しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載される切削方法の場合、ノズル部品等と切削インサートの頂面との間隙にクーラントを流さなければならない。また、勢い良くクーラントを噴射することができないため、切削工具としての適用範囲が限定される。
また、特許文献2及び3に記載された切削方法は、溝入れ加工特有の課題を解決するためのものに過ぎない。
また、特許文献4には、限られた流量を有するクーラントを効率的に利用して切削するための技術思想が開示されていない。
そこで本発明は、汎用性が高く、クーラントを効率的に利用して切削することが可能となる切削方法及び切削工具を提供することを目的とする。
本開示の一側面に係る切削方法は、すくい面を有する端面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面との接続部に形成され、コーナ切れ刃と、コーナ切れ刃に接続され、直線状に形成される直線切れ刃と、を有する切れ刃と、を備える切削インサートを用いる。そして、端面に対向する方向から見た端面視において、端面の上方をコーナ切れ刃に向かって進行する第1クーラントを噴射し、端面に対向する方向から見た端面視において、直線切れ刃に沿ってコーナ切れ刃に向かって進行する第2クーラントを噴射し、切れ刃を用いて被切削物を切削する。
このような切削方法によれば、コーナ切れ刃に向かって進行する第1クーラントを噴射するから、コーナ切れ刃によって発生する切りくずの折断を促進することができる。また、直線切れ刃に沿ってコーナ切れ刃に向かって進行する第2クーラントを噴射するから、直線切れ刃によって発生する切りくずの排出を促進することが可能になる。従って、汎用性が高く、かつ、切りくずの折断及び排出のためにクーラントを効率的に利用した切削方法を提供することが可能になる。
なお、コーナ切れ刃は、一定の曲率半径を有して形成されたコーナ切れ刃に限られず、曲率が変化する曲線を少なくとも一部に含む切れ刃であってもよい。直線切れ刃は、少なくともコーナ切れ刃との接続部から延在する部分が直線状(直線を含み、当業者によって直線と解される場合を含む)に形成されていればよい。また、直線切れ刃のコーナ切れ刃と接続する方の端部とは異なる端部に、更に、別の切れ刃、例えば、大きな曲率半径(小さな曲率)を有する切れ刃等が形成されていてもよい。
また、端面視は、切削インサートの中心にこれを固定するための貫通穴が形成される場合、端面を近似する平面に対して直角な方向から端面を見た場合に相当する。
また、直線切れ刃に沿って、とは、端面視において直線切れ刃と平行になる場合の他、概ね直線切れ刃を近似する直線と平行であり、端面視において、±10度以内、より好ましくは、±5度以内の範囲に含まれる場合を含む。
また、第1クーラントと第2クーラントは、共通する流路から分岐される二つの流路から供給されるように構成することができる。また、第1クーラントと第2クーラントのみが噴射されるように構成することが好ましい。しかしながら、更に、第3クーラントが噴射されるように構成してもよい。
また、本開示の一側面に係る切削方法は、すくい面を有する端面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面との接続部に形成され、コーナ切れ刃と、コーナ切れ刃に接続され、直線状に形成される直線切れ刃と、を有する切れ刃と、を備える切削インサートを用いる。また、この切削方法は、第1クーラントと第2クーラントを噴射する。そして、端面に対向する方向から見た端面視において、第1クーラントは、端面上をコーナ切れ刃に向かって進行するように噴射される。端面視において、直線切れ刃の直線に対する第1クーラントの進行方向がなす角を正とするとき、第2クーラントは、直線切れ刃の直線に対する進行方向がなす角が負となるように噴射される。
このような切削方法によれば、第1クーラントは、端面上をコーナ切れ刃に向かって進行するように噴射される。このためコーナ切れ刃によって発生した切りくずを折断することが可能になる。一方で、第2クーラントは、直線切れ刃の直線に対する進行方向がなす角が負となるように噴射される。例えば、フランジがあるような被切削物を切削するとき、直線切れ刃がフランジに近づくと、フランジと直線切れ刃との隙間が狭くなってくる。このため、切りくずの排出が難しくなってくる。隙間が小さくなると、切りくずが排出できなくなって、直線切れ刃とフランジの間に切りくずが噛みこむこともある。そのような切削の場合、直線切れ刃に沿って第2クーラントを噴出すると、切りくずが、直線切れ刃とフランジとの隙間とは異なる経路で排出されるようになるため、切りくずの排出を促進することが可能になる。
直線切れ刃の直線に対する第2クーラントの進行方向がなす角は、直線切れ刃の直線に対する第1クーラントの進行方向がなす角より小さい角度であることが好ましい。例えば、端面視において、直線切れ刃の直線に対する第1クーラントの進行方向がなす角を5度以上25度以内とし、直線切れ刃の直線に対する第2クーラントの進行方向がなす角を、−5度未満とすることが好ましい。更に、端面視における第1クーラントの進行方向と、第2クーラントの進行方向とがなす角は、15度より大きいことが好ましい。このような構成とすることにより、第1クーラントによる切りくずの折断効果と、第2クーラントによる切りくずの排出効果をより発揮させることが可能になる。
