以下、無線給電システム等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における無線給電システムの一例を示す回路図である。図1においては、無線給電システム1が、磁界共鳴結合方式の無線給電システムである場合の回路例を示している。ただし、本発明の無線給電システム1は、例えば、電磁誘導方式の無線給電システム等の、磁界共鳴結合方式以外の無線給電システムであってもよい。
無線給電システム1は、送電装置10と、受電装置20とを備えている。ここでは、送電装置10を一つ備えている例を示しているが、無線給電システム1は、二以上の送電装置10を備えていても良い。同様に、無線給電システム1は、二以上の受電装置20を備えていても良い。
送電装置10は、送電側コイルL1、および送電側T型フィルタT1を備えている。
受電装置20は、受電側コイルL2、受電側負荷201、および受電側T型フィルタT2を備えている。
送電装置10は、受電装置20に対して、無線給電により電力を供給する装置である。
送電側コイルL1は、高周波電源50から供給される交流電流に応じた磁界を発生する。送電側コイルL1は、送電側T型フィルタT1を介して高周波電源50に接続されている。送電側コイルL1は、一端が、直列に接続された第一のインダクタLaと、第二のインダクタLbと、磁界共鳴用のキャパシタC3とを介して高周波電源50の一端と接続され、他端が、高周波電源50の他端と接続されている。なお、送電側コイルL1のインダクタンスを、ここではL1とする。かかることは他のコイルについても同様であるとする。
高周波電源50は高周波の交流電流を供給する。高周波電源50は、例えば、電力を送電するための磁界を送電側コイルL1に発生させるための高周波交流電流を供給する。なお、本実施の形態においては、高周波電源50が無線給電システム1の外部に設けられている例を示しているが、高周波電源50が、無線給電システム1内に設けられているか外部に設けられているかは問わない。例えば、高周波電源50が無線給電システム1内に設けられている場合、高周波電源50は、送電装置10の外部に設けられていても良く、送電装置10の内部に設けられていてもよい。また、一の高周波電源50は、複数の送電装置10に電力を供給するものであっても良い。高周波電源50は、高周波交流電流を供給するものであれば良く、例えば、インバータ等を搭載しており、50/60Hz等の商用電源から供給される交流電流を高周波に変換する送電ユニット等であってもよい。高周波電源50が供給する交流電流は、高周波であれば周波数は問わない。
送電側T型フィルタT1は、第一のインダクタLa、第二のインダクタLb、および第一のキャパシタC1を備えている。送電側T型フィルタT1は、L−C−L構成のT型フィルタである。第一のインダクタLaおよび第二のインダクタLbは、高周波電源50と送電側コイルL1との間に直列に接続されている。直列に接続された第一のインダクタLaおよび第二のインダクタLbの両端は、それぞれ、高周波電源50の一の端子と送電側コイルL1の一の端子とに接続されている。第一のインダクタLaは、第二のインダクタLbに対して高周波電源50側に接続されている。第一のキャパシタC1は、直列に接続されている送電側コイルL1および第二のインダクタLbに対して並列に接続されている。第一のキャパシタC1の一端は、第一のインダクタLaと第二のインダクタLbとの間に接続されており、他端は、送電側コイルL1の、第二のインダクタLbが接続されていない端子および高周波電源50の第一のインダクタLaが接続されていない端子に接続されている。なお、第一のインダクタLaのインダクタンスを、ここではLaとする。かかることは他のインダクタについても同様であるとする。また、第一のキャパシタC1のキャパシタンスを、ここではC1とする。かかることは、他のキャパシタについても同様である。なお、ここでのインダクタは、コイルも含む概念である。
受電装置20は、送電装置10から無線給電される電力を受電する装置である。受電装置20は、例えば、受電装置20が受電した電力の供給対象となる装置(図示せず)等に搭載される。なお、受電装置20が、受電した電力の供給対象となる装置であっても良く、受電装置20が、受電した電力の供給対象となる装置の一部であっても良い。電力の供給対象となる装置は、例えば、AGV(automatic guided vehicle:無人搬送車)や電気自動車、電動工具等である。
受電側コイルL2は、送電装置10の送電側コイルL1が発生する磁界に応じた交流電流を発生する。受電側コイルL2は、具体的には、送電側コイルL1が発生する交流磁界を受けて、高周波の交流電流を発生する。受電側コイルL2は、送電側コイルL1と電磁的に結合された状態で、交流電流を発生する。受電側コイルL2は、発生した交流電流を、受電側負荷201に送電する。受電側コイルL2は、受電側T型フィルタT2を介して、受電側負荷201と接続されている。受電側コイルL2は、一端が、第三のインダクタLc、および第四のインダクタLdを介して受電側負荷201の一端と接続されており、他端が、受電側負荷201の他端と接続されている。
