以下、適宜図面を参照にしつつ、本発明の一実施形態に係るプレスポケット型キャリアテープ用原紙について詳説する。
当該プレスポケット型キャリアテープ用原紙(以下、当該キャリアテープ用原紙ということがある)は、表層、少なくとも1層の中間層及び裏層を備えるプレスポケット型キャリアテープ用原紙であって、上記中間層、又は上記中間層と裏層とが、原料パルプとしてNBKPを35質量%以上含有する特定の層であり、上記原料パルプのフリーネスが300mL以上440mL以下であることを特徴とする。当該キャリアテープ用原紙は、多層抄きにより形成されることが好ましい。各層は、必要に応じ添加剤が添加された原料パルプから形成される。このように多層構造であることで、各層毎にパルプ種や添加剤の種類や量等を調整することができ当該キャリアテープ用原紙の機能性を高めることができると共に、各層毎に特有の構成が付与可能となり、単層に比べ各層毎の特性による相乗効果を得ることができる。なお、プレスポケット型キャリアテープ用原紙の表裏とは、プレスポケット型キャリアテープ用原紙の厚さ方向のうち、プレスポケットが形成される側を「表」、その反対側を「裏」とする方向を意味する。以下、上記中間層が上記特定の層となる場合について、特徴となる中間層から順に説明する。
<中間層>
中間層は原料パルプとして針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を含有する。中間層の原料パルプとしてのNBKP含有量の下限は、35質量%であり、40質量%が好ましく、40質量%超がより好ましく、45質量%がさらに好ましく、50質量%が特に好ましい。また、中間層の原料パルプとしてのNBKP含有量の上限は、例えば90質量%であってもよいが、70質量%が好ましく、65質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましく、55質量%が特に好ましい。中間層の原料パルプとしてのNBKP含有量が上記下限未満である場合、繊維長が長い原料パルプが不足し、湿度変化に伴い紙厚が変化しやすくなる。この場合、プレスポケット内壁に表出する中間層からの紙粉の発生を十分に抑制できないおそれや、紙厚変化により走行性等が低下するおそれがある。一方、中間層の原料パルプとしてのNBKP含有量が上記上限を超える場合、当該キャリアテープ用原紙の地合が悪く、紙粉や反りが発生しやすくなるおそれがある。これに対して、NBKP含有量を上記下限以上とすることで、NBKPは繊維間強度の強いパルプであるため、湿度変化に対する厚さ変化が低減する。ここで、当該キャリアテープが中間層を複数備える場合、「中間層」とは、各中間層を意味するものとする。
ここで、プレスポケット型キャリアテープの中間層が紙粉発生に与える影響について考察する。紙用途に係る一般的な紙粉の発生が断裁工程やスリッター加工工程で生じており、断裁面の切り口が斜めになること、回転刃が表層から断面に対し打撃を与えること、特に刃が磨耗してくると大きな紙粉が発生し易くなることが知られている。このため、プレスポケット形成のためのエンボス加工に際し、プレスポケット内壁に断裁面が斜めになるような伸長湾曲した表層が存在し紙粉の発生原因となっていると考えられていた。しかし、上記プレスポケット型キャリアテープの紙粉発生の原因について解明すべく本発明者らが鋭意検討したところ、プレスポケット型キャリアテープのエンボス加工においては、プレスポケットを断裁する金型がキャリアテープ用原紙に対し直角に作用し、比較的紙粉の発生が生じ難い加工手段が採用されていることから紙粉の発生が別の要因で生じていると判断された。本発明者等がさらに検討を重ねたところ、紙粉の発生が金型によるエンボス加工において、金型により表層が剪断されることで、プレスポケット内壁には表層のみならず中間層も表出することを見出した。つまり、紙粉の発生は表層のみに起因するのではなくキャリアテープのプレスポケット内壁に表出する中間層にも起因しているとの知見に至り、中間層の調整が紙粉の発生を低減できるとの結論に至った。
中間層の原料パルプとしては、上記NBKP以外に例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的に又は機械的に製造されたパルプ等の公知のパルプから1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。ただし、表面実装部品への影響を考慮し填料を減少させる必要がある場合は、古紙パルプよりもバージンパルプを使用することが好ましい。
上記中間層は、原料パルプとしてNBKPと共に、さらにLBKPを含有することが好ましい。上記中間層を形成する原料パルプにおけるLBKPの含有量の下限としては、30質量%が好ましく、35質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましく、45質量%が特に好ましい。一方、上記中間層を形成する原料パルプにおけるLBKPの含有量の上限としては、65質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、55質量%がさらに好ましい。原料パルプとしてLBKPをさらに用い、好ましくは、LBKPの含有量を上記範囲とすることにより、上記中間層に適度な柔軟性等が付与され、加工適性を高めたり、紙粉の発生をより抑えることなどができる。