また、端面視において第1クーラントと第2クーラントが交差する地点において、第1クーラントの圧力は、第2クーラントの圧力より大きくてもよい。例えば第1クーラントと第2クーラントをコーナ切れ刃付近で交差させる場合、第1クーラントを噴射する第1開口からコーナ切れ刃までの距離よりも、第2クーラントを噴射する第2開口からコーナ切れ刃までの距離を、例えば、1.5倍より大きくして第2クーラントが当該地点に至るまで広がりながら進行するように構成することにより、コーナ切れ刃における第1クーラントの圧力を、第2クーラントの圧力より大きくすることが可能になる。第2クーラントが噴射される第2開口に、第2開口に近付くほど開口径が大きくなるようなテーパを設け、第2クーラントが広がりやすくなるように構成してもよい。切りくずを折断させるためには、切りくず全体ではなく、その一部に集中して高圧力のクーラントを衝突させることが好ましいところ、第1クーラントを高圧力とすることにより、折断効果を促進することが可能になる。切りくずを排出させるためには、切りくず全体に低圧のクーラントを広範囲に衝突させることが好ましいところ、第2クーラントを低圧力とすることにより、切りくずの排出効果を促進することが可能になる。更に、このような構成とすることにより、クーラントを効率良く利用することが可能になる。
また、第2クーラントの端面に対する仰角は、第1クーラントの端面に対する仰角より小さくてもよい。第1クーラントと第2クーラントの仰角を異ならせることにより、切りくずの排出を促進することが可能になる。特に第2クーラントの仰角を小さくした場合、第1クーラントと比較して、下側(逃げ面側)から上向き、すなわち、切れ刃から離れる方向にクーラントが進行することを促進することができる。このため、切りくずが逃げ面側から排出されることを促進することができる。
ここで、端面に対する仰角、とは、当業者にとって、通常の意味を有するように解され、端面が凹凸を有する場合、端面を近似する平面に対する仰角に相当する。
また、第2クーラントの流量は、第1クーラントの流量より大きくてよい。切りくずを折断させるためには、切りくず全体ではなく、その一部に集中して高圧力のクーラントを衝突させることが好ましいところ、第1クーラントを噴射する第1開口の開口径を相対的に小さくすることにより、折断効果を促進することが可能になる。切りくずを排出させるためには、切りくず全体に低圧のクーラントを広範囲に衝突させれば足りるところ、第2クーラントを噴射する第2開口の開口径を相対的に大きくすることにより、切りくずの排出効果を発揮させることが可能になる。更に、このような構成とすることにより、クーラントを効率良く利用することが可能になる。
また、本開示の一側面に係る切削工具は、すくい面を有する端面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面との接続部に形成され、コーナ切れ刃と、コーナ切れ刃に接続され、直線状に形成される直線切れ刃と、を有する切れ刃と、を備える切削インサートと、切削インサートを保持するためのボデーであって、第1クーラントを噴射するための第1開口と、第2クーラントを噴射するための第2開口とが形成されるボデーとを備える切削工具であって、ボデーには、切削インサートがボデーに固定されたときに、端面に対向する端面視において第1クーラントが端面の上方をコーナ切れ刃に向かって進行するように、第1開口に接続するクーラント流路と、直線切れ刃に沿ってコーナ切れ刃に向かって進行するように、第2開口に接続するクーラント流路が形成されている。
このような切削工具によれば、コーナ切れ刃に向かって進行する第1流量の第1クーラントを噴射するから、コーナ切れ刃によって発生する切りくずの折断を促進することができる。また、直線切れ刃に沿ってコーナ切れ刃に向かって進行する第2クーラントを噴射するから、直線切れ刃によって発生する切りくずの排出を促進することが可能になる。従って、汎用性が高く、かつ、切りくずの折断及び排出のためにクーラントを効率的に利用した切削方法を提供することが可能になる。例えば、第2クーラントが噴射される第2開口に接続される流路の中心軸が、端面視において、切削インサートの直線切れ刃を通過する直線と、略平行となるように構成することにより、第2クーラントを直線切れ刃に沿って進行させることが可能になる。
なお、第2開口の開口径は、第1開口の開口径より大きく構成することが好ましい。このような構成とすることにより、第2クーラントの流量を第1クーラントの流量より相対的に大きくすることができる。このため、上述のとおり、第1クーラントを切りくずの折断に利用し、第2クーラントを切りくずの排出に利用することが可能になる。例えば、第2開口の開口径は、第1開口の開口径の1.2倍より大きくなるように構成することができる。
また、第2開口に接続するクーラント流路の端面に対する仰角は、第1開口に接続するクーラント流路の端面に対する仰角より小さくなるように構成してもよい。
