JP6774735B2 - 電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物および電線・ケーブル - Google Patents
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Description
絶縁電線の絶縁被覆または各種ケーブルのシース(被覆ということがある)には、優れた強度特性や高い耐摩耗性が求められている。
(a1)メルトフローレート(MFR(2.16))が0.2〜2g/10分
(a2)密度が920〜940kg/m3
(a3)110℃以下の融解成分割合(HL110)が30〜75%
(a4)流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上
(a5)分子量分布(Mw/Mn)が6〜25
(b1)メルトフローレート(MFR)が0.05〜2g/10分
(b2)密度が905〜935kg/m3
(b3)流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上
(b4)分子量分布(Mw/Mn)が6〜25
(c1)メルトフローレート(MFR)が0.2〜20g/10分
(c2)密度が940〜975kg/m3
ところが、従来のポリオレフィン樹脂組成物では、以下の問題があり、その解決が望まれていた。すなわち、被覆用のポリオレフィン樹脂組成物として、需要が高く、材料供給性がよい、フィルムグレードのポリオレフィン樹脂を含有する樹脂組成物を用いると、低コストで被覆を形成できる。しかし、このようなポリオレフィン樹脂組成物で形成した被覆は、表面が平滑にならずに外観荒れを生じる。この外観荒れは、フィルムグレードのポリオレフィン樹脂組成物に限らず、従来、被覆用として用いられている他のポリオレフィン樹脂組成物であっても発生することがあった。特に、被覆の外観荒れは、製造効率を高めるために、押出成形での線速を高くすると顕著に生じる。
また、従来のポリオレフィン樹脂組成物では、押出成形時に押出成形機にかかる負荷が大きくなって、押出成形が困難になる(容易な(低負荷での)押出性に劣る)ことがある。特に、押出性は、押出成形での線速を高くすると、急激に低下する。
さらに、近年、電線等の多様化によって、複雑な断面形状を有する電線等、大径化した電線等、被覆を厚肉化した電線等が用いられるようになってきている。しかし、押出性を確保するためにポリオレフィン樹脂組成物の押出性を高めると、押出成形されたポリオレフィン樹脂組成物が押出直後の形状を維持できずに(形状維持性に劣る)、ポリオレフィン樹脂組成物の形状が崩れ(ドローダウン)、その結果、所定形状の電線等を製造できなくなる。
<1>密度が0.900〜0.935g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、21.18N)が10g/10分以下であるポリエチレン樹脂(a1)40〜67質量%と、
エチレン−αオレフィン共重合体およびエチレン単独重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体の樹脂であって、密度が0.940〜0.965g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、21.18N)が0.2〜10g/10分である樹脂(a2)30〜57質量%と、
メルトフローレート(230℃、21.18N)が0.8〜50g/10分であるポリプロピレン系樹脂(a3)3〜25質量%とを含有し、
メルトフローレート(190℃、21.18N)が0.61〜5.0g/10分である電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物。
<2>カーボンブラック(b)を含有する<1>に記載の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物。
<3>前記ポリエチレン樹脂(a1)が、メタロセン触媒を用いて合成されたポリエチレン樹脂である<1>または<2>に記載の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物。
<4>前記ポリプロピレン系樹脂(a3)が、プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンと1−ブテンとの共重合体、プロピレンとエチレンと1−ブテンとの3元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体からなるポリプロピレン系樹脂を含有する<1>〜<3>のいずれか1項に記載の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物。
<5>前記カーボンブラック(b)の含有量が、前記ポリエチレン樹脂(a1)、前記樹脂(a2)および前記ポリプロピレン系樹脂(a3)の合計100質量部に対して1.5〜5.0質量部である<2>〜<4>のいずれか1項に記載の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物。
