である。更に、胴部30における一組の対辺の間の距離がPETボトル2の胴部30の外径D4とされる。
PETボトル2の特にサポートリング12より下の形状は、図5等の例示に限らず、プリフォーム1がブロー成形されることによって形成され、熱、及び陽圧によって過度に変形せず、陰圧を吸収してその形状を保つことができるボトルであればどのような形状であっても良く、例えば丸ボトルであっても良い。そして、胴部30に形成される圧力吸収パネル32や、横溝35、縦溝36の形状についても、その効果が充分に機能する範囲で自由に設計することができる。
本実施形態に係るPETボトル2にはサイズによる限定はなく、種々のサイズに対して適用することができる。例えば、PETボトル2の容積が100ml以上、2000ml以下であっても良い。PETボトル2の全高は100mm以上、300mm以下であっても良く、胴部30の外径D4は30mm以上、80mm以下であっても良い。更に、本実施形態に係るPETボトル2は軽量化ボトルを対象として好適に用いることができる。PETボトル2の質量は例えば、1000mlに対しては20g以上、40g以下、500mlに対しては15g以上、25g以下であると良い。
以上のような構成によって、口部10が、常温充填に標準的に広く用いられる形状であっても、充填される高温の液体による収縮や変形に起因する密封性の低下が抑制されたPETボトル2を提供することができる。
なお、このようにして成形された口部10と肩部20と胴部30と底部40とを有するPETボトル2と、このPETボトル2に充填される内容物と、内容物の充填されたPETボトル2を密封するキャップ60とによって本実施形態に係る充填体が構成される。
次に、本実施形態に係る充填体の製造装置について詳細に説明する。図6は、本実施形態に係る充填体80の製造装置100が模式的に示された概略図である。本実施形態に係る充填体80の製造装置100は、開口端11の側が、サポートリング12の側よりも密度が高くなるように加熱処理されたプリフォーム1の胴部15を加熱する加熱部と、プリフォーム1から金型を用いてPETボトル2をブロー成形する成形部と、PETボトル2に高温の液体を充填する充填部と、PETボトル2の口部10にキャップ60を装着する装着部と、PETボトル2の口部10とキャップ60とを転倒殺菌する転倒殺菌部と、PETボトル2を冷却する冷却部とを備える。そして、本実施形態に係る充填体80の製造装置100は、予備成形体であるプリフォーム1からPETボトル2を成形する装置や、PETボトル2に高温の液体を充填する装置等がすべてインライン方式で構成されることを特徴とする。
なお、ここでのインライン方式とは、成形部と、充填部とが連結している(シンクロ)方式でも良く、成形部と、充填部とが離れてPETボトル2がエア搬送されるセパレート式でも良い。更に、本実施形態に係る充填体80の製造装置100においてインライン方式で構成される種々の装置の中にはプリフォーム1を形成する射出成形装置や、プリフォーム1の開口端11の側を結晶化するプリフォーム1の結晶化装置90等が含まれていても良い。
ボトル成形機110は、加熱部としての加熱装置111と、成形部としての二軸延伸ブロー成形装置112とを有する。プリフォーム1がボトル状に成形されるにあたってまず、プリフォーム1の加熱が行われる。
図7は、プリフォーム1の加熱装置111の一例が示された断面図である。なお、図7は、プリフォーム1の搬送方向に対して垂直方向の断面を示す。
加熱装置111は、搬送装置113と、ヒータ114とを備える。搬送装置113は、プリフォーム1の胴部15を周方向に均等に加熱するために、プリフォーム1の軸を中心に回転させながら搬送するように構成される。ヒータ114は、複数の例えばハロゲンランプによって構成され、ブロー成形に適した温度、例えば115℃以上、135℃以下にプリフォーム1の胴部15を加熱するように構成されている。更に、加熱装置111は、ヒータ114からの熱をプリフォーム1の胴部15に反射させるための反射板115や、ヒータ114からの熱を加熱装置111の外方へ逃がさないようにするための遮蔽部材116等を備えていても良い。なお、図7の加熱装置111では、プリフォーム1は口部10が下側を向いた状態で搬送、及び加熱されている。
図8は、プリフォーム1と、ブロー成形後のPETボトル2とが模式的に示された断面図である。二軸延伸ブロー成形装置112は、金型117と、延伸ロッド118と、図示せぬエア供給装置と、これらを制御する制御装置とによって構成される。なお、図8には、下向きのブロー成形方法の二軸延伸ブロー成形装置112が例示されているものの、材料が重力の影響を受けにくい上向きのブロー成形方法が用いられても良い。
金型117は、形成されるPETボトル2に対応した形状を有して例えば、胴部30に対応して半割りで構成される胴金型117aと、底部40に対応した底金型117bとを有する。胴金型117aの表面の温度は、例えば90℃以上、125℃以下、好ましくは90℃以上、120℃以下、より好ましくは90℃以上、115℃以下に制御されるように構成されている。一方で、底金型117bの表面の温度は、5℃以上、30℃以下に制御されるように構成されている。なお、胴金型117aの表面の温度は、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移点(Tg)を超えている。