また、ボデーは、ホルダと、切削インサートの端面を押圧して、切削インサートをホルダに対して固定するための押さえ金を有する冶具とを備え、第1開口は、押さえ金の表面に形成され、第2開口は、ホルダの表面に形成されるように構成してもよい。
また、端面視において、第2開口とコーナ切れ刃との距離は、第1開口とコーナ切れ刃との距離の1.5倍より大きくなるように構成してもよい。
また、本開示の一側面に係る切削工具は、すくい面を有する端面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面との接続部に形成され、コーナ切れ刃と、コーナ切れ刃に接続され、直線状に形成される直線切れ刃と、を有する切れ刃と、を備える切削インサートに、第1クーラントと第2クーラントを噴射するように構成されるボデーを備える。端面に対向する方向から見た端面視において、ボデーには、第1クーラントが端面上をコーナ切れ刃に向かって進行するように噴射される流路が形成される。端面視において、ボデーには、直線切れ刃の直線に対する第1クーラントの進行方向がなす角を正とするとき、第2クーラントが直線切れ刃の直線に対する進行方向がなす角が負となるように噴射される流路が形成される。
また、本開示は、インサートを押圧して、切削インサートをホルダに対して固定するための押さえ金と、この押さえ金をホルダに固定するための雄ねじ部品と、を備える冶具を含む。そして、雄ねじ部品は、雄ねじが形成されるねじ部と、ねじ部よりも径大に形成される頭部と、ねじ部と頭部を接続する接続部と、を備え、ねじ部には、内部にクーラントを供給するためにねじ部の底面に開口し、接続部の方向に向かう第1クーラント流路が形成され、接続部には、第1クーラント流路に連通し、接続部の側面に開口する第2クーラント流路が形成され、押さえ金には、雄ねじ部品が貫通するための貫通穴と、貫通穴及び第2クーラント流路に連通し、貫通穴より径大に形成されるザグリと、ザグリに連通し、押さえ金の表面に開口する第3クーラント流路と、が形成される。
なお、押さえ金とホルダは、一体的に構成されていても、分離可能に構成されていてもよい。
また、各流路は、その端部、または、端部以外の部分で連通してもよいし、複数の端部を有するように設けることにより流路抵抗の低減を図ってもよい。
また、切削インサートを固定したときに、雄ねじの軸線方向における第2クーラント流路が形成される位置と、ザグリが形成される位置とが重複することが好ましい。
本開示の他の側面に係るクーラント供給構造は、冶具とホルダとを備える。ホルダは、切削インサートを支持するための切削インサート着座面と、切削インサートの端面を押圧する押さえ金を支持するための押え金着座面と、を備えるとともに、ホルダには、押え金着座面に開口し、雄ねじと螺合するための雌ねじと、雌ねじと連通するクーラント供給流路が形成される。
また、本開示の更に他の側面に係る切削工具は、クーラント供給構造と、切削インサートを備える。切削インサートは、切削インサートの端面に対向する方向から端面視において、円弧状に形成されるコーナ切れ刃と、コーナ切れ刃に接続され、直線状に形成される直線切れ刃とを備え、ホルダには、クーラント供給流路に連通し、ホルダの表面に開口する第4クーラント流路が形成され、切削インサートの端面が押さえ金により押圧されてホルダに対して固定されたときに、端面視において、押さえ金の表面から供給されるクーラントが、切削インサートの端面上を通過し、直線切れ刃に対して第1鋭角をなしてコーナ切れ刃に向かって進行するように、第3クーラント流路は形成され、ホルダの表面から供給されるクーラントが、切削インサートの端面上を通過し、直線切れ刃に対して第1鋭角の半分未満の第2鋭角をなしてコーナ切れ刃に向かって進行するように、第4クーラント流路は形成される。
また、本開示の更に他の側面に係る冶具は、切削インサートを押圧して、切削インサートをホルダに対して固定するための押さえ金と、この押さえ金をホルダに固定するための雄ねじ部品と、を備える冶具であって、雄ねじ部品は、雄ねじが形成されるねじ部と、ねじ部よりも径大に形成される頭部と、ねじ部と頭部を接続する接続部と、を備え、ねじ部には、内部にクーラントを供給するためにねじ部の底面に開口し、接続部の方向に向かう第1クーラント流路が形成され、接続部には、第1クーラント流路に連通し、一端が接続部の側面に開口する第2クーラント流路が形成され、押さえ金には、一端が第2クーラント流路に連通し、他端が押さえ金の表面に開口する第3クーラント流路と、が形成される。
第2クーラント流路と第3クーラント流路は、接続部の一部を径小にすることで連通するようにしてもよい。また、漏れ防止のために、Оリングや、樹脂等の種々の手段を適用することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
図1は、本実施形態に係る切削工具100の斜視図である。図2は、切削工具100を、先端方向から見た先端視の拡大図である。図3は、切削工具100を、ホルダ10の中心軸AXに垂直な方向から見た正面図であり、図4は、切削工具100の右側面図である。