上記中間層の原料パルプのフリーネスの下限としては、300mLであり、315mLが好ましく、330mLがより好ましく、345mLがさらに好ましく、360mLが特に好ましい。一方、上記中間層の原料パルプのフリーネスの上限としては、440mLであり、425mLが好ましく、410mLがより好ましく、400mLがさらに好ましく、385mLが特に好ましい。上記中間層の原料パルプのフリーネスを上記範囲とすることにより、湿度変化に伴う紙厚変化率を低減させることができる。この理由は定かでは無いが、フリーネスを上記範囲とすることにより、十分な繊維強度を維持しつつ、密な紙層を形成することができ、これにより湿度が変化してもその形状変化が小さい層が形成されることが推察される。なお、上記中間層の原料パルプのフリーネスが上記下限未満である場合、キャリアテープとした際に当該キャリアテープ用原紙に折れやしわが発生しやすく、層間剥離が発生するおそれや、紙厚変化率が高まるおそれもある。一方、上記中間層の原料パルプのフリーネスが上記上限を超える場合、紙の繊維間の結合が弱くなり、湿度変化に伴う紙厚変化が大きくなる。なお、「フリーネス」とは、JIS−P8121:2012に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である。
中間層の原料パルプの重量平均繊維長の下限としては、0.5mmが好ましく、0.7mmがより好ましく、0.8mmがさらに好ましい。また、中間層の原料パルプの重量平均繊維長の上限としては、2mmが好ましく、1.9mmがより好ましく、1.8mmがさらに好ましい。中間層の原料パルプの重量平均繊維長が上記下限未満である場合、プレスポケット内壁に表出する中間層からの紙粉の発生が増えるおそれがある。一方、中間層の原料パルプの重量平均繊維長が上記上限を超える場合、中層の弾力性が低下し、当該キャリアテープ用原紙のカセットリール等への巻付け作業等の取り扱い性が低下するおそれがある。ここで、「パルプの重量平均繊維長」とは、JIS−P8226:2006に記載の「パルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法−第1部:偏光法」により測定した繊維長である。
中間層の原料パルプの繊維粗度の下限としては、0.06mg/100mが好ましく、0.08mg/100mがより好ましい。また、中間層の原料パルプの繊維粗度の上限としては、0.15mg/100mが好ましく、0.12mg/100mがより好ましい。中間層の原料パルプの繊維粗度が上記下限未満である場合、中間層の強度が低下し、紙厚変化が生じやすくなり、プレスポケット内壁に表出する中間層からの紙粉が発生し易くなるおそれがある。一方、中間層の原料パルプの繊維粗度が上記上限を超える場合、微細繊維や結束繊維が多く含まれることとなるため、中層の弾力性が低下しカセットリールへの巻付け作業等の取り扱い性が低下するおそれがある。なお、「繊維粗度」とは、単位長さ当りの繊維の重量を指し、mg/100mで表わされ、繊維の断面積との相関が強く、その値が低いほど細くしなやかな繊維であることを示す。
上記中間層は湿潤紙力剤を含有することが好ましい。湿潤紙力剤を含有することにより湿度変化に伴う紙厚変化がより低減される。上記湿潤紙力剤としては、特に限定されず、例えばポリアミドエピクロロヒドリン、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリアミドエポキシ、ポリビニルアミン等の公知のものから1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。中でも紙粉発生の抑制効果等に特に優れるポリアミドエピクロロヒドリン等のエピクロロヒドリン系の湿潤紙力剤が好ましい。
上記中間層の湿潤紙力剤の含有量の下限としては、0.2質量%が好ましく、0.3質量%がより好ましい。また、上記中間層の湿潤紙力剤の含有量の上限としては、1質量%が好ましく、0.7質量%がより好ましい。上記中間層の湿潤紙力剤の含有量が上記下限未満である場合、十分な湿潤強度が得られず、中間層の強度が低下し、湿度変化に伴う紙厚変化が生じやすくなり、プレスポケット内壁に表出する中間層からの紙粉の発生が増えるおそれがある。一方、上記中間層の湿潤紙力剤の含有量が上記上限を超える場合、当該キャリアテープ用原紙の剛度が高くなりすぎて紙詰り等が発生しやすくなるおそれがある。また、上記中間層の湿潤紙力剤の含有量を上記上限以下とすることで、当該キャリアテープ用原紙からの繊維抽出が容易で、当該キャリアテープ用原紙の再資源化を容易に行うことができる。
上記中間層がさらに乾燥紙力剤を含有するとよい。上記乾燥紙力剤としては、特に限定されず、例えばポリアクリルアミド、澱粉、カルボキシメチルセルロース等の公知のものから1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
上記湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤が共にアミド構造を有するとよい。このような湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤を用いることで、湿潤紙力剤のパルプへの定着性が高まり、使用量を抑えつつ、湿潤紙力等を更に高めることができる。この理由は定かではないが、両紙力剤が同一の構造を有することで、親和性を有し、両紙力剤の会合等により見かけの分子量が大きくなり、パルプへの定着性が高まることなどが考えられる。なお、アミド構造を有する湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン等を挙げることができ、アミド構造を有する乾燥紙力剤としてはポリアクリルアミド等を挙げることができる。