金型117の表面の温度が120℃以下とされることによって、金型117の材質として例えば、重量が大きく、取り扱う上での作業負荷の大きなステンレスの焼き入れ焼き戻し鋼や、金型用鋼材ではなくアルミニウムを用いることができる。アルミニウムが用いられることによって、金型117の加工が容易となって設計の自由度が上がるとともに、作製費用を抑えることができる。また金型117の重量が軽くなるため、金型交換作業が容易となる。
胴金型117aは、少なくとも一部の表面、より具体的にはPETボトル2のヒール部37と接触する箇所にしぼ加工(粗面加工)が行われた粗面部117Rを有することが好ましい。粗面部117Rの形成方法には特に限定はなく、サンドブラストや研磨処理等の物理的な処理方法であっても良く、エッチング等の化学的な処理方法であっても良い。ヒール部37は一般的に賦型しにくい箇所である。これは、本実施形態に係る充填体80の製造装置100において設定されているプリフォーム1の加熱温度や、胴金型117aの表面の温度において特に顕著となる。しかしながら、ヒール部37と接触する箇所に粗面部117Rが設けられることによって離形が良くなり、局所的な過度な収縮が生じることが防止され、その結果としてPETボトル2の賦形性が向上する。
延伸ロッド118は金型117の内部を伸縮自在に構成される。そして、延伸ロッド118は、金型117に口部10の取り付けられたプリフォーム1の胴部15を縦(軸)方向に延伸するように構成される。エア供給装置からは、圧力、及び温度の調節されたエアPが吹き出されるように構成される。エアPは、金型117に取り付けられたプリフォーム1の内部に供給されれば良く、延伸ロッド118から吹き出されても良く、延伸ロッド118とは別の部材から吹き出されても構わない。エアPは、プリフォーム1の胴部15を横(径)方向に延伸するように構成される。延伸ロッド118から吹き出されるエアPは、胴部15の表面温度を下げて急冷させるとともに、耐熱性を向上させる。
図6に示されるように、ホット充填機120は、充填部としてのフィラ121と、装着部としてのキャッパ122とを有する。フィラ121は、加温殺菌された高温の液体の内容物例えば飲料50を高温、例えば71℃以上、95℃以下、より好ましくは81℃以上、90℃以下でそのまま、PETボトル2に注入するように構成されている。装着部としてのキャッパ122は、飲料50の充填されたPETボトル2の口部10にキャップ60を装着するように構成される。なお、PETボトル2は、装着されたキャップ60によって密封され、充填体80を構成する。
転倒殺菌部としての転倒殺菌機130は、充填体80を予め定められた時間例えば30秒90度以上に傾けて、高温の飲料50の熱によって、充填体80の内部特に、PETボトル2の口部10と、キャップ60とを殺菌するように構成される。なお、殺菌時間は、飲料50の種類、及び温度に応じて適宜設計される。
冷却部としてのパストライザ140は、熱交換液としての複数の温度の水を貯留する例えば4槽の恒温槽と、ノズル等の噴出口とを有する。パストライザ140は、高温水例えば70℃の水を散布して充填体80を外側から加温殺菌した後に、散布する水の温度を段階的に下げていき、最終段階で、低温水例えば30℃の水を散布して充填体80(PETボトル2)を冷却するものである。パストライザ140による冷却は、充填体80に充填された飲料50の風味の変化を防ぐ効果を有する。パストライザ140の1槽目に収容される液体の温度は70℃以下であることが好ましい。70℃以下で、充填体80を急冷させることによってPETボトル2の胴部30への熱によるダメージを少なくすることができる。
充填体80の製造装置100は、これらの装置の後段として、ラベラ、及びケーサ150、並びに印字装置、及び検査装置等を有する。ラベラは、充填体80(PETボトル2)にラベルを貼りつけるものである。ケーサは、予め定められた数例えば24本毎に充填体80を段ボールに箱詰めするものである。以上に挙げられた装置等が用いられて本実施形態に係る充填体80が製造される。
次に、本実施形態に係る充填体80の製造方法について詳細に説明する。図9は、本実施形態に係る充填体80の製造工程の概要が示された流れ図である。本実施形態は少なくとも、開口端11の側が、サポートリング12の側よりも密度が高くなるように加熱処理されたプリフォーム1の胴部15を加熱する工程と、プリフォーム1から金型117を用いてPETボトル2をブロー成形する工程と、PETボトル2に高温の飲料50を充填する工程と、PETボトル2の口部10にキャップ60を装着する工程と、PETボトル2の口部10とキャップ60とを転倒殺菌する工程と、PETボトル2を冷却する工程とを備える。そして、本実施形態は、プリフォーム1からのPETボトル2の成形や、PETボトル2への高温の飲料50の充填等の工程をすべてインライン方式で行うことを特徴とする。以下では、各工程を更に詳細に説明する。
まず、ボトル成形機110へのプリフォーム1の供給が行われる(ステップS1)。なお、上述されたように、本実施形態に係る充填体80の製造装置100にはプリフォーム1を形成する射出成形装置や圧縮成形装置、圧縮射出成形装置等がインライン方式で構成されていても良い。そして、この場合には、ボトル成形機110へ供給されるプリフォーム1の射出成形装置での形成がインライン方式で行われる。そして、ボトル成形機110へはプリフォーム1がコールドパリソン方式や、ホットパリソン方式で、かつインライン方式で供給される。