なお、ここでの電磁的に結合とは、例えば、無線給電システム1が磁界共鳴結合方式のシステムである場合、磁界共鳴が起こるように結合することである。また、例えば、無線給電システム1が電磁誘導方式のシステムである場合、電磁誘導が起こるように結合することである。なお、線給電システム1が磁界共鳴結合方式のシステムである場合において、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合するということは、例えば、送電側コイルL1とキャパシタC3とを有する磁界共鳴用の回路と、受電側コイルL2とキャパシタC4とを有する磁界共鳴用の回路とが共鳴することと考えてもよい。
受電側負荷201には、受電側コイルL2が発生する交流電流が供給される。受電側負荷201は、例えば、受電側コイルL2から供給される電力を消費するものである。受電側負荷201は、例えば、整流平滑回路(図示せず)等を備えており、供給された交流電流を直流電流に変換するものであっても良く、整流平滑回路等により供給された交流電流を直流電流に変換し、蓄電デバイス(図示せず)等に充電する受電ユニット等であっても良い。また、図示しない動力や回路等に電流を供給するものであってもよい。
受電側T型フィルタT2は、第三のインダクタLc、第四のインダクタLd、および第二のキャパシタC2を備えている。受電側T型フィルタT2は、L−C−L構成のT型フィルタである。第三のインダクタLcおよび第四のインダクタLdは、受電側コイルL2と受電側負荷201との間に直列に接続されている。直列に接続された第三のインダクタLcおよび第四のインダクタLdの両端は、それぞれ受電側コイルL2の一の端子と受電側負荷201の一の端子とに接続されている。第三のインダクタLcは、第四のインダクタLdに対して受電側コイルL2側に接続されている。第二のキャパシタC2は、直列に接続されている受電側コイルL2および第三のインダクタLcに対して並列に接続されている。第二のキャパシタC2の一端は、第三のインダクタLcと第四のインダクタLdとの間に接続されており、他端は、受電側コイルL2、の第三のインダクタLcが接続されていない端子、および受電側負荷201の、第四のインダクタLdが接続されていない端子に接続されている。
送電側T型フィルタT1は、送電装置10に設けられた特定の周波数帯域の高周波交流電流を通過させる送電側フィルタである。受電側T型フィルタT2は、受電装置20に設けられた特定の周波数帯域の高周波交流電流を通過させる受電側フィルタである。特定の周波数帯域とは、上限と下限の周波数の間の周波数帯域である。ここでの特定の周波数帯域は、例えば、目的となる範囲の周波数帯域である。例えば、特定の周波数帯域は、受電側負荷201に対して供給したい、あるいは、受電側負荷201に対して給電することが好ましい電流の周波数帯域である。例えば、無線給電システム1を電気自動車等の無線給電に利用する場合、送電側T型フィルタT1が通過させる特定の周波数帯域は、75kHzから95KHzまでの範囲の周波数帯域であることが好ましい。なお、送電側T型フィルタT1が通過させる特定の周波数は高周波であればよく、例えば、1KHz以上の高周波であることが好ましい。特定の周波数帯域をどのような周波数帯域に設定するかは問わない。送電側T型フィルタT1が通過させる高周波交流電流の周波数帯域は、例えば、送電側T型フィルタT1を構成する第一のインダクタLaおよび第二のインダクタLbのインピーダンスと、第一のキャパシタC1の容量とを適宜設定することで、特定の周波数帯域に設定することができる。同様に、受電側T型フィルタT2を構成する第三のインダクタLcおよび第四のインダクタLdのインピーダンスと、第二のキャパシタC2の容量を適宜設定することで、受電側T型フィルタT2が通過させる高周波交流電流の周波数帯域を特定の周波数帯域に設定することができる。
本実施の形態においては、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2は、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の送電装置10のインピーダンスが、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態の送電装置10および受電装置20のインピーダンスに対して高くなるよう構成されている。具体的には、インピーダンスがこのような関係となるよう、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2を構成するインダクタLa〜LdのインダクタンスおよびキャパシタC1およびC2のキャパシタンスが設定されている。ここでの送電装置10のインピーダンスとは、高周波電源50から見たインピーダンスである。また、ここでの送電装置10および受電装置20のインピーダンスとは、電磁的に結合した状態の送電装置10および受電装置20の、高周波電源50から見たインピーダンスである。
