JP6767034B2 - 複合ナノファイバーおよび該ナノファイバーを含む電解質膜 - Google Patents
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Description
固体高分子形燃料電池における電解質膜として高分子電解質膜が提案されており、その例としてはNafion(登録商標)に代表されるフッ素系電解質がある。しかし、これらのフッ素系電解質膜は、低加湿条件下でプロトン伝導性が低下するため発電性能が悪い、燃料ガス透過にともなう副反応により膜および触媒劣化を誘発する、膜強度に乏しく寸法変化をともなう長期安定性に劣る、またフッ素を使用するために高コストである、などの問題がある。
このような膜は、−20℃程度の低温から120℃程度の高温まで広い温度範囲で高いイオン伝導性を示し、膜中に水分が少ない低加湿条件下でもイオン伝導性に優れるという特徴がある。
しかし、近年、高分子電解質膜は、無加湿で高いイオン伝導性が求められ、膜抵抗を下げる目的から、膜厚が下げられる傾向にある。上記のブレンド膜は、主鎖に剛直な構造を持っていることから、高い機械強度を示すが、脆いために薄膜化すると取扱いが困難になるという問題がある。また、膜厚が薄くなることによってガスの透過性が高まり、過酸化水素が大量に発生するため、酸化安定性が悪く、長期的に安定な膜ではなかった。
要するに、従来提案されている複合膜では、現在要求されているほどに膜厚を薄くした場合に十分なイオン電導性(プロトン伝導性)とガスバリア性とを両立させることが困難であり、20μm以下に薄膜化した場合にも十分なイオン電導性(プロトン伝導性)とガスバリア性とを有する複合膜の開発が要望されているのが現状である。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.電解質ポリマーおよび塩基性ポリマーを含む複合ナノファイバーであって、
該電解質ポリマーはプロトン伝導性を有することを特徴とする
複合ナノファイバー。
2.前記電解質ポリマーは、下記A)、B)の構造を有することを特徴とする1に記載の複合ナノファイバー。
A)主鎖に、芳香族基あるいは含フッ素脂肪族基を含む繰り返し単位を含む。
B)前記繰り返し単位は、陽イオン交換基が導入された側鎖を有する。
3.前記電解質ポリマーは、主鎖骨格がポリアリーレンエーテル骨格、ポリイミド骨格、ポリスチレン骨格、あるいはフルオロエチレン骨格からなる群より選択される構造を有し、
側鎖にスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基からなる群より選択される陽イオン交換基が導入された構造
を有することを特徴とする1〜2に記載の複合ナノファイバー。
4.前記塩基性ポリマーは、下記A)、B)の構造を有することを特徴とする1に記載の複合ナノファイバー。
A)主鎖に、芳香族基あるいは/および脂肪族基を含む繰り返し単位を含む。
B)前記主鎖骨格、あるいは側鎖官能基に、陽イオン交換基と相互作用可能な塩基性官能基を有する。
5.前記電解質ポリマーの存在割合が、複合ナノファイバー全体中1〜99質量%であること、
前記複合ナノファイバーの繊維径が500nm以下であること、
を特徴とする1〜4に記載の複合ナノファイバー。
6.前記複合ナノファイバーの存在割合が、電解質膜全体中1〜50質量%であること、
前記複合ナノファイバーを含む電解質膜の厚さが30μm以下であること、
を特徴とする1〜5に記載の複合ナノファイバーを含む電解質膜。
7.複合ナノファイバーおよび複合ナノファイバーからなる不織布を形成する工程、
前記不織布を後処理する工程、
前記不織布の空隙にマトリクスポリマーを充填して、複合ナノファイバーとマトリクスポリマーとを一体化させる工程、及び
複合ナノファイバーを含む電解質膜を後処理する工程
を具備する複合膜の製造方法。
8.1〜7に記載の複合ナノファイバー含む電解質膜を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体。
9.8に記載の膜電極接合体を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池。
本発明の複合ナノファイバーは、電解質ポリマーおよび塩基性ポリマーからなり、
電解質膜は、前記複合ナノファイバー、前記複合ナノファイバーと接触した状態で存在するマトリクスポリマーを具備することを特徴とする。
以下、まず構成成分から説明する。
(電解質ポリマー)
前記電解質ポリマーは、本発明の電解質膜を固体高分子形燃料電池用の高分子電解質膜として使用した場合にプロトンを伝導して電解質膜としての主たる機能を発揮するための物質である。前記電解質ポリマーとしての特定の物質は、主鎖に芳香族基あるいは含フッ素脂肪族基を含む繰り返し単位を含み、前記繰り返し単位に陽イオン交換基が導入された側鎖を有するプロトン伝導性物質であるのが好ましい。
ここで主鎖骨格としては、下記に示すポリアリーレンエーテル(PAE)、下記に示すポリイミド(PI)、下記に示すポリスチレンおよびその共重合体(PSt)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリフェニレン(PP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(SPPS)、ポリビニルスルホン酸およびその共重合体(PVS)等を用いることができる。
陽イオン交換基としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基等の酸官能基が挙げられ、前記主鎖骨格の任意の位置に導入して用いることができる。
また、フルオロアルキル主鎖およびフルオロアルキルスルホン酸基を有するNafion(登録商標)等を用いることができる。
使用に際しては、前記電解質ポリマー単独または前記電解質ポリマー複数の混合物として用いることができる。
これらの中でもスルホン化ポリアリーレンエテールスルホン等のスルホン化ポリアリーレンエテール(SPAE)は、プロトン伝導性、熱安定性、機械強度に優れており、さらにはナノファイバー形成能も比較的良好であるため、好適である。
なお、複合ナノファイバーを作製するための塩基性ポリマーとの混合の際は、溶液状態での両ポリマー間の相互作用による不溶化を防ぐため、陽イオン交換基に結合するカウンターカチオンはプロトンである必要はなく、イオン交換により任意のカウンターイオン種を選択することが出来る。例えば、ナトリウム、カリウム、トリエチルアンモニウム、イミダゾリウム等が挙げられる。
電解質ポリマーとしては、以下の化学式で表される化合物等を好ましく挙げることができる。
Xおよび/あるいはYの芳香環中に少なくとも一つのスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基等の酸官能基を有し、