更に、上述されたように、本実施形態に係る充填体80の製造装置100には、開口端11の側が、サポートリング12の側よりも密度が高くなるように加熱処理する結晶化装置90がインライン方式で構成されていても良い。なお、結晶化装置90と、充填体80の製造装置100とはインライン方式で構成されていなくても良く、その場合においても、結晶化装置90と、プリフォーム1を形成する射出成形装置とがインライン方式で構成されていることが好ましい。本実施形態に係る充填体80の製造方法においては口部10が非結晶の状態から結晶化装置90によって開口端11の側が加熱処理されたプリフォーム1が用いられる。供給されたプリフォーム1は整列された上で搬送される。
次に、プリフォーム1の加熱が行われる(ステップS2)。ボトル成形機110の加熱装置111に搬送されたプリフォーム1の胴部15は複数のヒータ114によって、例えば115℃以上、135℃以下の温度に加熱される。
加熱されるプリフォーム1の温度が115℃未満の場合には耐熱性が不足しており、その後に成形されたPETボトル2は、高温の内容物を充填するホット充填に対応することができず、いびつに変形する。一方で、加熱されるプリフォーム1の温度が135℃を超える場合にはボトル成形前のプリフォーム1は結晶化しすぎてブロー成形ができなくなる。その点で、加熱されるプリフォーム1の温度が135℃以下であれば結晶化が多少進むものの、ブロー成形することは可能な状態である。
次に、プリフォーム1の延伸によるPETボトル2のブロー成形が行われる(ステップS3)。加熱されたプリフォーム1は、二軸延伸ブロー成形装置112の金型117に装着される。本実施形態に係る充填体80の製造方法においては胴金型117aの表面の温度が90℃以上、125℃以下、好ましくは90℃以上、120℃以下、より好ましくは90℃以上、115℃以下とされる。この範囲の温度とされることによって、PETボトル2の外表面、特に胴部30が結晶化され、耐熱性を有する構成となる。したがって、後の工程において、高温の飲料50を充填することを可能としたPETボトル2を作製することができる。胴金型117aの表面の温度が90℃未満の場合には耐熱性が低くなり、一方で、胴金型117aの表面の温度が125℃を超える場合には、PETボトル2が胴金型117aに接触した際の初期収縮が大きくなって変形、すなわちヒケが発生しやすくなる。
ここで、本実施形態においては、加熱されるプリフォーム1の温度、及び胴金型117aの表面の温度がともに一定水準を上回ることで、その効果が具現される。そして、プリフォーム1の胴部15の温度は、胴金型117aの表面の温度より高いことがより好ましい。胴部15の温度が、胴金型117aの表面の温度より高いと上述された初期収縮が起こりにくくなる。
まず、金型117に装着されたプリフォーム1の胴部15が延伸ロッド118によって縦方向に延伸される。この際のプリフォーム1からPETボトル2への縦延伸倍率は1.8以上、4.0以下であることが好ましい。ここで、縦延伸倍率とは、プリフォーム1の胴部15の高さH1(図1、及び図8参照)に対するPETボトル2の胴部30の高さH2(図5、及び図8参照)の比(H2/H1)である。非晶部と、結晶部との集合体であるアモルファス構造を有するプリフォーム1の分子は延伸によって配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル2の強度、剛性、及び耐熱性が上がる。したがって、後の工程において、高温の飲料50を充填することを可能としたPETボトル2を作製することができる。縦延伸倍率が1.8未満の場合にはプリフォーム1の分子の配向性が上がらず、一方で、縦延伸倍率が4.0を超える場合にはPETボトル2が成形しにくくなる。
更に、エア供給装置から、圧力、及び温度の調節されたエアPが吹き出されてプリフォーム1の内部に供給される。まず、プリフォーム1の縦方向への延伸とともに供給される例えば5bar以上、16bar以下の低圧エアP1によってプリフォーム1の胴部15が横方向に、胴金型117aに当たらない程度に延伸(プリブロー)される。その後に、プリフォーム1の胴部15が、例えば20bar以上、38bar以下の高圧エアP2によって横方向に、胴金型117aに当たるまで0.5秒から1.5秒程度で延伸される。
この際のプリフォーム1からPETボトル2への横延伸倍率は1.8以上、3.0以下であることが好ましい。ここで、横延伸倍率とは、プリフォーム1の胴部15の外径D1(図1、及び図8参照)に対するPETボトル2の胴部30の外径D4(図5、及び図8参照)の比(D4/D1)である。プリフォーム1の分子は横方向の延伸によっても同様に配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル2の強度、剛性、及び耐熱性が上がる。したがって、後の工程において、高温の飲料50を充填することを可能としたPETボトル2を作製することができる。横延伸倍率が1.8未満の場合にはプリフォーム1の分子の配向性が上がらず、一方で、横延伸倍率が3.0を超える場合にはPETボトル2が成形しにくくなる。