なお、図1においては、無線給電システム1を磁界共鳴結合方式の無線給電システムとするために、送電側の磁界共鳴用のキャパシタC3を、第二のインダクタンスLbと送電側コイルL1との間に挿入している。同様に、受電側の磁界共鳴用のキャパシタC4を、受電側コイルL2と第三のインダクタLcとの間に挿入している。ただし、無線給電システム1が、電磁誘導方式の無線給電装置等である場合のように、磁界の共鳴が不要であれば、磁界共鳴用のキャパシタC3およびキャパシタC4は省略しても良い。
送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2は、例えば、同じ構成を有していることが好ましく、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2が有するインダクタである第一のインダクタLa、第二のインダクタLb、第三のインダクタLc、および第四のインダクタLdが同じインピーダンスを有しており、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2が有するキャパシタである第一のキャパシタC1および第二のキャパシタC2が同じ容量を有していることが好ましい。
図2は、本実施の形態における無線給電システムについてのインダクタンスを説明するための、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合した状態の無線給電システム1の等価回路を示す図(図2(a))、および送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の送電装置10の回路を示す図(図2(b))である。図において、図1と同一の同一符号は、同一または相当する部分を示している。インダクタLMは、送電側コイルL1および受電側コイルL2の電磁的に結合している部分を表すインダクタである。インダクタL1'は、送電側コイルL1の、受電側コイルL2と電磁的に結合していない部分を表すインダクタである。また、インダクタL2'は、受電側コイルL2の送電側コイルL1と電磁的に結合していない部分を表すインダクタである。L1'は送電側コイルL1の漏れインダクタンスに相当し、L2'は受電側コイルL2の漏れインダクタンスに相当する。LM、L1'、およびL2'は以下のように表される。
k(0≦k≦1)は、送電側コイルL1と受電側コイルL2との結合係数であるとする。結合係数kは、送電側コイルL1および受電側コイルL2の形状および相対的な位置で決まるパラメータであり、送電側コイルL1および受電側コイルL2の電磁的な結合強さを示す指標となる。結合係数kは、例えば、送電側コイルL1と受電側コイルL2との距離により決まるパラメータと考えてもよい。
以下、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の送電装置10のインピーダンスが、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態の送電装置10および受電装置20のインピーダンスに対して高くなるような送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2を設けるための、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2を構成するインダクタLa〜LdのインダクタンスおよびキャパシタC1およびC2のキャパシタンスの設定について、図2を用いて説明する。なお、ここでは、受電側負荷201のインピーダンスを変数Xとし、L1、L2、C3およびC4を定数とした場合について説明する。なお、L1、L2、C3およびC4の一以上も変数と考えてもよい。
まず、図2(a)の等価回路の高周波電源50からみたインピーダンスを受電側負荷201のインピーダンスであるXの関数で表すことを考える。
例えば、図2(a)の等価回路において、ラインZ1よりも受電側負荷201側の回路のインピーダンスを、Xの関数Z1(X)で表すと、
となる。なお、ωは、高周波電源50が供給する交流電流の角周波数であるとする。
また、ラインZ2よりも受電側負荷201側の回路のインピーダンスをXの関数Z2(X)で表すと、
また、ラインZ3よりも受電側負荷201側の回路のインピーダンスをXの関数Z3(X)で表すと、
となる。
また、ラインZ4よりも受電側負荷201側の回路のインピーダンスを、受電側負荷201のインピーダンスを変数Xとして用いた関数Z4(X)で表すと、
となる。
また、ラインZ5よりも受電側負荷201側の回路のインピーダンスを、受電側負荷201のインピーダンスを変数Xとして用いた関数Z5(X)で表すと、
となる。
また、ラインZAよりも受電側負荷201側の回路のインピーダンスを、受電側負荷201のインピーダンスを変数Xとして用いた関数ZA(X)で表すと、
となる。
このように、図2(a)の等価回路の高周波電源50からみたインピーダンスは、Xの関数であるZA(X)で表すことができ、任意の値X等が定まれば、高周波電源50からみた無線給電システム1のインピーダンスも定まることがわかる。