nは好ましくは2〜5000、より好ましくは100〜500の整数を示す。
なお、酸官能基のカウンターカチオンは、プロトン、ナトリウム、カリウム、トリエチルアンモニウム、イミダゾリウム等、任意のカチオン種が挙げられる。)
また、酸官能基を局所的に導入可能な下記のようなブロック構造を有する重合体を用いることもできる。
X1は、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であり、例えば、水酸基、アルキル基、スルホン酸基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、−O−、−CO−、−SO2−、−S−、−CH2−、−C(CH3)2―、―C(CF3)2−などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
式中Y1も、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であり、例えば、水酸基、アルキル基、スルホン酸基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、−O−、−CO−、−SO2−、−S−、−CH2−、−C(CH3)2―、―C(CF3)2−などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
X1および/あるいはY1の芳香環中に少なくとも一つ、望ましくは多数、例えば2〜4個ののスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基等の酸官能基を有し、
aは好ましくは1〜500、さらに好ましくは4〜50の整数を示す。)
(式中bで表される繰り返し単位は疎水部であり、
X1は、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であり、例えば、アルキル基、フルオロアルキル基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、−O−、−CO−、−SO2−、−S−、−CH2−、−C(CH3)2―、―C(CF3)2−などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
式中Y1も、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であり、例えば、アルキル基、フルオロアルキル基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、−O−、−CO−、−SO2−、−S−、−CH2−、−C(CH3)2―、―C(CF3)2−などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
X1,Y1の芳香環中に酸官能基は含まず、bは好ましくは1〜500、より好ましくは4〜50の整数を示す。)
また、nは好ましくは1〜1000、より好ましくは1〜100、特に好ましくは8〜100の整数を示す。)
さらに、スルホン酸基を局所的に導入可能な下記のようなグラフト構造を有する重合体を用いることもできる。
X1、Y1、X2、Y2、X3、Y3の芳香環中に少なくとも一つ、望ましくは多数、例えば2〜4個のスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基等の酸官能基を有し、
a、b、cはそれぞれ1〜500の整数を示す。
なお、a、bで表される繰り返し単位は前述のブロック構造を有しても構わない。)
さらに具体的には以下の重合体を用いることができる。
上記SPAEは、たとえばスルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)(SPAES)であれば以下のようにして得ることができる。
すなわち、窒素雰囲気下、N,N-ジメチルアセトアミド等の重合溶媒と共沸剤(トルエンなど)を用い、4,4‘−ビスフルオロフェニルスルホン‐3,3‘−ジスルホン酸ナトリウム、4,4‘−ビスフルオロフェニルスルホン、4,4’−ビフェノール及び炭酸カリウムを加え、100℃以上の温度で1〜10時間攪拌し、その後さらに温度を上げて1〜10時間攪拌して得ることができる。
<GPCによる分子量の測定方法>
微量のLiBr(10mM)を添加したジメチルホルムアミド(以下「DMF」という。)を用い、合成したポリマーの分子量をポリスチレン換算で測定する。サンプル溶液は1mg/mlの濃度でポリマーを臭化リチウム添加DMFに溶解させて作製する。
(塩基性ポリマー)
前記塩基性ポリマーは、前記電解質ポリマーの酸置換基と相互作用可能な官能基を有するポリマーである。ここで「相互作用」とはイオン結合や水素結合の形成だけではなく、共有結合や電荷移動錯体の形成や疎水性相互作用も含まれる。
前記電解質ポリマーの酸置換基と反応可能な官能基としては、−NH2基、>NH基、>N−基、=N−基等を挙げることができる。
前記ポリマーとしては以下に構造式を示すポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチオアゾール、ポリインドール、ポリキノリン、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等を挙げることができる。
これらの中でもポリベンズイミダゾールは化学的安定性、機械的特性に優れ、電解質膜の機械的強度や耐熱性を向上させることができ、電解質膜の薄膜化に寄与できるため好適である。
Yは、少なくとも1つの芳香環あるいは脂肪族炭化水素を有する2価の基であり、例えば、水酸基、アルキル基、スルホン酸基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、−O−、−CO−、−SO2−などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
nは好ましくは2〜5000、さらに好ましくは100〜500の整数を示す。)
上記PBIの具体例としては以下の化合物を挙げることができる。
このようなファイバーの製造方法については後述する。
(プロトン伝導物質)
複合ナノファイバーの後処理により、複合ナノファイバーにプロトン伝導物質をドープすることも可能である。
前記プロトン伝達物質は、本発明の複合膜を高分子電解質膜として使用した場合にプロトンを伝導して電解質膜としての主たる機能を発揮するための物質である。