なお、PETボトル2の胴部30の結晶化が進み過ぎて延伸しにくくならないように、プリフォーム1が金型117に装着されてからPETボトル2の形状に延伸されるまでは予め定められた時間内に収まるように制御される。
本実施形態に係る充填体80の製造方法において、ブロー成形する工程の中で、PETボトル2に冷却エアの吹き付けが更に行われても良い(ステップS4)。図10は、PETボトル2への冷却エアC1の吹き付けの一例が示された概略図である。
二軸延伸ブロー成形装置112の金型117に二軸延伸ブロー成形されたPETボトル2が張り付く。そして、延伸ロッド118が、金型117、及びPETボトル2の内側に配置される。延伸ロッド118には、冷却エア吹き付け部119が設けられている。冷却エア吹き付け部119は、エア供給装置に連通しており、圧力、及び温度の調節された高圧の冷却エアC1が吹き出されるように構成されている。冷却エア吹き付け部119を備えることによって、PETボトル2が胴金型117aに接触した際の初期収縮による変形を改善することができる。なお、冷却エアC1の圧力は高圧エアP2と同じで良く、冷却エアC1の吹き付けの時間は高圧エアP2の1/10から4/5程度で良い。より詳細には、冷却エアC1の吹き付けの時間は、0.1秒から1.5秒、及び高圧エアP2の時間の1%から90%、より好ましくは60%から80%のいずれかであることが好ましい。
延伸ロッド118には径(横)方向に通気孔が形成されており、PETボトル2の胴部30の内表面に対して略垂直方向に冷却エアC1が吹き付けられる。PETボトル2の胴部30は胴金型117aに触れるとすぐに収縮が始まる。そこに、冷却エアC1が吹き付けられることによって胴部30が、胴金型117aの方向に押し付けられてその変形が抑えられるとともに胴部30に耐熱性が付与される。したがって、ブロー成形されて高温状態のPETボトル2の胴部30は冷却エアC1が吹き付けられることによって結晶化がより促進される。冷却エアC1の温度は、1℃以上、30℃以下であることが好ましい。冷却エアC1の温度が1℃未満の場合には、胴部30に温度分布が生じてひずみが発生しやすくなり、一方で、冷却エアC1の温度が30℃を超える場合には、胴部30が冷却されにくくなって、その耐熱性が落ちる。
別の方法として、延伸ロッド118から吹き出される高圧エアP2を段階的に冷却エアC1に切り替えるようになされても良い。この方法によっても、PETボトル2の胴部30は結晶化が促進される。ブロー成形における高圧エアP2を吹き込む工程の内でその終了段階から例えば1%から90%、より好ましくは60%から80%の時間において冷却エアC1の割合を漸増させるようになされると良い。なお、その時間が短すぎる場合には、この方法による効果が表れにくくなり、時間が長すぎる場合には、胴部30の結晶化が促進されにくくなる。
なお、PETボトル2の胴部30の外表面側にも冷却エアC1を吹き付けることが好ましい。こうすることで、PETボトル2の胴部30の外表面側も結晶化が促進される。なお、胴部30の外表面への冷却エアC1の吹き付けは金型117が開いてから行われても良く、次の工程に移るまで吹き付けが継続されるようになされても良い。
このように、PETボトル2の胴部30に冷却エアC1が吹き付けられることによって、胴部30の収縮を効果的に抑えながら胴部30に耐熱性を付与することができ、更に、胴部30の表面温度を速やかに下げてPETボトル2の作製に要する速度を短縮することができる。更に、PETボトル2の胴部30に冷却エアC1の吹き付けが行われる場合には胴部30の収縮を効果的に抑えることができるため、胴金型117aの表面の温度を例えば125℃のようにより高く設定することができる。したがって、冷却エアC1の吹き付けが行われることによって、結晶化をより促進することができ、より高い温度の耐熱性を有するPETボトル2を作製することができる。
PETボトル2の胴部30の結晶化度は25%以上、39%以下であることが好ましい。結晶化度がこの範囲であればプリフォーム1から、耐熱性を有するPETボトル2を賦形性良く成形することができる。なお、PETボトル2の胴部30の結晶化度は密度から導出することができる。その他に、PETボトル2の胴部30の結晶化度はラマン分光分析によっても評価することができる。
本実施形態に係る充填体80の製造方法によって作製されたPETボトル2の胴部30の密度は1.367g/cm3以上、1.380g/cm3以下である。PETボトル2の胴部30の密度は、胴部30の一部を例えば1cm四方に切り取った切り取り片を試料として、上述された開口端11の側、及びサポートリング12の側の密度と同様に比重法、例えば密度勾配管法によって測定することができる。インライン方式で構成される製造装置100で作製された充填体80におけるPETボトル2の胴部30の密度を測定することによって、本実施形態に係る充填体80の製造方法が用いられたか否かを判定することができる。
更に、本実施形態に係る充填体80の製造方法によって作製されたPETボトル2の胴部30の引張破壊ひずみは40%以上、68%以下である。
