以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
(射出成形機)
図1は、一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。図1〜図2に示すように、射出成形機は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700とを有する。以下、射出成形機の各構成要素について説明する。
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
型締装置100は、金型装置10の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
固定プラテン110は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型11が取付けられる。
可動プラテン120は、フレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされる。フレームFr上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型12が取付けられる。
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型11と可動金型12とで金型装置10が構成される。
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレームFrに対し固定され、トグルサポート130がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレームFrに対し固定され、固定プラテン110がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられる。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪みゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
尚、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型12を固定金型11にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータ160のエンコーダ161などを用いて検出する。エンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型12と固定金型11との間にキャビティ空間14が形成され、射出装置300がキャビティ空間14に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間14の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型12を固定金型11から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型12から成形品を突き出す。
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
金型装置10の交換や金型装置10の温度変化などにより金型装置10の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型12が固定金型11にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、ベルトやプーリなどで構成される回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
尚、回転伝達部185は、ベルトやプーリなどの代わりに、歯車などで構成されてもよい。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
尚、本実施形態では、ねじナット182がトグルサポート130に対し回転自在に保持され、ねじ軸181が形成されるタイバー140が固定プラテン110に対し固定されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ねじナット182が固定プラテン110に対し回転自在に保持され、タイバー140がトグルサポート130に対し固定されてもよい。この場合、ねじナット182を回転させることで、間隔Lを調整できる。
また、ねじナット182がトグルサポート130に対し固定され、タイバー140が固定プラテン110に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで、間隔Lを調整できる。
さらにまた、ねじナット182が固定プラテン110に対し固定され、タイバー140がトグルサポート130に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで間隔Lを調整できる。
間隔Lは、型厚調整モータ183のエンコーダ184を用いて検出する。エンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。エンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、タイバー140に形成されるねじ軸181とねじ軸181に螺合されるねじナット182とを有するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、型厚調整機構180は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器を有してもよい。タイバー温調器は、各タイバー140に取付けられ、複数本のタイバー140の温度を連携して調整する。タイバー140の温度が高いほど、間隔Lが大きくなる。複数本のタイバー140の温度は独立に調整することも可能である。