次に、図2(b)に示した、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の送電装置10において、ラインZ6よりも送電側コイルL1側の回路のインピーダンスをZ6とすると、
となる。送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態は、例えば、図1において、受電装置20が存在していない場合である。
次に、図2(b)の回路において、高周波電源50からみた送電装置10のインピーダンスであるZBを上記と同様にして求めると
となる。
そして、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の送電装置10のインピーダンスが、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態の送電装置10および受電装置20のインピーダンスに対して高くなるようにするためには、上記の
ZBの値が、
ZA(X)の値よりも大きくなればよいことから、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2を構成するインダクタLa〜LdのそれぞれのリアクタンスであるLa〜Ld、およびキャパシタC1、C2のそれぞれのキャパシタンスであるC1、C2が、以下に示す式(1)を満たすように設定すればよい。
上記のような式(1)を満たすように、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2を構成するインダクタLa〜LdのそれぞれのリアクタンスであるLa〜Ld、およびキャパシタC1、C2のそれぞれのキャパシタンスであるC1、C2を設定することで、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の送電装置10のインピーダンスが、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態の送電装置10および受電装置20のインピーダンスに対して高くなるようにすることができる。ただし、設定されるこれらのLa〜Ld、C1およびC2の値や、L1、L2、C3およびC4の値等は、無線給電システム1による無線給電のための動作が可能となるような値である必要がある。
なお、無線給電システム1を、電磁誘導方式等の磁界共鳴用のキャパシタC3およびC4を有さない無線給電システム1とする場合、磁界共鳴用のキャパシタC3およびC4が不要となるため、上記の式(1)に示した関係式は、上記のZ2(X)、Z4(X)およびZ6(X)を求める式を、以下のように変形した場合の関係式となる。
また、例えば、無線給電システム1にノイズ対策用の回路等の他の回路を挿入する場合、挿入する回路のインピーダンスの値等を考慮して、上記と同様に、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の送電装置10のインピーダンスと、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態の送電装置10および受電装置20のインピーダンスとの関係式を取得し、この関係式を満たすように、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2を構成するインダクタのインダクタンスおよびキャパシタのキャパシタンスを設定すればよい。なお、このような挿入する他の回路のインピーダンスの値を考慮した関係式も、他の回路を挿入しない場合の回路のインピーダンスの関係式と実質的に同じものであると考えてもよい。
なお、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2は、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態の、高周波電源50から見た送電装置10および受電装置20のインピーダンスが、高周波電源50の出力インピーダンスと等しくなるよう構成することが好ましい。例えば、上述したインピーダンスZA(X)が、高周波電源50の出力インピーダンスと等しくなるよう構成することが好ましい。このような構成とすることで、インピーダンスを整合して、給電時の伝送効率を最大化することができる。なお、結合時の高周波電源50から見た送電装置10および受電装置20のインピーダンスは、結合係数kや受電側負荷のインピーダンスXによって変化するため、このような構成とするために、例えば、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2が有するインダクタのインピーダンスおよびキャパシタの容量は、送電側コイルL1と受電側コイルL2との間の距離、および受電側負荷のインピーダンスに応じて決定される
次に、本実施の形態の無線給電システム1の動作の一例について説明する。