<6>前記ポリエチレン樹脂(a1)の前記メルトフローレート(190℃、21.18N)が1.0g/10分以上である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物。
<7>上記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物を押出成形してなる被覆を有することを特徴とする電線・ケーブル。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物(以下、本発明の樹脂組成物ということがある)は、密度が0.900〜0.935g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、21.18N)が10g/10分以下であるポリエチレン樹脂(a1)20〜70質量%と、エチレン−αオレフィン共重合体およびエチレン単独重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体の樹脂であって、密度が0.940〜0.965g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、21.18N)が0.2〜10g/10分である樹脂(a2)20〜75質量%と、ポリプロピレン系樹脂(a3)3〜25質量%とを含有する。これら成分を含有する本発明の樹脂組成物は、メルトフローレート(190℃、21.18N)が0.61〜5.0g/10分の範囲にある。
なお、各成分および本発明の樹脂組成物において、密度、MFR(190℃、21.18N)等の測定方法は、実施例にて、詳細に説明する。
本発明に用いるポリエチレン樹脂(a1)は、密度およびMFRが所定のものであれば特に限定されず、例えば、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。α−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、1−ブテン、1−へキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
市販品としては、例えば、「カーネル」(商品名、日本ポリエチレン社製)、「エボリュー」(商品名、プライムポリマー社製)、「モアテック」(商品名、プライムポリマー社製)、「NUC」(商品名、日本ユニカー社製)、「ノバテック」(商品名、日本ポリエチレン社製)等を挙げることができる。
ポリエチレン樹脂(a1)の含有率は、押出性および形状維持性を両立し、被覆に高い耐摩耗性と優れた外観を付与できる点で、40〜67質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがさらに好ましい。
本発明に用いる樹脂(a2)は、エチレン−αオレフィン共重合体およびエチレン単独重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体の樹脂である。エチレン−αオレフィン共重合体は、密度およびMFRが所定のものであれば特に限定されず、例えば、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。α−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、1−ブテン、1−へキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
樹脂(a2)は、エチレン単独重合体、および、エチレン−αオレフィン共重合体の樹脂のなかでも、エチレン単独重合体の樹脂が好ましい。
樹脂(a2)の密度は、0.940〜0.965g/cm3であり、好ましくは0.945〜0.960g/cm3であり、さらに好ましくは0.948〜0.958g/cm3である。密度が小さすぎると機械的強度や耐摩耗性が維持できないことがある。一方、密度が大きすぎると押出性に劣るものとなる。
エチレン―αオレフィン共重合体の樹脂の市販品としては、例えば、「エボリューH」(商品名、プライムポリマー社製)、「SURPASS」(商品名、NOVAケミカルズ社製)等を挙げることができる。
エチレン単独重合体の樹脂の市販品としては、例えば、「ハイゼックス」(商品名、プライムポリマー社製)、「ニポロンハード」(商品名、東ソー社製)、「ノバテック」(商品名、日本ポリエチレン社製)等を挙げることができる。
樹脂(a2)の含有率は、形状維持性を低下させることなく、押出成形機への負荷を低減できる点で、30〜57質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがさらに好ましい。