前記プロトン伝導物質としては、複合ナノファイバーに含まれる塩基性ポリマーと相互作用することが可能であり、かつ酸官能基としてプロトン伝導に寄与することができる物質が好ましく、プロトン伝達物質としての特定の物質は、酸置換基を2個以上有する酸性物質である。ここで酸置換基としては、リン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、硝酸基、ビニル性カルボン酸基、ルイス酸基等を挙げることができる。
前記酸性物質としては、ポリリン酸、フィチン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、スクアリン酸等が挙げられる。これらの中でもフィチン酸は分子量が大きく、また、後述の複合ナノファイバーとの酸塩基相互作用によって拡散しにくく、更には、比較的水への溶解性が低く、水の存在下において、溶出しにくいため、好適である。
その他複合ナノファイバー後処理工程において用いることができる物質として、上述の本発明の複合膜において用いることができる酸性基を2つ以上有するプロトン伝達物質の他に、酸性基を1つしか有さない酸性物質を用いることもできる。たとえば、上述した本発明の複合膜に用いることができる酸性物質の他に、具体的には、リン酸、メタンホスホン酸、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スルフィン酸、ギ酸、酢酸、硝酸、塩酸、アスコルビン酸、クロム酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸等を挙げることができる。
(マトリクスポリマー)
前記マトリクスポリマーとしては、複合膜を形成した場合に膜強度を向上させることができ、プロトン伝導性にも優れたポリマーが好ましく、スルホン化ポリアリーレンエーテル(SPAE)、下記に示すNafion(登録商標)等のパーフルオロスルホン酸ポリマー、下記に示すスルホン化ポリイミド(SPI)、下記に示すスルホン化ポリベンズイミダゾール(SPBI)、下記に示すスルホン化ポリフェニレン(SPP)、下記に示すスルホン化ポリフェニレンオキシド(SPPO)、下記に示すポリフェニレンスルフィド(SPPS)、下記に示すスルホン化ポリスチレンおよびその共重合体(SPSt)、下記に示すポリビニルスルホン酸およびその共重合体(PVS)等を用いることができる。また、使用に際しては単独または混合物として用いることができる。
mは、2以上の整数を、nは、2を示す。
前記の芳香族カルボン酸二無水物としては、例えば、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビスフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸二無水物が好ましいものとして挙げられる。前記のスルホン化芳香族ジアミンとしては、主鎖がスルホン酸基により修飾された主鎖型モノマーと、側鎖にスルホン酸基が修飾した側鎖型のモノマーとが挙げられる。スルホン化芳香族ジアミンの好ましい例としては、例えば、2,2−ベンジジンジスルホン酸、4,4’−ジアミノフェニルエーテルジスルホン酸、3,3’−ビス(3−スルホプロポキシ)ベンジジン、9,9’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−2,7−ジスルホン酸、2,2’−ビス(4−スルホフェニル)ベンジジンなどが挙げられる。前記の非スルホン化芳香族ジアミンの好ましい例としては、例えば、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジアミン、2,2−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、9,9’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,5−ジアミノピリジンが挙げられる。非スルホン化芳香族ジアミンモノマーを用いることで、膜安定性や酸保持能を付与することができる。
スルホン化芳香族ジアミンモノマー及び非スルホン化芳香族ジアミンモノマーを組み合わせて用いることで、スルホン化共重合ポリイミドが得られるが、共重合体はランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
共重合の際のスルホン化ジアミンモノマー(n)と非スルホン化芳香族ジアミンモノマー(m)との比率n/mは、30/70〜100/0であることが好ましい。n/mが30/70未満では複合膜のプロトン伝導性が低く、好適な複合膜を得ることが難しくなる。高いプロトン伝導性を得るためには、n/mが70/30〜100/0であることが望ましい。
スルホン化ポリイミドの質量平均分子量(Mw)は、1.0×104〜1.0×106であることが製膜性の観点から好ましく、数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比Mw/Mnは、1〜5であることが強度の点で好ましい。
また、上記SPIとしては、以下に示すブロック構造を有するものを用いることもできる。
上記基Aにおけるスルホン酸基は、芳香族基に直接置換されたものでもよいし、例えば−O(CH2)−基、−C6H4−(フェニル)基、−O−C6H4−基等を介して側鎖に導入されたものでもよい。芳香族基は、ベンゼン環、ナフタレン環などが単独で用いられてもよいが、2個以上の環が直接結合あるいは−O−、−SO2−、−C(CF3)2−基などを介して結合されたものでもよい。
基Aの例としては、例えば、下記の基が好ましいものとして挙げられる。
上記式(2)の基Rとしては、上記式(1)の基Aと同様の基が好ましいものとして挙げられる。基Aと基Rとは同じであっても、異なるものであってもよい。具体的には以下の基が好ましい。
IEC(イオン交換容量)=スルホン酸基当量×グラフト率/(主鎖単位分子量−(側鎖分子量×グラフト率)より
グラフト率(%)={(主鎖単位分子量×IEC)/[スルホン酸基当量−(側鎖分子量×IEC)]}×100
Yは、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であり、スルホン酸基を少なくとも一つ置換された、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、−O−、−CO−、−SO2−などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、
nは好ましくは2〜5000、さらに好ましくは100〜500の整数を示す。)
すなわち、窒素雰囲気下、ポリリン酸を溶媒および縮合剤として用い、3,3‘−ジアミノベンジジン、4,8−ジスルホニル−2,6−ナフタレンジカルボン酸を加え、80℃以上の温度で1〜2時間攪拌、その後さらに温度を上げて200℃で8〜10時間攪拌し、水中に滴下後、沈殿物を10重量%の水酸化カリウム水溶液で洗浄、回収することで得ることができる。