また、上記乾燥紙力剤としては、両性又はアニオン性のもの等が挙げられ、特に両性であるものが好ましい。湿潤紙力剤は一般にカチオン性であり、パルプ繊維がアニオン性のため、湿潤紙力剤はパルプ繊維に自己定着する。ここで、両性である乾燥紙力剤を更に配合することで、両性乾燥紙力剤のうちカチオン性基がパルプと定着する一方、アニオン性基が湿潤紙力剤のカチオン性基と結びついて、湿潤紙力剤の定着量を増やす効果があり、より強度を向上させることができる。
上記中間層の乾燥紙力剤の含有量の下限としては、0.16質量%が好ましく、0.25質量%がより好ましい。また、上記中間層の乾燥紙力剤の含有量の上限としては、0.51質量%が好ましく、0.45質量%がより好ましい。上記中間層の乾燥紙力剤の含有量が上記下限未満である場合、中間層の十分な強度向上効果が得られないおそれがある。一方、上記中間層の乾燥紙力剤の含有量が上記上限を超える場合、当該キャリアテープ用原紙の剛度が高くなりすぎて紙詰り等が発生しやすくなるおそれがある。
上記中間層における上記乾燥紙力剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比の下限としては、0.32が好ましく、0.5がより好ましい。また、上記中間層における上記乾燥紙力剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比の上限としては、1.02が好ましく、0.86がより好ましい。上記中間層における上記乾燥紙力剤の質量比が上記下限未満である場合、乾燥紙力剤による湿潤紙力剤の定着効果が不足し、中間層の十分な強度向上効果が得られないおそれがある。一方、上記中間層における上記乾燥紙力剤の質量比が上記上限を超える場合、乾燥紙力剤が湿潤紙力剤のパルプへの自己定着性を悪化させるおそれがある。
上記中間層がさらにサイズ剤を含有するとよい。サイズ剤を含有することにより、湿度変化に伴う紙厚変化率がより低減する。上記サイズ剤としては、特に限定されず、例えばロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、スチレンマレイン酸、アルケニル無水コハク酸等の公知のものから1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。これらの中でも、少量でも水分浸透抑制効果の高いロジン(エマルジョン)系サイズ剤が好ましい。
上記中間層のサイズ剤の含有量の下限としては、0.23質量%が好ましく、0.3質量%がより好ましい。また、上記中間層のサイズ剤の含有量の上限としては、0.51質量%が好ましく、0.45質量%がより好ましい。上記中間層のサイズ剤の含有量が上記下限未満である場合、プレスポケット内壁からの吸水及び吸水による変形が発生するおそれがある。一方、上記中間層のサイズ剤の含有量が上記上限を超える場合、収容した電子部品が変色するおそれがある。
上記中間層における上記サイズ剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比の下限としては、0.3が好ましく、0.4がより好ましく、0.57がさらに好ましい。また、上記中間層における上記サイズ剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比の上限としては、1.02が好ましく、0.86がより好ましい。上記中間層における上記サイズ剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比が上記下限未満である場合、サイズ剤と紙力剤との相乗効果が不足し、吸水による変形を十分に抑止できないおそれがある。一方、上記中間層における上記サイズ剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比が上記上限を超える場合、プレスポケット内壁に表出する中間層からの吸水を十分に抑止できないおそれがある。
上述の紙力剤及びサイズ剤に加えて、上記中間層は必要に応じてその他の内添剤を含有してもよい。このような内添剤としては、例えば硫酸バンド等の薬品定着剤、ポリアクリルアマイド等の歩留向上剤、濾水性向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂等の耐水化剤、消泡剤、塩基性染料、酸性染料、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料等の染料等が挙げられる。
中間層の層数の下限としては、1層であってよいが、3層が好ましく、4層がより好ましい。また、中間層の層数の上限としては、8層が好ましく、7層がより好ましい。中間層の層数が上記下限未満である場合、各層毎の特性による相乗効果が十分に得られないおそれがある。一方、中間層の層数が上記上限を超える場合、当該キャリアテープ用原紙の生産工程が複雑となるおそれがある。
<表層>
表層の原料パルプとしては、中間層の原料パルプとして例示したものを挙げることができる。特に、表層は、紙粉の発生防止、電子部品を収納する凹部や貫通孔形成の加工性、トップカバーテープとの接着性等、各種品質特性をバランスよく効率的に達成するために、LBKPとNBKPとを混合して用いることが好ましい。
この場合、表層の原料パルプとしてのNBKP含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。また、表層の原料パルプとしてのNBKP含有量の上限としては、70質量%が好ましく、60質量%がより好ましい。表層の原料パルプとしてのNBKP含有量が上記下限未満である場合、表層からの紙粉の発生を十分に低減できないおそれがある。一方、表層の原料パルプとしてのNBKP含有量が上記上限を超える場合、表面性が悪化し、当該キャリアテープ用原紙をキャリアテープとして用いた際の走行が不安定になるおそれがある。