送電側コイルL1は、高周波電源50から供給される高周波交流電流に応じた交流磁界を発生しており、送電側コイルL1と受電側コイルL2との位置が近づいてこれらが電磁的に結合されると、受電側コイルL2は、送電側コイルL1が発生する交流磁界を受けて、交流電流を発生し、受電側負荷201に交流電流を供給する。受電側負荷201が、例えば、図示しない蓄電デバイスに対して充電を行なう受電ユニット等である場合、受電側負荷201は、受電側コイルL2から供給される交流電流を直流に変換し、蓄電デバイスに充電する。
本実施の形態の送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2は、高周波電源50から交流電流が供給されている際には、インピーダンス変換回路として作用する。本実施の形態においては、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の送電装置10のインピーダンスが、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態の送電装置10および受電装置20のインピーダンスに対して高くなるよう送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2を設定することにより、送電装置10に電磁的に結合される位置等に受電装置20がない場合(即ち、受電側負荷がない場合)には、高周波電源50からみた送電装置10のインピーダンスを高く設定して、この送電装置10の送電側コイルL1に流れる電流を小さくでき、送電側コイルL1へ有効電力がほとんど供給されないようにすることができ、送電装置10における消費電力を小さくすることができる。
また、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態の送電装置10および受電装置20のインピーダンスが、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の送電装置10のインピーダンスに対して低くなるように、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2を設定することにより、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態においては、高周波電源50からみた受電側負荷201側のインピーダンスを低くなるように設定することができ、入出力のインピーダンスの整合を取ることができ、高周波電源50から受電側負荷201に対して、効率良く電力を供給することができる。
なお、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態の送電装置10および受電装置20のインピーダンスとは、例えば、図2のように、電磁的な結合によって送電装置10と受電装置20とが実質的に一つの回路として高周波電源50から電力が供給されている場合のインピーダンスと考えても良い。
送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2は、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態において、入力側である高周波電源50側のインピーダンスと、出力側である受電側負荷201のインピーダンスとが整合するように設定することが好ましい。このことは、高周波電源50からみた、電磁的に結合した状態の無線給電システム1の、受電側負荷201を含めた回路のインピーダンスが低くなるように設定することと考えてもよい。なお、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2を設定するということは、例えば、これらを構成するインダクタのリアクタンスおよびキャパシタのキャパシタンスを設定すると考えてもよい。
なお、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の送電装置10のインピーダンスは、大きければ大きいほど好ましい。電力損失が、インピーダンスの二乗に比例することから考えると、無線給電システム1においては、無線給電していない状態の電力消費を抑えるためには、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の送電装置10のインピーダンスが、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態の送電装置10および受電装置20のインピーダンスに対して、約1.4倍以上となるようにすることが好ましく、約3倍以上となるようにすることがより好ましい。
(具体例)
以下、本実施の形態の具体例について説明する。この具体例においては、無線給電システム1の一例についてシミュレーションを行なって、送電側コイルL1と受電側コイルL2との間に電磁的な結合がある場合とない場合とについて、それぞれ、送電装置10を流れる電流を示すグラフを取得し、グラフについての比較を行なった。