PETボトル2の胴部30の引張破壊ひずみの計測方法としては、胴部30の一部を例えば短辺10mm×長辺50mmに切り出された切り取り片が試料とされ、長辺方向に延びる試料の一方が固定された上で85℃で、300mm/分で長辺方向に引っ張られる。そして、PETボトル2の胴部30の引張破壊ひずみは、何%引っ張った際に切れるかを計測することによって調べることができる。インライン方式で構成される製造装置100で作製された充填体80におけるPETボトル2の胴部30の引張破壊ひずみを計測することによって、本実施形態に係る充填体80の製造方法が用いられたか否かを判定することができる。なお、ここでは、試料が切れる際に示す最大の荷重が引張強さであり、更に断面積で除された値が引張応力である。
ブロー成形されたPETボトル2は金型117から離れる。本実施形態に係る充填体80の製造方法においてはインライン方式であるためブロー成形の時間が可及的に短くされており、PETボトル2に収縮が生じやすい状況になっている。しかしながら、胴金型117aの粗面部117Rにはしぼ加工が行われているため、粗面部117Rとヒール部37とは、ベタな面ではなく点での接触となり、ヒール部37が内側に収縮したり、波打ったりすることがなくヒケが生じにくい。したがって、PETボトル2の賦形性を良好にすることができる。更に、本実施形態に係る充填体80の製造方法では、耐熱ボトルと比べて製造の時間を短縮することができ、製造効率を高め、製造費用を下げることができる。
本実施形態に係る充填体80の製造方法によって作製されたPETボトル2のヒール部37の表面粗さ(Ra)は0.3μm以上、3μm以下である。この程度の表面粗さであれば、耐熱性を有しながら透明であるという特徴を維持することができる。ヒール部37の表面粗さの指標としては例えば、算術平均粗さRaを用いることができる。算術平均粗さRaの計測方法としては、レーザ顕微鏡によって得られた3次元データを画像解析することによって調べることができる。インライン方式で構成される製造装置100で作製された充填体80におけるPETボトル2の胴部30、特にヒール部37の表面粗さを計測することによって、本実施形態に係る充填体80の製造方法が用いられたか否かを判定することができる。
次に、図9に示されるように、ホット充填機120へのPETボトル2の供給が行われる(ステップS5)。本実施形態に係る充填体80の製造装置100はインライン方式で構成されているため、成形されたPETボトル2は速やかに、ホット充填機120に供給される。供給されたPETボトル2は、例えば複数の回転する円板状の搬送ホイールの各々の外周部に取り付けられたグリッパによって順次受け渡しが行われ、フィラ121まで運ばれる。なお、PETボトル2の成形後、ホット充填機120に供給されるまでの時間は10秒以内であることが好ましい。このように、本実施形態に係る充填体80の製造方法はインライン方式であるため、PETボトル2が加湿による耐熱性の低下が少ない状態で飲料50の充填に供される。
一方で、ホット充填機120では、PETボトル2に充填される飲料50の加温殺菌が行われる(ステップS6)。加温殺菌は、飲料50の特性、例えば酸性度や水分活性に応じて、120℃で4分間や、85℃で30分間等といったように所定の温度、及び保持時間に適宜設定されてなされる。
そして、ホット充填機120のフィラ121においてPETボトル2への飲料50の充填が行われる(ステップS7)。フィラ121は、加温殺菌された高温の液体の内容物例えば飲料50を高温、例えば71℃以上、95℃以下、より好ましくは81℃以上、90℃以下でそのまま、PETボトル2に注入する。飲料50の充填されたPETボトル2は同様に、グリッパによって順次受け渡しが行われ、キャッパ122まで運ばれる。
本実施形態に係る方法で作製されたPETボトル2は、ホット充填として広く供されている胴金型117aの温度が160℃以上で成形されたようなもの程には耐熱性を有していない。しかしながら、PETボトル2は、上述された温度範囲、例えば71℃以上、95℃以下、より好ましくは81℃以上、90℃以下の高温の飲料50が充填されるのに充分な耐熱性を有するように作製される。そして、本実施形態に係る充填体80の製造方法においては、PETボトル2が成形された直後の最も耐熱性が維持された時点での飲料50の充填が行われる方法が用いられる。したがって、本実施形態に係る充填体80の製造方法によれば、PETボトル2に、高温の飲料50を問題なく充填することができる。
このように、PETボトル2は高温の飲料50を充填することを可能としている。このため、例えば71℃以上、95℃以下、より好ましくは81℃以上、90℃以下の高温の飲料50でPETボトル2の内面を充分に殺菌することができる。そして、充分な殺菌が行われることによって、充填体80に飲料50とともに酸素が封入されても好気性の雑菌が繁殖する危険性が極めて低いため、PETボトル2に飲料50が必ずしも満注充填されなくても構わない。したがって、本実施形態に係る方法によれば、充填が満注であるほど生じやすくなるPETボトル2の外面における菌の繁殖や、飲料50が高温であるほど生じやすくなる口部10の特に開口端11の側の熱変形を効果的に防止することができる。