上記ポリフェニレンスルフィド(SPPSとしては以下に示す重合体等を挙げることができる。
nは1〜5000の整数を示す。)
具体的には以下の重合体を挙げることができる。
本発明の複合膜には、上述の各成分の他に本発明の趣旨を損なわない範囲で種々添加剤を添加することができる。例えば複合膜の機械特性を向上させるためにシリカ粒子などの無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子の粒子径は1nm〜1μmであるのが膜の均一性を保つために好ましく、100nm以下であるのがより好ましく、20nm以下であるのが更に好ましい。
(全体構成)
本発明の複合膜の厚さは2〜40μmであるのが、近年要求されている厚さを満足する点で好ましく、より好ましくは2〜30μmであり、最も好ましくは2〜10μmである。
本発明の複合膜について図1を参照して説明すると、本発明の複合膜においては、電解質ポリマーおよび塩基性ポリマーから構成された複合ナノファイバー1が、各ナノファイバーが絡合された不織布形態で存在している。そして複合ナノファイバー1の間隔を埋めると共に複合膜の外形を形成するようにマトリクスポリマーが設けられており、本実施形態においては複合ナノファイバー1からなる不織布の表裏両面外方にマトリクスポリマーのみからなるポリマー層6が形成されている。
さらに、複合ナノファイバー後処理溶液により、プロトン伝導物質を複合ナノファイバーにドープすることか可能である。本発明の複合膜においては、上述のようにプロトン伝達物質が2つ以上の酸官能基を有し、複合ナノファイバー1中の塩基性ポリマーが該酸官能基と反応可能な置換基を有しているので、プロトン伝達物質は塩基性ポリマーと反応して複合ナノファイバー1に結合した状態となるだけではなく、複合ナノファイバー1と2箇所以上で結合して一種の橋懸け構造を形成する。
このような橋懸け構造を形成することにより、従来のものよりも膜厚を薄くしても強固な不織布構造を形成することができ、しかも複合ナノファイバーとプロトン伝達物質が結合した状態であるためプロトンの伝達性能の面でも有利である。
前記複合ナノファイバーが形成している不織布形態において前記マトリクスポリマーと接触する前における空隙率が50〜90%であるのが、プロトン伝導性と複合膜とした際の膜強度やガスバリア性の点で好ましい。特に上述した繊維径の複合ナノファイバーをこの範囲の空隙率で不織布化したものを用いることが、本発明の所望の効果を発揮する点で好ましい。空隙率の測定については後述する。
ここで、前記マトリクスポリマーと接触する前における空隙率とは、後述する製造方法において説明するように、まず複合ナノファイバーにより不織布を製造し、その後得られた不織布にマトリクスポリマーを投入して不織布をマトリクスポリマーの溶液に浸漬させると共に所望の形状に成形するが、この溶液に浸漬する前の不織布の状態における各複合ナノファイバー間に存在する空間の割合である。すなわち、空隙率は不織布に外接する仮想立体の体積に対する、前記空間の割合であり、(前記空間の合計体積/仮想立体の体積)×100で表される。
前記プロトン伝達物質の存在割合は、プロトン伝達物質と複合ナノファイバーとは両者が上述のような構造をとることから前記プロトン伝達物質の存在量を多くしなくても十分なプロトン伝達性能が出るため、本発明の複合膜全体中0.1〜20質量%であるのが好ましく、1〜10質量%であるのがさらに好ましい。1質量%未満であるとイオン伝導度が不十分となる場合があり、10質量%を超えるとプロトン伝達物質が経時的に溶出する場合があるので、上記範囲内とするのが好ましい。
このように、プロトン伝達物質の存在量が少ないと、複合膜表面への染み出しも非常に少ない。そのため、例えば、燃料電池用の高分子電解質膜として使用した場合には、触媒の被毒が生じにくく、この点でも有利である。
また、前記マトリクスポリマーの存在割合は、前記空隙率で存在する複合ナノファイバー間に存在する空隙を埋めて複合膜の外形を形成する程度の量あれば十分であるが、好ましくは前記複合ナノファイバーとの合計量を100とした場合、50〜90質量%である。
次に本発明の複合膜の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、好ましくは上記の本発明の複合膜を製造する方法であって、図2に示すように、
前記複合ナノファイバーおよび複合ナノファイバーからなる不織布を形成する工程(図2のA)、
前記不織布を後処理する工程(図2のB)、
前記不織布の空隙にマトリクスポリマーを充填して、複合ナノファイバーとマトリクスポリマーとを一体化させる工程(図2のC)、及び
複合ナノファイバーを含む電解質膜を後処理する工程(図示せず)
を行うことにより実施できる。
更に説明する。
不織布を形成する工程は、上記複合ナノファイバーの原料である電解質ポリマーと塩基性ポリマーを溶媒に溶解してなる紡糸液を吐出機10を用いて捕集体30上に吐出する等して形成することができる。
原料ポリマー全体における電解質ポリマーの比率は、1〜99質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがさらに好ましい。
吐出機を用いた微細ファイバーの不織布の製造については、例えば、特開2003−73964号公報、特開2004−238749号公報、特開2005−194675号公報に開示されている。以下、特開2005−194675号公報に開示の製造装置を用いた例示に準じて説明する。
前記溶媒としては例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられ、原料ポリマー濃度は、1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。紡糸液の粘度は、100〜10000mPa・sであることが好ましく、500〜5000mPa・sであることがより好ましい。
前記の装置を用いると、紡糸液はノズル11から捕集体30に向けて押し出されるとともに、アースされた捕集体30と電圧印加装置によって印加されたノズル11との間の電界による延伸作用を受け、繊維化しながら捕集体30へ向かって飛翔する(いわゆる静電紡糸法である)。そして、この飛翔した繊維は直接、捕集体30上に集積し、不織布を形成する。なお、紡糸液は、例えば、シリンジポンプ、チューブポンプ、ディスペンサ等によりタンク12からノズル11に供給される。この他、紡糸に際して用いられる装置の詳細については特開2012−238590号公報0047〜0056の記載が適宜適用される。
ここで得られる不織布の厚みは25μm以下であるのが複合膜全体の厚さを低減する観点から好ましく、5μm以下であるのがさらに好ましい。