図1に示されるように、本実施形態に係る切削工具100は左勝手で切削するための旋削工具であり、切削インサート20を保持するためのホルダ10と、切削インサート20と、押さえ金40及び雄ねじ部品50とを備える治具30から構成される。切削インサート20は、例えば、30度〜40度の鋭角をなす角部と、140度〜150度の鈍角をなす角部を有し、内接円が8〜15mmの菱形に形成される。切削インサート20は、すくい面として機能する端面24と、逃げ面として機能する周側面22と、端面24と周側面22との接続部に形成され、菱形の鋭角をなす角部に形成された円弧状のコーナ切れ刃26Aと、菱形の一辺に、コーナ切れ刃26Aに接続して形成される直線状の直線切れ刃26Bを備える。切削インサート20を保持するためのボデーは、本実施形態においては、ホルダ10と治具30から構成される。
切削インサート20に向かって供給されるクーラントの一部(「第1クーラント」の一例)は、ホルダ10の内部に形成される流路から、治具30の雄ねじ部品50内の流路を介して押さえ金40に形成された第1開口部H1から吐出される。また、ホルダ10内部の流路は途中で分岐され、クーラントの一部(「第2クーラント」の一例)は、ホルダ10に形成された第2開口部H2から吐出される。このため、ホルダ10及び治具30は、クーラントを供給するためのクーラント供給構造を構成する。なお、クーラントは、切削油剤その他の知られた流体を使用することができる。
同じく図1に示されるように、ホルダ10は、中心軸AX(図3)を中心に円筒状又は傾斜の小さい円錐状に形成される基部12と、この基部12と一体的に形成され、切削インサート20を保持する保持部14を備える。
図3及び図4に示されるように基部12の端面には、中心軸AXを中心として端面に開口する接続部H3が形成される。この接続部H3は、クーラントを供給するためのポンプ(不図示)と係合するように形成されている。更に、この接続部H3と連通するように、中心軸AXを中心に形成された円筒状のクーラント流路CH1が形成される。図に示されるように、クーラント流路CH1は、中心軸AXに沿って、基部12から保持部14にかけて形成される。
保持部14は、中心軸AXを中心に基部12よりも径大な円筒状に形成される保持ベース部14A1と、中心軸AX方向先端に、保持ベース部14A1と一体的に形成されるホルダ先端部14A2を備えている。切削インサート20の端面24方向から切削工具100を見た図3に示されるように、左勝手の切削工具100の場合、ホルダ先端部14A2は、切削インサート20を先端としたときに中心軸AXを含む中心線に対して左側に形成される。また、切削インサート20の逃げ面となる周側面22方向から切削工具100を見た図4に示されるように、ホルダ先端部14A2は、中心軸AXを含む下側に形成される。そのため、保持ベース部14A1には、ホルダ先端部14A2と連なるために中心軸AXの進行方向を向いた傾斜面14B1が形成される。そして、この傾斜面14B1には、クーラントを吐出方向AR2に向かって吐出するための第2開口部H2が形成される。
また、ホルダ先端部14A2には、傾斜面14B1と連なり、切削インサート20の端面24と同じ方向を向いたホルダ端面14B2が形成される。ホルダ端面14B2上には、押さえ金40が取り付けられる。図4に示されるように、ホルダ端面14B2は、中心軸AXと平行ではなく、先端に進むほど中心軸AXに近づくように傾斜する。従って、先端視を示す図2においても、切削インサート20の端面24及びホルダ端面14B2を視認することができる。
ホルダ先端部14A2の前端には、切削インサート20を保持するためのチップ座14Cが形成される。このチップ座14Cは、切削インサート20の底面を支持するために、ホルダ端面14B2と略平行に形成されたチップ座面と、切削インサート20の2つの周側面を支持するために、チップ座面に垂直に、切削インサート20の周側面22と同一の30〜40度の鋭角をなすように形成される二つの壁面を備える。この二つの側面は、上辺においてホルダ端面14B2に接続される。
また、本実施形態における切削工具100は、切削インサート20をレバーロック方式で固定している。従って、チップ座14Cのチップ座面に開口するようにホルダ先端部14A2の内部に形成された穴に挿入されたL字形のレバーL(図6)の一端を雄ねじ14B3(図3)の側面に形成された傾斜面等で押し下げることにより、チップ座面から突出し、切削インサート20の貫通穴内に挿通されたL字形のレバーLの他端で切削インサート20の貫通穴の内壁を押圧し、もって、切削インサート20の2つの周側面をチップ座14Cの二つの壁面方向に押し付けることにより、切削インサート20を、ホルダ10に対して固定することができる。
切削インサート20のように、貫通穴が形成された切削インサートを、チップ座14Cの二つの壁面に押し付けて固定するために、ホルダ先端部14A2の内部には、雄ねじ14B3と螺合するための雌ねじと、この雌ねじ及び切削インサート20の貫通穴と連通し、L字形のレバーLを収容するスペースが形成されている。ただし、本発明はレバーロック方式で切削インサートを固定する場合に限定されるものではなく、クランプ駒などの押さえ金を用いて、貫通穴が形成されていない切削インサートを固定する方式など、ISO規格等で規定されているクランプ機構を用いて切削インサートを固定する場合等に広く適用することが可能である。