本発明においては、ポリプロピレン系樹脂(a3)を用いる。ポリエチレン樹脂(a1)および樹脂(a2)にポリプロピレン系樹脂を特定量含有させることにより、ポリエチレン樹脂(a1)および樹脂(a2)の特性を維持しつつ、優れた外観を被覆に付与できる。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂(a3)は、特に限定されず、プロピレン単独重合体の樹脂(ホモポリプロピレン樹脂)や、プロピレン−αオレフィンランダム共重合体の樹脂、エチレン−プロピレンブロック共重合体の樹脂等を用いることができる。ここで、プロピレン−αオレフィンランダム共重合体の樹脂は、αオレフィン構成成分の含有率が1〜10質量%程度のものをいい、αオレフィン構成成分がプロピレン鎖中にランダムに取り込まれているものをいう。また、エチレン−プロピレンブロック共重合体は、ポリエチレンやエチレン―プロピレンゴム(EPR)の含有率が5〜20質量%程度のものをいい、ポリプロピレンの中にポリエチレンやEPRが独立して存在する海島構造であるものをいう。
プロピレン−αオレフィンランダム共重合体としては、特に限定されず、例えば、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンと1−ブテンとの共重合体、プロピレンとエチレンと1−ブテンとの3元共重合体等が挙げられる。
市販品としては、例えば、「サンアロマーPP」(商品名、サンアロマー社製)、「プライムポリプロ」(商品名、プライムポリマー社製)、「ノバテックPP」(商品名、日本ポリプロ社製)等を挙げることができる。
本発明に用いるカーボンブラック(b)としては、その種類は特に限定されず、種々のものを用いることができる。例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック等の補強用カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、ファーネスブラックが好ましい。
カーボンブラック(b)の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは10〜500nmである。
カーボンブラック(b)は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
カーボンブラック(b)としては、例えば、「旭カーボン」、「SUNBLACK」(商品名、いずれも旭カーボン社製)等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物は、電線、ケーブル、コード、チューブ、電線部品、シート等において、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤等を、目的とする効果を損なわない範囲で、適宜に含有することができる。また、本発明の樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂(a1)、樹脂(a2)およびポリプロピレン系樹脂(a3)以外の樹脂を、目的とする効果を損なわない範囲で、適宜に含有することができる。
本発明に用いることができる酸化防止剤は、通常、電線等に用いられるものであればよく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、その他の酸化防止剤が挙げられる。なかでも、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。
本発明において、酸化防止剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
フェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、「イルガノックス」(商品名、BASF社製)等を挙げることができる。
フェノール系酸化防止剤の、本発明の樹脂組成物中の含有量は、特に限定されず、ポリエチレン樹脂(a1)、樹脂(a2)およびポリプロピレン系樹脂(a3)の合計100質量部に対して、0.01〜1.0質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましく、0.1〜0.3質量部がさらに好ましい。
フェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、「イルガフォス」(商品名、BASF社製)等を挙げることができる。
リン系酸化防止剤の、本発明の樹脂組成物中の含有量は、特に限定されず、ポリエチレン樹脂(a1)、樹脂(a2)およびポリプロピレン系樹脂(a3)の合計100質量部に対して、0.01〜1.0質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましく、0.1〜0.3質量部がさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂(a1)、樹脂(a2)およびポリプロピレン系樹脂(a3)を上記含有率で含有する。これにより、本発明の樹脂組成物は、0.61〜5.0g/10分のMFR(190℃、21.18N)を有する。さらに、本発明の樹脂組成物は、以下の特性を有することが好ましい。これらにより、形状維持性と押出性を兼ね備え、しかも耐摩耗性が高く、外観にも優れた被覆を形成することができる。本発明の樹脂組成物は、好ましくは、押出成形での線速を例えば100m/min程度まで高めても、上記の優れた、押出性、形状維持性および外観を保持できる。さらに好ましくは、電線・ケーブル(電線またはケーブル)の被覆に求められる特性、例えば機械強度、柔軟性、耐衝撃性、耐摩耗性、耐寒性、耐環境応力亀裂特性等をも付与することができる。