図3は、本実施の形態の具体例を説明するための、無線給電システム1の回路の一例を示す回路図であり、シミュレーションに用いられた回路を示す図である。この具体例の無線給電システム1は、四つの送電装置10と一つの受電装置20とを備えているものとする。四つの送電装置10は、同じ構成であるとする。四つの送電装置10を便宜上、送電装置10a〜10dと呼ぶ。ここでは、四つの送電装置10a〜10dは同じ高周波電源50に接続されている場合を示している。ただし、四つの送電装置10a〜10dは、それぞれが個別の高周波電源に接続されていても良い。
第一のインダクタL101、L105、L110、およびL113は、図1の第一のインダクタLaに相当し、第二のインダクタL102、L106、L111、およびL114は、図1の第二のインダクタLbに相当し、いずれのインダクタンスも1700μHである。送電側コイルL103、L109、L112、およびL115は送電側コイルL1に相当し、受電側コイルL104は受電側コイルL2に相当し、いずれのインダクタンスも100μHである。第三のインダクタL107は、図1の第三のインダクタLcに相当するインダクタであり、第四のインダクタL108は、図1の第四のインダクタLdに相当するインダクタであり、いずれのインダクタンスも、1700μHである。
第一のキャパシタC101、C102、C103、およびC105は、図1の第一のキャパシタC1に相当し、第二のキャパシタC111は、図1の第二のキャパシタC2に相当し、いずれのキャパシタンスも17μFである。送電側の磁界共鳴用のキャパシタC106、C107、C108、およびC109は、図1の送電側の磁界共鳴用のキャパシタC3に相当し、受電側の磁界共鳴用のキャパシタC110は、図1の受電側の磁界共鳴用のキャパシタC4に相当し、いずれのキャパシタンスも17μFである。
抵抗R1は、受電側負荷201に相当し、抵抗値は100Ωであるとする。抵抗R2は電流測定を行なうために設けられた抵抗であり、抵抗値は10mΩ(ミリオーム)である。なお、図3の抵抗R2や接地線等は、シミュレーションを行なうために設けられた回路の要素であり、実際の無線給電システム1としては適宜省略しても良い。
高周波電源Vinは、高周波電源50に相当し、高周波電源Vinが供給する高周波高周波電源の周波数は1kHz、電圧は100Vとする。送電側コイルL1に相当する送電側コイルL103と、受電側コイルL2に相当する受電側コイルL104との結合係数kは、0.8であるとする。
図3の回路においては、送電装置10aの送電側コイルL103と、受電装置20の受電側コイルL104とは、電磁的に結合しており、送電装置10b〜10dは、受電装置20と電磁的に結合していない状態であるとする。上記のようなインダクタやキャパシタ等の値の設定により、図3に示した無線給電システム1の例においては、高周波電源50からみた受電装置20と電磁的に結合していない状態の送電装置10b〜10dのインピーダンスは、高周波電源50からみた電磁的に結合した状態の送電装置10aと受電装置20とのインピーダンスよりも高くなっている。
この具体例においては、図3に示した無線給電システム1において、高周波電源50から送電装置10a〜10dに高周波交流電流を供給した場合における送電装置10a〜10dのそれぞれの送電側コイルL1に流れる電流のシミュレーションを行った。シミュレータとしては、LTSpice(リニアテクノロジー社製)を用いた。
図4は、図3に示した無線給電システム1についてのシミュレーション結果を示すグラフであり、図4(a)は、送電装置10aの第一のインダクタL101に流れる電流の経時的な変化を示すグラフであり、図4(b)は、送電装置10bの第一のインダクタL105に流れる電流の経時的な変化を示すグラフである。図4において、横軸は時間を示し、縦軸は、電流のシミュレーション値を示している。
図4(a)に示すように、送電装置10aの送電側コイルL103と、受電装置20の受電側コイルL104とが電磁的に結合している状態においては、送電装置10aの第一のインダクタL101に流れる電流の最大値はおよそ4Aであるのに対し、図4(b)に示すように、送電装置10bの送電側コイルL109が、受電装置20の受電側コイルL104と電磁的に結合していない状態においては、送電装置10bの第一のインダクタL105に流れる電流の最大値はおよそ2Aとなっている。このように、図3の無線給電システム1においては、電磁的に結合されて無線給電が行なわれている送電装置10aと受電装置20とにおいては、高周波電源50からみたインピーダンスが低く、送電装置10aを流れる電流が大きくなっているのに対し、電磁劇に結合されておらず無線給電を行なっていない送電装置10bにおいては、高周波電源50からみたインピーダンスが高くなり、送電装置10bに流れる電流が十分に小さくなっていることがわかる。このことから、図3に示した無線給電システム1においては、送電装置10bから受電装置20に無線給電を行なっていない状態においては、高周波電源50からみたインピーダンスが高くなるようにして、送電装置10bに流れる電流が低くすることで、送電装置10bにおける電力消費を抑えられることがわかる。