上記表層の原料パルプのフリーネスの下限としては、350mLが好ましく、355mLがより好ましい。また、上記表層の原料パルプのフリーネスの上限としては、450mLが好ましく、430mLがより好ましい。上記表層の原料パルプのフリーネスが上記下限未満である場合、キャリアテープとした際に当該キャリアテープ用原紙に折れやしわが発生しやすく、層間剥離が発生するおそれがある。一方、上記表層の原料パルプのフリーネスが上記上限を超える場合、紙の繊維間の結合が弱くなり、紙粉が発生するおそれやキャリアテープ用原紙としての加工適性に劣るおそれがある。
上記表層は湿潤紙力剤を含有することが好ましい。上記湿潤紙力剤としては、特に限定されないが、例えば上記中間層と同じものを用いることができる。
上記表層の湿潤紙力剤の含有量の下限としては、0.2質量%が好ましく、0.3質量%がより好ましい。また、上記表層の湿潤紙力剤の含有量の上限としては、1質量%が好ましく、0.7質量%がより好ましい。上記表層の湿潤紙力剤の含有量が上記下限未満である場合、十分な湿潤強度が得られず、表層の強度が低下し、紙粉の発生が増えるおそれがある。一方、上記表層の湿潤紙力剤の含有量が上記上限を超える場合、当該キャリアテープ用原紙の剛度が高くなりすぎて紙詰り等が発生しやすくなるおそれがある。また、上記表層の湿潤紙力剤の含有量を上記上限以下とすることにより、当該キャリアテープ用原紙からの繊維抽出が容易で、当該キャリアテープ用原紙の再資源化を容易に行うことができる。
上記表層がさらに乾燥紙力剤を含有するとよい。上記乾燥紙力剤としては、特に限定されないが、上記中間層と同じものを用いることができる。
上記表層の乾燥紙力剤の含有量の下限としては、0.025質量%が好ましく、0.04質量%がより好ましい。また、上記表層の乾燥紙力剤の含有量の上限としては、0.295質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましい。上記表層の乾燥紙力剤の含有量が上記下限未満である場合、表層の強度向上効果が得られないおそれがある。一方、上記表層の乾燥紙力剤の含有量が上記上限を超える場合、キャリアテープ用原紙の表面をシールするトップカバーテープの接着性が低下し、キャリアテープの走行が不安定となるおそれがある。
上記表層における上記乾燥紙力剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比の下限としては、0.14が好ましく、0.16がより好ましい。また、上記表層における上記乾燥紙力剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比の上限としては、0.65が好ましく、0.4がより好ましい。上記表層における上記乾燥紙力剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比が上記下限未満である場合、表層の強度向上効果が得られないおそれがある。一方、上記表層における上記乾燥紙力剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比が上記上限を超える場合、乾燥紙力剤が湿潤紙力剤のパルプへの自己定着性を悪化させるおそれがある。
また、上記表層の乾燥紙力剤の含有量は、上記中間層の乾燥紙力剤の含有量に比べ同等以下とするとよい。このように上記表層の乾燥紙力剤の含有量を上記中間層の乾燥紙力剤の含有量に比べ同等以下とすることで、トップカバーテープ等との接着性の低下を効果的に抑えつつ、紙粉の発生を抑制することができる。
上記表層がさらにサイズ剤を含有するとよい。上記サイズ剤としては、特に限定されないが、上記中間層と同じものを用いることができる。
上記表層のサイズ剤の含有量の下限としては、0.055質量%が好ましく、0.07質量%がより好ましい。また、上記表層のサイズ剤の含有量の上限としては、0.115質量%が好ましく、0.09質量%がより好ましい。上記表層のサイズ剤の含有量が上記下限未満である場合、表層からの吸水及び吸水による変形が発生するおそれがある。一方、上記表層のサイズ剤の含有量が上記上限を超える場合、収容した電子部品が変色するおそれがある。
上記表層における上記サイズ剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比の下限としては、0.07が好ましく、0.11がより好ましい。また、上記表層における上記サイズ剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比の上限としては、0.25が好ましく、0.21がより好ましい。上記表層における上記サイズ剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比が上記下限未満である場合、サイズ剤と紙力剤との相乗効果が不足し、吸水による変形を十分に抑止できないおそれがある。一方、上記表層における上記サイズ剤の上記湿潤紙力剤に対する質量比が上記上限を超える場合、表層からの吸水を十分に抑止できないおそれがある。
また、上記表層のサイズ剤の含有量は、上記中間層のサイズ剤の含有量に比べ同等以下とするとよい。このように上記表層のサイズ剤の含有量を上記中間層のサイズ剤の含有量に比べ同等以下とすることで、トップカバーテープ等との接着性の低下を効果的に抑えつつ、紙粉の発生を抑制することができる。
上述の紙力剤及びサイズ剤に加えて、上記表層は必要に応じてその他の内添剤を含有してもよい。このような内添剤としては、中間層と同様のものを用いることができる。
<裏層>