ついで得られた不織布を後処理する。本発明においてはこの複合ナノファイバーを後処理する工程をマトリクスと接触させる工程の前に行うことが特徴である。これにより必要なプロトン伝達物質は前記複合ナノファイバーに吸着(反応による吸着を含む)させつつ、余分なプロトン伝達物質は除去することができ、薄膜化とガスバリア性および高伝導度(とくにガスバリア性)との両立を達成することができる。
後処理は、図2のBに示すように、得られた不織布を任意の容器40に入れ、容器40に別の注入容器50からプロトン伝達物質含有溶液を注入し、プロトン伝達物質含有溶液に浸漬することにより行うことができる。
プロトン伝達物質含有溶液のプロトン伝達物質の濃度は5〜95質量%、好ましくは10〜85質量%とするのが好ましい。浸漬条件は、温度15〜80℃、0.5〜3時間とするのが好ましい。
そして、浸漬終了後、余分なプロトン伝達物質を除去するために洗浄を行うのが好ましい。特に上述の本発明の電解質膜においては、上述のようにプロトン伝達物質が複合ナノファイバーに結合するので結合していない余分なプロトン伝達物質は除去した方が膜強度やガスバリア性の観点、更には、フリーなプロトン伝達物質が極めて少ないため、水分存在下においてもプロトン伝達物質の溶出が生じにくく、例えば、燃料電池用の高分子電解質膜として使用した場合には、触媒の被毒が生じないという観点から好ましく、また、除去しても結合していることにより十分なプロトン伝達性を発揮するので問題がない。洗浄は水などの洗浄液を用いて15〜80℃で5〜20時間行うのが好ましい。
洗浄後、50〜150℃の条件で、5〜15時間真空乾燥を行うなどして十分に乾燥させるのが好ましい。
プロトン伝達物質のドープ量(複合ナノファイバーへの吸着量)は、後処理前後の不織布の質量変化あるいはイオン交換容量を測定することで算出することができる。
本工程において用いることができるプロトン伝達物質は、上述の酸官能基を2つ以上有するプロトン伝達物質の他に、酸官能基を一つしか有さない酸性物質を用いることもできる。たとえば、酸官能基を一つ有する硝酸などを使用した場合、酸性物質は電解質ポリマーの酸官能基のカウンターイオンをプロトンフォームにイオン交換するのに使用される。塩基性ポリマーと相互作用していない酸官能基を一つしか有さない酸性物質の多くは洗浄操作により除去することが可能である。
この工程では前工程で得られた前記後処理後の不織布を容器40’に入れ、容器40’に別の注入容器50’からマトリクスポリマーの溶液を投入し、この溶液に前記不織布を浸漬することにより行う。
前記マトリクスポリマー溶液に用いられる溶剤としては、用いるマトリクスポリマーにより任意であるが、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられ、その他溶媒と併用してもよい。また、前記溶液におけるマトリクスポリマーの濃度は、2〜20質量%とするのが好ましい。
浸漬させた状態とした後、溶媒を蒸発させることにより本発明の複合膜を得ることができる。溶媒の蒸発は、例えば、15〜150℃における自然乾燥、真空乾燥または熱風式オーブンにより1〜48時間処理することにより実施することができる。
また、ポリマーを安定化させるためにマトリクスポリマーをいったん塩とした後上記溶液として処理することもできるがこの場合には上記の蒸発処理終了後に得られた複合膜を酸処理することが好ましい。
複合ナノファイバーを含む電解質膜を後処理することで、残存する溶媒や低分子を除去する、酸官能基のカウンターイオンをプロトンに交換する、膜を緻密化させ安定性やガスバリア性を向上させるといった効果が期待できる。
後処理として主に溶液処理および加熱処理がある。溶液処理に用いられる物質としては、過酸化水素水溶液、塩酸水溶液、エタノール/塩酸混合溶液、エタノール/硝酸混合溶液等が挙げられる。溶液処理の終了後、50〜150℃で1〜48時間真空乾燥処理を行うなどして加熱処理を行うことができる。
本発明の電解質膜は、正極と負極との間に挟持させて用いられる、固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜として使用することができ、上述のように薄膜であり、且つ負極で発生したプロトンを正極に安定的に伝導させることができる。
このような高分子電解質には低膜抵抗性(膜抵抗(Ω・cm2)=膜厚(cm)/プロトン伝導度(s/cm):s=1/Ω)が要求されるが、本発明の電解質膜は要求値(高温度域低加湿下において<0.025Ω・cm2)に近い優れた低膜抵抗性を示す。特に高温低湿度条件下(80℃、30%RH)において優れた膜抵抗性(例えば0.22Ω・cm2)程度を示す。
また、ガスバリア性が高いこと、すなわち低ガス透過流量(O2:80℃95%RH下で<1.3×10―9(cm3/(cm2 sec kPa))であることも要求される。この他、膜安定性(化学的、機械的、熱的)が高いことも要求されるところ本発明のナノファイバー複合膜はその膜厚を従来の膜よりも薄膜としてもこれらの性能を満足するものである。
本発明の電解質膜が、従来の複合膜に比して、より薄膜としても高い低膜抵抗性を有し、しかもガスバリア性も高い、バランスのとれた複合膜であることの理由は定かではないが、以下のような理由が考えられる。
ナノファイバーを構成する電解質ポリマーに塩基性ポリマーを複合することで、電解質中の酸官能基が塩基性ポリマーと相互作用し、プロトンの解離を促進する。特に従来プロトン解離が困難となりプロトン伝導性の低下する低湿度条件においてその効果は顕著になる。
また、2つ以上の酸官能基を有する酸性物質を複合ナノファイバーにドープすることで、プロトン伝導に寄与する物質を増大させることが可能である。大部分の酸性物質は複合ナノファイバーの表面に多く存在し、複合ナノファイバー同士を連結するように存在する。そのため、マトリクスポリマーと一体化した際に、複合ナノファイバー間が広がりにくくなる。
さらに、塩基性ポリマーを含む複合ナノファイバーの存在により、電解質膜作製時にマトリクスポリマーの酸官能基がナノファイバー表面近傍に自発的に集まり、一種の酸凝縮層を形成することが示唆される。プロトンが分散することなくナノファイバーを伝って移動できるため、膜厚方向にも、プロトン伝達性能が向上していると考えられる。更に、内部で相互作用を形成しガ力学強度やスバリア性に優れる複合ナノファイバーが電解質膜中に存在することによって、電解質膜の強度やガスバリア性が向上されると考えられる。
このように構成された本発明の電解質膜は、上述の各性能バランスに優れるという効果を奏するのみではなく、フリーな酸性物質が存在せず、燃料電池セルにおける酸性物質による白金触媒への被毒がないため特性低下を大幅に抑制できる。なお、不織布をホットプレスなどにより加圧して、微細ファイバーの密度を高めることができ、より一層の薄膜化も可能である。