なお、上述されたように、本実施形態に係る充填体80の製造方法においては、PETボトル2のブロー成形と、PETボトル2への飲料50の充填とがインライン方式で行われるため、PETボトル2の耐熱性が高い状態で維持されている。しかしながら、PETボトル2の耐熱性をより維持する観点からは、充填体80の製造装置100の内で少なくとも、PETボトル2のブロー成形が行われてからPETボトル2への飲料50の充填が行われるまでの間の領域においては予め定められた湿度以下、好ましくは40%以下の環境でPETボトル2が保持されるとなお良い。
次に、ホット充填機120のキャッパ122にはキャップ60の供給が行われる(ステップS8)。なお、キャップ60に対しては、例えば紫外線照射による滅菌が行われても構わないものの、本実施形態に係る充填体80の製造方法においてはキャップ60が、飲料50の充填前には非滅菌であっても良い。なお、キャップ60が滅菌されることによって、飲料50の充填温度や、パストライザ140の温度を下げることができ、充填体80の製造の際に必要とされるPETボトル2の耐熱性を下げることができる。
そして、キャッパ122において、PETボトル2へのキャップ60の装着が行われる(ステップS9)。これによって、本実施形態に係る充填体80が形成される。本実施形態においては、開口端11の側が、サポートリング12の側よりも密度が高くなるように加熱処理され、耐熱性を有しているため、キャップ60の装着の際に変形が生じず、PETボトル2を確実に密封することができる。なお、ここまでの工程は、例えば無菌領域のような清浄度や、温度、湿度等の環境条件について管理が行われている空間において実行されることが好ましい。形成された充填体80は例えばコンベア等の搬送帯によって転倒殺菌機130まで運ばれる。
次に、転倒殺菌機130によって充填体80の転倒殺菌が行われる(ステップS10)。転倒殺菌機130は充填体80を例えば横倒ししながら搬送する。充填体80が転倒されることによってキャップ60や、PETボトル2の特に口部10付近の内面は高温の飲料50と接触することで殺菌される。本実施形態においては、開口端11の側が、サポートリング12の側よりも密度が高くなるように加熱処理され、耐熱性を有しているため、転倒殺菌の際にも変形が生じず、PETボトル2が密封した状態を確実に維持することができる。
続いて、パストライザ140によって充填体80の冷却が行われる(ステップS11)。上述されたように、パストライザ140の1槽目に収容される液体の温度は70℃以下であることが好ましい。70℃以下で、充填体80を急冷させることによってPETボトル2の口部10への熱によるダメージを少なくすることができる。その後に、パストライザ140の2槽目以降によって充填体80の内部の飲料50の液温が段階的に下げられていき、最終的には常温となるまで冷却される。
その後に、ラベラ、及びケーサ150によって充填体80にラベルが貼りつけられた上で段ボールに箱詰めされる。以上の方法によって本実施形態に係る充填体80が製造される。
本実施形態に係る充填体80の製造方法によって作製された充填体80の減圧量は1kPa以上、15kPa以下である。充填体80の減圧量は、圧力計、例えば隔膜(ダイアフラム)式圧力計によって測定することができる。減圧量の測定は、圧力計が備える検出器と連通する穿孔針を充填体80のヘッドスペースに差し込んで行われる。インライン方式で構成される製造装置100で作製された充填体80の減圧量を測定することによって、本実施形態に係る充填体80の製造方法が用いられたか否かを判定することができる。なお、この際の充填体80の減圧量には内容物に応じた値が適宜設定される。
以上に説明が行われた各工程を備えることによって、ホット充填に適用可能な耐熱性を有するPETボトル2、及び飲料50がホット充填された充填体80がインラインで作製される充填体80の製造方法を提供することができる。なお、本実施形態に係るプリフォーム1やPETボトル2は、その開口端11の側が耐熱性を充分に有するため、PETボトル2の胴部30の側が充分な耐熱性を有していれば、インラインでない製造方法に適用することもできる。
本実施形態に係る充填体80の製造方法によれば、予め成形されたプラスチックボトルが内容物の充填装置に供給される方法とは異なり、PETボトル2が成形されてから時間をおかずに高温の飲料50を充填する工程に進むことができる。このため、PETボトル2の胴部30の結晶化度が下がる前に充填が始められ、その耐熱性を低下させずに高温の飲料50を充填することができる。なお、ボトル成形機110(二軸延伸ブロー成形装置112)と、ホット充填機120(フィラ121)との間のPETボトル2の搬送路を単に接続するよりもこれらの機械を1つの装置として結合することで、その効果はより高まる。
広く用いられている耐熱ボトルが成形される際には胴金型117aの温度が、例えば150℃以上、165℃以下のように高く設定されている。胴金型117aの温度が上がると、初期収縮が大きくなって変形が生じたり、金型117の材質が限定されて費用が嵩んだり、外部環境、特に気温との温度差が大きくなって耐熱ボトルの耐熱性や形状等の品質のばらつきが大きくなったりする。更に、胴金型117aの温度が上がると、高圧エアP2が吹き付けられる時間を増やす必要があり、製造能力が落ちる。これに対し、本実施形態に係る充填体80の製造方法によれば、広く用いられている耐熱ボトルよりもPETボトル2の耐熱性が低くても高温の飲料50を充填することが可能であって胴金型117aの温度を下げることができる。このため、本実施形態に係る充填体80の製造方法によれば上述された問題が生じることを防止することができる。