裏層の原料パルプとしては、表層又は中層と同様のものを用いることができる。裏層は、ボトムカバーテープとの接着性等、各種品質特性等をバランスよく効率的に達成するために、LBKPとNBKPとを混合して用いることが好ましい。
裏層の原料パルプとしてのNBKP含有量の下限としては、35質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、40質量%超がさらに好ましく、45質量%がよりさらに好ましく、50質量%が特に好ましい。また、裏層の原料パルプとしてのNBKP含有量の上限としては、70質量%が好ましく、65質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましく、55質量%が特に好ましい。裏層の原料パルプとしてのNBKP含有量を上記範囲内とすることで、湿度変化に伴う紙厚変化率を低減することができる。また、キャリアテープ用紙として必要な表面強度や剛度を保ちながら、良好な地合いが得られるとともに、ボトムカバーテープとの接着性がより良好となり、ボトムカバーテープ等を剥離する際に安定したピールオフ強度を得ることができる。
上記裏層を形成する原料パルプにおけるLBKPの含有量の下限としては、30質量%が好ましく、35質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましく、45質量%が特に好ましい。一方、上記裏層を形成する原料パルプにおけるLBKPの含有量の上限としては、65質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、55質量%がさらに好ましい。原料パルプとしてLBKPをさらに用い、好ましくは、LBKPの含有量を上記範囲とすることにより、上記裏層に適度な柔軟性等が付与され、加工適性を高めたり、紙粉の発生をより抑えることなどができる。
上記裏層の原料パルプのフリーネスの下限としては、300mLが好ましく、340mLが好ましく、370mLがより好ましい。また、上記裏層の原料パルプのフリーネスの上限としては、440mLが好ましく、430mLがより好ましい。上記裏層の原料パルプのフリーネスが上記下限未満である場合、キャリアテープとした際に当該キャリアテープ用原紙に折れやしわが発生しやすく、層間剥離が発生するおそれがある。一方、上記裏層の原料パルプのフリーネスが上記上限を超える場合、紙の繊維間の結合が弱くなり、紙粉が発生するおそれやキャリアテープ用原紙としての加工適性に劣るおそれがある。
上記裏層は湿潤紙力剤を含有するとよい。上記湿潤紙力剤としては、特に限定されないが、上記表層と同じものを用いることができる。上記裏層の湿潤紙力剤の含有量の下限としては、0.2質量%が好ましく、0.3質量%がより好ましい。また、上記裏層の湿潤紙力剤の含有量の上限としては、1質量%が好ましく、0.7質量%がより好ましい。上記裏層の湿潤紙力剤の含有量が上記下限未満である場合、十分な湿潤強度が得られず、裏層の強度が低下し、紙粉の発生が増えるおそれがある。一方、上記裏層の湿潤紙力剤の含有量が上記上限を超える場合、当該キャリアテープ用原紙の剛度が高くなりすぎて紙詰り等が発生しやすくなるおそれがある。また、上記裏層の湿潤紙力剤の含有量を上記上限以下とすることで、当該キャリアテープ用原紙からの繊維抽出が容易で当該キャリアテープ用原紙の再資源化を容易に行うことができる。
上記裏層は乾燥紙力剤を含有するとよい。上記乾燥紙力剤としては、特に限定されないが、上記表層と同じものを用いることができる。上記裏層の乾燥紙力剤の含有量の下限としては、0.025質量%が好ましく、0.04質量%がより好ましい。また、上記裏層の乾燥紙力剤の含有量の上限としては、0.27質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましい。上記裏層の乾燥紙力剤の含有量が上記下限未満である場合、裏層の強度向上効果が得られないおそれがある。一方、上記裏層の乾燥紙力剤の含有量が上記上限を超える場合、キャリアテープの走行が不安定となるおそれがある。
また、上記裏層は必要に応じてその他の内添剤を含有してもよい。このような内添剤としては、例えば硫酸バンド等の薬品定着剤、ロジン等のサイズ剤、ポリアクリルアマイド等の歩留向上剤、濾水性向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂等の耐水化剤、消泡剤、塩基性染料、酸性染料、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料等の染料などが挙げられる。
<キャリアテープ用原紙>
当該キャリアテープ用原紙の平均厚さの下限としては、150μmが好ましく、250μmがより好ましい。また、当該キャリアテープ用原紙の平均厚さの上限としては、1500μmが好ましく、1000μmがより好ましい。当該キャリアテープ用原紙の平均厚さが上記下限未満である場合、キャリアテープとして十分な強度が確保できないおそれがある。一方、当該キャリアテープ用原紙の平均厚さが上記上限を超える場合、通常の加工機を用いてのキャリアテープの走行が困難となるおそれや電子部品の収納率が低下するおそれがある。なお、平均厚さはJIS−P8118:1998に準拠して測定される値である。