窒素雰囲気下、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン4.36g(20.0mmol)に発煙硫酸16mlを加え、110℃で6時間攪拌した。放冷後、100mlの蒸留水に注ぎ、攪拌しながら水酸化ナトリウムを用いてpHを10に調整した。その溶液を1Lエタノール中にゆっくり注ぎ、析出物を吸引ろ過によりろ別した。ろ液をエバポレーションにより濃縮し、2−プロパノールを加え、析出物を吸引ろ過により回収した。回収したSDFBを80℃で18時間乾燥し、溶媒を完全に除去した。
窒素雰囲気下、重合溶媒にN,N−ジメチルアセトアミド(脱水)30mlを用い、ディーンスターク管を有する三口フラスコに合成例1で得た3,3‘−ジスルホ−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン−ナトリウム塩(SDFB)2.28g(5.4mmol)、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン(FPS)1.68g(6.6mmol)、4,4’−ビフェノール(BP)2.23g(12.0)、2.2倍等量の炭酸カリウム、トルエン(脱水)15mlを加え、140℃で4時間攪拌し、ディーンスターク管内の水およびトルエンを除去後、170℃でさらに15時間攪拌し、スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホン(SPAES)ナトリウム塩を合成した。なお、合成したSPAESは熱水に注ぎ沈殿精製した後、蒸留水で繰り返し洗浄して回収した。回収したSPAES(ナトリウム塩)は、60℃で15時間真空乾燥し、溶媒を完全に除去した。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、日本分光社製HPLCポンプPU−2080PLUS)を用いて、スルホン化ポリアリーレンエーテル塩の分子量を測定した。なお、GPC溶媒として微量の臭化リチウム(10mmol/L)を添加したDMFを用い、キャリアを用いて調整した1mg/mLのスルホン化ポリアリーレンエーテル塩溶液よりポリスチレン換算の分子量を測定した。その結果、Mwが6.0×105であり、Mw/Mnは1.7であった。
窒素雰囲気下、重合溶媒にポリリン酸(PPA)を用い、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)2.27g(10.6mmol)、4,4’−オキシビス安息香酸(OBBA)2.73g(10.6mmol)を量り取り、3質量%溶液となるようにポリリン酸(PPA)を加えて、攪拌しながら徐々に温度を上げていき、140℃で12時間攪拌し、ポリベンズイミダゾールを合成した。得られたポリマー溶液をイオン交換水に注ぎ再沈した後、水酸化ナトリウム溶液で中和し、洗浄した。吸引ろ過によりポリベンズイミダゾールを回収し、24時間自然乾燥させた後、100℃で真空乾燥した。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定より、ポリベンズイミダゾールのMwが1.6×105であり、Mw/Mnは2.1であった。
バイアル瓶に、合成例2のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホン塩と合成例3のポリベンズイミダゾールを重量比で50/50になるように加え、ポリマー重量が全重量の16質量%となるように脱水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置ES−2000S(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.12mL/時として、エレクトロスピニングを行った。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、SPAES/PBI(50/50)複合ナノファイバー不織布をアルミ箔上に積層した。得られた複合ナノファイバーは60℃で15時間真空乾燥させた。
得られた複合ナノファイバーの酸処理および酸ドープのため、後処理を行った。複合ナノファイバーを塩酸(0.1M)に室温で15時間浸漬し、純水で繰り返し洗浄した。続いて、フィチン酸水溶液(50wt%)に室温で1時間浸漬させ、その後80℃の純水中で繰り返しのべ24時間洗浄し、ドープされなかったフィチン酸を除去した。酸ドープした複合ナノファイバーは60℃で15時間真空乾燥させた。上記後処理により、SPAESナトリウム塩をプロトンフォームに置換するとともに、塩基性ポリマーにフィチン酸をドープすることができる。
ナノファイバーの一部を用い、オスミウムコーティングした後、走査型電子顕微鏡(SEM、JEOL製JSM−6100)によって観察、得られたSEM像から作製されたナノファイバーのファイバー径を算出した。図3に、実施例1のナノファイバー(放出時間60秒)のSEM像を示す。SEM画像の結果から均一なナノファイバーが作製できたことを確認し、そのファイバー径は326±27nmであった。
空隙率は、ファイバーマットを3cm角に切り出し、乾燥質量(W)と膜厚計により測定した膜厚から算出した見かけの体積(V)、SPAES/PBI(50/50)の比重(1.5g/cm3)を用いて、下記の式より算出した。
空隙率(%)=(1−(W/(V×1.5))×100
算出された空隙率は、89%程度であった。
ナノファイバー単体のプロトン伝導度を測定するために、一軸配列ナノファイバーを作製した。実施例1と同様、16質量%になるようにポリマー溶液を調整し、ES−1000(Fuence社製)を用いてエレクトロスピニングを実施した。なお、コレクターは、両端に2枚のアルミニウム製電極が設置されたガラス基板を用いた。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、ポリマー溶液の放出量を0.12mL/時として、シリンジに17kvの電圧を印加した。これにより、1軸配向ナノファイバー集積体をガラス基板上に作製した。ポリマー溶液の放出時間が60秒の時にコレクターを取り出した。1軸配列ナノファイバーに塩酸(0.1M)を滴下し、室温で1時間静置後、純水で繰り返し洗浄した。続いて、フィチン酸水溶液(50wt%)を滴下し、室温で1時間静置し、室温で純水により繰り返し洗浄し、ドープされなかったフィチン酸を除去した。60℃で15時間真空乾燥を行い、酸ドープした1軸配列ナノファイバーを得た。
インピーダンスアナライザー3532−50(日置社製)を用いて、50kHz〜5MHzまでの周波数応答性を測定して、ナノファイバー集積体の抵抗(電極間距離0.5cm)を測定した。なお、抵抗測定時の温度及び湿度は、恒温恒湿器SH−221(ESPEC社製)を用いて、それぞれ90℃及び95%RHに保持した。