本発明の樹脂組成物は、MFR(190℃、21.18N)が0.61〜5.0g/10分である。MFRが0.61g/10分未満であると、押出性、特に押出成形での線速を高めたときの押出性が低下する。一方、5.0g/10分を超えると、形状維持性、特に押出成形での線速を高めたときの押出性が低下する。押出成形での線速を高めた場合にも、優れた形状維持性および押出性を示し、高い耐摩耗性と優れた外観を有する被覆を形成できる点で、MFRは、0.61〜5g/10分が好ましく、0.8〜2.0g/10分がより好ましい。
本発明の樹脂組成物の密度は、特に限定されないが、電線・ケーブルとしての機械強度および柔軟性を両立できる点で、0.935〜0.975g/cm3が好ましく、0.940〜0.973g/cm3がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂(a1)、樹脂(a2)およびポリプロピレン系樹脂(a3)、所望により各種添加剤を、上記含有率となる割合で、混合機、混練機等を用いて、混合(溶融混練を含む)して、製造できる。
このとき、混合する際の混合順は、特に限定されず、上記成分をどのような順で混合してもよい。
また、混合時間等の混合条件も、特に限定されず、上記成分が混合されればよく、適宜に決定することができる。例えば、5〜30分間とすることができる。
本発明の電線・ケーブル(以下、本発明の電線等という)は、導体等の外周に、本発明の樹脂組成物を押出成形してなる押出被覆を絶縁層またはシース等として有する。
本発明の樹脂組成物が押し出される導体等は、特に限定されず、本発明の電線等の種類、用途等に応じて適宜に選択される。また、導体等の材質、形状、寸法等も、従来のものを適宜選択して用いることができる。
また、ケーブルとしては、各種ケーブルが特に限定されずに適用でき、屋内に配設されるケーブルおよび屋外に配設されるケーブルを含む。例えば、電力ケーブル、通信ケーブル等が好ましく挙げられる。
本発明の電線等は、従来、製造が困難であった、異形電線・ケーブル、大径・厚肉電線・ケーブル、または、自己支持型の電線・ケーブルであることが好ましい。このような電線・ケーブルとしては、例えば、電力用捻回電線、通信ケーブル用テープ心線、通信ケーブル等が挙げられる。通信ケーブルとしては、例えば、スロット型光ケーブル、漏洩同軸ケーブル、スロットレス光ケーブル、中間分岐型架空光ケーブル、光ドロップケーブル、インドア光ケーブル等が挙げられる。これらのなかでも、形状維持性が求められる、大径・厚肉の、スロット型光ケーブル、漏洩同軸ケーブルが好ましく、また、自己支持型の電線・ケーブルも好ましい。
すなわち、スロット型光ケーブル1は、自己支持型(SSW型)の光ケーブルであり、図1に示されるように、端面(断面)形状が略円形の支持線部12と断面形状が略円型のケーブル部11とが複数の首部(連結部)13で連結された断面形状を有している。このように、スロット型光ケーブル1の断面形状は、単純な形状ではなく、複雑な形状になっている。
支持線部12は、図1(b)に示されるように、複数の支持線12aと、支持線12aを被覆する被覆(シース)12bを有している。
スロット型光ケーブル1において、支持線12a、テンションメンバー14、スロット15、光ファイバ心線16、引き裂き紐17および押さえ巻きテープ18は、通常の光ケーブルに用いられるものであれば、特に限定されることなく、用いることができる。
すなわち、漏洩同軸ケーブル2は、自己支持型(SSW型)のケーブルであり、図2に示されるように、端面(断面)形状が略円形の支持線部22と断面形状が略円型のケーブル部21とが複数の首部(連結部)23で連結された断面形状を有している。このように、漏洩同軸ケーブル2の断面形状は、単純な形状ではなく、複雑な形状になっている。
支持線部22は、複数の支持線22aと、支持線22aを被覆する被覆(シース)22bを有している。
漏洩同軸ケーブル2において、支持線22a、内部導体24、絶縁体ポリエチレン紐25、絶縁体ポリエチレンパイプ26および外部導体27は、通常の漏洩同軸ケーブルに用いられるものであれば、特に限定されることなく、用いることができる。
このとき、本発明の樹脂組成物を導体等とともに押し出すと、電線・ケーブルの断面形状に対応する複雑な断面形状を崩すことなく、この形状を維持したまま成形できる。また、押出成形での線速を例えば100m/min程度まで高めても、優れた、押出性、形状維持性および外観を保持できる。したがって、形状の再現性がよく、高い歩留まりで、しかも高い構造効率で、本発明の電線等を製造できる。
さらに、本発明の樹脂組成物は、押出成形機に過大な負荷をかけることがなく、生産性もよい。
絶縁層の厚さ(最大厚さ)は、特に限定されないが、通常、0.15〜5mm程度である。シースの厚さは、特に限定されないが、通常、0.15〜30mm程度である。
押出成形機のスクリュー構成は、特に限定されず、通常のフルフライトスクリュー、ダブルフライトスクリュー、先端ダブルフライトスクリュー、マドックスクリュー等を使用できる。