タイバー温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。タイバー温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。タイバー温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、および型締モータなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取付けられ、上プラテンには上金型が取付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設される。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設され、可動プラテンを昇降させる。型締モータは、トグル機構を作動させる。タイバーは、上下方向に平行とされ、下プラテンを貫通し、上プラテンとトグルサポートとを連結する。型締装置が竪型である場合、タイバーの本数は通常3本である。尚、タイバーの本数は特に限定されない。
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
エジェクタ装置200は、金型装置10から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型12の内部に進退自在に配設される可動部材15と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材15と連結されていても、連結されていなくてもよい。
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で前進させることにより、可動部材15を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材15を元の位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータ210のエンコーダ211を用いて検出する。エンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
射出装置300は、フレームFrに対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置10に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置10にタッチされ、金型装置10内のキャビティ空間14に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(図1および図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置10に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置10内に充填される。
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)まで後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)まで前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
尚、射出装置300は、逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
射出装置300は、制御装置700による制御下で、充填工程、保圧工程、計量工程などを行う。
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置10内のキャビティ空間14に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータ350のエンコーダ351を用いて検出する。エンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置10に向けて押す。金型装置10内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
保圧工程では金型装置10内のキャビティ空間14の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間14の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間14からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間14内の成形材料の固化が行われる。成形サイクルの短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータ340のエンコーダ341を用いて検出する。エンコーダ341は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
移動装置400は、金型装置10に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置10に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンク413から作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。ピストンロッド433が前室435を貫通しているため、前室435の断面積は後室436の断面積より小さい。