さらに、インピーダンス測定後の1軸配列ナノファイバーに金コートを行い、SEMにより観察した。SEM画像から電極間に存在する一軸配列ナノファイバーの平均直径及び本数を求め、式 電極間距離[cm]/(ファイバー1本の断面積[cm2]×ナノファイバー本数×抵抗[Ω])から、プロトン伝導度[S/cm]を算出した。この結果を表1に示す。
バイアル瓶に、合成例2のスルホン化ポリアリーレンエーテルナトリウム塩と合成例3のポリベンズイミダゾールを重量比で50/50になるように加え、さらにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を加えて一晩攪拌し、ブレンドポリマー溶液を調製した。ブレンドポリマー溶液をガラスシャーレに流し込み、60℃で自然乾燥後、60℃15時間真空乾燥することでSPAES/PBI(50/50)ブレンド膜を得た。膜厚は64μmであった。得られたブレンド膜を塩酸(0.1M)に室温で15時間浸漬し、純水で繰り返し洗浄した。続いて、フィチン酸水溶液(50wt%)に室温で1時間浸漬させ、その後80℃の純水中で繰り返しのべ24時間洗浄し、ドープされなかったフィチン酸を除去した。酸ドープしたブレンド膜は60℃で15時間真空乾燥させた。
インピーダンスアナライザー3532−50(日置社製)を用いて、50kHz〜5MHzまでの周波数応答性を測定して、ナノファイバー集積体の抵抗(電極間距離1.0cm)を測定した。なお、抵抗測定時の温度及び湿度は、恒温恒湿器SH−221(ESPEC社製)を用いて、それぞれ90℃及び95%RHに保持した。インピーダンス測定により得られた抵抗[Ω]、電極間距離[cm]、膜断面積[cm2]を用い、式 電極間距離[cm]/(膜断面積[cm2]×抵抗[Ω])から、プロトン伝導度[S/cm]を算出した。この結果を表1に示す。
実施例2の同一組成からなるナノファイバーと比べ、ブレンド膜の伝導度は非常に低い値であった。これは、膜内で電解質ポリマーであるSPAES中のスルホン酸基が塩基性ポリマーであるPBIと酸-塩基相互作用し、プロトン伝導可能な酸官能基濃度が低下したためであると考えられる。また、ドープ酸であるフィチン酸は比較的分子サイズが大きく、膜表面近傍に存在するPBIにはドープされたものの、内部にはドープが行われなかったと推測される。一方ナノファイバーの場合、直径が数百nmと細く十分内部までフィチン酸がドープされたこと、およびナノファイバー特有の効率的なプロトン伝導チャネルが形成されたことが高い伝導性に繋がったと考察される。
バイアル瓶に、合成例2のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンと合成例3のポリベンズイミダゾールを重量比で20/80になるように加え、ポリマー重量が全重量の14.3質量%となるように脱水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置ES−2000S(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.12mL/時として、エレクトロスピニングを行った。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、SPAES/PBI(20/80)複合ナノファイバー不織布をアルミ箔上に積層した。続いて、実施例1と同じ条件で後処理、乾燥を行った。
SEM観察結果を図4に示す。SEM像から作製されたナノファイバーのファイバー径は323±20nmであった。空隙率は、86%程度であった。
実施例3と同様、14.3質量%になるようにポリマー溶液を調整し、ES−1000(Fuence社製)を用いてエレクトロスピニングを実施した。なお、コレクターは、両端に2枚のアルミニウム製電極が設置されたガラス基板を用いた。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、ポリマー溶液の放出量を0.12mL/時として、シリンジに20kvの電圧を印加した。これにより、1軸配向ナノファイバー集積体をガラス基板上に作製した。ポリマー溶液の放出時間が60秒の時にコレクターを取り出した。実施例2と同様の後処理を行い、酸ドープした1軸配列ナノファイバーを得た。
実施例2と同様に、一軸配列SPAES/PBI(20/80)複合ナノファイバーのプロトン伝導度測定を行った。結果を表1に示す。
また、SEM観察結果を図5に示す。
バイアル瓶に、合成例2のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンと合成例3のポリベンズイミダゾールを重量比で80/20になるように加え、ポリマー重量が全重量の15.5質量%となるように脱水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置ES−2000S(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.12mL/時として、エレクトロスピニングを行った。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、SPAES/PBI(20/80)複合ナノファイバー不織布をアルミ箔上に積層した。続いて、実施例1と同じ条件で後処理、乾燥を行った。
SEM観察結果を図6に示す。SEM像から作製されたナノファイバーのファイバー径は274±25nmであった。空隙率は、85%程度であった。
実施例5と同様、15.5質量%になるようにポリマー溶液を調整し、ES−1000(Fuence社製)を用いてエレクトロスピニングを実施した。なお、コレクターは、両端に2枚のアルミニウム製電極が設置されたガラス基板を用いた。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、ポリマー溶液の放出量を0.12mL/時として、シリンジに20kvの電圧を印加した。これにより、1軸配向ナノファイバー集積体をガラス基板上に作製した。ポリマー溶液の放出時間が60秒の時にコレクターを取り出した。実施例2と同様の後処理を行い、酸ドープした1軸配列ナノファイバーを得た。
実施例2と同様に、一軸配列SPAES/PBI(20/80)複合ナノファイバーのプロトン伝導度測定を行った。結果を表1に示す。
バイアル瓶に、合成例2のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンを、ポリマー重量が14質量%となるように脱水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置ES−2000S(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.12mL/時として、エレクトロスピニングを行った。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、SPAES単独ナノファイバー不織布をアルミ箔上に積層した。続いて、実施例1と同じ条件で後処理、乾燥を行った。