ポリエチレン樹脂(a1)および樹脂(a2)は、それぞれ、エチレンと、必要によりαオレフィンを、チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒の存在下、気相重合装置または液相重合装置を用い、70〜150℃で共重合して、合成した。用いた触媒濃度は、重合が十分に進行する濃度でよいが、重合反応器内容物の質量を基準として、0.0001〜5質量%用いた。
ポリエチレン樹脂(a1−1):
エチレンと1−ブテンとの共重合体、エチレン構成成分の含有率は90質量%、密度0.920g/cm3、MFR(190℃、21.18N)1.00g/10分
ポリエチレン樹脂(a1−2)
エチレンと1−ブテンとの共重合体、エチレン構成成分の含有率は90質量%、密度0.920g/cm3、MFR(190℃、21.18N)10.00g/10分
ポリエチレン樹脂(a1−3)
エチレンと1−ブテンとの共重合体、エチレン構成成分の含有率は90質量%、密度0.900g/cm3、MFR(190℃、21.18N)1.00g/10分
ポリエチレン樹脂(a1−4)
エチレンと1−ブテンとの共重合体、エチレン構成成分の含有率は90質量%、密度0.935g/cm3、MFR(190℃、21.18N)1.00g/10分
ポリエチレン樹脂(a1−5)
エチレンと1−ブテンとの共重合体、エチレン構成成分の含有率は90質量%、密度0.890g/cm3、MFR(190℃、21.18N)1.00g/10分
ポリエチレン樹脂(a1−6)
エチレンと1−ブテンとの共重合体、エチレン構成成分の含有率は90質量%、密度0.940g/cm3、MFR(190℃、21.18N)1.00g/10分
ポリエチレン樹脂(a1−7)
エチレンと1−ブテンとの共重合体、エチレン構成成分の含有率は90質量%、密度0.920g/cm3、MFR(190℃、21.18N)12.00g/10分
樹脂(a2−1)
エチレン単独重合体、密度0.960g/cm3、MFR(190℃、21.18N)0.70g/10分
樹脂(a2−2)
エチレン単独重合体、密度0.955g/cm3、MFR(190℃、21.18N)0.20g/10分
樹脂(a2−3)
エチレン単独重合体、密度0.958g/cm3、MFR(190℃、21.18N)10.00g/10分
樹脂(a2−4)
エチレン単独重合体、密度0.940g/cm3、MFR(190℃、21.18N)0.80g/10分
樹脂(a2−5)
エチレン単独重合体、密度0.965g/cm3、MFR(190℃、21.18N)5.50g/10分
樹脂(a2−6)
エチレンと1−ヘキセンとの共重合体、エチレン構成成分の含有率は90質量%、密度0.945g/cm3、MFR(190℃、21.18N)1.70g/10分
樹脂(a2−7)
エチレン単独重合体、密度0.970g/cm3、MFR(190℃、21.18N)1.00g/10分
樹脂(a2−8)
エチレン単独重合体、密度0.958g/cm3、MFR(190℃、21.18N)0.10g/10分
樹脂(a2−9)
エチレン単独重合体、密度0.950g/cm3、MFR(190℃、21.18N)13.00g/10分
ポリプロピレン樹脂(a3)は、それぞれ、プロピレンと、必要によりαオレフィンを、チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒の存在下、気相重合装置または液相重合装置を用い、60〜100℃で共重合して、合成した。用いた触媒濃度は、重合が十分に進行する濃度でよいが、重合反応器内容物の質量を基準として、0.01〜0.1質量%用いた。
ポリプロピレン系樹脂(a3−1)
プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレン構成成分の含有率は95質量%、密度0.900g/cm3、MFR(230℃、21.18N)0.80g/10分
ポリプロピレン系樹脂(a3−2)
プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレン構成成分の含有率は95質量%、密度0.900g/cm3、MFR(230℃、21.18N)0.50g/10分
ポリプロピレン系樹脂(a3−3)
プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレン構成成分の含有率は95質量%、密度0.900g/cm3、MFR(230℃、21.18N)10.00g/10分
ポリプロピレン系樹脂(a3−4)
プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレン構成成分の含有率は95質量%、密度0.900g/cm3、MFR(230℃、21.18N)50.00g/10分
ポリプロピレン系樹脂(a3−5)
プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレン構成成分の含有率は95質量%、密度0.900g/cm3、MFR(230℃、21.18N)0.30g/10分
ポリプロピレン系樹脂(a3−6)
プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレン構成成分の含有率は95質量%、密度0.900g/cm3、MFR(230℃、21.18N)60.00g/10分
「旭カーボン#70」(商品名、旭カーボン社製、平均粒径28nm)