なお、切削インサート20とチップ座面の間には、シム16が挿入され、その結果、切削インサート20の端面24と、ホルダ先端部14A2のホルダ端面14B2は、ほぼ面一となるように調整されている。
図3及び図4に示されるように、中心軸AXに沿って形成されるクーラント流路CH1は、基部12から保持部14にわたって形成され、その端部で、クーラント流路CH1より径小に中心軸AXに沿って円筒状に形成されるクーラント流路CH2に連通する。このクーラント流路CH2は、その先端部においてクーラント流路CH2より径小なクーラント流路CH3に連通する。更に、クーラント流路CH2の円筒をなす側面において、クーラント流路CH2より径小なクーラント流路CH4にも連通する。
図3及び図4に示されるように、クーラント流路CH3は、保持ベース部14A1からホルダ先端部14A2にわたって円筒状に形成され、雄ねじ部品50のねじ部50B(図4)に螺合する雌ねじが形成されるクーラント流路CH5に連通する。具体的には、図3に示されるように、クーラント流路CH3は、雄ねじ部品50に向かって進行するほど中心軸AXから離れるように傾斜し、切削インサート20を周側面22方向から見た図4においては、中心軸AXの進行方向に進むほど、ホルダ端面14B2から離れるように傾斜して形成される。
クーラント流路CH4は、クーラント流路CH2の側面から、中心軸AXの径方向外側に向かって形成される。クーラント流路CH4は、その円筒状の側面において、第2開口部H2から吐出するクーラントの吐出方向AR2を規定するクーラント流路CH6に連通する。
クーラント流路CH5は、ホルダ端面14B2とほぼ垂直に延伸してクーラント流路CH3の円筒状の側面の端部と連通する。また、クーラント流路CH5の内壁には、雄ねじ部品50のねじ部50Bに形成される雄ねじと螺合するための雌ねじが形成される。
第2開口部H2に接続するクーラント流路CH6は、一端がクーラント流路CH4の側面に連通し、他端が傾斜面14B1に連通するように形成される。後に詳述するが、クーラント流路CH6は、端面視(本実施形態において、端面24に垂直で、切削インサート20の中心を貫通する貫通穴の中心軸と平行な方向)において、その中心軸の延長線が、直線切れ刃26Bに沿ってコーナ切れ刃26Aに向かって進行するように形成され、図4に示される側面視において、その中心軸の延長線が、端面24の上方をコーナ切れ刃26Aに向かって進行するように形成される。第2クーラントの進行方向である吐出方向AR2は、切削インサート20の端面24及びこれと面一なホルダ端面14B2に対し、およそ10度〜15度の仰角を有する。
図3(端面24が僅かに傾斜していることから端面視ではないが、ほぼ、端面視に等しい図)及び後述する図8から理解されるように、本実施形態において、端面視における直線切れ刃26Bの直線L2(図8)に対するクーラントの進行方向である吐出方向AR1のなす角を正とするとき、端面視における直線切れ刃26Bの直線L2に対するクーラントの進行方向である吐出方向AR2のなす角は、負となる。このような構成とすることにより、直線切れ刃26Bと被切削物とのわずかな隙間に向かってクーラントを噴射し、切りくずの排出を促進することが可能になる。この隙間に向かってクーラントを噴射するためには、直線切れ刃26Bの直線L2に対するクーラントの進行方向である吐出方向AR2のなす角は、小さいことが好ましく、例えば、−5度未満であることが好ましい。ただし、直線切れ刃26Bと被切削物との間隙が大きい切削の場合等、適用される実施態様によっては、−10度以内であってもよい。
また、被切削物にクーラントが衝突して切削部分まで到達しないことを確実に回避したい場合、端面視における直線切れ刃26Bの直線L2(図8)に対するクーラントの進行方向である吐出方向AR1のなす角を正とするとき、端面視における直線切れ刃26Bの直線に対するクーラントの進行方向である吐出方向AR2のなす角を正としてもよい。切りくずの排出性を高めるためには、端面視において、吐出方向AR2のなす角は、直線切れ刃26Bの直線L2に対して10度以下、より好ましくは、5度以下であることが好ましい。また、吐出方向AR2と直線L2とのなす角は、吐出方向AR1と直線L1とのなす角の半分未満の鋭角であることが好ましい。
次いで、クーラント流路CH5から、第1開口部H1に至る流路について図面を用いて説明する。図5は、図3における切削工具100の前端部分を拡大した拡大図である。図6は、図5において、第1開口部H1の中心と、雄ねじ部品50の軸を通過する断面図である。図7は、雄ねじ部品50を示している。