更に、本実施形態に係る充填体80の製造方法によれば、予め成形されたプラスチックボトルが内容物の充填装置に供給される方法よりも高速でPETボトル2の成形ができるインライン方式が用いられているため、充填体80の製造の費用を下げることができる。
更に、本実施形態に係る充填体80の製造方法によれば、PETボトル2ではなくプリフォーム1が供給される方式が用いられているため、材料の輸送の費用を下げることができる。すなわち、PETボトル2がインラインで成形される場合には、充填体80の製造装置100に供給される容器の形態をPETボトル2より嵩の小さなプリフォーム1へと変更することができ、容器の製造元からの輸送本数を大幅に、例えば6倍以上に増やすことが可能となる。したがって、PETボトル2のボトル成形機110がインライン化された本実施形態に係る充填体80の製造装置100、及び製造方法は、容器の輸送費用の削減や、環境負荷の低減に寄与することとなる。
次に、別の実施形態に係る充填体80の製造方法について詳細に説明する。図11は、別の実施形態に係る充填体80の製造工程の概要が示された流れ図である。別の実施形態に係る充填体80の製造方法は図9に示される製造方法に対し、PETボトル2に冷却エアC1を吹き付ける工程(ステップS4)が省略されることを特徴とする。なお、ここでは、別の実施形態に係る製造方法において、図9に示される製造方法と同様の部分の説明については適宜省略される。
別の実施形態に係る製造方法では、図9に示される製造方法と同様に、プリフォーム1の延伸によるPETボトル2のブロー成形が行われる(ステップS3)。ただし、別の実施形態に係る充填体80の製造方法においては胴金型117aの表面の温度が90℃以上、115℃以下とされる。
ここでも、ステップS2において加熱されるプリフォーム1の胴部15の温度は、胴金型117aの表面の温度より高くされることが好ましい。胴部15の温度が、胴金型117aの表面の温度より高いと初期収縮が起こりにくくなる。
そして、図9に示される製造方法と同様に、金型117に装着されたプリフォーム1の胴部15が延伸ロッド118によって縦方向に延伸される。更に、縦方向に延伸されたプリフォーム1の胴部15が高圧エアP2によって横方向に、胴金型117aに当たるまで延伸される。
別の実施形態に係る充填体80の製造方法では、ブロー成形する工程の中で、PETボトル2に冷却エアC1の吹き付け(ステップS4)が省略される。しかしながら、別の実施形態に係る充填体80の製造方法においては胴金型117aの表面の温度が90℃以上、115℃以下とされるとともに、加熱されるプリフォーム1の胴部15の温度は、胴金型117aの表面の温度より高くされる。これによって、プリフォーム1の胴部15が延伸されて胴金型117aに当たった際の初期収縮が効果的に抑えられる。したがって、別の実施形態に係る充填体80の製造方法では、PETボトル2に冷却エアC1を吹き付ける工程(ステップS4)が省略されても、ホット充填に適用可能な耐熱性を有するPETボトル2、及び飲料50がホット充填された充填体80を作製することができる。
なお、ブロー成形が行われたPETボトル2はホット充填機120への供給が行われ(ステップS5)、その後は、図9に示される製造方法と同様の工程を経て充填体80が作製される。
別の実施形態に係る充填体80の製造方法は図9に示される製造方法と同様の効果を奏する。
これに加えて、別の実施形態に係る充填体80の製造方法では胴金型117aの表面の温度がより低く設定できるため、金型117の材質として例えば、ステンレスの焼き入れ焼き戻し鋼や、金型用鋼材ではなくアルミニウムを用いることができる。アルミニウムが用いられることによって、金型117の加工が容易となって設計の自由度が上がるとともに、作製費用を抑えることができる。更に、別の実施形態に係る充填体80の製造方法では冷却エアC1の吹き付けを行うための装置を不要とすることができる。したがって、冷却エア吹き付け部119を備えていない二軸延伸ブロー成形装置112を用いることができ、汎用性を高めることができる。更に、別の実施形態に係る充填体80の製造方法では、冷却エアC1を吹き付ける工程(ステップS4)が不要であるため、PETボトル2、及び飲料50がホット充填された充填体80の作製の速度を向上させることができる。
以上に説明がなされたように、本実施形態に係る充填体80の製造方法は、開口端11の側が、サポートリング12の側よりも密度が高くなるように加熱処理されたプリフォーム1の胴部15を加熱する工程と、プリフォーム1から金型117を用いてPETボトル2をブロー成形する工程と、PETボトル2に高温の飲料50を充填する工程と、PETボトル2の口部10にキャップ60を装着する工程と、PETボトル2の口部10とキャップ60とを転倒殺菌する工程と、PETボトル2を冷却する工程とを備え、すべての工程をインライン方式で行うことを特徴とする。