当該キャリアテープ用原紙の水分含有量の下限としては、5.5質量%が好ましく、6.3質量%がより好ましい。当該キャリアテープ用原紙の水分含有量の上限としては、8.5質量%が好ましく、7.7質量%がより好ましい。当該キャリアテープ用原紙の水分含有量が上記下限未満である場合、当該キャリアテープ用原紙のエンボス加工時に凹部の剛性が不十分となるおそれがある。一方、当該キャリアテープ用原紙の水分含有量が上記上限を超える場合、エンボス加工時の凹部形状が崩れるおそれや紙層のずれが生じるおそれがある。これに対し、当該キャリアテープ用原紙の水分含有量を上記範囲内とすることで、当該キャリアテープ用原紙の湿潤紙力剤や乾燥紙力剤の効果を十分に発現させ、エンボス加工時の成形性が向上し、表面が滑らかで美しく、形状が安定した深い凹部を容易かつ確実に形成することができる。「キャリアテープ用原紙の水分含有量」とは、キャリアテープに加工する前の、例えば輸送や保管のための防湿包装が施されている場合であれば防湿包装から取り出した当該キャリアテープ原紙の水分含有量を、JIS−P−8127:2010に準拠して測定した値をいう。
当該キャリアテープ用原子の水分含有量の調整方法としては、当該キャリアテープ用原紙の抄造時に調製する方法が挙げられる。具体的には、当該キャリアテープ用原紙を抄紙後の乾燥工程にて水分含有量を調整後、防湿包装を施し、当該キャリアテープ用原紙の水分含有量を維持した状態で保管や輸送を行うとよい。エンボス加工を行う前に当該キャリアテープ用原紙に水分を供給することで、当該キャリアテープ用原紙の水分含有量を調整してもよいが、水分の供給前後で当該キャリアテープ用原紙の水分含有量の変化が大きい場合、当該キャリアテープ用原紙の変形が生じ、エンボス加工時に当該キャリアテープ用原紙の皺の発生原因となるおそれがある。このため、当該キャリアテープ用原紙の抄造時に水分含有量を調整する方法が好ましい。
当該キャリアテープ用原紙の坪量の下限としては、280g/m2が好ましい。また、当該キャリアテープ用原紙の坪量の上限としては、1000g/m2が好ましい。当該キャリアテープ用原紙の坪量が上記下限未満である場合、当該キャリアテープ用原紙の強度が低下し、紙粉が発生するおそれがある。一方、当該キャリアテープ用原紙の坪量が上記上限を超える場合、通常の加工機を用いてのキャリアテープの走行が困難となるおそれがある。なお、この坪量はJIS−P8124:1998に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定される値である。
当該キャリアテープ用原紙の密度の下限としては、0.5g/cm3が好ましく、0.55g/cm3がより好ましい。また、当該キャリアテープ用原紙の密度の上限としては、1.2g/cm3が好ましく、1.1g/cm3がより好ましい。当該キャリアテープ用原紙の密度が上記下限未満である場合、エンボス加工時に凹部の形成が困難となるおそれがある。一方、当該キャリアテープ用原紙の密度が上記上限を超える場合、通常の加工機を用いてのキャリアテープの走行が困難となるおそれがある。
温度23℃の環境下で湿度を80%から20%に変化させた際の当該キャリアテープ用原紙の紙厚変化率(紙厚低下率)の下限は、小さいに超したことは無いが、生産コストや生産性等を考慮すると0.4%が好ましく、0.6%がより好ましく、0.8%がさらに好ましい。一方、この紙厚変化率の上限としては、2.5%が好ましく、2%がより好ましく、1.5%がさらに好ましい。当該キャリアテープ用原紙は、このように湿度変化に対する紙厚変化率が小さいため、湿度変化に伴うプレスポケットの歪みが発生し難く、プレスポケット内壁からの紙粉の発生が低減されている。
ここで、紙厚変化率とは、湿度80%のときの平均厚さ(T80)と、湿度20%のときの平均厚さ(T20)とから以下の式により求められる値である。また、各湿度における平均厚さは、JIS−P8118:1998に準拠して測定される値である。
紙厚変化率(%)={(T80−T20)/T80}×100
温度23℃の環境下で湿度を20%から80%に変化させた際の当該キャリアテープ用原紙の横方向(キャリアテープの幅方向、CD方向)の平均伸縮率の下限としては、0.54%が好ましく、0.57%がより好ましい。上記横方向の平均伸縮率の上限としては、0.65%が好ましく、0.61%がより好ましい。上記横方向の平均伸縮率が上記下限未満である場合、湿度変化に伴う加工機等の伸縮率との相違によりキャリアテープの走行が不安定となるおそれがある。一方、上記横方向の平均伸縮率が上記上限を超える場合、湿度が変化する環境下で当該キャリアテープ用原紙が保管された際、伸縮によりプレスポケットの歪みが発生し易く、プレスポケット内壁から紙粉が発生するおそれがある。
当該キャリアテープ用原紙の表層及び裏層の平均繊維配向角の縦方向の横方向に対する比(MD/CD)の下限としては、1.61が好ましく、1.65がより好ましい。また、上記MD/CDの上限としては、1.85が好ましく、1.7がより好ましい。上記MD/CDが上記下限未満である場合、繊維の方向はMD方向に並ぶ傾向が弱く、キャリアテープの走行の際の摩擦が大きくなり、摩擦による紙粉が発生するおそれがある。一方、上記MD/CDが上記上限を超える場合、CD方向の強度が不足し、キャリアテープが罫線割れを起こすおそれがある。「繊維配向角」とは、基準方向と繊維のなす角度のことをいい、例えば超音波伝導式配向角計(野村商事株式会社の「SST−3000」)等で測定することができる。
当該キャリアテープ用原紙の表層のTAPPI−T459−om−83に準拠して測定した表面強度の下限としては、12Aが好ましく、14Aがより好ましい。上記表層の表面強度が上記下限未満である場合、当該キャリアテープ用原紙の表層からトップカバーテープを剥離する際、表層のパルプ繊維が剥がれ、紙粉となるおそれがある。なお、上記表層の表面強度を上記下限以上とするためには、原料パルプの配当率やフリーネス、水溶性高分子の含浸等の方法が採用できる。
<キャリアテープ用原紙の製造方法>