以上、本実施の形態によれば、送電装置の送電側コイルと受電装置の受電側コイルとが電磁的に結合していない場合の高周波電源からみた送電装置のインピーダンスを、送電装置の送電側コイルと受電装置の受電側コイルとが電磁的に結合している場合の高周波電源からみた送電装置および受電装置のインピーダンスよりも大きくすることにより、無線給電を行なっていない状態における消費電力を適切に低減させることができる。また、送電装置の送電側コイルと受電装置の受電側コイルとが電磁的に結合している際には、高周波電源からみたインピーダンスを小さくすることにより、無線給電時の給電効率を高くすることができる。これにより、例えば、センサ等を用いて無線給電時であるか否かを検出し、その検出結果に応じて、非無線給電時における送電側装置への電力供給のオン・オフ等を制御することなく、非無線給電時の電力消費を低減させることができる。
なお、上記実施の形態においては、送電装置10が、送電側フィルタとして、L−C−L構成の送電側T型フィルタT1が有しており、受電装置20が、受電側フィルタとしてL−C−L構成の受電側T型フィルタT2を有している場合について説明したが、本発明においては、送電装置10が、送電側フィルタとして、一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する送電側フィルタを有しており、受電装置20が、受電側フィルタとして、一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する送電側フィルタを有していればよい。このような場合においても、送電側フィルタおよび受電側フィルタを、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の、高周波電源からみた送電装置10のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の、高周波電源からみた送電装置10および受電装置20のインピーダンスに対して高くなるよう構成することで、上記実施の形態と同様の効果を奏する。例えば、上記のような送電側フィルタおよび受電側フィルタを、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合していない状態の高周波電源からみた送電側フィルタのインピーダンスが、電磁的に結合している状態の高周波電源からみた送電装置10および受電装置20のインピーダンスに対して高くなるよう構成することにより、上記実施の形態と同様の効果を奏する。なお、上記のような場合のおいても、送電側フィルタおよび受電側フィルタは、送電側コイルL1と受電側コイルL2とが電磁的に結合している状態の、高周波電源50から見た送電装置10および受電装置20のインピーダンスが、高周波電源50の出力インピーダンスと等しくなるよう構成することが、インピーダンスを整合して、給電時の伝送効率を最大化するうえで好ましい。
例えば、L−C−L構成の送電側T型フィルタT1およびL−C−L構成の受電側T型フィルタT2の代わりに、それぞれC−L−C構成のT型フィルタを設けるようにしてもよい。C−L−C構成のT型フィルタは、例えば、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2のインダクタの代わりにキャパシタを設け、キャパシタの代わりにインダクタを設けたものである。また、送電側T型フィルタT1および受電側T型フィルタT2の代わりに、それぞれC−L−C構成のπ型フィルタ、またはL−C−L構成のπ型フィルタを設けるようにしてもよい。なお、送電側フィルタおよび受電側フィルタは、複数のフィルタで構成されてもよい。なお、送電側フィルタおよび受電側フィルタは、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含むことが好ましい。
なお、上記実施の形態において、送電側フィルタおよび受電側フィルタの少なくとも一方に、自動整合器(図示せず)等を設けるようにしても良い。
送電側フィルタおよび受電側フィルタは、特定の周波数帯のみを通過させるフィルタであることが好ましい。特定の周波数帯域のみを通過させる送電側フィルタおよび受電側フィルタは、例えば、特定の周波数以上の周波数のみを通過させるハイパスフィルタおよび特定の周波数以下の周波数のみを通過させるローパスフィルタを除いたフィルタであることが好ましく、例えば、バンドパスフィルタであることがこのましい。
なお、送電側フィルタと受電側フィルタとは、同じ構成を有していることが好ましい。例えば、送電側フィルタが、C−L−C構成のT型フィルタであれば、受電側フィルタもC−L−C構成のT型フィルタであることが好ましい。更に、送電側フィルタと受電側フィルタとが有するインダクタは同じインピーダンスを有しており、送電側フィルタと受電側フィルタとが有するキャパシタは同じ容量を有しているようにすることが好ましい。
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。