図7に示されるように、雄ねじ部品50は、例えば、M6の雄ねじが形成される円筒状のねじ部50Bと、ねじ部50Bより径大に形成されるねじ頭部50Aと、ねじ部50Bとねじ頭部50Aとを接続する接続部50C(又は締付ねじ部)を備える。ねじ部50Bには、底面に開口し、雄ねじの軸に沿って、接続部50Cの方向に向かう例えば、1〜3mmの直径を有する円筒状のクーラント流路CH7が形成される。また、接続部50Cは、Оリングをはめるために径小に形成される2つの径小部50C1及び50C2と、二つの径小部50C1及び50C2で挟まれ、径小部50C1及び50C2より径大に形成される円筒部50C3を備える。円筒部50C3の内部には、雄ねじの軸と垂直に貫通し、両端が円筒部50C3の側面にそれぞれ開口するクーラント流路CH8が形成される。クーラント流路CH7は、クーラント流路CH8と連通するために、接続部50Cの円筒部50C3内部まで形成される。なお、ねじ頭部50Aには、締め付けに用いる六角レンチが係合するための六角穴(図5)が形成されている。
図6に示されるように、押さえ金40は、ねじ頭部50Aと当接するための上面40Bと、底面側に形成され、ホルダ端面14B2に形成される凹みにより支持される脚部40Cと、切削インサート20の端面24を押圧して、ホルダ10に固定するための押圧部40Dと、切削インサート20の端面24方向を向いた傾斜面40Aを備える。更に、押さえ金40には、上面40Bと底面を貫通する円筒状の貫通穴が形成され、さらに、この貫通穴の軸方向中央部において、貫通穴に連通し、貫通穴より径大に形成されるザグリ40Eが形成される。ザグリ40Eは、ねじ頭部50Aが上面40Bに当接したときに、円筒部50C3の側面に形成されるクーラント流路CH8の開口部と連通する位置に形成される。なお、ザグリ40Eは、押さえ金40に形成された貫通穴の中心軸を中心として所定半径を有する円筒状に形成されるため、クーラント流路CH8の向きにかかわらず、ザグリ40Eとクーラント流路CH8は連通するように構成されている。また、押さえ金40の内部には、一端がザグリ40Eに連通し、他端が傾斜面40Aに連通するクーラント流路CH9が形成される。
図3及び図5から理解されるように、端面視において第1開口部H1から噴射されるクーラントは、端面24上をコーナ切れ刃26Aに向かって進行する。また、端面視における直線切れ刃26Bの直線に対するクーラントの進行方向である吐出方向AR1のなす角は、15度より大きく、本実施形態においては、例えば、約20度乃至25度である。従って、吐出方向AR1と吐出方向AR2とがなす角は、15度より大きい。このため、後述するように、第1開口部H1から噴射されるクーラントと、第2開口部H2から噴射されるクーラントに異なる機能を発揮させることが可能になる。また、図4及び図6に示されるように、クーラント流路CH9は、切削インサート20のコーナ切れ刃26Aに向かって進行するように傾斜しており、押さえ金40の貫通穴の中心軸に垂直な面に対しその仰角は、10度〜15度となるように形成されている。
また、本実施形態において、第1開口部H1とコーナ切れ刃26Aの距離は、第2開口部H2とコーナ切れ刃26Aとの距離より短い。例えば、端面視において、第2開口部H2とコーナ切れ刃26Aとの距離は、第1開口部H1とコーナ切れ刃26Aとの距離の1.5倍より大きくなるように構成することができる。このような構成とすることにより、コーナ切れ刃26A近傍における圧力が相対的に高い状態で、第1開口部H1からクーラントを噴射することが可能になる。一方で、距離が大きいためにコーナ切れ刃26A近傍における圧力が相対的に低い状態で、第2開口部H2からクーラントを噴射することが可能になる。なお、第2開口部H2から噴射されるクーラントを広がらせるために、その開口部にテーパを設けてもよい。
押さえ金40は、図6に示されるように、雄ねじ部品50の径小部50C1及び50C2にそれぞれОリングR1及びR2を装着させた状態で、押さえ金40の貫通穴を介してホルダ先端部14A2に形成される雌ねじと螺合させ、ねじ頭部50Aで押さえ金40の上面40Bを押し付けることにより、ホルダ10に対して固定される。このとき押圧部40Dは、切削インサート20の端面24をチップ座14Cのチップ座面方向に押し付ける。レバーロック式は、切削インサートを貫通する雄ねじでホルダに固定する方式と比較して、短時間で切削インサートを交換できるという利点を有する一方で、端面に垂直な方向への安定的な固定が困難である。しかしながら、押さえ金40を用いて、切削インサート20の端面24をホルダ10方向に押圧することで、切削インサート20をより安定的にホルダ10に対して固定することができる。
図5は、以上のようにして押さえ金40がホルダ10に対して固定されている様子を、雄ねじ部品50の軸方向から見た図である。上述したとおり、図において実線で示されるように、ねじ頭部50Aには六角穴が形成されている。また、この六角穴の内部に破線で示される小円は、軸中心に形成されるクーラント流路CH7の内壁を示したものである。また、この小円の両端部と交差する長方形の破線は、クーラント流路CH8を示したものである。実線で示される六角穴を囲むように、径が異なる3つの円D1、D2、D3が破線で示されている。3つの円のうち、最も小径の円D3は、クーラント流路CH5の内壁を示している。また、円D2は、円筒部50C3の壁面を示しており、クーラント流路CH8は、この円D2まで形成されている。また、円D1は、ザグリ40Eの円筒面からなる内壁を示している。従って、クーラント流路CH8からザグリ40Eに流入したクーラントは、矢印で示されるとおり、ザグリ40E(円D1)と円筒部50C3(円D2)の間隙を通ってクーラント流路CH9に流入することが示される。