当該キャリアテープ用原紙の製造方法は、原料スラリー調製工程と、この原料スラリー調製工程で得られる原料スラリーを用いてキャリアテープ用原紙を抄紙する抄紙工程とを備える。
原料スラリー調製工程では、上記各層用の原料パルプを含む原料スラリーを調製する。この原料スラリー調整工程で、各層の原料スラリーに必要に応じて各種内添剤が加えられる。
抄紙工程では、上記原料スラリー調製工程で得られる原料スラリーを用いてキャリアテープ用原紙を多層抄きすることにより製造する。多層抄きの方法としては、長網多層抄き、丸網多層抄き等の公知の方法を用いることができる。中でも丸網多層抄きが好ましい。このように当該キャリアテープ用原紙が丸網多層抄きにより形成されることにより、長網多層抄きに比べ抄き上げ時に原料パルプ中の繊維の方向が揃い難く、繊維同士が絡み合い易い。その結果、紙粉の発生をさらに抑制することができる。
当該キャリアテープ用原紙は、カレンダー装置にて表面及び裏面を平滑化処理するとよい。このように表面及び裏面を平滑化処理することにより、紙粉の発生を低減することができる。表面平滑化処理するためのカレンダー装置としては特に限定されるものではなく、例えばマシンカレンダー、ソフトカレンダー、ヤンキードライヤー等が適宜使用される。表面平滑化処理は、JIS−P8151:2004のプリント・サーフ試験機法(面積式流量計形プリント・サーフ試験機)にて、ソフトバッキングを用いてクランプ装置のバッキングを1.0MPaとして測定したときの平滑度が5.0μm以上8.0μm以下となるようにすることが好ましい。
なお、当該キャリアテープ用原紙は、15cm以上20cm以下程度の幅の中原反に裁断された後に、製品幅(例えば8mm幅)に裁断され、エンボス加工が施され凹部が形成される。上記エンボス加工の方法としては、凸型のパンチを有する金型と、これを挿入可能な凹部を有する金型との間に当該キャリアテープ用原紙を挟み込んで加工する方法を挙げることができる。さらに、搬送対象部品収納用のキャビティ部やテープ送り用のマージナル部等が形成されることで、キャリアテープとなる。
[その他の実施形態]
本発明のキャリアテープ用原紙は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記表層又は裏層の外面に表面処理剤を塗工してもよい。このように表面処理剤を塗工することで、当該キャリアテープ用原紙とトップカバーテープやボトムカバーテープとの接着性が優れる。また、トップカバーテープ剥離時のキャリアテープ表面の毛羽立ちや紙粉の発生を抑止することができる。この表面処理剤の塗工液としては、カバーテープとの接着性の観点から、ポリビニルアルコール(PVA)等の水溶性高分子、スチレン−メタクリル酸樹脂等の表面サイズ剤及び離型剤を含有しているとよい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例における各測定値は、以下の方法にて測定した値である。また、各評価は以下の方法によって行った。
[紙厚変化率(紙厚減少率)]
キャリアテープ用原紙を所謂ヒートサイクルテストとして温度23℃、湿度80%の環境下で2時間保った後、平均厚さ(T80)を測定した。その後、そのキャリアテープ用原紙を温度23℃、湿度20%の環境下で2時間保った後、平均厚さ(T80)を測定した。これらの測定値を元に、下記式により紙厚変化率(紙厚減少率)を求めた。各平均厚さは、JIS−P8118:1998に準拠して測定した。
紙厚変化率(%)={(T80−T20)/T80}×100
[水分含有量]
JIS−P−8127:2010に準拠し、巻取梱包済みのキャリアテープ用原紙を開封した直後に、キャリアテープ用原紙の最外周から2周分を除去した残部の部位の水分含有量を測定した。
[平均伸縮率]
自動式紙伸縮計(熊谷理機工業株式会社のNo.2078−III)を用いて測定した。200×200mmのキャリアテープ用原紙を試験片として準備し、この試験片を測定器にセットし、温度23℃、湿度20%の環境下で1時間保ち、基準長を定めた。次に、湿度を80%とし、この環境下で3時間保った後、試験片の伸縮長を測定し、伸縮長/基準長を伸縮率とした。この測定を縦方向、横方向それぞれ5サンプル測定し平均することで、平均伸縮率を算出した。
[繊維配向角]
超音波伝導式配向角計(野村商事株式会社の「SST−3000」)を用いて繊維配向角を測定した。
[紙粉発生の評価]
キャリアテープ用原紙を断裁機(押し切りカッターで手動にて断裁)で断裁した際における断裁断面の紙粉の発生を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が全く認められない。
○:紙粉の発生がやや認められる。
△:紙粉の発生が認められる。
×:紙粉の発生が著しい。
なお、キャリアテープ用原紙としては、湿潤環境、乾燥環境、及び湿潤と乾燥とが変化する環境下の3つの条件下に30日以上保管されたものを用いた。各環境の条件は以下の通りである。
湿潤環境:温度23℃、湿度80%の環境
乾燥環境:温度23℃、湿度20%の環境
湿潤と乾燥とが変化する環境:上記の湿潤環境と乾燥環境とが3時間毎に変化する環境
[キャリアテープ走行安定性]
温度23℃、湿度80%の環境下でキャリアテープ用原紙をキャリアテープに加工後、8mm幅にスリットし、芯の直径が6cmのリールに100m巻き付けた際のキャリアテープの走行性を以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:走行性が非常に良好である。
○:走行性が良好であり電子部品取り出し作業も良好である。
△:走行性が不安定で電子部品取り出し作業に微少な影響がある。
×:走行性が悪く電子部品取り出し作業に重大なトラブルが発生する。
[参考例1]