各例では、図1(a)に示す端面輪郭を有する、所謂「眼鏡状」の簡易試験ケーブルを製造して、下記項目を評価した。この簡易試験ケーブルはスロット型光ケーブルの簡易試験体である。以下、簡易試験ケーブルを構成する部材のうち、図1に示すスロット型光ケーブル1を構成する部材に対応するものには、便宜的に、これと同一の符号を付す。
次に、得られた各電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物を、L/D(スクリュー有効長Lと直径Dとの比)が25で、スクリュー直径が40mmφの電線用押出成形機(聖製作所社製、モーター負荷限界:80A)、および、断面形状が眼鏡状である押出ダイスを用いて、下記押出温度条件により、並行に並べた1.0mmφの導体(軟銅線)の上に、下記のようにして一体的に押出し、被覆して、簡易試験ケーブルを製造した。
線速は、10m/minまたは100m/minに設定した。
MFR(190℃、21.18N)は、JIS K 7210に規定の「A法(手動切り落とし法)」基づき、190℃、21.18Nの条件Dで計測した。
ポリプロピレン樹脂(a3)のMFR(230℃、21.18N)は、温度230℃の条件Mに変更したこと以外は、MFR(190℃、21.18N)と同様にして、測定した。
密度は、JIS K 7112:1999に規定の「A法(水中置換法)」に基づいて、測定した。
各線速で押出成形して得られた簡易試験ケーブルの外観を、JIS B 0601:2013に規定の算術平均表面粗さ(Ra)を下記測定条件で測定し、下記評価基準により、評価した。外観試験は、評価「B」が本試験の合格レベルであり、「A」以上であると望ましいレベルにある。
−測定条件−
作製した簡易試験ケーブルの算術平均表面粗さ(Ra)は、簡易試験ケーブルの被覆を、ランダムに5箇所サンプリングし、JIS B 0601:2013に基づき、表面粗さ測定機(MITUTOYO社製、サーフテストSJ−301(商品名))を用いて、算術平均表面粗さ(Ra、μm)を求めた。
−評価基準―
AA:1.5μm以下
A:1.5μmを超え2.5μm以下
B:2.5μmを超え3.5μm以下
C:3.5μmを超える
水平に設置した耐摩耗性試験用電線の上に、15Nの荷重を加え、0.25mmφのピアノ線を用いて被覆を摩耗させた。ピアノ線が導体に達するまで連続して往復させ、その往復回数を測定した。摩耗させる部分は、1サンプルにつき、円周方向に90、180、270および360°の4か所として4回実施し、4回の往復回数の平均値を、耐摩耗性の指標とした。耐摩耗性を往復回数の平均値により下記評価基準で評価した。耐摩耗性試験は、評価「B」が本試験の合格レベルであり、「A」以上であると望ましいレベルにある。
−評価基準―
AA:300回以上
A:200回以上300回未満
B:100回以上200回未満
C:100回未満
各簡易試験ケーブルを、10m/minの線速で押出成形して製造した各例において、上記押出成形機により押し出された各電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物を冷水等で冷却することなく大気中に最長20秒放置し、所定の形状を維持しているか否かを目視にて、確認し、下記評価基準により、評価した。本試験において、形状を維持しているとは、押出成形した後(押出成形機から押し出された後)から所定時間経過するまでに、ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物にて連結された押出後の簡易電線連結部13の傾き角度が、押出ダイスの形状に対して5度以内で保たれていることをいう。形状維持性試験は、評価「B」が本試験の合格レベルであり、「A」以上であると望ましいレベルにある。
−評価基準―
AA:20秒放置しても形状を維持していた場合
A:10秒放置しても形状を維持し、20秒放置すると形状を維持できない場合
B:5秒放置しても形状を維持し、10秒放置すると形状を維持できない場合
C:5秒未満で形状が崩れた場合
簡易試験ケーブルを線速が100m/minで押出成形して製造した各例において、上記押出成形機により各電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物を押出成形した際の、押出成形機のモーターに作用した負荷値の最大値を読み取った。
読み取った値をモーター負荷限界値で除して、モーター負荷限界に対する負荷率(%)を算出した。電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物の押出性を、上記負荷率を指標として、下記評価基準により、評価した。押出性試験は、評価が「B」であると押出機にかかる負荷が許容でき、本試験の合格レベルであり、「A」以上であると望ましいレベルにある。
−評価基準―
AA:74%以下
A:74%を超え85%以下
B:85%を超え100%以下
C:100%を超える