なお、クーラント流路CH1乃至CH9は、ドリル等を用いて穿孔することにより形成することができる。例えば、クーラント流路CH3は、ホルダ先端部14A2の外方を向いた側面からクーラント流路CH2と連通するように、円筒状の穴を形成した後、その開口部をプラグ等を用いて液漏れしないように塞ぐことにより形成することができる。従って、各クーラント流路は、所定の内径を有する円柱状に形成されており、また、気泡等の混入を防ぎ、かつ、圧力損失を低減するために、原則として進行するほど小径となるように形成されている。
以下、本実施形態に係る切削工具100を用いて、被削材を旋削する作用について説明する。図8は、切削工具100を用いて、立壁W1を有する被削材Wを旋削する様子を示している。具体的には、紙面手前方向から奥方向に被削材Wを回転移動させながら、切削インサート20の先端に形成されるコーナ切れ刃26Aを環状をなす立壁W1の内壁面に押し付けることにより立壁W1の内壁面を旋削する。このとき、立壁W1の内壁面が直線切れ刃26B及びこれに接続する周側面22と近接して対向するため、切削インサート20は鋭角が小さい菱形に形成して立壁W1と干渉しないようにすることが好ましい。また、立壁W1の内壁面が近接して対向するために容易でない切りくずの分断と排出を、二方向から吐出するクーラントを用いて促進する。
まず、例えば図3に示される接続部H3に不図示のポンプを接続してクーラントを供給させながら旋削を行う。クーラントはポンプから、例えば、5MPaから10MPaで供給される。ポンプから供給されたクーラントは、クーラント流路CH1からクーラント流路CH2を介して、一部はクーラント流路CH4からクーラント流路CH6を介して第2開口部H2から吐出方向AR2に吐出される。また、他の一部は、クーラント流路CH3からクーラント流路CH5に流入し、ねじ部50B内部に形成されるクーラント流路CH7からねじ頭部50A方向に進行し、クーラント流路CH8からザグリ40Eに流入した後、クーラント流路CH9を介して第1開口部H1から吐出方向AR1に吐出される。
第1開口部H1から噴射され、端面24の上方をコーナ切れ刃26Aに向かって進行するクーラントを噴射するから、コーナ切れ刃26Aによって発生する切りくずの折断を促進することができる。また、第2開口部H2から噴射され、直線切れ刃26Bに沿ってコーナ切れ刃26Aに向かって進行するクーラントを噴射するから、直線切れ刃26Bによって発生する切りくずの排出を促進することが可能になる。
また、第1開口部H1とコーナ切れ刃26Aの距離は、第2開口部H2とコーナ切れ刃26Aとの距離より短い。このため、第1開口部H1からは、コーナ切れ刃26A付近において高圧となるクーラントを噴射して切りくずの折断効果を促進することができる。第2開口部H2からは、コーナ切れ刃26A付近において低圧となるクーラントを直線切れ刃26Bに沿って噴射して切りくずの排出効果を促進することができる。
また、クーラント流路CH6の流路径及びこれと接続する第2開口部H2の開口径は、クーラント流路CH9の流路径及びこれと接続する第1開口部H1の開口径より大きく、例えば、1.2倍より大きくなるように形成されている。このため第1開口部H1から吐出され、端面24上を進行するクーラントの圧力の低下は比較的小さく、かつ、その流量は相対的に小さい。そのため、切りくずを分断させるために十分な圧力及び適した流量でクーラントを切りくずに衝突させることが可能になる。本出願の発明者らが様々な条件で実験をしたところ、端面24の中央部を通過するように、また、端面24を基準として10〜15度の仰角(すなわち、切削インサートが取り付けられたときに、コーナ切れ刃が存在することが予定される位置と、第1開口部H1を結ぶ線と、切削インサートの端面とがなす角)となるようにコーナ切れ刃26Aに向かってクーラントを吐出することにより、切りくずの分断効果がより好適に発揮されることがわかった。大きな仰角を有するためには、押さえ金40の高さを大きくしなければならず、しかしながら押さえ金40の高さを高くすると切りくずが接触する可能性がある。このため、押さえ金の高さを小さくし、5〜10度未満の仰角となるようにクーラントを供給することも考えうるが、あえて10度以上の仰角を有するように押さえ金40を10mm程度の高さとし、第1開口部H1に連通するクーラント流路CH9を形成することにより、切りくずの分断効果が高まることがわかった。更に、クーラントの吐出により、切削インサート20を冷却する効果も発揮される。
一方で、第2開口部H2から吐出されるクーラントの圧力は、コーナ切れ刃26A付近において、第1開口部H1から吐出されるクーラントの圧力より小さい。第2開口部H2から吐出されるクーラントは、直線切れ刃26Bに沿って、又は、立壁W1の壁面にほぼ平行にコーナ切れ刃26Aに向かって進行する。従って、端面24に対向する方向から見た際に、二つのクーラントの角度は、概ね、切削インサート20のコーナ切れ刃26Aに接続する2辺のなす角の半分程度である。このように直線切れ刃26Bに沿って、又は、立壁W1の壁面にほぼ平行に、コーナ切れ刃26Aに向かってクーラントを供給することにより切りくずを排出する効果があることがわかった。