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型11に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型11から離間される。
第1リリーフ弁441は、第1流路401内の圧力が設定値を超えた場合に開き、第1流路401内の余分な作動液をタンク413に戻して、第1流路401内の圧力を設定値以下に保つ。
第2リリーフ弁442は、第2流路402内の圧力が設定値を超えた場合に開き、第2流路402内の余分な作動液をタンク413に戻して、第2流路402内の圧力を設定値以下に保つ。
フラッシング弁443は、前室435の断面積と後室436の断面積との差に起因する作動液の循環量の過不足を調整する弁であり、例えば図1および図2に示すように3位置4ポートのスプール弁で構成される。
第1チェック弁451は、第1流路401内の圧力がタンク413内の圧力よりも低い場合に開き、タンク413から第1流路401に作動液を供給する。
第2チェック弁452は、第2流路402内の圧力がタンク413の圧力よりも低い場合に開き、タンク413から第2流路402に作動液を供給する。
電磁切替弁453は、液圧シリンダ430の前室435と液圧ポンプ410の第1ポート411との間の作動液の流れを制御する制御弁である。電磁切替弁453は、例えば第1流路401の途中に設けられ、第1流路401における作動液の流れを制御する。
電磁切替弁453は、例えば図1および図2に示すように2位置2ポートのスプール弁で構成される。スプール弁が第1位置(図1および図2中左側の位置)の場合、前室435と第1ポート411との間の両方向の流れが許容される。一方、スプール弁が第2位置の場合(図1および図2中右側の位置)の場合、前室435から第1ポート411への流れが制限される。この場合、第1ポート411から前室435への流れは制限されないが、制限されてもよい。
第1圧力検出器455は、前室435の液圧を検出する。前室435の液圧によってノズルタッチ圧力が生じるため、第1圧力検出器455を用いてノズルタッチ圧力が検出できる。第1圧力検出器455は、例えば第1流路401の途中に設けられ、電磁切替弁453を基準として前室435側の位置に設けられる。電磁切替弁453の状態に関係なく、ノズルタッチ圧力が検出できる。
第2圧力検出器456は、第1流路401の途中に設けられ、電磁切替弁453を基準として第1ポート411側の位置に設けられる。第2圧力検出器456は、電磁切替弁453と第1ポート411との間における液圧を検出する。電磁切替弁453が第1ポート411と前室435との間の両方向の流れを許容する状態の場合、第1ポート411と電磁切替弁453との間における液圧と、電磁切替弁453と前室435との間における液圧とは等しい。よって、この状態の場合、第2圧力検出器456を用いてノズルタッチ圧力が検出できる。
尚、本実施形態では、第1流路401の途中に設けられる圧力検出器を用いてノズルタッチ圧力を検出するが、例えばノズル320に設けられるロードセルなどを用いてノズルタッチ圧力を検出してもよい。つまり、ノズルタッチ圧力を検出する圧力検出器は、移動装置400、射出装置300のいずれに設けられてもよい。
尚、本実施形態では、移動装置400として、液圧シリンダ430が用いられるが、本発明はこれに限定されない。
(制御装置)
制御装置700は、図1〜図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。操作画面は、射出成形機の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機の設定(設定値の入力を含む)などを行う。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
(成形材料の逆流)
図3は、一実施形態による逆流防止リングの動作を示す図である。図3において、破線は逆流防止リング331が開放位置にある状態を、実線は逆流防止リング331が閉塞位置にある状態を示す。
逆流防止リング331は、計量工程において開放位置に位置し、充填工程および保圧工程において閉塞位置に位置することを、ショット毎に繰り返す。ここで、ショットとは、成形品を得るための一連の動作をいい、例えば計量の開始から次の計量の開始までの動作をいう。
そのため、逆流防止リング331は、繰り返し進退させられ、徐々に摩耗する。そのため、逆流防止リング331のシール機能は徐々に低下し、充填工程や保圧工程においてスクリュ330を前方に押すときに、スクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流が生じるようになる。
図4は、一実施形態による成形材料の逆流を示す図である。図4において、矢印は、成形材料の逆流の流れを示す。
図4に示すように成形材料の逆流が有る場合、成形材料の逆流が無い場合に比べ、充填工程や保圧工程においてスクリュ330の位置が前進する。成形材料の逆流が有ると、その分、金型装置10の内部に入る成形材料の量が減るため、金型装置10の内部を成形材料で充填すべくスクリュ330の前進量が増えるためである。
制御装置700は、成形材料の逆流による異常の有無を判定する(図5のステップS101)。この判定は、ショット毎に行われてもよいし、定期的に行われてもよい。
制御装置700は、成形材料の逆流による異常(以下、単に「逆流による異常」とも呼ぶ。)の有無を、例えば(A)クッション量、(B)成形材料の充填圧、(C)保持圧力、(D)計量時間のうちの少なくとも1つに基づいて判定する。また、制御装置700は、逆流する成形材料の量を、例えば(A)クッション量、(B)成形材料の充填圧、(C)保持圧力、(D)計量時間のうちの少なくとも1つに基づいて判定してもよい。