各実施例及び各参考例で調製した電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物を厚さ2mmのシート状に成形した試験片を用いて、JIS C 3005に基づき、脆化温度を測定した。その結果、実施例1〜13および参考例1〜5で調製した電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物で作製した試験片は、いずれも、クラック発生温度が−40℃以下であり、耐寒性に優れていた。
すなわち、特定の密度およびMFRを持つポリエチレン樹脂(a1)と、特定の密度およびMFRを持つ樹脂(a2)と、ポリプロピレン系樹脂(a3)とを特定の割合で含有させ、MFRを特定の値に設定した、本発明の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物は、いずれも、形成する被覆の断面形状が眼鏡状であっても、押出性および形状維持性に優れていた。また、これらケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物により、耐摩耗性が高く、表面が平滑で外観にも優れた被覆を形成することができた。しかも、線速を100m/minの高速に設定して押出成形しても、上記の優れた、押出性、形状維持性および外観を保持していた。
また、樹脂(a2)の密度が大きすぎる比較例6および樹脂(a2)のMFRが小さすぎる比較例7は押出性が十分ではなく、押出性と形状維持性とを両立できなかった。樹脂(a2)のMFRが大きすぎる比較例8は形状維持性が十分ではなく、押出性と形状維持性とを両立できなかった。
さらに、ポリプロピレン系樹脂(a3)を含有しない比較例10は外観および耐摩耗性が十分ではなかった。一方、ポリプロピレン系樹脂(a3)の含有率が高い比較例11は押出性が十分ではなく、押出性と形状維持性とを両立できなかった。電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物のMFRが小さすぎる比較例9は押出性が十分ではなく、押出性と形状維持性とを両立できなかった。
2 漏洩同軸ケーブル
11、21 ケーブル部
12、22 支持線部
12a、22a 支持線
12b、22b 被覆(シース)
13、23 首部
14 テンションメンバー
15 スロット
15a 収納溝
16 光ファイバ心線
17 引き裂き紐
18 押さえ巻きテープ
19、28 被覆(シース)
24 内部導体
25 絶縁体ポリエチレン紐
26 絶縁体ポリエチレンパイプ
27 外部導体
Claims (7)
- 密度が0.900〜0.935g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、21.18N)が10g/10分以下であるポリエチレン樹脂(a1)40〜67質量%と、
エチレン−αオレフィン共重合体およびエチレン単独重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体の樹脂であって、密度が0.940〜0.965g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、21.18N)が0.2〜10g/10分である樹脂(a2)30〜57質量%と、
メルトフローレート(230℃、21.18N)が0.8〜50g/10分であるポリプロピレン系樹脂(a3)3〜25質量%とを含有し、
メルトフローレート(190℃、21.18N)が0.61〜5.0g/10分である電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物。 - カーボンブラック(b)を含有する請求項1に記載の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物。
- 前記ポリエチレン樹脂(a1)が、メタロセン触媒を用いて合成されたポリエチレン樹脂である請求項1または2に記載の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物。
- 前記ポリプロピレン系樹脂(a3)が、プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンと1−ブテンとの共重合体、プロピレンとエチレンと1−ブテンとの3元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体からなるポリプロピレン系樹脂を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物。
- 前記カーボンブラック(b)の含有量が、前記ポリエチレン樹脂(a1)、前記樹脂(a2)および前記ポリプロピレン系樹脂(a3)の合計100質量部に対して1.5〜5.0質量部である請求項2〜4のいずれか1項に記載の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物。
- 前記ポリエチレン樹脂(a1)の前記メルトフローレート(190℃、21.18N)が1.0g/10分以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の電線・ケーブル被覆用ポリオレフィン樹脂組成物を押出成形してなる被覆を有する電線・ケーブル。
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