本出願の発明者らが様々な条件で実験をしたところ、コーナ切れ刃26Aとの接続部付近の切削に大きく関与する直線切れ刃26Bがなす直線L1(図8)に対し、端面24に対向する方向から見たときに、第2開口部H2から吐出されるクーラントが、端面24上を進行し、進行するほど直線L1に近づくように、直線L1に対して僅かな鋭角(例えば、第2開口部H2から吐出されるクーラントと直線L1とがなす角度の半分未満)をなすようにコーナ切れ刃26Aに向かってクーラントを吐出すると、より切りくずの排出性能を向上させることがわかった。
このような作用を実現するために、図8に示されるように、切削インサート20をチップ座14Cに配置したときに、直線切れ刃26Bが存在することが想定される位置に基づいて直線L1をひき、その直線L1よりも切削インサート20側(図8では直線L1の左側)に第2開口部H2を設ける構成を採用した。
以上のように、コーナ切れ刃26Aとの距離が小さい第1開口部H1から、切削インサート20の端面24の中央部上を通過してコーナ切れ刃26Aに向かうようにクーラントを吐出して切りくず分断を促進し、コーナ切れ刃26Aとの距離が大きい第2開口部H2から、切削インサート20の端面24の端部上を通過してコーナ切れ刃26Aに向かうようにクーラントを吐出して切りくず排出を促進できることがわかった。同様に、例えば、フランジがあるような被切削物を切削するとき、直線切れ刃26Bがフランジに近づくと、フランジと直線切れ刃26Bとの隙間が狭くなり、切りくずの排出が難しくなってくる。直線切れ刃26Bとフランジの間に切りくずが噛みこむこともある。そのような切削の場合、直線切れ刃26Bに沿って第2クーラントを噴出すると、切りくずが、直線切れ刃26Bとフランジとの隙間とは異なる経路で排出されるようになるため、切りくずの排出を促進することが可能になる。なお、更に開口部を設けてクーラントを異なる方向から供給するように構成してもよい。但し、開口部を3個以上の多数設けると、第1開口部H1及び第2開口部H2から噴射されるクーラントの効果が抑制される可能性がある。
なお、第2開口部H2から噴射するクーラントの吐出方向AR2の端面24に対する仰角は、第1開口部H1から噴射するクーラントの吐出方向AR1の端面24に対する仰角より小さくてもよい。第1開口部H1から噴射するクーラントと第2開口部H2から噴射するクーラントの仰角を異ならせることにより、切りくずの排出を促進することが可能になる。特に第2開口部H2から噴射されるクーラントの仰角を小さくした場合、下側(逃げ面側)から上向き、すなわち、切れ刃26から離れる方向にクーラントが進行することを促進することができる。このため、切りくずが逃げ面側から排出されることを促進することができる。ただし、第1開口部H1から噴射するクーラントの仰角よりも、第2開口部H2から噴射するクーラントの仰角を大きくしてもよい。上述したように、押さえ金40の高さを高くすると切りくずが接触する可能性があるため、吐出方向AR1の端面24に対する仰角は、上限を有する場合がある。一方で、遠方からクーラントを吐出する場合、切りくずが接触する可能性が低い。このため、第1開口部H1の高さを小さくしなければならない場合、第2開口部H2の仰角が大きくなるように構成することにより、切りくずを排出するために好ましい仰角でクーラントを噴射させることが可能になる。 また、複雑な流路を押さえ金40の内部に形成することなく、圧力損失が小さい流路で、クーラントを供給することができた。
上述したように、本実施形態では、クーラントの仰角は10〜15度であることが好ましいがこれに限られるものではない。
また、押さえ金40は、ホルダ10と一体的に設けて、ボデーを構成してもよい。例えば、切削インサートの端面を押圧するための押さえ金に相当する部分と、切削インサートの底面等を押圧するためのチップ座に相当する部分を一体的に設けて、くちばしのように上下から切削インサートを挟む態様のホルダが知られている。このような態様において、押さえ金に相当する部分とチップ座に相当する部分の間隔を雄ねじで調整することにより切削インサートをホルダに対して固定する際に、このような雄ねじの内部に、本実施形態で示されるようなクーラント流路を形成することにより本発明を適用してもよい。
また、流路は多数設けることが可能であり、例えば、クーラント流路CH8に、更に一、又は、複数の流路を連通させてもよい。
また、クーラント流路CH9とクーラント流路CH8を連通するための手段は様々なものを用いることが可能であり、例えば、円筒部50C3を径小に形成してもよい。
また、液漏れを抑制するための構成は、Оリングのほか、様々な知られた技術を適用することが可能である。
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に組み合わせることもできる。