SEM像から作製されたナノファイバーのファイバー径は124±29nmであった。空隙率は、82%程度であった。
比較例2と同様、14質量%になるようにポリマー溶液を調整し、ES−1000(Fuence社製)を用いてエレクトロスピニングを実施した。なお、コレクターは、両端に2枚のアルミニウム製電極が設置されたガラス基板を用いた。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、ポリマー溶液の放出量を0.12mL/時として、シリンジに17kvの電圧を印加した。これにより、1軸配向ナノファイバー集積体をガラス基板上に作製した。ポリマー溶液の放出時間が60秒の時にコレクターを取り出した。実施例2と同様の後処理を行い、酸ドープした1軸配列ナノファイバーを得た。
実施例2と同様に、一軸配列SPAES/PBI(20/80)複合ナノファイバーのプロトン伝導度測定を行った。結果を表1に示す。
バイアル瓶に、合成例3のポリベンズイミダゾールと、ポリマー重量が8質量%となるように脱水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置ES−2000S(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.12mL/時として、エレクトロスピニングを行った。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、PBI単独ナノファイバー不織布をアルミ箔上に積層した。続いて、実施例1と同じ条件で後処理、乾燥を行った。
SEM像から作製されたナノファイバーのファイバー径は113±16nmであった。空隙率は、75%程度であった。
比較例4と同様、8質量%になるようにポリマー溶液を調整し、ES−1000(Fuence社製)を用いてエレクトロスピニングを実施した。なお、コレクターは、両端に2枚のアルミニウム製電極が設置されたガラス基板を用いた。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、ポリマー溶液の放出量を0.12mL/時として、シリンジに17kvの電圧を印加した。これにより、ガラス基板上に1軸配向ナノファイバー集積体の作製を試みた。しかしながら、条件を各種検討したがPBI単独では1軸配列ナノファイバーは得られなかった。
SPAES/PBI(20/80)複合ナノファイバー不織布とNafionの質量比は、空隙率、比重を考慮し、10/100とした。
実施例3で得られた膜厚25μm程度のSPAES/PBI(20/80)複合ナノファイバー不織布をガラスシャーレ内に設置し、市販のNafion分散液をキャストし、室温大気下でゆっくり溶媒を蒸発させた。その後、60℃で15時間真空乾燥させることで電解質膜を得た。なお、不織布の膜厚は実質的に複合膜の膜厚とほぼ同じとなるので、複合膜の膜厚をもって不織布の膜厚とした。
得られた電解質膜を3%過酸化水素水に80℃で1時間浸漬させ、純水洗浄後、硝酸(1M)に80℃1時間浸漬させ、純水で繰り返し洗浄した。60℃で15時間真空乾燥して、図1に示す形態のSPAES/PBI(20/80)複合ナノファイバー不織布/Nafion電解質膜を得た。
作製した電解質膜の膜厚は25μm程度であり、図1に示すように不織布の表裏両面にNafionマトリクス層が形成されてなる複合膜であると考えられる。
ナノファイバーマットは用いず、市販のNafion(登録商標)分散液のみを用いて、実施例7と同様に製膜し、得られたNafion単独膜のプロトン伝導度測定を行った。その結果を表1に示す。80℃−30%RH、90℃−95%RHにおけるプロトン伝導度は、それぞれ2.8×10−4、7.4×10−2 Scm−1であった。
Claims (9)
- 電解質ポリマーおよび塩基性ポリマーを含む複合ナノファイバーであって、 該電解質ポリマーはプロトン伝導性を有することを特徴とする複合ナノファイバー。
- 前記電解質ポリマーは、下記A)、B)の構造を有することを特徴とする請求項1に記載 の複合ナノファイバー。
A)主鎖に、芳香族基あるいは含フッ素脂肪族基を含む繰り返し単位を含む。
B)前記繰り返し単位は、陽イオン交換基が導入された側鎖を有する。 - 前記電解質ポリマーは、主鎖骨格がポリアリーレンエーテル骨格、ポリイミド骨格、ポリスチレン骨格、あるいはフルオロエチレン骨格からなる群より選択される構造を有し、側鎖にスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基からなる群より選択される陽イオン交換基が導入された構造を有することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の複合ナノファイバー。
- 前記塩基性ポリマーは、下記A)、B)の構造を有することを特徴とする請求項1に記載 の複合ナノファイバー。
A)主鎖に、芳香族基あるいは/および脂肪族基を含む繰り返し単位を含む。
B)前記主鎖骨格、あるいは側鎖官能基に、陽イオン交換基と相互作用可能な塩基性官能基を有する。 - 前記電解質ポリマーの存在割合が、複合ナノファイバー全体中1〜99質量%であること、前記複合ナノファイバーの繊維径が500nm以下であること、を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合ナノファイバー。
- 前記複合ナノファイバーの存在割合が、電解質膜全体中1〜50質量%であること、前記複合ナノファイバーを含む電解質膜の厚さが30μm以下であること、を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合ナノファイバーを含む電解質膜。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の複合ナノファイバーからなる不織布を形成する工程、前記不織布を後処理する工程、前記不織布の空隙にマトリクスポリマーを充填して、複合ナノファイバーとマトリクスポリマーとを一体化させる工程、及び複合ナノファイバーを含む電解質膜を後処理する工程を具備する複合膜の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の複合ナノファイバーを含む電解質膜を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体。
- 請求項8に記載の膜電極接合体を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池。
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