(A)クッション量とは、保圧工程の開始から保圧工程の完了までの間にスクリュ330が最も前進した位置を、スクリュ330の機械的な前進限位置からの距離D(図4参照)で表したものである。クッション量は、例えば射出モータ350のエンコーダ351で検出する。
成形材料の逆流が有ると、その分、金型装置10の内部に入る成形材料の量が減るため、金型装置10の内部を成形材料で充填すべくスクリュ330の前進量が増え、その結果、クッション量が小さくなる。逆流する成形材料の量が多いほど、クッション量が小さくなる。
そこで、制御装置700は、クッション量が所定量以下である場合に、逆流による異常が有ると判定する。一方、制御装置700は、クッション量が所定量よりも大きい場合に、逆流による異常が無いと判定する。
また、制御装置700は、クッション量に基づいて、逆流する成形材料の量を推定してもよい。逆流する成形材料の量が多いほど、クッション量が小さくなる。逆流する成形材料の量は、クッション量の減少量と、シリンダ310の内径とから算出できる。
(B)成形材料の充填圧とは、充填工程において金型装置10の内部に成形材料を充填する充填圧のことである。成形材料の充填圧は、例えば圧力検出器360で検出する。例えば、成形材料の充填圧のピーク値(以下、「成形材料のピーク充填圧」とも呼ぶ。)、または成形材料の充填圧のパターンなどが用いられる。
成形材料の逆流が有ると、スクリュ330より前方の成形材料の量が少なくなって、成形材料を前方に押す力が弱くなるため、成形材料の充填圧が小さくなる。逆流する成形材料の量が多いほど、成形材料の充填圧が小さくなる。
そこで、制御装置700は、成形材料のピーク充填圧が所定値以下である場合に、逆流による異常が有ると判定する。一方、制御装置700は、成形材料のピーク充填圧が所定値よりも大きい場合に、逆流による異常が無いと判定する。
また、制御装置700は、成形材料のピーク充填圧に基づいて、逆流する成形材料の量を推定してもよい。逆流する成形材料の量が多いほど、成形材料のピーク充填圧が小さくなる。
(C)保持圧力は、上述の如く、保圧工程でスクリュ330の前端部にかかる成形材料の圧力のことである。保持圧力は、例えば圧力検出器360で検出する。
成形材料の逆流が有ると、スクリュ330より前方の成形材料の量が少なくなって、成形材料を前方に押す力が弱くなるため、保持圧力が設定値に達しないことがある。逆流する成形材料の量が多いほど、保持圧力が設定値よりも小さくなりやすい。
そこで、制御装置700は、保持圧力が許容範囲から外れる場合に、逆流による異常が有ると判定する。一方、制御装置700は、保持圧力が許容範囲に収まる場合に、逆流による異常が無いと判定する。許容範囲は保持圧力の設定値に基づき設定され、例えば保持圧力が設定値を基準として所定量以上小さい場合に、逆流による異常が有るとの判定がなされる。
また、制御装置700は、保持圧力に基づいて、逆流する成形材料の量を推定してもよい。逆流する成形材料の量が多いほど、保持圧力が小さくなる。
(D)計量時間とは、計量工程の開始から計量工程の終了までの時間である。その時間は、例えばタイマーなどで検出する。
成形材料の逆流が有ると、上述の如くスクリュ330の前進量が増え、クッション量が小さくなるため、スクリュ330が計量完了位置まで戻るのに時間がかかり、計量時間が長くなる。逆流する成形材料の量が多いほど、計量時間が長くなる。
そこで、制御装置700は、計量時間が所定時間以上である場合に、逆流による異常が有ると判定する。一方、制御装置700は、計量時間が所定時間未満である場合に、逆流による異常が無いと判定する。
また、制御装置700は、計量時間に基づいて、逆流する成形材料の量を推定してもよい。逆流する成形材料の量が多いほど、計量時間が長くなる。
制御装置700は、逆流による異常が無いと判定すると(図5のステップS101、No)、今回の処理を終了する。
一方、制御装置700は、逆流による異常が有ると判定すると(図5のステップS101、Yes)と、制御装置700によって制御する射出装置300の成形条件を補正する(図5のステップS102)。その補正量は、逆流する成形材料の量に応じて調整されてもよい。
成形条件とは、制御装置700によって制御する制御量のことである。制御装置700は、制御量の検出値と制御量の設定値との偏差がゼロになるように、操作量を算出する。操作量の算出には、例えばPID演算、PI演算などが用いられる。
制御量の補正は、(1)制御量の設定値の補正、(2)制御量の検出値の補正、(3)制御量の設定値と制御量の検出値との偏差の補正、(4)その偏差から算出される操作量の補正のいずれでもよい。
補正する制御量としては、スクリュ330の動作、シリンダ310の温度、ノズル320の温度などが挙げられる。スクリュ330の動作は、スクリュ330の計量完了位置、充填工程におけるスクリュ330の前進速度、スクリュ330のV/P切替位置などを含む。補正する制御量は、1つでもよいし、複数でもよい。また、補正する制御量が複数である場合、その組合せは特に限定されない。
例えば、制御装置700は、逆流による異常が有ると判定すると、逆流による異常が無いと判定する場合に比べて、図6に示すようにスクリュ330の計量完了位置を後方に補正する。これにより、計量工程の完了時にスクリュ330の前方に蓄えられる成形材料の量を増大でき、保圧工程においてスクリュ330の前方の成形材料が不足することを抑制できる。
スクリュ330の計量完了位置は、保圧工程においてスクリュ330の位置がクッション位置よりも前方にならないように補正される。クッション位置とは、クッション量の下限値を表すものである。保圧工程においてスクリュの位置がクッション位置よりも前方になると、スクリュ330よりも前方の成形材料の量が不足するため、制御装置700は保圧工程を中断する。