更に、本実施形態に係る充填体80の製造方法によってPETボトル2は、充填される高温の飲料50に対する耐熱性を有し、装着されるキャップ60のインナーリング65や、コンタクトリング66、アウターリング67によって密封され、開口端11の側からキャップ60が装着される口部10と、口部10のサポートリング12に連接する肩部20と、肩部20に連接する胴部30と、胴部30に連接する底部40とを備え、インナーリング65や、コンタクトリング66、アウターリング67との接触部を含む開口端11の側は、サポートリング12の側よりも密度が高いことを特徴とする。
そして、本実施形態によれば、口部10が、常温充填に標準的に広く用いられる形状であっても、充填される高温の飲料50による収縮や変形に起因する密封性の低下が抑制されたプリフォーム1、プリフォーム1の製造方法、プリフォーム1の結晶化装置90、PETボトル2、及び充填体80の製造方法を提供することができる。
以下に、実施例を示して、本開示を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
<材料、及び製造方法>
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート製で口部10が非結晶であるプリフォーム1が予め用意された。開口端11の側の変形を抑制する形状に構成されたプリフォーム1の結晶化装置90の保持具91にプリフォーム1が取り付けられ、その口部10の開口端11の側が加熱処理部92によって加熱されて結晶化された。このようにして、インナーリング65や、コンタクトリング66、アウターリング67との接触部を含む開口端11の側はサポートリング12の側よりも密度が高い等といった本実施形態に係る特徴を有するプリフォーム1が形成された。すなわち、開口端11の側の密度は1.375g/cm3、サポートリング12の側の密度は1.361g/cm3にプリフォーム1が形成された。
そして、図9に示される本実施形態に係る充填体80の製造方法によって充填体80が作製された。その際に、プリフォーム1の胴部15は125℃に加熱され、胴金型117aの表面の温度は125℃とされた。ブロー成形する工程(ステップS3)には、PETボトル2に冷却エアC1を吹き付ける工程(ステップS4)が含まれた。充填される高温の飲料50の温度は90℃とされた。装着されるキャップ60には常温充填で広く用いられている日本クロージャー株式会社製のMキャップが用いられた。
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート製で、結晶化口として一般的に広く用いられているプリフォームが用いられた。プリフォームは、口部結晶化装置(株式会社大阪冷研製)によって結晶化口とされた。そして、実施例1と同様に、図9に示される本実施形態に係る充填体80の製造方法によって充填体が作製された。
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレート製で、非結晶化口として一般的に広く用いられているプリフォームが用いられた。そして、実施例1と同様に、図9に示される本実施形態に係る充填体80の製造方法によって充填体が作製された。
<評価方法>
(寸法検査)
実施例1、比較例1、及び比較例2のプリフォームの各々について口内径、口外径、及び口部高さが測定された。なお、実施例1、及び比較例1の各々については結晶化の前後で測定された。PCO1810規格に対応した寸法の範囲に収まっているか否かの評価がなされた。表1には、各プリフォームの寸法検査の評価の結果が示され、○:規格内、×:規格外、で表記されている。
(密封性検査)
実施例1、比較例1、及び比較例2の各充填体が水中に浸漬され、キャップ60の上部62から0.5MPaの空気が1分間注入された際に水中に泡が生じたか否かが確認された。○:漏れなし、×:漏れあり、で表記されている。
(総合評価)
上述された寸法検査、及び密封性検査に基づいて、実施例1、比較例1、及び比較例2の各プリフォーム(各充填体)の総合評価がなされた。表1には、総合評価の結果が示されている。総合評価は、○:良好、×:適性なし、で表記されている。
上述された実施例から以下の点が導き出された。表1に示されたように、実施例1では、結晶化の前後での寸法の変化が抑制され、加熱による口部10、特に開口端11の側の変形が抑制された。そして、実施例1では、口部10とキャップ60との間からの漏れがなく、密封性が良好であった。比較例1では、口部結晶化装置によって結晶化口とされる際に加熱による開口端の側の変形が抑制されていなかったため、結晶化後に、PCO1810規格に対応した寸法の範囲に収まっていないものがあった。比較例2では、開口端に変形が生じて液漏れが発生し、密封性を有していなかった。
以上の実施例の結果から、本実施形態に係るプリフォーム1の製造方法では、口部10が非結晶であるプリフォーム1に耐熱性を付与するための加熱処理が行われても寸法の変化が抑制され、かつ高温の飲料50が充填されても密封性が良好であることが示された。そして、本実施形態に係る充填体80の製造方法によれば、PETボトル2に、高温の飲料50を問題なく充填することができることが示された。したがって、本実施形態では、口部10が、常温充填に標準的に広く用いられる形状であっても、充填される高温の飲料50による収縮や変形に起因する密封性の低下が抑制されたプリフォーム1、プリフォーム1の製造方法、プリフォーム1の結晶化装置90、PETボトル2、及び充填体80の製造方法を提供することができることが示された。