NBKP50質量%及びLBKP50質量%を含む原料パルプを叩解し、フリーネスを315mLに調整した。この原料パルプを用い、手抄きにより、坪量210.0g/m2(23℃、湿度50%)のキャリアテープ用原紙としての試験紙を得た。
[参考例2、参考比較例1〜13]
原料パルプ(NBKP及びLBKP)の配合比及びフリーネスを表1に記載の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして、参考例2及び参考比較例1〜13の各試験紙を得た。
得られた各試験紙について、上記方法にて、紙厚変化率を測定した。測定結果を表1及び図1に示す。
上記表1及び図1に示されるように、参考例1及び2の試験紙は、紙厚変化率が小さい。これは、NBKPを35質量%以上含有する原料パルプのフリーネスを440mL以下にすることによって生じる特異的な効果であると言える。すなわち、NBKPの含有量が30質量%である参考比較例4〜8、及びNBKPの含有量が0質量%である参考比較例9〜13においては、フリーネスの差異による紙厚変化率の変化は顕著には表れていない。これに対し、NBKPの含有量が高い参考例1、2及び参考比較例1〜3を比較すると、フリーネスの調整により紙厚変化率をより低減できることが示されている。以上から、原料パルプとして針葉樹晒クラフトパルプを35質量%以上含有し、上記原料パルプのフリーネスが300mL以上440mL以下である層(中層、又は中層及び裏層)を備えるプレスポケット型キャリアテープ用原紙は、湿度の変化に伴う紙厚変化率を抑えることができ、紙粉の発生を抑制できることがわかる。
[実施例1]
丸網抄紙機を用いた多層抄きにより、以下に詳述する表層、中間層及び裏層がこの順に積層された構造の基紙に下記塗工液を塗工し、その後、乾燥及びカレンダー処理を行って実施例1のキャリアテープ用原紙を得た。
表層については、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)10質量%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)90質量%の割合とし、フリーネスを350mL、重量平均繊維長を1.5mm、繊維粗度を0.10mg/100m、ルンケン比を1.2となるようパルプスラリーを調製した。上記パルプスラリーにパルプスラリー全量(固形分換算)に対し、湿潤紙力剤としてのポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン変性物(星光PMC株式会社のWS4024)を固形分換算で0.5質量%、乾燥紙力剤として両性のポリアクリルアミド樹脂(ハリマ化成株式会社のハーマイドRB−28)を固形分換算で0.15質量%、サイズ剤としての弱酸性ロジンサイズ剤(星光PMC株式会社のAL1344)を固形分換算で0.06質量%内添した抄紙原料を用意した。
中間層については、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)35質量%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)65質量%の割合とし、フリーネスを300mL、重量平均繊維長を1.5mm、繊維粗度を0.10mg/100m、ルンケン比を1.2となるようパルプスラリーを調製した。上記パルプスラリーにパルプスラリー全量(固形分換算)に対し、湿潤紙力剤としてのポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン変性物(星光PMC株式会社のWS4024)を固形分換算で0.5質量%、乾燥紙力剤としての両性のポリアクリルアミド樹脂(ハリマ化成株式会社のハーマイドRB−28)を固形分換算で0.34質量%、及びサイズ剤としての弱酸性ロジンサイズ剤(星光PMC株式会社のAL1344)を固形分換算で0.38質量%内添した抄紙原料を用意した。
裏層については、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)50質量%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)50質量%の割合とし、フリーネスを370mL、重量平均繊維長を1.5mm、繊維粗度を0.10mg/100m、ルンケン比を1.2となるようパルプスラリーを調製した。上記パルプスラリーにパルプスラリー全量(固形分換算)に対し、湿潤紙力剤としてのポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン変性物(星光PMC株式会社のWS4024)を固形分換算で0.5質量%、及び乾燥紙力剤としての両性のポリアクリルアミド樹脂(ハリマ化成株式会社のハーマイドRB−28)を固形分換算で0.15質量%内添した抄紙原料を用意した。
(塗工液の調整)
樹脂としてスチレン・アクリル酸の共重合物(融点100℃、近代化学工業社の「ケイコートSA80S」)、及び水溶性高分子としてポリビニルアルコール(日本合成化学社の「ゴーセノールN300」)をそれぞれの固形分量が10:9となるように水に混合し、調製した塗工液を表面に3.8g/m2塗工した。なお、実施例において塗工量は固形分換算した値である。
[実施例2〜26、比較例1〜8]
表2〜表5に示すように、各種条件を変化させて実施例2〜26及び比較例1〜8のキャリアテープ用原紙を得た。なお、表2〜表5に示す条件以外は実施例1と同様とした。
表5の結果から示されるように、実施例1〜26のキャリアテープ用原紙は、紙厚変化率が小さく、紙粉の発生が抑えられ、かつ走行安定性にも優れていることがわかる。