スクリュ330の計量完了位置は、逆流する成形材料の量が多いほど後方に補正されてもよい。これにより、成形材料の逆流によって保圧工程中にスクリュ330がクッション位置よりも前方に行くことがないため、保圧工程の中断を抑制でき、計画外停止を抑制することができる。
スクリュ330の計量完了位置は、ショット間のクッション量のばらつきが小さくなるように補正されてもよい。
また、制御装置700は、逆流による異常が有ると判定すると、逆流による異常が無いと判定する場合に比べて、図7に示すように充填工程におけるスクリュ330の前進速度を大きく補正する。これにより、逆流による異常が有る場合に、逆流による異常が無い場合と同程度の成形材料の充填圧を得ることができ、逆流による異常が無い場合と同程度の密度の成形品を得ることができる。
充填工程においてスクリュ330の前進速度がスクリュ330の位置や経過時間などに基づいて段階的に変更される場合、制御装置700は充填工程の少なくとも一部においてスクリュ330の前進速度を補正すればよい。
充填工程におけるスクリュ330の前進速度は、逆流による異常が有る場合と逆流による異常が無い場合とで成形材料の充填圧が同程度になるように、補正される。成形材料の充填圧が大き過ぎると、成形品の密度が大き過ぎ、成形品の重量が重くなり過ぎる。一方、成形材料の充填圧が小さ過ぎると、成形品の密度が小さ過ぎ、成形品の重量が軽くなり過ぎる。
充填工程におけるスクリュ330の前進速度は、逆流する成形材料の量が多いほど大きく補正されてもよい。これにより、逆流による異常が無い場合と比べて、成形材料の充填圧を同程度に維持でき、成形品の密度を同程度に維持できる。
充填工程におけるスクリュ330の前進速度は、ショット間の充填圧のばらつきが小さくなるように補正されてもよい。
また、制御装置700は、逆流による異常が有ると判定すると、逆流による異常が無いと判定する場合に比べて、図8に示すようにスクリュ330のV/P切替位置を前方に補正する。これにより、逆流による異常が有る場合と逆流による異常が無い場合とで、充填工程完了時までに金型装置10内に充填される成形材料の量を同程度に維持でき、成形品の重量を同程度に維持できる。
スクリュ330のV/P切替位置は、逆流による異常が有る場合と逆流による異常が無い場合とで、充填工程完了時までに金型装置10内に充填される成形材料の量が同程度になるように補正される。充填工程完了時までに金型装置10内に充填される成形材料の量が多過ぎると、成形品の重量が重くなり過ぎる。一方、充填工程完了時までに金型装置10内に充填される成形材料の量が少な過ぎると、成形品の重量が軽くなり過ぎる。
スクリュ330のV/P切替位置は、逆流する成形材料の量が多いほど前方に補正されてもよい。これにより、逆流による異常が無い場合と比べて、充填工程完了時までに金型装置10内に充填される成形材料の量を同程度に維持でき、成形品の重量を同程度に維持できる。
また、制御装置700は、逆流による異常が有ると判定すると、逆流による異常が無いと判定する場合に比べて、シリンダ310の温度およびノズル320の温度の少なくとも一方を低く補正する。これにより、スクリュ330よりも前方に蓄えられる成形材料の温度を低くでき、成形材料の粘度を大きくできる。その結果、図9に示すように逆流防止リング331の摩耗によって形成される隙間からの成形材料の漏れを抑制でき、スクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を抑制できる。
シリンダ310の温度およびノズル320の温度は、予め定められた温度範囲内で補正されてよい。その温度範囲の上限値は、成形材料の逆流を抑制できるように設定される。一方、その温度範囲の下限値は、金型装置10の内部への成形材料の充填を妨げないように設定される。
シリンダ310の温度およびノズル320の温度は、逆流する成形材料の量が多いほど低く補正されてもよい。逆流防止リング331の摩耗によって形成される隙間からの成形材料の漏れを抑制でき、スクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を抑制できる。
以上説明したように、制御装置700は、逆流による異常が有ると判定すると、射出装置300の成形条件を補正する。これにより、成形材料の充填不足などを抑制できるため品質の良い成形品を得ることができ、また、計画外の停止を抑制できる。
尚、上記成形条件の補正は、逆流防止リング331の交換や補修などが行われる時期を遅らせるための延命処理であって、次回の計画停止時に逆流防止リング331の交換や補修などが行われてよい。これによって、計画外の停止を抑制できる。尚、逆流防止リング331付きのスクリュ330の交換や補修などが行われてもよい。
ところで、上述の如く、逆流防止リング331は徐々に摩耗され、逆流防止リング331のシール機能は徐々に低下し、逆流が生じるようになる。その後、ショットを重ねるにつれ、逆流する成形材料の量は緩やかに増える。
逆流する成形材料の量は緩やかに増えるため、逆流による異常の有無の判定から、射出装置300の成形条件の補正までに、時間差があってもよい。従って、射出装置300の成形条件を補正するショットは、逆流による異常の有無を判定するショットの次回以降のショットであってもよい。
尚、射出装置300の成形条件を補正するショットは、逆流による異常の有無を判定するショットと同じショットでもよい。例えば、逆流による異常の有無を成形材料の充填圧に基づいて判定する場合、ショット間の充填圧のばらつきが小さくなるようにスクリュ330の前進速度を補正してもよい。
(変形、改良)
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。